情報委員会(第3回) 議事録

1.日時

令和元年9月19日(木曜日)13時00分~15時30分

2.場所

全日通霞が関ビル8階大会議室B

3.議題

  1. 個別分野の取組に向けた議論
  2. その他

4.出席者

委員

西尾主査、井上委員、奥野委員、梶田委員、来住委員、喜連川委員、栗原委員、佐古委員、田浦委員、瀧委員、津田委員、新居委員、引原委員、福田委員、八木委員、安浦委員、若目田委員

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局担当)、原振興企画課長、橋爪参事官(情報担当)、坂下計算科学技術推進室長、丸山学術基盤整備室長、佐藤学術調査官

オブザーバー

深澤 大学ICT推進協議会会長、木村 科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー、青木 科学技術振興機構研究開発戦略センターユニットリーダー

5.議事録

【西尾主査】  皆さん、こんにちは。定刻になりましたので、科学技術・学術審議会情報委員会の第3回会合を開催いたします。
 本日は、乾委員、上田委員、鬼頭委員、辻委員、長谷山委員から欠席の御連絡をいただいております。八木委員は遅れての到着になると伺っております。また、議題1の説明者として、大学ICT推進協議会(AXIES)から深澤会長、科学技術振興機構研究開発戦略センター(JST CRDS)から木村上席フェローと青木ユニットリーダーにお越しいただいております。
 初めに、事務局より資料について確認をお願いいたします。
【齊藤情報科学技術推進官】  本日の資料でございますが、テーブルに座っている皆様には、クリップ留めの資料が上に3枚置いてございます。座席表と、本日御議論いただきたい論点のメモ、それから、右肩に机上配付(会議後回収)と赤字で書いた資料がございます。こちら、机上配付と書いた資料につきましては、本日会議が終わった後、持ち帰らずに机の上に残していっていただければと思います。その下、クリップ留めの資料でございます。議事次第に書いてございます配付資料1から6まで、それぞれホチキスでとめたものをお配りしております。万一落丁・乱丁等ございましたら、事務局の方までお申し出いただければと存じます。
 なお、本日につきましては、御発表の数が大変多くなっておりますので、御発表者の方につきましては、大変恐縮ですが、時間厳守でお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。今日は、会議の時間としては通常より長く、2時間半という時間を想定しておりますが、その点もどうかよろしくお願いいたします。
 それでは、個別分野の取組に向けた議論についてということで、前回に引き続きまして、第6期科学技術基本計画に向けた個別分野の取組の議論を進めたいと思います。
 本日は、情報分野に関する研究開発の動向や支援の状況、今後の情報分野に関する学術界や産業界の見方などについて御報告、御紹介をいただき、御議論いただく予定となっております。
 本日は、先にそれぞれの御発表をいただき、基本的には議論は最後にまとめて行いたいと考えております。
 最初に事務局から、本日の論点例について説明をいただきました後、情報分野に関する研究開発の動向について、CRDSから15分で説明をお願いいたします。
【橋爪参事官】  それでは、本日の論点例メモというのを、一応備忘のために机上に配付させていただいております。本日、先ほど主査からありましたようにいろいろな御発表があるわけでございますけれども、主にここに挙げているような視点から眺めていただいて御議論いただければありがたいと存じております。
 それで1つ目としましては、第6期に向けて情報分野、どのような点が重要かという議論を進めてまいりますので、今後、情報分野が主導して取り組むべき重要、または新たな研究領域はあるのかという点。それから、2点目といたしまして、情報分野は様々自然科学のみならず、教育・人文科学を含めていろんな分野に関係してくるわけでございますが、そうしたある意味ユーザー側の他分野から見て、情報分野にどういうことをやってもらいたいか、そういう視点が2点目でございます。3点目といたしましては、情報分野における研究の進め方、あるいは支援策、あるいは教育や人材育成について、どのような強化、改善点があるのか。また、非常に社会実装と近い分野でございますので、産業界、経済界のニーズへの対応、連携、社会実装の促進に向けて、どのような強化、改善点があるのか。主にこうした視点から御議論いただけるとありがたいと思っております。
 それでは、私からは以上でございますので、このままCRDSさんの方にマイクをお渡ししたいと思います。
【西尾主査】  どうかよろしくお願いいたします。
【青木CRDSユニットリーダー】  CRDSの青木と申します。今日はよろしくお願いいたします。
 CRDSで2年に一度発行しております、最初のページを見ていただきますと御紹介していますけれども、俯瞰報告書というものを発行しております。今日のお話は、この3月に出した俯瞰報告書の内容を中心にお話しさせていただいて、プラスアルファということで、GAFAの動向の紹介をさせていただきたいと思います。
 2ページですけれども、その俯瞰を作るに当たってどういうふうに作っているかという流れを図にしたものです。今日は上の技術的な方ではなくて、むしろ下の社会・経済の動向から戦略の基本的な考え等を捉えて、最終的に国として推進すべき重点テーマを選んでいる、という話をさせていただきます。
 次のページ、3ページですけれども、主要国の研究開発の規模というのを調査いたしました。左の図が各国の総額になります。一番上は当然米国ですけれども、中国の追い上げが非常に激しいというのが目立ちます。あとは各国、概ねほぼ横ばいですけれども、EUが若干増やしているという状況で、日本もほぼほぼ19兆円程度で推移しているということになっています。一方、右は特定目的別ということで、情報通信がライフに抜かれたのが2009年なんですけれども、これも若干情報通信については下がり気味で、現在は2.2兆円程度という規模になっているという状況を示しております。
 次のページ、4ページは、世界の企業の研究開発費というのを見たものになります。Strategy&The 2018 Global Innovationという外国の調査機関の情報ですけれども、左側が2018年の数字で右が2017年、順位は2018年で並べていますけれども、GAFAと呼ばれるアマゾン、アルファベットはグーグルの親会社ですけれども、それからアップルとフェイスブックというのがトップ14というところに入っています。そのうち7社、半分はICT関連ということで、情報通信分野における企業の研究開発投資というのは、世界では非常に大きいということが言えると思います。
 次のページにいっていただきますと、実はGAFAというのはいろいろな企業を買収して、自分たちの事業の内容を変えていくという特徴があるので、そのGAFAの企業買収状況というのを毎年、ちょっと見にくくて恐縮ですけれども、縦軸というか、縦のコラムが年で、左側に会社のカテゴリーを並べています。縦と横の交点の枠内が4つに分かれていて、左上からグーグル、その横がアップル、左下がフェイスブック、アマゾンという並び方にしております。
 特徴は、2013年にハードウエアでロボットの会社をグーグルが非常に多く買っているのですけれども、実はこれはほとんどもう手放していて、今はロボットはやっていないというように、こういう企業買収に関しても非常にスピードが速いというのがあります。それから、AIは各社、近年たくさん買っていますけれども、従来はあまり買収をやっていないアップルも、AI関連はちょっと買っているなというのが目立っているかと思います。
 次のページにいっていただきますと、これはGAFAの各社の研究開発の領域を見るために、右下に書いてありますけれども、Institutional Publication Metrics for Computer Science、コンピューターサイエンス関連の学会、それから、論文誌に投稿されている著者の会社を集計したものです。非常にオープンなランキングでして、ランキングをとるためにどういうマトリックスを使っているかということも自由に選べるというものですけれども、これは標準的に古い学会誌に関しては引用数を中心に、新しいものに関しては投稿数を中心に。それから、学会誌ごとに重み付けがあって、トップの学会とか、トップのジャーナルについてはランクが高くなるとか、ポイントを高くして重み付けをしてランキングをとったものです。
 これを見ていただくと、やはりグーグルが非常に万遍なくいろいろな領域でランクが高いです。データマイニングとマシンラーニング、AIですけれども、こういったところがトップということになっています。我々がちょっと意外に思ったのは、フェイスブックのランクが比較的高いことがあります。アマゾンはこれに比べると低いです。一方、アップルは非常に低く、アマゾンよりも低いように見えるんですけれども、これはアップルが割と秘密主義で、論文誌とか学会への発表というところに力を置いていないということのあらわれかと思います。カテゴリーの特徴は、やっぱりそれぞれの事業分野というところで非常に活発な発表がなされているなというのが分かります。
 あと、ちょっとGAFAではないのですけれども、マイクロソフトはどうなんだというのがあって、それも見てみますと、ほとんどの領域でトップです。明らかにマイクロソフトがトップということが言えます。
 そういった状況で、7ページは、関連論文数をElsevierのデータでまとめたものですが、国別に見るとやはり中国の伸びが、開発投資と比例してといいますか、同じように伸びています。意外なのはヨーロッパとかアメリカのコンピューターサイエンス関連の論文数は減っているというのがちょっと特徴かと思います。ただ、AIとかそういったところは相変わらず盛んに論文が投稿されております。
 各国の状況ということで8ページから並べておりますけれども、アメリカは戦略として、研究開発優先項目ということで、予算をこういうところにたくさんつけるべきという提案書に基づきますと、ICT関連ではAI、量子、それから戦略的コンピューティングというのを、ムーアの法則が終わったけれども、その先どうやっていくかといったところに大きな予算をつけるべきというような報告書が出ております。一方、ニトラド、ネットワーキング・技術情報研究開発(NITRD)というのがあって、ここでもいろいろな領域での投資がなされています。
 それから、次のページはEUになります。Horizon2020と、それから2020年以降の計画であるHorizon Europeを見てみると、量子とかヒューマン・ブレインというあたりがICTに比較的近い領域になるかと思います。それから、あと産業リーダーシップという軸がありまして、国だけでなくて産業界からの投資も募ってやるというところで、76億ユーロという投資がなされております。Horizon Europeでこういうふうに3つの柱でやっているんですけれども、真ん中の社会的課題の解決というところに非常に大きな力が注がれているというのが予算規模で見ると分かります。この527億ユーロのうちに、ICT関連は150億ユーロということになっています。
 それから、次は中国です。中国は余り情報がとれなくて、イノベーション第13次5か年計画という程度の情報ですけれども、15個挙がっているうちの7個、やっぱり半分ぐらいがICTに関連する研究開発領域に重点を置くということを言っています。
 それから、次からは俯瞰で見た技術領域、それぞれの国際比較というのを載せています。一個一個見ていくと細かいので大雑把に見ていきますけれども、明らかに米国がどの領域、どの分野でも非常に強いです。赤いところが伸びていて強いという項目ですけれども、米国はどの領域を見ていただいても非常に強いというのが見てとれます。日本は、実はコンピューティングアーキテクチャというところで若干ブルーが多くて、いま一つちょっと弱いかなと思われます。ロボットは比較的どれも強いですけれども、12ページのロボットを見ていただくと、産業用ロボットが低いのが変かなというふうに思われるかもしれません。これは、そこに対する研究開発が余りなされていないということでブルーになっています。
 ちょっと飛んでいただいて、15ページになります。先ほど言いましたように、俯瞰ではこういった社会の状況とかを見た上で、戦略をどう捉えるかというのを4つに分けて考えています。技術的に強いところを中心にやっていくという1番、それから、2番目が強い産業を中心に広げていこうという戦略。3番が、社会課題先進国と呼ばれている日本の強みを生かして、社会に先端技術を導入するというところで強みを出していこうという戦略。それから、4番目は、そういう強い産業とか強い技術というのもあるけれども、たとえ弱くても、社会基盤を支える、特に安全保障とか、そういった弱かろうが何だろうが絶対やっていかなければいけないというところもあるだろうという戦略で、この4つに分類しました。この4つが、この後に出てきます20個のテーマのそれぞれどれに関連するテーマかというのを記載しています。
 16ページは、俯瞰報告書の全体の研究開発を見たものですけれども、人工知能・ビッグデータと、コンピューティングアーキテクチャと、ロボティクスと、社会システム科学というところで今回は俯瞰をしております。それを選んだ理由は、右上の黄色いところにありますように、エマージング性、新規性と社会的なインパクトと、ビジョンとかミッションに基づいてこの4つを選んだということであります。
 最後に、20個の重点テーマの御紹介ですけれども、まず、人工知能・ビッグデータは、人工知能に関してはいろいろ行われているんですけれども、今やっている機械学習とかディープラーニングだけではなくて、その先ということでこの4つを挙げています。
 意思決定・合意形成は、フェイクニュースといったところにAI技術をどう使うか、というものです。それから、AIソフトウエア工学は、ディープラーニングが、事例に基づく技術なので説明ができない状況で、信頼性などをどう担保するかという技術です。あと、計算脳科学は、脳の研究を進めるという話です。次が統合AIといって、ディープラーニングのような帰納型のAIと、従来やられていた記号推論のようなトップダウンの、演繹型の、そこをどう組み合わせていくかという技術です。この4つぐらいが今後の重要なポイントだろうということで、特にCRDSとしては、最初の2つに関して、戦略プロポーザルを出して、やっていく必要があるという主張をしているところであります。
 それから、次のページはロボティクスですけれども、ロボットというのはAIと非常に近い関係があって、世界とのインタラクションができるというのが特徴なので、そこを使って自律的に認知発達していくようなロボティクスが自律・認知発達です。生物規範は生物の真似をすることで、より新しいロボティクスを作る技術ですし、7番、8番はロボットというよりも社会的な問題として、人間と機械が同時に動くときの法律的な制度の課題もあるだろうというものを挙げています。
 それから、次のページが社会システム科学ですけれども、Societyデジタルツインというのは、社会のモデルを使ってシミュレーションしていくことで、社会課題の解決にシミュレーターを利用しようというものです。10番目が社会システムデザインで、社会システムをデザインするときに、情報技術分野だけではなくて人文社会科学の知見も併せてやっていかなければいけないというものになります。CRDSとしては、戦略プロポーザルとして、この社会システムデザインで、特に計算科学と人文社会科学の融合というところが今後重要だという提案をしています。
 それから、最後、コンピューティング領域ですけれども、これは実は8つあって2ページにわたっていますけれども、特にCRDSとしては14番のブロックチェーンに関して、ブロックチェーンはビットコインとか、経済的な利用方法だけではなくて、もっと社会のいろいろなところに適用できて、しかも革命的な変革を起こす可能性があるので、研究を進めていくべきだと考えています。
 それから、最後21ページですけれども、量子コンピューター、リアルタイムシステム、データ流通、数学と挙げていますけれども、量子コンピューターはハードウェアを作るだけではなく、ソフトウエアを含めてやっていくべきである、という点がCRDSの知見として、大事なポイントというふうに思っております。
 以上です。
【西尾主査】  非常に貴重な情報を御提示いただき、また最後に、20の重点テーマということでお話しいただきまして、どうもありがとうございました。さらにそこの中で、提出済みの戦略プロポーザルであるとか、戦略目標とか、JSTとしての重点テーマ例を御提示いただきましてありがとうございました。これはまた後で、非常に重要な議論のベースになっていくかと思います。
 どうも青木様、ありがとうございました。
 では、ここで橋爪さんに一旦戻します。
【橋爪参事官】  それでは、資料2につきまして御説明をさせていただきます。資料2は、文科省等で研究開発の支援を行っておりますが、その現状ということで簡単に御紹介をさせていただきます。
 1枚おめくりいただきまして、2ページでございます。我が国の情報科学技術に関する研究開発事業の主なものということでありまして、左側が基礎研究、右側にいくに従って実用化に近い。上が個別、下がチーム型というか拠点という感じで、模式図的に整理をしております。一番基礎の部分では、御案内のように科研費がございまして、その中に情報学という部分がございます。また、基礎から実用にかけまして、文科省の方では、特にAIに関しまして、AIPプロジェクトということで、理研にAIPセンターを設けるとともに、JSTの戦略創造事業の中で情報通信分野を取りまとめまして、連携して進めているということで、これが平成31年度の予算で85.4億円の規模で行っております。また、併せまして大学でSociety5.0の先導モデルを作っていただくという活動を支援しておりまして、それがSociety5.0実現化研究拠点支援事業と、その緑のところに書いてありますが、31年度の予算で7.1億ということでございます。
 その他、内閣府では、ちょっと上にいきますけれども、ImPACT、SIPというプログラム、また経産省等ほかの省庁でもNICT、それから産総研、NEDOなどで情報関係の事業が行われているということでございます。
 そして、これらの研究を支える基盤といたしましては、スパコン「富岳」等の開発・利用、それから、SINETの整備・運用ということを行っているというような現状でございます。
 まだまだほかにもプログラムはありますが、主なものをまとめますとこのような状況でございます。
 続きまして、3ページの方から、科研費の情報分野の状況を少し御紹介させていただきます。3ページでございますが、これは科研費のデータベースを用いまして、情報学の中で採択課題に書かれているキーワードを主に分析してございます。左側の図が情報科学分野の研究課題件数と全体に占める割合の推移の移動でございます。大体数的には1,000ぐらいから1,300ぐらいの間で推移をしております。右側がそのうちのキーワードの中で多かったものということでありますと、機械学習、アルゴリズムあたりが多いというような状況でございます。
 さらにそのキーワードの推移をちょっと追ってみましたものが4ページでございますが、2008年、2013年、2017年でそれぞれ5点のキーワードをここに書き出しております。上の方に機械学習、アルゴリズムがありまして、最近2017年では深層学習とか感性情報学といった言葉が出てきているというような状況でございます。
 それから、続きまして、科研費の状況について、ちょっと机上配付資料について御紹介をさせていただきたいと思います。これは机上配付とさせていただいておりますのは、NISTEP(科学技術政策研究所)さんの御協力というか分析を出させていただいているんですが、今まだちょっと開発中の途中段階のものであるということで、コンフィデンシャルということにさせていただいております。これもキーワードについて分析をしておるわけでございますけれども、共起関係の分析も含めて行っているものでございます。
 机上配付資料の2ページ目を御覧いただきたいと思います。配分年、2017年というもの。それから、その次の3ページ目が、配分年、2013年となっております。これは配分年というのは、その年に進行中の研究課題ということで理解いただければと思いますが、2017年に進行中の情報分野の科研費の課題を分析すると、大体ここに図示されているようなマップが書けるのではないかということでございます。この中で、2013年と2017年を比べた傾向といたしましては、黄色で囲っていただいているところが新しく出てきた領域、それから、オレンジというか黄土色というか、そのような色のものが、過去に比べ活発になった領域というふうになってございます。AI最適化アルゴリズム、セキュリティー、あるいは音声・文字、VR、インターフェースなどは、研究がより近接してきて盛んになってきているという傾向ではないかということでございます。また、図書館情報学とかロボットの領域も盛んになってきております。さらに新規といたしましては、教育とかソフト、情報システムというワードが出てきているというような状況でございます。
 こういったところが科研費のデータベースから見てとれる傾向ということで、御紹介をさせていただきました。
 戻りまして資料2でございますが、5ページ目以降は、プログラムの主な概要を載せさせていただいております。5ページはAIPネットワークラボ、これはJSTの戦略的創造研究推進事業のうちのAI、情報関係でございますけれども、CREST、さきがけ、ACT-I、ACT-Xを統合して14の研究領域を行っております。
 それから、6ページ、7ページはSIPの全体像と、そのうち情報を主としているようなプログラムの概要でございます。
 8ページ、9ページ、10ページはImPACTの課題と概要というような形になっております。
 以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。再度ここで確認しておきますけれども、本日の論点例ということで、先ほど橋爪さんの方から説明いただきましたが、今日の議論は情報分野が学術を支える基盤として何ができるのかという議論ではありません。今日行うべきは、個別分野としての議論であり、情報分野として第6期の期間の中で、オブITという観点で一体どういう研究を展開していったらよいのかということを議論することです。我が国の情報分野を今後どのように先鋭化し、世界に対してどのようにしてリーダーシップを発揮していくのか。そのためにどのような課題、テーマの研究を行っていったらよいのかということを議論するのが今日の目的です。その趣旨を御理解いただければと思います。
 そういう観点で、先ほど青木様からは、世界の動向とCRDSで考えておられる20の重要テーマをしめしていただき、橋爪参事官からは、いわゆるボトムアップ指向の研究として、今、情報分野でどのような研究が多くなってきているのか、どういう傾向があるのかということをお話をいただきました。
 今後、その議論は続きますけれども、例えば、深澤先生に、大学における最近のIT環境というときにも、ITとしてどういうインフラをきっちり作っていくのかということより、そこで明らかになっている課題をお話しいただきながら、情報分野としてどのような研究をきっちり進めることによって、さらに情報環境をより強化していけるのかということで議論をしていきたいと思っています。その点どうかよろしくお願いいたします。
 では、喜連川先生がまだ到着されていませんので、深澤先生には申し訳ありませんが、順番を入れ替えて、大学ICT推進協議会(AXIES)で議論いただいていること等を踏まえ、資料4をもとにお話をいただきたく、どうかよろしくお願いいたします。
【深澤大学ICT推進協議会会長】  大学ICT推進協議会、AXIESと呼ばれておりますが、そこの会長をしております深澤と申します。
 御存じじゃない方のために少しだけお話ししますと、AXIESというのはまさにその名前のとおり、大学においてICTを推進していくためにどのような技術が必要であるかということを、新たなものを作っていくためのコミュニティーでございまして、現在、119の大学、それから、協賛企業として70企業ほどに御参加いただいております。私自身はソフトウエア工学の研究者であったり、あるいは今、都市環境をしていたりするのですが、今日はそういう視点ではなく、大学におけるICTの環境というところでお話をさせていただければなと思っております。
 2枚しか資料作ってございません。このお話を頂いたのが先週でございまして、焦って作りました。ですので、決してここに書かれている内容がAXIES全体の意図というものではございません。その点は御了解いただければと思います。
 まず、上の方ですが、大学におけるICT環境といったときに何が含まれるのかということでございます。基本的には、真ん中に広い意味での情報基盤、例えば、クラウドがあったり、サーバーがあったり、インターネットがあったり、そういうものがあります。それに対して幾つかのシステムがぶら下がっているわけでございまして、教育をサポートするシステム、それから、研究をサポートするシステム、それから、事務作業をサポートするシステム、この3つが大学におけるICT環境を実現しているシステムの中で大きな3つだと思っております。最近はそれだけでは問題があるということで、経営システム。いかに大学のマネジメントの中にこういう各システムの状況を生かしていくのかということが大きな問題として取り上げられてきているんだと思っております。
 一個一個ちょっと見ていきたいと思います。今度は下の方を御覧ください。まず、情報基盤でございますが、大学における大学基盤を見てみると、ネットワークだとかクラウドだとかサーバーだとか、こういうところの話は大体そろって終わってきている話なのかなと理解しております。ただ、大きな問題点は何かといいますと、以前は大学でチャレンジャブルなことが行われ、つまり、大学のシステムは企業のシステムより二、三年先に進んでいて、大学でやったことがうまくいくと、それが企業に流れていくみたいな色彩があったのですが、最近はそれがなくなってきてしまっている。逆に言うと、普通の企業で動いているシステムを大学に入れて、さあ、動くかどうかという話をしているところが大きな問題だと思っております。大学におけるこういうIT環境を担当する者として、非常に心苦しく思っております。
 もう一つはセキュリティーの問題でして、御存じのように大学って普通の企業のように上意下達の三角形のシステムになっているわけではございません。学部独立だとか、研究室は研究室でサーバーを持っているだとか、そんなような環境が普通でございますので、そういうところでのセキュリティーをどうやって担保するのかというのは大きな問題だと思っております。これは情報基盤としての現状と問題点を大まかにお話しさせていただきました。
 その次、教育支援の部分ですが、ラーニングマネジメントシステム(LMS)はほとんどの大学で整備されてきていると思っておりますが、でも、それ以上のITを使った教育のシステムという点では、まだまだ進んでいないんだと思っております。幾つか試行的な事例は報告されておりますが、それが広く大学に行き渡っているということはまだありません。その大きな問題点の1つが、学生はスマホを持っています。多分、ここにいらっしゃる皆さんのような年齢の方よりも、学生はスマホを流麗に使いこなします。でも、そういうところをもっとスマホのよさを生かしたような教育支援システムというのは、まだまだ作られてきておりません。それはどうしてもシステムを作る人が我々おじいさんで、使うのが学生というそのギャップ、これを何とかして埋めなきゃいけないと思っております。
 その埋めるということに関しては、上の図を見ていただきたいんですが、教育だとか事務だとかのところに学生の目線が欠けてしまっているということが大きな問題かなと思っております。では、もう1回下に行きますが。
 もう一つは、教育コンテンツをどうやって流通させていくのかということも考えなければいけないと思っております。私、JMOOCの副理事長もしているんですが、MOOCのコンテンツが余り上がってきません。アメリカと違うところです。それは何とかしなきゃいけないと思っています。
 それから、右上にいきまして研究支援でございますが、研究公正というのはリサーチインテグリティーの訳のつもりでございますが、それに関しましては、研究大学においては整備が進んできていると思っております。オープンサイエンスに関しましては、1大学で手が出せる規模の問題ではないと思っております。まだ喜連川先生いらっしゃっていませんが、喜連川先生、NIIのところで、やっぱり日本としてどうやって扱うのかということを、これまでリポジトリーでやってきたのと同じようにやっていかなければ、多分1大学ではどうしようもない問題かなと思っております。
 事務システムにつきましては、パッケージで済むものに対しては大体オッケーなんです。最近流行なのはRPAロボット・プロセス・アシスタントですか、ロボットを事務システムの中に入れるという話が注目を浴びてきていて、いろんな大学で試行してきております。ここまでが割と旧態依然として、最初の頃からあった情報基盤と3つのシステムについてでございます。
 じゃあそれを大学の中の経営にどうやって生かすかというと、今お話ししたような要素から情報を集めて、それを分析して経営に生かすというメカニズムが必要なんですが、まだまだIR(インスティテューショナル・リポジトリー)とかいうキーワードは先行しておりますが、成功事例が幾つか述べられているだけで、まだまだ実用というところには遠いものだと思っております。ここら辺は何とかしなければいけないと思いますし、どういうところでうまくいくのかということを、大学間で情報交換していかなければいけないんだと思っております。
 でも、こうやってぱらぱらぱらぱら一個一個のシステムの話をすると、まだまだそれは遅れたシステムで、なぜかというと、例えば深澤良彰というインスタンスは、事務の中でも給料をもらっているというところで深澤良彰出てきますし、こういう授業をやっているというところでも出てきますし、こういう研究をやるというところでも出てきます。AXIESの親団体であるアメリカのEDUCAUSEというところのエキシビションなんか見ていると、これらのシステムを1個のシステムでサポートしている例なんていうのがございます。ただ、1個のシステムでやることがいいかどうかは、実はちょっと疑問でして、なぜかというと、どこかが遅れちゃったときに全部入れ換えるのは面倒ですから。となると、いかにインターフェースを定義して、差し替え可能なプラグインなものを作っていくのかというところが問題だと思っております。ただ、ここら辺に関しては、我が国ではほとんど手がついていないというのが現状だと思っております。
 ということで、以上まとめてみますと、大学って実証実験の場だと思っているんですが、その環境を生かしきっていないというのが1つだと思っています。それから、データ活用、今お話しした中でもいろんなデータが上がってきます。そのデータをどうやって活用していくのか。今、流行でいろんなところでデータ何とか何とかセンターみたいなものを作られています。早稲田の中でもできていますが、外の企業のデータはお金もらって分析したりしているんですが、学内のデータはまだまだ分析しきっていない。つまり、もう少し学内のデータをきちんと分析することをやらなければいけないと思っております。それから、システムをつなげるに当たっては、インターフェースをきちんとしていく。それを標準化して、いかに世の中に普及させていくのかというところが大きなキーワードだと思っております。
 以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。我々情報分野の研究を大学等で進めるとき、そのベースとなる環境が、今どういう状況であるのかを話していただきました。さらに、情報技術を大学の経営等にも有用していくという観点で、新たな研究開発をしていくとしたらどういうところに焦点を当てるべきかというところが、今、深澤先生からお話しいただけたところから、何かヒントが得られればと思っております。
 今、深澤先生の御発表に対して、お聞きしておきたい点ございますか。安浦先生、何かございますか。
【安浦委員】  特にこの委員会の趣旨からしますと、研究支援システムと言われるところが、今、「京」が止まって「富岳」へ置き換えるときに第2階層という役割を果たしているわけですけれども、そこ自身も、先ほど深澤先生が言われましたけど、大学が社会に対して進んだものになっていない。新しいトライアルをやる場になってなくて、安全に確実に動かすシステムを動かさないといけないという、ある種のサービスに徹する状況になっているというのが、これは結構この委員会全体に、また次回、HPCIの話に絡んでお話しさせていただきますけど、そういった問題も含めてすごく大学をうまく実験場にしていくという発想に戻ることが、大きな我が国の情報学を発展させることにつながると思います。
【西尾主査】  分かりました。大学が1つのテストベッドの場になかなかなれていないということですかね。その辺りがセキュリティーに対する弱点が多いということが要因になっているのだと思います。本当は、大学内におけるネットワーク環境とかスーパーコンピューターを有効に利用して、さまざまなチャレンジングなことができる空間であってほしいのだけれども、今はそうなっていないという1つの懸念をおっしゃっているのだと思います。さらに、そのような状況からはイノベーティブなものがなかなか生まれてこない、そういう結論になってしまうと思いますが、その辺りも大きな課題ですね。どうもありがとうございました。
 そうしましたら、情報分野のユーザーの側からの意見をお知らせいただけますか。
【橋爪参事官】  続きまして、資料5に基づきまして、情報のユーザー側からの委員の皆様からの御意見ということで、お忙しい中書面で提出いただきましてありがとうございました。私の方から、ちょっと簡単に流れだけ紹介させていただきますので、また補足なり不正確なところがございましたら、恐縮でございますがよろしくお願い申し上げます。資料5でございます。
 4人の先生方、奥野先生、来住先生、栗原先生、津田先生から頂いてございます。順に、簡単に御紹介をさせていただきます。
 まず、ライフ・医療系の視点ということで、奥野先生から頂いております。まず1つ目で、エンドユーザー、ライフ系の研究者の方と、あと情報系研究者の方、これらWin・Winになるような体制、人材育成というのが非常に重要だということで、特に次に人材像として、3つの階層に分けて必要な人材像というのを御提示いただいております。
 その上で、ドメイン側、この場合ですとライフ側でありますけれども、AIとかデータ駆動型のサイエンス拠点ということが、今後必要になってくるわけでございますが、一方で、大学とか研究機関では、情報系の総合的なデータサイエンスセンターというものもできてきておりまして、それらの役割分担としましては、ドメイン側というのはある意味情報を使っていくというところでありますけれども、新しく研究を行っていく上で、既存の原理とか理論では太刀打ちできないようなところというのは、こういうデータサイエンスセンターにフィードバックして理論研究、アルゴリズム開発、プログラム開発が協働で行えるような流れを作っていんではどうかというようなお話がございます。
 2ポツで、医療系のデータシェアリングという観点では、Personal Health Record、いわゆる電子カルテなどのElectronic Medical Recordなどを個人ごとに連結していって、ライフコースのデータを充実させていくことの重要性を御指摘いただいております。
 さらに3点目といたしましては、分野ごとのデータストレージというものの確保、それから、4点目としまして、データに関しては、生データというのも非常に意味があるものだという点。それから、データの取り扱いに関するレギュレーションに関しまして、ELSIの専門家というのが今、引く手あまたになっておりますので、それらの拠点化というようなところも一案ではないかというような御提案がございました。
 続きまして、データサイエンス教育及び発展に関する要望ということで、来住先生から頂いております。
 まず基本的なところといたしまして、多様な学問分野で大量のデータを収集、解析、利用していくという流れというのは、アカデミア、学会間で共有されつつあるということが認識として示されておりますが、一方で、データを活用する、それを普及していく、教育するという点から考えると、海外、アメリカの例を出していただいていますが、まだまだ足らないというところがあるのではないかということで、特にアメリカでは、日々教育の中でも生活の中でも、生きたデータを実際に使って触れていくという機会が非常に多いのに対して、日本ではまだまだそこが足らないのではないかというような御指摘を頂いているところでございます。
 続きまして、7ページからは化学・材料分野と情報技術ということで、栗原先生から頂いております。
 材料・化学分野の研究開発の中での情報技術ということで、化学・材料分野では、データベースとかAIを活用して研究を加速するという形態のもの、あるいは従来の計測やシミュレーションに加えて情報技術を研究手段として用い、従来のアプローチでは困難な課題に新しい展開を図ろうとする、こういった視点から、情報技術を新しい手法として活用していくことが進んでいる。その間のようなアプローチも見られるということで、7ページ目以降、いろいろな実例というのを御紹介いただいているところでございます。
 11ページ目の方で、材料・化学分野でのデータベースの視点からまとめていただいておりまして、実験結果のみならず、計算科学も組み込んだデータベース化というのが進んでいるという点。それから、機械学習によって、こうしたデータを使って目的の物質、機能を得ていくようなアプローチも、対象分野によっては有効ではないかというような点も御指摘いただいております。
 まとめといたしましては13ページにございまして、化学・材料分野において情報技術の活用について期待が大きく、また先行的な成果もあるけれども、対象が複雑なので課題も多いということで、データを単に情報処理するようなアプローチでは難しく、実験、シミュレーションとの協働が必要であること。それをどう進めていくか、どういうデータベースを作っていくのかも課題であるということでございます。また、人材育成についても課題だという御指摘がございました。
 最後に23ページでございますが、バイオ分野からの論点ということで、津田先生から頂いております。
 津田先生の方からは、まず最初に、情報分野の支援というものが非常に不可欠であるということでありますけれども、非常に大きな計算資源、ストレージというのが必要でありますが、なかなかその点が不足しているのが現状であるという課題が示されております。さらに大規模な研究開発というのは、情報系の研究者も含めたチームサイエンスという形で行われるということが多いということでございますが、その中で、データサイエンティストというのはなかなか専門性が正当に評価されない傾向があるということで、それらを解決して、データサイエンティストとの連携をしっかりとやっていくような環境を整えていくべきだというような御指摘がございました。
 ちょっと時間が短い中でまとめさせていただいたので、至らないところもあるかもしれませんが、以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 奥野委員、何か一言補足等ございませんか。
【奥野委員】  非常にまとめていただきましてありがとうございます。特に申し上げたいことというのは、情報学の先生方、情報学の研究者が何をすべきかといったところが、情報学の中での非常に重要なことと、あと現場、エンドユーザーが重要としてくるところの2点というのがあると思いますので、いかにエンドユーザーからのニーズというのを、本当に根本的な研究開発をされている基礎の先生方の方にフィードバックできるかどうかという、そういう仕組み作りが非常に重要だと思っています。
【西尾主査】  ありがとうございました。
 来住先生、どうぞ。何か一言ございますか。
【来住委員】  情報学のユーザー的な立場ということですが、私自身は情報処理学会に属していて、データサイエンス教育、情報教育に主に関わっています。そこで、ユーザーといいましても、学生、生徒の目から見ると、データサイエンスはどういうふうに映るんだろうと考えて、要望をまとめさせていただきました。
 アメリカの例は、皆さんの例と比べるとちょっと変ですけれども、アメリカにはデータを尊重する長年の文化があり、割合と簡単に身近なデータが手に入るということも、ここに来て急激に大きな産業が起きたという理由だと思いますので、日本にもそういうような社会環境ができるように、いろいろなプロジェクトや政策を立ち上げていただきたいと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございます。
 栗原先生、本当にきっちりまとめていただいておりますが、何か一言いただけますか。
【栗原委員】  ありがとうございます。私は、情報科学そのものに対しては素人に近いのですが、ただ関心を持っていろいろなところで研究にどう使えるのかということを常に考えておりまして、今回身近なところをまとめさせていただきました。
 それで皆さんのお話を聞きながら、自分の書いたことを考えてみますと、たまたま今回、まとめました資料の4ページに企業の一覧がございましたけれども、この中のIT系の企業以外のところは、自動車会社はフォルクスワーゲンが入っていまして、それ以外はロッシュ、ジョンソン&ジョンソン、ノバルティスというヘルスとか創薬の会社、製薬の会社ですね。それから、メルクは合成化学の会社でして、たまたま私が今回集めた例は、非常にそういうところに近い。やはり化学分野では、こういう外国の活動等もある程度影響し合って関心が高まっているんだというふうに感じました。
 そのようなボトムアップ的な活動は大事にうまく取り上げていただいて、情報科学の皆様とうまく連携できると、世界の大きな流れと、そして日本の産業に対しても非常に貢献させていただける可能性があるかと思いました。
 それから、出させていただいた例は、ほとんどが何かの国のプログラムに関係しているものです。NIMSの例は大きなプログラムですし、JSTと書いてあるのは、さきがけの研究者です。さらにNEDOと、やはりこういうかなり異なる分野が技術をお互いに持ち寄って、あるいはシーズを持ち寄って研究するには、ただ放っておいてできるものではないかもしれず、先ほど安浦先生が言われた大学の研究支援というようなところで、うまく大学の中で連携が組めたらそれも良いでしょうし、今日情報系の先生がおっしゃったいろいろなキーワードをうまくつなぐと、何かできるかもしれないと思いました。
 さらに、シミュレーションについては非常に親和性がいいというか、やはりこういう材料系、あるいは化学もそうなんですけれども、対象が複雑で、第一原理計算からとても計算できないので、あらゆるところで近似を使っています。そのために常に実験との確認も必要ですし、うまく情報を使って近似がいろいろな形で展開できると、ま大規模な、「富岳」などを用いるシミュレーションは、非常に今、日本としても力を入れている領域ですので、そういうところも1つの大きなテーマのあるところかと思います。以上です。
【西尾主査】  どうもありがとうございます。
【栗原委員】  あと1点、私、情報技術と書いてしまったところが多いんですけれども、後から読み合せてみてこれでよろしかったのかなと。情報科学の方がよかったのか、あるいは安浦先生に後で御指摘いただいて、言葉を直していただけたらと思います。
【西尾主査】  津田先生、どうぞ。
【津田委員】  バイオ分野で、例えばハイインパクトなジャーナルに載るような研究というのは、ほとんどチームサイエンスで行われています。その中で、大抵情報系の人がいて、データサイエンティスト的な活動をしているわけなんですね。なので、情報系の理論の研究とかを推し進めるというのも1つなんですけど、ただ、同時にこういう感じの人材もちょっと育てていかないと、ハイインパクトな論文書けなくなっちゃうんですよね、シンプルな話。ということは、ひしひしと感じているので、ちょっと区別していただけるといいのかなと思います。もちろん僕も情報系ですし、情報系の研究はすごく好きだし、進めるべきだと思うんですけど、何て言うんですかね、いろんなデータを解析してまとめ上げていく必要があるんですね。今の論文って見たら物すごいデータ量が入っているので。そういうことができる人がちょっといないと、ほかの分野のインパクトもなくなってしまうのかなと思っています。
【西尾主査】  どうもありがとうございます。今御指摘いただいたことも重要なことかと思っております。
 それでは、一通り発表いただくということで、産業界の見方として、日本経済団体連合会の若目田委員、どうかよろしくお願いいたします。
【若目田委員】  経団連の若目田でございます。「情報分野が主導して取り組むべき重点領域は何か」という今日の論点に対し、例えば「ブロックチェーンを優先すべき」といった領域を絞り込む為の素材といえる資料ではございませんが、過去経団連が研究開発力の強化に向けてどのような提言をしてきたかについてご説明したいと思っております。
 まず1ページですが、国が掲げるSociety5.0について、経団連ではSociety5.0 for SDGsと称し、目指す社会像としてこれをゴールに据えております。そのゴールに向けての研究開発力の提言ということになります。まずSociety5.0で忘れてはならないことは、その本質は人間中心の社会という点です。例えば、エネルギーや物流の全体先的、フードロスの削減といった社会課題に関しましては、ともすると個人情報、パーソナルデータとは遠い領域と思われてきたかもしれませんが、最も川下に位置する個人の消費動向や行動履歴を捉えなければ、最適な解が出せません。一方で、個人のすべてのライフサイクルに関するデータを収集することを目指し、個社で様々なサービスを包括し圧倒的な規模で展開するいわゆるGAFAのビジネスモデルについては、既に日本が追いつくことが困難な状況です。ですので、日本としては、事業者間でデータの流通を促進し、業界やバリューチェーンでデータを共有するという戦い方が、重要な戦略になってきます。そして、政府が掲げる「DFFT=Data Free Flow with Trust(信頼性のある自由なデータ流通)」における「トラスト」をいかに担保するかという点が極めて重要であると経済界は認識しております。
 産業界がデータを流通、共有する相手としては、研究機関も重要な対象と位置付けるべきと思っております。しかし、「個人情報を企業と大学との共同取得とするのか、大学への第三者提供に当たるのか」といった点を押さえずして産学連携のプランを描くと、いざという時に肝心のデータが使えないという課題にぶつかるのかなと思います。
 2ページ目、課題認識ですが、研究開発に関しては残念ながら日本の相対的な地位が低下しているという、我々の認識でございます。いま一度、研究開発を起点とした好循環を回すことが必要で、政府研究開発投資の量的な確保だけではなく、その配分の在り方が重要ではなかろうかと認識しております。
 3ページ目ですけれども、経団連では研究開発投資について「選択と集中」から「戦略と創発」への方針転換を提案しています。「戦略と創発」とは、戦略的研究に加え、一方では課題や短期目標を設定せず、多様性と融合によって破壊的イノベーションを目指す創発的研究も重要となるという提案でございます。
 4ページ目ですが、戦略的研究と創発的研究を有機的に連携させるエコシステムが極めて重要という点です。冒頭申し上げたパーソナルデータの件とも通じると思いますが、産官学に加え民が重要で、やはり一般の方々、広く国民のコンセンサスを得ることが欠かせないものと理解をしております。
 5ページ目です。戦略的研究に関しましては、最終的に社会に何をもたらしたいのかという視点が重要であり、そこから必要なデータとか必要な技術をバックキャスティングしながら考えるアプローチとなります。企業が主体的に投資する分野は主にこの戦略的研究の領域と理解をしておりますが、次の3つの分野に関しましては、企業だけでなく、政府も積極的に関与いただきたいと考えています。ひとつは、わが国の基礎的な社会課題といえる領域、例えばヘルスケア領域。次に公共性は高いが企業だけで取り組むにはいわゆる収益性が難しい分野、例えば防災。3点目は、その土台になる部分、通信とかサイバーセキュリティー。このような領域に関しましては、国の協力も要請しているところでございます。
 もう一方の創発的研究について、6ページになります。この促進のための重要な要素として、例えば、ともするとこれまでの研究現場では主流とされてこなかった外国人、女性、若手といった人々を呼び込むことにより研究現場にも多様性を求めるべきと提案しています。先ほども、情報領域におけるELSIや、それに対応する人材育成の重要性についてコメントもありましたが、これも多様性の観点の要素と思っています。創発的研究に重要な要素として、次に「融合の促進」を掲げています。例えば、異なる人々や組織をオーガナイズするプロデューサー人材の必要性などを提案しております。
文科省様におかれては、我々の提言を酌んでいただきまして、「創発的研究支援事業」ということで、予算30億の要求をいただきました。今後も継続的に予算措置をお願いしたいと期待しております。
 次に、本日の主題であるデータの活用についてです。7ページ目になりますが、データ活用をめぐる課題は、研究分野も我々民間企業も非常に近しいという理解でございます。データ収集・連携の基盤、これはシステムだけじゃなく、仕組みも含めてですけれども、まだまだ整備が必要であると思っております。また、我々産業界というか経団連に属する企業にも大きな責任があると認識しておりますが、データ活用におけるプライバシー侵害やセキュリティーに関する事案が顕在化し、消費者の懸念が高まっております。このことから、個人データを中心にデータ活用の進展が遅れており、この点に関しまして反省も含めて対策の必要性を強く認識しております。
 来年2020年は個人情報保護のいわゆる3年ごと見直しのタイミングとなりますが、研究領域においても法律の在り方も含め、データ活用の基盤や仕組みに対して意見を明確にしていくことが大切です。そして社会受容性の向上に向けた取り組みも重要です。これに対しては従前から国の政策でも、「国民のリテラシー向上が重要」と書かれておりますが、残念ながらその段階で先に進んでいないケースが多いのではと感じています。この課題に関しては、企業サイドも各社が自分事として認識し、それぞれの事業におけるパーソナルデータの活用において受容性の向上に努める必要があると思います。個人データがイノベーションや研究開発に必要であるという理解のもとに、個人が納得できる仕組み、もしくは何か不測の事態があってもそれをリカバリーするような仕組みなどが求められると思っております。
 次のページ、データ流通・活用基盤の構築という点ですが、これは民間だけではなく研究者にとっても必要な要素であることは申し上げるまでもございません。まず、オープンデータの推進。これは無料で自由にコピーできるという点だけでなく、仮に何らかの制約があったとしても広くオープン化の流れを推進することが重要と感じております。2点目は、データ連携基盤の構築という点です。医療分野など重要な社会課題に対応するためのデータに関しましては、様々なステークホルダーが使いやすい形で連携できる仕組みの構築について政府の取り組みの強化を期待しております。3点目は情報銀行の取り組みです。情報銀行という表現がいいかどうか、必ずしもこれにこだわる必要はないと思いますが、生活者のコンセンサスのためにも、個人の関与により安心・安全にデータを流通させる取り組みは重要です。個人の意思に基づき、例えば「この研究であれば私は応援したいし、自分のデータを使ってほしい」と思われるような環境作りがとても重要だと思いますし、特に医療分野に関しましては、この取り組みの普及が期待されています。研究領域においても、データのポータビリティーや、個人の関与の仕組みについて他人事ではないと理解すべきでしょう。
 9ページ、個人情報保護、法制の整備についてです。GDPRの十分性認定に関しまして、個人情報保護法との同等性が認められたもので、例えば行政機関や国立大学のような独立行政法人が保有する個人データ等の扱いは、枠組みから外れています。
国内外の産官学の共同研究を進める上で、この解釈が支障をきたす懸念もありますので、個人情報保護委員会が従前の民間のデータに関するガバナンスのみならず、官民あまねく個人情報の取り扱いの統一化を図るべきと要求しております。これは他の業界団体も含めて共通の認識であり、来年度に向けて検討をお願いしているところでございます。
 次のページですが、大学など研究機関への要望となります。先ほど申し上げたように、特にパーソナルデータに関しましては、適切な取扱いについてより一層注意を払うべきという点でございます。企業と大学の共同研究においても、企業の情報セキュリティーのポリシーと大学の実態とのギャップが障壁となったというケースを伺ったことがあります。当然大学には個人情報保護法の遵守だけではなく、プライバシーやデータ活用ポリシーの策定と管理体制の整備についてお願いしたいと思います。また、セキュリティーに留まらず、倫理に関する取組も期待しております。AIやデータを活用する際のプライバシー、人権に対する配慮について、アカンタビリティや透明性の観点で明確に公開していくべきと思います。AIの活用においては、データを含めた品質や倫理面も含めた信頼性を備えた高品質なAIの仕組みを整えていただく必要があると考えます。もうひとつ最近は改善傾向と伺っていますが、特許権の不実施補償の問題に関しましても、経団連としては指摘させて頂いております。
 先ほどから大学、研究機関側からのご意見を伺いましたが、データの活用についての課題や取るべき対策の方向性は、大学でも民間であっても一緒と理解いたしました。別な場ですが、いわゆる映像系のデータ、カメラ画像の活用のニーズとそのプライバシー課題について民間企業で議論したことがあります。その場で、ソニー、オムロン、三菱電機、NECという4社が、自社の技術開発、例えば画像解析技術やセンサー技術の開発や精度向上のためにカメラ画像を活用したいが、プライバシーへの対策が課題であると、みな同じ意見でした。また、自分たちが全てカメラセンサーを設置するということも不可能に近いので、何らかカメラの設置されているような他の事業者から提供を受けたいが、やはりそこに個人情報の扱いの課題があり悩んでいるという点も共通の課題でした。研究開発におけるデータ活用のニーズや課題については、大学も同じであり、ひとつのユースケースとして産学共同で検討すべきと考えます。
 最後に11ページですが、人材、教育推進への期待となります。経団連は2019年2月に「AI活用戦略~AI-Readyな社会の実現に向けて~」という提言を公表しましたが、そこでAI-Readyの個人とはどうあるべきかという定義とともに、人材のことに触れております。一律ではなく、トップ人材、中核人材、ベースとなる利用者のリテラシー、この3つの層それぞれの人材育成施策が必要との認識ですトップ人材においては、本人の努力だけでなく、正当に評価される体制であるとか、AIとあらゆる学問領域のコラボレーションの推進といった国際的にもトップエンドのスキルを発揮できるような人材の育成の必要性、中核の技術者では、リカレント教育の推進やダブルメジャー人材として、例えばAIと心理学、AIと流通といった複数のスキルを持った人間の確保。また、ELSI人材にも通じると思いますが、リベラルアーツ教育の必要性なども。また、これは最も重要なところかもしれませんけれども、土台となる利用者のリテラシー教育に関しましても欠かせません。自分のデータのマネジメントの在り方とか、若い頃からの様々な教育機会の提供は、重要との認識です。
 最後のページは御参考ですけれども、AI-Readyな企業とはどうあるべきかを、5段階のランクにより評価できる指標を作成しました。要は自社がどのレベルにあるのかが把握でき、より上を目指すための施策を検討するための指針となります。これを、AI-Readyな大学とか、AI-Readyな研究機関と読み替えて頂くことにより、産学連携の御参考にしていただけたらなと思います。以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。産業界の方から、やっぱりデータということに関して非常に強調していただいて、御報告をいただいております。それだけ本当に重要なテーマであり、課題であるということです。
 1点確認したいんですけれども、今の御発表の中でも、リーガルというか、個人情報保護の法令的なこと、また、奥野先生からもELSIの問題等を挙げていただいているんですけれども、第6期に向けて我々が総政特の方に意見を挙げていくときに、前半部分でそういう法令的なこととかELSIのことの重要性は、既にこの委員会から提示しているのか、その辺りについてもう1回おさらいしたんですけれども。もし、提示していないのだったら、研究および技術的な課題とは別に、情報委員会からデータセントリックな科学技術、学術振興、教育を行うには、そこをまず解決しなければならないということをきっちりと提示しなければならないと考えます。そこはどうなっていますか。
【橋爪参事官】  前回、1回目の議論をまとめた中に、そうした視点も入れております。ただ、3本柱でやったときに、データのルール作りという形で書いてあるような感じなので、もう1回今回の議論を踏まえて、ちゃんと入っていくようにやっていきたいと思います。
【西尾主査】  はい、分かりました。
 本日の論点例というメモ書きがございます。今日、皆様方との間でコンセンサスをとって、どのような課題の研究をきっちりしていきましょうというようなところまで、議論としてまとめていくのは難しいと思っております。メモ書きには4つの項目ありますけど、皆さんから御意見を頂くときに、できましたら上から1番目、2番目、3番目、4番目というふうに仮の番号を打っておりますので、このうちのどの視点からの意見ですというようなことを言っていただいて、いただいた意見を今後事務局でまとめていただくというような方法で進めたいと思っております。そのような方法で御意見等いろいろ頂けたらと思いますが、いかがでしょうか。安浦先生、どうぞ。
【安浦委員】  皆様方から非常に重要なポイントをいろいろ御指摘いただきましたけど、全体通して今日のメモの1番目、2番目のポイントになると思うんですけれども、まさにIT自身が社会のインフラになってしまったというところで、大学においても社会においても、一方で電力とか水道と同じように止められないサービスになっていると。そうなると、そこの部分というのはどうしても保守的、安全サイドを見た運用、これが大学でも行われないといけない状況になっている。あるいは、スーパーコンピューターの運用ですら、それを求められると。
 一方で、非常にスピードが速い技術の展開があるので、そのサービスを守る人というのは単なる技術者じゃだめで、先端的な研究者、大学においては教員でなければならないということで、サービス担当を教員がやるという形になっているというのが現状かと思います。そういう意味で、先ほど深澤先生のところでも申し上げましたように、大学自身が情報科学や情報学としては実験的なことを、現場を使って行うことが極めて難しい、そういう状況が生じているということで、ユーザーから見たら、これは栗原先生の書かれているように、まさに情報技術でいいわけです。これはまさに使っていただいて何ぼという世界だと思いますけど、しかし、これ自身で国が学術的にも、あるいは産業的にも競争していかないといけないという立場から言えば、学問であるべきであると。そこの二重性が、我々、非常に難しい問題として突き付けられていて、第6期は、この矛盾をどういうふうな形で知恵を出して解決していくかということになると思います。
 一方で、社会変革とか科学手法の変革で、全ての科学分野や社会の産業等の社会活動に影響を与える、そういう状況が起こっていますから、国民全体に対する、先ほどの若目田さんのお話にもありましたように、国民全体に対するリテラシー教育だとか、あるいはそれぞれの専門分野の方がAIとかデータサイエンスの技術、計算科学の考え方を使った研究ができる能力を持ってもらうという、こういうことは当然必要なわけですけど、じゃあ情報学自身がどちらの方向に動くべきか、この委員会に問われているのはそこの部分だと思いますので、そこは分けてしっかり議論していく必要があるんじゃないかというふうに思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。ある種の論点の整理をしていただきました。これは情報科学、情報学の我々の分野の特性なのかもしれません。最先端の研究を極めようとしている研究者、あるいは技術者が、一方では情報インフラの整備、維持に追われてしまっており、世界に先駆けた研究開発がおろそかになってしまう。
 それでは、一体どうするのかということが大きな課題ですが、そのためにも世界に先駆けて推進していく研究テーマが何なのかということを、この委員会で明らかにすることがさらに重要なってくる、ということだと思います。
 どうぞ。
【栗原委員】  たまたま情報技術と書いてしまったのですが、私は計測の研究者でして、計測法を開発する、それから、使うという立場ですと、ある意味情報とも多少近いものもあって、作った計測法は皆さんに使っていただきたい。ですが、使っていただこうとすると、今自分が持っている技術だけではなかなか足りないので、それをまた新たに高度化しないと、なかなか対象に追いつかないという意味では、使う人にとっては技術かもしれないんですけれども、実際にはそこにはサイエンスもたくさんあるんですね。ですから、そういうところを、どういう言葉遣いで言うのがいいのかなと思っていて、それほど単純に技術と書いたわけではなく、そこの中にやはり科学なのかもしれないし、だったら科学技術なのかもしれないし、とも思っています。
 最近非常に思っていますのは、特に社会貢献がサイエンスに求められるときに、例えば、産業的な試料を計測するというのは、普通の計測からすると対象が非常に複雑なんですね。普通の感覚だと億劫なところもあるんですが、やろうとするとやはり今までの条件をうんと広げたり、そういうところにものすごく工夫が必要で、サイエンスとしても結構おもしろいことができるというようなことがあります。だから、実はそこは余り割り切らない方がいいのではないかと思うところもあります。情報科学としての発展というのは、実はそういうところにもあるのではないかと、私自身は最近随分そういう思いがあります。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 田浦先生、まず、ご意見をどうぞ。その後で喜連川先生にもともとの発表内容、および先ほどから意見交換していることに対するコメントがありましたらお願いします。
【栗原委員】  済みません、私は余り言うような立場ではないんだけど。
【田浦委員】  私は情報を専門にしているというか、情報しか知らない人間なんですが、今、いろいろ情報に期待が集まっているところに、やっぱり栗原先生もおっしゃったとおり、ほかの分野からの期待というのを無視はとてもできないと思うんですね。それで情報科学にせよ、特にデータ科学、そういうところで学際的な側面というのが情報学の中にも必然的に入ってきていると。であるがゆえに、期待されているというところはやっぱりしっかり押さえておかないといけないと思っています。
 それを要するに、バイITというか、要するに情報を知る人間が、基本的なところだけをほかの分野に提供するというような、そのレベルにとどめないで、その先が情報学としても発展できるというような関係をいかに作っていくかというのが恐らく重要かなと思っていて、それは月並みですけれども、コラボレーションを始めるということを簡単にする仕組み。あとはやっぱり情報の場合は、情報の人間はもともと分野のことを知らないで始めるので、その分野のことを知るのに1周して、2周目に入ったところで多分情報科学的なチャレンジを発見してやっていけるとか、あるいは複数の分野を見て横串にして、1つIT技術、使われる情報技術は共通性があるとか、一旦分野を1周した後でさらに発展するというような、息の長いコラボレーションができるようにするべきだなと思っています。
 特にデータ科学に関しては、そういうことが起きやすくするために、分野を超えたデータを1か所というか複数横に連携させて処理できるような、そういう基盤というのも作っていく必要があるんだと思っていて、特にユーザーからの視点ということで幾つもおっしゃっていただいたようなセキュリティーに関する懸念とか、そういうのも含めて、今、文科省に予算をつけていただいて、そのような取組も始めているところですので、そういうところで基盤というものを通して複数の分野とITが連携できるような、そういう環境を作っていくことが必要かなと思っています。
 あとその中にもう一つ、企業との関係というのが非常に大事ではないかなと思っていて、やっぱりデータ科学となると、本当にプレイヤーというかステークホルダーが多くて、多分大学側はいろいろとデータ処理に関する知見とか情報科学的な知見というのを求められることが多いんですけれども、やっぱりデータを持っているのが企業であるとか、それにさらにその分野の専門家が加わって、本当に複数のチームが作れなきゃいけなくて、企業というのがこれまで以上に重要かなと思っていて、そのときに基盤をいわゆるピュアな学術目的以外のどこまで使っていいのかと、国の予算で作ったりですね。「京」とか「富岳」でも似たような話にいつもなるので、その辺の関係は、正直今までよりも少しリラックスさせた関係というか、そういうものを作っていかないといけないと思っています。
 あと最後に、安浦先生がおっしゃったような観点に関して、そういうデータ基盤もそうなんですけれども、HPCとか今までのシミュレーションみたいな話に限ったとしても、そのための共有基盤、計算基盤というものを、これからは非常に多様性が大事で、ポストムーアの時代というふうに言われていて、だからどこかに大きいのが1つあるというよりは、各所でいろいろな試みがなされていて、だけどもそれを複数の大学がちゃんと横で連携して、例えば、最低限の計算に必要なニーズは支えつつ、いろいろな大学が新しいことでチャレンジする。中には失敗するのもあるかもしれない。そういうような基盤作り全体を横連携で支えるような仕組みというのが必要になるのではないかと思っております。
【西尾主査】  貴重な点、ありがとうございました。田浦先生のおっしゃることは、バイITという観点で、他分野との絡みで情報技術を実装していくプロセスにおいて、新たな情報技術としてどのようなことを基礎研究として探求していかなければならないかということがより明白になってくる。それをフィードバックして、情報科学の基礎研究の方の課題として戻してくる。ある意味のバイITとオブITのエコシステムを作っていくということの重要さをおっしゃられておられるように思います。
 そのようなプロセスの重要性を6期の基本計画に盛り込むように働きかける、というようなことでインパクトのある提案になるのか。その程度では弱くて、基本計画ですので情報分野としての何か強力なフラッグを挙げていかないといけないのか。その辺りの戦略性も、今後考える必要があるかと思います。
 喜連川先生、よろしくお願いします。
【喜連川委員】  済みません、私どもの研究所で……。
【西尾主査】  喜連川先生、少し待っていただいてよいですか。八木先生が退出されるということなので、まず、八木先生にご発言いただきます。
【八木委員】  喜連川先生、どうも済みません。
 いろいろなタイプのデータが連結された時に、価値が生まれてくると私自身はずっと思っています。その観点で、量よりも質の観点から、データをベースにした新たな情報科学というものを意識していく必要があるんだろうという認識でいます。
 パーソナルデータとかも、単に医療だけでなく、いろんなデータがくっついてくると価値が高まってきたりします。日本に競争力を持たせていくために、パーソナルデータが価値を持たせることが重要であり、そのために大学がいろいろ役割をしないといけない。やはり大学のようなある種の公共性のある場が、データの創生において活躍できれば、非常に価値のあるものになるでしょうし、加えてその流通を加えて考える必要がある。ところで、現状商業2次利用できるパーソナルデータというのはそんなにありません。例えば、医療データでも、基本学術目的での2次利用しか、現実問題できなかったりするかと思います。企業からすれば、多分ローデータの商業2次利用まで意識したような枠組みが必要です。パーソナルデータの場合、本人同意の仕組みの中でのデータの収集と活用が必要になるので、その部分で、国際競争力を持たせていくというのが必要です。
 世界を見ても、GDPRとの観点でも、十分性認証に関して前へ進んではきていますけれども、現実問題で言うと、いろんなところでまだまだ違いはあるんじゃないかと個人的には思っています。日本のパーソナルデータの扱い方も、世界に活用しやすいように整備されていくことが、多分日本の情報科学を発展させる上においても大きいのではないかと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。先ほど奥野先生から言っていただいたことも含めて、今のことを考えていきたいと思っております。
 では、喜連川先生、資料3をもとに、10分余りということで時間を切らせていただきたいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
【喜連川委員】  隣でちょっと栗原先生にチンを鳴らしていただきたいと思います。ちょっと遅参をいたしまして失礼いたしました。
 お手元の資料の3でございますけれども、第6期の情報学を検討するIPSJ-NII-MEXTラウンドテーブルというものを開催いたしましたので、御報告を申し上げたいと思います。
 この経緯というのが2ページ目にございますけれども、情報参事官の方から、この総政特に提出する第6期のある種シードとしてどういうことがNIIとして考えられるかみたいなことの御下問をいただいたわけですけれども、NIIは御案内のように、情報のみを研究している唯一の日本の研究所なわけですけれども、それでもやはりITを御研究になられている先生方は、NIIの研究者というものはほんの一部でしかありませんので、より多くのITの研究者の御意見を聞いていただくことが不可欠だろうと感じまして、やっぱりそのときにこそ学会と連携すべきということで、情報処理学会、今、江村会長になっておられますので、学会とNIIが連携して、ITのアウトルックをともに語り合おうではないかというような場を作るのはどうでしょうというのを御提案させていただきました。
 江村会長からも、文部科学省からも御賛同賜りまして、ただこれ、4つ目のポチに書いてありますように、生まれて初めての取組で、私が会長のときもこういうことがあるといいなと思ったんですけれども、ちょっと忙しくてここまでやれなかったということで、まだまだちょっと未成熟ではありますけれども、そういうところで若干緩やかに見ていただきたいということです。
 ポイントは、大体40ぐらいの研究会がございまして、御案内のように、昔はハードウエアとソフトウエアしかなかったんですけれども、今、40分野になっています。その研究会の主査、あるいは主査の近くの方々でビジョンを語れるような方に来ていただくというのを3日間やりました。夏休みに3日間やりまして、ただ、その3日間のうちどこも日程が合わない先生方もおられますので、全部が全部できているわけではないんですけれども、それプラスNIIの先生にも少しあれしていただきまして、今日、木村さんに来ていただいておりますけれども、JSTからいろいろ側面の御支援をいただきました。ファンディングエージェンシーとしておっしゃりにくいこともあるかなと思いましたので、発言そのものは主として情報処理学会と、NIIの少数のメンバーという形にいたしたわけです。
 それから、5つ目のポイントは、今日ちょっと遅参しましたので、JSTさんがどういう取りまとめをなされたのかよく分かっていないんですが、過去ずっとIT俯瞰レポートのようなものをJSTさんが出されておられまして、この情報委員会の前の委員会でも、当時は岩野さんだったんですけれども、全面ずっと平たくおっしゃるんですね。私はいつも申し上げたのは、ファンドしたくない領域はどこなんですかと。ファンドしたい領域を言っていると全部上がってしまうのでというようなことを言っていたんですけれども、なかなか限界になってなかなかうまくいかなかったんですが。今回、むしろ江村会長の方から、茫洋とした全体の俯瞰はやめましょうと。とにかく何をやるか、ちょっとバイアスされていて、敵をたくさん作っちゃうかもしれないけど、何かメッセージを出そうと。そのメッセージは間違っているかもしれないので、間違っていたらいろいろ議論を戦わせればいいだろうと、そういう視点で今回は作ったということです。
 この後申し上げますけれども、これは江村会長と岡部副会長と、私どもの河原林副所長と私の4人でまとめていますので、ちょっとそれは全員の意見ではないということを御紹介させていただきたいと思います。
 別紙の1-1、2-1、2-2と2-3というのがございますけれども、これが開催した日程とか人とかそのときのテーマとかというのを、これはJSTさんに非常に丁寧におまとめいただいたものでございまして、御覧いただくと分かりますように、かなりエクスペンシブに御発表いただいた。あなたの夢を語ってくださいというような、田浦先生も御発表されたということです。
 それで7ページ目がまとめみたいなものなんですが、今、IT俯瞰として何が起こっているんだろうということなんですけれども、ざっくり言いますと、やっぱりML embeddingということで、ありとあらゆる学問の中に、深層学習に端を発するAIというものが、こういうふうに埋め込む、こういうふうに埋め込むというのをどんどんどんどんやっていると。一言で言うと、それが一番大きな変革なんじゃないかなと思います。チューリング賞50周年のときに、バーナーズ・リーがウェブで、50周年のチューリング賞をもらえたわけですけれども、やっぱりウェブというのは物すごく大きなインパクト感を与えました。その後、50年後に、今を振り返ったときに、この大きな衝撃は、多分誰もがインパクト感を認めることになる。つまり、機械学習の中で、ほかの機械学習じゃないんですね。ディープラーニングだけが与えたインパクトというのはけたたましいものがあると。それをどう利用しているかというのを、残り5分の中でいわなきゃいけないんですけれども。ありがとうございます。
 何言っているのか分からなくなりましたが、IT応用というレイヤーをちょっと上の方に見ていきますと、例えば、一番最初に発表されたのは音楽情報研とか音情研とかいうようなところも、そういう応用も、医療・介護みたいな応用も、画像も言語も、原則ほとんどMLです。真ん中にMLを書いて、これはマシンラーニングです。その下を支えるのが、いわゆる基盤研究というところでございまして、SPARCとかそういうレイヤーがありまして、その下に基礎研究というようなイメージで、ここでは捉えております。
 この具体例は、その次の8ページを見ていただくと分かるんですけれども、実応用はここにございますように、AIによる音楽というものもあれば、バイオ情報もあれば、あるいは農業があったり、防災があったり、あるいは学術情報の解析とか、デジタルヒューマニティーがあったり、医療があったり、HCIがあったり、CGがあったり、こんなものがいっぱいあるということです。マシンラーニングのレイヤーの中に、言語と画像をあえてちょっとは入れているんですけれども、これはアプリと言えばアプリに見えるんですが、画像処理そのものが随分多くの部分に適用されていますので、ちょっとこのレイヤーに入れてもいいかなと。この分類も、ややシェイキーなところがあろうかと思います。
 その下が基盤で、OS、プログラミング、セキュリティー、通信、HPC。ちょっとアーキテクチャーが抜けておりますけれども、それと分散コンピューティング。
 一番最後が基礎というところで、一番そこのレイヤーを組み合わせ最適化だとか、あるいはアルゴリズム、あるいは量子論、暗号、コンビナトリアルな計算理論みたいなものがあるということです。
 それでもう1回7ページに戻っていただきますと、応用研究は各いろいろなところで、こういうものに対して何かしませんかというような、そういうファンドは今まで結構たくさんあったと思うんですね。厚生労働省ですと、こういうデータがあるんだけど、こんなふうに解析してみませんか、あるいは老人がいると、どんなふうにQOLが上げられますかみたいな個々の研究というのはいろいろあった、農業分野もあったと思うんです。あと2分だそうです。それで、ここはそれなりにサポートされているような気がします。マシンラーニングのレイヤーは、今、これは理研とJSTに対してそれなりのファンドがされているということです。
 そうすると、今度一番下の基礎なんですが、基礎は余りお金が要らないと言うと、これはまた反論を食らうかもしれないんですが、まあ、ほかに比べるとそんなにお金は要らない、人代だけということで。一番ミッシングなのは、ブルーのITの基盤部分ではないかというのを、特に名古屋大学の河口先生がおっしゃられまして、それを一言で言いますと、ITをどうやってビッグサイエンスにすることができるだろうかというような言い方をなさいました。要するに、個別の研究は幾つもあるんだけれども、もっとスケールをでかくするような、そういう方にITをトランスフォームするということが今後重要じゃないかということをかなり明確に言われまして、その後発表された方は、いや、うちもそう思っています、うちもそう思っていますみたいなムード感になったのが事実でございます。
 先ほど来データという言葉が出ていますけれども、MLということイコールデータを注入するということとほぼ同じですので、マシンラーニングとデータ基盤も切っても切り離すことができないような環境にあるということを考えますと、このIT基盤というところが、今、ちょっと下から2つ目のポチなんですけれども、基盤投資のバイアスが随分出ているんじゃないかと。つまり、どういうことかといいますと、アメリカはACIというのがありまして、アドバンス・サイバー・インフラストラクチャーという、そういうNSFの部局があって、そこで特別の予算が出ているわけですけれども、インフラということの重要性を認識しているんです。そのときに、HPCというのは1つでしかないわけなんですけれども、我が国では1,200億ぼんと、いわゆるスパコンに、しかも64ビット系のハイプレシジョンの旧来の第1原理用の計算機として投下がなされているわけですけれども、ある意味で言うと、ほかがほとんど何もないというようなことで、ここがここのタイトルに書いてありますところのミッシングターゲットになっているということで、何が申し上げたいかというと、最後のところが一番重要なんですけれども、論文生産効率が一番悪いところだと。オペレーティングシステムの研究をする、プログラミングを新しく、言語を開発する、あるいはコンパイラーの講座なんて、日本中どこ探しても今、ないんじゃないかと思います。そういうプラットフォームを作るというような研究を、今までちょっと余りにもないがしろにしてきて、ここが今、御議論あったかもしれないんですが、黄色の部分を走らせるようなものを自分たちで作りましょうと。黄色と緑が連携しながら、もちろん緑も紫も入るわけですけれども、そんなものを次の新しい第6期に向けたときの1つの、今まではほとんどパーテーションされてなかったところにちょっと目を向けることもあるんではないかなというのが結論でございまして、0.5分ぐらい出たかもしれませんが、お許しいただければと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。レイヤーの分け方において、MLというのが1つのレイヤーとして位置付けられてきていることが、今までと違う斬新さがあります。それと何か新しく流行している領域を日本がどんどんと追いかけるということは、いかがなものかということは私も気にしております。そういう意味で、7ページではブルーのところで、8ページでは紫色の部分を第6期基本計画として、日本として骨太にきっちり進めていくという方向性、将来の世界の情報分野をリードする上での1つの大きなベースになるのではないかと考えます。
 それと、指摘いただいた対象領域は重要であるにもかかわらず、論文が余り出ない分野ということがあって、むしろ日本としてはそこをきっちりと進めていくべきではないかということで、非常に参考になりました。どうもありがとうございました。
【喜連川委員】  北京大学が3,000億、清華大学が4,000億という中で、彼らの研究開発投資というのが、やっぱりこういう基盤系をしっかりやっている。だから、アリババが生まれている。何もないところからアリババを運用するような、そんなシステムが生まれるとは到底思えないと。我が東大総長が、今年はアップルに行かれたんですね。アップルで何をやっているかというと、アップルの論文って、出た後も、JSTさんが御説明されたかもしれないんですけれども、ほとんどフィージビリティーがない。ですけれども、彼らはそれを誇りにしている。テクニカルバイスプレジデントは何と言ったかというと、うちはそもそも学術界でプレステージをとりたい、そんなようなエンジニアなんかびた一文雇っていない。だから、そもそもグーグルはCSRを込めて、ああいうところの国際界にだんだん出すようになる。過去ほとんど出していなかったんですけれども、今、ようやくどんどん出すようになった。アップルがどうなるか分かりません。ですけれども、情報を見たときに、ああいうiTunesのようなプラットフォームをきっちり作れるような人材をどうやって確保するかというのが国の力になる。
 ここは学術界と相当切断しているわけですけれども、切断しちゃっているからいいというわけではなくて、そこに送る人材供給源を、先ほどのACIのようなところが、アマゾンを使うんじゃなくて、自分たちでクラウドを作りなさいというのを、ファンドをしながらきっちりとそういう人材育成をやっているわけですね。
 先ほど、私、遅れてまいりましたけれども、田浦先生が、これから大きなスパコンではなくて、ヘテロなエクスカーのスパコンをいろいろなところで開発していくというのは、まさにそういうことの今後の大きな流れで、ちょっと誤解があるといけないんですけれども、スパコンは全然否定しているつもりはないんですね。今回の震災の中で気象予報をしますと、精度を上げることによって今までは見えないものがどんどん見えるようになるというのがいくらでも出てきていますので、それ自身は問題ないわけですけれども、グラビティーはやはり従来の64ビットからアポロキシメントに動いている。そして、データのプラットフォームに動いているということは事実なので、そちら側にちょっと注力してはどうかという、そんなイメージでございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 これから時間が約30分ぐらいです。それでちょっとお願いしたいのは、可能な限り皆さん方から御意見頂きたいので、御意見頂く場合、できる限り簡潔に短くおっしゃっていただいて、1人でも多くの方に意見を言っていただく機会を与えていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。どうぞ。
【引原委員】  済みません。論点に従っていきたいと思うのですけれども、論点の1に関してです。今、西尾先生、喜連川先生がおっしゃったことで、最初に机上配付になっていましたNISTEPの資料ですけれども、これはミスリードだと私は思います。というのは、これ全部埋まっているように見えますけれども、あるものを並べただけでして、2017年の段階でウェブオブサイエンス等のデータベースで検索しますと、日本の領域分布は開発国型になっています。そういうことから考えるとこれではだめで、本当はここに出てこない領域をきちんとしなければ、今、喜連川先生おっしゃったようなことは全然フォローできないものだと思います。
 そういう意味で考えますと、一体これからどこに投資していくかというときに、科研費等がこれで動くということ自体が問題があるのではないかという点をコメントとして申し上げます。
 もう1点は論点2の視点です。人文科学という言葉が出ていますけれども、人文科学と社会科学のこの辺の扱いをもう少し明確にしないといけないのではないでしょうか。社会科学の方は、データに関して非常に貴重なものをたくさん蓄えてきていますが、問題はそこの経費の負担が十分ではないということであって、これから考えるときに、データのフローばかり考えるのじゃなくて、データのソースをもう少し考えた議論をしていただければというふうに思います。以上です。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。今のことも本当に重要なことです。それとこれで左右されるということも問題だと思いますので、そこはよろしくお願いいたします。こういうことはどんどん流行分野に流れてしまいますけれども、そのもとにある根本的に重要なものを我々は見極めることが大切だと思います。
 佐古委員、どうぞ。
【佐古委員】  ありがとうございます。本当に情報分野は多岐にわたるなとすごく思いました。私自身は、もう退席されましたけれども、深澤先生のプレゼンがすごく印象に残っていて、確かにコアエンジンとしていろいろなシステムの開発は進んでいて、一つ一つのコアエンジンはいいものができているんですけれども、例えばデータ連携ができていないとか、システム間の連携ができないということによって、日本の企業、あるいは日本の労働者の生産性が下がっているのではないかということを一番に思っています。ITは日本の生産力を上げるために存在するべきなのに、そこが一つ一つのエンジンが独立に作られていることによって、ユーザー側がすごく苦労して使わなきゃいけないというところを是非、ユーザビリティーになるのかもしれませんが、連携して欲しいと思っています。私、本当にウェブはすばらしい発明で、インターフェースが連携されてすばらしいなと思っているんですけれども、そのような研究をやっていくべきじゃないかなと思っています。
 海外では、インクルーシブというのがキーワードとしてあって、それを反映するには一つ一つのエンジンの精度を増すわけではなくて、全体のビューが重要だなと思いました。以上です。
【西尾主査】  本来はベースとなるものが多様性を持っているものをいかにインクルーシブしていくかという、その視点も大事かと思います。ありがとうございました。
【瀧委員】  私も少しこのメモに従って考えてみたのですが、最初の取り組むべき重要点というのは、先ほど喜連川先生のお話にもありましたけれども、諸外国、あるいはいろいろなところが取り組んでいるところでないところに新しいネタというか、重要なものはあるだろうというふうに考えています。新たな研究領域というのがなかなか皆さん議論の中で出てこなくて、これが、私は重要だと思っているんです。、破壊的イノベーションという単語が経団連の方から出ていますけれども、従来とは違う発想のものを絶えず出しておかないと、情報分野、あるいは広く世界をリードすることはできないだろうなと思います。それを何か今答えろというと少し置いておきまして、今、関連性があるものとしては、1つはやはりハードウエアだと思っています。
 今、半導体関係の国際会議では、ほとんどはAIチップの話ばかりが出てくると聞いています。日本は一体どうやっているかというと、一部ではやっていますけれども、そこに文科省が資本を投入して、あるいは研究費を投入してやっているかというと、特にやっていないと思います。これは、多分、スーパーコンピューターと並ぶものになるだろうと思います。世の中のチップは、インテルが一番たくさん使っているように見えるのですが、実はいろいろな家電とか小さい機械には、従来は日本のチップが非常にたくさん入っていました。最近はARMが入っていますが、そういった形で目に見えないところで情報を支えているものにハードウエアが絶対必要だろうと思います。
 それから、他分野の方については、これは基本的にはいろいろな分野ともっと対話をする必要があるのではないかと思います。それぞれ思っていることが違いますので、両方からいろいろな情報を出して協力してやっていくのが重要でしょう。
 それから、情報分野における研究の進め方とか支援策については、今、世の中いろいろな研究をしようと思うと、ニーズをはっきりさせなさい、特許を出しなさいというのがあって、世の中に役に立つというところにかなり束縛を受けている感じがしますので、役に立たないという指標を非常に、ちょっと違う形だと思いますが、従来のものではない新規性のところを相当強調したようなもので引っ張っていくというのが必要ではないかと思います。そうすると、先ほどの新たな研究領域ともつながってくると思います。
 教育・人材育成については、今各大学が頑張っていますので、それを今の形で支援していただければ非常にいいのかなと思います。
 それから、産業界・経済界との話もあるんですが、産業界・経済界の方からは、破壊的イノベーションとか創造性について非常に言われるんですが、個別の企業さんとお話しすると、余り先の話はできなくて、かなり近いところの話になりますので、文科省とか大学としては、経団連さんのようなところと先の先の話ができるようにしたいなと思います。以上です。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。どうぞ。
【堀田総括上席研究官】  済みません、NISTEPの者でございます。先ほど先生から御指摘いただきまして、ちょっと補足をさせていただきたいんですが、私どものこのシステムですが、科研費のいわゆるキーワードで検索するというシステムになっていますが、ちょっと今回、情報ということで、情報部門だけ、つまりソフトウエアの分野だけで限定して調査したものでございます。そういう意味で、先ほどから先生はほかの分野との融合、例えば材料でありますとか、生物でありますとか、そういった分野の動きというのはここには入ってないです。
 ちょっと私ども、また個別に御説明させていただければと思いますが、単にキーワードだけで切って、分野を限定しないでやりますと。例えば、機械学習という切り方をしますと、これは他分野もどんどん入ってくるという中で、私どもエージェントシミュレーションとか、それから認知ロボティクス、音声、こういったロボット関係のものは過激にあらわれるという形になっています。また、人工知能というキーワードで検索した場合に、先ほどからいろいろお話がありましたバイオの分野、具体的に医療分野、それからバイオインフォマティクス、こういった分野が3分の1を占めるという形になりますので、もし他分野を入れた形で示しますと、強烈に新興とか融合といった分野が出てまいります。そこでそういったものを紹介いただきたいという御要望がありましたら紹介させていただきたいと思います。
 私も先ほど、AIのハード、半導体の話を言われたかと思います。AIハードにつきましては、アメリカとは動きが非常に激しい。ここ、半導体復活計画ということで大量にやっておられるんですが、日本で動きが見られますかというと、残念ながらそこは全く半導体については見られませんでした。そういう意味で、科学界のボトムアップの動きだけではだめで、行政側のニーズとしてこれをやるんだというのは、別途考えていく必要があるということは、我々としても重々承知しているところでございます。以上でございます。
【西尾主査】  そうですか。どうもありがとうございました。
 引原先生、よろしいですか。
【引原委員】  はい、結構です。
【西尾主査】  どうぞ、梶田委員。
【梶田委員】  京都大学情報環境機構の梶田と申します。
 論点の4番目に関係することで、資料4で大学ICT推進協議会の深澤会長の方から御報告があった資料をベースにちょっとお話しさせていただきたいんですけれども、この大学のICTが抱えている、経営に生かせないとか、ちゃんとできていないという問題は、今、民間企業では多分デジタルトランスフォーメーションという言葉で語られていると思います。経産省の方からも、2025年、デジタルトランスフォーメーション、略してDXと言いますが、DXの壁ということでレポートが出ていると思います。
 大学は今、非常に予算が厳しくて、大学のDXというのはこのままやっても無理だと思います。やっぱりGAFAを先頭に、ICTの一番の肝はやっぱりスケーラビリティー、スケールを大きくとってやっていくということだと思っています。GAFAはとにかく大量のお金を投入して、スケールメリットを最大限生かしているわけですけれども、大学は今、全くそれができない状況になっています。法人化も含めてですね。やっぱりそういうICTのスケールメリットを生かすような方向に持っていく施策というのが重要になってくると思います。
 それが多分、1つ重要になってくるのが、一番最後、深澤先生が書かれている統合のためのインターフェースの標準化だと思っていまして、そもそもデジタルの話はインターネットから始まっています。インターネットはTCP/IPというグローバルスタンダードで始まっています。その上にウェブのスタンダードができて、その次のスタンダードが、多分クラウドの時代には非常に重要になってくると思います。それは統合のためのインターフェースということになるんですけれども。そこをきちんと研究開発する。標準化というのは、なかなか研究者としては一番最後の仕事なので、なかなかやりにくいんですけれども、やっぱりそこに研究者が、特にデジタルネイティブな若い研究者が乗り込んでいくような資金の使い方は重要かと思います。以上です。
【西尾主査】  非常にクリアに説明をいただきどうもありがとうございます。スケーラビリティーという観点で、それを拡大する方向に、大学の研究者もいろいろな制約があってなかなか向かえない状況です。本来はそういうところにどんどん参画していくことによって、4番目のあたりが必ず実現できてくるのだと思います。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【福田委員】  大阪大学大学院法学研究科の福田でございます。
 先生方から様々な御指摘のあった連携、スケーラビリティー等を拡充させていくことは、技術的に重要となってくるとともに、インクルーシブで多様性に富んだ社会を確立していく見地からも重要となってくるものと見込まれます。したがって、連携を円滑にするためのインターフェースの標準の形成、技術的に形成されたインターフェース相互間において、データを流通させ、結合させることに関する社会的な見地からの枠組みの形成等についても併せて視野に入れつつ、研究開発及び社会実装が進められていくことが期待されるところであろうと存じます。
 その過程においては、データについて、これを結合させ、流通させ、様々な学習に用いるに当たっては、かねてから各方面からの御指摘もあるとおり、また経団連からの御指摘もあるとおり、倫理的な面、法的な面、社会的な面等の見地からの検討も必要になってまいります。これらの見地からの課題への対応に当たっては倫理的又は法的な規範を形成するという手法を用いることによって対応することが適切な場合があるほか、研究開発を通じて得られる技術的な手法を用いることによって、そういう倫理的・法的・社会的課題に対応することができる場合もあろうと考えられます。
ついては、多様で包摂的な社会の形成、データの流通基盤の形成、スケーラビリティーの拡充等に向けて、ITに関する研究開発をされる方々と、倫理的・法的・社会的な見地からの検討をされす方々とが研究開発及び社会実装の早い段階から意見を交わし、議論をしていきながら、どのような枠組みが必要なのか、その枠組みを実現するに当たりどのような課題についてどのような手法で対応することが適切なのか等といったことをも視野に入れつつ研究開発及び社会実装が進められていくことが望ましいものと考える次第でございます。以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 ほかにございますか、御意見。どうぞ。
【奥野委員】  安浦先生がおまとめいただいた件で、大学の情報の方でサービスもしないといけない、研究もしないといけないという件なんですけれども、例えば医学部を考えていただきましたら、医学部というのは病院と基礎があるんですね。臨床と基礎というのが明確に分かれている中で、1つの学部として成り立っていると。そういう形でいうと、情報学の中でサービスをしていく部分というのは、病院に近いような一種の運営をしながら、ただし病院の場合は、ある程度自立的に、経営的に回すこともできるんですけれども、情報系の場合、大学に対するサービス等はなかなかそういうお金が回っていかないというところがあるので、そこの部分で、私は1つとしては、やっぱり運営費交付金が下がっていっていること自身が、非常に大学としてのそこの部分も厳しいという中で、そもそも考え方を変えないと極めて僕は厳しい状況。メディアセンター等、各大学のセンターがあって、本来そういうところがサービスをしていくという立ち位置なのかもしれないんですけれども、そこにもっとやはり強化をすべきで、資金的な強化、また体制の強化も含めて、考え方をやはり変えなければ、もはや太刀打ちができないような状況になってきているんじゃないかと。その1つのモデルとしては、医学部が臨床と基礎を分けて病院は1つの組織として動いているというような、そういうのが1つの何らかのモデルになるんじゃないかなと思いました。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。大学の中で、そういう現場ということになると、医学系の研究科における病院が該当し、稀有な存在です。そこでは患者の治療を行いながらも、何か新たな病気を防ぐための知見が生まれていたりします。つまり、実務をこなしながらも、医学における新たな地平をひらくことが一方でできています。
 安浦先生のおっしゃられたことで、大学の情報基盤を支えるに当たって、それはもう企業等に委託してしまえばよいとか、そういうことでは多分済まなくなっていて、情報分野の最先端の研究者が、大学のセキュリティー等をどう守るかということに相当参画している状況です。ところが、そのことに追われ切ってしまっていて、そこから情報分野の何か新たな発見、あるいは課題をきっちり見つけてイノベーティブなことができるだけの余裕が本当にあるのかということが深刻な課題です。
 今、そのような課題が大学の中で次々と起こっています。そういうことを踏まえて、例えば、田浦先生がおっしゃられたように、バイITの立場から、そこで課題を発見して、新たなオブITの方に持っていくという循環が必要なのですけれども、そこのエコシステムが、情報分野でまだうまく創り切れていないのではないか、ということを安浦先生の御発言を伺ったときに感じた次第ですけれども、先生、どうですか。
【安浦委員】  まさに私も現場担当させていただいていまして、病院のモデルというのは非常に参考にさせていただいています。ただ、違うのは、病院は稼げるんですね。うちの大学でも、病院はプロフィットセンターであって、コストセンターではないんですね。ところが、情報関係の部門、基盤センターだとか、我々情報統括本部と呼んでいますけれども、そこは完全なコストセンター的な扱いを受けてて、そこに優秀な人を配置して、本当にその人たちが循環できるシステムを大学の中で作れるんだったら、田浦先生が言われたような世界ができるんですけれども、残念ながら人数が少ない、圧倒的に。病院だけで、看護師さんも入れると大学の30%から40%の人口を占めているわけですね。それに対して情報系というのは、ティーチングの学部、大学院と、そういうサービス部門合わせて100人いればすごい大きな大学、200人いる大学というのはなかなかないという、そういう世界で回っているという、その構造自身を何とかしていかないと、エコシステムとしては回らないんじゃないかなという気がしております。
【西尾主査】  どうぞ。
【津田委員】  臨床と基礎の分類というのはすごくおもしろくて、僕、多分9割ぐらい臨床をやっています。ただ、西尾先生おっしゃられたんですけれども、必ずしも情報系に持ってこれなくても、自分としては別に全然問題なくて、特に新しい課題を見つけて情報学的に新しく解かないといけないということではなくて、向こうの分野ですごいいい結果が出たりとか、そういうのは十分幸せなんですけれども。ただ、そういう研究者の姿というのが、情報系の側から全然見えていないのはすごく感じているので、ほとんど亡霊みたいな感じにしか捉えていただいていないという感じがすごくするんですね。なので、例えば、ほかの分野で成果を出したとしたら、それもちゃんと認めていただけるような何かがあればいいのかなと思います。
【西尾主査】  今先生おっしゃったように捉えられることは、私も理解できます。御意見ありがとうございました。他に何か御意見ないですか。
【新居委員】  済みません、私、情報分野が専門ではないので、どこまでお役に立てる話ができるかなと思いながらお伺いしていたんですが。やはり情報分野以外で、しかも研究者以外のという、民間で何かしら事業をしたり取組をしたりしている側から見ると、ちょっとやっぱり入りづらいというか、接点が見つけづらいなというところが印象としてありまして、情報を使って何か新しい価値を生み出していくというのは、すごく社会に普遍的な価値を生み出す視点だと思うんですけれども、例えば、じゃあ大学生だったら自分が政治学科で研究をしていますとなったときに、そこに何かしら自分の専門分野掛ける情報の掛け合わせをしようと思うかと言われると、じゃあ学校のネットワークを使って何かしら収集してやっていくまでの接点が、現状、大学の中にもないですし、じゃあ民間から何か新しい事業をやっていこうとなったときに、そのようなところとは接点もやっぱりないので、その辺がやはり入りづらい、接点が持ちづらいというところが1個大きいなということを感じました。
 その中で言うと、こちらは先ほど整理していただいた表の中でいうと、ぎりぎり教育とかはかなり分かりやすく事例として、情報分野と民間の様々な取組という接点が見出せるような領域かなとも思いまして、そういう分かりやすいブリッジになるような領域が幾つか出てきたり、可視化されてきたりすると、もう少しそれこそ民間の連携ですとか、あとは学部の情報分野以外の専攻している学生との接点ですとか、そういうところも出てくるのかなという感じがします。
 先ほど学校のICTの推進のところと、学生視点が足りないので使われていないみたいな話がありましたけれども、まさに本当にそのとおりだなという感じで、それこそパソコンの利用のために窓口に行って印鑑を押してみたいな、テクノロジーを使いたいのに紙が出てくるみたいなところから含めて、やっぱりいろいろミスマッチあるかなと思いますので、そういうところもいかに学生を巻き込んで一緒に作っていけるかみたいなところも含めて、仕組みを考えていくと、よりよいものができてくるのかなという印象です。
【西尾主査】  どうもありがとうございます。
 井上委員と来住先生には御意見をまだ頂いていないように思います。是非、どうぞ。
【井上委員】  
 私は法学が専門で、先ほど福田先生の方からお話と重複しますが、法制度や倫理、社会的な受容性の問題について、この委員会でも議論していく必要があるというような指摘が福田先生からございました。情報学は、これから産業界との関係がますます重要になってくることは若目田さんからの御報告にもあったとおりです。
 田浦委員からは、情報学は様々な学問のドメインをつなぐ役割も果たし得るとのご指摘もありました。情報学に係る本委員会で、データ・ガバナンスの問題をどういう形でどこまで議論して、どんな形で発信していくのか。ほかの会議体でも同じようなことはいろいろ議論されているわけですから、そこをちょっとはっきりさせる必要があると思っています。
 情報学は様々なドメイン、産業界のニーズなども見える立場にあるので、本委員会で検討すべきこと、本委員会でなければ議論できないことは何かをということを考えておかないと議論が拡散し、ほかの会議体でやっていることの焼き直しになってしまうと思います。事務局に御検討いただきたいと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。ELSI関連の問題は、実を言いますと総務省で相当議論されています。福田先生は、もともと総務省におられて、そこでG7とかG20に対応して、日本サイドからELSIの問題、データのトラスト、信頼性の問題とかについて、総務省が相当今まで議論を重ねてきております。ただし、それを総務省の問題だけとして捉えていいのか、この情報委員会のもとでも議論して、例えばこの委員会のもとにそういうことを議論するワーキンググループのようなものを設けるのか、検討する必要があります。これらの課題について、我が国として早く結論を出さないと、現場が混乱するだけです。6期基本計画の開始まで待たずとも今すぐ進める必要があると考えます。今おっしゃったことは非常に意識しておりますので、今後何らかの意味で考えていきたいと思います。
 来住先生、何かございますか。
【来住委員】  要望に書いたことの繰り返しになりますが、教育に利用できる、とくに、情報学分野以外の人が親しみを感じるデータが、日本にはあまりありません。そもそも作りにくいという状況にあります。個人情報保護など法律面の整備は重要ですが、余りに理想の高いルールを作ると、学生のアンケートをとるのも一苦労、ライフログをとるのも一苦労になります。現実に沿った運用ができる体制を整備する必要があります。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。まだ、いろいろ御意見あるかと思うのですけれども、時間が来てしまいました。
 今日、いろいろと議論をいただきましてありがとうございました。データということに関しては、今、来住先生おっしゃられた魅力のあるデータであるとか、また、データは誰のものであるかという根源的な問題などをどうしていくのかということは、先ほど参事官からおっしゃっていただきましたように、もう一度分野別の課題としてもきっちり提示していくことにしたい、と考えます。情報分野として、今後、どこに焦点を当てて研究を進めていくのかというときに、喜連川先生から示していただきました階層図は現代的な要請も含めた非常に有意義な図だと思いました。
 一番上位の実応用のところを第6期基本計画として推進すべきということでは、多分ないのだと考えます。この部分は、結構、注目されているところなので、いろいろな面のサポートは得られ易く、戦略的に考慮しなくても発展していくと思います。また、MLのところは、今からその流行を追うということではなくて、そのもとになる情報基盤のところから研究を進めないと、このMLのところで我が国独特のブレークスルーを生むような成果は出てこないと思います。情報基盤のところを、もう一度イノベーティブな発想のもとで推進する必要があると考えますそこまで戻らないと、日本独自のものが多分出てこないと思います。
 ですから、情報基盤とその下位のアルゴリズミックなところを、もう少し魅力ある名称、あるいは何か訴える言葉に置きかえていただいて推進することが肝要に思います。この階層は論文が出にくいということから、ここに優秀な研究者がどんどん参画するためには、評価の方法も十分考慮する必要があります。委員会としては、現在既に脚光を浴びているところをさらに推進するというよりも、ここでもう一度ベースに戻って骨太に研究を推進して独自性を発揮していきますという方が、メッセージ性はよりあるような気がします。
 そういうことも含めて、今回出されました皆様の意見をきっちりまとめていただけないでしょうか。
【橋爪参事官】  分かりました。ありがとうございます。いろんなワード、骨太なものを含めましていただきましたので、また主査と先生方と相談してやっていきたいと思います。また次回、今度HPCIの方の関係もございますので、そのあたりも含めまして、またまとめさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
【西尾主査】  本日の議論はここまででよろしいですか。
【橋爪参事官】  今日はこれで大丈夫でございますので。
【西尾主査】  よろしいですか。そうしたら、事務局の方にバトンタッチしますので。
【齊藤情報科学技術推進官】  本日は、いつもより30分長くさせていただいたんですが、時間がなかなか足りなかったもので、皆さん言い足りないことがございましたら、事務局の方までメールで頂ければと思います。
 また、次回の会合でございますが、既にお伝えさせていただいていますとおり、来月10月18日金曜日となります。議題については、計算機・計算ネットワークの報告、御議論いただいた後、今回、3回にわたって行っていただいた取りまとめの議論までできればと考えております。その後の10月以降の開催につきましては、また日程調整から皆さんとさせていただければと思っております。
 また、冒頭申し上げましたが、こちら、右上に机上配付(会議後回収)と書いてあります資料ですが、こちらはお持ち帰りにならずに、お席の方に置いていただくよう、改めてお願い申し上げます。以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。今日は青木様、若目田様、喜連川先生はじめいろいろと貴重な情報を御提供いただきまして、御礼申し上げます。では、今回はこれにて終わりたいと思います。

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研究振興局参事官(情報担当)付

(研究振興局参事官(情報担当)付)