ジャーナル問題検討部会(第8回)議事録

1.日時

令和2年11月26日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. ジャーナルに係る課題について
  2. その他

4.出席者

委員

引原主査、竹内主査代理、家委員、小賀坂委員、尾上委員、倉田委員、小安委員、高橋委員、谷藤委員、林和弘委員、林隆之委員

文部科学省

杉野研究振興局長、橋爪参事官(情報担当)、三宅学術基盤整備室長、土井参事官補佐

オブザーバー

阿部 前国公私立大学図書館協力委員会委員長、筑波大学副学長・附属図書館長、上保 国立国会図書館利用者サービス部科学技術・経済課長、須田 国公私立大学図書館協力委員会委員長、慶應義塾大学メディアセンター所長、平田 大学図書館コンソーシアム連合事務局長、国立情報学研究所学術基盤推進部図書館連携・協力室長

5.議事録

【引原主査】 では、ただいまから時間になりましたので、第8回ジャーナル問題検討部会を開催させていただきます。
本日も、コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインで開催することといたしております。通信状態の不具合が生じるなど続行できなくなった場合には、検討部会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
それでは、事務局より本日の委員の出欠状況、配付資料の確認、オンライン会議の注意事項について、御説明をお願いいたします。
【土井参事官補佐】 事務局でございます。本日は委員の先生方、皆様御出席でございます。なお、オブザーバーの阿部先生は1時間程度遅れての御参加となります。
本日も傍聴の方々を冒頭より入れてございますので、御承知おきください。傍聴希望の登録は94名でございます。報道関係者の方からも登録がございました。
続きまして、配付資料の確認でございます。直前の送信になって大変申し訳ございませんでしたが、配付資料1から資料5まで事前に送らせていただいているかと思います。
オンライン会議の注意事項でございます。まず、通信の安定のために、発言を除きまして常時ミュート、又はビデオをオンにしていただければと思います。主査におかれましては、常時ミュートを解除、また、ビデオをオンにしていただければと思います。
発言をする場合は、手のアイコン又は挙手をクリックして御連絡いただければと思います。主査におかれましては、参加者一覧を常に開いておきまして、手のアイコンを表示している委員を指名いただければと思います。指名された先生方は、御自身でミュートの解除の操作をお願いいたします。また、発言の後は、また先生方御自身で手のアイコンの非表示、また、ミュートの操作をお願いいたします。
速記者を入れてございますので、発言をする際は、お名前から発言いただきまして、ゆっくりはっきり発言いただければと思います。また、トラブル発生時は、事前にお知らせした事務局の指定の電話番号に御連絡をお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【引原主査】 ありがとうございました。それでは、早速ではございますが、開始させていただきます。審議に入る前に、まず、事務局より中間まとめについて報告をお願いします。よろしくお願いします。
【三宅学術基盤整備室長】 事務局でございます。資料1の中間まとめについて、御報告をさせていただきます。
中間まとめにつきましては、前々回9月と前回10月と、2回にわたりまして本委員会にて御議論いただきました。9月から10月に関しては、構成等も含めて大きな変更を行いましたが、前回の御議論では、大まかな構成につきましては御了承いただきまして、改めて会議後に修正の点につきまして、意見を各委員の皆様から頂いたところでございます。その後、細かい表現、文章の流れ等、御意見を踏まえ、事務局にて修正を行いまして、委員の皆様にメールにて文案を照会させていただきました。その際、内容等大きな修正がない場合は、修正については主査に御一任いただくということで御確認をさせていただいたところでございます。
その後、頂いた意見につきましては、その内容を反映しまして、引原主査に御確認、御了解いただきました。その内容が資料1でございます。こちらにて、ジャーナル問題検討部会における中間まとめとして、確定させていただければと思います。
なお、本日は、内容の御紹介については、委員の皆様には既に内容について御検討いただいている内容でもございますので、この場では改めての紹介は省略をさせていただければと思います。
今後、本件につきましては、こちらはジャーナル検討部会の親部会である情報委員会に報告させていただくほか、各外部の各種会議においても内容について御紹介をさせていただければと考えております。
事務局からは以上でございます。
【引原主査】 ありがとうございました。中間まとめにつきましては、皆様に御意見を頂きまして、本日まとめることができました。御協力ありがとうございました。多々の文章の修正、あるいは、よい方に改善の御意見を頂きまして、ありがとうございました。
今後の取扱いは今、御説明があったとおりでございますので、こちらにお任せいただければと思います。よろしくお願いいたします。
では、本日の内容に移らせていただきますが、音声は大丈夫でしょうか。ありがとうございます。
続きまして、Elsevier社より、大学図書館コンソーシアム連合、JUSTICEとの関係で報道発表がなされております。当初、これは議題にはございませんでしたが、本日、JUSTICEの事務局長の平田オブザーバーより御説明いただくことになりました。よろしくお願いいたします。
【平田オブザーバー】 JUSTICE事務局の平田です。本日はElsevierのプレスリリースについて説明してほしいという依頼がありましたので、御説明します。
資料の方なんですが、こちらはJUSTICEからのニュースになります。2020年11月18日付けで、Elsevier社からプレスリリースが出ております。オープンアクセスの目標を支援するための購読契約提案がElsevier社からありまして、基本条件の合意に至っています。
提案につきましては、既にJUSTICE会員館には、8月末にお知らせしているところであります。会員館の方はそちらの詳細を見ていただけると、もっと詳しく分かるのではないかと思います。ただ、詳細については、会員館だけに開示するということになっておりますので、本日はその枠組みについて、簡単に御説明したいと思っております。
2021年1月から開始される提案でして、JUSTICEの会員館はこれまでの購読契約、いわゆるビッグディールの契約、それとゴールドオープンアクセスを促進する提案という2つから選択して、契約することができます。もちろんどちらの提案も選ばないことも可能になっています。
ゴールドオープンアクセスを促進する提案というのは、OA出版する著者の経済的負担を軽減するという提案になっていまして、つまり契約機関が購読価格に金額を上乗せすることで、所属する著者がAPCの割引を受けられるという提案になっています。なので、いわゆるRead & Publishとは異なる提案ということになります。それに加えまして、グリーンOAを支援するオプションがElsevier社から提供される提案になっております。契約大学はリポジトリ経由でElsevierのサーバー上で提供する、著者最終稿を閲覧できるサービスというのが提供されます。
参考で、JUSTICEのOA2020のロードマップを付けさせていただいたんですが、ロードマップの2ページ目のところにありますが、資料3ページ目の方です。その辺りなんですけれども、OA出版モデルの契約に向けた試行というところがあるんですけれども、そこにありますとおり、JUSTICEは多様なモデルを交渉対象としておりまして、この後の3ページ目の注釈6が少しあるんですが、そこにありますとおり、APCの割引ですとかクーポンの発行というモデルも交渉の対象として受け入れるということで、現在、交渉しております。Elsevierの提案は、多様なモデルを受け入れるというJUSTICEの交渉方針に沿って提案があったものということになります。
こちらから枠組みについての御説明は以上です。
【引原主査】 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対しまして、御質問等ございましたら、手のアイコンを挙げていただければと思います。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。竹内先生、よろしくお願いします。
【竹内主査代理】 千葉大学の竹内でございます。御説明ありがとうございました。
今の御説明の中で、1点引っかかっている点があるので、確認をさせていただきたいんですけれども、文章の中でグリーンOAを支援するということになっております。グリーンOAという言葉の定義の問題ですけれども、通常これは、コンテンツそのものは大学なり、研究者なりが持っている状態でオープンアクセスをするということであって、今回、Elsevierが御提案になっているような出版社サイドでのOA化というのは、通常グリーンOAとは言わないのではないかと私は考えております。その辺はいかがでしょうか。
【平田オブザーバー】 そうですね。そこのところはなかなか難しいところだと思ってはいるんですが、ただ、これがゴールドOAかと言われれば、ゴールドOAではなくて、プレプリントサーバーとか、いろいろなところで著者最終稿を発表するというのもグリーンOAという考え方もあるのかと思っておりまして、Elsevierの考えからすると、グリーンOAというか、機関リポジトリの作業を支援するという形で、このような表現になっているのではないかと考えております。
以上で、お答えになっていますでしょうか。
【竹内主査代理】 平田さんのお考えは分かりましたけれども、グリーンかゴールドかというのは、それなりに大きな意味の違いを持っているはずで、それは学術情報流通の主導権をアカデミア自身が維持するという立場を取るのか、それとも、それは出版社に委ねるという立場を取るのかという、非常に大きく判断が分かれる要素だと思うんです。
ですので、今回Elsevierがグリーンという言葉を使ってこのプレスリリースをお出しになったというのは、私は問題があると考えておりまして、誤った情報を様々な方に伝えることになるのではないかということを大変懸念しております。JUSTICEに恐らく何らかの御相談はあったのではないかと推測をするわけなんですけれども、その段階で、止めていただく必要があったのではないかと非常に強く思っております。以上です。
【引原主査】 平田さん、いかがでしょうか。よろしいですか。
【平田オブザーバー】 すいません。JUSTICE事務局の平田です。そのように言われてしまえば、そのような考えの方もいらっしゃると思うので、慎重に対応すべきだったかと反省はしております。
以上です。
【引原主査】 谷藤先生、では、よろしくお願いします。
【谷藤委員】 今の御質問に、更に重ねるようで恐縮なんですけれども、確認したいのは、この合意によって研究成果が出版社側にあるということなのか、それとも各大学側にあるということなのかという点に絞って言うと、出版社側にあるんですね。
【平田オブザーバー】 はい。それはこれまでと変わらず出版社側で、出版社側が……。
【谷藤委員】 大学がセーフティーネットとしても持つであろう、機関リポジトリ側の論文情報というのは、このスキームの中ではどういう扱いになるんですか。
【平田オブザーバー】 機関リポジトリの機能として、PDFに著者最終稿をもって保存するという考え方と、あと、自分たちの大学の研究成果を公表していく説明責任を果たすという二面があると思うんですけども、前者の方は、これは恐らく著者最終稿、Elsevierの方で公開しますので果たせないとは思いますが、2番目の機関リポジトリが大学の研究成果の公表と説明責任を果たすという面では、ある程度、担っている形になっているのかと思っております。
【谷藤委員】 そうすると、論文及び論文に附属するデータという情報は、出版社側のハンドリングの中にあって、そこに対する各参画大学からのアクセスはどういうことになるんですか。何か提供されるんですか。
【平田オブザーバー】 Elsevierの方としては、メタデータを機関リポジトリに提供すると言っています。
【谷藤委員】 メタデータだけじゃ仕事にはなかなかしにくいかと思うのですが、論文という論文データは何か提供されないと、リポジトリ側に残るものが、資産がなくなりますよね。それはどういう約束に、これはなっているのかしらという点なんですけど。
【平田オブザーバー】 論文のデータは、もともとElsevierの方で持っていますので、Elsevierで持っている著者最終稿をサーバー上で見せてくれるというサービスですので。
【谷藤委員】 なるほど。分かりました。
なかなかスキームの施行の過程で、そこら辺の情報集約、活用の力の関係が、バランスが取れていくようになっていくといいですね。応援しております。質問を終わります。
【平田オブザーバー】 ありがとうございます。
【引原主査】 ありがとうございます。なかなか谷藤先生、厳しい御見解のようでしたが、ほかはいかがでしょうか。谷藤先生、手を下げておいていただけますと助かります。
倉田先生、よろしくお願いします。
【倉田委員】 重ねての確認で申し訳ないんですが、例えば今、Elsevierでは、原稿が論文のPDFとは別に、オープンビューマニュスクリプトという形で、直接見られるようになっていますが、ファンディングとの関係でそうなっていますけれども、それと同じようになると考えてよろしいのでしょうか。
それと、もう一つ、機関リポジトリが著者最終稿を持つことは許されなくなるということなのか、そこが私理解と違っていたもので、よろしくお願いいたします。
【平田オブザーバー】 これまでどおり、リポジトリの方で著者最終稿を持つということは全く問題がないと思います。Elsevierの説明としては、著者最終稿を大学で集めるのが大変だという声に応えて、Elsevierのサーバー上で著者最終稿を提供するサービスをすると言っていますので、そこの部分は問題ないんじゃないかと思います。
あと、もう一つが、ファンディングを使ってPDFが見られるという話がありましたけれども、それと同じような仕組みを使っているんですけども、全く同じではなくて、それぞれの契約を結んだ大学の機関リポジトリを通して接続が来たものに関して、一番最もよいバージョンの論文のPDFを見せるとElsevierは言っています。
【倉田委員】 分かりました。ありがとうございます。
【引原主査】 ほか、いかがでしょうか。林さん、どうぞ。
【林(和)委員】 御説明ありがとうございます。
少し先の議論になってしまいますが、また、これは表現の仕方が大変難しいんですけれども、今回の提案はElsevierさんと、ある意味共存していきますという宣言にも読めなくもなく、それをいたずらに指摘するものではないんですけれども、今後、図書館サイドとして、ほかの出版社などを含めて、どういったオープンアクセスというか、学術情報流通の改善のためのビジョン、シナリオがあるのか、公開のこの場では、むしろ内情を明かさない方がいいと思いますので、その辺りはどのぐらい事前に詰められていたのか、あるいは、今後どのように考えられようとしているのかを伺えればと思います。
【引原主査】 いかがでしょうか、平田さん。
【平田オブザーバー】 JUSTICE事務局の平田です。
JUSTICEの今の立場としては、いろいろな多様なものでまずは受け入れるという形で、今は作業を進めていますので、ほかの出版社さんからいろいろな提案、ほかにも提案が出てきていますけれども、そういったものに関して、ある程度、日本でニーズがありそうなものに関しては、まずは試行という段階になっていますので受け入れることを、JUSTICEとしては、今はそんな形で考えております。
お答えになっていますでしょうか。
【林(和)委員】 御事情を含めて理解しました。その上で、次の具体的な話として、どこか提携しそうなところがあるという理解でよろしいでしょうか。これだけ大々的に宣伝しているということは中立性の観点から他の提携も視野に入っているかと思われます。それともまだ平場に出してみないと、実際この仕掛けが通用するか、今回の提携でいう挑戦的なオプションを選択する図書館がでるかどうか分からないということなんでしょうか。
【平田オブザーバー】 経済合理性からいくと、この提案を受け入れる土壌になる大学はあると判断しているんですが、ただ、お金の出どころですとか、学内の事情とか、あと、学内のいろいろな戦略とかがありますので、これを見て乗るか、乗らないかという判断は、今、それぞれの大学で検討しているのではないかという段階ではないかと思います。
【林(和)委員】 ありがとうございます。
【引原主査】 小安先生、よろしくお願いします。
【小安委員】 ありがとうございます。今、リンクを全部読んでみたのですが、中身は見ても全く分かりませんでした。これは結局、最後まで我々は分からないままに行くということになるのでしょうか。だとすると、ここでどういう議論をしたらいいか、全然分からなくなってしまったので申し訳ありませんが、中身に関してどこまで我々が知ることが可能かということを教えてください。
【引原主査】 それは平田さんに回答してもらってよろしいですか。
【平田オブザーバー】 JUSTICE事務局の平田です。一応、出版社から提案を受けるときには、提案の詳細について、外部には一応、会員館だけに情報提供するという形になっているので、なかなか全てをさらけ出してお知らせできないというのが難しいところだと思っているんですが、ただ、これからもJUSTICEとしては、出版社に対してできるだけ議論ができるように、特にオープンアクセスに関する提案に関しては、できるだけ透明性を持ってという話も海外では言われていますので、できるだけ出せる情報については出していく方法で、お話しさせていただければと思っています。
【小安委員】 今日はいろいろ傍聴の方もおられるので無理だということは分かるのですが、何らかの情報がないと、我々が議論を全然進められないというのは非常に気になりました。そこは主査にお考えいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【引原主査】 特に理化学研究所の場合、JUSTICEとの関係がありますので、その辺は気になると思いますので、よろしくお願いします。後でまた、よろしくお願いします。
ほか、いかがでしょうか。手が挙がったままの方もいらっしゃるのかな。林さんも挙がったままでしょうか。挙げておられるんですか。
【林(和)委員】 すいません、下ろします。
【引原主査】 ほか、いかがでしょうか。いろいろな情報が伝わる前に、報道というかウェブ等でリースされて、プレスリリースされているという現状が疑心暗鬼を生んでいるというのは確かでして、こういうやり方というのは、はっきり主査として言わせていただければ、研究者と図書館と大学と、それから出版社の間を分断するやり方だと思います。こういうやり方をする限りは、JUSTICEというのは信用されない。それは出版社も信用されないということだと思います。既に研究者にElsevierから、これは傍聴の中におられるからわざと言いますけれども、一本釣りのように研究者にメールが行っています。それで、もうサービスをし始めましたからという話なのですが、大学としてはそんなことは認めていないはずです。ですので、こういうやり方というのが正しくはないと私は思っています。
先ほど、竹内先生がおっしゃったように、グリーンという使い方も間違っていると思います。これは出版社がやられること、あるいは、JUSTICEがどうお考えか分かりませんけども、示唆にならない論文データ、それはデータを集めるのが大変だからという話なんですが、そのサポートをするということで各大学、あるいは機関が気力を失って、それはもう任してしまえばいいわといって集めなくなった段階で、リポジトリは崩壊します。その段階で、出版社がリンクを切りますと言ったら、もうそれで終わりなわけです。それはもう明らかな戦略だと思います。
それを各大学にきちんと提示せずに契約しましたからとこうやって、研究者と大学、図書館も知らない情報を公開されていくというのは、私自身は不本意なことだろうと思います。図書館をマネージする者としても、研究者としてもおかしいと思います。その辺のことは、JUSTICEでまた今後、御議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。小安先生が多分言いたいことだろうと思いましたので、代わりに言いました。
ほか、いかがでしょうか。要するに今のジャーナル問題というのは個別の問題ではあるんですが、いろいろな商品というのをどう扱うかという問題と、研究者がどうあるべきか、あるいは研究がどうあるべきかというのは、これは背反なんです。それで、共存できるところを求めるということは一部にすぎないと思いますので、そこが最適モデルもないままに場当たりでやっているようにしか思えないと私は思っています。一度、誰かがちゃんとした数理モデル作らないといけないんじゃないですか。理化学研究所の小安先生、よろしくお願いします。
ほか、いかがでしょうか。誰かいらっしゃいますか、谷藤先生、どうぞ。谷藤先生、手が挙がっていますが。
【谷藤委員】 先ほどの質問の趣旨なんですが、データがどっちにあるのかということが、最後、勝負が分かれるところなので、Elsevierに作ってもらったって全然構わないと思うけれども、それを必ず大学側に持つということができるかどうかというのが、力のバランスの肝になると思います。それをこちらが集めることが、日本政府が今、目指しているデータ囲い込みの日本の立場だと思うので、そのバランスが取れていくといいなというのは、全部あげないと言っているのではなく、あちらにもあるけど、こちらにもあるということだと思います。
【引原主査】 そうですね。それがグリーンの本質だと思いますので、ありがとうございます。優しく言っていただいて。
まだまだあるかと思いますが、また、これについて御意見ありましたら、事務局の方にコメントをいただければと思います。今日はこの後の審議についてありますので、そちらの方に移らせていただきます。どうも平田さん、ありがとうございました。
では、審議の事項でございますが、日本学術会議の第三部の理工系学協会の活動と学術情報に関する分科会、24期の委員長の山口先生から、9月28日に公表されました提言についての御紹介を最初に頂きまして、その後、JSTの小賀坂委員から、J-STAGE Dataの開発とその初期運用についての御紹介を頂きます。
では、まず、山口先生、お願いしてよろしいでしょうか。
【山口24期委員長】 山口ですけども、画面は今、出ておりますでしょうか。
【引原主査】 まだ出ていないです。
【山口24期委員長】 そうですか。それでは……。
【引原主査】 出てまいりました。プレゼンテーション画面の第二画面も出ておりますけれども。
【山口24期委員長】 そうですか。それはまずいですね。これでよろしいですね。
本日は非常に貴重な時間を、機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
9月の末に、結構難産だったんですけれども、提言が発出されましたので、その内容について御説明申し上げます。それで、提言に至る経緯を少しお話しした方がよいと思います。皆さんのお手元の資料と少し文言が違う部分がありますけれども、これは御容赦ください。これは、もともと24期の当初に、第三部の部長の大野英男先生が、学術情報に関する検討分科会を設けたいということで、全体で審議できないかと提案されたようなんですが、それは必要ないということになり、第三部の方で個別に議論しようということで検討を始めました。
方針としては、理学工学系が第三部の内容ですので、理学工学系の科学者の立場で、学術情報を考えようということでございます。ですから、委員は全員、第三部の関係者でございますけれども、ここに大体、理学工学系のそれぞれの分野の代表の方に集まっていただきました。物理、化学、それからほかの分野の方もおられます。私が委員長を仰せつかりまして、副委員長は今、副会長をやっています菱田先生、それから、田近先生と、それから、国立情報学研究所の安達先生の4人が幹事として働きまして、提言の主な部分は、最終的にはこの4名で作文したという形になっています。
平成30年の10月に分科会が設置されましたが、日本学術会議の旅費手当が全然なくなりまして、結果的に、実際に活動が始まったのは平成31年の4月からでございまして、約1年間で集中的に審議を行いました。3月末に審議を終了しまして、それから提言案の作成に入りまして、約2か月で最初の第0次案ができまして、それについて了承を受けた上で7月に第三部に提出、それから幹事会には8月に提出して、9月に発出ということになりました。
非常に短期間でしたので、朝10時から夕方5時ぐらいまで、昼飯の時間も使って全部審議をしまして、非常に濃密な議論ができました。この検討部会のメンバーの方々にも大分御協力を頂きまして、小賀坂様とか多くの方々に、それから、林 和弘さんには随分協力していただきました。情報提供を頂いた方はここに挙げた方々で、特に今回、変わっているのは、赤で書いたSpringerとElsevierに関しては日本学術会議と秘密保持契約を結びました。出しにくい情報も出していただくということで、先ほどJUSTICEの方から提案があった内容等につきましても、実は我々の方で情報を把握しておりました。
分科会で検討した課題は、この4つに分けることができます。ジャーナルの購読、あるいは、学術情報の受信、流通に関する問題、それからジャーナルの発行、それから、理学工学系におけるオープンデータ、オープンサイエンスの課題、それから学協会の問題、これについて議論を行いました。
進め方としましては、過去の提言、報告の総括を行いまして、その上で、10年後以降を見据えた方策を提案するというやり方です。我々の結論としては、これからの10年というのは、学術情報にとっては非常に大きい変革の時代を迎えると。ある意味で言うと、これが最後のチャンスだと思いますけれども、日本の学術情報の現状は、ある意味、周回遅れという状態にありますけれども、これから挽回するいいチャンスと捉えて考えるというのが、基本的な方針です。
日本学術会議が過去に発出した提言、それから対外報告等がここにまとめてあります。2007年、8年ぐらいから学協会の在り方について。その後、2010年に浅島先生が委員長をされた委員会で、ここに書いてありますような包括的学術誌コンソーシアムを作ろうということで提案がありました。その後、オープンデータ、オープンイノベーションに関する検討、それから、昨年は学協会の運営に関わることですけども、法人制度に関する運用見直しを求めるような提言が出ています。ここには書いてありませんけれども、今年の5月には、オープンサイエンスの提言が国立情報学研究所の喜連川先生を中心として、まとめられたものが発出されています。
これについて、何を言っているかと言いますと、学術誌、ジャーナルに関係するものとしては2010年のものでありまして、この検討部会の委員の方々も随分参画されていたと理解しています。学術情報の受発信の諸問題に対する横断的な総合的な組織を作るべきであるということを提言しています。要するに、ジャーナルの購読の問題とか、ジャーナル発行、あるいは発信の問題、それから全体を、そういう意味で監督すると言いますか、助言を加えるようなコーディネーターが必要だという提言をされています。
これが直接的にどういう関係にあるか分かりませんけれども、この提言の後にJUSTICEが創設され、それから、科学研究費の補助金も、単純な出版事業の支援から国際発信力強化と変わったと理解しています。これは非常に重要で、我々がこれに何か付け加えることがあるかというと、ほとんどないような、非常にすばらしい提言なんですけれども、これに関する総括をしました。黒字で書いている3つの点が、実は浅島先生から頂いたメモで、要するに、2010年に発出した提言に対する、現在から振り返ってみた総括になります。
政府機関や各学協会の壁は厚く、国内の機関や学会が一丸となった取組は不成功だった。その間に、海外の大手出版社や大規模学会の出版部門の動きが素早くて、電子ジャーナル化の流れが加速した。それから、我が国の科学者に、よい結果は海外のトップジャーナルに出して業績とするという投稿行動が定着してしまったということであります。その結果として、我が国の学協会の学術誌は海外のジャーナル競争から取り残されてしまった。周回遅れにあるという認識です。
それから、もう一つ、これは我々の総括の1つですが、補助金を受けた学協会の多くは、海外の出版社に単純に業務委託するという出版モデルを継続したために、国内の学術出版サービスや出版後のインターネットサービスなどの専門的知識を持った人材の育成はできていないということであります。
これは、学術情報環境の変化について、振り返ったものです。大変ビジーな見にくい図面なんですが、左下にあるImpact Factor、これはマテリアルサイエンスの非常に幾つか代表的なジャーナルを取り上げていますけれども、Impact Factorが高騰する様子と、それから学術情報の環境の変化がリンクしています。もともとは、90年代前半までは、各分野でジャーナルごとにほとんど定評が決まっていまして、Impact Factorは非常に安定していましたが、この後、インターネットを使った文献検索が普及してくるとともに引用文献数が増えて、結果として、Impact Factorが上がってきて、高騰を始めた。それから、アメリカでナノテクノロジーイニシアチブが始まりますと、それに関係したジャーナルImpact Factorが上昇してきた。それから、2000年代に入りますと中国が台頭してきて、今は様々なトピックスに従ってジャーナルがImpact Factorを伸ばしていると、そういう状況にあります。オレンジ色、少し見にくいんですが、これはメタラジーの専門に特化したジャーナルなんですけども、ずっと飽和してきたんですが、最近になって急激にこれが上がり始めましたのは、これは要するに、ハイエントロピーアロイという新しいトピックスが出たので急激に上がってきたということになります。
日本のジャーナル出版はこの間、ほとんど実はImpact Factorは変わらずに、どんどん凋落していきました。その理由は、零細な出版事業、これは林和弘さんに教えてもらって、ワンマン編集部というらしいんですが、非常に少ない人手でやっている。その結果として、技術的にも遅れていく、現在は周回遅れの技術でやっているということです。
一方、商業出版社は無料、あるいは、ほとんどただで出版するというモデルを導入して、その後、ビッグディールで、これが成長してきました。個別機関との契約に落とし込んで、非常に自分たちに有利な契約を進めていると考えています。最近では、ハゲタカジャーナルの問題も実はあります。
もう一つ、日本の学協会というのは、要するに、日本のジャーナルのほとんどが、学協会が出版しておりますので、これは非常に重要なんですけれども、これに関する提言も出ています。当初から、学協会の連携とか連合化によるメリットがあるということが言われていました。これによって、学術の出版権を増強すると。要するに学協会の本来機能の強化を進めるべきであると、そういうお話がありました。
この当時、もう十数年前ですけれども、新法人法が施行される前に、学術会の中で学術法人という新しい形の法人を認めるべきであるということで、様々な努力をされたようですが、そこから全然うまくいかなかったということです。学協会は、後でお示ししますけども、ほとんど変わっていません。そのために、今、何が起こっているかというと会員の減少と、それから高齢化が起こっています。特に、若手の会員減が著しくて、若手迷惑と最近はよく言われますけれども、若手の負担が増えている。
それから、実は新法人法ができてから、連携、連合化が停滞しました。合同出版を止めたところもあります。これはなぜかというと、インセンティブがないからというより、いろいろな障害があるのではないかと。そういう問題が、実は新法人法の方で、合同事業に対して非常に厳しい規定がありまして、うまく合同事業が進まないということがあります。
少し学協会の現状について、特に理学、工学系でどんなことが起こっているかについて、データを基にしてお話をさせていただきたいと思います。この図は日本工学会、小さい点は何かと言いますと、日本工学会に所属する約100学会の会員数とそれから、学会の予算を両対数、要するに、対数をプロットしたものです。これを見ますと、変な格好をしていますけれども、えいやと線を引きますと、傾き1の直線になります。要するに、会員1人当たりに係る経費は、規模に関わらず同じあるということが、この図から分かります。
上の方に、大きい丸で示していますが、これは海外の、これがアメリカの化学界、これはイギリスの化学界、これは日本の化学界です。それから、物理系もアメリカの物理学会とか、これを全部プロットしますと、この線から少し離れていきまして、この差は何かと言いますと、例えば、Royal Societyを見ますと、収入の約8割がパブリッシングで得ている。潤沢な資金をパブリッシングで得て、それを学協会の活動に使っていると。むしろ会費なんかは取らなくてもうまくいけるということになります。
日本の学会で、このように点々と飛び跳ねているのは、資格認証とか様々な営利事業で収入を得ているものです。さらに、2,000人を切るあたり、この辺は1,000人なのか、2,000人なのかと非常に曖昧なところでありますが、下側に傾きの直線がずれてきている。これは何かと言いますと、会員1人当たりの費用が安いということは、要するに、会員が無料で奉仕している状態で、これが若手の会員の負担増に直接つながっています。
それから、過去10年間の統計情報では、2,000人以下の学協会、これは科学者委員会のアンケート小分科会が学術登録団体を調査した結果でございますけれども、2,000人以下の学協会は10年間で会員が減少している。要するに、持続可能性がないということを表しています。会員の変化についての図面は、この図にまとめておりますけれども、これも日本工学会に所属する学協会をまとめたもので、1995年の会員数を1としたときに、どのように会員が変化したかということを示しています。線の太さは会員数に比例して書いています。増えているものも少しありますけれども、多くは減少しています。土木建築系とか物理の学協会はさほど会員は減っていませんが、化学とか材料のあたりは著しく会員減が起こっています。25年で約半分になっています。会員の年齢構成を見ますと、これからも会員減が続くことはもう間違いない事実です。ですから、持続可能性はなかなか難しいという状況にあります。
こういう難しい状況にありながら、学協会は何を考えているかというのは、これは24期のアンケート小分科会が行った学術登録団体に対するアンケート調査の結果に表れています。これは全分野、社会科学から理学、工学系まで全部含んでいます。約450のデータを取った結果、今後の会員数については拡大したい、あるいは維持したい、あるいは今後の事業規模も維持か拡大したいと。それから、今後の組織体としては独自性が重要なので、今の状態を維持したいと。大会運営も独自開催を考えているが、一部は連合でもいいと。出版に関しては、やはり独自出版を継続したいということで、今、日本の学協会が置かれている危機的な状況に比べて、非常に現状認識が甘いということがよく分かると思います。要するに、持続可能性が疑われるところで変わらない学協会があって、継続が目的化していると。要するに、危機感が欠如していて、多分この分野は全部正常性バイアスに陥っているのではないかとさえ思われます。本来ならば、スクラップ・アンド・ビルドで機能強化や再生が必要だと考えられます。
さて、これが現状で、この表は後で出てきますけれども、提言の中に詳しい図面がありますので詳しく御説明しませんが、現状、いろいろ問題があると。今後、どうなるのかということです。大体予想というのは当たらないんですけども、よって立つ何かがないかということで調べましたところ、昨年Elsevierがシンクタンクと一緒になって、Research futuresというドキュメントを出しています。この中では、今後10年間で研究がどう変わるかと、それから学術情報がどう変わるかということについて文献調査、それからワークショップ、それから専門家に対するインタビューでドキュメントをまとめています。委員の林和弘さんも、多分これに出ているという話だった、インタビューを受けたと聞いています。
ここで述べている学術出版に対するElsevierのペーパーが言っていることをまとめますと、こうなります。要するに、現在の収益率が40%と非常に高い収益率を誇っていますけれども、10年間での収益が非常に低収益化するだろう。むしろデータ出版が収益の中心になる。論文誌は増大するだろうと思われていますが、凋落すると。ただし、高いImpact Factorジャーナルの地位は変わらないか、むしろ向上する。Key DriverはOA化の進行で、これはファンディングエージェンシーからの要請がある。オープンデータ、オープンサイエンス、オープンアクセスの一層の発展が見込まれて、こういったオープンアクセスの原則である、学術の成果は社会へ広く公開し、誰もが利用できると。これから思いもつかない発展や利用によるイノベーションが起こると。こういうオープンアクセスのポリシーに従って事は進むであろう。
それから、CC-BY4.0ですが、多分オープンアクセスの基本的なライセンスになりますが、これに対して、実は科学者が全然に付いていっていない。将来的には多分、研究者の分化とか階層化が、こういうことによって起こるだろうと思われます。要するに、データを取る人とそれを解析する人が分かれていくということです。ただ、AIによる研究・編集業務支援がこれから浸透してくると。場合によっては、研究者の手を経ない、あるいは、人間の手を経由しないで出版される無機質なAI編集誌が出てくるだろうということになります。
(この図は)何を言っているかというと、要するに、これから大変革期が来て、今までのような巨大な商業出版社と個別機関という関係が少し変わるということを示しています。その裏にあるものは何かというと、学術情報の大衆化であり、これは林 和弘さんが言っているデジタルトランスフォーメーションが起こるということです。要するに、高度にインターネットとAIを利用する学術情報環境の時代が現れて、大量にあふれる学術情報と多様な発信方法が拡大していく。この中にはピアレビューを経ない学術情報発信などもあるということです。何度も言いますが、これが多分、日本にとって学術情報、特にジャーナルの出版においては、最後のチャンスと考えています。
これが全体をまとめた図ですけれども、これは提言の40ページにありますので、今日は詳しくは説明をしません。こういうことに対して、いろいろなところが実は検討を行っていまして、国際学術会議、International Science Council(ISC)がありまして、ここでもディスカッションドキュメントを発出する準備を進めています。7月の段階でのペーパーを私は入手しまして、ワークショップにも参加しました。多少理想主義的で、バランスに欠ける面もありますが、反商業主義を非常に強く打ち出してきて、オープンアクセス、オープンデータ推進の正義をうたっていると、そういうドキュメントになっています。構成として、こういう内容になっています。
ここで、すごく私が面白く思ったのはこれです。要するに、多様な形式とはどういうことか、ピアレビューを経ない情報発信がどんどん出てくる。現在のプレプリントサーバー、arXivなどのようなものがありますけれども、これは分野により、形態・評価が随分異なります。それに加えて、SNSも対応されるようになったと。それから、情報系ですと、ネット上のプログラムを公開、コンテストでの順位で評価が決まるという、ある意味、ここに書いてありますが、市場原理で判断が下ることがこれから起こるだろうと言われています。
ISCのディスカッションペーパーで非常に面白かったのは、要するに、今までは事前ピアレビューだけを我々は考えていたけれども、今後は事後ピアレビューというのが、多様な情報発信の中では重要になってくる。何が重要かと言いますと、事後ピアレビューというのは、要するに出版されたものを後で検証するためのオープンデータリポジトリが不可欠であるということをうたっています。バイナリーパブリケーションという名前で呼んでいます。
それから、先ほど言いましたハゲタカジャーナル、これも、非常に今、問題が顕在化していますけれども、ピアレビューを装う怪しいジャーナル群がたくさんあって、これで安易な業績とするという人がいます。私も東大から今のところに移っていろいろ見てみますと、業績評価のところですごく問題になっていると思います。これについては、提言の中で簡単に触れていますけども、大学、研究所と、あるいは学位授与機関も含めて、学協会と一緒にコンソーシアムを形成して情報を共有すること。それから、国際コンソーシアムもありますので、それらと協働しながら情報の拡充を図っていくというのが重要であろうと思います。
それから、ジャーナル問題……、私は時間を計っていないのですけれども。
【引原主査】 まだ大丈夫です。
【山口24期委員長】 大丈夫ですか。ジャーナル購読については、もう既に、実は中間まとめに大分、我々の言いたいことが書いてあるのであれなんですが、要するに、こういうことです。結局、研究者の立場からしますと、競争的資金をもらっても、間接経費が大学に吸い上げられる。実は、大学図書館の電子ジャーナルの購読に、運営費交付金の共通経費化した部分が行くだけではなくて、一部の大学では間接経費も投入されている。研究者にしてみれば、更に直接経費からAPCを払わなければいけないというのが今のシステムですので、そうなると、二重、三重に学術情報でお金を使わなければいけなくなっているという状況があります。
ですから、結果的には購読経費だけじゃなくて、APC経費も含めた学術情報経費全体として、経済合理性を考えることが必要です。JUSTICEはなぜできないかということですが、要するに、お金の出し入れがあるのでなかなか難しいということです。後でもう少し詳しく。もう一つ、非常に重要なのは、先ほどのJUSTICEの報告にもありましたけども、今までは非常に巨大な商業出版社と契約機関のバランスが、すごく商業出版社側に有利に働いていたんですけれども、この10年で大分変わるだろうと考えています。現実に、ヨーロッパではナショナルサイトライセンスに移行していますし、それから、アメリカではUC(University of California)とかMIT(Massachusetts Institute of Technology)が交渉決裂ということで、これは裏に何があるのかよく分かりませんけれども、いずれにしろ、今、進んでいるのはAPC定額制とか、さっきの割引券という話もありましたが、購読経費とAPC経費で経済合理性を出すという方向へいかなければいけないんですが、階層が違うので、これをどう集めるかというのが、すごく重要だということになります。
我々は、大学といっても非常に多種多様なので、類似の研究を中心とするような大学とか研究機関がグループ契約をして、そこから拡大していくという方法を提案しています。それから、このメリットは、今は各大学で契約管理者がいますけれども、この経費も全部なくなるだろうということです。
これから提言について、数分間でお話をさせていただきたいと思います。とにかく誰もが学術情報にアクセス、誰もがというのは、科学者だけではなくて市民も含めて学術情報にアクセスして、得られた、出た成果を発表できるという場、そういう学術情報環境が実現されなければいけない、これは理想です。これが基になっているのがオープンイノベーションのオープンアクセスの原則です。
提言をまとめる前に、総括としてはこういう結論になりました。今までは組織とか機関ごとに最適化するような、そういうシステムが働いていたために、学術情報システム全体としては最適化がなされていないと。ですから、古い制度等をスクラップ・アンド・ビルドして、新しい学術情報環境を再構築する必要がある。それから、見えてきたのは縦割りの弊害ですから、経費の組替えとかやり取りを含めて全体として合理性を出すということです。
4つ(の項目)については、これから詳しくお話ししますけれども、新しい考え方で進めましょうということです。これが全体構想図になっています。これを見ますと、皆さんは3つもこんなに自在に法人なんかできませんというんですが、これは法人ではなくて1つの組織、こういう機能を果たす組織とお考えください。先ほどお見せしましたように、ジャーナルの講読、発行、それからオープンデータ、オープンサイエンスを進める。それから、学協会の機能強化という意味で4つの内容を含んでいます。
ジャーナルの購読については、先ほど言いましたように、APCの定額制を含む一括契約を考えるべきである。それによって、全体として経済合理性を出すということです。しかし、そのためには、残念ながら、JUSTICEはコンソーシアムで、例えばこういう契約をした大学とか研究所から資金を集めたり再分配するということはなかなか難しいので、そういうことを担当する組織が必要であるということです。それから、もう一つ重要なのは、資金管理と契約管理をするだけじゃなくて、契約を長期にわたって担当する専門員が必要だと。要するに、マックス・プランク研究所なんかが、今、うまく行き始めているのは、こういう専門の担当員がいたためだと言われていますので、そういう人材が必要であると思います。実現に向けては、特徴の類似した大学群の一括契約から参加機関を拡大していくという形で進めた方がいいということです。
ジャーナル出版、これは中間まとめでトップジャーナルを刊行することに対して、多少疑問があるということはおっしゃっていましたけれども、なぜこれが必要かというのは、これは30年来の夢と言われましたけれども、今やっているようなボトムアップではなくてトップランナーを育成して、そこからの波及効果で全体のレベルアップを図る方が経済的には合理性があると。先ほど言いましたように、全然変わらない学協会のジャーナルの国際競争力は、今後も低下することが明らかですので学協会は頼りにならないと。それから、個別学協会に対して支援をする効果も薄いと思っています。ですから、むしろこういうトップランナーが国際競争から得た技術を波及させて、みんなのレベルアップを図る方がいいと我々は考えています。
もう一つ、重要なのは、ジャーナルの出版サービスが日本ではなかなか育っていないということです。ですから、多くの学協会は海外の出版社と契約を結ぼうとしているということになります。
それから、もう一つ、トップジャーナルの件に関しては、例えば、理学、工学系ですとNatureとかScience、英国、米国がありますが、今は中国が一生懸命、これに匹敵するようなジャーナルを作ろうとしています。多分10年後には、この3つの国がトップジャーナルを出す国になっていると思われますが、出版国のレベルをトップジャーナルが象徴しているとすれば、日本も必ず何か必要だろうと我々は思います。
それから、もう一つ、これはかなり細かい話ですけども、工学系の中には、和文誌が非常に重要な分野もありまして、これについては、日本語出版で、多言語でダウンロードできるような、機械翻訳を利用するようなサービスを、これからこういうところで提供していったらいいと思います。これによって、言葉の壁もなくなりますし、速報性も担保できるということになります。
それから、ジャーナル出版ですけれども、学術情報リポジトリが必要だということです。これはどういうことかと言いますと、先ほど言いましたように、各学協会も零細ですので、発行した論文のデータリポジトリを維持するのはほとんど難しいだろうと思われます。先ほど言いましたように、オープンアクセス時代には事後ピアレビューが必要で、そのために検証のためのオープンデータリポジトリが必ず必要になる。機関リポジトリはかなり充実していますけれども、実は学協会が出版するジャーナルの裏づけを与えるデータリポジトリはほとんどないと。今は全然ありませんし、これは今後も弱小規模で技術力のない学協会にこういうことは難しいだろうということです。ハードの整備には国の支援が必要だと思いますけども、運用は受益者負担という形でうまくやることが必要だと思います。
それから、データ管理の専門職も必ず必要になるということです。それから、科学者向けにはオープンアクセス、オープンデータ時代のリテラシーを十分に理解してもらうことも必要だろうと思います。
それから、学協会ですけれども、もともと日本学術会議は学協会の推薦で行われていましたけれども、最近はそうではなくて、コオプテーションという形で選んでいますので、我々としては、割と比較的学協会に対して距離を置いた提言を出しました。要するに、余りにも保守的で、変わらない学協会に対する個別支援はむしろ逆効果にしか働いていないので止めて、連合や統合化を進める、あるいは、合同出版事業を支援するような形に切り替えるべきであると思います。そういうことによって合同事業を推進し、連合、統合の推進を一層進めたいと、進めるべきであると考えています。
実は連合、統合が進んだ例は少ないんですけども、地球惑星科学連合というのは51学協会が参画して、いまだに会員とか後援大会の参加者数が増加しているという非常にまれな学会ですけれども、こういう成功例を我々は勉強する必要があると思います。日本学術会議は連合事業を推進するために、法人法の問題について、提言をこれからも出し続ける必要があると考えています。
先ほど言ったように、ハゲタカジャーナルについては、コンソーシアムを作るべきだと思っております。
これで最後の1枚をお見せしますけれども、24期では、先ほど言いましたように、第三部が中心となって、この提言をまとめました。審議の途中で、第二部からは第三部に対してほぼ100%賛同する、状況は同じである、という意見を頂いています。第一部の方からも、学協会の部分で一部いろいろ議論がありましたけれども、状況は同じであって、この提言を是非実現しようと、そういうことになりました。
今回の、実は提言のまとめに当たっては、もう少し具体的に踏み込んだ組織の改編も含んだような委員長案も作ったんですけれども、それを出すとさすがにうまくいかないだろうということで、今回はそういうのを全部引っ込めた形で、かなり抽象的にまとめています。それからもう一つ、非常に重要な意見を、丹下先生という第二部の会員の方から頂いたんですが、どんなにいい提案も優れた司令塔的存在がないと実現できないと。会員の皆さんからは、是非実現するための具体的な方法も検討してほしいということが言われています。
今後の取組ですけれども、24期で出した今回の提言を基にして、具体的な提言案を課題別委員会で取り上げて、検討することになっています。検討の中では、関係省庁とか関係機関の意見も聞きながら、司令塔的な存在が誰で、どのように進めるべきかということも含めた、かなり具体的な案を作りたいと思っています。これらについては、多分1期3年ありますけれども、1年前後でまとめて提言として発出することを今は考えておりますので、皆さんの御意見を頂戴できれば、大変有り難いと思います。
それから、もう一つ言い忘れましたけれども、提言を二、三か月ぐらい、物すごく集中して書きましたので、是非お読みいただきたいと思います。私の拙い説明よりも文章を読んでいただいた方が大分分かりやすいと思いますので、お読みになった上で、是非忌憚のない意見をお寄せいただきたいと思います。
以上です。どうもありがとうございました。
【引原主査】 山口先生、どうもありがとうございました。
では、ただいまから御説明いただいた内容につきまして、御質問がございましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。谷藤先生、どうぞ。
【谷藤委員】 大変すばらしく説得力があり、うなずくよりないという内容で、今日はどうもありがとうございました。
かつての浅島委員会で検討したジャーナル問題から、今日までの長い時間の間に、世の中がAIの方向に、つまりデータがブラックボックスの中で処理される時代に既に変わっていることがあって、先ほど御紹介いただいたElsevierの調査も、私もインタビューを受けたんですが、明らかに出版の形がデータオリエンテッドに行く。それをどのようにしているかというと、AIに論文を書いてもらう時代も今そこに来ているとなると、それは本当に正しいのかどうか、機械に書いてもらい、機械に出版してもらって、それを使うデータはどういうデータかとなると、事後の確認が必要になってくる時代になると、非常に材料分野にいますとそれを強く感じます。
その意味では、質をちゃんと見ると、そういうコミュニティーは必要で、それが結局、学術コミュニケーションをハンドリングすることそのものだと思うと、今回の御提言に隠されてしまったのかもしれない、より具体的なスキームというのは、是非パブリックコメントとして言えるような場所にあるといいなと思いました。
日本は、ここはアクションプランを作るべきときに今はあるので、この周回に遅れてしまうと、もう本当に全てがブラックボックス、ジャーナルをハンドリングするところにも日本人はおらず、データは全て出版社の方にあって、グリーンに戻ってくるのはその残りだけとなることが、非常にそこに来ていると緊迫感を感じるものとしては、この御提言に大変敬服いたしまして、ありがとうございました。
【引原主査】 山口先生、何か今のコメントについて。
【谷藤委員】 いつ作るんですかということですか。
【引原主査】 それでは……。
【山口24期委員長】 よろしいですか。要するに、これから物すごく混沌とした世界が、カオスティックな世界になって、ジャーナルはピンキリになるわけです。物すごく質の悪いものから、質の高いものが混在する状況になると。おっしゃるように、我々が気をつけなきゃいけないのは、どうやって質を担保するか、そのための仕組みをどうするかがすごく重要で、単にImpact Factorが高いとか低いとかではなくて、そこを我々はやらなきゃいけない。そのために、例えばトップジャーナルも一つの象徴的な存在でしょうし、そういう意味での、我々が、科学者コミュニティーとして何を目指すのかというのは、もう少し本当は書くべきだったと実は思っていまして、次の提言では是非書きたいと思っています。どうもありがとうございました。
【谷藤委員】 ありがとうございます。
【引原主査】 じゃ、次に、2番目に手を挙げられた小安先生、どうぞ。
【小安委員】 山口先生、ありがとうございました。
提言をある程度、私も読ませていただきました。今ここで議論していることと同じような方向で書かれていて、非常に心強く思いました。特に日本の中で、どういう発信ができるかということを考えたときに、最後の方にあった、言葉を忘れてしまいましたが、要するに、どんどん合同していかなければ駄目だというところをもっと強く出さなければいけないと思っています。もちろんよく御存じだと思いますが、今の状況を作ったことに対しては、日本学術会議自身がかなりの責任があると思っています。大昔は学会が会員を選ぶ1票を持っていたから、どんどん学会が山ほど作られたのですが、全ての学会がジャーナルを持たなければいけないという、今から考えると変なルールがありました。それがいまだに引きずられているわけであって、それを真摯に反省して、これは間違っていたということを認めた上で、大同団結していくことをしていかなければいけないと思います。
私も昔、もう20年ぐらい前に、比較的小さな学会に関与していたときに、もう雑誌は止めようといって、止める直前まで行ったんですけど、最後の最後で止めたくないという人に押し返されて、結局、いまだに継続しています。1回始めたものを止めるというのは本当にエネルギーのいることなので、そこをどのようにできるか、やった方が、皆にとってベネフィットがあるのだということを、どれだけ皆さんに納得していただけるかというところではないかと思います。
私が所属している二部も全く同じ状況だと思いますので、皆さんが乗れるような提言を出していくことがとても大事ではないかと思いましたので、私も応援させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
【山口24期委員長】 どうもありがとうございます。よろしいですか。
実は反省点は2つありまして、前の提言、浅島提言のときは10年間何もしてこなかった。その間に、学術情報はがらっと変わってしまった。これは日本学術会議の責任でもある。それから、もう一つはおっしゃるとおり、学協会に対して批判的な、(要するに)意見を言わなかった、言えなかったというところが大きい問題点で、今回の提言には、かなり厳しく書いてありまして、とにかく存在意義がないものは止めちゃえということを書いたんですけど、学協会はどのように受け止めていらっしゃるか、まだ詳しいリアクションは聞いていませんが、不思議なことに今のところ好意的なリアクションが多いんです。ここが少しよく分からないところです。
【小安委員】 どうもありがとうございます。
【引原主査】 次へ行かせていただきます。尾上先生、3番目の質問をよろしくお願いします。
【尾上委員】 非常に有益な御説明をありがとうございます。
この中で、先ほど話にも関係するんですけど、学協会が連合、あるいは連携して、出版刊行とかを共通サービスをしていくというところは非常に重要だと思っているんですけども、一方で、日本の学会だけが、学協会だけが集まっていくということだと、僕はできなくはないかと思っているんですが、国際的なところで考えると、学協会自体の会計構造というのが非常に大きく、日本の場合は会員の会費、あるいは賛助会員も含めてですけども、そういうのに依存するところが非常に大きくて、なかなか新しいことをやっていけないところはあるのかと思っています。
僕は電子情報系の国内、国際の学会の運営しか分からないんですが、その辺りがそろっているというのはある意味、いい面もあるんですけども、なかなか新しいことをやっていくためには、今の構造では、学会自体が正直厳しいのかというところも感じているんですが、何かうまい、それは国費がうまく入ってきて、あるいは違うところのお金も含めて、大きな基盤が作れるというのであるとできると思うんですけど、今の学協会の体力でこれをやっていくと、中だけでやっていくのはかなり厳しいと思うんですが、その辺りは何か御示唆ございましたら、教えていただきたいんですが。
【山口24期委員長】 学協会については、今回、学術情報に絞った内容でまとめましたので、非常に学協会の機能強化という意味では、ある部分しか反映していません。付録に書いてあるんですけれども、実は国際化というのが非常に重要で、日本は非常に多くの留学生を実は受け入れて、帰国留学生もたくさんいるんですけれども、アメリカと事情がかなり違っていて、実は、その人たちは日本の学協会のためにならない、なっていないというか、むしろ敵対的な働きをしているという状況にあります。
それはもう明らかに日本で受け入れた中国、韓国、その他東南アジアの留学生に対して、帰国した人たちに対して全然サービスをしていなかった、あるいは、その人たちの役割を与えていないんです。これはアメリカの学会は、要するに、多くのアメリカに行った留学生はアメリカに残りたいけども、残念ながら、それがないので仕方なく母国へ帰っているわけですが、アメリカの学協会はうまくつなぎ止めていて、それで、彼らが例えばアメリカで行われる年次総会とか、そういうところに来ると、大学が同窓会を開くとか、いろいろなことをやりながら、あるいは、そういう人たちに学協会が海外の会員に対しても、ある役割を与えてつなぎ止めているんです。
それが日本の場合は、日本で就職がなかなか難しいこともありますけども、ただ、帰国留学生に対するケアが全然できていなくて、本来ならば、極東圏と言いますか、中国、韓国、東南アジアを含めた領域での中心的役割を果たすことができたはずなんですけれども、それができていない、それができなかったというのは、日本の学協会の大きな失敗だと思います。
【尾上委員】 ありがとうございます。
【引原主査】 ありがとうございます。
では、次に手を挙げられました、高橋先生、よろしくお願いします。
【高橋委員】 山口先生、ありがとうございました。何度か私は先生のお話を伺っていますけれども、聞くたびに身の引き締まる思いでございます。
2点ほど、先生のお考えをお聞きしたいところがございましたので、教えていただければと思うんですけれども、1つ目は、今、国際化のお話が出ましたけれども、10ページの大学変革期が到来ということが資料にございますけれども、そこが、日本が周回遅れを取り戻す最後のチャンスだということで、そういうお話がありました。最後の遅れを取り戻すチャンスまで待っていられないというか、1つのステップが恐らく今回、御提案の、例えば、幾つかの、4つの組織と言いますか、機能と言いますかということになるのではないかと思うので、是非次の提言のときなのかもしれませんけれども、周回遅れ、国際的に考えられている、この先の情報の大衆化とかデジタルトランスミッションというところと、この機能のところが、どのように具体的に結び付いていくのかということをお示しいただけると、更に具体的な一歩をどこからやればいいのかというのが分かるのではないかという気がいたしましたので、是非国際的な流れと、それから、日本のこれから踏み出していこうとする4つの組織、あるいは機能というものがどんな関係にあるのかというのを示していただけると有り難いと思いました。
その辺を先生は今、どんなお考えなのかということをお聞きしたいというのが1点目でございます。
【引原主査】 山口先生、どうぞ。
【山口24期委員長】 これは法人3つと、センター1つと今回は提案していますけども、1つは、ジャーナルの購入を合理的にやりましょう。あるいは、APCも負担をある程度、みんなで分担して、結果的に研究者に対するプレッシャーを下げましょうというのが1つです。
国際的に勝負していくのはジャーナル出版の部分で、トップジャーナルを出しましょうということを考えています。トップジャーナルを出す努力というのは、過去も随分やられていて、例えば、幾つか私が聞いている限りでも、非常にトップレベルの編集者をヘッドハンティングしてやろうという話まであったと聞いています。我々が今、イメージしているのは、トップジャーナルの編集、あるいは刊行組織というのは、要するに、イメージとしてはインターナショナルなチームを作ると、プロフェッショナルなチームを作るということで、これに関しては、要するにラグビーのワールドカップのチームみたいな、要するに、本当のプロを雇ってきて出版させて、我々はそれから学ぶということが最初は必要だと。
なぜかと言いますと、どうしたらいいジャーナルができるかというノウハウを日本人はほとんど持っていません。ですから、これからは、実は全然学んでこられていませんので、それを何とかしなきゃいけないということはもう間違いない。それから、ここにあるジャーナル出版をされる提供法人というのは、これはある意味、今は海外の商業出版社が提供しているのと同レベルのサービスを提供する。そういうことをしない限り、トップジャーナルができないという考え方です。この部分は、別に国の機関でなくても、例えばベンチャーでも結構ですし、いずれ法人化するという形で、要するに、日本に学術出版のサービスを根付かせるための1つの政策と考えていただければいいと思います。
それから、学術情報リポジトリというのは、先ほど言いましたオープンデータの管理するところ。それから、インデックスに関しても、もう少しいろいろ混乱というか、錯綜していますので、これを整理するとともに、日本で日本語で出版した論文や、それから、著作物の引用インデックスのデータが今は日本にちゃんとないんです。ですから、日本語で出した論文は誰も引用できないという状況になっていますので、これは是非、多分、ある意味予算がかかると思いますけども、これを実施した上で、そのデータを各学協会がうまく自分たちのジャーナルの発行に使っていくという形で運用してほしいと思っています。
ですから、国際的な競争という意味では、ジャーナルの出版サービス、この部分が、このままだと、10年後にはもう一切駄目になっていますので、ここを是非早急に立ち上げて進めるべきだと思います。そのときに、対象が今の学協会が発行しているジャーナルを対象とするのではなくて、国際的な競争にさらされるようなトップジャーナルで、しのぎを削るというのが一番重要だと考えています。
よろしいですか。十分に答えられたかどうか分かりませんが。
【引原主査】 高橋先生、まだあるようですけれども、手短にお願いできますでしょうか。
【高橋委員】 ありがとうございます。次の提言にも具体的な案が出てくると思うんですが、もう一つは、実は学会の方の日本語の学会誌、あれは学会のものもImpact Factorが取れないということで、特に今、お話がありましたけども、留学生の中では、留学生の教育というところには使えないような状況になっているというのは、いろいろな学会から聞きます。その一方で、留学生が帰っても実績にできないということで、ある意味では使い物にならないという状況になっているというのもお聞きします。
その一方で、企業が持っているような、非常に高い学術情報みたいなものが、法人の今後の論文で出てくるということで、それは実はもう既にAIとかで自動翻訳して、いろいろなところに出回っているという情報もございますので、その著作権をどうするのかという話も、もう既に世の中では起こっている話であるということも耳にします。
ですので、是非学会の方々も、そういう危機意識を持っておられる方がたくさんおられると思いますので、そういう意識を取りまとめていただけるような、そういった司令塔と申しますか、というところにも貢献いただけると有り難いと思っていました。
これは、お願いであります。
【引原主査】 質問ではなくて、今のはコメントということで取らせていただきます。
もう次の御発表もあるんですが、あと少しだけ、平田さんは前から手を挙げておられましたので、よろしくお願いします。
【平田オブザーバー】 発言の場を頂いて、ありがとうございます。山口先生、御発表ありがとうございました。JUSTICEについても、この中で取り上げていただいて、資金収集とか分配が再分配できないというのはごもっともな話だと思っておるですが、もしJUSTICEが今、この法人の設立に御協力するとしたら、今はどんな取組とかどんな準備をしておいてほしいかとか、何か今後、JUSTICEに対する期待とか、もしこの場で教えていただけることがあれば教えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。お願いします。
【山口24期委員長】 JUSTICEには大変期待しています。それはなぜかと言いますと、これまでの経験の蓄積がありますので、新たな組織の中核と言いますか、頭脳をと言いますか、そういう役割を果たしていただきたいと思っています。要するに、契約の管理、それから長期的な管理もこれから必要ですので、それから各大学図書館も含めた、ユーザーとの様々な交渉等もあると思いますので、この中で、実はこんな形で書いていますけども、場合によっては、新組織の中で中核的な役割を果たすということも可能だろうと思いますので、この組織をどんな作り込みをするかというのはこれから考えなきゃいけないことだと思っています。以上です。
【平田オブザーバー】 ありがとうございます。
【引原主査】 ありがとうございました。では、まだまだ御質問があって、手を挙げられて、下ろされた方もいらっしゃるんですけども、また御質問がございましたら事務局の方に投げていただいて、また山口先生可能でしたらお答えをいただければと思います。よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
では、次の御説明に移ります。次は小賀坂委員、よろしくお願いいたします。
【小賀坂委員】 よろしくお願いいたします。科学技術振興機構(JST)の小賀坂でございます。本日は、J-STAGEが始めております、データリポジトリのサービスである、J-STAGE Dataにつきまして、説明をさせていただきます。
全体の報告内容といたしましては、ここに記載のとおりですけれども、まず、もとよりJSTでは、J-STAGEの事業利用者に対して各種のサービスを提供しておりますけれども、今般は主として論文に付随する研究データの公開プラットフォームの提供を行っております。去る3月にサービスリースしまして、現在パイロット運用中でございまして、2020年度内に本格運用に移行する予定でございます。本件について、ここに記載しておりますような5項目について、本日は報告をさせていただきます。
それで、まず、前提となりますJ-STAGE本体の概要について御説明いたします。これは先生方、御案内いただいていると思いますけれども、J-STAGEは1999年にサービスを開始しました事業でございまして、我が国の科学技術刊行物の国内外への情報発信及び流通を促進させるという目的でもって、具体的にはジャーナルの電子化を手段として取り組んできております。近年におきましては、これに加えまして国際発信力の強化及びオープンアクセス化の促進ということについても支援をしておるところでございます。
ジャーナルの登載状況につきましては、記載のとおりですけれども、誌数が3,000誌を超えまして、記事数が今は500万記事を超えておりまして、トータルで1,800弱の学協会に御利用いただいているところでございます。諸外国のこうしたサービスに比べますと、特徴的なのは、約90%の登載誌が無料で閲覧可能になっているところでございます。
統計を御覧いただきますと、登載誌の方はおかげさまをもちまして、順調に数を増やしておりまして、昨年、登録誌数、3,000誌を超えることができました。分野につきましては、人文社会系も含めまして満遍なく登載をしております。使用言語としては、約4割が和文誌、それから、更に4割が英和混在誌ということで、全体の2割弱が英文誌というポートフォリオになっております。
閲覧の状況を次に御説明しますけれども、おかげさまをもちまして、順調に伸びておりまして、2018年には年間の記事のダウンロード数が3億件を超えてございます。アクセス元ですけれども、7割が日本国内ですが、3割程度が国外からのアクセスでございまして、最も多いのが米国、次いで中国という分布になっております。
こうしたJ-STAGEでございますけれども、それに対して、J-STAGE Dataというサービスを導入してまいりました。この背景について、次に御説明をしたいと思います。
もとより研究データの公開に関するジャーナル方針がどうなっているかということを踏まえる必要があるわけでございますが、これについては、世界中、多くの研究者が研究をしております。ここで御紹介しますのは、本日の会議に出席しておられますけれども、池内先生の御研究による成果でございまして、これは2016年に日本図書館情報学会誌に発表された御研究でございます。この御研究では、学術雑誌によるデータ共有ポリシーの分野別状況というのを、投稿規定の調査によって研究なさっております。ESI(Essential Science Indicators)22分野からImpact Factor上位10誌について網羅的に調査なさいまして、共有ポリシーの強さを分類し、これを雑誌の諸特性との関係を統計的に調査なさっておられます。
例えば、リポジトリを用いたデータ公開についてのポリシーがどのように整備されているかということについては、例えば、左下の図を御覧いただきますと、全体220誌に対しまして、非常に強いポリシー、データのリポジトリでの共有を必須としている、若しくは推奨しているというジャーナルが約6割ということが分かっております。これが、いわゆる学協会と商業出版社で微妙な差が出ているということも御発表なさっております。あるいは、こうした220誌が、どのようなリポジトリを例示しているかということについても、網羅的に調べておられまして、大体分野リポジトリが多くなっていることが見て取れるということでございます。
さらに、先生のグループはその後の追跡調査もしておられますけれども、これは2014年時点における状況と、2019年における状況を比較したものでございます。先ほど申しました、22分野10誌というのをカラーコードした図になってございまして、遠目に見ていただきまして、暖色が強いポリシー、必須とか推奨、リポジトリを用いたデータの公開を必須としている、若しくは推奨しているというジャーナルでございまして、青系の色は、比較的パッシブな、受諾といったポリシーであったりとか、若しくは、ポリシーに定められていないというジャーナルでございます。これは、ざっと概観しますと、5年間で大きく増加をしておりまして、強いポリシーを持ったジャーナルが増加しておりまして、客観的に見ても、ジャーナルの研究データポリシー整備というのは、グローバルな潮流となっていると言っていいのではないかと、JSTとしては認識をしております。
他方、我が国のジャーナルにおける対応をざっと調べてみますと、これは2018年の調査でございますけれども、左側、J-STAGE登載ジャーナルのうち、Impact Factorを取得しております122誌について、データポリシーを調査してございます。左側のパイチャートがポリシーの設定状況なんですけれども、強いポリシーを設定しているジャーナルが約4分の1、パッシブなものを設定しているジャーナルが次の4分の1、残りの半数は設定していないという状況でございます。
また、右側の他プラ移行誌と申しますのは、J-STAGEに搭載をしていたけれども商業出版社のプラットフォームに移っていったという、いわゆるハイプレスティジャスなジャーナルですけれども、において調査をしてみましても、余り国内誌のポリシー整備状況というのははかばかしくないと言っていいのではないかと思います。そういうわけでございまして、我々としては、我が国のジャーナルにおいても、研究データへの対応が急がれると認識をしたわけでございます。
以上を踏まえまして、私どもといたしましては、支援の必要性を認識しておりまして、スライドのポツの3つ目ですけれども、J-STAGEとしても、利用学協会に対して、様々な支援を検討してきております。
1つは、J-STAGEが実施しております、ジャーナルコンサルティングという事業がございまして、ここを通じまして、ジャーナルがデータ方針の策定や運用をするに当たってのコンサルテーションを行ってきてございます。もう一つが、この後、御説明をいたします、データプラットフォームの提供でございます。ということで、これからJ-STAGE Dataのサービス概要について、御説明をいたします。
まず、そもそも公開先のリポジトリは、パブリッシャーによってどう指定されているかというのを、ざっと概観しますと、ここにはElsevier、Wiley、それから、Springer Natureの、データの公開に関するガイドラインのFAQから抜いてきた文書でございまして、お読みいただく必要はないんですけれども、概観いたしますと、おおむね推奨リポジトリリストを提供し、かつリスト非記載のリポジトリについては、どう検索すればよいかということであったりとか、どのような要件を満たしたリポジトリを推奨するかという考え方を提示していることが一般的であると見て取っております。
また、ではどのような研究データ向けのリポジトリがあるかと申しますと、これは先生方には既に御案内のとおりですけども、分野別リポジトリ、汎用リポジトリ、また、近年では、出版社が持つリポジトリというのがどんどん整備されてきておりまして、いずれにしましても、既に利用可能なリポジトリは多く存在しておりまして、選択肢は多くあるという状況と言ってよろしいかと思います。
以上を踏まえまして、JSTといたしましては、基本的な考え方としては、データを公開する場合の利用するリポジトリの方針は、まず一義的には学協会やジャーナルが主体的に判断、策定すべきと考えております。しかしながら、技術的な理由、様々なその他の理由によりまして、既存リポジトリの利用が難しいという場合には、J-STAGEから最低限の環境を御提供するという考えに基づきまして、サービスを設計してございます。
というところでございまして、J-STAGE Dataと言いますのは、J-STAGEの登載記事に関連するデータ、公開データを搭載するリポジトリでございまして、先ほど申しましたとおり、本年2月にリリースをし、パイロットジャーナルによる試行運用を行っております。テクノロジーとしては、Figshare社のfigshare for publishersというサービスを利用しておりますが、同時に、これを利用するためのインターフェースも併せて開発し、提供しております。右側がそのトップ画面でございまして、検索窓であるとか、様々なスタティスティックスが見えるようになってございます。
なお、figshare for publishersというのは、非常に多くの学協会が利用されておりまして、御興味があれば、下にリンクを載せておりますので、御参照いただければと思います。
J-STAGE Dataをお使いいただいた場合の、研究データ公開のワークフローを簡単に御説明しております。まず、左側にございますけれども、著者が論文と研究データを用意します。論文の場合には、赤い矢印にございますとおり、発行機関に原稿が受理され、査読、編集を経て登載されて、今の場合には、J-STAGEに登載されます。データにつきましては、2つのルートがございまして、セットで投稿し、学協会がこれをJ-STAGE Dataに登載する場合、又は論文とは別に著者自らがJ-STAGE Dataに登載する場合という2つのルートを用意しております。データと論文は、DOIによってひもづけがなされまして、相互に引用可能になるということでございます。この機能自体は、J-STAGE Data以外のリポジトリでも利用いただける仕様になっております。
登載対象データ、ライセンス等々は右側のとおりでございまして、エンバーゴにつきましても、1年を最大として設定可能ということにしております。これは国の研究データの登載に関する方針にも、機密性の高いデータについては、公開を猶予するということも方針としてございますので、これにも対応しているということでございます。
幾つかスナップショットを御紹介しますと、これがJ-STAGE Dataの画面でございまして、基本的な機能は一通りそろえているということでございます。また、J-STAGEとJ-STAGE Dataの間の論文の相互参照についても、一通り可能になっております。それから、いわゆるData Availability Statementなどを表示する場所も備えておりまして、一通りグローバルな出版社は備えているような機能は一応、御提供可能になっているというところでございます。
いろいろなリリースノート等々を公開してございますので、御参照いただければと思います。それから、カレントアウェアネスでも御紹介いただきましたので、併せてここに記載してございます。
現状の運用状況を御説明いたしますと、例えば、これはとある雑誌、この場合はデジタルアーカイブ学会誌でございますけれども、もともとは電子付録という格好で公開していた、登録データ9件についてのダウンロード数を取っております。赤が電子付録としてのダウンロード数、青がJ-STAGE Dataとしてのダウンロード数でございまして、リリース後に大きくダウンロード数が伸びまして、かなり発信力は強化されたのではないかと考えております。
また、これは別の雑誌のとあるデータのJ-STAGE Data上の画面ですけれども、Figshareのテクノロジーを通じまして、様々なデータベースにデータ連携が行われておりまして、例えばDimensions、内閣府も分析用のデータベースとして採用しておりますが、Dimensions上でも検索可能になっております。
試みとして、Dimensionsを使いまして「Tohoku」という検索ワードで検索をしますと、東北地方に関するデータセットが77件ヒットしておりまして、様々なプラットフォームで公開されているデータがワンストップで検索できるようになっております。この中に、J-STAGE Dataに登載されたデータも含まれておりますけども、このように研究データは類似、あるいは同じ分野のデータと一体となって検索可能になっているということが、再利用の可能性を担保するために非常に重要と思っておりますので、その効果も次第に見え始めているのではないかとJSTとしては考えております。
現在のところ、J-STAGE Dataの利用ニーズを調べますと、利用したいと思うという学協会が一定程度存在するのに対して、分からないという学協会さんもおられますので、この辺りは、これからいろいろと普及を行っていく必要があるのかと思います。また、一般的には関心があるという声も多く寄せられておりますので、サービスとして、一定程度のニーズがあるのではないかと思っております。
最後に、今後の見通しですけれども、1つ興味深いデータをお示しいたしますと、電子付録の利用状況などから、関心が高いと思われる学協会にヒアリングをいたしましたところ、16協会からこのようなお答えを頂いているんですけども、検討するというお答えが半数ぐらい来ております。検討するとなさった学会の意見を拝見しますと、内部で意見が分かれているので議論するというお答えが多くございまして、なかなか学協会内でも認識の差というのがまだ残っているようでございまして、この辺りもいろいろとJSTとしても御支援をしていく必要があるのかと思っております。
これが最後のスライドになりますけれども、現状、4学協会の参加を頂きまして、パイロット運用中でございます。ポツの2つ目にございますとおり、ダウンロード数の増加など、一定程度、効果が見られていると思っております。現状、パイロット参加学協会の御協力の下で、本格運用に向けて、サービスの改善点の洗い出し、検討などを行っているところでございます。
御報告は以上です。どうもありがとうございました。
【引原主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問ございましたらよろしくお願いいたします。手を挙げていただければと思います。いかがでしょうか。谷藤先生、よろしくお願いします。
【谷藤委員】 御紹介ありがとうございます。日本でのデータリポジトリの1つの先駆例として、学協会と連携して実施というのは1つの朗報だと思って拝聴いたしました。
そこで、質問なんですけれども、先ほど幾つか山口先生の方の御発表にも質問として受けられていたかと思うんですが、論文に付随するデータを、このようにデータという切り口で集めていきましょうというときに、そのデータ単体で流通するという筋道ができるわけですが、そこにDOIを振って、使われた足跡を、例えば遡及するとか、そのデータを集めた、また1つの、次のデータの固まりとして、新たにそれを発表するとか、あるいは、それをシェアするというような、データを主軸においた、次の展開とはどんなことを考えておられるんでしょうか。
【小賀坂委員】 どうもありがとうございます。いろいろな可能性はあると思いますけれども、現状はデータの取り扱い方というのは、DOIを付して、従来のジャーナルのアーティクル、記事と同じように扱われてき始めているのかと思っておりまして、ですから、引用のされ方、再利用のされ方というのも、パッシブにはそのようにジャーナルと同じように流通していくのではないかと思います。
ただ、ジャーナルアーティクルと違いますのは、データは、パブリッシャーやプラットフォームは所有権を主張しませんので、かなり流通の自由は高くなるんじゃないかと。ライセンスといった考え方も、今のジャーナルアーティクルのように、非常に複雑怪奇な状況には比較的なりにくいのではないかと感じておりまして、ですから、今ここで、こういうという可能性を具体的にお示しすることは難しいんですけれども、非常に多くの可能性があると思います。
そのときに、今、御紹介したような、言わばデジタルインフラストラクチャーネットワークもできておりますので、データを載せることで、随分そこは素早くいろいろな展開が見られてくるのではないかと、抽象的で恐縮ですけれども、そのように思っております。
【谷藤委員】 ありがとうございます。多分、また同時に、J-STAGEという公知にする場所を日本がスポンサーしているということになるので、日本の外国為替及び外国貿易法(外為法)の観点からも、このようなプラットフォームをちゃんと担保しておくというのは、いろいろな意味からも大変に有効なのではないかと思いました。ありがとうございます。
【小賀坂委員】 ありがとうございます。
【引原主査】 ありがとうございます。では、池内先生、どうぞ。
【池内学術調査官】 ありがとうございます。学術調査官の池内でございます。
御発表ありがとうございました。コメントになりますが、2件ほどお話しさせてください。データ公開について、御発表の25ページのスライドで、学会の負担が大きくなるということが、少し学協会がデータ公開に踏み切れない理由としてあるようでした。今日の御発表でも御紹介いただいた、ジャーナルのポリシーを調査したときに、いろいろなトップジャーナルを見たんですけれども、データそのものの査読をするジャーナルもあれば、データそのものは査読しないというジャーナルも結構ございました。考え方なんですけれども、前の山口先生の御発表にもあったような、例えばプレプリントのような出版後査読のスキームの中に入れることも考えられるかと思いました。
つまり、査読の負担感というのは、今は大変大きくなってございますので、データを公開して検証可能にするところまでで、学協会が難しい場合にはとどめるという対応もあるのではないかと考えております。
もう1点、先ほどの谷藤先生の御回答で、データそのものがジャーナルと同様に流通して、引用されたりとお話があったかと思うんですけれども、その次の段階として、ジャーナルというか論文と同様に、評価されるというスキームがあると、研究者の側とか学協会もそうかもしれないんですけれども、データを公開することのインセンティブの1つにもなるんじゃないかと考えております。
前の話と混ぜてしまって恐縮なんですけれども、よい成果を海外のトップジャーナルで出版して業績とするという投稿行動が定着してしまっているという話が、先ほど何度かございました。日本に国際的な競争力を持つプラットフォームを作るということ自体は、大変に意義深いと思うんですけれども、研究者の方からすると、今までずっとそういう投稿行動をしてきたところからすると、ギャップすごくあって、業績にならないのになぜ日本でとか、なぜデータをというところが埋まらないと、すごくよいプラットフォームができても、なかなか付いていけないところがあるように思いました。
評価の話というのは非常に大きな話で、それだけで1イシューになるかとは思うんですけれども、急に変わるものではないですけれども、従来とは異なる評価の仕組みというのをセットで考えて、だんだん変わっていくと後押しをするのではないかと考えました。
コメントなんですけれども、以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。小賀坂さん、何かありますか。
【小賀坂委員】 ありがとうございます。まず、査読の負担については、どういう理由でおっしゃっているのかというのは深堀りする必要がありますけれども、昨今の研究不正の問題もあいまって、学協会がデータを査読すべきという風潮も高まってきていますので、そういうことを懸念されているのかもしれないと思いました。
評価につきましては、御指摘のとおりですが、今後、データのパブリケーションが進むにつれて、研究コミュニティーの中で、その行動をどう評価するかということが、研究者コミュニティー内のノームとして出来上がってくるんじゃないかと思います。それによって、新たなインセンティブが生まれてくるのではないかと思います。
現状では、データの引用数が増えていることが研究者のインセンティブになったと思います。そこで興味深いお話を伺いましたのは、ある先生に聞きますと、その先生は自身のデータを持って、プラットフォームからプラットフォームに移り歩かれるんです。何をしているかとお聞きしましたら、要するに、一定期間置いておいて、引用が伸びない、ダウンロードが伸びないと、そこのプラットフォームは見限ってよそに行くとおっしゃるんです。ですから、データに敏感な先生方は、そういう行動にもう出ておられて、これは1つのモチベーションになるかと思いました。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。
【池内学術調査官】 ありがとうございました。
【引原主査】 では、小安先生、どうぞ。
【小安委員】 ありがとうございました。教えていただきたいことが2つあります。1つは、今、出ているスライドのところで、「我々の分野ではデータ公開はない」というのは、これはどういう意味なのでしょうか。もう一つは、分野別のいろいろなデータベースがあって、そこに入れていくということが、特定の分野では常に行われているという中で、16ページの研究データ公開のワークフローの中で、このときのイメージというのは、論文のデータを全てここに公開するというイメージなのか、それとも特定のデータを著者が選んで公開するというイメージなのか、どちらでしょうか。また、データ公開についてはメタデータも重要だと思いますが、そこは誰がやることになっているのか、技術的なところで申し訳ありませんが、教えていただけないでしょうか。
【小賀坂委員】 ありがとうございます。まず、データ公開はないとおっしゃった学協会は、これも詳細なデータは持っておらないんですけれども、先生方にインタビューしたときに、私の分野は人のデータを使うなんてあり得ないということをきっぱりとおっしゃる先生がおられます。そういう先生方が属する業界は、こういう意識をお持ちかもしれません。
それから2点目ですけれども、このワークフローで何のデータをという御質問ですけれども、基本的には、まずは、ここに示しておりますけれども、どんなデータをどのリポジトリにというのは、はまず、学協会にお決めいただきたいと思っています。その上で、J-STAGEとしては、学協会がJ-STAGE Dataも選択肢に加えたいとおっしゃれば、御提供するということであります。
ただ、多分実際には、もう既に自分のデータはこの分野リポジトリに入るものだということをお決めになっている先生方はそこに置かれると思います。その辺がよく分からないとか、そういうものがないという先生方は、いわゆる一般リポジトリであったりとか、あるいは、J-STAGE Dataにデータを置かれるのではないかと思いますし、そのときには、当然ジャーナルのポリシーも絡んできてということになると思います。私どもとしては特段の御指定はしておりません。
それから、メタデータについては、これは著者の方、若しくは学協会の編集事務局の方のいずれかが登載をしてくださることになっております。少なくとも、JSTではその辺をお助けすることはできませんが、ただ、登載のためのインターフェースは開発しまして、御提供しております。
【小安委員】 そのあたりも学協会からすると、若干負担が増えると考えられている可能性はあるということですね。
【小賀坂委員】 はい。そもそも論文の方のJ-STAGEの方でもメタデータを登載するのは大変だという御意見はありますので、依然として、そこはそういう傾向があると思います。私どもでは、仕上がったPDFからメタデータを逆に引っこ抜いて格納するなんという機能も提供しておりまして、できるだけメタデータ登録の負担は下がるようには、いろいろと考えていきたいとは思っております。
【小安委員】 ありがとうございます。
【引原主査】 では、ほか、いかがでしょうか。
1つのプラットフォームの形だと思うんですが、林さん、よろしくお願いします。
【林(和)委員】 小賀坂さん、ありがとうございました。
時々、小賀坂さんと議論するんですけど、こういう場でもしておいた方がいいと思って、あえて申し上げるんですけれども、(J-STAGEのジャーナルのための)J-STAGE Dataではなくて、(JSTが助成した研究成果のための)JSTデータの可能性があるのか、ないのかということについて、現状をコメントいただきたいと思っています。念のため、説明すると、先ほど議論があったように、研究者はどこか出したいジャーナルが決まっているとして、データ置場も分野によってはもう置く場所が決まっている。
でも、置き場所が定まっていないところに対して、JSTがファンディングした事業のデータは、どうぞJSTデータに置いてくださいというストーリーは議論としてあり得るとは思うんですけれども、その辺りはどのぐらい御検討されているかとか、この機会に御紹介いただけたらと思います。
【小賀坂委員】 ありがとうございます。五、六年前のことですけれども、JSTファンデッドデータのリポジトリを作ろうという構想を持っておりまして、アメリカ国立科学財団(NSF)ですとかアメリカ合衆国エネルギー省(DOE)ですとか、その辺りにどう考えるか聞きましたら、ファンド機関がリポジトリを持つなんて聞いたことがないと言われました。
ところが、そこから時代が下りまして、御案内のとおりですけども、アメリカ国立衛生研究所(NIH)がFigshareを使いまして、ファンデッドのデータのリポジトリを運用するというパイロットを始めております。ですから、世の中の風潮として、そういうファンド機関がリポジトリを指定するというよりも、多分、御示唆があったように、いろいろな選択肢を提供するという意味で、JSTリポジトリをファンドされた研究者向けに提供するということは、理論的にはあり得ると思います。
現状、そのような御要望を明示的にまだ頂いておりませんので、そこに至っておりませんけれども、当然我々としては、そういうことを行う用意はございます。その際、J-STAGE Dataのプラットフォームを使うことも、現実的には可能なので、それも選択肢の1つにはなると思いますけれども、それは、今後よくよく、第一には研究者の利便性を考えて検討していく必要があろうかとは思います。
以上です。
【林(和)委員】 ありがとうございます。
【引原主査】 では、次、林隆之先生、どうぞ。
【林(隆)委員】 ありがとうございます。山口先生もまだいらっしゃると思いますので、絡めた御質問でよろしいですか。山口先生はトップジャーナルを出版するための法人であるとか、あるいは、学術情報リポジトリの管理法人とか、そういうものを提案されたわけですが、小賀坂さんのお話は、半ばJ-STAGE、どちらかというと、山口先生が言うところの細かい学協会がいろいろジャーナルを出しているものを支援していくようなことをきっと今までしていて、今日のデータ公開もある種、下支えをしているような感じに聞こえたんですが、こういう取組が山口先生が考えているような、幾つかの法人を作っていくものとどう整合していくのか、あるいは、小賀坂さんからは今、行っている取組や山口先生が考えているようなトップ、国際的な競争力を持っていくようなものにしていくという点からは、どう展開する可能性があるのかということについて、コメントをいただければと思います。
【小賀坂委員】 では、私から。非常にコントラバーシャルなポイントだと思います。JSTとしましては、今日、利用学協会ですとか、研究者の先生方が抱えておられるニーズに応えることは喫緊の課題なので、まずは運用を始めております。
ただ、そのうちに、いわゆるナショナルデータベースみたいなもの、あるいは、エンティティを構想するという段になれば、ここは政策的にそれに対して対応していくことになると思います。私から申し上げられるのは、その際に、実際の利用者に対する利便性を損なわないように進むことが一番大事かなと。利便性と申しますのは、スカラリーコミュニケーションの世界の場合には、一にも二にも、とにかく国際発信力、流通力だと思います。今回のJ-STAGE Dataについては、いわゆるグローバルなデファクトに載せることで、どんどん露出度が上がっていくことを意図して、プラットフォームを提供しているということですので、決して山口先生がおっしゃるような構想と相入れないものではないと思っております。
以上です。
【引原主査】 山口先生、よろしくお願いします。
【山口24期委員長】 大変面白い、非常にクリティカルな質問だと思います。
オープンデータで各学協会のデータ出版なり、オープンデータリポジトリを支えようというのは、今のJSTのやっておられることとも基本的には共通することだと思います。これが新しい法人という形になるのか、あるいは、既存のJSTの機能として、更にそれを含ませる形になるのかというのは、また別な議論が必要だと思いますが、基本的には、非常に面白い、我々が考えているようなことを始められたと我々は理解しています。
もう一つ、今、小賀坂さんもおっしゃいましたが、国際協力性、あるいは、国際的な競争の場でのフィージビリティーをどうやって確保するかは物すごく重要ですので、それは先ほどのジャーナル出版とデータリポジトリとも実はリンクをしていまして、先ほどの御発表にあったように、データが一緒に出版されない限り、あるいは、オープンデータリポジトリに入らない限り、国際的なスタンダードにはなりませんし、先ほど高橋先生がおっしゃったように、そういう国際スタンダードに沿うような形で進まない限り、例えば、留学生なんかが魅力を感じないとか、全体として、そういうことが起こりますので、ですから、そういう意味では、正にJ-STAGEのデータに関する取組については非常に着目していて、今日聞いて大変参考になりました。
【引原主査】 ありがとうございます。林先生、それでよろしいですか。
【林(隆)委員】 ありがとうございます。よく分かりました。
【引原主査】 竹内先生、何かお手を挙げられていたと思うんですけど。
【竹内主査代理】 基本的には、林先生の御質問とほぼ重なっておりましたので、手を下げさせていただきました。
【引原主査】 分かりました。
そうしましたら、ほぼ時間になりましたけれども、いかがでしょう。今日のお二方の話はかなりリンクしている内容でしたので、今後、どうあるべきか、中期的、あるいは長期的とか、長期になってはいけないと思うんですけども、中期的な課題の対応として、まず最初の議論を今日させていただいたかと思います。
ですので、今日お伺いした内容を次回以降に反映させていくようにしていきたいと思います。是非とも御協力よろしくお願いいたします。では、お二人の先生、御発表ありがとうございました。
では、この後は、事務局にお戻ししますけどもいかがでしょうか。よろしいでしょうか。事務局から何か連絡事項ございませんでしょうか。
【土井参事官補佐】 本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開させていただきますので、引き続き、御協力お願いいたします。
次回、第9回の日程につきましては、資料5の方に候補日として、12月22日、17時から19時で予定をしてございます。場所と開催方法につきまして調整をしまして、決まり次第、御連絡させていただきたいと思います。
また、第10回目、来年1月の開催についても調整中でございますので、決まりましたら御連絡をさせていただきます。
事務局からは以上でございます。
【引原主査】 どうもありがとうございます。
本日はアクティブな議論を頂きまして、ありがとうございました。今後にいろいろなことが議論できるかと思いますので、今度ともよろしくお願いいたします。
それでは、本日、閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

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