文部科学省における研究及び開発に関する評価指針(案)概要

1.経緯及び位置付け

                       
  • 平成20年10月に「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(以下「大綱的指針」)が新たに内閣総理大臣決定されたことに伴い改定。
  • 本指針は、文部科学省の所掌に係る研究及び開発(以下「研究開発」)に関する評価の基本的な考え方を示したガイドライン。文部科学省内部部局は、大綱的指針及び本指針に基づき評価を実施。研究開発機関等は、本指針を参考に、自らがその特性や研究開発の性格等に応じて評価システムを構築し、それぞれ適切な方法により評価を実施。

2.改定の観点

                       

以下の6つの観点から改定。

  • 新たな研究を見出し、発展させるとともに、人材育成面においても成果を生み出す研究開発活動を促すための評価を実施する。
  • 創造へ挑戦する研究者を励まし、優れた研究開発を発見し、伸ばし、育てる評価を実施する。
  • 優れた研究開発の成果を次の段階の研究開発に切れ目なく連続してつなげ、研究開発成果を国民・社会へ還元する、的確で実効ある評価を実施する。
  • 研究者及び研究開発機関の研究開発への積極・果敢な取り組みを促し、また、過重な評価作業負担を回避する、機能的で効率的な評価を実施する。
  • 国際競争力の強化や新たな知の創造などに資する成果の創出を促進するよう、世界的な視点から評価を実施する。
  • 評価の実効性を上げるため、必要な評価資源を確保し、評価支援体制を強化する。

3.主なポイント

                          

(1)評価の主たる意義

 
  • 評価の主たる意義
  1. 創造へ挑戦する研究者を励まし、優れた研究開発を見出し、伸ばし、育てる。
  2. 柔軟かつ競争的で開かれた研究開発環境の創出。
  3. 研究開発施策等について、幅広い視点から実施の当否を適切に判断するとともに、見直し、より優れたものにする。
  4. 研究開発活動の透明性を向上し、説明責任を果たし、国民の理解と支持を得る。
  5. 評価結果の資源配分への反映等、資源の有効活用を図る。既存活動の見直しにより、新たな研究への取り組みの拡大を図る。

(2)評価システムの構築

 
  • 評価は研究開発の企画立案や研究開発を的確に実施するなど、戦略的な意思決定を行うための重要な手段であることを十分認識した上で、研究開発を企画立案、実施、評価し、評価結果を次の企画立案等へ反映する、という循環過程を確立。
  • 個々の研究開発課題や研究者の業績評価から、機関や制度の評価、さらには研究開発戦略の評価といった評価の階層構造をなす、様々な評価を有機的に連携。
  • 評価の検証を適宜行い、評価の質の向上や評価システムの改善に努める。その際、各階層における評価が指針等に沿って適切に行われているか、無駄な評価や形式的な評価になっていないか、評価実施主体・評価者・被評価者間で十分なコミュニケーションがとれているかなどに留意。

(3)関係者の役割

  • 文部科学省内部部局は、自ら評価を行うとともに、研究者や研究機関等の自立的な取り組みを補完するため、評価システムの構築・運営、評価環境の整備を実施。
  • 研究開発機関等は、研究者が創造性を発揮し、優れた研究開発を効果的・効率的に実施できるよう、評価システムの構築・運営を実施。
  • 評価者は、責任と自覚を持ち、厳正かつ公正に評価。適切な助言を行うなど、創造へ挑戦する研究者を励まし、優れた研究開発を見出し、育て、伸ばす視点に配慮。
  • 研究者は、国費の支出を受けて研究開発を行う責任の自覚と研究活動の改善・活性化にとって評価が重要であることを認識。自らの評価に自立的に取り組むとともに、外部評価、第三者評価には、自発的かつ積極的に協力。

(4)評価における過重な負担の回避

  • 研究開発の特性、規模に応じて、適切な範囲内で可能な限り評価の簡略化を行い、評価活動を効率的に行う。
  • 研究開発課題・施策・機関といった階層構造の中で複数の評価を行う場合等においては、可能な限り既存の評価結果を活用する。
  • 評価が無駄となったり形式化することにより、現場に徒労感を生み出す原因となるため、評価結果を誰がどのように活用するのか、その主体ごとの役割や責任を予め明確にし、関係者に周知する。

(5)評価人材の養成・確保等

  • 評価人材(評価事務局職員、プログラムオフィサー等、評価者)を養成・確保するための総合的な取組を推進。
  • 評価に先立つ調査分析の充実及び評価手法等の開発の推進など評価システム高度化のための調査研究を実施。
  • データベースの構築・活用。

(6)世界的水準による評価の実施

  • 研究開発の国際化への対応に伴い、海外の専門家や豊富な海外経験を有する研究者等を評価に参加させるとともに、世界的なベンチマークを積極的に取り入れるなど、世界的な視点での評価を実施。

(7)対象別事項 

対象:研究開発施策、研究開発課題、研究開発機関等、研究者等の業績

研究開発施策の評価

 
  • 評価を適切に実施するため、施策の企画立案時に、達成目標を明確に設定するとともに、評価に活用することが可能な定性的・定量的な指標の設定に努める。
  • 評価については、
    • 原則外部の専門家等を評価者とする外部評価により実施。
    • 事前・事後評価を行う。
       事前評価は、施策の位置づけ、実施の必要性、施策が担う範囲、目的や目標、実施手段等の妥当性等を把握 し、資源配分の意思決定等を行うために実施。
       事後評価は、成果等を次の施策につなげていくために必要な場合には、終了前に実施。
    •   
    • 5年毎を目安として中間評価を行う。
    •   
    • 施策の特性に応じて、効果・効用や波及効果を確認するため追跡評価を行う。
  • 評価実施主体は、評価対象や目的に応じて、評価方法を明確かつ具体的に設定し、被評価者等に予め周知。科学技術の急速な進展や社会経済情勢の変化等、研究開発をとりまく状況に応じ、評価方法を見直す。
  • 研究開発の特性や規模に応じて、研究開発の世界水準を踏まえて評価を実施。
  • 中間・事後評価は、目標の達成状況等を評価の基本とするが、副次的な成果や理解増進、研究基盤の向上など、次につながる成果を幅広く捉えた評価を実施。

研究開発課題の評価

 
  • 「競争的資金」、「重点的資金」、「基盤的資金」による課題に区分。
  • 課題の特性や分野、規模等に応じて、適切な評価の目的や評価結果の活用の仕方、評価方法や項目を設定し実施。

<競争的資金による研究開発課題>

  • 評価については、
    • 外部の専門家等を評価者とする外部評価により実施。
    • 事前(審査)・事後評価を行う。
       事後評価は、研究開発の特性や発展段階に応じて、優れた成果が期待され発展が見込まれる課題は、切れ目なく研究開発が継続できるよう、終了前に実施し、次の事前評価に活用。
    • 3年毎を目安として中間評価を行う。
      実施期間が5年程度で終了前に事後評価が予定される課題は、課題の性格等に応じて、計画の重要な変更が無い場合には、適切な進行管理を行い、中間評価は必ずしも要しない。
    • 課題の特性に応じて、効果・効用や波及効果を確認するため追跡評価を行う。
  • 評価実施主体は、評価対象や目的に応じて、評価方法を明確かつ具体的に設定し、被評価者に予め周知。科学技術の急速な進展や社会経済情勢の変化等、研究開発をとりまく状況に応じ、評価方法を見直す。
  • 申請書の内容や実施能力の観点も重視した審査。事前評価では少数意見も尊重し、斬新な発想や創造性等を見過ごさないよう配慮。若手、産業界の研究者等に対しても配慮。
  • 中間・事後評価は、目標の達成状況等を評価の基本とするが、副次的な成果や理解増進、研究基盤の向上など、次につながる成果を幅広く捉えた評価を実施。
  • 研究開発の特性や規模に応じて、被評価者は、目標の設定や達成状況等に関して、自己点検・評価を行い、評価者はその内容を評価に活用。
  • 評価実施主体は、過去に評価を行った者を評価者に含めるなど、継続性を確保。
  • 評価の過程で、評価者と被評価者による意見交換の機会を確保。
  • 基礎研究等については、画一的・短期的な観点から性急に成果の期待するような評価に陥ることのないよう留意。

<重点的資金による研究開発課題>

  • 評価については、
    • 外部の専門家等を評価者とする外部評価により実施。
    • 事前・事後評価を行う。
       事後評価は、成果等を次の課題につなげていくために必要な場合には、終了前に実施。
    • 3年毎を目安として中間評価を行う。
       実施期間が5年程度で終了前に事後評価が予定される課題は、課題の性格等に応じて、計画の重要な変更が無い場合には、適切な進行管理を行い、中間評価は必ずしも要しない。
    • 課題の特性に応じて、効果・効用や波及効果を確認するため追跡評価を行う。
  • 評価実施主体は、評価対象や目的に応じて、評価方法を明確かつ具体的に設定し、被評価者に予め周知。科学技術の急速な進展や社会経済情勢の変化等、研究開発をとりまく状況に応じ、評価方法を見直す。
  • 課題の計画が、研究開発施策と整合し、その方法が妥当か評価。
  • 大規模プロジェクトは、特に入念に事前評価を実施。中間・事後評価は、目標の達成状況等を評価の基本とするが、副次的な成果や理解増進、研究基盤の向上など、次につながる成果を幅広く捉えた評価を実施。
  • 研究開発の特性や規模に応じて、被評価者は、目標の設定や達成状況等に関して、自己点検・評価を行い、評価者はその内容を評価に活用する。
  • 評価実施主体は、過去に評価を行った者を評価者に含めるなど、継続性を確保。
  • 基礎研究等については、画一的・短期的な観点から性急に成果の期待するような評価に陥ることのないよう留意。

<基盤的資金による研究開発課題>

  • 機関長の定めたルールに従い実施。必要に応じて機関評価に活用し、機関における経常的な研究開発活動全体の改善に資する

研究開発機関等の評価

 
  • 機関運営面と研究開発の実施・推進面から実施。
  • 機関長は、評価結果を機関運営の改善や機関内の資源配分に反映。
  • 評価結果を責任者たる機関長の評価につなげる。

研究者等の業績評価

 
  • 所属する機関の長がルールを整備し、責任をもって実施。多様な活動に配慮。研究者を萎縮させず、果敢な挑戦を促すなどの工夫が必要。

(8)機関や研究開発の特性に応じた配慮事項

 

独立行政法人通則法、国立大学法人法等との関係

 
  • 独立行政法人評価委員会、国立大学法人評価委員会が第三者評価を実施。本指針を参考とすることを期待。
  • 本指針をもって新たな機関評価を行う義務は発生しない旨を明確化。

大学等における学術研究

 
  • 専門家集団における学問的意義についての評価を基本。
  • 長期的・文化的観点に立った評価が必要。
  • 萌芽的な研究の推進とともに、柔軟で多様な発想を生かし、育てるという視点。
  • 成果の事後的な評価だけでなく、研究者の意欲や活力、発展可能性を適切に評価。
  • 人文・社会科学では、個人の価値観が評価に反映される部分が大きい点に配慮。
  • 研究と教育の有機的関係へ配慮し、大学等の諸機能全体の適切な発展を目指す。

(9)フォローアップ 

  • フォローアップの結果等を踏まえ、本指針の見直し。
  • 評価推進部局は、評価結果を取りまとめ、評価システム全体の見直し。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 計画官付

電話番号:03-6734-3982(直通)

(科学技術・学術政策局 計画官付)

-- 登録:平成21年以前 --