次世代計算基盤検討部会(第3回)議事要旨

1.日時

令和2年11月30日(月曜日)10:00-12:00

2.場所

オンライン会議

3.出席者

委員

安浦主査、相澤委員、合田委員、荒瀬委員、伊藤委員、上田委員、海野委員、喜連川委員、田浦委員、高橋委員、常行委員、中野委員、藤井委員、山本委員

文部科学省

杉野研究振興局長、塩崎審議官、橋爪参事官、宅間計算科学技術推進室長、西川参事官補佐、太田専門職

オブザーバー

東北大学小林教授、理化学研究所計算科学研究センター松岡センター長

4.議事要旨

安浦主査により開会を宣言。
冒頭、文部科学省杉野研究振興局長より挨拶の後、事務局からオンライン開催の注意事項について説明があった。

【安浦主査】 議題に入ります前に、先日のスパコンランキングで「富岳」が2期連続で4冠を達成したということがございました。松岡センター長、一言、コメント等ございますでしょうか。
【松岡センター長】 ありがとうございます。松岡でございます。
「富岳」はアプリケーションファーストのマシンとして、10年間にわたって設計、開発、設置で、初期運用がなされているものでございます。その中で、しかしながらベンチマークで全てのランキングで世界一を取ったということは、すなわち非常に幅広い、「富岳」のピークとその幅広さということが非常に大事だったわけですが、その非常に幅広いアプリケーション分野で役立つということの何よりの証でございます。ですので、決してランキングで1位を取ることが目標だったわけではないですが、全てのランキングで圧倒的1位を取るということは、特にHPCだけではなく、AIやビッグデータなどのランキングで圧倒的な1位を取ったということは、まさに全てのアプリケーションにおいて世界一であると、HPCだけではなく、そのような分野で世界一であることを立証したということであると思っています。
しかし、この成果というのは、まさにHPCをはじめとして、情報系、アプリ系の、系全ての、まさにオール・ジャパンの開発、これが実ったということがその証でございまして、今後ともそのように、まさにオール・ジャパンで次世代の基盤をつくっていくと、このような世界に冠たる基盤をつくっていくというところが非常に重要だと思っております。どうもありがとうございます。
【安浦主査】 松岡センター長、ありがとうございました。


議題1:次世代の情報基盤全体における計算基盤の役割について
事務局より資料1-1、資料1-2に基づいて今後の検討の進め方と今回の審議の進め方について説明がなされた。

その後、資料2(将来のHPCIのあり方に関する検討ワーキンググループ報告書について)に基づいて小林教授より、以下の通り説明がなされた。

【小林教授】 東北大の小林と申します。今回このような機会をいただきまして、ありがとうございました。昨年6月に、将来のHPCIの在り方に関する検討ワーキンググループの報告書という形でまとめさせていただきましたので、それについて御紹介、検討した内容等を御報告させていただくとともに、安浦先生から、少し私見もよろしいということでしたので、ちょっと関連することをお話しできればと思っております。よろしくお願いします。
この委員会、そこに書いてございますように、趣旨としましては、計算科学あるいは計算機科学の取り巻く状況が大きく変化する中で、今後、将来のHPCIに求められる役割とか、あるいは在り方とかといったようなことを広く議論しようということで、平成29年6月に設置されて、31年6月まで、7回開催して行っております。委員の一覧がそこに出ておりますが、どちらかというと若い先生方にお集まりいただいて、これから将来のHPCIを担っていく方々の意見を聴取するということで、アプリケーションを研究されている方、あるいはシステム開発、そして運用といったような分野から委員をお願いしております。7回の開催の中で5回ほどヒアリング等を行いまして、委員あるいは外部の有識者の方、特にアプリケーション、計算科学を推進する方、あるいはその将来のロードマップを設計、取りまとめている方、あるいは最近のAI、データサイエンス系での活用を積極的に取り組んでいる方、そしてシステムハードウエアの開発状況、さらには基盤センターの運用等を通じて将来のHPCIの在り方等について御意見をいただきながら、議論をしてまいりました。
昨年6月に、資料のほうにも出ていると思いますが、一枚物でまとめさせていただいておりますが、まず現状といたしましては、平成26年3月でしたでしょうか、小柳先生が取りまとめられた、今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループの報告書に示された方向性にのっとって順調に進捗していると、「京」の利用等も順当であるということが確認しておりますが、その一方で、計算科学分野、情報科学の分野として、ユーザの多様性とか、あるいはアーキテクチャ設計をめぐる動向、そしてデータサイエンス等の分野の拡大、さらには人材育成といったような、HPCIに関わるいろいろなところでその取組が求められているということを議論してございます。
そのような状況を踏まえまして、在り方について、4つのポイントで最終的に報告書をまとめさせていただきました。全体的な意見といたしましては、最先端の研究、科学的成果を創出するために、HPCIを引き続き整備・運用していくことは、我が国の科学力、産業力の維持向上に必要不可欠であるというようなことが全ての意見で集約できていると思っております。ただ、ここに示しますように、例えば最初のアーキテクチャの多様性とか、あるいはそれに関連したプラットフォームを整備していくというようなことが強く望まれていると。特に半導体技術の、よく言われるようにムーアの法則の終えんといったような形で、3ナノぐらいまでのテクノロジーは見えておりますけど、その先が全く見えないといったような状況の中でどのようにシステムを開発していけばいいのかなどが議論され、「今までのようなピーク性能が右肩上がりで向上していくことが期待できないのではないか」や、「いろいろな視点で多様性を考慮してシステムを開発すべき」、といった意見が出されました。また、そのような多様なシステムを効率よく使うためのシステムソフトウエア、仮想化技術が必要ですし、さらには利用者支援を行う体制、そしてシステム開発および利用者支援に取り組める人材の育成も重要なこととして指摘しております。
さらには、これまでのシミュレーション科学の推進のための基盤としてのHPCIに加えて、最近のAI、データサイエンス分野の進歩によって、大規模データ処理のインフラとしてのHPCIの位置づけといったことも重要であろうということが議論されてきました。さらには、そのデータをどのように利活用していくかということで、データの作成者との合意の下での、公共財としてのデータの利活用基盤としてのHPCIといったものを考えていく必要があるだろうとの指摘もありました。その際、データをつくって解析するまではいいのですが、その後のメンテナンス等もよく考えていかなければいけないということも考慮する必要があります。さらには、そのデータの流通を支えるネットワーク技術として、SINETはますます重要になっていくであろうと、低レンテンシで高バンド幅なネットワークの技術というものがHPCIの、言うなれば血管というのでしょうか、データを収集し、さらには蓄積されたデータを社会の隅々までに行き渡らせるために重要であるということが議論されてございます。
あとは、ボーダーレス化の進展ということが挙げてありますが、非常に大きな予算を使って、「富岳」等の開発が進められたわけですが、今後ますます技術を高度化していくことに対する予算的な措置に難しさも出てくるであろうという議論もなされております。従いまして、システムを含め、あるいはデータの利活用等も含めて、いわゆる大型プロジェクト、加速器といったようなものと同じように、国際連携の仕組みが必要になっていくのではないかということが議論されております。また、アマゾン等の民間のクラウド型サービスも利活用されている状況を踏まえて、そのようなクラウドサービスとのインターフェースも整備していく必要があるであろうということで、国と民間の境を取り去り、ユーザから見て最適となる全体構成を実現する必要があるだろうということです。
最後の4つ目ですが、人材育成に関しましては、HPCIがいわゆるSociety5.0の実現に必要不可欠の基盤になるということを踏まえて、それを利活用するための人材の育成が急務であるということです。また、高校生、大学生に対して、AI人材教育、IT人材教育を強力に今進めようとしているところではありますが、このHPCIを利活用した教育、人材育成等も必要になってくるだろうとの指摘もありました。さらには、常に最先端のHPCIの開発・整備には、アーキテクチャ、OS、コンパイラ、基本ライブラリ等のシステム系の技術を保持し続けることが重要であり、そういったところで活躍できる人材の育成も求められると考えています。あとは、基盤センターなどでは、利用支援といった体制が、ある意味、教員のボランティア的なところで進められている部分も多いということで、やはりキャリアパスを考えることによって、そういう役割を積極的に担えるような人材も育成できるような形が求められるのではないかということがあります。
このような在り方の議論を進めたわけですが、そのために必要な取り組みといたしまして、ここに6つ挙げておりますが、将来のHPCIに導入される可能性がある斬新な未開拓技術及びそれらを用いた計算機構成方式、基盤ソフトウエア、アルゴリズム、そういった基礎研究を行えるようなプロジェクトを推進。さらには、利用環境整備です。多様なアーキテクチャが求められる中で、それを効率よく使うための利用環境の整備、そのためのプロジェクトも必要と考えます。さらには、国際連携を支援する仕組みとか、あるいは人材育成、キャリアパス、そして社会的・科学的課題を見据えつつ、その解決に必要な計算科学、データ科学的なアプローチと、その実現に必要なネットワークも含めた全体のロードマップを示していく必要性も挙げてあります。そのためのワークショップ、議論の場を提供していくというようなことが求められていくのではないかというのが全体的な取りまとめとして、昨年6月に出させていただきました。
あとは、少しアーキテクチャ的な視点、あるいは運用をしてきた立場で考えていることを簡単に御紹介させていただければと思います。これから「富岳」の時代では、これまでの計算科学ばかりではなく、データサイエンスの発展が期待されて、実際にシミュレーションの高度化で、AIを使ったシミュレーションのステアリングとか、あるいは、実際にリアルデータが取れないようなものに関しましては、シミュレーションを使ってそれを補いつつ、AIの高度化を行うと、さらにはそれらを連携するようなデータサイエンスとシミュレーション科学の連携といったものがどんどんこれから進められていくであろうと考えています。
そのようなことを踏まえて、これから求められる計算機アーキテクチャといたしましては、そういうような利用環境を仮想化して、利用者が統一的に使えるような仕組みを、ハードウエアレイヤーからシステムソフトウエアレイヤー一体となって開発し、アプリケーション側に提示していくといったことが求められるであろうというふうに考えているところです。もちろんその中には、従来の古典的なHPC技術、GPU、ベクトル、FPGAといったものがあろうかと思いますけど、それに加えて、量子アニーリング、あるいは量子コンピューティング、あるいはブレーン・インスパイヤード・コンピューティングといったような、新たな、ある意味ドメインが限られたものを対象とするアクセラレータとしての高性能計算技術が出てくるであろうと思いますので、そういったものをいかに統一的に使えるような仕組みが提供できるかといったところが、次のHPCIに求められていくのかなというふうに思っています。そのような中で、文科省の次世代領域開発事業の支援を受けて、現在そのような計算プラットフォームの研究開発に取り組んでいるところです。
ですので、これは小柳先生がまとめられた計算科学のインフラのイメージで、今もこれで「富岳」を頂点に進められているところですが、やはり今後ムーアの法則を維持することが難しい状況において、1つで全てをカバーするというのはなかなか難しい状況になりつつあり、まさに今、特定のドメインを対象にいろいろなアクセラレータが出てきているところですので、コストや電力といった制約条件の中で特定のアプリケーションドメインで実効性能を最大限に高めたようなものをうまく集約して、全体の計算技術の能力の底上げをしようということがどんどん求められていく、そういう時代に入っているのかなというふうに思っているところです。これは「京」が抜けて、八ケ岳になって、またポスト「京」というような流れで、スーパーコンピューティングに関する調査検討WGでまとめられているところですが、現在はやはり汎用のアーキテクチャを中心に、一部いろいろなドメインスペシフィックなアーキテクチャをアクセラレータとして使うようなHPCシステムの開発が進められていますが、今後、やはり相対的にはその汎用性の部分が小さくなって、どんどんいろいろな加速器がそれぞれの分野で威力を発揮して、全体として汎用性を維持するようなイメージができていくのではないかなというふうに考えております。
ですので、これはもう単に絵を描いているようなところがございますけど、汎用アーキテクチャプラットフォームである程度の底上げをしつつ、さらにその頂点はいろいろな、ドメイン・スペシフィック・アーキテクチャの組合せで全体のピラミッドをつくっていくというようなイメージが、これから10年から15年後、すなわち2030年代前半あたりのイメージとして持っております。そして、そのポスト「富岳」時代のHPCI構築に向けては、やはりデバイスからシステムアーキテクチャ、そしてアプリケーションと、その垂直統合でいろいろな技術を集約して、研究開発に取り組むというようなことが重要であるというふうに思っているところです。
将来の技術を見極めるためにも将来のHPCIのあり方に関するフィージビリティースタディが必要と考えており、例えば、これは2012年に、将来のHPCIのあり方に関する調査研究ということで、2年間のプロジェクトが文科省で実施されましたが、このときはある意味、オール・ジャパンと言っては少し大げさかもしれませんけど、基盤センター、あるいは理化学研究所等の計算リソースを提供する側、そしてアプリケーションの研究開発を推進する側、さらには産業界から日本の代表的な企業が加わって、いろいろな検討が広くなされました。最終的には富士通のシステムが採用になったわけですが、ただ、その副産物というか、その後にいろいろな波及効果として、多分その演算加速アクセラレータのチームでは、例えばPEZYといったようなシステムに非常に大きな影響を与えているというふうに思っていますし、私どもが取り組ませてもらったものに関しましては、ベクトル型の高度化、特に、HBMを6チャンネルで世界で最初に実装したというような技術がつくられていたり、あるいは産学連携の拠点ができて、HPCに関する開発型の産学連携研究活動の効果というものが非常に大きくその後、花開いているのではないかなというふうに思っています。もちろんアプリケーションに関しましてはロードマップが引き続きつくられておりますので、それが今後の将来のHPCIに向けた方向性を示してくれていると思います。さらには、これに関わった多くの若い人たちが今、HPCのいろいろな分野で活躍しており、人材育成という面でも非常に大きな効果があったと思っているところです。
時間が過ぎてしまいましたので、あとはいろいろな取組を、私見ですが、資料として後ろに置いておりますので、時間のあるときに見ていただければと思っております。
以上になります。どうもありがとうございました。
【安浦主査】 小林先生、どうもありがとうございました。ちょうど「富岳」を開発するときの話にまで戻っていただいて、今後も展望していただくということで、非常に参考になりました。

次に、資料3(大学の目指す情報基盤の現状とあり方)に基づいて田浦委員より以下の通り説明がなされた。

【田浦委員】 ありがとうございます。
大学で重要な情報基盤というのは非常にいろいろあって、高性能計算機から、いわゆる図書館的なシステムからネットワークから、オンライン授業で特に重要になった教育用のICTからセキュリティー、これからはデータ基盤ですとか、本当にいろいろあるんですけど、どれも必要な技術や知識というのは多様化、高度化して、かつ基盤は大規模化して、信頼度への要求というのも非常に増加して、継続性というのも仮定されるようになってきて、学内では、もう専門的な情報の部局でしかなかなか整備できないという状況になっていますし、全国を見ても、やはり各大学がばらばらにやっていて、ほとんどもう追いつかないと、全国共通化していくというのが鉄則の方向性になっています。
そうなんですけれども、この部会の主な議題としては、今既に全国的に使われている高性能計算機、あるいは今後近い将来なるであろうと思われるデータ基盤というあたりだと思いますので、まずはその辺りを今日の話のテーマにさせていただきました。
まず1つ目は高性能計算機ということで、特にHPCIとの関わり、そして共同利用・共同研究拠点と情報基盤センター群、その辺の関係についてお知らせしたいと思います。あとは、情報基盤センター群とNIIと産総研で始めていますデータ基盤というものの御紹介、それらを踏まえて、HPCIの在り方に関する私見的なことですとか、一般的な、大学が中心となって取り組むような情報基盤の高度化に関する私見を述べさせていただきます。
最初にHPCIですけれども、次世代計算基盤イコールHPCIということでは決してないと思いますが、少なくとも、皆さん御存じのとおり、HPCI計画というのが我が国の計算基盤、特に高性能計算基盤ということに関して言うと非常に大きな部分を占めていて、それはフラッグシップがあるからですけれども、ですので、そこに関わっている大学がどういうふうに関わっているのかということを整理しないと、なかなか次を考えようといったときにも具体的な問題点が見えないのではないかと思いますので、そこをまずお知らせしたいと思います。
御存じと思いますけれども、HPCIの立てつけというのはこういうふうになっていまして、一番上にフラッグシップシステムというのがあって、その下にフラッグシップを支える特徴ある複数のシステム、大学とか基盤センターだけではないですけれども、附置研、共同利用機関のシステムがそれらを構成して、HPCI全体が国全体のインフラだという、そういう立てつけになっているわけです。それでフラッグシップ以外の部分を第2階層と呼んでいます。
こちらは常行先生にまとめていただいたHPCIコンソから出た報告書で、今後のHPCIシステムの構築とその利用に関する基本的な考え方ということで、こんな1パラグラフが書かれております。これは私も参加しておりますので、その中でも議論させていただいたことですが、各情報基盤センターなどが、より主体的・積極的に参加できる体制を構築していくことが求められると、かつHPCIに参画することのメリットをより明確に享受できるような推進体制、これが何を意味しているのかということを少しお話しさせていただければと思います。特に、この文言は、そのまま解釈すると、今積極的に、主体的に参画していないじゃないかというふうに思われてしまうかもしれないので、どういうことなのかということを少し御説明させていただければと思います。
HPCIの仕組みと関係していまして、第2階層というのは、平たく言うとHPCIというものとは無関係に、もともと大学が整備している計算機をHPCIの共同利用という形で、資源として提供している。第2階層とHPCIの関わりというのは、基本的にはそういう関わりなのですね。フラッグシップのほうは、国のほうから開発の費用がどんと出るわけですけれども、それ以外のマシンに関しては、基本的には利用負担金、要するにユーザが使った分の費用を、普通だったらユーザにいただくものを、HPCIの共同研究という仕組みで来ていると、そういうことなんです。なので、HPCIが全国の計算基盤を整備していると言うんですけれども、実際に整備しているのはフラッグシップだけ、平たく言えばそういう立てつけになっている。
そうはいってもそれなりに、存在意義はあると思っていまして、こういう感じで第2階層と、これは「京」です、フラッグシップ。これは倍精度ピークFLOPSですから、要は計算機の容量をざっと表していると思っていただければいいのですけれども、この辺が大体基盤センター群で、この黄色いところが第2階層を全て合わせたものです。ここが「京」になっていまして、スタート当初というのはもう全部の第2階層を合わせても、「京」がそのさらに何倍というものなのですが、時間がたつにつれて、こういうことになっていっているということです。ちなみに、「富岳」がこのたび稼働しましたので、「富岳」を合わせると、今こういうことになっていて、ほかの第2階層を合わせて束になっても、「富岳」はそれの4倍近く。「京」発足当初は大体2.5倍で、こういうことになっています。「富岳」の時代に、「京」の時代と同じような、こんな感じのことが起こるかどうか、それはちょっと分からないですけれども、大体似たようなスタートになっているということです。
もう一つ、大学のほうは、先ほど、計算機を提供して、その利用料というような形の関係だというふうに申し上げましたが、もちろんそれだけではなくて、多くの人が連携、HPCIがオール・ジャパン体制と称するための、連携のための人的貢献を非常にたくさんやっているんです。連携サービス委員会という、一番上の運営のほうの委員会から、実際の、もう少し実務に近い、システムに近いところの運営作業部会、そういう中で共用ストレージですとか認証基盤ですとか、HPCIの多数の資源をうまくつなぐためのシステムの人的貢献というのを非常に第2階層の人々が多く行って、それが全体的な立てつけになっていると。
何を本当の使命だと思ってやっているかといいますと、単に計算機を提供するというだけではもちろんありません。その利用のされ方、それを通じた研究、教育、社会への貢献という、そっちをもちろん大事だと思ってやっていて、基盤センター群はHPCIができる以前から共同利用・共同研究拠点ということでそういうものをやってきたという、実はそういう歴史があります。これは1枚だけ紹介していますが、ほぼほぼHPCIの第2階層の基盤センター群です。細かく言うと筑波大学だけが違うんですけれども、8大学が一緒になってネットワーク型拠点というのを提供していまして、基本的には研究課題を募集して、それに計算機のリソースを割り当ててというところまでは一緒なんです。さらに、これは共同研究が目的ですので、多くの課題は基盤センターのほうと共同研究をしてもらうという立てつけになっていて、学際的な貢献とかコミュニティー創成みたいなことをこっちでやっている。だからその辺のJHPCNとHPCIとの事業の、計算機を提供しているという部分は共通していて、なおかつ共同利用・共同研究拠点が、本来の目的に沿ったことを基盤センターが自ら立案してやっていて、なおかつ、何て言うんでしょう、人的貢献はするけれども、あまりリソースはないという、HPCIとちょっと違うというのが、このJHPCNとHPCIの関係になっています。
次の話が、データ基盤のmdxという話を簡単にさせていただきますが、これは端的に言うと、こういうデータ科学、データ駆動科学、データ活用というものの目的のために特別に新しく設計された基盤です。2018年度頃からNIIと東大で構想を開始して、このときは予算措置もされていなかったのですが、予算措置直後からJHPCN全大学へ協力要請して、現在こういう9大学プラスNII、産総研ということで共同で進めて、2020年度末に稼働するという、そういうシステムになっています。
特徴は、一種の、一つの高性能計算基盤ではあるんですけれども、データ活用、データ科学、アプリケーションのために、仮想化された環境になっています。そのため、割と新しい試みでありまして、仮想化基盤とか仮想ネットワークなど、これまでのスパコンにない要素のつくり込みが非常に不可欠でした。規模としてはそこまで大きくないんですが、技術としてはいろいろ新しい試みがされていて、今後こういうものが基盤センターとしても提供する基盤の中心的なものになっていく、あるいは中心というか、いわゆるスパコンと肩を並べる存在になっていくというふうに考えています。
簡単に、どんな感じのところが違うかと申しますと、一つ一つのプロジェクトに仮想プラットフォームという、閉じたネットワークとストレージと計算機のセットです。いわゆる仮想化された基盤というものをつくることができて、なおかつSINETのVPNをモバイルネットワークまで伸ばして、フィールドのIoTデバイスと閉じたネットワークをつくって、それぞれ安全に隔離された環境をつくることができるというのが非常に特徴になります。計算基盤そのものはそこまで大きくないんですが、産総研のABCIとか、情報基盤センターの今後入るスパコンとうまく連携して、この辺もカバーしようというふうになっています。
ちょっと時間がないので、ここはもう先ほどしゃべったので省略します。セキュリティーのこととかが非常に重要になるために、こういうデザイン、仮想プラットフォームというデザインが必要になってくるということです。
ハイレベルゴールとしましては、やはり、これまでHPCとスパコンと計算科学のシミュレーションという、これを一つの黄金公式としてやってきたんですけれども、そこから脱却して分野を拡大すると。もちろんその高性能計算基盤、いろいろな分野から切望されているわけですけれども、少し毛色の違うプラットフォームですとか、あとは、それよりも何よりも情報学のエキスパティーズとの連携を切望しているのは、これまでスパコンを利用されているような分野の人だけではないということで、そちらのほうに広げていくための一つのスタートだというふうに思っています。そのためには、とても1つのセンターで取り組めるような話ではありませんので、基盤センター群とNII、産総研の知恵やノウハウを結集していくことが必要というふうに思っています。mdxはそのための一番最初の具体的な、フィジカルな基盤というふうに思います。
そのことを踏まえまして、最後に私見を幾つか述べさせていただきます。
まず1つ目は、基盤を何のためにつくるかというと、それは情報学の専門家と様々な分野研究者の学際的な研究が行えるハブとしての役割というのが大事で、もちろんHPCIもそういうつもりでやっているとは思いますが、なるべく情報系の専門家と分野研究者が直接つながるような、そのコミュニケーションが活発に行われるような立てつけにする必要があると思います。あと、今後は情報分野のほうも、これまでのスパコンとHPCを中心とした人たちの分野だけではなくて、いわゆるデータ処理、AIというふうに広げていく必要がありますし、使う側のユーザのほうも、いわゆる計算科学中心から、データ駆動科学、データ科学というところに広げていく必要があります。両側で分野の拡大が必要だと思っています。
そういう新しいことをやるためにいろいろ知恵を絞って連携をしているつもりですけれども、HPCIがそういうための機会やリソースにうまいことなっているかというのは、なかなか疑問なところがありまして、小林先生が途中でおっしゃっていただいたような、いろいろな基礎的研究をするための機会にするとか、そういう立てつけをきちんと考えていく必要があるのではないかというふうに思っています。
2つ目は、フラッグシップのような、本当にチャレンジングなものをつくる、基盤を新たに開発するという、日本の技術力の維持とかいうことも含めてするならば、その興奮を多くの人に分かち合えるような、そういう仕組みが必要だというふうに思っています。現在の仕組みというのは、基本的にお膳立てをいろいろな人がやって、お膳立てはオール・ジャパンでやるのですが、プロジェクトが実際スタートした後はとてもオール・ジャパンとは言えないと、そういうスタイルでこれまでやってきていると。フィージビリティースタディとか、今もホワイトペーパーで執筆されていますけれども、そういうところは非常にたくさんの人を巻き込んでお膳立てするんですけど、実際のスタートがどうなのかというところをきちんと見ていく必要があると思います。純粋にフィージビリティースタディをきちんとアプリシエート、フィーチャーすればいいというわけでは多分ないと、それはハードウエアとかソフトの研究者が、フィージビリティースタディだけやって、それで貢献だと認められて、それが本当に貢献することかと言われると、そうじゃないと思うんですね。なので、実際にプロジェクトスタート後もきちんと関われるという立てつけにする必要がある。ただし、それは開発期間に次から次へとそういう人たちが移籍すればいいというものではなくて、プロジェクト自身をもっとオープンにして、組織を超えた貢献ができて、貢献をした個人がきちんと認知されて報われるという、そういう立てつけにする必要があるのではないかと思います。
3つ目は、少しmdxの話とも関係するのですが、いろいろな基盤を実際に、これまでと違うものをつくっていこうというふうに考えたときに、やはりフラッグシップだけでなくて、新規技術の共同開発みたいな、共同開発というのは、要するに企業との共同開発です。実際につくるベンダーとの共同開発が必要な場面というのが今後増えていくのではないかと思います。mdxはフラッグシップと比べると全然かわいいものですけれども、でもやはり、本当の一発の、これまでの総合評価入札で入れることができたシステムかと言われると違うと思います。第一交渉権者決定後に、相当密な議論を行って詳細を決定します。そういうことをやれる機会というのを今後増やしていく必要があるのではないかと思います。ちなみに制度上の足かせは、いわゆる総合評価入札では既製品しか提案できないと、そういう入札方式で、やはり交渉権者を決めてから、その後の正式な仕様決定までのいろいろな密なやり取りができるように、そういう調達の仕方というのが必要というふうに思っております。
ありがとうございました。私の発表は以上です。
【安浦主査】 田浦先生、どうもありがとうございました。いろいろな運用をされている中からの問題点等を御指摘いただきました。

資料4(次世代の情報基盤における計算基盤(とくにフラッグシップ計算機)の役割~ユーザの立場から~)に基づいて常行委員より、以下の通り説明がなされた。

【常行委員】 今回こういう時間をいただきましてありがとうございます。東京大学の常行と申します。私の話は、次世代の情報基盤における計算基盤の役割についてですが、これをユーザの立場からお話してみたいと思います。
私としましては、先ほど田浦先生からお話ありましたHPCIの、特に情報基盤センター群とか、あるいは、そこには出てきませんでしたが、共同利用機関、附置研等です。そちらにあるような第2階層の計算機器が非常に重要だと思っておりますが、ここでは、時間の関係もありますので、主にフラッグシップ計算機関連の話をさせていただきたいと思います。
私の立場でございますが、どうしてこういったお話をさせていただくかといいますと、これまで「京」コンピュータのHPCI戦略プログラムという、2016年に終了したものがございます。こちらでは私、分野2という、新物質・エネルギー創成というところで統括をしておりました。それから、その後のポスト「京」の重点課題、これは今年の3月に終了したもので、この重点課題の7番、これはデバイスとか材料の分野ですが、ここでも課題代表者をしておりました。こういうわけでユーザの立場で、このフラッグシップ計算機の開発に関係しておりました。もう1点は、HPCIコンソーシアムという組織の中で、理事あるいは副理事長としてこちらに関わってまいりました。そういう立場で今日は話をしたいと思います。
それでは、次のページお願いいたします。まず最初に、今最後にお話ししましたHPCIコンソーシアムの提言について簡単に御紹介したいのですが、これは先ほど田浦先生の話の中でも登場しました。これは今年の6月15日にコンソーシアムから、村田善則前研究振興局長に手交が行われた提言書でございまして、かなり長いものになっています。これは非常に多岐にわたって、スーパーコンピュータの計算基盤に関する、HPCIに関する提言がまとめられておりますが、その中にフラッグシップ計算機に関して書かれているところが、あちらこちらに散らばりながらたくさんございます。それを今ここで、3つの観点にまとめ直してきました。
フラッグシップ計算機というのは、まず1点目は、重要な研究基盤である、その確認でございます。これはユーザから見たときに非常に重要な研究基盤であると。画期的な成果を創出するという観点では、集約的に開発・整備して、大きなものを入れてほしいということが記載されています。2点目は、こういう最先端の新しいマシンというのは、なかなか調達が難しい。海外から買ってくるということができない、日本でもなかなか開発が難しいということで、国としてこの開発を進めていただきたい。それから、アプリケーションとの協調開発が、これはもう新しいマシンではマストであると。いわゆるコデザインでございますが、その観点でも独自開発が必要であるということが書かれています。3点目は、開発した技術や商用機の普及、それから、これまでほかのマシン、商用で開発されてきた商用アプリケーションをこのフラッグシップマシンに移植できるといいますか、移植性も十分配慮して開発を進めるべきであるということが書かれています。私はこの取りまとめに関わってきたのですが、この中で、今日は1点目、重要な研究基盤であるという点と、それから普及に関するところ、3点目、この2つについてこの後、もう詳しく踏み込んでお話ししたいと思います。
次のページをお願いします。まず、私がユーザとしてどういうふうにこのフラッグシップ計算機を使うか、その分野の話を1枚でお話しさせていただきます。私の研究分野というのは、広く言えば物性物理学の理論研究ですが、電子論に基づく材料・デバイス研究でございます。何をやっているかというと、このページの左側で、原子とか電子の基礎方程式から出発して物質の性質をシミュレーションで予測する、あるいは理解するという研究でございまして、電子状態の方程式、それから原子の運動方程式を解いて物質を理解していく、こういうことをやっています。この電子状態の方程式から出発して物質の性質を予測するという、これは基本的には実験データを使わない、第一原理だけに基づいたシミュレーションということで、第一原理計算というふうによく呼ばれます。これを使いますと、実際に人間が手にしたことのない新しい材料でありますとか、実験が困難な極限状態、そういう状態の予測ができる、理論的な予測が可能だと、そういう方法になっています。ただ、電子状態の方程式を解いて扱える電子数というのは、例えば我々がふだん使っている計算機ですと100電子のオーダーです。非常に小さい規模のもので、それから原子の運動方程式で扱えるものは、これは数万とか、多くても100万とか、そういった原子数ですので、なかなか本当の材料の研究に直結するというのは難しい場合がございます。このページの右側にありますのは、「京」あるいは「富岳」によって何が変わってきたかというと、1つは、右のX軸、サイズ、系のサイズです。電子数、原子数といったサイズが、非常に大きなものが扱えるようになって、材料に近づいた。それから、時間と書きましたのは、これは物理的な時間、シミュレーション時間ではなくて、シミュレーションする物理的な時間でございます。これが現実の時間に近づいていったという、この点が非常に大きいと。もう一つは縦軸で、精度の問題として、これまでよりもずっと精度の高いシミュレーションが可能になってきた。いろいろ計算方法をこういうのは使わざるを得ませんが、その計算を、もっと精度のいいものを使える能力というのが重要な点でございます。
次のページをお願いします。これが私の研究分野でございますが、研究基盤としてどういうふうにフラッグシップ計算機が重要であるか、どんなふうに使われているか、これは非常にたくさんの使われ方をしておりますので、非常に簡単にまとめて、3点挙げたいと思います。やっていることは最先端の計算基盤が新しいシミュレーション技術開発を牽引してきたと、そういう例でございまして、まず1つ目、例の1というのが、これは半導体ナノ構造デバイスの世界最高速の第一原理計算が実現された。これは「京」コンピュータでゴードン・ベル賞を取った有名な例で、当時東京大学、今は名古屋大学にいらっしゃいます押山先生のグループでやられた仕事です。今まで我々の第一原理計算というのは100原子とか、せいぜい1000原子、頑張ってそこまでいかないかなという計算でしたが、今、「京」コンピュータ、あるいは「富岳」を使いますと、1万原子以上の計算というのがルーチンでできる時代になっています。これが1です。これができますと、実際、ナノ構造を持ったデバイスです。左側にデバイスの模式図が出ていますが、この模式図に出ているデバイスのサイズと、実際計算できる系のサイズが本当にコンパラになっている、これが大事な点。
例の2というのは、励起状態の計算なのですが、レーザーパルスを物質に当てて、それで原子基底を励起します。これはパルスによって物質が励起されたことで、物質の性質が変わる、あるいは加工が起きる。レーザーアブレーションという現象がございまして、物が溶けるというような現象がございますが、このシミュレーションが実際に、原子理論のシミュレーションと、それから古典的な、非常にマクロなスケールのものとを組み合わせたマルチスケールな手法によってできるようになった。これは筑波大学の矢花先生のグループの仕事で、このグループは、この新しい手法を開発して、スイスのチューリッヒ工科大学のグループと、完全に同じ、実験グループと連携しまして、実験と完全に同じものをシミュレーションでやると。この2つを比較することで現象を理解するということをやってございます。これはサイエンスの成果として入れています。
例の3というのは、これはもっと一般的にいろいろなことができるということを書きましたが、今まで我々が扱ってきたようなきれいな系、材料というよりは物質と言ったほうがいい、非常にきれいなものを扱うというのが我々が普段やっていることで、これはそのほうが分かりやすいという以外に、実際シミュレーションができなかったというのが本音のところでございます。大きな計算ができるようになりまして、粒界、これは結晶の間の乱れた層です。あるいは析出物、あるいは固体と液体の界面、多結晶体など、不均質で複雑な材料のシミュレーションが可能になってきたというのが非常に大きい点で、例えば高性能磁石として知られるネオジム磁石の粒界相、これがないとネオジム磁石というのは機能しません。こういう計算ができ始めたり、あるいは鉄の凝固といった構造材料のシミュレーションが進んだり、あるいは右端は二次電池、リチウムイオン電池の電極表面で起こる現象、こういうものの理解が進んだり、こういうことがシミュレーションで進んでまいりました。
このようにフラッグシップ計算機ができることで、これを研究基盤として使うことで、どんどん新しい材料、デバイスの研究が切り開かれているというのが現状です。
次のページをお願いします。もう一つ、今度は、さらに「富岳」になりまして何が起こるかという点ですが、「京」コンピュータというのは、単一のシミュレーションで巨大なものをやる、ここが非常に重視されて、いわゆるキャパシティコンピューティングというのはあまり、使い方としては認められてこなかったというところがございました。「富岳」になりまして、そのキャパシティコンピューティングの重要性というのが、これは我々ずっと長くそれをぜひやりたいとことを主張していたんですが、その点にも目を向けていただきました。それによって、今までのサイズ、時間、それから精度という軸のほかに、パラメータとか統計的なアンサンブルとか、こちらの計算を大手を振ってできるようになったというのが「富岳」の時代でございます。これができるようになると何ができるか、我々の分野で言うと、左側の計算のところで、温度とか圧力、それから初期構造、初速度といった物理パラメータを変化させて並列計算ができる、これは物質という材料の特性を計算する上では非常に重要なポイントです。もう一つ、様々な化学組成、構造モデルのコンビナトリアル計算ができるようになる。これは新しい材料を開発しようと思ったら不可欠な要素でございます。こういう計算とデータ科学的手法とを組み合わせ、さらに実験データ、実験との間でフィードバックのやり取りをすることで、新しい機能性材料の開発につながるというふうに我々は思っています。例えば、最近の言葉で言いますとマテリアル・デジタルトランスフォーメーションでありますとか、あるいはCPS、サイバーフィジカルシステム、こういうものがつながるような計算がこれからできてくるというふうに考えています。これが研究基盤としての重要性の2点目です。
次のページをお願いします。もう一つ今日お話ししたいのは、技術の普及・展開の重要性です。まず1つ目の点、フラッグシップ計算機というのは、我々は新しいシミュレーション手法開発の起爆剤だというふうに考えています。フラッグシップ計算機がなければやってみようとすら思わなかったような新しい計算手法というのがどんどん使われるようになってきています。我々の分野の物質、材料の計算というのは、非常にたくさんの材料研究のニーズがございます。これは基礎研究にもございますし、産業界にもございます。その目的に応じていろいろなプログラムがございまして、計算規模の違うプログラムがございます。それから、計算対象によって計算規模も大きく変わってまいります。そういった目的に応じて、実はフラッグシップ計算機で新しい手法が開発されたとしても、そこだけで使うのではなく、実は各階層、第2階層以下でも、その計算機資源を使ってできることがたくさんあることが分かってきています。そういうところがどんどん利用できるという環境をつくることが非常に重要です。また、フラッグシップ計算機だけでしかできないような新しい手法でありましても、下の右の図です。TOP500で、数年たつと、それは下の階層のマシンでも利用できるということが想定できますので、そういうところを考えましても、我々が開発して、起爆剤としてフラッグシップ計算機で開発した手法というのは、時間がたちますとどんどん下の階層に下りていって、ほかのマシンで使えるようになる、これは我々の理想とするところです。
次のページをお願いします。普及、開発という意味で、ハードウエアの普及・開発というのもございますが、非常に重要な点はアプリの普及でございまして、この点で1つ、御参考までに私たちの活動を御紹介しておきたいのですが、これは物質科学のアプリケーションソフトウエアのポータルサイトで、MateriAppsというサイトです。このサイトは、戦略プログラムが動いたときに我々の中で議論してつくったサイトでございまして、目的としましては、せっかく開発している国プロアプリを皆さんに使っていただく、これが1点。それから、その際にユーザからのフィードバックをいただきたい。もう1点は、開発者の見える化をして、それをちゃんと、こんなものが日本でできていることを皆さんに評価いただいて、それを開発者のキャリアパスに生かしたいという観点で、このサイトをつくりました。現在278種類のアプリが公開されていて、月間ページビューは2万6,000ぐらい、ユニークユーザでも9,000ぐらい、これも月間ですが、それぐらいのかなり大きなサイトに育っております。幸いにして、これは海外へアプリも紹介してまいりまして、それもありまして海外ユーザからも使われ始めていて、今ユーザの20%ぐらいが海外からのアクセスです。こういうアプリもそうですが、ハードウエアも含めて、普及、それをどうやって展開していくかというのは非常に重要なポイントであるというふうに考えています。
次のページをお願いします。最後、まとめのページですが、ここでもう一度、今日お話ししたことを、今後期待するという観点でまとめ直してみたいと思います。
計算基盤に私たちが期待するものとして、まず1番は性能です。これはアプリ開発意欲に火をつけるような高い性能を持つ、これは誰しも、研究者もあるかと思います。そのためにアプリと基本ソフトとハードウエアの同時開発、コデザインというものが必要だと思いますし、それができてこそ初めてスタートダッシュができるというふうに考えています。
2点目、使いやすさの観点で、これは我々としては、できるだけ汎用性が高いハードウエアが使いたいし、可搬性の高い数値計算ライブラリが使える環境にしていただきたいし、それから、既存の計算機でこれまで開発してきたアプリが割と簡単に移植できるようなものにしていただきたい。これが計算基盤に対する期待です。こういうことが満たされますと、フラッグシップ計算機だけで研究をするのではなくて、目的に応じて下の階層、あらゆる計算機を使って研究が進められる。であれば、フラッグシップ計算機で新しいアプリを開発する意欲というものにもつながるというふうに考えています。
3点目は普及・展開の問題ですが、これはハードウエアの普及・展開というのも非常に大事だと考えていて、さらにアプリまで含めたトータルケアというのが、開発だけではなくて、普及に関するトータルケアというのも必要になろうというふうに思います。例えば、ハードウエアを開発したら、それに相当する安価な商用マシンができて、普及して使えるようになってほしいというふうに思います。それから、最後の点、こういうハードウエアを開発するとしたら、これはペイする産業としてきちんと育ってほしい。持続的に開発が続けられるような、そういう国家戦略が今後必要になってくるのではないかというのを非常に強く、私個人的には思っている点でございます。
ちょっと雑駁なお話でございましたが、私からの話は以上でございます。
【安浦主査】 常行先生、どうもありがとうございました。物性科学や材料開発の分野の具体的な例で、これまでの「京」、あるいは今後「富岳」で何が新しくできるようになるかというのを非常に分かりやすく御説明いただきました。どうもありがとうございました。
何か御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは続きまして、NIIの喜連川先生に、より大きな視点から、学術情報基盤全体の中での計算基盤の在り方についてお話をいただきたいと思います。喜連川先生、よろしくお願いします。

資料5(情報基盤全体からの視点)に基づいて喜連川委員より以下の通り説明がなされた。

【喜連川委員】 情報基盤全体から見てどう考えるかという宿題を、大変難しい宿題を安浦先生から頂戴いたしまして、しかし定年を迎える教官ぐらいでないと、こういうややこしい問題を若い人に押しつけるのはかわいそうという気持ちは理解できますので、ちょっと話をさせていただきたいと思います。
ちなみに私は、結構スパコンへの思いは強くて、頑張ってきまして、例えば蓮舫議員が2番でいいのではと言ったときに、情報処理学会、当時私は副会長でしたが、学会として、いやいや、そんなものじゃないんだというようなことを申し上げました。このとき学会の理事の中でスパコンを開発している人なんていうのは本当にゼロに近い中で、こういうものを学会として提言するのは極めてしんどくて、なかなか大変な時代だったというのが懐かしく感じられます。
それ以来、実は「京」のとき、私は科学官になりたてでしたけれども、先ほどISVの話が出ましたけれども、ソフトウエアベンダーが移植できないんですね。あれは国家基幹技術でしたので、できるまでアーキテクチャは明らかにしないというポリシーでして、そういうコンプライアンスが文科省の委員会の中で出ておりました。私も手を挙げて、ユーザのソフトを見ないでハードをつくるなんていうことは考えられないというようなことを申し上げましたけれども、そのときはそれ以上動きませんで、「富岳」になるときに関しては、もう常に、可能な限りオープンすべきだというのを何度も何度も言ったのを覚えています。しかし、当時はやはり1番になるということが全てでして、SINETにつなげるところのハードウエアなんかを入れると、性能が、その分予算が減るから1番にならないんだということが委員会の中で発言されて、ちょっと開いた口がふさがらなかったことを今でも覚えていますが、このようにいろいろなところで応援をしてきたつもりです。
老兵ですので、雑駁な議論になるかと思いますけれども、お許しいただければと存じますが、コロナの時代というのは、我々に非常にいい、何というか、思考の原点復帰を与えた、極めて重要なチャンスではないかなと思います。そういう意味で、このコンピュータというのを大局的に見ますと、もうこれは皆さんには釈迦に説法ですけれども、CPUとメモリとネットワーク、ざっくり言うと、この3つのコンポーネントしかないわけです。CPUはスパコンになり、メモリはデータになる、ネットワークはネットワーク、ここにこういう時代観が書いてあるということでございます。
スパコンは、安浦先生も私も学生の頃から、76年にCRAY-1ですので、みんなもう羨望の的というか、憧れの的だったんです。コンピュテーショナルサイエンスが世界を変えていくだろうというようなことを、みんなそれに向かっていたのが懐かしく感じます。ネットワークはどうかというと、84年のTCP/IPのUNIXバンドリングというのが決まって、これから世界が、コンピュータがうわーっと全部くっつくという時代になった。データは、データとプログラムというのは一致であるという考え方ももちろんあるんですけれども、最近のデータ駆動科学というのは極めて新しい流れになっておりまして、2009年のいわゆるフォース・パラダイム、つまりコンピュテーショナルサイエンス、スパコンの科学の次がデータだという言い方を、ジム・グレイが提唱したということもございますが、これは結局、先ほどの常行先生の支配方程式、第一原理が適用できない世界というのがどんどん増えて、地球丸ごと、あるいは人体丸ごと、今回のコロナでもそうだと思いますが、そういうものに対するニーズがというか、そういうものに人間が挑戦しなければいけない時代になったということで、前回、前々回でしょうか、NIIのデータプラットフォームのお話、サービスを今後していくというのは、そういうニーズに応えるものなわけです。
この3つのコンポーネントが、この新しいデータの時代にどう対処すべきかというと、ネットワークというのは、これはもう相互に接続するものですから、あまり特徴の出しようがないんですね。しかしながら、注目株であるデータというものにスパコンがどう融合していくのか、これは先ほど田浦先生もお話しされたと思いますけれども、こういう視点というのが著しく大切になってきているというのが現状ではないかなと。
さらにもっと広く見ますと、IT全般を見ると、いわゆるグローバルなプラットフォーマーというのが、これは後ほど述べますが、ほぼ全てを決するようになってきた。彼らは一体何でここまで強くなったんだということを考えてみますと、ITの基盤層というものはスケールを著しく大きくすることによって、めちゃくちゃコストを低くするというところを狙ってきた、これが大きな、グーグルやフェイスブックやアマゾンというものがやっている、単純に言うとそういうことになる。付加価値はどこで上げているかというと、こういうレイヤーではなくて、アッパーレイヤーでユーザに対するいろいろな至便を与えているというのが大きなポイントで、このシステムはかなり同質性であるというようなところがあるということです。
こういう世の中の動きを頭の中に入れて、今のスパコンの資源というものをどんなふうに我々は見るんでしょうかということがポイントになる。今、「京」のときと「富岳」のときと、なかなか変わらないにしても、大体1,200億というような予算でフラッグシップをつくるということをやっているわけですが、一体そもそも計算資源はどれだけ要るのかという、そこまで立ち戻った。コロナの時代ですから、そういうことを一体今まで議論したのかなというのが、やや心もとなく感じています。スパコンは要るんですかというと、こんなものは要るに決まっているわけで、絶対必要で、今回の「富岳」だって頑張っておられるのは、これはもう要るからやっているわけです。ポイントは、要るか要らないかの1ビットではなくて、ゼロイチではなくて、どの程度の計算資源が必要なんですかということだと思います。これは常行先生のお話のような、計算ができるということよりも、計算ができることによって一体どんな価値が出てくるんだということで、そういう議論というものをユーザ自身がなされて、それを情報系が受け止めるというプロセスにするのが王道かもしれない。それは一番典型的な、ウエル・プリペアされている場所が、今ちょっと時めいておりますけれども、日本学術会議のマスタープランではないかなという気もします。そんな中での議論を経ますと、例えば今の計算資源量では全然足らないという結論だって十分にあり得るのではないかなと個人的には感じる次第です。
2番目は、どんな計算資源をつくるんですかというのは、これは先ほど小林先生がおっしゃられましたようなヘテロ、ここでのヘテロというのは、ちょっと誤解があるといけないんですが、先ほどの均質性というのは、現行のリソースが均質を狙い、しかし未来を向けるとヘテロであるということで、ここを小林先生は強く訴えられたと理解しておりますし、それをいかにバランスよくつくっていくか、それが国家戦略になるだろうということです。
第3番目は、一体これをどんなふうにつくっていくんですかということで、これも田浦先生の最後のスライドに書かれておりましたけれども、既製品しかという、ここはこういうことをなさっておられる先生でないと、なかなか感じられることが難しいかもしれませんが、やはり調達が肝です。田浦先生のコンソと喜連川のコンソリとは、「リ」がついているかどうかだけで、結構紛らわしいのですが、IT屋さんであれば、このコンソリという言葉はみんなお分かりいただけるわけですが、日本には3つもITベンダーがあって、これは本当にこんなたくさん要るんですかというようなことを大学の先生はいつもよく、以前議論していたわけです。しかしながら、よくよく見ると大学も同じで、そもそもスパコンをばらばらに大きな大学が持っているようなことも起こっている。いろいろな機関がいろいろなスパコンを所有しているんですけれども、明らかにスパコンベンダーは、もうほんのちょっとしかないわけです。つまり、スパコンの種類というのは、昔はたくさんありました。ですけれども、今は調達機関のほうが圧倒的に多くて、種類のほうが圧倒的に少ない。ですから、もうちょっと考え方をリセットすることも必要、つまり調達力を大きくして、よりリッチなものを選ぶ、これまさにSINETがやっているようなことでもありますし、文部科学省の中ですと、あるいはグローバルに見ますと、ジャーナル問題というのは、結局これをやろうとしていることです。これによって大幅に節約できる、逆に言うと、一定の値段で計算資源をより大きくつくることができると。常行先生はフラッグシップが必要と、そのフラッグシップも含めて全部の計算力というものをやはりどこかで考えておられるんじゃないかと思うんですけれども、ここを圧倒的に大きく、通常より大きくしているのがいわゆるプラットフォームプレーヤーです。
こんなことできるのかといいますと、実は東京大学と筑波大学が一緒になって1つのマシンを導入している。これは、自分のところに計算機がなくなっちゃったように見えなくもないところで、違和感がおありになるようなこともあるかもしれないですが、田浦先生にお伺いしますと、それによって得るものは圧倒的に大きいというふうにお伺いしますし、mdxというのも、これは随分、私が文部科学省に願い申し上げまして、調達は東大がやりますと、しかしながら、それは全部、7帝大の中で均等割をするというようなことで、調達と利用というものは完全にデカップリングする時代になってきている。なぜこれをこういうふうに言いますかというと、長い目で見ると、完全に、いわゆるコンソリスパコンの時代に入ってくることは、もう目に見えているんじゃないかなと、ほうっておきますと、いわゆる民間のプラットフォーマーのクラウドでHPCのセクションというのがもうございますので、そこのサービスにオーバーウェルムされることは、ここはいいのかなというのを心配している次第です。そういうものが起こる前に自分たちの体力をうんと上げておく必要があるのではないか、そしてまた自国に計算パワーをしっかりと確保する、これがコロナの中で非常に重要であるということが分かったのではないかと思います。そして、いろいろなベンチマークはあるんですけど、多分一番重要になるのはグリーンプライオリティーだと思いまして、この辺は今後、日本がどう考えるかということです。
何のために調達力を上げて、何のために調達を省力化する、つまり7つもやるんじゃなくて、もっと数を減らすと。調達のオーバーヘッドは著しく高いですから、それを省力化すると。何のためにそれをやるんですかという原点に戻りますと、私は、これの1つのドライバーは、やはりデジタルトランスフォーメーションではないかなと思います。ポイントは、基盤センター数、情報基盤センター数の数は減らない、情報処理センター数の数も減らない、これは地域のサポートをするために必須です。基盤センター、情報処理センターの予算も減らない、人員も減らない、何も変わらない。変わるのはただ単に調達する物理マシン数だけが減って、これをクラウド化するというのが、これによって管理コストが減少し、調達の手間も大幅に減るということです。ただ例外もありまして、ビジュアルみたいなものはやはり一定程度ローカルに残す必要もありますので、誤解なきようお願いしたいと思います。この減った分で、実は教育のDX、研究のDX、事務のDXというようなことをやらなければいけないと思っておりまして、現状ではこんなことをする体力が残っていないんじゃないかと、勝手に心配している。ですが、そのデジタル化というのはもう十分できているんだと、そんなもの要らないんだという御意見がおありになりましたら、この論述は、論理は全て意味がなくなりますので、そこは御放念いただければいいと思います。ただ、もしデジタル化が必要で、これからやらなければいけないというと、喜連川の言っている方向というのは1つのやり方かもしれない。もっとほかの方法もあるかもしれませんので、これはまた御指摘いただければと存じます。
世の中にどれだけマシンがあるのだろうかというので、これは文部科学省さんの情報課にお伺いしまして、こんな資料を頂きまして、研究開発法人の名前ではなくて、この横にあるマシンがいかに同質であるかということを示す必要があるんですけれども、現時点ではあまり外部公表しないようになっているんだそうでして、このような資料になっているということです。私のパソコンがぼやけているわけではないということです。
さて、長期的展望において、現状のようにスパコンを本当にばらばらに、つまりここにあるのはほとんど同じスパコン、これを全部ばらばらに、本当に多機関が維持するんですかということです。何でクラウドにしているのかというと、計算リソースを維持管理できるようなパワーがないからコンソリデーションしている。それと同じような構図がもう既に、ここに厳然として見えているということを我々は直視するする必要があるのではないかと。こういう議論というのは、いまだかつて情報委員会でもしたことがないのではないのかなと思います。
さて、今度は「富岳」「京」に特化した論点で考えますと、このコストをどう見るかということです。先ほど小林先生からありましたように、結構高い、1,200億というと実際高いと思います。AIPのAIプログラムが40年分つくれると、CRESTならもっとたくさんつくれる、情報処理学会の研究会は40個ですから、1研究会で1年分というような、そんな感じになるわけです。そして、情報分野はいつも論文数が少なくて、弱いと言われていますので、問題、悲劇は、「富岳」というのが情報系のプロジェクトとみなされている。これによって、他の、いわゆる純粋な情報のプロジェクトが立ち上がりにくいということが、やや寂しいことかもしれないですが、また別の見方もできると思います。
この「富岳」というのは、国家を、国民を元気にするという意味では、かなり貢献をしているというのは事実でありまして、ある意味ではITのシンボルともみなせるということであります。最近は、COCOAもバグが2回出ていますし、東証もダウンしますし、これは事実4兆円と言われていますが、キャッシュレスに関してもいろいろなベンダーで不具合が出て、あまりITで元気なものって出てこないんです。そういう意味では、理研さんが頑張ってここまで、あるいは富士通が非常に頑張ってここまでできたということはいいことだと思います。それでも、これによって他の情報分野がやや予算が回らないように見える。これは勘違いかもしれませんけれども、そこら辺さえ解決すれば問題ないのではないかと。ただ、元気のもととして、先ほど常行先生のお話で、もうこれは必要ないのかもれしないですが、「京」でなければ得られなかった成果というのを整理しておく必要がある。8万個のCPUで、小さいプログラムをいっぱい流してうまいこといったというのではないようなものをきちんと整理しておくことは必要ではないかなと思っております。
これは繰り返しになりますが、何度も言い続けることが重要で、スパコンは情報分野のものと思われないようにする。つまり、ユーザサイドが本来は拠出するという構造が自然で、学術会議のマスタープランにこのスパコンを提案するのは、実はIT屋ではなくて、ユーザサイドが御提案になられるのも1つの方式ではないか、それによってエンドースメントが得られるといいのではないかなと、個人的に感じている次第です。
ただ、情報分野としてももっとしっかり考えなければいけないという自己反省もあると思います。この「富岳」というのは、我々にとって極めて大きい価値があって、800万個のプロセッサコアということをどんなふうに使うんですかというのを我々自身が考えなければいけない。しかもここにユーザが山のようについているわけで、常行先生のような立派なエンドユーザがついています。だとしたときに、このLISAというのが、こういうカンファレンスがあるんですけれども、非常に大きなシステムというものをどんなふうに運用、活用するのかという研究、日本人で一体だれがこれやっているのかというと、ほとんど見たことがないです。これはROIが悪いので、こんな研究をする人がいないわけです。これは橋爪参事官が第6期に向けて打ち込むというところで、情報系の評価システムが著しくゆがんでいるということをこの委員会でも取り上げていただいたと思いますけれども、この辺も根源的に直していかなければいけない。
それから、これは月並みになるかもしれませんが、やはり若手の先生方がもっともっと身近に使えるようにすることが一番重要だと。京都賞でアイバン・サザランド先生が日本に来られました。そのとき彼は何と言ったかといいますと、当時MITのリンカーンラボにあったTX-Oというバッチマシンです。そのバッチマシンを夜は誰も使わなかった、それを彼はリアルタイムで使ったんです。それによっていわゆるVRの基礎原理ができて、こんなふうにむちゃくちゃな実験を可能にするような環境を、若い世代、IT世代に提供する、そういうことというのはほとんど議論がこのスパコンの推進委員会でもなされてこなかったような気がして、これこそやるべきではないかなと思います。
ちょっと長くなりますが、スパコンは文科省だけでやるのかと。先日、名古屋大学の「不老」の発表を富士通でお伺いしまして、ArmのHPC実装が完全にスクラッチからなされた、これはすばらしいことで、だから「富岳」は日本の技術力を大きく向上させてようにも見えます。でも、これは文科省なのかなという気がします。これは商情局ではないのかなと、商情局は今、ちょっと経産省が何に力を入れているか、ちょっと違うところに移っているかもしれません。
最後にまとめますと、要するに小林委員会がおっしゃられたのは、1つのでかいスパコンは、やろうと思うとそこそこ、お金さえ出せればできる時代になった。一歩、二歩を考えると、もっと違ったゲームになっているんじゃないですかと、これはACMのチューリング賞50周年のパネルと同じだと。したがって、もっと大きい視点で最適化を考えることが必要になる。今、世の中で何が問題になっているかといいますと、人類の社会活動というものは、世の中が非常にITに浸潤されている、ITなしでは我々生きられなくなっている、そのITって何なんですかというと、これはアメリカのプライベートセクターなんですね。公的セクターではないので、社会の基盤の、道路や水道のようなものというのは国家が提供しているわけです。しかしながら、我々の一番重要な部分というのがプライベートセクターに、しかもその内容が極めて不透明です。こういう根源的な問題を我々はもっともっと深く考えて、そこに一体どう斬り込んでいくのかというような視点での議論も必要で、我々、今のゲーム、つまり速いコンピュータをつくるというようなゲームではないところに、もっともっと大きな知恵を絞っていかなければいけない。ここに書いてありますように、2つ目に、サムソンは世界で第2位のバイオ産業になっている。韓国は、とりわけスパコンを作ろうともしていないわけです。この辺、こういう視点も要るということです、決してこれが全てだということを申し上げているわけではありません。
とりわけ日本のCSは全然強くないじゃないかと、いつも言われるわけです。ですから、こういうスパコンの議論というのは、まず使う人がどれだけの価値を生み出すのかという議論から始めるべきであって、CS、情報学のこの委員会というのは、我々情報分野が一体どう強くなるんですかというような、まずそこから始める必要がある。私どもは今、古井先生にNIIにお越しいただいていますけれども、グローバルから見ると全然、何か無駄な努力ばかりしているんじゃないですかというようなことをおっしゃられまして、最後の言葉としたいと思います。
どうも御清聴ありがとうございました。
【安浦主査】 喜連川先生、非常に多面的かつ広い視点からの御議論を、私の無理なお願いに応えていただきましてどうもありがとうございました。
以上で本日の4名の先生方の御講演が終わりましたけど、まとめて質疑に移りたいと思います。小林先生のほうからはHPCシステムをつくる側からの視点で、小林先生の委員会の御報告と、先生の今の時点での御私見をいただきました。田浦先生のほうからは、学術情報基盤を実際に運用している、HPCIなんかもその1つだと思いますが、そういう組織の中で責任あるお立場でいろいろやっておられる中での、では次世代どうするかというお話をいただきました。それから常行先生には、非常にクリアカットに、先生の御専門の物性あるいは材料の分野でのHPCの意味づけというものをお話しいただきました。そして喜連川先生からは、より政策論や産業論まで含めて、世の中が非常に急激なスピードで、特にITは変わっておりますし、その中で今から5年後、10年後の世界を描くために、原点に戻って考えようというお話をいただけたというふうに思っております。
いろいろ御意見、御質問あると思いますので、それでは、まず伊藤公平先生からお願いします。

【伊藤委員】 ありがとうございました。全ての委員の皆様の講演がすばらしくて、小林先生のまとめに私は非常に共感しているところですけれども、特に最後の喜連川先生の渾身の資料、それから御意見には、重要なことが詰まり過ぎていて、どこをお話ししていいのかちょっと分からないぐらいですけれども、まず蓮舫議員の発言、2番でいいのかということに関して、私もそのとき情報科学技術委員会におりまして、ちょうど政権が替わったときに、今までどおりのやり方で普通にスパコンは続けられるのですかというふうに情報科学技術委員会で質問したとき、皆さん、大丈夫だと。さらに、当時のいわゆる事業仕分けに向かう課長に、もっと発表練習とか想定質問とか、我々と一緒に練習したほうがいいのではないかと言ったら、みんな笑って、そんな必要ありませんと言って、行ったらあれだったんですよ。ですから私からしてみると、発表練習とか想定質問していれば、あれはあの場で切り抜けたのではないかと、2番でいけないのかと言われても、いや、1番じゃなきゃいけないのですと、ちゃんと切り返さなかったのがあのとき問題だと私は思ったのですが、その後、皆様が、その2番でいいというのは、質問が悪いというふうにおっしゃったので、僕は、逆に質問したほうがかわいそうだなというふうに思ったぐらいで、でも結果的には予算がついたからよかったと思います。
でも、その後、今度また「京」やポスト「京」、「富岳」になるときに、行政レビューというのを河野行政改革担当大臣がおやりになって、そのとき、なぜか私はそちら側の委員として、有識者としてついたときに、文部科学省の説明が、「京」ができれば、これだけの企業の人たちが使えますということを随分強調されて、それが一番の問題点と結果的にはなったのですね。
学術のためにやると言ってくれれば分かりやすいのに、どうしてこんなにその役に立つというようなことを強調するのだというのが、その行政レビューのときの河野大臣をはじめとして、問題になったことで、そのために河野大臣室へ6回、松岡先生もお出ましされましたし、常行さんもお出ましされましたしと、もうたくさんの方がいらっしゃって、説明されて、それで最後、河野大臣が、ああ、そういうことだったら、これ、続けていいじゃないかと、科学的な価値が出てくるということでいいじゃないかということになったので、もうまさに喜連川先生のおっしゃったとおり、計算でできることを議論することが重要でした。
ユーザサイドとして、私もそのとき一生懸命強調したのは、もしかしたら、この計算機の予言によってノーベル賞が取れる時代が来るのではないかと、それぐらいこれは科学技術にとっては大事なことだということを随分強調していたので、計算を使う側の人たちが、どうしてこれが必要なのか。そして、喜連川先生がおっしゃったみたいに、それをクラウドで、ある形で学術界が使いやすいように、先端のものを固めることによって、少なくとも日本にクラウドベースのスパコンの、また小林先生がおっしゃったみたいに、そこに量子コンピュータも入ってくるかもしません。違うものも入ってくるかもしれません。そういうものが全部集中的に管理されるセンターをつくることによって、人材も育つでしょうし、技術も日本で保たれるというのは、私はすばらしいアイデアだと思います。
ほかにもたくさんありますが、やはり学術のためのということになると、「京」でなければできなかったこと、これは喜連川先生もおっしゃいました、常行先生の言葉を聞いて。今度新しいスパコン、または情報網、計算資源ができることによって何ができる、それを目指して、この次世代計算基盤検討部会は何を目標にしてここでみんなで話し合っているかということを、もう一度立ち返る宿題を喜連川先生は下さったのではないかと私は思いました。
以上です。長くて申し訳ございません。
【安浦主査】 伊藤先生、どうもありがとうございます。喜連川先生、何か御発言ございますか。
【喜連川委員】 いえ、そんなに褒めていただけると思っていませんでしたので、伊藤先生のお言葉、大変ありがたく拝聴いたしました。
【安浦主査】 伊藤先生、本当に大事なポイントを御指摘いただきましてありがとうございます。
続いて、合田先生が手を挙げておられますので、合田先生、お願いします。
【合田委員】 ありがとうございます。田浦先生に質問がありますが、御講演の最後のほうで次世代基盤へ向けてというところで、今は多くの若い研究者がフィージビリティースタディまではやるけれども、開発フェーズになるとそれがもう忘れ去られてしまっていて、開発フェーズにおいてもいろいろな人たちが、若い人も含めて貢献できて、報われるようにすべきという話をされていたと思うのですが、それは私もそのとおりだと思いますが、さらに開発までにとどまらず、やはり運用フェーズにおいても同じような仕組みというのが必要だと思っています。
というのは、例えばmdxみたいに新しい運用形態のサービスをしていこうと、またアプリの分野を増やそうと思うと、運用しながらいろいろ考えて、検討して新しいものを入れていくといったような工夫も必要だと思うのですね。したがって、そのフィージビリティースタディから開発に流れて、さらに運用フェーズまでというのをいろいろな人が関わりながら貢献できるような体制みたいなものをつくれるといいかと思うのですが、この辺り御意見いただけますでしょうか。
【安浦主査】 田浦先生、いかがでしょうか。
【田浦委員】 ありがとうございます。合田先生のおっしゃるとおりだと思います。それで、多分開発に一緒に関わることができれば、その後の運用も多分、開発、そのマシンが動き出したときにまだまだ課題も山積しているということで、その運用にも積極的に関わって、喜連川先生もおっしゃっていたようなLISA的研究みたいな、そういうところにもつなげていくという、そういう流れもできるのではないかと思います。いかんせん、とにかく開発のところで一旦リンクが途切れてしまうと、実際立ち上がってから運用だけいきなり参加してくださいと言われても、多分なかなかならないでしょうから、そういうところから必要で、開発に関わることで、その後の、合田先生のおっしゃっていたような流れもできていくという、そういう流れが理想かなというふうに思います。ありがとうございます。
【安浦主査】 田浦先生、ありがとうございました。合田先生、よろしいですか。
【合田委員】 はい。ありがとうございました。
【安浦主査】 続いて、中野先生の手が挙がっています。中野先生、お願いします。
【中野委員】 津田塾大学の中野です。いろいろと面白いお話、どうもありがとうございました。
私はデータマネジメントの研究者なので、このスパコンの上で、新しいスパコン、「京」が動いて、プロジェクトが終わって、今「富岳」で新しいプロジェクトが立ち上がったときに、もともと科学的なデータとかの持続性あるいは担保というものに関して、プロジェクトごとに切られてしまったりとか、新たに探し出したりとか新たにつくったりとか、かなり労力がかかっているようにも見受けられ、常行先生から先ほどプロジェクトの持続性について、国に担保してほしいというお話がありましたが、この辺り、いろいろな分野のデータとか、これからスパコンで支援していく上で、研究におけるコンテンツ、サイエンスとしてはエビデンスとして持っておかなければいけないものに対する持続性みたいなのについては何かお考えがあるかどうか。小林先生や常行先生に、こういう方向性がよいとかいうのがあれば教えていただければと思います。
以上です。
【安浦主査】 常行先生、小林先生、いかがでしょうか。どちらからでも。
では、常行先生、お願いします。
【常行委員】 ちょっと私、今の御質問を正しく理解しているかどうか分からないのですが、私がお話しした中で持続性という観点で申し上げたのは、1つはソフトウエアの開発の観点で、我々の分野で言いますと、アカデミアで学術研究としてやるレベルのものだけではなくて、そこから産業界等へ波及していくというのもこれからどんどん増えていくはずで、今既にそうなりつつありますので、その意味で言うと、長い期間使えるように、普及まで含めて、アプリケーションソフトウエアの普及まで含めて考えていただきたいというのが要望としてございます。
それから、データ、計算されたデータという点について言いますと、実はまだ材料分野の計算データというのは、大量な、いわゆる今のデータ科学の、普通のインターネット上のデータとか、ああいうレベルまで全然到達していないのです。本当に少ないデータだと言ったほうがいいと思います。その意味で言うと、まだちょっとそこまでは距離があるかなと思っています。ただ、いずれ、むしろ我々の中では、計算の中で出てきて、計算した人が1次データとしてそれを使うときのデータという意味ではたくさんございますので、それをどう処理してデータ科学として使っていくかというところは非常に大きな課題になっています。
【安浦主査】 ありがとうございます。
小林先生、お願いします。
【小林教授】 御質問の点、委員会のほうでも議論が出ておりまして、やはりHPCIがデータ解析流通基盤として今後重要になっていくであろうという認識の下で、そのデータをどう維持していくかというところが問題になるであろうという指摘がありました。どうしても研究者の皆さんはデータを作り出すまでは熱心ですけど、データを維持し、利用可能な形で展開することには躊躇する傾向がありますので、どういうインセンティブを与えながら維持体制、保守体制、管理体制を作っていくかが課題と思います。あとは、やはりオープンサイエンスという流れと、あと企業との連携でクローズドな形の中で、どのようにその権利を守っていくかだとか、そういうようなところでいろいろな課題があると思いますので、そこを解決して、基盤として発展させていければというような議論がありました。
以上です。
【安浦主査】 どうもありがとうございました。
今、山本先生、相澤先生、藤井先生から手が挙がっていますので、このお三方の御質問、御意見を伺って、ちょっと時間が足りないので、このお三方に順番にお伺いしたいと思います。
山本先生からお願いします。
【山本委員】 大変ためになる御講演をいただきまして、本当にありがとうございました。特に喜連川先生の御発言の中の、日本が元気になるというキーワードがとても胸に響きまして、コメントですけれども、やはりどこか技術的に尖ったものがあったほうが、こういった大きな視点での研究を続けていく、予算をつけていくということで重要なのではないかなと思いました。1つが、常行先生が御提示されました、新しいサイエンスの領域での問題解決という視点。あともう一つが、これはもう研究者として私自身の反省でもあるかとは思いますが、CS部分、どうやって尖っていくかという議論。そういった2つの観点での議論が今後必要ではないかと思いました。大変御示唆に富んだ御講演、ありがとうございました。
以上でございます。
【安浦主査】 ありがとうございます。これは御意見ということでよろしいでしょうか。
【山本委員】 はい。
【安浦主査】 それでは、相澤先生、お願いいたします。
【相澤委員】 私も皆さんのお話、大変示唆に富んだお話を拝聴させていただきました。最後の喜連川先生の10の視座というのも大変インパクトがあって、心にしみ入りました。
ちょっとその話を聞いていて思ったのですが、ここの話というのは、ある種、HPCの行く先の理想型の話だけではなくて、それが学術のためだとか、いろいろな話ができるわけですけれども、その話はとても重要な話ですが、それと同時に、もしかしたら自助努力でできる部分というのもまだ多分に残っているのではないかというふうにちょっと思った次第です。予算がかなり必要になるので、他力本願にならざるを得ないというところはありますが、それに併せて、実は今あまり集約されていなくて、具体的には調達の話とか、そういうような自分たちの思う方向に物事を進めていく、そこに至る道みたいなところの、多少理想的な話とは違うかもしれないけれども、でもそのアプローチに関して自分たちでできることの範囲がどこなのかというところをうまく切り分けて、この中で議論できたらいいのではないかと感じました。
以上です。
【安浦主査】 相澤先生、どうもありがとうございました。
それでは、藤井先生、お願いします。
【藤井委員】 大阪大学の藤井です。非常に示唆に富むお話をいただきまして、ありがとうございます。私自身も量子コンピュータの研究ですけれども、いろいろ共通して考えるべき課題、我々の分野でも共通する部分があるかなと思いました。
特に人材育成に関しまして小林先生のお話にもありましたように、アーキテクチャやOSやコンパイラ、こういった基盤部分、こういったところの技術を保持し続けるというのは、新しいタイプの計算機が出てきても必要になる部分ですので、非常に重要であると思いました。また、常行先生からありましたMateriAppsです。私も利用したことがありますが、非常に、開発者の成果としても認められるということで、よい取組かと思いました。
少し質問させていただきたいところは、こういった使いやすいライブラリであったり、そういったものを提供するという上で、開発人員の確保というのが非常に重要になると思いますが、研究と開発、そしてその開発されている人のキャリアパスをどう考えるかという点において、コメントをいただけるとありがたいです。
【安浦主査】 これは常行先生への御質問でよろしいですか。
【藤井委員】 そうですね。もし小林先生からもございましたら、いただけるとありがたいです。
【安浦主査】 常行先生か小林先生、いかがでしょうか。開発する人のキャリアパスに関して何かお考えがあるかという御質問ですけれども。
【常行委員】 ソフトウエア開発者のキャリアパスというのは、いつも問題になって、いろいろなところで何とかしなければと言いながら解決策がなくて、このMateriAppsの活動もそこを何とかしたいというのが、私個人的には一番大きな目的でございました。それによって何が得られたかというと、やはり開発したことがほかの人に伝わって、ユーザが増えて、あのソフトの開発者だということがみんなに知られるという、そこが一番大きいと思うのですが、ただ残念ながら、このMateriAppsは、予算がたくさんあって、それで人が雇用できるとか、そういうものではありませんで、あくまでも見える化のお手伝いをするというだけでございます。それプラスアルファで、例えばコミュニティーソフトとして、人手をかけて育てていかなくてはいけないという場合には、幾つかを選定して、そこのチューニングとかサポートをお手伝いするぐらいのことはやっていますが、あまり大きなことはできていません。やはりそこに予算をつけるというのが非常に難しくて、例えば科研費はなじみませんし、それ以外の国の予算というのも、なかなかこういうのにフィットする予算がないので大変苦労しているという状況です。
以上です。
【安浦主査】 ありがとうございます。小林先生、何か補足ございますか。
【小林教授】 御意見ありがとうございます。キャリアパスは非常に重要でして、やはり活躍する場をつくり上げるということが必要かなと、特にシステムなりコンパイラなり、システムソフトウエア関係でしょうか、そういうところで研究した方が、やはり産業界で活躍できるような出口がしっかりできているということが必要かなと思います。そういう意味で、やはり産学連携、この分野は必要、ますます重要になってくると思いますし、若い人が出口がわかりやすいアプリだけでなく、その基盤となる技術にも興味を持てるように、HPCIの開発に必要なあらゆるレイヤーで、やはり出口をしっかり、産業界と連携してつくり上げていくということが必要かなと思っています。
以上です。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。
ちょっともう時間過ぎておりますけど、あと高橋桂子先生が手を挙げておられますので、最後の質問にさせていただきます。お願いします。
【高橋委員】 高橋でございます。先生方、ありがとうございました。簡単に、短くコメントします。
1つ、やはり喜連川先生から、原点に返る思考というのが非常に大事だというお話がありましたけれども、その中でコンソリのほうに向かうのではないかというお話がありました。私どもも独法の中でどういうふうな、学術的なものと、それからコンソリをどういうふうに考えるのかというのは、もう何回も話には出ながら、やはり消えてしまっています。予算との関係がやはりどうしてもありますので、一度予算を離してしまうともう帰ってこないのではないかと、そういう不安との闘いでございますので、やはりそこはしっかりもう一度、根本に返って、学術、あるいはお金をどう使うかということも含めて、今の時期だからこそそういう議論ができると思いますので、ぜひこの委員会でも考えていきたい問題ではないかと思いました。
以上でございます。
【安浦主査】 高橋先生、ありがとうございました。まさにその予算との関係性というのは、特に文科省の事務局はそちらのほうが先に頭に来るのかもしれませんけど、やはりこの部会としては、全体像を見ながら、5年先、10年先の日本の科学技術、特に学術を支える情報基盤をどうつくるかということで今後とも議論を進めたいと思います。10年後が読めない中で、できるだけいろいろな視点から議論をして、将来の選択肢の候補を広げておくという、そういう意味で、あと2回ほど、こういう議論を1月、3月にやらせていただきたいと思っております。今日はあまり皆さんから御意見いただく時間がございませんでしたけど、今後の進め方や、ヒアリングとしてこういう話も聞きたいというような御希望がございましたら、ぜひ事務局宛てにメール等で御意見いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
本日の議題は以上にしたいと思います。4人の御講演いただいた先生方、本当にありがとうございました。非常に刺激的で、かつ問題の本質を突いた御講演をいただきましたこと、心から御礼申し上げます。

最後に事務局から以下の事項について説明があった。
・本日の議論等で足りない部分やご意見があれば事務局までご連絡いただきたいこと
・今後1月ごろと3月ごろの開催を想定、別途日程調整を行うこと

安浦主査により閉会。