次世代学術情報ネットワーク・データ基盤整備作業部会(第3回)議事録

1.日時

令和2年7月1日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 次世代の学術情報ネットワークとデータ基盤整備のあり方について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
後藤主査、辻委員、高橋委員、合田委員、漆谷委員、下條委員、棟朝委員、山口委員、山地委員、湯浅委員
(科学官、学術調査官)
黒橋科学官、竹房学術調査官、池内学術調査官

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局担当)、橋爪参事官(情報担当)、三宅学術基盤整備室長、土井参事官補佐

5.議事録

【後藤主査】  それでは、定刻になりましたので、ただいまより第3回次世代学術情報ネットワーク・データ基盤作業部会を開催いたします。本日も前回と同様、コロナウイルス感染防止のためにオンライン開催とすることとなりました。通信状態などに不具合が生じるなど続行できなくなった場合は検討部会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
それでは、最初に議題1の次世代の学術情報ネットワークとデータ基盤整備の在り方について、まず事務局から簡単に御説明をお願いいたします。
【土井参事官補佐】  本日は、国立情報学研究所(以下NII)の合田委員と山地委員から御発表いただくための資料を2種類お配りしています。前回の会議でもございました、コロナウイルスの状況における新たな必要性と、セキュリティについて御発表いただきますということと、あわせて、これまでの会議で意見が多く出されておりました人材育成につきまして発表いただくこととさせていただいております。
 以上でございます。
【後藤主査】  ありがとうございます。それでは、早速、NIIの合田先生、よろしくお願いします。10分程度の御説明、よろしくお願いいたします。
【合田委員】  それでは、合田から説明させていただきます。今日御説明させていただきますのは、前回までで次世代のネットワーク基盤について御説明してきたところですけれども、その中で我々、もともと構想に入っていったものの中で、前回までで十分に御説明できなかった部分を、御質問を頂いた答えも含めまして補足させていただくというようにお考えいただければと思います。
 私から、まずネットワーク基盤に関する追加ということで2つほどお話しさせていただきます。1つ目は、コロナ禍・ポストコロナ期における対応でございまして、皆さん御存じのように、コロナ禍によりまして、今、オンライン会議サービスに関する需要は非常に高まっておりまして、大学等も遠隔講義がかなりのところで進められているところですので、それに対して何ができるのか等をお話ししたいと思います。
 この資料、弊所で主催しております遠隔教育のサイバーシンポジウムの中で、文科省、西山様から御講演いただいたものでありますけれども、ここに書いてありますとおり、今、ほぼほぼ98.6%、100%近い大学が既に遠隔授業を実施又は検討中、これは4月の時点ですので、今、もっと変わっていると思いますけれども、ほとんどの大学で遠隔授業といったものが実施されているという状況にあると言えると思います。
 そういった中で、先ほどお話ししましたけれども、NII並びに大学の情報環境のあり方検討会の主催によりまして、遠隔授業を進める上での知見を共有するという目的で、今、金曜のお昼にやっているのですけれども、サイバーシンポジウムというのを継続的に実施しております。第1回、3月に行ったのですけれど、それからほぼ毎週か隔週のペースで進めておりまして、多いときで2,000名を超える参加者数、これ、接続されている方ですけれども、が参加していただいて、非常に注目されているイベントであります。これまで延べの参加者数が1万6,000人を超えていて、講演数も117本、さらに、次のスライドでお示しします通り、全部の講演資料や動画をアーカイブして視聴できるようにしているのですけれども、既に10万回を超えるアクセスがある状況でありまして、非常に多くの方々に参加いただいております。
 この中でのいろいろな議論ですとか意見を我々の側でお聞きして感じていることが、ここにあります状況で、一言で言うと、大学におけるオンライン教育環境の状況が二極化していると考えております。ある程度規模の大きい大学ですとかIT系の強い大学については、オンライン会議のライセンスを自前で持っていたりですとか、教員や大学のスタッフが会議を運営して、かつ先生方のオンラインの教育コンテンツも拡充されているという状況がある一方で、中小規模の大学になりますと、なかなかそれが難しくて、ライセンスの契約が難しいですとか人材スキルが足りないですとか、あと教育コンテンツもなかなか作れないといった状況があります。このテーマは我々、問題と考えているところです。
 こういったものに対しまして、まず我々といたしまして、これは既にプレス等で出しておりますけれども、オンライン会議システムの事業者さんに我々が協力するという形で、無償のライセンスを一定期間、高等教育機関に提供いただくという取組をしております。これがシスコのWebexで、もう一つがNTTビズリンクであります。さらに、こういった取組は時限つきなので、今後の長いスパンで考えた場合には、やはり学術情報基盤としての取組は必要であると考えておりまして、現在考えていることがこのスライドに表れております。
 オンライン教育、先ほど言いましたように、二極化しているという問題がありますので、それを均質化して、更に高度化するためには、全国の大学が利用可能なオンライン教育の支援の基盤が必要であると考えております。大きく2つのことを考えていまして、1つが遠隔授業の支援システムでありまして、全国の大学がオンライン会議サービスを利用可能とする仕組みですとか、ネットワークに対する負荷も高まりますので、それを安定的に機能するようなネットワークの接続の確保、さらには、オンライン会議の運営は実はかなりノウハウが必要ですので、それができる人材を育成するといったことを進めてまいりたいと考えております。
 さらに、オンライン教育コンテンツにつきましては、やはり大学間でそれぞれにばらばらに作るよりも、個々の大学の持っている良いコンテンツを共有することで日本全体のオンライン教育の質が上がると考えておりますので、こういったコンテンツを共有できるような基盤といったものをつくれないかと今検討しております。これは単に、動画とかPDFファイルを置くリポジトリではなくて、きちっと認証、認可をして安全なアクセスができるものを提供するとともに、大学等で利用されているLMS等のシステムとも連携できたりですとか、さらに、NIIはデータ管理基盤で検索するというノウハウを持っていますので、そういった高度な検索機能を提供すると、そういった総合的なプラットフォームができないかということで今検討を進めているところでございます。
 2番目は、セキュリティ・人材育成で、これについては、既に我々NIIで進めているもので、更に今後も進めていきたいというものであります。セキュリティ強化につきましては、ネットワークについてですけれども、既にVPNのサービスですとか、あと学術認証基盤といったサービスを提供することで、こういったSINETにつながった学術情報サービスをセキュアに利用できる環境を提供させていただいているところであります。加えまして、今後、DDoSの検出ですとか抑止を高速に行って、こういったものが発生した場合に瞬時にネットワーク側で対応できるような仕組みといったものを次期のネットワーク基盤で導入したいと思っておりますし、先ほど御紹介しましたオンライン会議をセキュアにする仕組みですとか、あと、5Gといったものはこれから重要なキーワードになると思いますので、5Gを活用して、非常に臨場感が高くセキュアに通信できるような環境、そういったものも進めていきたいと考えております。一方、国立大学等に対して、NII-SOCSのほうで取組を実施しておりますけれども、こういったものも、本事業とは別事業になりますけれども、実施中であります。
 こちら、DDoS検出・抑止機能の更に詳しい内容ですけれども、今御紹介しましたように、DDoS等の攻撃は短時間で実行されることが多いために、それを非常に高速に短時間で検出して、抑止するような機能をネットワーク側に持つというようなことを考えております。
 続きまして、ここからは人材育成の部分でありますけれども、これ、既に実施中の内容になります。我々、学認クラウド導入支援サービスという、クラウドを大学が活用する場合にコンサルティングをするようなサービスを続けておりまして、例えば、クラウドの事業者のサービスを、チェックリストを使って検証したりですとか、その検証結果を大学にお見せして、今、100機関の大学に登録いただいて公開しているところであります。さらに、ハンズオン等のセミナーですとか技術相談をすることによって、クラウドを活用できる技術者といったものを大学に育成するといったような取組を進めております。こういった取組につきましては、次期のネットワーク基盤においても非常に重要になりますので、更に強化して進めていきたいと考えております。
 また、こういったセミナーや技術相談、研修等の取組は、今、クラウドの例をお見せしましたけれども、これら以外でも実施しております。従前はこういったものを、実際にNIIに来ていただいてセミナーを受けていただいたりですとか、あとは技術研修であると、一定期間の間、研修生をNIIが受け入れて、OJTの形で実施するといったことをしていたのですけれども、これはコロナ以前から、やはり長期にわたって研修したりですとかNIIに出張することが難しいという御意見が大学の方々から寄せられておりますし、さらに、今のコロナ禍の状況でありますので、こういった取組については継続するのですけれども、NIIに物理的に来なくても、所属機関からオンラインで受けることができるような仕組みも今後進めていきたいと考えております。このようなことを続けることによって、大学においてスキルを持った人材の育成といったものを続けていきたいと考えているところでございます。
 私からの報告は以上でございます。
【後藤主査】  ありがとうございます。それでは、御質問等もあると思いますが、次の山地先生の御説明を伺ってから、2件まとめて議論させていただきたいと思います。それでは、山地先生、資料の準備はどうでしょうか。それでは、山地先生、10分程度で御説明、よろしくお願いいたします。
【山地委員】  よろしくお願いします。山地からは、研究データ基盤に関する補足の説明をさせていただきます。
2ページ目なんですけれども、このスライドは、前回発表させていただいたときの最後のまとめのスライドです。重点項目の青で囲ったところは、我々、次期のSINETとしてマスタープランでも記載させていただいている内容です。この赤の部分は、前回も発表させていただいたのですが、今回も議題になっております人材育成の部分です。これはマスタープランの中では記載しておらず、学術会議での提言を受けて追加した内容になっておりまして、もう一度簡単に説明するとともに、COVID-19との関係についても併せて紹介させていただきたいと思います。
これは、オープンサイエンスの政策的な取りまとめなのですが、2015年頃から日本でも政策文章の中で書かれるようになってきて、オープンサイエンスを推進することに加え、基盤の開発プラス人材育成が重要だということは、ずっとうたわれてきております。人材育成が重要だということは、それぞれの文章で書かれてはいるのですが、具体的なアクションにつながっていないというのが現状です。ここを何とかしないと、基盤を幾らつくっても、実際のオープンサイエンスの推進にはつながりません。
 オープンサイエンスを推進するためには、当然基盤の開発と、それをうまく組織の活動に組み込んで、研究者の意識を変えていくためのポリシーの策定が重要であります。それと同時に、オープンサイエンスは研究者にとっては今までとちょっと違った研究の様式を進めることになりますので、データをきちんと管理して公開するところを支援する人材の育成と、その支援者の育成が重要になってきます。
 COVID-19との関係ですが、現在、NIIで基盤を提供している学術認証フェデレーション、学認というのがあります。この学認の利用においても、電子ジャーナルサービスの利用を学認経由で進めたいという問合せが増えてきております。今までは、大学から電子ジャーナルサイトにアクセスしていたので、IPアドレスによる認証でした。それに対し、今は自宅からのアクセスになるので、学認経由で本人をきちんと認証して、電子ジャーナルサイトにアクセスするニーズが高まっています。次の例は、NIIが提供するファイル交換サービス、FileSenderというものですが、これの利用もCOVID-19の状況下でどんどん増えています。先ほど合田からも説明がありましたように、テレビ会議システムについても利用が常套化しているということで、こういった状況の中で研究環境も、どんどん変わってきております。したがって、組織としても適切な環境を提供していくのが重要になってきます。
 研究環境の変化と同時に、研究者の動きそのものも変わってきております。これはCOVID-19に関連するプレプリントの増加を表したグラフです。プレプリントというのは、ピアレビューの論文を出版社や学会から発表する前に、査読前にプレプリントサーバーや機関リポジトリに登録した論文です。もともとは、査読に1年とか2年とかかかるような長い分野において、この研究成果は私が出したものですよという、先取条件を確保する意味がありましたが、COVID-19状況下では速報性が非常に重要であるということで、このプレプリントが非常に多く使われるようになってきております。当然、この論文は査読を介していませんので、論文だけではなくてデータも同時に公開していくことが重要になり、これがオープンサイエンスと関わってきます。すなわち、現在は研究成果を、単純に今までのように、出版社や学会の査読を通して論文を出す方法だけではなくて、その速報性が重要になってきますし、研究者にとっても、多様性を持った研究成果の公開様式の重要性が認識されるようになってきておりまして、これはオープンサイエンスの推進とも非常に密接に関係するところであります。
 ただ、それを実践していくためにはデータの公開も一緒にやっていく必要があり、データの公開も適切にやっていくための人材育成が必要になってきます。その人材育成なのですが、欧米では、データ駆動型の研究が始まった2010年あたりからどんどん組織レベルで進んできております。一方、日本では、このスライドの下に比較で書きましたが、最近になってNIIとJPCOARという図書館のコミュニティーが一緒になって、研究データの管理のためにはどういったことを研究者や研究支援者が学ばなければいけないかとか、意識しなければいけないかという、教材を作り始めたのが現状です。
 2010年ぐらいから欧米では、人材育成の支援というのは進んでいるのですが、実際にどういった人材が、どのぐらいの人材が育って、各機関にいるかを表したのがこのスライドになります。北米とイギリスの例を簡単に持ってきたのですが、大きな大学では、各大学それぞれ3人から4人の支援員、図書館員を中心としたキュレーターとかサブジェクトライブラリアンというのを雇用して、研究者の研究データ管理とか研究データの公開を支援しているのが現状です。
 このグラフは、データセットを公開するためにどんな問題がありますかというのをたくさんの研究者に聞いた結果です。欧米では、人材育成と各大学における人材の確保は進んでいる状態ではあるのですが、データをきちんと管理して組織化するとか、その権利処理というところに不安を抱えていたり、それに対する支援が必要だという研究者が多数います。欧米でもまだ支援者の人材が不足しているのが現状です。こういった中で、これはアメリカで始まった例なのですが、データライブラリアンとか、その分野に特化したサブジェクトライブラリアンは、1つの大学で全ての分野のそういった支援者を用意することはできないので、大学間で連携しながらデータキュレーションネットワークというのをつくって、そこで人材がお互いに助け合いながら、研究データの管理とか公開の支援をしていくという仕組みが出来上がってきております。アメリカだけではなくて、カナダやオランダでも同様の取組が始まっています。
 こういった状況の中で、我々、人材育成で取り組む方向性としましては、ステップ1として、まず人材育成を進めていくためのコンテンツや基盤を構築していく必要があるだろうということと、ステップ2では、それでも十分な人材がすぐに用意できるわけではないので、育った人材をうまく活用していくための基盤の構築が必要だということで、今、検討を進めているところです。
 人材育成のためのコンテンツの開発に関しましては、既に2つの教材をこれまで図書館のコミュニティーと一緒に開発してきました。現在ではまだ基本的なコンテンツとか、あるいは支援者が研究データ管理のために何をするかという基礎的なコンテンツしか用意しておりませんので、これの発展型として、研究者向けのコンテンツや我々の基盤の利用に沿ったコンテンツを発展的に作っていく必要があります。このコンテンツを、異なった職務とか異なったスキルレベルとか異なった研究フェーズにおいて、必要な人が必要なコンテンツだけを受講して学べるような、そういった教育基盤をつくっていこうとしております。
 ステップ2の、人材が育成されてきた後にそれをどういうふうに活用していくかについては、欧米の例として先ほど説明しましたような、キュレーションネットワークみたいなものが日本でも必要でないかと考えております。このネットワークをつくっていくためには、人的なネットワークだけではなくて、それを支えるための基盤が必要です。その基盤に必要な機能として、この5つの機能を現在想定しています。将来的には、日本においてもデータキュレーションのネットワークをつくっていければと思っています。この人的なネットワーク自体は、JPCOARとかAXIESというコミュニティーが、我々の基盤を活用しながらつくっていくべきだと思いますが、我々NIIとしましても、大学におけるデータキュレーター、図書館員やURAの方々などを中心としたローカルなキュレーターというのを育成すると同時に、ジェネラルな大学の支援員だけでは不足する部分に関しましては、大学共同利用機関や研究機関と協力しながら、専門的なキュレーターもこのネットワークの中に含めるような形のフレームワークをつくっていければと考えております。
 以上が人材育成についてですが、次は、COVID-19における国際的なデータ連携の具体例について、我々、どういったことができるかということについて紹介したいと思います。
ヨーロッパでは、ヨーロピアン・オープンサイエンス・クラウドの構築が進んでいますが、このCOVID-19 Data Portalというのを欧州でつくっているので、これの日本版を日本でも構築してくれないかという要請を受けました。ヨーロッパでもオープンサイエンスのためのデータ基盤をつくっているところ、あるいは検索のためのサービスをつくっているところが、こういったデータポータルみたいなものを、1つの実践例としてつくっていまして、我々もこれを推進していくというのが非常に重要であると考えております。
 このヨーロッパ版のデータポータルは、主となるヨーロッパ版に加えて、各国にもローカル版のデータポータルをつくるというフレームワークになっています。国際的な遺伝子のデータベースとかゲノムのデータベースというのは既に国を越えてデータの連携をしておりますので、特にその国でしか得られないような情報をプラスアルファとして含めて、それを国のローカル版のこのデータベースとして提供するという試みが既に進んでおります。これはスウェーデンの例なのですが、スウェーデンの場合は、その国でしかフォローできないクリニカルデータをプラスアルファデータにして、それを公開して、主となるヨーロピアンCOVID-19 Data Portalと連携する運用を進めております。
 このスウェーデンの例を各国、その他の国にも波及できないかというので、それぞれの国に対して要請がかかっているのですが、彼らの意図としては、基礎的な研究のデータは既にデータベース間での情報交換が進んでおりますので、特にローカルであるクリニカルデータやソーシャルデータみたいなものを各国のローカルポータルから出して、それを交換できるのが有効だと考えているようです。
 その日本版なのですが、これは現在、我々が想定している仮案なんですけれども、我々NIIとして、これまでNIIリサーチデータクラウドをつくってきたという経験がありますので、その基盤をベースに、この日本版のデータポータルのインフラ的なところをサポートしながら、各関係機関と協力して日本のデータを集めて世界に発信していくという、こういった具体的な例を、データ基盤の一つの例としてCOVID-19状況下で我々も進めていきたいと考えております。
 以上です。
【後藤主査】  ありがとうございます。それでは、今、御説明いただきました合田先生、山地先生の内容につきまして質疑に移りたいと思います。最初にありましたように、挙手の機能を使って御発言……。
 それでは、まず棟朝先生、お願いいたします。
【棟朝委員】  棟朝です。説明ありがとうございます。私からは、まず、前半の「オンライン教育の支援に向けて」と書かれた部分につきまして質問させていただければと思います。
【後藤主査】  合田先生の分ですね。
【棟朝委員】  はい、そうです。こちら、遠隔教育支援システムとして、コンテンツシェアリングプラットフォームということで大変期待のできる取組かと思うんですけれども、LMSそのものにつきましてどのように進めていくか。例えば、中小規模の大学ですと、LMSのシステムをメンテナンスしていくのはなかなか難しいところもあると思うんですけれども、それらを取りまとめて、クラウドのサービスとしてマルチテナントで複数の大学のシステムを、NIIで言いますと、リポジトリでは多分取組をされているかと思うんですけれども、そのようなLMSも含めた取組については検討可能なものなんでしょうかというのが私からの質問となります。
【後藤主査】  これは、合田先生、よろしいですか。
【合田委員】  御質問ありがとうございます。棟朝先生のおっしゃるように、大きな大学はかなり自前のLMSを運用されておりますし、カスタマイズされたものを持っていると思うのですけれども、やはり中小規模になりますと、その立ち上げ、費用面だけではなくて技術的にも難しいという声をお聞きしております。NIIとしましては、こういった複数の大学で困っていらっしゃるようなサービスを共通基盤として提供することは非常に重要だと考えておりまして、そういった取組は今後検討していきたいと思っています。ただ、具体的に、例えばLMSについてですと、個別のどのシステムをやるかというのは、これからその内容も検討させていただきたいと思うのですけれども、引き続きそういったニーズのサーベイ等を行いながら、できることをやっていくという検討はしていきたいと考えております。
【後藤主査】  棟朝先生、いかがでしょうか。
【棟朝委員】  どうもありがとうございます。御検討をお願いできればと思います。基本的には、パブリッククラウドのSaaS等を使えばよいというものから、例えば、もう少し大学間でデータを共有するといった場合には自前でやらなければいけないんだけれども、自分でなかなか難しいといったような様々なシナリオがございますので、そのニーズに合わせて御検討いただければと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
【後藤主査】  ありがとうございます。
 それでは、棟朝先生、手を下ろしていただいて、次に、下條先生、お願いいたします。
【下條委員】  大阪大学の下條です。山地さんも合田先生も、今、やっぱりNIIを中心に各大学が人材育成のお世話になっているという構図が割とうまく回っていて、ネットワークとかクラウド、オープンサイエンスに関しては非常にうまくいっていると思います。今回、教育という面を新たに言われたのは非常に有り難いことではあるんですけれども、まだNII側にそういう人材がまだ見えないので、その辺り、どうされるのかというのが質問で、あと、もう一つやっぱり重要な観点として、今後、ありていに言うとDXですよね。要は、大学におけるいろいろな業務システム、教育も絡めて、全体をある種デジタル化していくというところが大学としては悩みで、本当はその辺りもNIIがカバーしていただける軸があると非常に有り難いなという、ちょっとぜいたくな望みですけれども。
 あと、山地さんのオープンサイエンスに関しては、これはもう絶対図書館のある種、方向性の中に取り入れていただいて、そこを中心に大分状況が変わってきましたけれども、進んできましたので、ぜひそこをよろしくお願いしたいということでございます。
【後藤主査】  それでは、前半は合田先生、後半は山地先生でお願いしたいんですが、どうでしょう。
【合田委員】  御質問ありがとうございます。お答えするのがなかなか難しい質問ではあるのですが、ただ、まず今日、オンライン会議も教育に焦点を絞ってお話しさせていただきましたけれども、これ、別に教育だけじゃないという話を中でも検討しておりまして、研究でも同様な取組が必要ですし、あと、学内の会議等でも、例えば、セキュアなオンライン会議をするにはどうしたらいいというような議論もありますので、そういった意味では、教育に絞らず、活用できるところは活用していただくような仕組みを考えたいと思っております。
 あと、教育を支援する上でのNII側のスタッフという意味では、確かに下條先生がおっしゃるとおり、そこはまだ弱いかもしれません。それに対してすぐお答えはできないのですけれども、ある意味、ただ、そこは大学の先生方は非常に高い経験とノウハウを持っていらっしゃいますので、大学の先生方とも御相談させていただきながら、どういう方向性で進めていけばいいかというのを議論できればと思っております。
 後半は抽象的な答えで申し訳ないですけれども、以上です。
【下條委員】  ありがとうございます。
【後藤主査】  それでは、山地先生。
【山地委員】  教育に関してもオープンサイエンスに関してもなんですが、我々、インフラ屋としてサービスはつくっていくのですが、大学のように大きな現場を持っていないという側面があって、そこは大学と協力しながら進めていかなければならないということは常に感じております。
 教育に関しては、学認LMSというLMSのサービスから、セキュリティラーニングと研究データ管理のコンテンツを提供しており、既に40近い大学に使ってもらっております。こういった経験を徐々に重ねながら、教育に関しても、我々、経験を蓄積していきたいと思います。我々がつくったラーニングアナリティクスのための基盤というのは大阪大学でも部分的に使っていただいているところもありまして、こういうのを、ちょっとずつなんですが、育てていきながらやっていければと思っています。
 図書館との関係については、これはまだ正直なところを言って、図書館の中において研究データ管理というのが、図書館の全体としてきちんと認識されているかというと、そうではないところがあるのは、皆さん御承知のところだと思います。まだまだ先進的なところに興味がある方々の、興味の範囲にとどまっているのが現状だと思います。大阪大学は尾上先生もいらっしゃるので、図書館と基盤センターが非常に密に連携しながら、研究データ管理のところを進められています。そういった枠組みを、他大学にも波及できればと思います。
 その1つのアイデアとして、AXIESとJPCOARという図書館のコミュニティーが、研究データ管理という側面でもう少し連携できるような、そういった取組ができないかなと考えております。
 以上です。
【後藤主査】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、湯浅先生、お願いいたします。
【湯浅委員】  高エネルギー加速器研究機構の湯浅富久子です。合田先生の御説明のスライド、ナンバー10のスライドについて質問させていただきます。
 このDDoS検出と抑止機能については、数年前のNIIのオープンフォーラムで御説明していただいて、大変期待して、これはできれば早くしていただきたいなと思っていた機能の一つでした。多分、何か問題があったのか、実際にはSINET5では、このサービスはまだ開始されていないと思います。もし今後、増速する次期ネットワークにおいて予想されるような問題がございましたら教えていただきたいです。なぜこれを希望しておりますかと言いますと、各大学、各研究機関で導入しているセキュリティ装置が増速に耐えない、つまり、増速することによってセキュリティ装置が、このDDoSを受けて止まってしまうというおそれを持っておりまして、そういう厳しい状況の中でDDoSまで耐えなければならないのを大学側で受けなくてよいとするならば大変すばらしいと思いますので、予想される問題点などがあれば教えてください。
【後藤主査】  これは合田先生。
【合田委員】  実際中心になって進めています漆谷より回答させていただければと思います。
【後藤主査】  漆谷先生、お願いします。
【漆谷委員】  回答させていただきます。DDoSアタックの検出と抑止の部分だと思いますけれども、現状でもSINETでは、サービスのトライアルはやっておりまして、NIIの中では実際に使っております。現在の課題としては、抑止に至るまでの稼働がそれなりにかかることです。現状はどうしても人のオペレーションが入ってしまって、DDoSの通知を大学から受けて、その後でNIIの中で分析をして止めに行くんですけれども、NIIに連絡をいただいてから30分ぐらいかかってしまいます。次期の新しい機能では、DDoS検出自体も基本的にNIIでできまして、その後で、NIIの判断では勝手に止められませんが、大学の判断で止めていいということであれば、事前に条件を登録しておくことで自動で止められるようにしようと思っています。
 それで、現状と次期との機能の違いの部分ですけれども、現状はルーターのハードウエアの性能がネックで、フローを取るにしても結構時間がかかるのと、ルーターに対して負荷をかけてしまうというところがあります。最近のルーターは進化していて、ラインカードからハードウエアでかなり早くフローを取り出せるということと、分析部分に関しましても、ここはベンダーのソリューションもある程度活用しますが、このパターンはDDoSかどうかという判断はかなり早くできるようになっているということと、それを判断した後の抑止の部分は、今はマニュアルでやっているんですけれども、最近では直にルーターに対してコンフィグを流し込むことができるようになっていまして、全体で10秒ぐらいで止めることが可能と考えています。ですので、次期で目指しているところは、現状SINET5で御提案しているものとは大分違います。
 お答えとしては、SINET5でも実はやっておりまして、皆様にも御紹介はしているんですけれども、ただ、マニュアルの部分が入ってしまうと、どうしても検出してから抑止するまで遅いので、いまいちという判断をされているのかもしれません。その辺り、今後もいろいろ御相談しながら進めていきたいと思っています。
【後藤主査】  ありがとうございます。よろしいでしょうかね。
 私からお聞きしたいんですけれども、次期の技術だったらできるだろうなと思ってお伺いしますが、SINETの外側の、いわゆるキャリアとか、ほかのリサーチネットワークとの連携としてのDDoS対策というのは何か議論は出ているんでしょうか。
【漆谷委員】  現状でも、BGP Flowspecという機能を使って、各NRENの間で情報をやり取りして止められるんではないかというような検討はしています。けれども、BGPを使うと、設定をミスると、ネットワークが不安定性を招く場合があるので……。
【後藤主査】  そのとおりですね。
【漆谷委員】  少し慎重に議論したいと思っています。
【後藤主査】  いわゆる情報連携という意味ではなさっているということでいいですね。
【漆谷委員】  そうですね。情報連携はしています。
【後藤主査】  ありがとうございます。それでは、次の御質問はいかがでございましょうか。挙手いただければと思うんですが。
 では私から、これは合田先生の件でお伺いしたいのですが、さっき、遠隔講義のサポートもなさっていくということで、これは私どもみたいに小さな大学は非常にうれしいのですけれども、遠隔講義、今回、私ども、いろいろ経験した上で、一番苦労したのが、学生側の環境のばらつきです。遠隔講義を1つ受けるといっても、マックの人もいればウインドウズの人もいればアンドロイドの人もいて、その環境がなかなか統一できないので、立派なコンテンツを作っても、それを受け止めてもらえているのかがなかなか分からないという苦労がございました。私ども、演習環境として、仮想マシン環境をつくって、それを学生のPCにまで送り込んだりしたものですから相当苦労しました。この辺りはキャリアのサービスを経験している方だったら分かっていることですが、いわゆるお客さんの端末のバリエーションをいかに事前テストするかというのは、苦労しているわけですね、キャリアの場合は。大学の遠隔講義のとき、なかなかそこまで手が回らないわけですけど、そういうテスト環境をNIIさんが持つことはあり得るのでしょうか。
【合田委員】  コメントありがとうございます。すみません、そこまで頭がまだいっていなかったのですが、テスト環境ですね。
【後藤主査】  ウインドウズのバージョンの違い。それから、Webexの場合でも事前にアカウントを持っているかどうかで大分異なります。私ども、NIIさんのWebexを使わせていただいているので有り難いのですが。
【合田委員】  ありがとうございます。
【後藤主査】  そのアカウントと別に、私は前に持っていたものがあったので、コンフリクトしまして相当苦労しました。これらは人によって違ったりするので、現在の技術だと、それぞれの人が同一の環境じゃないことに関する手間が実は一番大きかった、というのが私の今回の経験でございます。こういうところで、うまくノウハウを共有できたり、それをサポートいただけると実際にはすごくうれしいなと思ったところです。
【合田委員】  なかなか即答はできないですけれども、今おっしゃったように、環境の違いですとか、あとはテレビ会議システムも複数の契約、ライセンスがあって混在するとうまくいかないという話は我々も聞いておりまして、まずは、そういった知見とかノウハウを皆さん今ためている状況だと思いますので、そこを、先ほど御紹介した遠隔教育のシンポジウムですとかそういうところで共有するということは積極的にやらせていただきたいと思います。
 その次の実験環境につながるところについては、今すぐ、我々もインフラ屋としてノウハウとか実際の現場の状況を把握し切れていない状況ですので、ぜひとも今後議論させていただきながら、共通のそういったテストベッドみたいなものの在り方も検討させていただければと考えております。
【後藤主査】  ありがとうございます。大変期待しております。
 下條先生、何かコメントございますか。
【下條委員】  今のにちょっとだけ関係するんですけど、山地さんがおっしゃった、結局、コロナでみんな外にいて学外からアクセスされるという場合に、阪大で実は、この間、DDoSを食らったときに、学内のシステム、結局使えなかったんですけど、教育システムとか全部クラウドにあったので、実はみんな困らなかったというような状況はあって、今後、やっぱりゼロトラストへの移行も含めて、いろいろなサービスが学外にあって、人も学内、学外、いろんなところにいてアクセスするときに一番重要なのは、さっきの最初の認証の、学認のところなんですね。阪大も今は実は、阪大の認証が結局学内にあるので、学内を抜けると駄目なんですけれども、仮に学認みたいなものがそういう形で使えるとすると、結構トラスティーなサービスをつくることができるんじゃないか。全体をそういうふうにすると、多分、今、中、外という考え方は通用しないので、実は学認の機能ってすごく重要だなと思うんですけど、仮にそういう学認がある種の、全体がこのような認証サービス、今もそうだと思うんですけど、いわゆる属性管理も含めた、ある種、キーになっていくという方向性はあるんでしょうか。その辺を……。
【後藤主査】  合田先生ですかね。学認についてはどうでしょうか。
【合田委員】  これ、山地先生が詳しい。
【後藤主査】  山地先生ですか。山地先生、お願いします。
【山地委員】  学認が採用しているSAMLのフェデレーションでも、小さな国は、我々、メッシュタイプといって、それぞれの大学がIdPを持つ構造にしていて、これは下條先生の1回目からのコメントにもありましたように、我々が全部やるのではなくて、大学の基盤センターの中でも技術を育成していただきながら、基盤センターのサービスを高度化するのが一番スケールするだろうということで、日本は大学が多いことも含めてその構造を採用しました。小さな国は、そういうメッシュタイプじゃなくてハブ・アンド・スポークといって、1つの集中型のIdPを置いてサービスをつなげるというサービスの形もあります。今から我々がそっちの方向に大きく転換するのは難しいのですが、最近、商用のサービスでもIDaaSといって、認証の機能プラスID管理の機能を持ったクラウドサービスがでてきておりますので、これを共同調達するような形で提供するのか、それともどうするのかというのは、まだわかりませんが、IDaaSをどういうふうに活用していくかというのと、それの受益者負担をどうしていくかというのは、1つ、サービスの高度化に向けては、1個1個の大学が頑張らなくていいので、考え得る余地があるかなと思いました。いずれにしても、最近は、IDとパスワードだけでは駄目で、大学の認証基盤よりも、外部のソーシャルサイトの認証基盤のほうが、ひょっとしたら高いレベルの認証をしていることもありますので、学認も多要素認証も含めて、高度な認証に移行しなければいけないというのは、この遠隔が進んだ中で、我々、早急にやっていかなければならないことだと感じております。
 以上です。
【下條委員】  よろしくお願いします。
【後藤主査】  そうですね。私も、この辺りは非常に気になるところですが、IDの場合、今回、皆さんも経験なさったかもしれませんけど、新入生に最初、どうやってIDを渡しましたかというところですね。1回も大学に来ないのに遠隔講義に入ってもらうことは非常に大変でした。IDプロビジョニングですよね。SAMLも何もあったものじゃない状況でどうするかというのは、実は一番難しかったかと思います。ぜひこの辺りも検討いただきたいと思います。
最初の2人の先生のお話については取りあえず以上とさせていただきまして、次の議題に移らせていただきたいと思います。
 それでは、議題2の審議のまとめ(案)について、事務局から説明をお願いいたします。
【三宅学術基盤整備室長】  事務局でございます。それでは、資料2に基づきまして、審議まとめ(案)を事務局で作成いたしましたので、こちらの説明をさせていただきます。
 1ページおめくりいただきまして、2ページ、目次でございますが、こちら、前回議論していただきました骨子に基づいて内容を記載させていただいております。基本的には1から4については現状の説明となりますので、かいつまんで説明させていただきまして、特に中心となる5、7について詳細を説明させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 3ページ目から御説明させていただきます。「はじめに」でございます。こちらにつきましては、我が国の学術基盤の根幹をなす学術情報ネットワーク、NIIが運用するSINETを基幹に、Society5.0を具体化するためには、科学技術イノベーションを駆動力として、新たな価値創造システムを世界に先駆けて構築する必要がある。これにつきまして、こちらの作業部会で、次世代の学術情報ネットワークとデータ基盤整備の在り方について審議を行い、結果を取りまとめたところである、と記載をしていただいております。
 2番目、次世代の学術情報ネットワークとデータ基盤整備の必要性ということで、こちら、まず背景でございますが、世界が知識集約型社会に向けて変革期を迎えていて、最先端の科学やアイデア、ビッグデータ等の知が圧倒的な競争力の源泉となる時代が到来していると。そういうものの中で、情報やデータの持つ価値は以前より増していると。
 4ページ目に参ります。また、データ駆動型社会を迎えつつある中、ネットワーク基盤の高速化、オープンサイエンスの実現に向けた基盤の構築が世界的に加速化している。また、新型コロナウイルスの影響を受けて、その礎となる学術情報ネットワーク、データ基盤は重要となってきているという現状を書かせていただいております。
 (2)「学術情報ネットワーク・データ基盤整備に関わる政策提言等」でございます。こちらにつきましては、事務局で、各種政府計画等から関係の記載を抜粋させていただいています。具体的には、第5期科学技術基本計画、統合イノベーション戦略、次のページに参りまして、成長戦略フォローアップ、AI戦略、また、政府の会議ではございませんが、日本学術会議の「オープンサイエンスの深化と推進に向けて」の内容、また、次期の科学技術基本計画に向けた議論を行っています科学技術・学術審議会の総合政策特別委員会の最終取りまとめについて記載しております。特にその記載の最後のほう、6ページ目の最後のほうでございますけれども、研究インフラを含む産学官の研究拠点と先端的計算資源、多様なデータが、大容量、高速、セキュアな情報ネットワーク、SINETで接続され、全国規模でシームレスに研究システムが連動するスマート研究プラットフォームとして一体的かつ有効に機能するよう、一層の機能・体制の強化を図っていくことが重要であることが示されているところでございます。
 3ポツからSINET5の現状でございます。まず、ネットワーク基盤の現状ですが、SINETにつきましては1992年に運用が開始されて、SINET5につきましては2016年4月から運用されているところでございます。これにつきましては、日本全国を100Gbpsの高速回線でつなぎまして、2020年3月現在、932機関、300万人以上の方々が利用しているという現状。また、2019年12月には、通信需要の増加に対応するため、東京-大阪間に400Gbps回線を増強したということを書かせていただいております。また、国際回線につきましては、地球一周するリング状の100Gbpsの回線を整備している状況でございます。
 また、SINET5の特徴としまして、超高速性と低遅延性を同時に実現していること、また、冗長経路を確保して、障害時の迂回機能を多段に実装しており、地震や豪雨等のときにも通信断が発生しないといった高信頼性を確保していること、また、SINET5上で円滑に研究ができるように、例えば、仮想通信網(VPN)は急速に増え続けて、現状3,000以上となっているという現状。また、SINETとクラウドを直結する仕組みを提供するとともに、クラウドの導入支援についてもサポートをしている現状を書かせていただいております。
 8ページに参りまして、認証基盤機能としての学認、また、無線LANローミング基盤、さらに、次の段では、広域データ収集基盤、通称「モバイルSINET」の実証実験を開始して、利用促進をしているという現状を記載させていただいております。
 データ基盤の現状でございますが、こちらにつきましては、学術情報を検索できるデータベース・サービスであるCiNii、共用リポジトリシステムであるJAIRO Cloud、また、オープンサイエンスを促進するという観点から、次のページでございますけれども、研究データ基盤の開発を2017年から進めておりまして、2020年度内に安定性を確保した上で初期運用を開始することを目指して実証実験中であるというところを書かせていただいております。
 また、9ページの下のほうでございますけれども、大学ICT推進協議会では、学術機関における研究データ管理に関する提言を公開するなど、研究データ管理の意識を向上させるための取組も行っているところでございます。
 続きまして、10ページ目でございます。4ポツ「海外の学術情報ネットワーク・データ基盤整備の状況」でございます。(1)ネットワークに関してでございますが、SINETは海外のネットワークと相互接続しておりまして、海外主要国の国内ネットワークは100ギガから400ギガ以上の回線へ増速する計画が進んでいると。また、国際大型プロジェクトの関係で更に増強される傾向があると。具体的に、米国、欧州、オーストラリアの例示をさせていただいております。
 10ページ下のほうでございます。データ基盤に関する海外動向でございます。こちらにつきましては、欧米を中心に、2010年頃からデータ駆動型研究を組織として支援するための環境整備、教育プログラムの構築が進められている。各研究分野におけるサービスを連携させ、オープンサイエンスプラットフォームを形成しようとする動きがあるということで、11ページには、欧州、オーストラリアの例について例示をさせていただいております。
 続きまして、12ページでございます。ここからが、5ポツの利用者からの要望の内容でございます。SINET5に関しては様々な要望が上がってきておりまして、それについても検討する必要があるとさせていただいております。具体的なネットワークの需要につきましては、NIIで調査をした内容を書かせていただいております。高エネ研の実験であったり、東京大学の素粒子の関係、国立天文台の関係、次のページに参りまして、国土地理院、核融合関係、ITER、また理化学研究所の大型研究施設についてのネットワーク需要について記載をさせていただいております。また、14ページ目には、地球シミュレータ、国立遺伝研のデータバンクの件を書かせていただいております。
 総論としまして、その後、中段からでございますけれども、SINET全体のトラフィック量につきましては、SINET5の期間の平均増加率が大体、過去10年間で年率1.35倍となっているという状況がございまして、次期ネットワーク基盤でも、それに基づいて、回線帯域の増強が必要であるとさせていただいております。国際回線においても、米国回線、欧州回線ともにトラフィック量は増加しておりまして、特に海外の大型研究施設等々の稼働によりましてトラフィック量が大幅に増加すると。それらに連動した高速化が必要であるとさせていただいております。
 また、大型実験施設を有する機関は遠隔にあることが多いということで、SINETのアクセスポイントにつきましては、大学が分散している地方自治体にとっては不公平感があるということで環境の改善が望まれているとさせていただいております。こちらにつきましては、棟朝委員からも御指摘をいただいたところでございます。
 また、遠隔授業の関係でございますが、クラウド型の遠隔会議サービスが主流でありまして、それについて、SINET側で通信帯域を十分に確保できるような接続形態が求められていること。また、遠隔地、広範囲エリア、移動体からの情報収集ができるように、特にローカル5Gについて、実用化が始まった5G技術の取組に期待が寄せられていることを記載させていただいています。
 15ページ目に参りまして、セキュリティ強化につきまして、前述のVPNの認証のほか、エリアごとにトラフィックをミラー、迂回する機能が求められていること。また、現状のコロナの状況において、在宅勤務等における認証をベースとしたセキュリティが非常に重要であるということを御指摘いただいております。こちらにつきましては、第1回で田浦委員からも御指摘をいただいているところでございます。
 また、実験機器から取得されたデータ、これらが自動的にアップロードされる仕組みも非常に重要であるという御指摘をいただいています。こちらにつきましては、棟朝委員からも御指摘をいただいたところでございます。研究者の日常の研究活動にこのデータ基盤のサイクルが広く浸透していき、研究者にそれまでのやり方を変えさせるのではなく、自然に研究データ基盤が利用されることが重要であるという点、御指摘をいただいております。こちらにつきましては、田浦委員からも御指摘をいただいたところでございます。
 また、研究者による研究データの管理と公開を促進していくためには、それを支援するための人材の育成及び作業基盤を同時に整備していく必要がある。また、最も核となるのがデータキュレーションであって、特に1機関でカバーし切れない多様な専門分野のデータキュレーションを複数機関間で相互に支援しながら実施するような人的ネットワークを構築することが望まれるという御指摘をいただいております。こちらにつきましては、下條委員、山口委員、また池内調査官からも御指摘をいただいたところでございます。
 また、そのほかとしまして、災害発生時における研究データのバックアップがSINETを使って有効に行える仕組み、こちらは辻委員から御指摘いただいたところでございます。また、次期のネットワーク・データ基盤を使いこなすためのコンサルテーションサービス、こちら、高橋委員からも御指摘いただいたところでございます。また、運用状況に関する情報の共有・可視化の仕組み、こちら、湯浅委員からも御指摘いただいたところでございます。また、研究評価と研究データ基盤をつなげるためのAPI連携、こちらは下條委員から御指摘いただいたところでございます。このような声もあるということで記載させていただいております。
 6ポツにつきましては、新型コロナウイルスの影響からの新たな必要性でございますが、これにつきましては、第3回作業部会、今回のプレゼンテーションの内容、また、これから頂きました御意見等も踏まえまして追記をしたいと考えております。
 最後、7ポツでございます。今後の次世代学術情報ネットワーク・データ基盤整備の方向性についてでございます。現在運用されているSINET5は2022年3月にサービスを終了して、4月から運用開始の予定です。前述のとおり、過去10年間のSINETのトラフィック量は平均年1.35倍で増加していること、また、海外においても、国内ネットワークにつきましては400Gbps回線に増強する方向で検討されていること、また、欧州、オーストラリア等でネットワーク基盤上に研究データを適切に管理・共有するための研究データ基盤の構築が進んでいること等を考慮すると、まず400Gbps光伝送技術と5Gモバイル技術が融合した革新的なネットワーク基盤によって国内外の広大なエリアから研究データを収集し、機能を柔軟に付加できる研究データ基盤によって様々な対応していくこと。また、国際共同研究や分野横断的な研究を容易にする最先端の研究環境である次世代学術研究プラットフォームを世界に先駆けて実現することが重要であり、ネットワーク基盤とデータ基盤を融合し、一体的に運用するよう、それらの機能を装備することが求められるとさせていただいております。
 具体的な内容につきまして、ネットワーク基盤につきましては、ネットワークアーキテクチャーに関しては、SINET5のアーキテクチャー(メッシュ構成)を踏襲するとともに、複数の論理ネットワーク面をあらかじめ用意すること。また、国内回線帯域の増強につきましては、100ギガを超える伝送速度を実現する伝送装置については、DSPチップを調整することが可能であることもございまして、400も200も同一のチップで実現可能ということもありますので、各機器を統一することによる保守の容易性、調達コストの低減を考えると、全国一律で400Gbpsの回線を整備することが適切ではあること。また、沖縄については、長距離海底ケーブルを使用することもございまして、こちらにつきまして、100Gbps×2回線で接続することが妥当であること。
 国際回線帯域につきましては、同様な理由がございますので、現在のトラフィックの伸びを考慮して、100Gbps回線を複数接続すること。また、拡張DCの設置によるアクセスの改善ということで、特に現在のアクセスするポイントから、遠隔地にある加入機関の要望が強くあり、拡張DCの設置に向け検討を進める必要があること。また、モバイル基盤の5G対応につきましては、総務省によるローカル5Gの検討状況を踏まえつつ、大学と連携して、導入の検討を進める必要があること。エッジ機能によるサービスの高度化という観点では、VPN機能の高度化を図るとともに、エッジにネットワーク仮想化機能を実装し、利用者に対するサポートや情報提供を含めて、より細やかなサービスを展開することが望まれること。
 また、学術認証・クラウド活用基盤につきましては、参加機関数を拡大するとともに、他の認証基盤との機能連携、クラウド活用基盤を強化し、データ利活用の拡大・促進を実現することが必要であること。また、産業界から要求の多い機微情報を含むデータの利活用を支援するため、多要素認証をはじめとする高度な認証方式の実現が求められていること。また、研究データの収集・蓄積、管理、解析を一体的に実現するための基盤の構築が求められていること。また、初等中等からの接続としまして、一部の教育委員会にSINETへの接続要望があり、そのような役割が求められていることについて記載をさせていただいております。
 また、データ基盤の観点でございますが、まずは、研究データのライフサイクルに沿って、管理・公開、検索基盤が研究活動を支援するサービスの提供が重要であること。例示としまして、研究不正の疑いが生じたときに、時系列的な研究データの管理状況が確認できる機能、また、オープンサイエンスの推進や研究公正の観点から、研究データ公開のリポジトリシステムと連携する機能に加えて、多様な研究データサービスとの連携機能であること。次のページに参りまして、DMPの作成機能やデータの機密性に応じた適切なストレージ提供機能であったり、研究者間や大学・研究機関の効果的な運用にも生かされる機能として、学術研究機関におけるInstitutional Researchや共同研究を推進するための情報源として活用する機能、ストレージのコスト計算や研究成果の情報を集約する機能等の実装が求められるとさせていただいております。
 最後、8ポツ、まとめでございます。我が国の大学・研究機関が国際競争力を保ち、優れた教育研究活動を展開していくためには、学術情報基盤の整備が不可欠である。2022年4月からの運用が見込まれる次世代のネットワーク・研究データ基盤において、適切な帯域の確保が求められるとともに、研究者の利活用に欠かせない認証、クラウド活用基盤、また、ネットワーク基盤と研究データを融合させた次世代学術研究プラットフォームとして運用することが重要であること。また、国については、この次世代学術情報ネットワーク・研究データ基盤の構築に向けた整備を着実に支援することが求められていること。また、知識集約型社会の中で、研究成果と社会実装に結びつけるイノベーションエコシステムを確立することが期待されていることを記載させていただいております。最後に、NIIと大学・研究機関がより強力な協力関係を構築した上で、学術認証基盤の整備及びそれを支える人材について不断に努力していくことが求められるとさせていただいております。
 駆け足で恐縮ですが、以上でございます。よろしくお願いいたします。
【後藤主査】  ありがとうございます。それでは、本案について質疑を行いたいと思います。先ほどの合田先生、山地先生のお話が含まれた形での全体の取りまとめになると思いますので、全体の議論をさせていただきたいと思います。どなたからでも結構でございますが、いかがでございましょうか。手を挙げていただければと思いますが。
私から簡単な質問です。取りまとめというよりも漆谷先生にお聞きしたほうがいいかもしれませんけど、5Gの件は、いわゆるアクセス網としてのローカル5Gと、人をつなぐのではなくて、IoTをつなぐ意味でのローカル5Gがあると思いますが、今回の5Gモバイル技術はどのような形で捉えればよろしいのか。多分、両方絡んでいるかと思うんですが。
【漆谷委員】  両方絡んでおりまして、まず、5Gの使い方としまして2つございまして、1点目は、現状でもモバイルSINETという形で4Gを用いていますが、これはキャリアのモバイル網の中にSINET専用の仮想網をつくって、セキュアなモバイルの環境を御提供しているんですけれども、これを5G対応にするというのがございます。そうしますと、5Gの広がりによりまして、5Gの技術を使えるエリアはどんどん広がっていくと、それが1点目です。
 2点目がローカル5Gということで、大学独自で5Gの技術を使って、自分たちのローカルな5Gのネットワークをつくる。そうすると、バックボーンが必要になりますが、そのバックボーンとしてSINETをお使いいただくと、非常にハイパフォーマンスの通信ができるという、この2つの方法を考えております。
【後藤主査】  その場合、ローカル5Gの場合、認可の申請とか、多分、東京大学さんが始めたと思いますが、そういう先行事例があるとはいえ簡単ではないですよね。これについてのサポートもあるんでしょうか。
【漆谷委員】  そうですね。認可申請自体は、基本的に大学でやっていただかないといけないですけれども、その辺りも、我々として支援できるところはもちろん支援したいとは思っております。
【後藤主査】  ありがとうございます。ということで、今、ちょうど湯浅先生からお手が挙がりましたので、湯浅先生、お願いいたします。
【湯浅委員】  高エネルギー加速器研究機構の湯浅です。確認させていただきたいことがあります。まとめの資料の8ページになりますけれども、上から2つ目の段落にいろんな歴史が記載されておりますが、無線LANローミング基盤の運用が2018年度から開始されていると記載されております。もっと以前から無線LANローミング基盤は運用していただいて、皆さん、とても助かっているのではないかと思いますので、年度が、2018年度でよろしいか、御確認をお願いしたいと思います。
【漆谷委員】  ありがとうございます。御指摘のとおり、eduroamにつきましては、以前より東北大学さんと連携しながら、eduroamの基盤を運用してきたんですけれども、それはあくまでも試験運用みたいな形でございまして、2018年度からNIIの事業としてeduroamを提供することになったという意味でございます。
【湯浅委員】  承知いたしました。ありがとうございます。
【漆谷委員】  ありがとうございます。
【三宅学術基盤整備室長】  これにつきましては、趣旨が明らかになるように修正させていただければと思います。ありがとうございます。
【後藤主査】  そうですね。記述をちょっと工夫いただきたいと思います。
 湯浅先生、よろしいでしょうか。
【湯浅委員】  はい。ありがとうございました。
【後藤主査】  ほか、いかがでございましょうか。
 では、山口先生、お願いいたします。
【山口委員】  東京大学の山口です。今日の論点には入っていなくて、前回、前々回の論点にも入っていなかった点で1つ気になることについて、入れていただきたいなと思っていることがあるんですけれども、従来よりも最近、個人情報の漏えいのような事例が多数、大学に関しては見られると思っています。特に昨年多かったのは、ちょっと大きかった国立大学の事例ですとか、あと、小さい大学からも、成績ですとか、いろんな情報漏えいの問題が出てきています。原因は、不正アクセスであったりフィッシングであったり、割と古典的だったりとか、はやりのもので引っかかって出ていくというものですが、こういった事例に対して前々から、特に大学に関しては、特に専門の方がいるような巨大な大学、本学とかはそういった専門の者がおりますので対応はできると思いますけれども、小さい大学であればあるほど、何かが起こったときに、困った、じゃ、どうしようという、救急車と言えばいいですかね、総合自動車的な対応をお願いできるような場所が少ないのではないかなと思っておりました。
 SINETのような枠組みの上に乗っていないような場合でもこういったことが、各大学内のLMSとかからきっと漏えいしているんだろうなと思っています。何か、そういったことの対応とか対策というのも、今後の在り方としては、例えば、情報漏えいですとか個人情報に関してのサポートする人材の育成なのか、人材がいいのか何がいいのかよく分からないんですけれども、何かキーワードとして、こういった事例を入れていただきたいなというのを、1つ意見として挙げさせていただきます。
【後藤主査】  ありがとうございます。今のお話、山口先生御自身からあったように、今回のネットワーク基盤だけでなく、大学全体が抱えている大きな課題、それに対しての関わりというような形でどうなるのかというところの議論かと思います。最初のほうで下條先生からも、大学としてのDXとの関係とかクラウドの使いこなしというお話がありましたけど、この辺りについては、とりまとめ案の中で、どういう形で記述を加えていくとちょうどいいかに関しましては、広く先生方からもアイデアがありましたら頂きたいと思いますが、どなたかいかがでございましょうか。
 棟朝先生、何かありますか。
【棟朝委員】  先ほど下條先生から、キーワードとしてゼロトラストということもありましたけれども、最終的にはそのような形で、いわゆるファイアーウオールだけではなくて、かなりきめ細かなネットワークのセキュリティ制御というのが、デバイスレベルまで含めてするのが理想ではあるのですが、それをここに全て組み込むと、しかも、ここだけで組み込むとなると、正直、すぐにはというのは難しいかもしれませんが、今後の研究開発の方向性として、検討課題でもいいので何か入れていただけるといいのかなと思うんですが、ネットワークの専門家の御意見も踏まえつつ御検討いただければと思います。
【後藤主査】  これは非常に大きな話、カバー範囲が広い話です。例えば、SINETだけで解ける問題でないと思いますけど、今のゼロトラストの話に関しましても、何か模範例とか、いいユースケースというか、こうやるとセキュリティが高まりますよねというようなものを先行的に示してアピールしていくといいのかなと思うところでございます。何かこの辺り、今度、漆谷先生とか、いかがでございましょう。何かアイデアとか、合田先生でも結構でございますけど、山地先生、何か。こういう形では模範を示せるかなとか、そういう意味でおっしゃっていただければ。
【漆谷委員】  ここは、SINETとしてどう書くかはなかなか難しいところでございまして、SINET自身は、基本的にデータの中身は見ていなくて、それとは別にNII-SOCSという、国立大学や国立研究機関のためのSOC機能がありますけれども、ただ、SINETとは予算の枠組みが違いまして、その活動自体を、このドキュメントの中に書くかどうかというところは我々も悩ましいところでございまして、その辺りは、学術からの期待という意味で書いていただくとよろしいかなと思っています。なかなかNII側から言いづらいのが正直なところでございます。
【後藤主査】  多分、個人情報漏えいみたいなものは、ネットワークだけの話でもないですし、人のマネジメント、組織のマネジメントが大きく関係するところなので、それを全部、もちろん頼りにされては、とてもできないのは事実でございます。そういうものに関して部分的にでも役立つものがあったらということを期待を込めて、そういう課題があるよねということだけをどこか書くことでしょうか。山口先生、いかがですか。
【山口委員】  すみません、混乱させるつもりはなかったんですけれども、最近の、例えば、多要素認証の事例とかの理由とかにもなってくるのかなとは思っていました。どういう形であれ、今後考えるべき項目の1つかなと思っていますので、問題点としてでも記述をいただけると、どこでも簡単に書ければと思います。
【後藤主査】  そうですね。確かに今、そういう意味では、学認の取組なんかはいい模範例となっているという、そういう形で書いていただくと、ちょうどいいのかなという気はしますが。
【山口委員】  そうですね。
【後藤主査】  下條先生は何かございますか。
【下條委員】  やっぱり今のところに絡んで、目指すゴールはゼロトラストで、要するに、SINETと我々が参加している大学全体が1つのグーグルのような会社と思えば、その中に共通サービスが幾つかあったり、あるいは、外のクラウドと連携して、いろんなサービスを使っていたりという姿があって、そうすると、先ほど、多要素認証だとか、それから、人だとかデバイスだとか場所によるある種のセキュリティの区別みたいなことが認証ベースとして今後重要になって、それに基づいて、今度は適切なネットワークに振られ、適切なサービスに振られという構想に、多分、全体が変わっていかないといけない話で、ちょっとずつ今日の提言の中にはばらまかれてはいるんですけれども、正直、僕もその全体をまとめるのはどうしたらいいかというアイデアはないので、今の書きぶりとしてはそんな感じで、ただ、起こることとしては、さっきの多要素認証だとか、あるいは、SINETで言っても、SINET外のネットワークとの連携みたいなことが実は重要になってきていて、先日のルーティングの大変なことも、ますます今後重要になってくると思います。大学の使っているサービスがもはやSINET内にないという状況がだんだんと起こってきているので、使う人も含めて、そのことはやっぱり全体の認識としてはあったほうがいいかなという気はします。
 それから、山地先生がおっしゃった、セキュリティだけじゃなくて、実はプライバシーの観点も重要であるというのは、ここでは吸収し切れないんですけれども、ワードとして「プライバシー」というのはどこかにあったほうがいいかもしれませんね。
【後藤主査】  ありがとうございます。今、お手が挙がっているところで、湯浅先生、まだ手が挙がっていらっしゃいますか。先ほどの件でよろしいですか。いいですか。棟朝先生はいかがでしょうか。
【棟朝委員】  若干、先ほどの補足ですけれども、ゼロトラストといった場合には、ネットワークと認証だとクラウドのサービス側も関係してきますので、なかなかすぐにはいかないと思うんですが、今回の件で考えると、データ基盤の部分は明らかに関連しますので、その辺りを切り口に、いわゆるデータ基盤は当然ながらセキュアにデータを保護しなければいけないというセキュリティ上の問題がありますので、その辺りから検討を始めていただけるとよろしいのかなと思います。よろしくお願いします。
【後藤主査】  データ基盤の取組の中で、まずは、その中でのプライバシーも含めて考える。その意味で、大学全体に広めていただくという形でございますかね。はい、分かりました。ありがとうございます。
 次は高橋先生、いかがでしょうか。
【高橋委員】  高橋でございます。拝見した審議のまとめは、まだ読み込んでないので分からないところがあるんですが、御説明を全体的にいただいて、この参加委員の中でいろいろと御紹介いただいたことや先生方からの御意見等々も伺いつつ、大体のこと、大切なことは入っていると思います。けれども、ここに、時間軸とか優先ポイントを入れることはできるのかどうなのか、御意見をお聞きしたい。たくさん大事なことの中で、喫緊として、やはりここからやらなきゃいけないとか、どうしても課題として継続的に検討していかなくてはならない、例えば、お話に挙がっていましたセキュリティとかプライバシーの話や、それらの取りまとめなど、今後の議論の展開の必要性などがもう少し入っていると、どこから何を大事にしていかなきゃならないのかということが分かりやすくなるのかなと思います。その点はいかがでしょうか。
【後藤主査】  ありがとうございます。大事なポイントだと思うのですけど、多分、優先順位の順序づけもあるでしょうし、あとは、技術上、どうしても、まずこれをつくっていかないとこれはつくれないよねという依存関係もあると思います。この辺りはNIIの先生方から何か御意見、考え方があればお伺いしたいのですが、いかがでございましょうか。まずは、ネットワーク関係の漆谷先生、合田先生、いかがでしょうか。
【漆谷委員】  ありがとうございます。まず、ネットワークにつきましては、2022年の4月に新しくするということで、これは一気につくり込んでいかないといけないということになります。その際にサービスも高度化をするわけですけれども、皆様の要望を聞きながら機能を拡張していくとなると思いますし、あと、データ基盤につきましても、最初はスモールスタートですけれども、どんどん大きくなって、かつ機能も拡張していくという中で、そこはなかなか難しいんですけれども、機能拡張、容量拡大に伴って予算も拡大するかもしれないので、予算感も違ってくると思います。
 それから、いろいろな御期待があるので、その御期待に沿えるように、もちろん機能強化はしていくんですけれども、どうしても一気に実装するというのはなかなか難しいので、段階を踏んでということになると思います。セキュリティにしても、今は国立大学だけですけれども、もっと広げてほしいということであれば、ここで議論してはいけないのかもしれないですけれども、そういう期待を基に少しずつ拡張していく案もございますし、あと、DDoSの機能につきましては、全ての大学や高専に提供していくということで、それもトライアルをしながら進めていかないといけないので、機能は早めに実装して、段階を踏んで機能強化、適用領域の拡大をしていく形になろうかと思います。あまりきれいな答えになっていないんですけれども、まずネットワークとしては、最初に2022年の4月につくり込んで、徐々に機能を拡張していくというイメージを考えてございます。
 データ基盤で補足があれば、山地先生、お願いします。
【山地委員】  現在の研究データ基盤は、今年度の後半に運用を開始することになっています。まずは、これをしっかり運用フェーズに乗せて、大学に使っていただくというのがあります。ネットワークは2021年に移行を迎えるので、新しいデータ基盤の本格的なつくり込みが少しずれたフェーズで進めるのがいいのではないかと思います。2020年から本格的に利用が始まり、ユーザーからのフィードバックを受けながら機能は拡張していく必要があります。次世代の基盤は今あるものではないので、この新しい機能を利用者に提供するためには数年かかります。新しいネットワークの準備をしながら、現状のデータ基盤をきちんとデプロイしながら新しいものを準備していくというのが全体的なバランスとしてはいいのではないかと思います。この中に、皆さんから御意見を頂いている個々の機能をどういうふうにはめ込んでいくかについても、全体的には、今説明したような流れになるのではないかと考えております。
 以上です。
【後藤主査】  ありがとうございます。多分、詳細にわたる計画書ではないので、取組の考え方という意味で、今、漆谷先生と山地先生がおっしゃったようなところですよね。順番として、まずこれをしっかりやってからこれをしっかりやりますよという、そういう言葉を足していく形がよろしいのかなと思ったんですが、高橋先生、そういう形でよろしいでしょうかね。
【高橋委員】  先生方がおっしゃる確実に進めていくということは非常に大事なんですけど、例えば、国際競争力を、今の状況を維持するためには、少なくとも、ここまでの時間でこれらをやらなきゃいけないという逆算的に、いつごろ、どういったマイルストーンを置くかということが、もう少し具体的にあると分かりやすいと思います。確実にやっていくというのも本当に重要ですが、少なくともここまではやっていかなくちゃいけないんじゃないかというような先生方の見解が入っているとよいと思います。10年ぐらい先まで、すぐにできるというわけではない課題が多いと思いますので、また変更が必要になるかとも思いましが、今の時点での方向性とか時間軸があると分かりやすく、説得力もあるんじゃないかなと思います。
【後藤主査】 
ありがとうございます。今のところは、海外の動向とか、COVID-19対策のオープンサイエンスの話、外部動向もありましたので、そういうところから、まず、この時期までにこれをやることが大事だよねというところに関しましては、しっかりそれを書き込んでいただくという形にしたいと思います。
 それでは、次、池内先生、いかがでしょうか。
【池内学術調査官】  違う論点になるんですけれども、よろしいでしょうか。15ページにあります「新型コロナウイルスの影響からの新たな必要性」ということで、6番としてこれから追記する件について発言させていただきたいと思います。今日の山地先生の御発表の中で、21ページからのところで、COVID-19関係のデータをまとめて、公開して、国際的にも連携するというお話がありました。こういうデータはもちろんあちこちで公開するんですけれども、このような形でまとめて、そして、それを国際的にも連携して、海外の研究者からも日本のデータをまとめて見る。しかも、今の非常事態の中で、社会的にも研究的にも学術的にも非常に価値が高いデータをまとめて見られるようにするのは非常に重要な活動だと思いました。
 この活動に関しては、恐らく事前に準備というか、予測ができていたわけではないので、山地先生は、さらりと「やります」とおっしゃったんですけれども、多分、既存のリソースの中からやり繰りをして、この活動というか、作業をされているのではないかと予想します。こういう非常事態が起きて、世界的にはプレプリントも物すごい勢いで出ている、データも物すごい勢いで出ている、それを予測した予算は立てていなかった中で、高橋先生のおっしゃるような国際的な競争力を持って、日本の研究者の方がしっかりと効率的に研究を進めていくための一助として、こういったまとめのようなことは非常に大事かなと思いました。
 例えば、COVID-19という名前が出来たのが多分2月ぐらいだったかと思うんですけれども、そうすると、それより前に出された、例えば、12月、1月に出されたようなものには名前がついていないので、もちろん各リポジトリなり何なりには、データはあると思うんですけれども、それらを漏れなくきちんと、研究者が研究しようとするときに集めてくるだけで、やっぱり一手間、二手間時間がかかると思います。こういうことをまとめとしてやっていただくというのは、どこがやるというのがすごく難しいようにも思うんですけれども、こういう事態に備えておいて、いざというときに、こういった日本のデータを横断的にまとめて見せられる、海外の研究者からも見られるようにすることを検討に入れておくのは重要だと思いました。
 こんな非常事態というのは、本当に10年に一度、20年に一度ぐらいしか起こらないかもしれないんですけれども、やはり速報性が高いデータというのはいろいろあると思うんです。日本ですと、例えば、自然災害がすごく多くありますので、そういったときに、ぱっとその関係のデータを集められる、集めて見せられるということを考えておくことが必要かと思いました。
 山地先生の御発表のデータは、バイオ系の、生物学系のデータが中心だったんですけれども、同時に社会調査も行われていて、実は私が関わっている人社系のデータインフラでも、そういったものを集められないかと。海外の人社インフラでは、社会調査を一気に集めて、素早く共有して、研究者が使えるようになっている。そうすれば、同じ調査をしなくても済むし、それをまた再分析したりということもできるしというアイデアはあったんですけれども、残念ながら、人とお金がないものですから実現には至っていないという、ちょっと忸怩たる思いをしている部分があります。
 研究データのインフラを考えていく上で、まずはもちろんデータをきちんと公開して使えることというのはあると思うんですけれども、こういった、ある特定のテーマに関するまとめと、それを国内外に向けて発信するというところも、1つ論点として非常に重要だなと思った次第です。
 すみません、長くなりましたけれども、以上です。
【後藤主査】  ありがとうございます。今のお話は、いわゆる山地先生のデータ基盤のところに関するユーザーとしての期待という形で捉えさせていただきましたが、この辺り、山地先生、いかがでございましょうか。
【山地委員】  池内先生がおっしゃったように、今日紹介したCOVID-19 Data Portalの話は、既存のリソースで何とか対応しようとしております。それに柔軟な予算が必要だというのはここで言うべき話ではないのですが、こういったことにも柔軟に対応できるような基盤づくりというか、ユーザーからの声が即座に反映できるような、ある程度柔軟性を持った基盤と、基盤だけではなくて、本当は人がいないと対応できないので、報告書にはなかなか書けないかもしれないですが、広い意味での人材確保、育成は非常に必要だなと感じております。我々、基盤をつくっていて、多分、基盤センターの先生方も共感していただけると思うのですが、こういった基盤をつくる人材もなかなかいないです。データベースをつくる人とか、インフラをつくっていく人材もなかなかいないんですね。そういったNIIの事情も含めて、まとめにどう文言を反映させるかというのは、今はっきりとは言えないんですけれども、池内先生がおっしゃっていただいたことは非常に重要で、我々も、今一番お伝えしたいところではあります。柔軟な基盤をつくることの重要性とともに、柔軟に対応していくための人材を持った組織が必要ということは、非常に有り難い御助言でした。
 以上です。
【後藤主査】  ありがとうございます。
 湯浅先生はいかがですか。
【湯浅委員】  湯浅です。質問させていただきます。まとめのPDFの14ページ中ほどにありますSINET全体のトラフィック量のことなんですけど、10年平均ということで、これからの見込みが1.35倍ということになっています。コロナの、この4月、5月、6月、新学期を迎えた大学での利用というものなんですが、3か月においては、この伸びというようなものはどんな感じだったのかということと、今のバンド幅で十分に耐えられたのか。もしそれが問題があるようだったとすると、まとめの6番のこれから書いていただくところには、柔軟な増速というのも必要になるんじゃないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
【後藤主査】  これは、漆谷先生、よろしいですか。
【漆谷委員】  御質問ありがとうございます。コロナ禍におきましては、研究者や学生は自宅にいることが多いので、商用のトラフィックに関してはかなり伸びていると聞いています。1.4倍とかそのぐらい伸びているんですけれども、SINET自体を見ると、そもそも大学にいる人が少ないですし研究機関にいる人も少ないので、トラフィックは、そんなに伸びているわけではありません。
 ですけれども、先ほど、下條先生からお話もありましたが、今までと通信の環境が随分違って、今までは基本的に研究者や学生は大学にいるという条件で考えていればよかったのが、コロナ禍においては、自宅を含め、いわゆる研究活動の空間が広がっていて、ネットワークの環境も非常に複雑になっているんですね。何かトラブルでネットが切れたというと、これ、SINETのせいって、大体こう来るんですけど、調べてみると、実は商用ネットワークがおかしかったというのが、先週、先々週あって、その辺りの切り分けが非常に難しくなっています。その辺りのサポートをどこまでNIIとしてやっていくべきかというのはなかなか難しい課題ではあるんですけれども、ただ、今後の研究活動においては、皆さんが活動する場がこれまでと同じような形に戻るのか、あるいは、分散する形になるのかは分からない状況ですので、そういった意味では、幅広に含めて考えておく必要があるだろうと。そうすると、商用ネットワークとの接続も含めて、NIIとして、どういう形で通信環境の安定性を確保するために努力できるのかが問われているところでして、非常に難しいんですけれども、何かNIIとして御協力できないか、御支援できないかということで、検討しているところでございます。ということで、これでお答えになっていましたでしょうか。
【湯浅委員】  はい。増速は今のところ、必要なくて……。
【漆谷委員】  そうですね。SINETの帯域が足りないって言いたかったんですけれども、実はそういうわけではなく、商用のほうにトラフィックが流れていますので、そこは強くは言えないという状況にございます。
【湯浅委員】  ありがとうございました。
【後藤主査】  この辺りは、しっかり全体の状況、トラフィックを分析していただいて、設計に生かしていただいているということで安心しました。ありがとうございます。
 ほか、いかでございましょうか。大体、一通り御意見は頂いたでしょうか。
 本日、いろいろ細かいところの確認もさせていただきましたし、あと、広く大きな課題、プライバシーの問題であるとか、世界的な大きな研究動向に合わせて、どのように目標を定めていくかというところに関して期待が大分出たと思います。この辺り、様々な御意見を頂きましたが、今、事務局でまとめていただいている報告書(案)の中で、要望とか書き加える形で大体対応できるかなと思って伺っていましたが、いかがでございましょうか。大体そのようなことでよろしいでしょうか。ここは大きく加筆すべきとか、項目を立てるべきという御意見がありましたら、ぜひ今のうちにお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。
 それでは、様々な御意見を頂きましたけれども、今日、後でまた思いつかれる御意見もあると思いますので、そういう御意見につきましては、ちょうど1週間後、7月7日をめどに事務局に御提示いただくということで、本日の議論についてはこの辺りで終了とさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 本審議、3回議論させていただきましたが、本日で、こういう会合としての審議は終了させていただく予定でございます。頂いた御意見を事務局で整理した後、再度、各委員にお送りして、御紹介させていただいて、内容につきましては、最終的には、私、座長、後藤に一任いただくということで問題ないでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきたいと思います。
 それでは、最後、事務局から伝達事項がありましたら、お願いいたします。
【土井参事官補佐】  事務局でございます。長時間御審議ありがとうございました。先ほど、主査からも御発言いただきましたように、審議のまとめ(案)につきまして、更に御意見がございます場合には、7月7日火曜日までに事務局までメールでお知らせいただければ幸いでございます。また、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成いたしまして、委員の皆様にお諮りをした後に、ホームページにて公開させていただきたいと思っておりますので、引き続き御協力をよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【後藤主査】  ありがとうございます。それでは、本日、これで閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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