オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会(第5回)議事録

1.日時

令和4年9月27日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

竹内主査、尾上主査代理、石田委員、大藪委員、加藤委員、北本委員、坂井委員、佐藤委員、引原委員、深澤委員、堀田委員、村井委員

文部科学省

工藤参事官(情報担当)、藤澤学術基盤整備室長、大鷲参事官補佐、黒橋科学官、竹房学術調査官、松林学術調査官

オブザーバー

高品 国立国会図書館利用者サービス部科学技術・経済課長

5.議事録

【竹内主査】  時間になりましたので、ただいまより、第5回オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会を開催いたします。
 本日は、オンラインでの開催となりました。報道関係者も含め、傍聴者の方にはオンラインで参加いただいております。
 また、通信状況等に不具合が生じるなど続行できなかった場合、委員会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
 まず、事務局より、本日の委員の出席状況、配付資料の確認と、オンライン会議の注意事項の説明をお願いいたします。
【大鷲参事官補佐】  事務局でございます。
 本日、出席状況でございますけれども、委員の先生皆様、全員御出席となってございます。
 このほか、オブザーバーとして国立国会図書館の高品課長、科学官の黒橋先生、そして、学術調査官の竹房先生、松林先生にも御出席いただいているところでございます。
 続きまして、配付資料の確認でございますけれども、議事次第がございますが、配付資料、資料1、資料2がございます。
 なお、資料1に関連いたしまして、早稲田大学の長谷川課長に本日御出席いただいているところでございます。また、資料2につきましては、岐阜大学の大藪委員からの御発表資料となっているところでございます。
 不備がございましたら、事務局へ御連絡いただけたらと思います。
 続きまして、オンラインで御参加の委員の先生方への注意事項でございます。通信安定のため、発言する場合を除きまして、常時ミュート、マイクはオフの状態にしていただき、ビデオに関しましては、開始、ビデオオンの状態にしていただけたらと思います。御発言する場合でございますけれども、手のアイコンまたは挙手をクリックして御連絡いただけたらと思います。
 そして、指名された先生におかれましては、御自身でミュートの解除、マイクをオンの状態にしていただけたらと思います。そして、御発言の際には、最初にお名前をおっしゃっていただき、ゆっくりはっきりと聞き取りやすいよう御発言いただけたら幸いでございます。そして、御発言が終了した後には、先生御自身で手のアイコンを非表示、そしてミュート、マイクオフの状態に戻していただけたらと思います。
 また、個々のパソコンにおきましてトラブルが発生する場合もあろうかと思いますけれども、その際には、電話にて事務局まで御連絡いただけたらと思います。
 事務局からは以上でございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 本日の傍聴登録はありますでしょうか。
【大鷲参事官補佐】  度々恐縮でございます。
 本日の傍聴登録は192名となってございます。報道関係者の方からも御登録があるところでございます。
 なお、本日は録音・録画が入りますので、その点御承知おきいただけたらと思います。
 事務局からは以上でございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 それでは、審議に入りたいと思いますが、その前に、前回御報告いただいた人材の問題について、簡単にまとめをさせていただきたいと思います。前回もこのようなまとめをいたしましたが、長過ぎて不評でございましたので、今日は短くまとめたいと思います。
 東北学院大学の佐藤義則委員からは、まず、日本の大学図書館員の状況について、マクロな視点でレビューをいただきました。日本では専任職員数は減少している一方で、業務委託の増加が目立つこと、また、かつては大学図書館職員のコアコンピタンスの中心として挙げられていた目録関連の業務は、少なくとも人数の面では、もはや大学図書館の専門性を意味するものではなくなってきているということが示されました。
 次に、米国における研究大学の図書館の状況について、専門職が増加していること、データやデジタル技術の適用に関連した新しい役割に関する求人が増加していること、デジタルサービス、電子情報資源、アーカイビング、キュレーションといった職能が独立して求められているということも示されました。また、これらの人材の供給元は依然として、多くはMLIS(図書館情報学専門職学位)を出している大学院であり、これらのMLISを提供する教育機関がその教育内容を適切に変えることで求められる人材を育成してきたと述べられました。
 まとめとして、我が国においては、環境の変化に応じて、電子図書館、電子ジャーナル、オープンアクセス、研究データへの対応など、政策的な面での課題の整理等対応は進められてきたものの、政策を実行するための人材については非常に心もとない状況にあるとの見解が示され、求められる人材の定義、今後どのように採用あるいは養成していくかという点について集合的に対処していく必要があること、人材を養成する機関についても、変化の呼び水となるような政策的支援の一環としてのプロジェクトを設定して、変化を促していく必要があるといったようなことが提言されました。
 続いて、九州大学の石田栄美委員からは、日本における情報専門職の育成の事例の1つとして、九州大学大学院統合新領域学府ライブラリーサイエンス専攻における人材育成について御紹介をいただきました。この専攻は個々の情報サービス機関の事情ではなく、ユーザーにとって真に意義のある情報の管理・提供を実現する情報専門職の養成を、図書館情報学、記録管理学、アーカイブズ学、情報科学という3つの分野を柱として行うものとなっています。
 情報専門職を育成する教育には、大学図書館員の養成も含まれており、図書館職員が講師として参画し、最先端のサービスやスキル・知識を講義してもらう等、図書館職員の方々に専門的な知識や技能を伝えていくというような連携がなされていること、九州大学では、専攻が設置された当時に、勤務時間の調整や他大学との人事交流などの制度を利用して、現職の図書館職員も学生として修学できるようになっていることなど、リカレント教育も行われてきたことが示されました。
 新たな課題である研究データ管理については、デジタルトランスフォーメーションの推進とも関わるものとして、九州大学ではデータ駆動イノベーション推進本部が2022年4月に設置されたこと、その中に、大学としてデータガバナンスに基づいたデータマネジメントをしていくために、研究データ管理支援部門が設置されることを踏まえ、ライブラリーサイエンス専攻は、この部門と連携しながら研究データ管理に係る人材育成を行う考えがあるとも明言されました。
 このように人材をめぐる新しい動き、あるいは、これまでの動向というのを踏まえて、様々な御説明をいただいたというところでございます。それに基づきまして非常に活発な御議論をいただきました。
 それでは、本日は、図書館の新たな連携ということで、まず、早稲田大学図書館、長谷川敦史情報管理課、兼、戸山図書館担当課長より、早稲田大学図書館と慶應義塾大学図書館のシステム共同運用の事例について、続いて、東海国立大学機構岐阜大学の大藪千穂委員より、東海国立大学機構における大学図書館の連携についてそれぞれ御発表いただき、今後求められる大学図書館間の連携という観点で議論を進めていきたいと思います。
 それでは、早稲田大学の長谷川課長、よろしくお願いいたします。
【長谷川課長】  今御紹介にあずかりました早稲田大学図書館情報管理課長、兼、戸山図書館担当課長の長谷川です。本日は、発表の機会を賜りましてありがとうございます。
 私のほうからは、早稲田大学と慶應義塾大学の図書館システム共同運用の事例を通じて、図書館間の大学を越えた連携について発表させていただきます。
 資料の冒頭に、早稲田大学と慶應義塾大学、及び、それぞれの図書館の紹介を、掲載しております。こちらは参考まで、やや細かく掲載しておりますが、御参照いただければと思いますが、8ページのところに両校の図書館を比較した統計を掲載しています。大学の規模ですとか伝統といったものに類似がありますが、それだけではなくて、図書館においても、蔵書数あるいは電子資料数、利用者数などが同じ規模であるということが比較で御理解いただけるかと思います。
 本日は、2大学による連携の事例として、図書館システムの共同運用を紹介するということですが、早慶が図書館システムの共同運用を開始したのは2019年からになります。ここに挙げておりますとおり、目指したものは大きく2つありまして、1つは図書館利用者の利便性向上、もう一点はシステム運用のコスト削減というところです。
 具体的に採用しているシステムですが、EX Libris社という会社の図書館業務システムAlma、それから、同社の検索インターフェースのPrimo VEという2つのシステムになります。
 Almaの特徴的なところとして、機関ごとの運用領域とは別にコンソーシアム共同の運用領域を持つことができ、この領域を使って2つ以上の機関が様々なデータ共有ができます。早慶でもこの機能を利用して、早稲田大学独自の領域、慶應義塾大学独自の領域と別に、共同の領域を使い分けながらシステム共同運用を行っています。
 具体的にどういった共同運用をしているかという前に、この共同運用に至る背景を少しまとめております。大きくこのスライドでは3点挙げておりますけれども、システム共同利用以前からの相互利用の実績があったというのが赤い部分です。それから、データの形式ですとか大学規模に共通点があったことや、それぞれが抱えていた課題というものが共通していた。この3点が挙げられるかと思います。
 次のスライドから、その辺りを少し詳しく書いているのですが、最も大きな要素と言えるのが、この1点目の、相互利用の実績という部分です。早慶の図書館では、先ほど申し上げた2019年のシステム共同利用よりはるか以前である1986年から協定を交わしておりまして、お互いの大学の構成員が図書館の相互利用をできるように便宜を図っていたという状況がありました。
 この協定では、お互いの大学の構成員は身分証を提出することでそれぞれの図書館を利用することが可能でしたし、また、専任教員に関しては貸出しも可能でした。また、ILLや複写サービスの面でも便宜を図っていたというところがあります。共通点や課題については、少し細かくスライドに載せておりますので、御参照いただければと思います。
 実際に、こういった3つの背景をもとに、2015年度頃からシステム共同運用の検討が開始されましたが、大きな転機になったのは、2017年に正式に覚書を締結したというところです。これによってシステム提案依頼書(RFP)作成、システム選定というフェーズに入りまして、ここからシステム移行のプロジェクトチームを早稲田大学、慶應義塾大学の図書館同士で組むということになりました。
 これは実に1年6か月にわたるプロジェクトになりまして、ここにいろいろ細かくは書いてありますが、この長い期間の中で、AlmaあるいはPrimo VEの導入自体が国内で初めてということで、早慶で緊密に連携を行いまして、日本語対応を含む多くの課題に取り組んできました。
 先ほど説明しましたとおり、Almaでは、共同運用する部分と独自運用する部分というのが、システムの中で自由に制御可能となっております。早慶ではこれらの機能をうまく活用しまして、両校合わせて1,070万冊の蔵書の相互利用を促進する体制を確立する、そして、それとともに共同運用によるコスト削減を行う、というところに取り組みました。
 具体的に共同運用している部分、共同の領域で対応している部分という事例の1つが、スライドにある書誌の共同調達と共同運用というところです。現在も早稲田大学と慶應義塾大学では、共同で書誌を作成して、Almaの共同運用領域に登録して運用をしています。
 例えば、早稲田大学で資料を購入したり寄贈を受けたりして受入れをした資料は、日々100冊から200冊程度トラックに乗せられて、目録ユニットという早慶共同の場所に送られまして、目録作成が行われます。システム上も共同領域を持っていますので、そのまますぐに早稲田の運用領域で利用可能になるというような形になります。しかも、業務システムだけでなく、利用者が使う検索システムのほうでも、この結果、書誌の相互検索が可能となるという形になっています。
 こちらの画面が利用者のインターフェースから見た部分ですけれども、早稲田の画面のほうから1冊の本を検索した結果です。自分の機関である早稲田大学の所蔵情報が上に表示されておりますが、そのすぐ下に慶應義塾大学の所蔵が表示されているということが分かります。
 ここで、先ほど申し上げた、1986年の協定に基づく図書館利用が既に可能となっていたというところが大きな基盤になってきます。2019年に導入したシステムが、今御紹介したように、早慶1,070万冊のワンストップの検索を実現したわけですが、もともと資料が利用できる協定の基盤があったところに、システムが追いついたことで仮想的な1つの図書館のように相互利用の促進に結実したということになります。
 これが2019年に導入されまして、どのくらい成果が出たかというところですけれども、少し確認をしてみましたところ、例えば、早稲田大学の図書館へ慶應義塾大学の学生さんが入館するという数については、2018年と2019年を比較すると倍増していますけれども、早稲田大学が2019年にラーニングコモンズを設置するリニューアル工事がありまして、少しこういった要因による入館者の増加という影響もあるかもしれないというところと、その後追うべきところが、御存じのとおり休館ですとか入館制限に見舞われる、そういった情勢になりましたので、ここまでしか追えていないというところですが、ILLの複写物を見ますと、早稲田大学から慶應義塾大学への提供数は約1.6倍に増えております。コロナ禍の慶應側の研究者にとって、Primo VEというところで発見しやすくなったことも相まっての数字ではないかと推測しています。
 また、電子資料への 学外アクセスの数なども1.6倍になっていますので、やはりこのPrimo VEによる電子資料発見性向上というところと、コロナ禍による電子資料の需要の増加というところが相まったかと考えております。
 ワンストップで、大学間の垣根を越えた蔵書の可視化を行うというのは、早慶でAlmaを導入する以前から世界のコンソーシアムの事例がありまして、参照していました。例えば、香港の大学コンソーシアム(JULAC)では、ここにありますとおり、2016年にAlmaを採用しまして、それに伴ってJULAC全体の統合検索窓口、サイトを設けていて、そこで検索できたり、先ほど早慶の事例で見たように、各機関でも検索できたりというような形が実現しています。
 ここまで、書誌の共同運用ですとか蔵書の相互検索の事例の御紹介でしたけれども、もう一つ早慶が直面していた課題としては、増加する電子資料への対応ということがありました。スライドは日本国内の事例ですけれども、電子資料の割合が大幅に増加しているということが分かります。
 こちらは慶應さんの事例ですが、やはり電子資料費の割合が大幅に増加しているというところでして、このような中で導入したAlmaとPrimo VEというシステムは、紙と電子のワンストップの管理と提供が可能になるというもので、早慶でも共通の課題であったシステムの分散が一本化されて、このような環境が整いました。
 この、ワンストップで発見できるという環境という意味では、蔵書だけでなくて、論文記事単位のメタデータというところもありまして、いわゆるディスカバリー・インデックスということになりますけれども、日本の論文記事の情報に関しては国立国会図書館のAPIのメタデータを利用しているので、これをPrimo VEにうまく適用するという部分については、EX Libris社と一緒に早慶でかなり緊密に連携をしまして、かなりの労力をかけて調整をしたというところです。
 ここまで利用者の利便性向上のお話をしてきましたが、コスト削減という部分については、もちろんオンプレミスのものがクラウド化されるですとか、途中で挙げたようなシステムの一元化ということもありましたが、あとは、早慶の図書館員が共同して対応する体制自体が、結果的なコストの削減につながった部分もあります。
 また、実際の額の面でも、早稲田ではシステム経費が約3割程度削減されたというようなことがありましたが、実は、資料の整理に関わる委託費についても、早稲田では以前より3割程度削減されているという状況があります。実際に早慶から目録ユニットという場所に送付して目録を作ると、半分程度あるいは半分以上は、新規書誌の作成ではなくて既存書誌の点検で済んでいるというような状況がありまして、こういったところから見ても、コストの削減が図られているということがあります。
 改めて今回導入したシステムを見てみますと、機能とデータの2つの面からシステム上のメリットがあったと言えます。これはAlmaの世界的なスケールメリットのようなところがありまして、世界の学術機関で利用されているため、世界の学術機関の図書館等のユーザーの意見が反映されて機能が向上されていくというところがあり、それと同時に、データも自動で共通領域に追加されていくというようなところがあります。
 そのようなシステム面を見たときに、これをうまく活用していく、そして、サービスを拡大していくということを考えると、運用する側の人的なネットワークが重要になってくるということが言えます。例えば、早慶では、コロナ禍をこのシステム導入の後に迎えましたけれども、教員が来館せずに貸出券を申請して、資料をじかに取り寄せて貸出しができるように、これは運用面で変更をしました。
 このような運用変更自体は、システムが変わったからというわけではないですが、ただ、結果的にはシステムが変わったからというところがあって、それはシステムの共同運用を通じて早慶間でより緊密な人的なネットワークが構築されたというところがあるかと思います。システムのコンソーシアム運用は、早慶での定例会議の開催につながっていますが、この会議の中で様々な情報共有ですとか取り組み、これは今も継続的に実施されています。
 幾つか今後の展望を挙げていますけれども、例えば、2点目には、早慶コンソーシアムで和書学術書の電子化推進、と書いてありますけれども、これは現在、具体的に早慶で取り組んでいるところです。詳細が間もなく、恐らくプレスリリースが出るので、それまでは細かくはお話できませんが、ただ、日本の和書学術書の電子化の問題について、書店と協働しながら 幾つかの出版社と協議をしているようなところでして、このような協議に踏み込むことができるということ自体が、2大学の電子資料購入のスケールメリットがあったという部分が大きいと考えています。
 また、システムによって現在書誌、所蔵を共有するという状況が生まれたわけですけれども、将来的に見ればShared Printの可能性も視野に入れた相互利用拡大の基盤がつくられたと言えると思います。
 ここまで、早慶の事例としてシステムのお話をしてきましたけれども、あくまでシステムは当然基盤にすぎませんので、早慶ともに最新のシステム基盤は注視しつつ、取り入れつつ、1986年以来の共同体制と早慶のスケールメリットを生かした1つの図書館としての学生・教職員に対するサービスの向上を目指していきたいと考えております。
 私からは以上です。御清聴ありがとうございました。
【竹内主査】  長谷川課長、どうもありがとうございました。
 大変興味深い試みについて詳細にお話をいただき、また、先の楽しみな取組が既にされているということも御報告をいただきました。
 ただいまの長谷川課長の発表に対する御質問、あるいは、大学間での図書館の連携ということに関して御意見、御質問等ありましたら、御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。石田委員、よろしくお願いいたします。
【石田委員】  九州大学の石田です。御発表ありがとうございました。
 非常に、かなり難しいチャレンジだったのではないかなというふうに思うんですが、もし差し支えなければ、今非常にメリットがあるということは分かったんですけれども、反対にもし大変なところであったり、困難だった、同じことですが、難しいところがあったというようなことがありましたら、もちろん差し支えない範囲で結構なんですけれども、教えていただくことはできますでしょうか。
【長谷川課長】  御質問ありがとうございます。システムが新しくなる、しかも、かなりドラスチックに新しい部分がありました。例えば、電子の管理のところもそうですけれども、コンソーシアム運用の基盤が前提とされているようなシステムだったり、というところです。それに伴って、図書館内のワークフローの変更が発生しました。しかも、これが早慶なるべく同じようなワークフローにしたい。同じシステムで同じような動きをしたいと。そこが、図書館というような場所で長年やっているようなお仕事を変えていくというところが、非常に労力の要ったところだったと思います。
 その中で改めて、図書館の職員がワークフローを理解しているのか、そして、現場も、もちろん委託等している部分もありますので、改めてここまで踏み込んで見直していくというところがありまして、これは早慶ともに非常に苦労した部分だと思います。1つはそういったところですかね。
【石田委員】  ありがとうございました。大変参考になります。
【竹内主査】  次に、尾上委員、お願いできますでしょうか。
【尾上委員】  尾上でございます。ありがとうございます。非常に大変な試みをされて、それが成果として結実するというのがすばらしいと思っています。
 15ページ目に共同運用に至る道筋というところで、2年度にわたっていろいろな検討を重ねてこられたというところだと思うんですが、ここで検討されていたのは、基本的にはシステム共同利用をどういうふうにやっていくか、あるいは、共同運用をどういうふうにやっていくかというところなのかなと思っているんですが、後ろのほうに、これで得たことというか学んだことというのを幾つも書いていただいて、これは非常に波及効果、要するに、システムが一緒に運用できて、相互利用ができるだけじゃなくて、さらに発展的になって、実はそれぞれの図書館が変わったというようなことがあるのかなと思っているんですが、もしそういうオペレーションであるとか、あるいは意識も含めてだと思うんですけれども、これをやった効果で早慶のそれぞれの図書館がどう変わったかというところのもし何か重要なものがありましたら、教えていただければと思います。
【長谷川課長】  ありがとうございます。おっしゃるとおり、先ほどの話と少し絡むんですけれども、業務の具体的な部分、細かく検討してワークフローを見直すというところがありました。
 少し具体的に申し上げると、例えば、閲覧のチームですとか、目録のチームですとか、ディスカバリーのチームですとかそういった形でチームを組んで、そこで早慶それぞれ人を出し合って検討していったというようなところがあります。特に変わったのは、利用者の目線まで含めと言うと、電子資料の扱いだと思います。
 途中に出てきましたけれども、例えば、電子ジャーナルのAtoZリストのようなものを以前は利用者にも使っていただいておりましたけれども、それがディスカバリーに一本化されましたし、例えば、ライセンスの情報の管理ですとか、そういったところも、もともと内包されているシステムでしたので、別のシステムを使っていたところが、そこに入ってくるようになったと。
 これが管理面でまずそういうふうにドラスチックに変わっていったので、もちろん、すぐにそれがディスカバリーシステムで検索できるようなったという利用者のメリットもあるんですけれども、恐らく、今後のことを考えたときに、電子資料の管理を紙と同じシステムでやっているということが、意識の面でもそうですし、データをシステムでいろいろ整理していくという作業をやるときに、具体的に電子と紙というのをある意味で同じ目線で、図書館資料として見ていくというようなところが、効果としては大きいかなと私は考えております。
【尾上委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  深澤委員、お願いできますでしょうか。深澤委員は御質問ではなくて補足の発言ということかと思いますが、よろしくお願いします。
【深澤委員】  ありがとうございます。まさにそのとおりでございます。図書館という組織はなかなか動かない組織で、図書館の変革をしようとしても、変革が難しいという特質があります。単に新しいシステムを入れるから変えようと言っても、うまくいかない組織だと実は思っております。それが今回、慶應と一緒に変革をすることになりました。「黒船」と私は呼んでいたのですが、要は、外圧がかかることによって、その変革を推進することができるというのが大きかったのじゃないのかなと思っております。
 それから、1つ前に御質問がありました、できなかったこと、つらかったことは何かについてです。できなかったことは明らかでして、電子ジャーナルの問題が解決できておりません。具体的に何ができてないかというと、出版社が「早慶バーチャル大学」として契約していただければ、マスメリットが生じると思っていますが、そこが現在できておりません。以前と同じように、早稲田は早稲田で契約し、慶應は慶應で契約しというところが、現時点でのできていないことの中で一番大きいことかなと思っております。
 以上でございます。御質問ありがとうございます。
【竹内主査】  大変興味深い補足をいただきまして、ありがとうございました。ほかにも手が挙がっておりますので、順番に御発言をお願いしたいと思います。堀田委員、お願いできますでしょうか。
【堀田委員】  都立大、堀田です。興味深い話どうもありがとうございました。ここまでできるというのは、なかなかすごいなと思っておりました。
 お聞きしたかったことは、直前に今お答えいただきましたけれども、電子ジャーナルのことでした。電子ジャーナルについても合併、つまり、共通しているタイトルについてはもう一本化できたのか、あるいは、お互いだけが持っているものはお互いが相互に見られるようにできたのかとか、電子ジャーナルについても統合が果たしてできたのかというところをお聞きしたかったんですけれども、既にそこはできなかったこととして残ったということでした。
 こちらは出版社との交渉で、なかなか出版社側がうんと言わなかったというか、そこの交渉がかなりハードだったということになるんでしょうか。差し支えのない範囲で教えていただければと思います。
【長谷川課長】  電子資料は紙よりも機関の垣根を越えて利用がしやすい資料だとは思います。ただ、ジャーナルのところまでは、深澤先生から御指摘がありましたように、踏み込んでおりませんで、先ほどちょっと申し上げたのが、電子書籍のほうについては踏み込みやすいのではないかということで、これは国内の話として、具体的に早慶のコンソーシアムで少し電子化等契約交渉をしているというところです。
 ジャーナルについては、具体的な動き、私のほうから申し上げられるところは、申し訳ありません、ございませんので、深澤先生がおっしゃったとおりだと思います。
【堀田委員】  承知しました。ありがとうございます。
【竹内主査】  では次に、坂井委員、お願いできますでしょうか。
【坂井委員】  東大の坂井です。今日は、本当にためになる話をありがとうございます。
 私もこの17ページの共同運用システムで実現したことについて質問いたしたく。システム運用コストが30%削減されたといのこと。これは具体的にはどの辺りによるお話なのですか。このAlmaとPrimo VEの導入によってできたことですか。それとも、別なシナジー効果によるんでしょうか。教えていただければと思います。
【長谷川課長】  御質問ありがとうございます。システムだけに関して言うと、これは完全なクラウド移行というところが1つは大きくて、もう一つは、特に電子の管理のところ、分散していたものが一本化されたという部分です。ですので、オンプレミス時代のサーバーの経費ですとか、それから、特にサーバーで運用するときの運用コスト、これがかなりの額が実はかかっていたので、ここが大幅に削減されてシステムの経費の削減につながりました。
 シナジー効果という意味で言えば、目録の共同作成によってコスト削減に至っているというところが挙げられます。
【坂井委員】  ありがとうございます。それで、初期コストといいますか、統合のときの最初の年のコストがかかっているのかなと思うんですけれども、その辺りはどんな感じなんですか。差し支えない範囲で結構ですので。
【長谷川課長】  おっしゃるとおり、初年度から2年度分ぐらいかけて、移行のコストがかかります。移行経費というのも取られるということなんですが、これはもちろん導入時に試算をしておりまして、おおよそ4年程度かけて回収できるという試算になりました。実際に3年ぐらいですかね、早稲田のほうで言うと、その部分は回収できていますので、そのぐらい経費が削減されたというところです。
【坂井委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。では、佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】  東北学院大学の佐藤と申します。大変興味深いお話をいただきまして、ありがとうございます。
 2点教えていただきたいんですが、先ほどの坂井先生の御質問と関連するんですが、26ページのスライドのところで、システム経費ではなくて書誌作成経費が約3割減というところに関して、従来は早稲田さんはOCLCのシステムを使われていたと思うのですが、例えばOCLCの使い方が変わったとか、具体的にどのような変化があったか、どのようなことで3割減が達成できたのかということを教えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 それから、もう一点については、非常に単純な話なんですが、早稲田と慶應だけのコンソーシアムからもう少しメンバーを増やせば、スケールメリットが単純に考えれば期待できそうに思えるんですが、この辺の今後の拡張戦略等がございましたら、御紹介いただければありがたいと思った次第です。可能な範囲で結構ですので、お答えいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
【長谷川課長】  ありがとうございます。1点目についてですけれども、具体的に申し上げると、OCLCとの兼ね合いではございません。OCLCのデータは参照MARCとして現在も活用しております。早慶で書誌をつくっていくと、特に新刊書については重複部分が出るというところが大きいかと思います。ですので、例えば、早稲田で購入した図書の書誌をつくろうとすると、既に慶應が購入していたので書誌がつくられていた。そうすると、書誌点検のみで済む。書誌点検も経費はかかりますが、新規書誌作成より安い。こういったところで具体的に委託経費が削減されるという結果につながるということでございます。
 2点目、メンバーを増やすかという部分なんですが、これは様々な意味で、途中でAlmaのシステムの特徴を申し上げましたけれども、例えば、共同の運用領域があるとして、そこで何を共有してもよい、あるいは、何を共有しなくてもよいというところがあるので、例えば、早慶で言うと、書誌は完全に共有領域に置いて使っていますけれども、ほかの領域を使って何かということがあれば、そういった形でメンバーを増やすということも考えられるとは思います。ただ、具体的に現在話があったりするわけではないということです。
 お答えになっているか分かりませんが、以上です。
【佐藤委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  それでは、加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】  お茶の水女子大学の加藤でございます。大変意欲的な共同運用の事例を御紹介いただきまして、誠にありがとうございます。
 私の質問はちょっと視点が違いますが、このような取組で利用者にとって一番好評だったことというのは、どのようなものなのでしょうか。この点について教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【長谷川課長】  1つは、途中で御紹介した話で言うと、コロナ禍において、早慶はもともと相互の図書館利用の利用券のようなものは発行できたんですけれども、これを割りとスムーズに、じゃあ、来館しなくても発行できるようにしましょうという話がまとまったのは、単純なこととして、このシステムがあるからというよりも、システム共同運用の早慶の体制があったので、その体制下の話としてすっと話ができたというところがあります。ですから、早慶の相互利用というのは、まさに利用者にとっては、少しこのシステムに乗っかった形でメリットが出てきている部分かと思います。
 もう一つは、ディスカバリーシステムとOPACがもう統合されているというところがあって、これが潜在的に、こういった電子ジャーナルが読めるのかとか、これは電子で見られるのか、という部分をかなり吸収しているので、利用者の中で好評であった部分、具体的に好評であった部分の中にそういった声もあったのは事実です。早稲田のWINEで引けば、電子のほうも発見できるし、紙のほうも発見できるというような形で、先生が教えていたりとか、SNSに流れていたりとか、そういうものはありました。その辺はやはり大きな効果だったかなと考えております。
 特に電子については、直後にコロナがありましたので、具体的にそこはいや応なくメリットといいますか、そのようなところに突入したというお話かと思います。
【加藤委員】  どうもありがとうございました。よく分かりました。以上でございます。
【竹内主査】  ありがとうございます。
 深澤委員から、御意見をチャットの形でいただいておりますけれども、御覧になれない方もいらっしゃるかと思いますので、ちょっと御紹介いたします。「早慶で毎年購入する書籍の約半分は早慶双方で購入していますので、この部分の書誌作成経費が半分になります。これだけでも25%の経費削減につながる」ということでございました。
 先ほど長谷川課長からの御説明がございましたように、スライド18ページですが、早慶が共同で書誌作成を早慶目録ユニットに委託をしているということで、目録作業自体が一元化されているということも、恐らくこの効果に大きくつながっているのではないかというふうに思います。
 深澤委員、補足のメッセージありがとうございました。
 それでは、引原委員、お願いいたします。
【引原委員】  ありがとうございます。非常に意欲的な取組というのは、前から関心を持っていたんですけれども、よく分かりました。
 それで、お聞きしたいのが、この取組自身が図書館主体でやられているようにお話があるんですけれども、それだけでは多分なかなか難しいと考えます。だから、学内の情報系の先生方、深澤先生はまさにそうだと思いますが、そういうセンターとか、あるいは関連の部局とか、そういう組織化というのはなされたのかどうかというのが1点。
 それから、今、書籍、本とかそういうジャーナル系の電子媒体というものが多いと思うんですけれども、これを画像等に広げていかれるような話とかはあるんでしょうかという、その2点お伺いできればと思います。よろしくお願いします。
【長谷川課長】  御質問ありがとうございます。学内の部署、組織化という意味では、慶應さんもそうだと思うのですが、図書館主体で動いたというのは図書館主体で動きました。ですので、まず、例えば、早稲田で言えば、図書館といっても部局が運営している図書室もございますので、図書館がつくっているそういった連携の会議体から話をしていって、最終的には、主管箇所である教務部ですとか、当然、最終的に大学理事会の決定まで行きますので、教務部だけでなく関連箇所に丁寧に出向いて話をしていったというのが実際のところです。その中で、あくまで主体は図書館であったというのはあると思います。
 2点目ですけれども、ビデオというお話がありましたが、本、ジャーナル以外ですよね。これについては幾つかやり方がありまして、Almaという図書館の業務システムと、Primo VEという検索システムがあります。Primo VEのほうは、外部からのエクスターナルなデータソースを扱えます。例えば、リポジトリはディスカバリーでIRDBを引くこともできるのですが、早稲田のリポジトリに関しては、早稲田のPrimo VEにOAIでハーベストしています。図書館としてAV資料はもちろんもともと入っていますが、例えば、図書館が現在想定してないものをもし扱いたいとなったら、システム的には可能であろうということが言えます。
【引原委員】  ありがとうございました。後半で言っていただいたことが一番気になっていまして、要するに、拡張性というのがそういうところで確保できるということで、分かりました。ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。
 もしもないようでしたら、次の大藪委員の発表に移らせていただきまして、またその後、長谷川課長からの御報告に関する御質問もあればお受けする形にしたいと思います。長谷川課長、どうもありがとうございました。
【長谷川課長】  ありがとうございました。
【竹内主査】  それでは、続きまして、岐阜大学の大藪委員より御報告をお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【大藪委員】  岐阜大学の図書館長をしております大藪と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 「初めての機構統合した大学の図書館の取組について」ということで、岐阜大学と名古屋大学が1つになったということで、岐阜大学の私が委員ということで、両方の内容のことを今日はお話ししたいと思っております。
 本日の内容はこの5つということです。まず、東海国立大学機構ってなかなか私も言い慣れていなくて、いつも岐阜大学と言ってしまうんですけれども、これが正式名称で、その中に岐阜大学があるというものなんです。
 まず、概要ですけれども、2020年なので2年半ぐらい前に、東海地域の2つの国立大学法人が東海国立大学機構となったということです。先ほどの早稲田大学と慶應大学の方との一番の違いは、早慶さんは大きな、非常に規模が近い私立大学が2つ。図書館のほうから、図書館で1つになったというのがあると思うんです。特徴として。
 岐阜大学と名古屋大学は、まず、大学が機構として、大学が1つにはなってないんですけれども、東海国立大学というところに名古屋大学と岐阜大学というのが独自に2つ入っているんですが、そこの流れから全てのものが1つになる、1つに統合していくという流れの中に図書館も入っているというのが一番大きな違いだと思います。もう一つは、名古屋大学と岐阜大学はかなり規模が違うということです。なので、早慶さんのように同じような規模の私立大学が一緒になるというのとはかなりイメージが違って、どちらかと言ったら、1対3ぐらいの感じで名古屋大学のほうが全ての面で大きいというところが一番の大きな違いかなということは、今、長谷川さんの話を聞いて思ったところでございます。
 皆さんあんまり、名古屋は分かられると思うんですが、岐阜ってどこという感じだと思うんですけれども、岐阜と名古屋の距離感というのは、移動では結構近くて、JRの岐阜からJRの名古屋は快速で19分なので、東京の方からすると、地下鉄でどこか東京の都内の中を動くのと同じぐらいの近さだと思います。
 ただ、岐阜大学はそこからバスで30分間延々と行かないといけないので、下を見ていただきますと、田園の地域の中の真ん中にあるというのが岐阜大学です。名古屋大学に関しましては、写真を見ていただいたら分かりますように、都会というか都市の中にあるということで、名古屋駅からは大体地下鉄で17分ぐらい。なので、岐阜大学と名古屋大学間は1時間半から1時間50分ぐらいで行けるので、ちょっと遠いけれどそれほどでもないという感じぐらいの距離感となっています。
 大学自体は同じようにして始まり、2020年に、日本初の国立大学の機構統合ということで東海国立大学機構が発足したということになっています。資料のほうには、これは報告用の資料で写真が入っています。機構長というもともとの名古屋大学で総長をしていらっしゃった松尾先生が機構長になられて、それで、それぞれのところに大学に学長と総長と、名前は違いますけれども、今、吉田先生と杉山先生がいらっしゃいます。岐阜大学は、副学長が私を含めて5人で病院長がいるという、この6人、7人体制でやっていることと、名古屋大学は9人いらっしゃるということです。なので、この辺の規模感も違うことが分かると思います。
 大学の概要を見ていただきましても、学部生でも大体2倍ぐらいです。教員に関しましては、大体これも2倍ぐらいですね。職員も。岐阜は土地がたくさんあるので、名古屋大学の3.8倍ぐらいの土地を持っていますけれども、建物に関しては名古屋大学のほうが多いということで、かなり規模感が違うということです。
 これは左側が岐阜大学の図書館で、アーカイブ・コアという博物館みたいなのが入っています。右側が名古屋大学の図書館で、高木家の文書資料館というのも持っています。
 今は大学の話だったんですけれども、2つ目に、これは図書館の歴史ということで、図書館、2020年から図書館も合わせていこうということになっています。だから、事務の分野だとか学生のメールアドレス等々も含めて、まだ変わっていませんけれども、来年度に全部動き出すということで、3年間ぐらいかかっておりますが、その中の1つの図書館だということを知っていただきたいと思います。
 図書館の蔵書の規模もかなり違いまして、冊数も名古屋大学が3.6倍ぐらいですかね。電子ジャーナルも2.4倍ぐらいありますし、ここの赤で書きましたけれども、今日は名大さんも入っていらっしゃると思いますが、金額もかなり違って、5倍ぐらい。岐阜大学が5分の1ぐらいということでしょうか。体制も、職員数も5倍ぐらい名大のほうが大きいという形になっています。なので、かなり規模感の違う国立大学が一緒になったというのが特徴と思っております。
 今年ぐらいから組織を変えてきていて、一番上に機構というのがあって、機構の中にも図書館情報部というのがある。ここのオレンジで色を塗ってあるところが兼任ということなんですけれども、その下に、岐阜大学と名古屋大学がそれぞれに事務というか教務、教学の部分を持っていて、運営とそれから教学の部分が分かれていて、そして、岐阜大学のほうは、岐阜大学の図書館というのが学術情報課というところにありますし、名古屋大学のほうは、附属図書館事務部というところにあるという形で、形がまだ整っていないというか、違う形になっています。でも、大分これでも整ってきたほうなんです。
 それでは、図書館の機構連携でどういうことが起こったかということについてお話ししたいんですけれども、一番最初に「グランドデザイン2021」というのを策定したということです。私は去年から副学長なので、あまりその前の段階というのはよく分からないこともあります。
 その中で、2021年で機構として何ができるかということを図書館の職員がアイデアを出し合ってつくったということになっております。デジタルの進展によって情報があふれる世界において、人と情報を結ぶ図書館の役割が重要になるということで、この下のところに学習教育支援、学びのパートナーになるということだとか、教育支援、オープンサイエンスの推進ですよね。アーカイブ・コア、デジタル化ということと、それから社会貢献。これは先ほどお見せしていた、大学の中では非常に珍しく、図書館の中にちっちゃな、博物館みたいなのがあったりとか、それから、図書館運営ということを考えたということになります。
 その中で一番最初にやり出したことは、両大学の図書館の職員によってテーマごとにプロジェクトチームをつくったということです。2021年度の初年は、去年ですけれども、6チームで延べ27人でスタートして、6つに関して、学術情報リテラシー、オープンサイエンス――今言っていた内容ですよね。そこについてチームをつくったということです。
 メンバーとしては、管理職以外の職員で自主的に動くようにということだとか、プロジェクトチームをつくって、その下にタスクによってはサブチームをつくったりとか。かなり定期的な、今コロナということもあるし、もちろん距離的には結構遠いですよね。2時間かけて行ったら1日終わってしまうようなところもありますので、そういったときにオンライン会議ができたというのは結構大きくて、チャットとかいろいろなところで意見交換をやっている。毎日のように他大学の職員とコミュニケーションを交わすことができているということは、結構メリットかなとは思います。それを年3回ほど、私と佐久間館長と両館長ミーティングというので、定期的にいろいろなこんなことやっていますよと報告し合って、意見交換をしています。
 連携の成果です。4番目。何が起こったのか。まだ2年ぐらいしかたっていませんけれども、成果としては、先ほどの話もありましたが、機構所属者へのサービスの共通化。学生、教職員に対して、閲覧とか貸出しだとかそういったものが学内者料金で適用されるということです。
 そして、名古屋大学主催のオンライン講習会ですね。これはメリットとしては、講習会もオンラインなので、岐阜大学の学生にも開放して、両方ともが見ることができた、参加できるということが大きいかなと思います。
 ここのところが言ってはいけないことがいっぱいあるんですけれども、スケールメリットの、先ほど話がありましたけれども、電子関係ですよね。のところの契約交渉が1つの大学としてできたということで、できたこととできてないことがあるけれども、ここはスケールメリットがあったということは言えるかなと思います。
 あとは、オープンサイエンス、それぞれのプロジェクトチームに関してですけれども、ただ、後でちょっと説明させてもらいますけれども、このプロジェクトチームをつくったときの課題が、どちらかといったら名大さんの――名大というのは、こちらでは名古屋大学のことを言うんですけれども。明治大学じゃなくて。名大さんが課題に思っているようなことを話し合ったということもあって、今回の1年目に関しては、名古屋大学としてはこんなことができたよということが多く、岐阜大学はそれに必死でついていくという形になっています。研究データ公開支援の広報サイトをつくって公開したりとか、データの管理実証実験の協力とデータ公開フロー、それとかデジタルアーカイブとか。これも全部名大と書いてありますけれども。
 2つ目の学術情報リテラシープロジェクトに関しても、教員と連携した学術情報リテラシー教育を推進しようということだったんですけれども、これは次年度の講習会の新カリキュラム、これも名大さんですね。専門教育対応の講習会だとか、情報リテラシーに関する研修といったものです。赤で書いてあるのが岐阜大学が参加できて、これはよかったという点なんですけれども、名古屋大学さんの先ほど言っていたオンライン講習会に、岐阜大学の学生さんが提供してもらって、それが増えた。
 それから、3番目、図書館の広報プロジェクトチームということなんですけれども、これは名大さんがツイッターとかフェイスブックとかでかなり紹介しているので、そのうちまた岐阜大学も教えてもらいたいな、やろうかなと思っているところです。それとか、機構としての体制と図書館としての体制の連携ですね。その強化ができたとかいうことがあります。
 図書館DXのプロジェクトということもあって、今はまだ進んでいる最中ということで、出来上がっている早慶さんとは随分違うんですけれども、両大学のというか、大学自体を機構としてDXも含めて1つにしていかなくてはいけない今はまだ過程で、来年から学生の情報、勉強学習システムも機構のものになったりということなんですが、まだ今、岐阜大学は岐阜大学の独自のものを使っていて、名古屋大学は名古屋大学の独自のものを使っているという状況なので、その中で、図書館の業務もこれからシステム統合していこうというところなので、まだシステム統合はされていない状況です。それから、チャットボットとかいうのは名大さんも使っていらっしゃるし、図書館オンライン相談も名大さんがやっているという内容です。
 蔵書に関しましても、デジタル時代ということで、先ほども話がいろいろありましたけれども、オープンアクセスの掲載費APCに関するアンケートは、名大さんがやっていたので、岐阜大学も去年初めてやって、今年もやっています。
 6番目の社会貢献に関しましては、これはオープンキャンパスのオンライン企画の参加、名大さんがやったりとか、先ほど言っていた展示を名大さんがやっていたりとか、あるいは、この右側に木曽・長良・揖斐というところで、これは機構図書館の連携によって岐阜シンポジウムというのを岐阜大学でやったというような例なので、そういったときに様々な資料だとか、あるいは、シンポジウムなので、話をしてくれる人は名大さんに来てもらったり岐阜大学と一緒にやったりということをやり始めています。
 それで、成果のまとめです。まずは、お互いに図書館は図書館として、それぞれの部署はそれぞれの部署でやっていますので、機構図書館としての目標をつくったということ。それから、先ほどから言っていますように、両大学の混成のプロジェクトチームをつくったということです。
 それから、離れていてもコミュニケーションがすごく密になったということで、今までは、1つの大学の中で、岐阜大学なんかは特に、人数が少ない中で今までやっていた同じ、同じと言ったら悪いけれども、ルーチンですね。やることはこういうことねというふうにしてやっていたところが、かなり名大さんのように大きなところで、多くのことをやっていることを見聞きして、教えてもらいながらもうちょっと進めたりとか聞くことができたということです。ほかの大学に気楽に聞くような関係ができたというのは非常によかった点じゃないかなと思います。オンライン講習会の開放の拡大とか、連携企画のスムーズな運営ということで、かなりの程度、頻繁に話し合っているということを聞いております。
 2年がたってということで、最後のところになるんですけれども、どうだったかということなんですが、よかった点、まず、メリットということなんですけれども、私たち岐阜大学は小規模の大学で、先ほど見ていただいたように地方大学ですよね。大規模大学、名大さんのような事例が、情報が非常に、大変参考になったということがあります。自分たちだけでやっていて、岐阜県の中では岐阜大学は一番大きいので、それであぐらをかいていた部分があったのかもしれませんけれども、もっと大きなところを見ると、世界を見ると、こんなこともできるんだということで、非常に参考になりました。
 ただ、この辺も早慶さんと大分違うところだと思うんですけれども、名古屋大学にとって、岐阜大学と一緒になって、図書館も含めてメリットはあるのかなという、メリットは少ないんじゃないかなというのはちょっと危惧しているところです。
 あと、離れていても業務連携がかなり可能であるなということはありますし、スケールメリットを生かした契約交渉ということで、これはかなり大きいかなと思いますが、詳しいことは、これは会社によりますけれども、そういったことはあったので、これは非常にこの機構になったことによってよかった点かなと思います。こういうふうにしてポスターというか、チラシのように講習会のシェアをやったということです。
 岐阜大学と名古屋大学、もちろん名古屋大学のほうレベル感が高いんですけれども、そこの人たちと一緒に学生も交流できたりとか、図書館だけじゃなくて授業交流みたいなのもあるので、聞くことができるということは岐阜大学の学生にとっては非常にそれはうれしいんじゃないかなと思います。
 では、課題というか、デメリットというか、そういったところなんですけれども、一番大きなのは規模が違い過ぎるということなんです。違い過ぎるというほどではないのかもしれないですけれども、人と財政のところがかなり違うので、名古屋大学主導になるというのは、これは名大さんが聞いていて申し訳ないんだけど、やっぱりそうせざるを得ない。私たちだと知らないこともいっぱいあって、じゃあお願いしますというのが非常に多いということです。
 それから、先ほど言いましたけれども、初年次のプロジェクトチームの活動というのは、名大さんが直面しているこんな課題あるんだよと言われて、それを検討するところに岐阜大学がちょっと参加するという、岐阜大学自体が課題をあんまり感じてなかったというのもあるかもしれませんけれども、その辺は学ぶことだったと思うんですが、参加させてもらうことで、名大さんは解決していったけれども、岐阜大学としてはあまり、新たなものというのは講習会ぐらいで、まだ1年目はそういう状況でした。
 それから、教職員の方からすごく言われるのは、名古屋大学と岐阜大、機構になったんだから同じジャーナルが見られるはずだろうと思われることがあるんですが、見られることもあるんだけれども見えないものもあるということで、この辺ができないことが結構たくさんあるんだけど、その辺がなかなか理解してもらえなくて、よく会議のときに突き上げられるというか、どうなってんねやみたいな感じで言われるというので、その辺のところの理解がなかなかまだ浸透していないところがあります。
 それは電子ジャーナルだけじゃなくて、両大学のスタッフ、非常勤も含めて、私たち自身も職員も含めて、このことはできるとか、これはできないということがまだ分かってないので、その辺はまだ情報共有ができてない部分があります。
 変更点なんですけれども、プロジェクトを頑張ってやったんだけれども、結構大変だった。しかも、岐阜大学は人数が少ないということなので、全体的にプロジェクトの数をこの4つ、情報リテラシー、オープンサイエンス、図書館のDX・連携サービスと蔵書構築と4つに減らして、今年度は変えています。2022年度はさらに活動を活発化して、今から頑張ってやっていくということになっています。
 最後の今後の期待とか考慮すべき示唆ということです。一番難しいのが、私もこの図書館長とか副学長とかをやって初めて機構のことを考えるんだけれども、一般の先生方は機構のことなんて別に全然関係なくて、今までと同じように岐阜大学で講義をして、岐阜大学で何かやっている。あんまり関心を持ってないところが多いんです。だから、全員が一緒になったということに関して関心を持って、そのうちの1つが図書館でもあるということに関心を持ってもらうということが一番大事かなと思います。
 それから、先ほど言っていました機構の事務というのは、機構というものもありながら、名前は岐阜大学であり、名古屋大学なんです。大学の独自の部分というのは残したままにするというのがもともとの目的で、全部が1つになるわけじゃないんです。1つの大学になるわけじゃなくて、それぞれの大学としては独自性でありながら、統合できるところは統合しましょうというのが今回のコンセプトなので、大学の図書館も同じで、独自で取り組むことができる、あるいは、取り組まなければいけない部分と、機構として、例えば、今後、電子ジャーナルは機構として契約をしていくのかとか、大学が契約していくのかとか、そういったところは結構分けながら、効率的に、効果的なサービスができるようにしていきたいなと思っております。
 全国の大学の図書館においても、この講習会の相乗り実施とか情報リテラシー講習会だとか、いっぱいいろいろなものをつくっていらっしゃるので、その辺は非常に時間がかかるので、名大さんがつくったもの、岐阜大がつくったもの、たまに両方、誰が書いたということとか誰がつくったということは入れながら、サービスの時間を短縮して、ほかのサービス時間に充てたりすることが可能になるのではないかなと思って、その辺はよかった点だなと思います。
 まだ2年ということで、始まったばっかりで、図書館だけが一緒になっていたら、もうちょっといろいろエネルギーがそこに集中するのかもしれませんけれども、大学全体が一緒になろうとしているから、非常にいろいろなところでいろいろな人が動いていて、図書館は図書館でやらないと置いてけぼりになるというところもありますが、これから情報をつなげていくということが一番、情報のネットワークのところが非常に重要になってくるので、これからどんどん進化していく必要があるし、これからも挑戦は続いていくのかなという段階で、ちょっと中途半端な状況ですけれども、このような岐阜大学と名古屋大学の博物館のコラボ展をするとかいうことで、少しずついろいろな連携をしているというところになっております。
 以上で発表を終了させていただきたいと思います。御清聴いただきましてありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。大藪委員、大変興味深いお話をいただきました。特に初めての機構統合した大学の図書館の試みということで、多くの方の関心を引いたのではないかと思います。
 それでは、ただいまの御発表に対する御質問、あるいは、先ほどの長谷川課長からございました早慶の事例と併せた御質問でも、あるいは、御意見でも構いません。ぜひ御発言をお願いしたいと思います。石田委員、お願いいたします。
【石田委員】  石田です。大変貴重な御経験を御紹介いただきまして、どうもありがとうございました。
 私も少し機構統合についてちゃんと理解ができてないと思うので、もう少しお聞きしたいんですけれども、一緒になるわけではなくて連携という形というふうに御説明がありましたが、図書館同士で連携をする際に、こういうところは連携していこうとか、もしくは、ここは統合しようというのは、ある程度あらかじめ決めてから始められたのか、それとも、今探りながらここは一緒にやっていこうというような形で進められているのか、その辺りもう少し差し支えなければ、詳しく教えていただければと思います。
【大藪委員】  先ほどちょっとお話に出たように、統合するということが先に決まったので、図書館からやりましょうという話じゃないので、大学としてとにかく生き残りをかけてということだと思いますけれども、これからいろいろなお金を取ってきたりとかするとき、少子化とかいうときに、大学として残っていくためということを考えて統合が先に決まったので、図書館はその統合が決まった後に、やらなきゃいけないけれども何からやろうという話で、だから、最初から統合になったときに図書館はこうなるという図が描けていたわけではありません。
 それは多分トップからすると、いろいろな部署があって、この部署はこうなりますよ、この部署はこうなりますよと別にトップが言うわけじゃなくて、それぞれのところが、統合というところをまずやった後は、自分たちで考えてくださいねということなので、私たちが何ができるか、先ほどの2021のプランじゃないですけれども、何ができるかということをそれぞれが考えて、やり出して、それで、もうちょっとこれをやりたいというときに、上のほうに持っていくというような形になっています。ということでよろしいでしょうか。
【石田委員】  追加でちょっと。そういう意味では、先ほど御説明があった、例えば、両大学の学生が講習会に参加できるというのは、かなり両大学にとってのメリットかなというふうに思うんですけれども、一緒にやるところと、それから別々にやるところというのは、図書館の中でどういうような判断のプロセスをたどっているのかというのも教えていただければと思うんですが。
【大藪委員】  先生、ありがとうございます。そんな系統立っているんじゃなく、本当に目の前にあることから、できそうなことからやっているということです。だから、講習会参加というのは一番できそうなことなので、学生にもメリットになるということなので、もちろん蔵書の貸し借りというのは一番大事なところだから、そこは最初に決めたところではありますけれども、その後のプラスアルファのところとかは、とにかくできそうなところで、それほどお金もかからず問題にならないところからまずはとにかくやっていこう。だけど、システムは統合はできないので、システムはそれぞれが、そのシステム自体の規模も違うし、更新の時期も違うので、今のところは別々のシステムで動いているという形になっています。
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
【石田委員】  はい。ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。尾上委員、お願いできますでしょうか。
【尾上委員】  尾上でございます。大藪先生、ありがとうございました。
 我々の大学も2つの大学が、これは全く統合されてしまって、いや応なく一緒にやっているというところも、全てを一緒にやらないといけないというような状況での活動なんですが、先生方のところだと、連携できるところと、あるいは、あえてしないところというのがあると思うんですが。あと、先ほどおっしゃっていただいたように、先ほどの早慶の場合と違って、規模感が違うというところで、逆に、これは大変失礼な物言いかもしれないんですが、名古屋大学でやっておられるものに、例えば、オープンサイエンスでもいいんですけれども、思いっ切り乗っかってしまおうというような、そちらを全部使わせてもらおうなんていうようなことができた例みたいのもあるんでしょうか。
 もしそういうのがあると、大きな大学から見ると、それを自大学だけで使っていても、ほかのところと連携して使っていっても、すごいコストとか、変な話、損した気分というのはないんだと思うんですが、何かそういう面で岐阜大学にとってメリットがあったものがあれば、教えていただければと思うんですが、いかがでしょうか。
【大藪委員】  先生、ありがとうございました。今あんまり言えない部分もあったりいろいろあって。それと、今後、これからを考えていって、これはすごい得意なところなのでそっち側でやってくださいとかいうのは、これから考えていく部分かなと思っているんです。それはそれぞれの分野が、図書館も含めてですけれども、考えてやっていっていることになっています。
 なので、図書館と離れてしまいますけれども、私は教育学部なんですが、うちは免許を出す教育学部で、名大さんはそうじゃない学部ということになると、そこのところが連携して一緒に免許が取れるようなったりとか、そういったことは今後考えていかないといけないなと思っています。
【尾上委員】  ありがとうございます。電子ジャーナルの話とかそういうのはなかなか難しいと思うんですけれども、例えば、アーカイブ的な、要するに、リポジトリみたいな話とか、ある程度オープン性があるようなもので、あまり幾つかの大学に展開しても問題がないようなものとかで図書館の機能拡充というのができると非常にいいなと。これは別に統合してなくてもいろいろできる可能性があるかなと思って御質問させていただきました。ありがとうございます。
【大藪委員】  ありがとうございました。リポジトリとかそういった研究データについては、今後考えていこうと思っているところです。先生、どうもありがとうございました。
【竹内主査】  多くの先生方が挙手されておりますけれども、坂井委員が一番先に手を挙げていらっしゃったと思います。よろしくお願いします。
【坂井委員】  お話本当にありがとうございました。
 2つの大学、岐阜大の学生が名古屋大に借りに行くというのは結構な手間ですよね。でも、例えば、宅急便の会社と契約して、配送のシステムをおつくりになるとかということがあると、意外に安上がりだし便利になるんじゃないかと思うんですけれども、これをお考えになっていらっしゃいますでしょうかというのが1点。
 あと、名古屋大と岐阜大のOPACをそれぞれ拝見していて、よくできていると感心しています。あえて改良するとしたら、他大学で検索するよりは一段近傍にあるものとしてお互いを検索できるよう、少しシステムを改修すればいいんじゃないかなと思ったりしたんですが、その辺の計画はありましょうかというのがもう1点です。よろしくお願いいたします。
【大藪委員】  先生、どうもありがとうございました。
 1つ目なんですけれども、実は岐阜大学に来ている学生の半分、50%以上が愛知出身者なんです。愛知から通ってきているという形なので、どちらかというと名大が近い学生もいるということなんですよね。岐阜にいる学生さんが名古屋に借りに行くということはなかなか難しいですけれども、経費のことを考えて、まだ宅急便とか郵送の部分はできてないんですが、これもできたらやりたいなとは思っております。反対に言ったら、岐阜から名古屋に通っている人は少ないんですけれども、そういう状況だというのが1つです。
 もう一つ、実は今それを考えている最中のところで、これからやれたらいいかなと思っている内容となっております。坂井先生、どうもありがとうございました。
【坂井委員】  ありがとうございます。今、深澤先生が手を挙げていらっしゃるようなので、早慶の間でもそういう配送のこと考えていらっしゃるかどうか後でお聞かせいただければと思います。
【大藪委員】  ありがとうございます。早慶は多分やっているとレジュメに書いてあったような感じがしますけれども、その辺はまた深澤先生のほうからお願いいたします。ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございます。では、深澤委員、お願いいたします。
【深澤委員】  今の御質問ですが、早慶は毎日、早慶の間でトラックを廻しています。ですので、1日遅れてしまう可能性があるのですが、1日遅れで、例えば、早稲田の学生は慶應の本を読むことができるとかということが実現できておりますというのが今の御質問の中のお答えです。
 私の御質問としては、早慶の共同プロジェクトが、うまくいっているとしたら、なぜうまくいったのかということを考えてみたときに、それは、早慶の館長をはじめとして館員の皆さんがお友達だったことが大きいと考えています。結構飲んだりしていますし、従来からいろいろなつながりがありました。例えば、蔵書担当は蔵書担当でつながっていたりなんていうことがありました。ですから、私は「恋愛結婚」という表現を使っているのですが、もともとお付き合いをしてきて、それが結婚に発展したのだと思っています。
 でも、今の大藪先生のお話を聞くと、お見合い、たとえば、文科省の政策で一緒になりましょうみたいなところからスタートしたわけなのですが、ここで両館にまたがる館員の皆さんのコミュニケーションはうまくとれているのでしょうか。
【大藪委員】  深澤先生、どうもありがとうございました。一番最初に出席させていただいたときにこの話をしていたら、早慶のほうから学ぶといいよと言っていただいて、今日は本当にいろいろ勉強させていただきまして、ありがとうございました。長谷川さんも含めて、ありがとうございました。
 そうなんですよね。お見合い結婚のほうが、でも、長続きすると思って、気持ちが冷めないというか、もともと冷めているというか、よく分かりませんけれども。確かにそうなんですが、岐阜大学と名古屋大学が機構になれたというのも、実は一番最初は、今は、学長は替わったんですけれども、前の森脇学長と松尾機構長が非常に懇意であったということから話がとんとん拍子でうまくいったということで、一番上のほうはそういう状況でした。そこから、それぞれの部署で、図書館長同士とかというのは、そのときは全然、誰が図書館長であるかも知らないぐらいの状況だったと思います。
 ただ、先生が言ってくださったコミュニケーションに関しては、かなり取れているんじゃないかなと思います。それこそネットで、会って何とかではないですけれども、オンライン上、プロジェクトチームをつくったのがすごくよくて、それで皆さんがかなりいろいろな意見だとかを言い合って、コミュニケーションがかなり取れていて、私たちも名大の佐久間館長と一緒に館長同士で会議もしたりするので、それでオンラインですけれども顔を合わせながらいろいろ御意見を聞かせていただくということで、人と人との関係がかなり強くなった。
 早慶の長谷川さんの最後のところに、人と人的ネットワークが大事だということが書いてあったけれども、本当にそのとおりで、そこは早慶さんと同じだなと思っていたんですが、人的ネットワークがすごく密になることによって、新しい事業をやろうという気持ちになったりとか、一緒にそれを協力してやろうというふうにしてやって、それで新たなアイデアとかも出てくるんじゃないかなと思いましたので、その辺は、今後の問題でもありますけれども、うまくいっているんじゃないかなという気はいたしております。
 深澤先生、どうもありがとうございました。
【深澤委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  それでは、引原委員、お願いいたします。
【引原委員】  京都大学の引原です。大藪先生、どうもありがとうございます。非常に状況がよく分かりました。
 思い出したんですけれども、6年ぐらい前、名大の館長で佐野先生っていらっしゃったんですが、その当時に、東海地域の大学で共通の書庫を置いて狭隘になったスペースを何とかしようという提案を、概算要求されたという記憶があります。そのときにもう既に共通で議論はいろいろされていたんじゃないかということを1つ思ったんです。そのときに、名大はスペースがないからということをおっしゃってました。岐阜大のスペースをこれは有望だと思われたんじゃないかなという、そういう流れを今感じてしまったんですけれども。
 同時に、佐野先生は、1つの大学で全てを補う必要はないから、それぞれの大学の専門職の方々がお互いに協力して手伝っていくというやり方を東海地域で始めて全国に広げませんかと言って、説得に来られたこともあるんです。そういうような話は今回はないのかということをお聞きしたいんですが、よろしくお願いします。
【大藪委員】  引原先生、どうもありがとうございました。前の段階の館長さんの話なので、ちょっと分かりかねるところもあるんですけれども、確かに東海国立大学機構自体が2校をイメージしていたんじゃなくて、もっと本当はたくさんの東海地域の大学に入っていただきたいというのがあったんだけれども、皆さんいろいろなことを考えてちゅうちょしてやめられたとかということで、最終的に、今のところは2校で。ただ、今からでも増やしていこうという考えはあるので、入っていただけるところがあったら、またそこで、今のまずはベースを岐阜大学と名古屋大学でつくっておいて、それを他大学に広げていけるようなベースづくりを今しているのかなという感じはしております。
 確かにそうですね。その書庫の話は取りやめになっているとは思うんですけれども、先ほどのスペース的には、岐阜大学は土地は名古屋大学よりは大きいですよという、あまり要らんことを言ってしまったかもしれないんですが、場所はあるけれども、建物を建てるためにはお金がないので、その辺は、お金は名大さんに払ってもらってというのは、可能性としてはあるのかなという感じは今お伺いして思いました。
 専門職としてそれぞれの、岐阜大学はどちらかといったら文系がほとんどない理科系の大学なんですが、理系の大学で、工学部、応用生物とか、医学部とかがメインで、あと教育と、それから地域科学というのがあるぐらいのものですので。ただ、名大さんはもちろんオールマイティーで、全部持っていらっしゃいますけれども、そこのところのつながり同士は、それぞれが先ほどの話もしていまして、学部同士がつながり始めていて、それで、全部全部やらないでこっち側で実験できるものとこっち側で実験できるものと分けたりとかということ。
 今、糖鎖研究というのが岐阜大学に研究所を持って、名大と一緒につくって、それで、岐阜大学と研究者と名大の人が一緒にやっているとかいうので、それは両方につくらずに、1つのところにつくって研究し始めているということを始めていますので、そういった面というのを徐々に図書館のほうにも広げていけたらいいんじゃないかなと思っております。
 先生からいいお話を聞かせていただいたので、昔こういうのがあったけれどもどうなりましたかということを言ってみようかなと思いました。先生、どうもありがとうございました。
【引原委員】  こちらこそありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。それでは、堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】  都立大学、堀田です。大藪先生、どうもありがとうございました。私も京都出身で、非常に親近感を持ってお話を聞いておりました。
 途中何度か口を滑らせないかなと期待していたんですけれども、電子ジャーナルのことなんですが、契約のことはいろいろあって、お話は難しいというのは承知しております。
 一方で、連携の成果のところで、デジタル時代にふさわしい蔵書構築の推進に取り組むというところで、オープンアクセス掲載費APCに関するアンケート調査を名古屋大、岐阜大、これは恐らく両方で共通してやろうということだと思うんですけれども、このアンケート調査の結果ということ次第でしょうが、APCの支払いを両大学で共通して、あるいは、同じ枠組みで考えていこうというような可能性があって、そうすると、その先には、転換契約については両大学、1機構として共通で契約というか、そこを考えていくという、それぞれの電子ジャーナル本体の契約は一本化って多分難しいと思うんですけれども、転換契約については、何かその辺り可能性はあるのかなとちらっと思ったんですが、可能な範囲で何か御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【大藪委員】  まずAPCのアンケートを取るのは、もともと名大さんが取っていらっしゃって、それを見ながら岐阜大学もなるべく同じような形でということで取り出したということになります。それから、先ほど言ってくださったように、機構として転換契約ということに今現在、検討しているところであります。
 あとちょっと微妙なところがあるということで、機構として検討中ということです。すいません。よろしくお願いいたします。
【堀田委員】  いえいえ、どうもすいません。答えにくいことを聞いてどうもすいません。ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 まだ御発言いただいていらっしゃらない先生方もいらっしゃるようですけれども、ただいまの大藪委員の発表のみならず、先ほど御報告いただきました早慶の連携についての長谷川課長からの御報告も含めて、大学図書館のこれからの連携の在り方ということについての御意見等いただければと思います。村井委員、よろしくお願いいたします。
【村井委員】  ありがとうございます。大藪先生に1つお伺いさせていただければと思います。御発表を大変興味深く拝聴いたしました。
 途中のスライドで、小規模大学にとっては大規模大学の事例や情報が大変参考になる一方で、大規模大学にとっては、小規模大学からのメリットは少ないのではというお話があったかと思います。例えば、名古屋大学は岐阜大学のスペースを活用できる可能性があるというようなお話も先ほどありましたが、可能性などを含めて、大規模大学にとってのメリットにどんなものがあり得るのかというところをもう少しお伺いできればと思いました。
 もしそういうものを見いだせますと、より連携が促進されるように思いましたので、可能性などを含めて考えられるところがありましたら、お教えいただけますと幸いです。
【大藪委員】  ありがとうございました。言えない部分のところで大規模大学も結構メリットもあるんじゃないかなというのが1点と、それとまた、機構になったことで、今までは出せなかった――これは大学全体の話ですが、例えば、お金を取ってくるときに、両方でやることによって出せるようになったというのは聞いておりますので、それは微力ながら岐阜大学もはいることによってそういった基金とかにアプライすることが可能になり、取りやすくはなってないですけれども、今は特に機構というのが初めてのことなので、文科省的にはもしかしたら、新しいところに対してということがあるのかもしれませんが、そういったメリットはあるかなと思っています。
 図書館に関しては、今あまり、これというのは、それこそ名大さんがどう思っていらっしゃるのかなといつも思いながら参加させていただいているところなので、その辺はちょっと難しいかな。ただ、アイデアの交換というのは両方ともにあるんじゃないかなと思うんですよね。私たち岐阜大学も、小規模ながらも違ういろいろなアイデアを出すことによって、名大さんにとってもそういったこともできるんだということはプラスになっているかなと思います。
 目に見えてお金とか人とか物というのはないと思いますけれども、ただ、人事交流というんですか、それはしているので、図書館も人事交流があるので、岐阜大の人が名大に行ったりとか、事務もそうですけれども、名大の人が岐阜大に来るというそういったこともやるので、その辺は先ほどの話のコミュニケーションのところにもつながってくるかなと思っています。
 名大さんが言ってくださるとありがたいんだけど、岐阜大学からこれだけメリットがありましたというのは、なかなか言いにくい部分があるかなと思います。ありがとうございました。
【村井委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございます。では、北本委員、お願いいたします。
【北本委員】  北本です。やや漠然とした質問ですが、お二人にお聞きしたいと思います。
 先ほど恋愛結婚とお見合い結婚という話がありましたが、別の言葉にするなら2つの事例はボトムアップまたはトップダウン的に連携するという方向での違いであって、これから同じことを検討する組織があれば、モデルケースになるような対照的な事例ではないかと感じました。法人として一緒になったために連携がやりやすくなる、あるいは法人としては別でも、できることはたくさんあるのかもしれません。そこで、2つの事例において連携のやりやすさは、どういうところから違いが出てくるのかを考えていました。法人として一緒になるとやりやすくなる、あるいはそれは必要ないといった知見は見えてきたでしょうかというのが質問です。
【竹内主査】  ありがとうございました。これはまず、大藪委員からお答えいただくほうがよろしいでしょうか。
【大藪委員】  ありがとうございました。先ほどから話ししている、図書館としてはなかなか難しい部分があると思うんですけれども、ただ、先ほどの博物館のこともありますが、名古屋大学さんは名古屋大学さんで博物館みたいなのを持っていらっしゃるんですけれども、そういったものの貸し借りとかがすごくしやすくなったりとか、そういう社会的にはプラスになったのかなという気はいたします。
 大規模の研究が進んだというのは非常に大きいかなと思います。だから、今までだったら岐阜大学だけとか名古屋大学だけではできなかった研究が、大規模の、航空宇宙とかもそうなんですけれども、そういった面の研究がかなり進めやすくなったというのは、2つの大学が法人としては1つになってやることのメリットかなと思います。
 先ほど言っていたように、それぞれの先生方だとか教職員の方にどれだけメリットが感じられているかというのは、あまり分かってない部分が非常にあるのかな。そこまでまだ情報が行き届いてない。まだ、事務とかも全部変えていっている最中なので、1つにどんどん変えていって、岐阜大学にも事務局長がいたけれども、今年度は名大だけに事務局長がいて、岐阜大学には事務局次長だけがいるという状況になったりとか、徐々に変わっていっている最中なので、すごいよくなったねとか、すごい悪くなる――私としては会議が多くなったと思いますけれども。よくなった点も、そういう研究のところでは、研究交流が進んだというのは大きいところかなと思います。
 研究交流は本当に進んで、私自身も今まで会ったこともない、普通だったら会わなかっただろうなという名大の先生方と一緒にコラボレーションで研究をしたりとかということは進んできているので、そういった学術的な情報は非常に進んだかなと思っています。
【北本委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。この件について、何か長谷川課長のほうから発言いただくことはありますか。
【長谷川課長】  今の話と全く別ですけれども、別法人ということなので、当然、意思決定、あるいはお金が別になります。ですから、逆にそれが、それぞれ別個人のような形で意識していくようなところがあって、例えば、慶應さんではシラバスのリーディングリストの共有を管理するようなシステムを使っていて、図書館が管理するPrimo VEにも連動していますけれども、早稲田は、図書館独自では発想していなかったところなので、なるほど、そういうことができるのか、という知見は得つつ、意思決定はまた別なので、1法人として考える、ワンクッション置ける、というところが逆にメリットなのかいうふうに思います。
【北本委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございます。
 今日も大変活発な御議論いただいておりますけれども、長谷川課長、そして大藪委員の2つのプレゼンを通じた御意見等あるいは御質問等あればお願いしたいと思います。大藪委員、お願いできますでしょうか。
【大藪委員】  阪大さんと大阪外語大が一緒になられた。あそこは図書館はどうなっているんですか。
【尾上委員】  大阪大学の附属図書館の箕面図書館という形になっております。旧外大図書館というのがうちの1つの分館になっているという形で、4つある分館のうちの1つになってございます。運営としては、全体で1つの附属図書館となっております。
【大藪委員】  ありがとうございました。システムも一緒になっているということなんですよね。
【尾上委員】  はい。
【大藪委員】  分かりました。ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。先ほどの繰り返しになりますけれども、両先生の御報告を踏まえまして、これからの大学図書館の連携ということについて御意見等いただければと思いますが、いかがでございましょうか。村井委員、どうぞ。
【村井委員】  ありがとうございます。お2人の御発表をお聞きして、私は図書館の運営に携わる立場ではないため、どちらかというと利用者の目線で見てしまうのですが、図書館資料の利用可能性というのは、教育や研究の質に直結していくと思いますので、所属している大学に関わらず資料が利用できるというのは、平等な環境での教育や研究という観点から見ても、とても重要な意義があるように思いました。
 特に、これまでは地理的な制約があって、大学間での違いや格差というものもやむを得ない部分があったと思うのですけれども、今は、インターネットを通じた利用がかなりできるようになってきていますので、なるべく平等な環境で教育を受けたり研究を行うことができるということが望まれるように思います。
 個人的に大学で研究を行ったりしていても、例えば、自分の研究分野で、ほかの大学でもっといろいろなデータベースが使えるとなると羨ましく思ったりすることもあります。ただ、先ほどのお話でも、連携したからといって単純にサービスやツールが同じものが使えるとは限らないというお話でしたので、そう単純ではないと思うのですけれども、それでも、教育や研究における環境の平等性といった観点から、例えば、国が主導して、オンラインでの図書館利用などについては、大学図書館の間でのネットワークを拡張していって、全国レベルでの統合や協力を目指すということができないのだろうかと素人目には思ったりもしました。ただ、先ほど人的ネットワークが大事であるというお話などもあったので、政策的に進めていくのが本当にいいかはよく分からないところかとは思います。
 簡単なことではないと思うのですが、図書館にとっても、それぞれいろいろなメリットがあるということで、今後もこのような連携が促進されることが期待できると、利用者としてもありがたいと思った次第です。
 感想で恐縮ですが、以上です。
【竹内主査】  ありがとうございました。大変重要な御指摘だと思います。石田委員、どうぞ。
【石田委員】  今村井先生がおっしゃったことともちょっと関連するとは思うんですが、すいません、私も自分の意見ではなくて、ここにいらっしゃる委員の方々ですと図書館のマネジメントに関わっていらっしゃる方もいらっしゃるので、ぜひこの機会に御意見をお伺いしたいと思うんですが。
 今、2つのタイプの連携のお話を聞いて、いろいろ大変なこともあるでしょうが、メリットも大きいなというのは感じたんですが、これがどんどん進んでいくと、究極で言えば、全部1つになってしまうみたいなことになるわけなので、どういう形で連携の枠をつくっていくのが一番よい形になるのかなというのをお話を聞いていて考えていたので、ほかの先生方に振って申し訳ないんですけれども、もしその辺りで何か御見解がある方がいらっしゃれば、少しお聞きしたいなと思っております。すいません。私からの質問で申し訳ないんですが、よろしくお願いいたします。
【竹内主査】  いえいえ、とんでもございません。御議論いただく場ですので、いろいろな御意見をいただければと思います。今の石田委員からの問いかけに対して、お答えいただける方はいらっしゃいますでしょうか。坂井委員、ありがとうございます。よろしくお願いします。
【坂井委員】  口火を切る程度のことではあるんですけれども、さっき深澤先生が問題だとおっしゃっていた電子ジャーナルの共有化というのが、今、契約的にできないですよね。これに関しては、JUSTICEみたいな組織がもうちょっと強力に進めるのがいいのか、文科省が何か新しい制度をつくってくださるのがいいのか、その辺は私よりも引原先生や竹内先生のほうがお詳しいと思うので、1つ御提案をいただきたいかななど思ったりもするわけです。
 あと、図書館って究極はオープンサイエンスの舞台だというふうに持っていきたいですよね。つまり、古い蔵書もすごく大事だけれども、と同時に、古いものから新しいものを引き出す的なことの一番重要な役割を担っているんだということ。AIをやっている人たちなどから見ると、あるいは理科系一般の方から見ると、電子で全部取れるから図書館でなくていいよね的な話になりかねない。そうじゃないところを強く打ち出していきたいかななんて思うので。
 引原先生・竹内先生・尾上先生に引き取ってお答えいただければありがたく。失礼しました。
【竹内主査】  ありがとうございます。それでは、御指名でございましたので、引原委員、お願いできますでしょうか。
【引原委員】  2つの大学の統合の話を今お聞きしていて、早稲田、慶應の場合は、以前からやり取りしているという素地、それは非常に大きいんだろうなと思います。そのやり取りというのが、ILLであったりとかいろいろなこと、人的なものもあると思うんです。国立大学であれば、各大学が独自に、独立にという意識が非常に強かったといます。それがずっと現在まで来たときに、財務的にやり繰りできなくなって連携したいという、どちらかというと黒船の話に近いような状況になって何とかしないといけないという話になってしまっている。
 ですから、もう少し先を見たときに、日本全体としてどういう方向に舵を切っていくかということを、ストーリーをつくらないといけないんじゃないかなと思います。ボトムアップとトップダウンどっちも私は正しいとは思っていなくて、本当に研究者のほうを向いているのかとか、利用者に向いているのかといったときに、今の研究者じゃなく、将来若い人たちが出てくるときにどういう研究者を育てるかと考えたときに、それぞれのタコつぼに入った環境でいいはずはないと思います。そういう観点で見たときに電子ジャーナルをどう相互に購入するとか、オープンアクセスで全て賄ってしまうとか、せめて40%ぐらいはグリーンのオープンアクセスでカバーすればあとは何とかなるとか、何かそういう筋道を立てた議論をすべきなのではないかと思います。
 それぞれの大学はお金が足りないから、ジャーナル経費を国で何とかしてと言ったところで、自分たちの努力というのは見えないわけです。だから、そういう方向づけをぜひとも今後も議論をしていただければと思って、竹内先生に返します。
【竹内主査】  ありがとうございます。この問題については、これまでもいろいろなところで議論されてきた問題だろうと思うんですけれども、何を対象にするかにもよりますが、連携の規模には適正なものがあるのではないかということを考えてしまうということがあります。以前も電子ジャーナルに関してナショナル・サイト・ライセンスのような契約がいいんじゃないかという議論がございましたけれども、でも、それが本当にサステナブルかどうかというような議論になったときに、必ずしもそうは言えないだろうというようなことを、引原委員もメンバーでいらした会議体で議論したこともございます。
 それから、今回、非常に興味深かったのは、早稲田大学と慶應義塾大学という比較的規模感の近い、あるいは性格としても二校とも私立大学であって、私立の両雄と言われている大学なわけですけれども、その連携と、大藪委員から御報告いただきました名古屋大学と岐阜大学のように地理的な近さはあるけれども、大学の規模はかなり違う大学の連携という点ででございます。そのような大学の性格や規模を考えたときに、図書館が全部横につながって一つの図書館システムにするほうが本当に合理的なのか、あるいは、各大学にとって本当に適切なものになり得るのかというのは、少し違うんじゃないかと考えざるを得ません。今回、大藪委員の資料にございましたけれども、連合してやるのがいいことと、それから、各大学の独自の需要に合わせて各大学がきちんと取り組むべきことというのは、各大学で少し違っているんだろうと思うんです。
 ですので、その辺りをよく考えて、共通に取り組むべきことは何かということをきちんと明らかにした上でそこに例えば合理的な投資をしていくということを考える。あるいは、各大学が自分たちの強みと、それから、協力をしていくメリットは何かということを各大学がきちんと考えた上で判断をしていくということが重要なのではないかと思います。
 トップダウンで決める、あるいはボトムアップでやるということはどちらも正解ではないと先ほど引原委員がおっしゃいましたけれども、私はそのお考えには全く同感でして、特にトップダウンで国がこうやりましょうといって、上からぼんと合理的に見えるシステムを作ったところで、それでは十分ではない人たちはあちこちに出てきてしまうのではないかと思います。我々は研究者のほうを向いて、あるいは、学生のほうを向いて考えたときに何をどうすべきかということがまさに図書館の価値として問われるのではないかと考えています。すいません。主査が個人的な意見を言うというのは大変よろしくないんですけれども、つい申し上げてしまいました。
 さて、今回が5回目ということになりますけれども、実はこれまで1回目から5回目まで、この検討部会に課せられている主要な論点についての言ってみればインプットをしていただいた5回であったというふうに言うことができると思います。
 最初が、尾上先生から研究のDXについて、大学図書館を取り巻く環境の大きな流れ、特にデジタル化に係る大きな流れについてお話をいただきまして、また、私から教育のDXについて報告いたしまして、その流れの中で、大学図書館はどうあるべきかということについて、いろいろと御意見を頂戴したというふうに思っております。
 その次の回では、デジタル化ということをキーに考えた場合に非常に重要な国立国会図書館のデジタルシフト、つまり、テキスト情報をベースとした巨大なナショナルアーカイブができるという状況があるということが、今のそしてこれからの大学図書館を考える上で非常に重要であるということから全体像について御報告をいただき、またデジタル化と切っても切り離せない著作権の問題の動向についてお話をいただきました。その動向が、今までのコンテンツをどう使うかということとともに、これからのコンテンツの在り方がどうあるべきかということにも非常に大きなインパクトのある話だったというふうに考えております。
 第3回目は、慶應の倉田先生、そして前の学術調査官の池内先生からのお話で、研究データへの取組ということでお話をいただきました。オープンサイエンスというのは、御承知のように、オープンアクセスとオープンデータによって構成されるというのが基本的な理解かと思いますけれども、その中でのオープンデータということに関して、大学はあるいは大学図書館はどういうふうに取り組んでいけばいいのかというようなことの議論であって、その中で、特に倉田先生からはかなり具体的な御提案もいただいたというふうに記憶をしているところでございます。
 前回は、今日の冒頭でもまとめをさせていただきましたけれども、じゃあ、そこで働く人というのをどのように考えていくのかという人材の問題でございました。人材の問題というのは非常に難しいところでありますけれども、これは今回図らずも出てきた、人的ネットワークというのが図書館の連携によって強化されるということによって、新しい事柄に取り組んでいく人材の可能性ということもあぶり出されてきたのかなというふうに思っております。
 今回はそして、図書館間の連携ということになるわけでございますけれども、釈迦に説法でございますが、大学図書館の図書館間協力というのは、ほぼ1世紀の歴史を持っているものでございます。しかしながら、明らかに早慶の連携、あるいは、今回の大学の機構統合による新しい協働の形というのは、従来の図書館間協力とは全く次元の違うものとして我々の目の前に現れてきているという、そういう状況だろうというふうに思います。
 このような基盤の変化、あるいはデジタル化の進展、研究データという新しいコンテンツ、それらに取り組む人材の問題、そして、それに取り組んでいくためのさらなる大学間の連携という、考えなければならない要素については、今回のこの5回にわたる検討部会でのプレゼン及び議論の中で、かなりの問題がそれぞれ浮き彫りにされてきたかなというふうに思っております。
 しかしながら、それらの議論をきちんと結びつけるような形で、これからの大学図書館の在り方をどうするのかということについては、まだ十分な議論がされていないというふうに思っておりますし、またこれまでの5回の議論の中では、主な審議の論点案として挙げられていてもまだ十分に議論されていない部分というのもあるかと思いますので、それらにつきましては、次回の検討部会で、委員の皆さんに自由な観点で御発言いただけるようなセッティングして、議論をしていければというふうに思っているところでございます。
 今回も非常に活発な御議論いただきまして、2つの非常に特色のある連携の事例から共通の要素も見えてまいりましたし、非常にまだ難しいこともあるということも分かってまいりました。その辺りのこともいろいろと今後の、次回の検討に生かしていけるように、事務局のほうでも整理をしていただいた上で、また皆様方に御提示をしていきたいというふうに考えているところでございます。
 それでは、最後になりましたけれども、事務局より連絡等があればお願いをいたします。
【大鷲参事官補佐】  事務局でございます。本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開させていただくところでございます。
 また、次回、第6回につきましては、11月14日、月曜日を予定させていただいてございます。開催方法等につきましては、改めて御連絡させていただきます。
 事務局からは以上でございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 長谷川課長、そして大藪委員には、大変興味深いプレゼンテーションをしていただきありがとうございました。また、委員の先生方におかれましては、大変活発な御議論いただきましたことを改めて感謝申し上げます。
 では、本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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