オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会(第3回)議事録

1.日時

令和4年6月13日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

竹内主査、尾上主査代理、石田委員、大藪委員、加藤委員、北本委員、坂井委員、佐藤委員、引原委員、深澤委員、堀田委員、村井委員

文部科学省

工藤参事官(情報担当)、藤澤学術基盤整備室長、大鷲参事官補佐、黒橋科学官、松林学術調査官

オブザーバー

高品 国立国会図書館利用者サービス部科学技術・経済課長

5.議事録

【竹内主査】  ただいまより、第3回オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会を開催いたします。
 本日は、コロナウイルス感染症の感染防止対策も行いつつ、現地出席とオンライン出席のハイブリッドで開催することといたしました。報道関係者も含め、傍聴者の皆様にはオンラインで参加いただいております。
 また、通信状態等に不具合が生じるなど、続行できなかった場合、委員会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
 まず、事務局より、本日の委員の出席状況、配付資料の確認と、オンライン会議の注意事項の説明をお願いいたします。
【大鷲参事官補佐】  事務局でございます。本日の出席状況でございますけれども、12名の委員の方々、全員御出席予定でございます。なお、東京都立大学の堀田委員におかれましては、途中からの御参画の予定となっているところでございます。
 また、オブザーバーといたしまして、国立国会図書館の高品課長に御出席いただいています。
 また、科学官、学術調査官といたしましては、黒橋科学官、それから松林学術調査官に御出席いただいています。なお、竹房学術調査官は御欠席でございます。
 続きまして、配付資料の確認でございます。お手元に議事次第があろうかと思います。本日配付資料といたしましては資料1、資料2がございますけれども、資料1につきましては、文教大学の池内先生御発表資料、それから資料2につきましては慶應義塾大学の倉田先生からの御発表資料でございます。不備等ございましたら、事務局まで御連絡いただけたら幸いでございます。
 続きまして、オンライン会議での注意事項ということで、本日、ハイブリッドで開催させていただいてございますので、まずはオンラインで御参加の委員の先生方への注意事項でございます。
 通信安定のため、発言する場合を除きまして常時ミュート(マイクOFF)の状態としていただき、ビデオ(ビデオON)の状態でお願いをしたいと思います。
 それから、発言する場合は、手のアイコン、または「挙手」をクリックしてお示ししていただけたらと思います。そして、御指名された先生は、御自身でミュートの解除(マイクON)の状態に操作をお願いできればというところでございます。
 また、発言の際には最初にお名前をおっしゃっていただきまして、聞き取りやすいよう、ゆっくりはっきり御発言いただけたら幸いでございます。
 そして、御発言後には、先生御自身にて手のアイコンを非表示、ミュート(マイクOFF)をオフの状態に戻していただければというところでございます。
 なお、個々のパソコンにおきましてトラブルが発生する場合もあろうかと思いますけれども、その際には、電話にて事務局に御連絡いただければというところでございます。
 続きまして、現地会議室に御参画の先生方でございますけれども、大変恐縮でございますが、発言する場合には手のアイコン、または「挙手」をお手元にあるiPadでクリックしてお示しいただけたら幸いでございます。
 それから、指名された先生におかれましては、端末のマイク、iPadのマイクを操作するのではなく、1つの集音マイクがございますので、集音マイクに向かってゆっくり、はっきりと御発言いただければというところでございます。なお、発言する際には、最初にお名前をおっしゃっていただきますと幸いでございます。
 こちらにつきましても、トラブルが発生する場合もあろうかと思いますが、その際にはその場で手を挙げて事務局までお知らせいただければと思います。
 事務局からは以上でございます。
【竹内主査】  御丁寧な説明ありがとうございました。本日の傍聴登録について御説明をお願いいたします。
【大鷲参事官補佐】  事務局でございます。本日の傍聴登録は194名となってございます。なお、報道関係者からも御登録がございます。
 また、本日も録音・録画が入りますので、御承知おきいただけたらと思います。
 事務局からは以上でございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。それでは審議に入りたいと思いますが、最初に前回の検討部会での検討内容について、少し振り返っておきたいと思います。
 前回は、まず、オブザーバーとして御参加いただいている国立国会図書館の高品様から、国立国会図書館のデジタルシフトという、これからの国会図書館の理念と、著作権法31条の改正によって実現した個人向けのデジタル化送信サービスの概要について御説明をいただきました。社会に対するインパクトが非常に大きい理念であり、また取組ですが、特に本年5月に開始されたデジタル化送信サービスについては、頻繁にマスコミなどにも取り上げられており、そのインパクトの大きさを物語っているかと思います。また、質疑の中でも、このことが大きな変化を引き起こし得るというような御発言がありましたけれども、今後、一部の分野では研究のスタイルを変えるような事態につながるのではないかと思っております。
 今後、より最近の出版物までデジタル化が進むことによって、提供される著作物の量的な拡大が図られ、日本の出版物のナショナル・デジタル・アーカイブとして発展することを強く願っているところであり、また大学図書館コミュニティーも、このような基盤構築に対してどのような貢献ができるのか、また、この基盤を大学における教育・学習・研究に資するようにするためには、どのようなコンテンツ提供環境の基盤を構築していくのかということが課題になっているかと思います。
 また、村井委員からは、大学図書館と著作権をめぐる課題について、特に近年の著作権法の改正が大学図書館にどのような影響を与えるかということについて、分かりやすく御説明をいただきました。
 その後の質疑では多様な課題について論じられましたけれども、最も重要な点は、著作権法と大学図書館の関係の問題を超えた、より大きな問題が提起されたことではないかと思います。すなわち、芸術的創作物のように、財産権の保護にも力点が置かれる必要がある著作物を扱う著作権法によって、人類の共用資産として広くアクセス、利用がなされるべき学術研究の成果としての著作物も扱われているということに起因する問題があるということです。学術論文の中にも、その内容として、経済的な利益を生み出す技術開発などの研究成果が含まれているわけですが、そのような経済的利益は、特許という別の制度で保護され、適正に利用するためのメカニズムが確立されています。それゆえ、著作物として流通する論文そのものに対して、多くの研究者は、経済的な利益の追求というよりも、むしろ1人でも多くの人に自由に読まれることを願っていると思いますけれども、著作権法が、そのような著作者自身の願いを実現する上での障害にもなり得るという問題提起であったと思います。
 前回の議論によって、研究者、すなわち著作者が自らの研究成果についての著作権を保持し、自らの意思で研究成果をオープンにすることの意義が改めて浮き彫りにされたと考えています。高品様からの報告が示していたとおり、過去の日本の著作物については、著作権法31条において認められている権利制限を活用することで、電子化とオープンアクセスを実現していく道筋がはっきりあるわけですので、問題は、これから生み出されていく研究成果としての著作物について、電子化・オープン化がどこまで徹底できるかというところにあるのではないかと思っています。
 大変長い振り返りになってしまいましたけれども、それでは、本日の議論に入りたいと思います。
 前回の会において、最後のほうでしたけれども、大学図書館が扱うのが電子ジャーナルとかデータベースではなくてコンテンツという捉え方をこの会議ではしているけれども、特に研究データについては、誰が何を扱うのかということが明確になっていないとの御指摘があり、若干の議論がありました。それを受けて、本日は、大学図書館の研究支援機能という観点から、研究データ管理と大学図書館の役割に焦点を当てて議論を進めていきたいと思っております。
 まず、この検討部会の発足時には学術調査官でいらした文教大学の池内有為先生より、第24回科学技術・学術審議会情報委員会において池内先生が報告をされました研究データと論文の公開に関する実態調査を中心に御報告をいただきたいと思います。
 続いて、慶應義塾大学の倉田敬子先生より、学術コミュニケーションの変容と大学図書館の役割について、研究データ管理を軸にお話をいただきます。
 では、池内先生、よろしくお願いいたします。
【池内先生】  どうぞよろしくお願いいたします。文教大学の池内有為と申します。私からは、科学技術学術政策研究所、通称NISTEPで客員研究官として実施しております複数の質問紙調査から、研究データの公開や管理に関する結果を共有させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、日本の研究者によるデータ公開の現状と課題について、それから、研究データ管理や公開・保存に対するニーズについてお話しした後、今、実際に大学や研究機関がどの程度、研究データ管理に取り組んでいるのかを御紹介いたします。
 研究者を対象としました結果は2016年から隔年で実施している調査から、大学や研究機関を対象とした結果については、2020年にJPCOARとAXIESが実施した調査結果を二次分析したものです。また、今回はシュプリンガー・ネイチャー(Springer Nature)社の国際調査の結果とも比較をしております。
 さて、まずは日本の研究者による研究データ公開の現状と課題についてです。
 2020年の調査では約2,000名を対象としており、1,349名から回答を得ております。多様な分野、それから多くの年齢層の方、それから所属機関の方から御回答をいただいております。
 まず、データと論文について公開状況を経年的に比較いたしますと、論文のほうは順調に公開経験が増えているのに対して、データの公開はそれほど進展していないというのが現状かと考えられます。
 分野別に見ますと、データ公開経験には大きな差があります。これから大学でデータ公開の支援について検討しておくのに当たって、押さえておくべきポイントかと考えられます。
 こちらはデータ公開経験と論文のオープンアクセス経験をマッピングしたものです。論文とデータの公開率というのは必ずしも相関しておらず、むしろばらつきがあって、分野による特性が明らかになりました。いずれも公開するのが難しい分野ですとか、論文は公開が進んでいるけれども、データのほうはなかなか難しい、相対的に進んでいない分野については、慎重な状況把握が必要だと考えられます。
 こちらは、シュプリンガー・ネイチャー社の国際調査と比較した結果です。地球科学分野に関しては同程度ですけれども、生物科学・医学・物理学などに関してはやや低めというふうになっております。
 これはもちろん、あくまでも質問紙調査の結果ですので、個々の研究者の公開状況とは異なる場合もあるかと考えられますけれども、全体の傾向として、参考にお示しいたしました。
 さて、データの公開方法ですけれども、2020年の調査では論文の補足資料による公開が最も多く、データの公開理由も「雑誌のポリシーだから」という回答が最多となっていました。現状では雑誌のポリシーがデータ公開を牽引していると考えられ、これは幾つかの国際調査でも同様の結果となっております。
 さらに、データを公開していないという方の理由も、1位が「雑誌のポリシー」だったのんですけれども、「所属機関にポリシーがないから」とか、「助成機関のポリシーではないから」という回答も見受けられました。これから大学や研究機関及び助成機関のポリシーが策定されていくのに従って、これまでは公開していなかったけれども、公開せざるを得ない研究者が増加していくことが予想されます。
 助成機関のポリシーに関しては既にその傾向が見え始めておりまして、データマネジメントプランの作成経験を持つ研究者の比率がやや増加しております。
 日本では2017年からJSTが、2018年からはAMEDなどが、データマネジメントプランの提出を求めていますけれども、やはり2018年から20年にかけて、これらの作成経験を持つ回答者が増加しています。
 続いては、研究者のデータ管理や公開・保存のニーズについて御紹介いたします。
 まず、データを整理したり公開する場合の資源の充足度について、4件法で尋ねた結果です。青いほうがネガティブな、「不十分」とか「やや不十分」という回答の比率になっております。
 これは3回の調査でやや改善はしてきたのんですけれども、依然として人材・時間・資金共に不十分であると認識している回答者の比率が高く、長期保存用のストレージですとか公開用のリポジトリに関しても、半数近くが不十分であるというふうに認識されています。公開用のリポジトリに関しては、そもそも「分からない」とする回答者も27%いらっしゃる状況です。
 そして、お待たせいたしました、ここが委員会での御議論に最も関連するところかなというふうに考えますけれども、データの整備や公開・保存について、図書館員やデータキュレーターに依頼したいと考えるかどうかといった結果です。
 全体の41.1%の方が依頼したいというふうに考えられておりまして、その具体的な内容が左の棒グラフで示している部分です。上位を見ますと、「適切なデータ形式への変換」とか「リポジトリの選択」、「ライセンスの選択」、「データを再利用しやすいように整える」ということで、分野ですとか、あとデータに関する専門知識が割と必要であると考えられるような項目が上位に来ており、7割以上の方が選択されています。
 それから、データを整備・公開する上でより詳しく知りたい項目はありますかということでお伺いしているのですけれども、87.5%の回答者の方が、これらの項目に関心があるというふうにしておりまして、データリテラシーやガイダンスに関するニーズが高いことがうかがえます。
 具体的に知りたい内容としては、「適切なデータ形式」とか「知財・ライセンス」、「データの安全な管理方法」などが上位に来ておりました。この点は、続くJPCOARやAXIESの調査結果でも再度触れたいと思います。
 最後に、日本の大学・研究機関の取組状況に関する調査の二次分析の結果です。調査の詳細につきましては、こちらのサイトで公開されております。
 この調査は2020年に実施されて、大学や研究開発法人など352の機関から回答を得ているものです。大学の回答は325件となっております。
 研究データ管理サービスの実施や検討状況について、実際に提供している機関と検討中という機関の合計は58%でした。その多くは機関リポジトリなどのプラットフォームの提供であって、リテラシー支援ですとかデータキュレーション支援を実施している機関は、まだまだ1桁%台というふうに、ごく僅かにとどまっていました。
 図書館で実施しているサービスに限定すると、やはり機関リポジトリの提供が中心でした。
 じゃあ、実際に機関リポジトリでどれくらいデータを公開しているかを見ると、25%という結果です。機関の種類別に見ますと、研究開発法人、国立大学、大学共同利用機関、私立大学、公立大学の順になっておりまして、大学に限定して規模別に見ますと、学部数が多い大学ほど実施しているという傾向が見られました。
 続いて、機関リポジトリによる研究データ公開の課題や障壁となり得ることについて。全体的に複数回答で選択率が高いんですけれども、上位は「マンパワーが足りない」とか、「適切なライセンス・利用条件が分からない」といった項目が挙がっていました。
 研究者を対象としたNISTEPの調査では、87.5%の回答者が、データの整備や公開についてより詳しく知りたいというふうに回答していたのですけれども、実際に関連する研修会とかシンポジウムなどを実施している、あるいは計画しているという機関は8.8%でした。
 こちらも機関別に見ますと、研究開発法人とか国立大学のほうが実施率が高くなっておりまして、大学では学部数が多い大学ほど実施率が高いというような傾向が見られました。
 最後に、諸外国でも、研究データ管理サービスは図書館が単独で行うのではなくて、複数の部署と連携している例が多数見受けられます。そこで、どこが研究データ管理サービスのステークホルダーになり得るのかというのを尋ねています。
 結果、「研究推進・協力系部門」が一番多く、次いで「図書館」、「情報系センター」、「知財部門」という結果でした。
 この質問は複数回答になっていますので、組合せ別の回答率を見たものがこちらの表です。ちょっと細かいのですけれども、2部署選ぶ場合には「研究推進」と「図書館」というところが一番多かったです。4部署全てを選んでいる回答者も13.7%いらっしゃいました。
 今後、こうしたステークホルダーが、様々なサービスのうちどの部分を担当するのかを議論していただくことになるのかなというふうに考えます。
 こちらは全くオーソライズされたものでも何でもないんですけれども、私のほうで検討いたしまして、『情報の科学と技術』という雑誌で発表させていただいた役割分担です。私が考える際には、どの部分に図書館の強みが生かせるのかということを考えました。
 こちらが本日の発表のまとめになります。どうもありがとうございました。
【竹内主査】  池内先生、どうもありがとうございました。国内での幾つかの調査の結果に基づいて、今日の日本における研究データ管理の現状やニーズについて、極めて明快にお示しをいただきました。
 それでは、今の御発表に関しまして、御質問あるいは御意見等、よろしくお願いいたします。では石田委員、どうぞ。
【石田委員】  九州大学の石田でございます。調査結果の御紹介、どうもありがとうございました。すみません、ちょっと技術的なところといいますか、でお聞きしたいところが2点ほどございます。
 1つは、スライド12のところに関係してくると思うんですが、データの公開方法で一番多かったのが、論文の補足資料として公開しているということだったんですけれども、これはデータの共有とか再利用というのを目的としたものではなくて、例えば論文で使った研究成果のデータを公開するという、どちらかというと論文というか雑誌等から求められていて公開しているというふうに考えてよろしいでしょうか。
【池内先生】  はい、そのとおりかと思います。もちろん、積極的に公開しようと思っていて、さらに雑誌のほうから求められるという事例も当然あるかとは思いますけれども、補足資料に関しては、やはり雑誌が求めて出すというパターンが基本的には多いことと思います。
【石田委員】  そうしますとこの中で、例えば研究者自身が積極的にオープンデータとして公開しよう、もしくは再利用・再活用を想定して提供しようという意思が見られるというところは、あまりないと考えてよろしいんでしょうか。それとも、このデータのどこかがそれに該当すると考えてもよろしいんでしょうか。
【池内先生】  それにつきましては公開理由を聞いておりまして、1位は雑誌のポリシーなんですけれども、2番目が「研究成果を広く認知してもらいたいから」、3番目は「科学研究や成果実装を推進したいから」ということで、これは割と利他的なといいましょうか、オープンサイエンス的な発想の下で公開されている方も一定数いらっしゃるということかなというふうに考えております。
【石田委員】  ありがとうございました。それと、すみません、もう1つよろしいでしょうか。4つ目の、日本の大学研究機関の取組状況の結果についてなんですけれども、回答者352ということでしたけど、これはどこに聞いたのでしょうか。
【池内先生】  このアンケートが結構複雑で、ボリュームのあるアンケートなんですけれども、回答するセクションごとに別のセクションで回答してよいという立てつけになっておりまして、主な回答者としては図書館の人、情報システムの人、それからURAの方などが回答されていました。
 なので、例えば図書館で回答しようとして、よく分からない部分は情報システム室とかに聞いて回答をしてもらうというような形で、詳細はこちらのほうを御覧いただくとよろしいかと思うのですが、セクションごとに回答者が違うということを初めから想定している質問で、かつ、実際にもいろいろな部署が関わって回答しているというアンケートです。
【石田委員】  分かりました。どうもありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。尾上委員、どうぞ。
【尾上委員】  ありがとうございます。非常に興味深いデータを示していただきました。35ページ目の役割分担と、あと19、20ページ目のデータの整備・公開・保存の意思やより知りたいということをよく見ると、どこがどれだけ頑張らないといけないのかとか、あるいは大学全体として考えたとき、どこにどれぐらいリソースを投入していかないといけないのかというところがある程度見えるかなと思っていたんですが、一方で、今、出していただいているこの41.1%と同じぐらい「いいえ」の方がいらっしゃるというところで、この「いいえ」の方々、そういう意思を持っておられない、現時点ではあまり大きく持っておられない方に、どういうふうな形でアクセスしていって、必要に応じてこういうデータの整備・公開・保存とかをプロモートしていくかというところを考えたときに、そういう人たちが例えば知りたいと思っている内容というのは、大分やはり違ってくる、あるいはやってほしいということは変わってくるのか、あるいは、大体やはりこういうところがどうしてもボトルネックになってくるというところなのか、どちらでしょうか。もし分かればお考えを。
【池内先生】  自由回答のほうを拝見しますと、「ぜひ頼みたい」という回答者の方々は、研究にとにかく集中したいので、データの整備とか公開にまつわることに関してはぜひぜひ支援をしてほしいという方々が、「はい」を選んでいる方の中には多くいらっしゃいます。
 「いいえ」の方の中には、やはりデータを整備するというところは研究の根幹に関わるところなので、第三者に任せるようなことではないといった御意見も、これは2016年の調査から継続してそういう声もございます。これもやはり分野にもよるでしょうし、研究者個人のお考えにもよるかと思います。ここのところはやっぱり一律には、「やります、やります」と言っても、「じゃあ任せます」、というふうにはならない部分かなと考えられます。
 一方で、例えばもうちょっと一般的な部分で、ライセンスのことですとか、どんなリポジトリがあって、ここのリポジトリは信頼できるといったような情報に関しては、図書館などでまとめて掲示しておくことで――掲示というのは、ウェブサイトとかに載せておくことで、役立つ情報源として、こちらから直接アプローチするというよりは、情報を出しておいて、必要に応じて参照していただくみたいな形での支援が適しているのではないかなというふうに考えております。
【尾上委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。それでは、加藤委員お願いできますでしょうか。
【加藤委員】  加藤でございます。大変分かりやすい御発表ありがとうございました。
 私から2つお聞きします。最初は簡単なことですが、10ページの分野別のデータの公開率で、工学が低いということですが、これは工学の分野は知財を取る関係でどうしても低くなるという理解でよろしいですか。
【池内先生】  はい、まさにおっしゃるとおりかと思います。特許を取るまでは出せないとか、やはり商業的な利益に関わるとか、企業との共同研究の契約で公開ができないとか、そういった事例が多数ありまして、これに関しては世界的にもといいましょうか、例えば雑誌のポリシーなんかでも、工学分野はほとんど求めているジャーナルがありませんので、そこをまずは理解して、無理に「公開しましょう、しましょう」というふうには進めない、というところがまずあるかなというふうに考えております。
【加藤委員】  ありがとうございます。あともう1つ、ちょっと全然違うことを伺いたいのですが、資金提供する配分機関の方針でデータ公開をしているということが挙げられています。このデータ公開の費用負担というのは、研究者が所属している機関ではなくて配分機関が出したりしていることが今は多いのでしょうか。
【池内先生】  その点につきましては、私の今回の調査のほうでは特にはお伺いしていないところです。
 例えばJSTさんがJ-STAGE DATAを立ち上げるといった取組があって、そういう意味では、リポジトリの部分を少し補完しているようなところはあるかと思いますけれども、費用につきましては、それぞれの助成機関次第ということになろうかと思います。
【加藤委員】  どうもありがとうございました。
【池内先生】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。それでは引原委員、お願いいたします。
【引原委員】  すみません、先ほどの工学が少ないということに対してなんですが、これは『Times Higher Education』なんかでもそうなんですが、工学の人が工学というカテゴライズすることは少ないと思います。物理か化学か、あるいは計算科学、数理的なところにカテゴライズされることが多くて、工学を、自分は工学ですと言うのは非常に難しくて、そのアンケートのときの数自身の問題があるのではないかなというのは若干ありますので、その辺が分かりましたら、今後調査でよろしくお願いしたいと思います。
【池内先生】  分野につきましては、御自身の申請された、選ばれた分野をそのまま採用しておりますので、自己申告という形になっております。
【引原委員】  私なんかは工学って自分で言いたくないという部分があったりするので、そういう方は多いのではないかなと。
【池内先生】  分野分類の限界はどうしてもございまして、複数の分野にまたがる先生、今は本当に非常に多くいらっしゃいますので、分野別の分析は本当に難しいところで、だからこそ、国際比較なども本当に慎重にお考えいただければと思います。ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。
【引原委員】  続けてよろしいでしょうか。先ほど見せていただいているデータの中で、データ公開というのの話で一番必要なのがデータの変換という話があるんですけれども……。
【池内先生】  すみません、データの?
【引原委員】  ごめんなさい、19ページかな。19ページに、依頼したいものが適切なデータ形式への変換という話です。
 これは、人社系であろうが理系であろうが同じとは思うんですが、ちょっと微妙なところがあるなと思っています。先ほど、研究者がデータを渡したくない、その部分は自分の根幹に関わるからあまり触ってほしくないというようなことがあるのと、この変換は任せたいということの、何か矛盾があるように思います。それはどういうふうに思われますでしょうか。
【池内先生】  私の個人的な感触というか、自由回答を見ての感触になるのですけれども、やはり適切なデータ形式への変換のところは、とても手がかかるところだという認識があり、だからこそ、そこをやってもらえるといいなというところがあるのではないかなと思います。
 あと、「適切な」というのがやはりどうしても難しいところかなと思います。デファクトスタンダードが一定の分野もあるかと思いますけれども、徐々に変わる分野などについては、これでいいのかというところを確認するのもいろいろと大変かと存じますし、データを整理して、人が見て分かるようにするというところの、やはり労力の大きさというのが一番になってしまうというか、大変なところかなというふうに思います。
 この一番下に書いてあるのですけれども、2016年と18年の調査では、「第三者が支援する場合に専門性が必要だと考えられる項目はどれですか」という聞き方をしています。
 その時に、やはり適切なデータ形式への変換というのは、一番専門性が必要だと多くの研究者が考えていらした部分で、本当に難しいというのが共通理解であり、だからこそというか、任せたいというところがあるのかなというふうに考えております。
【引原委員】  ありがとうございました。
【池内先生】  すみません、何かストレートな答えにはなっていないのですけれど。
【引原委員】  いえいえ、大丈夫です。
【竹内主査】  ありがとうございました。多くの方に挙手いただいておりますので、しばらくお待ちいただく方があるかもしれません。御容赦ください。では次に、坂井委員、お願いいたします。
【坂井委員】  今日は大変貴重なお話ありがとうございます。この1つ前の18ページですけれども、ここが肝腎なところだと思うんですが、人材の不十分というのは、マンパワーとか人件費とかの問題が中心なのか、それともキュレーターの能力アップ、教育とかキャリアパスとかそっちのほうが問題なのか、両方だとは思いますけど、後者について特にどうお考えでしょうか。
【池内先生】  人材育成の問題は本当に大きいかなと思います。やはり自由回答のほうでも、データのことが分かってキュレーションができる人材というのが不足しているし、それが専門家として確立されていないというところは大きな問題かと思います。
 ここの設問では、実はそこまでは具体的には聞いておらず、「データを整備したり公開するための人材」という感じで聞いているのですけれども、人材育成については、そうですね、次回の調査に入れられれば、ぜひ入れたいと思っております。
 人材育成については、例えばNIIがオンライン教材を作っているということがありますので、できるだけ効率的にノウハウを身につける手段を確立するとともに、やはり、その人材のキャリアパスなりポジションというものをきちんとつくっていかないと、どうしても誰かが片手間でやるとか、よくあるのは若手の研究者の人が、言わば押しつけられてしまって、自分の研究時間が取れないといったような声も聞きますので、その問題はちょっと構造的な解決というか、仕組みの整備が必要かなというふうに、個人的には考えております。
【坂井委員】  ありがとうございます。東大のケースなんですけれど、私どもは「サブジェクト・ライブラリアン」という制度をつくったんです。それは、専門性があるキュレーション、逆にキュレーションのできる専門家、そういうもののポストを特任准教授等でつくったんですが、そういう方の、特に若い助教とかがサブジェクト・ライブラリアンになりますと、専門性があり、かつ資料を調べる能力が高いということで、すぐによそのポスト、つまり普通の研究職のポストで取られちゃうんです。
 つまり、キュレーションをやるキャリアパスというのが将来的に高い地位であるというのが保証されていないということが、結構こういう人材を育成するときには大きな障壁になっているかなと思います。
 以上です。
【池内先生】  ありがとうございました。本当におっしゃるとおりかと思います。ポジションの継続性ですとか、あと内容につきましても、どうしても知識の伝達みたいな面でも、短期的な仕事ではなくて、例えばメタデータをどうするかということを決めても、どんどん研究分野によっては発展していきますので、ブラッシュアップが必要な部分があります。継続的にデータキュレーションを担える方を雇用する体制というのは本当に重要ではないかというのが、この3回の調査をしての実感でございます。ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。では次に、堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】  堀田です。ちょっと今日は入るのが遅れました。すみませんでした。
 まず、今日のお話どうもありがとうございました。非常に問題点がよく分かったように思います。
 それで、18ページ、19ページのところは、研究者の側から見た充足度や、どういうことを依頼したいかという、そういう結果だと思います。
 一方で、24ページ、25ページというのが、それを行う側の実施検討状況、特に図書館で実施しているようなものというのが挙げられていると思います。
 それで、これを見たときに、研究者側としては、人材・時間・資金というようなところが不十分、やや不十分という回答が多くて、一方で、適切なデータ形式への変換であるとか、様々なことをやってほしいというお願いが出ているように思います。
 一方で、それを受ける側、主に図書館、研究推進というところだと思いますけども、そういう側としては「当てはまるものはない」というのが一番多くて、次に「データ公開プラットフォームを提供している」というのが2番目にあって、そのほか、研究者が期待しているような支援というのは非常に少ない状況だというふうに見えます。特に25ページで、実施しているものが、プラットフォームの提供以外のところが物すごく、これは私が想像していたよりも少ないなというのは、今回データで強く感じたところです。
 それで、この辺り、いろんなことができるに越したことはないと思うんですけども、やっぱり自分の大学の状況を鑑みましても、まずはせめてデータ公開プラットフォームの提供ぐらい、ぐらいと言ったら失礼かな、どう言ったらいいか分からないですけど、その辺りから手をつけましょうというような言い方になると思います。あれもこれもやりなさいというか、やりましょうとなると、正直、現状、研究推進や図書館の状況を見ると、ちょっと無理じゃないかというような心配があるんですよね。
 やっぱり、リクエストはリクエストであるとしましても、現実問題、どの辺りができればいいのか。これを見たところ、本当にプラットフォームをまず提供するところから始めましょうというのでいいのかなと思うんですけど、その辺りはいかがでしょうかね。ちょっと、質問というにはざっくりしているんですけれども。すみません。
【池内先生】  いえいえ。今、NIIのほうで新しいデータ公開用のプラットフォームの開発が進められて、その導入が進んでおりますので、まずはインフラからというところは、本当に現実的かつ、できそうなことかなというふうに考えます。
 思いのほかと言うとあれなんですけれども、やっぱりデータリテラシーに関するニーズも高いので、これに関しては個別の大学が教材をつくるというのはすごく難しいと思うし、手もかかるし難しいと思うのですが、まさにこういうところこそ大学で共通して、どこかが日本語のよい教材をつくったら、それをお互いに参照するような形で共有していけると、大分助かるのではないかと思います。
 どうしても研究者の方々はお忙しいので、どの情報源を見れば、それが信頼できて、そのとおりにやればいいというところを探すことについても、やっぱり時間を取られるのはもったいないというふうにも考えられます。大学図書館のほうでガイドのキュレーションをすると言うんでしょうか、うちの大学の教員であればこの部分が必要だろうという部分の教材を集めて、例えば図書館のウェブサイトでまとめて分かりやすく出すといったところが、まずは手をつけやすいというか、できるところかなというふうに考えております。
 専門的なことをやってほしいと思っているというのは、本当にそのとおりというか、これは実は私のめちゃめちゃ大きい反省なんですけれども、2016年・18年調査で専門性が必要な項目をお伺いしたのは、専門性がそれほど高くない項目からであれば、図書館が手をつけやすいというか、やりやすいところかなという意図で実はお伺いしていたんです。
 そこで上がってきたのは「リポジトリでデータを公開する」というような項目で、まさにできそうなところではあるのですけれども、2020年度に「やってほしいところ」という聞き方にしたところ、専門性の高いところを実は研究者はやってほしいんだということがよく分かりまして、ここは本当に個人的な反省であるとともに、何とかしなくちゃいけないところだなと考えている次第です。
【堀田委員】  どうもありがとうございます。おっしゃるとおりかなと思いますね。
 この後また議論があるかもしれませんけど、実際に大学の中で、じゃあ誰が、誰がというか、どの部署がどういうふうに担当していくかというのは、各大学、かなり苦労されていると思いますし、これからもすると思うんですけれども、ある程度やることを絞らないと、あれもこれもということになると本当に破綻しそうな気がするので、その辺り、こういうアンケート結果を見ながら、まず、重要そうなところから手をつけていくというのが必要かなと思いますね。どうもありがとうございました。
【池内先生】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。それでは次に深澤委員、お願いいたします。
【深澤委員】  深澤でございます。どうもありがとうございました。私は実は情報委員会でも池内先生からお話をお伺いしております。AXIESの会長をしておりますので、AXIESのデータを使ってくださってありがとうございますと、まずはお礼申し上げたいと思います。
 今日の委員会は図書館の委員会なので、図書館に関するところに絞って御質問というか、問題点を挙げさせていただければと思っているんですが、まず、すみません、33ページ、34ページを表示ください。
 これを拝見しますと、図書館が43%、あるいはこの次のシートを見ますと、結構いろんなところに、図書館、図書館、図書館というのは出てくる。
 質問その1は何かというと、これ、なり得る部署、あるいは既に関与している部署って、orの質問になっているんですが、これは元からorになっているんですか。
 本当は、聞きたいことは何かというと、じゃあ実際にどのくらい既に関与しているのかというところをまずはお伺いしたいなと思って、もしアンケートがそうなっていないのだったら、多分これ以上は駄目かなと思うんですけど。
【池内先生】  この点は、このように聞かれていたので、このままでございます。
 また2022年度、今年度もアンケートをされるということでしたので、その時には、実際はどうかというのと、なり得る部署とを分けて聞いていただけるようにお願いしたいと思います。
【深澤委員】  ありがとうございます。で、問題点はどこにあるかというと、今、堀田さんの御質問の中に出てきたんですが、この数字と、それから25ページにありましたあの数字とのギャップが、今の図書館が抱えている問題なんだろうなと思うんですよね。
 つまり、この中に、研究データの利用・引用に対する支援が3.4%とか何とかしかないのに、期待されているのは30何%も期待されている。
 このギャップを図書館として、もしくは大学としてどういうふうに埋めていくのかなということを、この委員会の中でも少し考えていかなければいけないんじゃないかなと思っておりますが、いかがでしょうか。
【池内先生】  おっしゃるとおりかと思います。一方で、先ほど申し上げたように、ある程度大学が単独で頑張るのではなくて、全国の大学で共有できる部分をしていきたい。その際には、やっぱり既にやられている大学ですとか研究開発法人の事例を共有いただくのがよいのではないかなというふうに考えております。
 既に進められているところには負担をおかけすることになって、やや心苦しいところもございますけれども、やっぱり頑張っているところのベストプラクティスなり、今やっていることというのを広く共有していただいて、参考にしながら効率的に進めていくというのがよいのではないかというふうに、個人的には考えております。
【深澤委員】  ありがとうございます。そのとおりだと思う一方で、例えば先ほど東大の事例がありましたけども、サブジェクト・ライブラリアンを置けるような余裕がある大学から、本当に図書館員がどんどん減らされていって非常につらい大学もあるので、なかなかベストプラクティスを共有したくてもできないという大学が多いんじゃないかなということが少し、いや、おっしゃっていることはそのとおりだと思うんですが、少し懸念されました。どうもありがとうございました。
【池内先生】  ありがとうございます。これに関しましては、学振の人社データインフラのほうに研究員として関わっているんですけれども、各分野のデータインフラのメンバーの方々も、やはりデータインフラの管理をしている、言わばデータキュレーターの役割をしている方々は、5年間の事業の中でも入れ替わりがどうしてもあり、そのノウハウが受け継がれていくのが非常に難しいというのを実感しております。
 大変多忙な中で、なかなか、それを「教えてよ」というのも難しいというのがありまして、やはり抜本的に、ポジションをつくったりとかキャリアパスを考えるというところをしないと、いかんともし難いのではないかなというふうに考えております。ありがとうございました。
【深澤委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございます。まだまだお手が挙がっております。大藪委員、北本委員、村井委員という順番で発言をお願いして、次の報告に移りたいと思います。
 では大藪委員、お願いいたします。
【大藪委員】  ありがとうございます。深澤先生がおっしゃったとおりでこれを図書館の人がやるというのは、結構難しいと思っています。
 それと、いい事例があったとしても、弱小の大学にした人がいなかったり、研究者もいっぱいいっぱいということで、プラットフォームをつくり、基盤をつくるとしても、それ用の人がいない。雇うとか何かしないと、図書館の人たちにこれを全部やってもらうとか、研究者が全部やるということも非常に難しい。国全体でオープンサイエンスで、全部データがアップされるにはどうすればいいかというのはすごく難しいなと思いました。すぐには難しい問題だなということを、これを見て感じたという感想になります。以上です。
【竹内主査】  ありがとうございました。では北本委員、お願いできますでしょうか。
【北本委員】  ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センターの北本と申します。大変参考になる発表をいただきましてありがとうございます。
 私の質問は、微妙に今回の御報告から外れるかもしれませんが、機関リポジトリと分野別リポジトリの使い分けという点に関して、この御報告の中から何か参考になる情報はあるでしょうか。
【池内先生】  そうですね、実際に公開している先がどこかというところをお示ししたものがあるのですけれども。少々お待ちください。
 特定分野のリポジトリと学術機関のリポジトリということで、こちらでの実際の公開状況が御参考になるかと思います。
 やはり特定分野のリポジトリで、「この分野だったらこれ」というものがある分野の先生方はそちらに出されますし、そういうものがないけれども公開しなければならない、雑誌に言われたとか、何かしらのポリシーなりで出すという場合には機関リポジトリが選ばれるというのが、日本の研究者もそうですし、国外の調査結果などでもそのようになっております。
 
【北本委員】  そうしますと、研究者のニーズの中で、特に分野レポジトリ側に強いニーズですとか、機関リポジトリ側に強いニーズですとか、そのような違いはあるでしょうか。
【池内先生】  ニーズの違いですね……。
【北本委員】  例えばデータ形式に関して、特にどちらかに強いニーズがあるなどの違いはあるでしょうか。
【池内先生】  学術雑誌のポリシーで言いますと、ほとんどの学術雑誌がリポジトリを指定しているのですけれども、まれに、機関リポジトリでもいいよというポリシーもありますので、そういうときには機関リポジトリでよろしいかと思います。
 あと、やっぱりサイズの問題が実は大きいと思っていて、機関リポジトリではとてもさばき切れないというか、保存できない量のものは、その専門の分野のリポジトリに出すということになるかと思います。
 もう随分前ですけれども、エジンバラ大学にインタビューに行ったときには、ヒッグス博士がいらっしゃるのですけれども、ビッグデータはCERNに持ってもらって、スモールデータをエジンバラが持つんだということははっきりおっしゃっていました。
【北本委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  それでは村井委員、お願いいたします。
【村井委員】  筑波大学の村井と申します。本日はとても明快な御発表ありがとうございました。
 お伺いしたいのは、時々お話に出てきた知財やライセンスのところです。おそらく問題になる場面は、公開に当たって著者の許諾を得なければいけない場面と、それから公開後の利用の場面で、利用される方にどういうライセンスや利用許諾をするかという場面というように、幾つかの場面があるように思いました。データや論文を公開するときにネックになるのが主にどちらの場面なのかという御感触があったら教えていただけますでしょうか。また、それと重なるのですが、スライドの29枚目でしょうか、課題や障壁となり得るところで、「適切なライセンス・利用条件が分からない」というのが上がっていますが、これが対著者、論文やデータの作成者に対しての条件なのか、それとも、それを利用する利用者、公開した後の利用の場面での利用条件なのか、どちらかというところを教えていただければと思います。
【池内先生】  ありがとうございます。1点目の質問につきましては、この調査をちょっと離れてしまうのですけれども、私、研究データ利活用協議会というところで研究データのライセンスに関する検討をしてまいりました。
 その時に、既に研究データ公開を盛んにやっていらっしゃるNIMSとかそういうところにインタビューに行ったのですけれども、やはり研究者の側からは本当に多種多様な、こういう条件で公開したいという希望が寄せられてきていて、なかなか統一したライセンスをつけることが難しいし、それが適切かどうかを判断することがやっぱりリポジトリ側ではできず、その法務に関しても、法務部門に関してもデータに関しては専門家ではないのでよく分からないということを言われました。
 そんなこともあってライセンスを整理しようということで活動しているのですけれども、まずは選ぶときですね、公開側が選ぶときに、どうすれば自分の希望するとおりのライセンスをつけられるのかというところが難しいというのが一つあると思います。
 公開して利用者に見せたときなのですけれども、利用者の側が正しくライセンスを理解するというのも、これまた非常に難しくて、利用についてはアンケートでも聞いているのですけれども、利用条件がよく分からなくて、怖くて使えないというような回答もたくさんございました。
 なので、データのライセンスや知財に関する部分は、出す側、使う側、両方のリテラシーがまだまだ十分ではないところがあるかと思います。
 で、その相手方というか、共同研究先との契約とかのところですよね、きっと。御質問は。そこが難しいのではないかということでよろしいでしょうか。
 例えば企業と共同研究をしたときに、どういう条件にするかというところが難しいのではないかという御質問でよろしかったでしょうか。
【村井委員】  いえ、そこまでは申し上げていなくて、単に、公開に当たって、まずデータの作成者や論文の著者の許諾を得るのが、特に過去のものだったりすると許諾を得るのが難しいことが多いのではないかというのと、あと、利用するときのライセンスとかをどうするのかという問題があるのだろうと思った次第です。すみません、共同研究のことまでは考えておりませんでした。
【池内先生】  すみませんでした、何か拡大解釈をしてしまいました。
 すみません、2点目を。1点目をしゃべっているうちに忘れてしまいました。
【村井委員】  2点目も、1点目と重なると思うのですが、今スライドをお見せいただいている2つ目のところで、「適切なライセンス・利用条件が分からない」というのが、対著者のものなのか、対、公開後の利用者に対するライセンスや利用条件なのか、どちらなのかというところです。
【池内先生】  そうですね、ここのところはどちらも含んでいるのではないかなと思います。著者の方に、やはりこれがいいですよと言うこともきっと難しいでしょうし、それを正しく理解していただくというところも難しいんじゃないかなというふうに想像をいたします。
 利用者に対しても同じく、利用条件を遵守していただけるようにするというのは、公開してしまうと難しいところがあって、利用条件はもちろん書いて公開しますけれども、そこがきちんと伝わるように公開するにはどうしたらいいかというところにも、またもう一つ難しさがあるのではないかというふうに考えます。
【村井委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。まだ御質問あるかもしれませんけれども、全体の進行もございますので、次に進めさせていただきます。最後に全体を通しての質疑の時間も持ちたいと思っておりますので、もし何か御質問ございましたらその折によろしくお願いいたします。
 では続きまして、慶應義塾大学の倉田敬子先生より、「研究データ管理 学術コミュニケーションの変容と大学図書館」というタイトルで御報告をいただきます。
 倉田先生については、改めて御紹介するに及ばないかと思いますが、念のため申し上げますと、御専門は図書館情報学で、学術コミュニケーション研究の第一人者と申し上げてよろしいかと思います。また、現在、慶應義塾大学の文学部長という大変お忙しいお立場でいらっしゃるところ、本日は御発表をお引き受けいただきましたことに深く感謝申し上げたいと思います。
 では倉田先生、よろしくお願いいたします。
【倉田先生】  御紹介いただきましてありがとうございます。倉田でございます。
 今回は、学術コミュニケーションの変容と大学図書館という観点から少しお話しさせていただきたいと思います。
 大学図書館の役割は、申すまでもなく大学の教育研究支援なわけですけれども、これまでの大学図書館はそれを学術資源、言い方はいろいろございまして、私は情報メディアと使っていますけれども、要するに資料というもの、もっと言ってしまえば図書と雑誌の収集・提供に基づいてきたわけです。これで19世紀、20世紀、基本的には大学図書館は立派な役割を果たしてこられたと私は考えております。
 それは知識を伝達するメディアが、基本的には紙を中心とする資料であったからだと思います。その情報メディアをうまく管理できてきたのが大学図書館であったということです。
 ただ、それは物の管理者にとどまらなかったわけでして、図書とか雑誌というものを管理できたのは、知の在り方の制度を十分に理解していたからこそであり、それらの組織化や提供にこそ大学図書館の役割はあったと思っております。
 しかし、学術コミュニケーションの変容ということは、その制度をある意味では根本から変えてしまっているのではないかというのが私の主張です。つまり、研究成果がまずはデジタル化されました。デジタル化というところだけを取れば、大学図書館はぎりぎり対応していたと思います。しかし今、大きく関心が寄せられているオープンアクセスやオープンサイエンスとは研究活動そのものの変化、つまり、研究プロセスのオープンと共有ということで、これがどのように学術コミュニケーションや大学図書館に影響しているかは簡単に見通すことはできません。これまで大学図書館が教育研究支援をできてきたのは、研究教育の活動の中心となる学術コミュニケーションが、研究成果の学術出版が中心だったからです。研究活動というものの中心として研究成果があり、その成果をうまく回すことができれば、それはそのまま研究支援であったという部分があるわけです。コンピューターをはじめとする様々な研究用の機器も、研究活動においては重要な部分を占めておりましたが、そういう分野であっても研究成果が要らないという分野はなかったわけでして、一般的な技術的、それからツール的な支援とは別に、研究成果の出版を理解し、その成果物を研究者の手元にまで届けるということが、それだけで十分独立した研究支援となっていたので、大学図書館の役割を誰も問題にすることはなかったのだというふうに思います。
 デジタル化に関しましても、電子ジャーナル・電子書籍ということに関して、大学図書館は非常にうまく対応できたというふうに思っております。
 うまくというのはちょっと言い方がいろいろ微妙でして、括弧つきの「うまく」なんですけれども、大学図書館しか対応できなかった形で対応させられたと言ってもいいのかもしれないとは思いますが。
 しかし、次の研究プロセスのオープン化は、これは大学図書館だけでどうこうできる問題ではもはや全くないということです。今の大学図書館がそのままの形で対応できるわけがありません。これは根本的につまり、ゲームチェンジなのだと思います。ゲームのやり方そのものが変わったということです。
 パズルでいうならば、パズルの全体の形も個々のピースの形も違っているときに、昔の形のペースを当てはめようとしてもそれは無理ということです。やはりこの考え方、を徹底させない限り、現在の研究プロセスのオープン化に大学が対応することは無理だと思いますし、それは一大学でできることでもないし、一国でできることでもない。どういう形でそのネットワークをうまくつくっていくのかというのは、決して一大学図書館だけでどうこうできるような問題ではないというふうに思います。ただし、逆に言えば、一大学図書館がそこに関わるという、ある種覚悟を決めない限り、何も動かないということも事実だというふうに考えているということです。
 この研究プロセスのオープン化ということに関して、学術出版社の代表としてエルゼビア社が何をやっているのかを紹介させていただきます。エルゼビアに関しては、大学図書館で知らない方はいらっしゃらないわけで、学術出版の中心であり、デジタル化を一番進めてきたところですが、エルゼビアはもう学術出版から利益を上げようとはもう考えていないのではないかと思えます。
 研究活動全体がオープン化するのであるならば、出版で利益を上げることは難しくなる、それならその研究プロセス全体を支援する新しいサービスで勝負するしかない。エルゼビアは淡々と、それをずっと以前から狙ってきたということだと思います。
 このスライドは、他の人の論文の図で、分かりにくいのですが、1番から順番に回っています。1番は研究の最初の段階で、ここでは情報が欲しい段階ですので、これまでどおり雑誌というものが使われる。Mendeleyとかも使われるでしょうという風に見ていってください。
 次にファンドを申請するならば、その研究ファンドに関しての情報が必要でしょう、実験が始まった段階では、例えば実験ノートのデジタルツールとか必要でしょう、という形で、研究プロセスを進めていくそれぞれの段階で、実はもう外部でかなり新しいサービスが提供され出しているということです。それらのサービスのうち、既にエルゼビアが提供しているものがかなりあるということです。もちろん、他の機関が提供しているものもありますが、
 エルゼビアのようなこれまで学術出版社としてやっていたところが、そういう出版以外のサービスに関しても、研究の全ての段階での支援に関わろうとしているということです。
 評価の段階では、既に各大学でお使いになっているところもあると思いますけれども、エルゼビアはPureであるとかSciValというようなデータベースのサービスを既に以前から実施しているわけです。
研究プロセスのオープン化全体を支援する新しいサービスをしかも統合した形で考え出している。エルゼビアは一例として出させていただいただけで、そういう企業は幾らでも出てきているということです。
 これは研究データの現状に関するスライドで、池内さんのご発表はアンケート調査の結果でしたが、こちらは雑誌での現状を調査したものです。修士論文からのデータなので、公開されているデータではないので、取扱いには御注意いただきたいと思います。
 学術雑誌のデータ公開ポリシーと、実際にその雑誌に掲載された論文の公開状況を見たものです。14分野で、インパクトファクターが上位10誌の140誌しか調べておりませんので、いわゆる主要なハイジャーナルと言われる少数の調査になりますが、データポリシーがない雑誌は10%しかないということです。データポリシーはあって当たり前で、データの公開が必須というポリシーも30%を超えています。
 スライドの下にあるのが、14分野別に見た論文のデータ公開状況です。これは各雑誌10論文しかできておりませんので、非常に限定されたものですが、生物学の場合、この調査としては、8割を超える論文でデータが既に公開されているということです。
 当然、人文学や数学が少ないのは、データを扱っていないという研究が存在しますので、ある意味当然ともいえます。ただ、平均してデータを公開している論文は26%ということで、これは私はかなり高くなっているなという印象を持っております。多分数年前なら数%だったのではないかと思います。高くなってきているという感覚があります。
 ここに来て、日本もさすがにオープンサイエンスに向けた政策を出してきたのが第6期科学技術・イノベーション基本計画で、大学に対する具体的な数値目標も出されています。2025年までのデータポリシー策定と2023年までのデータマネジメント計画の提出とメタデータを検索できる仕組みですね。
 これは大学としてはやらざるを得ないわけで、ではどうやって、どの部署がやるのかという問題になります。
 この図は、慶應がこれらをやっているということではなくて、私が勝手に考えているもので、こういう研究者の研究ライフサイクルそのものを、全面的に支えるようなプラットフォームがあるといいのではないかという話です。
 研究のライフサイクル全てにわたって、支援が必要なわけでして、これまでのように部分部分でやっていたのではもう駄目でして、いかにそれを連動させていくかが重要だと思います。
 大学のプラットフォームの外側に外部サービスと書いていますが、これは個々の大学が何らかの支援を行う時に外部のサービスを使わざるを得ないことを示しています。例えば、情報を収集するときに、電子ジャーナルやデータベースはもちろんのこと、サーチエンジンも含めた外部のサービスを使わざるを得ないわけです。実験、調査の段階では、数々の研究のデジタルツールもありますし、研究データに関しては汎用のデータリポジトリが外部サービスとしてありますし、その他、業績等評価をするような分析のツールもあります。こういう外部サービスをいかにうまく使いつつ、自分の大学の中で研究者は何をやっているのかということを把握する必要があるということです。
 単純に言えば、これまでの電子ジャーナルの契約に、APCを含むような、いわゆる転換契約というものが話題になる。その時に、自分の大学の研究者がAPCを幾ら払っているかが分からなくては、適切な電子ジャーナルの契約ができないことになります。
 つまり、自分の大学において研究活動関連・研究者関連のデータをいかに統合して、その情報を組織化しておくか。これが一番重要なポイントだというふうに考えています。
 次のスライドをお願いします。言うは易く行うは難しでして、慶應さんはどうやっているんですかということなんですが、本来でしたらここで慶應のデータポリシーであるとかデータ管理計画はこうなっていますというのが発表できたらよかったのですが、まだできておりません。データポリシーはさすがに最終段階にはきているのですが、間に合いませんでした。
 このスライドは動きつつある部分と、計画のところの話と考えてください。慶應の場合、教員組織としての研究連携推進本部というのがあって、一方で事務部門としての学術研究支援部があります。学術研究支援部は、いわゆる研究助成や委託研究などの外部資金関係の支援をやってくれているところです。それと、情報基盤のほうがITCと、「DAO」と言っているんですが、大学のDXを担当する部署があります。
 すみません、このスライド間違っていて、ITCのほうは情報基盤の担当常任理事がいまして、研究推進のほうに研究担当常任理事がいます。常任理事は副学長クラスとお考えください。研究データに関係する常任理事も2人いるので、連携するのが困難とまではいいませんがやはり調整が必要です。
 この研究データ特別委員会というのが、教員組織のほうの委員会のほうにつくられまして、そこに経済学部の教員と医学系の教員と、図書館情報学の教員の3名がおりますが、この図書館情報学系の教員が私です。文学部長になる前でしたので委員をお引き受けしたのですが、なかなか難しい状態になっています。
 ここでメディアセンター職員と書いてあるのが図書館員です。つまり、図書館と学術研究支援部とIT(情報基盤)の3部門でやるしかないということで、この3部門から職員をだしてもらった、6名でやっています。この少人数で何ができるんだということですが、スモールチームでも始めるしかない、考えることはできるだろうということで、今現在動いているということになります。
 取組としましては、最初に、大学内での研究者の研究データがどうなっているのか、これは、ニーズ調査ではなく、現状調査を行いました。研究データをとにかくどれぐらい扱っているのかを知らないと話にならない、クラウド契約するにしても何にしても規模感が全く分からないので、まずはとにかくどういう研究データがどこにどれぐらいあるのかの調査をいたしました。もう1つは、この研究連携推進本部のほうで講演会を3回ほどやりまして、少しでも職員や、多少でも関心がある研究者に、とにかく研究データは重要なので、今後はその管理に取り組みますということを紹介しました。広がりはなかなか難しいです。
 次に、今の研究データ特別委員会を設置しまして、この委員会で研究データポリシーの策定は一応終わりました。現在は研究データ管理計画の提出支援システムを考えています。科研費での提出は実際に来年動かさなくてはいけないので、研究データ管理計画書の入力項目と、その入力システムを考えているという段階になります。
 ポリシーに関しましては、もう引原先生の京大さん、名古屋大学さんをはじめ、既にございますので、はっきり言ってそう変わったものを作れるわけではありません。既存のポリシーの主な構成は踏襲させていただいています。大学の理念との関係を書き、データの範囲を書き、研究者の責務、大学の役割、データ管理の最終責任、それから学問分野の多様性ということを書いたものになっています。
 ただ、このスライドで「帰属」にバツがついているのはどういう意味かというと、ここがとにかく最後までもめまして、データの最終責任は大学にある、データは大学に帰属すると書きたかったのですが、書けなかったということです。アメリカではデータの帰属は大学にあると書けるのですが、日本ではそこまでは書けなかったというところです。
 研究データ管理計画は、科研費のほうでどれぐらいのものを要求されるか分からないのですが、これまでのAMEDとかNEDOとかの研究データ管理計画を見ていると、研究助成段階の研究データ管理計画だけを考えていても仕方がないと思えます。研究データ記録というのをNIIさんのほうでもおっしゃっているようですけれども、研究データがどうなっているのかという動向を記録するシステムが必要となり、これが、大学における研究データのデータベースになっていけばいいのではないかと思います。
 私が考える研究データ管理計画というのは、研究データのデジタル版の単なるリストではない台帳、まあデータベースですね、その基礎になるものを研究者につくってもらいたいということです。
あくまで計画ですが、研究を申請する段階でデータ管理計画を出さないといけないというのは、これはもう決まりなので提出していただきますが、そこで終わらせないで、それを実際に研究を実施して、成果を公表したときに、その研究データがどうなったのかを更新して欲しいということです。ここの3者(研究計画、研究実施、研究成果)の関係、もっと言うと、間の研究の実施のところはもう研究者に任せるから、最後のせめて研究成果の論文において最初の研究費の申請時の研究データがどうなったのかということ、そこを何とかリンクでつなぐような、そういうシステムを最低限つくりたいということが、今現在の目標ということになっております。
 そう考えたときに、研究データの管理項目としましては以下の6項目がないと困るのではないかと考えました。科研費等の研究助成の申請をする段階では研究プロジェクトの情報が必要、それから個別のデータセットに関しては、やはり基本的には誰がどのようにつくったか、収集したかということ。それを研究中には誰が保管していて、研究後は公開したのかどうか。最終的にそれが成果と結びついているのかどうか。結びつかない研究データもあって当然だと思いますので、関連を明確にすることが必要です。こういう形のデータ管理計画書をつくって、研究者に最初に記入していただいて、この研究データの記録を他の研究活動や研究者の情報とリンクさせて今後大学で残していくことができないかと考えています。
 つまり、大学図書館の役割を考える際に、大学の研究プロセス全体をオープンにして共有していくということが前提になるとまず考えるべきで、その際に大学の研究支援として、研究活動そのものを支援するためのクラウドや機器やデジタルツールは必要なわけで、ここに大学図書館が直接関わることは難しいと思います。
 研究の助成の申請や、いわゆる研究者のデータベースというものに関しても、これまで研究支援、少なくとも慶應は学術研究支援が行ってきたので、そこの仕事を突然図書館が全部やりますというのも、やはりこれは厳しい。
 そうなると、残るのは研究データの管理ではないかということです。今回、研究データ管理計画の骨格をつくってくれたのは図書館員です。様々な既にあるデータ管理計画を集めてきて、慶應で汎用的に利用することを想定して、メタデータは最低限これだけは必要ではないか、データの記録簿というものを考えたときに、こういう項目は連続してあったほうがいいのではないかということを検討していくことは、図書館員が取り組むことができることだと思います。
 これまでの図書や雑誌のメタデータとデータのメタデータは全く違うもので、できない部分は多くなると思います。しかし、多様な分野の研究データ全てに精通している研究者もいません多様な領域の研究の成果のあり方、研究活動の中での位置づけを、少なくとも推測していくことは、図書館員がこれまで行ってきたことと親和性は高いと考えられます。
 今までの図書や雑誌を整理するのではない、新しい形でのオープンなリサーチというものの中でどういう研究支援ができるかということを、大学図書館にはぜひ考えていただきたいというふうに思っております。
 以上です。
【竹内主査】  ありがとうございました。研究プロセスのオープン化という動きがあるということで、そこに大学図書館としては関わるという覚悟をしないといけないというお話、また、大学の研究プラットフォームという観点から、研究のライフサイクル全体をどのように見ていくのかという視点が非常に重要であるというようなことも踏まえながら、研究データ管理の中で、特に研究データ記録をきちんとつくっていくということの重要性などについて、非常に分かりやすく御説明いただけたかと思います。また、こういったフレームワークの中で研究データ管理というのを考えていく視点も明確にお示しいただけたと考えております。
 それでは、ただいまの倉田先生の御発表に対する御質問、また、関連する御意見があればお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 いかがでございましょうか。尾上委員、どうぞ。
【尾上委員】  ありがとうございます。非常に、もうこれを見せていただくと、各大学で今後やっていかないといけないことで頭が痛いなというところなんですけども、先ほど書き込めなかったとおっしゃっていた帰属の話とも若干関係するんだと思うんですが、データの帰属ではなくて、データ管理の最終責任は大学にあるというところで、それを考えたときに、大学から離れていかれた研究者に対するデータの管理、これは今、普通の機関リポジトリで出版されたもののリポジトリに残っているものというのは、当然、その後ずっと図書館、あるいはリポジトリ管理が持っているんだと思うんですけども、データについても同じように機関でずっと管理していくものだということになるのか。あるいは、研究者とのネゴシエーションがあって、その後どこか違うところで管理するよというのがあり得るのかというのはどうなんでしょうか。
【倉田先生】  結局そこが一番もめたところでして、大学としては、基本的にデータ管理の最終責任を大学が負うというからには、定年等で退職なさる先生のデータは、そこで大学に置いていってほしい。大学が責任を持つからというのがあるべき姿だと思います。そういう書き方はできなくて、解説文のほうで、今後の課題というような書き方になっています。
どれぐらいのデータをちゃんと管理できるのかということもまだ分かっていなくて、それを帰属させるとか、責任を持って全部持ちますということまで本当に言えるのかというと、ちょっと言えないのではないかと思っております。
 研究データ管理の最終責任というのは、何も研究データの全部を慶應が保管するという意味では全くないと考えています。慶應の場合、先ほどの例からいうと、機関リポジトリでデータの公開はしておりません。そういう意味では遅れています。データを既に公開していらっしゃる機関リポジトリももちろんあるわけですから。
 慶應はそういう意味では遅れたところから始めるわけでして、データの保管はもちろん、やれるものはやりますけれども、全部をやりますとは絶対言えない。できるならばFigshareとかデータを保管するサービスを展開しているとところがあるわけですから、そういう外部サービスを、慶應の場合にはうまく使いたいと考えています。
 ただし、外部に保管してもらうにしても、登録、さらに公開するための手続は支援できると思いますし、Figshareの場合、特定大学、学会や部門の名前でつくってくれますので、そこでプレステージといいますか、多少宣伝にもできますので、うまく外部サービスを使いたいということです。慶應が研究データを全部内部で持つなどということは考えられないので、そういう意味でも「帰属」という言い方はできなかったということだと思っています。
【尾上委員】  ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございます。大変に難しい問題で、なおかつ複層的に考えないといけないことに対して一つの具体的な事例ということをお示しいただいて、非常に参考になったかなというふうに思います。
 引原委員、どうぞ。
【引原委員】  どうもありがとうございました。まとめていただいた中でクリアになった部分がかなり出ております。
 さっきの帰属の問題もそうなんですけども、研究者にとってみれば、ずっと使い続けられるというのが一番重要なことなので、データがどこにあっても構わないという考え方からすれば、今までの研究データのものの考え方と多分違うと思うんです。
 90年代までは、データが取られた場所というのが非常に重要で、論文を書くときも、その時の所属場所ということで出している。それ自身が変わってきて、個人が持っているデータで論文を書くようになっているから、所属じゃないということになってきているわけです。機関というものが何の意味を持つんだということになりつつある。
 そう考えたときに、今、先生がおっしゃったことは非常に分かりやすかったんですが、そうするとFigshareか、という話になるわけですよね。
 だから、結局、研究者のインデックスと、それからデータのインデックスのマッピングだけの問題になるんじゃないかなと思います。それを、国が管理するという認証に置くかどうかということになるのかなというふうに、お聞きしているときは思いました。
 自分の認証ってなかなか嫌がるということがあるのと、データは自分が使いたいといって抱え込むという話と、要するに、自分の都合のいいことを言っているということになるわけです。
 だから、それをもう少し、公的資金をもらっている場合はこれを受け入れなさいというものを、やっぱり何年か以降はやるというしか手がないのかなという気がしました。感想に近いですけど、先生の御意見をお聞きできればと思います。
【倉田先生】  うまくまとめていただいたと思います。私が言いたかったのは、まさにそのデータインデックスと研究者個人のインデックスと研究費のインデックス、その3者をマッピングさせられればいいというのが考え方です。また全部がFigshareに行ったらいいとは全く思っておりません。オンプレミスのところで持つデータも必要だと思っております。慶應でも医学部や病院のデータは、重要でセンシティブなデータで、戦略的に使えるものです。既に病院のデータは別の形でデータベース化が進んでおりますので、そういうところには手を出すようなことはできないので、それはもう、それぞれの研究プロジェクトや研究者にお任せするということです。
 ただ、そこにどういう研究データがあるのかは教えてほしいということだと思います。それを管理するというのが第一歩で、それは大学図書館でもできるのではないかということが一番言いたい点です。当然それはその後、一大学で終わるわけではないので、今おっしゃっていただいたように、国なりどこかなりが責任を持っていっていただける、そこに大きなクラウドをつくっていただいて、そこにどんどんそれらデータを入れていくことができれば、国としてのデータベースができていく。オーストラリアなどでもそういう形を取っていますので、今度は国際的な協働関係というものもそこから発展してくるという、そういうものを目指すべきではないのかなと考えているということです。
【引原委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございます。石田委員、どうぞ。
【石田委員】  石田です。大変、貴重なお話をありがとうございました。
 先生のお話、とても私も賛成するところが多いんですが、一つ、慶応の事例で教えていただきたいんですが、研究データ管理部門をこのように設置されたということなんですが、御発表の最後のほうで、例えば大学図書館が全部1つでやるというのは到底無理という話で、例えば情報基盤部門とか学術研究支援というのがそれぞれの役割を担うほうがいいというお話だったんですけれども、実際に慶應等でもそのような形といいますか、組織をつくられようとしているのか。
 多分、我々もそういうところでいろいろ悩むことになると思うので、もしその様子が分かれば教えていただければと思うのですが、大丈夫でしょうか。
【倉田先生】  大丈夫かな。
【竹内主査】  大丈夫な範囲でお願いいたします。
【倉田先生】  要するに、本当は新しい部門ができるほうが、話はすっきりします。研究データの管理だけを行う部門ですね。
 でも、私は新しい部門を作って欲しいと大学の執行部にお願いすることには反対しました。新しい部門を一つ作ったらどこかを壊さなきゃいけないわけでして、今の状況では研究データだけの部門は無理だろうと判断して、こういう各部門から人を持ってきてチーム制にするという形の方が始めやすいと考えたわけです。
 はっきり言って、関係者というか、お互い既に知っている同士であったことも大きかったと思います。学術研究支援部の部長とは前々からの知り合いで、図書館員も知っているし、学研の部長が前のITの部門の長だったし、ということで今もう完全に人に頼った形でできた組織です。ある意味、このメンバーで動いているから進んでいるという形です。
 これを早く、もうちょっとちゃんとした制度として、いろんな部門から定期的に人が入るような委員会にして、私は去りたいなと思っているわけです。そうでないと、私が抜ける、学研の部長が抜けた時に、次の人をどこから持ってくるのか、替わりの人がうまく入ってこられないと、途端になくなってしまう可能性もあるわけです。定常的な各部門から常に誰か新しい人が入ってくるという形にしないといけないと思います。
 今、いわゆる研究支援部と情報基盤と図書館が一緒になって1つの部門になりましょうというのは、ちょっと無理だと思います。なので、その3部門からメンバーを出してある種特別チームみたいなものをつくって、それがうまくいったらば、逆に、どこか中心となる部署、たとえば情報基盤に専門部署をつくってもらう、もしくは研究支援のほうでそこを重点的にやる人を拡大して雇ってもらう、そういう形で徐々に広げていくというころです。核は小さく、そこから徐々にじわじわとしていくという手段しかないかなというふうに考えています。
【石田委員】  ありがとうございました。貴重なお話をすみません。
【竹内主査】  ありがとうございます。実践的な部分も含んだ、示唆に富んだお話だったと思います。では大藪委員、お願いいたします。
【大藪委員】  ありがとうございました。考え方を全部変えて、ゲームチェンジだということは納得できて、やっぱり今のままずるずる行くのはちょっと難しいだろうなと思いました。慶應大学の状況を教えていただきましたが、今おっしゃったとおりスモールチームでやっていらっしゃいますが、慶應大学みたいに大きな母体のところなので、この人たちにすごく負荷がかかっているんじゃないかと懸案しました。
 あと、講演会などをいろいろされているようですが、教職員の方たちの納得度というか、理解度とかいうのがどの程度で、協力体制が取れているかということを伺いたいです。もう1つは、外部のシステム、ツールを使っていったらいいということでしたが、外部のツールの費用大学が払っているんでしょうか。よろしくお願いします。
【倉田先生】  講演会他はまだ成功したとまでは言えないのですが、オンラインがすごく広まったので、職員とか教員で300名ぐらいは参加してくださいました。全体が5,000人以上いますのでまだ少ないのですが、録画配信を含めれば多分500人ぐらいは何となくは聞いてくれているという感じです。
 アンケート調査をしましたので、それで研究者はとにかく何かやるらしいということは分かってくれたと思います。全体で1,000件ぐらいアンケート回答が返ってきていますので、今、その中からさらにデータをよく使っている方々にインタビューをしているところなので、そういう意味では徐々に広がっていくことを期待しているということだと思います。
 それからもう1つが、予算に関しては、今、いわゆる大学のDX化ということで、ここである程度予算を使おうとしていらっしゃるので、そこに何とか研究データに関しても入れて欲しいということを、いろいろなところで折衝しているというところです。
 全体の予算の中で、慶應の場合も、例えばクラウドの予算をどうするかという問題が出てくるわけで、そこのところでデータ管理に関してもクラウドの利用の一部として入れてくださいということをお願いするという形で、全体の予算の中に何とかして研究データ管理も考えてもらうようにしていきたいと思っています。
【大藪委員】  分かりました。ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】  どうも大変興味深いお話をいただきましてありがとうございました。
 倉田先生も、それから池内先生も、メタデータというのが大学図書館に期待するところだということをおっしゃっておられましたけども、私が倉田先生にお聞きしたいと思いますのは、スライドの3ページで、電子ジャーナルとか電子書籍について、大学図書館がそれなりにというか、括弧つきの「うまく」対応してきたということをおっしゃられておられましたが、ここの中でメタデータを通じた関係性の整理というところが、例えばNIIや国会図書館等を含めて、図書館が対応してきた部分でもあるかと思うわけです。
 確かに、メタデータあるいは識別子というものが、人や組織や資金や成果をつなげるものとして非常に重要な役割を担うものであるということは十分承知しているつもりでございますけども、次の4ページのエルゼビアの統合戦略でありますとか、最近、クラリベイトがProQuestを買収したり、3年ほど前にはProQuestがEx Librisを買収したりしている中で、メタデータあるいは識別子というところでは非常に商業的な活動が盛んになっているところであります。図書館界あるいは大学の関連と、そういった商業的なサービスとのすみ分けをグローバルなレベルでどのように考えたらいいのかというところが、若干不透明になっているのではないかと思えるのですが、こうした点について、倉田先生のお考えをお聞かせいただければありがたいと考える次第です。よろしくお願いいたします。
【倉田先生】  メタデータに関しては逆に佐藤さんにお聞きしたいぐらいなのですけれども。
 大学図書館が綿々と伝統的な紙を中心にやってきたメタデータで、たとえば電子書籍や電子ジャーナルに関して対応できたと申し上げましたけども、電子ジャーナルに最低限アクセスできるレベルという意味で対応しただけであって、個別の雑誌論文のレベルできちっと対応できているかといえば、できているとはいえません。
 つまり、個々の雑誌論文に関して、特定の大学がアクセスできるかどうかに関して、大学図書館がメタデータを作っているわけではありません。さらに今度は研究データにまでなったときに、データそのものにメタデータをつけるということを図書館員がやれるのかと言われれば、管理データというレベルでは、つまり「誰が」作ったのか、その研究者は誰でとか、研究費が何でというレベルではつけられると思いますが、データそのものの記述は、これはやはり研究者にしかできないと思っています。
 研究者がメタデータを付与していくに当たって、より詳細な、その分野に独特のある種の標準化というものも今、いろんな形で模索されていますので、今の段階では、そういういろいろな模索に関する情報を収集する、メタデータに関連する様々なことを整理、統合する、そこが限界ではないのかと、これはかなり否定的な意見かもしれませんけれども、今の段階としては、そういう色々な分野での動きを見通せる可能性があるのは大学図書館ではないかと思っています。そういう意味で研究データのメタデータに対する期待というのは、別にデータのメタデータを今、全部作ってくれという話ではないと、私は思っています。
 全ての分野に通じている人は多分いないので、そういう意味で、多様な領域で行われている動向に関して、それをまさにメタ的に関連させられるという人もいたほうがいいのではないかなと思っているので、このメタデータもやっぱり括弧つきの、違う意味の「メタデータ」になっていく可能性もあると思っております。
【佐藤委員】  ありがとうございます。大変よく理解できました。ありがとうございました。
【竹内主査】  よろしいでしょうか。北本委員、お願いいたします。
【北本委員】  人文学オープンデータ共同利用センターの北本です。今、お出しいただいている図が、私も大変重要だと思っています。この図を見てみますと、上のほうに、ザ・リサーチ・プロセスとザ・パブリッシング・プロセスとザ・リサーチ・エバリュエーション・プロセスという3つのプロセスが書いてあります。おそらく昔の図書館は、真ん中のザ・パブリッシング・プロセスという、ここだけに関わっていればよかった。それがデジタル化されて全部つながってしまったために、連続的に全部見なくてはいけなくなってきたというのが今の状況なのだと思います。
 倉田先生のお話を聞いておりますと、図書館がどちらかというと、リサーチ・プロセスよりもリサーチ・エバリュエーション・プロセスのほうに足を踏み出しつつあるのではないかという印象を受けました。これはある意味では自然と言いますか、おそらく大学の執行部からは、こちらをやってほしいと言われるのではないかと思うのです。
 そこで倉田先生の考えをお聞かせいただきたいのですが、個々の研究者が行うリサーチ・プロセスよりもリサーチ・エバリュエーション・プロセスの方が、今後は図書館により求められるようになるのでしょうか。また本来の大学図書館というのは、このプロセスの全部をやるべきなのか、あるいはどこかに焦点を合わせるのがいいでしょうか。そのあたりの点についてお願いします。
【倉田先生】  おっしゃるとおりで、既に慶應の場合もこのリサーチ・エバリュエーションについて、メディアセンターに要請がきています。具体的にはSciValやPureを使って、研究者の評価に関するデータを出してほしいということは既に言われていまして、逆に言うと、もうやっている部分です。
 この評価に関しては、個別にやるというよりも、これも外部サービスをうまく利用して全体の動向を把握するということは、図書館員には結構やりやすいサービスではないかと思っております。
 ただ、私としては、やはりできればリサーチ・プロセスそのものに関わる部分を捨てないでやってほしいなというのが期待でして。というのは、リサーチ・エバリュエーションに関して、現在は外部サービスを使っているだけですが、私たちが研究者自身がこのサービスの評価項目を考えるべきなはずです。研究活動そのものを見るという視点なしには、ないと思うので、研究者たちのコミュニケーション自体が、パブリッシングの位置づけも含めて、どう変化するのかということを直接的には見ながら、何がサービスできるのかを、大学図書館としてぜひ考えてほしいというのが、私の期待というところです。
 現実的には、おっしゃるようにエバリュエーションのほうに行ったほうが楽だというふうには思っております。
【北本委員】  分かりました。ありがとうございます。
【竹内主査】  ありがとうございます。ほかに御意見あるいは御質問等はございますでしょうか。もしもないようでしたら、私から1点伺いたいことがあるんですけれども、スライド7ページのプラットフォームの問題ですが、先ほどもちょっと言及いたしましたけれども、やはり研究のライフサイクル全体を見た上での支援を考えるというのは、非常に重要なことでして、これから外れてしまったら大学図書館の将来はないんじゃないかなというふうに、私個人としても思っております。
 ただ、その時にやっぱり非常に難しいのが、既に先ほどもお示しいただいておりますけれども、4ページにあるような様々な外部のサービスがある中、あるいは学内においても、様々な個別的なシステムがある程度出来上がってしまっているという状況があると思います。これを一つにしていくというのは、何かよほど大きな変革をしないと無理なんじゃないかという気がしておりまして、現実的には、既にあるものをいかに相互に関連づけられるように統合していくかというアプローチしかないかなというふうに思っているんですけど、その辺りについて倉田先生はどのようにお考えでしょうか。
【倉田先生】  全部をつくり直すということは全く無理な話でして、ただ、恥ずかしながら慶應の場合、情報間のリンクができないんです。例えば今、直接問題になっているというか私が問題にしているのは、APCを誰がどう払っているかというデータを、図書館は直接手に入れられないのです。別の形で調査をするか、出版社からもらうわけです。学内の情報としては、APCを誰が幾ら払ったかというデータはどこかにはありますし、私は図書館員が見れて当然だと思うのですが、今、少なくとも慶應はそれができないのです。
 要するに、そういうシステムのつくり方が問題だと思います。それは個々の大学によっても違っていて、もちろん国立大学さんの場合にはこのAPCについては、もう基本的にできるようになっていらっしゃるということは分かっています。でも、国立大学さんの中でも、何かはできない、うまくいっていない部分が多分あると思います。
 その、何ができなくて、何はできないと困るというものを、システム的にどうやってつなぐか。そこに関してだけは、最低限ある種のシステムの入替えというか、つくり替えというか、それは必要だと思いますが。慶應は今たまたま会計システムを入れ替えるということなので、今のAPCの把握はできるようにして欲しいと言ったのですが、そういう外部資金と内部の会計システムとをちゃんと連動させることとか、そこと電子ジャーナルの契約との関連はちゃんとつけられるようになっているとか、そういうシステム間の連携がやはり一番重要だと思っております。
【竹内主査】  ありがとうございます。そのようなシステムのつくり方というのは、DXを進めていくという上で非常に重要なことだと思うんですけれども、倉田先生から見て、誰かそういったことをきちんと統括するような役職のような方というのは、学内にいらっしゃるということでよろしいでしょうか。
【倉田先生】  いないように見えます。何人かが中心人物ではあるのですが、どなたかお一人で全部を知るということがやっぱりなかなかできない状態です。中心人物がいることも重要なのですが、その中心人物の方に情報を流せる人というのも重要だと思うので、そういう人に向けてアピールするというか、情報をまとめて、ここはこうだ、ここがないと困るということをもっと具体的に情報を流せる、ブレーンというか、そういうようなものがうまくつくれていくと、大学のDXというのもうまくいくのではないかなと思っています。
【竹内主査】  ありがとうございます。
 大藪委員、何かございますでしょうか。
【大藪委員】  ありがとうございました。今いろいろ伺っていて、例えば慶應大学は走り出しているという状況で、ほかのところもこれからやるというところですが、最終的には日本全体とか世界にデータをアップしていくというところで、いろんな大学がばらばらにやりだして、結局うまいことアクセスできなかったということになるんじゃないかと思うんですが。慶應大学で、ほかの大学のモデルを見ながらやったとか、ここのところを話を聞きながらやったとかいうことがあれば教えていただきたいです。日本全国の大学がネットワークをつくって情報交換しながらやっていかないと、それぞれのところがやり出すと、いろんなシステムが出来上がってしまって、本当にややこしくなってしまうんじゃないかなと思うのです、いかがでしょうか。
【倉田先生】  基本的には、それを全部統合するのは、北本先生がいらっしゃるNIIであると思っております。NIIは研究データのメタデータを検索できるようにするというシステムをつくらないといけないことは決まっていますので、NIIが基本的な検索ができるシステムをつくって、各大学はそこに要求されたデータを入れ込んでいくという仕組みだと思います。
 基本方針は決まっていますが、例えば研究管理計画の項目をどうするか、それらを個々人が入力するシステムのインターフェースだとかは、本当はできたらNIIで標準的なシステムを作成していただいて、各大学が導入するというほうが簡単だとは思うのですが、ちょっと待っていられないというところもあります。そういう意味では、幾つかの大学が走ったところを見て、NIIさんが標準システムにしてくださるといいなとは思っております。
【大藪委員】  ありがとうございました。
【竹内主査】  ありがとうございました。ほぼ時間となっております。もしも、これだけは最後にということがあれば1つだけお受けしたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。
 本日は池内先生、そして倉田先生から非常に示唆に富んだお話をいただきました。我々としては大変勉強になったと考えています。
 また、委員の先生方からは様々な観点から御意見を頂戴いたしました。本日いただきました意見等につきましては、事務局で整理をいたしまして、今後の審議に生かしていきたいというふうに思っているところでございます。
 最後に、事務局より連絡事項等がございましたらお願いいたします。
【大鷲参事官補佐】  事務局でございます。本日の議事録につきましては、各委員の先生に御確認いただいた上で公開させていただく予定でございます。
 また、次回第4回につきましては、7月13日、水曜日を予定させていただいてございます。開催方法等につきましては改めて御連絡させていただきます。
 事務局からは以上でございます。
【竹内主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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