量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第26回) 議事録

1.日時

平成30年12月25日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 今後の重点的な課題及び推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、石坂委員、伊地知委員、内海委員、金子委員、岸本委員、小杉委員、近藤委員、高橋委員、高原委員、田中委員、宮内委員、山田委員

文部科学省

勝野科学技術・学術総括官、奥研究開発基盤課量子研究推進室長、大榊研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

理化学研究所放射光科学研究センター 石川センター長、理化学研究所放射光科学研究センター 矢橋グループディレクター、高輝度光科学研究センター 田中常務理事、兵庫県庁企画県民部科学情報局 落合局長、トヨタ自動車株式会社基盤材料技術部 材料創生・解析室 山重主幹

5.議事録

【雨宮主査】 それでは、定刻になりましたので、第4回SPring-8、SACLA中間評価を開催いたします。本日は年末のお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。本日は、13名の委員に御出席いただいております。御欠席は3名で、石山委員、尾嶋委員、北見委員です。
本日の会議ですが、本小委員会の運営規則に基づいて公開という形で進めさせていただきたいと思います。
それでは、事務局より配付資料の確認などをお願いします。
【大榊補佐】 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を御確認ください。議事次第のとおり、資料1-1から資料5まで、参考資料を配付しております。また、机上のドッジファイルには前回までの中間評価の資料、議事録、評価結果等々をとじてございます。
なお、第3回中間評価の議事録につきましては、本日の開催までに期間が短かったので、まだ御確認いただけておりませんので、議事録(案)という形でとじております。後日、先生方に御確認いただいた上で差し替えることといたします。もし資料に不備等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
以上でございます。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。今回も引き続きSPring-8、SACLAの中間評価を委員会で行っていきます。
本日、御出席いただいている有識者の方を御紹介させていただきます。
トヨタ自動車株式会社、基板材料技術部、山重先生です。
【山重先生】 トヨタ自動車の山重と申します。よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】 もう一方が兵庫県の企画県民部、落合科学情報局長です。
【落合局長】 落合です。よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】 よろしくお願いします。後ほどこのお2人の方からSPring-8の専用ビームラインにおける研究開発、また、その利用状況や、SPring-8、SACLAの施設運営に関わる提言、今後の課題などについてお話を頂きたいと思います。今回もSPring-8、SACLAからは、理化学研究所の石川センター長と矢橋グループディレクター、また、高輝度光科学研究センターの田中常務理事、この3名の方に御出席いただいております。
それでは、議題(1)に入っていきたいと思います。まずは事務局から、SPring-8、SACLA、それから、次世代放射光施設の予算について御報告があります。また、事務局において、これまでの中間評価で、委員や有識者の方から御指摘のあった内容をまとめるとともに、本日、議論いただくテーマを示した資料を用意しておりますので、御説明をお願いいたします。
【大榊補佐】 それでは、まず2019年度の予算案について御報告させていただきます。資料5、横長の資料5をごらんいただければと思います。SPring-8、SACLA、それから、SPring-8とSACLAに関係する補正予算、また、次世代放射光施設に関する予算について、ポンチ絵で示してございます。
資料5の冒頭をごらんいただきますと、SPring-8の整備・共用というポンチ絵がございまして、右側に予算案を書いてございます。前年度予算から少し下がっておりますけれども、97億円程度、約5,000時間運転を確保しております。
おめくりいただいて(資料5の2ページ)、SACLAの整備・共用でございますが、こちらにつきましても、今年度予算額、来年度予算案については69億円、5,815時間運転の確保を行ったところでございます。
更におめくりいただきまして(資料5の3ページ)、SPring-8の施設整備というポンチ絵をごらんいただければと思います。右肩に、2018年度第2次補正予算額(案)を書いておりまして、12億円でございます。
これは2つに分かれてございまして、整備の概要というところの下をごらんいただきますと、SACLAからの電子ビーム入射によるSPring-8老朽化施設の廃止等ということで、従前より、SPring-8にSACLAから電子ビームを直接入射するというシステムの整備をフィージビリティスタディ的に進めてございましたが、今般、第2次補正予算にてSACLAからSPring-8にこの電子ビームを入射する装置の整備等を行うことを決定したものでございます。
また、右側は、従前からやってございますが、SPring-8の安全防災対策ということで、SPring-8は整備から25年近く経過してございますので、施設の漏水等の対策等をやらせていただくということでございます。
更におめくりいただきまして(資料5の4ページ)、次世代放射光施設の関係でございます。先生方に大変に御尽力を頂いた次世代放射光施設につきましては、12月17日に、麻生財務大臣と柴山文部科学大臣の間で大臣折衝を行いまして、次世代放射光施設について13億円をお認めいただくとともに、今後、本格的な整備に着手するということをお認めいただいたところです。予算は13.3億円で21日に閣議決定したところでございます。改めまして、先生方皆様の御尽力、御助力に大変感謝を申し上げたいと思います。
予算関係は以上でございます。
また、中間評価の方に戻らせていただきます。資料1-1から資料2をごらんいただければと思います。資料1-1は、先生方が以前にこの委員会で御発表いただいた内容を簡単にそのメモ書きというか、概要の形で起こしたものでございますので、ごらんいただければと思います。
また、資料1-2でございますが、前回の議論の概要でございまして、もし追加、変更等ございましたら、この委員会か、若しくは委員会が終わった後に事務局の方まで御連絡を頂ければと思います。
資料2の方を説明させていただきます。中間評価に当たっての主な論点についてでございます。資料2の15ページをごらんいただければと思いますが、本日、中間評価(第4回)で議論する主な項目に赤い囲みを付けてございます。それまでに第3回までに議論した主な項目については、青い点線でチェックをしてございます。
第4回は、これまでのSPring-8の今後の発展の方向性ですとか、研究成果の最大化の部分、産学官共用に係る利用促進、人材育成ということで、網羅的にこの項目を御議論いただいているということでございます。ここを全部一貫して御議論いただいた上で、報告書の形でまとめるということにしたいと思ってございまして、今回はその赤囲みのところを中心に理研から説明いただく予定でございます。
ちょっと駆け足で申し訳ございません。以上でございます。
【雨宮主査】 ありがとうございました。今、幾つか報告がありましたが、この委員会でこれまで議論してきた次世代放射光施設の予算についても御報告がありました。もちろんそれを含めて、今の説明についていただいた資料について御意見、御質問等ありましたらよろしくお願いします。
資料1-1については、この発表していただいた4名の委員の方の発表概要ということですが、委員の方で何かお気付きのことがあれば。あとそれから、資料1-2は、これまでの議論の概要が(案)として、1ポツ、2ポツと2つでまとめられています。いかがでしょうか。
特にないようでしたら、先へ進みたいと思います。
それでは、前回と同様に、今回もSPring-8、SACLAの運営や利用について深い見識をお持ちの先生方から、両施設の施設運営に関わる提言、また、今後の課題などについてお話を頂きたいと思います。
今回は、SPring-8の豊田ビームラインにおける産業利用などの立場で、山重先生と、兵庫県ビームラインの設置者として、県としてのお立場で落合局長にお願いしております。お2人からの御説明に対して、それぞれ質疑応答の時間を設けまして、その後、理研、JASRIから施設の課題や今後検討している取組等について発表いただくことにしたいと思います。
それでは、まず山重先生に15分程度でお願いいたします。
【山重先生】 トヨタ自動車の山重と申します。本日は、このような貴重な機会を頂きまして、ありがとうございます。これまで私は、SPring-8につきましては、平均しますとAB期それぞれ30シフト程度実験させていただいております。
また、SACLAにつきましては、産業利用推進プログラムや成果専有時期指定枠にて、AB期それぞれ3シフト程度利用させていただいている状況です。ということで、現場目線でのお話になってしまうかもしれませんが、御了承のほどお願い申し上げます。
それでは、本日御報告させていただく内容の概要について御説明させていただきます(資料3-1の2ページ)。最初に、弊社の製品開発体制イメージについて御紹介させていただき、次に、具体的なSPring-8、SACLAの活用状況について、最後に、施設側の方への期待と提案という内容でお話しさせていただければと思います。
こちら(資料3-1の3ページ)は、弊社の製品開発体制イメージになりますが、大きく3つの開発体制を示しております。一番上から御説明しますが、製品の量産開発をしている部署があります。その下の破線は、弊社は7つのカンパニーに分かれておりまして、そのカンパニーの境界線になります。そして、量産開発部署と研究開発部署との間で、情報をやりとりするような関係になっております。この研究開発部署は先行的な開発を行い、基礎研究部署が部署それより先の研究をしている体制イメージになります。
量子ビーム業務に関しましては、基本的にそれぞれの部署からニーズがあるのですが、その業務は、私が所属しております研究開発部署の分析部署を経由、あるいはグループ企業、分析メーカー、共同研究等で連携している大学研究機関、その他国プロなどを経由して活用させていただいている状況です。
現在、私の担当している材料が液系や全固体電池になりますので、製品の分析対象を、液系・全固体電池ということで御紹介させていただきます(資料3-1の4ページ)。
こちらは、縦軸が時間分解能、横軸が空間分解能になりますが、対象は実製品からその中の部材や材料の結晶、界面などになります。というように、電池一つをとってみても、時間・空間分解能が多岐にわたっておりまして、我々分析する立場としては、非常に困難になっております。
こちら(資料3-1の5ページ)は、先ほどの課題に対して、SPring-8やSACLAがどのような位置付けになるかということをイメージ的に示しております。製品、各部材、材料に関しては、開発ニーズに応じてベンディングやIDのビームラインを使い分けて、解析を進めております。しかし、空間分解能で言いますとナノメートルオーダーの壁、時間分解能で言いますとミリ秒オーダーの壁を超える手法については、これまで穴が空いている状況でした。しかし、SACLAを活用することで、その壁を越えられる可能性があるため、現在、我々はこれら全ての施設を活用させていただいている状況になります。
こちら(資料3-1の6ページ)は、実際に求められている分析レベルについて示した資料になります。縦軸を解析レベル、横軸を年代で示しておりますが、これまでは、電池を解体して分析するのが主流でした。しかし、それでは実環境における反応メカニズム等が分からないため、調べる目的に応じて電池の機能を単純化した小型の専用セルを作って、in-situで測定するという取り組みも進めてきました。最近では、さらに、実製品そのものを分析するオペランド測定するということも進めております。
では次に、基礎研究から量産開発における施設の活用体制について御紹介させていただきます(資料3-1の7ページ)。基礎研究や研究開発の部署には、社外施設に詳しい担当者がおりますので、基本的には直接利用するケースが多いです。また、場合によっては国プロやや共同研究ベースで活用させていただくケースもあります。
しかし、量産開発の部署におきましては、社外施設に対して専門的な知識を持っていない場合もありますので分析メーカーなどを経由して活用するケースが多いです。
そのとき、分析メーカーは、メーカーによって様々な材料や手法を得意としていますが、我々としてどのように使い分けているかについて簡単に御説明させていただきます(資料3-1の8ページ)。例えば、無機、有機、電池と分類しますと、各分析メーカーによって、得意・不得意な分野や手法があります。自動車用材料ですと、様々な材料を取り扱うことになりますので、各ニーズに応じて、あるときはA社、あるときはD社といった形で使い分けしている状況です。
そこで、一つ御提案があります(資料3-1の9ページ)。産業用ビームラインで言いますと、例えば、分析メーカー版のサンビームのようなビームラインがあれば有用ではないかと思っております。
私は、学生時代に約5年間サンビームでアルバイトをさせていただきましたが、非常に良いビームラインであると身をもって感じました。サンビームの場合は、分析メーカーだけではなく、いろいろなメーカーが入っておられます。もし全て分析メーカーであれば、各メーカーの強みややノウハウを生かしたエンドステーションを設計して、それぞれの得意分野を生かした分析メーカー連合の産業用ビームラインができるのではないかと期待しております。これは、分析メーカーにとっても、我々、産業界のメーカーにとってもハッピーではないかと思っております。
次の期待といたしましては、各施設やビームライン間の連携体制についてです(資料3-1の10ページ)。これは恐らく、どの施設もビームラインにおいても実施いただいている状況だと思いますが、意外に、いろいろな施設のビームライン担当者の方とお話してみると、あのビームラインは、あのような測定ができるのですね、みたいなことをよくお聞きすることがあります。特に、学会や研究会等で、ユーザーの方々がビームライン担当先生方と情報交換して、次は、あのビームラインも使ってみようといったことにもつながっていくので、そのあたりをうまく活用し、連携できると良いなと思っています。
最後にまとめになります。こちらも実際に進められていると思いますが、ビームラインの差別化についてです。基礎研究用に世界最先端を狙うところもあれば、産業用にハイスループットを狙うビームラインもありますが、更にそれらをもっと明確にしてはどうかと思っています。
また、これは難しいことかもしれませんが、インフラの共通化です。現状は、ビームラインごとにオリジナルの制御ソフトや測定ソフトが整備されていることが多いですが、ユーザーからしますと、測定ソフトやデータフォーマット、解析ソフトなどは、施設間でも共通化いただければ、非常に有り難いと思っています。
共用設備につきましては、特にSPring-8は、他の施設に比べると充実している環境だと思っておりますが、更に御検討いただきたい設備があります。最近、種々のイメージングが注目されている分析手法の1つではないかと思います。これまで我々は、事前にサンプルを例えばFIB装置で微細加工して持参しますが、ビームラインで予備測定してみて、もう少し追加工したいなと思うことがよくあります。しかし、また会社まで帰るとなると現実的ではありません。そこで、FIB装置のような高度な加工装置についても共用設備として充実させていただけると大変有り難いと思っております。また、最近ニーズの高いリチウムイオン電池やや燃料電池、その他の材料におきましても、解体、セル作製などに特殊な作業環境が要求されますので、露点の良い不活性ガス雰囲気のグローブボックスなども複数あると助かります。これらを共用設備、化学実験室に追加で御検討いただけると、更に活用させていただける実験が増えるのではないと期待して示しました。
お手元の資料はここまでになりますが、お時間がございますので、現場目線でのお話をさせていただければと思います。
SPring-8やSACLAにおきましては、いろいろと環境が充実しているので、これらの施設に限ったお話ではないかもしれませんが、やはり良い研究者がいて、良いビームラインや研究ができるということだと思っております。そのためには、是非ビームライン担当の先生方のモチベーションが向上するようなことを積極的に取り組んでいただければと思っています。例えば環境によっては、腰掛け的になってしまいまので、安心して研究できるような環境整備が重要だと思います。
私は以前、佐賀LSに勤めていたのですが、当時、ビームライン担当の先生方は、装置の維持管理やユーザーサポートに膨大な時間をとられてしまい、御自身の研究が全くできない状況に見えました。今ユーザーとしては、その点においてはビームライン担当の先生方に対しては大変申し訳ないという気持ちで、サポートいただいている状況です。場合によっては、深夜までもサポートいただいている状況です。
また、それにも関係しますが、我々が成果専有時期指定枠で実験しますと、1シフト約70万円になりますが、残念なことにビームラインの方へ直接還元するというような仕組みがないとお伺いしたことがあります。我々としましては、この利用料金が、例えば10%でも良いので、ビームラインの方に還元され、微力ながらビームラインのお力になれればという気持ちです。
最後に、各ビームラインと民間企業等との共同研究の推奨についてです。我々も検討させていただいておりますが、このような取り組みは、ビームラインの高度化にもつながると思いますので、是非積極的に進めていただければと思います。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
それでは、今の御発表に関して、御質疑とかコメントあればよろしくお願いいたします。はい、どうぞ。
【田中委員】 大変率直な指摘というか、私たちがいつも感じているようなことをまとめてコメントしていただき、有り難いなと思って聞いておりました。
この一つ前のスライドをもう一回見せていただけますか。はい。これかな。全くそのとおりで、量子ビーム利用小委員会でもこの辺の話を何度となく議論してきました。この3項目は、実はリンクしていて、そのビームラインの予算配分の話も以前我々も議論したと記憶しています。それが本当に生きた投資になるためには、ビームラインの成長戦略といいますか、施設全体としてビームラインをどう高度化していくか、理解している方がやっていかないと、お金を投資しても無駄になるといいますか、ちゃんと生きてこない。そういう意味では、実はここの項目は全部連動していて、ビームラインをサポートできる環境があって、初めて最後のポツのところも機能するとかですね。
全体的なフレームワークをちゃんと制度設計した上で、その制度が機能するようにリソースを入れていくということをしないと、個別に対応して、1個1個を解決していくというのはなかなか難しいと思います。もうそこまで成熟しているというか、グジャグジャになっているという状況で、一部のところにカンフル注射をしても、もう体は生き返らない、そういう状況です。そこまで分かった上で、こういう指摘をしていただいたのかなと思って、有り難く聞いていました。
ですので、御指摘ごもっともだと思います。そういうことが本当に実現できるような、全体的な組織再構築をやっぱりしていかないと駄目です。具体的な各項目一つ一つを挙げて何とかしようとしても、もう進まない、そういう状況になっていると感じています。山重さんはいろいろ使ってみてどうでしょうね。
【山重先生】 いろいろなビームライン担当の先生方からお話をお伺いしますが、今回はそれについてまとめてお話させていただきました。ただ、初めに申し上げましたが、特にSPring-8やSACLAについては、良い環境だと思っておりますので、全て当てはまるわけではございません。我々といたしましては、利用料金について少しでもビームラインや施設のために御活用いただけるとうれしいです。
【田中委員】 SACLAは比較的新しいので、まあ、矢橋さんが補足するかもしれないですけれど、こういうことをある程度意識してやってきたところがあります。そこはある程度良いとは思っていますけども、SPring-8を我々がやるときには、そこまで考えずにやってきた。その意味では、SPring-8については、今の指摘が当てはまる状況と理解しております。
【雨宮主査】 今、半ば施設に振るような質問でもあったと思うのですが、理研、JASRIの方から何かあれば。
【矢橋先生】 ありがとうございます。最後のところ、ビームライン成果専有時期指定枠で稼いだお金を当該のビームラインに還元するという御提案は、非常に重要です。一方で、多分この後議論があると思うのですけれども、例えば利用料収入を稼ぐのに特化したビームラインといった位置付けは今後出てくると思うので、この場合、そのビームラインだけでは使い切れないお金に当然なっていくわけです。だから、そこのお金をいろんな形でプールして全体に還元していく。あと、FIBとか周辺環境の装置の整備もしっかりできる話なので、是非やっていきたいと思います。ありがとうございます。
【雨宮主査】 はい、どうぞ。
【田中先生】 では、JASRIの方から。まず最初の職場環境ですが、これは多分に経営的なお話かなと思いますので、これは雇用に関しては、研究者が安心して業務に従事できるような雇用というのを心掛けないといけないなと常日頃考えているところです。
2番目の研究の環境整備ですが、「ではなく」という表現で書かれているのですが、維持管理も、ユーザーサポートも自らの研究もそれぞれが要るのだと思いますね。割合が非常に大事で、維持管理もする必要があるし、ユーザーサポートもする必要があるのですが、それだけではいけない。自ら研究する能力を磨くというのは、これはレベルの高いユーザーさんと一緒にお仕事をしていく上で必須のところでございますので、維持管理もしつつ、ユーザーサポートもしつつ、それに加えて、必ず自分の研究の腕を磨く時間、これを確保するというのは常日頃から現場の人たちに言っているところで、更に強化していかないといけないと思います。
3番目のビームラインの予算配分ですが、御指摘のとおりで、これはそのビームラインを還元するというところはしっかりできているかどうかというのはあるのですが、是非現場のビームラインのところに還元していく仕組みというのは重要だと思います。
それから、最後のこの各ビームラインと民間企業との共同研究、これは産学の連携というふうに捉えたら良いのでしょうかね。
【山重先生】 はい。
【田中先生】 これは非常に重要で、今回のテーマにもなっておりますが、将来にわたって、この辺、仕組み等考えているところもありますので、強化してまいりたいと思っております。ありがとうございます。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。
(資料3-1の)8ページ目で、手法の使い分け、これは聞き逃したかもしれないですけど、赤と黒の色の使い分け、あれはどういう違いですか。
【山重先生】 説明不足で、申し訳ございませんでした。3社の得意な手法を合わせることで、各材料に対して全ての手法が赤丸でつながり、課題に対して解決できるということ示しております。
【雨宮主査】 はい。ほかに御質問よろしいでしょうか。
非常に現場目線で具体的なことに関して言及されて、ありがとうございました。
それでは、続いて、落合局長にお願いいたしたいと思います。同じく15分程度でお願いいたします。
【落合局長】 兵庫県庁の落合でございます。それでは、よろしくお願いいたします。
私は、SPring-8に1989年から関わり始めまして、94年の県ビームラインの整備から本格的に携わり、今日に至っており、役所生活4分の3がSPring-8に関わっています。現場で実験をした人間ではなく、行政の立場ですので、的外れな発言が出ましても、是非とも御容赦を頂きたいと思います。この間、関係の皆様方の温かなお導きで担当できたところでございます。本日はこのような機会を頂きまして、まことに感謝をいたしております。
これが本日の流れでございます(資料3-2の2ページ)。ざっとこんな形でお話を申し上げたいと思います。
まず、兵庫県の科学技術政策は、SPring-8の誘致の話が起こりました85年ぐらいからスタートしておりまして、科学技術立県を標榜(ひょうぼう)いたしました(資料3-2の3ページ)。本県の科学技術振興はSPring-8からスタートしたと言っても過言ではございません。
中でも、今では播磨科学公園都市と神戸医療産業都市、この2大拠点にSPring-8、SACLA、スパコン「京」を誘致させていただきまして、私は今現在、両方の担当者でございます。このような誘致させていただいた施設を本県の認知度の向上と産業振興に活用させていただいております。
これが播磨科学公園都市、もう皆さん、御存じのところでございますけれども、ここは県の西側の拠点です。SPring-8を中心に、兵庫県としていろいろ投資させていただいており、SPring-8に対する期待が非常に高いということをお示ししているところであります。
似たようなスライドで恐縮ですけれども、SPring-8の誘致に際して、以下のような取組をしてまいりました(資料3-2の4ページ)。理研、原研と一緒になって整備を進めるとともに、JASRI設立にも協力しました。当時ありました地元の共同チームで、数十回、地元説明会を行い、県議会も全会派一致で誘致を進めた経緯もありまして、関連施設として県立大学理学部なども作ったということでございます。
次に、県ビームラインの整備は、阪神・淡路大震災が起こりました95年にスタートすることになりました(資料3-2の5ページ)。これは当時の貝原知事が県民の希望となるシンボルプロジェクトを2つ位置づけまして、1つはSPring-8に兵庫県がビームラインを作って、新しい産業を興そうと。もう1つは同じ播磨科学公園都市にございます粒子線医療センターを作って、がんをなくしていこうと。こういった経緯がございます。
これまでの経緯を簡単に御紹介して、時系列で並べております(資料3-2の6ページ)。これについては御説明を省かせていただきます。
次に、過去20年間を、私の勝手な思いで俯瞰をしておりますので、ずれているかもしれませんが、産業利用はおおむね次の3つのフェーズに分かれるという認識をしておりまして、SPring-8の全体の流れと県ビームラインとが大体同じような流れになっているということをお示ししております(資料3-2の7ページ)。
例えば県ビームラインは、最初は高エネルギー研のヘビーユーザーを中心にスタートして、SPring-8で産業利用の機会を提供する1発目のビームラインとして作らせていただきました。その後、たくさんのビームラインが各企業さんの御努力によってできてきたというのが大体第1期であると思っております。
第2期は、大学と企業が共同研究をして、例えばFSBLなどがございますけれども、県ビームラインも、先ほどのページにちょっとありましたけど、JSTに地域結集型共同研究事業というのが当時ございまして、そのプロジェクトに採択されまして、こちらにいらっしゃいます住友ゴムさんほか高分子の方々にお入りいただいて研究をスタートしました。今まで第1期の方は、半導体と製薬が中心だったのですけど、このあたりで新しい分野として高分子をやり始めました。
そこで出てきたのが、いわゆる実験をするだけではなくて、シミュレーションのような計算科学と融合させるべきだという評価意見でございました。それを踏まえまして、計算科学及び情報科学と放射光科学が融合したような分野を狙っていくということで、現在、産業界の方々と検討を始めたというのが、このマテリアルズ・インフォマティクスです。これはNIMSさんと連携してスタートしております。
このあたりは、新しいビームラインの見直しが正にこの委員会で御議論されていると思いますけれども、我々もどのように今後新しい方向で考えていくべきかを、その流れに従って、今年度、検討させていただきました。その取組について簡単に後ほど御紹介させていただきます。
本県が進めるSPring-8の産業利用の促進につきましては、大きく2つございまして、1つは2本の県ビームラインを利用していただいております(資料3-2の8ページ)。もう1つは、ナノテク研究所といって、SPring-8の構内に共同実験室や分析装置、実験スタッフを置いて、企業様の御支援をさせていただいております。
次に、SPring-8と相補関係にある軟X線領域の放射光施設を兵庫県立大学の附属施設として整備しています(資料3-2の9ページ)。これをニュースバルと申しまして、大学が企業との共同研究を目的とした利用を中心に運用してまいりましたが、必ずしもSPring-8ユーザーに積極的に開放されてこなかったという経緯がございます。ここに書いてありますとおり、いろいろなビームラインがございますが、それぞれに担当の大学の先生がおられて、企業さんと共同研究をやる形になっていて、施設全体としてSPring-8と連携する姿勢に余りなっていない面がございます。
SPring-8とニュースバルが相補関係にありながら、余り相互利用が進んでいなかったというのは、我々兵庫県としても課題でして、そのあたりの解決に向けた検討を今年進めたところです(資料3-2の10ページ)。
それが先ほど申し上げたことで、今のSPring-8、SACLAの動きもございますけど、我々としても、新しい時代に今後、どうやって兵庫県として産業利用について関わっていこうかと。SPring-8、SACLAに関わっていこうかということを考えて、今年、兵庫県放射光利用戦略会議なるものを開催いたしました。本日もこちらにいらっしゃっている石川先生にも入っていただきまして、議論をさせていただきました。
この会議は、ここ数年、SPring-8、SACLAをめぐる状況が大きく変化していると認識の下、今までの経緯にとらわれずに、短期的な取組と中長期の取組に分けて、今後どう取り組んでいくべきか検討を行ったところです。
ここからは(資料3-2の11ページ)、SPring-8、SACLA、これまで20年間、先ほど申しましたように、SPring-8を誘致して、自ら産業利用を進めてきた者として、期待を込めてお話をさせていただきたいと思います。今日、トヨタさんが来られていますが、20年前は、企業の研究開発のかなりの部分を日本中心で行っているという状況だったと思います。SPring-8ができた当時は、ほとんど半導体メーカーの重要な研究はSPring-8で行われていたのですけれども、最近はそうでない分野が結構出てきている認識を我々はしております。
20年前は、こちらに書いてありますように、ここでしかできない、SPring-8に来ないと重要な問題解決のヒントが得られない、というような共通認識が当時あったように思います。どうやったらもう一回そのような状況を生み出すことができるかということを考えておりまして、そのために、誤解を恐れずに言えば、研究分野とかアカデミアの方々の共通理解からテーマが選ばれるのとはまた別の異なる意思決定のプロセスや、これまでと異なる評価軸を作っていく必要があるのではないかと思います。
そのあたりが、この下の方ですね。分析というよりも、製品開発の事業戦略ですね。企業の事業戦略の中心にSPring-8を据えているというような企業さんを集めてきて、そこに合わす。例えば、SPring-8でなくてはというような製品開発に取り組もうとされている企業さんとタッグを組んでいくということもあり得るのではないかと。そうでないと、次の世代のパワーユーザーに繋(つな)がらない。いろいろなパワーユーザーの定義があるのですけど、ここで言うパワーユーザーの開拓というのは、今までSPring-8を使ってこなかったけれども、SPring-8が役に立つと思っていただけるようなユーザーを開拓すること。そのための取組として、ここに書いておりますデータドリブンへの対応を企業さんが非常に欲しがっておられます、特に兵庫県は多くの素材メーカーございますけど、この現場の課題にイノベーションの宝が凝縮しているように思います。素材メーカーの多くは日本に研究の主力を残しておりますので、その意味でもこういった企業の人材からアイデアが出るのではないかということで、現在、県ではデータドリブンな材料研究をしたい企業さんとの協力を進めています。
最後になりますけれども(資料3-2の12ページ)、例えば県ビームラインを、従来型のビームラインと別の位置付けで、トライアルユース型のビームラインとして運用できないかという御提案でございます。
ここに書いてありますように、中小企業とかロングテールとか、SPring-8で今までとは違う評価軸のものを、例えば生産、新しい開発をしようとしたときにどうなるか分からないというようなところを、県ビームラインでやっていただくとかそういったことも含めて、位置付けていただいて、一緒に取り組めば良いのではないかと思っております。
その一環で、ニュースバルやナノテク研究所を兵庫県は持っておりますけれども、これらとSPring-8の相互利用をもっと密接に一緒にやらせていただくということで、例えばニュースバルの中に相補的なビームラインを作っていただいてはどうかと考えております。もう一つは、ナノテク研究所の中に、先ほどトヨタさんも言われていたようなことにも繋(つな)がるかと思うのですけれども、企業ユーザーの方のラボ装置や化学分析室を置いていただいてはどうかと思っておりまして、パワーユーザーになれそうな方々に利用の機会の提供をしていくこと、それを支援していくことも、SPring-8と一緒にやらせていただけないかと思っております。
雑駁(ざっぱく)でございましたが、以上で御説明を終わります。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
それでは、今の御説明について、御質問等ありましたらよろしくお願いします。
【金子委員】 大変有り難い御提案を頂いてうれしく思うのですけれども、産業界から更に希望を言いますと、これはどこの施設、あれはどこの施設と分けて考えたくないのですね。どこか一つのところに相談したら、そこがここのラインが一番良いですよとか、教えてくれるのが本当は一番有り難くて、例えばJASRIさんに御相談したときに、ああ、それはうちではなくて、兵庫県さんですねと言われると、では、今度は兵庫県さんの方に行かなきゃいけないですかというふうになるというのが、やっぱりすごく煩わしい。どうして一つのところでそういうことができないのだろうと思うわけです。ワンストップで対応いただけることが非常に有り難いとやっぱり思うわけで、先ほどのナノテク研究所の設備等も、例えば一つのところにお願いすれば、あそこも使って良いよと言ってもらえるのが本当は有り難いなと思うのですね。
だから、こっちにもお願いして、あっちにもお願いして、幾つも申込書を書かなきゃいけないとかでなく、せっかく近くにあるのであれば、一つの窓口のところで全ての手続等ができるというのが望ましいなというふうに思っております。兵庫県さんだけの問題ではないのですけれども、是非お願いしたいと思っております。
【雨宮主査】 はい、どうぞ。
【落合局長】 よろしいですか。我々も同じことを考えておりまして、多分そういうステージに来たのだろうなと思っています。ニュースバルやナノテク研究所をうまく活用してSPring-8と相互に使えると。うちの知事からも言われたのが正にそこでありまして、そのあたりの相談体制とか利用体制を一体的にしていく仕組みをまずこの際作るべきではないかと思っております。
直接は関係ないのですけど、「京」ではJASRIさんに当たる役割をRISTさんがされているのですが、産業利用促進の多くの部分を計算科学振興財団で対応させていただいており、かなりの企業さんの声を集中的にお聞きして、またそれを国にもお話しするような活動を行っています。例えば、一体的な窓口の仕組みを作る際には、そのような体制に是非していきたいと思っています。
【雨宮主査】 では、岸本委員。
【岸本委員】 金子委員とほとんど同じなのですけれども、これというのは非常に産業界にとっては非常に心強いお話だなと思っています。そして、やはり入り口というのは非常に大切で、分かりにくいと、特に中小企業とかヘビーユーザーではなかったら、すごく分かりづらい。ここをしっかりしていかなきゃいけない。もう一つ、これから一緒になって考えていかれる、そういうフェーズにも来たというようなことだったので、その辺をいかにプロモートし情報発信していくのか。ここをやっぱりしっかり考えておかないと、仕組みができてもユーザーが理解しなければ使えないので、そのあたりをしっかりと今後議論していく必要があるのではないかなというふうに思いました。
【雨宮主査】 内海委員、お願いします。
【内海委員】 この委員会でのマターになるかどうか、ちょっと分からないのですが、せっかく県の御担当の方が来られているので。今、播磨科学公園都市全体で、恐らく昼間の人口はそれなりに増えていると思うのですが、夜の人口が恐らく増えていない。実際にまちづくりという点で、一番最初に想定されていたほどたくさん人が集まってというところにはなっていないような気がするのですね。
やはりSPring-8にこの先、良い研究者に集まっていただこうとした場合、その方々には家族があるわけですから、やはり山の上の播磨科学公園都市をやはり生活環境含めて、もっと魅力のあるようなところにしていくという努力が必要ではないかと思います。このあたりについて、御担当が違うのかもしれませんけれど、兵庫県に中心にやっていただくということが、SPring-8の今後の発展にとっても極めて重要かなと思いますので、是非ともそういう観点でも今後よろしくお願いしたいと思います。
【雨宮主査】 何か一言あれば。
【落合局長】 担当ではないと言えば、担当ではないのですけれども、それはずっと昔から言われていて、SPring-8ができれば、たくさんの研究所が来て、そうなることで御飯が食べていただけると兵庫県は思っていたのですけれども、仕事をしたらさっさと帰られる人が多くてですね。もちろんSPring-8だけではどうしようもないことですので、播磨科学公園都市に人が集まる仕組みを一緒に考えさせていただければと思います。
例えば、播磨科学公園都市を自動運転の実験都市にできないか検討しています。今後もいろいろな事業で埋めていく必要があるという認識です。
【田中委員】 ちょっとよろしいですか。
【雨宮主査】 はい、どうぞ。
【田中委員】 今の話は非常に重要だと思うので、あえて意見を述べさせていただきます。内海さんのコメントに対して、私は真逆の意見を持っています。別の委員会でも同様のコメントをしております。20年以上前に、兵庫県さんは、あそこに科学公園都市ができると良いなと思っていろいろと努力されたと思います。その壮大な実験の結果として今がり、ある意味で、一つの結論が出ているわけですよ。やはり人工的な都市を造って、そこに人を呼び込むというのは、世界の最先端の研究所が幾つかあったとしても簡単なことではない、そういう結果です。つくばだって、あれだけの多種多様な研究所を寄せ集めてきても、あの程度です。1つの先端基盤施設を誘致しただけでは、本格的な1万人規模の国際都市が、日本のそれなりの田舎に、簡単にはできないということです。
逆に、そういうものを無理に作ろうとすると、かえって無駄な投資を生むでしょう。そうではなくて、最初の夢の追求はもう良いのではないかと。夜間の人口が別に増えなくたって、SPring-8には、実際に年間1万人以上の方が来て使っているわけで、それなりの成果が出続けている。だから、SPring-8と東北大学の構内にできる全く違う環境に立地する新しい放射光施設が同じになる必要はないのです。それぞれが別の方向を目指して発展していったら良いと思います。
ああいう不便なところに、家族を呼んで生活できるようにしようといっても、兵庫県の方だって、では、そのインフラを整備するのにどれだけ大変かという話ですよ。ちょっとはインフラを整備したけれども、ちょっとの整備だと、実験結果としては、あのぐらいの規模の町しかできなかったということです。逆にSPring-8の施設の特性を生かした方向性を模索していくのが良いと思います。25年ぐらい前に抱いていた夢にこだわる必要性は全くないというのが私の意見です。
【落合局長】 ちょっとだけ。
【雨宮主査】 どうぞ。
【落合局長】 そう言っていただいて有り難いと言ったらおかしいのですけど、SPring-8、SACLAに来なければできないと。奥の院があって、そこに行かないと、参拝しなければ何も得られないというような場所。とにかくここから何かが新しく生まれてほしいと兵庫県としては思っているわけですね(資料3-2の11ページ)。世界初、日本初がここから常に生み出される仕組みを作るというのが今の考え方でありまして、それにプラスしてできればと思っております。
【雨宮主査】 ちょうどそこ(資料3-2の11ページ)に出ているので、下の「新たな意思決定プロセスや評価軸を確立してほしい」。もうちょっと具体的な、逆に今の意思決定プロセスのどこがどう変わると良いか。あと、評価軸というのはここでも非常に議論しているのですけど、例えばどういうキーワードが思い当たるのか、何かあれば。
【落合局長】 我々の方で完全にこれだというものはないのですけど、非常に大ざっぱな言い方をすると、主導は今の進め方でよろしいのだと思うのですけれども、産業利用で何かを特別推進しようとしたときは、ターゲットは経営陣でありまして、経営陣の中で、SPring-8を使わないとほかの会社を抜けないとか、この業界は日本で生きていけないとかという認識が強い人ってやっぱりいるのですね。一方で、分析部門と違い、製品開発側の方はSPring-8のことをよく知らない。
トライアルユースというのは、昔あったトライアルユースと少し違う意味で、製品開発側の方でいろんな新しいことをトライするようなことが許される場所が要るのではないかと。評価軸というのは、そのために今までのような、お金を幾ら払ったか、どのような論文が出たか、とは全く違う評価軸が要るのではないかということです。実際にどうやって進めるべきかは、SPring-8側でお考えいただければと思っています。
我々の取組で言うと、SPring-8でポスト「京」で回しやすいデータをとるにはどうしたらよいか、ということも検討をしようとしています。このような取組は産業界の経営陣に対して非常にプラスに説明できると思っていますが、例えば、このような今までと違うような新しい取組を特別推進できるような枠ですね。そのような枠には必ず、他とは違う評価軸が必要だと思います。どういうものがよろしいかというのは、これはと思っていただける企業の方々を中心に考えていただくのも一つの例かなということを示させていただきました。
【雨宮主査】 矢橋さん。
【矢橋先生】 今の評価軸に関していうと、異なる評価軸というのがたくさんあるのは当然で、重要な点は、それが皆さんの間で役割分担としてちゃんと明確になっていることではないかと思います。このためにも、専用ビームラインのレビューはとても重要になります。つまり、必ずしも全ての対象を、施設者、登録機関がカバーする必要はなく、例えば県の方でトライアルの新規開拓を重点的にやりますということだとすると、施設者も含めてアグリーをした上で、しっかりやっていただくという仕組みを構築していくことが非常に重要だと思います。
【雨宮主査】 この辺のこと、まだあるかと思いますけど、この後、理研、JASRIの発表を踏まえた後で、改めて全体的に議論できる時間を確保しますので、次に進めていきたいと思います。
それでは、理化学研究所と高輝度光科学研究センターから、SPring-8、SACLAの今後の重点的な課題と、検討されている推進方策等について説明していただきます。
先ほど事務局から説明がありましたけれども、今回は資料2の赤枠で囲まれた部分について御説明、御議論を主に頂ければと思います。
それでは、まず理研の矢橋グループディレクター、お願いいたします。15分でお願いいたします。ただ、ちょっと長いので、延びても20分以内でお願いします。
【矢橋先生】 それでは、私の方から。前回は仕組み、ソフトウエアの高度化ということを中心にお話をさせていただきましたが、今回は、施設・性能という、どちらかというとハードウエアのところを主に御紹介したいと思います。それで、これ(資料4-1の2ページ~4ページ)が先ほど御紹介があった論点ペーパーで、赤字が今回の議題です。目次(資料4-1の5ページ)といたしましては、まず最初に世界の情勢、それから、日本の情勢を踏まえて、SPring-8の施設、それから、ビームラインのアップグレードのお話をいたします。老朽化対策の話の後に、データの利活用、最後に、人材育成について御紹介したいと思います。
まず(資料4-1の6ページ)世界の情勢ということで、放射光施設の歴史的な発展をざっと振り返りたいと思いますが、これは第1回にも御紹介いたしましたが、90年代の第3世代の大型放射光施設があって、2000年代から2010年代に掛けて、3GeV光源が一気に世界へ普及してきました。2020年代には、MBA技術、マルチベンベルグマットという偏向磁石を切り刻む技術がどんどん進展していって、エミッタンスが非常に小さくなり、回折限界級の光源がどんどん登場する。
また、施設の規模としては、90年代は大型、2000年代は3GeV中型ということでしたが、2020年代は再び大型回帰になって、特に高エネルギーのハードX線のところの利用が進展します。
それで(資料4-1の7ページ)、この放射光源の低エミッタンス化ということで、これは横軸が周長、縦軸がエミッタンスをエネルギーで割った量になっていまして、こういうきれいなプロットに乗っているわけですが、1990年代、2000年代のこの青のところから、2020年代にはこの回折限界級ということで、これがスタンダードになっていくと。我々、SPring-8もここからIIというところのこちらまで進めていきたいと考えているわけですが、その前に海外の例として、まずESRFのアップグレード、それから、アメリカの状況を簡単に御紹介したいと思います。
まずESRFでございます(資料4-1の8ページ)。アップグレードを彼らは進めておりますが、大きく2つのフェーズに分かれておりまして、Phase Iというのが2009年から15年までの7年間ということですが、ここで180ミリオンユーロを掛けて、主にこれはビームライン周りですね。リングに付随するビームライン周りのアップグレード、それから、これは実験ホールの増設等も行っていますが、そこをやってきました。2009年はこういう状態ですが、16本のビームラインをスクラップして、17年には19本をビルドするという、こういうことをやっています(資料4-1の9ページ)。
それで(資料4-1の8ページ)、Phase II、これは2015年から22年までということですが、これは150ミリオンユーロ。これは加速器の中身、蓄積リングを主に更新していくということですが、加えて4本のパイロットビームラインを新設する。これは2017年に選定がなされました。それから、オプティクス、ディテクター、データ環境の強化も併せて進めるということです。
それから、蓄積リングの更新ですが、2015年に設計を完了しまして、2016年から3年間掛けて、コンポーネントを作る。2019年のシャットダウンは実はもう始まっていますが、1年間掛けて加速器を入れ替える。それで、2020年からコミッショニングを開始して、徐々に運転をしていく。2022年から23年に全ビームラインの稼働を再開するということです。
続きまして(資料4-1の10ページ)、アメリカの方ですが、御存じのとおり、この大型基盤施設のところ、放射光を含むところは、DOEのベーシック・エナジー・サイエンス(BES)という部署が担当しているわけですが、このグラフはBESが見ている予算ですね。特にその中でも、運転経費ではなくて、建設・高度化の経費のところの年次推移を表しておりまして、2000年から2020年までの20年間のトレンドをプロットしている。
これを見ていただくと分かるのですが、SNS、これは中性子施設ですが、これから始まりまして、それから、LCLSの建設が始まった。それから、2010年代はNSLS-IIをワッとやった。その後、LCLS-IIを今やっている。そして、今年からいよいよAPSのアップグレードが始まるということです。平均して年間200ミリオンドルというかなりの金額を目標に、複数の大型の基盤施設を切れ目なく建設、整備していく、こういう作戦をとっております。
それで(資料4-1の11ページ)、こういう状況を踏まえて、もう一度世界を見渡してみると、それぞれの国、地域で、6GeV以上の大型の高エネルギー光源、それから、3GeV級の中エネルギーの光源、それから、3GeV以下の低エネルギーの光源、このように、階層的に整備がなされているということが分かります。
例えばアメリカだとAPS、それから、NSLS-II、それから、ALSということで、こういうふうになっておりまして、欧州のところでもESRF、PETRA IIIを頂点とする仕組みが出来上がっている。ここまでは皆様よく御存じだと思いますが、最近は中国、ロシアも非常に頑張ってやってきていまして、各国・各地域でこういう3点セットを作ろうとしております。
特にこの赤字で書いたところは、これは次世代のMBA光源でして、特にこの高エネルギーのところ、これは下に年表も付けてございますが、ここが2020年代からある意味でスタンダードになっていくということです。
それで(資料4-1の12ページ)、各国がこのようにしのぎを削って光源のセットを開発、整備しているわけですが、その背景を簡単に分析しますと、2000年代からこの3GeV級の軟X線の光源が普及していきますと、軟X線というのは非常に感度が高いので、ナノスケールでいろいろなものが見えるようになってきた。特に、表面近傍の分析というのが非常に適しているわけですが、一方で、対象が深いところに潜っていくと、皮をむいてみたり、真空にしてみたり、いろんなことをしないと、内部はなかなか見られなかったわけです。一方で、次世代の大型の光源というのは、まず硬X線なので、深く潜っていく。それから、輝度が今の第3世代に比べて極めて高くなるので、中であっても、物を壊さずに、深いところでも3次元でナノ観察ができていくということがありまして、皆さん大きな期待をされています。
そういうことを考えてみますと、この2つ、3GeV級と大型6GeV以上級のところは、ある意味では相補的でございまして、サイエンス・イノベーションの国際競争を勝ち抜くために必須のツールである。2点揃(そろ)うのが必須であるということが世界の共通認識になってきており、各国とも、そこに向けて、まとまった投資がなされているということが言えると思います。
また(資料4-1の13ページ)、この次世代の大型放射光源は、XFELとも相補的な関係にありまして、XFELは基本的には破壊計測ですので、一つ一つの分解能は非常に高いわけですが、例えば動画を作ろうと思うと、たくさんのアイデンティカルな試料を用意して、どんどん壊しながら測って、最後に合成するということをやるわけです。一方で、放射光の方は、そこまでピーク輝度が高くないので、試料を壊さずにじっくり見ていくということが可能になります。したがって、一つのターゲットをずっと追い掛けることができるので、例えばばらつきのある系とか、はぐれもののアウトライヤーを狙うとか、それから、繰り返しが効かない一過性の系を狙う。こういったところが非常に得意で、逆にこれは放射光でないと、こういうところにはアクセスができないということが言えます。
それで、次に(資料4-1の14ページ)、こういう世界情勢を踏まえまして、我が国の状況を見ると、これまで、SPring-8が、硬いところから軟らかいところまで頑張ってカバーしてきたわけですが、次世代3GeV施設がこれでできますので、軟X線のところはそちらを使って一気に格段に伸びる。従いまして、次の一歩として、SPring-8としましては、硬X線のところを飛躍的に伸ばしていくことを考えております。
それで、このアップグレード計画(資料4-1の15ページ)、SPring-8-IIの狙いですが、2つございまして、1つ目がこのナノX線分析の偏在化・ユビキタス化と、ここに書いていますが、ナノ顕微手法と時分割解析というのが、いろんなX線の手法にあまねく顔を出すようになっていきます。
もう一つは、高エネルギーのX線。特に30~100keVというところの活用がどんどん進む。今もSPring-8はここは出るわけですが、やはり主戦場はこの10から30keVのところです。IIでは、そこに加えて、更に硬いところをしっかりやっていく。これは3GeV光源ではアクセスができない領域でもございます。ここのメリットは、透過能の向上に伴う、試料の丸ごと解析。それから、短波長になっていくので、原理的な空間分解能も向上する。さらに、放射線損傷の低減も期待できるということがあります。
ここに幾つかの例を示しましたが、例えば汚い溶液中でリアルな反応を見ていくとか、あと、極限状態の中の、例えば高温・高圧のサイエンスというところもございますし、あと、材料中やデバイス中のナノ欠陥、ここをしっかり見るというのが非常に重要になってきます。そういったところをしっかり見ていきながら、様々な分野のサイエンスとイノベーションをアップグレードして、ものづくりを一新させると、そういうところをしっかりやっていきたいと考えております。
このサイエンスを支える技術のところでございますが(資料4-1の16ページ)、まず加速器側については、我が国独自の最先端のテクノロジーがございますので、ここをしっかり使って、輝度を劇的に向上させる。さらに、安定性もしっかりと確保する。それから、一方で、エネルギー消費の大幅削減というところも重要でございまして、加速エネルギーを低減させたり、偏向部の永久磁石化。これは電磁石から永久磁石にすることでかなりのエネルギーのカット。それから、既存入射器の完全停止ということで、この2本立てで進めている。ここについての概念設計計画書、CDRというのがございますが、これは既に2014年に取りまとめているところでございます。
また、ビームラインの方についても(資料4-1の17ページ)、我が国が世界に誇るX線のオプティクスと検出器のテクノロジーを組み合わせて、世界最高性能のビームラインの設計検討を進めておりまして、さらに、今議論になっているビッグデータのところの解析、保存、活用というところも非常に重要でございますので、ここも併せて整えることで、最先端のサイエンスを切り開いていきたいと考えております。
それで、このスライド(資料4-1の18ページ)が、SPring-8-IIの計画の全体のイメージでございますが、概算費用として、暫定で約400億円。これの中身は大きく分けて2つございまして、1つは加速器本体の高度化、もう1つはビームライン・付帯設備の高度化ということでございます。実はこのビームラインの方は、加速器の方とはある程度独立に実施が可能で、例えば老朽化対策とかBL再編を兼ねて、すぐに始めるというやり方もある。このやり方は、先ほど御紹介したESRFも採用しております。我々としても、是非こういうやり方で進めていきたいと考えておりますが、ここについて皆様の御意見、御議論をお願いしたいと思います。
一方で、加速器の方は、シャットダウンが1年間必要だということがありまして、それに加えてコンポーネント製作もかなり物量が多くございますので、3年間程度は余裕を見ておく必要があります。特に、時期については、我が国の放射光ユーザーのことを考えると、シャットダウンの前に3GeV光源が立ち上がっていることが望ましく、このあたりを併せて、諸外国のところも踏まえて絵にしてみますと、例えば3GeVが2023年には立ち上がるとして、シャットダウンを仮に2024年から1年間程度と置きますと、それから遡ると、例えば2021年にはコンポーネント製作を開始する必要があると、こういうことになります。
一方で、BL再編・高度化のところは、今すぐ始められるので、ここは粛々とやっていく、こういうことがプランとしてはできるわけでございます。もちろん、特にここの加速器のところは引き続き大きな議論が必要となりますが、まずその前提条件として、このようなイムスケールを共有させていただきたいと思います。
次に(資料4-1の19ページ)、このビームラインのところの再編・高度化のところについてもう少し御紹介したいと思います。前回の第3回のときに、ビームラインのいろいろな課題について問題提起をさせていただきました。これを解決するための、ハードウエアや再編を考えてみたいと思うわけですが、そのための第一歩としまして、ビームラインのカテゴリーの再定義ということを行いたいと考えております。
これは3つに分かれておりまして、まず1つ目は、ハイスループット自動化を進めて、アウトプットの量、それから、利用料収入、これは前回申し上げた入り口・出口と両方あるわけですが、こういったところを充実させていくというところを評価軸にしたWorkhorseのビームライン。
それから、サイエンスのフロンティアを開拓して、アウトプットのクオリティ、国際的な評価・評判を重視する、Advancedなカテゴリーのビームライン。
それから、さらに、共通基盤技術でどんどん新しいところを開拓していくという、Novel。割合としては、Novelが10%ぐらいで、あと、残り半々ぐらいかなというところで、ここももちろん御議論あるわけですが、こういった仕分でございます。
それで、非常に重要なのが、これを、例えばWorkhorseを共用ビームラインがやるとかそういうことではなくて、この3つに横串を通した形で、理研ビームライン、共用ビームライン、専用ビームラインということで、それぞれがしっかりとミッションを明確にしながら、トータルとしてのパフォーマンスの向上を図っていきたいと考えております。
次ページ(資料4-1の20ページ)にイメージを示します。左側が従来ですが、たくさんのビームラインがごちゃごちゃとしていて、外から見ても、中から見ても非常に分かりにくい状況です。そうではなくて、やはりしっかりカテゴリーを分けた上で、視界を良好に保つということがまず第一歩かなと思います。一方で、例えばテクノロジーや手法もこの中で閉じるのではなくて、カテゴリーの間のモビリティをどんどん増すということが非常に重要です。確立したら、どんどん速やかに次に移していく。
あと、国内の他施設とのすみわけ等も考慮しながら、SPring-8がやるべきこと、逆にやらないことも明確にして、リソースは限られていますので、そこをしっかり確保したいということを考えています。
それで、ここに向けた議論の進め方ですが(資料4-1の21ページ)、JASRIの中の話はこの後、田中理事からお話があると思いますが、やはりSPring-8は横断する議論が不可欠になってきますので、それに向けた、これは内々の検討を開始したところでございます。ここではビームラインの統廃合、それから、新設ビームラインの検討に加えて、共通基盤技術の抽出ですね。オートメーションの解析、それから、試料準備に関わるところは、これは本日の山重先生、それから、前回、高原先生からも御指摘がございました。こういったところも含めて、必要なものを抽出していきます。これは小さく始めていますが、できれば今年度をめどに所内に出しまして、それから、SPRUCともたたき台を共有させていただいて、SPRUC側からニーズのインプットも募りながらブラッシュアップを進めていきたいと考えております。
それから、この中でもいろんな階層があって、すぐに始められる部分、例えば共通基盤技術のところはすぐにできます。一方で、しっかりした議論が必要な部分、例えば中期的な再編プランの策定のところは、拙速にやるとなかなか大変なことになりますので、ここはしっかり慎重かつ着実に議論していかないといけないわけです。これらをしっかり切り分けて進めることを考えております。
続きまして(資料4-1の22ページ)、今の話題にも関連する経年劣化対策ですが、SPring-8も20年がたちまして、いろんな対策を行っていく必要があって、ここについても高度化とセットで考えることで、単なるリプレイスではなくて、性能の向上や省エネ化も併せて図っていきたいと考えています。会議の冒頭でも、大榊補佐から御報告がございましたが、SACLA加速器からSPring-8の蓄積リングへの入射を進めるところについて、補正予算を頂きまして、整備を進めていきます。これはSPring-8-IIにとっても、不可欠な高機能な技術であると同時に、経年劣化対策の観点からも、既存の入射器の運転をやめるということができますので、そうすると、当該の変電所の設備更新、これも約30億近い巨額の投資が見込まれるわけですが、それが不要になる。更にランニングコストも抑えるということで、大きな効果があります。先ほど御紹介したビームラインの再編のところも、正に老朽化対策も兼ねていますので、ここも含めて実効的なビームタイムをしっかり増やしていきたいと考えております。
最後の2つの項目は、簡単に御紹介しますが、まずデータの利活用のところですが(資料4-1の23ページ)、ここも何度も言われているように、SPring-8、SACLAは高品質ビッグデータの創出源ということで、今後一層データサイエンスの連携強化を図っていく必要があります。ただ、いろいろな検討事項がございまして、ユーザーの意見、テクノロジー、海外など、更にお金もばかにならない話でございますので、これらをしっかりと議論した上で、共用のデータポリシーというのをやはり確立することが重要。このための議論の場を早急に設定したいと考えております。
最後でございますが(資料4-1の24ページ)、人材育成・プロモーション戦略につきまして、これまでも様々御議論、御意見を頂きました。まとめると、いろいろなレイヤーがあって、それぞれをしっかりやらないといけないということは当然でございます。一方で、それぞれをやるのだけれども、これらは全部統一的な戦略に基づいてコヒーレントに実施しないといけない。それから、他施設との連携とすみわけを考えないといけないということがございます。
特に我が国の放射光施設の基幹部を支える人材の育成ということは、SPring-8、SACLAがやるべしと期待されているところであって、これは引き続きしっかりやっていきたいということがございますが、一方で、キャリアパスのところ。特に第2回でも申し上げたように、例えば理研の中でも定年制研究員のポスト、新たなポストの確保が難しいといった問題がございますので、このあたりも含めてどのようにすべきか、皆様からの御意見も伺いながら、引き続き検討していきたいと思います。
以上でございます。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
引き続いて、JASRIの説明、田中常務理事の説明があった後で、質疑応答をとりたいと思います。田中常務理事の方からは、5、6分程度でよろしくお願いいたします。
【田中先生】 それでは、田中の方から発表させていただきます。本日の目次ですが、利用研究成果の最大化に向けた取組、そして、共用ビームラインの改廃と高度化・高性能化についてお話をいたします。
申し遅れましたが、資料は4-2になります。それでは、内容に入っていきます。
利用研究成果の最大化に向けた取組としまして(資料4-2の3ページ)、成果創出に向けたプロセス・スキームですが、本日、御指摘がありましたが、スタッフの研鑚(けんさん)、これがまずしっかりとやるべしということで、共用法の12条の利用研究に基づいて技術開発を行い、研究資金もいろいろと交付金、競争的資金、理研資金等を経て、しっかりと研究開発をすると。そして、SPring-8発の独自装置等々を開発して制度を整備し、よきユーザーを呼び込んで、しっかりと成果創出につなげると、このローテーションをしっかりとスキームとして回していきたいと思っております。
調査研究、手法、開発の推進ですが、施設の性能、これを最大限に引き出すためにコヒーレント光源利用技術、そして、ナノ集光利用技術の基盤整備などを行います。
利用者ニーズへの対応としましては、これはオペランド測定ですが、実環境下での試料の測定法の開発等を行います。また、一例として、たんぱく質の結晶解析の試料スクリーニング等、利便性向上を目指した遠隔実験の拡大をしてまいりたいと思っております。
次のページ、見ていただいて、有用な利用制度の整備ですが、優れた研究成果創出に向けて、各分野のキーパーソン、そして、アクティブな研究者、これを呼び込んで、例えばPU課題、長期利用課題、新分野創成利用課題を活用して、成果を出していくことを考えております。
潜在的ユーザーの開拓として、産業利用準備課題、これは前回、手短に御説明させていただきましたが、これはJASRIスタッフが測定をするというものですが、そういった課題。そして、先進技術の利活用として、先進技術活用による産業応用課題、これらが2019Aから開始されます。詳しくは、時間の関係上、説明いたしませんが、参考資料の方に挙げてありますので、そちらの方をごらんいただければと思います。
オープンアクセスですが、SPring-8成果集、既に公開しております。活用していただければと思います。
オープンデータにつきましては、これはJASRIスタッフがはかったものですが、XAFSの標準試料の測定データ、現在、試験的に、限定的でありますが、公開をしております。
NIMSとのオープンデータに関する連携としましては、実験データのメタデータの部分の標準フォーマットの設計を共に実施しているところです。
12条利用の研究のデータにつきまして、これはJASRIスタッフが実行しているものですが、データの公開についても検討しております。
次のページ(資料4-2の4ページ)に行っていただいて、共用ビームラインの改廃と高度化・高性能化について御説明いたします。
SPring-8の将来計画を視野に入れた上で、2019年1月末をめどに共用ビームライン、26本ありますが、この改廃と高度化のJASRI案、これは骨子案ですが、これを策定すべく、共用ビームライン戦略委員会を立ち上げました。立ち上げて、現在、検討中であります。今、5ページ目をお話ししております。
共用ビームラインを幾つかの指標で評価しておるわけですが、画一的に評価するのではなくて、それぞれの分野の特性、そして、発展性を考慮して、指標とは何かを協議して、総合的に勘案して策定いたします。
策定結果ですが、これは理化学研究所、そして、SPRUC、利用推進協議会などに対して意見を聞くために提案をしていく予定でございます。
共用ビームラインのスクラップ・アンド・ビルドですが、共用ビームラインと理研ビームラインのスクラップを考えているわけで、これは入替えをするわけですが、年1本程度実施できたら良いかなというところですが、かなり難しいかなという気もします。もし2年に1本ということですと、数字的には10年で5本となっていきます。
1例ですが、たんぱく質のビームラインで、共用ビームラインのBL38B1と、理研のビームラインBL45XUを入替え中で、来年の5月過ぎには45番が共用ビームラインとなります。その他のビームラインについての高性能化はJASRIにて継続的に実施いたしていきます。
最後のページ(資料4-2の6ページ)になりますが、共用ビームラインのライフサイクルの考え方をお示しいたします。ビームラインの高性能化としましては、理研、JASRI、競争的資金を使って、研究開発を推進します。また、12条に基づく調査研究・手法開発もし、高性能化をいたします。
この後にビームライン評価としましては、多面的な評価指標に基づいて総合的に評価し、改修対象ビームラインの候補を決め、それを関係機関へ提案し、ユーザー、SPRUC、SPring-8利用推進協議会へJASRI提案内容を提示いたして、ユーザーの要望をお聞きしたいと思っております。
そして、理化学研究所とビームラインのポートフォリオの最適化、それから、ビームライン改修・高度化に関して協議し、協働して、共用ビームラインのサイクルを回していきたいと思っております。
以上になります。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。それでは、これからの時間、今のJASRIの田中常務理事から説明があったことも含めてですが、最初の山重先生から落合局長、それから、矢橋ディレクターの4件の方の話を含めて、いろいろ今後の課題、推進方策について議論を深めていきたいと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
【小杉主査代理】 矢橋さんのお話で、SPring-8-IIに向けてどういうことをやっていくかというような御説明がありましたけれど、SPring-8ができたときには、学術の施設が一通りそろった後、第3世代の高輝度光源というのはSPring-8しかなかったし、いろんなことをやらないといけないという、結構無理したところもあるのですけど、SPring-8-IIで聞くところでは、軟X線とか赤外とか、東北の次世代光源でできるということはやめていって、でも、硬X線の方も必ずしも今やっている研究が全てそのまま次にもつながるかというと、必ずしもそうではない。
大きな施設ですから、光源の特長を生かすものばかりではなくて、ある程度は裾野の部分をしっかりやらないといけないという部分はあるのですけれど、資料の何ページでしたか(資料4-1の20ページ)、やらないことを明確にして、というところが重要です。ESRFなんか見ていると、かなり時間を掛けてビームラインを入れ替えていっているというのもありますが、すぐ何をやめる、やめないではなくて、年次的にこの段階ではこれをやめて、場合によっては既存の、今、東北を入れると10個のリングがありますから、その中でも老朽化で止めるところは1つ、2つあるかもしれないのですが、そういう中でほかの施設で生かしてきた方が良い部分もあるし、実際、軟X線はSPring-8-IIでは止めて、東北の方に展開していくような話も出ております。SPring-8-IIでは、日本全体を見て、光源性能に見合った最先端のものプラス、大型施設ですから、少し底上げするものになるかと。ベンディングのラインは、SPring-8では20本もありますけど、そこまでやる必要もないかもしれないし、そういうところで日本全体を見ながらの進め方が今後ビームラインを入れ替えていく中では結構重要かなと思うのです。そういう場をどういうふうに設定していくかというところは、学会側でも考えないといけないとは思っております。
【矢橋先生】 よろしくお願いします。
【雨宮主査】 はい、どうぞ。
【石川先生】 小杉先生からの御指摘は非常に大切で、これは日本全体で考えていかなければいけないことです。また、いろいろなところを切り分けて議論して、その一つ一つで成果最大といっても、全体として成果最大になるとは限りません。最大化に、どのような境界条件を付けるのか、逆に、境界条件を付けないことが全体としての最大に向かう可能性も大きいので、放射光学会や、データ施設とも協力して、日本全体として考えていく方向がとれるよう、皆さまにお願いしたいと思います。
【雨宮主査】 今のことですけど、事務局から説明があった資料2の15ページの「今後の重点的な課題及び推進方策」の中の15ページの赤枠の中の「SPring-8の今後の発展の方向性」の中で、赤枠の下から2行目、「硬X線の放射光源が拓く科学技術、他施設との連携による相補的発展」と、多分そこが今、具体的に議論した内容を落とし込むことになるのだろうと思います。
ほかにいかがでしょうか。
では、一つ。矢橋さんの方から、SPring-8のアップグレードの現時点でのイメージ、時間スケールのものがありましたけれども、このUSSR4、ロシアの話というのはあんまり聞いたことなかったのですが、どの辺の位置付けになるのでしょうか。
【矢橋先生】 これはモスクワ近郊に作りたいという話があって。
【雨宮主査】 新たに作る。
【矢橋先生】 そうですね。はい。ただ、ロシアの方もリソース、特に作る方のリソースをどう確保するのかというのはいろいろ議論があるようです。
【雨宮主査】 はい。分かりました。それから、ESRFのアップグレードの話は分かったのですが、APS-Uのことについては、(資料4-1の)7ページの低エミッタンス化の表を見ると、何かAPS-Uがちょっとこのラインが低くなって、何かアドバンスな感じがあるのですが、何かコメントがあれば。
【矢橋先生】 それは田中委員がコメントがあるのではないでしょうか。
【田中委員】 すごいところを指摘されましたね。実は最近、このグラフは線が3本になっております。下の方を結ぶ新たな線が引かれています。それがどう説明されているかといいますと、その線を引いた方が言うには、on-axis入射を採用している施設はとんでもなくエミッタンスが下げられるので、2本の線の下側に1本、更に線が引けると言うわけです。
on-axis入射というのは、蓄積リングにビームを入射する際にその入射した電子ビームが全く振動しないというもの。振動せずに、リングの安定軌道上に入射できる、まあ、理想的な話においてですけどね。言うだけはいか様にでも言えるわけで、入射電子ビームはもう微動だにしないで、スッと軌道に乗って、スルスル回っていく。リングの安定領域が無限小でも成立する、そういう話になっています。このような若干眉唾な話をベースとして、実機を検討しているところが世界に何施設かあって、そういう施設はとんでもなく高い性能、低エミッタンスを実現できると彼らは主張しています。それらの施設の設計目標エミッタンスは、さっきの矢橋さんの引いた線よりも下側に来ます。ただし、それが本当に現在の技術でできるかどうかということは、僕はコメントしません。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
ほかに御意見いかがでしょうか。高原委員。
【高原委員】 今のお話とはかなり外れてきますけれども、今日の議論でも何回か、オープンデータとかデータサイエンスのことが出てきています。これは特に産学連携で関わるものですとマテリアルインフォマティクスで、企業の方は非常に興味を持っておられます。最終的にはAIを使っていろんな新しい物作りにつながってくる、かなり大きな話になってくると思うのですけれども、どのような議論が今のところ進んでいるのでしょうか。【田中先生】 まずオープンデータをしていく上で解決しないといけないところが幾つかあって、1つは、オープンデータのデータを受ける側、施設側としては、データマネジメントポリシーというのを作る必要があります。データを提供する側は、データマネジメントプランというのが要るのですが、施設側としてオープンデータをやっていくときには、まずこのデータマネジメントポリシーを作らないといけないのですけれども、今日お話しさせていただいたこのXAFSのデータとか、それから、12条のデータを公開しようとしている場合は、これは今はJASRIのスタッフが測ったデータですので、データマネジメントポリシーというのは余りきつく決めなくても何とか公開はできてきます。
ですので、まずその産業界の方、学会の方もそうなのですけど、データをユーザーさんが提供していただく。あるいは企業さんが提供していただいたものをオープンにしていく場合には、施設側でデータマネジメントポリシーをきちっと作って、それに対してユーザーさんがまずアグリーしていただいて、データマネジメントプランをユーザーさん側で持っていただくということが必要になります。ここをきちっとやっていかないといけないのですけれども、まだそのSPring-8をはじめとして、いろんなところでデータマネジメントポリシーというのが余りはっきりしているところがなくて、その所有権とかデータは誰のものというところもあるわけで、そういったところをきちっとしないと、なかなか実現には難しいかなというところがありますので、今は試験的にSPring-8ではオープンにしているところです。
【矢橋先生】 よろしいですか。そういう意味では、それをしっかり議論をする場。それも施設内だけではなくて、やはりユーザーコミュニティの意見もしっかり聞く場がまず必要で、これは仕組みとしての場がまずあって、多分これとちょっと別の場かもしれませんが、サイエンスをしっかりやると。2本立てで行くことが必要だと思いますので、そこはしっかり進めたいと思います。
【高原委員】 ありがとうございました。
【雨宮主査】 小杉さん。
【小杉主査代理】 そこにはあからさまに書いてはいないのですけれど、XAFSなどでは問題になっているのですけれど、何でもかんでも集めるだけでは駄目で、資料には1行目に高品質ビッグデータとありますが、高品質のところにその意味が入っているのかなと思いますけど、主な検討事項のところに、信頼あるデータを集めるというところを書いていただかないと、多分よくないのではないかと思います。
【石川先生】 良いですか。
【雨宮主査】 はい、どうぞ。
【石川先生】 ヨーロッパでは全く逆に、悪いデータを、悪いデータとしてしっかり保存しようという議論があります。どうすると、良いデータが取れて、どうすると悪くなるかというのも非常に重要な情報だということです。もう一つデータポリシーに関しては、皆さんもヨーロッパのデータポリシーのメール等を受け取っているのではないかと思いますが、アメリカでは、ヨーロッパのデータポリシーに対して批判があるようで、アメリカの中では、ヨーロッパと若干違う方向での検討も進められているようにも聞いております。
アメリカにしろ、ヨーロッパにしろ、データをオープンにしていくという方向は同じですので、いずれ日本でも何らかの形で進めることになるでしょう。その場合どうしていくかというのは、我々のようなところが一番先に何かやらないといけないだろうという感触は持っています。
【雨宮主査】 今、石川さんが言われたことで、機械学習で、要するに、検出器、機械学習で、ポジティブデータとネガティブデータ、本当は両方とも必要だと。全くそのとおりであると同時に、最近いろいろなことが進歩して、ネガティブデータというのが実際集められないことが多いので、ポジティブデータの揺らぎというか、アンサー点というやつがあって、ポジティブデータだけで、ネガティブデータがなくても、ポジティブデータだけで学習できるというのが、新しい方法も何か最近プレス発表されているようですし、多分その辺は日進月歩なので、いろいろなことが起こってくるのではないかなと思っているところです。
では、どうぞ。
【髙橋委員】 済みません。今のところでちょっと違った観点になると思うのですけれども、逆に言うと、成果専有で利用した場合は、そのデータそのものは一切公開しないということになることが多いわけですよね。それはそれで非常に必要なことなのですけれども、逆に言うと、アウトプットとしてのデータではなくて、例えばオペレーションに関するデータは自動的に収集することができるということも可能なのかなということを少し考えまして、それは矢橋先生のお話の中で、Workhorseのところで、アウトプットの量で評価するという御提案を頂いて、私はこれはすごく大事なことだと思うのですけれども、量を評価するということに対して、例えばどれだけビームが出ていたら、シャッターを開け閉めした回数がどれぐらいだったとか、そういうところは、例えば自動でデータ収集するけれども、良いですかということを、どこまでだったら、成果専有のユーザーもオーケーを出すのかというところを詰めた上で、そういうオペレーションに関するデータもどんどん集めていただけると、もっと将来のためには興味深いことになるのかなと思いました。
【矢橋先生】 ありがとうございました。実はSACLAの方はかなりそれが自動的にそこも吸い上げる仕組みになっているのですけれども、SPring-8はまだ全部には展開されていないので、そこも含めて、データポリシーのところにも関わると思うのですけど、是非検討したいと思います。
【髙橋委員】 ありがとうございます。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。落合さん。
【落合局長】 素人なのですけど、先ほど言われていたオープンデータの話は、我々も実際に産業界のデータをどう活用していくか議論しています。例えば、オープンデータ化しないクローズのデータに何らかのアクセス制限を付けて利用できないか国立情報学研究所とも議論し始めています。そういう方々が検討にお入りになると、もっとSPring-8としてプラスになる仕組みができると思います。また、オープンデータの向こう側にあるオープンにされないけど非常に価値のある質の高いデータを、産業界から出してもらえる仕組みを是非入れていただければと思います。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。内海委員。
【内海委員】 そのオープンデータの利活用の件については、3GeVも是非とも最初から枠組みの議論に入れさせてください。
話が少し変わるのですが、矢橋先生の講演にも、それから、田中先生の講演にもあったのですが、このビームラインの改編のお話、再編のお話、何となく今日のお話だけお聞きしていると、専用ビームラインの方は矢橋さんの方に出てきて、共用ビームラインの方はJASRIの方でと、何かそこをばらばらにやられるような印象のお話にお聞きしているように聞こえてしまったのですが、当然ながらそれは両方ともリンクしているので、一体化でやられるということですよね。
【矢橋先生】 もちろんそうです。結局これは時間を掛けて議論しないといけないので、いろんな角度、多角的な検討が必要になります。今、JASRIさんの方で始まっている検討でもいろんなことが浮き上がって、問題が出てきていますし、あと、この内々の検討のところでも大分、これはまだ始めて3か月程度しかたっていないのですけれども、かなりのことが分かってきています。内々の検討が進み過ぎて、みなさんに提示するときに大きなギャップがあるとまずいので、年度内をめどに、早めにお示ししたいと考えています。
【田中先生】 ちょっとだけJASRI側からコメントしますと、この共用ビームライン戦略委員会という名前を打っているのですけれども、矢橋さんは、JASRIの室長さんとしてメンバーに入って、全ての議論を聞いているわけです。JASRIとしては、登録機関ですので、この共用のビームライン26本に関して、まずは進めさせていただきますけれども、今日、スクラップ・アンド・ビルドと言ったのですが、スクラップを実施する場合の相手というのは理研ビームラインが含まれるので、JASRIが幾らこういうものがと言っても、それを受け取れなかったら、これは実現性がないわけですよね。ですので、その理研ビームライン、そして、専用ビームライン、これは理研側でしっかりと共用ビームラインまで含めて考えていただいて、全体で成立するようなシナリオを作っていく必要があると思っています。ですので、まずJASRIとしては、共用ビームラインの方から検討している状況です。いずれ理研と濃密な検討を一緒にさせていただくところが出てくると思っています。そのときは協力をお願いしたいと思っています。
【雨宮主査】 ビームラインの編成のことで、その前の(資料4-1の)20ページの絵が、これまでとこれからの違いで、これからがWorkhorse、Advanced、Novelと、ここはよく分かったのですが、この絵に込められた丸の色と丸の大きさが、これからにどういう意味合いが込められているか、ちょっと補足していただければ。
【矢橋先生】 大きさは余り意味がなくて、色は、理研、共用、専用と見ていただいて結構ですが、深い意味はありません。
【雨宮主査】 いわゆる3層構造ということですね。そのポイントですね。
【矢橋先生】 そうです。はい。
【雨宮主査】 はい。分かりました。
【田中委員】 良いですか。
【雨宮主査】 はい、どうぞ。
【田中委員】 皆さんからたくさん意見が出ましたので、私も幾つかコメントいたします。まずアップグレード絡みのことで3点ほどあります。1つは、雨宮先生の指摘にもリンクしていますが、この業界も比較的成熟してきたということでしょうか、矢橋さんの図7(資料4-1の7ページ)に書かれているような絵が最近よく紹介されております。先ほど雨宮先生がくしくも、APS-Uは随分ラインよりも下にいますよね、という指摘がありました。加速器を作る人たちはもちろん加速器の性能を追求したがるわけです。けれども、これは基本的に加速器を作る競争をしているわけではなくて、それをいかに利用するかというところが実は出口になります。無駄に加速器の性能を上げてもしようがないという側面があって、そこのところはよく考えて、3GeVの議論のときにもありましたけれど、意味のある加速器パラメータを精査して決めていくことが重要かなと思いますね、ヨーロッパとかアメリカがどこまでやっているからというよりも。
放射光施設は基本的には光を提供する施設です。利用者がどういう光を使うのか、どういう波長の光を使うのか、何が求められているのか、この光源はパルスなのか、CWなのか。光源の進化の先に何があるのかということも俯瞰した上で、次の一手をどこに打つのかという、詰め将棋ではないのですけれども、そういう観点が、光源の高度化には実は必要でして、ヨーロッパがここまでやっているとか、アメリカのアルゴンヌでこんな性能のリングを作っているということにあんまり引っ張られないようにしなきゃいけないなというのが1つ目ですね。
2つ目ですけれども、先ほどアップグレードの合理化の文脈の中で、実はSACLA入射はSPring-8-IIの性能ということだけでなくて、老朽化対策になっているというような話がありました。もう一つ重要な視点としては、サイトに兵庫県のニュースバルというリングがあるということも、実はSPring-8の特徴になっております。現在は、1GeVのLinacから電子ビームを入射しておりますが、SPring-8-IIをやるときには、そのニュースバルへの電子ビームの供給という点もよくよく考えてアップグレードをしていくということが、多分老朽化対策と同時に必要になってくると思います。
3番目ですけれども、矢橋さんの方からタイムスケジュールですね、アップグレードのタイムスケジュールが示されました。もちろん説明があったように、3GeVができた後にSPring-8のシャットダウンがあるべきです。シャットダウンを遡ること3年程度の期間でいろいろなパーツを作っていって、運転停止期間を最小限にするという話がありましが、そのためには運転の裏側で置き替えるためのハードウエアを準備していくということになります。ですので、そういうようなことが可能になる予算立てというか、予算措置というか、予算の使い方、いわゆる予備品としてそういうものを作れるのか、作れないのかというようなことも含めていろいろと工夫していかないと、先ほど説明のあったスキームはなかなか具体化できないように思います。
以上がアップグレードに関するコメントです。それ以外のコメントとして、兵庫県の落合局長から非常に面白い指摘があったと思っています。使うことが直接的な成果には結び付かない利用、成果の一つ手前の、余裕みたいな、遊びというのかな。次のオープンイノベーションを推進する種みたいなものを模索できるしかけについてお話があったと、私は理解しました。それと近い提案は、実は岸本さんからも説明があったように思います。先ほど来、SPring-8のビームラインは五十数本あるので、ポートフォリオを考えていく上で、効率化を求めるという議論がありました。一方で、そういう余裕、試行錯誤を許す遊びみたいなものも入れていくと、何かこう、かなり長い期間にわたってサステイナブルな、持続的に成長できる形がうまく作れるのかなと思って聞いておりました。
以上です。
【雨宮主査】 それに関して何かありますか。こちらで何か出たのでしたっけ。ほかにいかがでしょうか。山田委員。
【山田委員】 ちょっと違う観点からなので恐縮ですが、今日のお話を聞いていると、やはりお互いの課題が関連していて、答えを出すのが非常に難しい側面があるなという感じがしました。ハードウエアなど技術的側面などに関しては、アップグレードとか将来計画の見通しはかなり明確なものを立てられるのですが、人の問題に関しての将来計画はやはり非常に難しく、なかなか見通しが立っていかないという気がしています。例えば人の問題は、施設がアップグレードなりの将来計画を行う場合、例えばユーザーの動向やサポート体制はそれにより将来的にどのように推移していくものなのか。それを施設として、共同研究、共同利用施設としてどういう体制でサポートすべきなのかという年次計画的なものがやっぱり出せない。この点はもう数十年前からそのことが起こっているが、最近になってそのひずみが顕在化してきたのではないかと考えています。
大型施設が、成果の最大化を行っていくのはそのとおりですが、そのための人材をどう育成していくか、いろんな階層の人材を施設としてどう育成していくかというロードマップを、そろそろ明確にしていくべき時期が来ているのではないかとを最近強く感じています。
【雨宮主査】 それに関して、今、出していますが、矢橋さんの方から、階層的な人材育成と。そことの関係の御質問だと思いますけど、何か矢橋さん、今の山田委員の質問に対してありますか。
【山田委員】 質問ではないです。
【雨宮主査】 質問というか、コメントに対して。
【石川先生】 その人材育成のところは、この何十年間か、日本の施設が余りうまく進めておらず、決して褒められたものではありません。ただ、やはり人間が育つときというのもあります。人間が育つときを作れないと、結局どんなに良い人材育成プログラムがあっても人は育ちません。だから、人間が育つチャンスをしっかりと作っていきましょうというのが私たちの考え方で、これまで2度しか成功例は経験していないのですが、2度あることは3度あるだろうと、3歩目を踏み出そうとしております。
【山田委員】 よろしいですか。それは新しいものがスタートするときに人は育つという考え方ですね。ちょっと極端に言えば。
【石川先生】 極端に言うと、その通りで、新しいものを作るときには必ず人は育つわけですね。
【山田委員】 定常状態では、人はほとんど育たないと。
【石川先生】 いやいや、だから、定常状態にしたら駄目なのではないですかと。
【山田委員】 だから、その定常状態にしない方策をどういうふうに年次計画的に練っていくか。それを日本全体として各ファシリティがお互いの役割分担を考えて、それをやっていくべきなのではないでしょうかということを言いたかった。もちろんスタートのときにグッと上がっていくのは、それは皆さん了解されると思います。
【石川先生】 だけど、そのグッと上げたところから、やはり施設の余裕というので、あるところまで上がり続けるわけですよね。
【山田委員】 あるところから……。
【石川先生】 ですから、次の次のアップグレードがどうしても必然になるまでは上がり続けるわけで、それを途切れさせず上がり続けられるかどうかというところが非常に大切です。その上がり続けるところで、人は育つのだと考えています。
【山田委員】 上がり続けているときに、人は育っていると同時にやはり疲弊的なことが今起こっているのではないかという、そういう懸念がいろんなところで出てきているわけですね。そこもやはり考えていかないと、次に上がるときに、もう人もいないし、疲れている人がいっぱいたまっているということがないようにしないといけないのではないでしょうか。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。
【岸本委員】 今のことに関係するかもしれませんけれども、このビームラインの再編・高度化、カテゴリーの再定義というページ(資料4-1の19ページ)がありましたけれども、ここは最初から言われていましたように、研究員のモチベーションとかそういった点においては、例えばこれまでだったら、広くみんなが使っているようなところばかりをやっていると、人は育たないですし、新しいことにチャレンジできないですけど、例えばこのNovelというところに入り込めば、新しい計測手法へのチャレンジとかができたりとか、そして、Advancedというところでは、アプリケーションという応用面で新しいサイエンス、マテリアルサイエンスにつながったりとか、そういったところでこういうしかけを入れることによって、人も育ち続けるし、更にその先にIIへの躍進みたいなことがあってですね。この辺は解決の一つ方法なのかなというような気がしたのですけれども、いかがですか。そういう考え方もあるのですよね。
【矢橋先生】 そうですね。正におっしゃるとおりで、人材育成を含めて問題になるのは、皆さん、何をやっているかよく分からないというのが一番まずい。例えば、Novelと言いながらNovelもどきだったりすることもあるのですけれども、そうではなくて、やはりNovelは世界一かどうかで判断すべきだというところで、そういう観点でしっかり仕分をしていくことが必要です。あと、必ずしも一人の人がどこかに専念する必要はなくて、いろんな服を着ていても良いわけですね。そのときにちゃんとスイッチを切り換えて、今これでやっていますと。今、自分はこれをやっていますみたいな、そういうところがしっかり分かるように、やはりファシリティ全体としてやっていくべきだと思います。
【岸本委員】 やっぱりそういうところはモチベーションアップにつながりますよね。
【矢橋先生】 正にそうですね。
【雨宮主査】 ちょっと時間もあれなので、一つ。矢橋さん、(資料4-1の)12ページのパワポを見させていただいて、これですね。これは非常に整理されていて、見やすくて良いなと思うと同時に、一つ注文というか、コメントなのですが、その条件のところに、Ex-situからin-situ/operando、Real product/reactionとありますけど、X線の場合には本当に文字どおり深いところがやるので、文字どおりリアルプロダクトで、リアクション中にできると。その言葉を私はオペランドという言葉に充てるのが良いのではないかなと。というのは、今までオペランドという言葉は出ているのですが、ほとんどin-situと同義で使われていて、どう違うの? と言われていて、その割にオペランドという言葉はこの名前がある割にというか、非常に客がある割に、みんなが使っているのだけど、本当に使えるのはこの領域ではないかと思っているので、オペランドという言葉を充てると、リアルプロダクト、リアクションということよりも、情報発信しやすいし、まさしくオペランドは実環境、実動作下ということなので、そこのところにオペランドを使うということも御検討いただきたいと。
ここで出す情報発信というのはすごく重要で、オペランドというのは結局、in-situということなのねという言われ方になってしまうので、ちょっと御検討ください。
【矢橋先生】 分かりました。
【雨宮主査】 時間が大分来ていますが。はい、どうぞ。
【田中委員】 先ほどの山田先生の指摘に関してですが、岸本さんもコメントされていましたけれども、山田先生が心配することを解決するためには、やはりワークシェアリングだと思います。田中良太郎理事も、この点に関し、いろいろ言っておりましたが、そのためには、全てを研究者個人が負うというスタイルを一掃する必要があります。やはり組織が研究者のスコープをちゃんと定義しないと。テクニシャンとかエンジニアが本来やるべきものも全て研究者が拾う今までのやり方は、研究者を疲弊させますから、そのスタイルから抜け出さない限り、いろいろ言ったところで、解決しないですよ。
だから、そこのところは、もう組織改革というか、どちらかというと組織の問題なのですよね。そこをちゃんとやらないと、かっこ良いことを言っていても、問題は解決しない。正に山田さんが心配されているのはそういうところかなと思って聞いていました。
【雨宮主査】 まだあるかと思いますが、時間も来ましたので、本日はここでディスカッションは終了させていただきたいと思います。
本日の議論で、時間がなくて、発言できなかった御意見、御質問などがあれば、事務局を通してメール等で連絡していただければと思います。
本日の議題は以上ですが、事務局から何か連絡事項等ありましたら、よろしくお願いします。
【大榊補佐】 本日はどうもありがとうございました。世の中が年の瀬になりつつある中、御出席いただきまして、まことにありがとうございました。
今後の委員会の開催スケジュールについて御連絡いたします。参考資料も前回と一緒でございますので、横目に見ていただき、次回、第5回の中間評価は、来年、年明けの1月16日の開催を予定してございます。
また、SPring-8、SACLAの現地調査でございますが、1月28日を予定しております。
また、最終回は、一応、今の予定で第6回を2月5日開催で予定しております。詳細につきましては、改めて事務局の方から御連絡をさせていただきます。
なお、次回でございますが、先生方、皆様に御議論いただいた内容をまとめて、中間評価の報告書の素案という形で、事務局の方からお示しをしたいと考えてございますので、併せてよろしくお願いいたします。
本日の資料でございますが、後日、当省のウエブサイトにて公開いたします。また、議事録につきましては、皆様に御確認いただいた上で、ウエブサイトに同じく掲載をさせていただきます。
以上でございます。
【雨宮主査】 それでは、以上をもちまして、第4回のSpring-8、SACLAの中間評価を閉会いたします。本日は、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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