情報委員会(第4回) 議事録

1.日時

令和元年10月18日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 個別分野の取組に向けた議論
  2. 情報委員会における下部組織の設置について
  3. その他

4.出席者

委員

西尾主査、乾委員、上田委員、来住委員、喜連川委員、鬼頭委員、栗原委員、佐古委員、田浦委員、瀧委員、辻委員、津田委員、新居委員、長谷山委員、引原委員、福田委員、八木委員、安浦委員、若目田委員

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局担当)、橋爪参事官(情報担当)、坂下計算科学技術推進室長、丸山学術基盤整備室長、相澤科学官

5.議事録

【西尾主査】 皆さん、おはようございます。それでは定刻になりましたので、科学技術・学術審議会情報委員会の第4回会合を開催いたします。本日は井上委員、奥野委員、梶田委員から欠席の連絡をいただいております。また、皆さんこの状況でお分かりになると思いますけれども、喜連川先生は所用により遠方にいらっしゃるため、スカイプでの御参加となります。
 初めに、事務局より資料について確認願います。
 きょうはスカイプを使用するということもありますので、必ずマイクを使っていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【齊藤情報科学技術推進官】 本日はペーパーレス会議とさせていただいております。メーンテーブルに座っている皆様には端末を配らせていただいております。広げていただいて電源のつかない方、左肩に電源ボタンがありますので、こちらを押して立ち上げてください。PDFファイルになっておりますので、議事次第から資料1、資料2、資料3、資料4、参考1、参考2がタブで開いております。上の方にあるタブを切り替えると資料が替わりますので、よろしくお願いいたします。資料やタブレットに不備のある方は事務局までお申し出いただければ新しいものと交換させていただきます。以上よろしくお願いいたします。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。
 それでは個別分野の取組に向けた議論という、議事の1番目でございます。最初に本日の議論の位置付けやこれまでの議論の状況のまとめについて、事務局から説明してください。
【橋爪参事官】 それでは資料に基づきまして、これまでの検討もちょっと振り返りながら、本日の議論について御説明をさせていただきます。今、タブレットの中で、まず参考1、参考2と右の方にあるうちの参考1をまず御覧いただきたいと思います。
 今回、情報委員会では6月以降、第6期に向けた検討を行ってきたということで、まず最初、第1回は第6期のいわば横串的な課題について御議論いただき、この参考資料1にありますような提言をまとめていただいたということで、この時は3点、資料の中で要旨とありますが、教育が重要だ、人間中心の社会の構築を基本方針とすべきである、それからデータに関するルールと情報基盤が極めて重要である、ということを主に提言いただいております。
 その後、秋に入りまして、情報分野そのものの縦のいわば検討ということで、参考資料2でございますけれども、総合政策特別委員会、これは10月と言われておりますが、11月7日に今度、総政特が開催の予定でございますが、そこに向けて、情報分野そのものの取組について検討を頂いていた状況でございます。参考資料2にございますように、これまで8月、9月とそれぞれデータ利活用に向けた情報基盤の整備とかプラットフォームの構築の重要性について御議論いただきましたし、前回は学術界あるいは産業界、それからAXIESの深澤先生も含めて、今後の情報分野における研究に係る動向・ニーズについて御見解を頂いたところでございます。
 今回はここで10月18日、済みません、これは過去の資料なので予定となっておりますが、本日は計算資源の整備とネットワーク化についてということ、それから、前回学術界における御検討について喜連川先生からお話がございましたが、それのその後の進捗を踏まえた御説明ということで予定をしているところでございます。
 続きまして、資料1を開いていただければと思います。これまで御議論いただいた点を事務局なりに幾つかの論点としてピックアップさせていただきました。いわば今後の議論の骨子になるようなたたき台だと御理解いただきまして、本日これについても御議論いただければ幸いでございます。これまでの議論の中で、主に大きくは4点出てきたかと理解してございます。
 1点目、情報分野でどういう研究の進め方をするかという点につきましては、やはり情報基盤の部分の強化が今後の日本発イノベーション創出のためには必須であって、情報基盤研究を強化すべきであるという点が1点目でございます。その分野というのは実は論文ではなかなか評価が難しいところでありまして、評価にも踏み込んだ形で取り組んでいかないといけないという御指摘もございました。また、情報分野の研究が要素・分野ごとに分かれていて、もっと連携していくべきではないかということで、ビッグサイエンス化というワードも頂いてございます。もちろん基盤も重要でございますが、実応用あるいはマシンラーニングについても進めていくことは重要かと考えてございます。それが大きく1点あったかと理解してございます。
 2つ目の視点といたしましては、大学をテストベッドとしてSociety 5.0、情報を活用した技術を実証して、社会に出していくようなシステムが重要ではないかという点であったかと理解しております。大学は社会よりも進んだ環境にあって、ここに来ればいろいろなチャレンジができるというような場であったところが、情報の分野は非常に進みが速いので、社会のインフラとかなり差がなくなってきてしまっているということで、今後、そうしたインフラをさらに整備しまして、実証の場として活躍できるような環境の整備が重要ではないかというところでございます。また一方で、情報システムのインフラが大学の教育・研究のもうなくてはならないインフラでありますけれども、その維持・サービスにつきましても非常にその情報・技術が速いものですから、研究者がやはり最先端のところで担わなければならない状況であり、そのサービスの提供に対する負担等が様々増大しているということで、そうした課題をどう解決していくか、あるいはサービスの提供から得られるニーズをどのように研究にフィードバックさせていくか、そうしたある意味エコシステムのようなものを作っていくことは重要ではないかという御指摘もございました。
 3点目は、今回御議論いただきます計算資源とネットワークの話でございます。
 4点目としまして、これは横串のところでも御指摘は頂いてございますが、改めまして、研究データの基盤の整備あるいは活用に係るルールの整備、ここがまだ弱いということで、GDPRのお話も出ましたが、ELSIの専門家との連携も含めましてしっかり取り組んでいく必要がある。
 こういったところが、すいません、まだまだいろいろな意見は頂いていたかと思いますが、大きくはこのような御議論があったかと考えております。本日の御議論のまず出発点としてまとめさせていただきました。以上でございます。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。まずは先ほどお話がありましたように、11月7日に第6期の科学技術基本計画の、我々が通常総政特と言っております委員会が開催されます。そこで情報分野の研究開発としてどういうものが重要かということをきっちりと述べていくことが我々にとっては重要です。前回、9月19日の我々の審議と今日の審議の内容について、11月7日までに事務局でまとめていただいて、11月7日の総政特の会議に備えることになっております。資料1に前回出ました意見を現段階でメモとしてまとめていただいておりますが、今後、今日の議論を踏まえてそれをより充実させたものにして、11月7日にこの委員会からの提言・意見として提示していく予定です。
 それでは、HPCIの計画推進委員会の検討状況について、事務局と安浦委員から15分程度で説明を願います。これは先ほどの資料1の裏面の3のところを、より今後充実させるための議論に資する情報提供ということでお願いいたします。
【坂下計算科学技術推進室長】 それでは事務局から、まず資料2に基づきましてHPCIの整備状況と、第6期の基本計画に向けたHPCI計画推進委員会の検討状況について御説明をさせていただきます。
 資料2の1ページを御覧ください。こちらがHPCIの概要になっております。まず、平成18年度からスーパーコンピューター「京」の開発・整備が推進されてまいりました。平成23年にTOP500で1位を取った後、平成24年から31年までの7年間供用され、本年8月に「京」はシャットダウンしております。この「京」を中核として国内の大学等のシステムをSINETで結び、全国の利用者が1つのユーザーアカウントで用途に応じて多様なシステムを利用できる仕組みがHPCI、革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラでございます。これは平成24年度から運用してまいりました。この検討の場がHPCI計画推進委員会でございますけれども、平成26年に、今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループで今後のグランドデザインが示されております。その内容は資料の下部にございます。
 それでは続きまして、次のページに進んでいただければと思います。2ページ目は「京」の概要です。ここは省略いたします。
3ページ目でございます。現在、「京」の後継機であるスーパーコンピューター「富岳」の開発を進めております。「富岳」につきましては、平成26年から開発を開始いたしまして、昨年度末から製造の段階に移っております。令和3年から4年の供用開始を目標に、「京」の最大100倍のアプリケーション実効性能を目指して開発を進めております。
 「富岳」の性能につきましては次の4ページ目に書いてございます。こちらは省略いたします。
 5ページ目でございます。「京」と同様に「富岳」につきましても、このHPCIの中核として運営を進めていくことを考えております。また、この「京」から「富岳」への端境期が生じますけれども、この間はHPCIに参加いただいている大学等のスーパーコンピューターの計算資源の提供を拡充して、利用者に提供させていただいております。
 その次、6ページ目に行っていただければと思います。こちらがHPCIに参加いただいている大学等の計算資源の今後のロードマップになってございます。
 次のページに進んでいただければと思います。こちらですけれども、HPCIはSINETを利用して、全てシステムがつながっております。
 次に進んでいただければと思います。8ページ目、こちらはHPCI計画推進委員会の概要でございます。HPCI計画推進委員会は平成22年に設置されております。HPCIは、ユーザーを中心とするコンソーシアムからの提言を受けて国の方針を決めていくという仕組みになっておりますけれども、国としての必要な検討を行う場として設置いたしました。この委員会に参加されておられる先生方、上田先生、喜連川先生、田浦先生も委員でいらっしゃいますし、主査は安浦先生に現在お務めいただいております。
9ページ目でございます。HPCI計画推進委員会の体制でございますが、その下にポスト「京」の開発のシステム、アプリケーションに関するワーキンググループ、それから今後の利活用の推進に関するワーキンググループが設置されております。また、将来のハードウエアの利活用・新課題の推進であるとか、将来のHPCIの在り方に関する検討ワーキンググループもこの委員会の下に設置されて、検討を進めております。
 次、10ページに進んでいただければと思います。直近の第5期は令和元年から開催しておりますけれども、3回開催されております。まず、5月にはポスト「京」、現在「富岳」ですけれども、「富岳」の利活用促進・成果創出加速に関するワーキンググループの報告がまとめられました。また、6月には将来のHPCIの在り方に関する検討ワーキンググループの報告がまとめられ、7月に報告されております。さらに先月、9月にはこの第6期の科学技術基本計画に向けた今後のHPCIの方向性に関する意見交換がなされ、方向性がまとめられております。これらについてはいずれも、この後、御説明をいたします。
 それではまず、ポスト「京」、現在「富岳」の利活用促進・成果創出加速に関するワーキンググループの概要でございます。まず、現在の計算科学の動向として、非常にデータ科学、AIでのHPCの利用が進んできていることを踏まえまして、第5期基本計画の掲げるSociety 5.0を実現するためには、シミュレーションとデータ科学の両手法を活用し、人間の知恵や知識とも融合させ、新たなパラダイムを創り出していくような研究開発が求められている、ということが大きな背景としてまとめられております。
12ページがポスト「京」からの成果創出についての方向性でございます。
 また、13ページは利活用の基本的な考え方になっております。
 そして14ページですけれども、このワーキンググループで今後に向けての課題として、最後4章にまとめてあるところがあります。HPCIは国家的科学技術・学術情報インフラとして安定的な運用と切れ目のないサービスを継続することが重要であるということ。また、スーパーコンピューター、高速ネットワーク、大容量記憶などのハードウエアインフラ、大規模データベース、ソフトウエアライブラリー等の情報基盤全体の整備・運用の在り方については、今後議論がなされることを期待、ということがまとめられております。
 それから15ページ目でございます。こちらは将来のHPCIのあり方に関するワーキンググループの概要となっております。大きく4点、方向性がまとめられておりまして、まず1点目は、アーキテクチャーの多様性とプラットフォームの整備ということで、将来的にはHPCIには異なるアーキテクチャーを混在させ、多様なアプリケーションに適応させるべきではないか。フラッグシップマシンの定義や役割の再検討、HPCIの全体構成の長期的、俯瞰的視点からの検討が必要。さらに、計算基盤利用プロセスの高効率化、高生産化を実現するための取組を行うことの重要性も増していく、ということがまとめられております。
 2点目としまして、HPCI内外から得られる大規模データ処理のインフラであるHPCIをそのニーズと整合性のとれたシステムとすべき、ということをまとめております。
 3点目としまして、HPCI分野の国際連携の推進。それから国と民間それぞれの特徴を踏まえた上で、ユーザーから見た最適なHPCIを実現すべきということ。
 4点目は人材育成となっております。
 これはHPCI計画推進委員会の小林先生を中心に、若手の先生方に集まっていただき検討していただいた提言という位置付けになっております。
 以上が概要になっております。この後の16ページ、第6期に向けた検討の方向性につきましては、安浦主査から御説明いただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【安浦委員】 引き続きまして、HPCI計画推進委員会の主査を務めさせていただいています安浦から報告させていただきます。16ページ、これがHPCI計画推進委員会として第6期の科学技術基本計画に向けたいろいろな議論をまとめ、今後の方向性ということでまとめたものでございます。
 まず、3つポイントがございます。今後、ポスト「富岳」のような大きなコンピューターを国家プロジェクトとして一つ作っていくという話になるのかどうかというのが一つ大きなポイントになってくるということです。それについては例えば量子コンピューターのような最適化問題や暗号計算などにめちゃくちゃ強いコンピューターがひょっとしたら5年後ぐらいにいろいろ使われるようになる可能性もあるという指摘も想定して、それぞれの特定分野に強みを発揮する専用的な計算資源がそれぞれの分野のHPC、ハイパフォーマンスコンピューターとして役割を分担するような環境を作る必要があるのではないかということです。実際に今、専用のハードウエアアーキテクチャーを用いる場合もあれば、汎用性の高いハードウエア上に仮想化技術でそういうものを作っていく場合もある。そういう多様な計算基盤の環境を考える必要があるというのが1点目です。
 2点目は、多様なシステムからなるバランスの取れたHPCIということで、国や民間によって今後提供される先端的な計算資源の動向をしっかり見据えて、日本全体の科学技術・学術研究でどういう情報インフラが必要かということを考える必要があるということです。多様なシステムから構成されるバランスの取れたHPCIを検討していくという方針で臨む必要があって、これは単なる計算資源だけではなくて、大規模なデータベース、あるいはそれらをつなぐ高信頼なネットワーク、こういう三位一体できちっと考えていく必要があって、その上でどういうふうにデータが流通するかということまで考えた上で、どこにどういう投資を国としてやるべきか、どういう技術開発をしていくべきかというようなことを考え、システムの更新あるいは保守の体制を考える必要があるというのが2点目でございます。
 3点目は、ソフトウエア技術、これが必ずしも日本ではしっかり育成されていないのではないかという危機感をベースに、応用分野別のコ・デザイン、これは「京」でやってきたことでもあるのですが、それをもっと個別の応用ごとに作れる技術を自前で持つということです。あるいはコンパイラーとか仮想化技術、これはOSも含みますけれども、そういったものをきちっと開発できるような人材及び技術力を国全体として持つようにして、先ほどの2番目で言った計算資源あるいは通信資源、データベース、そういったものをしっかり運用できる環境を作って、全ての学術分野に提供できる必要があるのではないかということでございます。特に汎用的な基盤ソフトウエアの研究開発・普及を支える人材を長期的視点から継続的に育成、支援していくことが重要であるということで結んでおります。
 HPCIという、今まではどちらかというとスーパーコンピューターだけを考えていればいいという発想であったものをここで大きく転換する必要があって、国全体で複数の専用マシンあるいは汎用マシンがネットワークでコネクトされて、しかも大容量のデータベースともつながった形で、国全体で大きな計算基盤を作っていくという大きな方針に切り替えるタイミングではないかというのが、この論点のまとめの趣旨になっております。以上でございます。
【西尾主査】 坂下室長、また安浦委員、どうもありがとうございました。特に安浦委員から、第6期の科学技術基本計画を考えた場合のHPCIの方向性については、大きな転換点になるのではないかということで御説明がございました。後で議論はまとめて行うことを考えておりますけれども、ここで御説明いただいた内容につきまして、どうしてもここの部分は不明なので聞いておきたいとか、そういう観点からの御質問等ございませんでしょうか。よろしいですか。
 それでは、次に、前回の会議でも喜連川委員から御報告いただきましたけれども、NIIと情報処理学会によるラウンドテーブルの議論の状況について、その後の議論を踏まえた御報告を頂くことになっております。喜連川委員から15分程度でよろしくお願いいたします。
【喜連川委員】 すいません。東京にいることができなくて、リモートからの参加をお許しいただければと思います。随分悩んだのですが、今、神戸におりまして、これは実は韓国とのアニュアルコンファレンスなんですけれども、やはり今の国情を考えると韓国との意識をしっかり取ることが重要かと思いまして、リモートから参加させていただいた次第です。
 先ほどから感じているのですけれども、このテレコンファレンスのテクノロジーというのは非常に弱いことが分かりました。冒頭、橋爪参事官がおっしゃったことはほとんど何も聞こえておりませんので、ここから申し上げることがそれにコヒーレントかどうかもちょっと分からないのですけれども、少なくともこういう情報技術を現場でもっと使って、しっかりやっていかなければいけないのではないかと、まず最初に、これは情報技術なのか通信技術か分かりませんけれども、もっとしっかりしなければいけないと思います。
 さて、今、西尾先生から御紹介いただきましたように、情報処理学会とNIIの中でのラウンドテーブルを開催させていただきまして、前回を少しだけサマライズいたしますと、40ぐらいある研究会のうちのかなりの部分の先生方に現状と未来展望を述べていただいたということでございます。前回申し上げませんでしたが、この長い、1回5時間ぐらいに及ぶ会議に橋爪参事官は全て出ていただきまして、そのITの現場感を感じていただいたことに、本当に心から感謝申し上げます。こんな取組は多分、我が国で歴史上初めてではないかと思います。
 その結果、前回申し上げましたように、国家の施策として見ますと、アプリケーションというのは、個々でいろいろ当然のことながらなされていまして、ファンディングエージェンシーとしては、もちろんJSPSの中にやりたいことを記載することもできますし、戦略目標としてJSTからもやることができますし、もうちょっとエクスターナルにはNEDOとかAMEDとかいろいろなものがある。ですので、アプリケーションレベルの課題設定は比較的やりやすいということがあります。
 一方で、先ほど来、安浦先生から御紹介いただいたようなスーパーコンピューターは共用法で守れますので、国家レベルで計画を立ててきているということがあります。そして最近では、いわゆるAIのブームの中で、マシンラーニングに関しましてはJSTと理研へ予算が付与されているということです。前回申し上げましたように、一番やはり見えていないミッシングパートというのは、安浦先生の3番目のイシューに挙げられていたかと思いますけれども、いわゆる基盤ソフトウエアの部分がはっきりしないといいますか、統合的な施策がなされていなくて、それが理由で我が国からは、何というんですか、インフルエンシャルな、基盤となる部分でのソフトウエア発信がほとんど今までは難しかったというのが実情ではないかということでございます。その経過を踏まえて今回さらに議論を行いまして、このスライドが見えているのか見えていないのかがよく分からないですけれども、見えていますか、このピンク色がこの……。
【橋爪参事官】 スライドは出ております。それでお手元の資料3を御覧いただければ、さらにくっきりと御覧いただけると思います。
【喜連川委員】 それで右の方に4つポチがありますように、これからのターゲットとするシステムというのは、今までのような比較的小さなレベルというよりも、より大きなものになる。つまり、ソサエティーレベルになるのではないかということで、こういう大規模なソフトウエアを作れるようなことの研究が不可欠になってくるのではないかという気がします。ぱっと見ていただきますと、例えば多くのスマートフォンのアプリケーションなんていうのは、大体1週間で1,000万ダウンロード、要するに最初からグローバルを意識したようなソフトウエアシステムになっておりますし、先日来の大きな災害に関しましても、1個1個というよりも、日本のかなりの部分を対象にしたソフトウエア開発が必要になってくるということもあり、社会レベルで動くソフトウエアを作っていく必要があるだろうということです。
 一方で、翻ってみますと、我が国はSociety 5.0という言い方をしておりまして、これはグローバルに見ますと5.0というのはかなりいろいろなところがだんだん言葉を理解するようになってきたということがあります。前回、このソフト基盤が重要だということを申し上げましたときに、一つ参事官からコメントを頂きましたのは、もう少し分かりやすいキーワードが欲しいという御発言もありましたので、ちょっと考えてみましたのは、Society 5.0のためのICTプラットフォームというようなソフトウエアレイヤーを作っていくのはどうだろうか、というのがここでのポイントになっております。
 2つ目のポイントにございますように、OSとか、あるいは安浦先生がおっしゃいましたようなコンパイラーですとか、そういうものはそれだけを作っていても意味が希薄になりますので、5.0の具体的な応用を実証可能なような、実現可能なようなことを常に意識するということでございます。それはそのピンク色の7つぐらいの要求をたまたま書いてみておりますけれども、それを支えるような、ここではS5のKernelという言葉を引いていますけれども、この言葉は決めたわけではございませんで、仮にそういうイメージかなという言葉で表したところです。
 この黒い青枠で囲ったようなソフトウエアを基盤ソフトウエアの先生方と、そして応用分野のITの研究者が連携しながら作るというようなことが、今後一番日本にとって重要になってくるのかなという気がするということであります。
 ざっくり申し上げますと、4つ目のポチですけれども、エナジーアウェアネスというのは過去10年ぐらいやってきているところではあるのですが、ただ、エナジーバジェットがギブンで、それで何をどうするかというようなところに関しては、必ずしもシステムソフトウエアレベルの中に全部組み込まれているかというと、そうでもないだろうということ。そういう意味で、エネルギーというものは前面に出さざるを得ない時代が来たということ。それから、御案内のように、コンピューターにとって一番のヘデイクはセキュアですので、エナジーとセキュアネスをバイデザインとして組み込んだような基盤ソフトを今後どういうふうに作るかというのを主たるターゲットとして研究していく。それを先ほど言いましたような大きなレベルで作っていくということでございます。
 この議論は下にお名前を書かせていただきましたように、英語の2文字か3文字というのは情報処理学会の研究会の略称ですのでちょっと分かりにくいですけれども、OSというのはオペレーティングシステムで、オープンサイエンスではありません。ITSというのはITSそのもの、CSECというのはセキュリティーの部分、DPSというのは分散処理、PROはプログラミング、ARCはアーキテクチャー、ちょっと鷲崎先生が抜けておりますかな、これはソフトウエア工学と。全部ではないですけれども、広く基盤ソフトウエアの先生方に御参画いただきまして、この議論を進めてきたということです。
 詳細は省きますけれども、先ほどこれも安浦先生から御説明がありましたように、トラディショナルなハードウエアとそうではないようなノントラディショナルのものが結構いろいろ出てきておりますので、そういうものを対象範囲にすると。それから、今まではどちらかというとクラウド志向であったものが、今後どんどんエッジ志向に進んでいくだろうというような、そういうハードウエアレイヤーの部分と、その直上にいわゆるオペレーティングシステムからコンテナ技術を代表するようなバーチャリゼーションの技術というもの、それとこの3種類が融合したようなレイヤーがあると。ピンク色の部分、薄い赤い部分がマシンラーニングとデータが今、世界を変えているというところで、その下の緑のレイヤーを注力していくということです。
 上の方に日本の地図が2つございますけれども、これは頑張ればもうできるのではないかと。つまり、基盤センターのコンピューティングリソースと一定程度のデータスベースを今後整備していくことによって、それをSINETでつなぐ。SINETも最近モバイルSINETといって、無線も入れておりまして、これから今年末か来年に向けて5Gも入れようと思っておりますので、これによって日本スケール、ジャパンワイドのシステムソフトウエアを多くの大学の研究者が開発していけるような環境を作って、日本のソフトウエアを元気にしていくということを考えている次第でございます。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【西尾主査】 喜連川先生、本当に重要な御指摘をたくさん含んでいます今までの議論の報告を頂きまして、まことにありがとうございました。特にSociety 5.0のカーネルという言葉も、非常に良い名前ではないかとも思いました。それと、喜連川先生のお話しになった点と、安浦先生のお話しになった特に3番目の点に関しては、結構共通する部分があるということも強く思いました。
 さらに、喜連川先生が最後におっしゃっていただいたことが重要です。ご提案いただいた研究開発を進める環境は、これからレベルゼロから作るのではなくて、今の環境をもう少し強化していけばそのような研究開発の環境が整うであろうということです。第6期基本計画期間の開始が、間近に迫ってきていることを考えますと、重要な御指摘ではないかと思っております。前回はこの喜連川先生のお話の中では、図中のグリーンの部分について、日本としてはここで国際的に戦っていける研究開発を今後強化すべきだということでおっしゃっていただきました。それを図中のブルーの枠で囲んだもの全体として見ていくということで、私もより深く理解させていただいた次第です。
 それでは、今いただきました報告も含めまして、情報分野として第6期の科学技術基本計画に提言していくべき事項の議論をこれから行いたいと思います。冒頭、事務局から資料1を説明してもらいましたけれども、資料1を情報委員会の意見の取りまとめの骨子案と考えていただきまして、今までの2つの報告の内容も含めて、いかに内容の濃いものにしていくのかという観点で、皆さん方から御意見をいただければと思います。是非ともよろしくお願いいたします。できるだけ広く意見をいただきたいと思いますので、簡潔に御意見をいただきますと助かります。皆さんには必ず一言御意見をいただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。どうでしょうか。瀧先生。
【瀧委員】 いろいろな技術について、日本の立ち位置をはっきりしておく必要があると思います。日本の強みが発揮できる部分か、あるいは後れないようにする部分か、あるいは裾野を広げるようにする部分か、深掘りをする部分か、リーダーシップをとる部分か、産業界のために強化する部分かなど、いわゆる世の中に分かりやすい指標を明らかにして、それぞれの分野を見られるようになると良いと思います。以上です。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。今、瀧先生におっしゃっていただきましたように、日本の特徴、日本の強いところをどういう形で捉えて今後の研究開発を進めるのかということを明確にしていくことが大事だということだと思います。これは情報委員会から提示する案を総政特で理解いただくには非常に大事だと思いますので、事務局でよろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。どうぞ。
【津田委員】 いいですか。2番のエコシステムの話のところで、「情報システムインフラに係るサービス提供を通じて、情報分野の研究者が、他分野の研究、教育等からのニーズを吸い上げ」というところですけれども、これはインフラだけではないので、例えば実際やっていることは知識とかノウハウとかを提供しているものが多いので、ただコンピューターを使ってくださいみたいな感じではないので、そこだけちょっとよろしくお願いします。
【西尾主査】 事務局から何かございますか。
【橋爪参事官】 了解いたしました。
【西尾主査】 どうもありがとうございます。ほかにどうぞ。田浦先生。
【田浦委員】 喜連川先生の主なお話に対する議論に一緒に参加していた者としてのフォローとして。話しているといつもあるのは、この話は多分基盤分野が重要だから、単に普通に研究予算を付けましょうという話だけではなくて、そういう話ではなくて、基盤分野というのは継続性が非常に大事で、何か新規性とか論文になるとか、そういうことだけを基準にして、例えば5年間の予算を取りにいくというようなことだけではなかなかインパクトが残せないというのが。基盤分野では特に継続的に開発がなされていて、それを使ってみんなが研究するというようなソフトウエアが非常に多く作られていて、そういうところでやはり日本は存在感を発揮できていなかったり、似たようなことはやっているんだけれども、やはり人が使うということになると米国とかの、いわゆるみんなが使いやすいところまできちんと整備されたものを使っているというのがあります。
 なので、継続性が大事で、それは一言で言うと、いわゆる研究というのと、今継続してやっているというと運用という感じになってしまうと、その間という感じだと思うんです。まあ、開発。その職種としてもいわゆる先生、研究者というのでは必ずしもないかもしれない。アメリカだとリサーチプログラマーと呼ばれるような人たちが非常に研究の現場とかアウトプットを支えているというのがあって、そういう職種で継続的に基盤の成果を発信できる、そして最初の1イテレーションだけではなくて、その後のメンテとか少しずつユーザーに普及させるところまでを継続的に担える人が非常に大事で、そこは今の基盤センターがややもすると既存の製品を調達して運用というところにかなりの力を注いでいるだけになってしまっているところに、もっと開発的な要素を加えるという体制にできればいいのではないかと思っています。
【西尾主査】 田浦先生のおっしゃったこと、特に最後におっしゃられたことは、私も非常に強く感じます。国家基盤技術と言えるものをサステーナブルに今後発展させるための仕組みを第6期基本計画の間に構築するという観点が重要に思います。事務局、よろしくお願いします。貴重な御意見、ありがとうございました。では佐古委員、どうぞ。
【佐古委員】 ありがとうございます。先日ネットフリックスで「ザ・グレート・ハック」というドキュメンタリーを見て、データが民主主義にいかに影響を与えるかというところで、すごく怖い思いをしたことがあって、今回、この喜連川先生のS5 Kernelソフトウエアのようないいアイデアが是非実現できるといいなと思っています。ここに私たちが高くうたっている人間中心のソサエティーにしていくことが反映できるように、コンポーネントとしてアイデンティティー管理みたいなものがあったらいいのではないかと思いましたので、是非御検討ください。
【西尾主査】 どうも貴重な観点、ありがとうございました。この点も、事務局、是非よろしくお願いいたします。どうぞ。
【八木委員】 私もずっとAIの分野にいますが、30年いながら研究していて、HPCを使ったことがないという。何で使えないかというと、やはり使い勝手が正直悪いというのが本音です。計算リソースとしてはいいかもしれないけれども、現場で使おうと思うとなかなか使えない。それに対して、今回は少し現場を意識した形を多分議論されてきているのだろうと思うのですが。それでもやはり  現場で考えてくると、リアルタイム性とかセンシングがうまくできるとかというような部分での接点を考える必要があります。
 それからもう1点、Society 5.0がパーソナルということを意識するのであれば、この緑の枠の中にパーソナルデータを扱うための仕組みをきっちり組み込まないといけないと思います。現状は単に情報インフラでしかない。その観点が多分に抜けていると思いました。あと、世の中には商用としてAzureやAWSにしてもなど様々なクラウドがいっぱいあります。それらは、非常に使いやすい。安直に使えてしまう。それとの競争力をどういう形で持たせるのかを意識しないと、結局作っても使いたいと思う人がなかなか増えてこないのではないかという気がいたしました。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。今の点について、八木先生は前回にもパーソナルデータの扱いの観点から御意見をいただきました。これはSociety 5.0の実現上での重要課題と考えます。それと使い勝手ですね。どうもありがとうございました。
【辻委員】 先ほど瀧先生からもあったように、日本の立ち位置をしっかり考えながらいきましょうねというお話がございました。やはり継続的なシステム更新を繰り返していくためにはというところで、研究から実装して、さらには運用して、維持メンテしてというのがずっと絶え間なく続いていくわけなのですけれども、その場合に、日本独自の研究開発を進めていくその強みを持つところも重要であると同時に、他国コミュニティーとの付き合い方というか、例えばいろいろな今、通信系ですと大変多くのOSSのコミュニティー等も進んでいるわけなんですけれども、そういったところと協調していく部分とある意味独自でもやっていく部分と、というのを少し色付けしていくようなところが必要なのかなと思いました。以上です。
【西尾主査】 ありがとうございます。非競争領域から競争領域にどのように継続的に発展させるかというところで、当然のことながら国際的な視野をどのように組み込んでいくか。そのような検討なくして、多分国際標準にはなっていかないと思います。御意見、ありがとうございます。
 ほかにございますか。では上田委員、それから栗原委員ということでお願いします。
【上田委員】 このS5 Kernelという考え方は非常に重要なインフラだと思うのですけれども、それに関連してコメントします。これからの科学技術を支える人たちというのは20代、まあ30代の研究者、技術者と言えます。その人たちは今何をやっているかというと、マシンラーニング系は基本的にGitHubだとかそういうものを普通に使っているわけです。日本版のそういうものがほとんどなくて、企業版もほとんどない。グーグルは結局検索エンジンを全部席巻して、私の本務であるNTTもgoogleより以前にgooというポータルサイトを提供していたのですが、インターナショナルに展開しなかったがゆえに、結局は衰退してしまいました。ソフトウエアのOSだけでなくて、検索エンジンもそうですけれども、GitHubもそうです。そういうものを日本で展開するのか、いや、もう日本はそれは諦めて、外国のものを使いますよという方針すらはっきりしていないような気がして。やはりアジアでもっと日本の立ち位置を強くするためには、アセアンだとかそういう国際コミュニティと結託して作っていくのかが重要では。いわゆるEUみたいにですね。そういう国際方針的な展開を考えないと、例えば深層学習のライブラリーも結局TensorFlowだとかPyTorchを使い、幾らPFNが頑張って作った高性能なライブラリー(Chainer)を作っても結局普及しなくなります。それはやはりマーケティングの問題もあるし、そこに皆さんが投資するかという考え方ですよね。結局、皆さん、国際的にポピュラーなグーグルを使っているわけですよね。ほかに検索エンジンがあっても。そういうことを意識していかないといけないと思います。以上です。
【西尾主査】 上田委員としては、やはり前者であるべきですよね。
【上田委員】 もちろんそうです。
【西尾主査】 今の前者で日本がどう戦っていけるかということの、そのモデルを今後きっちりと構築していく必要があります。逆に言うと、このモデルをどう構築していくかということ自体が重要なテーマになると思いますので、その点もよろしくお願いいたします。どうぞ。
【栗原委員】 多様なコンピューターシステムを持つということは非常に専用機の発展とか、今後出てくる量子コンピューターがどんなものが出てくるかというようなことも想定できないような部分もあると聞いていますので、そういう観点からは大変適切だと思うのですが、従来は「京」とか「富岳」のアプリケーション開発においては、それに最適化することがかなり強調されていたと思うのです。それで喜連川先生が先ほど言われた継続性とか、ゼロから作るのではなくて現在あるものをやはり生かしていくと、そういうところをどうつないでいくのかということにも配慮しながらやらないと、逆に効率が非常に悪くなる点があるのではないかという点を少し心配いたします。
 もう一点は、私が毎回申し上げているいろいろな科学分野で情報科学技術が期待されているという視点から見ますと、情報技術はサービスをする側ではなくて、融合研究というのは一緒に作っていくものだと思いますので、片方が提供して片方が使うということではなく、やはり一緒に作っていけるような部分をより作っていくことも大事なのではないかと思います。特に津田先生の言われた、インフラだけではなくて知識などを共用するということになると、やはり両側の知識があって新しい技術が出ると思うので、その点を、余りにも今、情報科学技術がコンピューターのように書かれている部分がちょっと強いかと思うので、そのあたりは意識していただけるとありがたいと思います。以上です。
【西尾主査】 後半の部分はおっしゃるとおりだと思います。前半については、是非、安浦先生、何かコメントをお願いできませんか。
【安浦委員】 我々も常に全部捨ててやり直そうということを言っているわけではなくて、ただ、今までやってきた発想で一つのコンピューターをフラッグシップで作って、で、みんなそれに乗っかろうという発想をこのまま続けていいかどうかというのは、このタイミングでしっかり考え直す必要があるという意味で申し上げたものでございます。
【栗原委員】 私もその基本方針は大変賛成でして、ポスト「京」のワーキングに入れていただいますが、そろえるという方向性のみでなく、国内にある多様な考え方とか論理性のある計算とか、そういうものをいい形で育てていくのは非常に大事なことだと思います。その方針に反対ではなく、ただ、最近の活動がそういうものなので、そこをどうつなぐのかというのは注意しながらやることが必要なのではないかという意見です。
【安浦委員】 ありがとうございます。よろしいですか。
【西尾主査】 どうぞ。
【安浦委員】 その話と、先ほどの田浦先生のお話などともつながるわけですけれども、やはり前回の梶田先生や深澤先生のお話の時にも議論の中で出ましたけれども、医学系は病院という現場を持っています。情報系は実際に大学という、これは現場なんですよね。現場を持っていながら、それに対応する組織が極めて脆弱であるというのが、田浦先生が御指摘になったことの一つの裏返しだと思うんです。そういう意味から、大学病院みたいな情報における組織を日本でやはり、NIIだけではなくて、各大学の現場に近いところが持って、教員だけではなくてハイレベルなエンジニア、現場対応のエンジニア、それからデジタルトランスフォーメーションで、佐古さんのおっしゃったように、社会制度自身が変わっていくので、リーガルなイシューも含めた制度設計をやる人とか、そういった人たちがトップレベルの情報基盤環境を日々維持し、更新していく。そういうアクティビティーができるような組織を持つというのが、一つの目的を達成するための方策ではないかと思います。
 全ての大学がこんなことをできないので、例えば今の大型センター群がそういう役割を担って、サービスを国公私立大学あるいは研究機関、あるいは企業でもお金を払えばサービスが受けられるという体制で、まさに喜連川先生が言われたようなSociety 5.0の基盤を、そういう現場を持った病院みたいなところが担っていって、日々起こってくる新たな現象に対してその場で反応していく組織作りが必要になってくるのではないかと思います。
【西尾主査】 どうも安浦先生、ありがとうございました。先ほど田浦先生もおっしゃったことともつながるのだと思います。
 ほかに御意見ございますか。どうぞ。
【新居委員】 先ほどもいかに使ってもらうかということが大事ということでHPCIの議論があったと思うのですが。基本的にはやはり民間が普通に何かを開発するときは、誰がどういうふうに使って、それによってどんなインパクトがあるのかというのを想定して、その想定される使う人たちにとってどのぐらい使いやすいかということをきちんと、ヒアリングを含めて考えた上で作ることが基本かなと思っています。ですので、計画の段階でも、例えば今は大企業が申請して使う事例もいろいろ拝見しましたが、研究室ではこういうふうに使うのではないかとか、企業はこういうふうに使うのではないかとか、もしかしたら今後スタートアップとかにも開いていくことで、先ほどのAWSに代わるような仕組みとか、ダーウィンに代わるような仕組みとかができてくるということだと思いますので、そういう人たちがどういうふうに使うのかということと、それによってこんな新規事業が創出されるのではないかとか、こんなビジネスができるのではないかみたいなところまで想定された上でやられるということは基本的にすごく大事かなと感じました。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。今おっしゃられた視点は非常に重要かと思いますので、よろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。どうぞ。
【鬼頭委員】 まずこのS5 Kernel、これは進めていただきたいと思います。どんどん進めていただいて、やはり日本発というものはやっていただきたいというのは、私も日本人ですからそれは進めていただきたいのですが。先ほど先生がおっしゃっていたように、実は私たちの会社もAIとかをいろいろやっています。しかし、スーパーコンピューターを使った人間はゼロです。例えば、私たち、いろいろな会社とお付き合いしていますけれども、スーパーコンピューターを使うという概念がある人たちはいません。使った方たちともお話ししたのですが、チューニングが難しい、使い勝手が悪いというので、皆さん、諦めていくというのが非常に多いと思っています。ということでは、ここでOSで使いやすいものを作っていくのはまずは大賛成です。なので、これは進めていただきたいです。
 なのですが、この論議の中で非常に感じるのは、これはもう正直、先生方に嫌われてしまうかもしれないですけれども、もうこれを見ると全部、ネットワークも、書いてある参加名も大学だけなんです。企業の中でR&D部門というのもありますが、実はR&D部門を持たない会社もたくさんあります。それは先ほど先生が言ったように使いやすいものを作って、その上で、これは某メーカーさんと今お話をしていることですけれども、上に載るOS、独自OSも載るのですが、例えばLinuxベースで作りましょうとか、そうするといろいろなOSが載ります。このベースの上に、では独自で開発していくもの、先ほどちょうどよい意見が出たと思うのですが、私たち日本ではここに焦点を当てて開発をしていくAIエンジンとかそういうものもあると思っていますし、けれどももう世界の人たちがやっていますので、誘致してしまえばいいと思うんです。すばらしいコンピューターリソースがあります。こうです。私たちの上で、世界の皆さん、開発してください。
 どうしても何となく、日本のために、日本の企業が、と思っていますが、これはすばらしい計算資源ですので、世界の人たち、私たちの上に来てください、私たちの上で開発してください。オープンコミュニティーなんかだと、オープンソースの集団だと、そういうコミュニティーの集団が出てきて、そういう形でどんどん拡散していくんです。それが標準化の一歩になっていくと思っているんです。
 という意味では、私はどちらかというと使いたい方なので、この線でいくと青い線の上の紫色のところに私は所属していますので、これは現在進めていただくのですが、この紫色のアプリとかを作っていく人間たちが使いやすい、この青い線の囲っていただいているのは今回の開発の範囲を示されているのですけれども、この囲いをなくすことが日本の経済を発達させて、自分たちの商品があって、まあちょっとソフトバンクは余り税金を払っていないという批判を浴びているのですけれども、企業が発展すれば、税金をお払いして、それが潤滑していくという形になると思っているんです。
 という意味では、是非、これを進めていただいて、もっとオープンなプラットフォームにして、誘致をして、私たち、民もどんどん誘致していただきたいんです。私、そのためだけにここに来ていると思っていますので。
 あともう一つは、多分、民の方がデータを持っていると思います。私たち、ヤフーという子会社もあったり、いろいろ孫は投資していますので、いろいろな会社に投資していますけれども、そこのデータ量を見るとGAFAを超えるんです。全部が使えるわけではないですけれど。とやると、そういうパワーを利用して、これを活用してというエコサイクルを是非計画していただきたいかなと。もしかすると、文部科学省さんだけでなくて経済産業省さんとか、また、がんの研究とかそういうところですと厚生労働省さんとかとのパイプというのも必要になってくるかもしれないですけれども。是非そういう形でこのプロジェクトを進めていただきたいというのが希望です。よろしくお願いします。
【西尾主査】 今、御指摘いただいたことは結構重要であり、オープンコミュニティーということをどんどん考えていく必要があると考えます。
 後の方でおっしゃいましたデータのことも非常に大事なことであり、その実現を図っていくことは重要と思います。
【長谷山委員】 北海道大学の長谷山でございます。今まで行われた議論や本日まとめていただいた資料に異議はありません。大学人として資料にある指摘は理解できるもので、企業の皆様からの大学が海外の動きに比べて遅れていると言う指摘を理解しておりますし、海外の教育コンテンツやその提供インフラの現状も、大学人として身近に体験しております。
 一方で、私が発言させていただきたいのは、Society 5.0や超スマート社会などのキーワードが頻繁に使用され、社会が大きな変革期にある中、情報学だけでなく、広くサイエンスの環境に、今まで体験したことのない変化が生じている点についてです。センサーの低廉化、IoT、通信インフラの強靱化、安価に入手できるGPU、そして機械学習やAIの高度化で、深層学習は、データから特徴を学習し、存在しないデータを生成することも可能となっています。大変なスピードで動いています。このような環境で、学生たちは、AI開発コミュニティーからオープンソースを入手し、次々と新しいものを使いこなしてゆきます。これが現状です。本日、ここで議論された大規模なハイパフォーマンスのコンピューティングシステムを作り上げるノウハウを我々の国が持つことの必要性を理解すると共に、情報分野の研究ターゲットを広く考えると、実は若手研究者や学生たちは先に進んでいるのではないかと思っております。
 具体的な例として、当研究室の様子をお話しすることをお許し頂きたいのですが、20名ほどの学生が自身の研究とその応用分野を個別に持っております。学生が取り扱うデータも、画像データや音響データ、ネットワークデータやSNS、生体センサーなど、様々です。学生は、自身のデータに親和性がある開発コミュニティーを探し出して研究を進めるだけでなく、異なるデータを用いる学生に情報を展開していくわけです。開発コミュニティーのスピードに呼応するように、大変な勢いで進んでいきます。このような現状が既に大学の研究室でも起こっていることを考えた上で、次の期をにらんだ計画を立てる必要があると思います。そのためにも、次の期を担う若手研究者や学生たちに理解されるものとなっているかを確認する必要があると思います。
【西尾主査】 非常に貴重な御指摘なのですが、そのことに関して何か御意見ございますか。ではどうぞ。今の御意見と関連すると考えていいですか。
【福田委員】 はい。大阪大学の福田でございます。今の御指摘、またこれまでの各先生方の御指摘に鑑み、今後6期に向けてHPCIをさらに発展させていく中で、多様なシステムをつなげて様々な営みをしていき、そこで学術界のみならず産業界のデータも含め様々なデータを持ち、それを必ずしも我が国だけのためというものとはせずに、時には我が国以外からも我が国のインフラの方に来てもらってそれを開発し、使っていく場としていくということを考えていく場合、様々なものがつながって使われやすいような環境を整えるためには、先ほど来、幾人かの先生方から御指摘のあった例えばパーソナルデータに関することなど、制度的なことも含めて、留意して対応すべきことについて、関係する人が皆留意して対応しやすいようにするための仕組み、例えば技術的なことであれ制度的なことであれ、こうこうこういうことに留意したシステムとしているかなどというチェックリストのようなものができるとともに、そのチェックリストに例えばSociety 5.0など我が国から発信していくべき価値が盛り込まれておれば、それが我が国から国際社会に提示する技術、そしてその使い方の方向性を示すものとなり、それを中長期的にも我が国の取組、これが重要なところを外さずに国際的にも貢献していくこととなる方法の一つとなるのではないか。このように考える次第でございます。
 なぜこのようなことを申し上げたかと申しますと、ことAIの分野において、欧州委員会のハイレベル専門家グループ(AI HLEG)が「信頼できるAIのための倫理ガイドライン」を公表しており、そのガイドラインでも信頼できるAIを実現するためのチェックリストを掲げており、これがどういったことに留意したらよいのかが分かりやすく示されており、関係者にとって対応しやすいものとなっているように見受けられます。OECDも、そういったものを受けて、OECDの理事会勧告を実現するために講ずべき措置に関し実務家向けの具体的なガイダンスを検討していると聞いております。
 多様なシステムをつないでいくに当たって、つなげる人が様々な目的で様々な意図で様々な用途のシステム、また様々な機能のシステムをつなげていって、いろいろなものを開発し実装して使っていくということを考えると、誰しもが分かりやすいチェックリスト、そこにSociety 5.0などの価値を盛り込んだものを発信していくことができればよいのではないか。このようなことを考えた次第でございます。以上でございます。
【西尾主査】 おっしゃったチェックリストというのは、例えば、国際共同的なプロジェクトを進めるときに、ある条件を厳密にクリアしているかとか、そういうことをチェックしていくという感じなのでしょうか。
【福田委員】 幾つかのレベルがあろうかと思われます。まずは観点ないし見地を示すこと、こうこうこういうことに気を付けていますかとか、そういう観点・見地を示すことが最低ラインとしてあろうかと思われます。その上で、どの程度のことまで書くかというのは、そこはコントロバーシャルな事柄とそうでない事柄、また多岐にわたる立場のある事柄と皆が共有できる価値に係る事柄とで違いがございましょう。それは、論点論点に応じて考えていくべきところかと思いますが、少なくとも分かりやすいものとするという見地からは、基本的には考えるべき見地、留意すべき見地を示し、関係者がそれぞれその見地についてどのように取り組んだのかということについて説明ができるようなチェックリストができれば、誰しもが分かりやすく勘案すべきことを勘案できるのではないか。このように考える次第でございます。
【西尾主査】 おっしゃっておられますチェックリストに関しては、国際的にスタンダードとなるようなものを、日本として他の国々とも協調しながら作っていくことの重要性も含まれているのだと思います。どうもありがとうございました。どうぞ。
【引原委員】 すみません。この論点の1番にあります内容の中で、特に評価というのが書かれておりますけれども、論文でない評価という表現です。これが非常に重要なポイントだと考えています。過渡的な科学の立ち上がりの時に、論文というのは後手後手に回っていって、論理を構成するというのは後回しになります。ですから立ち上がりの時に重要なのは、評価はどういう原理であったかというよりも、タイムスタンプであったりとか、アクセスの容易さであったりとか、情報が得られるというリワードがきちんと確保されて優先権を取っていくというか、そういう状態にあると思います。その中で落ち着いてから論理が構成されていくというのが、過去の例で言えば材料開発でもそういうものがあったと思います。今などは、例えばバイオなどではそういう状況がある。ですから、評価を論文に置くという方法は今の過渡的な状態では成立しないのだろうと思います。
 ですから、それに対してやらないといけないことは、分野が違ったときに別の尺度だから理解できない、計算値が違うとか、そういう話ではなくて、共通の尺度で議論できて、計算なら計算の精度がちゃんと情報の分野で保証されているということをネットワークの中で担保していきながら分野を渡っていけるという環境を作ることです。そうでなければ、やはりタコつぼの中に入っただけで、それぞれで新しいことを見付けましたよね、論文を早く書きましたよね、としかならないであろうと。そういうふうに考えます。
【西尾主査】 これは前回も出ていましたけれども、Society 5.0のカーネルの分野を活性化していくためには、その分野で出ている成果を従来と異なる指標で評価する必要があります。この分野に特に若い世代の方々が積極的に参入していくことが重要ですが、従来通りの評価指標では、自身のキャリアパスを考えたときに分野の特性から躊躇してしまう結果になってしまう可能性があります。今までにない評価の指標を考えて、この分野に若い世代の研究者が積極的に参入していくような仕組みを早急に確立することが重要であり、今おっしゃったことと深く関連していると思います。
 それと、評価指標として、本当に論文の数だけで良いのかに関しては、徐々に考え方が変化しつつありますので、そのことを好機と捉えてきっちり考えていく必要があると思います。
 先ほど、長谷山先生がおっしゃられたのですが、第6期の基本計画を考えるときに、若い世代の意見を聞くというような仕組みはあるのですか。情報分野だけに限らず、全分野を対象にしてですが。
【橋爪参事官】 今、もう人生100年時代でございますのであれでございますが。すいません、ちょっと私も特別にすごく若手のというところではないです。そこはちょっとまだ把握できていないのですが、情報処理学会さんの中ではかなり若手の研究者の方も御参画いただいていたと理解はしております。注意していきたいと思います。
【西尾主査】 長谷山先生の御意見を伺いますと、やはり考えさせられますよね。ありがとうございました。どうですか、今日まだ意見をおっしゃっていない方。
【若目田委員】 よろしいですか。
【西尾主査】 はい、どうぞ。
【若目田委員】 全体の方向性に関しまして、前回の経団連からのプレゼンの要素を、特に2項めないし4項めとかに入れていただいておると思いまして、非常にありがたく思っております。
 全体、これをぱっとみたとき、先ほど税金を使っていることにということがありましたけれども、そういう納得感とかアカウンタビリティーみたいな観点で言ったときに、やはりSociety 5.0に向けてということがあったと思います。喜連川先生の中でも社会的なレベルの研究とありましたけれども、やはり日本が優先して取り組む部分ということで、例えば少子高齢化とか昨今の防災の問題とか、そういうようなものとかにいかに貢献していくかというような、何かそういうアウトカムがつながるような見え方がするといいのではなかろうかと、全体を見て感じました。
 特に、これは我々民間にも課題があるのでしょうけれども、いろいろPoCを各地で個別にやりますみたいなところがあるのですけれども、やはりそういう大きな目的に向けて、そういうようなものを最初からアカデミアもいろいろなところに分散しているものを戦略的に徹底的にそういったものに取り組むとか、そういう個別のPoCで終わらないような仕組みであるとか、そういうようなところがまさにこういう文科省が主導するような研究領域の中で一つ束ねていただくというのも一つの方向ではないかとちょっと感じました。
 それともう一つ、国の政策の中でまさしくスマートシティー。スマートシティーの上で、先ほど言ったような社会課題を解決していくというシナリオになっているわけで、スマートシティーのコアも、いわゆる都市OSというコンセプトの下でデータの連携とかエッジからのデータ収集とか、そういうようなことが議論されていると思っていまして、そういうものとの兼ね合いというか、少し戦略合わせみたいなところが必要ではなかろうかとちょっと思いました。
 あと、これは佐古委員とか八木委員のところと私も意見は一緒なのですけれども、やはりSociety 5.0に向けての情報分野の在り方ということであれば、やはり人間中心というようなコンセプト、すなわち本当に個人ないし企業間が信頼してデータを流通し合えるポイントだと思います。これは国際間でいえばDFFTということにつながると思いますけれども、やはり個人と研究機関若しくは民間とそうした研究機関とかいろいろなところ、しかもこれがグローバルでデータを流通し合うためには、先ほどあったような個人のIDの安全な保護というのは一つだと思いますし、そういうような要素をもう少し際立たせてもいいのかなと全般感じました。以上です。
【西尾主査】 特に産業界を代表した御意見として非常に重要なものかと思いますので、今の御意見等も、是非、事務局で配慮いただければと思います。乾先生、どうですか。
【乾委員】 これまでの御議論は基本的に全部賛成ですけれども、特に我々HPCの上でAIの研究をしているわけですが、先ほどの上田さんがおっしゃっていたように、例えばどうしてもNVIDIAの上のプラットフォームを我々は使ってしまうわけですけれども、それはもう世界中のエンジニアがNVIDIAに物すごくチューニングをしているわけですね。その上で使いやすいものがどんどん出てきていると。それはもう完全にオープンイノベーションがそこで起こって、その上に乗っかって若い人たちがいろいろやっているという状況があると思います。ですので、日の丸でやっていくことは非常に重要だと思うのですけれども、常に、特にアジアの諸国と連携して、最初からその連携を全部入れた形で計画をしていくことが、またガラパゴスになってしまわないためには非常に重要かなと感じています。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。来住先生、いかがですか。
【来住委員】 私も上田さんがおっしゃったことを大学教育面から追加でお願いしようと思って発言をしようとしていました。そうしたら乾さんも何か似たようなことをおっしゃっていたので、繰り返しになりますが、新しい、大学をテストベッドとする情報研究用のシステムは使いやすさが重要だと本当に思います。技術者教育の面からいいますと、学生がパソコン上で学んだスキル、商用クラウドを使って学んだスキルがそのまま生かせるようなエコシステムでないと、若い人は使わないと思います。GitHubという話が出ましたが、GPUのライブラリーもきっとそうだと思いますし、私はドッカースという、何といいますか、環境を整えるツールが好きなのですが、いろいろなアプリを簡単に開発するために様々なツールが既に使われています。それへの対応を早い段階でしていかないと、このシステムは国際的には使われないのではないかと思います。
 一方、ソフトウエア開発は国際的にする必要がある一方、データの方は全く別の扱いができるというようなインフラの整備を是非お願いします。学生にパソコン上にソフトウエアを作ってもらったとしても、データをそのままクラウドに出すかというと、そういうことは避けようという時もあったりしますので、このS5 Kernelの図ではアプリケーションといいますか、ソフトウエアもデータもぼんと一緒に書いてありますが、そこは早い段階から切り分けて扱えるような設計を是非お願いしたいと思います。以上です。
【西尾主査】 本当に貴重な御意見をありがとうございました。本当に先生の今までの御経験に基づいた非常に有用な意見だと思いましたので、是非、事務局でよろしくお願いします。あと、津田委員、どうですか。
【津田委員】 そうですか。私、一応発言したつもりだったので油断していたんですけれども。
【西尾主査】 そうですね。2回目ですが、もしあれば、どうぞ。
【津田委員】 確かにGPUとかあるし、確かにGitHub……、多分でもこれもGitHubの上で作るのではないかと思って。ちょっと分かりません。分かりませんが、何でしょう、また新しい時代は来ると思うんですね。だから今、はやっているNVIDIAでキュウダテという世界もあるけれども、また新しい世界はやってくると思うので、そこに対して皆さんがおっしゃられているように、例えばアセアンの国と一緒にやるとかという形でまたアプローチしていけばいいのではないかと私は思います。ありがとうございます。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。喜連川先生、御意見お願いします。
【喜連川委員】 ちょっと意見を申し上げてもよろしいですか。
【西尾主査】 どうぞ。喜連川先生、御意見をいただければと思います。
【喜連川委員】 ちょっと申し上げますと、私どもが考えていますことを一つの大きなメッセージにするとしますと、原則、スケールを大きくするということではないかと思っています。例えば日本はクールジャパンということで非常に有名なわけですけれども、ではアニメを描いている人が潤っているかというと全然そんなことはない。それはなぜかというと、やはりプラットフォームを持っていないというところが非常に大きいのではないかと思います。アマゾンのレベニューというのはもはやEコマースではなくて、完全にAWSにシフトしているというような中で、私ども、やはりアジャイルに大きなスケールのソフトウエアを作れる環境が日本の競争力にとって非常に重要だというところが、この議論の中の底流にあると御理解いただければと思います。
 御議論があった中で一つは日本の強みは何なのかということがありました。私はやはり過去NTTが随分投資されてこられたこの通信インフラというのは、圧倒的にグローバルに比べると日本は強いと思います。この間お伺いしますと、アメリカで非常に強い産業の一つは手術用具のダ・ヴィンチということで、これは遠隔の手術ができることで非常に有名なんですけれども、アメリカの中で遠隔手術は一切やられていない。なぜならば通信インフラがない。要するに非常にフラジャイルだから、あんなことは絶対できないということになるわけです。
 そういう意味で、こういうプラットフォームができることによって、少なくともアジアで一極そういうプレゼンスを見せることは非常に重要で、世界で1個になろうと考えるのではなくて、アジアで一つそういうものをしっかり作るということが私は非常に重要だと思っています。この前、横浜でTICADというアフリカの会議に出る機会があったのですけれども、彼らはプラットフォームという言葉は全然使わないんですね。なぜ使わないかというと、プラットフォーマー・イコール、フェイスブックでありグーグルであり、彼らは搾取していると見える。ですから、この中でもプラットフォームという言葉を若干控えているのですけれども、そういう意味のトラストを日本が作っていくということは非常に重要ではないかと感じている次第であります。
 それから3点目として、いろいろ産との連携ということ。先ほど一切申し上げませんでしたけれども、産業界との開発の連携はもう不可欠だと思っておりますので、中西さんとかあるいは櫻田さんというようなところ、経団連や同友会とある程度のレベルで文部科学省としてはいろいろお話をしていく会話の場を持つことはとても重要ではないかと思っております。実際、先ほど厚労省や経産省という言い方も出ておりますけれども、厚生労働省の医療データというのはもうSINETの上を流れているんですね。これはL2VPNの中で完璧にセキュアだと。こんなことがやれているのはそんなに多くの国ではやれていないわけです。そういう意味では、自信を持って進められる素地はできているのではないかと思います。
 最後に一言、パーソナルデータのことについて御議論があったように思います。我が国はDFFTという言い方をしているのですけれども、私が一番懸念を持っていますのは、GDPR十分性認定を我が国は受けているのですけれども、これはコマーシャルセクターだけなんです。大学のセクターはその対象の外にあります。ということはどういうことかというと、日本と海外が、特にヨーロッパの大学と日本の大学が連携することになったときに、この個人情報というものの取り扱いはGDPR上、何ら担保されているセクターに入っていないので、個別の契約を結んでいる。本来は結ばなければいけないんです。そういうところを今後しっかりとしていかなくてはいけないと思っていますし、これはまだ不透明ですけれども、ヨーロッパはGDPRのアメリカバージョンといわれているいわゆるCCPAを今年度中から来年にかけて作っていきますので、この部分は多分情報委員会の外かと思いますけれども、ちょっと後れないようにフォローアップしていく必要があるのではないかと思います。以上です。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。喜連川先生から、S5 Kernelをベースにプラットフォームを構築していくことの意義をもう一度おっしゃっていただきました。
 日本ならではの強みということに関しては、例えば日本の情報通信環境については、世界最先端のサービスが安い部類の価格で提供されているということも、当たり前のように思われており、そのことが一般的に取り立てて認識されていません。その関連で、SINETも世界に冠たる学術情報ネットワークとしてきっちり整備されています。こういう日本ならではのオンリーワンの部分を今度どう生かしながら、今日いただいた意見を踏まえて、真に大規模なプラットフォーム、もちろんユーザーフレンドリーな環境を考慮したプラットフォームをどう構築していくか。さらに、それをベースに日本の科学技術・学術のレベルをどう上げていくか。その一連のサイクルをいかに構築していくかということを、我々はきっちり考える必要があるのではないかと思います。
 もちろん科学技術基本計画ですので、学術分野のみならず、産業界も含めてそのようなプラットフォームをどう構築していくのかということを今後一緒になって考えていく必要があるのではないかと強く思います。
 一通り皆様方には意見を言っていただきましたが、特に再度これだけは言っておきたいという方はございますか。どうぞ。
【安浦委員】 資料2の18ページを御覧いただきたいのですけれども。今の止まった「京」、あるいは今度新しく動く「富岳」はこの共用法の範囲の中で、要するにそこの左に並んでいるSPring-8とかJ-PARCの施設とか、こういうものと同じ視点で一般の国民、あるいは財務省、ひょっとしたら文科省からも見えているのかもしれないと思うんです。ところが、きょうの議論というのは絶対にこの枠組みの中のものとして位置付けることが適当であるという意見は、私はなかったと思うんです。
 投資を国としてやっていくときに、こういう法律があって今までやってきたのだから、当然この枠の中で何かやらないといけないよねという考え方は一旦捨てて、本当にどういう仕組みの中で、国の仕組みの中で新しい情報環境、情報基盤を作ってさらにそれを発展させていくのかという議論、これは必要だったら、情報基盤特別法みたいなものを作っていってもいい話であって、何かほっておくと、この法律にまた縛られた議論になってしまうのではないかというのを非常に危惧しておりますので、そこまでさかのぼってやはり世の中の制度から変えていかないと、きょうの貴重な御議論は本当に実を結ばないのではないかと思います。
【西尾主査】 本当に重要な御意見をいただき、どうもありがとうございました。第6期の基本計画の策定に対して、科学技術分野で今までなされてきた大型施設の整備の類とは異なる観点から、情報委員会でこれまで議論してきたことを提言するときに、その重要性・必要性をどのように総政特の方できっちり御理解いただくのか。そのためには、インパクトのある資料作成は当然必要ですし、また、安浦先生が今おっしゃった意味でのある種の情報分野における特異性をどう我々が今後訴えて、御理解いただくかということが重要です。これは第6期基本計画の時にそれが実現しないと、これこそもう手遅れになってしまうと危惧します。国力の源としての情報インフラを、今後日本としてきっちり構築していくことの重要性を強く訴えるような資料とシナリオが不可欠です。それについてはまず11月7日がその第1弾になると思いますが、以上の観点から今後の作業の進め方とかについて、事務局から説明していただけますでしょうか。
【橋爪参事官】 本日はありがとうございました。きょう、いろいろと御意見も頂きましたので、御発表、御意見、これまでの御議論も含めまして、主査と御相談しつつ、文章化を進めてまいりたいと思います。その過程におきまして、事務局より案文等々を先生方にも、これはちょっと期間も限られておりますので、メールベースでできればさせていただきたいと思っております。お忙しい中、ちょっとショートでの御相談になるかもしれませんが、御協力を是非頂きまして、最終的には西尾主査に御確認を頂いて総政特にインプットしていきたいと考えております。そのような運びでよろしゅうございますでしょうか。
【西尾主査】 皆様方、今のような進め方でよろしいでしょうか。というか、皆さんからいろいろな意味でさらに文章をどうブラッシュアップするか等、是非ともいろいろな御意見はいただきたいと思っています。何か御意見はございますか。はいどうぞ。
【新居委員】 すいません。先ほどからちょっと若い世代の話をというところで、多分私もそういう話をすることも期待されつつ入っているのかなと思うので、お話をしたいと思うのですが。やはり人口分布を考えても、若い世代は少ないので、いかにその人たちの声を大きく取り上げていくかというのは本当に重要な観点かなと思っていまして、その資料を取りまとめられていく前に、なるべく少しでも多く声を聞かれるような機会があるといいと思っています。
 私が以前、別の検討会に入っていたときですと、公式な形ではないのですが、若い世代10人ぐらいに例えば、これは全体についてどう思いますかというのは難しいので、HPCIの活用をしてくださいと言われたらどういう形だったら活用しやすいですかとか、具体的な問題を切り取った形で議論していただいて、それをフィードバックするような形ですとか、オープンにやっていいのであれば、先生方も著名な方が多いので、先生方にちょっとお話しいただいてワークショップで議論するとか、そういう形で声を吸い上げたことがありましたので、なるべく若い世代は大事ですよねというところだけで終わらず、実際にどうやって本当に文字にしていく際とか出していく際に取り込めるかということも、是非御検討いただけたらうれしいです。
【西尾主査】 今のことは一方で時間との闘いがあると思うのですが、その中で可能な限り進めるということでよろしくお願いします。
【橋爪参事官】 ちょっと今回に限らず、今後まだ情報委員会で6期の方針が決まった後もいろいろと御議論いただくことが多々あると思いますので、御指摘いただいた手法も含めまして、是非また御相談させていただきながら取り組んでいきたいと思います。
【西尾主査】 返す返すも、第6期の基本計画の期間というのが我々情報分野にとっては非常に大きな意義をもっています。もちろん第5期において我々情報分野が前面に出てSociety 5.0を構築していくというところで、情報分野の重要性は非常に認識をいただいたところなのですけれども、第6期でさらにもう一歩進めて、本日出たような意見をベースに情報分野の重要性をより強力に訴えていく絶好のチャンスだと思います。
 一方で、そのように訴えていくからには、我々も責任を持って進めていかなくてはならないということであり、我々は大きな責任を負うことにもなります。そのようなことも踏まえつつ、今が本当にグッドタイミングだと思いますので、強く押し出していきたいと思っております。皆様のお力を是非ともお貸しいただきたくお願いいたします。
 相澤先生、一言もしあったら、短くお願いします。
【相澤科学官】 ちょっといろいろこの図を見ながら考えておりました。今まである意味、このコンポーネントで言えばデータの部分だけとか、HPCの部分だけとか、マシンラーニング部分だけとか、部分だけを切り取った形でのプロジェクトが大きく提案されてきたというのに対して、これは、情報分野を面的に覆うような形での御提案になっているので、その部分に関してはとてもスケールが大きいものだと思いました。
 その一方で、システム基盤ソフトウエアを作るということ自体に関して、象徴的な何かがもっと欲しいと思いました。物理の分野だと望遠鏡を造りますとかいうことで国際的に人たちが集まってきたりするわけですよね。それと同じような求心力を持つようなものがこの基盤ソフトウエアという言葉だけでは伝わりにくいと思ったのが一点です。
 それともう一点は、これは決してネガティブなことを言っているわけではないのですけれども、情報技術の最近のありさまを見てみると、若い人たちがマシンラーニングだとかデータの方に大きく流れてしまって、重要にも関わらず基盤ソフトウエアに来る人が少なくなってきている。結果的に、基幹的に重要なことを受け持つ人が少なくなってきてしまっているアンバランスが生じています。このままいくと日本あやばいかもしれません。
 基盤的なソフトウエアに関しては、システムそのものを作る過程でできていく人材が重要だというところも、訴えるのもありだろうと思ったという2点であります。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。
 それでは情報委員会の下部組織の設置についてお諮りしたいと思います。本委員会では、運営規則第2条により下部組織を設置することができることとなっております。新たに「次世代計算基盤検討部会」を設置することについて審議したいと思いますので、事務局からその趣旨などの説明をお願いいたします。
【坂下計算科学技術推進室長】 それでは資料4を御覧いただければと思います。この情報委員会の下に次世代計算基盤検討部会を設置するという案になっております。調査審議事項としましては、次世代の計算基盤、データ処理環境及びネットワークに係る事項についてということになります。本日、この場で頂いたような議論も踏まえまして、次世代の計算基盤について幅広く検討していくことを考えております。以上です。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。何か御異論ございませんか。よろしいですか。
(「異議なし」の声あり)
【西尾主査】 今、坂下室長から御説明いただきましたように、この部会では広い意味で次世代の計算基盤を考えるということになります。そういうことを検討する部会を設置したいと思いますので、皆様、どうかよろしくお願いをいたします。
 本日の議題は以上を考えておりますが、何かこれだけは御発言なさりたいという方はございますでしょうか。どうぞ。
【鬼頭委員】 先ほど若い意見というのがあったのですけれども、少数で集めるよりも、先ほどスカイプの調子が悪いという話もありましたが、ツイッターとかスラックとか、そういうツールがあるんです。若者たちはもうそれを使っているんです。私たちの会社の部下たちも会社で指定されたものではなくて、そういうものをどんどんやって意見を交換する。そういうコミュニティーを作るのは是非トライしていただきたいです。何人か呼ぶ、確率的にいろいろな意見を集めて一回やるというのは大変だと思うのですけれども、そういうツールを駆使していろいろな意見を集めるというのを是非トライしていただきたいというのが1個あります。
 2個目。これも申し訳ないのですけれども、今、これを作っています。例えば先ほど言ったS5。私がイメージしたのはアマゾンのS3というよりも、多分S5の方がいいのだろうなと思っているのですけれども、御存じない方、サービス名を知らない方がいらっしゃるかもしれませんけれども。そうすると、先ほど言ったようにアジアに行く方針を決める、そういうのもいいと思います。でも、この技術がアマゾンで使われた、Azureで使われた、アリババで使われた、まあちょっと中国との関係もあるのでそういうのもあると思うのですけれども、そういうように日本の技術をどんどん使ってもらう。是非抱えずに、先ほど言ったオープンコミュニティーとかそういう形。もちろん、政策的に日本の災害、そういうものに使うというところで貢献していくというのはやっていただいて、あとはそれをどう広げていくか。というように是非、次に載るようにお願いしたいと思います。それを民間は望んでいます。
【西尾主査】 どうも貴重な御意見ありがとうございました。ほかにはよろしいですか。では最後に上田委員。
【上田委員】 ちょっと先ほどからHPCのややネガティブな意見もあったと思うのですけれども、私もHPCIの委員をやっていまして、実際、「京」と違って「富岳」に関しては、コンテナとかSingularityが整備され、Pythonが動きますし、PyTorchも実装準備中です。今までのスパコンとは大分違う環境になているのです。ただこれが、先ほどのツイッターもそうですけれども、若い世代には余り浸透していないので、やはりスパコンは昔のイメージがありますから、そこは大分変わってきているとアピールすべきです。松岡先生自身もいわゆるコ・デザインという形でアプリと連携して、単にハードウエアを作るだけではなくて、応用を意識した検討も行っています。まだパフォーマンス自身ははっきりと具現化されていませんけれども、潜在的なパフォーマンスは非常に高いので、そういうことはもっと普及する意味での宣伝が必要かなと思います。
 もう一つ、これは適切かどうか分かりませんが、NTTが目指しているIWON、オール光というのは、実はラスベガスのスマートシティーでグーグルを抑えて入札できたんですね。これはなぜかというと、フォトニクス技術がインテルでも脅威を持つぐらいの技術力に依るものです。これは企業の宣伝ではなくて、そういうインターナショナルに通信のインフラを非常に精力的に構築しているわけです。そういう意味でも非常にポテンシャルを持っているので、今まさにその第6期に向けてハードウエアと通信が整備されつつあるので、さらにソフトウエア群を充実させていることを、もっと若い世代に言っていかないとだめですね。年寄り連中が共有しても余り意味がないので、情報の伝達の仕方を改め、こういう委員会だけで議論していても若い世代に伝わっていかないというのが重大な問題だと思います。
【西尾主査】 非常に大事な観点です。皆様、我々の提案を実現するためにどういう攻め方でいくかということを、今、おっしゃっていただいたことを参考にしながら考えていきましょう。
 それでは、事務局から今後の予定等について説明いただけますでしょうか。
【齊藤情報科学技術推進官】 本日の議論につきましては、事務局で取りまとめの上、メール等で皆様に御確認いただき、情報委員会の提言として総合政策特別委員会に報告させていただきます。
 また、今後について一点御連絡でございますが、研究開発の評価等を行っております研究計画・評価分科会から各分野別の委員会に対し、分野ごと、こちら当委員会の場合は情報分野全体の文科省の取組を一つのプログラムと考えた場合の評価、いわゆるプログラム評価のトライアルを今年度行うようにとの依頼が来ております。事業ごとの個別の評価につきましては、これまでも本委員会で行っていただいておりますが、今回は情報分野全体を俯瞰した評価についてということでございますので、まずは事務局で案を作成した後、何らかの方法で皆様に御確認いただくことになると思いますので、その際には御協力をお願い申し上げます。
 今後の委員会につきましては、また必要が生じた場合に日程調整から行わせていただければと思います。以上でございます。
【西尾主査】 本日は、様々な貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。安浦先生、喜連川先生、どうも御説明ありがとうございました。心より御礼申し上げます。それではこれにて閉会とさせていただきます。

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