情報委員会(第22回) 議事録

1.日時

令和3年12月10日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 研究開発課題の検討について
  2. その他

4.出席者

委員

安浦主査、相澤委員、井上委員、川添委員、小池委員、後藤厚宏委員、後藤吉正委員、佐古委員、田浦委員、瀧委員、塚本委員、長谷山委員、引原委員、深澤委員、星野委員、美濃委員、八木委員、若目田委員

文部科学省

池田研究振興局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、川口参事官(情報担当)、宅間計算科学技術推進室長、三宅学術基盤整備室長、黒橋科学官、竹房学術調査官、池内学術調査官

オブザーバー

青木 科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー、高島 科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー

5.議事録

【安浦主査】 おはようございます。それでは、定刻より早いですが、ほとんどメンバーがおそろいのようでございますので、科学技術・学術審議会情報委員会の第22回の会合を開催いたします。
本日もコロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインで開催することにいたしました。大分落ち着いておりますけど、まだ十分注意しようということで、今回もオンラインでございます。報道関係者の方も含め、傍聴者の方にもWebで参加いただいております。また、通信状態等に不具合が生じるなど、続行ができなくなった場合には委員会を中断する可能性がございますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。
本日は、奥野委員より御都合がつかないということで御欠席の御連絡をいただいております。また、井上委員が30分程度遅れるという御連絡をいただいております。また、オブザーバーとしまして、JSTのCRDSの青木フェロー、高島フェローに御参加をいただいております。
配付資料の確認とオンライン会議の注意事項の説明をまずは事務局からお願いします。
 
【上村専門官】 ありがとうございます。事務局でございます。それでは議事次第に基づきまして配付資料を確認させていただければと存じます。今回配付資料は、資料1が「研究開発課題の検討について」、資料2が皆様からいただいた御意見を1つにまとめさせていただいたものでございます。参考資料1は「情報分野の全体像」です。参考資料2として皆様の名簿をお配りさせていただいております。
皆様、既にダウンロードいただいている状況かとは存じますが、もし現時点でお困りのこととか不具合とかがありましたらばお知らせいただければと思いますが、いかがでしょうか。もし何かありましたら、事務局までお電話で御連絡いただければと思います。
引き続きまして、オンライン会議の注意事項を申し上げます。通信安定のために、発言をいただく場合以外はミュートにしていただいて、ビデオもオフにしておいていただけますでしょうか。主査の安浦先生は常時マイクをオン、ビデオもオンにしていただければと思います。
御発言をされる場合には、「手を挙げる」ボタンを押していただいて御連絡いただければと思います。
主査の安浦先生におかれましては、参加者一覧を見ていただいて、手のアイコンが見られたところで御指名いただければと存じます。
それから、議事録を作成するために速記の方を入れております。速記者のために、御発言いただく際にはお名前からいただけるとありがたいです。
トラブルがもしありましたらば、お電話を、事前にお伝えしている事務局の番号にいただければと思います。よろしくお願いいたします。
それから傍聴の方はZoomで参加いただいております。
事務局からは以上でございます。
 
【安浦主査】 それでは、本日は、主に前回、若手の研究者の方に御意見をいただき御提示いただいた研究開発課題等をたたき台にしながら、今後の研究開発課題の検討についての審議を進めていきたいと思います。今、投影いただいております参考資料1は前回、議論させていただいた資料でございます。我々情報委員会のミッションは、ここにありますように、左側の、国の情報関係の政策に対して、情報委員会として、情報科学の今後の研究開発をどう進めるべきかという意見を述べること。それからもう一つは右側の半分ですけども、全ての学術分野に関係する学術情報基盤をどう構築していくか、この整備をどのように行っていくかという点について、政府に意見を出させてもらうということ。この2つの事項を行うミッションがございます。
本日の議題はこの左側に関するものでございますが、審議に先立ちまして、今回の議論の趣旨を情報担当の川口参事官から御説明いただければと思います。川口参事官、よろしくお願い申し上げます。
 
【川口参事官】 それでは、御検討いただく趣旨を説明させていただきます。本日、皆様からいただく御意見を踏まえて、来年度以降、重点的に進めるべき情報分野の研究開発課題を情報委員会として取りまとめいただきたいと考えているところでございます。今後は、こちらの課題を基礎資料といたしまして、JSTのCREST・さきがけといったプロジェクトにとどまらず、政府の科学技術・イノベーション関係のファンドにおける研究テーマの立ち上げや、文部科学省直轄の研究開発事業の予算要求につなげていきたいと思っております。言い換えれば、本日の議論は、我が国の情報科学技術の研究開発の今後の方針をどうしていくかといったところを決めるという、非常に大事なテーマだと考えておりますので、ぜひ皆様のお考えを示していただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 
【安浦主査】 川口参事官、どうもありがとうございます。
ただいま参事官から御説明いただきましたとおり、本日の審議は情報科学技術の研究開発を国家としてどう進めていくのかということに深く関係したものでございます。最近は内閣府主導で、上から降ってくるような話や、他省庁との連携で、国全体でDXをどう進めるかといったこと、経済安全保障の問題といったようにいろいろなテーマとも絡んでまいりまして、先ほどのお話にあったJSTのCRESTやさきがけはもちろんでございますけども、それ以外のいろいろな施策に、文部科学省としてはどう考えているのか、あるいは学術界はどういう意見を持っているのかという問いかけが急に来ることがございます。そのときに、慌てて委員会を開くわけにいきませんので、本日いただいた様々な御意見を事務局としてプールしておきまして、それぞれのタイミングで、いろいろな研究開発課題、案件の宿題が出てきたときには対応していく。あるいはこちらから積極的に、国家全体としてはこういう分野をしっかりやっていくべきであるという提案をしていく。そういうものとして使いますので、委員の皆様、直接の研究課題として使われるものでなくても、ここで述べられた御意見というのは、いろいろな場面で使われることがありますので、その旨を御承知おきの上、ぜひ様々な角度からの御意見をいただければと思います。ただ、時間が限られておりますので、委員の皆様には事前にお願いしていましたとおり、3分程度という非常に短い時間で御意見をいただきたいと思っております。
そしてその後、総合討論も含めて、まずは情報委員会として、次年度以降の主たる研究テーマとして何をやっていくかという答えとして出していくわけですけど、それ以外の御意見もいろいろな場面で使っていきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まずは研究開発課題として、前回御提示しました若手の研究者の方の課題の内容に少し手を加えていただいて、資料1として事務局でまとめていただいておりますので、事務局から御説明いただきます。上村専門官、お願いします。
 
【上村専門官】 安浦先生、ありがとうございます。事務局の上村でございます。
それでは資料1、研究開発課題案の検討状況について御説明させていただければと思います。
まず2ページ目、こちらを御覧いただければと思います。今、安浦先生にもお話しいただきましたように、今後の情報分野の研究開発課題の案、これを有識者の方、それからJSTの方々にも御協力をいただいて、まず案を作り、それを基に前回の委員会でも皆様に御議論いただいております。ここに12個、テーマとして挙げさせていただいておりますが、今回は1テーマ当たり1枚ずつ、多少詳細を作成させていただきましたので、後ほど簡単に御紹介させていただければと考えております。
次の3ページ目は、前回の委員会で御議論いただいて、いただいた御意見を幾つかピックアップさせていただいて、テーマごとに並べさせていただいた資料になっております。例えばコグニティブセキュリティのところにありますように、セキュリティの研究開発の強化が重要であるということや、その下にありますように、国のデータ戦略とかDFFTの観点から強力に推進すべきというような御意見をいただいております。また、地球環境と情報のところでは、各テーマでカーボンニュートラルを評価尺度や目的関数として盛り込むべきというように御意見いただいております。また、はその下のその他のところに入れさせていただいてはおりますが、多様な価値観のサポートや、社会との相互作用が高いところでの人文社会科学系の研究の盛り込みというように、多様な御意見をいただけたのではないかと思っております。
本日、この後皆様に、再度、御意見をいただけると思っておりますので、また活発な御議論をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
続いて、1テーマ当たり1枚ずつの資料について、御紹介させていただければと思います。
まず、「AI・ロボットと人間の共進化」でございます。こちらは専門家や熟練者の高度なスキルをAIやロボットに学習させ、さらに、熟練者ではなくても誰でも使えるように活用していくことで、人間とロボット、AIが協調してレベルアップを図っていくというものです。この専門家というところは、創作や科学的発見とか企画といったものも含んで考えており、それと高度なスキル、熟練の技の解明や再現を行っていくこととしております。丸3 に書いておりますが、このようなことを行っていく上で、やはり倫理とか社会的価値観は重要でありますので、そういったところも含めてテーマを考えていく必要があると盛り込んでおります。
続きまして5ページ目、「社会システムを支えるAIアーキテクチャ」になります。こちらはユビキタスAI、つまりAI技術が社会システムの中に様々に組み込まれている、AI技術が周りに入っている社会を想定したときに、分散協調アーキテクチャの研究開発を考えていくというものでございます。そういったものを取り扱うときに、マルチエージェントでのシステムによるモデル化や、社会システム群の効率性、安全性、それから人々のプライバシー保護といったところまで含めた設計方法論が大事になっていくのではないかと挙げさせていただいています。
続きまして6ページ目、「人工知能と科学」でございます。AIやデータ駆動型の科学という中で、科学的発見、それから理解を拡大・加速していくという研究内容になっております。下の図にありますように、仮説構築から予測実験、そこから知識を吸収してという、言わばPDCAのようなサイクルを回していく上で、まず自動で行うことで人間の持つ認知限界やバイアスを超えた発見を目指していくものであります。ただ、丸3 に書かせていただいておりますが、完全に自動化というだけではなくて、人間の知見も相互作用させていきながら、深めていければと考えております。
続きまして7ページ目の「AIとロボット融合」です。こちらはタイトルが象徴的に示していると思いますが、人工知能研究とロボット研究を融合的に取り組んでいくものです。ここで実現を目指すロボットは身体性を介して、自らの行為と世界の関係とを学習していくものであり、この身体性を介することで教師なし学習を行いつつ、さらにモデルベースとモデルフリーの両面から知能を融合していくところを考えていくものでございます。
続きまして8ページ目の「社会的に成長するロボット」でございますが、こちらは人間の社会的行動を理解し、自らも社会的・道徳的規範に基づいた社会的行動を取ることができるロボットの実現を目指すものでございます。具体的な研究目標としまして、丸1 、丸2 、丸3 と挙げておりますが、認知発達ロボティクス、ヒューマンロボットのインタラション、それから新たな関係というところでは、やはり倫理や安全性を盛り込んでいくというように挙げさせていただいております。
続きまして9ページ目、「ヒト情報学」でございます。こちらは、ヒトに対する本質的な理解を深めるための情報処理技術、モデル化技術、それから、自然と調和の取れた活力ある社会や文化を創出するための情報通信技術を創出することと概要に書かせていただいております。その下の「主要な研究目標」で述べさせていただいておりますように、情報が社会で活用されるときに、直接的・間接的、ポジティブ・ネガティブといったように、いろいろな影響があります。そういった複雑な因果関係を考慮した上での分析技術の研究を行っていく必要があるかと思っておりますし、そのために、心理学、認知神経科学、社会学をはじめとした様々な学問との連携が大事ではないかと考えているところでございます。また、丸3 のところは、社会と接していくときのインタラクションの部分になりますけども、インクルージョン、前回も少し御紹介させていただきましたが、ユーザビリティ、それから身体的に通常の使用が難しいような方も、使いやすいようなユーザエクスペリエンスを目指すようなインタラクションも含めて、全体像を捉えていくという提案でございます。
続きまして10ページ目、「Swarm AI」でございます。こちらの主要な研究目標は多数のAIが人間社会に浸透した状況を想定する中で、例えばストリーム型のオンラインデータ、データが常に入ってくるところでの機械学習アルゴリズムの開発です。ストリーム型というと1チャンネルのようなイメージがありますけども、いろいろな方向からいろいろな形で常にデータが入ってくるところに対する機械学習アルゴリズムを想定いただければと思っておりますし、こういったものが能動的に、AIが人や社会に働きかけていく元になっているではないかと思っております。それから、そのようなことを行っていくために、複雑系科学とか数学、数理科学の融合が必要であり、そういったものの解析基盤が必要ではないかと考えております。
続きまして11ページ目の「コグニティブセキュリティ」でございます。こちらは人間の認知や思考、意思決定に悪影響を与える情報攻撃からの防御というものでありまして、認知や思考における脆弱性を扱う基礎研究、それから社会や組織・人への攻撃の分析、それからそれに対する防御といったところを扱っていければと考えています。
続きまして12ページ目、「信頼できるデータ流通基盤」でございます。こちらは様々な実在の間での信頼できるデータ流通を実現するための基盤技術を考えていくものございます。データの機密性、完全性、可用性とか信頼性を考慮していく研究開発、技術開発を行っていければと考えております。
続きまして13ページ目、「データ駆動型人間中心基盤」でございます。こちらは人の情報、それから自然環境のデータといったところまで多様にデータを活用していくデータ駆動型の基盤の開発を考えております。研究目標のところに書かせていただいておりますが、データ処理基盤とかデータ管理基盤、センシングネットワーク基盤、それからビッグデータの循環管理技術を統合的に扱っていく基盤を挙げております。
続きまして14ページ目の「数理と情報」は、数理科学・数理工学、情報科学・情報工学の連携・融合、それから、それに基づく新しい理論・技術の構築を目指していくものでございます。データ解析手法とか情報活用手法、それからモデリング・予測・予兆検知手法といったものを挙げております。
続きまして15ページ目、「地球環境と情報」でございます。こちらは地球環境問題の解決を目指した「Clean by ICT」、それから「Clean of ICT」、これらの融合技術を考えております。特にClean of ICTのところでは、この図の真ん中にありますが、自然エネルギーによる不安定な電源を想定したときに、コンピューティング技術をどう扱っていけばいいかということや、センシングにおいて廃棄物がないようなゼロ環境センシングも含めて考えていくこととしております。
続きまして16ページ目、こちらも前回出させていただいたものでございますが、情報分野の中の領域を幾つか、ある区分けの仕方をさせていただいて、その上で、今挙げさせていただいた12テーマがどの辺りに位置づけられているかをマッピングしております。
次のページは、ほかの競争的資金で進められていますテーマ、事業等を重ねたものとなっております。近いものを全て網羅できているわけではないのですけども、ほかのCREST、さきがけ、NEDOのプロジェクト、SIP、そういったものをマッピングさせていただいておりますので、御検討の御参考にしていただければと思っております。見ていただけますように、左上、AI・ロボット系、それから人間に近いところは多くのテーマが集まっているのではないかというのが、御覧いただけるのではないかと考えております。
以上が資料1の説明になります。今回もかなり、JST CRDSの皆様には御協力をいただきましたので、今回オブザーバーとして御参加いただいております。事務局からの説明は以上になります。
 
【安浦主査】 上村専門官、どうもありがとうございました。
それではこの後、各委員の皆様から御意見をいただきたいと思います。今、御説明のあった研究課題の原案の中から選んでいただき、御意見いただいても構いませんし、原案に限らず御意見いただいても構いません。あるいは全体を通して、こういう視点を貫くべきだという御意見でも構いませんので、お1人3分でお願いしたいと思います。3分経過したところで事務局がベルを鳴らします。ベルが鳴りましたら1分以内に御発表を終わらせていただきますようお願いします。また3分経ちましたら、1分ごとに鐘が鳴りますので、よろしく御協力のほどお願いいたします。アイウエオ順で進めさせていただきたいと思いますので、まずは相澤委員からお願いしたいと思います。
 
【相澤委員】 おはようございます。よろしくお願いいたします。書いてあるとおりでございますが、私はいただいた研究開発課題を2つのグループに分けて捉えております。まず、データやセキュリティなどの基盤構築ですとか、AIの基盤技術に関する研究開発はもう喫緊な国家的課題でありまして、政策的な優先順位は極めて高い。重要性が非常に高いので、例えばスパコンなどの大型プロジェクトに比するものとして強化を目指すべきであると考え、期待しております。
一方で、研究領域を新設する研究目標については、人間や社会を中心に据えた課題の推進が重要ではないかと感じています。その際に、既存の研究のコミュニティの枠を超える、つまり、安易に既存の課題がマッピングできないようなテーマ設定にするのが1つのポイントかと存じます。そのようなテーマ設定にしておくと、新たな研究テーマを生もうという動きが活性化されると感じています。例えばヒト情報学などは、包括的な方向性を提示しているという意味で魅力的に思いました。ただ、現状ではやや抽象的でありますので、関連課題との関連づけなどを要すると感じています。私は門外漢のため、断片的に目にする情報からの推測ですけれども、デジタルヒューマン技術も最近ではサイバー世界でのモデルと、一方で、物理的な人間のシミュレーションという、2つのデジタルツイン的な要素を持っていると思いますので、キーワードとして挙げてあります。
また、その他の部分ですけれども、最近、「日本の情報」という視点の重要性を感じる機会が増えてきた印象があります。私の専門であります自然言語処理でも、深層学習ではデータが重要ですが、新しく構築されるデータセットは多くが英語と中国語になっていて、長期的に見ると日本語処理全体にも影響が及んでくる恐れがあると感じています。言語は分かりやすい例ですけれども、オープンデータ化について言えば、データの地域的バイアスはさらに顕在化すると思われますので、そういった意味でバランスを取っていくことが重要だと思います。特にこれについて問題だと感じているのは、こういうことは研究の国際競争力やTop10%論文では決して計ることができないという点で、言い換えれば、日本が日本らしくあるためのアイデンティティの部分は少し意識をして投資をしていく必要があるのではないかと感じている次第です。短いですが以上です。
 
【安浦主査】 相澤委員、ありがとうございました。では川添委員、お願いいたします。
 
【川添委員】 御説明ありがとうございました。私からは2点、意見を述べたいと思います。1点目は、先ほどの御説明の中にもありましたけど、私たちは新しい価値観に向き合う研究開発を実行していくことが非常に重要だと思っています。御説明の中にあった、例えば「地球環境と情報」や、これに限らずほかのテーマにも当てはまると思いますけれども、人類がウェルビーイングであるために、まさに新しい目的関数として、カーボンニュートラルなどの環境ファクターを意識することも非常に重要だと思います。さらにインターネットの世界の中で言えば、いかに情報を圧縮するかといったところに主眼がありましたけども、場合によっては圧縮をせずに、情報を限定せずに、それを超低遅延で伝送することに価値が生まれるのであれば、そういうところに新しい目的関数を置いて、そこに生まれる新しい価値観に向き合っていくことが非常に重要ではないかと思っています。
2つ目の点は、これまでの研究開発ではいい論文を書くことや、特許を出すことが非常に重要だということは重々承知していますけれども、今回の5Gなどで目の当たりにしたとおり、やはり最終的に国民が研究開発の成果をいかに享受できるかというところにおいては、研究にとどまらず、社会実装に向けた取組を途切れなくつなげていくことが非常に肝要ではないかと思っています。
通信インフラで言えば、今言いました5Gの基地局のシェアを見ていくと、世界シェアの中では日本企業は僅か1.5%という状況です。海外製品、海外システムを、弊社などでも導入していくときに、日本国民が、世界の中で一番、経済的に、あるいは性能、様々な機能も含めて、恩恵を享受できる5Gにするといったときに、最後の社会実装の部分で、単なる技術提案にとどまらず、必要なLSI開発なども含めた上でのリスクテイクを取っていくことが非常に重要ですけれど、それができなかったところに敗因があるのではないかと思っているところです。
したがいまして、通信分野で言えば、弊社などにおいては、そういう技術を単に使うということにとどまっていたのですが、これからは積極的にそのようなリスクテイクして、必要なデバイスなどの開発も含めて関わっていき、国際競争力をもう一回復活させることが非常に重要だと思っており、それをやろうという覚悟でおります。これを含めて、やはり大きなゲームチェンジングを起こすようなところに研究開発がつながっていくことが、まさに国民が恩恵を享受できるということになると思いますので、今回、12の研究開発計画におきましても、その辺を深く意識して進めていく必要があると思っています。
以上です。ありがとうございました。
 
【安浦主査】 ありがとうございました。この会議も、国産のシステムではないものを使っています。ネットワークはNTTさんのものを使っておりますけども、上のソフトは完全に海外製でございます。非常に重要なポイントをありがとうございました。
それでは小池委員、お願いいたします。
 
【小池委員】 小池でございます。今の川添委員のお話にも少し関わるところもあるのですけれども、最初に安浦先生より、国家としてどう進めていくのかというお話もありましたように、本来は、文部科学省側が進めるものと民間が進めるものは、ある程度役割が違うと思います。やはり短期間に何かをしていくことを考えると、民間でできるものは民間でやったほうがよく、民間でやりにくいところ、短期的にマネタイズしにくいのでできない部分や、社会のウェルビーイングであるけれども、それを民間に落とそうとするとしっかりとお金が回らないので、なかなか受け手がいなくて回らないといった部分を文部科学省側のファンドで推進していくことによって、日本全体のAIのレベルが高くなっていく形のテーマ設定がいいのではないかと考えています。
そういう意味で言いますと、1つは、倫理面や規制面という意味で、AI自身をつくるというのもありますけれども、そのAIが及ぼす社会に対する影響を見ていくことも必要ではないかと思います。そこで今、ソーシャルメディアの会社が、そのアルゴリズムによってどう社会に影響を及ぼしているのか、いろいろと議論されていると思います。残念ながら日本の会社の場合には、大きなソーシャルメディアの会社がないため、なかなかそこら辺の研究もしにくいのかもしれませんけれども、ソーシャルメディアがそのアルゴリズムによって、人間社会に及ぼす影響にはポジティブな面とネガティブな面があって、一部は本来、規制対象になっていかないといけないものもあると思います。そこら辺の研究を深めていくことが本来必要ではないかと思います。データがないとできないため、研究としては非常に難しいと思いますけれども、今の提案の中ですと、この「コグニティブセキュリティ」の拡張で対応可能ではないかと思って拝見しておりました。これが1番です。
こちらの1番を、新規市場をつくっていくときの課題に対して解決していく研究テーマとすると、2番目は、どちらかといえば、AIがもう一つの役割として、新規市場をつくるというよりは、Labor-IntensiveなタスクをAI、ロボットで置き換えていく観点からのコメントになっています。これは人間に寄り添うAIの研究ということで、「データ駆動型人間中心基盤」の中にも入っていると思いますけれども、高齢化が進む中、高齢者に寄り添って、コミュニケーションをするAIはますます必要となりますので、心理的な要素を取り入れた研究に拡大していくといいのではないかと思います。こちらは「データ駆動型人間中心基盤」の中で対応可能だと思っています。
先ほど川添委員がおっしゃられたように、環境配慮型というのは全テーマに共通して必須な要素だと思います。以上でございます。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
続きまして、後藤厚宏委員にお願いいたします。
 
【後藤(厚)委員】 ありがとうございます。情報セキュリティ大学院大学の後藤厚宏でございます。今、資料に出ているポイントについて簡単にコメントさせていただきます。まず、今、出ている研究開発課題について、2つのテーマをピックアップさせていただいてコメントさせていただいています。少し厳しい表現かもしれませんが、その課題を検討する難しさを理解した上で、あえて書いていると理解してください。
まず、「社会システムを支えるAIアーキテクチャ」は非常に関心が高いテーマですが、「社会システムを支える」という部分が非常に難しいわけでございます。ここを本当に狙うのであれば、分散協調というキーワードだけではなくて、例えば安全性1つ取りましても、社会システムを支えるために、例えば経済的な話、法制度の話、それから国際関係の話、いろいろなものが入ってくると思います。こういうところまで踏み込むのかどうか、非常に関心がございました。最初に参考資料1において今回の議論の主題が、先端的な情報科学技術の研究開発という観点でしたので、いわゆる先端的な研究ドリブンで行くのであれば、ここまで言う必要はないと思いますが、もし社会システムを支えるところをしっかり狙うのであれば、少しその辺りに、領域を広げて、他の経済、法制度等の領域も含めて議論すべきではないかと思います。
また、その辺りになりますと、安全性や信頼性といったいろいろなキーワードがありますが、例えば我々の社会を支えてくれている重要インフラのような現場において現在重視している、安全や信頼の取組は、一般の人が思うものと相当にギャップがあると私は理解しております。そのギャップを埋めるべきというのではなくて、ギャップをしっかりと把握した上で、この研究テーマを考えるべきではないかという点でございます。
2つ目の「信頼できるデータ流通基盤」に関しまして、私は非常に近いところでやっておりますので、重要な課題と考えておりますが、全体が大き過ぎて、テーマがまだ課題として1つにまとまっていないように感じますので、私がすべきなのかもしれませんが、ぜひもう少し深掘りをすべきであると思いました。
また、ほかの点としましては、真ん中の箱のところでございますけど、最近、デジタル技術に対する社会全体での依存度が高まっていると認識しており、デジタル技術とグローバルな社会経済活動の関わりをしっかり分析・予測する研究開発が大事であると思っております。こうなりますと、先ほどと同じですが、情報技術と経済学や国際関係論、いろいろなものが融合したものが必要になります。そういうものも大事だと思っていますが、今回議論すべきなのかどうかは別にさせていただきます。
それから最後のその他につきまして、これは前回の委員会でもコメントさせていただきましたが、今回、やはりAIやロボティクス、データ、この3つのキーワードが非常に大事になっておりますけど、日本全体の研究活動の中で、どのテーマがAIについて本当に主導するのか、ロボティクスについて主導するのか、その辺りを明確にしていくことが大事ではないかと思ったところでございます。以上でございます。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございます。
それでは後藤吉正委員、お願いいたします。
 
【後藤(吉)委員】 後藤吉正でございます。個々のテーマ、課題については、皆さんからよく資料も出ていると思いますし、ほかの委員の皆さんから的確な御指摘がありますので、そこについては言及せずに、その他のところで二、三、気がついたことを御紹介させていただきたいと思います。
1つは、ここに挙げた課題と、ほかの課題ですとか研究テーマとの関連性について言及したほうがいいものがあると思います。例えば「AIと科学」については、これは情報分野から見ると「AIと科学」ですけれども、具体的にはほかの分野、例えば、マテリアルサイエンスや、ライフサイエンスでAIを使っていることもあると思いますので、例えば、予算づけとしてはそちらの枠で取られるかもしれませんが、この分野ですよというような関係も述べていただくと分かりやすいのではないかと思います。
それからもう一点は、情報分野全体として非常に大事な領域だと思いますし、特にSociety 5.0を実現するという国の大きな方針にとっても非常に大事だと思います。そういう大きな目標に向かって、ここに挙げられているテーマがどういう位置づけかということを、既に資料でもできていますけども、これから発信されるときにさらにその辺りを充実させると説得力が増すのではないかと思います。
それから2ですけれども、これも既に今日の資料にも入れていただいているので、さらに詳しく言う必要はないかもしれませんが、社会との相互作用が大きなものについては、それを配慮したような取組をしていくことが必要ではないかと思います。例えば先ほど「データ駆動型人間中心基盤」について小池委員の御指摘もありましたけども、大型のソーシャルメディアが日本主導ではないため、データがそもそも、研究やあるいは社会実装のときに使えるかという問題が出てきます。そういった意味での社会との関係性、それから倫理とか法規制との問題も出てきますので、これからさらに議論を深めるときには、こういった内容についても御配慮いただく、あるいは、場合によっては人文社会科学の方も入った研究を実行していくことにも御配慮いただけたらと思います。以上でございます。ありがとうございました。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして佐古委員、お願いいたします。
 
【佐古委員】 最初に課題を見せていただいたときに、課題間のつながりが重要なのではないかという発言をさせていただきました。そのため今回、課題間の連携についてコメントをさせていただいています。
まず、「コグニティブセキュリティ」について述べさせていただきます。いろいろな技術でセキュリティを担保しようと思っても、やはり人間が、その中でのweakest linkになっているので、このようにコグニティブセキュリティを研究して、ヒトの認識の仕方について研究することでそこに技術がどうサポートできるかが重要だと思います。それと関係があるテーマとして、「ヒト情報学」があると思いますので、ぜひ連携して深めていってほしいと思います。
一方で、セキュリティというものはいつも諸刃の剣だと思っておりますけれども、ヒトの認識のメカニズムを理解することは、それを逆手に取って、人をだます手法にも悪用されてしまう可能性があるので、そこをどうケアをしながら研究をしていくのかもぜひ検討していただければと思っております。
2つ目は、「信頼できるデータ流通基盤」の話になります。この言葉、テーマ名だけを見ると、データ流通が目的のように見えますけれども、この基盤がなぜ必要かというと、最終的にそのデータを活用することが目的だと思いますので、流通が目的ではなくて、その上でどう使ってもらえるかを考えて、信頼というものを考えていただければと思っています。特に今、信頼のテーマとして、CIAとして、Confidentiality、Integrity、Availabilityと書かれていますが、データを使うほうにとっては、それがないと信頼できる、信頼できないというイチ・ゼロではなくて、どう信頼できるのかというAssuranceレベルというものが、データによってグレードがあると思いますので、その点も考えていただければと思いました。
また、これは常々ITシステムで私が感じていることですけれども、ITは人と人とをつなぐものですが、設計する側がどちらの立場かによって、対等な関係でないシステムが多いのではないかと思いますので、ステークホルダーが対等になるようなシステム設計をしていただければと思っております。
後半のところ、「データ駆動型人間中心基盤」との連携も大切だと思いますけれども、この2つを見比べたときに、同じ「基盤」という言葉を使われていますが、少しニュアンスが違うのではないかと感じました。というのは、「信頼できるデータ流通基盤」は、先ほど私が申しましたように、いろいろな人が、この基盤を使って応用することを考えた基盤づくりが重要で、インフラのようなものになるかと思いますが、「データ駆動型人間中心基盤」の内容をよく読ませていただきますと、誰かに使ってもらうことを見据えたインフラというよりは、いろいろな要素技術があって、そのうち、後で誰かがその要素技術を使って、システムを組み上げるという意味の要素技術の集合という基盤のように思えます。どちらも重要ですけれども、言葉の問題かもしれませんが、「基盤」と言ったときに、人がどのようなものをイメージするかは異なってしまうと思いますので、誤解されないような見せ方が重要ではないかと思っております。
最後に付け足させていただきたいのですけれども、ITはつながるものなので、要素技術が一つ一つしっかりしていて、きらきらしているのはとても重要だと思いますが、それらがうまくつながる必要があると思っております。つなぐところはとても地味な課題ですけれども、そこにしっかりと研究支援をしていただかないと、セキュリティもそうですが、うまくつながらなくて使えなかったり、そこにセキュリティホールが出てきてしまったりすることがあると思います。
以上です。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは田浦委員、お願いいたします。
 
【田浦委員】 どれも非常に重要なテーマだと思いますけれども、自分として深掘りしたいと思ったということと、情報科学・情報技術が広く貢献できるという観点で2つほど書かせていただきました。
1つが「地球環境と情報」で、これは重要であることは疑いないのですけれども、これが特に情報技術との関連で深掘りしたいと思うところは、まず1つは、ゼロカーボンないし、何年までに何%削減という定量的な目標が定められている一方で、いろいろな削減する技術はありますが、それがどのくらい広くデプロイできる技術であり、広くデプロイしたときに、今の500億トンの内のどのくらいを減らすことができる技術なのかという辺りが、もちろん個々の専門家は御存じでしょうけれども、なかなか広く共有されたところでの議論はできていません。ですので、製造もあるし、発電もあるし、食料生産もあるし、交通もあるし、冷暖房もあるという排出量のコンポジションをきちんと広く共有できることが重要だと思います。なおかつ、何かある技術をデプロイしようと思うと別なリソースが必要になる、例えば、太陽光であれば土地が必要になるといったことがあると思います。そういうところまで含めた因果関係や、いろいろなリソース間の依存関係や因果関係を含めて、Correlationの影響がどのぐらいあるのかシミュレーションできるような、データと計算のプラットフォームが非常に重要だと思っています。それを高い解像度といいますか、正確さでやろうとすればするほど、最終的にはデータをどこまで共有できるのか、特に国家間の話にもなると思いますので、そういう信頼できる流通基盤が重要です。それには、今、既に問題となっている個人レベルの保護とともに、もう少し大きなレベル、単位での機密をどうやって保つかということや、このデータはどういう範囲で使えるのか、というところまでコントロールできることを含めて、次の情報基盤として考えられるといいのではないかと思います。
最後になりますけども、人間中心というテーマがほかにたくさん示されていて、それ自体は非常に重要だと思っております。私が深掘りという観点で少しコメントできるのがこの2つのテーマだったということです。以上です。
 
【安浦主査】 ありがとうございました。
それでは瀧委員、お願いします。
 
【瀧委員】 瀧でございます。この全体を見させていただいて、非常に網羅的にいろいろな研究課題が提案されていると思いますけれども、情報技術のプラス面を見ているだけではやはり問題があると思います。提案されている「コグニティブセキュリティ」の中には、SNSが児童や生徒に及ぼしている悪影響もあります。今、アメリカの上院で問題になっていることですが、Facebookの傘下にあるInstagramが、子供に心理的な影響を及ぼし、自殺者を増やすということも起きております。日本の中では、先ほどお話がありましたとおり、SNSの大きなものはありませんが、こういう課題を解決するSNSが日本発で出てくれば、逆に巻き返しもできるのではないかと思っております。情報技術ができるだけポジティブに使われるようにネガティブなものを減らしていきたいと思います。
それからロボットというテーマはたくさん出てくるのですけれども、従来のロボットの概念にとらわれ過ぎるといけないのではないかと思います。例えば身体を複数持つロボットや、身体を持たないロボット、アバターかもしれませんけれども、全く違う概念も出てくると思いますので、例えば手が100本あるロボットや、現実問題、IoTで考えると、目が100個あるロボットもできているわけです。そういう概念で広く捉えるほうがいいのではないかと思っています。
それから現時点で挙がっていない研究課題を見ましたら、対象として、人間や社会、環境問題というのはいろいろと出ておりますし、技術も網羅されており、今回はこれの組合せで、ほとんどの研究課題ができています。そうすると、人間中心はよく出てくるのですが、生物圏中心という形のものが出ていません。環境は出ていますけれども、それと全く違って、あらゆる生物が楽しく生きていくことにうまく情報処理が使われるといいのではないかと思います。
他分野との関係は非常に重要ですが、芸術やエネルギーとの関係も、今回の提案の中には強くないと思いました。
その他ですけれども、ほかの委員からも少しお話が出ていますが、SDGsとの関係が少し弱いと思います。直接は関係ありませんが、それぞれとの関係がどうなっていくのかは、浅いレベルでもいいので検討が必要ではないかと思います。また、最近、首相の発言の中で新しい資本主義」という単語がありますけれども、これは基本的にはデータ資本主義であるということもこの中に出てきております。データの価値をどう考えるか、データを使ってどう社会を回すのか、データ駆動型社会において、我々が考えているデータの利用という概念を超えて、データそのものが社会の価値の根源になるところも十分研究しておく必要があるのではないかと思います。
以上です。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは塚本委員、お願いします。
 
【塚本委員】 ありがとうございます。塚本でございます。研究開発の専門家ではないため、粒度も外しているかもしれませんし、見えているエリアが浅いとも思いますが、コミュニケーションと世界をリードするという観点から少しコメントさせていただきます。
1つ目としては、「AI・ロボットと人間の共進化」、「AIとロボットの融合」、「社会的に成長するロボット」です。既に戦略的に予算も投入されて推進されていると考えますので、ぜひ、現在の競争力を維持するとともに、さらなる発展のために注力をするべきエリアだと考えます。世界的にも、日本のロボット技術は実用化されており、北米等の工場見学に行くと、かなり広く紹介されておりますので、こちらはぜひ注力して、さらなる競争力をつけてもらえればと思います。
また、2つ目はコミュニケーションの観点です。前回の情報委員会資料4のP8にあったように、一般の国民から見て、情報分野は日本は弱いと考えられていると思います。が、スパコンに関しては、新聞や雑誌にも出てくるので、日本のやっていることが「すごい」と理解されていると思います。論文や特許も非常に重要だと思います。加えて、きちんと成果が出ているところは、せっかくですので、国民全体に、「日本はこんなことをやっている」と分かるようにコミュニケーションをしていくことも1つのアイデアなのではないかと思います。
不足しているわけではありませんが、見せ方のまとめ方という観点で一言申し上げます。メタバース的な分野が現在いろいろな協会ができるなど進んできていますが、日本のアバター関係の研究開発もすでにいろいろとやっておられると思います。ルールも含めて人間とロボットとアバターの共生社会的な、八木委員等も主導されているようなエリアを、世界に先駆けて研究をしてはどうかと考えます。何回かほかの先生方からもご発言があったように、データの重要性を経営者層まで認識するようになってきたことから、「日本は基盤のところはもう無理で日の丸クラウドはできないので、せめてその上のレイヤーに関しては取られないようにしよう」といった発言が、eビジネス等々関連の取材記事でもよく出てくるようになっていますが、まだできるところはあると思います。地球規模の貢献は、企業のグローバル展開に不可欠となると思いますので、情報発信にもなお一層アテンションを払っていただけると、さらによりよい研究開発になるのではないかと思います。以上です。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは長谷山委員、お願いいたします。たくさんの資料を用意していただきましてありがとうございます。
 
【長谷山委員】 長谷山です。皆様に配付させていただいたポンチ絵で、2点お話しさせていただきたいと思います。
1番目は新たな研究開発課題としまして、AIの社会実装を加速する分野融合型の研究開発課題を、横串を通す形で広く幾つかの課題と関連付けてはいかがかと思います。我が国が強みを持つマテリアル分野や、インフラ、防災分野は、社会実装の基盤と固有の研究力がありますので、情報系の研究が加えられることによって、多様性と卓越性を備えた研究開発を推進する必要があると考えます。
その理由として、資料の2ページに、ハイプサイクルを示しました。IPAのIT人材白書にもあるように、世界に比べて日本は、IT企業に対してユーザ企業に所属する情報系人材の割合が少ないことが知られています。この現状が、ハイプサイクルを捉えた先端技術開発の障壁になっていると感じます。長く研究開発にバックキャスティングを取り入れてきましたが、競争優位性をもたらす可能性が高い技術に注目した研究開発の戦略も必要と思います。
次に、2番目の研究開発課題として、AI技術を実社会に応用する場合に必要な、判断メカニズムの実装技術の開発を挙げました。「ヒト情報学」と「データ駆動型人間中心基盤」に関係すると思いますので、両者をつなぐ部分に技術要素として記載しました。世界中で行われている競合する意思決定を行うAIが、社会実装には必要となると考えます。先ほどの1番目の研究開発の大きな取組と共に、取り組むべき技術要素ではないかと思います。例として、資料にスタンフォード大学の取組を紹介しました。災害のリスク低減のための取組です。日本でも、防災・減災の取組を進めておりますけれども、災害の種類は違っておりますし、アジアの国において横展開できるものや、世界展開できるものとして、情報系との融合で意思決定を行うAIの開発により、優位性を持った取組ができるのではないかと思います。
以上2点、御説明させていただきました。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。非常に大きな、高い視点からのお話しをいただいて、先ほどの塚本委員のゴールの明確化等ともつながるところがあるのではないかと思います。どうもありがとうございました。
続きまして引原委員、お願いいたします。
 
【引原委員】 機会をありがとうございます。書かせていただいたのは2つに分けています。サイバーフィジカルの認識については前回もコメントさせていただきましたが、やはりテーマが細切れになっていることもあるのでしょうけれども、サイバーとフィジカルをつなぐインターフェースが非常に弱いように感じました。サイバーはサイバー、フィジカルはフィジカルでロボットにつなぎましょうという話はあるのですけれども、明確な方向性が出ていないように思います。情報系を議論される場合は、特にデジタルの信号を出せばフィジカルはそれに追随するという発想は多いのですけれども、それは同じ状態空間にあったら何とかなるかもしれませんが、必ずしも保証されないので、同じ状態空間にないものに指示を与えることの危険性をきちんと考えないといけないのではないかと思います。安全性というのは、今、長谷川委員がおっしゃいましたけども、工学的な安定性はよく議論されますが、あと何分大丈夫なのかという安全性の話が非常に抜けているという話があります。それはどちらかというと、危険ということをきちんと考えていないからです。ベストエフォートということであって、例えば条件を5つこなせば安定と安全というのを同一視する傾向があるのですけれども、こういうサイバーとフィジカルの場合は、確実に危険性を考えて、どこまで大丈夫かという安全性を考えないといけないということが大きいと思いますので、そこは楽観的になってはいけないと思います。過去に日本では、そういう災害の例はたくさんあると思います。
欠けていると考えられる点は、ここに挙げておりますとおり、先ほど小池委員のおっしゃったソーシャルメディアが弱いことと全く同じことですけども、日本の場合は大手出版社がないため、ジャーナルに関して非常に弱い立場になったのと全く同じ構造が、データに対しても見えております。データの信頼性に関しても、結局ジャーナルの信頼性の問題と全く同じです。ですからまた同じことを繰り返すのかということを、ここでよく考えておかないといけないと思います。
それから、日本は大手に乗り遅れたということでやっていってはいけないわけで、どういう立ち位置で議論するのかを明確にする必要があるのではないかと思います。結果的には欧米の追随型ではなくて、ヨーロッパの原理主義やアメリカの方法論がありますけども、日本は応用技術と言いながら、応用技術に関しては中国にもかなり後れをとっている現実があります。全方位に研究者は割けませんので、どの立場でやっていくのかを考えて、戦略をきちんと立てないと、このテーマをばらまいても仕方がないのではないかというのが印象としてございます。
以上でございます。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
続きまして深澤委員、お願いいたします。
 
【深澤委員】 深澤でございます。このような機会をいただきまして、どうもありがとうございます。今まで参事官から御説明がありました研究開発課題につきましても、あるいは今まで御発言いただいてきた委員の皆様の発言を見ていましても、AIという言葉が非常に多用されていると思っています。今やAIと言わないと研究者ではないような気さえしておりますが、ただ、そこで言っているAIとは何だろうということをもう少し考えてみたいと思いました。今こんなにAIブームになったのは、深層学習に代表されるAI技術が深く浸透してきて、いろいろな分野で新しい成果を出してきており、今日のお話も、それを広げましょうという話になっていると思います。
一方で、人間はもっと賢いインテリジェンス機能を持っているわけで、その人間が持っている賢い優れたインテリジェンス機能をもっと情報技術の中に生かしていくような研究をしていかなければいけないのではないかと思っております。そのためには、IT技術者だけが頑張っても、多分限界があるため、やはり脳科学の専門家とジョイントのプロジェクトをつくり、お互いに刺激を与えながら新しい成果、新しいAI技術を生み出していくことが必要ではないかというのが1つ目でございます。
もう一つはここに書いておりませんが、そのようにAIのシステムがたくさん要求されるようになってきており、そのようなシステムをどうやって作ったらいいのかということが必要になります。これは私の専門がソフトウェア工学ということもありますが、要はソフトウェアシステムをどうやって作っていくのがいいのだろうかということにも注意を払っていくことが必要ではないかと思っております。
以上2点。コメントさせていただきました。どうもありがとうございます。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは星野委員、お願いいたします。
 
【星野委員】 前回参加できず大変残念でした。もし参加していたらいろいろ申し上げたと思いますが、具体的に社会科学と情報、どちらもやっている人間といたしまして、人間社会に関連する領域では科学技術基本法の改正もあって、人文社会科学との融合を意図されたと思うのですけども、これではなかなか進まないのではないか、自分の領域とずれたことをやっているという感じです。結果として成果も出にくのではないかと思います。
きついことを申し上げますけど、人間社会の部分、これは多くがメタ過ぎるといいますか、単にメタなだけであればいいのですが、表層的過ぎるという形ですね。表層的に現象が似ているから共通にしてまとめるのでは、現代のエーテル説をつくるようなことになってしまいます。例えばこの「ヒト情報学」や、「次世代データ駆動型人間基盤」はあまりにも広い。広過ぎて多分、領域内のインタラクションや融合による創発は多分起きないのではないかと思います。また、統一的な方法も多分つくれないということです。もっと粒度が細かい例で言うと、「Swarm AI」は近いと言えば近いのですが、やはり抽象的で、グループにおいて個人がどうやってインタラクションを取るのかというメカニズムに焦点を置かないと介入は多分できないと思います。
何が大事かというと、現象が似ているものを集めてターゲットにするのではなくて、やはり共通のメカニズムを持っているものを現象としてグループにしていくべきだと思います。相関でなくて因果を考えて、介入しようとするのであれば、やはりその背後のメカニズムが同じものでなければいけない。それがここに書いております、気象予測であればプリミティブ方程式を離散化して、シミュレーションによりデータ同化するというようなことになりますが、一方、例えば教育だとか運動促進では、「???」と書いてありますが、これが、あまりないように思われているかもしれませんが、かなり多くの研究がもう膨大にあります。例えば神経科学とか、行動経済学、心理学みたいな分野です。例えば差別の防止のような社会同調圧力というものがありますが、それ以外に多分、ほとんどがヒトの強化学習に関わるものです。
ですから、例えばもし私がまとめてやるとしましたら、例えばウェルビーイングなどのための行動変容の介入基盤のようなものはあり得るのではないかと思います。これはメカニズムが完全に同じです。ここに全部書いてある、教育や運動をさせるだとか、消費者保護だとか、そういったものはほぼ同じで、注意の振り分けとかハビット、あまり詳しいことは言いませんが、ヒトの強化学習に関わるものです。基盤として神経科学とか、応用として行動経済学となると思いますけども、そういったメカニズムが同じものをまとめて、それに対して介入する、例えばデバイスで情報を収集したり、他者の情報を使って適時介入したりするというようなことです。ある人に関して効果があればほかの似たような人に関してやってみるというようなことは、人文社会科学者がやりたがっていたのですけども、自分たちだけだとデバイスやシステムを作れないためできないという話になりますので、これは融合が非常に起きやすい話になります。
あと、人が介入することでどう行動変容するのかという研究に関しては、まさに深澤委員がおっしゃったように、本当のヒトの行動原理を踏まえたAIの作成にもつながるのではないかと思いますので、できれば社会科学者が乗ってきたがるようなことにしていただけるとありがたいと思います。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは続きまして美濃委員、お願いします。
 
【美濃委員】 AIとロボット関連の話のところで、AIとロボットでどう区別しているのだろうということを自分なりに考えました。身体性を持っているのはロボットで、AIはバーチャル系だと。それと萩田先生と話していると、アバターというとサイバー系ですけど、実際にアバターがそこにいるとサイバネティックアバターというのだという話がありましたので、やはりどちらにいるかはロボットでは考えないといけないと思います。
そしてロボットがタイトルに含まれている課題は3つあり、共進化の問題とか、融合の問題、成長の問題がある。この辺を考えると、ロボットはまだ人工物、フィジカル世界で言うと、生物と人工物が存在するのですが、まだロボットはツールである。つまり、ある特定の機能を実現するだけのものであるということです。これをもう少し脱却して次のステップに進むというのはどういうことかと考えると、やはり自分で行動して、ペットになるといいますか、自分で動くものをもっと作っていかなければいけないのではないか。それを哲学的に考えると、それは存在になるということではないか。ツールから脱却して存在になるようなロボットを作ろうというわけです。
昔から、たまごっちというゲームがあり、人間が思いどおりにコントロールできないから面白く、AIBOなども同様でその葬式をしたいというのはやはり愛着があるということです。ロボットは故障すれば買い換えたらいいだけなのですけど、少し愛着があると葬式しましょうとなるわけです。したがって、人間の言うことを素直に聞くだけではなくて、社会規範や倫理、道徳などによって、ちょっとそれは無理でしょう、ということを言うようなロボットが欲しいのではないか、こういうロボットになったら存在にならないかということを思っています。ツールとしてのロボットというよりも、少し自律的に動いて、人間にいいことを言ったり、助けてくれたりする存在になるような観点がロボットの課題にたくさん入るわけです。
2点目ですが、AI関連の話を考えてみますと、人間に有用なサービスをデータ処理に基づいて提供するのがAIの応用分野の1つとしてあります。今、大量の研究データを集めて、取りあえずオープンにしましょうということをやっているわけですが、それができた後のことを考えると、そのデータをみんなが使うようになり、大量のデータを処理しないといけなくなりますから、当然、大量の計算資源が必要になることは明らかです。ということはデータの公開だけでは駄目で、もう少し大量のデータを使って何か処理したものを公開して、それをみんなが使う、という形にしないと、幾ら計算資源があっても足らなくなるのではないかという心配が出てきます。
そこで、先ほど相澤委員の話があったのですけど、言語分野を見てみますと、この言語資源、言語処理モデル、この辺は、文化的な話も含め、基本的には日本が中心になって進めるべき問題であります。実は情報のツールが文化をつくっている可能性があり、仮名漢字変換は今、海外製のものがいろいろ出てきているわけですが、変換がどうも変だということがかなりあります。ところがこれを素直に日本人が使っているので、統計的に見ると、だんだんツールが変換する送り仮名の形式がよくなっていくことになり、これでいいのだろうかということを感じております。
こういったことは国語学研究などでいろいろやられている話ですが、その辺ともっと情報系が融合して、日本の言語資源をきっちりと集めて実用的にも提供できる形をつくっていかなければいけないのではないか。そうしないと日本語は、我々の日本語ではなくなっていくのではないかという危機感があります。具体的に、例えばBERTというモデルはすごい計算力がありますが、これが大体海外で公開されており、日本では二、三箇所、自然言語を一生懸命やっているところが公開していますが、そういう辺りをもう少ししっかり基盤として進めていくことが必要だと思っております。
最後ですが、先ほどちょっと、脳科学が出ましたけど、理研にいますと脳の研究の中に情報の話がたくさん入っています。実は計算脳というプロジェクトがあるというように、いろいろなところで情報系の技術が必要になっています。それで脳センターのセンター長と話していても、情報系でいい人はいませんかという話は多く出てくるわけです。こういう状況であるのに、情報系で脳のことに関して何もやっていないのは果たしていいのだろうかということを最近非常に疑問に思っています。DNNも、もともと脳の話をモデルにしており、今は全然脳とは違う形になってできていますが、そういう意味で、脳の中にはいろいろなアイデアの源泉が多くあるのだから、一緒にやっていくことは必要ではないかという気がしていまして、この辺とうまく連携できるような情報系ができるといいのではないかと思います。
例えば全脳のシミュレーションを作った人が理研の中にもいます。マーモセットの脳のニューロンの配列を、生理学者が調べたものをベースにシミュレータを作ったけれど、それをどう使いましょうと相談に来られました。脳といったって、頭の中の神経回路だけではなくて、脳というのは全身にセンサを巡らせて、入出力を含めてシミュレーションができて初めて脳でしょうという話をしていたのを思い出しました。そういう辺りも含め、情報系をもっとしっかりとやっていくことは必要ではないかと最近感じているということでございます。以上でございます。
 
【安浦主査】 どうも幅広い御意見、ありがとうございました。
続きまして八木委員、お願いいたします。
 
【八木委員】 今回、前回の資料を眺めながら考えていく中で、どういう未来社会像がつくり得るのかということから深く考えていくほうがいいのではないかと思いました。今お示ししているのは、かなり古い資料ですけど、昔提案書を出したときのものです。
世の中にはいろいろなデータがあって、CPSでサイバー空間とフィジカル空間の中でデータが行き来して、ものができると言っているけども、実はその中では扱いやすいデータしか扱われていないと思います。しかし世の中には、例えば映像を見たとしても、スマートフォンもあれば、防犯カメラもあるし、空撮映像もあれば、一番上は小型衛星が多く地球の上を飛んでいるわけです。そういったミクロからマクロまでのものを考えるようなことは、実はCPSのコンセプトの中には入っているけども、実際にはやられていません。静的な部分では、いろいろな、ランドサット含めて、地球のモデリングという話はあるかもしれませんが、活動ということになってくると、さらにないという感覚の中で、このとき提案として考えたのは、時間軸も含めて、4次元で地球丸ごとモデリングしようということです。それを動的に表現できるものをつくると、それが1つのプラットフォームとなって、新しいサイエンスの芽がたくさん生み出されるのではないかという提案です。
2枚目のスライドを御覧ください。どういうことがこの中の世界観で出てくるのかといえば、活動の観測という意味では、今申し上げたようなミクロからマクロまで多様です。それは何かというと、データ量はエクサバイト級になってくるわけですが、その性質を見ると非常にスパースでヘテロなデータです。そういったデータをどうやって管理するのか、分散のデータベースをどうやって作るのかということが、しっかりとサイエンスとして議論されないといけないだろうとか。大量で不規則なデータアセットをどうやって扱うのか。それから活動という意味では、そういったデータをベースにしてアクティビティベースの知的情報をいかに構造化するのかとか、それから今申し上げたスパースでヘテロなデータを知的にどうやって圧縮するのか。
また、構造化されたものの中でフィルタリングや認識のエンジンも考えていかないといけない。特にアクティビティとなると個人情報も含まれてきますから、またいろいろな情報が入ってきますので有害情報の除去やプライバシー保護の観点も入ってきます。認識のエンジンはもろもろ必要になってくるということと、それからやはりデータ自体が極めて大きなものになるので、全部を使って何かをするのは難しいので、やはりオンデマンドの考え方をどう作り込んでいくのかということが必要でしょう。
また、今回、コロナの中で、慌てるようにいろいろな情報科学技術を作っては失敗するという形でやっているわけで、やはり今の時点から、こういったプラットフォームを作ったときに、平時と危機、いわゆる危機管理的な側面をデュアルユースでデザインしていくことが必要ではないかと思っています。こういった研究の芽を日本の中からつくれば、世界にも勝てるチャンスがあるのではないかと思います。
学術的な価値というのはおおむね今の話からお分かりいただけたのではないかと思いますが、これまでの世界観が、例えばテラだとすると、これはエクサ級の世界にどんどん変わっていくわけです。そういうスケールの違いは問題の本質を大きく変えます。それはイコール、新たな学問領域を創生する、10年先のICTの社会を日本が先導する期待感があるのではないか。今、映像をベースに言いましたけども、何のデータでもいいのですが、例えば知的映像の圧縮技術としてはモデリング技術でしょうし、映像を生成するのはプロファイリングでしょうし、またイノベーションの創出という意味で申し上げるとデータの扱いを、例えばエゴセントリックに考えていかないといけないという話とか、いろいろな研究の要素が含まれてきます。そういう題材を我々としては提案したほうがいいでしょうし、今申し上げたような話ですと、日本丸ごとですから、都市工学や交通工学との連携もできるし、それから地域課題、地域活動という意味では経済学、人文科学ともできるし、多様な学問分野がこういうことをテーマに、共に日本列島を新たなICTのステージに上げていくということができたら面白いのではないかと思い、昔の資料を引っ張り出してきました。ありがとうございます。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは若目田委員、お願いします。
 
【若目田委員】 重視すべき視点ということで、「パーパスの明確化」という表現をさせていただきました。今、事業者は自社の存在意義を明確にすることにより社会に与える価値を示すパーパス経営に注目しています。消費者は、社会や環境によい商品、サービスをエシカル消費により選び、ミレニアル世代の人たちは企業のパーパスを基準に就職したい企業を選ぶ時代になってきています。すなわちデータの活用やAI、研究においてもパーパスを明確にすることはとても重要なことだろうと考えます。
その観点で、重視すべき視点の1点目は、他の先生方と重なりますが、地球規模目線での優先課題としての気候変動問題だと思います。いろいろな要素がありますが、特にカーボンニュートラル実現への具体的な貢献を重視すべきと認識しており、テーマに掲げられている「地球環境と情報」に非常に賛同するところでございます。脱炭素社会を展望し非連続的なイノベーションの創出に期待しており、カーボンニュートラルの実現は、例えば電力の脱炭素化だけでは実現困難で、排出量を含む社会の可視化であるとか、循環社会の実現、蓄電池のリサイクル、また企業だけでなく、個人の行動変容が不可欠であり、特に情報分野への期待が大きいと感じております。
パーソナルデータを含む粒度の細かい高品質なデータの収集や流通、それを処理する情報基盤やAIの進化、そしてデータ流通、活用に対するステークホルダーからの信頼の基礎となる人間中心の基盤や倫理、セキュリティの確立、すなわち他の様々な研究開発のテーマが、それぞれ環境に対して貢献する構造となっているのではないかと考えます。
この技術革新というのは、我々事業者の視点では、脱炭素社会におけるゲームチェンジの機会における日本の勝ち筋として、産業競争力の視点においても非常に期待をする点でございます。
2点目の視点として、「日本が世界に率先すべき社会課題の解決に資する研究開発の促進」を掲げています。これは、SDGsに掲げられている全ての課題に漫然と取り組むということではなく、日本が世界に先んじて直面する課題解決を通じ、世界に最も貢献できる領域にある程度集中することが重要な戦略ではないかと考えています。その点で言いますと、少子高齢化や、頻発化する自然災害などの課題に対する研究開発を重視することは、データの収集や、実証の点でもアドバンテージがあるのではないかと思っています。我が国からグローバルに対する貢献、我が国のグローバルにおける存在意義という点でも重要と考えます。
一例になりますけども、ウィズ・コロナにより行動が制限される高齢者、認知症と共に生きる高齢者のQOLの担保を目指し、シニアの潜在能力や活動範囲の拡張、孤独の回避、介護ケアの質の向上、さらには予防重視型社会の実現を目指した研究です。それぞれの領域の専門の研究に加え、やはり情報分野が横串に貢献すべき領域ではないかと思っております。
また、この領域もヒトに関する詳細なデータの取得が必須となりますので、「信頼できるデータ流通基盤」や、「AI・ロボットと人間との共進化」といったテーマが最も試される分野だと考えております。
防災に関しましても、観測データに注目されることが多いと思いますが、パーソナルデータの収集や共有の仕組みですとか、自治体等がばらばらに管理する日本全国のデータの収集、あるいはそれら大量データを自動で整備するためのAI活用などが求められます。広域かつ詳細データに基づくデジタルツイン化や、リアルタイムで大量なデータの処理、または正確な情報伝達といった目線でも、それぞれの研究要素が試されるテーマではないかと感じております。人や社会が平常時から異常時、緊急時にスムーズにチェンジして順応していく、そして速やかに回復することも、情報分野が貢献する領域ではないかと考えます。
最後に、瀧委員のコメントにあった技術の負の要素への取組の必要性や、佐古委員がコメントされた技術が諸刃の剣であることへの配慮など、私も共感します。産業発展が環境破壊を起こしたように、ネットの進化やAIが、プライバシーなど人類に負の影響をもたらすことがあると思います。これは、事後的に対応するのではなく、新しい技術を開発する際には、同時にその技術がもたらすであろう負の側面にも目を向け、それに対応する技術開発にも投資を行うことで、新たな技術や事業の基礎を築くことができると思います。ぜひそれぞれの研究における負の要素を、負にとどまらず、新たな産業の基礎と考え遅滞なく投資を行って取り組んでいただきたいと思います。
以上です。
 
【安浦主査】 ありがとうございます。
井上委員、お願いします。
 
【井上委員】 井上です。挙げられております研究課題は、いずれも意義深いものばかり、前回も発言いたしましたが、今回の研究課題のリストを見ますと、人間中心ということが随所に打ち出されている点は高く評価しております。今日はそれ以外の点で2点ほど申し上げたいと思います。1つは、研究課題間の関係性ですとか、階層性が資料で分かりづらいということ、2つ目は、限られた財源の中での優先順位について、発言いたします。
まず研究課題間の関係性ですとか階層性ですけれども、情報分野の研究開発戦略を社会に向けて発信していくに際して、その重要性や意義を伝えることが重要です。そのためには分かりやすさが必要です。資料を見る限りでは、研究課題間の位置づけや相互の関連性が十分に分かりやすいものにはなっていないように思われます。前回委員会の資料4の分野と研究開発課題案では、分野については一番下に、数理科学、工学と、情報分野の基盤となる学問領域が配されており、図の一番上には人間と社会という2つのボックスが用意され、こちらは情報分野が応用される対象というような位置づけで示されているのだろうと思います。真ん中には、AI、ビッグデータですとかセキュリティ、コンピューティングなど、情報分野のより具体的な分野が示されています。
情報分野が応用される対象を示す最上段のところですけれども、ここには「人間中心」という方針が色濃く出ていると思います。まず人間があって、それから人間の構成する社会という2つのボックスがあるのですけれども、人間と社会だけではなくて、人間や社会を取り巻く環境である「地球環境」のようなものも、右にもう一つ独立したボックスを設けるべきではないかと感じました。「地球環境と情報」はまさにその意味で、研究課題として一番右上のところに挙げられているのではないかと思っております。
さらに、この図には記載がありませんけれども、人間や社会を取り巻く環境として、地球だけではなくて、「宇宙」があってもいいのではないかと思っております。政府も宇宙開発戦略を進めており、宇宙空間の利用が本格化していることを考えますと、情報の観点から宇宙にアプローチするという研究課題があってもよかろうと考えております。
こういう形で上位に人間、社会、そして地球環境、宇宙が、応用される対象として上にあるとしますと、その中で数多くリストが挙がっている研究課題の中で、「ヒト情報学」と「地球環境と情報」は研究課題の中でも別の扱いになるのではないかと思っております。それらについては、他の研究課題と同列に、ごっちゃに並んでいるため分かりづらいのですけれども、ヒト情報学は、情報学によってヒトの理解を深めるための研究課題であって、他の研究課題とは若干、階層が異なっているのではないかと考えています。20世紀は専門分野のタコつぼ化が進んできた歴史でございますが、「ヒト情報学」は、科学と人文社会科学を統合する重要な意義を有する研究課題です。「ヒト情報学」の研究課題の内容を拝見しますと、ミクロとしてヒトを理解するだけではなくて、社会を理解することも目標としているとなっていますので、挙げられている分野としては、政治学や経済学、法律学などは並んでないのですけれども、こういったものもヒト情報学の中に組入れていただくとありがたいと思っております。
そして「ヒト情報学」の成果として得られたもの、おそらくはELSIの関係になると思いますけれども、こういうものについて、「AI・ロボットと人間の共進化」、「データ駆動型人間中心基盤」、「Swarm AI」、「社会的に成長するロボット」、「信頼できるデータ流通基盤」「コグニティブセキュリティ」などにしっかり反映させられるようにしていただきたいと思っております。
また、財源が限られる中、優先的に取り組むべき課題の順位づけは重要です。先ほど若目田委員からあった話と重なってしまいますので、省略しますけれども、やはり2つ観点があって、1つは、課題先進国とでも言うべき日本の社会課題のうち解決の優先度が高いもの、 もう1つは、国際的にみて、産業競争力や地政学的なリスクの観点から優先度の高いものです。これまであまり出てなかったことだけを申しますと、安全保障、経済安全保障の観点から、この情報学をどう見ていくべきか、ということも入れるべきではないかと思っております。DFFTもそうですし、データローカライゼーションなど、様々な観点で地政学上の安全保障の観点が重要になってきていると思いますので、こういったものも研究課題の中にうまく組入れていただく必要があるだろうと思います。
最後に、若目田委員が最後のところでおっしゃっていた負の側面をどうするかということです。これも若目田委員がおっしゃっていたように、問題が起こってから解決するのではなくて、事前にデザインしていく。プライバシーの分野では、プライバシー・バイ・デザインなどと言われて、最初にプライバシーの問題をモデルの中に、ビジネスモデルの中に組み込んでいくべきだとされておりますけれども、全体にわたって負の側面をどう統御するかという観点を入れていくことは重要だろうと思います。
以上です。
 
【安浦主査】 ありがとうございました。前半でお話しいただいた先生方は、後半のお話もお聞きになって、いろいろな御意見が出た中で、さらに付け加える御意見があれば挙手をお願いいたします。私が指名させていただきます。
よろしいでしょうか。非常に多岐にわたる御意見をいただきました。私なりにまとめてみますと、ポイントとしては、皆様方からの御意見、3つあるかと思います。
1つは、ゴールあるいはパーパスの明確化ということで、若目田委員や八木委員、長谷山委員、星野委員、あるいは井上委員等、いろいろな方から、お立場はそれぞれ違うかもしれませんけど、全体を通したパーパスの明確化、ゴールの明確化をすべきだという話があったかと思います。井上委員がおっしゃったように今後、この議論をやっている政策目標は、予算規模とも関係してきます。最初にも申し上げましたように、今は、次々年度の研究政策目標、課題を議論するベースをつくっているのですけども、もっと大きな国家戦略が諮問されたときに、このような議論をしておくと、文科省としても反応しやすくなります。そのような意味からこの議論は、極めて重要だと思いますので、今後もこの委員会で引き続き議論させていただきたいと思います。
また、具体的な技術の問題に入った中で、大きく分けてアナリシスの技術としての情報技術を考えていく話と、社会や環境といったものをシンセシス、つくっていくという立場の御議論と、大きく2つあったのではないかと思います。アナリシスのほうでは、特に深澤委員や美濃委員がおっしゃいましたように、人間をもっと理解すべきだと。人間の脳とは何かという脳科学との関係性。今のDNNを中心としたAIというのは、決して人間の脳とは原理的にも同じわけではないわけですから、そこのところを詰めていくという視点は当然あると思います。
それから大きな視点では、瀧委員からも出ました生物圏ですとか、あるいは井上委員が言われた宇宙圏まで考えるのかもしれませんけど、そういったものの理解、あるいは八木委員が言われた、日本全体の自然から人間の活動まで全て含んだシミュレーションを行うといった話まで含めたアナリシスの話。それから非常に重要な話で、相澤委員や美濃委員から御指摘がありました言語の問題ですね。これは日本文化、日本語ワープロ、この2,000文字という巨大な文字セットを扱うものを計算機化したというのは、私は我が国の20世紀最大の人類文化への貢献、多言語を世界の文明の中でコンピュータライゼーションの中で守った、ノーベル賞などをはるかに超えた、すばらしい成果を日本は残したと常々言っているのですけども、その日本語自身が危なくなっている。ここのところをもう一回見直すという話は非常に重要なポイントかと思います。
それから星野委員ほか、何人もの先生がおっしゃいましたけど、社会自身をもう少ししっかり見ていくアナリシス、そのためにITを使いながら、必要な新しいITの技術もつくっていくという話。そして美濃委員からは、ロボットというのは存在としてのロボットでなければならなくて、ツールとしてのロボットから脱却するべきではないかというかなり哲学的な問題も含むと思いますけど、そういった問題を、まだシンセシスに入る前に、アナリティカルに議論をしていくような研究、こういうものが大きな枠として、ここで挙げられているものの中に散らばっているのではないかと思います。
一方でシンセシスのほうは、多くの先生がおっしゃいましたように、社会全体の基盤として、デジタル庁もできて、社会のDX化がいろいろなとこで進んでおります。それに対する安全や信頼、主にセキュリティやデータの共有といった問題をどう解決していくかという技術課題を実際に捉えて、あるテーマに対して行っていくという話。そのときには当然、社会の中で使われるということを考えるとELSIや、社会規範といったものは当然関係してくるわけでございます。
一方で、田浦委員等が強調されましたように、環境の問題、特にゼロカーボンに対して、しっかりと説明がつくような技術でないと今後は採用されないということですから、そういったところの話。さらには川添委員がおっしゃったように、新しい価値観、価値観自身が変わっていっている中で、それと向き合う技術をどう構築していくかという話。これはもちろん、データがかなり中心になってくると思いますけども、データとその伝送ですとか、処理や蓄積といった問題をどう解決していくか。
以上のようにゴールの明確化、それから新しい分野の解明、そして新しい社会の構築という、3つくらい大きな柱でまとめられるのではないかと思います。
長谷山委員には、それらを大きなスケールで横串を通して、そしてこの分野をピンポイントで選びましたという説明をすべきだという図まで出していただきました。どうもありがとうございました。
このような中で、今後事務局で、今、事務局側に求められている問題に、サイズをシュリンクしないといけないものもございますし、また、今後新しい問いかけが来たときに、今日いただいたような御意見の中からロジックを構築して、必要であればこの委員会でさらに議論を進めていきたいと思います。
来年度以降に重点的に進めるべき情報分野の研究開発課題として、取りまとめ案をつくらせていただきまして、再度、委員の皆様にお諮りさせていただいて、御議論をいただければと思います。
最後に何か一言、御意見あればお1人、お2人、いただく時間ありますけど、いかがでしょうか。深澤委員は何か御意見ございますか。
 
【深澤委員】 さすがに安浦先生はスマートにまとめられたと思って聞いておりました、今日、議事録をお作りになる文部科学省はとても大変だと思っております。いかに今日の結果がスマートにまとめられるかが、この委員会としての大きな成果の1つとなると思いますので、お手数をかけると思いますが、議事録をまとめるところに御留意いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【安浦主査】 ありがとうございました。
若目田委員どうぞ。
 
【若目田委員】 何人かの委員の方から、ここでの検討結果について、「なぜこれを優先したか」という点も含めて、いろいろな方々に理解していただくための努力や工夫をすべきという意見があったと思います。井上委員からもありましたけども、重要な16ページの絵、全体のマッピングのところについてはブラッシュアップをお願いしたいと思います。また、誰に理解してもらうかという点では、グローバルな目線と、市民社会の目線も重要かと思います。グローバルにおける市民社会からの共感や、各国に個別の事情はあっても地球規模の課題として支持されるような表現をお願いできたらと感じております。以上です。
 
【安浦主査】 とても貴重な御意見ありがとうございます。あくまでも我が国のメッセージとして世界に出して、日本はここまで考えているのだということを示していければいいと思っております。今、日本では何か負けたという話ばかりが出ていますけど、日本からつくっていったことはたくさんあるわけです。先ほども例で強調しましたとおり日本語ワープロを作ったこと自身が、マイクロソフトが40数か国バージョンでOSを出さないといけない、そういう全ての国が英語を使わざるを得ない環境にならなかったという、言語の多様性、それはひいては文化の多様性をコンピュータライゼーションの時代に守ったという、日本の矜持をぜひ我々は持って、次の課題にも、日本としての新しい発信をしていきたいと思いますし、それを世界で御理解いただく努力をしていきたいと思います。どうも若目田委員、貴重な御意見ありがとうございました。
それでは時間となりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきます。今後の予定など、事務局から御連絡お願いします。
 
【上村専門官】 事務局でございます。本日は皆さん、御議論いただきありがとうございました。重い宿題をいただいたと思いながらも、皆様にこの後、また見ていただけるように主査と御相談させていただきながら、本日いただいたお話を今後まとめていければと考えております。
次回の情報委員会でございますが、年が明けて令和4年の1月から2月辺りを予定しております。これからまた皆様の御都合を伺わせていただくことになりますが、よろしくお願いいたします。また、もし、本日の議論を踏まえて追加の御意見をいただけるようであれば、また12月17日金曜日の18時をめどに、またお待ちさせていただければと思いますので、もし何かありましたらメールで、フォーマットフリーでお送りいただければと思います。よろしくお願いします。事務局からは以上でございます。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございます。また1月から2月の間で次回を計画させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。これで本日の情報委員会は閉会とさせていただきます。どうもお忙しいところ、朝早くからありがとうございました。次回もよろしくお願い申し上げます。
 
―― 了 ――
 

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