情報委員会(第10回) 議事録

1.日時

令和2年7月8日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 第8回及び第9回情報委員会(書面調査)の結果の報告
  2. ポスト・コロナ時代における情報科学技術の取組方針についての検討
  3. その他

4.出席者

委員

西尾主査、乾委員、井上委員、上田委員、奥野委員、梶田委員、来住委員、喜連川委員、鬼頭委員、栗原委員、佐古委員、田浦委員、瀧委員、辻委員、新居委員、長谷山委員、引原委員、福田委員、八木委員、安浦委員、若目田委員

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局担当)、橋爪参事官(情報担当)、宅間計算科学技術推進室長、三宅学術基盤整備室長、錦学術企画室長、黒橋科学官、竹房学術調査官、池内学術調査官

5.議事録

【西尾主査】 時間も過ぎておりますので、科学技術・学術審議会情報委員会の第10回会合を開催いたします。
皆様方に本委員会に出席いただきまして誠にありがとうございます。
本日は、前回に引き続きまして、コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインで開催することにいたしました。
今回の議事は全て公開といたします。報道関係者も含めまして、傍聴者の方にもウェブ参加いただいておりますので御承知いただければと思います。また、通信状態に不具合が生じる等、続行できないような場合には、委員会を中断せざるを得ないこともあります。予め御了承ください。
まず、配付資料の確認とオンライン会議の注意事項の説明を事務局よりお願いいたします。
【出口参事官補佐】 事務局より、議事次第に基づきまして、配付資料の確認をさせていただきます。
配付資料は資料1から2-1、2-2、3、4-1、4-2、5とございます。そして、参考資料は1から5までございます。こちらは適宜、画面共有という形で進めさせていただきます。
続きまして、オンライン会議の注意事項を説明させていただきます。
こちら通信の安定のため、発言時を除きまして、常時マイクはオフ、ビデオはオフとしていただきますようお願いいたします。西尾主査におかれましては、常時マイクはオンとしていただきますようお願いいたします。
そして、御発言いただく際は、「手を挙げる」ボタンを押して御連絡ください。主査におかれましては、手を挙げていただいている委員を御指名いただければと思います。適宜、事務局の方でもサポートさせていただければと思います。
今回、傍聴者の方々はZoomで御参加いただいております。システムが不調となった場合は、後日公開する議事録を御覧いただければと思っております。
事務局からは以上でございます。
【西尾主査】 ありがとうございました。
まず、議事の1番目ですが、6月5日から11日まで第8回委員会として行った書面調査の結果及び6月15日から19日まで第9回委員会として行った書面調査の結果について、事務局から報告をお願いいたします。
【出口参事官補佐】
資料1「研究開発プログラム評価」を御覧ください。
第8回委員会では、研究計画・評価分科会が試行的に行っておりますプログラム評価の評価票について御審議いただきました。7月1日付で取りまとめておりまして、情報分野のプログラム評価として、第73回研究計画・評価分科会での審議に供させていただきます。
続きまして、第9回委員会では、理研AIPセンターの中間評価結果について、第7回委員会における御議論を踏まえて御審議いただきました。こちら6月25日付で資料2-1「AIPプロジェクト(理化学研究所革新知能統合研究センター分)中間評価結果」が決定されました。こちらも資料1と同じく、第73回研究計画・評価分科会で審議されることとなります。
そして、資料2-2につきましては、情報委員会における理化学研究所革新知能統合研究センター中間評価に関する議論の概要でございまして、あくまで資料2-1の参考としての位置付けになっております。
なお、理研AIPセンターの中間評価に関する議事につきましては、科学技術・学術審議会情報委員会運営規則第5条第3項に基づきまして、非公開の扱いとなっております。
書面調査の結果の御報告につきましては以上でございます。
【西尾主査】 続きまして、次の議事に入る前に、事務局から「富岳」のスパコンランキングについて説明をお願いいたします。
【根津参事官補佐】 資料3を御覧いただければと思います。
スパコン「富岳」につきましては、平成26年度からスタートしたプロジェクトでございまして、スパコン「京」は既に昨年の夏に撤去が開始されておりますけれども、その後継機として開始したプロジェクトでございます。理化学研究所が富士通と連携しながら開発を進めてきましたが、本年の5月に全てのラック、全432ラックが理研の神戸のセンターの方に搬入を完了してございます。現在、令和3年度中の供用開始に向けてシステムを調整しているところでございますけれども、既に皆様方、報道でも御覧になっているかもしれませんが、本年6月に、国際学会で公開されましたスパコンランキングにおきまして、資料中にある4つの部門で1位を獲得することができたというところでございます。
「富岳」は、もともと特定のランキングで1位を取るということではなくて、総合力が高いマシンとして開発を進めてきたところでありますけれども、その結果として、このような結果を獲得できたと考えてございます。情報委員会の皆様にもいろいろと御指導を頂いたおかげかと思ってございます。厚く御礼申し上げます。
文科省としましては、これからはこの高い性能をいかに実際の成果に結びつけていくかということが更に問われてくると考えてございまして、既に一部使えるラックを動かし始めており、奥野委員にもスパコンを使う側として加わっていただいてございますが、コロナ関係の課題を幾つか動かしてございます。そういったところも含めて成果を出していくというところについて、別途HPCI計画推進委員会という委員会で「富岳」の使い方、成果を出していくための利用体系の在り方について御議論いただいてございます。情報委員会にも御参画いただいてございます安浦委員、あるいは喜連川委員、上田委員、あるいは田浦委員、こういった方々の御意見も踏まえながら今検討しているところでございますけれども、引き続き文科省としましては、「富岳」をいかに成果につなげていくかというところを重視して今後も検討を進めていきたいと思ってございます。引き続き皆様の御指導を頂ければと思ってございます。
事務局からは以上でございます。
【西尾主査】 ありがとうございました。
先ほどの理研のAIPセンターの中間評価につきましても、委員の皆様方には本当に御世話になりました。そのことについて心より御礼申し上げます。また、今、我々にとってうれしいニュースの報告がございました。このことにつきましても、この委員会に御参画いただいております委員の方々に、いろんな観点から御助言等を頂いてきましたことが功を奏していると思っております。このことにつきましても、改めて御礼申し上げます。
それでは、ポスト・コロナ時代における情報科学技術の取組方針について、提言としてまとめることを視野に検討を進めていきたいと思っております。本件については、既に皆様にはアンケート調査に御協力いただいており、それを元に事務局の方で論点としてとりまとめておりますので、説明していただきます。
【橋爪参事官】
資料4-1でございますが、主査からも御紹介がありましたように、事前に各委員に提出いただきました意見をまとめて、論点(案)として準備をさせていただいております。主に3つの事項に整理させていただきました。
1つ目といたしましては、学術情報基盤の整備・高度化についてでございます。その中に大きく3つのカテゴリーの御意見がございまして、1つ目は、全国規模、あるいは大学等の学術情報基盤について、整備・高度化が必要ではないかということでございます。今後の研究基盤として、全国的な学術ネットワーク(SINET)、あるいは最先端の計算資源のみならず、大学等における情報基盤の整備・高度化が必要ではないかということでありまして、例えば、新型コロナウイルスにより様々な活動が制限される中で、教育・研究の継続にSINETは非常に重要な役割を果たしてきております。今後もその強靭化が必要であって、仮に何か障害が生じた場合にも、情報共有をしっかりして取り組んでいく必要性の御指摘や、あるいは、大学の情報システム・ネットワークの整備・維持に向けた財源の問題の御指摘、あるいはそういった最新の大学の情報基盤の設備、人材・知識、業務を共有して、地域ブロック化による強化が必要ではないか、そのような御意見を頂いてございます。
2つ目といたしましては、在宅の情報環境の点でございます。これは、研究者の方々それぞれについて状況が様々な中で、研究者の方が在宅でも研究を行うときに、大学、あるいは研究機関の各種情報システムにスムーズにアクセスできる環境の整備が必要ではないかということで、幾つか御意見を頂いております。
3点目といたしましては、オンラインコミュニケーションに関する御意見もございました。オンラインコミュニケーションに関しては、様々なメリットも指摘されておりますが、まだ課題もいろいろとあるような状況でございます。その中で、高い安全性とユーザビリティーを両立させたオンラインコミュニケーションツールの開発が重要な課題ではないかということで、非常に機密性の高いものについては国産で行うべきではないかとか、あるいは国産にこだわる必要もないのではないかとか、そういった御意見がございました。
2つ目の大きな意見のまとまりといたしましては、研究についてデジタルトランスフォーメーションを推進していくべきではないかという御意見でございます。
その中に幾つかございまして、1つ目は、研究のフロー自体、これをできる限りデジタルトランスフォーメーションを進めまして、在宅等、様々な場所からデジタルでアクセスすることで、いろんな環境での研究がスムーズに進むプラットフォームを作っていくべきではないかという御意見がございました。これに関しましては、研究フローの考え方等につきまして、学術会議の方でも議論が進められております。参考資料4でございますが、特にそのうちの5ページ、それから、それを支援するシステムとして6ページといったところに研究フローの考え方等も整理されておりますので、御議論の際の参考にしていただければありがたく存じます。
戻りまして資料4-1の2ページでございますが、研究のデジタルトランスフォーメーションの推進の中の2つ目の大きな御意見といたしましては、大学図書館、あるいはジャーナル等に関する御意見もございました。大学図書館のデジタル化、あるいは最近注目を浴びておりますプレプリントへの対応をしっかりと進めていくべきではないかといった御意見でございます。
3つ目といたしましては、研究のスマート化についてということで、AIやロボット技術によるラボオートメーション、あるいは情報システムを活用した研究環境の構築を進める、こういったことが重要ではないかということで、そのためのAI、ロボティクス、ソフトウエア等の研究を進めるべきではないかという御意見がございました。さらにその関連で3ページでございますけれども、そういった新しい取組を推奨する仕組みの必要性についても御指摘がありました。また、こうしたラボオートメーション、あるいは、データを基盤とする新しいスタイルの研究を進めていく上で基盤となるデータの整備が重要ということでありますとか、あるいは活用方法等に関するガイドラインの必要性についても御意見を頂いたところでございます。
3番目の大きなまとまりといたしましては、ポスト・コロナ時代に向けた情報科学技術の展開ということでございます。
1つ目は、新型コロナウイルス感染症の流行への対応に関しまして、現在ももう既に様々なデータ解析、あるいは感染経路の推定、論文解析、いろいろな分野で情報科学技術を活用した取組が進んでおりますが、こうしたことをしっかりと今後も進めていくべきだという御意見がございました。
また、もう一つ、これは文部科学省にとりましても大きな課題でございますが、日本全体にとりましても、子供たちの教育に対する情報科学技術の貢献が大きな課題になっているところでございます。
2つ目のまとまりといたしまして、教育への取組についてということで、遠隔教育支援のために様々な情報科学技術の開発というものが必要なのではないか。高臨場感通信技術、あるいはAR・VR講義、遠隔臨床実習技術等、様々な御提案がございました。さらに、遠隔講義等を通じて蓄積が可能な関連データについてもしっかりと蓄積を行って活用をしていくべきであるという御意見、さらには、こうした取組に対するサポート人材の必要性、重要性についても御意見を頂いたところでございます。
最後にその他でございますが、先ほどのまとまり以外の部分といたしましては、今回の新型コロナウイルス対応の関連の様々な資料データを国全体のデジタル記録として残して、今後のために備えていくべきではないかというような御意見、さらには、今回のコロナ対応でも行われておりますが、実践的な研究と人材育成、これを組み合わせた仕組みを構築する必要があるのではないかということについても御意見を頂いたところでございます。
資料4-1につきましては、以上でございます。
続きまして、資料4-2を御覧いただきたいと思います。先ほど資料4-1は、情報委員会の先生方から頂いた御意見をまとめたものでございますが、別途、文部科学省科学技術・学術審議会の学術分科会の方でも、学術全体の観点からポスト・コロナ時代に向けた検討を行ってございます。その中にも、やはり情報科学技術関係が含まれており、資料4-2にエッセンスをまとめておりますので御紹介をさせていただきたいと思います。
まず、データの利活用関係について、様々な御意見がございました。例えば医療データ等の共有が進んでいないのでこれを進めるべきだ、また様々な分野のデータの連携が重要である、さらにはNIIの研究データ基盤の整備が必要だ、このようなデータの利活用に関する御意見を頂いております。さらに、統合的なデータ基盤の必要性、それから人文系も含めた研究資源のデジタル化の必要性、プレプリント、あるいはデータの公表・公開に関する質の保証の問題についても御指摘が出ております。
続きまして、リモート環境、あるいはネットワークの基盤関係でも幾つか御意見が出ております。
1つは、リモート等で教育や研究を実施できる環境は非常に重要なので、引き続き国のサポートの上で整備をしていくべきだという点。それから、共同利用・共同研究拠点、あるいは共同利用機関における共同研究に関して、集まって実験、観測を行うということが難しい中でどうリモートを活用していくかが課題であるというような御議論もございました。また、知識集約型社会を目指す、日本をスマート・アイランド化していくということが重要であるとして、そのためにSINETを国の基盤インフラとして活用するという御指摘、それから、その運用を行っております国立情報学研究所につきましては、現在は共同利用機関法人の一研究所でございますが、これを独立した国直轄の研究所とする等の体制強化に取り組むべきではないかというような御意見もございました。さらには、信頼性のあるデータが社会で共有され、多くの関係者が自由に使えるということが重要であり、そのための個人情報保護、データガバナンスのルールの整備、あるいは使えるデータの整備が重要ではないかというような御意見もございました。また、国際学会、国際共同研究におけるオンラインでの海外とのやり取りに関するメリットや負担の問題、それから、オンラインでの教育・研究について、人文科学、社会科学の研究者も積極的に活用すべきだという御指摘、また、SINETのみならず、SINET周辺のネットワーク環境の強化の必要性、さらには、大学、省庁のデジタルトランスフォーメーションを推進することは研究時間を増やすことにもつながるというような御意見もあったということで御紹介をさせていただきたいと思います。
以上が、これまで私どもで行わせていただきましたアンケート調査の結果、それから、学術分科会におきまして議論が行われた情報関係の御議論の概要でございますが、本日の御議論の御参考として幾つか資料を用意させていただいておりますので、それも簡単に御紹介をさせていただきます。
まず、参考資料1と参考資料2でございます。これにつきましては、文部科学省の科学官や学術調査官の皆様に、今年の5月にコロナウイルスの感染拡大による学術研究への影響等についてアンケート調査を行った結果をまとめたものでございます。
参考資料1がその概要でございまして、そのうちの情報に関係する部分について、黄色で網かけをさせていただいているものでございます。
参考資料2の方は、アンケート調査の結果の本体でございます。
続きまして、参考資料3でございますが、新型コロナウイルス感染症に係る文部科学省の取組の概要ということで、主に情報分野の関係でまとめさせていただいております。
目次の方を御覧いただきまして、1ページ目でございますが、遠隔教育・研究を支えるSINETということで、今回コロナによって様々な活動が制限される中で、教育・研究の継続にSINETが非常に重要な役割を果たすとともに、それを運営するNIIの方でも様々なサービスを提供して貢献したというところでございます。
また、2ページ目でございますが、先ほど御紹介もさせていただきましたが、スパコン「富岳」、あるいは大学・国研のHPCI、これを今回のコロナ対応のために、試行的利用の前倒し、あるいは資源の供出ということで貢献を行ってきているものの概要でございます。
さらに3ページ目につきましては、これはまだ開始されたばかりでございますけれども、理研のAIPセンターにおいても、幾つかコロナ対応の研究の方にシフトしてきているものがございます。
4ページ目以降は、情報に関連する補正予算関係の事業等を取りまとめてございます。
最後に参考資料5でございますけれども、第6期科学技術基本計画の論点(案)ということで、総合科学技術・イノベーション会議の基本計画専門調査会の第5回の資料を参考配付させていただいております。
第6期の科学技術基本計画については、現在、CSTIの方で検討が進められておりまして、その中心となっておりますのがこの基本計画専門調査会でございますけれども、現在、この論点に肉づけする形で7月中に検討の方向性を取りまとめ、その後、また各論点を検討していくということで、この夏に中間的な報告、来年の1、2月に答申というようなスケジュール感で進んでいると聞いております。この論点の中でも、今後に向けまして情報関係の技術、あるいはデジタルトランスフォーメーション、データの重要性というのが各所に記載されておりまして、我々といたしましても、こうした議論を踏まえながら進めていく必要があると考えてございます。
簡単ではございますが、以上でございます。
【西尾主査】 橋爪参事官、ありがとうございました。
それでは、今お話しいただいたうち、資料4-1の学術情報基盤関係の在り方につきまして、田浦委員から、資料5を基に説明をお願いいたします。
【田浦委員】 東京大学情報基盤センターの田浦と申します。
学術情報基盤の在り方についてということで、委員の御意見等も拝見して、皆様の考えていることと方向性に齟齬はなく、大学でこういう立場でやっている人間として、少し現場感といったところをお伝えしてお役に立てればと思っております。
広範なトピックになりますので、最初にどういうことをこれからお話しするかという予告を兼ねてサマリーをお見せしておりますが、最初に、コロナ対応関係でこの夏学期に行われていたことを御紹介したいと思います。
コロナ対応と称して授業のオンライン化が多くの大学で行われていました。そこではもちろんここの会議でも使われているようなウェブ会議システムを使って授業をやるということが多いわけですけれども、実はそれだけではなくて、それをやる以前の学習管理システム(LMS)とか、あとはデータ共有、資料配布、答案収集等を行うためにクラウドが使われていまして、具体的にはグーグルとマイクロソフトであることが多いですけれども、そういうものが大きな役割を果たしました。もちろんオンライン授業をやるために、これまであまり使ったことのない方も含めてウェブ会議システムが一気に普及したというのはありますが、それに加えて、今申し上げたような既に導入済みの教育ICTシステムが、これまでなかなか使われないという中で、今回はほとんど全ての人が使わざるを得なくなって、それが学内に普及したという側面が多いと思います。私と似た立場の方で、同様にお感じになっている方は非常に多いのではないかと思います。それで教育へのICT利用というものの底上げ、ベースが上がったという側面が1つあると思います。
ただこのウェブ会議、既存の教育ICT利用システムが普及したことを受け、今後必要な学術情報基盤という話につなげてさせていただければと思います。データ連携、そして、いろんな大学とかいろいろなクラウドに分散したデータと、高性能計算機が連携した一体的な環境が必要だと思っています。教育で必要だったことは結局、このオンライン教育で必要だったことと割と実は共通点がありまして、やはり組織をまたがっても統一的に認証ができるという基盤があることで、新しいシステムをもうその日からすぐ使えるようになるということが実現可能になりますので、そういうものをきちんと整えて、データ共有が迅速にできる環境が欠かせないと思っております。そして同様にコロナ感染拡大防止のための取り組み、研究にもこのようなデータ共有・連携は欠かせないと思います。今に始まった話ではないのですが、オンライン授業と一緒で、コロナ感染のための研究という、目の前に大きい課題があることで一つ大きなばねになるというところもありますので、そういうことを進めていければいいのではないかというのが感じているところです。これ以降、そのようなアウトラインで少しお話しさせていただきます。
まず、授業のオンライン化については、普通の教室授業よりも優れた点というのが数多く認識されています。ありがたいことに、教員よりも学生の方が肯定的という面があります。このリンクの先には慶應大学で取られたアンケートがあります。NIIで毎週あるいは隔週程度で行われているシンポジウムがあるのですが、教員と学生を比べて、学生の方が好意的という結果になっております。エグゼクティブサマリーとして、学生の方が好意的であるという意見が書かれています。
あとは、本学の方で学生がつくっているメディアがあるのですが、オンライン授業でこういういいところがあったというような話が色々とあります。もちろん実施が難しい活動もあって、それには目をつぶって、とにかく夏学期は授業がオンラインで成立すればいいということで何とか乗り切りつつあるという感じです。例えば試験のための機密性の高い会議をどうするかとか、監視・不正防止含めた試験をどうやるかとか、もちろん研究の中でたくさん止まっているものもありますし、授業の中でも、大学に来るのが必須である機材や薬品を使用する実験は当面目をつぶっているというところがあるので、これからの課題がいろいろとあると思います。
あと、大学によっても違うのかもしれませんが、最近の一番の問題点は、やはり学生が1学期後半になってくると非常にストレスを抱えていて、特に課題が非常に過多であることがストレスになっているという話が非常によく聞こえてくるようになっております。オンライン授業はいいところもあるのですが、このままオンラインだけで続けていくというのは、学生にとってのストレスも非常に過酷で、オンライン授業にまつわるストレスというよりも、全く大学に来られないことのストレスという方が正しいと思うのですが、今後、ベースアップが図られた教育のICT利用により、オンライン授業はやっぱり駄目だという話になってしまい、全てが元に戻ってしまわないように努力をし続ける必要があると思っております。
大学によっても違うと思いますが、来学期は多かれ少なかれ対面授業とオンライン授業の混合になるのではないかと思います。つまり、学生のストレス等の問題があって全てがオンラインということはあり得ず、対面授業とオンライン授業が混ざっていくというのをうまくデザインしていかないといけないと思います。逆に、この夏学期に学生が経験しているような、自宅にずっといなくてはいけない、大学に一切来られないというストレスはないと期待した上で、対面授業とオンライン授業の両方を受けて果たしてどちらがいいのかという、そういうことを問われる時期になるのではないかと思っています。これがよくないということになると、やはり全部元に戻そうというような話にもなりかねないため、来学期というのは非常に頑張りどころ、今学期みたいにとにかく授業ができればいいというのよりも1段ハードルが上がると思っています。そのため、オンラインであるゆえの利点、とにかく授業ができればいいという以上の利点を拡大させて実感してもらうというようなことが必要な時期になっていくと思っております。
情報基盤の話に戻りますけども、使われている情報基盤は、もう皆様御存じのとおりのもので、1つにはウェブ会議があります。それから、最初に申し上げたのですが、それ以上に大事だったのは、共有ストレージのサービスです。他に、学習管理システム、共有ストレージとLMSというのは多少かぶるのですが、一応分けて書いております。
学生ないし大学の人にしか見られないところにあるLMSや共有ストレージ上に安全に入れる人だけが入ってこられる部屋を作るというのがオンライン授業の基本になっているわけですね。そのため、ウェブ会議だけではいけないということです。それでは結局、何が必要だったのかというと、ITシステムとしては、不特定多数で組織内限定での安全なデータ共有が必要です。授業のZoom URLを通知するとか、録画の提供をするとか、試験問題を配付するとか、答案を回収するとか、こういうものをどこにいてもできて、さらに権利のない人にアクセスさせないという機能を提供しているのは実はLMSであり、場合によりグーグル、マイクロソフトのクラウドであるということです。
ただ、単にデータが共有できればいい、ただサーバーがあればいいという単純な話ではなく、実際に大学で一斉にみんなが使おうとすると、色々なところで負荷の問題が起きるということも明らかになっており、色々なところでLMSに負荷が集中したときの話が問題になっています。そのため、やはり色々なところでパブリッククラウド頼りであることが鮮明になってきたと思います。月曜や試験時等のある時間帯に一斉にアクセスが集中したときに講義録画等の大量データをさばける基盤が必要になります。
ここからはもう少し一般的な話ですけれども、これからの情報基盤に必要なことは、授業における利用や研究も含め、やはりデータ中心の基盤ということだと思っています。それは単に高性能の計算機ということではなくて、これからは巨大なデータをホストするようなプロジェクトを長い間ホストするというようなことになり、今までのように年ごとに申請書を書いて、研究提案を行ってというところとそぐわない部分があります。また、組織間にまたがったデータの共有を非常に迅速に行えることも重要です。グーグルのクラウドで少し設定すれば、特定の人とデータを共有するということはできるわけですけれども、それに匹敵する使い心地で、なおかつ高性能な計算基盤とシームレスに接続でき、さらに共有の設定を行うだけで色々な人にデータを提供することができるという基盤がこれから必要だと思っています。
そのときに、このような基盤を一から作ると必要はないということをお話したいと思います。例えばNIIだったら学認やGakuNin RDM等、大学間で共通の認証基盤を使ってデータを共有できるシステムが作られつつあります。それから、この後少し紹介させていただきますけれども、それにある程度の高性能な計算環境をつけたクラウド型の情報環境が作られつつあります。さらに、共同利用・共同研究拠点(JHPCN)という枠組みで、これまで大学の基盤を広くそのコミュニティーに提供してきた実績があります。学認、GakuNin RDM等については御存じの方も多いと思いますので、少しmdxというものについても御紹介させていただきたいと思います。
これは、大学に設置されるものですが、これまでのものと違い、クラウド的な使われ方を強く意識しております。共通の物理的な基盤の上に、ネットワーク的にもストレージ的にもそれぞれのプロジェクトに隔離されて他のユーザーから間違ってアクセスされるというような心配もない仮想プラットフォームを切り出すことができます。さらに色々な連携を想定して、データを公開するための共有ストレージや、それを通してほかのシステムからアクセスできる環境を作ろうとしています。特に、学よりも産の方にたくさんのデータがあると思いますので、例えばコロナ関係であれば、人の移動のデータ等をここに預け、それを研究のために使ってもいいという連携が起きるための基盤にしていけたらいいと思っております。
これら先行中のエフォートに、場合によってパブリックなクラウド等も組み合わせて、セキュアで柔軟なデータ共有と、これまでも多々整備されている高性能計算機との連携を持続的に提供するというのがこれからの姿だと思っています。方向性としては非常にある意味当たり前なのですが、持続的に提供するには、やはり色々と問題があります。例えば、多くが米国パブリッククラウドベンダー頼りになってしまいます。オンプレミスではすぐにスケールさせることがなかなか難しいというような課題も明らかになり、クラウドを使うという方向性はほとんど必須だと思うのですが、そのときにやはりそれが全て米国製でいいのかというところは問題だと思います。そのため、強力なパブリッククラウドベンダーというのが国内に育ってくれる、あるいは、こういう機会を通して育てることができるとか、そういうクラウドの上にスケーラブルな作り込みのあるソフトを作れるソフトウエアベンダーが必要です。また、大学の側は大学の側で、現在、そういうことは多分に教員が対応しているというのが現実ですので、そういうことができるシニアな技術スタッフの人材育成、人材の強化、底上げが必要であるところが課題と思っています。
【西尾主査】 田浦先生、貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明について質問がありましたら手を挙げていただければと思います。ただし、先ほどの資料4-1、4-2を含めた質問の部分は後で行いますので、これからは田浦先生のお話に限定した御質問等があれば、頂ければと思います。
八木先生、どうぞ。
【八木委員】 大阪大学の八木でございます。
ありがとうございました。私も自分の周りを見ていて、大学等における教育において大きく変革が起きようとしているというのをすごく感じているので、非常に参考になったと思っております。ただ、今後このようなことが進んでいく中で、今から申し上げることの議論はどのような形で進んでいるかぜひ2点お聞きしたいのですが、まず、本日の話は、基本情報システムの話だったと思いますが、実際にそれを運用していこうとしますと、まずはその教材を含めて知財の問題があります。今年は著作権者への補償金無しでコンテンツの活用ができましたけれども、今後どのような方向で考えておられるのかということ。クラウドになると、書籍だけでなく、映像もそうですし、ありとあらゆるものが関係してきます。
それから2つ目は、個人情報の問題です。遠隔でやるということは、個人情報がデータとして流れ、それを実際に撮りためるということになってくると、その個人情報の扱いの問題が出てくるわけです。それから、授業を録画するとなりますと、それもやはりプライバシーの問題が生まれてくる。そういったところの2点が、実際には運用を考えていくと非常に重要になってきて、こういうシステム上でもそういうのがうまく流れるように作り込まれていると非常に有効かなと思いますが、その点、いかがでしょうか。
【西尾主査】 田浦先生、お願いします。
【田浦委員】 ありがとうございます。
まず、授業で使用する、例えば教材や講義の録画について、その先を見据えた議論が今きちんとされているかというと、少なくとも私の周りではそこまではされていないと思います。今は、基本は講義の録画を本来見られるはずの、例えばそのクラスの学生に見せるとか、そういうことがとにかくできることが、まず学生にとってはいいことであろうということです。それを更に先に進めるときにどこまで進めればいいかというポリシーの議論があると思うのですが、その点については、今このオンライン授業というコンテキストで何か一定の答えが出ているということではないと思っています。基盤としては、途中でも少し申し上げたのですが、大学の中でも、例えばクラスや学科、学部等の組織の固まりがありますから、そういう属性を使って、柔軟にここまでの範囲はオーケーとか、場合によっては、それは学外の他の大学のこのグループにはオーケーというような、柔軟なデータの共有の仕組みが整うことが大事かと思っています。そのポリシーに関しては、私の知る範囲ではこれが答えだというのはありません。
【八木委員】 ぜひそのときにお考えになっていただきたいのが、トップダウンで作られるポリシーだけでなく、やはり利用する学生さんや教員の同意をどのような形で取って進めていくかということを意識的に考えた方が非常に安全で透明性があって使いやすいものになるかと思うので、ぜひ進められる上では御検討いただけると良いと思います。
【田浦委員】 ありがとうございます。
【西尾主査】 今、八木先生からデータ、コンテンツの版権や知財の問題、それともう一方はプライバシーについての御質問がありました。これについては、田浦先生の方から、現時点で決定的な方針等があるわけではなくて、これからコンセンサスを取っていくということでした。八木先生からは、更にコンセンサスを得ていくプロセス自体も、今後、相当大事になるのではないかという御指摘がございまして、これは我々共通した課題だと思っております。また今後いろいろ議論を深めていければと思っております。
それでは、梶田先生、どうぞ。
【梶田委員】 京都大学の梶田です。
オンライン授業に関しては、現在進行形の状況なのでなかなか大変なところですが、国際的に見て、今の日本のオンライン授業の現状というのは、田浦先生の目から見ていかがでしょうか。平均でしょうか、それとも平均よりうまくやっているという状況だと思われますでしょうか。簡単で結構ですので、見識をお伺いできればと思います。
【田浦委員】 平均というものをきちんとお答えできるほどのサンプル数を私は見ていないので少し分からないのですが、NIIのシンポジウム等を拝見している感じですと、やはりハーバード大学のような進んだところでは、こういうことが起きる前からある程度一部の授業がオンラインでやられてきているので、一部の本当に進んだ大学については、今回の騒ぎの前からある程度準備ができていたというところかと思います。そのため、そのようなところと比べると、もちろんかなりビハインドはしていると思うのですが、今回、とにかく遠隔でやらないと授業ができなくなるということで、急遽整えました。LMSがスケールするのに苦労するとか、そういうところを乗り越えたところでは、いわゆる国際的なレベルに達しているといいますか、これ以上とてつもなく優れたやり方がたった今、色々なところで行われているわけではないと思っています。
【梶田委員】 ありがとうございます。
最後の資料で、スケールさせることもままならない業者がLMSを納入・運営しているというのが非常にショッキングなのですが、つまりできているところとできていないところの格差が一気に広がるのではないかという懸念もありますが、いかがでしょうか。
【田浦委員】 そうですね。ここではままならないという結構過激な言い方はしていますが、全くどうしようもない、動きもしないというものでもありませんし、あとは、その問題が出るのは比較的大きい大学だと思いますので、全体の底上げをする、こういう業者がいないので日本中ができなくなってしまうというところでもないのかと思っています。お答えになっているかどうか分かりませんが。
【梶田委員】 ありがとうございました。
【西尾主査】 そうしましたらもうお一人だけ御質問いただきまして、さらに田浦先生に質問等ありましたら、総合討論の中でお願いできればと思います。
井上先生、どうぞ。
【井上委員】 井上でございます。
他人の著作物を教材にして授業の中で配信する場合の扱いについて、著作権法35条により授業目的で必要な範囲であれば権利制限がなされますが、無償でなく補償金を支払うことになっています。補償金は、学生1人当たり1年幾らとする定額制が基本になっており、御承知のとおり令和2年度については、無償になりました。来年度からは、いよいよ補償金を支払うということで、今、教育機関と権利者側とで交渉しているところです。権利者に支払った補償金を個々の権利者に分配する場面で、利用実績をもとに精度の高い分配にしたいという要請があります。例えばLMSに授業で使用した著作物の情報が記録として残っていれば、デジタルフォレンジックのような技術を使ってデータを集めることができるのではないかと思います。悉皆調査となるとさすがにコストがかかると思いますけれども、サンプルとなる大学について、LMSに載っている情報、資料を調べるといったことは可能なのでしょうか。
【田浦委員】 ありがとうございます。
まず、御指摘のとおり今年は補償金が無料になっているということで、来年度からの適正価格を決めるために、どの程度利用がされたかの調査が非常に大事なところだと思っています。今おっしゃっていただいた御指摘については、この後大いに参考にさせていただきたいのですが、まずは、ベースとしては、各教員にどの程度使ったか聞き取りするのがべーシックな方法としてあるのかと思っていました。ただ、もし何かサンプルデータの解析等でそういうことが比較的簡単にできるようになっているのであれば、そのようなやり方も検討したいと思いました。
【井上委員】 そうですね。今後、永続的に利用のデータを取っていく必要があると思いますので、補償金の一部を使って、そういった技術を開発するということも可能かと思いました。
【田浦委員】 ありがとうございます。
【橋爪参事官】 事務局でございます。
著作権の状況については、今、情報を持ち合わせていないのですが、井上先生からの御意見等も含めて、著作権課とも状況を確認しまして、必要でありましたら、また井上先生の方に御説明させていただきたいと思います。
【西尾主査】 ありがとうございます。
また、井上先生がおっしゃられたことに関しましては、田浦先生の方でも御検討いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、田浦先生の御説明に対しての質問につきましては、一旦ここで閉じさせていただきます。先ほど申しましたように、田浦先生への御質問等があれば、また総合討議の中でおっしゃっていただければと思います。これからは、総合討議ということで、先ほど事務局から説明のありました論点整理(案)も参考に、御意見を頂ければと思います。橋爪参事官の方からは資料4-1、資料4-2をベースに御説明いただきました。例えば、資料4-2は学術分科会で出ている意見ではございますけれども、学術分科会からは、情報に関することは情報委員会でしっかりと深掘りの議論をするようにという要請もございましたので、資料4-2のことも含めて、いろいろ御意見等頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
資料4-1で論点の整理をしていただいているのですが、この内容は、章立てについても、様々な観点から内容的にはほぼ網羅されているようには思うのですが、何か抜けていることがあれば御指摘下さい。今年は来年度の概算要求期限が9月の末でございますので、何とか9月のできるだけ早い時期までにこの論点整理をベースにした取りまとめをしっかりして、来年度の概算要求等に反映するということを考えていきたいと思っております。その観点から、この論点でまとめていただいていることに対して、どういう形で重要性をより強くアピールするのかとか、どういう形でインパクトを持って情報委員会から説明をしていくのかとか、そういうことを御考慮いただいて御発言いただきますと、今後の取りまとめが非常に有意義なものになっていくと思いますので、よろしくお願いいたします。
何か御意見等はございますでしょうか。
瀧先生、どうぞ。
【瀧委員】 瀧でございます。
日本の情報技術を教育等に生かすところが今回、非常に後押しされて進んできたわけですけれども、先ほどの意見にもありましたが、国際的に見ると、やはり若干教育分野に導入するところは遅れてきたというのがありますので、諸外国と比較して、教育分野では更に強力に進めることが重要ではないかというようなところを強調していただけるといいのではないかと思います。
【西尾主査】 ありがとうございました。
今、瀧先生からおっしゃっていただいたのは、我々が今回のコロナ禍を経験した中で、やはり教育の問題に関しても情報技術、デジタル技術が解決していく唯一の方法とも言えるものだったと認識しておりますので、そのことの記述をはっきりとしていくことを今後考えていきます。どうもありがとうございました。
ほかにございますか。
安浦先生、どうぞ。
【安浦委員】 今の瀧先生のお話に関係するわけですけれど、既に資料4-1の方には書いていただいてはいるのですが、基本的に今までやっていた教育をデジタル技術で置き換えるという話ではなくて、デジタル化することによって、今まで教育の中で取れなかった様々な情報が自動的に取れるようになり、それによって、教育自身をもっと科学的に改善したり学習法を変えていったり、教育する側も教育を受ける側も変わっていく、そういう問題であって、単に情報科学技術を教育現場に入れるということが目的化しては意味がないのではないかと思います。教育・学習データをどう活用して、教育自身を本質的にいかに変えていくかという問題として捉えるべきだと思います。教育というのは、ある意味で社会全体のソフトウエアですから、社会全体のソフトウエアを変えていくということは、社会自身を変えていく、ポスト・コロナ社会どうするかという問題とかぶっている話なので、やはり表現としては、そこのところをよく他分野の方にも分かるように記述していくことが大事ではないかと思います。
【西尾主査】 安浦先生、本当にすばらしい御意見をありがとうございました。その点、ポスト・コロナにおける教育のみならず、社会全体の問題としてきっちり捉えて記述するようにしていきたいと思います。
喜連川先生、どうぞ。それから奥野先生に行きます。
【喜連川主査代理】 先ほどの井上先生の御意見については、どうしてSARTRASがイエスと言ったかというと、そのデータを今回出しますということで折り合いをつけたということです。これは遠隔授業だからできると。そういう裏話がありますので、ちょっとお調べいただくとその状況が御理解されると思います。
先ほど西尾先生がおっしゃられた資料4-2の学術分科会の意見の方には、データ利用関連ということで、非常にたくさんの御指摘が固まりとして取り上げられているのですが、資料4-1の論点案の方には、例えば2の(3)やそれ以外のところにもデータの記述もたくさんあるのですが、固まりがあまり見えません。これはまとめ方として必ずしも出しておられないという事情なのかどうか、まず文科省サイドにお伺いしたいです。
【橋爪参事官】 事務局ですけれども、今の資料4-1につきましては、先生方から頂いた御意見を、項目についてある程度便宜的に並べているようなところもありますので、今後の御議論を踏まえて、こうした柱立てにつきましても、まとめ方を変えていきたいと思っております。今回は、なるべく頂いた意見を網羅的に提示させていただきました。結論といたしまして、まとめ方も今後議論して変えていきたいと思っております。
【喜連川主査代理】 今回も参考資料4のところに、学術会議のまとめをつけていただきましたが、これはオープンサイエンスの深化と書いてあるのですが、内容は全部データのことが書かれています。サイエンスがデータと同化していくということが5期の終わりぐらいから、6期ではまるごとそのテーマが主役になってくる中で、そこをフィーチャリングすることは、時代感としては不可欠という気がいたします。
その中で、先ほど八木先生からいわゆる知財のことと個人情報の話、それから先ほどの安浦先生のお話でも、学生のデータということで、結局全部そこに行き着いています。そういう観点から言いますと、データ基盤を国家の中でどうやって作るのかということで、2020年からカットオーバーするSINET5の次のバージョンは、もうハードウエアネットワークというよりも、その上のデータ基盤というのがかなりの割合を占めるという位置付けです。マスタープランのお認めを頂いているということもありますので、それはNIIが考えているというよりも、皆様からの御希望でそうなっていますので、ポスト・コロナということではそこのまとめはぜひしっかりとしていただくことが重要だろうと思います。
2の(3)にはポリシーやガバナンス体制の整備云々の記載がありますが、昔は学術情報委員会で議論していたものの、現在はその委員会がなくなっており、文科省としてここをどうやるのかというのが若干手薄になっているのではないかと思います。特に、学術分科会からデータ関係の意見が多く出ている中で、放っておかれることを非常に心配しています。
今回、田浦先生から御紹介いただいたmdxは、いわゆる計算機のスパコンよりもこのようなデータ駆動型の基盤がはるかに重要になってくる、少なくともそれと同程度のプレゼンスは出てくるだろうというところはほとんどの研究者が考えており、ここががさっと抜け落ちないような文部科学省としての体制が必要です。さらに、ここ1か月間いわゆるランセットの問題が出てきまして、別の国家がそれを基にしながら国家のポリシーを決めるということまで発展しています。ですから、データの信憑性も含めたどういう基盤を作るのかを真剣に議論する必要があるだろうということがまず第1点目です。
もう一点だけ申し上げておきます。我々の方でシンポジウムを行う中で、やはり大きな大学さんは結構ですよねというムードが漂ってきます。どういうことかというと、情報をサポートするような専用の部隊が何もない大学も山のようにあります。この機に大学の事務機構をいかにIT的にエンパワーするのかという、一番足元のところが今後大変重要になってくる気がします。CSTI等は、デジタル化、デジタル化と叫んでいるわけですが、未だ我が国では、ファクスで送って数を間違えたというようなことが起こる中で、大学等が持っているIT基盤というものも相当時代遅れのものになっており、それが全体のスピード感をぐっと遅くしているという可能性があります。田浦先生から、パブリッククラウドがパワーを持ったという御発言がありましたけれども、小学校、中学校、高校をターゲットに色々お話を伺っていますと、教育委員会が非常に強いガバナンスを入れているので、LG-WAN経由で商用パブリッククラウドに繋がせてもらえないということを色々なところから聞いています。しっかりしたドメスティックなものを実は作っていかなければいけないということを示唆しているようなところもありまして、もう少し広い目で見て、学術の基盤、あるいは教育の基盤というものをどう考えるかというときに、研究とか教育サイドというよりも、サポート側、事務サイド側の基盤というものについてもしっかりとした記述があるといいのではないかと思って発言させていただきました。
以上です。
【西尾主査】 本当に貴重なご意見ばかりでございました。今のところ論点案には、喜連川先生がおっしゃっているようにデータに関する記述が手薄であると思います。むしろ学術分科会の他の学術分野の委員からデータの重要性を非常に強く言っていただいているということですので、今回の提言の中でどのように明確に位置付けていくかということを詰めていきたいと思います。
また、最後におっしゃったことも、コロナ禍のことを踏まえて日本の社会全体をどうしていくかというときに、基盤として非常に大事な課題だと思っております。概算要求でも結構重要になると思いますので、事務局にはよろしくお願いいたします。喜連川先生、ありがとうございました。
次、奥野先生、どうぞ。
【奥野委員】 京大の奥野です。
安浦先生が先ほどおっしゃったこととかなり似ているのですが、そもそも情報委員会で情報基盤等を議論していくというところは当然ですが、コロナ禍で、むしろニーズというのがかなり明確になってきています。教育そのものに情報基盤を入れていくというところも分かるのですが、そもそも例えば単位の出し方がどうだとか、ずっとeラーニングをしていいのかとか、そういうところが、これまで対面型の授業をやっている人間からするとやはり違和感があります。そのような中で、どういうレベルで学力を保って、あるいは対面型授業以上の効果も生んで、また研究においても在宅の状態で通常の研究よりもパフォーマンスを上げていったりとか、実際に情報基盤をいわゆるデータドリブンしていく、データ駆動型に変えていく上で、本当にそれが効果を生むかどうかということが非常に重要になってくるのではないかと思います。効果云々のためにルールを変えていく、教育のやり方も変えていくというような部分を本来考えていくべきだと思っていまして、そのようなことを考えていく立ち位置の委員会が、そもそも情報委員会なのか、あるいは別の組織が急遽必要になるのか、そのような観点でやはり考える必要があるだろうと思います。
今、ある意味幸いにして色々な意味でテストができる状況になっていると思います。あるいはコロナがなければ実際に情報基盤を入れていったとしても、大きく教育のやり方、研究のやり方を変えようというところにはならなかったのが、無理に強いられるような状況になっているので、そこをポジティブに考えて、検討していきながら仕組みを一気に入れていくことをしていかなければ、情報委員会で今検討している基盤というものも、本当の意味で次の社会をつくっていくところに行かないのではないかと思いました。
【西尾主査】 ありがとうございました。先ほどの安浦先生の御意見を更に補完していただきました。その視点は非常に大事だと思っておりますので、今後の新しい社会を構築する上での重要な意見として、今後反映していきたいと思っています。
栗原先生、どうぞ。
【栗原委員】 学術情報基盤の整備・高度化については、SINETをはじめとして、重要性はもちろんここに書いてあるとおりだと思うのですけれども、研究の現場から違う観点のコメントを1つさせていただきたいと思います。研究のスマート化についてです。
今回、このような不自由な状況で、研究のリモート化や測定の自動化を推進しようという流れができているのは、研究の推進に非常に重要と考えています。特に、今後データが重要になるときに、リモート化により、誰がやっても同じようなデータが取れるようになるということは、データの質保証には非常に良い環境になると思います。私は計測が専門で、装置を製作しコンピューターで制御しているのですが、今使っているプログラムは、LabVIEWというグラフィック言語でプログラムする外国製のプログラムになります。自由度が非常に高く、プログラム言語等を知らない人でも使えるものです。ただ、今後広範囲にリモート化や自動化の活動をするときに、やはり国産の基本ソフトウエアの状況を確認いただいて、学術界で良い形で使えるものがあるのかなど状況を見ることも重要ではないかと思っています。これは、ロボット技術等の開発にも通じるところだと思います。
それから、最後にもう一点、教育への取組ですが、知人の小学校の先生に聞くと、小学校でも遠隔授業が少しずつ始まっています。国立情報学研究所がなさっているシンポジウムについては大変感謝との言葉を聞いております。教育上の効果として、普通の授業をやること以外に、違うタイプの生徒さんが非常に活発になる等、多様な教育にこのような違うアプローチが非常に良いと伝え聞いています。情報技術を使った教育は、例えば体操、美術、音楽だったりに並ぶのか分かりませんが、発言しなかった生徒がうまく発言できたりとも聞きますので、安浦先生が言われたのとは少し違う形の教育ツールとして低学年、基礎教育への活用というのも今後、考えていけるといいのではないかと思います。
以上2点でございます。
【西尾主査】 ありがとうございました。最初の方は、データを基にしたプログラムとしてどういうものがあるのかという情報共有を国レベルでやるべきではないかという、そういうことでよろしいですか。
【栗原委員】 計測では、今はもうコンピューターで制御するのは常識なのですが、自分たちで開発する計測技術はプログラミングからやらないといけないわけです。そのため、今後よりリモート化や自動化が進むということになると国内での開発が重要かと思いますし、日本の多くの計測装置はプログラムが少し弱いのではという評価も聞きますので、そのような点に通じるところがあるかもしれませんので、この機会にお伝えできたらと思いました。
【西尾主査】 分かりました。栗原先生がおっしゃられたことも、安浦先生のおっしゃっていた教育プロセスのサイエンスとつながると思っていますが、安浦先生、いかがでしょうか。
【安浦委員】 ありがとうございます。安浦です。
まさにおっしゃるとおりで、教育の過程というのは、小学校の低学年から大学、大学院、あるいは社会人教育までかなりスペクトラムが広いわけで、その対象となる人たちに対しての使い方というのは非常に多様なものがあるわけです。そういう意味で、私が申し上げたのは、どちらかというと大学教育の一般的な部分ではあったわけですけど、今、栗原先生がおっしゃったような側面というのは、当然、初等中等教育、あるいは大学や社会人教育でも、障害を持った方々への教育に関してはやはり情報ツールを使うと普通ではできないことができたりするわけです。特にそれ自身がいいかどうかというのは社会がまた判断していくとは思うのですが、言語の壁というのは、今、人工知能で大きく破られようとしています。その言語の壁を低くすることによって、例えば先ほど喜連川先生がおっしゃったような事務系統を強くするという問題も含めて、情報技術の進歩というのは、組織自身も変えますし、教育の手法も変えます。社会のありとあらゆるものを根底から今までの常識にとらわれずにこうあるべきだという社会像を先に描いて、それにどの技術がどう使えて、足りない部分は何で、どう埋めていくかという、そういうロジックで、国レベルで情報の政策を考えていく必要があるのではないかということでございます。
【西尾主査】 ありがとうございます。
若目田委員、いかがでしょうか。
【若目田委員】 先ほどの喜連川先生の御指摘にも通じるデータ基盤の利用価値の向上についてコメントさせていただきます。
先ほどの学術分科会の資料でも、新型コロナウイルス感染症対策に関するデータ共有が進んでいないといった課題が掲げられていました。計算パワー、SINET、さらにリモートによる研究環境が整備されれば、当然次はデータそのものの整備が課題となると思いますが、民間の現状から見ても、「データ共有」や「データ流通」を語ることは容易ですが、それを実現するの非常に難しいと痛感しています。なぜかといえば、産業データは企業秘密として外にだしにくいという課題や、個人情報の第三者提供の取扱いの課題だと思います。一次取得者、データコントローラーに誰がなるかといった課題も含めて、かなり上流からあらかじめ検討しておかないとそう簡単にデータの共有は進まないと理解をしております。
そういった中で押さえておくべき環境の変化としては、今年改正された個人情報保護法の次の法改正です。個⼈情報保護法、⾏政機関個⼈情報保護法、そして今回の議論に関係の深い独⽴⾏政法⼈等個⼈情報保護法の3本の法律を1本の法律に統合していくという議論が進んでおります。経団連も検討に参加しておりますが、国立大学法人や国立研究開発法人は民間と統一のルールにしていくという方針が示されており、いわゆる学術研究に係る適用除外についても一律では無く民間同様の考え方を適用するといった整理がなされようとしておりますが、このような動きに対してはこの学術分野における検討を踏まえ、方向性の提示や要求をしていくべきだと思います。もう一つは、今回の新型コロナウイルス感染症対策を契機に、公衆衛生の向上を目的とした場合の個人情報の取扱いの議論の活性化です。例外的に本人の同意なく活用できるという解釈もありますが、いざというときにどのように判断し、どうやってそのデータを収集、共有していくかといった点を、平時のうちにきちんと考えておかねばなりません。
また、事前に意見を求められた「新型コロナウイルス対応研究への情報分野の貢献」に対しては、人の動きなど公共空間の可視化に資するデータや、生産、ロジ、小売、個人消費などサプライチェーン全体のデータなどを集約した上で、デジタルツイン化や高度な分析により適切な政策判断や行動変容が可能となるよう貢献すべきと回答しました。個人の動きのトレースや消費行動の可視化をすることは先ほど八木先生からもご指摘がありましたがプライバシーの問題への対応や、学術研究に係る適用除外や、公衆衛生の向上の例外の適用の判断が求められます。これら学術研究領域のデータガバナンスや体制整備について、後追いではなく積極的に取り組んでいかなければいけないことと思っていますが、来年度以降の予算要求には、例えばデータガバナンスに関する体制整備などに関しても意識をしていくべきと思いました。
以上です。
【西尾主査】 そうしますと、今後、提言等で、今おっしゃっていただきましたように学術データや公衆衛生に関して、この委員会からこうあるべきであるとか、こういうことを望んでいきますとか、そういうことを明確に書いていくことの重要性があるということと捉えてよろしいですか。
【若目田委員】 重要なことだと理解をしております。
【西尾主査】 特に来年度に向けては、今いろいろ情報提供いただきましたことを踏まえて、この委員会からもデータの版権、知財の問題とか、そういうことに関しても我々としての要望を積極的に記述していくということを考えていきたいと思っています。
池内様、いらっしゃいますか。
【池内学術調査官】 学術調査官の池内と申します。
資料4-2のデータの利活用関係について、2件コメントさせていただければと思います。
今の田浦先生の御発言にも少し関連するかと思うのですけれども、ここで挙げられているコメントには、データをそれぞれの機関が公開するだけではなく、データを取りまとめて発信するということや連携という視点が含まれていると思われます。この点は、データを探すコストを下げるという意味でも二重研究を防ぐという観点からも非常に重要だと考えます。その場合のデータをまとめて発信する場合のターゲットについてです。まずは国内の研究者が想定されていると思うのですけれども、データの種類によっては、やはり産業界とか教育機関を含めた市民、あるいは国際共同研究とか国際発信につながるように国外の研究者も含めて議論する必要があるのではないかと思います。
もう一点、既にNIIの方では、今般の新型コロナウイルス感染症の医療関連データについて、国際連携の取りまとめの役割をしていると伺っております。こうしたデータ活用のための取りまとめや発信の役割を今回NIIが担ってくださっているように、アドホックなものやボランティア的な活動としてではなくて、恒常的な仕組みとして検討する必要があるのではないかと思います。
私からは以上です。
【西尾主査】 ありがとうございました。貴重な御意見です。喜連川先生、NIIのことが出ましたが、何かコメントはございますか。
【喜連川主査代理】 ありがとうございます。
これはG7側からコミット系のデータポータルを、特にEU中心になって立ち上げようとしているという中で、日本の方もそれを手伝って、一緒にやろうというような話が出てきています。そういう意味で、皆様御案内のように、今回のウイルスの挙動というのは非常に多様でミューテーションが著しく速いのですが、日本の中で上手に発信できていないので積極的にやろうと、AMEDと連携をしながら、池内先生から御指摘いただいたようなことのコーディネートを始めようとしている次第で、池内先生がおっしゃられましたような連携、医と情報の掛け算というような領域を積極的に頑張っていきたいと思っています。御指摘ありがとうございます。
【西尾主査】 ありがとうございました。
【池内学術調査官】 ありがとうございました。
【西尾主査】 そうしましたら、来住先生、それから引原先生という順番でお願いいたします。
【来住委員】 来住です。私は論点の方、資料4-1の教育への取組の部分に1項目ぐらい追加していただけないかと思いお話しします。
短く言うと、留学に関する項目を何か追加してはと考えています。留学というと、日本から海外に学生を送り出すという留学と、海外からの学生を日本に受け入れる留学と2通りあるのですが、両方ともこのポスト・コロナではかなり形が変わるのではと考えています。どのように変わるかというのはアイデアはないので、せめて調査を進める程度のことしかできないのかもしれませんが、明らかに変わるとは思いますので、追加していただきたいと思います。例えばですが、日本から海外への留学の場合、アメリカの大規模大学であれば、比較的早くからオンラインで留学できますよというような返事がありましたが、最近アメリカ政府が100%オンライン留学には学生ビザを出さないというような方針を立てたので、アメリカの大学から、9月からの留学は無理だと思ってくださいねという返事が来たような段階です。ほかの小さな国への留学はいまだ返事がないので、9月からできるかどうか分からない、ひょっとしたら来年も無理だよというような状況です。日本に留学生を受け入れる場合も同じような問題が考えられて、どこかの大学が頑張って100%オンライン留学できますよと言っても、外務省から入国ビザをもらえるかどうかで随分変わってくると思います。そのように本当に100%オンライン化を目指すのが正しいのか、一部分だけオンライン化するという何か新しい形が必要ではないかといった調査を始めるという項目を追加していただけないかと思います。
【西尾主査】 来住先生、最初の段階はまずは調査をするというような段階からでよろしいですね。
【来住委員】 取りあえずそうです。ですから、こういうような新しい留学の形があるとまで言い切れないので、変化するとは考えてはいます。
【西尾主査】 分かりました。これは、いわゆるメディア授業でどこまで単位が許されるのか、あるいは補習の要件としてどうなるのかという問題で、研究振興局だけではなくて、高等教育局等との連携も必要だと思いますので、事務局に預かっていただければと思います。来住先生としては、教育というような観点も含めて何か項目があればということですので、御検討いただければと思います。ありがとうございました。
引原先生、どうぞ。
【引原委員】 引原です。よろしくお願いします。
資料4-1の2ページ目の2の(2)、大学図書館・ジャーナル等についての項目について発言させていただきます。
従来から、図書館というのは学術情報のプラットフォームであったことは確かなのですけれども、今回コロナ禍で全く機能しないと言われるほどに閉館が続いたわけです。本を郵送するとか、人海戦術と言われるような対応しかできないことが多くなっていたわけです。そういうことを考えますと、これが提言に向かって項目を並べていただいているのであれば、ここは手法論を並べるのではなくて、長期を考えた方向づけというのをした方がいいのではないかと思います。その意味で、その中の手法はここから入っていくという書き方にしていくべきではないかと思います。といいますのは、図書館というのは放っておくと非常にイナーシャが大きくて、やはり元に戻ってしまう。それだけ歴史があるわけですけれども、そうなったときに、ここで書かれているようなデジタルトランスフォームに人手が回らないということが大いにあると思います。その1つの理由は、定員削減等によるボディーブローが効いてきているわけです。ですから、トランスフォームしていくための方向づけをきちんとここで書くべきであろうというのが私の意見です。実際に書籍とか実物の資料というのは重要だというのは当たり前のことですけれども、デジタル化することで、学術資料としてのデジタルツインというものがあり得ると思います。そこに意識を変えていかなければ、第2波、第3波というだけではなくて、今後何が起こるか分からない段階の中で、1つの図書館だけで全部をサポートできるような環境というのはあり得ないだろうと思います。ですから、そこが閉鎖になったら他がバックアップに回れるような制度を、日本全体として今後考えていくべきではないかと思いますので、まとめ方として御検討いただければと思います。よろしくお願いします。
【西尾主査】 それは我々がコロナ禍を経験したことから、引原先生がおっしゃったようなことの重要性を実感しているわけですので、ぜひ図書館のところできっちりと記述してまいりたいと思っています。ありがとうございました。
【引原委員】 ありがとうございました。
【西尾主査】 乾先生、どうぞ。
【乾委員】 東北大学の乾です。
1点だけ、先ほども話がありましたけれど、データ利活用の革新をしていくということが非常に重要だと思うのですけども、それを継続的にという話がございました。データの利用の革新の継続していく方法というのが非常に重要ではないかと思います。研究力の強化という意味で、あるいは科学技術分野の分析をAIで行っていくというような話は当然ございますけれども、万能な技術はなかなかないものだと思いますので、そこの継続的な革新をどうやって国としてやっていくかということが非常に重要だと思います。ですので、今そうしたことを、例えばシステムの開発のような形で書いていただいていますけれども、単に1つのシステムを開発するというのではなくて、例えばそういう専門家の組織をどこかに作っていくとか、そうした継続的な技術革新、あるいはそこに利用者も入れたような、そういうエコシステムを作っていくような意識というものを中に入れていただくといいのではないかと思います。
以上です。
【西尾主査】 データのある意味のサステナビリティーということだと思います。貴重な御意見ありがとうございました。
上田委員、どうぞ。
【上田委員】 1点、少し論点が違うのですが、資料4-1の中では、確かにポスト・コロナ、ウィズコロナという時代感における情報科学分野の取組が非常に網羅的に書かれていて、このとおりだと思います。ただ、ポスト・コロナとなったときに、教育も研究もそうだと思うのですけど、時間と空間から割と解き放たれた、そのような意味でプラスになるような色々な方策があって、その一つが喜連川先生がおっしゃったようなデータ基盤の充実という重要なファクターです。ただ一方、今一番問題となっているのは、働き方改革というような制度が、こういう時間と空間から解き放たれたような中で仕事をするときに、例えば、アメリカでオンラインの国際会議が開催されると当然こちらは深夜になります。そうすると、私の本務はNTTの研究所ですけれども、部下から参加していいかと問われるとルール上は駄目なのですね。こういうことを後ろめたくやらないといけないというのは変な状況です。海外の人といろいろディスカッションするときには当然時差があるので、何時以降は深夜勤務だというようなことは、こういう取組をやることに非常に足かせになります。まさに今のこの時代において、もう一度声を上げて、働き方改革というのをどのように考えないといけないかということは、「その他」に少し入れておいていただけますとありがたいと思います。
以上です。
【西尾主査】 分かりました。働き方改革に関することをこの情報委員会としてどういう形で入れるかというのは少し工夫が要るかと思いますが、その論点は非常に大事かと思っておりますので、考えてまいります。
福田先生、どうぞ。
【福田委員】 大阪大学の福田でございます。
私からは、先ほどの安浦先生、引原先生、上田先生等からの御指摘に関連し、一言コメントさせていただきます。
資料4-1に掲げられている論点案や、本日の会議における先生方からの御指摘は、いずれももっともでありますが、これらの論点案や御指摘の趣旨をこれからの概算要求等に結びつけていくことを展望すると、ポスト・コロナ時代における情報科学技術分野の取組の在り方を考える前段として、ポスト・コロナ時代の社会としてどのような社会を目指すべきであるのかに関する視点・視座を示すべきであろうと思われます。これまで我が国においては、様々な施策に共通する視座としてSociety5.0を目指すことが示されてきたところであります。ポスト・コロナ時代におけるSociety5.0の在り方に関し、コロナを経験した人類が、コロナの経験から得られた知見を踏まえつつ、これまで示されてきたSociety5.0の在り方をどのように見直していくべきであるのかについて論じた上で、それを受けて、情報科学技術の分野はどのように取り組んでいくべきであるのか、データを利活用した学術教育はどのようなものとすべきであるのか、産学連携はどのようなものとすべきであるのか等について系統だった筋道を示すことが簡単なりともできれば、世の中に対して意義がありましょうし、概算要求をするに当たっても有用であろうと思われます。
以上でございます。
【西尾主査】 第6期の基本計画のところでは、大きな社会のビジョンに関しては、新たなものというよりは、むしろSociety 5.0をより成熟させていくという観点で基本計画が書かれています。今回のコロナ禍を受けて、Society 5.0をさらにどういう観点で成熟させていくのかという、まずはそこをきっちりと押さえた上でということだと思います。重要な観点、どうもありがとうございます。
時間がもうそろそろ来ていますので、どうしてもという方、お一人だけということでお願いしたいのですが、よろしいでしょうか。
私の方から最後に少しだけ申し上げたいことがございます。
資料4-2に書かれてあります国立情報学研究所の抜本的強化というのは、情報学研究所で推進されている業務内容が現在の大学共同利用機関法人の一研究所という位置付けをもう超えているのではないかという御意見だと思います。現在、国立情報学研究所は情報・システム研究機構という法人の中に入っておりますけれども、この機構は遺伝研と極地研と統数研と情報学研究所で構成されています。私が今思いますのは、情報学研究所がやっておられることは、先般、学術分科会でもいろいろな意見があったように、もう全ての学術分野に深く関わってそのベースとなってきております。そういう観点から、学術分科会では、機構の中の一研究所という位置付けではなくて、全分野を網羅するという観点から、国直轄の独立した研究所とする等、体制強化が急務という意見が出ております。私はこの意見は非常に重要であり、ポスト・コロナに向けての国の学術のありようを考えるときには、情報学研究所の体制強化は非常に重要な課題だと思っております。そういう観点から、我々のこの提言書の中にもそういうことを明記していきたいと考えております。ただし、皆様方の中で、御反対の意見とか御異論がありましたら、それは真摯に受け止めて、どうするかというのは考えたいと思います。そういうことに関して何か、特段の御意見はないでしょうか。
もう時間が来ておりますので、私はこの重要性を非常に強く受け止めている、ということを話させていただきました。
それでは時間となりました。今日は様々な観点から貴重な意見を多々頂きましたことに対しまして、心より御礼申し上げます。現在の論点(案)で不足している点や新たな視点等、本日、御意見を頂きましたので、事務局で今後の論点整理を更に進めていただきまして、より充実した実りあるものとして提言書をまとめてまいりたいと思っております。
あとは事務局の方に交代させていただきます。
【出口参事官補佐】 本日はありがとうございました。御議論いただきまして、また貴重な御意見たくさん頂きまして本当にありがとうございます。
今後、ポスト・コロナ時代おける情報科学技術の取組方針に関する提言の取りまとめに向けまして、9月までに2回程度の開催を予定しております。そして、学術分科会等におけるコロナに関する同様の御意見、御議論も参考にし、連携をしながら委員の皆様の御意見を提言として取りまとめてまいりたいと思いますので、引き続きどうぞ御協力よろしくお願い申し上げます。
事務局からは以上となります。
【西尾主査】 改めて皆様方からの貴重な御意見に対しまして感謝申し上げまして、これにて閉会とさせていただきます。次回もどうかよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
【出口参事官補佐】 ありがとうございました。それではこちらでミーティングルーム閉めさていただきます。

―― 了 ――

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