オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会(第4回)議事録

1.日時

令和4年7月13日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

竹内主査、尾上主査代理、石田委員、大藪委員、加藤委員、北本委員、坂井委員、佐藤委員、引原委員、深澤委員、堀田委員、村井委員

文部科学省

工藤参事官(情報担当)、藤澤学術基盤整備室長、大鷲参事官補佐、松林学術調査官

オブザーバー

高品 国立国会図書館利用者サービス部科学技術・経済課長

5.議事録

【竹内主査】  時間になりましたので、ただいまより第4回オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会を開催をいたします。
 本日はオンラインでの開催となりました。報道関係者も含め、傍聴の方にはオンラインで参加いただいております。
 また、通信状況等に不具合が生じるなど続行できなくなった場合、委員会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
 まず、事務局より本日の委員の出席状況、配付資料の確認とオンライン会議の注意事項の説明をお願いいたします。
【大鷲参事官補佐】  事務局でございます。本日の出席状況でございますけれども、委員の皆様は全員出席でございます。
 なお、村井委員、それから尾上委員、深澤委員につきましては、遅れるとの連絡が入っているところでございます。
 このほか、オブザーバーの高品課長、それから学術調査官の松林先生に御出席いただいてございます。
 なお、科学官の黒橋先生、それから学術調査官の竹房先生については御欠席でございます。
 続きまして、配付資料の確認でございます。議事次第ございますけれども、本日、資料1、2となってございます。
 資料1につきましては、東北学院大学の佐藤委員からの御発表資料、それから資料2につきましては、九州大学の石田委員からの御発表資料となっているところでございます。
 不備等ございましたら事務局まで御連絡いただけたらと思います。
 続いて、オンライン会議での注意事項でございます。通信安定のため、発言する場合を除きまして、常時ミュート、マイクはオフの状態、またビデオに関しましては、ビデオオンの状態でお願いしたいと思います。
 それから、発言する場合でございますけれども、手のアイコン、または挙手をクリックしていただいて意思をお示しいただければというところでございます。
 そして、指名された先生におかれましては、御自身でマイクをオンにする操作をお願いしたいと思います。発言の際には、最初にお名前をおっしゃっていただきまして、オンラインでも聞き取りやすいよう、ゆっくりはっきりと御発言いただけたら幸いでございます。御発言終了後には先生御自身にて手のアイコンを非表示、マイクをオフの状態に戻していただければと思います。
 なお、個々のパソコンにおきましてトラブルが発生する場合もあろうかと思いますけれども、その際には電話にて事務局まで御連絡いただければというところでございます。
 事務局からは以上でございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 本日の傍聴登録はございますでしょうか。
【大鷲参事官補佐】  本日の傍聴登録でございますけれども、196名となってございます。また、報道関係者の方からも御登録があるところでございます。
 なお、本日は、録音・録画が入りますので、御承知おきいただければと思います。
 事務局からは以上でございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 それでは、審議に入りたいと思いますが、その前に前回の検討部会での検討内容について簡単にまとめておきたいと思います。
 前回は、まず、前学術調査官の池内有為先生から日本国内でこれまで行われた研究データについての質問調査に基づいて3点の報告がなされました。
 1点目は、日本の研究者による研究データ公開の現状と課題について、2点目は、研究データ管理や公開・保存に対する研究者のニーズについて、3点目は、日本の研究機関等における研究データ管理・公開への支援体制についてでした。この点については、研究データの公開はまだそれほど進んでおらず、また分野による差異があること、公開については雑誌のポリシーが理由になっていること、ファンディングエージェンシーのポリシーが影響して、データマネジメントプランの作成経験を持つ研究者の比率が増加していることなどが明らかにされました。
 2点目については、人材、時間、資金ともに不十分であると認識している回答者の割合が高く、長期保存用のストレージ、公開用のリポジトリに関しても、半数近くが不十分であると認識しているとのことでした。また、データの整備や公開・保存について、図書館員やデータキュレーターに依頼したいと考える人の割合は4割程度で、その内容については、適切なデータ形式への変換、リポジトリの選択、ライセンスの選択、データを再利用しやすいように整えるなど、分野の知識やデータに関する専門知識が必要であると考えられるような項目が上位にあることが示されました。また、データリテラシーやガイダンスに関するニーズが高いことも示されました。
 3点目として、日本の大学・研究機関の研究データ管理サービスについて、実際に提供している、あるいは検討中という機関は6割弱あるものの、その多くは機関リポジトリなどのプラットフォームの提供であって、リテラシーの支援、データキュレーションの支援を実施している機関はごく僅かしかないということ、また、大学図書館で実施しているサービスは、機関リポジトリの提供が中心であるものの、実際に機関リポジトリでデータを公開しているのは4分の1にすぎないというものでした。
 機関リポジトリによる研究データ公開の課題や障壁については、マンパワーが足りない、適切なライセンス、利用条件が分からないといった項目が挙がっており、また、データの整備や公開についてより詳しく知りたい研究者は多いものの、実際に関連する研修会とかシンポジウムなどを実施している、あるいは計画しているという機関は10%以下しかないという状況が紹介されました。
 続いて、慶應義塾大学の倉田敬子先生からは「研究データ管理 学術コミュニケーションの変容と大学図書館」という題目で、学術コミュニケーションの変容における大学図書館の役割という理念的な側面と研究データ管理に関する慶應義塾大学での具体的な取組についてかなり突っ込んだお話をいただきました。
 学術コミュニケーションが学術出版を中心としたものからオープンなものへと変容する中で、大学図書館がこれまで教育研究支援として果たすことができた機能が十分に果たせなくなってきているという認識に立ち、特に研究プロセスのデジタル化、オープン化というフェーズに直面する中で、大学図書館が今のままでこれに対応できるものではないけれども、ここに関わるという覚悟を決めなければ大学がプロセスのオープン化に関わるのは無理ではないかとの御指摘がありました。
 また、商業出版社は、既に研究プロセス全体のデジタル化を視野に入れて、評価を含む研究プロセスの節目節目において必要となるようなツールやサービスを既に提供していること、主要なジャーナルでデータポリシーがないものは10%程度にすぎず、データの公開を必須とするジャーナルも30%を超えているという現状、また、分野によってデータ公開の状況は異なっているけれども、生物学分野ではデータ公開の割合が高いといったグローバルな現状についての御紹介がありました。
 大学図書館による研究データ管理の支援に関しては、研究プロセス全体をオープンにして共有していくということを前提とすると、大学の研究支援として研究実施のためのクラウドや機器、デジタルツールの提供、研究助成の申請や研究者のデータベース整備などが必要になるものの、これら全てを大学図書館が担うということにはならないこと、また、このような環境の中で、研究助成の申請に際してデータ管理計画の提出が義務化されれば大学としては当然対応しなければならないけれども、その場合、研究データ管理計画を申請者が出しておしまいにするのではなく、研究データのインベントリ、すなわち研究データとして何があるのかを示すリスト、データベースを作成する方向に進むことの必要性と、それをベースに、研究費の申請状況、助成を受けて行われた研究の成果としての論文、そして、そこで生成されたデータをリンクでつなぐようなシステムを最低限はつくりたいとの考えが示され、その際に必要な研究データの管理項目が示されました。このような研究データのインベントリの作成において、管理データレベルでのメタデータ付与は大学図書館でできるのではないかとの御指摘がありました。これは、ある研究データについて、研究者は誰で、財源としての研究費が何でというレベルのメタデータを付与するということです。
 一方で、データそのものについての記述は研究者しかできないものであるものの、研究者がメタデータを付与していく上で理解すべきその分野の標準化などの動向について調査し、様々な分野での動きを見通してそれらを整理統合していくという仕事も大学図書館の仕事となるのではないかということが示されました。
 これらを実行していくための環境として、研究者の研究ライフサイクルを全面的に支えるようなプラットフォームを形成することの重要性が強調され、研究データ管理を推進する組織や普及啓発活動について慶應義塾大学での実例が示されました。
 池内先生の御報告では、研究データ管理についての支援への期待は高いものの、実際に行われている支援は少ないという日本の現状が端的に示されたと思います。そのギャップをどのように埋めることができるのかということについて、質疑の中でもあれもこれもというのは無理といった御意見も出ていたかと思いますが、であるとすれば、大学図書館は何を行うのか、ほかの組織は何を行うのかという点を本検討部会で明確にしていくことが必要であるということが認識されたかと思います。
 また、研究データ管理のための人材の量的な不足ということとキュレーターの質的向上という課題について質疑の中で議論がありました。池内先生の御発表から、大学図書館員とデータキュレーターは別というか、大学図書館員とデータキュレーターの関係について、私自身も理解できていない点もあるのですけれども、いずれにしても大学図書館員は研究データ管理の中で何をするのかということが改めて課題になると理解をいたしました。
 これに関して倉田先生からは、管理データレベルのメタデータ付与については大学図書館の仕事となり得ることが明確に示されました。ただし、このメタデータは、これまでの図書や雑誌のメタデータとは異なりますし、さらに言えば、電子書籍や電子ジャーナルの論文単位のメタデータについても、現状がこれからの環境に耐え得るものかどうかということについて議論の余地があることが示唆されたと思います。また、研究データのメタデータと多くの人に呼ばれているものが実際に何かということについて、話者によって違うものをイメージしている可能性もあり、精査し、確認する必要があることも示唆されたと思います。
 質疑の中ではゲームチェンジの必要性ということについて言及があったかと思います。かつて学術情報委員会において、非公式な懇談会の場であったと思いますが、研究データについては、ジャーナルと同じ轍を踏んではいけない、ゲームチェンジが必要という話があったことを記憶しております。つまり日本の研究成果としての論文の多くが海外のジャーナルに掲載されて、それに対して高額の購読料を払い続けないと日本からアクセスできないという現状を研究データは繰り返してはならないという認識が当時はあったと思うのです。しかしながら、倉田先生にも御紹介いただいたように、既に研究データの公開についても、使いやすいグローバルな商業的なサービスが出てきている中で、国として研究者にとって使い勝手のよい研究データ公開の環境を構築すること、インベントリたるデータベースをつくることを含め、それらをベースに国際的な協働関係が構築されるような環境の整備を加速して進める必要があるということが改めて認識されているように思います。
 大変長い前置きになりましたけれども、本日はこれまでの議論を踏まえまして、大学図書館の人材に係る検討をしたいと思います。佐藤委員より大学図書館職員に求められるスキルセットについて、続いて石田委員より情報専門職の育成ということについて、それぞれ御報告をいただき、これまで議論してきたような大学図書館を取り巻く環境の変化の中で大学図書館に求められている機能を実現するために必要な人材に求められるスキル、あるいは人材の養成について議論をしたいと思います。
 それでは、佐藤委員より御報告をお願いいたします。
【佐藤委員】  佐藤でございます。それでは、私のほうから発表させていただきます。
 本日の発表の構成ですが、最初に、日本において大学図書館の専門職がどのような状況にあるか、その傾向を学術情報基盤実態調査の統計数値を用いて把握をしたいと思います。
 続いて、海外の事例として米国を取り上げ、電子的情報資源の普及やデジタル技術の急速な進展の中で専門職のありようがどのように変化しているかを紹介したいと思います。最後に、今後において適切な変化を促していくための方策としてどのようなことが考えられるのかについて私なりのまとめを提出させていただきたいと思います。
 最初に、この表は学術情報基盤実態調査の数値を基に国立大学図書館に勤務する職員等についてまとめたものです。この表から、近年の傾向として、専任の職員数ですが、2013年の1,674名から2021年度では1,523名と約1割弱の減少となっております。臨時職員を含めました全体では、2013年の3,688名から2021年の3,490名と8年間で約5%減少しております。一方で、業務委託の人数は、数は大きくはありませんけれども、この間で約4割程度増加していると言うことができます。
 次に、同じ期間の私立大学図書館につきましては、専任職員が大きな減少傾向にあります。3,476人から2,807人へと約2割の減少が見られました。それから、臨時職員についても、3,300名から2,442名と、こちらも26%の減少となっております。
 こうした専任及び臨時職員の減少というものは、具体的には業務委託等の人数を増やすことで減少が埋め合わされているということを見ることができます。この表に見られるように、私立大学ではますます業務委託への依存度が高まる傾向にあると言えます。もちろん業務委託自体が問題であるというわけではありませんが、業務委託の内容や質がどのようになっているかということが問われることになるかと考えております。
 公立大学では大学数が増加傾向にある中で、専任の職員数は増えておりますけども、臨時職員から業務委託への切替えがあるように見えます。
 この表では、もう少し長いスパンでの傾向を見るために1983年以降の数字をまとめてみました。ここでは、大学図書館の総務部門、庶務とか会計の部分を除いた専門的業務に就いている人数のみをカウントしておりますので、先に見た3つの表とは数値が異なることに御注意をいただきたいと思います。
 国立大学では1983年から2020年までの間に専門職の人数が1,773名から854名と半数以下になっております。これは公務員の定員削減に起因していることは当然と思いますが、より少ない人数の中で非常勤職員等による補充と業務の効率化によって何とか業務を成り立たせてきたと言うことができるかもしれません。
 特に言及しておきたいのは、右側の整理、目録の担当者の数の変化であります。目録業務の専任担当者は、1983年の592名から2020年の137名と77%も減少しています。整理業務に携わる臨時職員の数があまり変化していないことを考え合わせますと、この減少の要因としては、図書の受入数の減少とともに、国立情報学研究所を中心とした全国総合目録所在データベースの活用の結果、各大学が整理担当者を減らしていった結果と考えることができるかと思います。
 私立大学では国立大学とまた違った状況が見られます。専門職の専門全体の専任職員が1983年の3,111名から2020年の961名と69%減少しているのは国立大学と同様ですが、大学数が大幅に増加した中での減少ですので、国立大学よりも減少率は高いと見るべきだろうと思います。
 また、専門の臨時職員の数は、2008年までは増加したものの、それ以後は減少に転じ、2020年には1983年に近い人数となりました。2008年以降の専任職員と臨時職員の減少は、先ほども言いました業務委託の進行によってもたらされたと言えると思います。
 整理業務に限ってみますと、整理業務の専任職員は、2020年で196名と、1983年の1,479名と比べて約87%の減となっています。
 以上のことから、かつて大学図書館職員のコアコンピタンスの中心として挙げられていた目録業務、あるいはメタデータ関連の業務は、国立大学においても、私立大学においても、少なくとも人数の面では大学図書館の専門性を意味するものでは、代表するものではなくなっていると言ってよいと思います。
 こちらは、私立大学の業務委託について2019年度の内容別の内訳をグラフにしたものです。閲覧、貸出しのカウンター業務を中心として幅広い領域に業務委託が浸透していると言っていいと思います。
 次に、米国における大学図書館について見ていきたいと思います。最初に大学図書館全体の職員数の概数を示したいと思います。こちらは全国教育統計センターによるIPEDS、統合高等教育データシステムの2020年の数値です。ここで図書館員とその他のスタッフが分けられていますのは、米国では明確に職位が区別されているためです。図書館員、ライブラリアンは、MLIS、大学院の名称は様々ですが、いわゆる図書館情報学のプロフェッショナルスクールの修士資格を持ち、期限なしの雇用契約に守られている人を指します。2008年以降のリーマンショック以来、テニュアを持つ図書館職員の比率は26%程度まで落ちているという報告がありましたが、一方で、おおむね半数近くの図書館員に教授職と同様の研究休暇が提供されているというような報告が見られます。
 図書館以外の専門職としては、コンピューターやネットワークの専門家、会計、人事と様々ですが、一定以上の給与と安定的な雇用が保障されている職務と言うことができると思います。
 その他のスタッフは、ライブラリーアシスタント、あるいはテクニシャンズと呼ばれる職で、定型的な日常業務をこなす職であり、ここにはフルタイムとパートタイムの両方が行われています。最後に、学生アシスタントは、資料の適切な配列の維持などの軽微な仕事を担当するスタッフです。なお、この表の数値には米国内のあらゆるタイプの大学図書館が含まれます。
 次に、こちらは、ARL、アソシエーション・オブ・リサーチ・ライブラリーズ、研究図書館協会の数字です。ARLは、いわゆる研究図書館の集まりでありまして、カーネギー財団の大学分類で研究大学とされる大学の図書館のうち、一定の審査を経て加入が認められた大学図書館が加入しています。
 加えて、米国議会図書館、米国国立医学図書館、ニューヨーク公共図書館等の大学以外の図書館も加盟しています。
 規模としては、概ねここの回答館数にあるような116館ぐらいがアメリカで研究図書館と呼ばれている図書館になります。
 研究大学の集まりですので、他のクラスの大学と比べ、スタッフ数は多く、またデジタル技術の進展等の情勢の変化にも敏感に対応する傾向にあると言えます。
 ここでは、経年的な変化を把握できるよう、2009-2010の会計年度、それから、2015-16、2018-19のそれぞれの会計年度における数値を上げています。総職員数及び支援スタッフ、学生アシスタント数が減少する一方で、この間に専門職は増加しているということが分かります。
 こちらは、2015-16会計年度の医学、法律を除いたARL加盟館の専門職の職能別内訳をグラフにしたものです。米国の大学図書館の専門職は、職能別の専門家として採用されるため、基本的に他の職能に異動することはありません。したがって、このグラフは、この時点のスナップショットとして全体の職能構成を把握するのに役立つと思われます。
 次に、こちらは、ALA、アメリカ図書館協会がウェブ上で公開している求人情報を分析し、2007年から2017年にかけてどのような職能が求められたかを表にしたものです。論文としては、下にあるものですけども、この中で掲載されている表をまとめたものです。
 これを見ますと、2007年以降にどのような大学図書館の機能が重視されたかをある程度把握できると思います。
 1つには、データ、デジタル・プロジェクト、それからメタデータ、学術コミュニケーションといったデジタル技術の適用に関連した新たな役割に関する求人が増加していることが分かります。
 また一方では、利用指導、学生支援といった学習支援の役割がかなりの程度を占めています。これは印刷体の減少によって不必要となったスペースを学習支援に振り向ける、いわゆるラーニングコモンズの隆盛と呼応して学生に対する支援が盛んになっているということを示すものと考えられます。
 もう一つ、こちらは、先ほどの研究図書館協会、ARLのPD Bank、Position Description Bank、これも同じく求人情報ですが、こちらを分析した論文がありますので、併せて紹介させていただきます。
 ARL PD Bankは2013年2月に公開されたもので、この論文では2018年頃までのデータをネットワーク分析した結果をまとめています。この論文では、専門職、支援スタッフ、管理職のそれぞれについて、それぞれに分けて分析をしています。このグラフは専門職についてのもので、専門職に対する求人というのは全体で564件この間ありました。PD Bankの求人では、1人分の求人に対して複数の職能が記載されることが多いことから、このネットワーク分析では、職能のタイプをノードに、1つの求人に共起する頻度をエッジに表現しています。
 ノードの大きさは、その職の出現回数の大きさを、エッジの線の太さは、共起の度合い、すなわち職能間の結びつきの強さをあらわしていきます。
 なお、ノードの大きさは、求人数の多さではなく、あくまで求人票の上に表れた職能の延べ件数ということになります。
 このグラフを見ると、下のほう、Instruction、利用指導でありますとか、Liaison、それから、Reference、調査、それから、Subject Specialist、主題専門家、それから一番下のコレクション構築、マネジメントといった職能がクラスターとして布置しているのに対して、上のほうのデジタルサービス、電子情報資源、アーカイビング、キュレーションといった職能は、単独で位置し、より独自の役割が求められていると言うことができるかと思います。
 こちらは支援職の713件の求人のデータを分析したものです。貸出しとILL、それにアクセスサービスの間に強い結びつきが見られる以外は、ほとんどが単独で位置しています。これは支援職が比較的短期的な雇用を前提としたものであるためだと思われます。
 次に、こちらは管理職の部分ですが、こちらは165件の求人を基にした分析結果です。管理職という性質から人数はある程度限られることから、ノードはそれほど大きくありません。そして、エッジの太さもそれほど太くないということは、兼任もないことはないが、ある程度限られていると言うことができるかと思います。
 次に、以上のような米国における大学図書館の求人情報に見られるような人材とはどのように養成され、供給されているのかという問題です。先ほども述べましたように、アメリカでは、名称は様々ではありますが、多くの場合、MLIS、左側のこれですね、マスター・オブ・ライブラリー・アンド・インフォメーション・サイエンスという実務者養成大学院から新規の図書館職員が供給されることが多いようです。
 もちろん、先に見たように、緊急に特別なスキルを備えた人材を確保するためには他の分野からの採用も増えていますけども、依然として多くはMLISが卒業生を送り出しているようです。
 MLISは、全体で65大学にコースがありますが、これにはカナダとプエルトリコも含まれています。そのうちの50大学で大学図書館職員向けのコースが整備されています。うちカナダが4ですから、アメリカ国内では46ということになります。
 MLISの教育課程は、1925年以来、アメリカ図書館協会によって認証評価を受けることを義務づけられています。したがって、外部環境の変化に対応した教育内容、知識だとかスキルのセット、そういった教育内容は、様々な諸基準や政策及び大学図書館の必要性を反映して常にアップデートすることが求められていると言うことができます。
 また、ARLの状況の変化に対応して、様々な活動を通じて新たな変化を促進する役割を果たしていきます。
 以下には、研究データに関連した米国の初期の動向をかいつまんでまとめておりますけども、こちらを見るだけでも、ARLが研究データの共有、あるいは保存、再利用といったことに関してかなり積極的に関与をしてきたということが分かっていただけるかと思います。
 最後にまとめに入らせていただきますけども、こうした急速な環境の変化に対応して、我が国においては、電子図書館、電子ジャーナルの購読契約や、リポジトリをはじめとしたオープンアクセス、研究データへの対応など、政策的な面の課題の整理は、学術情報委員会、あるいはこの専門部会等においてかなり積極的に進められてきたと言っていいと思います。
 しかし、そうした政策を実行するための人材については非常に心もとない状態にあるのではないかというのが私の率直な印象です。
 まずは、求められる人材の定義を行うとともに、今後どのように採用あるいは養成していくかという点について、個々の大学図書館に委ねるのではなく、今後、集合的に対処していく必要があるのではないでしょうか。
 特に、変化に迅速に対応できる大学図書館をどこでどのように養成していくのかは極めて大きな問題だと思います。多くの大学で開かれております司書課程というのがありますが、これは公共図書館の職員を養成するためのものでありまして、大学図書館とは基本的に無関係です。また、その講義内容も、多くの場合、必ずしも変化に対応したものになっているとは言い難いと思います。
 また、変化の呼び水となるような政策的支援の一環としてのプロジェクトを設定し、変化を促していくことも必要なのではないかと考えます。
 最後に、大学の認証制度における大学図書館の評価の在り方が果たして急速に進展する状況に対応できているのかも再検討し、優れた取組を導くような評価の枠組みを具体化していくことも重要と考える次第です。
 以上です。どうもありがとうございました。
【竹内主査】  佐藤委員、ありがとうございました。北米の状況など、非常に丁寧に御報告いただき、また、それらの認識も踏まえて、我が国の大学図書館界、特に人材に関する面において何が必要かということについてまとめていただいたかと思います。
 それでは、佐藤委員の御発表に対します御質問等、あるいは今後の大学図書館に求められる人材等について、御意見、御質問等がございましたら、委員の皆様方から御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、石田委員、お願いいたします。
【石田委員】  佐藤先生、ありがとうございました。少し突っ込んだといいますか、御質問になるかと思いますが、最後のスライドのところで、どこでどのように大学図書館職員を養成するかということがございました。これから私もこの後に発表させていただきますが、うちでも大学図書館職員の育成というのは範疇に入っているんですが、これ、どういうふうに、例えばカリキュラムであるとか、その知識、スキルみたいなものを決めていけばいいのかというのはなかなか難しい問題だなと思っています。
 それは例えばアメリカの大学図書館の事例を御紹介いただきましたけれども、基本的にアメリカの大学図書館の中での職の構造と日本の職の構造がまた違っていたりするものですから、なかなかアメリカのものをそのまま持ってくればいいということにもならないかなと思うんですね。なので、もし、どのようにしていけばいいかみたいなお考えがあればぜひこの機会に聞かせていただきたいなと思うんですけれども、すいません、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  確かに石田先生がおっしゃられたように、職の構造自体がかなり違うものですから、要するに、アメリカの場合の専門職というのは、1つの職能を追求していく。例えばレファレンスであればずっとレファレンスを担当して、その中でスキルアップを図っていくと、そして論文も書いていくと、そういったことであるわけですので、これを日本の制度の中ですぐに適用するというわけにはいかないと思います。
 ですから、大学図書館の中での専門職としての養成というものの在り方というものを併せて、要するに職員の配置、今の場合ですと、総合的な人材を、何でもできる人材を用意するというのが日本のこれまでの大学図書館のやり方であったわけですが、またこれは大学図書館だけでなく大学の人事の方針であったりしてきたわけですが、こういったところとも折り合いをつけながら議論を進めていく必要があるかと思います。ありがとうございました。
【石田委員】  ありがとうございました。大変参考になりました。また引き続き御相談させていただければと思いますので、よろしくお願いします。
【竹内主査】  ほかにいかがでございましょうか。
 大藪委員、お願いいたします。
【大藪委員】  非常にいろいろな分析をしていただいて、教えていただきまして、ありがとうございます。非常に勉強させていただきました。
 最後に出していただいているところで、大学の司書課程が大学図書館とは基本的に無関係であるというのは、これはかなり問題と思いました。学校図書館は司書教諭と学校司書というふうにして分かれているみたいですけれども、大学をメインとした司書の教育というのがされるところがないという御指摘なのではないかなと思いました。そうなると、今後は、大学用の司の研修だとかコースというのも本当は必要ということをひとつ思ったのと、それから、大学がオープンサイエンスが進んでいるのに、司書の制度はあんまり変わってない、司書で教えることが変わってないと。そこも変えていかないと、司書制度で学ぶようなカリキュラムというか、大学で教えること自体を変えていかなくちゃいけないと思うのですけど、先生はどのようにして考えていらっしゃいますか。もし何かあれば教えてください。
【佐藤委員】  ありがとうございます。大藪先生のおっしゃられるとおりだと思っていますが、1つは、司書というのは、図書館法という法律で規定されている資格でございまして、こちらは公共図書館の職員に勤務する専門職を指す言葉でございます。それから、ほかには、学校司書、それから司書教諭というものが、こちらは学校図書館法という法律で規定されているわけでありまして、残念ながら、大学図書館に関しては、既に特定の法律はございませんで、大学設置基準の中で職員について言及があるのみです。
 ですから、資格というものも全く定義されていない状況にあります。かつては、印刷体が主流であった時代においては、あまり公共図書館でも大学図書館でもそれほど大きな差はなかったかと思いますが、この20年、30年の間にデジタル技術が急速に進展をする中で、図書館の仕事の在り方というものが大学図書館とその他では全く変わってきてしまいました。特にオープンアクセスであるとかオープンサイエンス、それから、要するに学習支援といったところで、それなりの専門性とスキルセットが求められるようになってきているわけですので、この点については、大学図書館、大学に携わる者として、専任の人材を確保できるような、そういう制度的な枠組みということも求めていく必要があるのではないかと考えます。
【大藪委員】  ありがとうございました。そのとおりだと思います。また、いろいろ教えてください。
【竹内主査】  ありがとうございました。ただ今大藪委員から御発言がございました大学図書館の職員の養成に係る問題については、次の石田委員の御報告の中でも少し御言及があるかと思いますので、またよろしくお願いいたします。
 それでは、堀田委員お願いできますでしょうか。その次、北本委員にお願いしたいと思います。
【堀田委員】  堀田です。どうもありがとうございました。私も現在大学図書館長という立場に一応ありますので、うんうんうなりながらお話を聞いていたところです。
 今、画面に示されているこの最後のページのところで、課題の整理というのは「ほぼ実施済み(?)」ということで、電子ジャーナルの問題やリポジトリのことや研究データ管理のことというのを挙げておられたと思うんですが、多分以前にもお話あったと思うんですけど、電子ジャーナルの問題は、結局のところ図書館で扱いましょう、扱いますということで、大学側も図書館側も恐らくそういう認識で何とか、前回だったかな、前々回だったかな、何とかうまくやれてきている、うまくというのは括弧つきだというようなお話あったと思うんですけども、そういうような認識で。ただ、研究データ管理に関しては、まずは課題の整理はできていても、課題の範囲の定義がまだなされていないのではないか、というような感じを持っています。
 それで、この辺り、質問というか、現状の御感想みたいなことでも構わないんですけども、例えば研究データ管理というような今後新しく定義されてくるような問題について、大学側がこれは図書館がやるべきだと決めて課題を整理していくべきなのか、あるいは、図書館側が、これはどこまでを自分たちがやり、ここから先は例えば研究推進のような部署でやってくれというようなことをむしろ積極的に声を上げていったほうがいいのか、何か感触というか、御感想というか、そういうのはお持ちでしょうか。
【佐藤委員】  ありがとうございます。確かに堀田先生がおっしゃられるように、研究データ管理の切り分けといいますか、役割分担というのは、どこの大学においても非常に難しい問題になっているかと思います。おっしゃられるようなことというのは、これはアメリカの大学の例としては、先ほど挙げたところでいうと、非常に早い時点で、この辺の2007年から2010年ぐらいにかけてのあれですけども、非常に大きなグラントがついて、パデュー大学と、それからイリノイ大学のアーバナ・シャンペーン校でプロジェクトが開始をしているんです。これが大きなアメリカの大学図書館に広がっていくようなきっかけになったわけです。
 これは、要するにパデューとかイリノイというのが、両方とも州立大学ですけども、そういう中で、自分たちのプレゼンスを上げていきたい。資金的な提供もIMLSのほうから受けられるということで積極的に手を挙げていったんです。この中で図書館が中心となって進めていったという状況があります。
 ですから、日本の大学の場合に、要するに、何もなくて上からこういうことが必要だからやりなさいということではなくて、そういったプロジェクトというか、資金も含めた形でのプロジェクトとして、何かそういうモデルケースとなるようなものを設定して、その成果を皆で共有するというようなやり方が望ましいのではないかと。でき得るならばそういう形を取っていかないと、どこの大学も手を挙げない。要するに自ら進んでという形にはなかなかなりにくいのではないかというのが私の今考えているところであります。
 こんなことでお答えになっていますでしょうか。
【堀田委員】  ありがとうございます。最後に書かれていた変化を導くためのプロジェクトの設定ということと関連したお話だと思うんですけども、確かにそういう何か呼び水となるようなものを、国なりが設定して考えないことには、何もないところで、さあ、やりなさい、頑張ってやりなさいと言われても、多分頑張ろうにも限度がありますから、やっぱりそういう具体的な何かプロジェクトの設定、それは確かに1つの重要な方策だなと思います。そういう可能性ということを理解いたしました。ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。今の質疑については、特に事務局の皆様方にお願いですが、記録上、アンダーラインを引いて残していただきたいと思っております。
 では、次に、北本委員、お願いできますでしょうか。その後、尾上委員、お願いいたします。
【北本委員】  全体像が分かりやすい発表で、私自身も大変勉強になりました。お聞きしたいのは、16ページのネットワークの図に、専門職、支援職、管理職という分類が示されている点についてです。もちろん日本の状況とは異なるということは前提の上で、今後人材を育てていくときに、この3つのどの辺りの人材が日本で最も不足しているのかという点が1つです。
 もう一つ、特に専門職の人材に関係する質問です。先ほど司書課程の議論もありましたが、いわゆる伝統的な図書館情報学の中で教育することを考えると、図書館情報学の中だけで教育が完結するのか、あるいは周辺分野と一緒にやる必要があるのであれば、どの分野と一緒にやらなきゃいけないのか。その点についても考えをお聞かせください。
【佐藤委員】  北本先生、ありがとうございます。北本先生がおっしゃられた図というのはこの図でよろしいですか。
【北本委員】  そうです。
【佐藤委員】  基本的に、アメリカにおいても、日本においても、要するに、例えば目録のオンライン化というのは、図書館職員あるいは図書館情報学の研究者が中心になったわけではありませんで、要するにコンピューターあるいはネットワークの専門家が主導してつくり上げられてきたものでありますので、あくまで図書館情報学、あるいは図書館の分野というのは、応用分野でありますので、いろんな方々、いろんな専門分野の人たちが協力をして連携をしてつくり上げていく、そういう分野であるべきだと思っています。
 下のほうにあるリエゾンとか、インストラクションとか、特にサブジェクト、主題専門家であるとか、レファレンス、コレクション構築、こちらのほうは、要するに図書館情報学プロパーといいますか、非常に旧来の図書館になじみやすい部分でございますので、そういう面ではあまり考える必要はないかとは思うんですけども、こちらの電子情報資源であるとか、デジタルサービス、それからメタデータ、こういった部分に関しては、ますます、それからインフォメーション・テクノロジー・システムズとかとありますけども、こういった部分については、要するにカリキュラム内容として、きちんと専門家、情報系の先生方からの指導を仰ぐとかいうことももちろん必要ですし、場合によってはそちらの専門課程で育まれてきた方々を採用して、職場で活躍をしていただくという、そういったことも必要になるかと考えています。よろしいでしょうか。
【北本委員】  分かりました。
【佐藤委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。尾上委員、よろしくお願いいたします。
【尾上委員】  尾上でございます。佐藤先生、ありがとうございます。米国の例というか、状況を非常につぶさに見ると、悲しい限りなんですが、12ページ目の、これ、すいません、半分興味本位で、半分、大学経営を考えたときに至って真面目にお伺いしたいんですけども、この資料の出典がアニュアルサラリーサーベイというところから出ていると思うんですけども、そういう面でここでは職能別で書いていただいているんですが、それに対して、実際にサラリーレベルの例えば絶対値とか、あるいはそれぞれにおけるばらつきみたいなものは、もし情報があれば教えていただきたいんですが、いかがでしょうか。
【佐藤委員】  尾上先生、ありがとうございます。それは要するにサラリーの金額ということでしょうか。
【尾上委員】  はい。
【佐藤委員】  数値としては、このアニュアルサラリーサーベイに、要するに例えば館長職だったら幾らぐらいとかというのは載っております。要するに、結局ARLにしても、ALAにしても、職能別の労働組合的な要素が強うございますので、要するに自分たちの専門性と、それから、それが社会にどのように評価されているかということに対しては、それがサラリーという形で表れるわけですので非常に熱心でありまして、それでこういうサラリーサーベイをつくっているわけですが、例えば図書館長職でいくと、この前見た限りでは、最大で日本円で3,000万円ぐらいだったと思いますが、要するに、館長職で2,000万円から3,000万円ぐらい、日本円にすると、そういうレベルだったかと思います。
 それぞれに、全部職能別の、要するに、御存じのこととは思いますけども、求人情報のときに、職の条件、要するにジョブディスクリプションとして、サラリーの金額もつけて求人をするわけですので、それは資料を見れば分かるんですけども、今回の場合にはそこのところ詳しくあまり見る時間的な余裕がございませんでしたので、具体的にこれが幾らぐらいというのはちょっと把握できていない状況にありますので、御勘弁いただければありがたいです。
【尾上委員】  ありがとうございます。館長は取りあえず置いておくとして、いわゆるスペシャリスト、いろんな専門別で大分ばらつきがイメージとしてはありそうな感じだと思ったらよろしいでしょうか。
【佐藤委員】  それほどでもないかとは思います。
【尾上委員】  なるほど。ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。ほかに御意見、御質問等ございませんでしょうか。
 引原委員、よろしくお願いいたします。
【引原委員】  引原です。上位の情報委員会とかで議論されていたときに、やっぱり司書の資格とかスキルが、司書課程の司書のことですが、現代にマッチしてないんじゃないかということを言われる委員の方が結構多くて、結局、大学図書館の司書、大学図書館に限った話ですけど、司書というものの能力がきちんと伝えられていないんじゃないかと思います。実際に日本の大学の司書の方々の能力クラスというのがどの辺にあるかというのは、佐藤先生、どんなふうにお考えでしょうか。
 例えば今12ページの絵がございますけども、この絵でいえば、総合的に日本の場合求められてしまっているわけですよね。そうすると、平均値でもないし、どういう考え方をしたらいいのだろうかと思うんです。それを例えば情報委員会で御説明しようとした場合に、スキルをどう説明すればいいのだろうかという、その辺について御意見いただければと思うんですけど。
【佐藤委員】  ちょっと難しい御質問かとは思うんですけども、結局、私の経験的な話をさせていただきますと、私も大学図書館で20年ほど仕事をしてきたのでありますけども、その場合に大体2年とか3年で変わっていくわけです。ですから、そうしたときに、きちんと知識なりスキルを身につけたいと思ったときには、個人レベルでかなり努力をする以外にない。要するに、研修というところで確保される、確保できるというよりも、個人の努力といいますか、研さんによって賄っていかなきゃいけないという状況がどうしてもあります。要同じことだけやっていければいいのであれば、時間がかなり有利に働くわけでありますけども、短期的なスパンの中で変わっていくというときには、専門的な技能を身につけるためには、かなり集中的に努力をする必要がある。もちろん大学図書館の職員の方々、国立も、私立も、公立でも、それなりに努力をされている方はたくさんいらっしゃるということは存じ上げておりますけども、しかし、いかんせん、そういう部分でのスキルが長続きするというか、長い間スキルを向上させていくような仕組みになかなかなっていない。それから、そういうモチベーションを保ちにくいというのは確かに言えると思いますので、その点についても今後考慮していく必要があるのではないかと考えております。
【引原委員】  大変ありがとうございます。今先生おっしゃったように、大学の専門職のリカレント教育というのが非常に今重要になっているんですけれども、採用時はそれほど能力要らなくても、専門としてそのときに集中的に先生おっしゃるようにやらないといけないときに、やはりちゃんと教育してから持っていかないと低くに流れるんですよね。そういう意味では非常に良い示唆をいただいたと思いました。ありがとうございました。
【佐藤委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。この問題について、私は以前より「大学図書館員というジェネラリスト」ではもはや無理ではないかということをずっと申し上げてきておりますけれども、今回の佐藤委員の資料を見ていただくと分かるように、アメリカの場合は明らかにかなりの部分で領域的なスペシャリストが導入されていると思うんですが、それが可能なのは、一つ一つの大学図書館の職員数の規模がかなり大きいということがあると思うんですね。そのような状況ですからスペシャリストを置くことができるんだと思いますけれども、日本のような職員の規模が非常に小さいところでスペシャリスト的な者を置くというのは非常に難しいという状況にあると思いますので、北米的な考え方と日本の現状みたいなものはすぐに合わないというのは先ほど佐藤委員もおっしゃっていたところでありますけれども、やはり一人一人のスキルの向上ということを考えても、日本では相当仕組みを工夫をしないとうまくいかないというのもはっきりしていることではないかと思います。
 すいません、司会が余計なことをしゃべってしまいました。
 引原先生、まだ手が挙がっておりますが、何か補足で御意見等ございますでしょうか。
【引原委員】  すいません、下ろします。申し訳ございません。
【竹内主査】  ありがとうございます。特にないようでしたら、次の九州大学の石田委員によります情報専門職の育成という御報告に移らせていただきたいと思います。また、石田委員の御報告が終わった後に少し時間を取りまして、佐藤委員の御報告も含めた総合的な討議という時間が持てればと思います。
 では、石田委員、よろしくお願いいたします。
【石田委員】  では、発表のほうを始めさせていただきたいと思います。九州大学の石田です。よろしくお願いいたします。
 本日は、情報専門職の育成の事例の1つとして、九州大学統合新領域学府ライブラリーサイエンス専攻における人材育成の事例を御紹介させていただきます。
 私は九州大学の附属図書館に所属しているんですけれども、九大の場合は、教員の所属組織と教育担当の組織が異なるため、私は教育担当といたしましてはライブラリーサイエンス専攻を担当しておりますので、その関係で御紹介させていただくことになりました。
 本専攻は、ライブラリーが片仮名で表記されていることからも分かるかと思いますが、従来の図書館学というものを追究するものではなくて、片仮名で表記される新たな「ライブラリー」というものを定義して、それを探求していこうという専攻です。
 情報専門職の育成というのを目指しておりますけれども、先ほどもお話が出ました司書課程で育成されてきた公共図書館に焦点を当てた司書ということではなくて、公共図書館にかかわらず、情報の管理・提供を行う機関もしくは部署で働く情報専門職の育成を目指しております。
 なお、これからお話しすることは専攻のことにはなりますけれども、私の視点から見たものになるということを御了承いただければと思います。
 では、次に本専攻の概要について御説明したいと思います。ライブラリーサイエンス専攻は統合新領域学府というところにございます。この学府は2009年に設置されまして、九大の中では比較的新しい学府と言うことができます。学部はございません。
 2011年に修士課程が設置され、今年で11年目を迎えます。
 定員は、修士が10名、博士が3名と比較的小規模な専攻です。
 本専攻のほか2専攻がございますけれども、共通しておりますのが、ユーザーの視点から科学を再構築するということで、既存の領域から新しい領域を生み出すことを目指している学府でございます。
 専攻の設置の背景を御紹介させていただきたいと思います。少し古いものにはなりますけれども、専攻のコンセプトがよく表れていると思いますので、専攻設置当時の背景を御紹介させていただきたいと思います。
 ウェブの登場やICTの発展等により情報の管理・提供に関しても様々な課題が出てきました。デジタル情報が増加して、ウェブ等を通じて流通するようになったことで、デジタル情報へのアクセスが容易になりました。それと同時に、受け手であるユーザーのニーズが多様化したり、また高度化してきたという現象が見られました。
 情報を扱う図書館や文書館等の情報サービス機関では、これまでそれぞれが扱う情報の内容、媒体、用途などによって組織化を行ってきておりましたが、デジタル化された情報というのはこれらの制約が小さくなります。少し乱暴な言い方をさせていただければ、これまで別々のものとして扱われてきた情報や資料を、デジタル化されたことによって同様に扱うことも可能な状態になったと言えるかと思います。
 本専攻ではこの点に着目して、個々の情報サービス機関の事情ではなく、受け手であるユーザーの視点から情報の管理と提供の実現を考える必要があるのではないかということになりました。それには、情報の管理と提供の仕組みだけでなくて、情報の性格を見極めて適切に対応するための専門的な知識を有する情報専門職の育成も必要ということになりました。
 また、この当時の大学図書館の事情も少し御説明させていただきたいと思います。御存じの方も多いとは思いますけれども、設置の前年には「大学図書館の整備について」という審議のまとめが出され、その中で大学図書館の業務内容の変化とともに、大学図書館職員に求められる資質・能力が具体的に示されました。この青い字の部分になります。ここでは大学図書館職員にもかなり高度な専門性が必要とされていることが分かります。
 また、大学図書館職員の育成確保の在り方として、ここに示すような提案もありました。大学図書館職員は、学部である学問を修めた上で、大学院で情報専門職に関する知識を学ぶというようないわゆるアメリカ式の情報専門職の育成が望ましいこと、また、大学図書館の現場を考えると、個々の現場で育成を行うのではなく、人事交流などを利用して、連携しながら職員に大学で学ぶ機会を設けられるようにすることが重要であるというようなことが示されております。
 こちらの背景は現在のものに少しアップデートしたものになりますけれども、設置当時に示した課題というのは、現在解決されているというわけではなく、さらに重要な課題になっているのではないかと考えております。
 このような背景がございまして本専攻が設置されたわけですけれども、ここでは本専攻の理念と教育研究上の目的を示しております。本専攻の理念は、「ユーザーにとって真に意義のある情報の管理・提供の実現」です。先ほども申し上げましたように、それぞれの情報サービス機関の事情や扱っている情報・資料によって管理・提供するのではなくて、ユーザーのニーズ、利用の仕方等、ユーザーにとってアクセスしやすい、利用しやすい情報の管理と提供を実現していこうというものでございます。
 これには図書館情報学、記録管理学・アーカイブズ学などの分野で検討されてきた情報の管理・提供に関する知識を得ることも重要ですし、また、デジタル情報を扱うようになることも想定されることから、情報科学に関する知識が必要ということで、この3つの分野が本専攻の柱となっております。
 養成する人材はここに示しているものでございます。この中の特定領域の情報専門職というのは、図書館でいえばサブジェクトライブラリアンを想定していると考えてください。つまり、大学図書館職員も、本専攻が養成する人材として対象としていることになります。
 次は本専攻の教育組織です。本専攻は、教育の目的のところでも示しましたように、図書館情報学、アーカイブズ学・記録管理学、それから情報科学が主な領域となっておりまして、それぞれの分野の教員が参画しております。
 また、図書館や大学文書館等、情報の管理と提供の実践を含む組織の教員も参画しております。
 さらに特徴的なのは、現職の大学図書館職員が兼任教員としても参画しているところでしょうか。
 さらに、教員として参画しているわけではありませんけれども、例えば私の担当している科目では、図書館職員の方々に講師で来ていただき、最先端のサービスやスキル、知識というものを講義してもらう等、図書館職員の方々に専門的な知識や技能を伝えていくというような連携も行っております。
 こちらがカリキュラムになります。教員組織と同様、図書館情報学、アーカイブズ学、情報科学が柱となっております。
 そのほかに関連する科目を用意しておりますが、全て情報の管理と提供に関わるところを主に科目として構成しているということになります。
 学生には、自分が興味のある分野だけでなく、広い視点、視野を持てるようにほかの分野の専門科目も履修するように進めております。実際に学生の履修を見ていると、いろんな分野の科目を履修しておるようで、我々の意図というのは伝わっているのではないかと思います。
 こちらは教育カリキュラムとは異なりますけれども、少し即した活動として幾つか御紹介させていただきたいと思います。
 本専攻は2018年からiSchoolsという教育組織から成るコンソーシアムというものに参加しております。iSchoolsというのは、2005年に研究志向の強いインフォメーションスクールで結成された世界的な組織でして、現在では全世界で100以上の教育組織がメンバーになっております。
 情報に関する事項というのは、ほかの国の動向などを把握しておくことも重要だと考えておりますので、本専攻では、他国との連携も積極的に行って、世界水準に見合う教育や研究を目指しております。
 なお、このiSchoolsには日本では筑波大学の図書館情報メディア研究科と本専攻がメンバーになっております。
 次は、シンポジウム、ワークショップ等のイベントの御紹介でございます。我々の問題意識というのは図書館や文書館等にとっても非常に大きな問題になっているのではないかと考えています。これらの問題意識を共有して一緒に解決していきたいというふうな思いから、ここに示したようなイベントというのをほぼ毎年企画しております。
 こういったイベントは広く周知させていただいておりますので、研究者の方々、学生さんだけではなくて、図書館職員の皆様とか、文書館等にお勤めの方々、たくさんの方々に参加していただいております。
 ちなみに、青字で示しているのが最近図書館でも話題になっております研究データ管理等のイベントということになります。
 先ほども佐藤先生のほうでもありましたけれども、イリノイ大学で先進的な研究データ管理サービスをやっている部署から講師として来ていただいたこともございます。
 これらは直接的な教育ということではないんだとは思いますけれども、本専攻の特性を考えますと、個人的にはこういった活動も重要だと考えております。
 それから、次は図書館職員に対する教育の事例を御紹介させていただきたいと思います。ここでは九大図書館の事例を御紹介いたします。
 九大図書館では、専攻が設置された当時に、勤務時間の調整や人事交流などの制度を利用して、現職の図書館職員も学生として修学できるようにしてもらいました。これまでに附属図書館の職員だった人が修士課程や博士課程に入学しております。数はスライドに示しております。
 また、人事交流を利用してほかの大学の図書館からしばらく九大の図書館職員として働きながら、同時に本専攻に入っていただき、修士の学位を取得して元の大学に戻っていくというようなケースもあります。まだ数は少ないのではないかと個人的には思っておりますが、こういう事例もあることを御紹介させていただきたいと思います。
 入ってきた職員の方々は、実務上での問題意識というのを研究に仕立てるというのは本当は非常に難しい問題でもあるんですけれども、実務を経験したからこそ得られる図書館職員としての問題意識をうまく皆さん修士論文に取り込んで研究をなさって、修了なさっております。
 ちなみに、反対の方向性と言えると思うんですけれども、本専攻の修士を修了して附属図書館に就職した事例もございます。
 ここからは少し話が変わりまして。本専攻も設置から10年以上が経過しましたので、その間に情報の管理と提供に関しても新たな課題が出てきております。
 大学図書館に関連する課題の1つとしては、研究データ管理の必要性だと思います。もちろん研究データ管理支援の必要性ということも求められていますが、この辺りにつきましては、前回の会議の議題でもございましたので、割愛させていただきたいと思います。
 同時に、近年では、デジタルトランスフォーメーション、つまりDXの推進ということが言われております。九大でもこのDX推進に関して動きがありまして、本専攻とも関係しますので、本専攻の今後の方向性との関係で少し御紹介させていただきたいと思います。
 九大では今年の4月からデータ駆動イノベーション推進本部というものが設置されました。その組織構造を示しているのがこのスライドでございます。ここで注目していただきたいのは、DX支援・実行を担当する5部門のうちの1つであるのが研究データ管理支援部門です。大学としてデータガバナンスに基づいたデータマネジメントをしていくために設置されることになりました。
 この部分についてもう少し詳しく説明させていただきたいと思います。研究データ管理支援部門の内容はここに示したものですけれども、研究者の研究データ管理を支援する部門でして、研究データ管理のリテラシー教育や研究データの公開支援といった人的支援というのは、この部門のオープンサイエンス推進ユニットが担うことになっております。このユニットは、附属図書館、ライブラリーサイエンス専攻、学術研究・産学官連携本部、IR室と連携することになっています。
 ライブラリーサイエンス専攻には、このユニットと連携しながら研究データ管理に係る人材育成をしていくことが期待されております。
 九大ではこれから本格的に始まるものなんですけれども、研究データ管理支援の実践の場ができますので、本専攻のような人材育成の場が1つの大学の中にあるということは、このスライドで説明されているような実践的な育成が可能だと考えております。
 最後に、少し今後の人材育成について私見を述べさせていただきたいと思います。九大の中での動きもありますように、今後は研究データ管理支援を支援する人材の育成が急務であると考えています。
 研究データ管理支援には、研究に対する理解、それから研究データライフサイクルの理解なども含めて高度な知識が必要と思われますので、本専攻のような大学院での教育が必要なのではないかと考えています。
 専攻のカリキュラム全体をこれらに合わせるということは難しいかと思いますけれども、本専攻でも十分に学べるようなカリキュラムにしていきたいと思っています。
 また、正規の学生でなくても履修できるような機会やインターンシップの実施、シンポジウムやワークショップなどの開催等、柔軟な形で、また臨機応変に知識やスキルが学べる機会の提供をつくっていくことが必要だと考えています。
 具体的な案はまだまとまっていないんですけれども、検討している事項もございますので、皆様にお知らせできる状況になりましたら共有させていただきたいと思っております。
 とはいえ、本専攻が研究データ管理支援人材の育成だけを目指せばよいのかということではないと思います。私自身も設置当時の背景を今回の資料を作るに当たって見直してみましたけれども、そのときからの情報の管理・提供に関する根本的な問題というのは変わっておりませんので、やはり情報の管理・提供に関する様々な情報サービス機関や部署では働けて活躍できる人材の育成を目指していきたいと思っています。
 これには単に自動的に管理するようなシステムを構築するという技術的な面ではなくて、情報の性質や特性、ユーザーの利用や文脈を想定していることになりますので、これらのことも考慮できるような人材を育成していきたいと思っています。
 また、社会や情報流通の変化というのは激しいですので、そういった変化にも臨機応援に対応できるような教育体制も維持していきたいと思っております。
 最後は私の希望になりましたけれども、私の発表は以上でございます。どうもありがとうございました。
【竹内主査】  石田委員、ありがとうございました。先ほど来の議論にあった大学図書館にはどういう人材が必要か、どのように育成するのかというコンテクストに沿う形で、九州大学における情報専門職の育成の現状について御説明いただくとともに、また、九州大学において研究データ管理の体制をどのようにつくっていくのかという実例もお示しをいただいた上で、今後の人材育成の在り方について御示唆をいただいたかと思います。
 それでは、ただいまの石田委員の御発表に対しまして、御意見、御質問等ありましたらよろしくお願いいたします。
 では、加藤委員、よろしくお願いいたします。
【加藤委員】  加藤でございます。大変興味深い人材育成のお話を伺わせていただきまして、誠にありがとうございます。
 私からは簡単な質問をさせていただきます。ライブラリーサイエンス専攻には学部がないというお話でしたけれども、その専攻に進学される学生さんというのは、ベースとしては、例えば情報科学を勉強している人が多いとか、デジタルヒューマニティーの人が多いとか、どのような学問をベースとした方が大学院に進学されているのでしょうか。
【石田委員】  そうですね。多くは、九大の中でいえば、文学部の学生さんとか、文系の学生さんが来る場合もありますし、もちろん理系の工学部等を出た方が来るということで、文系のほうが多いことは確かだと思いますけれども、最近は理系の方も増えてきているということになります。
 それから、他大から来る場合は、割と図書館情報学とか司書課程で図書館のことをちょっと勉強して、さらに勉強したいという方がいらっしゃっている場合もあります。
【加藤委員】  ありがとうございます。私は学生の中にもライブラリーで働く人は文系であるという思い込みがあるように感じていたので、伺わせていただきました。ありがとうございました。
【石田委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。ほかいかがでございましょうか。
 大藪委員、どうぞお願いいたします。
【大藪委員】  ありがとうございました。このようなことを10年前からやっていらっしゃったのか、もっと前ですかね、やっていらっしゃったんだと思って、知らなくて、本当に勉強になりました。ありがとうございました。
 さきほどの先生の御質問と似たところもあるんですけども、今度は出口のところを伺いたいと思います。まず入り口として、10人ずつぐらいが入ってくる。普通、現在は修士でもなかなか人が入ってこなくて困っているような状況なんですけども、それが毎年入ってきて、毎年、出口として就職していくのかというのが2点目、また附属で就職されたということですが、ほかの大学に就職されたのかという点です。4点目にはほかの大学でもこういうシステムがあるのか、5点目は例えば反対にいろいろな専門がある人がプラスアルファで取れるというようなシステムがあれば人材が広がると思いましたが、その辺ができるのかどうかということを教えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
【石田委員】  ありがとうございます。出口ということで少し御紹介させていただくと、確かに大学図書館職員になった例というのは、九大に就職した例はありますけれども、ほかの大学に就職した例というのは私が知る限りはないです。
 ただ、現職の方も我々受け入れておりますので、もともと私立大学の図書館の部署に勤めておられて、そこからうちの大学に通ってきて、そのまま、同じ部署に戻るというわけではないですけども、現職の方なので、こちらで修士を取られてまた戻るというようなこともあります。
 ただ、大半の学生は、やはり大学図書館の職員自体の試験を受けなければいけないとか、そういうことがありまして、なかなか厳しいところがございますので、大学図書館のための職員試験を受けるための勉強もしなきゃいけないというところで、あまりもともとそこを目指すという人はそれほど多くはございません、正直に申し上げると。
 ただ、ほかのところで、企業とか、そういったところでの就職というのも非常にいいんですね。ですので、企業に就職していく方もいます。そのときに学生には私も伝えているんですけれども、例えば我々は情報の管理と提供という場ではありますけれども、理系と文系をつなぐような異なる分野の人たちのコミュニケーションを取れるような立場でもあるので、そういうところで活躍できるような人材になっていくんですよというのをアピールして、例えば企業の情報管理とか、そういったところに就職されるという方もいます。それでお答えになっていますでしょうか。
【大藪委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。ほかいかがでございましょうか。
【大藪委員】  他大学でこういうのあるかどうかという質問です。
【竹内主査】  そうですね。それもありました。
【石田委員】  他大学では、大学院を持っているのは幾つかあると思うんですけれども、筑波大学でもございますし、慶應大学もございますし、そのほか、愛知淑徳とか、そういうところで図書館情報学に関連するようなところはございますし、学習院大学ではアーカイブズの専門の専攻がございます。私が把握しているところでは、ほかにもあるかもしれませんけれども、今申し上げたようなところかと思います。
【大藪委員】  分かりました。ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。深澤委員、先ほど挙手ただいたかと思いますが、よろしくお願いいたします。
【深澤委員】  深澤でございます。お話をお伺いして、正直言ってとってもうらやましいなと思いました。
【石田委員】  ありがとうございます。
【深澤委員】  今、入力である学生の話と出力である卒業生の話があったので、じゃあ、例えば早稲田で同じようなものをつくろうとしたら何をしなきゃいけないんだろうなと思ってずっとホームページを拝見していたんですが、先生方なんですが、皆さん、所属というのがあって、例えば岡崎先生は人文科学研究院だとか、三輪先生は附属図書館だとかって、これ全員、兼任の先生なんですか。
【石田委員】  はい、そうです。基本的には兼任で、ほかの学部を担当していらっしゃる先生もおります。実は私だけ専任で、ライブラリーサイエンス専攻しか持ってないんですけども。
【深澤委員】  ああ、そうなんですか。
【石田委員】  はい。多くの先生方は、人文だったり、システム情報科学のほうで担当されております。兼務というんですかね。
【深澤委員】  はい、分かりました。それって人を集めるのって大変じゃなかったでしたか、つくるときに。
【石田委員】  はい、大変です。
【深澤委員】  そうですね。
【石田委員】  あと、持続性みたいなものも、例えば退職された先生方の次の方をどういうふうに補充するかというところも難しいところではございます。
【深澤委員】  ありがとうございます。参考にさせていただきます。
【石田委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 それでは、次に堀田委員、よろしくお願いいたします。
【堀田委員】  堀田です。どうもありがとうございました。大変興味深いというか、そうか、こうこういうふうなことをやっていくのかというのを半ば感心しながらお聞きしておりました。
 それで、最近の動きに関して、DXの推進で動きがあったということで御紹介いただいた13ページのところでの部門構成というのが、たしか2022年の4月からとおっしゃっていたと思うんですけれども、これ、いろいろなモチベーションがあってこういう推進本部というのが立ち上がり、部門構成というのがあると思うんですけども、これはやっぱりDXを利用したというか、DXに関連した研究オリエンテッドな組織であって、その中にこういう研究データ管理支援部分があるのか、あるいは、そういうオープンサイエンスという流れからこういうものの必要性があって、それでDXを利用したような研究も加えていこうということになったのか。その辺り、どういうような方針というか、方向性でこういう組織がつくられたんでしょうか。
【石田委員】  すいません。私、DX推進本部の設立には直接関わってないもので、すいません、申し訳ないですけど、私、そこまで把握はしていないというのがお答えになるかと思います。
 ただ、これは私の意見ということで申し上げますけれども、図書館とか、それから、私の中でも、こういう分野におりますと、研究データの管理支援というのはいずれやらなければいけないだろうという意識はございました。ですので、それを何とか実現する形というのは必要だなと私は個人的に考えておりました。
 私自身は部門をつくるような力はございませんので、こういうお話があったときに、うまく形にしてくれたなとは思っておりますが、最初の先ほどのどういう経緯でというところは、すいません、私も詳細は存じ上げないので、御回答はこれぐらいにさせていただきたいと思います。すいません。
【堀田委員】  どうもありがとうございます。多分大きな流れの中で、タイミング的によかったというか、ちょうどそれにはまるところがあったというような、そういうような感じかなと思います。
【石田委員】  うまく組み込んでいただけたというような意識でおります。
【堀田委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  それでは、坂井委員、お願いいたします。
【坂井委員】  今日は大変貴重な話を、しかも現実の経験談とともにしていただきまして、私どもにも大変参考になりました。ありがとうございます。
【石田委員】  ありがとうございます。
【坂井委員】  今日の発表資料の中ですと、6ページ、7ページの辺り。図書館をめぐる状況というのは日々大変大きく変化し続けているわけですけれども、先ほど来あったように、図書館員のリカレント教育のような場としても御活用いただいているというのが1つあります。リカレント教育をより有効にするためにはどうするか。ちょっと長い目で見ますと、これからの図書館というのは、例えば研究データといっても、単なる文字列とか画像だけじゃなくて、もしかすると3Dの動画みたいなものまで入ってきたりして、どんどん変化していくと思うんですよね。それは必ずしも最先端の学問だけじゃなくて、考古学のようなものにまで波及していくような気配がある。最近、ヒューマニティーズの先生たちなどと話していて、ウクライナの戦争の3D、立体化をやっているような先生もいらっしゃって、そういうものの研究データとかを拝見したり相談されたりしているときに感じていることがあります。ファカルティ・ディベロッペメント、教員組織もダイナミックに考えていかなきゃいけないと思うんですけども、その辺りはどうなんでしょうか。例えば10年とかいう単位で見たときに、組織がこういうふうに変わっていって、関わっていただきたい先生もこんなふうになっていくというような、そういう見通しはいかがでしょう。リカレント教育やファカルティ・ディベロッペメントを組織としてどう考えていくか、あるいはその役割を誰が担うか。専門職大学院的なものというよりは、もっと深くて広いものになるんじゃないかなと思っていたりしますけど、その辺りの人間教育の設計とか、ファカルティ・ディベロップメントの設計とか、そういうもののお考えみたいなのをもしあればお聞かせいただきたいと思うのですけれど、いかがでしょうか。
【石田委員】  ありがとうございます。ちょっと難しい御質問なので、直接的なお答えになっているかは分からないですけれども、ファカルティといいますか、教員組織の構成というのは、我々も非常に難しいところではあるんですね。というのは、教員組織が直結する、専攻に直結する教員組織ではないですので、その都度、必要な人材を、教員をリクルートしてくるといいますか、そういうことが必要だとは思っています。そこで苦労している部分もあることは正直申し上げて事実でございます。
 ただ、こういう変化が激しい状況の中でも変わらない、絶対に教えなきゃいけない事はアーカイブズ等でも、記録管理でもありますし、図書館情報学にも原理原則みたいなものはございますので、そういうところは変わらずに、そういうものを教えられる教員というのは確保していきたいと思っていますし、また、状況に応じて少し内容が変わってくるところがあれば、そこはそれに応じて必要な教員をリクルートしてくるというような体制が理想なのではないかとは思っております。
 これは私の考えですし、現実にそういうことができているかというと、それはまた別の問題ということになるかと思います。
 あと、現場といいますか、うちでは図書館もそうですし、大学文書館、それから記録資料館といったようなところに属する教員がおりますので、そういった方々は割と今の問題というのにももちろん対応しておりますし、理解もしておりますので、そういった方々から最新の問題、事情というのも学生には教えることができるのではないかとは考えております。
 ちょっとお答えになっているかどうか分からないんですけれども。
【坂井委員】  ありがとうございます。今、研究データの関連事業というのが盛んに世の中で言われておりますけれども、やっぱり図書館ということを背景にしたときの立体的な学術の構成とか発展とかということはさらに次の課題じゃないかなという気がしまして、先生のこの辺の絵というのも、あるいは教育のやり方みたいなものも、やはり次の段階にまですごく大きな意味を持つような気がいたします。大変ありがとうございました。
【石田委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございます。では、引原委員、よろしくお願いいたします。
【引原委員】  すいません、引原です。御丁寧な解説ありがとうございました。前からお伺いしていて、どういう構成になっているんだろうと思ったりしていたので、非常に今日よく分かりました。ありがとうございました。
 坂井先生もおっしゃいましたけど、リカレント教育のところがやはりこれから中心になってくるんじゃないかなという気がするんです。14ページの絵を見せていただきたいんですが。それですね。この中でもいろんなフェーズのリカレント教育が多分起きてくると思うんです。そうすると、対象者が図書館職員だけじゃなくて、例えば技官の方々とか、情報系の方々とかいうようになってきて、コースとしてまとめ上げるのって結構大変だろうなと思ってしまいました。というのが正直なところなんですが、それは中のコースの分け方で対応できるのかなとも思ったりしていました。
 それは感想なんです。この上でお伺いしたいのは、このサイクルは、10年保存とか、それからコールドストレージとか書いてあるから、研究公正上の意味がかなり強く出ているように思うんですけれども、それは間違いないんでしょうか。
【石田委員】  研究公正というのは?
【引原委員】  データ駆動とかいうと、10年保存して公開してからでは間に合わないわけです。そういう意味から考えると、シェアと、それからクローズドとオープンというのがどっかで分岐するはずなんですけども、これ、ぐるっと回ると10年保存を必ず経ないといけなくて、公開できないような感じになっているので、その辺は……。
【石田委員】  それは一応絵としてはなっていますけれども、多分10年保存を待たずに、公開、再利用できるものはしていくというようなステップになっていると思います。
【引原委員】  あまりにも研究公正の色が強くなると、いや、どこの大学でも必ずそれ言われてしまって身動き取れなくなるんですが、そこのところは今後どういう形が実際かということをお示しいただいたらうれしいなと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【石田委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。石田委員の御発表のみならず本日の全体を通してということでも結構でございますが、御意見等ございましたらお願いしたいと思います。
【石田委員】  私のほうは共有外してもよろしいでしょうか。
【竹内主査】  外していただいて結構です。お手数おかけいたしました。
 まだ御発言をいただいてない委員もいらっしゃるかと思いますが、もしありましたら、よろしくお願いいたします。いらっしゃらなければ私から佐藤委員にお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。
【佐藤委員】  はい。
【竹内主査】  佐藤委員の最後のスライドに、先ほど少し議論になりました変化を導くための政策的なプロジェクトの設定というのがございましたけれども、このことについて具体的なアイデアをもしお持ちでしたら教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。
【佐藤委員】  具体的なアイデアというのは持ち合わせてはいないんですが、先ほど堀田先生から御質問にありましたように、何らかの形でそういった研究データに関連するようなプロジェクトを、図書館がひとつそこに組み合わさったような形で大学としての計画を立て、そういった計画に対して資金提供を行っていくというような、そういう枠組みが必要なのではないかということでここに書かせていただいたわけです。
 そういうことですので、どのような具体化をするかというのは今後の議論になるかと考えています。お答えになっていますでしょうか。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 じゃあ、すいません、ついでと言ったら恐縮ですけれども、石田委員にも私から1つ伺いたいことがあるんですが、よろしいでしょうか。
【石田委員】  はい。
【竹内主査】  前回の検討部会の議論の中で、データキュレーターという言葉が出てきていたんですけれども、石田委員がお書きになっていらっしゃる今後の情報専門職という意味での人材育成、スライドの15ページでしょうか、そのところでデータキュレーターといったような人というのは、先生もお考えの情報専門職の枠の中に入ってくるような人たちなのでしょうかということなんですが、いかがでしょうか。
【石田委員】  データキュレーターというのの定義がどういうものかによって、人によって定義が違うような気はしておるんですけれども、私が考えているデータキュレーターというのは、研究データに関して価値づけをするといいますか、きちんと出どころから、きちんとデータに関しての保証をすると。保証といいますか、先ほど出たものでいえば、管理メタデータのようなものがきちんと付与された形で提供できるものというふうなことでデータキュレーターというのを考えると、我々の専攻で今後育成したいと思うようなものに含まれていると考えております。
【竹内主査】  分かりました。
【石田委員】  お答えになっていますか。
【竹内主査】  はい、大丈夫です。それで先ほどのお話からすれば、この辺りの人材育成に関するプログラムの展開というのを今後お考えになっているということですよね。
【石田委員】  はい、そうです。ただ、それぞれが、何といいましょうか、先ほども申し上げましたけれども、全員入学していただいて、2年間勉強して修士論文まで書いていただくというのは、それはそれでなかなかリカレント教育というところを考えると難しいとは思いますので、もう少し違った形の教育プログラムというものを提供できればというふうには個人的には考えております。
【竹内主査】  ありがとうございます。
 ほかの委員の先生方、いかがでございましょうか。
 北本先生、どうぞ。
【北本委員】  先ほど石田先生がインターンのことに触れていたと思います。これは本当にアイデアレベルのコメントですが、日本では様々な研究プロジェクトが動いていて、データの管理に困っているプロジェクトもたくさんあります。そういうプロジェクトにインターンを受け入れて、現場で問題を把握できる機会があると、お互いにメリットがありそうです。インターンのように外に出て行く機会を設けるというのは、非常にすばらしいことだと思いました。
【竹内主査】  ありがとうございました。そういういろんな人材育成のための様々なアイデアというのはぜひ皆様方からもいろいろいただかないと、プログラムを組織する人たちの中だけではなかなか広がっていかないかと思います。ぜひお願いをしたいと思います。いかがでございましょうか。
 まだ予定の終了時間までは数分あるようでございますけれども、特に御意見はないということでございましたら終了とさせていただきたいと思います。
 本日は、様々な御意見を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。本日いただきました意見等につきましては、事務局で整理をした上で今後の審議に生かしていきたいと考えております。
 最後に、事務局より事務連絡等があればお願いをいたします。
【大鷲参事官補佐】  事務局でございます。本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開させていただく予定でございます。
 また、次回につきましては、9月27日、火曜日を予定させていただいてございます。
 開催方法等につきましては、改めて御連絡させていただきます。
 事務局からは以上でございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 それでは、これで閉会とさせていただきます。
 
―― 了 ――

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