量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第25回) 議事録

1.日時

平成30年12月6日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 15階 15F1会議室

3.議題

  1. 今後の重点的な課題及び推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、石坂委員、伊地知委員、内海委員、尾嶋委員、金子委員、岸本委員、小杉委員、近藤委員、高橋委員、高原委員、田中委員、宮内委員

文部科学省

勝野科学技術・学術総括官、奥研究開発基盤課量子研究推進室長、大榊研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

理化学研究所放射光科学研究センター 石川センター長、理化学研究所放射光科学研究センター 矢橋グループディレクター、高輝度光科学研究センター 田中常務理事

5.議事録

【雨宮主査】 それでは、定刻になりましたので、第3回SPring-8、SACLA中間評価を開催いたします。お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。本日は、13名の委員に御出席いただいております。御欠席は石山委員、北見委員、山田委員です。それで、交通の事情で高原委員と内海委員が少し遅れるということです。
本日の議題ですが、小委員会の運営規則に基づいて公開という形で進めさせていただきたいと思います。
それでは、事務局から配付資料の確認等、お願いいたします。
【大榊補佐】 それでは、本日もよろしくお願いいたします。配付資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を御確認ください。議事次第のとおり、資料1から資料4-2まで、また、参考資料を配付してございます。また、机上のドッジファイルには前回までの資料と議事録、評価結果等をそれぞれとじております。なお、第2回中間評価の議事録でございますが、本日までの確認がとれておりませんので、議事録(案)という形でとじてございます。後日、第2回、第3回の議事録、先生方に御確認いただいた上で差し替える形にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。資料などに不備がございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【雨宮主査】 ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。今回も引き続きSPring-8、SACLAの中間評価を行うことといたします。SPring-8、SACLAからは理化学研究所の石川センター長、矢橋グループディレクター、また、高輝度光科学研究センターの田中常務理事に御出席いただいております。
それでは、議題(1)に入ります。事務局において前回の委員会で指摘のあった内容についてまとめるとともに、本日、議論いただくテーマを示した資料を用意していますので、説明をお願いいたします。
【大榊補佐】 それでは、資料1、資料2について簡単に御説明させていただきます。資料1(の1ページ)については、前回、中間評価(第2回)のときに御議論いただいた内容の概要を書かせていただいてございます。幾つか御紹介いたしますけれども、成果の最大化の効果的な指標についてであるとか、また、SPring-8ビームラインの設置、改廃等の主体を明確化すべきではないか、といった点。また、ビームタイム方式の導入等々について先生方に御議論いただいた内容をまとめてございます。もし御議論に追加、また、御意見等、修正等ございましたら、また本日の議論の中でお話しいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
おめくりいただいて中間評価(第2回)の後に寄せられた意見ということで(資料1の2ページ)、山田先生から御意見を頂いてございますので、簡単に御紹介させていただきます。山田委員からは、例えばSPring-8について放射光学会も加えて理研・JASRI・SPRUCによる3者会合と放射光学会を加えた4者会合を実施すべき、ですとか、放射光施設全体の会合を定期的に開催していくことが必要ではないかという御意見、また、前回、御意見がございましたが、コーディネーター機能の話について、質・量ともに不十分であって、今後コーディネーター機能を補佐する役割等に関する御意見を頂いたところでございます。例えば施設の利用協議会にそういった機能、コーディネーター機能を持たせることが必要ではないかというような御意見もございました。
また、人材育成についても御指摘を頂いてございまして、施設を支える人材育成については放射光施設全体を俯瞰したハード、ソフトも含めた立案についても検討するべきではないか、といったような御意見を頂いたところでございます。本日、山田先生は御欠席でございますので、御議論の中で先生の出された意見も含めて御議論いただければと思ってございます。
また、資料2の方をごらんいただければと思います。資料2は前回まで使わせていただいた中間評価に当たっての主な論点でございますが、16ページ、17ページをお開きいただきますと、赤枠で囲っている部分がございます。今回、第3回の中間評価で議論する主な項目と書いてございますけれども、本日、高原先生と髙橋先生に御発表いただく点については、必ずしもここの枠に囲った内容ではございません。今回、赤枠で囲ってございますのは、主に理化学研究所、それから、JASRIから御説明を頂く内容で、例えばデータであるとか、今あるビームラインの状況であるとか、そういったものをこの枠に沿って、データも含めて説明を頂くことになってございますので、ここを中心に御議論いただくか若しくはもう少し幅広く全体で御意見を頂ければと思ってございます。
以上でございます。
【雨宮主査】 どうもありがとうございます。
今説明のあった資料に関して何か御質問、御意見、いかがでしょうか。資料1に関しては裏面に山田委員からの意見が紹介されました。資料2については、赤枠で囲ったところが加わっています。いかがでしょうか。特になければ、これから前回と同様に今回もSPring-8、SACLAを中心に利用されている先生方から両施設の施設運営に関わる提言や今後の課題などについてお話を頂きたいと思います。今回は学術研究の立場で高原委員から、それから、産業利用の立場で髙橋委員から御発表を頂くようにお願いしています。お2人からの説明に対して、それぞれ質疑応答の時間を設けて、その後、理研、JASRIから施設の課題や今後検討している取組などについての発表を頂くことにしたいと思っています。
最初に高原委員から御説明いただきます。
【雨宮主査】 それでは、まず、高原委員にお願いいたします。時間は15分ということで、あそこに時計を用意されていまして、よろしくお願いいたします。
【高原委員】 それでは、よろしいでしょうか。
【雨宮主査】 はい。
【高原委員】 学術から期待することということで(資料3-1の2ページ)、ここで期待することの概要は述べているわけですけれども、まずビームラインスタッフの充実、高輝度、コヒーレンス化に伴いより高度な人材が必要になってくる。それから、化学・材料関係だとやはり化学実験室として大学並みの施設が欲しいということですね。それから、いろいろな測定をしていると、やはり基本的な機器分析装置で時々試料を確認したいということが化学系のみならず恐らくほかの系でも起こると思いますけれども、NMRとかIRとか質量分析とか、走査プローブ顕微鏡の簡単なものを設置していただくとよろしいのかなと。
それから、これは要望ですけれども、解析ソフトの開発と、それから、データサイエンスとの連携、どうしても高度化いたしますと非常に多くのビッグデータが集まってきますが、その解析を効率よく行う。サイエンスが分かっている人は解析ソフトを作らないと役に立たないということで、そういった人材の育成も含めて今後考えていくべき課題で、特に散乱データをベースとしたマテリアル・インフォマティクスなどは今後世界的に必要不可欠になりますので、萌芽(ほうが)的と現実的なところも含めて早めにスタートしておくということが必要だと思います。それを施設に求めるかどうかとは、また議論すべきことなのですけれども、こういったことが頭の中にございます。
それから、私自身がいろいろなプロジェクトをやっていて優先課題の弾力化、弾力化というのは特に大型研究資金が採択された場合、期間途中からの申請も可能にする。現在は期というのがきちんと分かれていますので、一応、それに従って優先課題の申請をするということを行っております。それから、非常に独創的な課題をどのように審査、採択していくか。これは高いレベルの審査員の確保と審査後のいわゆる目利きみたいな、例えば散乱だけではなくて分光もできるとか、イメージングもできる。あるいは材料にも精通しているとか、そういった方が必要であるということ。それから、現時点では審査後の審査意見の申請者へのフィードバックがそれほどなされていないのではないかということで、そこのあたりの改善というのは求められていると感じます。
それからもう一つは、他の施設との積極的なネットワーク化です。全ての研究課題はSPring-8で行うことが必要不可欠ではありませんので、汎用的な研究は、他の施設で実施するということも考えるべきだと思います。それから、複数ビームラインでの研究実施、例えば散乱と分光の組合せによる、より高度な研究の推進というのも今後必要になってきて、そのための課題選定システムというのも今後検討していただければと思っております。
それで、私、今回、アカデミアからということで教育の立場から期待ということを書いております(資料3-1の3ページ)。大学における結晶学・放射光科学関連の教員は大きく減少していまして、各大学での関連科目の開講は非常に少なく、壊滅的な状態にある。放射光科学に従事できるポスドクも、そのため限られていて、現在は、実際は研究室単位で育成しているという状況でありまして、人材育成は日本の学術・産業の両面から緊急の課題である。一つは、これ、以前、SPRUCで議論していたのですけれども、SPRUCなどを活用した大学院連合の中でレベルの異なる――レベルの異なるというのは初等、中等、上級とかそういったレベルですけれども、教育システムを構築する。特にWebinar、Webセミナーをアーカイブ化して導入すると、初期投資はかなりかかりますけれども、実現性が高い。
このような教育に関する部分をどこに対応を求めるかというのもまた問題であります。それから、大学の既存の制度を活用して単位互換等の問題を解決し、大学同士の連携を図る。こういったことが博士課程への進学の動機付けになっているかと思います。こういった動機付けに現在の大学院生研究支援プログラムや萌芽課題の推進というのは必要であり、もっとこれを増やしていただければと思っております。それから、残念ながら放射光にフォーカスしたポストリーディングである卓越大学院プログラムというのは進んでいないようですけれども、そういったところへの展開というのもやはり各大学の研究担当、教育担当理事クラスと連携して進めていく必要があるかと思います。実際にはこの図(資料3-1の4ページ)は、2014年の大学院連合検討のときのものなのですけれども、こういった検討は、2014年頃高尾先生が代表で、この委員会の尾嶋先生と雨宮先生もメンバーに入って検討されましたけれど、途中でストップしている状況で、この後どうしていくか、どうなったかというのは私もフォローアップが完全にできておりませんが、こういった大学院連合は人材育成には非常に有効であると考えております。
実際はリーディング大学院のときは複数の大学が関わっていましたけれども、今度のポストリーディングでは全く、余り明確に見えてきていないということで、卓越大学院にどういうふうに名乗りを上げていくかというのも、これはSPring-8が中心になっていただくのか、近郊の大学が中心になっていただくのか分かりませんけれども、そういったのも教育としては必要であるかと思っております。SPRUCの中の各大学では幾つかの施設が大学院の学生のプログラムというのを実施しておりまして、それを幾つかの大学では有効に使った形での大学院教育を行っており、ただ、やはり全体として放射光、それから、結晶学という分野の大学でのカリキュラムというのが減っていますので、そういったものを、これは放射光施設も大学も、関連大学も全体として連携して取り組む必要があるかと思っております。
それから、次に学術から見た産学連携ということで(資料3-1の6ページ)、フロンティアソフトマタービームラインというのを立ち上げて、私どもはそれに関わってまいりました。これは高分子関係のビームラインがなかったということで、高田先生を中心に御尽力いただきながら、このビームラインを立ち上げて企業が18社、大学が1つ、このコンソーシアムに加わって運用をしてまいりました。このページ(資料3-1の7ページ)に示しているような流れで、平成19年に趣意書を提出して、21年11月からコミッショニングして、もうすぐビームが出て10年になるというところです。この委員会の中のメンバーも私と、それから、雨宮先生が運営委員会で運営に携わっておりますけれども、これだけの会社が実際に関わっていて、それから、大学、SPring-8、理研と、企業・理研播磨・学の連携により材料の革新的な高性能化を目指した研究を行っております。
発足時は、企業は大学との連携で、手探り状態でビームラインの活用をしていたという状況です(資料3-1の10ページ)。最初は放射光のことをほとんど理解していない会社が多かったのですが、大学は民間との共同研究で連携をしました。それから、2から5年後がビームラインの設置の充実。それから、企業の未経験の測定手法への挑戦、例えばUSAXSとかGIXSに挑戦しました。それから、BLでの共同研究で測定に従事する学生との機密保持契約でより緊密な連携が進みました。それから、企業メンバー全員を含む共著論文の執筆、これが2011年で、これがBL装置をベースにした地味な論文なのですけれども、今、81引用があって、多分、設立10年には100を超えてくれるのではないかということで、この手の論文にしては割と良い線行っているかなと思います。あとGI分科会、熱硬化分科会という分科会を、これは企業メンバーが自発的に立ち上げ継続的に運営されています。
それから、文科省の支援によりまして量子ビーム連携によるソフトマテリアルのグリーンイノベーション、これで検出器をかなり高度化したということで、新しい実験ができるようになりました。更にXPCS、イメージング、μビームWAXS、SAXSと新しい手法へ展開されました。ここで私が特筆したいのは世界的にXPCSを産業界が活用している例はほとんどなく、日本の企業は非常に先進的であるということです。今、恐らく3社ほど使われていると思いますけれども、これも非常にすばらしいことです。現在、企業から軟X線、テンダーX線の活用の希望とか、イメージングとか、高度なダイナミクス測定の希望、それから、データ解析の高効率化とかいった課題が出されております。
成果としては、非常に引き裂き強度の高いシリコンゴムを、これは住友ベークライトさんが開発して、バルーンカテーテルとかに使えるような材料を超高速の引っ張り試験と散乱測定を行うことによって実現しております。
それから、生産技術開発の活用例としては、大型PEN、これはポリエチレンナフタレートというPETの次世代のボトルの品質保証、それを結晶化過程を解析することによって明らかにしています。成形過程の評価は大型の成形のラインがあるから可能になったことで、それから、旭化成はベンベルグの紡糸過程というのを明らかに、どうやって良い糸できるかというのが明らかになった。これは皆さんが使っている繊維の中でも結構ポピュラーなものです。
それから、超耐熱性ポリマーのオレフィンの耐熱化を、結晶化をコントロールして実現できるようになったということで、これはいろいろな私たちの身の回りの材料に有用なことが明らかになりました。こういったビームラインでの研究は学位にもつながっており、学位を取ろうとする方がまだ多くいらっしゃって、こういったことは博士課程の学生の充実にも、学生さんが博士課程に進学しようという動機付けになって、そういった面でも非常に貢献しております(資料3-1の11ページ)。学生が企業に就職するとか、それから、FSBLの研究会で企業間で意見交換して情報を交換して、特に測定法に関しては相互に活用していることは特筆すべきことです。
現状報告っぽくなってしまったのですけれども、最後にSPring-8への期待ということで(資料3-1の12ページ)、1つのSAXS、WAXSだけではだんだん物足りなくなってきて、それは企業も学の方も同じ状況にありまして、散乱とイメージング分光を組み合わせたいろいろな解析、時間と空間軸を変えた分光、局所的な散乱により破壊・劣化、特に接着も含めた高分子材料の局所的な構造変化の特に動的イメージングというのを今後行っていきたいということも多くの方が希望されています。こういった形で今後いろいろなビームラインの仕組みというのも構築していただければと考えております。
以上です。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
それでは、今の御説明について御質問、コメント等あればよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
【小杉主査代理】 最初の学術から期待することというのは、前回、私がお話ししたのとかなりオーバーラップする部分が多いです。
【高原委員】 はい。どうしてもオーバーラップする。
【小杉主査代理】 もともと放射光施設は創成期というか、できた頃は放射光の実験をするために皆さん試料を作って持っていくというスタイルで、そのときはどこの施設に行っても同じデータがとれるというのが重要だったのですけれども、今はかなり現実的なものが測定できるようになったので、試料周辺のファシリティも放射光の施設に必要になってきたという実態があると思うのですけれども、KEK物構研の場合はもともと放射光実験施設という施設でやっていた時代から、研究所になったことによって、そういうファクターを入れていかないといけないと、今、結構言っていて、構造生物学の研究についてはそういう環境が整いつつあるのですけれども、放射光だけの施設で、そこまで研究の環境、放射光以外のファシリティをどう整備していくかって結構難しいと思います。今まではどこの施設でも同じことができるというのが重要でしたけれども、ここに書かれているようにやっぱり施設で役割分担して、ある分野については周辺機器も含めて、特定の施設でしっかりやるとか、そういう全体を放射光の施設で相談しながらやっていかないといけないとは思っています。その辺は山田先生のコメントにもありますが、放射光施設間で議論する場を作って、学会としてもやるつもりになっております。
あと、人の問題は、コンシェルジュとかそういう話も出ましたけれども、施設の方はやっぱり手法研究のプロがいるので、そういう人にコンシェルジュ的なことを期待されても非常に困る。研究分野でやっている方は、いろいろな手法を使いながらやるので、その研究分野でやっている研究者と手法でやっている研究者をうまく使っていかないといけなくて、多分、コンシェルジュ的に重要なのは研究分野でやっている研究者がしっかり各手法を使いこなしてやっているところだと思います。でも、施設でそこまでの分野の研究者を整えるのは結構難しいと思われますので、物構研こそそれをやらないといけない。最後の方に前回言いましたけれども、その辺が施設でやっているところと研究所というスタイルで、施設もあり、分野の研究者もいるというスタイルでやっている組織と大分考え方が違うのではないかなという印象を持っています。前回、最後の方でチラッと言って舌足らずだったので、今、補足を含めて申し上げました。
【雨宮主査】 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。重要な点が指摘されています。前回の小杉委員と重複しているところは、より重要だという認識になるかと思います。
【石川先生】 よろしいですか。
【雨宮主査】 はい。どうぞ。
【石川先生】 最初の方でマテリアル・インフォマティクスの重要性の御指摘を頂いたわけですが、間違いなく、今いろいろなものがどんどん新しくなっていって、放射光施設というある意味で特殊なるつぼのような環境で、新しいものを作っていくということが、これからますます重要になっていくのだと思っています。そのときに種がないところに、種から作っていくことをどのように進めるかを、大学の先生方と施設側とでかなり真剣に考えていかなければいけないところではないかという感じがします。
もう一つ、教育の問題として、日本の中で例えば散乱とか回折を教える講座がなくなってしまったというのは御指摘のとおりですが、同じことがアメリカでも言われていて、大学でX線回折をきちんと教えるところがないということで、DOEで連合大学院のようなものを作ることを考えているようです。それに一枚噛(か)んでくれないかという話も来ていますが、日米でWebinarなどを一緒に進めるということも考えても良いかもしれません。
【高原委員】 それはヨーロッパまで含めて。
【石川先生】 ヨーロッパも同じですね。
【高原委員】 巻き込んで、言語としては英語を使ってこういうのはやった方が留学生とかも、外国人研究者もかなり多いので、基本英語でやるという形。どの機関が音頭をとるかというのは、これは非常に負担が大きいですけれども、どこかで御検討いただければと思いますけれども。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【田中委員】 これまでの量子ビーム利用小委員会でも近藤先生とかいろいろな方々が施設の人材の問題というのを指摘されて、今ここでも出ていますけれども、私、SPring-8に意外と近いところにいて見ておりまして、本当に加速器も含めて基盤を維持するところの人材をどう充実させていくかというのは、かなり重要かつ、ある意味では緊急性が高いと思っています。それで、特にSPring-8サイトでSACLAとSPring-8を両方見ていて感じるのは、やはりSPring-8のビームラインを担当している方々にどういうモチベーションを与えていくべきなのかというところが本当に難しい問題なのかなと思います。SACLAだと比較的、その光自体が新しいのでビームラインを作っていくというところで成果がどんどん出ていく。
そうすると自然とやっている人たちも元気になってきますし、やることが先にいっぱいあるという状態なので、そこはもう自動的に何かアクティビティを維持できる。一方で、もうすぐスクラップ・アンド・ビルドを迎えるというようなフェーズになってくると、1つのビームラインに縛られていると先の展開を考えていくことも限定的になってきます。ですから、どのような組織や運用を構築していけば、今、SPring-8が直面している問題を回避して、この先の20年間というか、長期間にわたり、高いアクティビティを維持していけるのか、考えていく必要がある。先ほどらい利用者の方々からは、基盤、ビームライン、その辺の高度化をしている人材が元気でレベルが高くないと、やはりその施設を利用しての研究や開発がやりづらいという指摘がでている訳ですから、そこは日本全体、放射光施設群の中でこの問題を共有して、そこの出口というか、ソリューションを見いだしていく努力をしていく、知恵を出し合って問題を改善していくことが重要であると認識しています。皆さん方がそれぞれ指摘していただいているのは有り難いことであり、是非今回の中間評価ではそこのところに関して何らかの方針というか、方向性を明示していただければ有り難いと思います。
【雨宮主査】 どうも。
【小杉主査代理】 SPring-8は20年、SACLAは5年ぐらいだから、まあ、SACLAもいずれはなる可能性が。
【田中委員】 そうですね。
【小杉主査代理】 フォトンファクトリーも36年なので、正にもう大きな問題になっていて、その辺、改組を含めて意識改革を今やっているところで、共通の問題がありますので。
【田中委員】 そうですね。ちょうどこれからオギャーと生まれるところもあるので、これまでの経験からいろいろと分かってきた点を整理して、立て付けというか、制度をどう改善していくべきかというのを考えるちょうど良いタイミングかなとも思います。
【石川先生】 よろしいですか。
【雨宮主査】 はい。どうぞ。
【石川先生】 多分、放射光だけの問題ではなくて、中性子やらいろいろ日本の基盤施設、その共通にある問題ではないかという感じがするので、余り放射光だけで考えないで、もう少し広く考えるのが良いのかなという気がするのですが。
【小杉主査代理】 今の話に関連して、たまたま中性子学会の特別講演として、私、中性子のことはよく分からないので放射光の現状をお話しして、今、J-PARCは10年たったところなので、これからの10年は大事だよという話を人材面とか、研究面でちょうど指摘したところです。中性子学会の学会長とも、その辺、意見交換しましたので、そういうことをやっております。
【雨宮主査】 どうも。まだあるかと思いますが、次に進みたいと思います。次は髙橋委員から御発表をお願いいたします。15分ということでお願いいたします。
【髙橋委員】 第一三共RDノバーレ株式会社、髙橋と申します。この場には構造生物のアカデミアという方がいらっしゃらないのですけれども、私、製薬会社としては、製薬会社を代表するのもおこがましいのですけれども、構造生物で企業側というような立場だと思っていただけると間違いはないかなと思います。
ざっくり具体例の話はなるべくさらっと行きたいのですけれども、ざっくりとおさらいというか、我々製薬会社としては放射光をどのように使っているかというところを軽くまとめておきますと(資料3-2の2ページ)、主に利用しているのは構造生物といったところで、タンパク質の構造解析を主にやっていて、それはアカデミアとは少し違ってくるのは、創薬の標的となるタンパク質と薬剤の候補となる化合物の複合体を見ていく。そして、薬剤の方を設計していくといったのが主な目的になっています。それは一般的にはStructure-based drug design(SBDD)と言ったりしますけれども、この流れの中で、最近の流れとしては、これがHigh-throughputであったりとか、今までできなかった標的を狙っていくといった、この辺が重要な課題になってきています。
あとは、それとはまた別の側面としては、最終的な製品とする薬そのもの、低分子そのものの構造解析ということを行う場合もあるのですけれども、これは私の担当と少し外れるところもありますし、今回のトピックとは少し離れてくるので、この辺は省略したいと思います。
こういった分野に関しては、これまでほぼ15年ぐらい前からずっと基本的なストラテジーは同じような形で、同じようなものを使わせていただきつつ、ただ、その性能ですとか使い勝手とかいうのは非常に進歩してきているのは非常に感謝しております(資料3-2の3ページ)。これまで15年近く私も同じような仕事をしてきて、つくば高エネ研のPF、PF-ARですとか、SPring-8、それこそ創薬産業コンソーシアム、もともとは蛋白(たんぱく)コンソとしてビームラインを持った経緯もありますし、その後はコンソーシアムとして活動させていただいて利用させていただいているという経緯もあります。また、これとは別に最近はSPring-8、JASRIさんの方で測定代行ですとか、全自動測定ですとか、そういったところも非常に充実してきまして、こういったところが使えるようになってきていると思っています。あと、前にも御紹介しましたSACLAの産学連携プログラムの成果ですとか、それとはまた別に後でお話ししますけれども、日本の放射光の季節の問題もありますので、海外を使わせていただくケースも出てきています。
どういった例で使っているかというところ(資料3-2の4ページ)は、なるべくさらっと行きたいのですけれども、ドラッグデザイン、薬の方を設計していくという意味では、タンパク質の中に薬の候補となる化合物がどのように結合しているかをまず見て、これをどういじればよくなるか、活性が上がるか、ほかにいじれるところがあるかというのを見ていって、それをもとに設計していくということをやるのですけれども、もちろん設計どおりにうまくいくこともあるのですけれども、うまくいかないこともありまして、やってみてこれは良い、これは駄目、これは良い、これは駄目というのをどんどん見ていく。というのは、やはりHigh-throughputというのがとても大事になってきます。この場合も1年弱の間に80以上、この段階でもそれぐらいですし、今ではもう半年で100を超えることも珍しくない数の解析をしていて、High-throughputというところで昔に比べて圧倒的によくなったというところがあります。
一方で、難しいものでもできるようになってきたという側面もありまして、これ(資料3-2の5ページ)が一つの例ですけれども、具体的な中身を出せない例ですけれども、結晶としては非常に細い、弱い結晶からでも、このときはたまたまBL32のビームタイムを持っていたというのがあって非常に速く解析をすることができました。最初にこの化合物はどうですかという話があってから3週間ぐらいでデータが出たというのは、これまでの感覚からすると非常に速い。というのは、余りよろしくない結晶からでもすぐデータが出るという意味で、放射光の非常によかった点が出た例だと思っています。
SACLAの利用に関しては(資料3-2の6ページ)、以前にも少しお話ししたので簡単に行きますけれども、こちらも大分前なのですけれども、平成26年から産学連携プログラムという形で参加させていただいて、最初はモデルの例だけだったところを現実のサンプルでもできるというところを教えていただきました。具体的には、最初の始めた段階では本当に何も、右も左も分からない、どういうものに適用できるかというところも分からなかったところで、まだ施設の側としても産業側がどういったことを要求しているのかというところもいまいちつかめないという話がありましたので、我々の期待している特に重要になる合成化合物の導入ですとか、データの機密保持の問題ですとか、そういったところをお話しさせていただいて、一つの例としてこれまで結晶が出ないような、小さい結晶しか出ないような、重なったような結晶しか出ないようなときにSACLAを使って非常に簡単にデータが取れるという例を一つ示すことができました(資料3-2の7ページ)。
ざっくりまとめますと(資料3-2の8ページ)、今までも放射光を使わなくてもできることというのは一定量あるのですけれども、放射光で使うことで圧倒的によくなったところというのは、High-throughputであるところ、データの質がよいところ、また、放射光でないとデータが取れない高難度標的といったところで非常にメリットを感じています。これは今後も更によくなることを期待していますし、それによって今まで見えなかったものが見えてくるというのは、我々としても非常に興味があります。
スライドとしては出していないのですけれども、実は本題になるのがここだと思っていて、私の考える、私の感じている10年前、5年前ぐらいの変化という点で言いますと、単純に放射光、光の強度ですとか、絞りですとか、そういった性能がよくなっている。あとはロボットがよくなっているといった側面もあるのですけれども、それだけではなくて、この場でよく話題になっている新規技術を利用していく仕組みとして、SACLAの産学連携のプログラムのようなトライアルの利用の機会があったりですとか、あとは細かいところで言うとSPring-8の研修会、研究会、あとフォトンファクトリーでも研究会をいろいろ行っていただいていますし、そういったところに参加させていただくことで今まで余りなじみのなかったちょっとした技術、テクニックでも知ることができる。今まで何となく会社の中で先輩から口伝というか、伝わってきたような何となく流れで出てきたことを新しい目で見て、こういった手法もあるなということを気づくことができるといった仕組みは、近年非常に充実してきているなと思っています(資料3-2の9ページ)。
SPring-8の課題申請の仕組みについても、私も非常によくなっていると思っていまして、構造生物の分野でこれは多分、皆さんから非常に苦情があったかと思うのですけれども、ここ数年、非常に進歩していただいて。タンパク質の結晶は、いつ出るか分からない、出るかどうか分からない、でも出たときにはすぐ測りたいという事情があって、なので、ビームラインを指定しないでまず課題申請をした上で、来年度から年間4回、5回と伺っているのですけれども、そのときのビームタイムの調整のところで非常に柔軟に対応していただけるようになってきていると思っています。
こういった背景もありまして、5年、10年前には企業としては割とコンソーシアムを作って、その中で融通しながら使うということが非常に多かったのですけれども、ここに来てこういった施設側の方の対応の変化もあって、個別の企業としてそちらのサポートを受けながら利用するということがだんだんできるようになってきているのかなと感じています。なので、コンソーシアム、良いところも悪いところもあるのですけれども、それぞれ情報交換できるというメリットもありますし、融通がききにくいとか、表に出しにくいところがあるというところもあるので、そういった選択肢が増えてきているというのは非常に良いことだと思っています。
あとは、一番議論になっている成果専有のところと、その実績をどう評価するかといったところなのですけれども、これは我々製薬会社の特殊事情としては、結果がすぐに製品に結び付かないといったところがやっぱりあります。薬になって出ていくとしても、結果、最初に種が見つかってから5年、10年以上先になるという事情もありますし、ほとんどの場合は物にならないといった事情もあります。ただ、プロジェクトとして製品にならなくても、そこから得られた経験というのは必ずノウハウとして残ってきて、それは非常に重要なことなのですね。
残ったノウハウというのを、製品になっていないから成果がなかったのかというと決してそんなことはないので、そういったノウハウの蓄積といったところをもう少し具体的に表に出せるような形で、例えば本当に例ですけれども、昔に比べて1時間のビームタイム当たりにどのぐらいのデータが取れたとか、それはビームタイムが終わった後に例えばアンケート形式で、今回は1時間で8データ取りましたとか、数字を入れるだけというアンケートだったら、多分、何の問題もなく出せるはずなのですね。
そういったことが、本当に統計処理だけに使いますという前提で、そういうシステムにしていただけると、例えば昔は1時間当たりに5データしか取れなかったのが、今、8データ取れて10データ取れるようになったというのは明確に進歩として見えてきますし、その中で、そういう無駄なデータも取ることというのが、意味があることも多いのですね。そういう無駄なデータがあった、たとえ駄目だったというデータもその次につながることになるので、そういった、その場その場のデータの進歩、データの数、質の進歩というのも成果指標として入れていくことができると、必ずしも製品に結び付かなくても良いのではないかなという感じもしています。
あとは、我々の製品では非常に難しいのですけれども、もう少し消費者の方々に近いような、消費財メーカーの方の話を聞くと、例えばお客様の声みたいなアンケートの声というのが非常に大事で、そういったお客様の声という形でポジティブなフィードバックがあると、その製品が続くという例も多くあるので、そういったアンケートでしたら、物を出さない形で幾らでもお答えできますし、こう言ったら怒られるかもしれないのですけれども、どこどこのビームラインで取れなかった結晶が、どこどこでは取れましたとか、そういったフィードバックをお返しすることはできるはずなので、そういったお客様というのも変ですけれども、利用者の声、その一個一個の声というのをもっと成果として出していっていただいても良いのかなという印象は個人的には持っています。
それからまた、こっちに書いていないところで申し訳ないのですけれども、これまで何度もお話に上がっている、今までできなかったことをできるようにするといった新規の手法というのは、本当に正直に申し上げると、会社の側からニーズがあって提案するという場合ももちろんあるのですけれども、逆にアカデミアの方からこんなテクノロジーがあるけれども、どうですかというのを提案していただいた方が動きやすいという側面も、ある面ではあるのですね。なので、そういった例えば学会とか行っても、企業の発表というのをあまりできないところもあるのですけれども、参加は結構していて、情報は集めているときにアカデミアの方からアプローチがあると動きやすいといった点もあるので、そういったお会いできるような場というか、学会ですとか、それこそ研究会ですとか、そういった機会があると、もっといろいろお話が進みやすくなるのかなという印象を持っています。何か雑多とした話になって申し訳ないのですけれども、何となく問題提起としてこの辺を考えていただけると良いかなと持っています。
最後に(資料3-2の10ページ)、今、直近で困っているようなことをいろいろ聞いてきてリストアップはしてみたのですけれども、余りにも細かいことなので、ここで申し上げるのも気が引けるのですけれども、幾つか細かいところで思っていることとしては、前々からコンシェルジュですとか、窓口とかいう形の話もされていますけれども、レベルの高い話ももちろんあるのですけれども、もっとレベルの低い事務手続的なところとして、やっぱり窓口の、事務方の窓口というのがあると非常にいろいろ話が進みやすいというところはありますので、サイエンスのハイレベルのコーディネーターという形とはまた別の事務の方がいらっしゃると良いなというのはよく思います。
あとは、会社としては法規制、コンプライアンス遵守という点が非常に厳しいので、毒物ですとか、劇物ですとか、法律に引っかかるようなサンプルを扱うときの指針というのを、これはできれば国内いろいろな施設で統一した形でいただけると、決まっているとよりよいのではないかなということは常々思っております。
漠然とした話ばかりで申し訳ございませんが、私からの話は以上とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
それで、今の御説明に関して御質問、御意見等あればよろしくお願いします。どうぞ。
【尾嶋委員】 そこ(資料3-2の9ページ)に書いてありますコンソーシアム形態/個別企業としての利用という点が非常に面白く聞かせていただいたのですけれども、先ほどの高原先生のお話でFSBLが非常にうまくいっているということで、あれは外から見ていても大変すばらしいなと思っていて、うまくコンシェルジュ機能というのが働いていると思っているのですね。だから、一つの疑問は、ああいううまくいっているのがなぜほかにも広がっていかないのかなという点は思っていまして、今のお話で個別企業としてビームタイムがフレキシブル化すればコンソーシアムを作らなくてもそれでうまくいくという例も紹介されたと思うのですけれども、やっぱり分野によってコンソーシアムを作った方が良いのか、それともビームラインの担当者が調整して、それは何か薬品とか製薬とか、分野によって違うのですかね。その辺、お考えをお聞きしたいと思うのですけれども。
【髙橋委員】 製薬の中でも昔は産業利用のコンソーシアムがあって、それで使ってきたという経緯ももちろんあるので、決してそれが機能しなかったというわけではないと思うのですね。ただ、ある程度成熟した技術になってくると、やはり多分、そこだと思います。
【尾嶋委員】 なるほど。
【髙橋委員】 もうあとは結晶を送れば測ってくれるというシステムになってくると、コンソーシアムの意義がだんだん薄れてくるという感じはしています。
【高原委員】 やはり製薬関係と高分子関係というのは企業の体質と言ったら怒られますけれども随分違いまして。
【尾嶋委員】 マル秘にするとか、そういう話ですかね。
【髙橋委員】 そうですね。機密保持は非常にうるさい。
【高原委員】 高分子関係の場合は、例えばポリエチレンとかポリプロピレンとかいったものであれば、もう大体3つの企業がお互いに顔を知っている上でやっていて、その中でやはりノウハウ的なものも含めて、いろいろな形で共有していたりしていまして、それからあと、例えばポリエステルという糸を引いているという各会社、日本に旭化成、帝人、東レ等ございますけれども、そういったところを見るとほとんど同じ研究室の出身者がそういった材料の中心にいる。
そういうところでやはり水面下での技術交流というのはかなり行われていますので、そういうのもFSBLの中ではなされていまして、それは全部ソフトマター系でそうであるかというと、そうでない企業さんもいらっしゃいますので、そういったところが多いということは、ああいった形で研究会とか、中で作って、もう泊まり込みでやったりしているというふうな状況になっていまして、あと装置の共有化というのも、だから、ほかの企業が作った装置を他の企業が使うということも実際に行われています。
【尾嶋委員】 ああ、それも可能なのですか。
【高原委員】 はい。
【雨宮主査】 どうぞ。
【小杉主査代理】 創薬だから個別でというのは、X線の結晶構造解析はそうなのですけれども、今、クライオ電顕の方はそこまで行っていなくて、やっぱりコンソーシアム的にやって、いろいろ勉強しながら受けないといけない時期ではあるのですね。だから、創薬だから個別でというのではなくて、手法とカップルした話。
【尾嶋委員】 発展段階というか。
【髙橋委員】 技術的な話ですと共有できるのですね。それが、技術の面が割と固まってくると、そこから先はやっぱり共有できない面が増えてきてしまって、昔に比べると製薬会社も大分、そういう共有できるところは共有しましょうという流れにはなってきているのですけれども、歴史的経緯としてはなるべく余り表に出したくないという面がほかの分野に比べて多いのは認めます。
【雨宮主査】 どうぞ。
【内海委員】 最後、スライドだけあって触れられなかったのですけれども、現状の課題のスライド(資料3-2の10ページ)に放射線従事者登録の問題が書かれているのですけれども、実は余り議論に今までなっていないのですが、恐らく日本の放射光施設は世界一放射線管理が厳しいのですね。
【髙橋委員】 厳しいです。
【内海委員】 学術の人間はこういう従事者登録をして云々(うんぬん)というのは当たり前のように思っているのですが、産業利用の方々をこれから爆発的に増やそうとしたとき、これに関しての皆さんのハードルというのは、どういうふうに思っておられるのでしょうか。
【髙橋委員】 非常に大変ですね。まず、管理責任者が会社に1人いなければいけないというのが前提としてあって、いらっしゃる会社は良いのですけれども、我々も放射線としてではなくて、もともとはRIの利用の枠組みの中にいろいろ言って入れてもらっているところがあるのですね。また、それに加えて各放射光施設ごとに手続をしなければいけない。それも書式も違うし、求められるレベルも違ってきて、かつそれを最終的には全部集めて年間の積算をしなければいけないというのは、やっぱり非常に大変、ハードルは高いと思っています。
【内海委員】 恐らく法律の問題等々ありますので、この委員会だけでどうにかなるものでも多分ないのですが、一つの大きな問題提起としてこの委員会の中で少し触れていただいて、別のところに働きかけていくとかいうことも必要ではないかと思います。まじめに調べたわけではないのですけれども、日本だけが突出してそこのハードルが高いというのは極めて重要な問題かなという気がいたします。
【雨宮主査】 どうぞ。
【小杉主査代理】 今の問題は、今年、放射光施設を全部テストして、加速器を使っていても放射光施設はそこまでの必要はないという法律の改正も含めて、検討しているグループがあって、そういう動きはあるので、そこの結論はまだ聞いていないのですけれども、SPring-8もそういうのがあったとはずです。
【石川先生】 ただ、そこにはやはり産業界からかなり大きな声を上げていただくことが必要ではないかという感じがして、特に実験ホールで今、バッジが要るというのは日本と、あと幾つかのデベロッピングカントリーだけでございまして……。
【小杉主査代理】 必ずしもそうではない。BESSY-IIなんかは結構厳しい。トップアップで放射のレベルが上がったということで。
【石川先生】 だから、それはやはりエヴィデンスベースで測ってちゃんとないことを確かめたらば、解除していただけるような仕組みがあると良いなとはずっと思っています。
【雨宮主査】 どうぞ。
【田中委員】 内海先生の指摘の話というのは、これまでも多分何回もこの委員会で議論されてきていると思います。少なくとも施設ごとの放射線従事者のハンドリングを日本全体として統一的に実施する、このコンピュータの発達した時代に何でデータの共有化等ができないのかと思ってしまいます。
【髙橋委員】 そのとおりです。
【田中委員】 どうなのですか、その辺の、余りにも不効率というか、何か縦割り的なというか、大榊さんの方を見て恐縮なのですけれども。
【大榊補佐】 大変重要な御指摘だと思っています。この委員会の設立趣旨自体も量子ビーム、我が国の量子ビーム全体を見て俯瞰していただいて御議論いただくという前提ですので、正に施設の放射線管理の在り方とか、そういった御議論を頂いているのは大変有り難いことだと思っております。一方、これは正に縦割りの問題なのですけれども、昔は文部科学省に原子力安全課があって、放射線管理は文科省の所管としていたわけですけれども、東日本大震災以降、原子力規制庁にそういった機能は全部移管してございまして、RI規制については、環境省というか、原子力規制庁が一括して行っているという状況でございます。
一方、原子力規制庁の方では、小杉先生の方の御指摘にもありましたように、規制改革みたいな話が随所、随所で起こっているということもございまして、引き続きその産業界なりアカデミアの方から声を上げていただくなどして、より管理しやすい方策とかがあれば、規制改革の観点でアプローチするという手法が有り得ます。また、これは少し時間がかかると思いますし、それぞれ施設によってやり方も違うと思いますので難しいのですが、この委員会で御議論いただいて、放射光施設ないしは中性子線施設全体で一括管理できるような仕組みが作れるような形で進められると良いかなと思っています。
【雨宮主査】 そういう議論は非常に重要かと思います。どうぞ。
【小杉主査代理】 今、大学共同利用機関の見直しということで、全体で共通化できることがないかというところで、放射線管理は一つの例なのですけれども、KEKが多分やらないといけないと思うのですけれども、そういう話をしたら結構現場は嫌がっています。連合体を作る大学共同利用機関は20ぐらいあるのですけれども、そこで放射線の手続などが一つのきっかけになれば良いのですけれども、何とかそういうのを突破口にしていってシステムを作っていくということは重要だと思います。放射光の施設全体でというよりは、いろいろな放射線の手続が要る施設全体で連合体というか、そういうのを何らかの形で作れれば良いですけれども。今、大学共同利用機関の見直し案で出ている連合体というのはしっかりした組織ではなくて、一般社団法人とか、そういう形での組織作りをこれから第4期の中期計画に向けて議論することになっているのですが、放射線の手続は多分、そういう議論に入ると思いますので、きっかけになれば良いですけれども。
【雨宮主査】 どうぞ。
【金子委員】 それで言うと、企業がどうしているかという現状のことを申し上げると、弊社の場合でいけば従事者教育のために、今は多分、あいちシンクロが教育をしてくれているので、そこに受けに行っています。なので、そういう施設が教育を、施設利用の教育だけではなくて従事者教育までやってもらうというやり方をしていただけると、我々、大変助かっていて、教育者になる方を各社で持たなくても良いというのは、それはすごく施設サイドにそういう方がいらっしゃるというのは、いらっしゃってやってくださるというのが有り難いなと思っています。
もう一つ、バッジの件に関して言うと、各施設に行ったときにバッジを渡されて、それも付けるのですけれども、うちは1人がその1か月間にどれだけ受けたかを全部見るために会社からも持っていって、バックグラウンドをとるためのものも持っていってというので、なので、バッジを2個持っていって、1つはコントロールで宿舎の方に置いておいて、1つは身につけて、あともう1つ施設からもらったやつも身につけてというすごい管理をしています。それぐらい、そういうことが大変ということを分かっていただきたくて発言させていただきました。というようなことをやっぱりもう少し簡易にしていただけると有り難いというのは、髙橋委員の多分、あそこに書かれたことだと思いますけれども、企業側としてはやっぱり労働者のその管理というところで非常に厳しくやっておりますので、学術の方たちがどれぐらいかは分からないですけれども、企業の方がより厳しいのではないかなと思って、現状はこんな感じでございます。
【高原委員】 今、現状は学術も両方持っていかなければいけませんので。
【金子委員】 やっぱりそうなのですね。
【尾嶋委員】 一緒ですよ。毎月チェックして。
【金子委員】 やっぱり、そうですよね。
【尾嶋委員】 バックグラウンドはとらないですけどね。
【金子委員】 それも一応、とっておいてというので。
【尾嶋委員】 それはすごいな。
【雨宮主査】 放射線以外のことでも何かあれば。岸本さん。
【岸本委員】 話を戻してしまって恐縮なのですけれども、FSBLで補足させていただくと、高原先生からおっしゃったことに加え、一つはやっぱり学術と産業が一緒になってやっているという点があります。産業界は物作りができたら良いというところがあるのですけれども、そういう使い方に加えて大学からもっとここを突っ込めば、その先にはもっと良いことがあるのではないかと、企業側で分かっていないようなサイエンス的な視点で厳しく指導していただいているところがあり、そうすると5年先どうしようかとか、数年先どうしようかと広がってきます。また、それに対して新しい手法をもっと使ってみたい、あるいは散乱だけではなくてスペクトロスコピーもやらなきゃいけないよと言っていただけたり、そういった広がりにつながっているのですね。FSBLの良いところというのは、やはり企業だけで集まったのではなくて、大学と一緒になってやっているというところだと思いますね。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。
【石川先生】 そういう意味では、髙橋さんのお話にもあったようにアカデミアと企業の出会いの場をもっと充実していくというのは、非常に重要で、前に岸本さんからSPRUCと産業利用、それを別々にやるのはけしからんというお話があったと思うのですが、そこは我々施設側としての改善するところかなと思いました。
【雨宮主査】 はい。
【髙橋委員】 研究会とか非常に充実していただいているので、最近すごくよくなっていると思います。
【雨宮主査】 ほかによろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。理研、JASRIからの発表をこれから頂いて、改めて議論していきたいと思います。議事を進めたいと思います。
それでは、理化学研究所とJASRIからSPring-8、SACLAの今後の重点的な課題と検討されている推進方策等について、これから説明いただきます。先ほど事務局から説明がありましたけれども、今回、資料2の赤枠で囲まれた部分について御説明、御議論を頂くという形になっています。それでは、まず、理研の矢橋グループディレクターにお願いします。15分ということでお願いします。
【矢橋先生】 では、早速、始めます。今も御説明がありましたが、お手元の論点整理ペーパーの骨子をこれ(資料4-1の2ページ)は書いてありますが、この赤のところを今回説明いたします。このRと書いてあるのが理研、Jと書いているのがJASRIの方から発表がある項目です。
それで、細かいところは読み上げませんが、1番目としては財源の多様化の検討。それから、2番目としては(資料4-1の3ページ)ビームラインの固定化防止、新陳代謝、それから、共用、専用等の枠組みを改める等々。それから、3つ目としては(資料4-1の4ページ)特に利用者本位というところ、どういうところにニーズがあるのか、それは顕在化していない潜在的なニーズも含めてどうすくい上げていくかということでございます。この3項目を再掲するとこのように3つありますが(資料4-1の5ページ)、今回、これらをソフトウエア、仕組みということでくくりまして、このようなタイトルを付けております。ちなみに次回ですが、ハードウェア、例えば装置とか性能とか、そういったところを中心に考えておりまして、今回ソフト、次回ハードということでくくっています。この両者はもちろん相関はあるわけですが、ある程度インディペンデントに議論しても良いのかなということで、こういう区分をしております。
それで、この利用者本位ということで、これは非常に重要ですが、ある意味でディフィニションが時間の関数で絶えず変化していくということで、将来を見越した議論も必要になるということで、1枚だけ概念的な絵でございますが(資料4-1の6ページ)、過去は非常にクリアなコアがあって共用、専用ということで始まったわけですが、現在かなり広く広がって境界がぼけてきているというのは、第1回、石川の方から説明がありましたが、この後更に未来、放射光を知らない層も含めてどんどん浸透が進む。先ほどからの出会いの場とか、あとるつぼとかいう表現がございましたが、こういうところを目指していくべきであろうということでいろいろな議論をお願いしたいと思います。
さて、本題に入りますが(資料4-1の7ページ)、まず現状のサマリーと課題を簡単にまとめたいと思います。まず、このスライド(資料4-1の8ページ)はビームライン拡充の年次推移を示しておりまして、供用開始当初は急激にブワッと立ち上がってきたわけですが、特にこの共用ビームライン、ここは2004年が最後で止まっている。一方で、プロジェクトとかコンソの利用とか、いろいろな形で専用ビームラインは徐々に増えておりまして、ただ、これも現在、空きポート残り5本になってきていますので、かなり一杯になってきているということがあります。こういう状況の中で、ビームラインの転換、これは海外の施設等を見ると非常に目まぐるしく変わっていたりするわけですが、これはなかなか進んでいなくて、少数にとどまっている。一方で、例えば理研ビームラインを間借りしていただいて、例えばImPACT等の国プロ等もありますが、これもまだそんなにたくさんは広まっていないということがいえると思います。
次にほかの大型施設と比較したときのビームラインの種別を見てみますと(資料4-1の9ページ)、第3世代放射光源、当然、挿入光源、アンジュレータがメーンとなりますが、アンジュレータビームラインを比較すると、ドイツのPETRA-III、ヨーロッパのESRF、アメリカのAPSに対して、SPring-8を比べますと、見ていただくと分かるのですが、この共用ビームラインのところがほかと比べて数が少ない。資産のトータルは多いのですけれども、共用の数が少ない。理研ビームラインと合わせましても例えばESRFとかAPSに比べたら数が少なくなっているということが言えます。一方、専用ビームラインはたくさんある。もう一つ、汎用の偏向電磁石ビームラインの方に共用がたくさんあるということがあって、プロファイルがかなりほかと異なっているということが分かります。
更に次ですが、お手元の参考資料1-1(資料4-1の31ページ)を見ていただきたいと思います。ビームラインごと、上から共用、理研、専用というくくりにしていますが、装置の一覧を出しています。それで、同じ装置が繰り返し登場する場合があるので、3か所以上登場するところには色付けがしてある。これを見ていただくと、同じ色がたくさんあるなということが、まずお分かりいただけると思います。
ここをどう整理していくかというのは、次回のハードウェア、ビームラインエンドステーションの整理・統合というところで議論をしたいと思いますが、今回見ていただきたいのは、1つのビームラインに幾つ装置があるかということです。3つ以上の装置に赤線を引くと、該当するビームラインは18本あります。内訳、なぜこうなっているのかというのを簡単に分析してみますと、理由は結構明快になっています。1つ目のカテゴリーとしては、特殊な光源である。具体的には軟X線、ここの備考欄ではオレンジで示してありますが、軟X線が4本あって、それから、白色が1本あります。これは、ほかにリソースがないということでSPring-8で無理くり作っていたというところがありましたが、ただ、これは3GeV光源ができたら自然に軟X線の混雑は解消されていく。あと、一方でホワイト、白色のビームラインというのも、実はコンベンショナルですが需要があるので、ここは今後新設していく方向で検討を進めているところです。これは次回も少しお話をしたいと思います。
それから、2番目、共用の枠で2つ、産業利用のところが、3本のうち2本のビームラインで装置が多くなっていますが、これも限られたビームラインにいろいろな産業向け利用をやるということでこうなっています。ここもいろいろ御議論はあるかと思いますが、次に進みますと、専用ビームラインのところが12本ある。更に見ると、プロジェクト利用、これは燃料電池であったり、蓄電池だったりしますが、2本あります。これは、ターゲットが決まっていて、いろいろな手法で見たいということがあるので、そうかなと。一方で、これが皆さんのイメージにある一般的な専用ビームラインだと思いますが、外部機関が設置して汎用的に使う。つまり、使いたいときに使いたいように使うというところが10本あるということでございます。
元々こういうことで専用ビームラインというのは作っているわけなので、ある意味でこの結果は当然というか、狙いどおりこうなっているということが言えると思いますが、一方で、全体のマクロな観点から見ると、やはり多数の装置がワッと散らばっているというのは、リソースが分散しているということになりますので、例えば資源を集中して先端を走るということは構造的に難しくなっているということが言える。最近のSPring-8シンポジウム等でも1.5流の実験装置がたくさんあると言われるようになってきていますが、正に先ほどのデータが示すところです。
あともう一つ言えるのが、多くの専用ビームラインがある意味で閉じた形で、ミクロコスモスと書きましたが、そこでお仕事をされています。比較のために参考資料1-2(資料4-1の32ページ)にPETRA IIIの内容をまとめていますが、これを見ていただくと非常にきれいに整理されているのが分かります。更にその次のページの参考資料2(資料4-1の33ページ)を見ていただくと、専用ビームラインの一覧と契約期間を示していますが、途中で転換する場合が非常に少なくて、今まで一例、蛋白(たんぱく)コンソBL32B2というのが理研ビームラインに転換されましたが、それ以外は年限が来るとどんどん契約の更新が進んでいるという状況になっています。一方で空きポートも少なくなってきていますので、やはりSPring-8の有限な光源資産をいかに有効に活用していくか。さらにはそれをどうやって実現するか、どうやって促進するかという仕組み・デザインについて、皆様と一緒に真剣に考えていく必要があると思います。
一方で、やはり使いたいときに使うというニーズは、当然ありますので、そのニーズを満たしつつ、かつ全体の最適化をどう図るかという少し難しい課題について、御議論が必要になるかと思います。そのためのアイテム出しをこれから、御紹介したいと思います。最初にお断りしておきますが、これは、例えば共用法の縛りを余り意識していなくて、したがって、共用法のプロフェッショナルの方々からはいろいろな御意見があるかと思いますが、まずはやはりあるべき姿について検討をしたいということです。この議論は、今後の次世代光源でも同じようなことになっていくと思います。ちなみに、共用法の中でどう改善していくかという議論は、次のJASRIの田中理事から御説明があると思います。
それで、早速行きますと(資料4-1の13ページ)、まず、ストックからフローへと書きました。従来は、外部で大口の利用をしようと思うと、専用ビームラインを建設するというパスしかなかったわけですが、よくよく考えてみると専用ビームラインを建設して資産を保有するストックとして持つことが目的ではなくて、やはり使いたいときに使うというところが目的になるのだと思います。したがって、例えばそのストックでなくて利用料、フローということですね。これで資金を投入していただいて、まとまったビームタイムを確保する仕組み、現状でも一部あるのですが、これをよりオーソライズした形でやったらどうかということを、御議論いただければと思います。フローにした場合のメリットは、幾つかここにあげました。
模式図(資料4-1の14ページ)ですが、これまで例えばプロジェクトを取ってきて何か立ち上げますというと、基盤のインフラ投資、すなわち、ビームラインを作ります、基幹部をやります、というところから始めないといけない。時間もお金もかかるが、利用率が最初は上がらない。ようやく本格的になってきた頃に、年限が切れてプロジェクトが終了してしまった、ということをよく耳にします。
一方でフローというのは、この基盤のところは今までの既存のものをなるべく使い回しながら、特殊なものだけ整備していただいて、あとは利用料でやっていく。さらに、プロジェクトが終わったら次に渡すということができればよいということですが、いろいろな検討事項がありまして(資料4-1の15ページ)、例えばどうやってその大口ビームタイムを確保するのかとか、一方で、今の共用ユーザーをどんどん圧迫していくということはなかなかアグリーされないと思いますので、やはりパイ全体のネットの利用時間を増やす必要があります。運転時間とかエンドステーションの整理とともに、理研ビームライン・専用ビームラインといった、共用の外側にあるところを活用していくことが必要になるのかなと思います。
これに関連して課金制度ですが(資料4-1の16ページ)、現状、成果公開は無料、成果専有は有料、これは第1回からも説明がございますが、こういう制度になっておりまして、成果の専有、つまり出口の利益がある場合には課金するということになっています。一方で、入り口の利益、つまり使いたいときに使うというところについても同じように考えることができるのかどうかということを考えたいと思います。現状でも、実は共用ビームラインには成果公開の優先利用制度というのがあって、ただ、これは研究費を取ってきて、そこで審査されているから二重審査しませんということでやっているわけですが、こういう縛りが必要かどうか。
さらには、先ほどフロー戦略は共用の外側が重要ということを申し上げましたが、理研・専用ビームラインも含めてこの概念を展開した場合について考えてみます。模式図(資料4-1の20ページ)としては簡単で、入り口、出口に対応して、それぞれ課題選定を経る・経ない場合、成果を公開する・公開しない場合があります。課題選定を経て、成果公開の場合、これはいわゆる成果公開利用でこの場合は無料ですが、例えば課題選定をスキップして成果を公開する場合は入り口料金だけを頂きます。課題選定をスキップして成果専有、これはいわゆる今の成果専有、これはAとBの両方頂きますとか。これは、共用ビームラインだと当たり前なのですが、理研専用に広げていくとどうなるかということは、時間の関係で後の議論に回したいと思いますが、実は場合分けをすると意外に整理ができて、案外よいのかもしれないということだけここではコメントしておきます。
それで、次は、専用ビームラインの更新・活性化ということで(資料4-1の22ページ)、施設の新陳代謝の維持のためには専用ビームラインの更新・活性化が必要となります。専用施設は、設置期間10年以内、再契約10年以内で長くとも20年で終了となるはずですが、先ほどの参考資料2(資料4-1の33ページ)のように、再々契約があってぐるぐる無限ループを回っている例がたくさんあるということで、やはりこれはレビューがなかなか難しいのかなということで、仕組みをおさらいしてみます(資料4-1の23ページ)。登録機関の下に置かれたSPring-8選定委員会があって、その下に専用施設審査委員会がある。歴史的には、登録機関の前のJASRIが指定機構だった時代の流れを引いてこうなっていると理解しています。現在は、利用者選定が登録機関の主要業務の一つになっていて、専用施設審査も利用者選定の一環としてもやっているということですが、やはりいわゆるPRC・課題選定と、専用施設の選定というのは、なかなか次元が違うので難しいのかなと思います。同様の御指摘は、前回、岸本委員からもございましたが、ここについても御議論があるかと思います。
それから、専用ビームラインの活性化方策、これも詳しくは申し上げませんが、現行の専用ビームラインにおいて施設者管理の機器システムの導入を促進していったらどうか(資料4-1の24ページ)。特に最新鋭の機器もそれぞれのビームラインで持つのが難しいようなものについて、全体でまとめてやったらどうかということがあります。
最後ですが、課題選定の仕組み(資料4-1の25ページ)。いろいろなユーザーの皆さんのニーズから、登録機関の方で多様な課題種が運用されているということで、詳細は飛ばしますが、かなり複雑なことになっていて、課題種別、ビームライン別に数値上限が定められているわけです。ただ、先ほど申し上げたように、専用ビームライン、理研ビームライン、共用ビームラインの間で乗り入れが進んでいくと、数値できっちりと縛るのはなかなか厳しいのではないかということもありまして、実態をしっかり見る仕組みが整えられないかということも、これは登録機関との御相談になると思いますが、検討していきたいと思います。最後ですが、全体の仕組み作りです。全体の仕組み作りをどういう体制で進めていくのか、一体的に議論する場が必要だと思います(資料4-1の28ページ)。
駆け足でございましたが、以上でございます。
【雨宮主査】 どうもありがとうございます。盛りだくさんで少し時間が足りない感もありますが、質疑応答のところで補足していきたいと思います。
それでは、引き続いてJASRIの田中常務理事から説明していただき、その後で議論の場を設けたいと思います。よろしくお願いします。
【田中先生】 それでは、紙で、お手元の資料4-2をごらんいただきたいと思います。タイトルは「今後の重点的な課題及び推進方策(JASRI発表資料)」となっているものです。1枚めくっていただきまして(資料4-2の2ページ)、本日の発表内容は、共用法に基づく専用ビームラインの選定、そして評価、産業利用の推進に関して発表させていただきます。
1枚めくっていただきまして(資料4-2の3ページ)、共用法に基づく専用ビームラインの選定と評価ですが、共用法には施行規則というのがございまして、そこでは専用施設の募集と選定に関しては、登録機関の法定業務であると規定されております。専用ビームラインの選定の実際ですが、右側の図をごらんいただきたいと思います。先ほども説明がございましたが、選定委員会の下に専用施設の審査委員会がございまして、ここで審議をしていただきます。この審議を基に更に選定委員会で審議していただいて、その審議結果を踏まえてJASRIが設置可否を決定しております。採択となりましたら、専用ビームライン設置契約を結ぶことになるわけですが、専用ビームラインの設置者と理研、そしてJASRIの3者で契約を結んでいます。この契約書の中には、それぞれの役割が細かく書かれています。
専用ビームラインの評価の見直しに関して少し御説明をいたします。契約期間・評価期間の短縮が行われております。これは審査委員会から専用ビームラインの評価をしていただいております。この中で改善の要請が出されております。これまでは契約期間としては10年で、その半分の5年のところで中間評価していましたが、この改善の要請の結果、どのように改善されたかというのを早期に見させていただきたいということで、この契約期間を6年にし、その真ん中の3年のところで審査委員会のところで見させていただくとなっています。専用施設の設置者への改善の要請と、その結果に関して2つ事例を御紹介させていただきます。
まず、1つはNIMSの中間評価の例ですが、評価は2013年と16年の2回ありました。そこで実施体制等成果の創出について改善の要請がなされています。その結果ですが、以前の2009年からの3年間では、論文の数が157報でしたが、中間評価の2013年からの3年間では225と増えています。いろいろと頑張っていただいていると思います。次の事例ですが、サンビームの例を御紹介します。次期計画の具体的な目標、それから、行動計画を提示していただきましたが、委員会の方から再提示してくださいということで要請がありました。これが2017年です。その後ですが、成果専有利用に関しまして、これは直近ですけれども、2017年Aで1件だったものが、半期ごとに6件、そして9件と増えてきています。これに従って利用料収入も増えてきています。専用ビームライン、全部で19本ございますが、それに対して順次対応していくところでございます。
1ページめくっていただきまして(資料4-2の4ページ)、産業利用の促進に関して御説明いたします。左側がこれまでの取組で、右側が今後の取組になります。まず、これまでに関してですが、初期は主にビギナーの支援を重視しておりました。ユーザーからの要望に基づいてコーディネーターを配置して、産業利用推進室として、組織を立ち上げております。創薬分野のユーザーの支援強化としましては、タンパク質結晶解析推進室、2014年に設置いたしました。直近5年間の産業利用の実績についてお示しいたします。これは共用ビームラインと専用ビームライン合わせたものですが、棒グラフが成果専有の課題数です。大体170から180課題になっております。オレンジのグラフが利用料収入で、大体1.7億から1.8億で堅調に推移しております。
右側をごらんいただいて、一番下、これまでの取組のところはビギナーと汎用的ということでしたが、今後、制度の変更をしてまいります。産業利用準備課題としまして、これはSPring-8を使ったことのない方にお試し的に使っていただければという課題です。既存課題の運用変更に関しましては、タンパク質の解析に関しまして、成果専有利用も非専有と同じようにフレキシブルに利用ができるようになります。その上の方、オレンジのところですが、新規ユーザーニーズの掘り起こしとしましては、先進技術活用による産業応用課題としまして、これはこれまでに使われたことのない実験手法に是非チャレンジしていただきたいということで「エキスパート」、「先進的」というキーワードになります。様々なユーザーの要望に応える体制作り、利用活動を通じていろいろと多様なニーズに対応するよう取り組んでおります。これは2019Aからスタートします。
最後のスライド(資料4-2の5ページ)になりますが、産業利用の促進のところで、これまでの支援の強化の取組ですが、4段階あります。時間の関係で読み上げませんが、普及の啓発の段階、いろいろとさせていただいております。利用の検討にしましても相談やいろいろな御紹介、利用の準備にしましても申請の手続やもろもろの準備、利用時・利用後に関しましても実験の補助やデータの解析の支援等、各フェーズで適宜コーディネーター、あるいはビームラインサイエンティストが支援しております。支援の質的向上を図ることはもとより、コーディネーター機能にも注力しております。今後の支援の強化の方針ですが、3点あります。コーディネート機能の強化、そして産学連携の推進の強化、結果としての利用料収入の増加へとつなげていきたいと思っております。
以上です。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
それでは、最初の高原委員、髙橋委員の御指摘や御提言に加えて、今、理研、JASRIからの発表を含めて、今後の課題と推進方策について総合的に議論を深めていきたいと思います。まず、理研、JASRIのプレゼンに対する御質問でも良いですし、全体を絡めての議論でも良いですので、残りの時間、ディスカッションしていきたいと思います。よろしくお願いします。
【岸本委員】 よろしいですか。
【雨宮主査】 はい。どうぞ。
【岸本委員】 矢橋さんから御説明いただいた中で、課金制度のところで入り口、出口のところ、これは非常に面白いですし、産業側の立場に立った考え方ではないかなと私は聞いていて思いまして、一つは産業界というのはどこでもそうだと思うのですけれども、3年や5年の中期計画というものがあって、その上での年度計画を立てているわけです。これまでだったら半期に一度、産業利用では年4回、6回となっていますけれども、課題が採択されるのか、されないのかとかによって、年度計画はガラッと変わってしまうわけですね。そういうときに対して、こういう使いたいときに使えるというのは、企業にとっては戦略的に使える。そういうところは非常にうれしいですし、予算化もしやすいわけですね。計画してビームタイムを使えるわけですから。ですので、こういう考え方は非常に良いなと思います。
それと、フローの考え方ですね。これはやはり私たちもFSBLとかをやっていて思うのですけれども、最初作ったときは良いのですけれども、その後更に高度化していくというところにはかなり難易度を感じたりするところがあります。新しい検出器を入れるためにどうするのかとか、何を選択したら良いのかとか、施設に一旦お預けするという形なのだとは思うのですけれども、そうしていく中でお互いにスパイラルアップしていって、やっていくような仕組みというのが今後本当に重要なのではないかなと思います。
【雨宮主査】 どうぞ。
【矢橋先生】 ありがとうございます。今、最後に頂いたコメントで、少し飛ばしてしまったところがあるので補足します。ビームラインを全て施設に移すということでフローを御説明しましたが、例えば、現在動いている専用ビームラインに対しても、検出器やデータといった、進みが非常に速いシステムについて、施設側から部分的に御提供ができる。これの行き着いた先がフローであるという、そういう位置づけです。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【近藤委員】 今のストックの考え方、すごくすばらしい、よい方法かなと思ったのですけれども、そうして入ってきた利用料、こういったものの使い方としてハードの維持、保守、それから、高度化というところを挙げていらっしゃったところですけれども、そうして入ってきた利用料の例えば一部を、何度もいろいろなところで申し上げているのですけれども、人を育てるところに割くというような、そういうような考え方というのもあって良いのかなと。先ほど、高原先生、お帰りになってしまいましたけれども、御紹介がありました大学院連合でしょうか、ああいうシステムってすごくよいシステムだと思うのですけれども、それが今回動かなかったということでしたけれども、そういうものがどうして動かなかったのかよく分からないですけれども、でも、そういうものを動かす上で、ある程度資金が必要かと思うので、そういったものに充ててみる。
先月、アクセラレータ、PALの方に、ユーザーミーティングに呼ばれていったのですけれども、ビームラインには若い学生がいっぱいいるのですね。それから、ビームラインサイエンティストも戦略的にほかの施設、ほかの国の施設に派遣されて、何年間か修行を積んで帰ってくるというようなことをした人が、そのところにいる。多分、そういうことをするための何らかのシステムがあるのだと思うのですけれども、そういったことを進める上でのこの枠組みとか、それを実際に運営するためのお金とか、そういったものを整備していく上で、こういうストックで入ってくる利用料の一部を……。
【矢橋先生】 フローですね。
【近藤委員】 ごめんなさい。フローですね。フローで入ってくる、こういう利用料の一部を例えば10%そこに割くとか、そういうような考え方があっても良いのかなとお聞きしていて思いました。
【矢橋先生】 はい。ありがとうございます。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。
【石川先生】 よろしいですか。
【雨宮主査】 どうぞ。
【石川先生】 近藤先生の御指摘は、実現可能ですが、このお金をこれに使うということを決めてしまうと、かなり固定化してしまうところがあって、むしろ、より大きな枠で、これで例えばハードのところを整備する、こちらであいた分で何かをやるとか、そのあたりの自由度は結構残しておいた方が良いのかなと感じました。
【雨宮主査】 どうぞ。
【尾嶋委員】 非常に分かりやすい説明で、専用ビームラインの問題点というのは非常によく分かって、これ、余り言い過ぎると自分の首を絞めてしまう。東大ビームラインの首を絞めてしまうことになると思うのですけれども、今の話は、これ、非常に参考になったのは、この次の次世代放射光リングで、では、どういうビームラインの形態をとるのが良いのか。我々から見ているとSPring-8が始まったときには、日本では第3世代、ここしかないと。だから、集中投資しましょうと。あれだけお金を――余りあれかもしれませんが、投資しているにもかかわらず、やはり専用ビームラインを作らざるを得なかったという状況があると思うのですね。SPring-8の放射光でないとできないような独自な研究をやるとか、それから、国プロのお金を取ってくるとか、あと産業利用で独占というか、そういう専有したいという実験とか、そういう課題をある意味ではSPring-8にとってみては非常に、ある時期には有り難い。
だって、お金がないからビームラインを作れない。それが何年か後にこういう状況になったということは、次世代放射光もやっぱりお金、予算の点で、内海先生がおられますけれども、かなり大変だと思うのですね。安易にそこをやってはいけないという何か教訓なのか、その辺、フローとストックの考え方、非常によく分かるのですけれども、実際ビームラインを作っている方は、やっぱり更新、更新したいわけですよね。そこをどう判断基準を設けていくのか。次世代放射光リングで専用ビームラインを作ったら、よっぽどの覚悟がないと維持できませんよみたいな、そういう縛りを設けてやっていくのか、その辺。
【矢橋先生】 おっしゃるとおり、歴史的なことから言うとやはり専用ビームラインもあって、共用、理研もあって残り5本、57本まで来たということがありますので、そこは非常に重要だったと思います。一方で、しっかりとしたレビューでの見直しがあればもう少し状況は変わっていたと思いますので、今後はレビューをきちんとする。あと少し飛ばしてしまいましたが、専用ビームラインの契約が終わった後の道筋です。今、明確になっているのは、原則として専用施設設置者がビームラインを撤去しなさいという、ハードランディングの話しかないのですが、現実的なオプションは多分幾つかあるはずです。例えば施設と専用施設設置者がアグリーをしたら、ビームライン資産を施設に移管することで、さっきのフローの根っこを作るとか。あと、その上で今まで専用ビームラインとして使っていただいた皆さんはアクティビティを維持するとしたら、例えば利用料を払って利用することも可能とするかどうかとか。ビームラインを作った既得権がどこまで続くか、いろいろな議論はあると思いますが、こういういろいろなランディングの仕方があると思いますので、そことセットで考えていくと、結局、皆さん使いたいわけですね。
【尾嶋委員】 別に持ちたいと思っているわけではないのです。その研究ができないから、我々、作っているだけで。
【矢橋先生】 そうですね。
【石川先生】 ただ、何もないところからフローというのはあり得ないわけで、だから、そのある程度のところまではこのストックでやっていって、どこかでフローに転換する仕組みで。
【尾嶋委員】 ええ。しやすい仕組みを作っていただくというのが大事だと思うのですよ。
【石川先生】 多分、そうだと思います。ですから、いつまでも既得権益が続くというのではなくて、どこかでそれが、そのストックで作ったものがフローに変わっていくような仕組みを最初からインプリメントしておくというのが、多分大切。
【尾嶋委員】 非常に良い教訓ですよね。
【雨宮主査】 宮内委員。
【宮内委員】 財政の方の目的との関係でいくと、こういう政府の作っている施設については、ミッションが多分2通り混ざっているのだと思うのですね。それは新たな研究をベーシックな、ないしは誰も手掛けないような研究をやっていくための準備をするというミッションと、それからもう一つは、共用していこうというのであれば稼働率を上げろ、これは企業的な言い方をすれば、稼働率を上げることが良いことだということになるのだと思うのですね。今の御議論は、まさしく稼働率を上げていくというところにシフトしていっている分野と、それから、元々のミッションの分野と、それをどう残していくのかという仕組みの問題として理解していくと分かりやすい話になるのではないかと思うのですね。
一つの考え方としては、最初に投下されたものについて、これは全部国の施設費なり何なりで手当てされているので、ここ専用で使えるからといって、そのものに対する専有権を持っているわけでも何でもないわけですね。投下した人たちも含めてですね。ランニングの部分だけを見ているわけですから、そこに付加されてきたいろいろな機器というものが、耐用年数が到来したら、それを外すか外さないかはともかくとして入れ替えていくというのは当たり前の話の世界に入るので、それが10年なのか、20年なのかという問題は多分あるのだろうと思いますが、入れ替えていくという考え方は比較的スムーズに御理解いただけるのではないか。ユーザーとしての専用ビームラインを持っておられる方にとっては。
そういう意味で、それがどういうふうに変わっていくのかというのは、今までの御議論を聞いていると、分かっていてこうなったわけではなくて、やりながらこういう状態になってきて、つまり、最初の頃はみんなが共用というか、みんながそういうミッションに対する使われ方をしていて、そのうちうまい技術なり何なりとフィットしていった部分について、どんどん効率性を上げていくという世界に変わってきているということになるので、それは多分、先ほど成果として何をどう見るのかという話で髙橋委員が言っておられたアウトプットとしてどれだけの時間を使っているのかとか、どれだけの課題をクリアしたのかというのを出していくということは、私は絶対に必要だと思っているわけです。
それもある種、研究開発法人で言えば中期計画の中で目標なり何なりというのを定めるわけですから、そこの中にでも明記されるようなデジタルな情報というのがあってしかるべきだとは思っております。それの中で領域がどういうふうにシフトしてきているのかということが分かるようなデータの積み重ねをしていくと、多分、その中でベーシックな分野がまだこれだけ変わりながら存在し続けているというのが見えてくるだろうと思いますし、どんどん今まではベーシックだったけれども、これからは稼働率を上げていく世界で、皆さんが使いたいように使っていくという世界になるのだというのをやるところにおいては、まさしく稼働率そのものを上げるための仕組みというのを考えていく必要があるのだろう。そういうふうに整理をされると、今までの議論というのがスッと整理、一通りの方向性を持って整理できるのではないかという気がいたしました。
【雨宮主査】 どうもありがとうございます。
どうぞ。
【小杉主査代理】 専用ビームラインに限らず、普通のビームラインでも今後ユーザーの需要が増えたときに同じビームラインを作るのか、作らないのかという判断があると思うのですね。だから、決して専用だけではなくて、汎用でも同じ。ユーザーが増えて満杯になると同じビームラインを作って、ユーザーをこなしていく、またそれが増えたら更に1本作るとか、そういうのが良いのか、競争率が倍になっても良いビームラインをしっかり作っていくかというところが、施設側でも結構判断になって、私の経験ではやっぱり10年ぐらいでかなり変わってくるので、同じビームラインを作るというのはできるだけ避けて、違うビームラインを作るチャンスがあれば違うビームラインを作るというところを入れていかないと、どんどんユーザーの目線ばっかりでやると多分、次の手は打てないので、その辺のバランスは非常に難しい。でも、専用にしてしまうと、せっかくの入替えのタイミングが非常に遅れてしまうという、まだ施設側だともう少し臨機応変にやれるところがあるのですけれども、その施設全体としてどうするかというところでは、専用も何も区別はなくて、全体としてユーザーと装置をどういうバランスでやっていくかという全体で見ないと多分いけないという感じがします。
【雨宮主査】 確かに専用に限らず、どういうように時間の関数として最適化して変わるかということだと思います。
【矢橋先生】 そこは少しだけ省いてしまいまして、やはり数値で縛るのも良いのですけれども、実態がどうなっているかをちゃんとモニターする仕掛け、これは少し工夫すればできると思いますので、少なくとも共用ビームラインはやりやすいわけですね。専用ビームライン等、目の届きにくいところをどうするかというのがありますが、それをちゃんとやって、特に先ほど宮内先生が言われたような稼働率を上げていくような、もう決まったようなのだとやはり混雑率が上がってきたら、もうデュプリケートで良いのでどんどん作っていくという考え方もあると思います。そこはやはり2つに仕分をして、いわゆるワークホースでどんどんスループットを上げる系統、それは数で勝負。それと新しいところをやっていく系統、そういう考え方の整理もあるのかなと思います。
【雨宮主査】 どうぞ。
【小杉主査代理】 多分、新しいのを作る、同じようなのを作る場合は、既存の2本でこなしていたのを1本で済むようなスループットを上げるというふうにすれば、余裕を持って次の手は打てると思うので、そこは考えてやっていかないといけない。
【雨宮主査】 共用であれ専用であれ、財源のリソースを外から持ってくる場合、財源を出す側との合意形成が非常に重要ですね。共用の場合には基本的には行政から来るお金なので100%パブリックですけれども、専用の場合には、パートナー等の行政以外の組織から財源を確保する必要があるわけですが、そのときの条件を、ストックからフローへという流れと、どのようにうまくすり合わせるかが重要になると思います。
【矢橋先生】 必ずしもお金を入れるという目的が、多分、ここに限らず日本の一般的な競争的資金はそうだと思うのですけれども、ストックを充実するということに行っていると思うのですね。例えばレーザーなどは大学に輸入物がたくさんあったりすると思うのですけれども、やはりそれではなくてストックの資本は施設、基盤の側がやって、使うところをやっていただく。当然、何を整備していくかというのは御提案いただき、緊密にディスカッションしながら、次、これをやりましょうというのをやっていくという姿が良いというか、それしかないのかなという気がしております。リソースが非常に限られていますので。
【雨宮主査】 そうですね。
どうぞ。
【髙橋委員】 今のところで正に先ほど御指摘のあった入り口のところの料金という話とつながってくると思うのですけれども、その専用ビームラインの改廃という話で言うと、多分、唯一なくなっているのが、その蛋白コンソの話で、多分、それを念頭にされているところもあると思うのですけれども、あれがうまくいったのは、一応、状況としては、元々設置されたときには、その蛋白コンソのビームラインと理研でも似たようなことをやるビームラインはほかにもあったという経緯があって、ただ、蛋白コンソとして持ちたかったのはやっぱりいつでも使えるようにしたいからというのが前提にあったわけですよね。
それが10年たって技術として少し陳腐化してきたのに加えて、それと並行して理研の方でもっとよくなっているところがあったので、では、この管理というか、それ以上維持するのは理研の方にお願いして、私たちとしては、その入り口料金を払うから、いつでも使えるようにしてほしいというような感じになっていって、そういう声もあって、それこそ蛋白の課題申請の仕組みまで変えていただいて、その課題申請の仕組みが変わったことで、より使いやすくなって、そこに本当はもう少し入り口の料金があれば、そういう形を回すという方向になることだと思うのですよね。正にそういうことですよね。
あとは、矢橋先生がおっしゃったようなパイを増やすというのは、時間は増えないので、時間当たりに取れるものを増やしていくという方向の増やし方をしていかなければいけないわけで、そういうときにやっぱり、2本でできていたことを1本でできるようにするスループットですとか、そういった方向のアップグレードというのは、その装置を作っている側の理研、JASRIの皆様の方が絶対詳しい、専用の者よりも詳しいわけですから、そちらにお任せした上で使っていく側としてはそれを、その分のお金は払いますからという形で使わせていただく方が、よりよくなるのではないかという御提案だと思うのですけれども、それがほかの分野においてどういうふうにワークするのかということは少しよく分からなくて、済みません。
【田中委員】 良いですか。
【雨宮主査】 はい。どうぞ。
【田中委員】 髙橋先生が普通はそう考えるというようなロジックを説明されました。また、宮内先生からすると、それは当たり前だという話があったのだけれども、意外と当たり前ではなくて、逆に専用ビームラインを作った人たちにしてみれば、自分たちのお金で作ったのだという意識がかなり強いのです、これが。償却しているから、もう返してください、そういうことを「ハイ、分かりました」と答えてくれる、そういうメンタリティとはほど遠いという理解です。だから、そんなに簡単ではないのですね。陳腐化したものを最新のシステムに更新する、我々はその方が絶対良いだろうなと思って提案しても、それは彼らにとっては受け入れにくい提案、専用ビームラインを作った人たちには、そのように受け取られるという印象があるというのが1つ。
2つ目は、全然切り口が違いますけれども、先ほど来評価をしてスクラップ・アンド・ビルドをするのだ、専用ビームラインをよくしていくのだとか、トータルとしてビームライン群を機能させると言われるのだけれども、ずっと長年疑問に感じていることとして、日本で本当にレビューというのがまともに機能するのかというのが一つあります。格好良いことを言うのですよね。それで、立て付けとか、見かけはそれで何とか動きそうなことを言うのだけれども、余りちゃんとレビューが機能したのを見たことがないですね。何がいけないのでしょうか。
日本以外は機能しているようなのだけれども、この日本という国において、ビームラインの改廃が本当にうまく進むのだろうか。例えばあるグループが持っているビームラインがなくなります。一方で新しいビームラインが建設される。いわゆる100%がハッピーにならないようなケース。客観的に評価して、あるグループは泣きますけれども、ほかの新しいグループがある権利を得て、トータルとして社会にとってはプラスみたいな、そういう話は総論賛成なのだけれども、現実に自分がその中に巻き込まれると、各論反対で結局うまく進まないみたいなことの繰り返しのように思います。矢橋さん、そこはどういうふうなレビューをされるというか、そこのところにどうメスを入れるのですか。
【矢橋先生】 やはりカルチャーの違いが当然、例えばアメリカなどは非常にハードなディシジョンをして、例えば専用ビームラインを結構抱えていますけれども、改廃が非常に進んでいるということは聞いていますが、日本で同じことができるかどうかということですね。
【田中委員】 そう。だって、ほとんどできていないから、こういう状況になっている。
【矢橋先生】 それはあるべき姿もそうですし……。
【田中委員】 放射光だけではないけれども。
【矢橋先生】 あと、現実的なオプション、ここにも書いてありますけれども、いろいろなオプション、そこもやっぱりセットで考えないと駄目で、明日からもう文無しですよというのではなくて、いろいろよそも使えますよというのか、そこは現実的なオプションはやはり用意しながらセットで考えるということが必要だと思います。
【田中委員】 いや、でも、だから、うまくいけば本当にかなり日本のまれなというか、初めてかもしれませんが、非常に成功した例になるのだけれども。
【矢橋先生】 そういう意味では社会的な実験としても非常に良い。
【田中委員】 そう。社会的な実験としても非常に良いのだけれども、なかなか大変かなと。石川センター長、いかがでしょうか。
【石川先生】 大変でも良いことはやるのではないですか。
【小杉主査代理】 そういうことを既にやっている施設もありますので、日本一般、そうなっているというふうに言わないでいただきたいと思いますが。
【田中委員】 それはすみません、勉強します。
【小杉主査代理】 どこの施設かは御存じだと思いますけれども。
【雨宮主査】 いかに関わるかということの仕組み作りですね。スクラップ・アンド・ビルド、運用制度もそうですが。
ほかにいかがでしょうか。
【矢橋先生】 私からよろしいですか。
【雨宮主査】 ええ。どうぞ。
【矢橋先生】 飛ばしてしまったスライド(資料4-1の21ページ)がありまして、入り口課金をするときにどこまで厳密に適用するかということがあります。共用ビームラインの場合は非常にクリアで、今やっているのとほとんど同じですが、例えば専用ビームラインとか、理研ビームラインでは、課題選定をする・しないの定義をちゃんと考えないといけない。例えばこれはいろいろなやり方、場合分けがあると思いますが、外部から課題が出てくる場合は非常にクリアで、入り口課金を取るということで多分良いと思うのですが、例えば専用ビームラインでビームライン設置者自身が好きなように使って課題選定をスキップしている、そこを取るのか取らないのかとか、理研ビームラインで理研が使っているのを取るのか取らないのかとか、そういうところはあると思います。
こういった観点から場合を4通りに分けてみましたが、設置者自身が利用する場合、外部から来る場合に加えて、中間の形態というのは実はあって、共同利用とか各種のプラットフォーム事業を専用の施設なり、理研も実はやっていたりするのですけれども、これが実はちょっとグレー、少しややこしい言い方なのですが、共用施設の中にある共用でない装置を共用に出す制度というのがありまして、つまり、共用施設、SPring-8の中にある、共用でない専用ビームラインの装置を、皆さんに使っていただく制度というのがあって、これは、全体の中でどうなっているのかって非常に分かりにくいことになっているが、ここの整理等もうまくできる可能性がある。例えば、これらの課題は何らかの審査が当然されているわけなので、これは課題選定をしたとみなしてしまうとか。そうすると、専用ビームラインから共用への20%供出等を含めた乗り入れも、一気に進むかもしれないなというところはございます。
【田中委員】 そのグレーのところって、例えば理研の客員にしてしまうとか。
【矢橋先生】 それはBL施設の診断でグレーではありません。
【田中委員】 だから、外部のやりたいという人に何かポジションをチョロッと与えてという抜け道もありますよね。
【矢橋先生】 それは(資料4-1の21ページの)1に含まれている。
【田中委員】 それはどこに含まれている。
【矢橋先生】 (資料4-1の21ページの)1に。
【田中委員】 それはビームですよね。
【矢橋先生】 客員研究員が使う場合と内部が使う場合の区別はできません。そうではなくて、各機関がオープンにビームタイムを出している場合があって、例えばQST、JAEA、NIMS等々、ナノテクプラットフォーム事業とか、あと理研のBINDSの事業も公募を出して募っている。これはJASRIの公募ではない形で募っていて。
【田中委員】 そういう公募ね。それは確かにクリアですね。
【矢橋先生】 そこをどう見るか。それは、今、捕縛というか、全然コントロールされていないので、そこもどうするかという議論はあると思います。
【雨宮主査】 時間がなかったので、あそこはかなりスキップしましたけれども、補足していただいて、いかがでしょうか。
【石川先生】 良いですか。
【雨宮主査】 どうぞ。
【石川先生】 例えば大学共同利用機関が専用施設ビームラインを作ると、その大学共同利用機関のミッションとして、そういうことをやらなければいけなくなるわけですね。ですから、そのあたりをこれからどう考えていけば良いのかというのは、どこにはめ込むのかというのは議論が必要かなと思っています。
【雨宮主査】 どうぞ。
【小杉主査代理】 私、以前の放射光の議論をしていたときの共用ビームタイムの話と同じことなのですよね。違う話ではないですね。
【内海委員】 前の次世代放射光の議論のときに専用ビームラインの中に共用ビームタイムという枠を設けましょうということはかなり議論されていて、共用法の改正も含めて次世代ではそういう方法を採りましょうということになっていると思います。逆に言うと、その枠組みだけしか決まっていないのですけれども。
【矢橋先生】 その場合は課題選定やほかの、いわゆる100%共用のビームラインと同じようにやられるということですか。サポートも、そういう同じように。
【内海委員】 おっしゃるとおりですね。
【矢橋先生】 この場合は、サポートはそれぞれの機関がやる。逆に言うと、もし各機関での運営が有機的に機能しているとすると、施設全体にとっても非常によくて、選定もしていただいて、サポートもしていただいていることになる。ただし、何をやっているかが見えにくい。そこのメリット、デメリットがあるので、そこは一概にこれは駄目ということでもないのだと思います。
【雨宮主査】 どうぞ。
【小杉主査代理】 共用ビームタイムの以前の議論で、図表がありましたが、そこでは、人も含めて、専用ビームラインとは言っても、共用の方も助けるという。
【石川先生】 そこは別の議論で、今も専用ビームラインの中に共用枠といってJASRIさんでやっている選定に任せるところがあって、次世代で考えている共用というのはそれだと思われます。そのほかに、その専用施設を持っているところが自分たちで課題公募をやって、そこで選定をするというものがあります。例えば阪大の蛋白研などは、それをやっているわけですが、そういうものをどう考えるかという議論が今後必要になってくるだろうということです。
【雨宮主査】 議論、まだまだあるかと思うのですが、時間が来ましたので、本日はここで議論は終了せざるを得ないかと思います。本日、更に何か意見、御質問があれば事務局にメール等で御連絡いただければと思います。
それでは、事務局から何かこれからの連絡事項がありましたら、よろしくお願いします。
【大榊補佐】 本日も、どうもありがとうございました。今後の開催スケジュールでございますけれども、次回は12月25日を予定してございますSPring-8、SACLA、現地調査も含めて5回以降のスケジュールにつきましては調整中でございますので、改めて委員の皆様に御連絡させていただきます。また、現在、主査と相談中ではございますけれども、次回の委員会では専用ビームライン設置の観点でトヨタ自動車様と、それから、兵庫県から御発表いただくことを検討しておりますので、併せてお伝えいたします。
あとは、事務的な連絡でございますが、本日の資料は後日Webサイトに公開いたします。もし秘密事項等があって資料の修正が必要な場合には、その旨お伝えいただければと思います。また、本日の会議の議事録につきましては、先ほど申し上げましたけれども、第2回、第3回合わせてごらんいただいて御確認いただいた後、Webサイトに掲載するという形にさせていただきます。 以上です。
【雨宮主査】 以上をもちまして、第3回SPring-8、SACLAの中間評価を閉会いたします。本日は、どうもありがとうございました。

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