量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第24回) 議事録

1.日時

平成30年11月22日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 17階 研究振興局会議室

3.議題

  1. 前回の中間評価等における主な指摘事項に対する対応について
  2. 今後の重点的な課題及び推進方策について(関係者からのヒアリング)
  3. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、石坂委員、内海委員、尾嶋委員、金子委員、岸本委員、小杉委員、高橋委員、高原委員、田中委員、宮内委員、山田委員

文部科学省

勝野科学技術・学術総括官、奥研究開発基盤課量子研究推進室長、大榊研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

理化学研究所放射光科学研究センター 石川センター長、理化学研究所放射光科学研究センター 矢橋グループディレクター、高輝度光科学研究センター 田中常務理事

5.議事録

【雨宮主査】 少し定刻より早いですが、そろいましたので、第2回のSPring-8、SACLA中間評価の委員会を開きたいと思います。
お忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。本日は13名の委員に御出席いただいています。御欠席は石山委員、北見委員、近藤委員です。
本日の議題ですが、小委員会の運営規則に基づいて公開という形で進めさせていただきたいと思います。
それでは事務局より、配付資料の確認をお願いいたします。
【大榊補佐】 それでは資料を確認させていただきます。お手元の資料を御確認ください。
議事次第のとおり、資料1から資料5-2までを配付してございます。また机上の紙ファイルに第1回中間評価の資料、議事録、また前回のSPring-8 XFELに関する評価結果を、前回と同様でございますが、それぞれとじております。資料に不備等がございましたら、事務局まで御連絡をいただければと思います。以上でございます。
【雨宮主査】 ありがとうございました。それでは議事に入りたいと思います。
今回も前回の小委員会に引き続いて、SPring-8、SACLAの中間評価を行っていきます。本日、勝野総括官に御出席いただいておりますので、一言、御挨拶をお願いいたします。
【勝野総括官】 前回も御挨拶させていただきましたが、SPring-8、SACLAの中間評価は今回2回目ということで、年度末までの限られた時間の中で、先生方に精力的に御審議いただくことになりますが、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
【雨宮主査】 本日はSPring-8、SACLAからは理化学研究所の石川センター長と矢橋グループディレクター、高輝度光科学研究センターからは田中常務理事に御出席いただいております。
それでは議題1に入ります。事務局において前回の委員会で指摘があった内容についてまとめるとともに前回資料を修正していますので、説明をお願いいたします。
【大榊補佐】 それでは資料1、資料2、資料3について御説明いたします。資料1を御覧いただければと思います。
前回の中間評価の際に先生方から御議論を頂いた内容を簡単にまとめてございます。SPring-8、SACLAの概要、現状説明についての項目で御質問・御指摘等がございました内容について、1ポツにまとめております。例えば施設を支える人材が不足しているという趣旨と、どのような人材育成に今後取り組んでいくべきかという御指摘がございました。また日本の放射光施設については欧米と比較しても、研究者・技術者の役割分担が曖昧であるという御指摘がございまして、SPring-8、SACLAは、どちらの方向性を目指していくべきかを書かせていただきました。また共用施設における人材育成の在り方について、これも方向性、また役割分担の議論を行うべきではないかという御指摘がございました。また利用成果の指標として、論文数だけではなくて、多様な評価軸があるのではないかと。そういう御示唆も頂いております。
2ポツの「主な論点について」でございますが、こちらを御覧いただきますと、例えば実験データの活用、世界最先端の知見を求める企業に対する支援という観点から検討が必要ではないかということ。またオープンサイエンスのような取組について、より発展的な取組が必要ではないかということ。またパワーユーザーの拡大を図るべきという議論、また一方、幅広いユーザーのニーズに応えていくべきということも、両方重要であるということ。また、それを研究等の産学官連携を行える仕組みを検討することが重要ではないかという指摘がございました。またSPring-8、SACLAの成果の最大化を明確に定義するべきではないかと。すなわち、成果の最大化が具体的にはどういう内容なのかをきちんと定義するべきではないかという御議論がございました。これに付随して、ビームラインの改廃、有効利用といった施設運営のスリム化・効率化に関する取組も議論すべきではないかと御指摘を頂いたところでございます。
資料2を御覧いただければと思います。資料2はほとんど変わってございませんが、一番後ろの16ページ、17ページあたりから御覧いただければと思います。3ポツの今後の重要な課題及び推進方策について、先生方から御指摘を頂いた内容を踏まえて、少し構成を変更してございます。ここの赤字と灰色のマーカー塗りで示してございますが、例えば国民の理解という観点で、施設の広報やプロモーションの観点については、18ページの「人材育成及び国民理解の醸成」という項目を新たに立てまして、そこに人材育成とともにプロモーションの内容を追加してございます。またパワーユーザーの拡大という点についても、これはSPring-8の(3)に移動いたしまして、多様な利用者支援の項目へ統合する形にいたしました。
新たに追加した内容といたしまして、先生方から御指摘がありました成果指標の検討の件、成果の最大化の定義づけについて新たに追加してございます。それから、オープンデータ、オープンアクセスの観点についても追加させていただきました。
(資料2の)17ページの一番下でございますが、多様な利用者支援という観点で、多様なニーズに応えるためにどのような検討がなされるべきか、どのような取組が有効であるかについて3点、書いてございます。産学コーディネート機能の活性化、パワーユーザーの拡大、オープン・イノベーションの推進ということで、ここにまとめさせていただいたところでございます。
最後に(4)でございますが、人材育成の項目を新たに追記してございます。人材育成について、大学や他の放射光施設と協力して、戦略的な人材育成・確保・交流を進めていくべきではないかということや、キャリアパスの明確化、若手人材、学生の育成方針を検討する必要があるのではないかと。そういう内容を記載してございますので、御意見をいただければと思います。
資料3に移らせていただきます。資料3は中間評価の予定についてでございます。前回、第3回から今後の重点的な課題及び推進方策について御議論いただくこととしてございましたが、第2回の今回から、今後の重要な課題、推進方策について、先生方からヒアリングをさせていただくこととしまして、こちらの議論についても少し深掘りを早めていきたいと考えてございます。以上でございます。
【雨宮主査】 ありがとうございました。今、資料1については、前回の議論の概要、どんな意見が出たかということの説明がありました。資料2は中間評価に当たっての主な論点についてですが、前回の議論を受けて、項目が幾つか整理されています。今、説明があった資料について御意見・御質問はありますか。
資料2は少し項目を整理したということで特に問題はないかと思いますし、資料1も、それぞれ委員の御発言された内容が大体網羅されていると思いますが、いかがでしょうか。
それでは議事に入っていきたいと思います。理化学研究所と高輝度光科学研究センターから、前回の中間評価等における主な指摘事項への対応状況や具体的な取組の内容などについて説明していただきます。お二人の方から御説明いただいた後にディスカッションに移りたいと思います。
それでは最初に理研の矢橋グループディレクターから、よろしくお願いいたします。
【矢橋先生】 よろしくお願いします。まず私から、前回、中間評価等の主な指摘事項に対する対応ということで発表いたします。ここ(資料4-1の1ページ)に「等」とありますのは、SPring-8、SACLAを合わせて3つの評価会がございましたので、ここへの対応ということです。
基本的には、お手元の資料2の論点ペーパーに沿った内容になっておりますが、わかりやすく見ていただくために、1ページの中に、なるべく指摘と対応をおさめるようにしていますので、ちょっと行ったり来たりしますが、基本的には、この流れで見ていただければと思います。あと、分量がかなり多いので、ポイントを青字で示してありますので、そこを中心に説明したいと思います。また、論点ペーパーの「今後の対応状況」の中で、波線付の「今後の課題」として示されている箇所は、赤字で示しています。
まずSPring-8ですが、前回の中間評価(平成25年8月の科学技術・学術審議会)での主な指摘事項が3つございまして、まず最先端研究施設としての在り方、それから、利用推進方策、最後には革新的成果創出に向けた戦略的な取組、この3つです。
まず施設のお話から参ります。まず、施設・設備の高度化に絡みまして、1つ目、利用者ニーズの効果的・効率的な把握をするためにSPRUCとの連携による高度化の仕組みをきちんと考えなさいという御指摘がございました。SPRUCとの連携につきましては、特に三者会合(理研、JASRI、SPRUCの代表が集まった会合)の定期開催を昨年度よりスタートしておりまして、SPRUC、施設設置者理研、JASRIということで、月1回ぐらいのペースで行っておりまして、これは意見交換並びに情報共有の場として非常に有効に機能を始めています。
2つ目、SPring-8のアップグレードに関して、我が国の放射光施設全体を俯瞰した整備計画、新しい利用者と既存の利用者とのバランスを考えなさいという御指摘がございました。これにつきましては、まず加速器ではSPring-8-II光源の概念設計書、いわゆるCDR(Conceptual Design Report)を平成26年11月に作っております。それから、理研放射光センターで、我が国の放射光施設全体をSPring-8を含んで俯瞰した調査報告書を取りまとめてございます。これは平成28年3月です。これらは、まだ余り知られていないようですが、この(資料4-1の3ページ右の)理研放射光センターのホームページのバナーがございまして、そこにCDRとともに載っておりますので、是非御覧いただければと思います。
こういう取組をしてはございますが、やはりSPring-8整備計画については、刻々と我が国の状況も変わってきている中で、更に議論をしっかりしなさいということが指摘されています。ここにつきましては、国内外の状況を整理しながら、次の20年で取り組むべき課題を第3回以降で議論させていただきたいと思います。
次(資料4-1の5ページ)に行きます。ビームライン整備ということで、既存ビームラインの戦略的な改廃が必要ではないかという御指摘を頂いております。これについては、理研に特定放射光施設検討委員会を平成23年5月に設置しております。1つの例としては、理研のビームラインであったBL45XUというアンジュレーターのビームラインがございますが、ここをタンパク質結晶構造解析のビームラインとして改修・高度化し、共用ビームラインとして来年度から運用を始めることにしております。ただし、これはまだ戦略的なビームラインの改廃の議論が始まった段階であって、ここは本当にスタートポイントにやっと立ったかなというところです。したがって、共用、理研専用のビームラインの区分なく議論して、位置づけを明確にしながら、ビームライン全体の高度化プランを作成する必要があるということで、ここも今後、しっかり議論させていただきたいと思います。
次(資料4-1の6ページ)ですが、経年劣化対策と効率的・効果的な組織の運営と2つございます。まず経年劣化対策ですが、蓄積リング棟における熱源機器の大幅な改修を実施いたしまして、電力使用量の削減を実現しております。これはお手元の参考資料、後ろの方につけてありますので、そこを御覧ください。
それからもう一つの方、効率的・効果的な組織の運営ということで、ここについては、特に事業仕分け以来、いろいろな御指摘を受けていたところでございますが、業務の切り出し、統合、複数年契約の導入等の見直しを行うことで、競争性の確保を進めてまいりました。具体的には次のページ(資料4-1の7ページ)、この図のように年度ごとに直近3年間を示していますが、業務の切り出しを行ってまいりまして、大きな仕様書だったものを切り出して小分けして、スペシフィックな仕様に対応させることをやってまいりました。これは前回、近藤委員から御質問があったことと関連しますが、トータルとして金額が減っているわけではなくて、より効率を高めて効果的にやっているということで、最終的にはもちろん利用者の皆様の様々なベネフィットの増大に資するということを基本的な方針としてやっております。
次(資料4-1の8ページ)に2番目の利用促進方策に移ります。ここは後ほど、JASRIの田中理事から説明がございますので、さっと進みたいと思いますが、一点のみ、コメントさせていだたきます。
いろいろとJASRIで工夫してやっておられますが、三者会合で、いろいろな意見を聞いたり、ユーザー側からいろいろお伺いをしますと、例えば登録機関からSPRUCにいろいろな意見、提案をしてくださいということを投げかけられることがよくあるということで、それは非常に結構だと言われているのですが、やはり提案をする方、彼らとしても、提案が迅速に形になっていくところを是非見たいということがありますので、その仕掛けもいろいろ検討する必要があるのかなということでございます。この点については、後ほど、SACLAの取組を御紹介しますので、そこも参考にしながら御検討をいただければと思います。
次(資料4-1の9ページ)に運転時間の確保という指摘がございました。非常に競争率も高いので、運営費の効率化や調整費を短くしたりして、年間運転時間5,500時間以上を確保しなさいと言われています。それからもう一つ、専用ビームラインのユーザータイムの提供割合を2割程度まで伸ばすための方策を何か考えなさいと言われています。前半の運転時間を延ばすということですが、これは昨年度は5,282時間ということで、特に運転時間を延ばすとともに、運転時間の中の利用時間を増加するために、いろいろな効率化の取組を行っています。あともう一つは、ダウンタイムがあると当然、利用時間は減りますので、ここは老朽化が進行している施設のしっかりしたメンテナンスを実施して、非常に低い値に抑えているということでございます。
それから、後半の専用ビームラインのお話は、ずっとこのところ、継続して議論されているところで、なかなかユーザータイムが伸びていかないなと。これはもう少し背景を説明しますと、SPring-8は今、共用ビームライン、理研ビームライン、専用ビームラインとございまして、基本的に共用ビームラインが共用ユーザーに対応していて、理研ビームラインも一部、共用にビームを提供していますが、専用ビームラインはかなり本数があって、57本の内約20本ということで、ここが個別にやっているということで、なかなか難しいのかなと。ここは結局、専用ビームラインの皆さんともどのようにお話をしていくかもポイントになってきますので、この点もいろいろなアイデア、御提案を用意してございますので、次回に改めて議論させていただきたいと思います。
3番目、戦略的な取組のところ(資料4-1の10ページ)です。これも利用者拡大ということで、利用者の裾野の拡大、課題の環境の構築とか、測定の自動化、我が国全体での放射光ユーザーの定常的な拡大、こういったところの指摘がございました。ここにつきましても、後ほど田中理事から説明がございますので深くは立ち入りませんが、一点のみ、コメントさせていただきます。基本的には、ここもいろいろな要望や御指摘を受けて、いろいろ登録機関でいろいろな領域を立ち上げてやってきたということで、これ自体は大変結構だと思うのですが、一方で、ちょっと引いた立場から見ると、いろいろな制度がかなり林立しているようにも見え、少し遠い立場の方からは、複雑ではないかという懸念も聞こえてきておりますので、これもどこかの時点で一度、根本に立ち返った議論が必要なのかなと感じております。
それから産業利用の取組のための方策も後ほど紹介があると思いますが、SPring-8が我が国の放射光施設の中核として既存の枠組みも活用しつつ、放射光ユーザーを拡大していかなければいけないということで、これも課題として指摘されておりますので、これは間違いなく、次世代放射光施設の進展とともに、いろいろ変わっていく状況でございますので、ここもしっかりした議論をしていきたいと思います。
それから、先端研究拠点の形成(資料4-1の12ページ)ということで、これは幾つか重要な指摘がございました。産業界のニーズと大学・研究機関のシーズをマッチングするようなコーディネート機能の充実を図るべきだと。それからパフォーマンスの評価、これは指標の話とも関連しますが、ここをどうやっていくか。成果指標の話。それから、SACLAとの協調の話ということがございます。それで対応ですが、特に赤字のところを申し上げますと、今のニーズとシーズのマッチングが今後の課題であると。ここも恐らく後ほど議論になると思いますが、ここも特に産業界のニーズが非常に多角的・多面的でございますので、1つのアスペクトだけを切って、そこにばん創こうを貼っていても、いつまでたってもお互いうまいことはいかないということでございますので、やはりトータルで考えて、多角的なニーズをしっかり分析した上で適切な対応策を考えていく必要があるということでございます。
それから、評価指標ですが、これは多分前回もあったと思うのですが、JASRIで、サイテーションのトップ1%、10%論文の分析をビームラインごとに実施されていますので、これが1つの指標になりますが、その他のいろいろな観点があるということです。それで国際的なところですが、SPring-8、APS、ESRF、それに最近加わったPETRA-IIIという日米欧三極の4施設連携が進んでおりまして、ここも5月に直近のワークショップがアメリカでありましたが、非常に重要な意見交換の場となっておりますので、ここは引き続き強化していきたいということです。
次のページ(資料4-1の13ページ)は論文数と被引用論文数、これは見せるだけに止めておきます。こういった形で定量化が可能になってきたということです。
それから、SPring-8の最後のスライド(資料4-1の14ページ)になります。教育、研究者育成、要は人材育成でございます。いろいろな実地研修も含めた教育活動、他の放射光施設との連携ということを指摘されておりますが、ここについては、いろいろ兵庫県立大学のリーディングプログラムとか、夏の学校、秋の学校、これも参考資料に載せてございますが、こういったものがあります。それからJASRIでも、いろいろ海外施設との人材交流を行っているということです。ここについてはSACLAでいろいろな取組をしてございますので、後ほど御紹介したいと思います。
次(資料4-1の15ページ)にSACLAに移ります。SACLAには2つの評価会がございまして、1つは平成23年9月のXFEL計画の事後評価、もう1つは平成24年6月のXFELの開発・共用の、これは総合科学技術会議ですが、ここにおける評価に対する対応をまとめてございます。
まず最初の方(資料4-1の16ページ)ですが、開発についてということで4つの指摘がございました。まだ平成23年9月ですので、供用開始前ですね。供用開始直前にもかかわらず、画期的な成果を早く出せとか、シーディング技術をやれとか、いろいろなことを言っていただいたなという印象がありますが、現在のところ、ここは非常に順調に行っていると言って良いかと思います。
成果のところ(資料4-1の17ページ)ですが、前回も御紹介しました光合成の光化学システム2とか、硬X線のK殻のレーザーなど、世界に先駆ける成果が出てきていて、ここは非常にビジブルになっております。それから、技術のところではシーディングをやりなさいと言われまして、これもなかなか苦労しましたが、最近、若手が頑張りまして、世界で初めて反射型と言われる新しい方式のセルフシーディングのスキームを実用化しました。これは前回も少し御紹介してありますが、アンジュレーター列の真ん中にシリコン結晶を挟みまして、上流から来るFEL、これはまだ弱いのですが、一旦フィルターで特定の波長だけを選んで、ここを種光にして、後ろを育てるとやると、特定の波長の光がぴゅっと明るくなるということで、これは非常に使い勝手が良い。昨年度、初めて実証に成功しましたが、早速、この秋から供用運転に試験的に導入しております。
それから利用時間を増加すべしという指摘がございましたが、これは2本目の硬X線FELの供用を平成27年4月に開始して、更にここのビームラインと既存のBL3という2本のビームラインの振り分けを昨年度から実施しております。更に軟X線の利用ニーズに対応するために、BL1を補正予算を頂き整備いたしまして、3本体制でオペレーションしております。この結果、ネットの利用時間としまして、BL2と3のユーザータイム、BL1のユーザータイムということで順調に増えてきまして、今年度はまだ暫定でございますが、運転時間と同等の――これは3つのビームラインを足しているので、こういうことになるわけですが、6,000時間を超えるところまで来ていると。これに対応して採択数も順調に増えてきていまして、年間で100課題を超えるところです。LCLSが、間もなくシャットダウンですが、今年、100課題前後だったので、現在、世界で最も課題ができている施設であると言えます。最後に御紹介しますが、海外利用者の割合も順調に伸びてきていて、国際頭脳循環の拠点として、かなりしっかりしたものになってきていると言えると思います。
赤字の指摘がありまして、残り2本のビームライン、SACLAはアンジュレーターホールに5本のビームラインを収容できる建屋の構造になっていますが、今、3本あって、残り2本をどういうふうに検討するのかという指摘がございます。ここは実は我々もいろいろと頭を悩ませているところでございますが、今、SACLAのメインの加速器がございまして、ここから振り分けをしています。BL2と3という2つのビームラインでやっているのですが、そうすると60ヘルツ、1秒間に60個の玉を2つに分けて30個と30個でやっているのですが、例えば、これを3つ、4つに増やしていくと、一本あたりの数はどんどん減っていくわけで、例えば1秒間に15個で良いのかといった話があって、ここはユーザーからも、やはりこれ以上減らすのはなかなか難しいという話も聞こえてきています。やはり中長期のターゲットとしては、元の60個の玉数を何とか増やせないかということがあります。今あるテクノロジーとしては、超電導の加速器があって、これはEuropean XFELで始めて、またLCLS-IIでもやろうとしています。もちろんそこはソリューションとしてありますが、非常に金額が高いので、なかなかこれは大変ですので、そうではない、常電導ベースで何とかこれができないか。しかも高繰り返しといっても、1メガヘルツとかではなくて、キロヘルツ程度でかなり使い手が良いので、その検討を開始したところでございます。
次(資料4-1の21ページ)に「利用研究について」ということです。ここでも、先ほどと若干かぶりますが、欧米に先んじた革新的な成果を継続的に創出しなさいと言われております。それから、利用技術の開拓とか標準化、システムとして作りなさいと。それから、これも施設設置者、理研、JASRI、利用者が一体となってやりなさいと。そういうことを言われています。
まず最初の欧米に先んじたというところでデータが出てきますが、これはJASRIに出していただいたデータで、これはびっくりのデータなのですが、アメリカのLCLSと比べて、トップ10%と1%とほぼ同じぐらいと。トップ10%が36%、トップ1%が6%ということで、これは我々としても、ある意味すごい値だなということで、これをこのペースで続けていきたいということがあります。
後半の技術開発ですが、やはりここにも指摘がございますが、様々なハードウェア、ソフトウェアを開発するとともに、システムとして統合するところが非常にポイントになっています。SACLAは新しい光源で、データの量も多いので、コンポーネント単発だけがあっても、これはなかなか使えないと。全体がしっかりしたシステム装置としてやらないといけないと当初より心がけてきまして、やはりここはしっかりやらないといけないということで、一例だけ御紹介します。
こういう実験プラットホーム(資料4-1の22ページ)、これはいわゆるタンパク質の結晶構造解析でございます。SACLAはパルス的に来て、一発光が来ると試料が壊れてしまいますので、どんどんフレッシュな試料を導入しないといけないということで、ここについて、いろいろな開発を行いました。最終的には、こういうシンプルな試料インジェクタ、試料チャンバ、X線検出器の組合せと。これをシステムとして、ハードウェア、ソフトウェアとして、こういうプラットホームとして提供することをやりました。先行するLCLSはもっと非常に大がかりな、人が中に入れるぐらいの大きなチャンバでやっているわけですが、我々はこれぐらいの装置を作ってやったと。結果的には非常に良いものができまして、今、LCLSがこれが逆に輸出されるまでにもなっています。これは主に我々だけではなくて、京大の岩田想先生のグループとも一緒に開発を進めてきました。こういったことが非常に重要だなとは実感いたしました。
このほかにもいろいろなシステム(資料4-1の23ページ)、例えばレーザーとXFELの同期時間をフェムト秒で監視する装置でありますとか、いろいろな実験プラットホームを、これもユーザーのインプットを得ながら若手が中心となって開発をしてまいりました。
次(資料4-1の24ページ)に参ります。次に3と4の情報発信、運用等についてということで指摘がございました。情報発信のところは、きちんと成果を広報していきなさいということで、ここはSACLAのホームページがございますので、ここで情報を提供しております。それから、産業界も含めた利用者のニーズの的確な把握、利用者本位の運営ということで、ここもSPring-8に共通する非常に重要な御指摘でございます。
まずここについては、産業界のところについては、SACLA産学連携プログラムを設置いたしました。これは最近、SACLA産業利用推進プログラムと若干発展的になっていますが、もともとSACLAは非常にポテンシャルがあるということで、最初はアカデミーから始まるわけですが、産業界の皆様からも是非使ってみたいという声が供用当初から数多くあったと。ただし、敷居がかなり高いという声がありましたので、そこを何とかできないかということで、産業界の皆さん、我々SACLA施設(ファシリティー)側、その間に大学やアカデミーの先生、研究機関の先進的利用者の皆様にも入っていただいて、三者で、どういうことをしたら産業界の皆さんに、より使っていただけるようになるかというプログラムを走らせてまいりました。結果的に、本プログラムの試験利用を経て、本格的な、いわゆる一般課題も出していただくところが増えまして、今は定常的に数件程度、産業界から応募があります。あと、成果専有の利用も時々ございます。
その次に参りまして、赤字のところですが、利用者ニーズを適時的確に把握する取組や利用者本位の運営の取組は今後の課題ということで、これはある意味で永遠の課題でございますので、答えは一つ出ればこれでおしまいということはないのですが、ここについてもいろいろな取組を行ってまいりますので、御紹介したいと思います。
まず利用者のところですが、SPring-8はSPRUCという組織がありますが、SACLAもSACLAユーザー共同体の設立をユーザーの皆様とともにしました。これが2013年4月でございます。2018年8月からSPRUCと統合、それから、ここのユーザー共同体を母体にして、ユーザーズミーティングを開催してきました。これは昨年から国際ユーザーズミーティングに変えて、特に海外へのビジビリティーの強化と海外・国内利用者の連携を促進することを進めてきました。SACLAのユーザー共同体ですが、SPRUCの組織、実はこの秋、9月に変更になったわけですが、SPRUCの中にSACLAの利用委員会が入り、ここでSACLA単独だけではなくてSPring-8とも利活用研究相乗効果を図ること。それから、連携することにより対外的な発言力を強化すること。この2つの目的で、こういう形で統合して進めております。
それから、国際ユーザーズミーティングですが、昨年の12月に第1回をやり、第2回は今年の9月にありました。これは写真ですが、100名超が参加して、1割超が海外ということです。ポイントとしましては、単なる学術発表会ではなくて、ユーザーと施設の間、ユーザーとユーザーの間、そういったところの相互のコミュニケーションと議論を深めれば――これは上品な言い方ですが、要はお互いにダイレクトにずけずけとものを言う場として活用しております。ここでいろいろな意見を吸い上げたり、こちらから問題提起をしたりして、活性化を図っているところでございます。これも非常に有効に機能していると思います。
最後のところ(資料4-1の28ページ)ですが、利用者ニーズの把握のところで、SACLA基盤開発プログラムというものを今年より開始して、これもユーザーニーズを――先ほどのSPring-8のところで少し触れましたが――なるべく早く形にする取組を進めております。基本的には装置を整備していくのは共用補助金ベースでやっていくわけで、もちろん我々施設が主体でやっていくわけですが、ただ、そこにユーザーの声をどう反映させるかが課題になっておりました。そのユーザーの声をオフィシャルに届けてもらうチャンネルとして、こういう制度、プログラムを走らせております。これは基盤開発に関して、利用者からも広くテーマを募って、その中から我々施設として、重点的に推進すべきターゲットを選定し、実施するということです。ここにフローがありますが、ユーザーに手を挙げていただいて提案を頂く。その後、施設でエバリュエーションをしまして、一つは直ちに開発を進めていくもの。特に装置の立ち上げのところは提案グループと一緒にやるということで、提案グループにも大きなメリットがあります。立ち上げ後には広く供用に供して、広いユーザーに使っていただくということです。一方でもう一つのパスがあって、これも非常に重要なのですが、今すぐ開発は始められないけれども、しっかりディスカッションして、将来に向けたフィージビリティ調査をする。こういうパスもありますので、ここはお金はつかないのですが、議論をしっかりしていきましょうと。この2つのパスを作って始めています。今年度は5課題が開発のパス、3課題がフィジビリティースタディーのパスということで、合計8課題を採択しております。参加機関としては東大、阪大、QST、海外のSLACの課題も採択されております。こういうことで進めています。
最後(資料4-1の29ページ)、総合科学技術会議の指摘事項に対する対応ということで、まとめたいと思います。
まず「XFEL装置の開発・整備」ということで、ここは技術開発、特にここは測定装置やソフトウェアの開発ということがございましたので、そこに対するコメントをつけてあります。
先ほど、ハードウェアについては御紹介しましたが、ソフトウェアも非常に重要でございまして、大体、この手の実験は一晩やると数十テラバイトというデータがたまります。今、SACLAで年間、ペタバイト級のデータがたまっていて、それはやはりいろいろなシステムを構築する上でも、それなりのお金を投入しないといけないことがわかってきています。そういう意味で、我が国で初めて、共用実験施設――もちろん計算機施設は違うわけですが――において、ペタバイト級のビッグデータの取扱いを始めたのがSACLAであると言えると思います。
今、SACLAですが、当然、今後、これはSPring-8も同じようにというか、SPring-8の場合は、ある意味で60ヘルツとか、そういうパルスの制限がないので、やろうと思えば幾らでもデータは伸ばせます。簡単な試算をすると、年間、順調に伸びていくとすると数十ペタバイトとか、100ペタバイトという値が出てくるのですが、例えば今のSACLAでやっているハードウェアの技術革新がもしないとすると、予算的にはこれは非常に厳しいものになるので、そこの技術革新と、あとポリシーのところですね。そこの2つを非常ににらみながらやっていかないといけないということで、ここには効果的かつサステーナブルなデータポリシーをまず確立する必要があることを書かせていただいています。この上で、先ほどから議論がございますオープンデータ等々のことをしっかりやっていく必要があると考えております。
それから(資料4-1の30ページ)、「国際連携」で、国内外の関係機関との協力・連携の強化等を言われています。ここは先ほど、SPring-8とほか3施設、4施設連携がありましたが、XFELは、5極連携ということで、SACLA、LCLS、ユーロピアン、スイス、PALの5施設連携を進めています。XFELの5極のワークショップを直近でも5回やっています。
こういうこともありまして、実は施設にとどまらず、施設から派生した利用者もおりまして、海外の研究者による利用の増加は先ほども御紹介しましたが、この4年間で3倍になっているということです。これは国際頭脳循環拠点として非常に結構なことでございますが、一方で、単なる軒貸しになっては仕方がない、やはり国内利用者にしっかり還元していくことが重要であると考えております。このために、利用制度としては、海外からの提案に対しては国内にコンタクトパーソンを設置しなさいということで、海外だけで実験をやるということはない訳ですが、単にそれだけではなくて、我々施設側としても、海外と国内ユーザーのマッチングを積極的に図ることを進めています。それから、先ほど御紹介した国際ユーザーズミーティングも開催しております。
海外の状況ですが、今、ユーロピアンXFEL、韓国が立ち上がってきて、もうすぐスイスも始まるわけですが、まだ彼らも立ち上げ途上でございますので、かなりこちらに需要が来ている。そういう状況の中で、LCLSが来年1年、アップグレード計画のため、シャットダウンしますので、我々としても利用時間の維持・拡大を、3本のビームラインをしっかり生かして進めていきたいと考えております。
「国際的な連携・協力」、これは1枚だけですが、XFEL5極のワークショップでは、当初から数えると第9回ということで、今度、来年3月に第10回をやるわけです。こういったことで非常に活発な議論が進んでおります。
次(資料4-1の32ページ)に「人材育成」でございます。これはこの後の議論にもなる非常に重要なところでございますが、ここで頂いた指摘は、経験、ノウハウ、技術の共有、エキスパート人材の育成、外部評価する仕組みの構築ということで頂いております。我々も、このためにいろいろなことをやっております。
一つの取組として、SACLAの大学院生研究支援プログラムを実施しております(資料4-1の33ページ)。次世代の若手研究者を育成しながら、大学と施設の連携を強化するということで、これは非常にうまくいっているプログラムだと考えています。このプログラムは滞在型のプログラムでございまして、大学院生がSACLAに滞在しながら――ただ、これは決して我々の手足として使うわけではなくて、自発的に大学院生がいろいろなことを学んでほしいということで、研究者としての足腰を涵養(かんよう)と書いていますが、スタッフだけを見ても、いろいろな加速器から検出器まで非常にいろいろな人たちがいますし、あとユーザーも世界でトップのユーザーが来ますので、そういう人たちを見ながら、しっかり育ってほしいということでございます。
そういうことで始めましたが、彼ら若者にとっても非常に良い場になっているようで、単なる教育にとどまらず、優れた一流の研究雑誌・論文誌に載るような成果もたくさん得られておりまして、逆に施設のシニアスタッフにも大きな刺激になっています。
こういうことで若手の入り口としては、一つのやり方があるのがわかってきましたが、一方でその先、スタッフになったときにはどうかということです。こういう大型施設、共用施設の難しいところとして、ユーザーサポートとリサーチの両立がございます。これはもちろん両方をやっていかないといけないわけです。まず、施設がやるリサーチがユーザーがやるリサーチとパイを食い合ってはと仕方がないので、施設としては、ユーザーの将来のリサーチを先取りするような、かなり大きなものをプログラムで組む必要があるわけです。一方で、ユーザーサポートもおろそかにはできません。ただ、ユーザーサポートの中身についても、実は先ほど、業務の切り出しということがありましたが、よく精査するとルーチン化できる部分は結構たくさんある。機械にやらせることもありますが、もう一つの手としては、ルーチン化してパッケージ化して、民間のリソースをどんどん活用することも可能ではないかということがありました。
SACLAの供用当初から、この方向で進めてまいりましたが、実際、かなりうまく動いてきておりまして、ルーチンのところは民間のリソースに委託でお願いする。研究者は、特にSACLAの場合、事前事後のユーザーグループとのやりとりが非常に膨大で、そこをしっかりやってもらう。そういう中から新しいアイデアをどんどん出していくようにということで、そういう評価軸を徹底してございます。
このような状況を見ていますと、SACLAは最先端の施設が故に、このような仕組みが成り立っているということがございますので、やはり適切なタイミングで施設が高度化されることが、人材育成、若手をしっかり呼び寄せる胆(きも)といえます。今の若者は非常に優秀でございますので、優秀な若者をいかに呼び寄せるか、このために最も重要ではないかと考えております。
最後のところ、これはコメントでございますが、今のSACLAはきちんと動いているわけですが、ただ、長期的に考えて、キャリアパス、基盤施設としての組織作りのところで若干課題があることを申し上げたいと思います。
SPring-8やSACLAの基盤を支える人材の大部分について、理研に頂いている共用補助金からJASRIへの委託を行って、委託先で定年制職員として確保しているのが現状でございます。理研の中の定年制職員で、基盤を支える人材を人数で比べますと、やはり圧倒的にJASRIの方が多いということでございます。これはもともと旧共用法でJASRIが指定機構であったことや、いろいろな歴史的な経緯もあって、こうなっているとのことで、今、現状のタイムスライスを見ると、ある意味で、歴史を踏まえ運用でしのぎながら何とかやっているわけです。ただし、これは飽くまでもSPring-8の特殊事情ですので、次世代放射光施設ができたときに、これを引きずったままでやるのか、それとも違う道を選択するのか、またそのときにSPring-8をどうするのか、という議論がございます。
最後のスライド(資料4-1の34ページ)です。「研究開発マネジメントの実施状況等」ということで、コーディネーター・アドバイザー、それからビームラインの使い分けという2つの指摘がございました。
コーディネート機能の活性化、これはSPring-8にも共通するところでございますが、実はこれは非常に難しいと赤字でも書いてありますが、活性化・拡大は今後の課題です。特に何が難しいかといいますと、SACLAは非常に新しい利用ですので、コーディネーターについても、今までの経験、放射光なり、いろいろな企業なりの経験が豊富なシニアの方をお呼びして見ていただくやり方では、なかなか行かないなというところがあります。したがって、先ほど少し申し上げましたが、利用課題一つ一つがある意味でコーディネートが必要な状況になっています。これを実際には現場の若手も含めてやっているわけでございます。こういったところも含めて、ある意味でSPring-8の先端を狙っていくところはこういうところになるのかなというのがありますが、ただ、ジェネラルな意味で、我々もしっかりとしたソリューションがあるわけではないので、ここも是非、今後、御議論をお願いしたいと思います。
長くなりましたが、以上でございます。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。少し時間が押してきましたが、重要なところなので、特にSACLAの最近の取組について詳細に説明を頂きました。
時間が押していますが、次に田中常務理事に補足ということで、資料(資料4-2)について説明をお願いいたします。少し圧縮しながらお願いいたします。次の議題もありますので、よろしくお願いいたします。
【田中先生】 それでは、紙ベースのお手元の補足説明資料を御覧いただきたいと思います。
1ページめくっていただいて、(資料4-2の2ページ)下の目次ですが、本日は3部構成で作っております。利用研究課題制度の取組、そして利用者支援の取組、最後に成果創出の実績について御説明をいたします。
1ページめくっていただきます(資料4-2の3ページ)。課題制度の取組の概観です。この横軸ですが、左側からビギナー、真ん中がリピーター、そして右側がエキスパートという左から右へ練度の順番になっています。真ん中の上段が成果の非専有の部分、下段が成果専有の部分となっています。本日は、この太枠のところについて御説明をしていきますが、まずは一般課題を見ていただきたいと思います。
産業利用ですが、産業利用は年4回の募集をしていました。A期、B期それぞれ2回ずつです。2018年度から、それをA期、B期それぞれ3回ずつに増やしまして、年6回にしています。タンパク質の結晶構造解析ですが、利用者のニーズに対応して、フレキシブルにビームタイムを配分できるように制度を変更しています。具体的には、利用時期につきまして、年5回、希望の調査をして、適切な時期に実験ができるように工夫しています。
重点領域の指定ですが、2つの分野があります。1つは産業新分野支援課題、食品加工、金属加工です。もう一つは社会・文化利用課題で、これは国民の社会的関心が高い事項で、文化財等が含まれています。そして未踏分野の開拓として新分野創成利用課題、この太枠について御説明します。
先ほど、利用課題制度がなかなか複雑になってきていたのではないかというお話がありましたが、ユーザーのニーズに最大限応えようとしますと、どうしてもシンプルな方向にはなかなか行きません。ではありますが、林立すれども乱立せずということで、そこはバランス感覚が重要かなと思っています。ちなみに、右下に番号を振ってありますが、これは中間評価の主な論点の番号の付番と対応させていますので、合わせて御覧いただければと思います。
それでは1ページめくってください(資料4-2の4ページ)。課題制度の取組についてお話をいたします。結果についてお話をします。新分野創成利用課題ですが、これは、学術側は2015Bからスタートしています。ナノスケール実スピンデバイス開発に向けた新しい放射光利用ということで、第1期の2年間、大野代表によって研究が実施されました。これを引き継ぐ形で第2期として小野代表から成るグループが2017Bから進行中でございます。下の方を見ていただきますと、材料分野と物性科学分野の連携が実現できています。
産学連携ですが、産学連携としましては2016Bからスタートして、第1期は固液界面の構造解明と可視化、そして構造物質間のダイナミクスということで、高尾代表による研究がスタートいたしました。2年間続きまして、それを引き継ぐ形で第2期として、今度は溶媒溶質の相関ということで、藤原代表による実験が2018Bからスタートし現在進行中です。これは複合・融合の領域等における未踏分野が創成されつつあるというものです。
先ほど、SPRUCとの関係におきまして、抽象的な話ではなく、具体化するのが重要だというお話がありました。確かにそうです。この課題につきましては、SPRUCから分野融合型の研究ができないかという御提案がありまして、JASRIで共用法に合致する形で利用制度設計を行った一つの具体例と言えます。
右側を御覧ください。社会・文化利用課題ですが、結果について、一例を挙げて御説明します。ここに写っている写真は3,000年前の鉄剣です。柄の部分が青銅器になっていて、剣の部分が鉄でできているという青銅器から鉄器へ移行している過程のものと言われています。これを三次元のCT撮影によって、世界で初めて非破壊で、その内部構造を見ることができ、かつ製造技法に関する情報も得られたというもので、一つ御紹介させていただきます。国民の関心が文化財に対してはいろいろと高いということで、宣伝効果も高いものと思っていまして、文理融合型の研究によって、貴重な文化財を破壊することなく分析することが可能になる道を開いたものです。放射光の利用では、物理や化学の分野は言うまでもないことですが、文科系の分野までいろいろと利用者を拡大して、JASRIとしましては、ユーザーを発掘・拡大しているところです。社会・文化利用課題の数にしましても年間30課題を超えて、上昇傾向にあります。
では、1ページめくっていただきます(資料4-2の5ページ)。課題制度の取組で結果についてお話をします。2011B期より、成果非専有課題では実験が終了してから3年以内に論文発表するということを義務化しました。いわゆる3年ルールと呼んでいるものですが、左側のグラフを御覧ください。これは成果の提出率ですが、1本だけ青い線がありますが、これが2011B以前の提出の状況です。義務化してからは上の重なった複数線のように早期に論文が提出されるように、早く出るようになっています。数そのものも多く出るようになってきました。それをあらわしているのが右側のグラフです。2011、12年に比べますと13年あたりからステップで論文数が伸びてきています。公表の促進に関しましては、SPring-8とSACLAの成果審査委員会、外部の有識者の先生方に入っていただいている委員会、がウォッチしていまして、成果の公表促進を実施しています。
1ページめくっていただいて、ここ(資料4-2の6ページ)からIIポツになります。これは概観ですが、この5年間、JASRIはPDCAサイクルを回して、研究系人員の増強、組織の最適化、人材の育成、12条課題の実施、パートナーユーザーの活用、そして理事長ファンドプロジェクトの開始、オープンデータの試みをやってきています。その結果について、有識者の先生方からなる科学技術助言委員会からの助言を頂いて、JASRIが実施しました12条課題につきましては、評価委員会にて評価を頂いています。産業界の団体である利用推進協議会からの意見を拝聴して、SPring-8ユーザー共同体(SPRUC)と協働することによって、チェック機能を働かせて、次なるアクションへとつなげ、PDCAサイクルを回しているところです。
1ページめくっていただきまして(資料4-2の7ページ)、支援の取組について競争的資金の活用の一例を紹介いたします。これはBL25SUにおける取組の一例ですが、運営補助金でAブランチ、元素戦略プロジェクトでBブランチをアップグレードすることで、光・量子融合連携研究開発プログラム、そして新学術領域研究プロジェクトの資金獲得につなげ、新しい手法の開発、既存設備の先端化をしています。その結果ですが、右側の上のグラフを御覧ください。BL25SU利用者は増加してきています。下のグラフを御覧ください。25SUの利用料収入も伸びてきています。ただ、一つ課題がありまして、一番下に紫色で書いてあるところですが、競争的資金で整備しました装置類を維持管理するための予算確保が課題となっています。これはどういうことかといいますと、競争的資金が使える期間中、例えば装置が壊れても、その予算で修理することができますが、この装置はその後、供用に供する状況になって、時間がたった後、もし壊れた場合、それをどのように修理していくか、その修理の原資について、なかなか頭が痛くて悩ましい状況があります。
1ページめくっていただきます(資料4-2の8ページ)。利用者支援の取組で外部ユーザーの人材育成に関して説明いたします。左側がこの5年間の活動です。大学院生提案型課題で実施した数は453で、利用者は、実数で288名になります。夏の学校、秋の学校では400名を超える方が参加していただきました。参加した大学のうち3校は、これによって単位認定をしています。研修会・講習会ですが、これまで46回開催し、700名近い方に参加していただきました。この内、学生さんが10%、残り90%が社会人で、社会人の内訳は産と学が大体半々となっています。JASRIの研究員が連携大学院・客員教授等となりまして、54名が大学でいろいろと集中講義等を実施しています。
右側の結果を御覧ください。SPring-8の再利用へのつながりということで、大学院生利用課題を実施した博士後期課程の人ですが、その後、どうなったかといいますと、再利用でまたSPring-8を使う方が大体66%と7割近い方が使っています。この5年間で博士論文数は190本、誕生しています。活躍の一例ですが、大学院生提案型課題を実施された方の中で大学に残り、ヘビーユーザーになって、SPring-8をがんがん使っていただいている方がいらっしゃると。一例ですが、御紹介します。
1ページめくっていただきまして(資料4-2の9ページ)、支援の取組で、JASRI内部スタッフの人材育成になります。左側が活動に関してですが、理事長ファンドプロジェクトで、優れた研究開発を推進するということで、この2年間で6課題を実施しました。1課題当たり、研究費としては300万円です。海外への派遣は、先ほどありましたが、スキルアップを目指して、最低でも1か月間、海外の放射光施設へ人材を派遣しています。この2年間で5人派遣しました。スタッフ向けセミナーは月に1回程度実施しています。共用法12条に基づく課題は、年当たり約150課題を実施しました。
右側の結果についてですが、論文数として約400本。競争的資金の獲得の件数・金額は年90件で額は5億円になっています。研究活動の順位付けですが、これは参考程度に御覧いただければと思いますが、ネーチャー・インデックスの2016年ですが、大学を除く研究機関の中から、アーティクルカウントとしてJASRIは第6位、WFCとしては10位となっています。これは御参考までです。前回質問がありました研究系職員の流動性ですが、博士研究員を含みますが、転入が35名、転出が33名となっています。受賞ですが、各学会から優秀論文賞、論文賞等、37人が受賞しています。
最後のスライド(資料4-2の10ページ)になります。IIIポツ成果創出の実績について、これはアウトカムになると思いますが、御紹介いたします。学術分野の受賞としまして、文部科学大臣表彰、紫綬(しじゅ)褒章、恩賜賞、学士院賞、国際生物学賞の受賞の数を挙げています。プレスリリースは大体5日に1件のペースでリリースされています。下に行っていただいて、産業分野のひょうごSPring-8賞、これは兵庫県の顕彰になりますが、SPring-8を利用した成果の中で実用化・製品化が望めるような成果で、社会経済上、発展が期待できるような成果に対して表彰されるものですが、自動車メーカーさんのリチウムイオン電池の研究をはじめとして、ここ5年間、全て産業界の方が受賞されていますので、ここで御紹介いたします。以上になります。
【雨宮主査】 ありがとうございました。今、お二人の方から現状の説明と、前回の指摘に対する対応を含めた現状の御説明がありましたが、何か御質問等はありますか。はい、どうぞ。
【尾嶋委員】 大変順調に推移しているなと感心しております。前回、議論がありました成果の最大化という観点で、今、幾つか紹介があったのですが、アカデミアの方は論文数、TOP10%論文、TOP 1%論文というものがあるのですが、産業利用について、SPring-8の大きな特徴は産業利用が2割あり、例えば新しいタイヤができたとか、そういうことはもちろんいろいろ出ているのですが、何か定量的な指標がもしあれば、もっと説得力が増すのかなと思います。外国との比較で、そういうものを使うことができるのかどうかわかりませんが、私も産業利用をずっとやってきた立場で、なかなか定量的な指標が難しいとは思っています。それはJASRIでも考えておられると思うのですが、例えばどういうものがあるのか、その辺をお聞きしたい。
2点目は、更に利用を促進していくには、やはりヘビーユーザーよりは、むしろ今まで来なかったけれども、良いサイエンスを持っている人、そういう人を呼び込む必要があって、そのためにはコーディネーターが非常に大事だと思っています。コンシェルジュといいますか。SPring-8はコーディネーターを6人から8人に増やした、SACLAは1人を2人にしたと。しかし、問題は数ではなくて、やはりクオリティーで、本当に良いサイエンスを持っている人が、その人を信用してきてくれるかどうかです。だから、ある意味では、その質をどうやって維持しておられるのか。かつまた、その人だけではなくて、私はスタッフ全員がコンシェルジュにならなくてはいけないと思うのですが、その辺のお考えをお聞きしたいと思います。
【田中先生】 まず産業界のアウトカムの定量的評価ですが、これは大変難しいテーマだと思っています。難しさは、SPring-8を利用された成果の内、例えば製品にしますと、製品の内のどのぐらいの割合になっているかの評価がまず必要です。その製品がどれだけのプロフィットを生んでいるかという、メーカーさんの経営サイドの評価があります。それが社会に出てきたときに、国民の皆さんの満足感や幸せにどれくらい貢献しているか。いずれもなかなか難しい数字となってくると思います。
もう一つは、その数字自身がメーカーさんの中で持っていただいている数字になってくると思います。それを果たして開示していただけるかが非常に難しくて、どれだけSPring-8に投資したら、成果専有で実験費用でも良いですが、どれくらいのメリットがあったかは、果たしてディスクロージャーしていただけるかが難しいと思います。
そうであっても、メーカーさんで、例えば何か製品を作っていただいたときに、これはSPring-8の成果がこの中に含まれていますよということを、積極的に言っていただきたいなという思いがあります。それは、働きかけはしているのですが、なかなかその辺も難しいところがあります。
【矢橋先生】 今、田中理事が言われたとおりで、製品ベースでどうとか、売上げベースでというのは難しいわけですが、定量的な指標の可能性として、利用料収入での評価はあると思います。これは海外もそういうことをやっていますので、入り口側で見る。使い勝手を良くして利用料収入を上げるための方策については、次回以降で議論させていただきたいと思います。
あともう一点、コーディネーターのお話は非常に重要でございます。ここは尾嶋先生が言われたように、多分、みんながやらないといけないということで、その「みんな」とは、恐らくSPring-8全体で考えないといけない問題になってくると思います。これは共用、これは理研、これは専用というのではなくて、そこの共通のプラットホームが必要なのですが、そのためには多分、幾つかプロセスが必要で、ビームライン相互の乗り入れがしっかり進んでいないと、あっちに行ったら違う、こっちに行ったら違うでは駄目なので、そこもやりながら、全体としてどう対応していくか。専用ビームラインの皆さんも、そういうふうにエンゲージすることで、それぞれの機関に対してもメリットがある。その両方のメリットを考えてやっていくことが重要になっていくのかなと思います。
【田中先生】 一言だけ。コーディネーターに関して、発表では言わなかったのですが、コーディネーターさんの数を増やしていくと、それなりに効果があるとしても、増やした分に比例して効果が上がるかどうか疑問です。前回第1回のときに御質問があり、産業界から伸ばした手をハンドシェイクしてほしいという御要望があったのですが、産業利用推進室に、実際どんな形で産学とか、産業界の手を握っているのかと聞いてみたところ、一番の出会いの場となっているのは、やはり学会でした。産業界の方で特に分析部門にいらっしゃる方は大変アンテナが良いらしく、その良いアンテナを持った産業界の分析部門の方が学会に行かれて、学会発表の先生に、これは良いなというので目星をつけて、産から学に対してアプローチして成功につながっているのが、現実的にうまく行っている例のようです。それからいきますと、待っていたのでは駄目だなということで、発信していくことが必要です。学会の場でも、いろいろなシンポジウムの場でもどこでも良いのですが、分析部署に所属する産業界の方がいらっしゃるような場で、こちらから発信していく。そうすると、皆さんのアンテナにキャッチしていただけることがありますので、発信力の強化は必要だと思っています。
【尾嶋委員】 わかりました。
【雨宮主査】 いかがでしょうか。いろいろあるかと思いますが、時間が押してきて、後半の2番目の議題もあるのですが、今日、お二人のプレゼンを通して、今後、中間評価をする上で、どうしてもここで聞いておきたいということがあれば、御質問ください。よろしいでしょうか。
それでは次の議題に移っていきたいと思います。議題(2)に入ります。最初に事務局から説明がありましたが、今回第2回から第4回にかけて、SPring-8、SACLAを中心に、利用している、この委員会の先生方から、両施設の施設運営に関わる提言や今後の課題などについて話題提供をしていただくことになっております。今回は学術研究の立場で小杉委員と産業利用の立場で岸本委員にお願いしております。両委員からの御指摘や提言、また理研、JASRIからの説明を踏まえて、SPring-8、SACLAの今後の課題や推進方策について議論を深めていきたいと考えているところです。
それではまず小杉委員、お願いいたします。15分程度でお願いいたします。
【小杉主査代理】 学術研究と人材育成の観点で、期待というか、私の観点が必ずしも広い観点ではないのかもしれないのですが、日々感じているところをコメントしたいと思います。
まず、(資料5-1の)1ページ目ですが、以前の量子ビームの小委員会でも申し上げましたが、今、放射光は日本には、次世代3GeVを含めると10個のリング型光源があることになります。世界全体を見ても2割ぐらいはあるのではないかという状態で、そのあたりの日本の特徴を出していかないといけないところを、SPring-8と次世代3GeVの2つだけで日本全体を考え、いろいろな利用者をこの2つでやっていく観点だと、施設のデザインや向かう方向も本来、加速器の特長を生かす方向へ持っていきたいところに無理なところが出てくる、得意ではないところもカバーしないといけないことになる。例えば次世代3GeVでも低いエネルギー領域までカバーするとかという要請があると、施設としては、かなり難しいところに手を出すとか、ユーザー層を考えるとSPring-8と次世代3GeVで重なる部分も結構やらないといけないとか、の問題が出てきます。5年後を目指して、次世代3GeVでいろいろ今後を考えていくときに、それで良いかという問題があります。
ただ、今はどの施設も基本的には学術、産業、教育はそんなに違いはなくて、やはり、良い装置で良い研究をしないと教育にもならないし、産業利用も、余り性能が出ていないようなところで産業利用をやれるかといったら、そうでもありませんので、基本的にはハードウェア的には似たようなところを目指すことにはなると思います。
その中で、日本に10のリングが、もう5年後には、そういう体制になるかと思いますが、老朽化で止める施設ももしかしたら出るかもしれないのですが、それでも10近い施設です。今までは、どこでも同じことができるように共通化とか、いうところをやってきたのですが、今後、日本全体を考えると、それぞれの施設の得意なところをやっていかないといけないということになると思います。
(資料5-1の)2ページ目になりますが、例えば次世代に向けてSPring-8が向かう方向はカバーするエネルギー領域が現在に比べては少し狭くなるかもしれないのですが、輝度の方向で頑張っていく方向だと思います。そういうSPring-8の次の計画をやっていくときには、必ずしも今の利用者をすべてカバーできるかというと必ずしもカバーできない。性能を追い求めると、ある部分は他の施設に持っていかないといけなくなる。次世代3GeVでやらねばならないことになると、それが足かせになります。
(資料5-1の)3ページになりますが、黄色の部分の学術の施設は、5年後になると40歳を超え出しますので、かなり苦しくなる施設もあるのですが、そういう学術の施設の特長を生かして、もっと連携がとれるような形を日本全体で設計していかないと、10か所もリングがあるぐらいの、世界では非常に進んでいる国でありながら、他のところでやってきたことしかできないようなことにもなりかねないので、こういう作りをしていかなければいけないという重要な時期かなとは思っております。
黄色のところは、例えば真空紫外の領域、例えば100エレクトボルトとか、その下のところは学術でしっかりやっていくとか、あるいは輝度やコヒーレンスを求める場合には電子のバンチ長が短くできないため、パルス特性を使うのは難しくなってきますので、そういうところを学術でやるとか、アンジュレーターの高速スイッチングとかをやり出すと、輝度を求めて安定的に光を出す加速器ではなかなか受け入れにくくなるかと思いますが、そういうところを学術でやるとか、いろいろなことがこの黄色のところでやれる余地があります。第3世代の加速器は、ある意味、オールラウンドで、アンジュレーターも使えますし、偏向部も使いますし、いろいろなことがやれるのですが、これが輝度やコヒーレンスの方へどんどん伸びていくとオールラウンドではなくなってきますので、日本全体でオールラウンドにする作りをしていかないといけないかなという感じがしています。そういう中でSPring-8の在り方あるいはSACLAの在り方を考える必要があるということです。
SACLAの方は、先ほど矢橋さんからお伺いした中では、かなりうまくやろうとされているので、SPring-8と同じことではない形で進んでいますので、良いところはうまく生かせたらなと思いましたので、主にSPring-8を中心としたコメントをあと2枚でやります。
まず、(資料5-1の)4ページになります。日本の特殊事情は先ほど言いましたように、10か所のリングがもうすぐできるし、SACLAは1台ですので、わりとSACLAの方は施設主導で、うまく設計されているかなという感じがするのに対して、SPring-8は作ったころのことを思い出すと、わりとその時期に使っていた汎用的な手法が中心で、共用施設であることもありまして、利用度重視になっていました。今から見ると汎用的手法ばかり。1キロメートルのビームラインとかは先を見た作り込みはしていて、コヒーレンスの問題とか、いろいろ新しいことは手がけてはおりましたが、一般的には、共用施設という見方から、わりと汎用的な手法が中心だったのではないかと思います。余り施設の個性が見えない。どこでもやれることがSPring-8でもできますと。今から思い返すと、そういう感じだった。
あと、これは施設にいるとわかるのですが、論文を見たときに、どの施設のものかがわからない論文が多くて、いろいろなところの施設を使って1つの論文に仕上げていますので、施設側からすると、自分の施設だけ使っていただいて成果を上げてほしいのですが、論文を読んでも、出てきた図なんかがどの施設でとったかがわからない。そういう論文が多くて、そのあたりが施設側に立つと、いろいろと気になっていて、是非、ここだけでやってほしいと、ユーザーを抱え込む方向へは行くのだとは思いますが、装置そのものが汎用的な手法なので、余り施設の特徴を出す方向性がなかったかなと。
SPring-8を作ったところで、本来は顕微鏡的な手法を、輝度もありますし、どんどんやっていかなければいけなかったのですが、今から見ると、少し顕微法に対する遅れが当初はあったかなと思います。今、SPring-8は、かなりそこに力を入れておられるので問題はないのですが、共用という観点で施設を設計すると、こういう取り組みが後手になる問題が学術から見てあったということになります。
これからの共用は、やはり施設の性能を生かせる研究に重点化したり、差別化したりしてやっていかないといけないことがあると思います。ただし、SPring-8のような大型施設は、そこで特殊な実験ばっかりというわけにはいかないので、どうしても汎用的なことをやらないといけない使命はあるのですが、そういう中でも、世界を見ながら、差別化するような手法を先を見ながらやっていく作り込みをしておかないといけないのではないかと思います。
それから、先ほど3ページ目で言ったような黄色の部分の役割なんかを考えると、例えば時間分解という意味では、かなり光の特性は違うのですが、使う側からすると、PF-ARの時間分解の実験を踏まえながらSACLAに行くとか、ユーザーの中ではARで経験を積んだ人がSACLAに行っているケースもそこそこありますし、最近の海外、欧米の利用者から聞いても、せっかくARとSACLAがあるのだから、そういうものを是非一つの課題でやれるようにしてくれないかとか、このあたりはかえってややこしくするので、まともにプログラムとして考えるのは難しいかもしれないのですが、そういう要望もユーザーからは聞いていますので、連携をとっていくのは非常に重要かなと思っております。
今までの使い方はどこでも同じことができるということで、各施設共通化とか、そういうところに力を入れていたのですが、施設を使い分ける時代に向かっていかないと日本の特徴が生かせないのではないかとは思っております。施設の性能を生かせる、使い分けるところで、特徴を生かせるところで学術が関われる仕組みができれば良いのではないかと思っています。これは学術から見た場合の共用施設に対するコメントです。
スパコンも共用で京コンピューターを運用しているのですが、どういうふうにやっているかというと、必ずしも京だけではできないので、大学にある大型のスパコンの計算機センターとうまく組んだ形でやっております。同じハードウェアではありませんので、使い分けを考えたプログラムを京では作っておりますので、放射光でもそういうことができるのではないかという気がしております。
最後の(資料5-1の)5ページは人材育成なのですが、今まで専用ラインが57本の内、20本もあるということで、4割までは行きませんが、かなり数が多いところですが、今までの専用ラインは、上流から下流まで作れということで、かなり予算的には大きいのですが、そういう予算が取れた時代はよかったし、民間からすると、それほどコスト高というわけではないのかもしれないので、作られてきたことは確かなのですが、作った最初は良いのだと思いますが、人材的に上流から下流まで専用ラインが作れるかというと必ずしもそうではありませんし、似たようなビームラインにならざるを得なかった。SPring-8側では、そのあたりは技術協力をして作ってきたのだとは思いますが、全体として専用ラインが特徴を出せるところまではたどり着いていなくて、結局、専用と言いながらも汎用的な手法になっているのではないかと思います。たとえそこで特徴を出しても、いずれ特徴がなくなり、汎用的になりますので、そのあたりの次の手を専用ラインで打てているかというと必ずしもそうではなさそうだと私は見ております。
10年もたつと、先ほどもありましたように25番のケースなんかがありましたが、予算とか人とか技術はなかなか維持だけでも難しくなり、高度化になると余計に難しくなると。下手すると、世界的な観点から見ると少し落ち目になっているところでも、20年ぐらいは使うことになって、20年もたってしまうと、その時点では老朽化、あるいは場合によっては陳腐化、あるいは施設から見ると荷物になるというところまで行ってしまいますので、いろいろ専用ラインの作り込みは難しくて、今後考えていかなければいけないところだとは見ております。
専用ラインを作るときは、やはり施設は受け身であって、施設側で本当に今後作りたい専用ラインが作れてきたかというところは疑問で、なかなか施設としての全体の戦略性が持てなかったのではないか。これからの専用ラインは、基本的にはデータを出すところは下流のエンドステーションだけですので、エンドステーションで特徴を出すところをしっかり施設側で評価してやっていただかないと、同じようなものができてしまうし、それが上流まで影響しますので、ここはしっかりエンドステーションで特徴を出すという視点をちゃんと専用ラインで持っていただく方向でやっていただくのがよいかと思います。これは学術でもエンドステーションぐらいなら、何とかいろいろと人も含めて手を打っていけますが、上流まで何とかしろと言われると、なかなか大変なので、このあたりは上流部のところはしっかり施設側でやっていただくのが良いのではないかと。
上流側の賞味期限は20年ぐらいで、老朽化が始まる消費期限は30年。これは長く見て、これぐらいだと思うので、20年、30年は施設側でしっかり人材育成を上流部でやっていくのがよいと思っています。場合によっては、日本全体で考えて、施設間で連携しながら、上流部でチャレンジングな、先を見たことを、そのタイミングでやれるようにしていくのが重要ではないかと。下流部はエンドステーションで、世界的に見て性能を出せるのは10年、あと残りの10年は汎用化するなりして、20年もたてば、同じ装置はもう使えませんので、そこは人材育成という意味でも最初に作って、5年、10年で人を育てて、しっかり大学で人材を出していくと。そこは論文の成果につながるところだとは思います。
あと施設側は、専用ラインは受け身と書きましたが、主導的に戦略的にエンドステーションの入替えをやっていくことをやっていかないと、今後は難しいのではないかと。共用に出すビームタイムを2割とかという設定をされているとのことですが、段階的に共用化していくのも一つの手ではないかと。10年たつと100%に行くのが適当かどうか知りませんが、そういうところで広く、せっかく学術なり、先端的なエンドステーションができたのであれば、それを成果に結びつけていくためには、共用ビームタイムは一定ではなくて増やしていって、いずれ施設側でも展開できるような形のプログラムができないと、専用はそこで閉じてしまうと、20年の間、そこで何が起きているかわからない状態で、陳腐化した後、維持できないで終わりということでは、施設全体を見たときに、20本もあると大変かなという気がします。
最後に、緑のところで書いていますが、自動化、メールインサービスの時代を今迎えておりますので、施設側は利用者育成というところで人材を作るというよりは基幹分野でしっかり人材を作って、先を見ていただくのが良いのではないかと。本当は専用ラインこそ、施設の特徴が出せる特徴あるものを作るのが多分、本来の目的だと思いますので、例えば産業利用でも専用ラインを持ちたいといった場合に、予算があるから新たに作るのも良いのでしょうが、できるのは汎用的になりがちなので、そこは現在既にある汎用のビームラインを使っていただくようにして、そのビームラインを作るための予算はうまく施設側に入って新たなことができるようなシステムを作らないと、せっかくの予算ももったいないような感じがします。
それからあと、学術で問題になっているのは、エンドステーションでいろいろ若い人がアイデアを出したりして、大学でいろいろな特徴ある装置を作ったりはあるのですが、それを持ち込むフリーポートがない。ここはJSTでも「さきがけ」とか、ああいう予算で、いろいろと若い人が提案して新たなエンドステーション装置を作ったところで、それを持って行けるポートがない問題があります。やはり施設には上流部をしっかり作っていただいて、その一部でフリーポート的な余裕を持たせていただければ、うまく若い人のアイデアも生きるのではないかと。そういうところが萌芽(ほうが)的な学術研究の受皿としては重要ではないかと。特に光源性能が、今のところ、日本では一番良い性能ですので、そういうところでうまくアイデアが生かせる場を作っていただきたいなと思っております。以上です。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。次の岸本委員のお話の後にまとめて質疑応答としたいと思います。少し時間は押していますが、岸本さん、15分を少し詰めるぐらいの感じでお願いいたします。
【岸本委員】 私からは、産業界ユーザーの視点として、SPring-8、SACLAに期待すべき点ということで、全ては言い尽くせないのですが、私の観点から述べたいと思います。
まず「産業界としてのSPring-8の位置づけ」についてですが(資料5-2の2ページ)、これは前回もお話がありましたが、最初は基礎的利用や研究利用から始まっていたと思うのですが、今や、もの作りの課題解決型のツール、経営戦略のツールへと進化しているのは間違いありません。それで、こういったことが成し遂げられたのは、一つは自前の装置ではなく、公共の世界最強の装置であったところが大きいかと思います。自前の装置の良いところは、いつでも利用できる便利さ、だからこそ、高価な装置を導入する根源になっているわけです。しかし、やはり自社内で使いますので、分野は限定的で、専門家が利用するのに止まることがあります。一方、公共の良さは、学術と産業に加え、様々な分野で利用されると。異分野から自社課題解決のヒントが得られたり、議論する場があることで様々なヒントが得られるから、良いところがあります。一方、先端施設は計測・解析、また解釈が難しいということで、主に分析部門が主として利用されていたと思います。これからは、SPring-8稼働から約20年経過しており、社会構造や産業ニーズも変化していますので、施設側から見えていない様々な利用・仕組みにおける課題があるのではないかとなります。
そこで、企業組織にたとえてブレークダウンしていきたいのですが(資料5-2の3ページ)、大きく分けて分析部門は2つ形態があると思っています。企業は製品を作り、顧客に売っていくわけですが、その中で営業とか、事業部だとか、研究、開発、工場と、いろいろな部門があるわけです。一つはその部門からの依頼を一手に引き受けるような分析部門を持っているパターンと、もう一つはそれぞれ組織ごとに自分たちに適した分析部門を持っているパターンがあるかと思います。例えば、こちら側の分析部門では、ミッションとしては分析することが目的ですので、すべての開発におけるニーズを把握することは困難です。ですので、利用当初は良いのですが、社内ニーズが把握しきれなく将来展望は少し鈍化してしまう可能性があります。もう一つは、こういった各部門ごとに分析部門を持っている場合、必ずしも分析専門ではないので先端施設のことはよくわからない。そうなると、ハードルの高さが原因となって、持続的な利用が欠如していくパターンがあるかと思います。こういったことを踏まえると、本当に企業ユーザーから施設に聞こえている声は本当なのか。分析部門から聞こえてくる声は本当なのか?となります。ですので、ハイスループット化などということは言うのですが、これは成果最大化の最低限のインフラ程度ではないのかと考えられるかもしれません。
こういうことを鑑みますと、本当はもの作りのこの部分(資料5-2の4ページ破線部分)ですね。そこには様々なニーズがありますので、産業利用の拡大には、製品開発の声、いわゆるニーズを聞く仕組みが必要で、産業利用推進コーディネーターの役割は、これから変わっていくべきだろうし、経営的視点からすれば、施設として、シーズから探していくよりも、やはりニーズからシーズを作っていくことの視点も考えるべきではないかなと思います。
では、産業利用推進の過去の施策から考えてみたいと思うのですが(資料5-2の5ページ)、トライアルユース等の施策は、産業利用の拡大に大きく貢献したのは間違いありません。ここで利用ヒントを得た会社は継続的に利用している。一方、一度限りで終了した企業も多い。これは何かしらの課題があったのではないかなと考えられます。先ほどからもありましたが、企業課題と計測技術のミスマッチだとか、企業側においては理解できる人材がいなかったり、分析専門家ではないのでハードルが高いといったことが挙げられるのではないかなと思います。ですので、こういったところで、産業利用推進室やコーディネーターが全ての産業分野で課題の抽出、企業ニーズの抽出をやって、先端計測とマッチングすることは決して容易ではなかったと思います。だからこそ変えていく必要性があるのではないかなと思います。一つは弾力的な運用の可能性。これはSPring-8だからこそできるのではないかなと思うのですが、例えば素人ユーザーと書いていますが、これは先ほどの製品・材料開発者みたいな人のことで、そういった人が敷居を感じることなく利用し、経験を積ませる開放ビームラインみたいなものが1~2本ぐらいあっても良いかもしれない。というのは、敷居をなくすために、ある一定の制限は設けるのですが、自由に使える。そういったところから、小さな成果を出してもらい、そういった成果を見ながら、コーディネーターが更に共用ビームラインの先端装置を使うと、こんなことができるというような引き揚げ方みたいなことができるのではないかと。そうすれば成果も最大化してきますし、継続利用も進み利用収入増にもつながっていくのではないかと思います。このような仕組みが一つ考えられると思います。
続きまして、産業利用と学術利用を分けて考えてみたいと思います(資料5-2の6ページ)。学術は世界をリードする研究成果を創出することが目的であり、企業の最大目的は、世界に勝つ製品を作って、利益を得て、国を豊かにすることにあります。ですので、この両輪が回ることが重要であり、これが牽制(けんせい)し合っていては駄目だと思います。ですので、今の成果専有・非専有という料金形態のままでよいのかということです。産業界における問題としては、先端的研究は企業トップには理解されにくい点があります。となると、利用料金が出せない。成果非専有だと論文化という義務が課せられます。となると、将来の技術種まきがなかなかしにくい状況も一つ考えられます。一方、目先の成果が見えるものは理解されやすいので、これは利用料金を出しやすい。成果専有だと更に使いやすい。そうなってくると、やはりルーチン的な測定がメインになってきますので、現在は良いのですが、将来にはどうなっていくのか予想されます。ですので、一つは弾力的な料金システムがあっても良いのではないかなと思います。例えば松竹梅と書いていますが、竹みたいなもので、学会発表するのですが、論文は免除と。ただし、料金はその間ぐらいを払うとか、そういったことがあるのではないかと。企業からは料金の低廉化要望が出ているかもしれませんが、それだけではなくて、サービスという視点で企業ユーザーのニーズに合った料金システム、こういったことをしていってはどうかと思っています。また、そういった利用収入を高度化への投資だとか、学術の先端研究への投資、単年度で予算を使い切るのではなくて、それを複数年で使えるような予算化をして、使っていく仕組みがあっても良いのではないかなと思います。
そして、これは以前よりも議論になっていますが、ビームラインの横断的利用・課題申請の在り方です(資料5-2の7ページ)。今、企業ユーザーは基本、共用ビームラインしか使えないのですが、理研のビームラインだとか、専用ビームラインを見ますと、新たな実験や成果が期待できると思うのです。しかし、なかなか利用しにくいと。そこで、こういったことは産業・学術にとって大きな機会損失になりますし、手法から課題を考えているようでは成果は生まれませんので、成果の最大化のために産業課題に適応したBL技術使える弾力的な利用システムとして、やはりビームタイム制、いろいろなビームラインが使える制度の導入が必要。そして利用形態ですね。これは課題申請が今、少し複雑化してきていますので、シンプルな利用システムが必要ではないかなと。申請の入り口さえしっかりしていれば、利用に困ることもないと思います。
もう一つ、こちら側は産業視点なのですが、共同研究体制についてです(資料5-2の8ページ)。例えば理研の優秀な研究者の方と一緒に研究を行いたくても基本は理研であり、更に理研のビームラインは使えない。そのとき企業も大学と共同研究をやっていたりとかするのですが、決して組んでいる大学の先生が放射光の専門家ではない場合もあるので、なかなか行きにくいことがあります。ですので、弾力的な共同研究やスムーズな契約体制が必要ではないかなと思います。ここに書いていますが、成果創出・最大化・ニーズの掘り起こしをするためには、基礎研究と応用研究をつなぐ役割が必要ですので、オンサイトで産業ニーズに応じて共同研究を御判断いただいて、それで共同研究を一緒にやっていくことによって機会損失を防いだり、スピードを重視して、成果を最大化していくということで、スムーズな契約ができる体制みたいなものが必要となってくると思います。
次に「人材育成における産・施設連携」ということです(資料5-2の9ページ)。企業においては、先ほども言いましたが、先端施設の活用には限界があると思っています。ユーザーとしての利用は今も可能なのですが、最先端の研究はやはり難しいです。そこで、私どもの例なのですが、先行事例としてJ-PARCと住友ゴムのフェローシップというものを始めています。こちらはJ-PARC業務に従事しながら、フェローの方に完全に機密情報まで共有化して、将来に向けた研究をしていただくことをやっております。そうすることによって、社員と多様な専門家がお互いに切磋琢磨(せっさたくま)し合うことで人材育成に大きくつながっていっています。加えて企業が抱えている課題がより明確化したりします。そうすると新たな実験デザインにつながってきたりします。そういうことが生まれています。ですので、産業の活力と書いていますが、資金や人とか、例えば社員を受け入れていただく体制だとか、産学連携に加えて施設連携の強化推進もオンサイトで判断して、スムーズな連携が可能な仕組みが必要ではないかなと思っています。
次に「ユーザーコミュニティーの最大活用」としまして、現在、SPRUC、産業界ではSPring-8利用推進協議会があります(資料5-2の10ページ)。それぞれ成果報告会だとか、研究会活動なんかをやっているわけなのですが、このシステムもSPring-8稼働当初は分かれて活動する意義があったと思いますが、今となっては、この2つに分かれていて良いのかとも考えてしまいます。やはりSPRUCにおきましては活動資金が少なく、研究会活動も限られてしまいますので、どうしてもアクティブな活動が制約を受けてしまっているのではないかと思われます。そこで一緒に活動して、企業の経営層も含めて、開発部門、分析部門からのニーズの掘り起こしなどの仕組みがあっても良いのではないかと。ということで、一緒にやってしまっても良いのではないかなと思います。ですので、こういった一体となって連携を進めていくことも重要であろうと。
最後は「SPring-8(-II)とSACLAへの期待」ですが(資料5-2の11ページ)、SACLAとSPring-8は、感覚的で申し訳ないのですが、SACLAはストロボ的であると。非常に明確に動きだとか、情報が得られるのですが、その途中の動きがどうなっているかはなかなかわかりにくいのではないかと。一方、SPring-8は計測時間が長くなりますので、いわゆる残像が残ったようなボヤッとした平均的な情報になる場合もあります。それで詳細な構造がわかりにくいと。ですので、輝度の恩恵は明らかで、見えなかったものが見えるようにはなるのですが、SPring-8とSACLAは空間的にはつながっているのですが、時間的にはつながっていません。となりますと、やはりSPring-8-IIの必要性は自明であろうし、新たな検出器開発は重要となってくる。そして、SPring-8-IIに向けたSACLAの活用推進も必要ではないかなと思っていまして、実験に対しSACLAが多少オーバースペックでも、将来性を見越して採択するようなことも考えていって良いのではないかなと思います。
最後に「SACLAへの期待」なのですが(資料5-2の12ページ)、基礎研究(学術)の進展と応用研究(産業)の推進ということが課題ですが、やはりSACLAは非常に強力で、例えば物質の電子遷移を活用した新計測技術だとか、コヒーレンスを活用した新計測技術なんかが出てきています。しかしながら、これは産業界で考えて、何かやろうというのはやはり難しいと思うのですね。ですので、こうした新発見をどんどん続けて、一つは学術成果の推進をどんどん進めていっていただいて、その中で産業的にも使えそうなものについては、計測技術を安定的に利用できるように整備する。それがあれば、新たな産業利用の創出の加速にもつながるのではないかなと考えております。
私からは以上です。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。今、小杉先生、岸本委員から、使う側の目線で、いろいろと御提案・意見を出していただきました。今のお二人のプレゼンに対して御質問や御意見があればよろしくお願いいたします。
施設側から、どうぞ。
【石川先生】 大変貴重な御意見、コメントをありがとうございました。やはり施設も20年たちますと、いろいろ変えていかなければいけないのですが、変えていく方向性は、施設側でも検討しているところではございますが、今頂いたお二人のお話とも重なるところも非常に多く、しっかり考えていくと、何となく同じ方向に行くのかなという感じがしています。
もう一つ、御指摘にもございましたように、特に放射光施設は、タイムコンスタントがかなり長いので、かなり長期的に物事を考えていかなければいけません。そのあたりを、他の制度とどうやって折り合いをつけていくかも、この中間評価で御議論いただきたいところです。
【雨宮主査】 他に。はい、どうぞ。
【内海委員】 お二人の御発表を聞かせていただいて、私なんかは、SPring-8の評価というより、次世代に向かって言っていただいているのではないかなと。共通するところは正にそこだと感じて聞いておりました。
特に小杉先生のプレゼンの5ページ目にまとめておられることは、SPring-8が今、一番の課題になっておられることでもありますし、次世代でどういう形でビームラインを作っていくのか。あるいは利用制度を構築していくのかということにダイレクトに関わってくることだと思っています。
それで、特に今日のお話を聞いておりまして、次世代のときのこの委員会での議論にもありましたように、専用ビームラインの中に共用ビームタイムを設けるべきではないかと。そういうことで次世代を制度設計しましょうということになっていたと思うのです。恐らく今でも専用ビームラインをSPring-8でどういうふうに改築していくかが一番大きな問題の一つだとお伺いしています。そういう意味で、共用法の改正そのものが必要なのかもしれませんが、恐らくこの委員会でSPring-8においても、専用ビームラインの中にかなり積極的に、あるいは強制的に、そういう共用ビームタイムみたいな話、あるいはそこに共用法に基づいてのお金、資金も入れられるようにする方向性は一つの大きな方向性として重要ではないかなと、正に再認識した次第でございます。
それからもう一つ、これはより大きな問題なのかもしれませんが、全体のお話をお伺いしていても感じるのですが、今、理研さんとJASRIさんの両方から御報告を頂いているのですが、特に専用ビームラインの改変とかに関して考えても、それが理研さんの主導で行われるのか、登録機関の主導で行われるのか。共用法をある程度理解しているつもりなのですが、そういうことに関しても、次世代放射光でも登録機関をどうするのかという議論はこれからなのだと思いますが、そういうことまで少し踏み込んだことが必要なのかもしれません。そういうふうに感じました。ただ、それがJASRIさんの経営を揺るがすような話になると本末転倒だとは思いますが、恐らく今後、SPring-8をどういうふうに変えていくのかには、やはりJASRIさん、理研さんが一体化していろいろやっていかないといけないということだろうと思っています。以上でございます。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。他にいかがでしょうか。
重要な点がいろいろ指摘されてきていますし、専用ビームラインの話は、矢橋さんの話から今後考えていくというコメントもありましたし、問題点は結構同じ項目に絞られてきていると思います。それを具体的にどう落とし込んでいくかという議論が必要になってくるのかなと思います。はい、どうぞ。
【尾嶋委員】 2つコメントがあるのですが、1つは、今の専用ビームラインの話です。産業界の方とお話をしていたら、先ほどの岸本さんのお話にもあったのですが、専用ビームラインを使いたいというのに、競争が激しくて、ほとんど入れないとのこと。専用ビームラインは非常に特徴がある、良い装置がそろっているのですが、オープンにしている割合が少ないと。実際、例えば我々が昔、電々公社としてPFにビームラインを作ったときはビームタイムの半分を一般開放しなさいと。そういうことが原則でした。SPring-8を長く使わせていただいているのですが、専用ビームラインでそのぐらいしか、まだ一般開放されていないのかというのは少し驚きました。そこの見直しはやはり必要だと思います。
それが一つと、それから、先ほどの岸本さんのお話(資料5-2)の3ページ目で、分析部門を介してSPring-8を使っている場合と介さずに使う場合、とありましたが、実際の研究開発をやっている人たちが直接来る場合があると思います。昔は分析部門の人が来て、頼まれた分析をやって回答を返すというのが多かったと思うのです。僕が最近つき合っているいろいろな会社の方を見ると、分析部門ではなくて、実際にガリウムナイトライドのHEMT素子を作ったり、リチウムイオン電池を作ったり、燃料電池を作っている、正にその人たちが来られて、横にずっといて、自分で、そこでいろいろと調整しながらデータを取っていっておられます。だから、そのデータの見方が本当に迫真に迫るというか、必死なのですよね。そういう人を連れて来ないと、間にクッション――分析センターの人を悪く言うつもりはないのですが――の人を入れてしまうと、情熱が薄まってしまわないか、と。そこは非常に大事なポイントだと思います。
【石川先生】 その点ですが、産業利用の進め方に多様性があって、その多様性があるところにトータルに対応しないと、これからは駄目だと思うのです。今までは、多様性のある一面を見て、そこに焦点を当てていました。これからとそうではなくて、全体としてどういう形でやって、その全体をちゃんと伸ばしていくためにはどうするかという議論をしていかないといけないのだと思います。もちろん分析部門が来る場合もあるけれども、分析の人の声だけを聞いていると、何か違う方向に行ってしまいそうです。
【尾嶋委員】 そうなのです。
【石川先生】 実際に開発している方とか、本当に経営トップの方が来て、何か言う場合もあるわけです。特に経営トップの方が何かこれは面白いと思うと、会社の中で風通しがよくなって、たくさんの研究者が来るようなことがあります。ただ、どの会社も風通しがよくなるわけではないので、いろいろな場合の全体像がどうなっているかを考えてみて、それで産業利用をしっかりと考えていく必要があります。
【尾嶋委員】 私が申し上げたいのはその点と、それから、そういう人が来るためには、コンシェルジュというか、コンサルタントというか、コーディネーターというか、その役目が非常に大きいので、スタッフ全員がその意識を持つのが大事かなと思います。以上です。
【田中委員】 すみません、発言して良いですか。
【雨宮主査】 どうぞ。
【田中委員】 2つありまして、1つは、時間が短すぎて、コメントを遠慮するような感じなのですね、進め方が。だから、もう少し余裕を持っていただかないと、いろいろと言いたいのだけれども、なかなか言えない。今日もかなり我慢したのですが。まあ、それはもうやめて。
今の尾嶋先生の、前から尾嶋先生のコンシェルジュというのがすごく気にかかるのですよ。言いたいことはわかるのですが、何て言うのか、研究者のトータルなパフォーマンスの中に、そういう一面があってしかるべきかもしれないのだけれども、今のJASRIのシステムみたいに、明らかにこの人はコンシェルジュという存在が本当に今後、ワークするのかなと。矢橋さんが、全員でやっていますと言われていたのだけれども、そもそも多分、若い有能な研究者はコンシェルジュになりたくないのですよね。はっきり言って。利用しに来る人たちのことを聞いて、何かすると。もちろんそれは施設にとって大切だからやるのだけれども、それはトータルのパフォーマンスの本当の一部であってほしいわけです。それでもお客様を満足させるようなパフォーマンスを組織としてどうやって引き出すかが重要なのですね。だから、どうも尾嶋先生がこだわるコンシェルジュ像は、私のイメージとは乖離(かいり)しているのですよね。
【尾嶋委員】 いやだから、スタッフ全員がコンシェルジェをやっていかないと。6人を8人に増やしても、カバーできる範囲はほんのわずかですよ。そういうことをすれば評価される仕組みを作るのが大事だなと思うのですよ。
【田中委員】 それとあと、以前、24時間、誰かいてほしいとか、言われていたではないですか。どこか海外の実験ホールに行くと、必ず夜でも人がいてくれて、何でも聞けてうんぬんのようなことをお話をされていましたよね。この会議かなんかで。
【尾嶋委員】 SSRLの話ですか。
【田中委員】 どこだったかな。まあ良いや。取りあえず多分、利用者から見ると、いろいろな要求があると思うのだけれども、先ほど矢橋がいみじくも言っていましたが、全てのテイクケアを研究者に今まで求めてきたわけだけれども、そのやり方も行き詰まると思うのですね。逆に言うと近藤先生なんかはよく言うのだけれども、施設には卒業生を出したくないよと言うわけですよ。要するにタコツボ化して、研究者としてキャリアパスを形成できなくなると見ているわけではないですか、大学の先生方は施設の研究者の職をとることは。だけれども、それをいろいろ改革してきているわけですが、そういうことは先ほどのコンシェルジュの話ともつながっていて。もちろんサービスは組織としてちゃんとやるのだけれども、研究所に勤めている研究者は、ちゃんと研究業務をその中でやれると。ちゃんとビジョンと自分の計画をインテグレートして、キャリアパスを考えていけるような仕組みを作らないと、多分、持続的に人材も入ってこないし、ずっとパフォーマンスを維持することは非常に難しいのではないかと。
【雨宮主査】 この問題は産業利用に対して、ファシリティースタッフの人材をどう育成するかということ。非常に難しい問題なのですよね。それはコンシェルジュとかというタームによらず、ファシリティースタッフが産業利用にどう関わるか。これはSPring-8だけではなく、次世代でももっと大きな問題になると思うのですが。
【田中委員】 でも、似たようなことは、多分、アカデミックな利用でもあるのではないですか。
【雨宮主査】 いや、アカデミックな利用の場合には、論文になるかどうか、自分の関心とマッチするかどうかでわりと選べるのでまだ良いのですよ。もちろん学術の共同研究でも、大学の研究ほどは独立性はない、自分だけではできないという問題はあるかもしれないけれども、産業利用になると、もっと難しいわけですよ。産業利用の評価軸はどうするのですかと尾嶋委員から御意見がありましたように、産業利用に関わったスタッフはどうやって評価されるかが、その問題と非常に関係してくるのですね。
【田中委員】 評価もそうだし、やはりシステムですよね。
【雨宮主査】 ただ、コーディネーターが必要だと思うのは、産業界の人が使いたいときにワンストップがないと、たらい回しになる可能性がある。これだけは最低限防ぐコーディネーターは必要だと思います。次の段階で、コーディネーターからファシリティースタッフに話が回ったときに、その人が嫌な顔をするか、やる気になるかというのは評価の問題と密接に関係します。
【田中委員】 もちろん嫌な顔はしてはいけないですよ。やるのですが、それもシステムに依存していて、アイソレートされて、その人だけが例えばビームラインに張り付けさせられて、全部をやるのだと言われたら、これは大変だなと。だけれども、グループでやるとか、後方のバックアップ体制があって、他の人がエンジニアリングな、かなり部分を共通化する部分は別のところが受け持ってくれて、その方がトータルの仕事のどの部分をやるかはすごく重要なのですよ。そのシステム設計が。
【雨宮主査】 時間が来ていますが、発言されていない委員の方で、特に今回という方で一言あれば。
【金子委員】 コーディネーターに関しては私も意見がございます。必ずしも各社、若しくはSPring-8さんやJASRIさんにコーディネーターがいなくても良いのではないかと思っております。なぜかというと、近年、分析会社さんの中には、量子ビームに力を入れているところもあり、そういうところとうまく組めれば良いのではないかと思っています。どこか一施設でコーディネーターに期待されるサービスを全部担保するのは難しくて、更に言うと研究者と技術者という位置づけからいけば、間に、そういう分析会社が一層入った方が矢橋先生が言われたような切り分けみたいなところもやれるのではないかなと思います。
あと、分析会社の良いところとしては他の施設も知っている。例えば、SPring-8の方たちは自分たちの施設の装置のことはよく御存じかもしれないけれども、よその施設やビームラインについてはそれほど詳しくなかったり、若しくは放射光と中性子では何が違って、どっちを使った方が良いのかとか、そういうコーディネートまでをやろうと思うと、難しいと思うのです。ユーザーの本音は、いろいろな施設を知っている、若しくはいろいろな分析手法を知っているコーディネーターが本当は一番欲しいと思います。そうすれば、企業の研究者自身がそこに頼めば、どういう分析をすれば一番良いのかをアドバイスしてもらえて、かつ、やったことがなければ、そこの分析会社がかわりにやりましょうかといって、テクニックの部分はやってもらえるという仕組みとか。そういうところは、あえて施設が頑張らなくても良い部分もあるのではないかと思うので、これは今後、議論させていただきたいなと思うところです。以上です。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。では、簡単に。
【小杉主査代理】 今言われた放射光と中性子とか、そういう使い分けをしっかりやるところは私のいる研究所が本当はやらないといけなくて、今、そういう作り込みをいろいろ組織も変えながらやっているところです。施設は、手法にこだわっても、深く入っていませんので、いろいろな分野に応用するのがミッションでしょうが、手法にこだわりがないと施設もよくなりませんので、むしろ物に主体に置いている分野の研究者は、いろいろな手法を使わないといけないので、それを1人の人が兼ねるとタコツボに入るので、タコツボに入らないような仕組みを研究所で作ろうとしています。今現時点ではなかなか難しいのですが、今後、そういう方向はあるかと思います。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
司会の不手際で、質疑応答、ディスカッションする時間が非常に限られてしまって申し訳なかったと思います。本日、質問できなかった事項について、事務局宛てに箇条書で良いのですが、この点、この点を質問したかったと。それだけでも結構ですので。
【宮内委員】 コメントでも良いですか。
【雨宮主査】 ええ、コメントでも良いです。是非、今日、せっかく来ていただいたのに全然発言していただかなかった委員が何人もいらっしゃるので、是非よろしくお願いいたします。
議題としては今日はここまでですが、全体を通して何か御質問ありますか。
【尾嶋委員】 今日は、やはり詰め込み過ぎでしたね。
【雨宮主査】 ええ。
【尾嶋委員】 議論を中心にした方が良いと思いますよ。
【雨宮主査】 また次回、事務局と相談しながら、12月に2回ありますので。3回にはできないので、2回でどうやるかを議論したいと思います。
今後のことについて、事務局からお願いいたします。
【大榊補佐】 すみません。今日は結果的に詰め込みになってしまいました。今後の推進方策のところは重点的に御議論いただきたいという趣旨もございまして、本来は3回目にやる予定でしたところを2回目に少し回して議論を、と思っておりましたが、逆に質疑のお時間が余り取れずに大変申し訳ございませんでした。次回の会議では、今後の推進方策を中心に議論することになりますので、もう少し時間に余裕ができると思います。
それで、次回でございますが、12月6日を予定してございます。その次の回も12月25日の開催予定としておりますが、正式には1週間前に御連絡をさせていただきたいと思ってございます。
また、主査からお話がございましたように、今日、御議論のタイミングでコメントや御意見とか御質問とかをいただけなかった委員の皆様で、御質問・御意見等がございましたら、私ども事務局宛てに御連絡をいただければと思います。
本日の資料はウェブサイトに公表することといたします。また議事録につきましても、確認させていただいて、アップロードしたいと思ってございます。不要な資料等については机上に残したままにしておいていただければと思います。以上でございます。
【雨宮主査】 では、以上をもちまして第2回のSPring-8、SACLAの中間評価を閉会いたします。
本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

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