次世代計算基盤検討部会(第7回)議事要旨

1.日時

令和3年6月21日(月曜日)17時00分-19時00分

2.場所

オンライン会議

3.出席者

委員

安浦主査、小林主査代理、相澤委員、合田委員、荒瀬委員、井上委員、上田委員、海野委員、後藤委員、小紫委員、田浦委員、常行委員、中野委員、根本委員、肥山委員、藤井委員、三好委員、山本委員

文部科学省

塩崎審議官、橋爪参事官、宅間計算科学技術推進室長、太田専門職

オブザーバー

理化学研究所計算科学研究センター松岡センター長

4.議事要旨

議題1:次世代計算基盤について
【安浦主査】 それでは、議題1、次世代計算基盤についてということで、議事を進めてまいりたいと思います。
まずは、本検討部会におきましては、いろいろな方々から御意見いただいてまいりましたけれども、これまでの議論を踏まえて、各委員の皆様方から短時間、3分しか時間を用意できませんけど、3分で御意見をいただきたいと思っております。時計も用意してもらっておりますので、3分たちますと、お話を次の方に譲っていただくということで、資料を御用意いただいた方は、事前にお送りいただいております。何ページもの資料を送っていただいている先生もいらっしゃいますけど、3分は守っていただきますので、後半に1時間、自由な討論の場を設けたいと思っておりますので、その討論の場でお使いいただくことで、最初の3分は守っていただきたいと思います。
本検討部会は、中間取りまとめとして、来年度の予算、特に次世代の計算基盤をつくっていくためのフィージビリティスタディ(FS)を始めるのであれば、来年度から始めないと間に合いませんので、そのFSの予算を取りにいくための資料のベースとしての中間まとめを作ることが本委員会の当面の目的でございます。その中間取りまとめの中に盛り込むべき御意見等を、特に我が国の科学技術・学術、あるいは計算機科学分野における優位性の確保など、それぞれの観点からお話しいただければというふうに思っております。
順番にお話しいただきますけど、五十音順でお願いしたいと思います。それから、資料を頂いている委員の方につきましては、資料のほうは事務局側で投影いたしますので、操作はなさらないでください。
それでは、事務局のほうでタイマーを動かしながら、始めたいと思います。まずは相澤先生からお願いしたいと思います。相澤先生、よろしくお願いします。
【相澤委員】 それでは、私のほうから、特に一般的な、私ども画像処理の研究室から見た、計算基盤について書いてみました。将来のことについて書くというよりは、現状についてもう一度、自分なりに見直してみたというようなところもあります。そのために、現状と、それから先々への希望みたいなものが書いてあります。
「富岳」自体は、PyTorchとかの一般的な深層学習ライブラリをサポートすることが出ていて、広いエンドユーザを意識しているというのが分かっています。そのことは非常によくて、画像処理の研究者からしても、通常の課題をやるにしても学習とかに結構な時間を割くわけで、その深層学習の目的でどれぐらい使えるのかということをぜひ試してみたいというふうにも思っています。その場合、「富岳」を利用する場合、(今は無償かもしれませんが)、コストパフォーマンスの面でAWSとかABCIとか現在利用可能なクラウドベースのものと比較検証してみたくなります。
その一方で、実際に利用手続を始めようとすると、障壁が結構あるということを現実的な問題として感じました。「富岳」を使うためにはHPCIのアカウントを取って、それから研究課題を設定して、提出して、もろもろのプロセスを経て、課題の選定を受けて、ようやく使うことができるということになっています。この在り方自体は、広いエンドユーザが使えるようなものではなくて、スパコンを使う研究者のための研究のインフラという面が強く残っているように感じます。ABCIのように広く使われ始めているインフラのように、HPCIが、これは有料であってもいいので、もっと非専門家が、HPCが専門でない者が使えるような仕組みにしてほしいというふうなことを思いました。
これは、ひいては、前回議論にありましたエコシステムがどういうふうに育っていくかということに大きく関係していると思います。一部の人が研究のために使うインフラよりも、利用がどれだけできるかということが重要な指標になってくるのではないかと、それを目標にするような仕掛けをぜひ考えてほしいというふうに思っている次第です。
以上です。
【安浦主査】 ありがとうございました。
それでは続きまして、合田委員、お願いいたします。
【合田委員】 合田でございます。すみません、私、資料はちょっと用意していないので、口頭でお話しさせていただきたいと思います。
これまでのこの場での、それから、この場の内外の議論でも、これからのHPC基盤に求められるのは、計算能力はもちろん、それは必須なのでありますけれども、データの解析、つまりデータ処理の能力というものも非常に重要になるというのは、恐らく皆さん同意いただけるかと思います。それは大量のデータを集めてきてやる処理かもしれないし、オンラインでリアルタイムでやる処理かもしれません。形はいろいろあります。そもそもデータというのは、ネットワーク上にばらばらにちらばっています。また、それを処理する計算機も今、「富岳」のようなフラッグシップをはじめ、第2階層のマシンもありますので、そういったネットワーク上で分散している状況にあります。
一昔前という言い方がいいか分かりませんけれども、昔はデータとかプログラムを1か所に全部集めて、集めた後に解析しましょうといったようなスタイルだったんですけれども、これからは恐らくそれができなくなって、それはデータ量の問題でできないかもしれないし、またデータもいろいろ、プライバシーを含むデータもあるかもしれないので、一度にぱっと持ってくることができなくなるかもしれないと。そう考えると、ネットワークと計算資源をうまく融合して、必要に応じて連携しながら動かしていくといったようなモデルがこれから必要になるというふうに私は思っています。
その意味では、これはこの会議の議論でもいろんな先生がおっしゃっていますけれども、いわゆるフラッグシップマシンと第2階層だけにとどまらない、ネットワークも含めた一体的なインフラとして今後議論していく必要があるのではないかと考えています。例えば今の「富岳」でもクラウドと連携して利用するということが始まっていますけれども、そういった使い方も含めて議論していくということをしていただければと思います。その意味では、計算機屋さんとアプリ屋さん、これは非常に今、コミュニケーションうまくいっていると思うんですけれども、そこへネットワークという視点でも、人も入ってきていただいて、一緒に議論できればいいのではないかと考えているところです。
ちょっと早いですけれども、以上でございます。ありがとうございます。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
続きまして、荒瀬先生、お願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。次世代計算基盤ということで、私のほうでは、やはり新しいアーキテクチャですね、量子コンピュータをぜひスコープに入れていただきたいなと思っています。情報科学の幾つかの分野では、既に量子コンピュータを使った新たな技術の論文が出てきていて、そういう状況で、日本で近い将来、量子コンピュータを使える環境がほとんどないという状況になると、非常に情報科学の技術の発展の後れに、取り残されてしまうような状況になるのではないかというのを危惧しています。なかなか難しい面もあるとは思う、これまでのいろんなお話をお伺いして、そんな簡単にはいかないということはよく分かっているんですけれども、ぜひ検討のスコープには入れていただきたいなと考えています。
もう1点は、相澤先生の御意見、コメントにもあったとおりなんですけれども、汎用性という意味では、これまでスパコンを使っていらした方々と、新しく参入してくる方々の中でかなり文化が違うんじゃないかなという気がしていて、半年以上前に申請書を入念に準備して、評価されて使うというような方々と、AWSのように申請して5分で使えるような環境を前提にしている方々では、期待するものも異なっているので、汎用性を目指すのであれば、どういうふうに使用者を分けていくのか。全ての人が同じ申請方法であったり使い方を許可されるのでなくてもいいとは思うんですけれども、どういうふうにユーザを分けて効率よく使っていけるかという面も課題になってくるのかなと思っています。
短いですが、以上になります。ありがとうございました。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。
それでは続きまして、井上委員、お願いします。
【井上委員】 よろしくお願いします。井上でございます。たくさんスライドを作ってしまったのは私でございまして、この説明では、このサマリーの1枚のスライドで議論させていただきます。
6つ、意見を述べさせていただきます。まず1つ目ですけれども、現在、例えば文科省によるスパコンですとか、あと総務省によるデータセンター、ネットワーク、もしくは経産省によるIoT、AI、エッジ、半導体と、いろんな計算基盤のプロジェクトが走っていると思いますけれども、これらが独立に、個別に走っている印象を持っています。今後、我が国の科学技術と産業をどのような方向に持っていくのかということを考えた上で、それを実現する計算基盤のグランドデザインが必要なのではないかと考えております。
そのグランドデザインの中で、意見2ですけれども、やはりサイエンスを創出するというのは科学技術立国としてフラッグシップマシンは非常に大事だと思っています。ではどういうフラッグシップマシンが必要か。今後、学術の多様性や分野連携が非常に重要になります。その中で、世界最高性能の道具を、ツールを手に入れるということを考えますと、汎用性をきちんと持ちつつ、世界最高性能フラッグシップマシンを造るということを目指すべきだと思っています。
では、どういうマシンになるのかということですけれども、やはりポスト・ムーア時代を見据えることが必要だと思います。ポスト富岳までは、微細化と2.5次元、3次元といった技術を基本にシステムを設計できるかと思いますが、その後のポストポスト富岳を見据えた仕掛けというのを入れておく必要があると考えます。
4番目、体制ですけれども、これは、フラッグシップマシンが10年スパン、一方で基盤センター等の5年スパンという、この2種類をうまく使うというのが重要だと思っていまして、例えば基盤センター等は、フラッグシップマシンを横展開すると同時に、さらに次のFSを担うような立ち位置、重要な立ち位置になると考えています。
意見の5番目です。半導体のサプライチェーンが今、世界中で見直されています。かなりダイナミックにいろいろなものが動いています。このような世の中の流れを見極め、国際連携と純国産のバランスをきちんと取るべきだと考えています。日本としてどこを取る、どこの強みを残すべきなのか、どこを海外の技術を使うべきかという戦略が必要になります。
最後になりますけれども、これら1から5の意見を考えたときに、多角的な、様々な角度からのフィージビリティースタディが必要だと思います。
以上です。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。ちょうど3分でした。
続きまして、上田先生、3分でお願いいたします。
【上田委員】 私自身は機械学習の研究者なので、ハードのことはあまりよく存じ上げませんけれども、ユーザの立場で見たときに、機械学習の人はみんなそうですけど、今までほとんどスパコンというものには縁がなかったと思うんですね。ところがGPUマシンが登場し、スパコンという意識なしに使っているわけです。なぜ使えているかというと、やはりディープラーニングにおけるフレームワークというのがあるからなんです。
これは皆さん釈迦に説法ですけど、深層学習の場合、倍精度の計算は要らないので、ディープラーニングの学習における行列計算に向いた超並列なマシンが有用なのです。そういった専用マシンというのは、今後情報系の研究をする上で、今はニューラルネットが主流かもしれませんけれども、また新しい何かアーキテクチャが出たときに、それ用の専用のマシンをいち早く準備しておくことが、非常に重要です。と同時に、やはり、今はDLのフレームワークですけれども、新しい何かができたときに、いわゆる可搬性がよくて、新しい技術を使えることができるようなフレームワークが必要です。つまり、今のAIでも、深層学習そのものの研究というよりは、それをどう使って、どんなアプリをつくるかということが重要なので、そのためのベースとなる要素技術はどんどん使いたいわけです。そこに可搬性がないと、結局そこで律速してしまいます。理研のRAIDENも、富士通さんの御尽力によって、Dockerコンテナというのがあったがゆえに、いろんな学習技術が使えています。
ですので、そういうフレームワークというのも計算基盤と一緒に、並行してつくっていかないと、いろいろなところで立ち後れるんじゃないかと考えている次第でございます。
以上です。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは続きまして、海野委員、お願いいたします。
【海野委員】 よろしくお願いします。Preferred Networksの海野です。私自身は、バックグラウンドは一応、肩書的にはロボットとあるんですけれども、自然言語処理と言われるような、いわゆる人工知能のアプリケーションのレイヤーの人間がもともとなんですけれども、私が学生の頃に研究だとかを始めた、15年前の頃からの変遷だとかをちょっと思い浮かべてみると、今ちょうど上田先生おっしゃったとおり、ちょっと前、10年とか15年ぐらい前に、こういうレイヤーの人間がスパコンを使うって、ちょっと想像できないような時代感だったんですね。当時から機械学習はあって、データがあればできるよねということは言われていたにもかかわらず、スパコンを使ってやるという研究は極めて少なくて、ほとんどいなかったと認識しています。自分たちが使うものだという認識がほとんどありませんでした。
じゃあ、データをたくさん使います、計算をたくさんやりましょうというのがスパコンみたいなところのレイヤーまで入ってきたのが何でだったのかなと思うと、1つは、データ自体が当時そんなに多くなかったのが、どんどん増えてきましたという流れと、あとはやはり利便性というか、使いやすさ、フレームワークの存在というのは非常に大きかったのかなと思っています。当時のことを考えると、例えばBLASですとかLAPACKみたいなものだとか、MPIみたいな、そういう低レイヤーのAPIはあるものの、自分たちは一方で文字列の処理をしなければならず、スクリプト言語をみんな使っているようなところで、自分たちには使えないよねという認識があったのかなと思っております。
自分自身もそのディープラーニングのフレームワークというのを、実は弊社もChainerというものの開発をやっていまして、それを自分でつくって感じたのが、意外と簡単に使えるように構成することができるんだということに気づいたというところもちょっとありました。今回、一連の議論の中でも、例えばPyTorchの話だとか、たくさん出ているかと思うんですけれども、ある種の利便性を上げるというようなところの研究というのは必要かなと思います。この10年でこれぐらい、スクリプト言語で簡単に使えるよということができたことを考えると、次の10年は恐らくもっと簡単に使えるようになるのかなと思っていて、同時に、今回もコンピュータサイエンスの外の方々がたくさん使っているお話をたくさん聞く機会があったので、より広い人が使っていく、また、より簡単に使えるようになっていくというのがトレンドとして出てくるのではないかと。
同時に、ハードウエアもどんどん進化して、ヘテロな環境というものがかなりキーワードとして出ていたと思うんですけれども、結局その辺りも上のレベルのインターフェースですとか、ユーザインターフェースという形になるのかライブラリという形で隠蔽するのかというのはちょっと分からないんですけれども、等価的に使えるような仕組みというのを通して、どういうハードウエアを使っているかというのを、利用者側はそこまで意識しない、そういうような構成になっていくのではないのかなと、利用者側の視点からですとちょっと感じたかなと思っております。
以上になります。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは続きまして、後藤委員、お願いいたします。
【後藤委員】 後藤でございます。それでは、私はやはりサイバーセキュリティの観点から一言、考え方の御提案と、具体的な御提案をしたいと思います。
まず、今、当然ながら行政も産業界も、もうデジタル活用にまっしぐらでございます。ある意味で学術研究も同じでございまして、そういう意味で、今、全ての研究活動がIT技術に依存している状態です。特に「富岳」のようなHPCの場合は、産業界の先端研究を担っているという意味では、国際競争力にとっても重要でございます。
こういう計算基盤、特に今後、将来さらに産業界や学術界が依存するものがどうあるべきかとなると、議論すべきは業務の継続性です。ビジネスコンティニュイティというのが普通、我々の世界で言いますが、そういう面を考えなければいけない。今、世の中では、石油パイプラインがサイバー攻撃で止まってしまうとか、食肉大手の工場が止まって牛肉が世界に供給されなくなるということが起こっている状態です。今、各企業では、ランサムウエア攻撃によって企業活動が止まることに関して非常に危機感を持っていて、自然災害が起こったと同じような感覚で、サイバー攻撃に遭ったらどうしようと考えているわけです。同じことが今後の次世代計算基盤にも必要だと私は思っています。つまり、例えば「富岳」が乗っ取られたらどうしますか、1年間ずっとランサムウエアで止められてしまったら困ってしまいますよねと、そういうことです。
そのための対策の1つとしては、これは前回会合で申し上げたことと同じですが、次世代計算基盤のシステムソフトウエアに関するソフトウエアサプライチェーンについてしっかりセキュリティを確保する、そういう準備を今から進めることをお勧めします。まずは素性が明確な、管理されたソフトウエアを使う、いわゆるBill of Materialsというものですが、そういうものをしっかり管理する。更新管理、ファイルの真贋判定の機能を備える、それからシステム全体としての信頼を支える技術を完備する、こういうことについてしっかり設計していくことが、将来安心してHPCI、次世代の計算基盤を使いこなす、世の中に役立てるベースになると思っております。
以上でございます。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
小林先生からは既に御発表いただいておりますので、続きまして小紫委員にお願いしたいと思います。小紫委員、お願いします。
【小紫委員】 日本大学の小紫といいます。私の専門は計算流体力学、数値流体力学とも言われています。全体的な意見ではないのですが、利用者としての意見を述べたいと思います。流体のシミュレーションは、もう随分古くから、大型計算機、すなわちスーパーコンピュータを利用して発展してきた分野の1つであり、スーパーコンピュータの利用の歴史も随分長いものがあります。しかしながら、この流体力学の分野一つとっても、まだまだ多くの未解決問題が残されています。
流体のシミュレーションといいますと、Navier-Stokes方程式の数値解析ということになるのですが、そもそもこの方程式について、3次元の場合の基本的な解の性質が数学的に証明されておらず、これは数学の未解決問題の1つになっています。また、これにも関連しますが、流体現象において極めて重要な乱流現象も完全には解明されておらず、こちらも未解決の問題です。いずれも、スーパーコンピュータによる超高精度計算の活用が期待され、まさにこれらの問題の解決は、数値計算にかかっていると言っても過言ではなかろうと思います。
流体計算とは、実はこの現象を模擬する「モデル」を扱っているとも考えられます。そもそもNavier-Stokes方程式も考え方によってはモデル方程式ともいえます。それはともかくとして、乱流現象のほか、たとえば、燃焼など化学反応を伴うような流れも、現状として、モデルを導入しないと解けません。より高精度な大規模計算が可能になると、こういったモデルへの依存度を大幅に減らせる可能性があります。さらにNavier-Stokes方程式の解の存在性や一意性などを数値的アプローチによって検証することができれば、流体力学の分野において多大な貢献ができると期待されます。
次世代計算基盤は、フラッグシップとしてのスーパーコンピュータにも大変期待するところでありますが、未解決問題などの基礎的研究から科学の発展に寄与する応用的な利用も想定した、性能と柔軟なシステムが必要と感じます。よろしくお願いいたします。
【安浦主査】 小紫先生、ありがとうございました。
田浦委員と常行委員は既に御発表いただいておりますので、続きまして、中野委員、お願いいたします。
【中野委員】 中野です。私は、どちらかというとデータベース、ビッグデータのあたりの研究者ですので、そこら辺含めて、次世代計算機基盤とサービスデジタルトランスフォーメーションということで、ちょっと期待を述べさせていただきたいと思います。
まず次世代アーキテクチャに関しては、当然のことながら、「狙え! 世界一」ということで、もう世界一の技術を知らなければ、その次の技術には踏み出せないわけですから、ぜひそこはこれからも、今後も狙っていくべきであるというふうに考えると同時に、それを様々なところで使えるということが今後の価値につながるということであります。
それから2番目として、やはりデータベースの研究者としては、「残せ! データ」ということで、今までは、データというのは基本、個々の研究成果に依存して、研究室の中に閉じていたんですけれども、今は広くいろんなところで、根拠、エビデンスを求められるときに、データそのものに価値があり、それを何らかの形で残しておくべきであると。そして、「繋げ! システム」ということで、先ほどからお話にあるように、今やいきなり「富岳」を使うわけではなくて、事前にクラウドとかで実験してから行うということで、そのときに、環境はやはり高速で、かつシームレスなところでないと使いにくいであろうと。
そして最後に、「見せろ! 成果」ということで、「富岳」の結果が今、ニュースで、NHKでいろいろ出ていますけれど、実は次々世代、次の世代の人、小学生に、わあ、コンピュータやりたいと思わせるためには、やはりプログラミングなんかよりは、スーパーカーを見せるように、スーパーコンピュータと、すごい成果というのを見せることが重要で、そのための図鑑のような世界が必要ではないかと。
そのためには、実は計算機を造ることも非常に重要ではあるけれども、サービスデジタルトランスフォーメーション、つまり、さっきからフレームワークという言葉がたくさんあったと思うんですが、次世代計算機基盤のファシリティマネジメントこそ、すごく優れた人が誘導することで、非常に連続的に見えて、かつ世界一のものが、やるべき人には使えるというようなサービスの世界を展開しなくてはいけないのではないかというふうに今思っております。そのファシリティマネジメントはシームレスで、インターフェースは国際共通で、先ほどどなたかおっしゃったように、データも含めてトランスペアレンシーで、かつそのときに何をやったかが記録できる。そしてデータも含めて、セキュリティなんかも併せてトレーサビリティとリネージ、どこからどういうふうに行われたかという管理をしながら、最後に流体力学から医学まで、ユーザフレンドリー、かつアベイラビリティを実現できるような優秀な方が、ぜひファシリティマネジメントに力を入れていただきたいと思っています。
以上です。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。それでは、肥山委員、お願いいたします。
【肥山委員】 私はユーザの立場からで、お題のありました様々な学術研究分野における世界的優位性を確保するためにどうしたらいいかについて、私の分野からお話しさせていただければというふうに思います。
一言で、私は、素粒子、原子核、宇宙という中の原子核分野の理論のほうを担当しております。やはり計算機を活用した学術的な分野融合というのが、どなたさまもおっしゃっておられるんですけど、大変重要ではないかというふうに思います。これがちょうど2010年、約10年ほど前に、スパコン「京」が立ち上がったときに非常によかったなと思ったのが、HPCIの戦略プログラム、私は分野の5に所属しておりましたが、このときに素粒子、原子核、宇宙の融合が一気に進みました。実はこれよりも前は、これらの分野というのは独立していて、この分野間の交流がほとんどないに等しいために、例えば私、原子核を見ると、宇宙とか素粒子がどういう研究をしているのかというのは、あまりよく、深くは考えていなかったというのが実情です。これが、ちょうどこのHPCIというのが立ち上がって、こういった1つのサイクルが生まれました。
私のほうから見ると、ミクロの原子核の構造の大規模な精密計算から、宇宙、特に星の形成だとか元素合成、星の一生というところの研究、ここの融合が進みました。また素粒子という意味では、原子核の構造の大規模計算のためのインプットとして、粒子間の相互作用というのがとても重要になってきますが、これを素粒子のほうから、第一原理の計算、こちらも大規模計算なんですけれども、そういうものをインプットとして原子核の精密な大規模計算、そしてマクロの世界へと、こういった融合が一気に進みました。ただ、しょせん5年しかなかったので、これが終わった瞬間に終わっちゃったというのが重要です。
ただし、この流れというのは、実は日本初の研究スタイルでして、この5年間は非常に活発に行われました。これが終わってから約七、八年たったんですけれども、実は今、何というんですか、潮流というか、大きなものが出てきそうになっています。それはJ-PARCという大規模実験施設というのが、ちょうど文科省のロードマップ、2021年に選定されていまして、まさにこの拡張の実験施設というのが今持ち上がっている、その最中です。そういったところから、これから、今後7年-10年を見据えたとすると、こういったネットワークづくり、計算機を活用した大規模計算と、この日本を代表する大規模な実験施設で展開される実験とが、タッグを組んで、新しいネットワークの体制というのを、計算機を使用してやると、素核宇宙で世界的に優位に立てるのではないかなというふうに思っております。
以上です。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
続きまして、藤井先生、お願いいたします。
【藤井委員】 藤井です。私は量子コンピュータの専門になります。スパコンに関してはそこまで詳しくないんですけれども、これまでお話を聞かせていただきましていろいろ勉強した中で、4点、コメントしました。
まず1点ですけれども、これは先ほど来までお話ありましたが、特定分野において次世代スパコンでしか出せない性能を出すということは、1つ、必須かなと思います。その特定分野というのは、産業イノベーションに加えて、何回かコメントありましたけれども、サイエンティフィックな、サイエンスを加速させるというようなところも非常に重要であるというふうに思います。
2点目ですけれども、これも先ほどまでに出てきた話ですけれども、汎用性というのは1つ、「富岳」がArmを採用したというのが汎用性の高さ、エコシステムを活用するというのが、これまでも話がありました。汎用性に関してはどんどんこれからも目指していくべきだと思います。ただし、この汎用性の意味というのはいろいろよく考えないといけないかなと思っていまして、いわゆるAWSにあるようなデータセンター、汎用的なデータセンターを目指すべきなのか、そうではないのかというのは、ちょっと考えるべきかなと思っています。私個人としては、汎用性の意味として、特定のドメイン、その時代によって何が求められるのか、今、機械学習が必要ですという話がありますけれども、そういったものが流れていく中で、特定のドメインに柔軟に特化できるといったような汎用性、柔軟性の高さというのが必要なのかなと思っております。
3点目ですけれども、スパコンというのは、言わばフォーミュラ1みたいなもの、最先端技術の結集かなと思っております。計算技術・計算科学の進展というのは必須ですけれども、こういった最先端技術を民生化していくことは自然かなと思います。半導体黄金時代には、そのプロセスそのものが民生用プロセスへと普及していったというような経緯がありますが、必ずしもハードウエアだけのプロセスといったところではなくて、ソフトウエア面で、「富岳」でいうと機械学習のフレームワークを支えているというような点もあるかなと思いますので、そういったところで、どこで民生化していくかというのを広く戦略的に捉えるべきかなと思います。
あと、量子コンピュータに関して言いますと、次期スパコンの計算基盤を担えるかどうかというのは非常に不透明です。ただ、グーグルでいいますと、2029年に100万量子ビットというロードマップを掲げているというようなこともございます。ですので次世代の最先端の計算技術として、人材育成など、もしくは量子コンピュータを実現する上でHPC技術がどうやって使えるのかというのも見据えていくべきかなと考えております。
以上になります。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは、三好先生、お願いします。
【三好委員】 三好です。私は6点書いているんですが、そのうちの最初の2点につきましては、必要性、重要性です。計算基盤はサイバー世界を成すものですので、計算機の性能が上がってきて、様々なシミュレーションがリアルになってくる。そうすると、まさに実際の現実のリアルとつなぎ合わせて、現実世界を制御していく、あるいは最適化していくというようなことで進んでいくということで、計算機はとにかく重要な役割を果たしていくであろうということです。
次に、日本の優位性や競争力を発展させるにはどういうふうな次世代計算基盤を考えればいいかということは、戦略的な設計というのが必要だと思います。もう既にほかの先生方もおっしゃられてきたことですので、ここでは繰り返しません。
その際に、フラグシップマシンの役割ということをやっぱり考える必要があるだろうと、フラッグシップはとにかく、最も速いコンピュータで、今まで考えられなかったようなことをやっていく、ブレークスルーを起こすためのマシンであるというふうに思います。これはフラッグシップがなければ達成できないことです。ですので、価値は非常に高い、もちろん造るのも大変だと思います。
そのときに、どういう性能が求められるかと考えますと、前回の話でもありましたが、現在の技術の延長でいくと数倍程度みたいな数字が出てきていました。それではブレークスルーになるというふうには考えにくい。ですので、下のほうに書いていますけれども、アプリ性能でいって100倍以上という、2けたを超えるような性能、これを創造して初めてブレークスルーというのが考えられるのではないかなと思いますので、これは単にフロップスがいいという話ではなくて、アプリ性能をどうやったら達成できるかということを、まず技術的な可能性を考える必要がありますし、それによって実際どういうブレークスルーが起きるのかというアプリ面での意義や有効性、この辺りをよく検討する必要があるのかなというふうに思います。
以上です。ありがとうございます。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは、山本委員、お願いいたします。
【山本委員】 よろしくお願いいたします。さすがに「や」まで来ると、先生方皆さんの御意見とかぶるところも多いかと思いますけれども、私は背景がソフトウエアなので、その観点で3点、お伝えできればと思っています。
まず1点目なんですけれども、まずはコンピュータサイエンスを研究してくださっている先生方が造るフラッグシップマシンは、やはりとがっていただきたいという部分です。松岡先生のお話にもありましたように、量子コンピューティングも含めて、様々なレイヤーの様々な技術要素、恐らく全体アーキテクチャとしてうまく統合されてとがっていかれると思いますので、各方式も含めて、ぜひ研究領域の中でも、コンピュータサイエンスもとがるという形の実現をお願いしたいというのが1点です。
2点目が、エコシステムという言葉が松岡先生からも、あと前回、木村さんのほうからも出ておりましたけれども、それを実装していく上で、常にアプリケーションのポータビリティを視座に入れていただきたいという部分です。それは、アーキテクチャ全体を考えたときに、どこのレイヤリングで、どこのパーティショニングで、どんなAPIを取りながら、実際の実装を隠してうまくユーザに使ってもらうかという議論を、恐らく繰り返しながら、フィードバックを受けながらだとは思うんですけれども、その議論をぜひ。例えば、アプリケーションのポータビリティだけではなく、中野先生も御指摘されていましたけど、データのポータビリティも含めて、ぜひ御検討いただきたいと思います。恐らくネットワークも含めて、全体アーキテクチャに大きなインパクトがあるような、そのポータビリティという考え方での整理というのを検討願えればと思っています。
3点目が、先ほど相澤先生や荒瀬先生も御指摘になっていたんですけれども、ユーザビリティについて御検討を進めていただきたいという部分です。これは申請系も含めた、それこそヒューマン・イン・ザ・ループではないですけれども、人間がどのような形でこの計算資源をうまく使っていくかという観点から、全体のアーキテクチャを鑑みながら、どのサービスをどのタイミングで、どのような形でどんどん変えられていくかといった観点含め、ぜひそのユーザビリティの部分を御検討いただければと思っております。
以上です。ありがとうございます。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。では最後、根本委員、3分で御説明をお願いいたします。
【根本委員】 はい。NIIの根本です。大変遅くなって申し訳ありません。
次世代のスーパーコンピュータというのは、私は量子コンピュータとか量子情報の専門なので、そんなに近くはないんですけれども、やはりだんだん限界、要するに既存のコンピュータの限界というものが見えてきたというのは、その先が量子コンピュータなのかどうかということは別にして、やはり共通の認識として広く世界的にあるのではないかというふうに思います。そのときに、やはりこれまでのような、今の現行世代の次という考え方がなかなか難しくなってきているというのは否めないのかなというふうに思います。もちろん技術的に大事な部分で、現行技術の次というものを狙っていかなければならない、それについては技術的にこういう縛りがあるということはもちろんあると思うんですけれども、やはり違った観点から、もう少し広く。その上で、新しい使い方であるとか、どういう役割を担っていくかということも含めて、もうちょっと広い議論が必要なのかなというふうに感じています。
例えば「富岳」の次ということで、同じようなマシンで次の世代を狙うのか、それとも、よく言われるのが、八ヶ岳みたいにしてやるのかというふうに言われますけれども、2択ではないと思うんですね。その辺の議論がきちんとされていないのではないのかなというふうに感じています。例えば、もちろん計算能力ということは中心的なわけですけれども、そのほかにもいろんな要素が入ってきていて、全体の状況としてはもっと複雑になっていると思うんです。例えばデータベースとどういうふうに絡んでいくのか、使うほうとしてはネットワークの問題とどう絡んでいくのかというような、もうちょっと全体的な観点から次世代というものを見るという、そういう機会があってもいいのかなというふうに思っています。
以上です。
【安浦主査】 どうも、直前に入っていただき、早々にお話しいただきましてありがとうございました。
委員の皆様方、本当に3分という極めて厳しい制約をつけたにもかかわらず、非常にポイントをついた御意見を出していただきましてありがとうございます。いただいたような御意見を中心に、後半で、また様々な角度から討論をしていただければと思います。

議題2:中間取りまとめ(素案)について

資料2-1、資料2-2に基づいて事務局から説明。

【安浦主査】 それでは、事務局の案と、それから最初に委員の皆様方からいただきました御意見等も含めまして、総合討論を行いたいと思います。
最初に、前回御発表いただいたということで、今日は御意見をいただくことをしておりませんでした小林先生、田浦先生、常行先生のほうから、今までのお話をお聞きになって、ここで御発言があれば、一言ずつでも御発言いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
小林先生、いかがでしょうか。
【小林主査代理】 小林です。私はどっちかというと計算機科学側の立場におりますけど、先日の近藤先生の御講演にありましたように、このままずっとやっていくと大した性能向上が得られないという意味では、やはり今後ますますシステムとアプリケーションのコデザインが重要になっていくということがあるというふうに理解しています。特に先ほど、分野融合で新しい成果が生み出されたとか、あるいは逆に、システム側からすれば、デバイス、システム、そしてシステムソフトウエアといったところで、これまで以上に連携が必要かなということで、ぜひそういうところを、FSを通して見極めて、最終的にはアプリとシステムのコデザインによって、より一層実効性能が上がるようなシステムを実現していければというふうに思っています。
あと、幾つか利用環境のことで御意見が出ておりましたけど、やはり基盤センター側も何か、私も基盤センターにおりましたけど、どうしてもそれぞれ所属している大学の都合等も考慮しなければいけない中で、HPCIとの関係を考えていかなければいけないわけですけど、では仮に、そのHPCIにさらに一歩踏み込んでコミットするような仕組みはどうしたらできるかというところも、何かFSで考えていくことが必要なのかなと思っております。もちろん財政的な支援が必要になってくるとは思いますけど、そこを考えていくことが重要かなというふうに思いました。
以上です。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
今現在の基盤センター長をやられている田浦先生、いかがでしょうか。
【田浦委員】 ありがとうございます。まず全体的なコメントなんですけれども、我が国には、地球シミュレータから「京」、そして「富岳」に至るフラッグシップ級のマシン、スパコンについては相当な蓄積があって、ブレークスルーをどうやって起こしていくかとかいうことに関しては、これまでのコデザインしかり、井上さんがいろいろとおっしゃっていたような話しかり、そういうところをしっかり検討していくということかと思っています。
それで、一方で、何人かの先生からも御指摘のあったような、ユーザからにとっての敷居の高さだったり使いにくさだったり、そういうところがあって、それはやはりデータ科学のための基盤というところにまだ対応できていないというところかと思います。それはフラッグシップしかり、情報基盤センターのマシンしかりだというふうに思っています。申請云々の敷居の高さということについては、これはマシンそのものというよりも、利用のための立てつけが大分違うというところがあって、特にフラッグシップの場合はそこの敷居が大分上がっていて、情報基盤センターの場合だと、もう手軽に、申込みさえすれば、ちょっとアナクロなプロセスも入りますけれども、簡単に使えるというところにはなっていると思います。
それよりも、どっちかというとマシンの環境のほうだと思うんですけれども、それは徐々に、例えば機械学習が重要だというのでフレームワークを入れるとか、コンテナを入れるとか、後からでもできるようなところについては対応していっているところだとは思うんですけれども、でもそういう要求自身もこれからどんどん変わっていくわけで、問題は、だからそれにいかに速く追従できるような環境を提供できるかという話だと思っています。それは何が根本的な問題かというと、モノリシックな1つの環境で、管理は全部センターの側というか、マシンを提供している側だけがやって、各ユーザが勝手に環境構築できないと、そういうところに根本的な原因があって、それはやろうと思ったら、要するに今のクラウド、仮想化環境で、各ユーザに管理者権限を与えて合成できるような、そういう環境をつくっていかなければいけない。
そういうことも今、我々やろうとしていますけれども、そういうことをやろうと思うと、これまでよりもはるかに高い、導入するほうにも技術レベルが必要ですし、あとやはり業者ですね、日本の業者で、まだそういう経験がない。なので、そういうことをやろうと思うと、どうしても今は海外のクラウドということになってしまうわけです。パブリッククラウドということになってしまって、これは長い目で見て非常に、財政的にも日本のためによくないということで、ここでやはりオンプレミスのきちんとしたクラウド環境、仮想化された環境というのをつくっていく、そのための蓄積を全体でしていく必要があるなと思っていて、それの最初の一歩みたいなところを始めているつもりです。種々の申請のしにくさとか、その辺も一緒に解決しようと思っていますので、その辺も今後ちょっと見ていっていただければというふうに思います。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
それでは、常行先生、お願いいたします。
【常行委員】 常行です。まず初めに、委員の先生方の3分で御説明いただいた御意見、大変、なるほどと思って伺うところがたくさんございました。中でも印象的なのは、1つは使いやすさとかユーザビリティの点をたくさんの方がコメントされていらして、私なんかは、数値計算のための方程式をどうやって解くかという、それをスクラッチからプログラムするとか、そういう世代の人間なので、そこから見ると、本当に今の使いやすさというのはちょっとまた別の次元の使いやすさというような、とても重要なんだということを改めて思いました。その辺りは、今まとめている中間取りまとめのほうにももうちょっと書き込める部分かなというふうに思いました。
それから、肥山先生が言われた実験と計算のタッグを組む、体制の構築、これは私のような材料研究の分野でも非常に重要で、SPring-8とかJ-PARCとか、そういうところとの連携が大事なんですが、そこはとても共感するんですが、これはもう次世代とか言わずに、現在の「富岳」から既に、早く何とかしなくてはいけないところだと思って、伺いました。
以上が最初の前半部分の話で、中間取りまとめに関してなんですけど、とてもよくまとまっていて、私、感心して読みました。大変読みやすいですし、それから、かなり踏み込んだ記述がいろいろあって、多分これからいろいろな意見が出て、修正されていくんだと思いますけど、私としては大変よく書けているなというふうに思いました。
以上でございます。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。これで御参加の委員の皆様方、一通り御意見いただいたところでございます。私も、最初のほうの御意見の中で、ユーザ層が変わってきているというこの辺り、特に上田委員とか海野委員のAI系の方々の御意見とか、使いやすさに関する話、従来のHPCのソサエティとは違う側面からのニーズに応えるという、そういう話が新鮮に聞こえたという感想を持っております。
それから、当然、データであり、ネットワークであり、クラウドとかファシリティマネジメントという言葉、非常に重要な言葉だなと思ってお聞きしました。セキュリティ、トレーサビリティ、あるいはポータビリティとか、そういった、これまでの、とにかく性能を出しましょうという話から、少し質に関する話が出てきているというところも特徴的かと思います。そして、井上先生とか藤井先生とかがおっしゃった、ある種の、日本全体でのコンピュテーションのグランドデザイン、あるいは民生化への道筋を立てていくというお話、さらには、量子関係の先生方から出ました、次の量子コンピュータ、あるいはそれではないかもしれませんけど、次世代の、今のマシンとは違った原理の世界をつくる人たちの人材育成を含めた検討をというようなお話もなかなか重要なポイントであるように感じて、聞かせていただきました。
ここからは、残った時間を委員の皆様方で、先ほどの中間まとめに対する御意見でも結構ですし、御意見の中で、委員の方々同士の御質問、あるいは、ここはこうじゃないかというような御意見でも結構ですので、自由に意見交換をさせていただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、よろしくお願いします。手を挙げていただければ助かります。
では、井上先生、どうぞ。
【井上委員】 九州大学の井上でございます。次世代スパコン、もしくはフラッグシップを意味のあるものとして進めていこうとしたときに、実際に誰がシステムをつくってくれるのかということは非常に重要なポイントだと思っています。
国内の中でこれだけの規模のマシンをきちんと造り上げて運用させるといったようなことを考えたときに、いわゆるメーカーがプレーヤーとしてきちんと参画できて、かつそれがメーカーにとっても大きなプラスになってビジネスにつながるというようなことがないと、継続性を考えると非常に大事になってくると思います。メーカーをどううまく巻き込むかということに関して、今回の提案書、まとめの中ではどういった形でちりばめる予定、もしくは言及するしないも含めて、ありますでしょうか。その点を議論させていただければと思います。
【安浦主査】 宅間室長、その辺は、文科省としてはどういうふうにお考えでしょうか。
【宅間室長】 事務局でございます。今の点はフラッグシップの必要性のところで、13ページ目の下のところですけれども、上記のマル2、例えば技術と人材の維持・育成ということについては、フラッグシップの開発だけで解決できる問題でないということを述べておりまして、計算基盤の開発周辺にエコシステムが構築されること、また、次のページに参りまして、産業政策などとの連動も期待されるということに言及しております。例えば経済産業省などが半導体戦略なども取りまとめていますけれども、その中でこれから進めていくような研究開発事業等ともうまく連携をしていくような形をつくれるといいのかなと思っておりますが、中間まとめの記載においては、今の部分に少しその点を入れたつもりでございます。
【井上委員】 ありがとうございます。
【安浦主査】 この中間まとめの段階で現実的な話まで踏み込むのも難しい面はありますけれども、井上先生が御指摘になりましたように、全てを国産で、全部そろえるというような、そんな時代ではないという認識は私も文科省も持ってはおります。その辺について、逆に委員の皆様方から、どこの部分を国として、国プロとして守っていくべきだというような強い御意見があれば、その辺はこの中間まとめの中に書き込んでいくことも考えたいと思います。
ほかの委員の方でも結構ですけど、その辺りいかがでしょうか。
小林先生、どうぞ。
【小林主査代理】 小林です。実際にはやはり、前回の形ではないですけど、FSでどんな可能性があるかを見て、それを目利きして、強化する、強化しない、選ぶ、選ばないということをすべきじゃないかというふうには思っております。ですので、この段階であまり制約するというよりは、どのぐらいその技術力が我が国に残っているのかとか、あるいは国際連携でどこまでできるのかを、この次のFSで見極めるのかなというふうに考えました。
以上です。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。その辺りで、セキュリティの話を後藤委員からいただきましたけど、セキュリティは、かなり、ネットワークもデータも、全てにかぶさった大きな概念で、こういう計算基盤、あるいはその中のフラッグシップみたいなものをつくっていくという中で、具体的に何か行動を起こすような、そういうものというのはあるでしょうか。
【後藤委員】 はい。セキュリティは1つのものでできるわけではなくて、全体を通しでみていかなければいけないというのは事実でございます。ぜひお願いしたいのは、大事なものをつくるのだという意識があるのであれば、同時にそれをセキュアに守るのだというコンセプトを常に持っていただきたいと思っていまして、それを確保する取組、仕組みが必要だと思います。特に実際上難しい、ぜひ自分たちで取り組むべきというのは、やはり運用体制、また運用のためのシステムだと思います。これはスパコンの部分もネットワークの部分も同じだと思います。使いこなす部分の技術というのは、なかなか外部から持ってこられないので、そこに関してしっかりとしたものをつくる、維持し続ける。そういう意味では、現在のシステムから次のシステムで、だんだん人もノウハウもためていくという努力が大事かなと思っています。
すみません、当たり前な答えになってしまいましたが、以上でございます。
【安浦主査】 ありがとうございます。突然当てて、すみません。
常行委員から手が挙がっています。常行先生、どうぞ。
【常行委員】 今出てきたお話はフラッグシップマシンのお話だったと思うんですが、例えば、この取りまとめの15ページで、HPCIとして第2階層の記述が結構踏み込んで書かれていて、例えばページ下のほうのポツに、第2階層は、フラッグシップも含め「HPCI全体で長期的な整備計画を策定し」とか、あるいは、その次には「第2階層においても、ベンダーとの共同開発等が行われ」とか、この辺はこれまでなかったことだと思うんですね。それで、これがどれぐらい第2階層の方たちから受け入れられるのか、その辺に私としてはちょっと興味がございます。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。
田浦先生、この辺りは随分努力されていると思うんですけど、いかがでしょうか。
【田浦委員】 ありがとうございます。この文面は私も正直、急に出てきたなという感じの文面で、若干驚いていて、かつ、私が勝手に即答できるようなことでもないので、難しいと思うんですけど、この文面の書きぶりについても、何てコメント申し上げようかなと、ずっと議論を聞きながら考えていたところでした。まさに常行先生がおっしゃっていただいたり、あるいは小林先生からも少しおっしゃっていただいたような、第2階層のスパコンの長期的な整備計画を策定し、戦略的に整備を進める云々という、その辺り、これはちょっと誤解を招く文章かなと思っています。今、HPCIでは、第2階層の整備というのは、戦略的もへったくれもなく、していないんですね。HPCIが何か第2階層を整備していて、それが戦略的ではないとか、そういうことではなくて、そもそもHPCIで第2階層は、一切整備はしていないです。なので、それを整備するというのだったら、相当それはこれまでとやり方を変えるということになります。基本的に、予算どうするのかと、予算をどこに振り向けるのかとか、相当決めないといけないという話なので、これはどういうつもりで書かれたのかというのは、むしろお聞きしたいという感じです。
【安浦主査】 これはちょっと、宅間さん、まず答えますか。
【宅間室長】 事務局でございます。今この時点では、直接的に整備をするということまでは想定していなくて、今現在、各大学の考えにのっとって、それぞれの基盤センターで整備をされていて、結果的に多様性が実現しているというのが今の状況だと思うんですが、例えばもう少し、各基盤センター間において検討をするときに、お互いの整備計画などを情報交換していただいた上で、全体を見据えた上での整備計画をつくるというようなことを想定して書いておりました。例えば国が、これまで直接的な整備に対して支援をしていないというところを大きく変えて、例えば直接予算をつけて、直接的に整備をするというところまで今の時点で想定して書いたわけではございません。
【安浦主査】 ということで、少し私が背中を押した面もあるんですが、データ基盤の、柏に入ったmdxなんかが、各センターが共同所有しているような形で大きなものを、1か所に入れて運用するという形です。これは田浦先生が実際やられたことなんですけれども、そういう兆しをもう少し計算基盤全体にも行き渡らせていいのではないかと。あるいは、朴先生のお話の中でも、筑波と東大と組んでいろいろやっていますというようなお話もありましたので、そういった流れを少し強めに書いてもいいんじゃないかということを私のほうから文科省にお願いして、強めに書いていただいたというものでございます。これが強過ぎるということであれば、当然中間まとめから下げたいとは思いますけれども。
【田浦委員】 分かりました。ありがとうございます。おっしゃっていただいたとおり、戦略的にこういうものが必要だといって整備をするとか、それで8大学、あるいは筑波大学も入れた9大学で相談してやるとか、その辺は当然必要だと思っていて、実際やっているところなんですね。ただ、こう言っては何なんですけれども、それは別にHPCIがあるからやっているわけではないんですよね、我々としては。だからHPCIと第2階層の関係というのは、またちょっと、ここでくどくど説明するとつまらない話になってしまうので、あまり深入りはしませんけれども、多分文科省の方々はよく分かっているとおり、いろいろと、この下で我々が結集しているわけではないという、そういう諸事情があります。戦略的に情報基盤センターを連携させるとか、データ科学のため新しい基盤をつくっていくとか、それはやっているところで、絶対必要なんですが、それをHPCIの運用という、そのラベルの中に入れるのはちょっと違うかなと思うので、その辺はちょっと細かい話なので、また別途御相談させていただくのがいいかなというふうに思います。
【安浦主査】 ありがとうございます。この文書全体としては次世代計算基盤であって、HPCIだけを意識しているわけではないという点もございます。この場所がいいかどうかというのは当然ございますけれども、そういう感じで考えております。
常行先生、何か御発言あるでしょうか。
【常行委員】 よろしいですか。私としては、安浦先生がここにそういうことを記載してはと言われた気持ちが、何かとても共感いたします。それで私自身も、できればこういうことを書いていただいて、確かにHPCIというのは、情報基盤センターがもともとあったものに後からできたものなので、立場が違うというところはあるんですが、こういうことをちゃんと主張していただけると非常にインパクトがあるし、ユーザから見ると分かりやすいというふうに感じました。
以上です。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。また、田浦先生、御相談させていただくことになるかと思います。
根本先生がお待ちいただいていますので、根本先生、どうぞ。
【根本委員】 先ほどの話にもちょっとかぶると思うんですけれども、先ほどオール・ジャパンでというところでちょっと気になったんですけれども、確かに、中間取りまとめいただいていて、ある意味大きなところで間違いがないといいますか、そういうふうにできたらいいよね、というところはほぼカバーされているのかなというふうに思うんですけれども、オール・ジャパンで本当にできるのかといいますか、つまり、十分な産業界からのコミットメントがあって、それによって十分に産業界のほうも発展して、相乗効果があって、プロジェクトとしても適当な、妥当な予算でできるのかというところ、オール・ジャパンにすることによってというところは、必ずしも、これから先、難しくなってくるんじゃないのかなということも考えられるのではないかと思うんですね。
そのときに、情報資源といいますか、計算資源、データ資源といろいろな意味で、非常にこれからますます重要になってくるというところは誰もが言っていることだと思うんですけれども、その中で日本が主体的に、こういった資源を守っていくと、主体的な権限と言うとちょっと言い方が悪いですけれども、主体的な判断ができるための最低限のものは何なのかと、技術的にです。それはハード面でもソフト面でもそうだと思うんですけれども、そういった議論があって、初めてどこまでオール・ジャパンなのかということが言えてくるのではないかと思うんですけれども、そういったところがちょっと見えてこないので、そういうところがあれば、文科省の方、担当者の方で、もし御説明いただけるのであれば、一度お伺いしておきたいと思います。
【安浦主査】 ありがとうございます。根本先生の御意見、御質問は、必要となる、需要として存在する計算量とかデータ量の話なのか、それとも供給できる能力としての話なのか。これ、両方ですか。
【根本委員】 要するに、ある一定の計算能力というものも必要であるし、データ資源というのも日本の中で、日本の国内で持っているべきものというのを日本が主体的に決めていく権利があるためには、それなりの設備も要るし、ハード面、ソフト面での技術も要るし、人も要るしと、いろいろなことがあると思うんですけれども、それをどこまで、要するに主体的に日本がそれを判断でき、それを実行できるという、何というんですか、そこの見極めということはやはりこれから先、必要なのではないかと思うんですね。その辺りの見極めがどのぐらい進んでいるのかというところをお伺いしています。
【安浦主査】 宅間室長、お答えできますか。
【宅間室長】 事務局でございます。私の理解が追いついているか自信がないんですけれども、先生がおっしゃられたのは、オール・ジャパンのニーズというものをどうやって明確化するかというようなところでしたでしょうか。
【根本委員】 いえ、全然違います。すみません。そうではなくて、要するに、日本の最も重要なというか、フラッグシップ的な情報技術を、ソフト面、ハード面、設備面、人材面、セキュリティ面といろんな面で、オール・ジャパンでこれからも全部やっていけるんだということであれば、それはそれでいいと思うんです。それらも、産業界のコミットメントもきちんと十分取れて、それによって学術的にも産業的にも発展するというのであれば、もちろんそれはいいと思うんですけれども、だんだんなかなか厳しい部分というのも出てきているのではないかというふうに思うんですね。
そうしたときに、ただ単に、今までのようにオール・ジャパンでと言っていても、実際本当に大事なところが日本の中で主体的な判断をできなくなってくるということが危惧されるのではないかなと思っています。それについてどのぐらい、最低ラインのところの見積りといいますか、それをお伺いしています。
【宅間室長】 事務局でございます。お答えになっているかわかりませんが、中間まとめの中では、例えば海外の技術を活用するところと自国の技術を確保していくところというのは見極めが必要だというようなことを書いておりまして、例えばそういう見極めを、まさにこれから調査研究などをしながら見極めていくのかなというふうに思っておりました。今現時点で先生の御質問に明確にお答えすることがちょっとできないんですけれども、調査研究をしつつ見極めて、引き続き検討していくところなのかなと思っております。
【根本委員】 分かりました。ありがとうございます。ただ、ごめんなさい、1点だけ。調査研究をしてということとは別に、もうちょっと概念的に、こういうものが必要だという点からの、要するにボトムアップとトップダウンの両方から議論しないと、うまくまとまらないように思いますので、その点は注意をしていただきたいというふうに思います。
以上です。ありがとうございました。
【安浦主査】 根本先生、非常に貴重な御意見ありがとうございました。歴史的に申し上げますと、「京」のときは、中核となる半導体の、CPUのプロセッサーのチップの設計製造まで日本でできたんですけれども、「富岳」は、設計は日本でできましたけど、もう製造は完全に日本の半導体、最先端テクノロジーはついていけないので、台湾のTSMCに委託しました。今度は、その設計も本当に日本でできるのかという問題も十分に出てきます。設計といってもいろいろなレベル設計がありますけれども、例えばチップという、CPUの乗るチップの設計まで日本でできるかどうかということまで、かなり際どい状況にあるという認識はございます。そこで海外との連携というような話も今回は考えないといけないかもしれない、それくらいの歴史の流れは踏まえた上で、今後、次回この中間まとめを最終的にまとめますけれども、その中間まとめにどういう形で表現するかということを、今後また個別に御意見いただいたりしながら詰めていきたいというふうに考えております。よろしゅうございますでしょうか。
【根本委員】 はい。どうもありがとうございました。
【安浦主査】 ほかに何か御発言ございますでしょうか。
上田先生、海野委員のAI系のお話がございましたけど、次世代インフラの中でAI的なものというものをかなり大きく取り込んだほうがいいかどうかという、その辺りについての御意見を伺えればと思うんですけど。
【上田委員】 今、AIは、個人的にも、普通のエンド・ツー・エンドのニューラルネットというのは研究対象からやや外れて、もうアプリかなと思いますが、最近ですと、AIとシミュレーションといいますか、物理モデルとの融合がトレンドになりつつあります。例えば2018年のNeurIPSのベストペーパーアワードをもらったNeural ODEというのは、常微分方程式をニューラルネットで解く技術です。つまり、ニューラルネットそのものは、微分器であり、ニューラルネットそのものがいわゆる物理シミュレータとなり得るというような時代感で世界的にも動いています。国内でも、私も昨年、本を買って読んでいましたけれど、物理学者が物理学と深層学習という観点で本を出版したりして、むしろ彼らにとっては、ニューラルネットの見方がもう完全に変わっているんですね。
つまり、AIとシミュレーションというのが、単純に工学だけではなくて、物理の世界でかなり進んでいるというのを見ると、普通のいわゆるDLのフレームワークというのをもう少し超えた、進化した形で進展していくのではないかというような感覚を持っています。ただこれも、ベースとなる汎用技術は世界各国でつくられていくので、やはり可搬性のあるフレームワークがないと、一から自分でスクラッチでつくっているようでは、こうしたシミュレーションの応用研究が遅滞するので、早期の準備が必要です。そういう観点では、今のAIというよりは、何というんですかね、物理シミュレータというような意味でのAIというのが次世代のAIとしてトレンドになりつつあるというような感覚があります。
そうはいいながら、まだこれはNeurIPSの業界でもかなり、メジャーにはなっていませんけれども、ある意味とがった分野として動いてきているので、これが広がっていくのではないかと。つまり、普通のエンド・ツー・エンドの学習は、極端に言うと誰でもできるので、一気に広がりましたが、物理シミュレーションAIは専門知識がないと、なかなか追随できない。一方、非常に興味を持つ物理学者も多いので、その方面から広がってくる可能性が現実にあると思います。それをAIと呼ぶのか、物理AIと呼ぶのか、シミュレーションAIと呼ぶのか分かりませんけれども、分かる人には分かるキーワードかなと思いまして、そういうものを新しい情報基盤の上で、大規模な物理シミュレーションを、いわゆる微分方程式、偏微分方程式のソルバーとして深層学習を組み合せた形で、より効率的に、より高い精度で実現するというのが重要な研究分野になっています。日本の物理学者も書籍を出版しています。そういう分野が今進行しているということでは、少し意識しておいていただくといいかもしれません。
以上です。
【安浦主査】 ありがとうございます。
海野委員、何かございますか。
【海野委員】 海野です。まさに同じようなことを言おうと思ったら、上田先生に同じような内容を言われてしまったので、ちょっと困っているんですが、まさに同じような印象を持っておりまして、今そのシミュレーションを、いわゆるAIの技術を使ってやるというようなトレンドが来ているのかなと思っております。恐らく先日のお話でも、例えば津波のシミュレーションをデータドリブンで、いわゆる機械学習のアプローチを使ってあげて、マクロな挙動を予測ベースでやってしまおうというようなお話が多分あったと思うんですが、ああいうイメージ感の問題です。だから技術としては、いわゆる人工知能だとか機械学習といった領域のところから出ているものではあるんですけれども、もはやそれを、人工知能で呼ぶのがちょっと、呼ばないほうがいいのかなとも思っておりまして、ある種のデータドリブンな科学のやり方、シミュレーションのやり方みたいなところが来ているのかなと。
弊社の中でも科学の分野の、例えば分子の構造だとかの計算というのも、同じような形でやったりとかはしているので、そうすると、いろんなサイエンスでこのアプローチというのは広がるのかなと思っております。シミュレーション、いわゆる微分方程式で得られるようなシミュレーションを、データドリブンのアプローチで、機械学習やAI技術で何か、関数を模倣してあげるようなことをやってあげるというような形の枠組みで考えると、いろんなサイエンスですとか、普通のサイエンスのみならず、もうちょっとマクロな社会科学といったところでもひょっとすると応用が利くのかなというようなことも思っています。使われ方の新しいトレンドが来ると考えるのはおかしくないのかな、というふうには捉えています。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。また新しい流れがそちらのほうから来ているという、お二人のお話だったかと思います。
ほかに、もう大分時間がなくなってきておりますが、御発言ございますでしょうか。
松岡先生が手を挙げておられます。どうぞ。
【松岡オブザーバ】 では、3分間で、よろしいでしょうか。
【安浦主査】 はい。3分でお願いします。
【松岡オブザーバ】 まず第一に、委員の先生方の発言は非常に、まさに同感するというか、本当に私どもの問題意識と非常に合っておりまして、ほとんど、99%異論はないというところがまずございます。ただ、それに関して、例えば「富岳」においてもいろんな御指摘があった、例えば使いやすさだとか、アカウントを取るだとか、汎用性だとかディープラーニングだとか、ビッグデータアナリティクスに対する対応だとか、あと今、SPring-8と「富岳」をつなごうとしていますけれども、それらの対応というのは「富岳」世代でも実はかなり進んでおりまして、その辺り問題意識は我々も共有していますので、まさにその対処を行っている。例えば今回、アカウントを取るのも、半年ではなくて1週間で取れるような制度というのを、しかも有償利用で1週間で取れるというような制度が施行されています。ただ、もちろん完全なものではなくて、今後いろいろやっていかなければいけない。
その中で、先ほど申し上げたように、まさに各先生方の発言には同意はするわけですけれども、では何が難しいかというと、実はそれらは相反する事象を含んでいるわけです。例えば汎用性ということと、とがったというのは、実は必ずしも適合性はよくないわけです。とがればとがるほど専用化するから、汎用性から外れるわけです。そういうふうに、今回いろいろな、こういうものが必要だ、ああいうのが必要だと、それは先生方の発言があって、かつ白書に書かれますけど、その全てを実現するというのは実はすごく難しいわけです。技術的にコンフリクトするので、難しいと。
それを解決するために、「富岳」でも単に普通のCPUを集めたマシンではなくて、アクセラレーション技術というのをいろいろなところへ入れています。例えば演算でもアクセラレーションしていますし、メモリの部分もアクセラレーションしていますし、ネットワーク部分もアクセラレーションしているわけです。なので、それらをコデザインによってどこをアクセラレーションしなければいけないというのをアーキテクチャに入れて、そのアクセラレーションをしたから世界一が取れたり、普通のインテルを使ったらどうなるかというところから、何倍も高い性能を達成できたわけです。
じゃあ、これが次世代になったらどうなるかというところで、今議論もありましたけれども、総合的に見ると、次世代の計算に対するリクワイアメントはどうなるのということを正確に捉えていかないといけない。1つは、今、上田先生等がおっしゃったように、やはりディープラーニング、エンピリカルな、経験則的なマシンとしてのニューラルネットワークと、今までの第一原理シミュレーションと、あとデータ、これらが、三位一体化していく、これはもうまさに流れであって、そこが原理的にどうなっているかということをきちんと捉えないと、次世代のマシンというのは実はできない。ただ単にフロップスを増やすだとか、ただ単にニューラルネットワークを、今トランスフォーマがはやっているから速くするだとか、ただ単にデータをストアするだけのデータ基盤をつくるとか、そういうことだけでは駄目です。やはりそこが融合するにはどうすればいいかということを理論的なところからやらないといけない。
もう一つは、今後の、そういうことがうまくいくための計算のパターンというのはどうやって進化していくかということが非常に大事になります。
いろいろあるのですけれども、やはり今後我々は、井上先生おっしゃったように、フロップスを増やしていくのは基本的に難しいです。これはもうしようがない。じゃあ量子コンピュータがいいかというと、量子コンピュータはやはり万能ではないので、一部の問題は、特にNPハードの問題に関しては非常に期待できますけど、そうではない問題に関しては必ずしも力を発揮しない。
じゃあどうやってやればいいのというと、我々は、計算オーダーや、データ移動のエネルギーを減らしていくというところに全てがかかっていると基本的には思っています。そのためには、しかしアルゴリズム自身もそっちに行かなくてはならない。今後アルゴリズムの進化というのが、そういう、オーダーが低く、今はn4乗とかn5乗とか、そういうアルゴリズムが出てきていますけど、例えばニューラルネットワークだとn3乗、トランスフォーマはn3乗ですけど、これをn2乗だとか、nlognとかにやっていけるか、そういうスパースなアルゴリズムに変換できていくか、今そういう流れがあるわけです。そういうことができると、データ移動のエネルギーを減らしていくことで、大幅な速度向上が可能となるというようなビジョンが見えてまいります。
そのようにして、そもそも計算をドライブする、一番マイクロエレクトロニクスの分野では、その計算のパターンというのが非常に性能アップに寄与するので、そこのパターンを、いつもでかいアプリケーションを3つ、4つ、9つとか、そういうのではなくて、基本的な演算原理というのが今後どういう形で発展していって、それがハードウエア設計やソフトウエア設計にどう影響を与えていくかというところを根本的に捉えていく、これが非常に重要で、それをいろいろなアプリケーションから抽出していく、それをハードウエアで実現できるかと、そういうところのフィージビリティースタディをぜひやっていかなければいけないかというのが問題意識としてあります。
以上でございます。すみません、3分超えましたね。
【安浦主査】 5分でした。松岡先生、ありがとうございます。
もう予定の時間が来ておりますので、今日の議論はこれくらいにさせていただきたいと思います。これら今日いただいた御意見等を踏まえまして、今後の次世代計算基盤についてのまとめ、この中間まとめを作ってまいりますけれども、また、今日御発言できないけど、後で思いつかれたとか、そういう御意見等ございましたら、事務局のほうにいただければと思います。また個別に御相談を差し上げることもあるかもしれませんけど、そのときにはよろしく御対応をお願いしたいと思います。
それでは、本日の議事はこれで終わりたいと思いますけれども、全体通して何か、御質問とか御意見とかございますか。なければ事務局のほうにマイクを返したいと思います。
事務局、お願いします。
【太田専門職】 本日は、御審議いただき、誠にありがとうございました。ただいま主査からもございましたように、本日の議事について議論が足りない点や御意見等がございましたら、メールにて事務局まで御連絡お願いいたします。
また、次回は7月29日木曜日、15時半からの開催となりますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
【安浦主査】 それでは、以上で閉会いたします。本日は遅い時間までありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。