量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第11回) 議事録

1.日時

平成29年8月30日(水曜日)14時30分~16時30分

2.場所

文部科学省 15階 科学技術・学術政策局会議室1(千代田区霞ヶ関3-2-2)

3.議題

  1. 軟X線向け高輝度放射光源やその利用について(ビームラインの整備・運用について)
  2. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、内海委員、尾嶋委員、金子委員、岸本委員、近藤委員、高橋委員、田中委員、山田委員

文部科学省

西山研究開発基盤課量子研究推進室長、大榊研究開発基盤課量子研究推進室専門職

オブザーバー

矢橋牧名 理化学研究所 放射光科学総合研究センター ビームライン研究開発グループグループディレクター、金谷利治 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 特別教授・MLFディビジョン長

5.議事録

【雨宮主査】  それでは、定刻になりましたので、第11回の量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。
 本日はお忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。本日は9名の委員に御出席いただいております。石坂委員、小杉委員、高原委員は御欠席です。
 また、本日の議題であるビームラインの整備・運用に関連して、理化学研究所放射光科学総合研究センターの矢橋牧名グループディレクターと、もう一方、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所、金谷利治MLFディビジョン長にお越しいただいております。
 本日の会議ですが、委員会の運営規則に基づき、公開という形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、事務局より配付資料の確認等、お願いいたします。
【大榊専門職】  まず、委員の皆様におかれましては、先日、平成30年度概算要求に関する事業の事前評価の書面審議に御協力いただきまして、どうもありがとうございました。おかげさまで評価書は無事提出させていただいております。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を御確認ください。議事次第にございますとおり、資料1から資料4、それから参考資料1及び2を配付しております。また、前回までの資料につきましては、ドッチファイルに入ってございます。資料に不備等ございましたら事務局までお知らせください。どうぞよろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 次に、西山室長より、本日の小委員会についての御説明をお願いいたします。
【西山室長】  量子研究推進室長の西山です。よろしくお願いいたします。
 本日、第11回の小委員会となりますが、本日の議題について簡単に私から御説明をさせていただきます。議事次第にありますとおり、議題につきましては、軟X線向け高輝度放射光源やその利用についてということで、引き続きなのですが、本日は特にビームラインの整備・運用について御議論を賜りたいと思います。
 資料の一番後の参考資料の2をご覧いただきたいのですが、この参考資料2は、前回の7月にございました小委員会の資料2をそのまま本日参考資料として提出をしているものですが、前回の小委員会において、量子科学技術研究開発機構(QST、量研)が整備主体の候補ということで、整備運用計画の検討を進めております。その整備運用計画の案を具体化するに当たって、更に今後検討すべき事項として、ここにありますような項目について更に本委員会においても検討を進めていくべきではないかということで御提案をした資料でございます。
 その中の、本日は青色の四角で囲っておりますが、ビームラインの整備・運用、具体的には運用当初段階でのビームラインの在り方、中長期的なビームラインの整備、専用ビームラインの整備、ビームラインのスクラップ・アンド・ビルド、さらには柔軟な利用に向けた新たな仕組みを、どういったことを考えていくべきかといったこと、それらにつきまして本日、J-PARCですとかSPring-8の事例にのっとりまして検討を深めていただければと考えてございます。これらの本日の結果、議論につきましては、QSTの整備運用計画に更に反映をしていくということで考えてございます。
 本日の議題については以上でございますが、あと一言だけ、この委員会の場で冒頭申し上げておくべきことがございまして、8月20日ですが、日本経済新聞に次世代放射光施設の検討についての記事が掲載されておりました。表題として、「物質の構造分析『放射光施設』 官民、300億円で整備」という記事がございました。
 これについて、一部事実誤認なところもございますので、少し御紹介しておきますと、釈迦(しゃか)に説法なのですが、本年2月にこの小委員会において中間的な整理をまとめておりますが、そこでは、世界的に見て立ち遅れている我が国の軟X線利用環境について、早期整備が求められると。財源負担については、官民地域パートナーシップによる推進が重要といったことをまとめていただいております。
 現在はこれを踏まえて、QSTは国の主体候補として、施設の整備・運用の具体化に向けた検討を進めている段階ということで、今後この小委員会における議論を踏まえて、QSTが整備運用計画案の具体化を進めていくということになります。ですので、文部科学省において現時点での施設整備についての最終決定ですとか、建設費の試算、又は建設地の選定というのは行っていないという段階にございまして、引き続きこの小委員会においての議論をお願いしたいということでございます。
 以上です。
【雨宮主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題に入っていきます。軟X線向け高輝度放射光源やその利用についてということの中の、ビームラインの整備・運用についての議論に入りたいと思います。まずは矢橋先生、その次に金谷先生から、それぞれSPring-8及びJ-PARCの整備・運用についての現状、それから次世代放射光源の提言等についての御発表を頂きたいと思います。その後、事務局からビームラインの整備・運用の考え方について資料に基づいて御説明いただきます。それらを踏まえて、議論の時間を取っていきたいと思います。
 それでは、まずSPring-8について、矢橋先生から御説明をお願いいたします。
【矢橋グループディレクター】  理化学研究所の矢橋でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。私からは、SPring-8のビームラインを中心とした整備・運用について御紹介をさせていただきます。お手元の資料と同じものを映させていただいております。
 大きく分けて3つのポーションがありまして、1つ目は、これまでのあゆみを振り返ると。それから特に理化学研究所から見た課題をまとめさせていただきまして、最後にまとめと3GeV光源に向けた提言を簡単に御紹介したいと思います。
 まず、めくっていただいて(2ページ)、これまでのあゆみということですけれども、大きく分けまして、SPring-8のビームラインは共用開始から今年で20年になりますが、3つの時期に分けられます。1つ目は、建設時期から共用開始付近まで、1997年の10月に共用開始をしておりますが、ほぼその辺りの時期。それから、その後の約5年間の共用開始後の拡充期。それからその後、2003年以降。最後に、これは専用ビームラインのステータスについて若干のコメントをしたいと思います。
 次に行っていただきまして(3ページ)、これがビームライン数の推移になっておりまして、横軸が年次になっております。1997年の4月から始まって、半期ごとにまとめておりまして、今、2017年ということですが、共用開始はここ(1997年)でございますので、10本で始めたわけですけれども、ここからわーっと増えていって、今に至るということでございます。ちなみに、100mAとかTop-upと書かれてあるのは加速器で、100mAが定格運転でございまして、Top-upは更に継ぎ足し入射ということで、非常に安定な運転が可能になったというところが御参考のために記してあります。
 まず第1期でございますが、最初の取り掛かりのところでございます。SPring-8の建設時期から共用開始までということですが、これは、私もまだこの時分は学生でしたので、歴史をひもとかせていただきましたが、1993年ですが、共用ビームライン計画趣意書の募集を開始したということでございます。それで、1995年にビームライン検討委員会というのができまして、これは大阪大学の菅先生が委員長を務められたということですが、これによって審査が行われたと。この中で23件、計画提案書が出てきた中から、第1期の最初に動かす共用ビームライン10本が選定されたということでございます。
 これは10本のリストがございますが、一言で言いますと、主に汎用的な用途のビームライン、しかも特徴的なのは、2本の軟X線を含むということでございます。これは今回の3GeVの御議論にもありますが、放射光のフラッグシップ機、軟X線が当時もございませんでしたので、ここに含まれているということで理解をしております。
 それで、1994年当初は1999年までに、1999年というのは共用開始後2年後ということですが、これらを順次整備するということでしたが、1995年の補正予算で時期が早まって、1997年の共用開始に全てが整備しなさいということになりました。したがって、非常に当時、建設がタイトになされたわけでございますが、これはこなすためということもありますが、従来ビームラインの特に基幹部、これは加速器からビームを取り出して光を加工するところと最後にエンドステーションというか、実験ステーションがあって、そこで個々に実験をするわけですが、特に基幹部のところの標準化がなされたと。
 従来は、日本のみならず世界的に見ても、個々のビームライン、今でもそういう施設もございますが、個別のビームラインごとにばらばらに設計・製作されておりましたが、ここで規格化・標準化の方針が打ち立てられまして、これによって迅速な整備と効率的な維持管理が可能となったということで、この10本は非常にタイトなスケジュールでございましたが、共用開始に間に合ったということでございます。
 それで、次の第2期に参りまして、先ほど御説明したように23本中10本ということですから、残りはどうなったのかということですが、残りのところもどんどん整備しなさいということで、1996年から第2期の共用ビームラインの審査が、やはりビームライン検討委員会、これは当時高エネルギー加速器研究機構(KEK)の下村先生が委員長でなされたということですが、ここで審査が行われ決定されて、どんどん建設が進んだと。2000年、世紀の変わり目頃までに、下記(5ページ)のビームラインの共用が開始されたということで、ここにリストがございます。
 ここで特徴的なのは、前の第1期の場合はかなり汎用的なものが中心でしたが、こちらは特徴的なもの、例えば中尺イメージングビームライン、BL20XUという、これは医学棟というところに伸ばす長いビームラインでございます。それからBL35 XUというのは高分解能分光、inelasticのビームラインでございますが、これも非常にスケールが大きくて、ある意味で性能が世界一だったというビームラインが、どんどん作られたということでございます。
 同時期に、これは共用を示してございますが、理研ビームラインでもいろいろな取組がありまして、例えば1キロメートルのビームライン29番(BL29XU)とか、あと25メートルの長尺アンジュレータビームラインというのが整備されまして、ここで実はいろいろなコヒーレンスとか、非常に明るいX線に関するR&Dがどんどん進みまして、これが実は直接的に、この後のSACLAにつながっております。
 それで、ここも建設ラッシュ、これは共用と並行して建設ということですので、ある意味でシチュエーションとしては非常に建設時期よりもタイトなわけですが、これが数年間続いておりましたが、ビームライン基幹部の規格化・標準化という戦略が功を奏しまして、これも遅滞なく整備が完了したということで、2002年に稼働ビームライン数が45本ということですので、ほぼ現SPring-8の骨格ができているということでございます。
 次に参りまして(6ページ)、2003年以降ですが、かなり空きポートも埋まってまいりましたので、ということもあって、かなり伸びが緩やかになってきております。こちらのグラフは、先ほどの上(5ページ)とちょっと違いまして、共用とビームライン種別ごとに示してありますが、共用ビームラインがあって、理化学研究所(理研)ビームライン、それから原子力研究開発機構(原研、JAEA)ビームラインがございますが、原研ビームラインは2005年から法人改革に伴ってSPring-8の運営から撤退しましたので、専用ビームラインの扱いになり、こちらに2005年からは含まれておりますが、こういった形で進んでおります。
 これを見ていただくと分かるのですけれども、共用ビームラインの新設というのは2004年で止まっておりまして、あとは伸びていっているのは専用ビームラインということでございます。
 それで、これは後でも御紹介しますが、ここの時期、スクラップ・アンド・ビルド、いわゆるビームラインの転換のところは非常に少数にとどまっております。実は2003年以降、SPring-8の建設のところはある意味で一服しているわけでございますが、今までビームライン、加速器を作ってきた、ある意味で建設、R&Dの主力のところは、実はSACLAに行っておりまして、SACLAのR&Dをして、それから実機の建設をしているということでございますので、サイト全体としては非常に忙しかった、相変わらず忙しいということはございますが、SPring-8のビームラインにとってみると、こういう当期になってございます。
 今、専用ビームラインの話を御紹介しましたので、ちょっとおさらいをさせていただきますが、当初の定義といたしましては、原研及び理研以外によって設置され、設置者、設置した機関が利用するビームラインということで始まっております。最初は全62本のポートがございますが、そのうち共用が30本程度、理研・原研がそれぞれ数本程度で、残りの20本前後若しくは20本強が専用ビームラインということが想定されていました。
 これを現在、どういうふうにやっているかというと、後でまた御紹介しますけれども、高輝度光科学研究センター(JASRI)の専用施設審査委員会というのがございまして、ここで新設若しくは継続等の検討がなされております。それから、設置者が設置するわけですが、設置者が更に外部の利用を公募しているケースも多くございます。設置主体別に大きく分けると国内の大学・研究機関・民間法人、ここにリストを挙げてございますが、それからコンソーシアム、外部資金のプロジェクト、海外機関がございます。
 それでは、次のテーマに行きまして、現在特にSPring-8のビームラインに関連するところの問題点を幾つか挙げたいと思います。最初は、今御紹介した専用ビームラインの在り方ということでございます。それから、次はビームラインの運用について、最後は施設全体としての戦略的なところでございます。
 ちょっとビジーなスライドになりますが、次(7ページ)に行っていただきまして、専用ビームラインの在り方ということでございますが、まず当初は、そもそも専用ビームラインを設置するところの意義ということでございますが、これも明確には古文書に書いてあるわけではないのですけれども、こういうことだろうというのが端々に分かるので、私は2つ、まとめさせていただきました。個別の機関でビームラインを設置して専有利用するメリットが大きいと考えられていまして、そのメリットというのは、共用ビームラインにはないユニークな装置を設置したいと。それから、利用機会を個別の機関で十分確保したい。この2つがあったと思われます。
 もちろん、20年前はこういうことだということは、理解は非常にできるわけですけれども、現状どうかということをおさらいしてみますと、特に最近、テクノロジーの進歩が非常に速くなっておりまして、これを開拓していく、場合によっては付いていくだけでも非常に大変であると。
 そういう中で、個別機関にビームラインを設置するということは、そこで開発・運用を全てやっていくわけですけれども、個々のリソースは当然限られております。そもそも日本全体で限られておりますので、オペレーション・メンテナンスをしながら、競争力を維持するための開発・高度化を実施することは非常に難しくなってきております。これは20年前よりは明らかに難しくなってきていると思います。したがって、いろいろな装置がすぐに陳腐化するということです。
 あともう1点ありまして、専用ビームラインの装置の大部分は共用ビームラインにもありまして、特モノというのは実はそんなに多くないというのがあります。ということは、メリットに挙げさせていただいた利用機会の確保というのが主目的になっているのかなと思われますが、それはそれで結構ですが、必ずしもそれに見合った成果が出ているのかというところがあります。
 次のページ(10ページ)にJASRIでまとめた成果の比較がございまして、青色の網掛けをしているところが専用ビームラインでございます。もちろん、中には例えば物質・材料研究機構(物材機構)のビームラインのように非常にアクティビティーの高いビームラインもございますが、必ずしも、ならしてみると成果がばんばん出ているという状況ではないということがございます。例えば左の共用ビームラインは、非常に高いアクティビティーを保っていると。
 戻っていただきまして(9ページ)、それで若干、分析をしてみますと、そういう意味では当初の想定よりもデメリットの面が増えてきているのかなというところがございます。
 その次ですが、極論というか、ある意味で頭の体操かもしれませんが、そういうところを考えてみますと、例えば個別の機関が利用機会さえ確保できる何らかの仕組みがあれば、今のような汎用的な専用ビームラインはもしかしたら要らないのではないかと。さらに、そこの現在専有されているリソースを開放して、これが有効活用できるということになりますので、そうすると共用ビームラインの競争率も緩和可能になるのではないかと。
 更に言いますと、最先端装置を皆で開発して皆で使うということになりますので、これはもちろん、既存の専用ビームラインのユーザーの皆さん、それから共用ビームラインの皆さん、さらには新しいユーザーの皆さんを含む幅広い層に恩恵があるのではないかということが考えられます。これはある意味で、一面から見た見方ですので、しっかりした議論がもちろん必要なわけですけれども、こういう考え方もあるのではないかということでございます。
 一番下、若干補足させていただきましたが、最近の国のいろいろな会議等で、実は同じようなことが指摘されておりまして、例えば競争的資金を活用して個別に設備・機器を購入するのだけれども、その後できちんと利用されているのかという問題意識がいろいろな会議で聞かれております。恐らくこの専用ビームラインの問題も類似しているとは思いますが、ただ、スケールとしてはこちらの方が、1つの単位としては非常に大きいと思います。
 それで、2つ次に行っていただきまして(11ページ)、次の大きな問題といたしまして、ビームラインの運用というのを挙げました。このビームラインというのは今の専用ビームラインに限らず、共用ビームラインも含めた全てのビームラインに関連することでございますが、特に個別のビームライン担当者と言われる方々ですね。これはよくいろいろな議論があって、日本にはビームラインに張り付いている人が少ないとか、そういう話もございますが、それはさておきまして、個別には非常に皆さん、よく頑張っておられるということは言えると思います。
 ただし、いろいろな人にお話を伺いますと、ノウハウの共有、横のつながりが非常に弱いと。したがって、あるところでやった開発とか高度化を、また別のところで同じような苦労をしてやっているというのがございます。我々はこれを蛸壺方式と呼んでおりますが、蛸壺方式が大分顕著になっている。20年前はともかくとして、今や蛸壺方式では全く競争力は保てなくなってきております。
 実際にその悪影響というか、影響が出てきておりまして、装置やシステムの新陳代謝が最近、海外と比べて遅くなってきている。今後、特にビームライン、エンドステーションに設置されている検出器ですね、光を捉えるところ。それからデータ、DAQというのはData Acquisition Systemの略でございますが、データを処理するところの重みが指数関数的に増していきます。光源がどんどん明るくなってオプティクスもよくなるので、一回に扱える光の量がどんどん増えていくわけでございますが、そうすると、扱える光を全部ばっと取って、それを処理しないといけないということで、ここの競争も非常に大変なことになっております。
 並びにオートメーションとか、こういういろいろな高度なIT技術も必要になってくる。こういったところが、蛸壺方式ではもはやどうにもいかないところまで来ておりますので、このままのやり方では明らかに競争力が喪失されるということになると思います。
 したがって、ここはビームラインの基幹系で、かつて成功しました規格化・標準化の取組を参考に、これは全く同じということもありませんが、かなり参考になる部分はあると思いますので、これを参考にしながら、新たなスキームの検討が必要ではないかと考えております。
 ちなみに、SACLAの場合を次のページで御紹介いたしますと、SACLAは比較的新しく、実は検出器・DAQの重みが十分増してきたなというところでSACLAが始まっておりますので、我々としましても、そこはしっかりケアをしました。SACLAは2012年共用開始でございますので、今年で5年目ですが、そこに至るまでに十分ディスカッションしまして、少し異なるやり方でやっております。
 例えば、検出器・DAQ、それから実験装置の開発等を手掛けるチームを、いわゆるビームライン担当者、ビームラインサイエンティストとは別に置きまして、別のチームとして設置をしてございます。更に実験装置についても、共用開始前に非常に豪華なセットを作るということはせずに、軽めの装置を作っておいて、ビームラインサイエンティストがユーザーの声を聞きながら、それを開発側に伝えて、フィードバックを非常に頻繁にやりまして、だんだんアップグレードしていくという方針としました。
 結果として、新しい光源ですのでアイデアもいろいろ出てきますが、これをどんどん取り入れながら、ユニークで、かつユーザーの利便性にすぐれた装置がタイムリーに投入できているのではないかということがあります。これは国内だけではなくて、いろいろな国際会議、先週もインドで結晶学会がございましたが、そういったところでも海外のユーザーからも非常に評価が高く、先行するLinac Coherent Light Source(LCLS)、これは3年先行しておりまして、3年というのはかなり期間としては長く先行されておりますが、それでもある部分では互角、若しくはそれ以上の戦いができているということがあります。
 最後、おまけですけれども、2017年、今年、European XFELというのが立ち上がってきます。これからユーザー実験を始めますが、彼らはほぼ10年前の設計で非常に重厚なエンドステーションを作ってございますので、我々と方針が正反対でございますので、今後注視したいということですが、これはおまけでございます。
 次の13ページに、これはちょっと漫画というか、ポンチ絵で今の状況をまとめてございますが、左側が現在のビームラインを含むアクティビティーの様子を示しておりまして、一番下の層の加速器とビームライン基幹部は、ある意味で一枚岩であると。しかしながら、その先のエンドステーションに行った途端に、非常に細長く伸びておりまして、しかもそれぞれエンドステーションごとに横の連携がない、細切れになっているというのがあります。
 更に言うと、特に専用ビームラインはちょっと脇に書いてありますが、これ1本分と思っていただいていいのですけれども、ちょっと孤立ぎみかなと。あと、これらのビームライン、エンドステーションのところが基幹部とギャップがある。技術のトランスファーがうまくいっていない。あと最後、木の葉っぱの部分に当たりますが、利用アクティビティーのところも、ある部分は非常に伸びていますが、ある部分は非常に小さい。こういったところも、適正にアクティビティー・成果の都度都度に応じたリソースの配分がなされていないのではないかというのがあります。
 これを将来どうしたらいいかということですが、今私が申し上げた提案といたしましては、加速器・ビームラインの基盤のところを伸ばしていけばいいのですけれども、更にエンドステーションのこの基幹部のところも、特に共通システムのところは共通にいたしまして、更にテクノロジーからユーザーをつなぐビームラインのところ、スタッフのところも、個別ではなくてチーム、グループでしっかり対応していく必要があると。そういうことをやっていくと、こういう蛸壺ではなくて、成果の質、それから量のところも拡大できるのは間違いないだろうと考えております。
 課題の最後のところ、3番目でございますが、施設全体としてのビームライン戦略とスクラップ・アンド・ビルドということで、御紹介いたします。先ほども少しコメントいたしましたが、ビームラインのスクラップ・アンド・ビルドがこれまでほとんど行われてこなかったということがあります。
 一方で、類似の装置が共用ビームラインのみならず、専用ビームラインにまたがって多数設置されているケースも散見されるということですが、限られたリソースを戦略的に活用しながら競争力を保持し、更に強化していくためには、共用ビームライン、専用ビームライン、あと理研ビームラインは今回話題にしていませんが、理研ビームラインも含めまして、ビームラインをまたいだポートフォリオですね。例えばどういうビームラインの種別が正しいか。ここで書かせていただいたのは、例えば汎用・ハイスループット的なビームライン、それから最先端の利用を進めていくビームライン、それから次の世代に向かって革新的なことを生み出していくビームラインの3つに分けてございますが、これはいろいろな切り口があると思います。
 そのポートフォリオの、マトリックスになると思うのですけれども、マトリックスを作成して、この実現に向けてスクラップ・アンド・ビルドを、ある意味で全所一丸となって実施していく必要があるということでございますが、現状の問題点といたしまして、共用・専用・理研ビームラインを一元的かつクリティカルに評価する機能が、現在極めて弱いということが言えます。
 先ほど御紹介した専用施設審査委員会は専用ビームラインに関するものですが、これが登録機関に置かれておりますが、登録機関、次のページはJASRIの利用者選定業務の体制というところで、SPring-8の登録機関であるJASRIの業務がまとめられていますが、専用施設審査委員会がどこに位置付けられているかというと、SPring-8選定委員会の下にあるわけですけれども、実はJASRIの利用者選定業務の大部分は、ここの利用研究課題の審査委員会であり、SPring-8で行う共用課題を選定するというところが非常に大きなポーションを占めております。なおかつ、この下に専用施設審査委員会が仮にあったとしても、これでしっかりとした議論が、しかもクリティカルなところが言えるのかという問題がございます。
 したがって、ここにもう一度復習させていただきますと、登録機関のミッションである利用者選定、それから利用者支援という非常に重要な業務がございますが、そこの枠組みではカバーできないというか、ここから若干外れている部分が多いのではないかということがあります。
 ちなみに、これは海外、European Synchrotron Radiation Facility(ESRF)の御紹介をいたしますと、彼らは、まずビームラインの個別レビューが定期的にございまして、それをまとめた形で、Science Advisory Committee、SACというのがありまして、一元的な施設レビューを行っております。これがビームラインのポートフォリオを定めまして、特に2009年より非常に大規模なスクラップ・アンド・ビルドを実施してございます。
 こちらに2009年と2017年の比較がありますが、共用ビームライン32本あるうち、2009年にあったビームラインについて、スクラップが16本、2017年に新しく19本をビルドしてございます。それで、赤色の線で途中書かせていただいているのは、スクラップされたのがこちらに引き継がれたと線でたどれるものがありますが、そうじゃないものもありまして、かなり新しいトレンドも含めて、どんどん変えていっているというところがあります。
 同時に、かつてやはりESRFも非常に技術部隊が蛸壺方式だったわけですが、これが2009年頃に再編成されまして、共通技術のチームがビームライン基幹部からエンドステーションまでの共通装置の面倒を見るようになっております。こういった動きがあって、さらに、彼らはリングのアップグレードを2020年に行うということでございますが、これを見越して次世代のビームライン、ここに書いてあるのはまだ次世代まで行く手前でございますが、今、正にその議論が進んでおりまして、選定されつつあるということを聞いております。
 それで、最後のまとめになりますが、これは2枚、まとめということでございますが、今後の方向性ということで、世界と戦いながら我が国の競争力強化に資するためには、今までお家芸であるX線オプティクスのところは非常に強かったわけですけれども、検出器・制御・DAQの技術、これはSACLAでかなり技術を培ってまいりましたが、これを共通のテクノロジーとしてエンドステーションに展開していくことが必須であろうと。
 かつ、施設全体にまたがったビームラインの再編。これはポートフォリオの作成、それからスクラップ・アンド・ビルドの実施ということでございますが、これも必要であろうということがあります。
 ただし、この際に、何でもかんでもスクラップ・アンド・ビルドというのではなくて、よく考えてやらないといけない。特に、先ほどESRFでもございましたが、次世代のビームラインですね。次世代の利用を見越したビームラインをしっかり新たに検討し、それをまず置いて、それをビームライン再編の基点として全体をよい方向に持っていくというところが非常に重要だと考えております。
 さらに、ビームライン再編に当たりましては、SPring-8内のみならず、日本全体を考えた議論が間違いなく必須であると。特に、今御議論されている3GeV光源のところは、軟X線の領域、それから産業利用も見越した汎用・ハイスループットというところが非常に強いというところがうたわれておりますので、そこに是非期待したいということがあります。
 ここまではビームラインでございますが、同時にいろいろリソースも必要なわけでございますので、それをどういうふうに捻出するかということがございます。したがって、そのためにも施設として徹底した効率化を図っていく必要がございます。特に加速器システムのところは1990年代の設計に基づいたシステムでございますので、かなり効率化という意味では課題がたくさんある。これをアップグレードしていくことで、電気代は約半分近くまで圧縮可能と我々の手元で試算しておりまして、こういった効率化並びに性能向上をやっていくことで、他の追随を許さない世界一の研究基盤も実現可能であろうと。
 ただ、加速器に手を入れますと、ある一定期間、ビームが出なくなるということもございますので、これは従来、特に産業界の皆様からは懸念される声がありましたが、このいわゆるブラックアウト問題も、上の3GeV光源の活用によって、かなりの緩和ができるのではないかということでございます。
 最後のページでございますが、3GeV光源に向けてコメントさせていただきますと、最初に建設、作るところについてSPring-8もそうですけれども、日本の力をきちっと結集することで、すぐれた施設が間違いなくできるのだと思います。ある程度の、例えば3年間、5年間と利用するところまでは、問題なくできると。
 ただし、特に我々の経験に基づくと、利用開始後、数年後以降、陳腐化・蛸壺化を防ぎながら競争力を維持・強化し続けるところは、よく考えていかないといけない。ただし、少なくとも我々が直面してきた問題点に限って言えば、抽出はかなりできていると思っておりますので、少なくともこの部分に関しては、対応した仕組みを作っていくことで、かなりよいスキームができるのではないかということでございます。
 以上でございます。
【雨宮主査】  ありがとうございました。
 それでは、引き続きJ-PARCについて、金谷先生から御説明をお願いしたいと思います。質疑応答は後でまとめてやりますので。
【金谷ディビジョン長】  それでは続きまして、J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)におけるビームラインの整備と運用ということで話をさせていただきます。MLFは中性子及びミュオンの施設ですが、今日は主に中性子に限らせていただいてお話をさせていただきます。中性子ですので、放射光と少し違う側面もありますので、少し中性子の特徴も示しながら話をさせていただくことにさせていただきます。
 まず、皆さん御存じかとは思ったのですが、放射光施設とはまた違うので、まずJ-PARCの構成をお示ししたいと思います。これがJ-PARC全体で、J-PARC自身は中性子・ミュオンだけの施設ではございません。ここに400MeVのリニアックがございまして、ここに3GeVのラピッドサイクルシンクロトロン(RSC)があって、加速された陽子ビームが、ここの物質・生命科学実験施設に入ってまいります。これをMLFと我々は呼んでいます。
 この青色の線で囲まれたところがJAEA、すなわち原子力研究開発機構の所掌でございます。ここの3GeVのRCSからのビームを取り出しまして、我々はメインリングと呼んでいます50GeVのシンクロトロンがございます。ここでニュートリノの実験及びハドロンの実験をしております。
 この赤色というか、紫色の線で囲んだ部分が、KEKが担当する部分です。見ていただきますと分かりますが、我々の物質・生命科学実験施設は、JAEA担当部分とKEK担当部分に囲まれて、2つの組織により運営されているというのが実態でございます。
 今日はもちろんMLFの話ですが、更にMLFの内部構造を少し御紹介させていただいて、これからするビームラインの話の助けとしていただきたいのですが、まず、先ほど言いましたように、MLF全体としましては、KEKとJAEAの共同運営の下にございます。これは運営体制ですので、ちょっと会議体も書かれていますが、ここにJ-PARCの運営会議というのがございまして、その下にJ-PARCのセンター長というのが存在いたします。更にその下にMLFのディビジョン長、これが私ですが、存在しまして、その下に幾つかのセクションがあります。中性子の利用セクション、それからミュオンセクションも1つのセクションとしてここに存在します。それから共通技術、中性子基盤、それから心臓となります中性子源のセクションがございます。
 ここでJAEAとKEKで共同運営しているわけですが、更に茨城県が専用ビームラインを持っていまして、茨城県がここに入ってまいります。さらに、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(共用法)の下で登録機関、現在は総合科学研究機構(CROSS)が存在しまして、CROSSの理事長をヘッドにいたしまして、共用ビームラインに関しまして、ビームライン課題の選定及び利用者支援というのを主たるミッションとして、CROSSがおります。
 結局、こういう形なのですが、ビームラインの立場から言いますと、全体で今、ビームラインは稼働しているのが、19本ありまして、コミッショニングが2本、トータルのビームホールの数が23本ですから、空きビームラインは2本という現状でございます。その中で共用ビームラインが7本、それからJAEAの設置者ビームラインが4本、そしてKEKの設置者ビームラインが8本、そして茨城県の専用ビームラインが2本という構成で、非常に複雑といいますか、多くの組織が関わった施設でございます。ビームラインに関してもそれが言えるわけです。
 こういう組織の中で、今までどうしてビームラインを建設してきたかという経緯を少し述べさせてもらいますが、基本的にはコミュニティーからのグランドデザインの提案を頂いて、それをベースに進めてきた。その際に、施設側との相談ももちろんございましたが、基本的にはコミュニティーから、どういう形のビームラインを設置すべきか御意見いただき、まとめ、装置整備をしてまいりました。
 そういう形で、学会からですが、特別委員会ができて、グランドデザインが提言されております。基本的には、中性子は放射光に比べるとそれほどたくさんのビームラインを持てませんので、最初に、非常に広い汎用的な分野をカバーするべきである。その次に、世界をリードするピークを立てるべきであるということで、我々は装置選定を行ってきました。ここに書きましたようにスタート時点では、将来の分野の広がりを保証する装置群、高性能であるが汎用的な機器を、まずは整備するべきであるという考え方に立って、装置を作ってまいりました。
 具体的に少し言いますと、広範囲な物質科学を推進できる高性能汎用装置というのは、基本的には例えば粉末回折装置であるとか、非常に多くのユーザーを抱えるような装置を意味しますし、さらに、その後に考えるサイエンスのピークを立てることのできる装置としては、ハイインパクトの結果を与える装置、すなわち今までないような装置、例えば非弾性散乱装置であるとか、中性子の言葉で言いますと、偏極した中性子の非弾性散乱装置、そういうスピンエコーとかという、非常にハイインパクトな結果を期待できる装置をその次に作るべきだと考えました。これが装置整備における基本的な考え方です。
 もちろん、提案に対しまして、それをきちっと審査する必要がございますので、我々としましては、中性子実験装置部会というのを作りまして、そこで審査をします。ここはその審査の形態でございますが、装置を作りたいという申請者の方が提案書、実は2段階の審査になるわけですが、一次はLetter of Intent(LOI)を出してもらって、ビームラインの大まかな概念、社会的意義、それから科学的な意義を審査しまして、そこで一応審査が通りますと、二次審査というのに進みます。
 そこで実験装置設置詳細計画書、実際には技術的なディベロップメント、それから、実際どういうユーザーを考えているかとか、建設グループの組織も含めて記載していただいて、二次審査を行います。そこで通りますと、MLFの我々の施設の中で承認ということで、ただ、この承認はいわゆる資金を保証するものではございませんので、その後、資金獲得ができましたら建設というプロセスでございます。ちょっと大ざっぱな図ではありますが、もちろん、それぞれの審査について詳細な規定はございます。
 実際の今の装置群が、先ほども言いましたようにビームポート自身は現在23本ございますが、その中に19台の装置が実際据え付けられて稼働中、すなわち共同利用が開始されています。それから、2台が建設中でございまして、両方ともコミッショニングに入りましたが、1台、スピンエコーという装置が実はございますが、これは調整中と書かれていますが、この秋から、この年度の後期からユーザー利用に供されることになっております。これは今、ちょうど微妙なところでございます。もう1台が建設中、これが先ほども言いましたが、ここにありますPOLANOという装置で、いわゆる偏極中性子を用いたチョッパー型の分光器、すなわち非弾性散乱装置で、非常に先進的な装置でございます。
 ただ、こういう装置が実際、どうして建設されてきたかということについて、ちょっと述べておかないといけないわけでございますが、考え方としては、基本的には第1世代と呼んでいますこの装置群は、高性能ではあるが汎用的な装置であると我々は考えたわけです。ところがこの時点で、予算の中に分光器の予算が明示されていなかったということがございまして、お金があるところから作っていくという形だった。
 ちょうどここに赤字で書かせていただいたビームライン10番はJAEAが、それから1番は、実は科学研究費補助金(科研費)で作っていただいたのですが、その後共用になったと。それから、かなり汎用性の高かった粉末回折系は、茨城県が作るということになりました。それから、これは基礎物理の装置ですが、BL05はKEKが作ると。それから粉末装置、非常に分解能が高い分光器は粉末装置をKEKが作る。それから、低エネルギー型の非弾性散乱装置をJAEAが作ると。それから、エンジニアリングマテリアルと言いますが、工学材料回折系はJAEAが作る。それから、生物用の回折装置は茨城県が作ると。こういうように、いろいろな組織がそれぞれお金を持ってきて作ったというのが、第1世代になってしまったというところです。
 
共用法は最初から掛かっていたわけじゃなくて、途中で共用法が掛かりましたので、その後、第2世代になって幾つかの、我々が考えた少し先進的な装置になって、共用法のお金でビームラインができてき始めます。実際に02番(BL02)という、これは非弾性散乱装置ですが、共用法で。また、次の小角散乱装置が15番(BL15)として共用法で。それから、11番(BL11)が共用法。
 この辺りがちょうど共用法の補助金ででき始めた装置でありまして、年次的に見ていただきますと、2008年はファーストビームが出た年でございますが、このすぐ後ぐらいから、第1世代ぐらいの分光器はほぼ共用を開始しているということになりますが、共用法の装置はその後、少し後れて開始されています。この図で大体の感じは分かっていただけるかと思います。
 ここにまだ青字で書いてあるのが、先ほど言いましたような、まだコミッショニング中の、かなり先端的な装置で、この段階にあるということでございます。これが現在の19本、コミッショニング中も入れますので21本ですね、そのビームラインの現状でございます。
 次にまとめますと、これは今の話を別の表にしただけですが、ビームラインとしましては、共用ビームライン、それからKEKの設置者ビームライン、JAEAの設置者ビームライン、専用ビームラインは今の場合は茨城県のビームラインということと等価でございますが、KEKが8台、JAEAが4台、共用装置が7台、専用装置(茨城県)が2台というのが今の分布でございます。皆さん協力して、なるべく統一的な運用をしようとは思っていますが、なかなかそこが難しいというのが現実であるのも確かです。
 これは配付資料にはないもので、MLF関係のスタッフの数を書いたものです。JAEA、KEK、CROSS、茨城県を全部含んでございます。ここに書きましたように、共用法の導入によってCROSS、すなわち登録機関ができまして、共用ビームラインに関しては支援スタッフが、トータルにして大体国際レベルと我々が考える6名程度になりました。
 それは非常によかったのですが、飽くまでもこれは共用ビームラインについてでございまして、ここは関わっていらっしゃるビームラインの人の数を全部書いていますが、エフォート率が低い人も若干入っています。極端に言いますと、KEKのこのビームラインですと1名とか、共用ビームラインと比べて非常にまだアンバランスが出ているというのが現状です。ここに文字で書きましたが、共用法の装置に関しては国際レベル、大体1装置当たり6名というのが実現できたのですが、他のビームラインについては必ずしもそういう状況ではなくて、ユーザー支援についてもアンバランスができているというのが現状でございます。
 次に、実験装置の評価体制。我々はまだビームが出始めて10年そこそこで、かつ震災がございました。震災で約丸々1年止まりまして、もちろん我々の問題ではございますが、ハドロン事故というのがございまして、それによって約1年、また止まりました。その後、ミュオンの火災事件、それから2015年にはターゲットのトラブルがあって、2015年度は40%ぐらいの稼働率になりました。ですから、ビームが出始めて約10年そこそこですが、実際稼働している期間はそれほど長くはないということがございます。ターゲットのトラブルがあって、まだここ約1年ちょっとは150キロワットという、1メガワットに比べると低い出力で動いているというのも確かです。
 でもその状況の中で、どれぐらいの成果が出ているのか、どういう運営をしているのかということで、これは資料の中に含まれる図でございますが、中性子の実験装置の評価体制をこのように(10ページ)構築しています。
 基本的には5年の評価と10年の評価というのがございまして、5年の評価というのは基本的にはスクラップ・アンド・ビルドを考えないということにしておりまして、ここではむしろ、今後よりよく使うためにはどうしたらいいのかという提言を出すような評価でございます。10年目の評価というのは、実際の実績評価及び次期計画評価報告書を作ります。ここで実際にはスクラップ・アンド・ビルドを議論するということになりますが、現実のところ、今年度初めて10年評価に掛かる分光器が2つ出てきて、今、議論中であるということで、今まで最終的な形で報告書が出たことはないというのが今の時期でございます。
 これが資料に載っている新たな施設整備・運営における留意点なのですが、行間のコメントを書いた資料にさせていただきました。配付させていただいたのは行間のコメントのないものなのですが、ここにありますように、大体我々として、今後3GeV施設でありますとか、新たな施設ができるときに、我々が感じた問題点を解決していっていただければ有り難いなという形で、我々の問題を示させていただきました。
 まず、グランドデザイン構想と実際の建設事情とのギャップというのがございまして、これは先ほども申しましたが、汎用性の高いビームライン、皆さんよく使っていただけるビームラインから建設する方針は堅持されました。これはそういう方向でいきましたが、各組織で予算の付いたものから建設が開始され、汎用性の高い装置がいろいろな組織に分割・分散したというのが現実でございます。皆さん統一的な運用をしようとされていますが、予算が違うとか、先ほど言いましたように支援体制が必ずしも均質ではないということで、問題が生じております。
 これは予算的な観点から言いますと、お金がなかったということなのでしょうが、ビームライン建設の予算が当初から盛り込まれていなかったと。これはIAC、国際評価委員会からも何度も指摘されていた点ではございますが、実際にはこういうことがあったために、いろいろな組織に各ビームラインが分散してしまった。特にJ-PARCは建設途中から共用法の対象施設となったために、汎用性の高いビームラインが設置者ビームラインに多く、共用ビームラインはむしろ特殊性の高い装置が多いという、平均的な話でございますが、逆転現象が生じているのも確かです。
 それからもう一つは、設置者ビームラインと共用ビームラインの格差問題。なるべく格差を小さくしようということで我々はやっているわけですが、先ほどこれも述べましたが、共用法の導入によりまして、登録機関による共用ビームラインの利用者支援は非常に進んだと。具体的に言いますと、1ビームライン当たり6名ぐらいの支援者がアサインされたと。ところが、設置者ビームラインにおける利用者支援に関しては充足していない。支援のアンバランスがあって、例えば、これは単なる例でございますが、クロスアポイントメントのような考え方を導入して均質化を図るべきではないかという議論が進んでおります。
 MLFは導入当時、課題申請の一本化というのをやりました。各施設によって課題の申請の仕方がばらばらになるよりは、ユーザーの方にとって同じ窓口で、一本で受け付けると。今、茨城県だけが別の窓口を持っているのですが、それ以外は1つの窓口で全てのビームラインへの課題申請を受け付けています。それを課題申請の一本化、窓口一本化と我々は呼んでいましたが、今度は課題実行の一本化が我々にとっては大きな課題になっていると思います。
 もう一つ、同じように設置者ビームラインと共用ビームラインの格差問題なのですが、実際、共用ビームラインは現在7本しかございません。21本のうち7本、ちょうど3分の1です。そういう意味から、必ずしも開かれた共用施設という認識を持たれていないということをよく言われます。MLFには全部フルに埋まっても23本しかなく、また、トータルとしてビームラインが少ないために、全く同じビームラインが2本、3本とあるような状況にはないわけです。共用において種々の装置を利用するには、共用ビームタイム、ビームラインじゃなくて共用ビームタイムの枠で共用を進めるような概念の導入が必要じゃないかというのが、最近の我々のところの議論でございます。
 それから、最先端技術開発費という言い方をしましたが、単に施設を維持するだけではもちろんなくて、常に世界のトップを走るためには、新たな施設技術の開発が必要になります。この手当てというのは非常に大事で、人的にも予算的にも必要であると。これがない限り、今どれだけすばらしい施設であっても、陳腐化していきます。
 それから、既に始まっているのですが、経年劣化問題がそろそろ顕在化し始めています。これは当然、我々としては何とかしていかないといけない問題でありますが、これについても今後、真剣に考えていこうと思っています。
 こういうことが、我々の今のところの問題点でございますが、できれば次の施設を考えていただくときの参考になればと思います。
 これはイメージとして、共用ビームタイムのイメージを描きましたが、今、例えば設置者ビームラインをすぐ共用ビームラインに換えていただくということもあるかもしれませんが、できれば全てのビームラインに関しまして、あるフラクションを共用ビームタイムのような形にしていただいて、どのビームラインも同様に使えるというような、特に中性子ですとビームラインの数が少ないということもございまして、こういうことを今、我々としても検討を少し始めさせていただいているということでございます。これももちろん、検討中のことなので、資料には載せておりません。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 それぞれSPring-8とJ-PARCのビームラインにおける整備と運用ということで、ここでもいろいろな質問があると思うのですが、今のお二人のお話をどういう視点で議論するかということがありますので、その質問の前に、資料3について事務局から御説明を頂いた上で、今までのお二人のお話への質問を含めた議論に入っていきたいと思います。
 それでは事務局から、高輝度3GeV級放射光源におけるビームラインの整備・運用の考え方ということの御説明をお願いいたします。
【大榊専門職】  それでは、資料3について説明させていただきます。高輝度3GeV級放射光源におけるビームラインの整備・運用の考え方につきまして、事務局として整理をさせていただいているものでございます。資料の構成としましては、文字で2ページと、別紙という形で、想定されるビームラインの種類と役割分担というものを案として示させていただいております。
 簡単に資料の文字の方から御説明をさせていただきます。一番上でございますけれども、3GeV級の放射光源でございますが、従来の共用法対象施設とは異なりまして、委員会でも御提言いただきましたとおり、官民地域パートナーシップによりまして、パートナー機関が整備・運用に参画していくことが見込まれることから、以下のような視点でビームラインの整備・運用をしていくことが考えられるのではないかということで、論点を挙げてございます。
 ビームラインの整備・運用に向けた基本的な考え方といたしまして、最先端の研究開発成果の持続的な創出ということを掲げてございます。高輝度3GeV級の放射光源については、学術研究、産業利用による質の高い最先端の研究成果の創出というのが見込まれ、そういった成果は、持続的に創出する必要があります。ビームラインやビームタイムは資源でございますので、それを最大限有効活用していくことが求められます。このため、以下4つの視点を書かせていただきました。
 マル1でございますが、新たな研究・技術領域を開拓し続けるようなビームラインを整備する仕組みをどうするか。マル2でございますが、適切な利用料金の考え方も含めた本格的な産学連携につながるビームラインの運用をどうするか。マル3でございますが、整備、運用、改廃を含めたビームライン全体のマネジメントをどうするか。それから、マル4は、ビームラインに応じた技術的なサポート体制について。こういった仕組みを取り入れることで、例えば、利用料収入を最先端のビームラインの開発とか整備、またサポートの充実に充てることで、産学連携や産業利用を更に促進いたしまして、利用料収入の更なる増加につなげていくという、相互に好循環、すなわちスパイラルアップさせていくような仕組みというのを取り入れていくことが重要ではないかという提言をさせていただいております。
 それから、(2)でございますけれども、最先端の放射光科学研究の場を活用した人材育成ということで、前回、人材育成についても先生方に御議論いただきましたが、放射光に関わる人材育成の促進をするためには、最先端のビームラインとエンドステーションの開発に、当初段階から若手の研究者や学生が関わっていくことが大事だということを書かせていただきました。
 また、大学等を含め、ビームラインの設置者が、施設を利用する若手研究者・学生に対して適切に指導・助言を行えるようなサポート体制の構築を行うとともに、一定のビームタイムを確保することにより若手研究者や学生自らが試行錯誤して実験を行うような場を設け、活性化を図っていくことが重要ではないか、としております。
 おめくりいただきまして、2ポツ、想定されるビームラインの種類と役割分担でございますが、これは後ろのページの別紙で補足をさせていただいてございます。1ポツの基本的考え方を踏まえ、想定されるビームラインの種類と役割分担を、次ページのとおり整理させていただいてございます。
 重要なポイントといたしまして、マル1にございますとおり、ビームラインの整備・改廃の方針については国やパートナー機関が協議し、全体設計をまず明らかにしていくことが大事ではないかということ。それから、マル2でございますけれども、これは先生方の議論にもありましたとおり、共用枠をビームラインで種別するのではなくて、ビームタイムの利用時間枠で分けていくということを可能にするような仕組みを設けること。マル3は、大学、大学共同利用機関法人とか研究開発法人が設置するビームラインについても共用枠を設けることを可能とするといったことが挙げられると思います。
 別紙について簡単に御説明させていただきます。想定されるビームラインの種類と役割分担でございます。左には、ビームラインの設置者、ビームラインの整備主体、利用者、整備に係る財源負担、維持運営に係る財源負担、利用料金と技術的サポートという形で項目立てをしてございます。
 真ん中にございます「国が整備するビームライン(共用枠)」としているものと、一番右端にございます「民間企業が設置するビームライン」というのは、従来の共用法に基づく施設のビームラインだとお考えいただければと思います。
 その上で、新しい考え方としまして、パートナー機関が整備するビームラインというのが左にございます。コメ1という形で注釈を付けておりますが、各ビームラインをビームタイムの時間枠で分けることを想定し、国が利用する枠とパートナー機関が利用する枠というのを設けることを考えています。ビームラインの整備主体はパートナー機関ですが、実際に国の補助金やパートナー機関の補助金で、維持運営に係る財源負担を行うこととします。また、パートナー機関は産学連携による民間企業の利用を中心に想定しておりまして、営利目的での利用が考えられると思います。一方、国が利用する枠は、大学等の利用を中心に、非営利目的での利用が考えられると思います。
 それから、ビームラインの利用料金でございますが、これはいずれも成果公開につきましては、利用料金は徴収しないという方針ですが、上記の維持運営に係る財源を確保するため、一部利用料金を徴収するということも考えられるかと思います。成果非公開につきましては従前のとおり、利用者から施設利用に必要な経費を徴収していくということが考えられます。パートナー機関につきましては、利用者からパートナー機関が設定した利用料金を徴収していくということ。国はパートナー機関から施設利用に必要な経費を徴収するということが考えられると思います。
 それから、右側の左記以外の設置者というところで、大学、大学共同利用機関法人、研究開発法人が設置するビームラインについても、先ほど重要なポイントで申し上げましたとおり、国が利用する枠を設けてはどうかという議論がございますので、その枠を書かせていただいております。こちらも、ビームラインの維持運営に係る財源負担について、国の補助金等を使って、国が利用する枠を一定程度確保し、いわゆる専用ビームラインの扱いですが、一部を国が共用枠として確保していくということが考えられるのではないかということです。
 それから一番下、ビームラインの技術的サポートにつきましては、国が関与する場合については国とパートナー機関とで協議をしていくことが重要かと思われます。ほかの従来の専用ビームラインは、原則、設置者自身が対応していくということが考えられるのではないかと思います。
 それから、コメの一番下、資料の一番下の数字のないコメでございますけれども、上記とは別に、ビームラインの設置者に対して、設置期間がある程度長くなったら設置料等を徴収していくことも検討するといった観点も、今回入れさせていただいてございます。
 簡単ではございますけれども、資料については以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今日、矢橋先生、金谷先生からそれぞれの御発表がありましたし、今の事務局からの資料も踏まえて、高輝度3GeV級の放射光源のビームラインの整備・運用について、また、それを利用した人材育成等について、いろいろな角度から議論していきたいと思います。
 そして、多分一つ一つの御発表に対する質問だけでもたくさんあると思うのですけれども、どこに収束したいかということは、最初に西山室長からありました参考資料の2、今後検討すべき事項のところで、枠でくくったここを議論したいという1つの指向性を持ちながら、そうしないと、SPring-8はどうあるべきかとか、J-PARCはどう在るべきかなんて我々がここで議論していると、多分発散してしまうので。
【尾嶋委員】  じゃ、よろしいでしょうか。
 金谷先生と矢橋先生、大変よくまとめていただいて、問題点が非常にクリアになったと思います。これは、私が日頃思っていることと非常によく合っているなという感じを持っております。それから、今も一番後に一覧表があったと思うのですけれども、これについてもちょっと述べたいと思います。
 というのは、ちょっと個人的な話なのですけれども、私は電電公社にいたとき、1983年にKEKで専用ビームラインを作りまして、それから2006年に、今度は東京大学で専用ビームラインを作りました。その頃は、そういう外部機関が自分のお金で専用ビームラインを作るということがないと、なかなかビームラインが埋まらないという状況で、そういう知恵も非常に必要だったのですよね。
 ところが、最近思うのは、矢橋さんの説明(9ページ)にもありましたが、技術の進歩が非常に急速で、検出器にしても、モノクロメータにしても、我々の時代は、我々しかできない研究だけをやろうと思って専用ビームラインを作っていたのが、今や汎用のビームラインで結構できるようになってきていると。国際的にもそういう方向になっているので、もう一回我々は見直さないといけないと思っています。
 1つの考えですけれども、共用ビームラインがどのぐらいの割合あればいいのかということについては、今は半分以下ですよね。J-PARCも、ほとんどないと言うと怒られちゃいますけれども。
【金谷ディビジョン長】  3分の1です。
【尾嶋委員】  ざっくりだと3分の2は共用にすべきじゃないかなと強く思っています。
 それで、これはちょっと広い話ですが、日本の科学技術について、大型装置がないとできない研究をやるために大型装置を作ることは必要なのですけれども、作ったら1つの大きな業績と思ってしまう。しかし、本当は大事なのはその後で、いかにスクラップ・アンド・ビルドをやっていくかというのが一番大事なのですけれども、そこのところの予算というのはなかなか取れない。取れないのでしようがなく、PFでは民間企業、電電公社とか日立、富士通、日電などがビームラインを作った。SPring-8ではトヨタがビームラインを作ったり、いろいろなところが入ってきた。燃料電池、リチウムイオン電池で外部資金を取ってきて、ビームラインを作っている。ところがやっている内容は、ほかの共用ビームラインでもできるような話が多くなっている。
 一番言いたいのは、そういう大きな装置を作るときには、その次のスクラップ・アンド・ビルドも含めた予算計画にする必要がある。みんな予算を通すためにぎりぎりの予算を出す。300億でいいですとか言ってやっていますけれども、それはまずいんじゃないかなというのを強く思います。特に、技術の進歩が今、非常に激しいので、そこを見据えた形の計画を立てないと、尻すぼみになる可能性がある。
 それで、この表について一言言いたいのは、従来あるやり方に比べて、パートナーという考えが新しいと思うのですけれども、例えば私が電電公社、NTTのビームラインの建設に参画したときには、民間企業各社で約10億円出して3本ずつのビームラインを作っていたのですけれども、毎年3,000万円のビームライン使用料を払っている。日立も富士通もNECもみんな3,000万円ずつ払っているのですね。それでビームタイムの半分は一般共同利用に、要するに大学に開放しなくちゃいけなかった。そういう時期を乗り越えてきたわけですね。だから、ある意味では民間企業が設置するビームラインでも、共用をもっと増やしてもいいのではないかなと思います。
 それから、大学が設置するビームラインで、国が利用する枠を設けていく方がいいのではないかというコメントがありますけれども、東京大学の専用ビームラインBL07LSUは、100%共用枠でやっています。近藤先生が委員長でもされたのですけれども、PAC、課題選定委員会をやっていました。だからその辺、かなりフレキシブルに考えていったらいいのではないかなと思います。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。
 ほかにどうぞ御意見、いろいろな角度から。何か今日、このことを決めるというよりも、いろいろな意見を出して、いろいろとビームラインの在り方についての議論をしたいと思っていますので、よろしくお願いします。
 じゃ、矢橋さんのお話の中で、専用ビームラインについてのいろいろ問題点が指摘されまして、もともと私の記憶では、専用ビームラインを作りたくて作ったのではなくて、あるところまで行ったら国が共用ビームラインの予算を付けなくなったから、空っぽのところをどうやって埋めていくかというところの方策として、専用ビームラインをそれなりの力のあるところに作ってもらいましょうという形だったのだと思います。
 そういうことがあったので、その割にはというか、それぞれ大学や民間でいろいろなお金を取ってきて作る、そして共用のいろいろなものを学びながらやると、よく頑張ったと思いますが、そこで問題点もあったということの指摘かと思います。
 とはいいながら、昔のような国だけで物が作れる時代ではなくて、ここにもあるように、従来の共用法対象施設とは異なり、官民地域パートナーシップによる云々(うんぬん)と。これが国全体の在り方なので、このバウンダリーコンディションの中で、共用ビームラインだとか専用ビームラインだとかという分け方ではなくて、資料3でうたわれていますが、ビームラインごとに分けるのではなくて、それぞれのビームタイムで共用・専用があるという新しいやり方を取らざるを得なくなると思うのですね。
 ここで文科省、西山室長には、これを全部共用で作ってくださいと言って、ぼんとお金が出てくる時代だったらいいですが、そうではないコンディションの中で、矢橋さんが言われた専用ビームラインの問題点の在り方を、どう克服するか。それから、J-PARCで金谷先生が言われた、途中で共用法が始まったが故に、汎用と特殊の順番がどうなっているか。この辺の問題をいい意味で教訓にしながらやっていくということは、すごく重要なことかなと思います。
【矢橋グループディレクター】  よろしいですか。今、雨宮先生が言われたのが正に現状として、特に2003年以降のところが専用ビームラインばかりというのは、そういうバックグラウンドがございます。
 それで、もちろん、外部の資金も利用して作っていくことは非常に重要ですが、私が申し上げたかったのは、繰り返しになりますけれども、設置したら、運用も全部そこがやらないといけないわけですよね。逆にそれが非常に負担になっているのではないかというのがあって、したがって、今、共用ビームラインがあって、専用ビームラインがあって、その中で共用枠を作るというお話がありましたけれども、むしろ専用ビームラインではなくて、共用ビームラインの中に専用枠があるのかもしれないですね。オペレーションとか維持管理というのは、単体でやるのは結構大変で非効率なので、そこはむしろ大きなプールに渡していただいた方がいいのかもしれないというのがあります。
【雨宮主査】  どうぞ。
【高橋委員】  正に創薬コンソが撤退したのはそこの理由でして、実際、自分もその頃関わっていたのですけれども、資金を集めて建設するというところは確かによかったのですが、維持管理、メンテナンスというのが自分たちではできかねるというのが非常にあったので、矢橋先生がおっしゃっていたように、最終的な形態としては、共通の部分は共通で持つという図を描かれていたのが非常に大事なことだと思うのですけれども、個人的に最後に出された表を見ると、逆に細分化の方向に向かっているような気がして、例えば末端のユーザーからすると、実際使えるのはどこなのかというのが非常に分かりにくいと思うので、どこまでを全体の枠で考えるのか、実際の資金源というのと実際の利用というのを、もしかしたら分けて考えた方がいいのかもしれないなと、末端のがわとしては思います。
【雨宮主査】  どうぞ、田中さん。
【田中委員】  私は利用分野ではないのですけれども、先ほどの矢橋グループディレクターの言われていることを常日頃、身にしみています。基本的に日本はアメリカとかヨーロッパに比べると、リソースがかなり限られていますよね。日本はほぼほぼリソースの8割方が日本人で、アメリカのように世界各国から人が集まってきて、実際の意味で利活用できるということはありません。かなりタイトなリソースで世界と渡り合うという状況は、多分放射光の加速器とか利用だけじゃなく、全てのところで同じなのだと思います。ということで、先ほどの金谷ディビジョン長の発言には若干違和感があります。J-PARCの方では、ビームラインに6人の人が張り付いて、かなりうまく運用できているようなことを言われていたのですが、20年間以上にわたってSPring-8を見てきた私の経験で言うと、1本1本のビームラインでそれぞれが個別にユーザー対応をやるというのは本当に大変です。
 先ほどからビームラインも横断的に利用するという話が出てきていて、ビームライン個別に実験が閉じるのではなくて、1つの実験でもいろいろなビームラインを使うという話ですよね、1つの研究が完結するためには。ビームラインの運用に関しても、専用ビームラインだとか共用ビームラインだとかという縦割りじゃなくて、なるべくリソースを大きく持って、かなり大きな固まりにして、維持管理・高度化というのを回していかないと、とてもじゃないけれどもやっていけない。
 もちろん、低レベルでやるのは簡単です。フロントローから下がったところで運用するのだったらできるかもしれない。技術革新のスピードが速く、どんどんいろいろなものが出てきて、それらを取り込んでインテグレートしてシステム全体を高いレベルでアップデートし続けないと太刀打ちできないというときに、限られたリソースが蛸壺化というか、非常に狭いスライスに細切れに割り当てられてしまったら、全く勝負になりません。
 それは多分、全ての分野で起きていることで、世界の最先端で勝負をするには、正に矢橋グループディレクターが13ページに見せたような運用を施設として実践していかないと駄目だと思います。ビームライン個別ではなく1つの塊、グループとして運用し、これまでのビームライン縛りからビームタイム縛りへ移行する等して、ビームライン群を長期間にわたって高いレベルに維持し、実験に効率的に利用できる環境を整えていくことが重要です。ただ、それは今のSPring-8のマネジメントではできないと思いますね。そういうものがちゃんと機能するような体制、組織、運用というのを考えていかないと、せっかく税金をつぎ込んで作ったとしても、到達するところは知れているということになりかねない。ですから、この点をよくよく考えていかなければいけないということです。
【雨宮主査】  いや、矢橋さんの問題点がそのごとくであると。13ページの在り方が重要だということですよね。
【田中委員】  今、正にこういうことが起きています。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【金子委員】  それでいくと、同様の意見になってしまいますけれども、金谷先生が言われたのと同じ考え方で、課題実行の一本化と言われたと思うのですけれども、企業から持っていったときに、1本のビームラインだけで解決できる問題ばかりではなくて、複数本のビームラインを使ってそれぞれのデータを見比べることによって、こういうことが起きているという現象解析をしようと思ったときに、こっちはこっちのビームライン、こっちはこっちのビームラインというふうになるのではなくて、課題1つで、複数のビームラインを使うのであれば、それを1つのテーマとして扱っていただけると大変有り難いなと思いますので、その辺りのためにも、矢橋先生が書かれたチームである程度受けていただいて、違うビームラインでも同じチームの中で一緒になってやっていただけると、ユーザー側としては大変有り難いと考えます。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 さっき人のことが出て、J-PARCであるところは6人、国際並み。これは非常にいいことだと思うのです。先ほど高橋委員から、コンソが撤退した理由が、なかなか自分で維持管理できないと。でも、逆に同じ理由で、共用ビームラインを作らないで専用にしちゃおうという話になったわけです。
 要するに、これ以上共用が増えたら、共用をサポートするスタッフがいないと。だから、あいているビームラインは、仮にお金が取れたとしてもスタッフがいないから、それはお金も出してもらうし、作ったところでも管理してもらうしかないと。こういうことでもあるわけです。そういう現実の問題点があると、今、田中委員が言われた在るべき姿を模索する上で、人をどういうふうにバルクのところで囲って、短冊にしないでやるオーガニゼーション、そこにちゃんと人がいないと駄目なのです。そこをどうするか。
 そうはいいながら、最初にちょっと言いましたように、そこに国がぼんと一括でお金を作れればいいけれども、そこは国だけじゃなく、民間、地域とか、いろいろなお金が混ざり合っていると。そこがこれから問題なのだと。
【田中委員】  そこは、先ほど矢橋グループディレクターが言っていましたけれども、SACLAはうまくマネジメントしているのではないかなと私は思います。なぜかというと、あそこの部隊もすごくコンパクトです。SACLAは年間7,000時間ぐらい運転していまして、そのうちの70%ぐらいがユーザータイムです。しかもSPring-8に比べたら、実験ごとに装置を入れ替えないといけない。それを現に5年間、実際やっているわけです。それで、すごい勢いで成果を出しています。
 実際そういうことを達成している仕組みが、現に日本国にあるということです。多分リングの実験は、SACLAほど大幅なエンドステーションの装置の入替えはないと思います。装置の大幅な入替えの負担が軽減したら、SACLAは今、トータル3本ですけれども、同じ人数で10本、15本ぐらいのビームラインはカバーできるのかなと思いますね。
【雨宮主査】  確かにSACLAはうまくいっていると思います。そういう意味で、もしSACLAをビームライン当たりのスタッフ数という形に直すと、どういう換算になりますか。
【矢橋グループディレクター】  フロントに出ている、いわゆるビームライン担当者という意味では、これもまたいろいろな服を着ているのですけれども、10名に満たないところで3本回しているわけですね。ただ、バックヤードを充実させているので、そこが大きな違いだと思います。検出器とかは別部隊がやっていますので。
【雨宮主査】  あるからということですね。
【矢橋グループディレクター】  そうじゃないと、とてもやっていられないです。
【高橋委員】  人という話でいうと、例えば1つのビームラインに6人ずつというのを全部に置くというのは難しくても、例えば3つに10人とか、そういう考え方はできると思うのですよね。
【田中委員】  基盤のところを共通化していって、そこは少ない人数で全部見るように合理化していかないと、とてもじゃないけれども、多分無理ですよ。
【雨宮主査】  どうぞ。
【山田委員】  金谷さんがJ-PARCのビームライン当たりのスタッフ数の話をされたのですが、もちろん数の違いというのもありますが、スタッフの経験やミッションの違いも非常に大きな問題と思います。例えばCROSSがスタートしたときに、多くのスタッフが必要なので、たくさんの人を雇用しましたが、必ずしも中性子を専門的にやっていた人がたくさん雇用されたわけじゃなくて、中性子が初めての方も多く雇用されました。一方でKEKはJ−PARCの前に、中性子科学研究施設(KENS)という中性子源を使い、経験豊富で自分の研究を行っているスタッフが多くいます。そのため、ビームラインごとに共同利用のユーザーサポートの数だけでなくサポートの質がアンバランスになっているという側面もあります。理想的には、共用のビームタイムなどを通して、場合によっては、異なる所属のサポートスタッフが一緒にビームラインサポートをやったらどうかと考えています。具体的には、例えばクロスアポイントメントなどにより、KEKのビームラインにもCROSSのスタッフが入り込めるとか、たくさんの人でたくさんのビームラインの面倒を見るというシステムが、何か作り上げられないのかなということを最近考えています。そういうやり方の方が、ビームラインスタッフ同士の切磋琢磨(せっさたくま)もできるし、メリットがあると思います。それと、KEKのビームラインのように少人数でビームラインを作って維持管理していくと、どうしても蛸壺的になってしまいがちです。装置が出来上がった段階で、いい意味でも悪い意味でも、これは自分のビームラインという意識がどうしてもできてくるので。
【尾嶋委員】  マイビームラインね。
【山田委員】  やはり多くの人が多くのビームラインに参画していくという形を取っていった方が、蛸壺化が避けられ、新しい先端的なニーズがそこに盛り込まれる可能性が高いと思っています。
【金谷ディビジョン長】  余り人のレベルの差を僕は言わない方がいいかなと思って言わなかったのですが、確かに、山田委員が言われたように、技術の差などあります。中性子を全く知らずに登録機関に入って、次の日から中性子のユーザーのお世話をするという状況が実際にあったわけで、ここの差の大きさというのは現実に非常に、6人という数字は実際にはなかなか6人にはならないということがあります。
 もう一つ、加えて言いたかったことがあります。基本的にまずサイエンティストを雇用するのですね。そういう人たちが、本当に技術的なことをきっちりこなしていけるかどうかです。先ほどから皆さんが議論されていること自身は、我々施設としても大事で、幾つかのビームラインを共通して基盤技術をやっていく人たちは、非常に必要だと思います。その方がずっと効率がいい。
 ただ、本当にそういう基盤技術をやる人を我々が採ってきたのか疑問です。むしろ、サイエンスをやる人をたくさん採って、基盤技術をきっちり支える人を採ってきたのかというのは、ファシリティーの人員の分布を見ると、確かにあります。そういう技術者をきちっと養成する、若しくは採るということ自身も、先々は非常に大事だなと。
 特に山田委員が言われたような、おらが村のビームラインという考え方を、技術の人たちは余りしないのですが、むしろサイエンティストは自分たちのビームラインという考え方があります。人の採り方、それから人の育て方もあるのだと思うのですが、ファシリティーとしては考えていかないといけないかなという気がします。
【尾嶋委員】  ただ、放射光については、昔はモノクロメータを作ったり、ディテクターを作ったり、そういう大学の研究室がたくさんあった。ところが最近は、そういう研究をやっているところがどんどん減ってきて、そこでそういう人材を育てる機会がなくなっている。これも人材育成と関係するのですけれども大学も自由競争で、外部資金を取ってこないとどうしようもない時代になってきている。外部資金を取れるようなことをみんなやるわけですよね。そうすると、今おっしゃったようなサイエンティストをどうやって育てるかということは、非常に大きな問題だと思うのですよね。
【矢橋グループディレクター】  今の議論は、正にSACLAを立ち上げるときに非常に中で活発に議論しまして、結果的に今のような形にしているわけですけれども、特にビームラインのスタッフですね。サイエンティストという御議論もありましたが、正にそうで、自分がしっかりサイエンスが分からないと、いいサポートはできないということです。一方で、ルーチンな仕事というのは結構あって、それも全部やって、そういう意味では旧来のビームラインスタッフに求められているのは、サイエンスができて、ルーチンサポートができて、基盤開発ができるということなのですね。それはやはり難しいです。SACLAはそこを3つ、全部分けまして、さっき申し上げませんでしたけれども、ルーチンサポートのところは外注に出しています。そこを定型化して、逆に外注に出すと、本当に普通の会社の方ですけれども、彼らは彼らで一生懸命やってくれます。それは多分、日本のすごくいいところだと思うのですけれども、それをやることで、いわゆるビームラインスタッフも、自分の仕事はルーチンな仕事じゃないから、ちゃんと論文を書けよというのはしっかり言えるし、しかも開発、基盤のところはまた別がやっているので、そこも安心して任せられるので、これは多分、外枠というよりは中の運用に関わってくるところだと思うのですけれども、そこをしっかりと決めていただくことが、多分必要なのかなと思います。
【金子委員】  それでいくと、CROSSの方も、測定代行等も始めるという話のときに、やはりそういうところまでを中の人間でやるのは大変なので、ある程度ルーチンになったものに関しては、そういう分析会社等を使ってやってもらうということで、もともとのスタッフは、もっと新しいこととか、どうやって取ったらいいかがまだ決まっていないようなものに関して検討される。ある程度こうやって取ったらいいねという条件さえ決まってしまえば、そうやって分析会社にお願いする。
 そういう役割分担をすることで、本当に難しいところは、それの専門の方にやっていただいて、ある程度ルーチンできちんとやればいいというところは、そういう方にやってもらうというふうなことを考えていく必要はあるかなと思います。

【田中委員】  今のお話は、かなりそこ(役割分担)を意識しないと実は機能しないと思います。加速器の方はどちらかというと、ユーザーにダイレクトじゃないからかもしれないのですが、できあがったものはオペレーターとかエンジニアに渡すという、もともとそういう文化があるので、研究者が開発した物を囲い続けにくいのですが、ビームラインの人たちを見ていると、かなりエンドステーションに束縛されちゃうのですね。
 もちろんそれでもやっていけるのでしょうが、自分で意識してちゃんと切り分けていけば、他の人でも操作できる形になるはずです。しかし、本人がそういうふうに考えないと絶対にできない。若しくはマネージャーがそれをやらせる。エンドステーションから切り離して、次の仕事を振り分けていく、これを意図的にやらないと、本当にビームラインのパーツのようになっていきます。
 これらをシステマティックにやれるように、3つの階層に分けて、サイエンティストが、本当にサイエンティストの仕事ができるようなスタイルを多分SACLAは作ったのだと思うのです。今まで見てきた経験では、サイエンティストをマイビームラインの束縛から解き放つのは、本当に簡単ではありません。
【高橋委員】  その意識するという意味で、例えばの話なのですけれども、利用料の中に、サポートが必要な場合はプラス幾らでサポートするから、その分の値段はサポートの人の育成に充ててくださいという仕組みというのはできるのでしょうかね。サポートが要らないときは自分たちで全部やるからという値段と。
【田中委員】  そのお金はどこに行くのですか。
【高橋委員】  そういうお金を例えばプールすることで、それがサポートの人を雇うお金になるとか。どういう仕組みがいいか分からないですけれども、例えばの話ですね。
【田中委員】  それは大変有り難いお言葉としたいのですが、施設側にそこまでお金がないというわけでもないのだと思いますよ。そういうお金をもらわないとサポートもできないとか、そこまで逼迫している状況じゃないよね。
【矢橋グループディレクター】  いやいや 各施設ともリソースの余裕はありません。
【雨宮主査】  サポートする人のインセンティブが必要なのだと思う。
【高橋委員】  それもそうですし、あと、使うがわとしても、お金をプラスして払うから、これはサポートが本当に要るのかどうかという意識がそちらに向くわけですよね。そういうお金というシステムを作ることで。
【雨宮主査】  いろいろ、まだ御発言されていない方にもお話しいただきたい。あと、今日、ここの別紙が1つの案として出てきているので、これに向けた議論、それから参考資料2ですね。ビームラインの整備と運用についての5つのポイント、今日の議論の枠の中。そういう意味で、そういうところにフォーカスしながら、引き続きもうちょっと議論を続けたいのですが、岸本委員、民間の立場から何かありますか。
【岸本委員】  この表と、先ほどまでの御議論のお話を聞いていて、今回、官民地域のパートナーシップということで、金谷先生の御説明資料にもありましたけれども、資金の出どころが少しずつ違うので、それをそのままやっていると、きっと複雑なシステムになってしまうというのは言うまでもないのですよね。
 それで、先ほどから聞いていると、建設するとかそういうところの予算は要るのですけれども、維持管理とか施設としてトータルとして考えなくてはいけない。ですので、運用方法についても、それは今さっきのビームタイムという考え方かもしれませんけれども、自分たちの専用ビームラインという考えだけではなく、施設全体として表の縦ではなく横で考えていいかないといけなく、ビームタイムの運用とか別々ではなく、1つの枠として運用していくような考え方も必要なのかなと、今感じています。
 それと、議論の中にはなかったのですが、スクラップ・アンド・ビルドの考え方もよく考えておかなくてはいけない。先ほどは施設側からの立ち位置でということで御報告を頂いたのですけれども、ユーザーサイドから言わせていただきますと、陳腐化という言葉の定義が非常に難しいのですけれども、それは多分、世界的に見た技術の位置付け、計測技術、更に先のサイエンスをやろうと思ったら実験できないという意味での陳腐化だと思うのですけれども、ユーザーにおいては、例えばマテリアルサイエンスとか物作りをしていくという意味では、今の計測技術で進めていくだけでも十分できることがたくさんあるはずなのですね。そのときに、潰してしまっていいのかという話になります。
 ですので、御発表にもありましたけれども、恐らく1つの施設内だけで考えていたら、破綻していく可能性もある。他の施設でも随分かなりのことができるようになっているので、計測方法も標準化し、他の施設と協力しながらやっていく必要がある。その上でのスクラップ・アンド・ビルドという考え方をしていかないと、本当はもっともっと実のあるサイエンスがあるのに、できなくなってしまうということに陥ってしまうのでその辺は気を付けてシステムを考えないといけないと思います。
【矢橋グループディレクター】  今のは正におっしゃるとおりです。私もポートフォリオという言葉で書かせていただいていたのですけれども、最先端のものだけではなくて、汎用のものも大事で、たまたまSPring-8はベンディングマグネットというのがあって、そこはある意味でもう枯れたところなので、そういうところに枯れたのを入れていくと。
 ただ、今一方で、ベンディングマグネットの中でも本当はアンジュレータでがんがんやったらいいのにというのが結構あるのですね。それはそっちに移してという、そういったことをフレキシブルに、余り固定したものと考えずにやっていくというところが必要かと思います。もちろん、3GeVとのすみ分けも必要になります。
【田中委員】  ポートフォリオというと、1施設の中のビームライン総数のポートフォリオもあるのですが、多分、全国的な光源のポートフォリオというのが一番大きいでしょう。さっきの矢橋グループディレクターの話の中で、「ESRFでは軟X線が1本しかない」というのは正にそうで、SOLEILがフランスにあるわけです。それ以外にも3GeV級の放射光施設はいろいろあるので、軟X線はそちらが受け持っている。
 日本でも、もし3GeVができたとしたら、SPring-8を建設した時代は全部SPring-8でやらなければいけなかった、赤外光まで一部受け持ったけれども、赤外光は自然科学研究機構分子科学研究所(分子研)、分子研は既に赤外でdiffraction limitに達していますので性能的には十分ですし、新しくできる3GeVが軟X線のところは明るいので、軟X線の部分は3GeVが受け持つことになる。SPring-8が何をやるのかというのをもう一回見直して、日本全体として最大の効率を目指すということを考えていくのだろうと思います。
【金谷ディビジョン長】  岸本さんの話の前半部分に戻るのですけれども、J-PARCの場合、予算がみんな縦割りになるわけですね。そうすると、このビームラインの中で使える予算というのは、この枠の中だけであったと。そうすると、今までの皆さんの議論で、いろいろな意味でビームラインをまたいだ基盤技術が非常に大事だというときに、この中の縦割りをどうやっていくかというのは難しい問題です。例えばここで開発した技術をこっちに持ってきたいけれども、実際にお金的な問題があってできないということが起こり得るわけですね。
 特に今、それが専用ビームラインになってくると、ものすごく大きな問題となる。そこのところは、この縦割り状態をお金的な意味でも考えておかないと、なかなか現実には動かないところがあって、理想的にはそういう基盤技術は、またいだ方がいいのはそのとおりなのです。ただ、例えばある茨城県のビームラインで、KEKで開発したやつと同じことをまた開発しているということがあり得るわけです。そういうところというのは、お金の問題とかなりリンクします。ここならば多少そういう議論ができるのかなという気がします。
【雨宮主査】  そうですね。だから、そこをどういうふうに克服するかという問題ですよね。
【西山室長】  いろいろ御意見ありがとうございます。前半の御議論でやった、人材も含めて基盤的なところをいかに大きな枠の中で共有化していくかというのは、おっしゃるとおりだと思っていて、今日の資料3では基本的な考え方の話と、別紙の具体的な役割分担、財政負担も含めた役割分担の話の、間はちょっと抜けている感じだったので、少し逆の意味で見えたのかもしれませんが、イメージとしては、そういった基盤をできるだけ共有化して、うまく使っていけないかというイメージを描いています。
 他方で、別紙でこれだけ細かく書いたのは、今、金谷先生がおっしゃったとおり、国から出すお金は、当然ながら何らかの目的があって出しますので、目的外に使用することはできないです。税金を使っている以上、何でもいいから取りあえず高度化のために使ってくださいというのはあり得ないので、そうすると当然ながら、いろいろな制約が出てくるわけなのですね。
 そういった話も含めて御議論いただきたいがために、こういう細かい資料を作ったのですけれども、例えば、国が利用する枠というのをいろいろなビームラインごとに作っているわけなのですが、先ほど金子先生も言ったような、一括して申請を受け付けて、一括して実施をするような仕組みなんかは、それぞれ国がちゃんと枠を持っていれば、それをまとめてやることは可能だと思うのですね。ということも思い描きながら、こういう細かい資料を作ってみたというのが、まず背景にあります。
 というのが補足説明と、あと、できれば御議論若しくは御意見いただきたいのは、別紙の関係で、特定の設置者が設置するビームラインをどれぐらいにするのか、果たしてそもそも要るのか要らないのかも含めてですけれども、さらにはパートナー機関若しくは国が設置するビームラインをどれぐらいにするのかという全体像は、まずはビームラインのグランドデザインをちゃんと描いた上で、個々個別に協議をすべきだと思うのですが、これは見え方が結構、特定の設置者が設置するビームラインが、書くことがいっぱいあったので少し多くなっていますが、できるだけ共用を多くすべきだというのは方向性としては理解をしているつもりなのですが、設置形態として、そもそも特定の設置者、ここでいうところの大学、大学共同利用機関法人、研究開発法人、民間企業、これらの特定の設置者が設置するビームラインというのは、そもそもあった方がいいのか、ない方がいいのか。
 更に言うと、今、例えばSPring-8でも、特定の民間企業が置いているビームラインがありますけれども、これについて、例えば左側に書いてあるような国が利用する共用枠というのを、民間企業のビームラインで設けることは、果たして可能なのかどうか。これはなかなか、企業の環境もありますので難しいところがあるではないかと思って、そういうのを今回作っていなかったのですが、以上2点について、できれば御意見いただければと思っています。
【尾嶋委員】  ちょっとすいません、今おっしゃった中で、目的外という言葉が私は非常に気になったのですけれども、国が設置する施設を目的外のものに使っていいかとおっしゃったのですが、先ほどの民間の利用というのは目的外なのでしょうか。
【西山室長】  例えば民間が利用する、民間が設置しているビームラインについて、技術的サポートを国の補助金で行えるかというと、難しいと思います。適切な対価を民間側から払っていただけるのであれば、国費でそれに対するサポートが付くことは可能ですが。
【尾嶋委員】  対価を払えばいいんですね。
【西山室長】  はい。例えば、サポート機関が民間から収入をもらって、その対価としてちゃんとサポートするというのは当然ありです。
【尾嶋委員】  それは僕らが、日立や富士通、NECがKEKでビームラインを作ったときも、我々は対価を払って技術的なサポートを得ました。
 私が一番聞きたいのは、例えばこの施設、3GeVリングが、10年、20年後に何を達成していたら、要するに成功と言えるのか。これを作ってよかったなと、これだけのお金を投じてよかったのかなというのは、最先端のサイエンスなのか、イノベーションなのか、産業利用が進んだらいいのか。それのところの一番初めの骨組みが、何かはっきりしていないような気がするのですよ。要求があったから作るのじゃなくてね。
 だから、国としては、それらも全部含めて僕は目的じゃないかなと思うのですけれども、目的外には放射光施設は使ってはいないと思うのですけどね。そこはいかがですか。
【西山室長】  国の補助金については、そういう大きな目的のために使えばいいというのは、恐らく交付金の類いなんですね。補助金になると、具体的にどの人数、どの人が何をするかというのも、全部ちゃんと特定をした上で出すのが補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適化法)になっていますので、国のお金を出す仕組み上、それは難しいということですね。議論がかなりざくとした議論になりますけれども。
【尾嶋委員】  それではこれで産業利用してイノベーションが生まれたというのは、成果に書けないということですか。
【西山室長】  要するに、補助金適化法上に沿った内容になるかどうかというのが非常に難しいと思います。
【田中委員】  でも、一方で運営費交付金もあるわけですよね、運営資金なんかで。そちらは、今の話ではサポートできるのですよね。
【西山室長】  交付金については、基本的にはサポートできるかとは思います。
【矢橋グループディレクター】  だけども、その対価を払って、当然それはそうしないと。ならざるを得ないのじゃないか。
【尾嶋委員】  対価を払えばいいのです。
【雨宮主査】  だから、最先端の研究をやるということ、それから官民地域パートナーシップでパートナー機関もそれなりの対価を払って、そして国が一緒にやるのであれば、目的の中に入っているわけですよね。今言った目的は、最先端のことをやるし、イノベーションにつながること、そして産業界も活性化すると。この高輝度3GeVの目的が何かというと、複数の目的が1つのより大きな目的であるという意味ですから、広い意味で解釈すれば、その辺はうまくいく可能性はありますよね。
【西山室長】  そのための仕組みを是非考えますのが、今のこの議論かと思います。
【矢橋グループディレクター】  ちょっと確認ですけれども、外部の機関がBLを設置するのは、外部のお金を持ってきて設置すると。運営するのもその機関がやりますよというのですが、それは、要はその機関がスタッフを抱えてやるのではなくて、スタッフを抱えるお金を別のところに渡して、それが大きいプールの中でやっていったというのは全く問題ないという理解でよろしいですね。
【西山室長】  個別具体的な事例に即してお答えしないと、何となく議論が発散してしまう気がするのですけれども、少なくとも補助金で出す場合は、何らかの基金的なところにプールをして、使ってくださいと。国家の次世代放射光の技術サポートのためですからというのでは、難しいと思います。
【矢橋グループディレクター】  そうですね。
【雨宮主査】  もう一回、先ほど室長が2つの質問をもう一度。
【西山室長】  まず1点目は、特定の設置者、大学、大学共同利用機関法人、研究開発法人、民間企業という特定の設置者が設置するビームラインというのは、どれぐらいの数になるかは当然ながら分からないのですけれども、そういう枠組みというのは残しておいた方がいいのではないかと思ったのですが、その点はどうでしょうかというのが、まず1点目ですね。
【雨宮主査】  1点ですね。
【尾嶋委員】  これは残さないと。
【西山室長】  2点目は、民間企業が設置するビームラインについて、国側で例えば共用枠を買い取って、全体として使えるような枠組みというのを、民間企業が設置するビームラインでも作ることは可能でしょうかというのが2点目です。
【高橋委員】  会社としては、基本的には払ったものに対して割に合うだけの成果が得られれば、いいという考え方になることが多いと思うのですね、大きな言い方をすると。
【岸本委員】  逆に言えば、専用ビームラインでこれだけの全体枠があって、これだけの枠を供出しほかのビームラインを使う、その代わり、ほかのビームラインの人が使いに来るという仕組みというのは、多分作れちゃうのではないかなと思います。それは目的、実験が1つじゃないので、複数のビームラインをまたがることというのは十分あり得ますので。
【西山室長】  ちょっと気になったのは、企業によってはクローズな環境をしっかり用意したいという向きはあるかと思うのですが、最近はそういうのは少し薄いと思ってよろしいのでしょうか。
【雨宮主査】  企業によるのかな。
【尾嶋委員】  専用のビームラインに近付くこともできないみたいな。
【金子委員】  そうですね。現状ですと、まだちょっと。もし共用ビームタイムの枠を作りなさいといったら、もう少し環境を変えないと、現状のままでは機密性が結構高いので、難しいかなと正直思います。ただ、現実問題として、物理的に時間を確保しなさいということはできると思うのですけれども。
【岸本委員】  民間のところだけでいうと、2つ考えができるような感じだと思うのですけれども、恐らくトヨタさんだったら自社で1本作られているから難しい。例えばフロンティアソフトマター開発産学連合ビームライン(FSBL)だったら19社、今は18社になったかもしれませんけれども、19社とかで作った専用ビームラインなら、そういうことが多分可能だと思うのです。多分、1社で作るのか、複数社で共同して作るのかによっても、また変わってくる。
【高橋委員】  全然違うかもしれない。
【金子委員】  そうですね。サンビームだったら、多分大丈夫ですと言えると思います。
【尾嶋委員】  あと、先ほどお話ししましたように、昔のKEKだったら、4者が独立に自分たちのお金を使って、半分は一般開放していたのですよね。その形式も僕はあっていいんじゃないかなとは思いますけどね。
【雨宮主査】  最初の質問のことに関しては、大学、大学共同利用機関法人、それから研究開発法人ビームラインは、ある程度私はあってしかるべきだと思いますが、それが何本かということに関しては定量的には分からないですけれども、手を挙げるところが出てくる。
 ただ、そのときに、従来の専用ビームラインのよさを生かしつつも、矢橋グループディレクターから指摘のあったデメリットの部分が起きないような工夫は必要だということなのだろうと思います。共通化できるところは共通化すると。それから、情報の相互乗り入れですか。そういうところの仕掛けをどうするかというところは、十分検討する必要があると思います。
【西山室長】  今回この次世代放射光の施設を、共用法の枠組みの中での施設として位置付けることを国が考えているわけなのですけれども、今の共用法の枠組みはビームラインごとに分けているのですよね。共用のビームラインと専用のビームラインと。今回は、少なくとも法律上のそういう考え方ではなくて、すなわち法改正をすることも視野に入れて、共用ビームライン、専用ビームラインではなくて、設置者は多様にいるけれども、その一定部分は共用として、時間なり、ビームタイムなりで共用と位置付けて、そこの部分は少なくとも全部一緒に扱えるような、そこに対しては国側もしっかりと一定の財源措置をできるような。
【尾嶋委員】  それはいいですよ。
【西山室長】  そういう枠組みを考えられないかというのが、この資料で言いたかったことです。
【雨宮主査】  それは非常にいい方向性であると思います。
【西山室長】  分かりやすいように修正を検討します。
【雨宮主査】  御発言になっていない近藤委員、何かありますか。
【近藤委員】  さっき、30年たったときに何が成功なのかというお話がありましたけれども、私は大学にいますので、30年たっても大学の学生から見て魅力的な施設で、就職したいと、そこへ行って骨を埋めてもいいと思えるような施設であり続けるということが、1つの成功の指標かなと思うのですね。
 今、ビームラインサイエンティストになろうという学生というのはなかなか覚悟が要って、先ほどからお話ありますように蛸壺化していて、そこへ行ったらトラップされてしまうという危機を感じる学生が多くて、なかなかトライできないというところがありますけれども、一方で、ビームラインをクラスター化して、そこへ行ってそこにトラップされるのではなくて、そこで関連するビームラインの人たちと一緒に切磋琢磨(せっさたくま)しながらいろいろなことに関わっていきつつ、自分の能力を増し加えていける、自分自身が成長していけると思えるのであれば、非常に就職しやすいところにもなるかと思います。
 先ほど来ずっと出ています、ビームラインを複合化して共通のところを強化しながら、グループでマネージするというビームライン運営の仕方というのは大事だと思います。学生にとっても、就職して、そこで仕事をする場としても大事だと思いますし、また、そこから更にキャリアアップしていくという点でも、1つの狭い領域ではなくて、ある程度の広がりを持った中でいろいろな経験を積んでいくことで、きっと次のステップに進んでいく足掛かりを大いに持つこともできるかと思いますので、いろいろな点でよいかと思います。そういう施設になってほしいなと思っております。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。
 時間も過ぎましたので、資料4、今後のスケジュールについて、事務局からお願いいたします。
【大榊専門職】  では、今後のスケジュールについて御説明いたします。
 本日8月30日、ビームラインについての御議論を頂きましたけれども、次回の第12回の量子ビーム利用推進小委員会は9月中旬頃を予定してございます。施設の運用についての議論ですとか、施設の整備・運用に必要な組織体制・人員についての議論、それから各施設の整備費についての議論といったものを予定してございます。
 第13回につきましては10月上旬から中旬、次世代放射光源を活用した学術研究・人材育成の活性化について、また整備運用計画案の御審議、最終報告書についての御審議というものを重ねまして、10月下旬から11月上旬くらいに第14回の量子ビーム利用推進小委員会で最終報告書の審議をできればと考えてございます。
 事務局で今考えている大まかなスケジュールは以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。こういう形で、まだ年末まで何回かありますので、是非ともよろしくお願いいたします。
 全体を通して何か御質問とかございますでしょうか。
 少し時間がオーバーしましたけれども、本日の議題はこれで終了いたしたいと思います。
 それでは、最後に事務局から、何か連絡事項等あればお願いします。
【大榊専門職】  次回の量子ビーム利用推進小委員会の日程につきまして、また改めて御連絡させていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。また、不要な資料、ドッチファイルについては、机上に置いたままにしていただければと思います。
 以上でございます。
【雨宮主査】  以上をもちまして、第11回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。


── 了 ──

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)