令和7年8月4日(月曜日)10時00分~12時00分
文部科学省内15階局1会議室及びオンラインのハイブリッド形式
有馬主査、梅垣委員、大竹委員、川北委員、河野委員、久米委員、高橋委員、高村委員、唯委員、田中委員、橋田委員、古川委員、矢橋委員
(事務局)科学技術・学術政策局 参事官(研究環境担当) 馬場大輔、 参事官補佐 伊藤有佳子
NanoTerasu総括事務局 局長 川上伸昭、 光科学イノベーションセンター 理事長 高田昌樹、 高輝度光科学研究センター 理事長 中川敦史
今回の議事については、科学技術・学術審議会研究開発基盤部会量子ビーム施設利用推進委員会運営規則第5条に基づき、議題2であるNanoTerasuの中間評価は非公開とした。
【有馬主査】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第3回量子ビーム施設利用推進委員会を開催いたします。
本日はお忙しい中、また、大変暑い中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
まずは事務局から、事務連絡、参加者定足数の確認等、よろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】 まず、事務局に人事異動がございましたので御紹介させていただきます。
【馬場参事官】 おはようございます。先月、7月15日付で、野田の後任として着任いたしました馬場と申します。今後いろいろとお世話になると思います。どうぞよろしくお願いいたします。ちょうど今週はSPring-8とNanoTerasuに、また、8月にはJ-PARCにと、一通り現地に伺い、勉強していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】 続きまして、参加者の確認をさせていただきます。本日は、オンラインとのハイブリッド形式で会議を開催しており、全14名中13名の委員の皆様に御出席をいただいております。対面による御参加が5名、オンラインでの御参加が8名となっております。山重先生がご欠席です。事務局からは、参事官の馬場と当方が参加しております。
議題1につきましては、会議公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるYouTubeでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
議題2、NanoTerasuの中間評価につきましては、量子ビーム施設利用推進委員会運営規則第5条に基づき非公開とし、出席委員のみで議事を進めさせていただきたく、議題1が終わりましたら、YouTubeの配信を終了いたします。
また、議題2に関連いたしまして、量子科学技術研究開発機構から川上局長、光科学イノベーションセンターから高田理事長、高輝度光科学研究センターから中川理事長に御参加をいただいております。
続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は、議事次第のとおり、資料1-1から資料2-2、参考資料1-1から参考資料2-4を配付しておりますので、御確認をいただければと思います。御不明点ございますでしょうか。会議中、何かあれば事務局まで御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【有馬主査】 ありがとうございました。
それでは、議題1に移らせていただきます。量子ビーム施設の今後の推進方策についてです。本議題は、前回に引き続いて御議論いただくものとなっております。まずは事務局から趣旨の御説明、よろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】 承知いたしました。本日の議題1では、前回に引き続きまして、第12期量子ビーム利用推進小委員会におまとめいただいた「3GeV高輝度放射光施設NanoTerasuのビームラインの計画的な増設について」の報告書につきまして、報告書の取りまとめから約1年程度経過していることから、昨今の状況を踏まえた動向と将来計画について御報告をいただき、今後の推進方策について、委員の皆様方に御審議いただきたいと考えております。
なお、前回の資料につきましては、参考資料1-1について配付しておりますことを御報告いたします。
以上でございます。
【有馬主査】 ありがとうございます。
それでは、高橋委員から御説明よろしくお願いいたします。
【高橋委員】 QSTの高橋でございます。資料1-1に基づきまして、ただいまありました量子ビーム施設利用委員会の報告書についての御報告をさせていただきます。
表紙をめくっていただきまして、まず目次ですけれども、本日の報告におきましては、共用ビームラインの増設の必要性について、主にユーザーニーズの調査を行いましたので、その結果のまとめと、それから、海外施設との比較、成果創出効率の検討についての観点から御報告をさせていただきたいと思っております。
ページをめくっていただいて、3ページ目ですけれども、こちらは復習になりますけれども、報告書の中でどういった施設状況が求められているのかという、その結論の部分、一部抜き出したものになってございます。令和6年5月17日に、量子ビーム利用推進小委員会から、NanoTerasuのビームラインの計画的な増設についての報告書を取りまとめておりました。この報告書の中では、全部で11本のビームラインの増設と、それから、2本のR&Dビームラインの設置の必要性ということについて、報告の中で触れられていたわけですけれども、そのうち5本のビームラインについてユーザーニーズが高い等の観点から早急な整備が求められる計画として報告の中で述べられておりました。その5本について、こちらの表にまとめてあるものになります。そのうち、この5本のうち1本、X線回折のビームラインにつきましては、昨年度の補正予算によって予算が認められまして、既に着手が行われているものになっています。ここで、予算のほうでまだ認められていなかった4本、XAFS、イメージング、種類が違う2本ございますけれども、それとX線分光、この4本の内容について、詳細について、以下、御説明をいたします。
めくっていただきまして、まず4ページ目ですけれども、XAFSのビームラインの内容について記載しております。XAFSのビームラインですけれども、こちらのほうの特色といたしましては、高速スキャンをすることによって、サブ秒からの化学反応をその場観察可能なものにするというところを一つの特色として挙げております。2番目としましては、化学状態及び電子状態の計測といったことがこの手法によって可能になりますので、それを高速・ハイスループット測定をすることによって、大量のデータを集めて、いわゆるマテリアルインフォマティクス等に用いられるような大量解析を行うというところを2番目の特色といたしております。概要はその下のほうの絵に書いてございますけれども、光源といたしましては、多極ウイグラーを用いた白色光の光源になります。エネルギー範囲としましては、これは決定したものではございませんけれども、この報告書の中では、3keVから25keV、元素にしますと、カリウムから銀のK吸収端に相当します。L吸収端ではでは、ロジウム以降のものをカバーするようなエネルギー範囲ということになります。
高速スキャンということですので、時間分解能としては、100サブミリ秒、100ミリ秒以下で1スペクトルが取れるような高速のものという計画になっております。エンドステーションとしては、大量の試料を測定できるということで、試料の自動交換システム、あるいはオペランドの装置といったことを考えております。こういったことを用いまして、高速XAFSによる化学状態・電子状態の高速スクリーニングとともに、マテリアルインフォマティクス用のビッグデータ作成等にも応用できるようなビームラインということで、計画を立てております。こういったビームラインの主な応用範囲といたしましては、グリーントランスフォーメーションあるいは水素燃料といったところで、燃料電池の電極の高性能化ですとか、あるいは非常に高性能な全固体電池の開発といったところへの展開が期待されているところです。こればかりではなくて、国の重点分野といたしまして、量子技術、AI・半導体、バイオエコノミーといった分野にも展開が期待できるものとなっております。
続きまして、5ページ目、2本目のビームラインですけれども、イメージングのビームライン、Wと書いてございますのは、光源が多極ウイグラーを用いたものということになっております。こちらの特徴といたしましては、非常に広い範囲の波長のX線が利用可能で、元素、電子状態、化学状態を広視野で観察するということを目的としております。また、波長の領域の中にはテンダー領域が入ってございますので、そこの単色X線を利用することによって、軽元素の高いコントラスト画像を得られるということも特徴になっております。また、一方で、少しバンド幅を広げた準単色分光器も使えるようにするということで、こちらで強度を稼いで高速ハイスループット解析も可能にするという計画にしております。
ビームラインの概要を下に書いてございますが、光源は多極ウイグラー、エネルギー範囲もXAFSのビームラインと同様のものと考えてございます。視野といたしましては、ミリメートルスケール、その中での空間分解能ミクロンスケールでの構造を測定できるようにしたいというような設計を考えております。
その効果ですけれども、硬X線の場合は透過力が非常に大きいので、元素による吸収の差というのがどうしても非常に小さくなるために、コントラストが小さくなるところですけれども、このビームラインがカバーするテンダーX線の部分といったところに含まれる吸収端等によるコントラストの差を利用することによって、着目する軽元素を強調するようなイメージングが可能になるということを考えてございます。
この主な想定される応用分野といたしましては量子技術で、量子センサの開発においては、実際のデバイス等に用いたときに広視野での評価といったことが必要になってくるわけですけれども、そちらのほうの高速な解析といったところが想定されます。
また、グリーントランスフォーメーション、水素燃料というところに関しましても、燃料電池部材の高性能化というところで、全体の構造、層構造、膜構造の全体像をミクロンレベルで把握する必要、ニーズがございますので、そちらのほうへの展開といったことが期待されるところになっております。
次に参りますけれども、今度はイメージングのビームラインで、(U)と書いてございますのがアンジュレータです。アンジュレータを光源に用いたビームラインということになります。こちらはアンジュレータなのですが、軟X線のほうにかなりシフトしたイメージングを想定しておりまして、高コヒーレント軟X線ビームの利用によって、軽元素等のタイコグラフィーあるいはホログラフィーなどによって、生物の細胞、ウイルスといった非常に小さい、ミクロンを切るような、ナノメートルのスケールに及ぶようなものの三次元画像の取得、構造変化を動画として観察できるといったところが非常に大きな特徴となります。これは生物だけではなくて、スピントロニクスなどの量子技術あるいは二次電池の電極など、環境・エネルギー技術というところにも非常に有用なビームラインになるということを考えております。
ビームラインの概要を下に書いてございますけれども、光源はAPPLE-2アンジュレータで、これを用いることによって、直線偏光だけではなくて、左右円偏光を用いることができるようにするということを考えています。また、エネルギー範囲としましては、軟X線のビームラインとしてかなり広めに取っておりまして、こちらの今の共用ビームラインのBL13番の技術を応用することによって可能になるわけですけれども、250eVから3,000eVといったところで、非常に多くの元素をカバーできるようなものを想定しています。
時間分解能としては、ムービー、動画として観察可能ということで、100ミリ秒以下、空間分解能としてナノメートルスケールを達成できるようなものということで考えてございます。こちらはほかの類似の軟X線のイメージング技術との比較ということで、他施設でも非常に一般的に広く行われておりますSTXMとの比較を書いてございますけれども、こちらの場合、空間分解能が集光サイズ、フレネルゾーンプレートの集光サイズによって限定されますが、こちらのほう、数十ナノメートル程度であって、操作をするということから時間分解能も0.1ヘルツ程度となってございますところを、本ビームラインにおいては、回析を用いたイメージングをするということで、回析限界が限界になるわけですけれども、数ナノメートル程度から、時間分解能についても新型のCMOS検出器を開発することで、10ヘルツ以上の動画として測定できるような時間分解能を達成するということを計画しております。
しかも、これは単なる構造だけではなくて、機能を担う部位・化学種の電子状態変化を可視化するということで、ある意味、カラー画像、機能を区別してイメージングするというカラー画像をビデオレートでイメージングする、カラービデオイメージングという形での測定ができるようにするという計画でございます。こちらのほうの主な想定される応用分野といたしましては、創薬などに代表されるバイオエコノミー分野、それから、スピントロニクス材料等の量子技術分野といったところ、物質、機能、あるいは元素の分布といったところをナノメートルスケールで可視化する。しかも、動画として可視化するということを期待できるビームラインになります。
続きまして、7ページ目、X線分光、より具体的にはTXPESと書いてございますけれども、テンダーX線を用いた光電子分光を目的としたビームラインになります。こちらのほうはX線照射によって物質から出てくる光電子を調べることによって、物質の中での電子の振る舞いを解析するということですけれども、テンダーX線を用いることによって動作環境中の解析、あるいはデバイス構造内の電子状態の測定を可能にするというところが特徴になってございます。
ビームラインの概要が下に書いてございますが、光源は多極ウイグラーを用いて、エネルギー範囲は3から13keV程度、主要な元素をカバーするようなところになってございます。こちらはテンダーX線を用いることによって、最表面だけではなくて、深さ方向、界面の情報が得られるような光電子分光を行います。さらに、このエネルギー範囲の中に非常に重要な元素が含まれているということで、そこを使って、吸収端を使って、共鳴光電池分光が可能になるということで、ほかにない、新しい形での測定が可能になるということを期待しております。また、全自動のオペレーション等によって、多量の試料の高速・ハイスループット解析も行えるような形にしたいと思ってございます。
主な応用分野といたしましては、AI・半導体分野ということで、次世代半導体の開発、静的な状態だけではなくて、動作中の電子状態を解析することによって、新しい半導体の開発につなげていく。それから、グリーントランスフォーメーション、水素燃料というところでは、燃料電池の動作中の解析といったところが、応用が期待されるところです。
4本のビームライン、以上のような内容になります。
続きまして、8ページ目以降が、これらのビームラインに対するユーザーのニーズが本当にあるのかといったところを検証するために、ユーザーニーズの調査を先般行いました。実施期間といたしましては、2025年5月19日から6月23日、1か月強の期間にわたる調査となっております。調査の対象といたしましては、日本物理学会、日本化学会等、国内の44の学協会、それから、特定放射光施設ユーザーコミュニティ、SpRUCでございますが、こちらの会員の方を対象にして行っております。
回答方法といたしましては、メール等による依頼を行って、専用のウェブフォームへの入力をお願いするという形で行いました。
質問項目としては、ここに掲げてある8項目になっております。所属等に加えて、NanoTerasuを利用して研究したい分野と、それから、共用ビームラインに対する期待、あるいは何日必要とするかといった、ニーズの調査となっております。
その結果を簡単にまとめて御報告いたします。9ページ目になります。回答者の属性ですけれども、下に棒グラフで書いてございますが、回答者の属性、所属といたしましては、大学等の教育研究機関と国立の研究機関、併せて8割程度になっております。公的な研究機関回答からが多数を占めるということでございます。
年齢層ですけれども、40代を中心に、30代、50代といったところで、これも80%ぐらいを占めておりまして、現役の研究者層が大半を占めるという回答になっております。また、放射光を必ずしも今まで利用していない研究者の方を含むような学会に対してもお願いをしていたわけですけれども、実際に回答いただいた方は、既に放射光を利用したことがある方が9割以上ということで、放射光利用経験者からの回答が主になっているという内容になっております。
まとめですけれども、10ページ目です。ビームラインのニーズということで、3つ、グラフをまとめたものが書いてございます。まず、NanoTerasuを利用して、どういった研究分野、利用を希望するかといったところですけれども、一番多いのは物性物理学が非常に多かったわけですが、そのほかにもライフサイエンスですとか材料工学、あるいは電気電子工学や地球惑星科学等を含むところで、産学のユーザーから非常に多様な分野での利用希望があったという結果になっております。
こちらのほうの研究に対して、NanoTerasuの増設を予定している4本のビームラインに対しての利用希望日数も調査いたしましたところ、XAFS、アンジュレータのイメージング、それから、マルチポールウイグラーのイメージング、TXPESによるX線分光、こちらのいずれも、NanoTerasuが年間利用可能日数として提供できる208日を大幅に超過し、5倍あるいは9倍に上がるような利用希望日数をいただいております。既設の共用ビームラインと同様に、非常に多くの研究者からの利用が見込まれるという結果になっております。
これらのビームライン、いつぐらいから利用したいかということも併せて聞いておりますけれども、それが一番下のグラフに書いてあります。今すぐに、あるいは、3年以内ということで書いておりますが、併せると76%であって、8割近いユーザーさんが3年以内の利用開始を希望しているということになります。ビームラインを造るのに通常2年程度かかることを考えると、3年以内というのは、要するに、すぐに着手しないとこういったニーズには応えられないということを意味してございます。
ビームラインのニーズ調査については以上になりますけれども、続いて、11ページが海外施設のビームラインの状況といったところをまとめた表になります。こちらのほうには、海外の第3世代あるいは第4世代の主に軟X線のビームラインをかなりの数を有している施設について、ビームラインのラインナップがどういうふうになっているかというところをまとめたものです。
集計をまとめる都合上、大体3keV程度を境に、軟X線を中心とする応用のビームラインと、それより高いエネルギーを利用するビームラインということで分けて書いてございます。こちらのほうを見ますと、青い字で示してあるのが、既にNanoTerasuで、共用ビームライン3本でカバーする手法ということになっておりまして、軟X線の部分のところは、ほかの施設においても備えられているような手法ということで、NanoTerasuは、この分野では、海外と同等の研究基盤を提供できているということになるわけですけれども、今般、増設を検討している4本のビームライン、あるいは既に整備が始まっているX線回折のビームライン併せた増設ビームラインの手法が赤で書いてございますけれども、こちらのほうも、各施設において、測定手法のラインナップの主軸を構成する手法ということになっておりまして、こういったものを整備していくことによって、NanoTerasuが海外施設に伍する放射光測定基盤を提供することができるようになって、国内における研究の進展が期待できるということを示していると考えてございます。
続いて、12ページですけれども、こちらのほうは、成果創出効率について分析した結果をまとめてございます。書いてある内容は、運用開始後、NanoTerasuで1年経過しておりますけれども、さらに5年後まで見据えたときに、国費を投入した方、国費の一定の投入額当たりにトップ10%論文、社会、学術的な波及効果、インパクトの高い論文がビ-ムライン一本当たりの建設費用としてどのぐらい出てくるかという予測をしたものです。それを既に5年間運用実績があるMAX-IV、同じ第4世代の放射光施設と比較して示しました。
それで、こちらですけれども、まず共用開始1年目、これは既に実績ベースになりますけれども、この棒グラフのほうが見ているのが、建設費用100億円当たりのトップ10%論文数ということになります。1年目のところは実績ベースになりますけれども、MAX-IVとNanoTerasuですけども、NanoTerasuのほうが既にMAX-IVに比して2倍以上の差をつけて優位性を発揮しているということになります。こちらが3年目、5年目となっていくとどうなるかということですけれども、MAX-IVのほうは、当初、ビームラインが10本であったところ、3年目以降、4本増設して、14本ということになっていくことから、トップ10%論文もそれによって数も増えていて、あと、ビームラインの数が増えるということで、施設全体の費用対効果も向上してきますので、MAX-IVのほうも伸びてまいります。NanoTerasuのほうはビームラインを3年目ではまだ増設できませんので3本のままになるわけですけれども、その状態でもMAX-IVに比べて、建設費100億円当たりのトップ10%論文数というのが、もし今のペースで伸びていけば、まだMAX-IVに対して優位性を保つということになるわけですけれども、その差はだんだん縮まってくるということになります。
共用開始5年目になりますと、NanoTerasuにおけるビームラインがもし増えなかった場合は、MAX-IVに対するトップ10%論文の成果創出効率というのはあまり変わらないわけですけれども、増設を行えば論文の数が増えるという効果と、ビームライン当たりの建設施設の費用対効果が増加するという、2つの効果によって、青い部分で示したように、非常に大きな費用対効果の伸びが期待できまして、MAX-IVを圧倒的に引き離すということが期待できます。こういったところから、ビームライン増設の効果というのは非常に大きいと考えられますので、ビームラインをぜひ増設することによって、このような成果創出効率をもう一気に向上させるといったところを狙っていければと考えているところです。
この辺で使った、将来の予測になりますので仮定が含まれておりますが、この試算に用いた仮定については、このページの一番下のところ、グレーで網かけをした部分にまとめてございます。SPring-8の成果創出効率といったところを試算ベースとして仮定しているところでございます。
以上、最後のスライドですが、増設ビームラインの方向性といたしまして、今申し上げたところをまとめますと、まずユーザーニーズといたしましては、今、増設を進めている、あるいは計画しているビームラインというのは非常に高いということがアンケートによっても示されたことになります。また、海外施設においても、これらのビームラインは、ビームラインのラインナップの主軸を構成しておりまして、既に整備されている3本の軟X線ビームラインと併せて、国内における成果創出のための科学技術基盤といったところを効果的に提供できるといったところを期待できます。また、先行する第4世代放射光施設との比較においても、ビームラインを造成することによって投入国費に対する成果創出効率との差異が非常に大きく拡大することが見込まれるという試算になっております。
以上から、ユーザーニーズ、成果創出の生産性という面から、NanoTerasuの共用ビームラインラインナップに今の増設ビームラインの計画を加えるということは非常に喫緊の課題であると、必須の状況であると結論させていただきます。
あとは参考資料になります。アンケートの中で、ユーザーコミュニティの要望、ユーザー側からの要望としていただいた声を、直接の声ということで、増設ビームラインに関係する部分を抜き出して書いてございます。一つ一つは読み上げませんけれども、ぜひ必要というような声が述べられております。
私からの報告は以上になります。
【有馬主査】 ありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして、御質問や御意見ありましたらどなたからでも結構ですので、御発言をお願いします。大体、45分ぐらいまでを予定しております。
それでは、オンラインのほうが私よく分からないので、もし出てきたら、どなたかおっしゃってください。
まず私から。アンケートの実施、どうもお疲れさまでした。ありがとうございます。ユーザーニーズの調査はやはり必要は必要で、あと、今後のことで言うと、9ページで高橋委員もおっしゃっていましたけど、利用経験が基本的にある方が9割以上ということでしたけども、どうしてもこういう調査はそうなるのですが、今後、例えば、今後の見込まれる技術で、GX・水素燃料、量子技術、AI・半導体、バイオエコノミーと書いてあって、ほかにも多分、政府のイノベーションをこちらでやるべきだというような方向性が出てくるわけですけども、そこから放射光ということをあまり考えずにどういうようなことが分かれば、あるいはどういうような技術があれば、そこの技術、あるいは科学が進むのかということを、むしろそういうことを入れていただいて、それで、専門家の間で、それだったら放射光、あるいは、ここは量子ビームですから、中性子でこのような方法があるので、そういうことを使うと全体的によくなると、そういうようなやり方もあるかと思いますということなので、それはNanoTerasuさんだけではなくて、全ての量子ビーム全部なのですけども、そういうような方向での議論あるいは調査というのを、つまり、放射光、中性子を全く知らないけども、その現場にいる、最先端にいる人の意見を聞くということが多分どこかで必要になるかなと思いますので、NanoTerasuさんとしてもそういうことを一遍どこかで考えるということが、それはNanoTerasuではできないよということももちろん出るはずですけども、一部にはやはりそれが、そういう要望があるのだったらそういうのがいいよねということが出てくると思いますので、それをぜひお願いしたいと思います。
というのが1点と、それから、海外のビームラインポートフォリオとの比較が11ページにありましたが、今回予定しているのは、一つのイメージングが3keV以下で、左側で残りの3本が、3本というか、ここでは4本が右側の赤いところで書いてあることだと思うのですけど、この小角散乱、ほとんどの施設である小角散乱がカバーする手法と書いてあるのですが、これはどの、初めの5つのどこがどう当たるのか、私、よく分かっていないので教えていただければありがたいのですが。
【高橋委員】 小角散乱のX線回折、今、整備中のビームラインにおいて、エンドステーションの一つとして今、計画されております。
【有馬主査】 なるほど。ここに小角があるのですね。
【高橋委員】 はい。
【有馬主査】 ありがとうございます。
そのほかいかがでしょうか。矢橋委員。
【矢橋委員】 理化学研究所の矢橋です。どうもありがとうございます。今、有馬先生からもコメントがありましたが、ニーズ側からのサーベイというのは非常に重要だと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。さらにもう少し言いますと、ニーズそのものも今後、非常に変わっていくはずで、そうなると、やはり今度はシーズ側、どういう技術が提供できるかというのもしっかりと議論しておく必要があると思います。
その観点から言うと、例えばXRD、XAFS、イメージング、TXPESは非常にニーズが高いというのは、ある意味でカテゴリーがざっくりし過ぎていて、当たり前というか、いわゆる主食を列挙されているのですが、ここにどういう味つけとか、あと彩りというところをどうするかという観点から資料を拝見すると、まだいろいろと検討されることがあると思います。
そういう意味で、ステーションを、ビームラインを押し上げていくに当たって、レビューの体制、やり方の検討が必要になると思います。これは必ずしも海外のようにやるのがいいわけでもなくて、日本の合ったやり方があると思いますし、あと、ビームラインの比較も先ほどされていましたが、海外にあるから日本にも必要だというよりは、やはりそこも踏まえながら総合的に判断するということになると思うのですが、その仕組み、やり方についてはどのような計画をお持ちでしょうか。
【高橋委員】 ありがとうございます。4本のビームライン、4本と言わず、そもそもビームラインの増設についての検討をするに当たって、小委員会の議論の前に、QSTの中で委員会を、共用ビームライン整備検討委員会というのを設置いたしまして、その中で議論したことを基に案を出させていただきました。その委員会と同じかどうかは分かりませんけれども、当然中身も変えていかなければいけないと思いますので、そういったところを適宜必要に応じて、委員の構成等を最適化しながら、そういったところでの議論を進めて、あと、QSTだけではなくて、実際にビームラインのユーザーサポートに当たる登録機関、JASRIさん等も含めた上で議論を行っていって、詳細を詰めていくようなことを今考えているところです。
【矢橋委員】 海外のいろいろな事例も踏まえながら議論されていると思いますが、よろしくお願いいたします。
【有馬主査】 オンラインで、久米委員が手を挙げられています。よろしくお願いします。
【久米委員】 聞こえますでしょうか。
【有馬主査】 聞こえています。
【久米委員】 ありがとうございます。今日、御説明いただいたこと、非常に分かりやすくて、そのとおりかなと聞かせていただきました。ちょっと細かいところですと、参考資料のところにあった、何枚目だったかな。共用ビームライン増設に期待すること、17ページのところだと、結論として、共用ビームラインに最も期待されることは最高レベルのクオリティのデータが迅速に得られることとありまして、おっしゃるとおりかなとは思いますが、一方で、2番目、3番目のところを見ると、支援が欲しいとか、専門知識がなくても使えることという、2つ併せると結構、量が多くなるなというところもあって、もちろん最先端のところというのが必要だというのもある一方で、例えば汎用に近いものでも、産業向きであったり、あと、有益性が分かりやすいもの、あと、利用の裾野を増やすものも必要なのかなと思いました。
これはある意味、ビームラインごとによって特徴があるかもしれないなと思いまして、それを参考資料のところでも書いていただいていると思うのですね。一つ前のページだと、例えばイメージングのところでは特殊用途ではなく、汎用のものを整備していただくという意見もあるということを考えますと、ビームラインごとによく見て、そういう特徴を出していくというのも必要かなというふうに聞かせていただきました。
あと、すみません。もう一つ別で、ちょっと細かい話ですけど、何ページ目だったかな。10ページ目の利用希望日数のところを非常に大幅に超過しているとおっしゃいましたが、実際には、これは例えば1研究施設の研究者部分では、一緒に実験に来る人の人数で割らないといけないのではないかなと。あと、それと、今回、アンケートに答えていない人の分は増やさないといけないのかなと思ったので、そこのところはどう読むのかなと思いましたが、実際に多いのは多いのだろうなという印象を受けました。
以上です。
【有馬主査】 ありがとうございます。何かありますか。
【高橋委員】 いや、大丈夫です。
【有馬主査】 いいですかね。唯委員、よろしくお願いします。
【唯委員】 今回の4本の分に関しては非常に汎用的で、出口が非常に多くついている分野だなということで、ニーズと、それから、成果創出という意味でも非常に費用対効果があるのではないかなと拝見していました。今回、いろいろと、それぞれのビームラインの特徴として、例えばXAFSですとハイスループットであるとかオペランド、それから、自動交換等、いろいろな附帯的なことはあるのですけれども、この10年、SPring-8をはじめとして大きく切り開いてきた分野の上に乗っかっている部分というのが非常に大きいと思うのです。その応用という意味に加えて、これから先の10年をここでどうやって引っ張るかというのはどのようにお考えですか。
【高橋委員】 NanoTerasuの特徴といたしまして2つありまして、一つは、高輝度の軟X線光源ということですので、そういったところの新しい測定技術の開発をしたところがアンジュレータを使ったビームラインのところで、特に、例えばテンダーとか、今まで必ずしも利用技術がなかったために発展してきていなかったところを中心に進めていけたらということを考えております。一方で、ウイグラーのビームラインといったところでは、光源というよりはハイスループットとか高速性といったところが大事になってきますが、そこを今までに増して、DXが非常に急速に進んでおりますので、そういったところの知見を盛り込みながら重点的に進めていければと考えているところです。
【唯委員】 今の利用に加えて、やはり5年後、10年後に新たなキーワードになることが各ビームラインから出てくるというような、それによってまた次の利用の裾野が広がっていくということをぜひ取り入れていただけたらなと思います。
以上です。
【高橋委員】 ありがとうございます。
【有馬主査】 ありがとうございます。
オンラインで、高村委員、よろしくお願いします。
【高村委員】 高村です。コアリションビームラインとの関係についてお伺いしたいのですけれども、例えばXAFSとかこういったイメージング、あるいはHAXPESといったビームラインはコアリションビームラインのほうにもうあると思うのですが、それと全く同じものを造るつもりなのかどうかというのが1点と、あと、それらのビームラインの現時点で、コアリションビームラインのほうでどれだけ使われているかというようなデータがあるのかという質問です。いかがでしょうか。
【高橋委員】 ありがとうございます。まず、コアリションビームラインの機能面、性能面での違いということに関してですけれども、全く同じではなくて、共用ビームラインとして求められるものというのがございますので、そこに重点を置いたような性能、仕様といったところを考えてございます。例えば、テンダー領域に重点を置いたようなところとか、あるいは、XAFSとかで言いますと、試料の自動交換等を可能にして、例えばそこでのマテリアルインフォマティクスへの応用を見据えたようなシステムを導入するというところでの違いといいますか、共用向けのチューニング、最適化といったところを指向しているところでございます。
あと、コアリションのほうでのこういったビームラインの利用の状況というところですけれども、すみませんが、私のほうでは正確な統計といいますか、数字を持ち合わせてございませんので、こちらで正確にお答えすることはできない状況でございます。
【有馬主査】 よろしいでしょうか。また後ほどNanoTerasuの議題2のほうで、現状についての御説明等もございますので、そちらでコアリション側の説明をお聞きするというような感じでやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
【高村委員】 ありがとうございます。
【有馬主査】 河野委員、よろしくお願いします。
【河野委員】 河野です。御質問というか、お願いですけれども、最後のところに、海外との比較、海外の設備との比較で、成果の創出の効率ですかね。その比較がなされていたのですけれども、基礎研究という観点では、トップ10の論文というのは非常に重要だと思うのですけども、一方で、産業利用がどのぐらいなされているかというのも多分興味がある方は多いと思うので、何で定量するかというのは難しいところですけれども、比較の中にぜひ今後、産業利用への貢献度というのも比較に入れていただければと思っていますので、よろしくお願いいたします。
【有馬主査】 それはそのとおりなのですけど、ただ、コアリションとの関係というのはそこも見ていく必要がもちろんあって、全体的な感じ、つまり、今回の共用のところと、コアリション、既にある7本のところがどういうふうになっているかというのをまたそういう観点でも委員の皆様には見ていただければと思います。
オンラインで、大竹委員、よろしくお願いします。
【大竹委員】 御説明ありがとうございます。4本、新しく造っていくというところで、先ほど5年先、10年先という御発言、委員からもしていただいていますが、SPring-8を見て、今回、今度はSPring-8-IIということで、やはり20年、30年というところを見据えて、共用だからこそできる、また、今回はNanoTerasuの軟X線だからできていく研究開発、将来への課題に対して、今回の既に動いていることを基にした将来計画的なものをどこかのビームラインに特徴として更新を入れていただけるとよりインパクトがあるような形になるのかなと思ってお聞きしていたのですが、私のほうが理解し切れていないのかもしれないのですけれども、将来計画的なものを、また、NanoTerasuだからこそというような特徴が生きていくようなものというのは、今、この中に何か含まれているのでしょうか。
【高橋委員】 ありがとうございます。本日、御報告したのは、まず早期に建設が必要な5本というところの説明には、必ずしもそういった、うんと長期的な、20年、30年とか現れてはきてございませんけれども、ビームラインの増設計画全体の中で、例えばR&Dビームラインの必要性といったところも盛り込まれてございます。それはこの5本の先にさらにある、より進んだビームライン、NanoTerasuの高輝度軟X線光源の潜在力を十分に発揮するための研究開発は並行して進めていって、5本の先のビームラインの増設に役立てていくというところは計画全体の中に入ってございますので、そういった研究というのは並行して進めていくことにはしてございます。具体的に言うと、テンダーX線領域の利用といったところがございます。
【有馬主査】 補足しますと、全体的なところは、昨年度までの小委員会のほうで議論があって、それのメモが第1回の委員会の資料で、参考資料であると思いますので、そちらも御覧になられたらと思います。それで、もう一つは、そういう将来計画を含めて議論するのが施設側はもちろん施設側なのですけど、委員会としてはこの委員会のもちろん役割なので、何というのかな。施設側の御意見を伺って、何というか、こういうような方向性と伺って、委員会の中でこれはぜひ進めるべきだとか、もう少しこういうものを足していけばとかそういうことをいろいろと提言していくということでやっていきたいと思いますので、ぜひ委員の皆様、放射光の御専門の方、そうではない方、いろいろいらっしゃいますので、それぞれの立場から御意見いただければと思っております。
今後もというか、この後、NanoTerasuの現状に関する、現状というか、これまでに関しての中間評価の話もありますので、本日のビームラインの今後の方向性に関しましては、ひとまず、先ほど来、何人かの委員の方から御意見、提言ありましたので、施設側でもそれを持ち帰って、検討するものは検討していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、大体お時間ですので、議論はこの辺りまでにして、進捗がございましたら、また委員会で御報告をお願いしたいということと、それから、これからの議事は中間評価になりますので非公開とさせてください。事務局には、YouTubeの設定変更をよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】 承知いたしました。しばらくお待ちください。
ただいまYouTubeの配信を停止いたしましたので、御報告申し上げます。
議題2. NanoTerasuの中間評価について(非公開)
「NanoTerasuの中間評価」について、第1回の量子ビーム施設利用推進委員会で議論した中間評価の視点、項目に基づき、NanoTerasuから対応状況のヒアリングを行って、その結果に関する議論がおこなわれた。
【有馬主査】 それでは、最後に議題3、その他ですが、事務局から何か連絡事項等はございますでしょうか。
【伊藤補佐】 事務局でございます。次回の量子ビーム施設利用推進委員会の開催日程は、9月9日火曜日13時から、NanoTerasuの現地調査と併せて開催を予定しております。会場がNanoTerasuとなりますので御留意いただきますようお願い申し上げます。詳細につきましては、改めて御連絡をさせていただきます。
また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にメールにて御確認をいただき、非公開である議題2にかかる場所を除きまして、文科省のウェブサイトに掲載をさせていただきます。本日の配付資料につきましても、公開可能なもののみを後日、文部科学省のウェブサイトに公開いたします。お取扱いを御留意いただきたい部分ございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【有馬主査】 どうもありがとうございました。
以上をもちまして、第3回の量子ビーム施設利用推進委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――
科学技術・学術政策局 参事官(研究環境担当)付