情報委員会(第1回) 議事録

1.日時

令和元年6月14日(金曜日)17時00分~19時00分

2.場所

文部科学省(中央合同庁舎第7号館) 3階2特別会議室

3.議題

  1. 情報委員会主査代理の指名について(非公開)
  2. 情報委員会の議事運営等について(非公開)
  3. 情報分野をめぐる状況について
  4. 当面の審議事項について
  5. 情報委員会における下部組織の設置について
  6. 第6期科学技術基本計画に向けた検討について
  7. その他

4.出席者

委員

西尾主査、乾委員、井上委員、奥野委員、梶田委員、来住委員、喜連川委員、鬼頭委員、栗原委員、佐古委員、田浦委員、瀧委員、津田委員、長谷山委員、引原委員、福田委員、八木委員、安浦委員、若目田委員

文部科学省

磯谷研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局担当)、原振興企画課長、橋爪参事官(情報担当)、坂下計算科学技術推進室長、丸山学術基盤整備室長、坪井科学技術・学術政策研究所、赤池科学技術・学術政策研究所上席フェロー、越前学術調査官

5.議事録

今回の議事は主査代理の指名等があったため、開会から議題2までは非公開。
1.情報委員会主査代理の指名について
 科学技術・学術審議会運営規則第6条7項の規定に基づき、喜連川委員が主査代理に指名された。
2.情報委員会の議事運営等について
 科学技術・学術審議会情報委員会運営規則(案)(資料3)、科学技術・学術審議会情報委員会の公開の手続について(案)(資料4)に基づき、事務局より説明があり、承認された。
 (傍聴者入室)
【西尾主査】 ただいま入室していただきました方々には、長らくお待たせをいたしました。それでは、引き続き議事を進めさせていただきます。
 まず、審議に先立ちまして、磯谷研究振興局長から御挨拶を頂けるということでございますので、何とぞよろしくお願いいたします。
【磯谷研究振興局長】 西尾主査、どうもありがとうございます。
 文部科学省研究振興局長の磯谷でございます。本日は、情報委員会の初回の会合ということで、一言、御挨拶をさせていただきたいと思います。
 まずは、皆様、先生方におかれましては、今回、本委員会の委員をお引き受けいただきましたことを、改めて心より御礼申し上げたいと思います。
 私が言うまでもございませんけれども、近年は、ICTの大変急速な進化、あるいは、そういったものを背景として、ネットワーク化ですとか、サイバー空間の利活用といったことが飛躍的に発展をいたしております。日本政府が提唱しているSociety5.0、あるいはデータ駆動型社会の到来が間近に迫っている状況でございます。
 また、イノベーションの源泉となる成果、あるいは、その基となるデータの共有や、相互の利活用を促すオープンサイエンスの進展がございます。様々な研究分野、あるいは開発分野、そして社会生活におきましても、情報の持つ役割というのが以前にも増して大きくなっておりまして、産学官が連携して様々な取組が進められているというのは御案内のとおりでございます。
 さらに、政府といたしましては、先日、AI戦略という形で方針を取りまとめたところでございます。これにつきましては、後ほど事務局の方からも御説明を申し上げたいと思いますが、この中でも今後の情報分野の取組の進め方について大きな方針が示されているところでございます。先ほど御紹介しましたSociety5.0を最初に打ち出した第5期科学技術基本計画については、今年で4年度目に入りまして、早速、次の第6期に向けた検討が始まっているというような状況でもございます。
 文部科学省におきましても、こうした社会の変革、あるいは政府の方針等々を踏まえまして、革新的なAI技術の研究開発ですとか、皆さん御案内のとおり、Society5.0の研究拠点支援事業、あるいは学術基盤であるSINETの整備、そして、先月、名称が決定いたしましたが、「富岳」を中心とするHPCIの整備、運用に向けた取組等も進めているところでございます。さらには、オープンサイエンスの対応ですとか、我が国の研究力維持、発展に不可欠な、学術情報基盤としてのジャーナルによる研究成果の発信、共有に必要な取組についても大変重要な課題だと認識をしているところでございます。
 文部科学省といたしましても、引き続きこうした諸課題に全力で取り組んでまいるとともに、Society5.0の実現に向けまして、情報分野においてどのような貢献が可能か検討を深めてまいりたいと思っておりまして、委員の先生方におかれましては、我が国の情報分野の一層の発展のため御審議を頂ければと思ってございます。
 今期、何とぞよろしくお願い申し上げます。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。
 今の局長のお言葉を、我々、念頭に置きながら、今後の審議を進めてまいりたいと思います。
 それでは、議事(3)情報分野に係る最近の動向、及び議事(4)情報委員会における当面の審議事項について、資料5及び資料6に基づきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
【橋爪参事官】 それでは、資料5と資料6につきまして説明をさせていただきます。
 まず、資料5を御覧いただければと思います。情報分野に係る最近の動向ということですが、一枚おめくりいただきまして政府全体の動向であります。
 政府全体としては、一番基本的なところで科学技術基本計画があるわけでございますけれども、第5期が現行でありますが、第6期に向けた検討が始まっております。統合イノベーション戦略つきましても、2019というものが近々、策定されるという段階になっております。また、先ほど局長からも申し上げましたが、AI戦略、そして人間中心のAI社会原則、これが定められております。順次、次のページ以降、簡単に御紹介したいと思います。
 4ページ目でございます。科学技術基本計画でありますけれども、もう皆様、御案内のとおり、第5期につきましては、世界に先駆けた超スマート社会ということで、Society5.0の実現を目的に、各種情報関連基盤技術の強化や情報基盤の整備、オープンサイエンスへの対応を行っていくという内容になってございます。これにつきまして、第6期に向けた議論がCSTIの方でも始まっている状況でございます。
 続きまして、5ページ目でありますけれども、統合イノベーション戦略であります。2019について、今、案が示されてございます。この中では、問題意識として、デジタル化が次世代に突入して、データやAI等の重要性がますます高まっているというような認識の下で、AI技術、あるいはデータ基盤の整備、スマートラボラトリの推進、「富岳」やSINET等の基盤の整備・活用、それからSINET等の教育との連携・活用等が記載される見込みでございます。
 続きまして、次のページでありますけれども、2ページにわたりましてAI戦略の概要です。文部科学省は、特に人材育成と研究開発での役割が大きくなってございます。人材については、初等中等教育からエキスパートレベルまで各段階に応じた取組を行うということになってございます。また、研究開発に関しましては、理研のAIPセンター、そこでは理論研究を中心とした基盤技術の研究開発で世界一を目指すことになっておりますが、ほかの産総研、あるいはNICTと連携しながら、また、全国の大学、国研と連携しながら研究を進めていくということになってございます。
 7ページの方でございますけれども、社会実装やデータのトラスト、セキュリティーにつきましても重要な視点となってございます。
 続きまして、8ページ目でございます。AI社会原則につきましても、AI戦略と同じようなタイミングで決定されております。ここにあります7つの原則に従って、AIの開発、あるいは社会での活用に取り組んでいくということでございます。
 駆け足で恐縮でございますが、続きまして、2.文部科学省の取組でございます。9ページ目以降でまとめてございます。
 文部科学省におきましても、先ほど申し上げました第6期科学技術基本計画に向けた検討が開始されておりまして、関係部会、委員会にもその検討が求められているという状況です。
 10ページ目をおめくりいただきたいと思いますが、総合政策特別委員会の下で検討が進んでおりまして、各部会、委員会に対しましては、6月までに研究力向上に向けたシステム改革、10月を目途に個別分野についての検討というところでの打ち込みを求められている状況でございます。きょうの立ち上げになりましたけれども、本日、このようなことに対応するための議論を是非お願いしたいと思っているところでございます。
 それから、11ページ目であります。11ページ目は、総合政策特別委員会で今、議論されている、議論の中で挙がっているものをまとめているペーパーでございます。情報関係では、例えば左側にスマートラボの促進、右側にデジタル革命による新たな研究開発の推進として、AI支援型の研究、データ駆動型の研究の推進、オープンサイエンス、研究情報インフラ、SINET等の高度化等ということで挙がっている状況でございます。
 続きまして、12ページ目以降は、その他の最近の検討の状況でございます。
 まず、前身であります情報科学技術委員会におきましては、「Society5.0時代の情報化技術の進め方に関する論点と考え方」を本年2月にまとめていただいております。ここに記載されておりますような視点を中心として、取りまとめをしていただいている状況でございます。
 また、13ページ目でございますが、もう一つの前身であります学術情報委員会においては「オープンサイエンスの推進に関する論点整理」ということで、これはまだ引き続き案としたままということでございますが、論点の検討が進められてきている状況でございます。
 続きまして、14ページに行っていただいて、ジャーナル問題に関する検討も、平成26年に当時として報告書がまとめられております。ただし、本件につきましては、今後の変化に対応して継続的に討議の場を持つ必要があるということで、継続課題になっている状況でございます。
 その他、15ページでございますけれども、SINETを通じて収集されるリアルデータの集積、解析、活用に向けたプラットフォーム構築に向けた整備方策の検討として、データ活用社会創成プラットフォームの推進に関する有識者会合での検討が進められております。また、HPCI計画推進委員会においても、「富岳」などHPCIの利活用促進、あるいは今後の在り方について検討が行われている状況でございます。
 次の16ページでございますけれども、文部科学省におきましては「研究力向上改革2019」というプランを出してございます。幾つか視点はございますが、その中でラボ改革という項目も重要な視点になっておりまして、学術情報基盤の整備につきましても重要な課題として挙がっているところでございます。
 17ページ目以降は、文部科学省の主な事業につきまして、予算、概要ともにまとめさせていただくとともに、そのうちの主なものについて資料を参考的に付けさせていただいております。また御覧いただければと考えてございます。
 以上、駆け足でございましたが、資料5については簡単に御紹介させていただきました。
 続きまして、資料6を御覧いただければと思います。資料6は、第1期情報委員会における当面の審議事項の案ということでございます。
 先ほど、この分野の動向の中で申し上げましたように、まず1点目の課題といたしましては、第6期科学技術基本計画策定への検討ということでございます。各分野の委員会において、それぞれ第6期に向けた検討が求められておりますので、これに対応していく必要がございます。本日、この後の議題で、特に1.の最初のところに上がっております、研究力向上に向けたシステム改革に関する取組の視点に係る議論を、この後にお願いできればと考えてございます。また、情報分野に係る取組、2点目でございますが、これにつきましては2回目以降も含めて、引き続き継続的に議論を行っていくということで考えてございます。
 次の視点としましては、先ほども継続的な検討が必要ということを申し上げましたが、ジャーナル問題への対応でございます。昨今、価格の上昇、あるいはオープンアクセス・ジャーナルの急速な普及に伴って、購読料のみならず、論文投稿料の負担増大が課題になっております。これにつきましては、専門的な内容等々ございますので、後ほどまた御審議いただきますが、検討部会を立ち上げての検討というのも一案ではないかと考えてございます。
 その他、文部科学省における情報分野の研究開発の評価というものもミッションとしてお願いできればと思っております。AIPプロジェクト等々、また御相談していきたいと考えております。
 以上でございます。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。
 第6期科学技術基本計画に向けた検討につきましては、後ほどお時間を取って議論をいたしたいと思っております。
それ以外について、何か御質問、コメント等ございませんでしょうか。よろしいですかそれは、今後、様々な観点で審議すべき課題が出てきたら、適宜、考えていくということでよろしいですね。
【橋爪参事官】 はい、そのとおりでございます。
【西尾主査】 それでは、先ほど御説明いただいた課題に対応する形で、本委員会の下での組織の設置等について審議をいただきたい件がございます。事務局から、設置案の御説明をお願いいたします。
【橋爪参事官】 続きまして、資料7を御覧いただければと思います。科学技術・学術審議会情報委員会における下部組織の設置について(案)でございます。
 先ほど、当面の課題としまして、ジャーナルの問題に関する検討ということを御説明させていただきましたが、それへの対応ということで、ジャーナル問題検討部会ということで情報委員会に下部組織を設置してはどうかという案でございます。
 よろしくお願い申し上げます。
【西尾主査】 御説明ありがとうございました。
 先般、国立大学協会の総会におきましても、先ほどの資料6のジャーナル問題に関する総合的な検討の所に書かれておりますように、論文投稿時に出版社に支払う負担の増大等の問題に鑑みて、我が国でジャーナル問題をどこで、どのような審議を今後、展開していくのかということに関しては様々な意見が出たところでございます。そのことに関して、文部科学省の中ではジャーナル問題検討部会というところが、まずはその問題を議論していくという考えでよろしいですか。
【橋爪参事官】 はい、そのとおりでございます。
【西尾主査】 この問題につきましては、日本学術会議の方でも様々な議論がなされると思います。また、研究という観点からの重要性を考えますと、国立大学協会でも教育、研究に関する委員会のうち、特に研究の委員会でこの問題は議論することが、必要なのではないかと思っております。
 丸山室長より、その辺りの全体的な今後のプロセスついて、御説明いただけないでしょうか。これは非常に重要な問題ですので。
【丸山学術基盤整備室長】 はい。私どもとしましては、この問題、非常に多岐にわたる課題が現存してございます。一方で、研究コミュニティーとの関連では、非常に幅広いステークホルダーがおるということもございますので、今後、主査とも相談して、関係の委員、どなたに御協力いただくかはまた決めさせていただきたいと思いますけれども、例えば大学セクター、それから今、主査からも御発言ございましたように日本学術会議、さらには学協会等々も含めて幅広い、また、研究開発法人等でもこういった問題、非常に重要とも考えております。幅広く関係の方々の意見を集約して、是非、一定の方向観を出していきたいと思います。是非、引き続き先生方にも、幾人かの先生方にはまた御協力をお願いすることもあろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【西尾主査】 先ほど申しました様々な組織以外にも、これは図書館の方面とも非常に関係します。また、NIIの活動とも関連してきます。そういう中で、この問題については世界が大きく動いていて、そのスピード感も相当求められるのではないかと思いますので、この件に関してはどうぞよろしくお願いいたします。
 何か御意見等ございませんか。どうぞ。では、安浦委員、それから喜連川主査代理。
【安浦委員】 これ、非常に重要な問題で、大学は本当に財務的にも首が絞まっている問題ではあるんですけれども、更に広く考えたときにオープンサイエンスの、ジャーナルというのは出口ですけれども、その出口のバックにあるデータの問題ですとか、プログラムみたいな形のものをどういうように公開していくか。それから、AIは学習したデータ自身がやはり意味を持つわけで、そういうことも含めた話をここでやるのか。それはそれとして、また切り離した議論にするのか。その辺をどうお考えかを、ちょっとお伺いしたいです。
【西尾主査】 事務局、お願いいたします。
【丸山学術基盤整備室長】 ありがとうございます。当面、これまた先生方の御意見も伺いながらではございますけれども、私どもとして想定しておりますのは、まずはジャーナル問題が非常に今、危機的な状況にあるということもありますので、オープンサイエンス等々も絡めたそういうデータ等々の関連は一旦、切り離した上で、ジャーナルの問題に特化して議論を深めたいと考えております。いずれ、前期の学術情報委員会でも議論を続けてまいりましたオープンサイエンス、特にデータ利活用等の問題とは切っても切り離せない課題になってこようと思いますけれども、どこかで方向観が一致するようなタイミングがあれば、合流をしていくということは考えられるかと思います。よろしくお願いいたします。
【西尾主査】 安浦委員、よろしいですか。
【安浦委員】 はい。
【西尾主査】 喜連川主査代理、どうぞ。
【喜連川主査代理】 比較的最近、こういう問題に対してインドが違う方向観を出してきたというのがあるかと思うんですが、取りあえずジャーナルの価格の問題だけというよりは、実は一番根源なのは、大学の教員評価というものが一番根深い問題だと思うんです。そこを変えない限り、今、ネームバリューを取っている雑誌に論文を出そうという常道を根源的に断ち切ることはできなくて、その裏をかいて、いろいろ彼らが仕組んでいる。本来、エバリュエーションというのはどうあるべきなのかというところにやはりメスを入れないと、根源的な、抜本的な議論にはならないのではないかと個人的には思うのですが、2.に書いてあることは、どちらかというと直近の値段の問題、この問題は全然重要ではないとは言わずに、非常に大切ではあるのですが、文部科学省で議論するときは、やはり一歩先の学術としてどうあるべきかというインサイトは、是非、何か入れた方が、入れることも重要かもしれないと思って発言させていただきました。
【西尾主査】 どうぞ。
【丸山学術基盤整備室長】 ありがとうございます。喜連川主査代理がおっしゃるように、この問題は、表面上の問題のみならず、その奥にある、今、おっしゃられたような研究者評価、論文との関係での評価の部分も非常に大きい比重を占めるのではないかと思います。議論ができるだけ発散しないように努めてまいりつつ、そのような背景にある課題に関しても御議論を深めてまいりたいと思います。
【西尾主査】 今、喜連川主査代理がおっしゃられたことは、根源的な問題だと思いました。研究者の評価をどうするのかというようなことは、文部科学省としては非常に重要な問題として捉えなければならないと思います。そのことの議論を始めないと、ジャーナル問題の解決、あるいは日本としての方向性が出ないと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 どうぞ。
【磯谷研究振興局長】 先日というか、きょうは金曜日ですので、昨日のCSTIの木曜会合、これはオープンの会議でしたけれども、日本学術会議の山極会長の方から、今のような教員の評価の在り方についても日本学術会議で、今、大分議論は進んでいるという御紹介もありましたので、先ほど丸山室長からも申し上げたように、もちろん日本学術会議のいろいろな議論ですとか、アウトプットですとか、御意見なども、連携しながら進めていきたいと思っておりますし、文部科学省としても、どういうように進めていくかということについても併せて議論を進めていきたいとは思っております。
【西尾主査】 今の評価の点、本当に重要な局面に達していると思いますので、よろしくお願いいたします。
 喜連川主査代理には、本当に根源的な御指摘をいただき、ありがとうございました。
 ほかに、ございますか。それでは、この委員会の部会としての設置は認めるということにしつつも、今いただきました意見を丁寧に捉えていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、第6期科学技術基本計画に向けたディスカッションをお願いしたいと思います。
 前回の科学技術・学術審議会総会において、分野別の委員会に対し、研究力向上に向けたシステム改革に関する重要な点について取りまとめをするよう求められております。その議論の参考として、国の科学技術政策立案プロセスの一翼を担うために設置された、文部科学省直轄の国立試験研究機関である科学技術・学術政策研究所から、今年、行われた科学技術予測調査に基づく科学技術の未来像について御説明いただき、事務局から情報関係での論点例をたたき台として挙げてもらいます。
 研究所の坪井所長におかれましては、資料8を用いて、すみませんけれども、時間が限られておりますので、できたら八、九分で御説明していただけたらと思います。よろしくお願いいたします。続いて、事務局から資料9の御説明をしていただきまして、その後、皆様と議論を重ねたいと思います。よろしくお願いいたします。
【坪井所長】 科学技術・学術政策研究所の坪井です。当研究所において進めております科学技術予測調査について御説明いたします。
 資料8、開いていただきまして、まず2ページです。当研究所の科学技術予測調査は、多数かつ多様な専門家の見解に基づく科学技術の発展の見通しをベースとして、中長期的な未来の可能性を展望して、科学技術イノベーションに関連する戦略や、施策の立案に資する基礎情報を提供することを目的としております。なお、日本語の「予測」という言葉は、「予想」と大差ないように受け止められやすいのですけれども、英語ではこのようなことは「foresight(フォーサイト)」と呼ばれております。単に将来を予測するのではなく、将来、何が起こり得るのか、将来に向けて何を目指すのかを洞察する姿勢が大事と認識しております。
 日本の未来を考えるとき、様々な分野の視点があり得て、多様な組織で様々な検討がなされておりますけれども、我々の調査では、科学技術をベースとした未来像の検討ということにしております。
 3ページです。この調査は、1971年から約50年の歴史がありますけれども、最近では、科学技術基本計画の期間と同じということで5年ごとに実施しており、今回は11回目になります。近年では、社会課題解決のビジョンの構築や、科学技術と社会との関係性の深化に対する枠組みという形の検討を進めておりまして、第11回は右下にありますような新しい4つの要素で進めております。
 4ページです。本調査の構造ですけれども、社会の未来像と科学技術の未来像それぞれが大きな柱でありまして、その2つを統合してシナリオを作成するというような構造にしております。また、科学技術の未来像の中からは、特に未来につながるクローズアップ領域というものを導き出すことも、今回、追加しております。
 5ページです。検討の時間軸ですけれども、本調査では、望ましい社会からのバックキャストということと、科学技術進展のフォーキャストの2方向から検討するというアプローチを取っています。2050年までを視野に入れつつ、2040年頃をターゲットイヤーとして検討を行っていただいています。先を見通せるのは、せいぜい10年や5年と言われる昨今でありますけれども、あえてこれまでの調査と同じ今後30年という期間をセットして、今回の調査も行っております。
 7ページ、ここは社会の未来像の検討です。左上の方には、一昨年、14か国の参加者があった予測国際会議ワークショップで検討された世界の未来像、右下の方には、全国6か所で開催した地域ワークショップ、そういったワークショップで導出された地域の未来像といった結果も踏まえて、昨年1月、右上にありますようなビジョンワークショップを開催して、産学官、若手からシニアまで、100名近くの関係者の方々に検討いただいて、50の社会像というものをまとめていただきました。また、それを共通する価値として、英語ですけれども、真ん中にある「Humanity」「Inclusion」「Sustainability」「Curiosity」という4項目が抽出されております。
 8ページには、50のビジョン、項目を並べております。詳細は、58ページの方にリストアップしている報告書などでも公開をしているところです。
 次に、科学技術の未来像ということで、10ページになります。デルファイ調査と呼んでいるものになりますけれども、最終的には7つの分野で、それぞれ100程度、全体で702の科学技術トピックというものを設定しました。科学技術トピックというのは、今後の実現が期待される科学技術のことで、これらのトピックの重要度や国際競争力、実現の見通しの時期などを、デルファイ調査と呼ばれる繰り返しのアンケート調査、すなわち1回目の回答結果を回答者に示した上で、2回目の質問を行うというような調査を行っております。今回、1回目のアンケートでは6,698名の回答が得られましたが、これはこれまでの科学技術予測調査の中で最も多い回答数で、今、2回目のアンケートを本日までの締切りということで実施中です。
 11ページには、アンケートの回答者ということで、コアとなるところは我々の研究所の約2,000名の専門調査員、それから日本学術会議、リサーチマップ、産業界の御協力を頂いて周知した回答者群の方に、今回は幅広くお願いをしたということです。
 12ページには、アンケートの質問項目や選択肢などの設定を載せております。例えば、実現時期については、技術的実現時期と社会的実現時期と分けて聞いているところも一つの特徴ではないかと思います。
 13ページは、科学技術トピックの設定の手順になります。これまでの様々な情報収集、研究動向の収集や関連の報告書からの情報を踏まえて、分野別に7つの分科会、そして科学技術予測調査検討会というものを設けまして、その場で先生方に真摯な議論を頂いて科学技術トピックが設定されております。先生方の名簿は53ページから56ページ、後ろの方に載せておりますけれども、特に分野融合や分野横断という重要性が指摘されていることも十分認識して、他の分科会で提案された科学技術トピックは、関係がありそうな他の分科会で情報を共有しつつ、どの分野のトピックに入れるか、相当丁寧な議論を行ったと思っております。
 14ページは、その結果、取りまとめられた7つの分野、それぞれをもう少しグループ化した59の細目、その中に括弧で書いてありますような数の科学技術トピックがありまして、全体が702になるということです。こういった構造をなぜ作っているかというのは、実は分野を分けるためではなくて、アンケートを回答される方が、自分はどのトピックに専門性を持って答えるかを選んでいただくときのものということで用意しているものです。
 15ページには、特にICT・アナリティクス・サービス分野の第1回目の暫定的な結果を載せております。重要度と、国際競争力の二次元での結果も載せているところですけれども、下で見ていただくと、1、8、9、10という細目の平均のところは国際競争力が低い結果が得られているところがございます。
 続きまして、17ページは基本シナリオです。一般的な筋書きという意味でのシナリオとは少し違うかもしれませんが、本調査の基本シナリオというのは、科学技術発展により目指す社会の未来像を描いたものという位置付けでして、昨年、まとめた50の社会像や、702の科学技術トピックを組み合わせながら議論いただいております。
 今年2月に開催した基本シナリオワークショップで検討した結果は18ページ以降にまとめていますが、2040年の目指すべき姿は「人間性の再興・再考による柔軟な社会」という言葉で、今回、まとめました。
 19ページ、それを更に4つのシナリオ、目標ということに分けております。A、B、C、Dという内容のものです。
 それぞれの4つのシナリオに関して、20ページ以降、一つ一つにまとめて、概要と、それに関係する科学技術トピック、そして実現時期も技術的な実現と社会的な実現、右側には社会像、下には留意点、科学技術を進めるだけではなく、いろいろ問題となってくる事項などもまとめるという形で、4つのシナリオについて20ページから23ページに、それぞれまとめてきているところでございます。
 24ページですけれども、特に科学技術予測では、科学技術発展の肯定的な面に目を向けがちになるわけですけれども、やはり留意点という重要性も認識しておりまして、リスク、ベネフィット、トレードオフ、ELSIの問題、そういったところがあるわけです。特に、データについては、日本の持つ良質なデータや、多量なデータという資源を有効に利用するための社会の理解と、システム構築の必要性の意見が特にございました。
 26ページからは、技術の方の、未来につなぐクローズアップ領域についてです。これは、702の科学技術トピックを材料として、機械的処理、自然言語処理や、エキスパートジャッジを組み合わせて、重要な分野を集約した形のものです。
27ページには、そのプロセスも書いております。702のトピックスを、AI関連技術なども使いながらクラスター化して、最終的にはエキスパートジャッジを経てまとめたものでございます。
 急いで恐縮ですが、28ページ、その結果、分野横断性の高い8つの領域が出てきたということで、29ページと30ページにそれぞれ載せておりますけれども、特にICT関連は、丸1の社会・経済の成長と変化に適応する社会課題解決技術というところが、割と強く関連性があるところです。
 その観点で、31ページではこの領域を取り上げていますけれども、ICT・アナリティクス・サービスに分類された科学技術トピック以外にも、健康・医療、農林水産、環境・資源、都市と、やはりそういったところにも広くAI、IoTデータのトピックがあるというところが見て取れるところです。
 32ページは、分野横断ではなく、割と特定分野に軸足を置く8領域とをピックアップしたもので、ここでもやはりA、B、Cという辺りはICTに関連が強いと見て取れるところもございます。ここは細かくなるので省略させていただきます。
あと1点だけ、参考資料の中で1つ取り上げたいと思っておりますのが47ページになります。先ほどのいろいろな留意事項という中で、やはり法規制整備という政策手段にいろいろ関連があるものは、実はICT関連が非常に多く取り上げられたというところが見て取れるかと思います。
 繰り返しになりますけれども、当研究所の科学技術予測調査は、多数かつ多様な専門家の御参加、御協力で進められてきているものであり、いずれにしても次期科学技術基本計画とか、科学技術政策、そして、いろいろな科学技術のイノベーション戦略に役立つような素材になればと思っている次第です。
 以上です。
【西尾主査】 坪井所長、どうもありがとうございました。ICTと関連した形での様々な調査の結果を報告いただきまして、非常に参考になります。また、ICTが学術全体の分野においてより重要性を増しているということを、このお示しいただいたデータが如実に示していると捉えております。これからの議論に非常に役立ちます。
 では、続いて事務局から御説明をお願いします。
【橋爪参事官】 それでは、続きまして資料9の方をお願いしたいと思います。
 資料9につきましては、第6期科学技術基本計画に向けた議論のきっかけにしていただくために、事務局の方で幾つか論点例を書かせていただきました。委員の皆様方には、少し時間がなかったのですけれども、事前にお送りさせていただいているものでございます。
 順番に、ポイントだけ御紹介させていただきます。まず、1つ目でございますが、先ほど西尾主査からもお話がございましたが、情報科学技術につきましては、そのもの自体の発展も非常に重要ではありますが、様々な分野の発展の基盤としての役割がますます増えているという点を挙げさせていただいております。データ駆動型サイエンスや、AI駆動型ということが総政特の方でも議論に上がっておりますし、あるいはラボのスマート化、セキュリティー技術、インターフェース技術、実現可能性はどうかということもありますが、科学的発見に貢献するような、それを助けるようなAIも、最近、議論に出てきているというような状況でございます。
 2つ目の丸でございますが、情報につきましては社会・経済発展の基盤としての役割も非常に大きいという点を挙げさせていただいております。社会実装、あるいは民間との連携を進める上で、どういうことが有効かということも一つの重要な視点だと考えてございます。
 3点目は、SINET、HPCI等の情報基盤インフラの整備・活用について、また、4点目につきましては、データの利活用、あるいはオープンサイエンスの促進に向けた具体策ということで書かせていただいております。
 5点目は、人材に関する課題でございます。
 以上、挙げさせていただきましたが、情報分野のそれぞれの御専門の中で、横にも展開できるような研究力向上に向けたシステム改革に生かせるものがございましたら、もちろんこれ以外でも御議論をお願いできればと思っております。
 第6期基本計画に関しましては、総政特の方でも、さきに資料5の11ページの方で御紹介しましたような事項について議論が出ております。今後、あるべき姿や具体的な取組も含めて更に議論を深める予定と聞いておりますので、本日の御議論の結果につきましては、また主査とも打ち込みの仕方を相談してまいりたいと思っております。
 よろしくお願い申し上げます。
【西尾主査】 御説明、どうもありがとうございました。
 きょう、これから議論することにつきまして、最初に焦点を定めておきたいと思います。きょう、これから議論するのは、科学技術・学術研究を横断的に支え、更に発展させるために情報科学技術を活用して取り組むべき課題は何か、ということでよろしいですね。
【橋爪参事官】 はい。そういった横断的事項を中心にと思ってございます。もちろん、ほかの点も横断的な部分はありますので、そこもあれですが、まずはそこに絞ってお願いできればと。
【西尾主査】 きょうの議論は、情報科学技術分野でどの分野が、今後、重要かというようなof ICTのことではなくて、情報科学技術を用いて日本の研究力をどう高めていくのかという観点から議論していただきたいと思います。事務局、それでよいですね。
【橋爪参事官】 はい、そのような視点でお願いできればと思います。
【西尾主査】 総政特の濵口審議会会長から本年前半で依頼を受けているのは、まず、by ICTの観点で研究力をどう高めるのかを議論することだと考えます。個々のテーマとして何を重点的に研究推進するのかということは、おそらく今年の後半部分に依頼があるのだと考えます。この委員会の開催スケジュールから見て、後半部分については次回の委員会で審議できます。そこで、きょうは、このたたき台に書いてあるような観点で議論するということでよろしいですか。
【橋爪参事官】 はい。よろしくお願い申し上げます。
【西尾主査】 それで、事前の連絡のときに、委員の皆様に、きょうは何分ぐらいの時間で御意見を言っていただくとおっしゃっていたのですか。1分でしたか。
【橋爪参事官】 2分です。
【西尾主査】 ということでございます。きょう、2分という制約の中で、思っておられることをおっしゃっていただきたく、よろしくお願いいたします。
 きょうの論点のためのたたき台は突如出てきたものではなくて、今までの情報科学技術委員会や、学術情報委員会で提起されたものをベースに、まとめていただいておりますので、これが従来からの課題であったり、重要な論点であるということを踏まえて、それを更に深めていただくというのがきょうの趣旨でございます。よろしくお願いいたします。
 御意見ございませんでしょうか。きょうは時間が限られていますので、御発言できなくなる可能性もありますので、何なりと。安浦委員。
【安浦委員】 それでは、口火を切らせていただきます。
 まず、情報科学と情報技術、これは違うものであると認識しておくことが肝要だと思います。道具としての情報技術は、もうどんどん、いろいろな分野の人が使うので、情報科学の研究というのはまた別の問題である。特に、AIみたいな情報技術の道具となった部分は技術としてどんどん使ってもらえばよくて、本質的な情報というものに対する限界や、可能性に関する情報科学の研究というのは、ほとんど哲学の問題と絡んでくると認識すべきだと思います。
 科学的手法として、計算科学とデータ科学を融合する科学研究パラダイムの確立、これが全ての分野で大事になってきて、そのための基礎知識を全ての分野の科学者が身に付ける必要があると思います。
 それから、情報通信基盤が社会の基礎になってしまったので、AIや、セキュリティーなども含む基本的な国民のリテラシーを上げるということは、民主主義を守るために必然的なものであると。そういう意味で、先ほどの文章にも教育という言葉がほとんど使われてないということが、私にはちょっと気持ちが悪いなという気がいたします。
 情報科学自身としましては、脳科学と物理工学、光や量子コンピューティングのような話と、社会科学、この3つの要素を考える必要があると思います。特に社会科学的な話については、ブロックチェーンのような分散的な技術と中央集権的な技術、そういうものが行政や法制度まで変えていくことにつながっていくわけで、社会制度や、そういった問題としっかり結び付けた議論をしていく必要があると思います。新しいサービスや情報技術が社会に与える影響と、人が持つ価値観や倫理観の関係を常に議論していく場が国の中で必要だと思います。法律の適用の自動化などは絶対起こってきますけれども、社会のブラックボックスをどこまで許容するかというのは国民の支持がないとできないことで、国民のリテラシーに大きく依存してまいります。
 20世紀において、強力な兵器や武器が社会統治の基盤となったように、21世紀の社会統治の基盤は情報技術になるのではないかと思います。
 以上です。
【西尾主査】 最後のメッセージは非常に心強いです。
 多様で貴重な観点からおっしゃっていただきました。ELSIの問題の重要性もおっしゃっていただきましたし、今、おっしゃられたようなことが研究力強化をするプロセスの上で非常に重要になってくると思っております。どうか、それも踏まえて強化していただければと思います。
 ほかにございますか。どうぞ、瀧委員。
【瀧委員】 私が感じたのは、情報技術、あるいはAIをいろいろな研究分野のドライブとして使っていくと、いろいろな分野の価値が変わってくるだろう、それで考え方も変わってくるだろうと思います。というのは、情報技術を使って効率化しているときは良いですが、情報技術を使って、いろいろな研究の深さや広さが変わってくると、今まで人間がやっていたこととは違うものがたくさん出てくるだろうと思いますので、情報技術を使って研究するということは、今までとは違う価値観を持ってやっていただく。今までは、人間が何か見つけると偉いということがありましたけれども、機械が見つけて機械が偉いか、人間が偉いかというような論点も出てくるだろうと思いますので、そういうものも少し含めて考えていく必要があるだろうと考えています。
 それから、社会基盤の発展に関しては、将来のことばかり言うのではなくて、どういうように解決して将来に結び付くかという、今ある問題についてちゃんと対応できているのかということも見ていく必要があるのではないかと思います。最近ですと、マイクロプラスチックの問題などがあります。便利だ、便利だといってプラスチックを使ってきたら、こういうことになってしまったということがありますから、そういう問題に情報技術を使って解決するとか、そういうことが出てくるだろうと思います。
 それから、データ利活用はどんどん進めないといけないですけれども、倫理的な問題や、そういう法律的な問題以外に、実際、今あるデータは本当に使いやすいのかということがありまして、使いやすいように作るという仕組みも何か要るかなと。ちょっと違う話で言いますと、個別用途のデータ構造でいろいろなソフトが出てきた後で、そのデータを違うところに使おうとすると難しい変換が必要になります。そういったものの敷居が下がるような技術も必要になってくるのではないか。
 人材育成では、やはり研究者の数がたくさん増える施策が必要で、研究者の層が薄いと、幾ら頑張ってもやはり出てくるアウトプットは少なくなります。それを裏返してみると、今、研究者は非常に過酷な状況にある。例えば、大学の教員なども任期制になってきて、自分たちの衣食住すら犠牲にしてやっている人もあるという感じになっていますので、研究者の皆さんが憧れになるような、そういう分野の職業になるような下支えをしながら、人材育成をしていくということが必要かなと考えています。
 あと、先ほどのジャーナルとの関係も出てくると思うのですが、研究成果を評価する新しい仕組みも必要かなと。例えば、電磁誘導などで、ファラデーの法則が出てきたときに、ファラデーは実験が得意だったのです。マックスウェルが、それを数学的に理論化しました。だからといって、マックスウェルだけが評価されているかというと、その実験をきっちりやってきたファラデーの方が更に評価されていますから、研究者はいろいろなスタイルがあると思います。そういうところの評価を併せたものも必要だろうと思います。
 以上です。
【西尾主査】 最初におっしゃった新しい価値というのは、安浦委員のおっしゃっていることと関係するのですか、しないのですか。
【安浦委員】 多分、するんだと思います。ただ、私、もうちょっと広い価値観として、社会の制度を支える価値観まで含めてということで申し上げました。
【西尾主査】 4つの観点からおっしゃっていただきました。社会的課題の問題、それからデータをいかに使いやすい形で、しかも信頼性を高く整備していくかということと、最後、やはり研究の評価を適切に見直す必要があるのではないかということも含めておっしゃっていただきました。どうもありがとうございました。
 時間が限られておりますので、どうぞ何なりと。では、どうぞ。
【奥野委員】 私からは応用の方、私、医学、あるいは創薬等の応用をやっているんですけれども、ちょっと応用面についてお話をさせていただきます。
 特に、ヒトに関するデータの取扱い、私、医学系にいますと、これはずっと叫ばれているんですけれども、倫理面等の問題でなかなか使えないような状況で、これはもう倫理面のクリアだけではいかないのではないかと、私自身はちょっと思っています。やはり何らか国としてトップダウンで、かなり法整備、また強制力を持ってある程度やらなければ、本当に日本は、ヒトに関するデータにおいては後進国になってしまう過渡期に来ていますので、その部分に関してはかなり強化をしていただく、叫んでいただく必要がある、また、それに対して国民の理解を求める必要があると思っております。
 それとともに、医療のデータ、ライフサイエンスにおいては、いわゆるビッグデータと言われるようなデータの取り方ができないわけです。データを取るのに非常にコストが掛かりますので、大量のデータを目指そうとしたときに、やはりアメリカ、中国には絶対に勝てないというような状況なりますので、やはり少量データで、いかに新たなものを生み出していけるか。例えば、AI×シミュレーション等、そういったことを真剣に考えていかないとならないとも思っています。
 あとは、先ほど情報科学と情報技術とは違うとおっしゃっていただいて、全くそのとおりでございまして、応用側からすると情報技術としてしか見ていない。そうしたときに、情報系の先生方にお話を持っていったときに、情報科学のサイエンスをされている先生方に持っていくと、やはりなかなかコラボレーションができない。では、大学のアカデミアにいるときに、情報技術を提供する職種というのはどういった人たちなのか、どういう人材なのか。産業界と組んでいくといったこともあると思うんですけれども、その辺り、応用側が情報技術を使うときに、職種は本当にどういう人たち、あるいはどういうデパートメントの人たちと組んでいくべきなのかといったことが、情報科学、情報学といった中で、物すごい領域が広いですので、応用側からはなかなか見えていないといったところが、研究力向上においてはすごく重要になってくるのではないかと思っています。
【西尾主査】 先生が情報科学の方々に課題を持っていかれても、全然興味を示してもらえないという感じなのですか。
【奥野委員】 いや、そういうわけではないんですけれども、ベーシックなサイエンスをされている先生方からすると、我々としてもこの問題を持っていってはちょっと申し訳ないなといったこともあって、でも、かなり社会ニーズからして、やれやれと言われているわけです。本来、やはりベーシックな情報科学をやっていただく必要もありますし、応用していく中でベーシックなところのヒントを得るといったこともあると思うんですけれども、その辺りがうまく、我々が分かっていない、ライフサイエンス、応用側がよく分かっていないところもあるといったところです。
【西尾主査】 特に最初におっしゃっていただいた点は、第6期の基本計画としては、日本としてのオンリーワンのデータを適切に整備していくということが、おそらく、研究力強化のためには非常に効果があり、世界をリードしていけると思いますので、事務局としてその点は強く出してください。最後におっしゃられた点は、我々、情報科学分野の研究者としては、先生に何らかの形で適切なお応えはしなければならないと思っています。
 どうぞ。では、八木委員、そして田浦委員。
【八木委員】 今の奥野委員の話を聞いていて、僕もしゃべりたくなってしまいまして、違う面でヒトのデータというのはまだ勝算があると思っています。割と下世話な考え方ですけれども、データ駆動型社会になってきた中で、GAFAが全部取り込んでしまうような社会で、GAFAとまともに戦って日本が勝てるはずがないという思いの中で、日本の限られた予算の中で世界をリードするためには、やはり何から手を付けたらいいのかと考えないといけない。私自身は、やはり国の資源をうまく集中して、世界への突破口を見つける必要があるだろうという思いがあります。それが実は、今、日本が掲げているのは、ヒューマンセントリック社会という言い方もしていると思いますが、パーソナルデータというものが一つその切り口なのだろうと、私の中で認識しています。
 パーソナルデータも、もちろんGAFA等が簡単に集めることができるようなものを使っていたのではやはり競争力がない。では、どういうものかと言えば、ヒトのデータの中でもすごく付加価値が高くて、極端に言うと集めにくいデータです。そういうデータをいかに集めて利活用するかということを真剣に考える必要があるだろう。そういう価値の高いパーソナルデータの活用を意識したソリューションとか、それを扱うための情報システム基盤、そしてセンシング基盤というものを第6期には集中して、情報という観点でやる必要があるのではないかという気がします。
 パーソナルデータというのは、医療の世界の中の生命科学的なデータもあれば、日常の生活の中の、それこそ皆さんの顔写真のようなもの、SNSで流れているようなテキストデータももちろんあるかもしれません。いろいろな個人の情報があるわけですが、全てにおいて個人情報、プライバシー情報、そして肖像権の問題まで含まれている、いわゆる要配慮個人情報になってくるわけで、実際に扱いは困難なわけです。でも、逆に言えば、それは勝算があるかもしれないという認識です。今なら世界をリードできるチャンスです。
 このようなセンシティブなパーソナルデータをうまく扱って、パーソナルデータを提供する人々との対話による、パーソナルデータの利活用に対する社会受容性というものをきっちりと促進して、パーソナルデータを社会で利用するための社会基盤作り、実際には社会が受け入れてくれないとうまく使えないので、そこがやはり重要だと。それは、やはりELSIの問題でもありますし、法整備への提言、そしてガイドライン作り、そういったことを強く進めていく必要があります。
 もう一つ、やはりイノベーションにつなげないといけないので、ルールを作って、技術を作っても、お金がもうからないのでは困ります。イノベーションをやるためには、ビジネスモデルの創出がやはり重要で、パーソナルデータを扱うためのマネタイズをどうやるのかというところを併せて考える。それは、やはり横断的に考えるべきことではないかと思います。
 それから、日本がもう一個持っているのは、やはり情報基盤としてのSINETが、日本中に高速に張りめぐらされていて、モバイルSINETもある。高速でセキュアな通信インフラがあるわけですから、その上でパーソナルデータをいかに活用して動かすか。そういう仕組みを作って、それが一つのデファクトになるべく推進していくということが一つ、今、日本が置かれている中でやるべきことかなという気が私自身はしております。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。まさに今、おっしゃられたところを解決していかないと、一方でICTがどれだけ発展したとしても、Society5.0は実現できないという観点で、第6期ではより重要になってくる課題だと考えます。そのときに、ICTの分野の研究者達がどれだけ人文学・社会科学系と連携して問題解決を図っていくのかということだと思います。
 津田委員、どうぞ。
【津田委員】 ちょっと話題、変わってしまうかもしれないんですけれども、データ駆動型サイエンスやAI駆動型サイエンスというのは、非常に必要だし、進めていくべきだと思うんですけれども、一つやらなければいけないのは信頼性評価です。例えば、ある同じデータがあって、Aさんという人が解析して、こういう結果を出しました。Bさんがやったら、普通、Bさんは全然違う結果が出てくるんです。なので、AさんとBさん、どちらを信じるのかという話になってしまうんです。それが解決できないと、結局、有名な人がやったものが採用されるとか、そういうすごい暗黒な世界になってきてしまい、何を信じればいいか分からなくなってしまうということがあるので、やはりそういうことも大事かなということが一つです。
 もう一つはシミュレーションの話ですけれども、奥野委員の話にも出ていましたけれども、例えば「富岳」や「京」などでやっていることは物理シミュレーションがほとんど全てです。物理シミュレーションというのは、AIとの関連で言うと、実験しなくてもデータを生産できるという意味で非常に重要です。実際に実験してデータを得るというのがもちろん理想なんですけれども、それができないので、できない場合もあるので、シミュレーションでやるというのは非常に重要で、ただ、今までのシミュレーションの使い方というのは基本的に実験科学者が出した結果を追認するとなっているんです。これまで実験で、例えば超電導が出たときに、なぜ超電導なのかをシミュレーションで再現するというのが今までなんですけれども、AIと組み合わせていくことによって新たに探索していく。例えば、それで超電導の材料を探索していくこともできるので、そういうようなことができると、よりスパコンなども活用できるのかなと思います。
 以上です。
【西尾主査】 貴重な御意見、どうもありがとうございました。第6期にくさびを打つような、スケールの大きい話も頂けると有り難いと思いますので、是非、どうかよろしくお願いします。
 田浦委員、お願いします。
【田浦委員】 まず1つ目、人材育成関係について、瀧委員がおっしゃったことに少し触発されて発言させていただきますと、大学の先生は、今、いろいろと時間の劣化というようなことで大変な思いをしていて、一方で若い方々は、大学に安定したポストがなくなっていって、それはそれで非常に苦労している。だから、情報の専門的な知見を身に付けた人の重層的な、多様なキャリアパスで、なおかつ社会的にも高く認知されていて、厚遇されると、そういうキャリアパスを幾つも用意する必要があるのではないかと思っています。
 具体的には、大学の現場で言いますと、必ずしも研究者を目指すわけではないんですが、研究現場においていろいろな開発や成果を出すために、実際にソフトウエアを作ったり、そういうことをする専門家というのは非常に必要で、それが多分、日本とアメリカを比べると、日本が大分手薄なところだと。
 あとは、大学の情報基盤ですね。その辺の教育もそうですし、スーパーコンピューターもネットワークもそうなんですけれども、そういうところを実際に設計して運営するということを担う専門家。
 あとは、これからデータ活用とか、データドリブンサイエンスという話になってきたときに、やはり産学連携とか、必ずしも情報の専門ではない人と協力できるような、それこそ先生がおっしゃっていたような、そういう連携のコーディネートをできるような人。もちろん、今の産学連携も仕組みとしてはあるのでしょうけれども、やはりエクスパティーズということで言うと新しい人が必要だと思っていて、そういうところ。
 あと、強調したいのは、やはり小中高における情報教育の実質化を担ってもらえるような、専門的な情報の知識、見識を身に付けたような、そういう社会に非常に必要とされる場所がたくさんある中で、一方で学生はなかなか上を目指さないというか、簡単に就職できるぐらいのところで出ていってしまうという現状がありますから、そこの何かうまい循環を作っていけたらいいのではないかと思っています。
 あと、情報基盤という話が丸の中で出てきたので、大学で情報基盤センターをやっている観点から少し言わせていただきますと、基盤ももちろん大事ですが、その大学にいてやっている人間の立場からすると、何が大事かというと、やはりそれを介していろいろな分野の先生方と協力、協働で問題解決できるとか、新しい研究の方向性を議論できるという、やはり人だと思うんです。基盤といったときに、どうしてもスーパーコンピューターのマシンを用意すればいいというような話になりがちですが、そうではなくて、大学にいる人間の立場からすると、それをハブというか道具として、いろいろな分野の先生方と協力できる仕組みがあるということ。かつ、今、日本だと、割と多くの大学に、スーパーコンピューターを持って、ほかの研究者と共同研究がしたいという先生方がいっぱいいるので、そこを決して失わないようにするべきだと思っています。
 もう一つは、今だとデータという要素は、必ずしも大学の情報基盤の中にすごく大きく入ってはきていないと思うので、基盤といったときにそれが果たす役割として、そこに行くとデータがある、いろいろな研究を共同で進めるための貴重なデータがある。そういうものが大学の基盤の一部として認識されるという世界を作っていく。それをSINETで広く日本全体をつなげている。そういうようなものが、特に大学がこれから果たしていきたい基盤の役割という気がしています。
【西尾主査】 今、おっしゃった中で、情報基盤の基盤ということは人を確かに含んでおり、人がそれなりに十分にいるということが、単なるハード、ソフトの問題ではなく、それも絶対必要なのだという御発言は、我々、厳密に考えていくべき問題だと思っています。
 あと、博士人材の問題というのは、この委員会だけでなく様々なところから出てきますよね。お伺いしたいのですけれども、田浦委員がおっしゃった、健全なSociety5.0を作るために、小中高からITリテラシーを正しくと教育することが必要だというとき、それを小中高で教えることができる人材の育成ということは、基本計画の中でも重要視される対象になりえますか、別途ですか。その辺りはどう考えたらよいですか。Society5.0を、本当に健全なものを作ろうとしたら、今、小中高の間からITリテラシーを学ぶことが大切ですけれども、それは科学技術基本計画の対象ではないのですよね。
【橋爪参事官】 そのスコープがどこまで広がるのかで、AI戦略も、最初は技術出身だったんですけれども、人材ということになるとそういう教育面まで含んでおりますので、それは重要な御指摘として承って、今後、そのスコープがどう伸び縮みしていくかの中でしっかりと対応していきたいと思っております。
【西尾主査】 田浦委員、貴重な御意見、どうもありがとうございました。
 では、どうぞ。乾委員、それから井上委員。
【乾委員】 AI駆動ということに関して、もう一度ちょっと戻りたいんですけれども、今までAI駆動、データ駆動の話に続きまして先生方がおっしゃったことは、全く全面的に賛成です。その上で、by AIというお話がありましたけれども、AI自身が既にできていて、それなりに使えるようになってきている技術と、まだまだ何ともなっていないものがあります。
 例えば、私自身は自然言語処理という分野で仕事をしています。様々な科学技術の論文を解析して、そこから知識を取り出したりする、それでサイエンスをサポートするというようなプロジェクトに関わらせていただいています。それぞれの分野で、ニーズは本当に様々で、かつデータも少ししかないというような中で、文脈なり、データの解釈なりといったことは、なかなかまだできない分野がございます。ですので、by AIという中で、そのAIというキーワードの中に物すごく広い幅がある。技術的にも、それなりにコモディティー化していく部分と、まだまだ技術自身をやっていかなければいけない部分とあるということを、常に織り込みで議論していく必要があるのではと思います。
 もう一つは、ちょっと話は違うんですけれども、人間中心という議論が何度も出てきています。AIの分野で、今、フェアネス、あるいはD&I(ダイバーシティー・アンド・イクルージョン)ということが国際的には非常に大きな問題として、トップの研究会議でもそれが大きな大きなキーワードになってきています。一方で、そうした動きが日本ではまだ鈍いところがあると感じておりまして、AIを活用して様々な科学技術を推進していくときに、常にフェアネス、先ほどデータの評価をどうするかという話もございましたけれども、そのことを常に織り込んでいく必要があるのかなと。そこをちゃんとやらないと、我々のやっていることが世界から尊敬されないというか、そういうこともあるのかなと思って聞いておりました。
 ありがとうございます。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。第6期になりますと、Society5.0をより成熟させるということになりますので、そのときに今おっしゃったフェアネスの問題は非常に大きな重要性を持ってくると思います。ありがとうございました。
 井上委員、どうぞ。
【井上委員】 データ駆動型社会におけるデータガバナンスの在り方について一言申し上げたいと思います。データ駆動型社会においては、データを横断的につないで利活用を推進していくということが重要になってまいります。先ほど来、お話の出ております、パーソナルデータの利活用のルールも含めたデータ利用のルールをどうするかということが非常に重要になってまいります。学術情報委員会でも既に一定程度議論を重ねてきましたし、内閣府からは3月に、国立研究開発法人におけるデータポリシー策定のためのガイドラインも公表されています。これからは各機関のビジョンやミッション、それからオープン・クローズ戦略についての考え方を踏まえて、データポリシーが策定されていくというフェーズに入っていきます。
 データポリシーを定めればそれで終わりというわけではありません。思い起こせば、大学と特許の関係について、2000年代初頭に知財立国が叫ばれている中、国立大学の法人化の時期に、国立大学の研究者の発明を個人帰属の原則から機関帰属へと原則を変えたということがございました。その下で産学連携を進めようということでやってきました。機関帰属にルールを変えたら産学連携によって日本の科学技術の進展が加速されたかというとそうではない。機関帰属のルールを決めても、運用面でうまくいくような産学連携の仕組み作りをしないと目的は達成できないということです。データポリシーを各機関が定めた後、どうやってそれを運用していくのか、グッドプラクティスのようなものを集めていくことが重要だろうと思います。
 その際に必要になりますのは、まず、研究者の利益、ステークホルダーとしての研究者の利益や研究へのインセンティブをどう守るかということです。研究者は一つの機関に一生勤めるとは限りません。研究者が自ら作り出したデータについて、他の機関に移った後も使えるように配慮しないと、研究活動が大きく阻害されるおそれがあります。それぞれの機関のデータポリシーがそれに反するような内容の場合にどうするかという問題がございます。
 次に、データ駆動型の研究では、異なる機関との間でのデータの連携、異なる研究分野でのデータ連携、大学・研究機関と産業界とのデータ連携といったようなことが出てきます。各主体間でデータポリシーの内容が違う場合にすり合わせが必要になってきます。すり合わせる際に、当事者同士で契約、取決めが原則となります。しかし当事者がお互い納得していればいいとは限らず社会にとって望ましいルールになっているかを検証していかなければなりません。
 産業界のデータについては、経産省からAIデータ契約ガイドラインが公表されています。先ほどフェアネスという話がありましたけれども、フェアな利益の分配が実現できて、しかも利活用の推進につながるような契約慣行を作っていこうという目的で作られています。大学・研究機関でも、そのような視点での検討が必要だと思います。
 最後に、データ独占の問題があります。これはジャーナルの問題とも関係します。今まではGAFAが独り勝ちして、データ戦略で日本はもう追いつけないかなというような心持ちでいたんですけれども、ここのところ潮目が変わってきている。GAFAのようなプラットフォーマーによるデータ独占の問題が、各国、欧米諸国でも問題視され、競争法ですとか、GDPRのような個人情報保護法制の観点からの規制が入るようになってきました。
 先般、世界経済フォーラム年次総会で安倍首相が、DFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)構想を打ち出しました。グローバルなレベルでのデータガバナンスのルール作りを日本のリーダーシップの下で進めていこうということです。科学技術の分野でも、データ戦略で巻き返しのチャンスがあるのではないかという、やや楽観的な期待を持っております。
 以上です。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。本当におっしゃること一つ一つが大変重要で、それらが何とかシステマティックに動くようにならないと、オープンサイエンスなどがなかなか進展しないということを、今、先生のお話をお伺いしながら、改めて思いました。どうもありがとうございました。
 栗原委員、どうぞ。
【栗原委員】 東北大学の栗原です。
 私は、物質科学、材料科学の研究者で、必ずしも情報科学技術分野によく精通しているわけではないのですけれども、逆にそういう分野からの期待という点で意見を述べさせていただけたらと思います。
 今、サイエンスのいろいろな分野で、情報科学技術に対する期待は非常に大きいと私は理解しています。最近、聞いた例としては、情報などからは少し遠いと思われる合成化学分野でも、非常にたくさんある合成法のデータ、知識を使って、AIに化学構造さえ与えたら、合成法はデータから見つけてきて、ロボットに合成してもらえばいいだろうというようなビジョンの非常にクリアなものを作っていて、どこまで現状の技術でできるかは、多少、分からないのですけれども、そのような期待があります。
 そうしますと、更にナレッジ(知識)として本当にやるべきことは何か、あるいは、そういう中で、従来、作れないような、例えば非常にたくさんのステップを必要とするようなものですと、なかなか一気に考え切れないわけですけれども、そのようなものが作れるとか、いろいろ新しい可能性があるのではないかと期待しております。
 また、AIということで議論が主にされているんですけれども、もう少し情報処理技術というような点で、いろいろな使い方があるのではないかと考えています。例えば、シミュレーションでは、非常に大きなスケールのシミュレーションはだんだんにできるようになっているのですが、長時間の現象をシミュレーションするのは非常に難しい。それをうまく情報処理して長時間をつなげることで、従来、できなかった、今のハードウエアとか、計算技術だけでは解決できない課題に新しい可能性が出てくる。あるいは、よく地震の例で出てくるような、地震のメカニズムから被害を予想するような、階層をつなぐような、それぞれのスケールで違うロジックがあるものをどのようにつなげるか。物質化学の場合は、特にナノから手に取れるようなマクロまで、実際につなげて理解するのは今でも非常に難しくて、ナノテクの成果が必ずしも使い切れていないところも非常にあります。そういうようなところで、新しいサイエンスの切り口がいろいろ出てくるのではないかと大変期待しております。
 それには、やはり分野融合が大変大事ではないかと思います。分野によっては物理的な表現とかは得意ではないわけで、そういうようなところをどのようにつないでいけるかが課題かと思います。ですが、私は大変期待しております。
 もう一点、簡単に申し上げます。今、いろいろな大型共用施設、SPring-8もそうですし、ポスト「京」、「富岳」という名前だそうですが、大きなデータを出すような施設を日本中から使いたいという状況が、できていると思います。そのときに、今の「京」のユーザーでも、データをやりとりする方がむしろハードルになっているというようなことも聞きます。こういう大型施設をみんなが使うという状況の中で、それをうまく効率よく、あるいは最大限のポテンシャルで使うためには、例えばどうデータを搬送するかとか、あるいは、うまく解析してやりとりができるかとか、そういうことも大変期待されるのではないかと思っています。SINET、非常に御貢献いただいているところですが、更にいろいろな大型施設のバックアップとして、そういう情報ネットワークの整備と技術的な向上をしていただけると大変有り難いと思います。
 以上です。
【西尾主査】 情報分野への期待という観点で、御意見どうもありがとうございました。
 どうぞ。
【鬼頭委員】 きょう、実を言うと、私はキャリア、ソフトバンクから来ていますので、総務省さんの方は得意なんですが、こちらの方は初めてなので、もしかすると皆さんに、池の中に石を投げるようなことを発言してしまうかもしれません。
 まず、今、皆さんのお話を聞いていて、僕、すごく思っているのは、とても大事なことを話されています。教育、人を育成していく、将来にわたってというところがあると思うんですけれども、私たち経済界の方にいるんです。これでいくと、科学があって、応用の技術があって、僕、一番アウト・オブ・サークルのところにいるように感じています。NECさんもいらっしゃっているので、ちょっと言いにくいんですが。
 それはなぜかと言いますと、正直、私たちの会社は孫がたくさんの会社に投資しています。私が投資しているわけではないので、後で投資してくださいという話はちょっと私は受けられないんですけれども、残念なことに日本の企業はありません。もう一つ、私も日本で、そういう会社をアクセラレーションしたり、ジョイントベンチャーを作ったりするんですけれども、その会社さんが来られると、必ずPh.D.、研究者の方がいらっしゃったりします。セキュリティーでも、素材、又はヘルスケアでも、必ずそういう方たちがいらっしゃって、その後ろで必ず大学とつながっているということが、イスラエルでも、サンフランシスコだともう大学名は言わなくても分かると思うんですけれども、そういう大きなエコシステムができているという感じがします。
【西尾主査】 すみません、マイクを是非使っていただけますか。
【鬼頭委員】 正直に言います。私は、日本は全然連携されていないと思っています。例えば、「京」、私は松岡さんとも、石川さんともちょっとお付き合いさせていただいて、やってきたんですけれども、ちょっと一部の会では言いましたが、私も使ってみようと調べたんですけれども、年2回の申込みで抽選が待っている、使える時間は一定期間、論文を書きなさい。私たち、今、ビジネスの世界で戦っている者にとっては無理です。
 なので、あるメーカーさん、もう富士通さんと言ってしまっていいですかね、いろいろ話をして、松岡さんとは、もっとカジュアルにして、皆さんが作ったものを私たち一番外側にいる人間たちに使わせてくださいというお話をさせていただいています。なぜかというと、皆さんが作った一番いいコアになるものを一番外まで持ってきてほしいんです。地球でいくと、マグマと言うと失礼かもしれませんが、地表まで持ってくるシステムがないような気がしています。そこは、文部科学省と経済産業省、どちらに行けばいいのか、私は迷ってしまうんですが。
 もう一つ、今から言うのは例ですので、今からお話しするデータを皆さんに提供できるかどうかというお話ではないんですが、孫がというか、私たちソフトバンクグループが投資した会社のデータ、及びIDSで言うんですけれども、IDSを全部足すと、御存じない方もいるんですけれども、ウーバー、グラブ、オーラ、オヨという決算発表で出している会社と、多分、これは第2ファンドが始まるので、いろいろな会社を買収していくと思うんですけれども、GAFAを抜くんです。
 皆さん、データがないとおっしゃっています。でも、日本企業で持っている方たちはいらっしゃると思います。うちの企業なので例で話をしているんですけれども、もちろんその中で使っていいデータ、どうだというのはあると思うんですけれども、そういう意味でいくと、多分、私は、産学連携をしていく形とか、産総研さんとの例とか、今、松岡先生とはいい流れが作れているかなと、作れ始めているかなと思ったりしているんですけれども、日本だけのデータというのは、僕、先ほど先生がおっしゃったように負けると思います。でも、日本でいろいろな海外の会社と提携していたり、買収をしている会社と組むことになると、外のデータも手に入るのではないか。
 これ、ごめんなさい、鬼頭さん言いましたよね、データをくださいと言いに来られても、ちょっと今は答えられないんですけれども、そういう形をしていかないと、もう少し一番外側にいる私たちも意識してくださいということをすごく感じています。
 多分、それをすることによって、Ph.D.の方などとよく話をするんですけれども、勉強して、そこをやって、ストックオプションでリッチになる。また、次を自分たちでやっていくというということを、アメリカの大学の研究員の方たちは、研究員で残る方ですと、多分、研究して社会に役立ててデリバリーする、インプリメントしてリターンを得る。そうすると、ああいうようになりたいという方たちがたくさんいらっしゃるのを見てきているんですけれども、そういうような形でもう少しビジネスという面もあっていいのかなと。もちろん、根底の長期間掛かる研究をして、がんがなくなります、何とかの病気がなくなります、又は地震とか、そういう研究は基礎研究としてあるんですけれども、多分、そういう道はあるのではないかとちょっと発言させていただいて、次の方に譲ります。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。産業界との連携の中で、今、おっしゃったことは、非常に重要かと思っています。どうもありがとうございました。
 喜連川主査代理、いかがですか。
【喜連川主査代理】 ありがとうございます。
 西尾主査から、今回の議論ではby ITについてフォーカスいたしましょうというお話を頂いたわけですけれども、先ほどの文部科学省からの資料を見ますと、要するに非常にデータが色濃く出てきているということからすると、ほとんどby dataと思ってもいいぐらいの領域になっているのではないかという気がしなくもないわけです。世の中を広く見てみますと、データのレギュレーションに関しては相当精緻に考えて戦力を取っていて、これは先ほど井上委員も御指摘されたところですけれども、そのレギュレーションのところは、文部科学省の資料の話は4つ点があるんですけれども、必ずしも書いていないわけです。
 G20がある中で、この間、EUがちょっとお越しになられてお話をしていると、一声、75%から80%の会話はデータですね。残りの20%ぐらいがAIかなという気がします。これは、例えばAI原則というのはロボットの原則とほぼ同じで、OECDがやろうが、どこがやろうが、そんなに違わないコンテキストになってくると思います。それに対して、GDPRというのは非常に洗練した考え方で、世界で何もないところにデータのガバナンスを最初にぽとっと落とした意味で言うと、圧倒的な先見性があるなという気がします。
 今回、5月に出たのがノンプライベートなGDPRと。つまり、人が関与しないデータのGDPRをやったわけですけれども、話を聞いていると非常に難航したというようなことを言っています。日本は、先ほど奥野委員が、けさもAMEDの評議会だったんですけれども、要するに倫理規定が1,200個もあって動かないと。我々のNIIでもそうですけれども、このデータをどう扱えばいいかということに膨大な時間が掛かります。我々でもそうですので、ほかの大学さんだったらもっと大変だと思います。
 そのデータのガバナンスというのが、多分、次を制することはほぼ間違いがないという気がします。先ほど津田委員がおっしゃられた評価みたいものもあるんですけれども、これはAIの評価と、処理系の評価と、データの評価がほぼ一体化されておりますので、ウエートはどちらかというとデータ側に来る可能性がすごく強いという中で、第6期は、ここを是非、第一義的にお考えいただけると有り難いのではないかという感じがしている次第です。
 日本はデータがあるのか、ないのかという話をされているような気がしますけれども、今年はフィンランドと日本の国交樹立100周年です。フィンランドが何と言ったかといいますと、我々は絶対に中国には負けない、なぜならば60年間のナショナルコホートを持っているからですと。60年前、コンピューターはあらへんと違うかなと思って、ノンデジタルも入っていますけれども、全国民のデータがそこにあると。こういう戦略を、先ほど八木委員もおっしゃられたように、メガファーマが全員フィンランド通いするというような国家を、うまくレギュレーションの中で日本が作っていかなければいけない。問題は、彼らは500万人です。日本は1億人を超えているわけです。ですから、その辺をどうするかということになります。
 それから、余り1点目だけ長く話すといけないんですが、2点目は、今回の委員会の中で、冒頭の方で西尾主査から、この議論で抜けているところがありませんかという御質問もあったんですけれども、一つ、やはり現時点の我が国の政策環境の中で是非、議論をしておかなくてはいけないのは、柴山大臣が小中高にSINETを開放するという御発言をされて、もうじき第2弾が出ると思います。これは物すごく大きなインパクトがあって、多分、初中局かもしれませんけれども、情報分野でここをどう考えるのかというのは非常に丁寧にウオッチをしておく必要があって、何らかの委員会のイシューには是非していただく必要がある。あるいは、第6期の中でも重要な問題になってくる。子供のデータというのは医療データとほぼ同じですので、改ざんされた瞬間に、その子の人生が変わってしまうようなことになります。ですから、そんなこんなも含めて、これは安浦委員もるる、いつもおっしゃっておられることだと思いますけれども、この中できっちりという感じがします。
 それから、3点目、軽く申し上げますと、奥野委員がIT屋さんに物を頼みに行ったら相手にしてもらえないと。そういう人がいたら僕が怒ってあげます。この話は、まさに冒頭のジャーナル問題とほぼイクイバレントなんです。つまり、大学自身が情報分野の専門の人をどういうように評価するか。By ITとして、ITを使っていろいろな分野を助けてあげるということを、もっと積極的に評価しなければいけないわけです。ですから、ジャーナル問題イコール評価問題だと思いますので、これはもうかなり丁寧にやるべきだと思います。
 しかも日本は、トップ国際会議なんていうものがありますけれども、あそこの論文を調べて見れば分かるんですけれども、あそこで採択された論文の半分以上はサイテーションされていません。だから、あんな箱なんか評価したって、ほぼ意味がないわけです。それに比べると、オープンソースのソフトウエアを出して、こんなたくさんの人が使ってくれているんだと。こういうby ITの、ある種、世の中へのインパクト係数を評価ケースの中に是非、入れるべきで、それをほかの分野にも押し広めていく必要があると思うんです。
 日本は、一番簡単なメトリックスにすがりたがる傾向がやはりあって、何か一点突破なんです。ここの論文さえ通せば、世の中、自分は楽にできるみたいですと、どこそこの大学に入れば実験が楽にできるのと似たような感じで、そんなことは全然ないんです。だから、ああいうマジックに掛からないための人間の教育を、システムを改善するということで、是非これもやる必要がある。
 以上、3点です。ありがとうございました。
【西尾主査】 3点について、喜連川主査代理には本当に貴重な御意見ありがとうございました。
 もうそろそろ最後なのでですが。
【梶田委員】 すみません、時間、短くさせていただきます。
【西尾主査】 皆様、ちょっと延びてもいいんでしょうか。よろしいですか。そうしたら、もう本当に1分ということで。
【梶田委員】 はい。京都大学情報環境機構IT企画室教授の梶田と申します。
 私、普通の教員ではございませんで、業務系教員ということで、エフォートの7割で大学の情報環境整備の業務を、残りの3割で教育研究をしています。その観点で、資料5の16ページ、「研究力向上改革2019」の資料を見ながら一言だけお話ししたんですけれども、大学の情報基盤整備、あるいは情報環境整備というのは京都大学であってももう無理です。つまり、人は増やすな、予算は増えないという状況で、外部のITシステム・サービスがどんどん多様化して、GAFAといわれるドミナントな勢力が出てきている。こういう状況の中で、最新のITシステム・サービスを追いかけ続けないといけない。でも、人も増やすな、あるいは減らせ、資金も増えない。これではもう無理です。唯一、今できているのが、多分、東京大学だけだと思うんですけれども、京都大学でさえも無理です。
 この状況を打開するためには、SINETの初等中等教育への展開というお話がありますが、そういう日本全体として、国家戦略として情報基盤を整備するという方向を明示的に打ち出さないと無理だと思います。くしくも、今年は、大型計算機センター法制化50周年ということで、来月には、記念イベントもありますけれども、研究力向上改革に向けた情報基盤を整備するための新たな法制度を国家戦略としてきちんと作っていただきたいと思います。
 以上です。
【西尾主査】 ありがとうございました。
 どうぞ。
【若目田委員】 経団連の若目田でございます。
 経団連から、「本日これは言っておこう」という事項がありますので、忘れずにお伝えしたいと思います。経団連では今年4月に、『Society5.0の実現に向けた「戦略」と「創発」への転換~政府研究開発投資に関する提言~』と称し、Society5.0の実現に向けた第6期科学技術基本計画の在り方に関する提言を行いました。提言のポイントは、今までの「選択と集中」という方針から、「戦略と創発」への方針の転換です。戦略的研究とは、Society5.0の実現を目指して、目的とかゴールを明確に絞って研究していくタイプであり、もう一方の創発的研究とは、課題や短期的な目標を設定しないで、多様性と融合によって破壊的なイノベーションの創出を目指す研究です。
 本日アンケート調査やその分析を行った上で設定すべきゴールを定めるというプロセスが紹介されましたこれはこれで間違いないアプローチだと思いましたが、経団連が言うところの創発的研究のように、予期せぬところから破壊的な何かが生まれる期待感を感じる挑戦もお願いしたいと思います。
 また、全般ですが、大学やアカデミアの方々のデータに関する悩み、つまりパーソナルデータ活用におけるプライバシーとELSIの課題認識は民間と全く同じ課題と理解をしました。先ほど井上委員から大学の研究機関と産業界とのデータポリシーの違いについての話がありましたけれども、実際に産学の連携に基づいて、民間が持っているパーソナルデータについて連携しようとしても、大学側の運用ルールなどデータガバナンスの実態が、企業のポリシーとギャップがあり、なかなか提供しにくいといった声も聞いたことがございます。ですので、産学連携を促進するためにも、安全管理措置などのデータガバナンスやポリシー策定に対して、意識を高めていただく必要があると感じます。
 また、全体を通して法制度やガイドラインなど社会の仕組みがパーソナルデータを活用する前提として重要というお話がありましたが、法制度だけでは人の受容性、つまりプライバシーに対する感覚は変わらないと思っています。これに関しましては、国民のリテラシー向上のための教育という話もありましたが、加えて、利用するサイドの企業や大学の自助努力も重要です。現在、一部の企業で取り組み始めていることは、自社の事業に即したデータやAI活用のポリシーを自ら検討し、このような使い方はしない、このような目的で使うというように、明確に外にコミットすることです。そして、それを具体的にどうガバナンスとしていくかの社内プロセス策定や、様々なステークホルダーによる外部からのチェックといった努力をし始めています。すなわち、データ活用に対するインテグリティーで勝負していこうという動きです。
 経団連では、2月に「AI-Readyな社会の実現に向けて」と称したAI活用戦略を公表しましたが、AI-Ready化ガイドラインとして企業のマチュリティーモデルを定義し、トップの理解、ステークホルダーに対するアカウンタビリティ、サプライチェーンまで意識をした取り組みなどの促進に努めようとしております。大学や研究機関におかれましても、同様に自主的なコミットメントや、プロセス策定に具体的に取り組まれることを期待します。要は、生活者の受容性は、ルールや社会の仕組み、技術による安全管理、そしてもう一つは活用する側自身の透明性やアカンタビリティ等のコミットメント、この3つの取り組み全てが不可欠で、これは企業も、大学などの研究機関も全く同じことです。
 最後もう一つだけ、個人情報保護法等における、学術研究を目的とする機関などの適用除外についてです。学術研究機関が学術研究の用に供する目的の場合は、個人情報取扱事業者の義務は適用されないこととなっているのですが、学術利用だからといっても通知などの説明責任が不十分な場合は、炎上であるとか、研究そのものがストップするリスクもあります。ですので、適用除外に対する判断基準の明確化や研究内容に応じたケーススタディなども推進する必要があるのではないかと考えております。
 以上です。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。経団連におかれましては、第6期を進める上で非常に重要な役目を果たされることになると思いますので、是非ともよろしくお願いいたします。
 最後、できるだけ短くお願いします。福田委員、どうぞ。
【福田委員】 ごく手短に申し上げます。
 AIについてであれ、データについてであれ、情報科学技術をめぐるELSIに関する御議論はこれまで国内外において様々なものがありました。これまでの国内外の御議論を踏まえると、情報科学技術の研究開発及び利活用の在り方については、GDPR等既存の法制度への対応のみならず、既存の法制度の見直し又は新たな法規範の形成、倫理的な枠組みの共有、社会的受容性の確保などに関し多角的な検討を手遅れとならないよう迅速かつ継続的に進めていくことが必要となろうと思われます。
 ついては、情報科学技術の研究開発及び利活用が適正かつ円滑に進められ、広く社会において受容されるものとなるよう、ELSIの抽出及び対応に関する知見を総合するための体制、すなわち、理工学及び人文社会科学、実務家等の参画を得て、研究開発及び利活用の早い段階からELSIに関し多角的に検討し、多岐にわたる知見を総合することにより、課題を抽出するとともに、その対応策を整理して実践を推進していくための体制の整備及び充実が求められるのではないか、このように考えられます。
 また、ELSIに関する人材自体の育成についても、情報科学技術の研究開発及び利活用に関する人材育成と併せて進めていくことが求められるのではないか、このように考える次第でございます。
 時間の都合上、以上といたします。
【西尾主査】 ELSに関することは、今後の非常に重要な観点かと思います。
 どうぞ。
【来住委員】 最後に話すことになってしまいましたが、既に皆さんがお話ししていることに、少し付け加えさせてください。1点は教育、人材養成に関するもの、2点目はオープンサイエンスへの取組に関するものです。
 人材養成の面では、情報系人材は、すでに、かなり不足ぎみだと思います。私の勤務先、女子大学の情報科学科でも、学部卒の多くが簡単に就職先を見つけてきます。そのため、大学院進学率が落ちてきています。就職しやすいことは良いのですが、大学院に行かずに、IT専門家、情報技術の専門家としてちゃんとキャリアが築けるのだろうかというような不安を持っています。人材育成において、育成のパイプラインという考え方があります。2040年に40歳になる人は今19歳、2040年に22歳になる人は昨年ぐらい生まれていることになります。その人たちが2040年に活躍できるようにするには、小学校教育だけでなく、大学、大学院教育も同時に変えていく必要があります。
 次に、オープンサイエンスに力を入れていきたいというお話と、ビジネスの話はなかなか両立しないかもしれないと、皆さんのお話を伺って思いました。オープンサイエンスではオープンデータが主になりますが、これから情報系の人材教育では、オープンにできないデータをどう扱うかということも重要、と思います。ビジネスや、法律分野の専門家に是非、教育面にもご協力いただきたいと考えています。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。
 きょう、人材育成のことに関して新たな視点の御意見として出たのは、小中学生のレベルからしっかりと取り組んでおかないと駄目だということが相当強く言われました。これは、我々の大きな気付きだと思います。それと、最後におっしゃったように、何かの明確なポリシーが働かないことには、オープンサイエンスの発展は非常に難しいですね。これこそ国の政策が生きる分野だと思いますので、是非よろしくお願いいたします。
 きょう、まだ御発言いただいていない方もいらっしゃるんですけれども、その点、お詫びを申し上げます。
 それでは、本日、皆様からいただいた御意見については、まずは事務局で整理いただきまして、私もそれを基に様々な検討させていただきまして、総合政策特別委員会に確かにとインプットしていきたいと思っております。本日は、貴重な意見、ありがとうございました。
 事務局から連絡があれば、よろしくお願いいたします。
【齊藤情報科学技術推進官】 本日は、熱心に御利用いただき、ありがとうございました。まだ言い足りない方、発言できなかった方もいらっしゃると思いますので、事務局の方までメールでお寄せいただければ、そこも考えさせていただきます。本日、頂いた議論、また、これからお寄せいただく議論につきましては、主査とも御相談の上、場合によってはもう一度、委員の皆様にもお諮りした上で、取りまとめさせていただきたいと思っております。御協力、よろしくお願いいたします。
 次に、次回委員会の詳細は、別途、御連絡させていただきます。
 また、本日の議事録につきましては、まずは事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りし、主査の確認を得た後、ホームページにて公開させていただきます。
 本日の資料につきましては、委員の方につきましては、そのまま机上に置いていただければ、後日、郵送させていただけます。
また、事務的な御連絡となりますが、19時を過ぎておりますので、2階の出入口は利用できません。1階の出入口から御退出をお願いいたします。
 本日は、遅い時間まで、どうもありがとうございました。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。事務局から、きょう、意見をいただけなかった方には是非直接伺ってください。
【齊藤情報科学技術推進官】 はい。
【西尾主査】
 それでは、貴重な御意見を多くいただき、どうもありがとうございました。
 局長、何かございませんか。よろしいですか。
 それでは、これにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

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