ジャーナル問題検討部会(第3回)議事録

1.日時

令和2年6月15日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. ジャーナルに係る課題について
  2. その他

4.出席者

委員

引原主査、竹内主査代理、家委員、小賀坂委員、尾上委員、倉田委員、小安委員、高橋委員、谷藤委員、林和弘委員、林隆之委員

文部科学省

増子大臣官房審議官(研究振興局担当)、橋爪参事官(情報担当)、三宅学術基盤整備室長、土井参事官補佐

オブザーバー

喜連川情報委員会主査代理、阿部 国公私立大学図書館協力委員会委員長、筑波大学副学長・附属図書館長、上保 国立国会図書館利用者サービス部科学技術・経済課長、平田 大学図書館コンソーシアム連合事務局長、国立情報学研究所学術基盤推進部図書館連携・協力室長
 

5.議事録

【引原主査】 時間になりましたので、ただいまより第3回、ジャーナル問題検討部会を開催させていただきます。本日もコロナウイルス感染拡大防止のためにオンラインで開催することにいたしました。通信状態の不具合が生じることなど、続行できなくなった場合は検討部会を中断する可能性もありますので、あらかじめ御承知おきください。よろしくお願いいたします。
設定が皆様方にいろいろあって、機能が今回はあるんですけど、私の方には挙手が見えない状態だということを御理解ください。よろしくお願いします。ですので、発言していただいた方がいいかと思います。
では、まず事務局より、本日の委員の出欠状況、配付資料の確認、それから、オンライン会議の注意事項について説明をお願いします。よろしくお願いします。
【土井参事官補佐】 事務局でございます。本日は、委員の皆様、オブザーバー、科学官、学術調査官、全員に御出席を頂いております。
また、情報委員会の喜連川主査代理にも御参加いただいています。
今回は、報道の関係の方も含めまして、105名の傍聴者登録がございますので、御承知おきいただければと思います。
続きまして、配付資料の確認でございます。既に資料につきましてはお送りさせていただいているところかと思いますけれども、配付資料が資料1から資料5、あと、参考資料1を配付させていただいているかと思います。
また、併せまして、委員の方々には、非公開資料をお配りしておるかと思います。こちらは資料2の「電子ジャーナルに係る実態調査結果」の一部、個別大学の実績を示したものでございます。ですので、ジャーナル問題検討部会の運営規則第4条第3号にございますように、「個別利害に直結する」資料ということで、非公開とさせていただいております。
続きまして、オンライン会議の注意事項を御説明させていただきます。
まず通信の安定のために、発言を除きまして、常時ミュートとしていただければと思います。
なお、ビデオの方はオンとしていただければと思います。
主査におかれましては、常時ミュートを解除していただければと思っております。
発言いただく場合には、挙手機能を使いまして、御連絡いただければと思います。
手が挙がっているかどうかは、事務局の方で把握できる状況になっております。したがいまして、事務局から挙手いただいている先生方のお名前を伝えさせていただきますので、それに基づきまして、引原主査に御指名を頂ければと思っております。
指名された先生方は、御自身でミュートの解除をしていただいた上で御発言を頂ければと思います。
議事録を作成するために速記者を入れてございますので、傍聴者と速記者のために御発言の際には、まずお名前を申し上げて、その後に御発言いただければと思います。
なお、ゆっくりはっきり発言いただければ幸いでございます。
また、トラブルの発生のときには、事前に御連絡差し上げておりますけれども、電話にて、事務局指定の電話番号に連絡を頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。
事務局からの説明は以上でございます。
【引原主査】 ありがとうございました。
それでは、審議に入りたいと思います。前回の検討部会では、今後の進め方について様々な御意見を頂きました。本検討部会で目指す姿あるいは議論を今後も進める中で検討していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
今回は、テーマを絞りまして、主に価格競争力やセーフティネットについて考えていきたいと思いますので、それについて議論をよろしくお願いいたします。
では、大学図書館コンソーシアム連合事務局長、国立情報学研究所学術基盤推進部図書館連携・協力室長の平田オブザーバーより説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【平田オブザーバー】 大学図書館コンソーシアム連合(以下JUSTICE)、JUSTICE事務局の平田と申します。よろしくお願いいたします。
今から資料を共有いたしますのでお待ちください。資料の方見えていますでしょうか。こちら、本日は、ジャーナルの購読料の価格交渉の状況について情報提供してほしいということで、資料を御用意いたしました。JUSTICEの状況と、あと、海外の状況について、簡単に御紹介したいと思っております。
まず前提としまして、JUSTICEというのは何かということをまず御説明したいと思っております。こちらはJUSTICEの概要を書いたものですが、2011年4月にできた組織です。前身としまして、それぞれの活動をしていたんですけれども、国立大学の図書館協会コンソーシアムと公私立大学図書館コンソーシアム(PULC)の2つのコンソーシアムを統合する形で作られた組織ということになります。
目的は、電子ジャーナル等の電子リソースに関する学術基盤の整備に貢献するということで、こちらはJUSTICE、大学等の会員組織になっていまして、今、548館の会員ということになっております。国立大学が100%、公立大学は87%ぐらい、私立大学ですと70%ぐらい会員館になっている状況になっております。
こちらがJUSTICEの運営体制、組織図のようなものでございます。JUSTICEは、この真ん中のところなんですが、JUSTICEは大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議という会議体がありまして、そちらの会議体の下に設置されている組織になっております。
組織の中には、運営委員会と、あと、作業部会が3つございまして、あと、それ以外に事務局という形で組織されております。
運営委員会の方は、会員館から管理職をメインとして15名選出されておりまして、そちらで組織されております。作業部会も会員館の職員、約30名が選出されておりまして、そちらで作業を行っていただいております。それ以外に専任の職員として会員館から事務局という形で3名選出されて、ずっとJUSTICEの事務局の仕事をしているという形になります。私も東京大学から出向で事務局に勤務しているという形になっております。
このように、JUSTICEは、大学図書館と国立情報学研究所の連携の下に、会員館の図書館職員の協力を得て運営されている組織ということになります。
こちらはJUSTICEの財政状況、お金がどのようになっているかという御説明でございます。収入としましては、各会員館からの会費収入ということで、約1,800万円の収入がある見込みになっております。それ以外に、国公私立大学図書館協力委員会から支援金として100万円、あと、国立情報学研究所からの支援ということで、約400万円頂いて、それが収入となっております。
支出に関しましては、先ほどの事務局員の事務協力費ということで、事務局員を出向してくださっている大学に向けて、500万円ずつ、約1,500万円、総額でお支払いする形になっております。それ以外に、旅費等の活動費ということで、800万円程度、支出されております。
なお、先ほどの運営委員会ですとか作業部会の委員に関しては、謝金等の支払いはしておらず、全てボランタリーな形で活動してくださっているという形になります。
こちらがJUSTICEの主な活動の一つであります出版社交渉についての御説明でございます。先ほど、JUSTICEは作業部会が3つあるという形でお示ししたんですが、その中の交渉作業部会というところで出版社との交渉をしております。
交渉作業部会で何をやっているかというと、御説明しますと、出版社との交渉を一元化して行っているということになりまして、その一元化の意味なんですけれども、まずは標準的な提案の交渉をJUSTICEで行うということになります。その交渉の結果、合意した提案書というものを会員館に提示、開示することになります。その開示された提案書を基に、契約・支払は各会員館が判断して行うという形になっております。
交渉の規模なんですけれども、合意している出版社、去年の実績ですけれども、56社、海外48社、国内8社という形になります。
会員館からは、国内の出版社に関してもうちょっと提案してほしいという御希望とかありますが、どうしても海外の出版社が多いという形になっているのが現状でございます。
会員館の購読規模なんですけれども、約400億円になります。これは電子ジャーナルと、あと、雑誌の冊子も含めた金額になっております。約400億円の購読規模という形になります。
JUSTICEがこれまでどのような交渉をしてきたかというところなんですけれども、単純な価格交渉ということもあるんですが、それだけではなかなか交渉がうまくいきませんので、様々な試みということで、幾つか御紹介させていただきたいと思います。
まずは、一つがバックファイル購入とカレント購読の組合せという試みでございます。こちらは、SpringerLinkの特別包括提案という形で、一度、交渉が成立したことがあるんですけれども、カレント購読の価格上昇を抑制しつつ、バックファイルをナショナルアカデミックライセンス化で購入するという形で、この2つを実現することによって、価格の上昇を抑制するという交渉を行ったことがございます。
それ以外ですと、複数年契約という形で、普通、購読するとき、1年ごとに契約を更新するわけですけれども、それを複数年、2年ですとか3年、契約することを約束することによって、価格上昇を抑えるといった試みもしたことがあります。
こちらの方、いろいろ何度も交渉しているんですが、価格上昇を完全に抑えるというのにはなかなかつながらず、抑制する程度の結果というような形になっております。このような形で、JUSTICEでいろいろ交渉しているんですけれども、なかなか交渉は難航していまして、うまくいかない状況が続いているという現状もございます。
そういったところを見まして、海外で今どんな動きがあるのかというのをここから御紹介したいと思います。海外で今、動いている活動としまして、一つに、大きな活動としまして、OA2020というものがございます。こちらは学術雑誌のオープンアクセスの転換を目指す国際的なイニシアティブということで、2016年から、ドイツのマックスプランク研究所が主導で行っている活動でございます。
これは既に期限が過ぎてしまったんですけれども、2020年までに主要学術雑誌をOAに転換することを目標として、活動しておりました。この活動の中では、世界が足並みをそろえて、購読からOAへの迅速・円滑な転換を実現することを呼びかけているというような活動になっております。
こちらは、EoI、関心表明というのがございまして、そちらに各国のいろんな組織が署名しているということになっております。今ですと、41か国145機関がこのOA2020の関心表明に署名しております。日本からは、日本物理学会物性グループというところと、あと、JUSTICEがこちらに署名しているという形になります。
この活動なんですけれども、ベルリン会議、Berlin OA Conferenceというのがありまして、そちらの方で、この活動についていろいろ話をしているということがございます。最近の活動というか、会議の話題になっていることをこちらに載せさせていただいたんですけれども、13回目の会議、2017年にやっているんですけれども、ここに書いてあるようなことを話し合ったり、発表がレポートとして出てきております。OAに関しては、ベルリン宣言以降、オープンアクセスを進めましょうと言っているんですが、その時点、2017年時点ですと15%ぐらいしかオープンアクセスが実現できていないですとか、あと、これはいろいろ異論もあるとは思いますが、グリーンOAに関しては、コストの削減にはなかなか寄与しづらいですねというお話があったりしているそうです。
それ以外にも、OA2020はいろいろなOA活動がある中の補完的なものなんだという位置づけの話ですとか、オフセット契約という契約があるんですけれども、それが新たなビッグディールにならないような交渉戦略が必要ですとか、あと、研究者に関しては、OA実現には、研究者コミュニティの力が必要だ。あと、APCに関しては透明性が必要だ。出版社と助成機関の役割が必要で、政府の役割が不可欠だといったような話も出ております。
それ以外に、これもまた見方によっていろいろあるんですけれども、SCOAP3というオープンアクセスの活動がありますが、これによってダウンロードは大幅に増加しているというような話もあったそうです。
あと、14回目のベルリン会議が2018年にあったんですけれども、こちらは最終的なステートメントというか、宣言が出ていまして、そのステートメントは3つございます。著者が著作権を保持することに尽力しましょう。あと、完全かつ即時のOAに尽力しましょう。あと、移行契約を通じて、OAの進展を加速することに尽力しましょう。移行契約は、当初はコストニュートラルであるべきだといったことが宣言されているものであります。この宣言に基づいて、出版社にはこの宣言を受けて協力をお願いしたいということで要請しているようでございます。
それ以外にOAを実現する、加速する助成機関の動きとして、最近、動きがあるのがcOAlition Sという活動でございます。こちらは2018年9月に、Science Europeが発表した助成機関のイニシアティブなんですけれども、2021年から公的助成を受けた研究成果の即時OA義務化を目標としているものであります。そのために「Plan S」という原則を掲げて、世界の助成機関に参加を呼びかけております。2020年5月現在、17の助成機関と7つの団体が参加しているという形になっています。
こちらについてはいろいろ動きがあるようですが、こちらでは割愛します。
それらに基づいて、海外で今どんな契約が進んでいるか、幾つか特徴がある国をピックアップしたものでございます。
イギリスに関しては、Jiscという団体があるんですが、そういったところも、このRead&Publishという、オープンアクセスを絡めた契約が進んでいるところであります。
フランスに関しては、独自な動きを見せておりまして、購読をベースに交渉が進んでいると聞いております。
ドイツに関しては、Read&Publishという契約以外に、Publish&Readという、また少し発展したというか、歩みを進めたような交渉もしているところであると聞いております。ただ、Elsevierとは交渉が決裂して、購読に関していろいろ支障が出ている。こちらはまた後で説明したいと思います。
あと、オランダやスウェーデンに関しては、国がオープンアクセスを何年までに実現しましょうというような目標を掲げていまして、Read&Publishという契約がどんどん進んでいるというようなことになっています。
あと、アメリカの場合はなかなか、いろんなコンソーシアムやいろんな組織が個別に活動しているので、全てを表現するのはなかなか難しいんですけれども、カリフォルニア大学が、いろいろ動きが激しいようでして、こちらの方で、Read&Publishに関する交渉を進めていると聞いております。こちらもドイツと同じように、Elsevierとは交渉が決裂しているというような話を聞いているところでございます。
先ほど、Read&Publishという話があったんですけれども、それがどんなような契約かというのを簡単に御説明しますと、一言で言ってしまうと、購読費とオープンアクセスの出版費を一括で支払うという契約であります。いろんな計算方法やいろんな契約があるんですけれども、その価格の算出例の一つとして、こんなような形になっております。
例えば、まず今まで出版している論文を全てオープンアクセスで出版したときの出版費というのをまずは算出します。その後に、既存の購読費から、このOA出版費を減額する形で総額の契約額を決めるというのが価格算出の一例でございます。その減額する率や額というのは出版社の方針によって異なるという計算の方法でございます。
このような契約の場合、どんなことが起こるかといいますと、購読費をまずベースに考えているので、これまでと大きな支出の変化はないというのが大体の考え方でございます。ただ、その大きな支出の変化がない状況でオープンアクセスを促進できるというのがRead&Publishの契約という特徴と言えるのではないかと考えております。
先ほどドイツの話をしたんですけれども、こちらがドイツのProject DEALという活動があるんですけれども、そちらを図解したものになっております。これはこのままだと分かりづらいので少しまとめますと、こんなような形で、ドイツは全国の大学、専門大学、研究機関、州立の大学の700機関が参加している組織になっております。
学長クラスが主導しておりまして、運営委員会は、大学・研究機関のトップレベルの方が参加しているとお聞きしております。
プロジェクトチームがあるんですけれども、そちらの事務局長は、図書館長が務めているとお聞きしているところでございます。
ここら辺の特徴について、先ほど最初にJUSTICEの活動体制みたいなものを御説明しましたが、それと照らし合わせると、こんなふうになるかなということで、少し書いてみました。JUSTICEは、大学図書館を主に集まっている組織ということで、集まっている組織のレベルが違うような形になっております。
学長クラスがProject DEALを主導しておりますが、JUSTICEに関しては、大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議の下に設置されているという状況になっております。
あと、運営委員会には、大学・研究機関のトップレベルの方が入ってくださっておりますが、JUSTICEは、大学図書館の管理職がメインという形になっております。
あと、事務局に関しては、大学図書館から出向して、私ですけれども、事務局長をやっているというような比較ができるかなと考えているところでございます。
Project DEAL、先ほど一覧表のところで簡単に御説明しましたが、どんな契約の状況になっているかといいますと、海外の状況なので、実際のところ、分からないところもあるんですが、こちら側から見えている状況としましては、OA2020のEoI、関心表明には複数の大学が署名している状況にあります。
Elsevierに関しては、オープンアクセスへの転換契約、これはRead&Publishの契約と言っていいと思うんですけれども、そちらを求めて、交渉をずっとしていたんですが、2018年から交渉が決裂しておりまして、現在もアクセスは遮断しているとお聞きしているところでございます。
あと、それ以外の出版社、例えばWileyですと、WileyとはPublish&Readという契約に合意。2019年からしております。SpringerNatureとはPublish&Read契約に2020から合意している状況とお聞きしているところでございます。
この中で出てきますPublish&Readという契約なんですけれども、こちらはどんな契約かといいますと、これはProject DEALとWileyとの間での契約のアグリーメントが公開されていますので、そちらを読み解くとこんな感じかなということで持ってきた資料なんですけれども、Publish&Read、実際にはPublish&Accessと呼んでいたりもするんですが、その契約の内容なんですけれども、ハイブリッド誌に、このハイブリッド誌というのは、オープンアクセスの論文と普通の購読の論文が混ざったジャーナルということになりますが、そちらに論文をオープンアクセスで出すときに、2,750ユーロでオープンアクセスの論文を出すという契約になっているようです。ただ、この2,750ユーロというのは、オープンアクセス以外の論文へのアクセス料というのを含んでいると計算していると聞いております。
あと、フルOA誌、全てオープンアクセスの雑誌に関しては、20%のAPCのディスカウントがあるとお聞きしております。それ以外に契約の中で、過去の論文の利用料等に200万ユーロを一括払いで支払っているとお聞きしております。
このPublish&Readに関してどういうことが起きるかといいますと、これまでの支出と大きく異なる可能性が出てきます。普通は先ほどのRead&Publishの場合は、購読料をベースに計算して、購読料からAPCのオープンアクセスの料金を差引きするような形で計算していますが、こちらは論文出版をベースに考えていますので、今までの購読料とは大きく支出が異なる可能性があるという契約になっております。
Project DEALの方でよく悩んで、いろいろ問題になっていたのが、このコンソーシアムの場合、その支出をどういうふうに分担して支出するのか。今までと大学ごとで見ると大きく支出が異なりますので、それをどう調整するかが課題だったとお聞きしているところでございます。
これに関しては、ドイツのマックス・プランクデジタルライブラリーというところが設立した会社が支出の調整を行って、コンソーシアム全体に一括支払いを行っているとお聞きしております。
次に、アメリカで、カリフォルニア大学(University of California)の方がいろいろ動きがあるという話をしたんですけれども、こちらはカリフォルニア大学の活動の体制を表したものです。こちらはカリフォルニア大学からレポートが出ていまして、そちらを基に調べたものなんですが、主に4つのチームを構成して、活動していると聞いております。
まず1つ目が交渉チームということで、これはタスクフォースの委員長ですとか教員ですとか、カリフォルニア大学の図書館機能を担っているCalifornia Digital Libraryというところがございますが、そちらの代表で構成して、交渉を行っていますと聞いております。
もう一つに、コミュニケーションチームというのを別に構成していまして、コミュニケーションに関する開発及び監督。広報対象に関しては、大学の経営者層ですとか、教員、学生、メディア、それ以外の一般市民も含んで、広報の対象としていろんな活動を行っていると書かれております。
3つ目として、それ以外に、分析チームということで、こちらはデータアナリストですとか、コレクション構築のスタッフ、あと、大学図書館員がジャーナルの価格ですとか出版状況を分析して、交渉目標や提案の草案を作る、そういった分析チームを作っていると聞いております。
もう一つが代替アクセスチームというチームを組織していると聞いていまして、そちらは代替アクセスの戦略及びその実施に関する提言ということで、交渉の結果、うまく購読契約が結べなかった場合に、どうやって代替アクセスをするかという戦略をあらかじめ決めているチームと聞いております。
こちらもJUSTICEの運営と活動の内容と少し照らし合わせてみた資料なんですけれども、交渉に関しては、カリフォルニア大学の教員などが入っているんですが、JUSTICEの場合は大学図書館員で構成した交渉作業部会というのを設置しております。
コミュニケーションに関しては、広報作業部会という作業部会を設置しているんですが、こちらは主に会員向けの広報を行っているという活動になっております。
分析チームに関しては、JUSTICEでも調査作業部会というのを設置しておるんですが、これまで大学図書館職員だけで構成していたんですが、2020年から外部の図書館員以外の方に協力を依頼する形で活動を開始しようということで準備を進めているところでございます。
代替アクセスについては、JUSTICEとしてチームみたいな作業部会はございませんで、研修会で契約を取りやめたところがどんな代替アクセスをしているかというような事例共有等は研修会のところで行っているんですけれども、そういった専門のチームはないというような形になっています。
このような形で対比ができるかなと思っております。
あと、先ほどの代替アクセスチームの活動目的ということで、こちらを簡単に抜き出してきたんですけれども、購読アクセス以外の手段で論文にアクセスする方法を提供しようというチームでして、この目的のところに、図書館員がちゃんと代替アクセスの手段の知識を持っているということを確認するというチームでもあると言われています。購読キャンセル時にコミュニティ、要は、大学の教員の方に安心感を提供するのも一つの目的であると言っております。
あとは論文の違法なコピーというのも横行しておりますので、そういった違法なコピーではなく、あくまで合法的な方法で論文を入手する方法についてきちんと構成員に教育をしていこうというのも活動の目的の一つになっているそうです。
カリフォルニア大学に関しては、OA2020の関心表明に署名しておりまして、Elsevierとの交渉、これはElsevierも転換契約を求めて交渉していますが、交渉決裂で、現在もアクセスが遮断していると聞いております。
一方で、ケンブリッジ・ユニバーシティ・プレス(CUP)がそちらの方と、Read&Publishの契約を結んでおりまして、ほかの出版社とも転換契約について交渉を続けているとお聞きしております。
では、JUSTICEに振り返って、OA2020についてどういう状況なのかというのを簡単に御紹介します。
OA2020の対応としましては、JUSTICEも署名しております。あと、データ収集・分析というのも、データの専門家の方はおりませんが、分析、収集しているところでございます。
あと、それ以外に、ロードマップも公開しております。そのロードマップに基づいて、現在、交渉しているということになります。ロードマップの中では、ここにあるような3つのことを出版社の方にお願いして、交渉しているという状況であります。
その結果として、2020年から、ケンブリッジ・ユニバーシティの方からRead&Publishにモデルの提案があり、JUSTICEの場合は、それぞれの大学がその提案を受けるかどうか判断しますが、13大学がその結果、契約しているということになります。
あと簡単に、JUSTICEの中で、組織について検討した資料がありましたので、御紹介したいと思いますが、こちらのJUSTICEのSWOT分析ということで、ちょっと前で、2015年ぐらいに行った調査というか、分析なんですけれども、そちらを簡単に御説明したいと思います。
JUSTICEは、組織としてどんなところが強みかというところを分析したところがあるんですが、やはり会員館の規模が500を超えているということで、これはJUSTICEの運営委員や作業部会委員の分析になっているんですが、交渉力がかなり大きく集結、結集できるというのが強みではないかということが分かってきております。
それ以外に、今度は弱みということで、ここに赤線で書いてありますが、国立大学と公私立大学のコンソーシアムが統合する形で生まれたコンソーシアムになっているので、いろいろな会員館の方がおります。国内の方をちゃんと交渉してほしいとか、いろいろな要求があるわけですが、なかなかそういった多様な需要や要求に応えるには組織のいろんな多様な、大学の集まりということで、なかなかそういったものに応えるのが難しいと。それが逆に交渉力を弱めている面もあるんじゃないかと分析しております。
交渉力に関しては、やはりスケールメリットにおいて有利な条件を獲得できるようにということがあるんですけれども、JUSTICEは、先ほど組織のところで説明しましたが、それぞれの大学で契約するかどうかの判断をするということがありますので、契約するかしないかはJUSTICEではなかなか決められないという状況ですので、総額を事前に想定できず、強力な交渉というのはなかなか難しいというようなJUSTICEの中の自己分析になっているというお話でございます。
私から御用意した資料に関しては以上でございます。ありがとうございました。
【引原主査】 ありがとうございました。
ただいまの御説明につきましては、質問あるかと思いますけれども、まずその前に、事務局から続きの資料について説明を頂いた後、まとめて御質問を頂こうと思っております。よろしくお願いいたします。
では、事務局、よろしくお願いします。
【三宅学術基盤整備室長】 事務局でございます。それでは、私から、資料2、資料3、資料4と、あと、非公開資料とさせていただいております参考資料2について御説明させていただきます。
まずは資料2でございます。電子ジャーナルに係る実態調査結果でございます。こちらはもともとJUSTICEの各会員館宛てに出している調査で、その調査と同様の内容でございますが、JUSTICEの行っている調査は基本的には非公開という前提になっておりますので、改めて文部科学省として、本ジャーナル問題検討部会に資する資料を作成するため、調査を行ったものでございます。
回収率は100%、86大学。調査結果の取扱いについては、個票については非公開とさせていただき、資料として活用する際には、大学やジャーナル、出版社の個別名称は非公開とさせていただく。取りまとめた数値については、こちらの部会やその他関係の会議で活用するということでお願いしたものでございます。
具体的な集計結果につきましては、2ページ目のスライドを御覧ください。電子ジャーナルに係る実態調査結果のそれぞれの各契約における実績額総額を旧帝国大学の7大学、人文社会科学系の大学、11大学、理工系学部を有する大学71大学、医学部・附属病院を有する大学41大学ごとにそれぞれの平均額を出したものでございます。
左側がカレント契約における実績総額、平均額でございます。ここから言えるのは、基本的には、全体的に毎年の上昇が見られるということでございます。
あと、標準偏差を取ってバーをつけさせていただいておりますが、それぞれデータのばらつきが非常に大きい。なので、個々の大学によって状況がかなり異なってくるというのが見て取れるかと考えております。
右側上段ですが、こちらはアグリゲータの平均額でございます。こちらについてはそれぞれの大学のカテゴリーにおいて、大きな増減等は見られていないと考えております。
右側の下でございますけど、こちらは電子ジャーナルのアーカイブ、バックファイルに関する平均額でございますが、こちらは3年間の様子を見ると急激な減少が見られるというところでございます。これをどのように読むかというところでございますけれども、基本的にはカレント契約はかなり上がってきているという状況で、なかなかアーカイブ、バックファイルに充てる費用の捻出が困難であるという状況が見て取れるのではないかなと考えております。
こちらと併せて、参考資料2の方を御確認いただければと思います。先ほどの大学で4カテゴリーごとに改めて大学ごとのプロットをしたものでございます。参考資料の1ページ目でございますが、こちらは旧帝国大学におけるそれぞれの実績額をプロットしたものでございます。基本的には、全体の平均額と同様の傾向が現れているのではないかと考えております。
続きまして、2ページ目でございます。こちらは電子ジャーナルのタイトル数の推移でございます。1大学のみ、2019年で下がっているという状況がございますが、基本的には横ばいということで読み取れるのではないかと考えております。
3ページ目でございますが、各出版社別の電子ジャーナル契約額の2018、2019年の数字でございます。基本的な比率で考えますと、各大学と各出版社の比率が大きく違うという形には見られないと考えているところでございます。
4ページ目が人文社会系学部のみの大学におけるものをプロットしたものです。全ての大学をプロットすると数が多くなりましたので、10大学を抽出して出させていただいております。基本的には、先ほどの傾向と同じような内容が見て取れるのではないかと考えております。
5ページ目が同様にタイトル数、6ページ目が各ジャーナル別の契約額でございます。
また、7ページ目以降が医学部・附属病院を有する大学における同様のグラフでございます。これは適宜、御参照いただければと思います。
参考資料2につきましては以上でございます。
続きまして、資料3です。バックファイルの整備状況として、その関連の内容につきましてまとめさせていただきました。
バックファイルとは電子ジャーナルの購読契約対象となっているカレントファイルに収録されている巻号よりも前に刊行されたものでございます。
こちらの取組としまして、一つ、NII-REOという取組がございまして、こちらは国立情報学研究所やJUSTICEなどと、各出版社の協議・契約に基づいて決定されて、実施されている学術コンテンツを提供するシステムでございます。
基本的にNII-REOに搭載された電子ジャーナルは横断検索が可能で、書誌情報や抄録については誰でも利用可能となっております。本文の利用につきましては、出版社と別途契約するタイプ、もしくは国立情報学研究所に機関登録をするタイプという2種類に分かれています。
具体的な中身については、スライド2の方を御覧ください。NII-REOの電子ジャーナルアーカイブに収録されているコンテンツの一覧でございます。このうち、Springer Science + Business Mediaと、Oxford University Pressの一部につきましては、ナショナルアカデミックライセンスという形での閲覧が可能、それ以外のものに関しては、機関購読ということで、それぞれ機関が契約をするという形で運用がなされているところでございます。
続きまして、3ページ目でございます。バックファイルの整備状況です。こちらは調査結果は若干古い内容でございますが、JUSTICEによる調査の結果を御紹介させていただきます。平成23年12月に、JUSTICEにて、参加館に対して、調査を実施したものです。
1ページ目、JUSTICE参加館における出版社商品の契約状況ですが、「購入しない」というのがかなり数字として大きいという状況でございます。
状況としましては、先ほどの資料2でも同様ですけれども、やはり予算がなかなか確保できず、現状においてもバックファイルを購入できていないという状況は変わっていないのではないかというところが推測できるところでございます。
続きまして、資料4でございます。こちらは各出版社別のバックファイルのニーズでございます。こちらは別途、冊子媒体で調査結果がございますが、非公開資料ですので、細かい数字についてはお示しできないんですけれども、各出版社別のニーズを整理したものでございます。ただ、こちらも調査後10年も経過しているということもございますので、状況は変わっているのではないかと考えております。
続きまして、スライド5枚目でございます。JUSTICEの調査結果で、バックファイルの購入計画を立てているか、もしくは購入しない理由、予算の確保について尋ねたものでございます。それを大学の規模別ということで集計したものでございます。
左上でございますが、こちらにつきましては、JUSTICE参加館におけるバックファイルの購入計画の立案状況ですが、大半は購入計画を立てていないという現状となっております。若干、規模が大きい大学については購入計画を立てて、定期的に行っているということがここから見えるのではないかと思っております。
左下の部分です。JUSTICE参加館におけるバックファイルを購入しない理由ということで、幾つか理由はございますけれども、一番大きいのはやはり予算を確保できないので買えない。その次に、利用者の要求がないので必要と思わないと、そういうところが大きな理由として出ているところでございます。
右側でございます。バックファイル予算の確保方法については、これも大半の部分が購入予算を立てていないという回答を頂いているところでございます。
最後、スライド6ページでございます。大手の出版社の3社のバックファイルの販売方法をまとめさせていただいております。基本的に、販売単位につきましては、バックファイルでパッケージを構成していることが多いという状況ですけれども、この中でWileyに関しては、個別タイトルでも販売、Elsevierについても、主題別パッケージ以外につきましては、個別タイトルという形で販売が行われているという状況でございます。
資料3については以上でございます。
では、続きまして、資料4、リポジトリへの登録状況について整理させていただきました。スライドの1枚目ですが、基本的に、機関リポジトリの登録データというものが年々増えている状況がございまして、それに伴って、学術雑誌論文の登録数が伸びているというのが左側のグラフから読み取れるかと思います。
その上で、では、どれぐらいの割合、学術雑誌論文で占められているかというものがありまして、こちらにつきましては、学術機関リポジトリデータベースサービスの統計情報によりますと、件数につきましては、4月30日現在で大体50万件強、全体のコンテンツの21%という状況というのがデータとしてございます。
世界的にはどのような状況かというものに関しては、スライドの2枚目を御覧ください。リポジトリへの論文登録状況でございますが、こちらにつきましては、ドイツのビーレフェルト大学図書館が運営するBASEというウェブリソースのデータを参考に作成させていただきました。各国、かなり状況が違っておりまして、アメリカ9%、イギリス44%、ドイツ22%、フランス52%という状況の数字が表れているところでございます。
続きまして、スライドの3枚目でございます。機関リポジトリによるオープンアクセスの状況です。こちらは「Unpaywallを利用した日本におけるオープンアクセス状況の調査」から引用させていただきました。図8が日本における状況、図9が世界における状況でございますが、直近の10年間に出版された論文につきましては、日本、世界ともにおおむね40%程度がオープンアクセスになっているという結果が出ているところでございます。
一方、図11でございますけど、世界と日本における出版リポジトリのオープンアクセスの状況を見ますと、日本と世界、おおむね同じ傾向ではございますけども、近年は日本の方が割合が高くなっているという状況が見て取れます。
図12の方は、日本の論文のみでございますけれども、リポジトリの種類ごとのオープンアクセスの状況について調べたものでございます。こちらにつきましては、基本的には、機関リポジトリというよりは、外のリポジトリに対しての割合が圧倒的に多いと。これらのリポジトリとしては、上にございますとおり、Semantic ScholarやPubMedなどのリポジトリに登録をされているものが多くなっているという状況でございます。
では、最後のスライド4でございます。オープンアクセスポリシーの策定状況について、JPCOARのデータと、文部科学省の方で整理させていただきました。オープンアクセスポリシーの策定状況の一覧でございます。現状、大学の利用の機関、あと、国立研究開発法人、併せて41機関がその策定を行っているという状況でございます。
すみません。駆け足で恐縮ですが、事務局からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
【引原主査】 ありがとうございました。
そうしましたら、ただいままで御報告いただきました内容につきまして、質問あるいは御意見をお願いしたいと思います。
先ほど申し上げましたように、私の方では、遠隔会議システムで手を挙げていただいても見えません。可能性としては、マイクのボタンを外していただくと確認できますので、それでもよいかなと思います。どちらかでお願いできれば対応させていただきたいと思います。
まずどなたからでも、御質問ございましたらよろしくお願いします。これは平田さんと事務局と両方の御説明についてお願いしたいと思います。どなたか、いらっしゃいますでしょうか。
はい、どうぞ。小賀坂さん、よろしくお願いします。
【小賀坂委員】 すみません。埋め草のようにお聞きするわけではないのですが、先ほどJUSTICEのSWOT分析のところで、契約権を持たないのが弱みだというお話がございました。それから、プラス要因のところでスケールメリットと書いてありました。数年前ですけれども、日本にブランチを持っている四大出版社の担当者と話をしますと、やっぱりこれはまさにこのとおりで、300億というバイイングパワーは非常に魅力的なんだけれども、すみません。言葉を選ばずに申しますと、JUSTICEと交渉しても、そこで契約してくれるわけではないので、やっぱり少しやりにくいというようなことは言っておられました。
すみません。これは皆さん、既に御存じのことばかりを申して恐縮ですけれども、改めてなんですが、この辺りはJUSTICEとしては、何か強い要望、希望みたいなものをお持ちであったりとか、大学に対して働きかけを何かなさっているとか、そういうようなことはございますでしょうか。よろしくお願いします。
【引原主査】 ありがとうございます。平田さん、いかがでしょうか。
【平田オブザーバー】 平田です。働きかけ、なかなか今はJUSTICEの組織の形からすると、そうですね。すみません。実際そんな大きな働きかけはしていないです。JUSTICEに購入するかどうかの判断を委ねてほしいとか、そういった交渉を取るか、話をしたことはないので、このことについて何か働きかけをやったことは今までないんじゃないかなと思います。
平田からは以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。小賀坂さん、いかがですか。
【小賀坂委員】 すみません。これは多分、皆さんも同じことを思っておられると思うんですけれども、やっぱり強い交渉力を持つためには、そこがハードルだろうということは、皆さん同意されると思うんですね。無邪気なことを言うようで恐縮ですが、そこに向けて何か当委員会としてもできることがないかなと思った次第でございます。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。非常に重要な視点だと思います。以前に準備委員会のところでも議論させていただきましたけれども、JUSTICEの交渉というのが全体の中でどこの、標準モデルと言われていますけれども、それがどこを対象としたモデルなのかというのが少し不明確になっている部分があるんじゃないかという御意見ございました。
そういうことも考えますと、交渉が誰にとっても望ましくないというと変な言い方ですけれども、満足できる部分が少なくなってきてしまっているのではないかという御意見があったかと思います。
ちょっと話がずれますけど、今日のお話でも、オープンアクセスの話がちょっと混ざっていたと思うんですが、JUSTICEが価格交渉する中で、オープンアクセスを自分たちの側の手段として考えるのか、相手の手段として考えるのかと考えたときに、今、受け身になってらっしゃるのではないかという気がするんですけど、その辺はいかがですか。
平田さん、お願いします。すみません。
【平田オブザーバー】 JUSTICE事務局の平田です。もともと受け身というよりは、JUSTICEがロードマップみたいなのを出さない状態ですと、全く出版社側からOAに関する提案がなかったという状況でしたので、きっかけはJUSTICEの方がロードマップとか公開することがきっかけになっているというふうには思います。
ただ、その後の交渉における状況に関しては、出版社の方からよく言われるんですが、日本に関しては、ゴールドOAに関する方針がよく分からないと。なので、提案がしづらいという話はよくされます。なので、なかなかほかの国のように、このようなプランを練ってくれということがなかなか言いづらい状況にありまして、OA提案をしてくださいとは言いつつ、その後の動きとしては、向こうから海外でこうしていますとか、日本だったらこういうことも提案できるんじゃないかと思いますという形で提案を受けているという面では受け身になっているとは思います。
【引原主査】 ありがとうございます。
【小安委員】 引原先生、いいですか。小安です。
【引原主査】 はい、どうぞ。
【小安委員】 私も同じようなことを言うことになるかもしれませんが、JUSTICEのSWOTアナリシスを見て、スケールメリットということをおっしゃって、ドイツのProject DEALとの比較もわざわざしていただいていますが、スケールメリットを出すのであれば、大学図書館だけではなくて、全ての研究機関を含めるということが必要ではないでしょうか。これは以前も発言しておりますが、これに対してどうお考えになるかということをお聞きしたいと思います。それから、実際に交渉力といったときに、Project DEALの方は経営層が参加するなど、かなりディシジョンメーカーが入っているような気がするのですが、今のJUSTICEだと、そういうところでもどかしい思いをされているのではないかと思います。そういう点から交渉力を強くするというようなことはお考えになっているのでしょうか。失礼な言い方だということは分かっておりますが、いつもモヤモヤとはっきりしないので、直截に聞かせていただきますが、いかがでしょうか。
【土井参事官補佐】 林和弘先生も挙手されています。
【引原主査】 今の小安先生の方にお答えいただいてからでよろしいでしょうか。はい。では、平田さん、よろしくお願いします。
【平田オブザーバー】 スケールメリットの面に関しては、確かに大きく、例えばJUSTICEができる前は、国立大学と公私立大学のコンソーシアムがあって、それぞれ活動していたのを大きくすることによってスケールメリットがあると感じている部分もあるんですけれども、逆の部分も実はありまして、先ほど多くの大学が国内の研究大学でないところは、国内の資料を整備してくれという要求があるのに対して、なかなか要求にお応えできないような状況とか、いろんな種類の大学があると、なかなか交渉がしづらいというところもありまして、大きくなること自体が全てプラスではなくて、大きくなることによって、交渉がしづらくなっている部分。私も合併したときの交渉とか参加していましたけど、やはりそれぞれ違う条件、買っていたものに関する条件を一つにまとめるというのは非常に苦労した部分もあるので、大きなスケールメリットを作るということは、プラスもあるけれども、その多様性によって交渉力が弱まっている部分があるというのは間違いないと我々は思っています。
経営層が参加する部分に関しては、確かに以前は国立大学ですと、図書館長の方に参加していただいたりしていた部分もあるので、経営層の方とやはりいろんな情報交換とかそういった部分がないと、これから先、交渉はままならないんじゃないかという話もあり、そこについていろいろJUSTICEの中で話はしていたことはあるんですが、実際の動きとしてはなかなかそこのところを一歩踏み出せていないというのが現状ではないかなと思います。
お答えになっていますでしょうか。
【小安委員】 この会議が始まったときに最初に言われたことが、日本全体として、このジャーナル問題をどうするか。それから、オープンサイエンスの問題にどう取り組むか。そういう視点から議論をするということだったと私は理解しています。そういう意味で言うと、今のお話のようにスケールメリットが生かせないとなると、それでは、もう一回ばらばらにやって、予算額の多いところと、予算的に苦しいところは別々の契約をしにいった方がお互いにメリットがあると感じられるようになったら、とても大変なことになるような気がします。
そういう意味で、やはりスケールメリットというのは色々な意味で生かさないと難しいのではないかなと感じておりますので、何か良い知恵を出さなきゃいけないのではないか、そういうことがこの委員会で求められているのかなと感じましたので、あえて申し上げました。
以上です。ありがとうございました。
【引原主査】 ありがとうございました。
では、林委員、いかがでしょうか。
【林(和)委員】 林です。今の小安さんの経営層のところの話と関連するんですけれども、2011年にJUSTICEが立ち上がってからずっと研究者をどう巻き込むかというのに非常にすごく苦労されてきて、私もSPARC Japanで部分的にお手伝いさせていただいた中で、現状、今、正直ベースで研究者はどのぐらいコミットいただけているのかというのが、相対的には増えてはいるんだろう、喫緊の課題としてやっぱり買い支えられなくなっているとは思うんですけれども、本当に研究者のコミットメントは増えてきているのか。あるいは、これもっとクリティカルに、今、小安さんがおっしゃったレベルまで持っていくためには多分図書館だけの努力では足りないと思うので、小賀坂さんの御意見のとおり、何かこの委員会を通じて言いたいこととか、そういったことがあればお聞きしたいなと思った次第です。
【引原主査】 ありがとうございます。平田さん、よろしくお願いします。
【平田オブザーバー】 研究者の方のコミットという面でいうと、現状、2011年から余り増えていないというのが実際だと思います。ずっとやはり図書館職員が運営委員会に入っていますし、館長の方も入ったことがないですし、そういった形で運営していますので、この10年ぐらいは増えていないんじゃないかなと思います。
ただ、今、国立大学図書館協会の方とかですと、図書館の館長先生がいろいろジャーナル問題に関わってくださっているので、JUSTICEでの関わりはそんなに増えていないとは思いますが、ジャーナル問題に関する関わりについてはいろいろなほかの組織の方で関わりが増えてきているんじゃないかなと考えているところはございます。
【林(和)委員】 そうですね、私もそういう、10年前とはまた違った関心の高さを先生方がお持ちになっているという空気は感じているので、そういう意味ではそれは追い風だと思うので。結局、最後は、要するに、決定権者が動かさないと交渉力というのは増減しないと思いますので、そこで何かいい知恵ですね。
ちょっと思い付きで言うと、そもそも各コンソーシアムの会員メンバーの決定権者同士がコミュニケーションを取るということは既に部分的にはやられているようには思うんですけれども、そこをオールジャパンとしてバーゲニングパワーを出せるような何か媒介をJUSTICEでできたりするのかどうか。これ、かなり理想論だとは思うんですけれども、非常に大きな話だとは思うんですけれども、申し上げたいのは、そういう知恵を絞ってJUSTICEのこれからの10年の明日のアクション、何か能動的な主体的なアクションはみんなで考えれば考えることができないかなと思った次第です。
【引原主査】 ありがとうございます。今、何度か図書館の話が出てきたと思うんですけれども、大学経営において図書館の立ち位置が大きくここ10年ぐらい変わってきています。法人化以後、図書館長が財務関係の決定の場にいることはなくて、どちらかというと、理事クラスから館長に下がっているという、言い方が悪いですけれども、部局の運営者に変わっているケースが非常に多いです。そうでない大学もあるんですけれども、逆に言うと、そうでないところでは、図書館の方に余り関与できなくて、大学の運営の方に関与されている。どちらかにいっていると思います。
ですので、大学全体として、図書館あるいは学術情報をどう自分たちの戦略の中に入れ込んでいくかということが、やはり余りうまく位置付けられていないということは思います。それはオープンアクセスのポリシーを出している大学は非常に少ないという現実を見ても分かるわけです。ポリシーがないということは、オープンアクセスに対して自分たちがグリーンなのか、ゴールドなのか、どうするのかというのが分からない。ただファンディングが求めているからこれはやらないといけない、何かその程度のところにとどまっているんじゃないか。これは研究者の意識の問題であり、大学の経営の問題であるということをここは図書館に任せるだけの問題ではないということを皆さんに認識していただいているんじゃないかなと。
【土井参事官補佐】 尾上委員、手が挙がっています。
【引原主査】 尾上先生、どうぞ。
【尾上委員】 すみません、尾上でございます。ありがとうございます。今の引原先生のお話とも近いというか、逆の意味もあってですね。結局、今もうこの電子ジャーナル問題というのが、大学の経営に対するインパクトは非常に強くなっています。多分、大学だけじゃなくて国研、国立の研究所もそうだと思うんです。そういう面でいうと、全くコミットしないわけには全然いかなくなってしまっているので、むしろ巻き込むようにしていけるんじゃないのかなというのが正直なところです。
我々のところもお金は出していただいているんですけれども、そこには例えば各部局から集めるお金とかでは全然足らないので、本部としてどういうふうにやっていくかというところで、さらに本部もなかなか定常的なお金にはしづらいというのもありまして、どちらかというと、取りあえず今年は出すよみたいなのがやっぱりあるんですね。そういう面でいうと、きっちりそういうところの方々、あるいは今の引原先生のお話でいうと、そこから権限委譲をきっちりもらった上で、どこかコミュニティというところで議論ができると有り難いかなと思っております。なかなか難しいとは思うんですが。
【引原主査】 ありがとうございます。非常に執行部側にいらっしゃる尾上先生ですから両方でお話しいただいていると思うんですけれども、今、小安先生からの話にあったように、尾上先生までの御意見で、JUSTICEの運営形態をもう少し決定権者が入るような形で議論できないのか、組織替えできないのかということがあったと思うんですが、平田さん、その辺はいかがですか。
【平田オブザーバー】 すみません、私の立場から何と言っていいのか分からないんですが、まずJUSTICEが今設置されているその位置付けとかそういったところで、まず大学図書館のコミュニティとして存在してしまっているので、そこのところをどういうふうに変えていけばいいのかというのがちょっと、今お話しいただいてもなかなか私の方でどうすべきというのは……。
【引原主査】 別に大学の図書館界がJUSTICEを維持したいと思っているわけではないと思うんですけれども、どうやって運営するかということがメインであって、そのためにこの組織をどう生かしていくかという、そういう言葉として小安先生から頂いたと。スケールメリットが十分生かせていない現状からすれば、メンバーを少し変えていくような組織体系をどこかで議論するということはまず大前提にあってもいいんじゃないかというような御意見だと。では、ここでちょっと……、はい、どうぞ。
【平田オブザーバー】 そのときによくJUSTICEの中で話が出るのが、JUSTICEでこういう交渉をしている組織があるわけですけれども、それと何かカウンターパートというか、話ができるところがなかなかないというのが今、一番よく話に出ています。例えばJUSTICEが最初組織替えするときには、やはり公私立大学にきちんとコンソーシアムがあって、交渉担当がいて、国立大学にもコンソーシアムがあって交渉担当がいて、それが合体する形でできていたわけですけれども、じゃ、今はそういう経営層とかのどういう団体がそういったことをお話ししてくださっているのかとかというのはよく分からない。どことお話をしていけばいいのか、まずはそういうコミュニケーションを取らなきゃいけないと思うんですけれども、どこと取ればよいかのか課題を感じているというのはあります。
【引原主査】 ここでは問題点を感じていらっしゃるということが明らかになりましたので、その辺の御意見を聞けたというのは大きいと思います。
じゃ、ちょっと話、ほかの点で御質問がもしございましたら、誰か。
【土井参事官補佐】 今、阿部豊先生と谷藤先生の手が挙がっています。阿部先生が最初です。
【引原主査】 じゃ、阿部先生、どうぞよろしくお願いします。
【阿部オブザーバー】 筑波大の阿部でございます。今の話にちょっと関係するのかなと思うんですけれども、質問と意見的なやつと二つあります。
一つは、質問は、資料1の16ページにカリフォルニア大学に代替アクセスチームというのがあって、代替のアクセスに関する何かアクティビティがあるという話がなんですけれども、これというのは、多分やめちゃうという、あるいは交渉決裂で購読しないという前提があっての話じゃないかと思うんです。それというのは、ある意味非常に強力な判断といいますか、0か100かという話になるかと思うんですけれども、それが一体どういう形になっているのかというふうな情報をもし少しでもあれば教えていただきたいというのが1点です。
あともう1点は、先ほどの経営層のという話なんですけれども、筑波大は、実は外部資金の間接経費を相当な割合を留保しちゃうんです。そこから例えば電子ジャーナルの経費とかを一応お出しいただいているんですけれども、これはある経営判断をしていただいた上で出ているんです。だけれども、それについては、第3期中期計画の期間の間は保障があるんですけれども、第4期においてはないんです。それについては、図書館が大学本部と交渉を多分今年とか来年せざるを得ない、そういう状況なんです。
例えばそういったふうなときに、国内でも何校かもう電子ジャーナルやめられましたというところもあったように聞いているんですけれども、そういう手段が果たして取り得るものなのかどうなのかです。前から実は何度かお聞きしている一連のことではあるんですけれども、そこら辺どうなのかなと思いましてですね。カリフォルニア大学が、そういう、なくても今やっていけるんだとしたら、どういうふうにやっているのかなというのが分かると、少し選択の余地というか、選択の一つになるか、ならないか、そこら辺確認したいかなと思ったんですが、いかがでしょう。
【引原主査】 ありがとうございます。これ、平田さん、よろしいですか。
【平田オブザーバー】 はい。カリフォルニア大学の代替アクセスのチームの話ですけれども、代替アクセスに関していえば、まず一般論としては、昔に比べれば、代替アクセスの手段はいろいろ広がっているんじゃないかなと思います。昔ですと、ジャーナルを購読しているか、購読していないというふうな方たちは、せいぜいILLしかなかったわけですけれども、今ですと、Pay Per Viewという形で一個一個の論文をお金を払って読む方法とか、あと、ソーシャルメディアを使った代替アクセスみたいなものがあり、私も実際使ったことないですけれども、ICanHazPDFのようなSNSを使った、ツイッターを使った論文をやり取りするハッシュタグとかがあるという、先ほどのカリフォルニア大学のレポートの中には書いてありまして、そういった形で昔に比べれば代替アクセスの手段は増えているというふうに考えています。
そういった中で、カリフォルニア大学の場合は、今までの購読状況とかによって、どのぐらいやめたときに影響が出るかというのはやっぱり変わってきますので、それぞれその大学での購読の状況をきちんと見て、今までアーカイバルアクセスの権利とかもありますので、そういったものをきちんと見て、やめることが前提ではなくて、やめるということになったときでもコミュニティに安心してもらうという形で準備は進めていったというふうにレポートには書かれているところであります。
【阿部オブザーバー】 よろしいでしょうか。先ほどの資料によると、カリフォルニア大学はElsevierと決裂しているので、多分購読はしていないんじゃないかと思うんですけれども、その上で、今、SNSとかを使った手段ということで、例えばアーカイブとかバックファイルとか、無料で手に入るとか、合法性があるというものはそういった形でうまくやればいいようになってきているということなのかなとは思いつつも、ただ、合法的にというところについてどの程度今進んでいるのか、それをもしこれもやっぱり分かる範囲で結構なんですけれども、何か先ほどちらっと、違法なものが結構はびこっているみたいな御発言もあったんですけれども……。
【引原主査】 すみません、阿部先生、その議論のときによく間違いが起こってしまうんですけれども、今まで契約した分に関しては購読は保障されるというのが契約になっているはずです。ですから、カレント以降のものが議論のポイントなので、まずそこを世の中の人はやめたら全部読めなくなると思ってしまうということにならないようにしないといけないと思います。カレントとしてこれから出てくるものに対する対策をどう打っていくかというのがここの議論じゃないかなと思うんです。平田さん、それでよろしいですか。
【平田オブザーバー】 はい、それでいいと思います。ただ、大学によってそこの今まで持っているアクセス権というのが違っているというのがやっぱりあるので……。
【引原主査】 もちろんそうですね。
【平田オブザーバー】 それぞれ大学ごとにきちんと、やめたときの影響を判断しなければいけないというのは間違いないと思います。
影響に関しては、カリフォルニア大学の場合は今はやっているのは、どうも遮断の影響を調べるアンケートとかいうのはやっているようです。ただ、ほかの国でいろいろレポートとかも出るんですが、大概の、例えば先ほどスウェーデンの例とかもあったんですけれども、スウェーデンのレポートとかを見ると、大学側が出しているレポートは、そんなに影響がないみたいなレポートになり、出版社側が出すレポートに関しては、すごく影響があるんだというようなレポートになりがちのような、とにかく自分たちに有利な数字を持ってきて、交渉のためにレポートを出しているというのが多分現状だと思うので、そういった形で戦っているのかなと思います。
【阿部オブザーバー】 どうもありがとうございました。
【引原主査】 契約中止の影響については、本当は国内でも情報はあるんですけれども、それは今日は聞かれたら嫌だろうと思いながらいらっしゃる委員もいると思うので、余りそこには話は持っていきませんがよろしいでしょうか。
【阿部オブザーバー】 はい、分かりました。
【引原主査】 おっしゃっている、要するに、間接経費云々でという話が阿部先生からありました。間接経費で賄っているところというのはかなりの数あって、そこで学内で間接経費をどれだけ出してくださいというのを交渉されるという話です。その学内交渉をそのまま出版社交渉の方になかなか持っていけていないというのが現実であって、2段階で、図書館が学内で交渉して、大学は図書館を経由して出版社と交渉するという何か非常に隔靴掻痒のような状態になっています。誰が決定をしているのかというのがやはり今のやり方の少しちぐはぐなところじゃないかなと思いますので、その点、阿部先生のお答えになったかどうか分かりませんけれども、ちょっとお答えさせていただきます。
【阿部オブザーバー】 ありがとうございます。全く引原先生おっしゃるとおりで。ただ、結局、最後に何で決まるかというと、総額、といいますか…。
【引原主査】 そうですね。
【阿部オブザーバー】 大学において金額で結果的に今、引原先生がおっしゃったような形のメカニズムということになるかなと思っております。
【引原主査】 ありがとうございます。
今、手を挙げていらっしゃる……、谷藤先生と先におっしゃっていたので、すみません、谷藤先生。
【谷藤委員】 谷藤です。平田さんというか、先ほどすばらしいコメントを御紹介ありがとうございました。お聞きしながら、また、林さんの言葉も頭をよぎりながら思っていたんですが、図書館からの提案とか図書館での交渉って、もうそれはたくさん大変なことがあるに違いなく、しかし、そこで分かっている課題をいきなり私ども国立研究開発法人物質・材料研究機構でいえば例えば理事長とか理事とか上位に持っていくって、これ、大変なことであり、それはもう引くか押すかを決めるぐらいまで持っていかないと、なかなか出るものが出てこないわけですね。
日頃からこの手の話でいつも思うんですけれども、例えばどこの大学あるいは研究機関でも、図書委員会のような、つまり、研究者で構成されたジャーナルのことを考える組織があるんだろうと思うんですが、そのレベルの交流というのはどうなんでしょうかね。国立研究開発法人物質・材料研究機構でも図書委員会に関わっている研究者は、そのことを非常によく考えるように経験上トレーニングされているので、あながちすごく外れたことでもないし、だけど、実感のこもった、非常に参考になる意見がたくさん出てくるんです。
最後はジャーナル単位でこれどうする? みたいなときにも、それを例えば継続しないときの理由が、図書館員が思い付く理由と、研究者、読者としての理由はやはり異質なんですね。役員のところに持っていくときにも、やはり研究者の声として持っていくというのはかなり効果がある、経験則上そう思うので、図書委員会の横断的何か交流の場があると、お互いにいいんじゃないかなと思います。あるいは、代表選手を送るという形でもいいでしょうし。
それをしておくと、次に先ほどちょっと御指摘があったような上位の決定権を持った人に持っていくときには、ほとんどの場合は、取りあえずという、理事長決裁でお金を出しましょうとか、取りあえず何とか決裁で出しましょうでその場をしのぐという決意になるんですけれども、それは継承性が往々にしてなくて、かつ継承性がないと複数年契約というような交渉力も持てないこともなるので、長寿命にならない契約をしなくてはいけないことになるという意味では、やはり研究者の声をまとめて、少なくとも3年はこれで行こうみたいなスキームが組めると、交渉力が上がるという相乗効果があるかなと思います次第です。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。非常に何か面白い案を言っていただいたと思うんです。恐らくどこの大学でも図書委員会なのか、選書委員会というのか分かりませんけれども、委員会があって、それを全体の協議会のようなところで承認していく流れを取っていると思います。昔の図書館の商議会というのがその流れをくんでいると思うんですけれども、そのレベルの人たちを育てておかないと、結局は図書館のジャーナルをどう運営していくかという、各大学あるいは研究所でランクアップができなくなるというのが現実にあると思いますので、今のアイデアというのは非常に私は面白いなと思いました。私もそんなところで鍛えられたというような経緯がございます。ありがとうございます。
何か今のことで……。
【林(和)委員】 関連してコメントよろしいでしょうか。
【引原主査】 どうぞ。
【林(和)委員】 林です。すみません。今の議論ですごく大事な点は、多分、今の若い人、具体的には30代以下の人が見る購読費ジャーナルと、あるいは我々この委員会で見ている購読費ジャーナルの景色というのはかなり違う、もう既に違っているということが拝察されるので、その人たちが20年後に苦労しないようなというビジョンを設定するような会議、委員会、そんな余り重たくする意図はないんですけれども、そういった観点からの集まりも委員会って作るときに非常に大きなポイントなんじゃないかなと思った次第で、ちょっと追加でコメントさせていただきました。
【引原主査】 良い意見ありがとうございます。
【小安委員】 小安ですけれども、一言。
【引原主査】 どうぞ、小安先生。
【小安委員】 今、谷藤さんのおっしゃったこともよく分かります。私ども理化学研究所でも研究者が集まった図書委員会を作っておりまして、委員長を私自身がやっています。私は昔、慶應大学にいたのですが、そのときに4年ほど医学図書館の図書館長をやっていましたので、こういう問題に関しては、ある程度経験がありました。ですから、研究者がどういうことを考えて、そのときの研究の流れなどで雑誌の取捨選択をしているかという辺りのところは、きちんと吸い上げるようなメカニズムは置いておかなければいけないと思います。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。今ここにいらっしゃる先生方は大概、昔からと言うとおかしいですが、図書、ジャーナルに関わってくださっているというのはよく分かっている話です。ところが、特に今、パッケージ契約になったときに、誰がどんなふうに利用しているかというのは把握できなくなっている。そういう問題をどうやって対処していくかということがやっぱり必要だということをまず理解しないといけないかと思います。
ちょっと待ってください。何か事務局。
【土井参事官補佐】 今、谷藤先生、阿部先生、小安先生、林和弘先生が挙手されているのですが、これは今もう発言されたという理解でよろしいでしょうか。
先ほど、竹内先生が挙手されていました。
【引原主査】 じゃ、竹内先生、お願いします。
【三宅学術基盤整備室長】 竹内先生、回線の状況が悪くて、今、接続が切れている可能性があります。
【引原主査】 じゃ、ちょっとお待ちするようにしましょう。じゃ、何かその間、どなたかありましたら、よろしくお願いします。
【谷藤委員】 いいですか、この隙間に。先ほどのRead&Publishという流れがありますよね。これって私、かなり注目しているんですけれども、これって論文を書く人にしか分からない感覚という側面と、買う人だから把握しておきたい側面、相反するものがこれ、セットになった話で、これは結構難しい話題で、インタレストがあっても、実践に持っていくのには、じゃ、自分の出す論文が行き先が決められてしまうのか、そういう論理でこれが走るのかというふうに思う人がきっと多いはずなんです。そうじゃないという声をどうやって吸い上げるかって、やはり先ほどの話に戻るんですけれども、メカニズムが要ると思います。
以上です。
【引原主査】 そうですね。ありがとうございます。
竹内先生、お戻りになりましたね。
【竹内主査代理】 すみません、竹内です。回線の状態が悪くて皆さんの発言が聞き取れなくなってしまっていたので入り直したんですけれども、議論に付いていけていないところがあるかもしれません。
さっきから申し上げたかったことがあって、それはカリフォルニア大学の契約についてなんですが、これについては、カリフォルニア大学の図書館の館長がインタビューの中で「バックファイルについては自分たちはきちんと必要なものは確保している」ということをはっきりおっしゃっていて、彼らはその上でカレントの戦略を立てていらっしゃるんですね。その点を我々は十分理解しておくべきであって、今はとにかく大手商業出版社には問題がいろいろあるから早く止めたいという声があるのはよく分かるんですけれども、そういう戦略的な思考をした上でやめるということを言ってらっしゃるのかどうかということについては、少し考えないといけないと思います。
また、アメリカの大学図書館関係者と話をしたときに、このカリフォルニア大学のキャンセル問題が話題になったんですけれども、その方はどちらかというと、従来のビッグディールを維持する方がむしろ図書館にとってはプラスというお考えの方なのですが、「スタンフォード大学はカリフォルニア大学からILLの依頼が山ほど来て困っているだろうね」と笑ってらっしゃいましたけれども、確かにそういったことがあるのかもしれないというふうに思っていますが、これもバックアップとして考えておかないといけない一要素であると思います。
その辺をつらつら考えたときに、今回の平田さんの資料で大変興味深いのは、フランスが、言ってみれば独自路線で行っているということがはっきり見えてくるということです。欧州では多くの国がRead&PublishないしPublish&Readのモデルに移行しつつある中で、フランスは従来の購読モデルを維持するという方向が見えていて、それに対してPlan Sの発案者などはかなり批判的に論じているというのを目にしたことがありますけれども、なぜフランスの立ち位置がそういうふうになっているというようなことについての背景を御存じでしたら、平田さんから少し補足していただけると有り難いなと思います。
【引原主査】 ありがとうございます。平田さん、つながっていますか。
【平田オブザーバー】 はい。平田です。
【引原主査】 よろしくお願いします。
【平田オブザーバー】 フランスに関してはちょっとよく分からないことも多くて、もうちょっと調べなきゃいけないとは思っているんですが、まずOA2020に関してはフランスは署名している機関が一つもないです。契約に関しては購読をベースに考えているんですが、彼らも全くオープンアクセスについて何も考えていないというわけではなくて、例えばElsevierとの契約に関していえば、オープンアクセスに関するオプションみたいな契約で契約を結んでいたりとか、WileyとはAPCの割引オプションを付けさせているとか、あと、SpringerNatureとの契約に関しては、やはり購読料とAPCの二重払いの解消を目指して交渉していたりという形で、結果として購読モデルをベースにやっているんですけれども、その中に、Read&Publishまでとは行かないんですが、オープンアクセス的な要素を含んで、二重払いみたいな形の疑惑を解消しようという動きがあるのは間違いないだろうなと思っています。私の方で分かっているのはそのようなところでございます。
【引原主査】 竹内先生、いかがですか。
【竹内主査代理】 ありがとうございました。大変分かりやすい説明で大変助かります。これはあくまでも私見ですけれども、Read&Publishモデルというのは、もともとドイツのマックスプランク研究所が今から十数年前に当時のSpringerと始めようとしていた、パブリッシングの場の囲い込みに近い形とでもいえばいいのでしょうかね、とにかく購読契約の中で、特定の出版社の雑誌に論文を出すということを研究者に対して誘導するという方向があったと思うんですけれども、その拡張版が今のRead&Publishになるんじゃないかという懸念が私にはずっとあって、それがすごく気になっています。
つまり、我々がこれから大きな方針を考えていくときに、Read&Publishのようなモデルで、とにかくゴールドOA的な要素を入れつつ、日本の研究者が一定量の研究成果を必ずそれらの出版社の雑誌を経由して出版するということを、言ってみれば政策的な方針としてある程度見せてしまうということに対して、日本のアカデミア、あるいは大学関係者は「それでいい」というふうに考えているんだろうかということなのです。
もしもそれでいいと考えていくのであれば、それこそRead&Publishのモデルで我々が今払っている購読の経費とAPCをどれだけ合理化できるかという話になっていくんだと思います。あるいは、日本としては、そうではなくてやはりフランスが取っているような方策もあり得るんじゃないかという立場で我々が今払っている購読費をAPCも含めてどこまで合理化できるかという話をするのかというところは、結構大きな分かれ目になるのではないかと考えているところです。我々としてはどういうスタンスを取るのかということは少し大きな決断になるのかなというふうにずっと考えていたところなので、ここで皆さんの御意見がいろいろ聞ければいいなと思っています。
【引原主査】 ありがとうございます。今の話からすれば、最初の話にあった、JUSTICEの対象とする大学のカテゴリーと言うと言い方おかしいですけれども、それによって今の自分たちの契約モデルというのは大きく変わってくるだろうなというふうにやっぱり見えてくると思うんです。だから、その中の合理的なというときに、今の全体500が平均取ってこの辺りというのはちょっとあり得ない。やはり戦略的にどうするかというのが見えてくるように思います。
竹内先生から今頂いた御意見にもあるんですが、そのときに、先ほど電子ジャーナル実態調査というのが結構あったと思うんですが、資料2の電子ジャーナルに係る実態調査結果。その中に、旧帝国大学、人社系、医学系、理工系、があるんですけれども、この中でのカレント契約の平均値というのは何かほとんど意味のないものだということが分かると思います。交渉の際に、自分たちはこれはどういうふうに交渉しているんだ、自分たちはどういうデータを基に交渉して、どういうふうな結論になっているのかということが、各大学にフィードバックされているんだろうかという点をJUSTICEさんにお聞きしたいんです。結果はこうなんだけど、本当、全体としては、おたくはこの中にあるんですよというのは、今まで伝わっているんでしょうか。
【平田オブザーバー】 それは出版社側にということですか。
【引原主査】 いや、各大学側にという。
【平田オブザーバー】 各大学側に?
【引原主査】 はい。
【平田オブザーバー】 統計的なデータはJUSTICEの方で取りまとめて大学側にフィードバックというのはしていますが、あくまで統計、総額でとか平均でこういう部分でというぐらいか出せていないので、JUSTICEの中でも、せっかくこれだけ大変な契約状況調査をやっている中で、なかなかそのフィードバックが得られていないんじゃないかという御批判はいろいろ受けているところがありますので、それで、2020年からそういった批判を受けて、何か更にできないかということで今考えているところでございます。
【引原主査】 財政あるいは本当に研究者の方の必要なジャーナルのことを考えたときに、どういう選択をしたらいいかというときのデータってやっぱり重要だと思うんですね。それが各大学は何かお金だけの面になっていて、高い・安いとか、そういう話になっちゃっている。だから、もう少し透明度のあるデータをそれぞれフィードバックして、まずは一度考えていただくということができているのかどうかが、やはり前から疑問ではあるんです。図書館で止まっているということだったら、それはそれで図書館の問題かもしれません。やはり経営と一緒になって考えていくために、基本データになるものは出していただければうれしいなとは思っております。
すみません、話が変なところに行っちゃったかもしれませんが、ほか、御意見ありましたら、あるいは御質問ありましたら、よろしくお願いします。御発言ない先生もいらっしゃると。
【土井参事官補佐】 今、林隆之先生と倉田敬子先生の手が挙がっています。あと、家先生もです。
【引原主査】 どなたがお先で?
【土井参事官補佐】 林先生が最初だと思います。
【引原主査】 はい、どうぞ。よろしくお願いします。
【林(隆)委員】 やはり今の議論や最初に小安先生が言われたように、国全体としてどうしていくかという議論がないと出版社と交渉できないというのはあります。しかし、研究大学とそれ以外のところで、契約の実績額も違いますし、あるいはミッションも差別化していくというところで、どこまで一丸となっての契約を目指すべきなのか。それとも、旧帝国大学と理化学研究所とか、もう研究大学あるいは、RU11でもいいんですけれども、そういうところでの取組をJUSTICEが支援していくとか、何かまた違う実施体制みたいなことを、もうもしかしたら検討しているのかもしれませんけれども、そっちの方が何かうまくいかないのかなというふうなことを今聞いていて感じたわけなんです。
平田さんはたまたま東京大学から出向されているということですけれども、JUSTICEの活動と、それから、東京大学を中心とするようなRU11とかその辺りでの例えば研究担当理事の間での議論とかそれも含めてですけれども、そういうところの関係性、国公私の全ての大学の図書館という形ではないようなグループとの関係というのはどうなっているんですか。
【引原主査】 平田さん。
【平田オブザーバー】 すみません、私、東京大学から出向という形なんですけれども、東京大学に勤務したことが一度もなくてお答えできない部分もあるんですが、まず一丸となってどうかという話なんですけれども、JUSTICEのこれまでの交渉の経緯からいくと、特定の大学とか特定の部類の研究を行っている大学に関して、そこだけが有利になるとか、そこだけがうまくいくような交渉というのは実は余りしていなくて、やっぱりせっかく国公私一丸となったので、国公私全体で全体最適を目指して交渉していたというのが今までずっとあります。なので、できるだけいろいろなところで余り有利・不利がないような形で交渉するというのが今までの交渉です。
今回、そういうふうにずっと出版社さんにお願いして交渉していたんですが、Read&Publishとかオープンアクセスの提案に関しては今までお願いしていたことを取っ払って交渉していこうと思っているので、そういった提案をお願いしますという形でお願いをしているところがあります。そういったこともあるので、なかなか今までのJUSTICEの交渉の方針からすると、どうしても一丸となって全体最適を目指して交渉するというのが今までの流れになっているというふうに思います。
あと、RU11さんの方ですと、やっぱりRU11さんの方のそれを検討しているグループもありますので、そちらの方でいろいろ話をされているというふうには聞いているんですが、なかなかそちらの方で足並みがそろわないんだという話もちょっと聞いたことがありますので、なかなか経営層の方が集まってジャーナル問題の話をしても、足並みをそろえるのも大変なんだなというふうにそういうときにはお聞きして思っているところではございます。
すみません、以上でお答えになっていますでしょうか。
【引原主査】 林先生、いいでしょうか。
【林(隆)委員】 いいですか。平田さんの実際にやられている経験として、国公私一枚岩になってやっていくというのがうまくいかないという認識をお持ちなのか。実際に交渉してみて、それだともううまくいかないという感覚があるんだったら、次のステップに行かないといけないと思うし、それを堅持しなければいけないというふうにお考えなのか、その辺りの感覚はいかがなんですか。
【平田オブザーバー】 正直申しますと、最初の頃すごく苦労したことがあったので、やっと国公私合わさって交渉するのに落ち着いてきたなという感覚がちょっとあるので、またここでいろいろあるのかというのは悩ましいなというふうに思うところはあります。ただ、いろいろ今まで交渉していく中でかなりの手詰まり感があるというのは間違いないので、何か次の新しい交渉のカードというか、そういったものが必要なんじゃないかということで、組織を変えるというのももちろんカードになるのかもしれないですけれども、今のところ、JUSTICEとしてはオープンアクセス要素を一つのカードとして使っているというのがありますので、さっき言ったように、いい面もあれば、悪い面もありますので、これを崩すとなると、やはりかなりのメリット、どの辺にあるのかというのを見極めながら新しい組織を考えなきゃいけないとは思います。
【林(隆)委員】 ありがとうございます。
【引原主査】 倉田先生、いかがですか。
【倉田委員】 皆さんの議論を聞いていて、皆さん同じところを問題にしていらっしゃるのですけれども、ちょっと見方がそれぞれ違うのかなというふうにお聞きしていました。
一つは、JUSTICEがここまでやってこれたのは、図書館というある種の共通枠のところでやってきたからうまくいった部分というのはやはりあって、これが突然、大学全体の共同体でみんなで議論しましょうという話にはならないんだろうとは思います。それでも、引原先生もおっしゃっていましたように、大学側が大学の経営戦略の一つとして、図書館という枠だけじゃなくて、学術コミュニケーション全体のことをもっと戦略の中に入れていってもらわないと話が始まらないのは事実でして、そこをどうやってうまく伝えるのかというところだと思います。
それにはやっぱりオープンアクセスというのが一つのきっかけだと思います。Publish&Readは無理でも、Read&Publishでも、それから、ビッグディールにAPC割引を付けるだけにしても、これ、図書館によっては、大学によってできるところもおありになるでしょうけれども、今の図書館のシステムの中では、図書館ができるのは雑誌を買うことだけですね、基本は。ですから、Publish、これは研究成果を出すということになった瞬間に、図書館員が何も言えなくなり、他の部門が入ってきてしまうわけですね。それはもっと広い文脈の中で、大学の経営層の一部を巻き込んだ形で、そういう組織を別に草の根的に各大学がやっぱり作っていただかないと、これは話が多分始まらないと思います。
なので、今のJUSTICEとそのような組織を即一本化というのはやっぱり難しいのではないかというふうに感じています。余り具体的な戦略にはならないのですけれども、やはり両方から攻めていって、どこかでうまくそれが連合できる部分から連携していくというようなことですね。その辺がうまく考えられないのかなということと、やはり竹内さんもおっしゃったように、バックファイル、過去のものは最低限のセーフティネットだけは何とか、国立情報学研究所など少し広いところでセーフティネットのところだけは何とか保障してもらい、それ以外のところはもうばらばらになってもしょうがないというような図が描けると最もいいのではないかなというふうに感じました。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。JUSTICE自身で動きにくいところも当然ありますので、今、JUSTICEに依存というか、依頼している図書館側というのがもう少し違う動きをしないと、JUSTICEも動きにくいだろうなというのが正直、今、倉田先生の話を聞いて感じたところでございます。
今の件、平田さんいかがですか、何か。
【平田オブザーバー】 平田です。そうですね、確かにJUSTICEがすぐに何かというのはなかなか難しいというのは確かだと思います。ただ、おっしゃってくださったように、両方から攻めていって連携していくというのがやはりまずは第一歩かなというふうに。たしか公私と国立大学のコンソーシアムが合併するときにも、そういった情報のまずは交流があってから成し遂げられたところもありますので、そういったところがまずは下地としては必要なのではないかなと思います。
あと、出版に関しては、やっぱり研究者の方が関わってこないと話が進まないというのはもうそれは間違いなくて、それはOA2020のベルリン会議でも言われていることでして、やはり交渉している中で必ず言われるのは、出版のところまできちんと図書館側で見てもらえるんですかというのが向こうから言われて、そこで没交渉になってしまうということはやっぱりありますので、そこのところをうまくコミュニケートしてうまくできる大学だけがそういったRead&Publishとか、Publish&Readの契約に乗れるというところもあるので、そこのところの動きというのも連携していかなければ先には進まないなというふうには考えております。
【引原主査】 ありがとうございます。
お待たせしました。家先生、どうぞ。
【家委員】 家です。今日、交渉力とかオールジャパンの体制とか非常に本質的な戦略の議論が進んでいるところで、ちょっと話がずれちゃうかもしれませんが、せっかく用意していただいた資料ですので、特に実態調査について、データの読み方を質問させてください。
参考資料2の実態調査に示されている契約実績総額の年次変化についてです。もちろんメインの契約はカレント契約だと思うんですけれども、目に付くのが、バックファイルの購入額のデータが急激に変化しています。全体的に年々減少しており、かつ、少なからぬ数の大学で2019年の額が0になっているんですけれども、これの見方としては、「バックファイルは既に確保したから0になっている」のか、それとも、「まだ整備不十分だけども、無い袖は振れないから0になっている」のかという、その辺いかがなんでしょう。
【三宅学術基盤整備室長】 調査の結果からはそこまでの背景までは確認をしておりませんので推測にはなりますが、やはり2種類あるかと思います。予算上なかなか確保ができないという観点と、バックファイルについては基本的には買取りですので、だんだんそろってきていてという観点の二通り考えられます。ただ、バックファイルの金額もいろいろ多寡がありますので、各大学において状況はかなり異なってくるのではないかというのがこちら作成した段階での推測ではございます。
【家委員】 ありがとうございました。
【引原主査】 バックファイルというか、これ、人社系も、理工系もいろいろあると思うんですけれども、全体的にやっぱり痩せてきているというのは大学にいる者としても分かっています。なかなかバックファイルまで買いそろえるという段階に行かないのと、ある程度たまってから買おうかという話も当然ある。両面あるので、毎年の流れで見るのか、あるタームで見るのか、ちょっとそこは違うかもしれないなと思った次第です。
平田さん、はい、どうぞ。
【平田オブザーバー】 すみません。JUSTICEでも契約状況調査をしているので、多分そうだろうというところなんです。ちょっと確認しないと分からないんですけれども、2019年のデータに関しては、これ全て実績なので、これからまだ、2019年の途中に調査をしているので、これから買う金額が入っていないと思います。なので、2017、18に関しては恐らく購入実績なんですけれども、2019年に関しては予算化されている額がたしか計上されているはずなので、0になっている大学が多いのではないかと思います。
【引原主査】 ありがとうございます。
家先生、そういう回答でよろしいでしょうか。
【家委員】 分かりました。ありがとうございます。
【引原主査】 はい。
【土井参事官補佐】 事務局です。何名か先生、手が挙がっていますが、まだ御発言のない先生ですと、喜連川先生の手が挙がっています。
【引原主査】 では、喜連川先生、どうぞ。
【喜連川情報委員会主査代理】 喜連川です。切れ切れでいろいろなことがあったので全部出られていないんですが、たまたまバックファイルの話がいろいろ議論されていますので申し上げます。去年にヒアリングがありましたマスタープランではちょっと控えたんですけれども、その3年前のマスタープランの中で国立情報学研究所の方からバックファイルの申請をいたしました。
それで、これ、すごく地味な話ではあるんですけれども、なぜかよく当時は分からなかったんですが、非常に共感を覚えまして結構上の方に残りまして、文部科学省の大型の委員会のヒアリングまで行ったというのが実態です。そういう意味でいうと、ニーズは極めて高いなということを当時感じました。しかしながら、大型研究のコンテクストでは、研究がどちらかというと重点的に議論されますので、よくある話なんですけれども、これはここの委員会の所轄範囲ではないなみたいな感じで落っこっちゃったというのが実情でございます。その情報だけ皆さんとシェアしておくといいかなと思ってお話をさせていただいた次第です。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。そういう情報を頂きますと、バックファイルを申請していくということもあながち間違ってというか、予算化される可能性もあるという一つの望みを提供いただいたようには思います。
ほか、手を挙げられてまだ御発言いただいていない先生ありましたら、事務局、御指摘ください。
【土井参事官補佐】 今、阿部先生が手が挙がっています。
【引原主査】 じゃ、阿部先生、よろしくお願いします。
【阿部オブザーバー】 筑波大の阿部でございます。先ほどの資料2の契約実績総額、この資料を見せていただきまして、誠にありがとうございます。エラーバー付きというのがすごい価値があるなと実は思っています。この幅が非常にリアリティーのある、どういうエラーバーの付き方か、上限値か下限値か、マイナスもあるのでひょっとして標準偏差なのかなと思うんですけれども、3億円ぐらいの幅の中に例えば旧帝国大学だとか入っているということだとすると、これ自体が非常に情報だなというふうにありがたく拝聴しています。
といいますのは、先ほど来お話ありましたように、研究者の方々のニーズを吸い上げるということと同時に、執行部の方とちょっと交渉するということが必要で、それを基に多分JUSTICEさんの方の御助力とかいろいろ援助を頂きつつ、あるいは出版社と交渉するとか、三位一体の感じが必要なときに、やはりこういう情報が、とにもかくにも初めて拝見したような気がしますので、エラーバー付きのやつですけれども、平均値じゃなくて、これ、非常に力になるんじゃないかなというふうには拝見いたしましたが、改めてエラーバーの意味を教えていただければと思いますけれども、いかがでしょう。
【引原主査】 事務局、お願いしていいですか。
【三宅学術基盤整備室長】 事務局からよろしいでしょうか。こちら、エラーバー、御指摘のとおり、標準偏差で表しています。このデータでそれがふさわしいかどうかというのは論点あると思いますが、今回付けさせていただいたものは標準偏差で1σの数字を表現させていただいております。
【阿部オブザーバー】 それでマイナスが出ているんですね。
【三宅学術基盤整備室長】 そうです。
【阿部オブザーバー】 上限値、下限値ではないと。
【三宅学術基盤整備室長】 はい、そうでございます。
【阿部オブザーバー】 分かりました。
【引原主査】 阿部先生いろいろ見てられるから、このエラーバーがないとなかなか理解できないなと思っていらっしゃったと思うんです。私も思っていて、事務局に何とかなりませんかと言ってお願いしたところです。もともと契約額の違いというのは、電子ジャーナルになる前どれだけの冊子体を契約していたかという、そこに由来しているものがあって、結局そこまでの部分に対してバックファイルが読めるという状況を確保した形でお金が払われているわけです。だから、平均値というのはほとんど意味がなくて、各大学にそれぞれの資産としてどれだけ見えているかということをやっぱり考慮しないといけない部分があります。それに関しては、ほかの大学が切られたときになくなってしまいましたのこの差額の部分というか、エラーバーの最大と最小の部分と言うとおかしいんですけれども、あの部分はなくなってしまう可能性があるという理解になると思います。
【阿部オブザーバー】 あと、あれですね、やはりビッグディール、それぞれの大学ごとに多分下がったりすると思うので、それについてはバックファイルの一応物理量とか違ってくるんじゃないかなとも思ってはいるんですけれども、ただ、そういう意味でいっても、個別の交渉みたいなものもありつつ全体でのというふうな意味になるのかなとは思っています。
【引原主査】 ありがとうございます。
ほかでまだ御発言ない方、もうそろそろ時間にはなっているんですけれども、いらっしゃいませんか。
今日は、主に電子ジャーナルの実態調査というか、JUSTICEの交渉の状況、それから、海外の状況、それから、各大学あるいは機関の実態調査のデータを出していただいたわけですが、これ、各大学に戻ったときに、個々の状況になったときはそれが最適とは言えないというのがもう明らかなことだと言えます。
この委員会で問題を解きほぐしましょうという話をしたときに、電子ジャーナルの価格交渉を見ても、非常に問題が複雑化しているのは、やはり流れの中で最適を目指している中でいろいろなものを取り込んできているわけです。取り込んでいった結果、自分たちでも解きほぐせなくなってきて、元に戻さざるを得ないというような意見も出てくるというのが現状じゃないんじゃないかと思います。
研究者の方は、カレントの話とアーカイブの話がやはり混乱しています。過去のものが見えなくなるということを気にされる方がいる一方で、現在のものが見えなくなるということは余り気にされなかったりもあります。というのは、恐らくプレプリントがあったりとか、ほかの手法があるからだと考えられます。だから、そこも切り分けないと本当はいけないので、今回のバックファイルをきちんと確保する、竹内先生の言葉で言えば、セーフティネットを確保した上で、どうやって将来のものを選んでいくかという議論が今日の大きな話であったのではないかと思います。
それから、それを支えていく若い人たち、次の世代で交渉をきちんとしてくださる方を育てていくかというのはこれは非常に重要ですが、本当にジャーナル問題なのかどうか、そこは違うものになっている可能性もあります。ですから、そこはまたちょっと将来の課題としておいておいて、今日のところは、ジャーナルの現状を理解していただいた上で、一度今度はもっと赤裸々な議論をクローズドという形でやらないといけないかもしれないと思います。事務局の方でもまた検討いただければと思っております。
一応御時間が参りましたので、そろそろ事務局の方へ戻したいと思いますが、今日まだ足りない御意見につきましては、メール等で事務局にお送りいただくということも可能かと思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
事務局、お戻ししてよろしいでしょうか。
【土井参事官補佐】 事務局でございます。
本日の議事録につきましては、各先生に御確認を頂いた上で公開をさせていただきますので、引き続き御協力をお願いいたします。
次回第4回以降の日程につきましては、資料5のとおり、7月20日、また、第5回として8月20日、いずれも16時から18時で予定させていただいておるところでございます。開催方法を含めまして、決まり次第改めて御連絡はさせていただきたいと思っております。
なお、繰り返しとなりますけれども、本日の非公開資料につきましては、取扱いに御注意をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【引原主査】 すみません、1点よろしいですか。今回、補足の資料で学術会議の提言を付けていただいていると思います。それについては一度内容をお目通しいただければと思いますので、委員の先生方、ぜひともよろしくお願いいたします。それだけです。
【土井参事官補佐】 説明をせずに申し訳ありません。
【引原主査】 では最後、事務局の方からよろしくお願いします。私がやった方がいいですか。どうしましょうか。
というわけで、じゃ、時間になりましたので、本日はこれで終わりにさせていただきます。どうもお忙しい中、ありがとうございました。
 

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