令和6年8月1日(木曜日)13時00分~15時00分
文部科学省内15階局1会議室及びオンラインのハイブリッド形式
小杉主査、高原主査代理、大竹委員、川北委員、岸本委員、阪部委員、高橋正光委員、高橋瑞稀委員、唯委員、森委員、矢橋委員、山重委員
野田研究環境課課長、伊藤研究環境課課長補佐
高輝度光科学研究センター雨宮理事長、安藤理事、坂田理事
【野田課長】 ただいまから第12期量子ビーム利用推進小委員会、第55回を開催したいと思います。
本日は、お忙しい中、御出席いただきまして、また、この暑い中、誠にありがとうございます。本小委員会の事務局を担当させていただきます科学技術・学術政策局研究環境課の野田と申します。7月11日付で、前任の稲田に代わりまして、研究環境課長に着任いたしました。今後どうぞよろしくお願いいたします。
本日ですが、オンラインとのハイブリッド形式で会議を開催しております。全14名の先生方のうち、12名の委員の皆様に御出席いただいておりまして、対面による御参加が9名、オンラインでの御参加が3名となっております。御欠席者につきましては、石坂委員、古川委員をお伺いしております。
なお、議題3の「SPring-8/SACLAの中間評価について」に関連しまして、高輝度光科学研究センターより雨宮理事長、安藤理事、坂田理事にお越しいただいております。
本日は、会議公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるユーチューブでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
では、次に、配付資料の確認をさせていただきます。ZOOM上に画面共有しておりますので、御覧ください。画面が見えにくい方いらっしゃいましたら、適宜、事前にお送りしている資料を御覧ください。
配付資料ですが、資料1、それから、資料2は、2-1から2-3、資料3は、3-1から3-3を配付しておりますので、御確認をお願いいたします。何か御不明点などございましたら、会議中でも事務局までお知らせいただければと思います。よろしいでしょうか。
それでは、以降の議事につきまして、小杉主査によろしくお願いいたします。
【小杉主査】 それでは、早速議題に入りたいと思います。今日は、主な議題が三つございますけれど、まず最初、議題1、量子ビーム関連政策の動向についてということになっております。
それでは、資料1につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【野田課長】 それでは、資料1を御覧ください。いわゆる骨太の方針等における量子ビーム利用関係の記載について、資料にまとめております。
まず一つ目が骨太の方針でございます。骨太の方針には、官民共同の仕組み等による大型研究施設の戦略的な整備・活用・高度化の推進という文言が昨年とほぼ同様に入りまして、これに加えて、注釈として、SPring-8、NanoTerasu等ということで、今年度は具体的な説明も入った形で決定されております。新しい資本主義のグランドデザイン等に関しましても、SPring-8、NanoTerasuの整備・活用・高度化を図るという文言が盛り込まれております。
また、2ページ目ですけれども、統合イノベーション戦略2024に関しましては、さらに具体的な内容が記載されておりまして、SPring-8-Ⅱの整備への着手ですとか、NanoTerasuの共用ビームラインの増設、量子ビーム施設の一元的な窓口の設置といった、この場でも御議論いただきました内容が盛り込まれております。
そのほか、デジタル社会の実現に向けた重点計画にも関連の記述が入っております。
御説明、以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
それでは、議論の時間を少しセットしておりますので、よろしくお願いします。質問や御意見等もお願いします。何かございますか。
1ページ目にこういう形で、注釈の形でしっかりSPring-8とNanoTerasu等と入っておりますし、学術のほうで進めている学術フロンティア関係でも量子ビーム関係の施設の計画が入っておりますので、そういう意味では、いい形で取り上げられているという感じがしますけれど、何かございますか。
【小杉主査】 何もないということですけれど、こういう形でプッシュいただいているというところで、小委員会ではさらに具体的な議論が進むかと思っておりますので、追い風を受けたというところで、議論を進めていきたいと思います。
何もなければ、ここで次に行きたいと思いますけれど、よろしいですか。
それでは、次に進みたいと思います。議題2以降は、少し時間がかかってくるかと思いますけれど、まずは、議題2は、量子ビーム分野の研究開発課題に関する事前評価等についてということになっていて、資料は2-1と2-3ということで用意されております。
それでは、事務局より説明をお願いします。
【野田課長】 では、御説明申し上げます。この研究開発課題の事前評価といいますのは、総額で10億円以上のプロジェクトについて、概算要求の前に評価をいただくものでございまして、本日御審議いただきまして、その後、量子科学技術委員会にお諮りし、さらに研究計画・評価分科会でおまとめをいただくというものになっております。文科省のほうで政策評価ですとか概算要求の内容を検討する際に活用させていただくものでございます。
今回、2件ございます。一つがSPring-8-Ⅱの整備、そしてもう一つが、NanoTerasuのビームラインの増設ということで、いずれもこの小委員会で御議論いただいた結果の報告書を基に事務局でまとめさせていただきました。簡単に内容を御紹介、御説明させていただきます。
では、まず資料2-1、SPring-8-Ⅱでございます。おめくりいただいて、4ページ目、5ページ目に概要がございまして、予算の総額は約500億ということで、年度ごとには調整中でございます。6ページ以降が事前評価票の本体となってございます。事業期間は、来年度、令和7年度から令和10年度でございます。関係する上位施策等は記載のとおりとなってございます。目的につきましては、2030年に向けて、現行の100倍の輝度を持つ世界最高峰の放射光施設を目指して、SPring-8-Ⅱの整備を実施するというものでございます。
これにつきまして、7ページ、4ポツ、各観点からの評価とございますが、これ以降が具体的な評価の内容としてまとめさせていただきました。
まず、(1)必要性でございます。国や社会のニーズに適合した事業となっているのかということにつきましては、2030年頃は、次世代半導体の国内量産が見込まれる時期等がございまして、「第4世代の硬X線放射光施設の適切な時期における実現が必要」とさせていただいております。
また、さらに、燃料電池の高度化や全固体電池、また、バイオものづくりやサーキュラーエコノミー等々、放射光技術が必須または有望視される場面が多数想定されるということ、加えて、SPring-8につきましては、共用促進法における特定放射光施設として、我が国のフラッグシップの位置づけでございます。ですので、放射光技術のフロンティア開拓ですとか、先導的役割やコミュニティ形成においても中心的役割を担うことが期待されているということで、以上から必要性は高いとさせていただきました。
次に、有効性でございます。有効性ですが、まず最高輝度が約100倍になるということで、空間分解能が1ナノメートルとなりますので、先ほど申し上げたような社会的なニーズに対応し得るというところ、それから、ユーザーアンケートにおいても、現在の受入れ可能日数を大幅に超える希望がございますが、SPring-8-Ⅱへの高度化によって高精細なデータが短時間で取得可能になりますので、研究の実施効率の向上が可能になるということで成果創出に貢献していくことが見込まれるとして、有効性も高いとさせていただきました。
次に、(3)効率性でございますけれども、技術革新、マルチベンドアクロマットラティスの採用等の技術革新の取込み、それから、利用者への影響を最低限にするための、運転停止期間を約1年間にとどめるといった取組などによって着実に整備を行うことにしています。
加えて、電子ビームの加速エネルギーは8GeVから6GeVに低減し、また、偏向磁石を電磁石から永久磁石に交換するなど、電力効率も改善するということで、効率性は高いとさせていただきました。
以上より、5ポツの総合評価でございますけれども、本プロジェクトについて、ナショナルプロジェクトとして早期に実現すべきであるとさせていただいております。また、上位施策にも合致したものとしております。
また、(4)その他というところに留意事項を記載しております。この小委員会でおまとめいただいた報告書にも記載いただきましたユーザーへの還元策の検討ですとか、利用制度、それから、利用料金のアップデート、効果的な広報など、こういった点を留意事項としてつけさせていただきました。
続きまして、資料2-2です。NanoTerasuの共用ビームライン増設でございます。こちらについては、予算総額、約80億円を見込んでございます。
5ページ目以降が事前評価票となっております。
開発事業期間は、令和7年度から令和9年度でございます。
目的でございますけれども、NanoTerasuの持つ価値を最大化するということでございます。
概要としては、NanoTerasuには28本のビームラインが整備可能でございますけれども、現状、共用ビームライン3本を含む10本が整備されているということで、まずはフェーズⅡとして、ユーザーニーズの高いビームラインの整備をするということです。今回、事前評価でお諮りするのは、このフェーズⅡの整備でございます。また併せて、DXも含めた利用環境の整備も行うとしております。
各観点からの評価でございます。まず必要性につきましては、現状では、共用ビームラインが3本ということで、利用機会も限定されているということがございますので、ユーザーニーズに対応して、施設から生み出される成果を最大化するということで、必要性は高いとさせていただいております。
続いて、7ページ、有効性でございます。フェーズⅡにつきましては、ユーザーニーズが高いものということで、言わば放射光施設の基本的かつ汎用的なビームラインと言える用途を持ったビームラインを建設・整備を行うことにしております。また、それを我が国唯一の第4世代放射光施設であるNanoTerasuに整備することで、革新性、発展性のある研究成果の創出が期待できるとして、有効性は高いとさせていただいております。
また、効率性につきましても、QSTにおける外部有識者の検討委員会での検討ですとか、また、この小委員会でも御議論いただいたとき、妥当としていただいたものでございますので、効率性は高いとさせていただいております。
5ポツの総合評価として、以上から積極的に推進すべきであるということで、まとめさせていただいております。
また、(4)のその他のところでは、この場でも御議論いただきましたユーザーへの丁寧な説明ですとか、また、自動化、遠隔化といった研究環境の整備、人材育成といったことも盛り込ませていただいております。
御説明、以上でございます。
【小杉主査】 資料2-3についてもご説明をお願いします。
【野田課長】 資料2-3、量子ビーム分野研究開発プランについても続けて御説明させていただきます。
今のこの2つのプロジェクトを反映させていただいております。1ページめくっていただきまして、2ページでございます。まずNanoTerasuに関しましては、今年度から運用が開始されまして、施設名が決定されておりますので、そこを改定させていただいているということが1点、変更点でございます。ただ、ここは内容は変更しておりません。
今回追加いたしましたのが、NanoTerasuの共用ビームラインの増設、それから、SPring-8-Ⅱの整備でございます。それぞれこの研究期間において実施するということで追加させていただきました。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。それでは、少し時間を設けたいと思います。基本的には、この小委員会でまとめた報告書がベースになって作られておりますけれど、最初の資料1にありますように、少し追い風も受けておりますので、それも反映させた形で、仕上がった案にはなっているかと思いますけれど、何かございますでしょうか。
私が気づいたのは、例えばNanoTerasuのビームラインの増設の年次計画というのは、予算も確定していなかったので、一度ここでは、年度を入れた議論をしていたんですけど、最終的に報告書のほうには年度を削る形で出たと思うんですけど、今回、年度が入った形にまた戻っておりますのは、多分この追い風があったというところを受けて、具体的に予算取りに入っていくという計画になっているかとは思います。その理解でよろしいですか。
【野田課長】 はい。今回、フェーズⅡに関しましては、具体的にこのような形でお諮りします。
【小杉主査】 何かございますか。
今回の事前評価の案は、この小委員会から上の委員会、量子科学技術委員会で審議して、さらに上の委員会にかけるという形になっておりますので、委員名簿では利害関係者を外している形にそれぞれなっております。
ほか、何かお気づきの点ございますか。
【小杉主査】 本小委員会では、定期的に共用施設は中間評価を続けておりますけれど、今回の二つについては、その事業が終わったあとの事後評価も行うというのが入ってくるかと思います。
今後、この辺のタイミングをうまく合わせて、同じような内容のことを二度やることにならないように、少し中間評価の時期をずらしたりという調整が入ってきますけど、資料2-3は、うまく予算が認められたときのペースになっているかと思います。小委員会の場合は2年ごとに委員が交代していきますので、今いる方がどこまで関わるか分かりませんが、こういう予定になっているということかと思います。
【森委員】 よろしいでしょうか。
【小杉主査】 森委員、お願いします。
【森委員】 どうもありがとうございます。NanoTerasuのほうの増設に関しましては80億という提案が出ましたが、ビームラインは、少なくとも何本要るなど、80億の根拠はあるのでしょうか。数に関しては記載がなかったと思います。
【野田課長】 ここでは明記しておりませんけれども、御議論いただいた報告書のフェーズⅡは、5本だったかと思います。
【森委員】 その通りと思います。
【野田課長】 その5本に関してでございます。もちろん予算がどこまで認められるのかとか、そことの兼ね合いにはなってまいりますけれども、まずこのような形で進めるということで評価をいただきたいということでございます。
【森委員】 その部分で、5本はフェーズⅡとして必要であるということは書き込まないで、予算だけなのですかというのが質問なのですけど。やはりどのくらいの規模なのかを明記した方が良いと感じます。
【野田課長】 ありがとうございます。そういう意味で、確かに報告書と照らし合わせないと、フェーズⅡがどの程度なのかというのが読み取れないかと思いますので、そこは追記させていただきたいと思います。ありがとうございます。
【森委員】 はい。ありがとうございます。
【小杉主査】 これは事前評価の案のところに追記されるということなのですね。
【野田課長】 はい。そのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
【小杉主査】 では、その修正が入るということで。ありがとうございます。
【森委員】 あと、SPring-8関係で、課題数は増えているのですが、論文数が減っているように見えました。ただ、産学連携等では多分貢献しているところもあると思うのですが、そのような成果もあれば明記すると良いと感じます。コロナ関係も影響していると思いますが、アウトカムのこの論文が減っているのが気になりましたのでコメントです。
【野田課長】 ありがとうございます。ここでアウトカム指標として、研究論文の発表数というところは、これまでのSPring-8のものを記載させていただいています。ただ、今回の事前評価票は、次のSPring-8-Ⅱの整備ということで、このアウトカム指標について、あまりこの中で触れてはいないところです。おっしゃるとおり、SPring-8でこれまで成果を生み出してきたというところは少し追記させていただければと思います。そのような形でよろしいでしょうか。
【森委員】 はい。ありがとうございます。以上です。
【矢橋委員】 すみません。私も補足コメントさせていただいて。
【小杉主査】 ええ。補足をお願いします。コロナの影響とかですか。
【矢橋委員】 ありがとうございます。矢橋です。今いただいたコメントですが、直近の論文数というのは、実は把握が十分でなくて、これは通常、これからまだ増えていきます。したがって、恐らく論文が顕著に減っているということはなくて、少なくとも、例年並み、令和5年度もそうなると予測はしております。
以上です。
【森委員】 安心しました。ありがとうございます。
【小杉主査】 変わるのは令和5年の統計だけですか。
【矢橋委員】 ええ。まだこれはユーザーから申告を受けて、それで増えていく分が結構ありますので、その分が。
【野田課長】 そうしますと、そのことを少し注釈で書いたほうがよろしいかと思いますので、そのような変更にさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
【小杉主査】 そうですね。注釈を入れないとちょっと何となく。令和3年、4年だと誤差範囲かと思うけど、5年まで見ると減少傾向と読んでしまいますので。
【野田課長】 はい。ありがとうございました。
【小杉主査】 ほか、何かございますか。
【高橋瑞稀委員】 今、御質問してもいいですか。
【小杉主査】 はい。高橋委員。
【高橋瑞稀委員】 NanoTerasuの今回の研究開発課題のところでは、フェーズⅡのお話というふうに言われましたけども、この先、フェーズⅢ、フェーズⅣの段階になってもまた同じような課題という形に提案がされるという理解でよろしいんですか。
【野田課長】 はい。やはり総額10億円以上を超えることになった場合には、このような形で事前評価をいただくことになりますので、その際はまたよろしくお願いいたします。
【高橋瑞稀委員】 ありがとうございます。そうしますと、この表題がビームライン増設という書き方になっているんですけども、これはまだこの先もさらに、何度かビームラインの増設、同じ名前であらわれることになるんですかね。
【野田課長】 またその際に調整等をさせていただくことにさせていただければと思います。
【高橋瑞稀委員】 理解しました。ありがとうございます。今回はフェーズⅡの話ということで。その話を聞いて、さっき資料を見せていただいて気になったのが、(3)について、文言、内容は全く問題ないと思うんですけども、詳細があまり記載がないもので、今回、フェーズⅡという形に分けて提案するということ自体が効率的なのかという理解をしているので、何かフェーズⅡとして、このユーザーニーズの高いところに集中することが効率なのだというような書き方をしてもいいのかと少し思ったというか。
【野田課長】 そうですね。ありがとうございます。有効性の部分に書いた内容と重複する部分があるかとは思いますけれども、改めてこちらにも書くような形で整理させていただきたいと思います。御指摘ありがとうございました。
【高橋瑞稀委員】 内容は全く問題ないと思います。ありがとうございます。
【野田課長】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほか、何かございますか。阪部委員、お願いします。
【阪部委員】 開発事業期間は、NanoTerasuのほうは7年から9年ということで、SPring-8は10年ということですが、期間には関係なく、先ほど御質問ありましたように、ある額以上になれば毎年同じような手続をするということでしょうか。
【野田課長】 そうですね。総額ですので、SPring-8-Ⅱですと、この4年間、NanoTerasuですと、3年間の総額で10億円以上ということでございますので、期間に限らず、全体の額が10億円以上になったらこのような形で一度評価をいただくということでございます。
【阪部委員】 総額でということ分かりました。あと、細かいことで恐縮ですが、NanoTerasuのほうはプラン名が「量子ビーム分野研究」となって、SPring-8は「量子ビーム研究開発」となっており、「分野」という語句がプラン名とかプログラム名のところに入っていませんが。正式の名称が分かりませんが。
【野田課長】 ここですね。ありがとうございます。これは「分野」が抜けているかと思います。大変失礼いたしました。
【阪部委員】 ああ、そうですか。細かいことですみません。
【野田課長】 ありがとうございます。恐縮です。
【小杉主査】 本当ですね。
【野田課長】 その下も恐らくそうですね。プラン名、プログラム名を改めて事務局のほうで確認させていただきたいと思います。
【小杉主査】 はい。では、少し修正点が出ておりますので、あと、手続的にはどうしますか。
【野田課長】 では、よろしければ、一度修正させていただいて、皆さんにお送りしたほうがよいのか、それとも、主査あずかりにさせていただきますか。
【小杉主査】 手続論的には一応ここから上に上げていくことになるので、なるべく上では修正が入らないような形にするのがいいと思います。では、修正版を至急つくっていただいて。
【野田課長】 分かりました。それでは、委員の先生方に送らせていただいて、確認をいただくということで、よろしくお願いいたします。
【小杉主査】 では、その辺、事務局によろしくお願いします。
【野田課長】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ちなみに、フェーズⅡの議論は、一応具体的なものが出ていたと思うんですけど、今後、フェーズⅢ以降のものはまた小委員会で議論していく予定になるかと思います。QSTでのビームラインの検討では大体終わっている形なんですか。高橋委員。
【高橋正光委員】 フェーズⅢ、フェーズⅣに関しては、今後状況を見ながらまた検討するという格好で。
【小杉主査】 では、それがまたここへ出てきて、それをベースに予算化するかどうかを議論するということですね。
【高橋正光委員】 はい。そのように理解しています。
【小杉主査】 分かりました。
では、大体これで準備いただくということでよろしいですかね。
では、議題3は時間をかなり使いますので、議題3のほうに行ってよろしいですかね。では、議題3は、SPring-8、SACLAの中間評価についてということですが、まず最初に、前回の中間評価以降の主な成果についてということで、資料3-1に基づいて、矢橋委員から御説明お願いいたします。
【矢橋委員】 よろしくお願いします。それでは、まず主な成果について御紹介したいと思います。めくっていただいて、目次でございますが、SACLAとSPring-8とございまして、上の囲みにありますように、SACLAの特徴は、シングルショットのいわゆる破壊しながら計測していくと。このことによって非常に高い分解能、これは空間、時間です。オングストローム、フェムト秒の分解能で可視化していくということでございます。
一方、SPring-8のほうは、一つ一つのショットはそこまで強くないので、マルチショットで非破壊で計測していくと。これによって、いわゆる不可逆過程をトレースしていったり、コリレーションを取っていったりというところが得意とされております。その下の丸の囲みがそれぞれの光源の特徴になっておりまして、SACLAのほうは、繰り返しになりますが、非常に高い強度、それから、いわゆるDiffract Before Destroyと書いてありますが、破壊、完全に壊れる前に取り切ってしまう。それから、極限的な光の生成。SPring-8のほうは、コヒーレンス、それから、高エネルギー、それから、マルチモーダルDXといったところを追記しているところでございます。
両施設共に、フィジカルデータを非常にたくさん生成しまして、これをサイバー空間、スパコンと結びつけて成果を出していくということを進めております。この中で、本日は、SACLA、SPring-8それぞれについて3例を御紹介したいと思います。
まず、SACLAのほうから御紹介します。ページをめくっていただきまして、光化学系Ⅱの触媒機構の可視化ということでございます。これは植物の葉っぱで行われている光合成についてです。これはいろいろ、様々な化学反応がある中で、最も重要なプロセスと言えると思いますが、起点となる水分解、真ん中にありますように、H2Oを酸素とプロトン、電子に、光を使って分解するわけですが、これをつかさどる触媒として機能しているのが、光化学系Ⅱ、PSⅡと呼ばれている触媒でございます。これはいわゆる「ゆがんだイス」型の触媒がございまして、これが主要な役割を果たしているということでございますが、我が国では、岡山大学の沈先生が中心となって、これまで一連の研究を指導されてきています。非常にこのメカニズムは複雑ですし、あと、このPSⅡ自身が放射線損傷にも弱いので、非常に難度が高い研究でございましたが、SPring-8、及び一連のSACLAの計測によって本質が明らかになってきております。
今回これは、今年2024年に『Nature』に出た結果でございますが、今回の成果は、この下にあるような時分割で分子の動きを見たということでございます。もう少し具体的に言いますと、これは反応サイクル、コックサイクルといって、光を受けてクルクル回るような可逆的な触媒反応をしているわけですが、その途中のS2状態と呼ばれる状態から、酸素をつくる状態のS3状態に変化するまでの構造の変化を表しております。光を受けてからの時間が20ナノ秒、200ナノ秒、1マイクロ秒と書いてありまして、ここでは1マイクロ秒後に、ちょっと見にくいのですが、水分子、O6というのがカルシウムイオンに一時的に結合しているというのが見えてきています。その後、O6が離れまして、酸素分子の形で少し離れた場所に、左側に出現するということで、定性的に言いますと、自ら酸素が生成されるような様子、まさに上の反応式で表われているような様子が明らかになってきている、非常に画期的な成果でございます。
次、お願いします。次の例は物質科学分野でございまして、これは強磁場下の物性の研究例でございます。これは従来、例えば100テスラを超えるような非常に強い磁場を発生するためには大型の専用の設備が必要でしたが、電通大の池田先生らは、ポータブル、ポータブルと言っても大きさはそれなりにありますが、それでも移動が可能である、そういった小型のパルス超強磁場発生装置、PINK-01と彼らは名前をつけていますが、これを開発しまして、これで70テスラを超えるような非常に高い磁場の生成に成功しました。ただし、これは、左下に絵がありますが、シングルターンのコイルに280キロアンペアという電流を3マイクロ秒の間、流すわけですが、1回の通電でコイルごと、ドンと破壊されるような破壊実験。これは右の真ん中の写真にございますように、破壊実験でございますので、これはどういうふうに磁場がかかっているターゲットの物性を測るかというのは非常に大問題でございますが、こういったところに実はSACLAのフェムト秒のパルスというのは大きな威力を発揮しまして、この磁場をかけるタイミングで、真ん中のグラフがございますが、SACLAのパルスを入れると。そうすると、例えばディフラクションを見ると、構造相転移が分かる。それから、分光の情報を見ると電子状態が分かるということで、非常にパワフルな計測ツールになっております。実際に池田先生らのグループ、これで非常に強磁場下の相転移電子を観測して、それがこの成果につながっている。これもSACLAの一つの典型的な使い方でございます。
この研究はこれで終わりではなくて、その後、さらに100テスラを超えるような強磁場を生成する装置の開発にも成功しておりまして、今それを使って、さらに進んだ研究がなされているということでございます。
それから、3番目、SACLAの最後の例でございますが、これは光源側、SACLAの施設側の成果でございまして、AIを活用したSACLAのビーム調整の事例でございます。XFEL加速器というのは、実は非常に複雑なシステムから構成されていまして、具体的には、電子ビームを電子銃から出しまして、それでバンチ圧縮というのをしていきながら加速していくわけですが、その過程で数百を超えるような多数のパラメータがあって、それをきっちり合わせていかないといけない。ただ、パラメータ一つ一つに対してモニターが全部あるわけではなくて、一般的には、最後に電子から光のエネルギーに、レーザーに変換されて、レーザーの特性、しかも、強度とか、スペクトルとか、非常に限られた出力パラメータを見て、多数の入力パラメータを調整するという非常に難しいことやっております。したがって、例えばビームの状態が悪くなったときに、どこを触ると最適化できるかどうかという判断が非常に難しい。そのオペレーションは、勘と経験頼みになっていて、熟練オペレーターは大変よいが、熟練でないとなかなか最適化が難しいという、世界共通の問題がありましたが、ここにAIを導入しまして、マシンラーニングを適用することで、こういった運転員の熟練度によらないような均質な最適化を短時間で達成できるようになりました。
このプロジェクトに取り組む前に、こういう多数の入力パラメータに対して出力パラメータが少ないようなケースというのは、恐らくAI、MLにとても向いていると思って取り組んだわけですが、実際、本当にそうでございまして、この左側のグラフ、これは自動調整でビームの強度が上がっていくと。それから、右側は、これはスペクトルを見ながら、スペクトル密度を高めていくということで、こういったところがオートマチックにできるようになってきておりますので、非常にパワフルなツールになってきました。これは今後のSPring-8-Ⅱ、リングのほうも調整がどんどんシビアになっていきますが、そういったところにも展開が可能になっていきます。
それでは、次に行っていただいて、次、3例はSPring-8の例を御紹介したいと思います。
まず1例目、化学情報の時空間マッピングということで、充放電による蓄電池電極劣化の経時的進行を3次元で捉えるということでございます。皆様、蓄電池の性能が充放電によって劣化するということはよく御存じだと思いますが、そのときに中身がどうして劣化していくかということをちゃんと追求していく必要があります。この研究例では、活物質、つまり、リチウムの充電状態です。その化学状態を三次元的な空間分布及び時間発展、空間、時間、それから、ケミカルな情報を併せて5次元の情報を取得すると。これを空間分解能、例えばこの例だと数ミクロン、時間分解能は数十分でございますが、それで非破壊かつ定量的に追跡できるような手法が開発されました。これによってどういうふうに、充放電によって劣化というか、変化が進んでいくかというのが分かってきております。
ある意味で、こういった多次元の分析はこの例に限らずユニバーサルなものでございまして、このようなケミカルマッピングが様々な材料に対してなされているところでございます。これは特にSPring-8-Ⅱになったときの高輝度化の恩恵をそのまま受けるということで、空間分解能を上げる、あと、非常に短時間で取る、そういったところで、ますます重要な基盤的な手法として活用されていくことが期待されております。
次、お願いします。次の事例は、今度は燃料電池でございます。これはトヨタグループによってなされた成果でございまして、燃料電池のセルの中身のところの最適化を図るということでございます。この燃料電池というのは、これも皆様よく御存じのように、いわゆる水素を燃やして、エネルギーをつくる、電気を発電するということですが、先ほどの光合成の逆の過程になっておりまして、水素を燃やしたために、廃棄物として、生成物として水ができると。そうすると、水をうまく排出する必要があります。逆に、水がセルの中にたまってしまうと、電池の効率が非常に悪くなりますので、これを速やかに排出する必要があります。このためにトヨタグループでは、モックアップをつくりまして、うまく水を排出するような構造をつくって、比較して、最適化を図った。これによって、ミクロンサイズの液水を非破壊で見ながら効率よく排出するような設計が可能になったということで、この成果が新型MIRAIの高性能燃料電池スタックの開発に応用されました。
それでは、次の例、お願いします。これは10億分の1秒の原子運動を見る放射光技術を開発ということで、東北大学の齋藤先生らが中心となった成果でございます。これは主にソフトマターの原子の動きを見ている成果でございますが、手法としましては、ガンマ線のスペクトロスコピー、核共鳴準弾性散乱と専門的には言うんですが、ガンマ線のスペクトロスコピーで原子の運動を、これは普通、X線は電子で見るんですが、これは原子核の運動を通して分析するという手法でございます。特に核共鳴散乱、非常に線幅が狭いところを利用しまして、例えばμ(マイクロ)eVとか、n(ナノ)eVとか、そういった非常にエネルギーの小さい領域のソフトマターの運動を捉えることが得意になっています。
具体的には、分光したガンマ線をターゲットに当てまして、それでアナライザー、同じようにガンマ線源を後ろに置いて、そこでドップラーシフトによって見ていくことをやるわけですが、通常、それを0次元で測ってやっていくわけですが、今回、アナライザーの後ろに新開発のCITIUS、これは理研で開発しましたCITIUSの検出器というのを投入しまして、通常、0次元のポイントディテクターで測っていくところを一気に2次元の逆空間の情報が取得可能になっています。これによってk空間でしっかり見ていくことができるようになって、これで、ソフトマターの微小な動きが見えるようになってきているわけです。これは物理的なところは非常に明確ですが、さらにテクノロジーとしても非常に進んでおりまして、下のほうに書いてありますが、CITIUSの特徴としまして、14.4keVというエネルギーに対して高い感度、高速、2次元ということがありますが、この結果として出てくるデータのレートが半端ではないような非常に大きな量が出てきます。1秒間に、ここに書いてありますように、58.5ギガバイト、1日ためると5ペタバイトということで、これは並みのデータセンターでも二、三日ですぐいっぱいになってしまうような量で、普通この量は扱えません。したがいまして、このまま生データを使うのではなくて、この検出器からデータが出たすぐ後で、いわゆるエッジで圧縮して、FPGAも使いまして、オンザフライのエッジ圧縮をしまして、これはビームタイム、1回のビームタイムで35ペタバイト出てくる見積りですが、これを1,000倍以上圧縮すると。なおかつ、その中から必要な物理量を抽出することができるようになりました。非常に先進的なデータの活用の一つのパイロット例として御紹介しております。
次のページ、お願いします。まとめでございます。非常にたくさんの事例の中で、6例抽出して御紹介しましたが、SPring-8、SACLAのそれぞれの特徴を生かした研究が大きく進展しておりまして、これはこの後、SPring-8-Ⅱでも課題になっていく持続可能な社会への貢献に対して、どんどん活用されていくということでございます。
さらには、半導体であったり、社会インフラ、土木、物性への展開というのもこの先に進めていきます。
あと、少し中でも御紹介しましたが、施設側の光源であったり、ビームラインであったり、検出器であったり、そういったところの開発においても世界をリードしておりまして、スパコンとの連携もスタートしております。
それで、事例としては、今御紹介したとおりですが、こういった成果がどのような施策によって生み出されてきたかというところは、この後のフィードバックへの対応状況の中でも御紹介したいと思います。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
それでは、今の主な成果というところに関しての御質問等、お願いします。中間評価のフォローアップそのものについては、またこの後、御紹介いただいてやりますので、まずはこの成果についての質問等をお願いします。何かございますか。
光合成の成果ですけれど、ナノ秒からマイクロ秒、ミリ秒だったら、必ずしもSACLAという特徴ではないような気がするんですけれど、その辺りはどういうふうにお考えですか。
【矢橋委員】 これは将来的に、確かにおっしゃるように、リングでもできる可能性はございますが、ただ、やはりラディエーションセンシティブというのがありますので、かなりシングルショットに近いところで取っていく必要があります。したがって、将来的にも、SPring-8等でも、例えばパルス光源的ないろいろなことをやりまして、それで、必ずしもこのPSⅡが可能かどうかは分かりませんが、もう少しラディエーションのハードネスがあるものであれば展開できる。これはまた、この後、フィードバックでも御紹介したいと思います。
【小杉主査】 最初のPSⅡの成果はSPring-8だったと。
【矢橋委員】 そうですね。あれはスタティックな構造で、ただ、そのときもやはりダメージ、結局……。
【小杉主査】 やはりSACLAで同じような系を取ると、ダメージの影響が見えたという結果があるんですね。
【矢橋委員】 そうです。当時、分光の結果と構造解析の結果で何か違っているみたいなイチャモンがつきまして、それで、それをSACLAでまずダメージフリーで測ったというのがここのスタートポイントになります。
【小杉主査】 分かりました。ありがとうございます。
【雨宮理事長】 そのことと絡めて、目次のところで、SACLAとSPring-8の特徴がシングルショットの破壊計測とマルチショットの非破壊計測とあり、非常に対称性が良いのですが、少し分かりにくいと思います。例えば、シングルショットのダメージフリー破壊計測と、「ダメージフリー」を付け加えるとちょっと重くなるけど、今、小杉主査から出たような質問に対して、分かり易い記述になると思います。下にDiffraction before Destroyがあるから、そこを見れば分かるといえば分かるのですが。ダメージフリーというのも一つキーワードかと思います。
【矢橋委員】 そういう意味では、ダメージフリー計測のほうがいいかもしれないですね。ダメージフリー破壊計測だと何か分からなくなる。
【雨宮理事長】 では、破壊計測の代わりにダメージフリーでもいいですし、結果として壊れるから、破壊計測というのも正しいんだけど。コメントです。
【小杉主査】 何かございますか。川北委員。
【川北委員】 J-PARCセンター、川北です。非常に刺激的な内容で、J-PARCでもできることはないかと思いながら見ていました。化学情報の時空間マッピングという話で、CT-XAFSという手法を開発されたというところで、なかなかすばらしいなと思っています。これは時間の分解能はどれくらいになるんでしょうか。
【矢橋委員】 この例は比較的ゆっくりでやっているんですが、今、CT-XAFSもかなり高速化を今、追求しておりまして、分まで行かない。数十秒のオーダーぐらいで測れるようにはなってきています。
【川北委員】 数秒でCTが1回、回せる。
【矢橋委員】 CTはもうちょっと速いです。XAFSのところも、狙ったところに注目すると、かなり速い現象になる。
【小杉主査】 空間分解能もいいですし、中性子も頑張っていただかないと。
【川北委員】 そうですね。中性子では、分からないものもいっぱいあります。
【小杉主査】 高原委員、お願いします。
【高原主査代理】 最後のほうで御紹介された齋藤先生の成果は、今まで見られなかった速い運動が見えているということで、これは、CITIUSの非常に速い分解能と、それからもう一つはくし形のスペクトル構造をつくり出すという、その二つの技術があるからということなんですね。
【矢橋委員】 そうですね。もともとくし形の構造のところを齋藤先生はやられて、そこで、先ほど申し上げたように、ポイントディテクターでk空間を動かしながらやったのをCITIUSで一気に取るということですね。
【高原主査代理】 これが検出器の開発とうまくマッチしたと。
【矢橋委員】 そうですね。非常にうまくマッチした典型例です。
【小杉主査】 阪部委員、お願いします。
【阪部委員】 強磁場発生についてですが、この手法そのものは比較的従来からある手法で、大電流を流せば、それに相当する強磁場はできるというのは想像つく話ですが、これは磁場の発生というよりも、そこでの対象物の物性を見るために、この発生法とSACLAが有効だということですか。
【矢橋委員】 そうですね。もちろん強磁場設備というか、強磁場ファシリティーというのはありまして、例えば、東大物性研でも運用されていると思いますが、その場合は数百テスラを超えるような非常に高い磁場が生成可能と伺っていますが、ただ、マクロな観察はできても、やはりミクロスコピックな構造であったり、そういったところは見るすべがないわけですね。そういったところがしっかり、結晶構造であったり、いろいろなケミカルの情報というのが見えるというところが非常に画期的なところでございます。
【阪部委員】 どれもすばらしくて、学術的な興味だけで聞いていれば尽きないので、ちょっと違う視点でお聞きしたいのですが、この一連の主な成果はほとんどジャーナルに発表されていますが、水素電池のトヨタさんの関係というのはどこまで成果は公開されていますか。
【矢橋委員】 これはプレスリリース等はされていると思いますが、山重さん、いかがでしょうか。
【山重委員】 トヨタ自動車の山重です。全て公開ではないですが、その中のキーとなる部分に関しては、学会発表等にて、御報告させていただいております。
【阪部委員】 ありがとうございます。あともう1点、それぞれすばらしい成果なのですが、それぞれの成果を出すのにどれだけの施設の時間を使って出されたものでしょうか。それを示されると、施設の運用という意味では有効な記録かと思います。
【矢橋委員】 ショートなお答えで言いますと、典型的には、例えばSACLAだと一個のみ、1回のビームタイムなので、3日間ぐらいございまして、2日から3日間。それを何回か繰り返して、一つの成果になっていると。SPring-8は、ものによりますが、ここに挙げている成果はもう少し、一般的なSPring-8の利用よりも長いと思いますが、一般的にはかなり今、短時間でできるようになってきておりますので、短いものだと本当に1日とかということがありますね。ただし、それを繰り返して、成果を積み重ねてやられています。
【阪部委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 大竹委員、お願いします。
【大竹委員】 AIを活用したSACLAのビーム自動調整と。こういったことは本当に様々な分野で必要とされていて、今までもいろいろな取組があったと思うんですけれども、特にこれを可能にしたというか、実現するために、何か注目したとか、または元にしてAI技術とか、またはそういったプロフェッショナルなことがあるのかということと、それから、この先やはりSPring-8-Ⅱに向けて、様々な開発をしていく上で、これを応用していく、または適用していきたいというような何か展望があって、こういう形をやったというところを。
【矢橋委員】 まず前者ですが、これは特に、特殊なMLを使っているわけではなくて、今、比較的、一般的なものを組み合わせてやっています。ただし、やはり実際やっていく上で難しかったのが出力のハンドリングです。入力のログはたくさんあるんですけども、何を指標として、オプティマイズするかというところが難しくて、一つ、強度を見るというのは簡単なのですが、あと、スペクトルというのもどういうふうに、これは1.7倍となっていますが、これをどういうふうに、どこを見ていくかというのもいろいろ細かいところの注意などをしています。
ここには書いていませんが、もう一つ、空間プロファイルというのも非常に重要でございまして、これがきれいなガウシアン的なプロファイルになっているかが重要です。状態が悪いと、我々はよく二玉とか三玉とか言っているんですが、ビームのコアが分裂したりします。そういったところの特徴量はこれまで人間が見た目で判断しているわけです。それを機械に教え込ませるところをどうやるかというところがポイントになりますが、一旦そこができると非常にパワフルなツールとなります。あとは、今申し上げただけでも三つあるわけですが、それをどういうバランスでやっていくか。スカラー値でやると、例えば100点満点で、それぞれをどういうふうに振り分けるかというところは人の判断が入ってきます。
【大竹委員】 それを今後どういうふうに展開していくかということに。
【矢橋委員】 そこもSPring-8のほうでは、特にビームの安定化というのが必要ですので、各モニターでフィードバックであったり、フィードフォワードであったり、そういったところをかけていますが、やはり人の手が入る。例えば入射の後のいろいろな調整であったり、そういったところをこういった自動化のところで補っていくことができると考えております。
【大竹委員】 先ほどの放射線損傷のないレーザー、SACLAでも多分いろいろな使い方があると思うので、目的に合った形での調整という形ですよね。
【矢橋委員】 そうです。ユーザーに応じて、この人はここを重視したいというところに応じてやっていくというところでございます。
【大竹委員】 そこのキーワードが、先ほど雨宮先生もおっしゃっていましたけど、最初のここのノンディストラクトか何かのところにピックアップできてくると特徴が出て、非常に分かりやすいタイプになってくるのかという気がしました。
【矢橋委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 岸本委員、お願いします。
【岸本委員】 すみません。岸本です。同じところで御質問というか、何気にこれはすごいなと思ったのですが、これまで運転実績のデータがあるからこういったことができるのかというところを聞きたかったのですが。
【矢橋委員】 ありますね。
【岸本委員】 データがあるからこそ、こういうことができているわけですね。
【矢橋委員】 はい。あともう一つ大事なのが、これはパラメータセットして、自動調整をやっていくわけですけども、パラメータをセットした後に、その状態がどれぐらい保てるかと。いわゆる賞味期限という問題がありまして、それが例えば10分ぐらいで崩れてしまうようなマシンだとやはり駄目なんです。SACLAは、今まで安定だ、安定だと言い張っておりまして、確かによその施設と比べるとそうなのですけども、賞味期限が長いというところもありまして、こういった自動調整が非常に相性がいいと。逆に言うと、そういうステーブルな外乱に対して強いのをつくっておくと、こういう自動調整をやると、かなりいいところまで行くということが言えます。
【岸本委員】 もう一点、ビームの位置というか、レーザーの発信の位置の安定性もこういったもので向上するんですか。
【矢橋委員】 そうです。
【岸本委員】 なるほど。分かりました。すごいですね。
【小杉主査】 では、オンラインで、唯委員からお願いします。
【唯委員】 名古屋大学の唯でございます。一つ一つの成果は、もう多分、今日お話しいただけないぐらい、かなりすごい数があるんだろうなと思うんですけれども、今、放射光自体が個々の研究だけではなくて、いろいろとそれぞれの専門、それから、産業利用も含めたプラットフォームというか、基盤として非常に大きな役割を果たしつつあるかと思います。その辺り、周辺の、例えば学会であるとか産業界を含めた基盤としての広がりのハブになっていると思いますので、そういう部分の成果の広がりをどこかで挟んでもいいかと思いました。コメントです。
【矢橋先生】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ありがとうございます。少しフォローアップのところにも関係するかもしれないので。
【矢橋先生】 そうですね。実は補足スライドが幾つかございまして、例えば北川先生のこれですね。こういったものが、ある意味で、SPring-8の様々な分析技術を駆使して、あるサイエンスのターゲットに迫っていったという例で、少し唯委員の言われたところに近いのかと思いますが、この例は、実は前回の成果のところで御紹介してきましたので、今回含みませんでしたが、こういったものが今御指摘ありましたように、様々なプロジェクト等で活用されておりますので、またそこも追々御紹介していきたいと思います。
【小杉主査】 そろそろ予定しているお時間ですけど、何かございますか。
【高橋瑞稀委員】 一言だけ。今のお話からすると、例えば、先ほどのAIの話だとか、検出器の話とか、そういうのは各種の課題にまたがる成果、今後あらゆる課題に対して効果が出てくる成果だと思うので、そういう書き方をしてもいいのかなというコメントかと思いました。
【矢橋委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 では、阪部委員、最後。
【阪部委員】 今日御紹介いただいた成果は、いずれもインパクトのある成果だと思いますが、逆に、地味ですけども長期間続けて、世界に誇れるようなデータベースをきっちり積み上げているといった、そういった仕事はあるのでしょうか。
【矢橋委員】 例えばXAFSであったり、パウダリーディフラクションであったり、そういったところが、かなりデータベースが充実してきていますので、多分それはただためるだけではなくて、いかにユーザビリティを上げていくかというところを今後やっていく必要がある。
【阪部委員】 学術の基盤として、そういう成果も強調することは重要なことかと思いました。
【矢橋委員】 そうですね。はい。
【阪部委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 では、そろそろ成果に関する御質問等はこの辺りにしまして、中間評価の指摘事項に対して、それぞれフォローアップしないといけませんので、そこに入りたいと思います。これは量がたくさんあるので、今回と次回、2回に分けて、今回は前半部分というところで、1番として、政策的位置づけと発展の方向性というところ、それから、2番として、研究成果の最大化というのがありますので、その辺りを中心に意見交換、議論したいと思います。
それでは、まず資料3-2に基づいて、矢橋委員から説明をお願いいたします。
【矢橋委員】 では、引き続きよろしくお願いします。前回、中間評価の指摘事項に対するフォローアップのマル1ということで、最初の2ページから5ページまでまとめてございます。これは前回の第1回のときもこの項目自体は御紹介されていますが、こういった数多くの重要な項目の指摘をいただいておりまして、それに対してどういう対応を5年間でしてきたかというまとめでございます。
色分けがしてありまして、右上にありますが、A’、A、B、C。実施済、実施中、準備中、検討中ということで、下を見ていただくとお分かりのように、ほぼ実施中もしくは実施済ということがこの後も含めてできております。もちろん実施中というのも、これはずっと続くというものもありますので、全体として、総じて大きな進展があったと言えると思います。
それで、今回御報告する内容は、2ページ目、それから、3ページ目、それから、4ページ目の途中までです。それで、4ページ目の大部分は次回の報告とさせていただきます。
それで、あと5ページ目でございますが、これは指摘事項のうちで、昨年度審議いただきましたSPring-8-Ⅱの整備に関する議論の中で、報告書のほうで既に取りまとめた内容と重複する論点ということで、これは今回は参考資料として後ろにつけてございますので、もしお時間があれば簡単に御紹介したいと思います。
それでは、次のページから早速、個別の事項について御紹介していきます。
まず、大項目(1)ということで、一番上、「SPring-8、SACLAの政策的位置づけと発展の方向性」ということの下に小項目がございまして、おのおのについて紹介したいと思います。
まず、(1-3)SPring-8の分析装置や周辺設備の整備等の在り方の検討、施設の運営方針への反映状況はどうかということでございます。これはもちろん整備していくわけですが、そこの整備に当たりまして、ユーザーの意見、議論をしっかりしていくということが非常に重要でございますので、下のポツにありますように、SPRUC・利用推進協議会等と定期的に議論を行って、施設の運営方針に随時反映させていっております。さらに、先ほどの成果のところにもありましたが、新たな計測技術の開拓には、一つにはアカデミアによる創造的な研究開発が不可欠でございます。このために、利用者から新装置の提案を募って、施設と一緒に開発を行うSACLA/SPring-8基盤開発プログラムというのを立ち上げまして、やってきております。これを基盤にしまして、利用研究者と、利用者と施設の協業を強化しております。
このプログラムについては、量子ビーム小委員会でも御紹介させていただいておりますが、下にあるように、ユーザーからの提案を受けて、施設側として共用装置として整備していくということでございます。
それで、これは図が落ちていますが、その成果としまして、実は先ほどの池田先生のPINK-02、100テスラを超えるような装置がSACLAのほうでも開発が進んでおりますし、あと、SPring-8側は、実は先ほどの齋藤先生のCITIUSの成果も、このSPring-8側のプログラムに載っておりますし、あと、ここの右にあるような河野先生の高温高圧下におけるPDF測定システムの開発といったところも、このプログラムを通じて進んでいるところでございます。
次、お願いします。(1-4)SACLAの光源特性を最大限活用した研究開発の推進状況ということで、これは先ほど御紹介した成果、2つに加えまして、これは前回御紹介した極限集光の例、3例を御紹介しております。内容については、説明は省略させていただきます。
次、お願いします。(1-4)、(1-5)ということで、SACLAの光源特性を最大限活用した、これは続きでございますが、研究開発の推進状況と、あと、SACLA独自の技術を活用した、産業利用にも応用可能な最先端の計測技術の開発。いわゆる計測装置の汎用化の取組状況ということで指摘をいただいております。これはSACLAとしましても、光源はすごい光源なのですが、やはり計測のプラットフォーム化を進めないと、非常に利用がしにくいというのがございましたので、これは共用当初から幾つか典型的な手法につきまして、プラットフォームを整備してきたところでございます。
代表例として、ここにあるようなDAPHNISシステムと言っておりますが、これはいわゆるシリアルフェムト秒構造解析、SFXと言っていますが、これのためのプラットフォームを整備しておりまして、そのほかにもスペクトロスコピーであったり、レーザー衝撃圧縮であったり、こういったところが活用されています。
特にこのSFXのプラットフォームは、もともと生体高分子、先ほどのPSⅡのようなものがターゲットになっていましたが、最近では低分子の微小結晶といったところの高速構造変化のプローブにも使われておりまして、これによって、バイオだけではなくて、材料の研究者の方々にも御利用いただけるような形になってきております。そういった汎用化を鋭意進めているところでございます。
一方で、SPring-8のほうもそうですが、少し引いた、大きい話をしますと、XFELのほうもやはり光源のいろいろな開発が進んでおりまして、例えば超伝導加速器を使ったハイレップレートのマシンが、アメリカであったり、中国であったり、整備が進んできております。そういった情勢を踏まえた、さらにSACLAの将来の方向性という議論がまたこれは必要になってくるということを一言申し上げておきます。
それでは、次、お願いします。(1-6)SPring-8、SACLAを相互利用した先端的な研究開発の推進状況はどうかということで、これは相互利用というのもいろいろな意味がございますが、この例では、SACLAの技術開発をSPring-8に展開して、相補的な活用を推進する事例ということで、SMX、Serial Macromolecular Crystallographyと呼ばれていますが、この例を御紹介したいと思います。
これは先ほども議論いただきましたが、SACLAでやっているSFX的なことはSPring-8でもできるのではないかというコメントをいただいておりまして、実際にそのとおりでございます。特に遅い、遅いというのは例えばミリ秒から秒を超えるような変化です。それは必ずしもSACLAを使う必要はないわけでございまして、そういったところはSPring-8でもできるはずだと。ただし、SPring-8はやはりパルス一発当たりの光量が弱いので、そこをいかに増やすか。それはビームラインのオプティクスのところで頑張るわけですが、そういったところと合わせてやっていく必要があります。そこをSPring-8、SACLA、一体として現在、開発を進めているところでございます。ここは今まだ装置開発のフェーズで、サイエンスの成果はこれからでございますが、今後いろいろな面白い事例が御紹介できるのではないかと思います。
次、お願いします。(1-7)我が国を代表する放射光・XFEL施設としての、我が国の放射光科学全体への発展へどういうふうにコントリビュートしていくかというところの問いかけでございます。これはSPring-8、SACLAがコアになって、特に基盤技術のところを確立するとともに、施設間、もしくは大学、企業も含めた人材交流も行いながら、いろいろな連携を強化していくということを進めております。
下にある事例でございますが、例えばNanoTerasuとの連携でございます。特に加速器の設計整備には、理研、JASRIの加速器も全面的にコントリビューションしてございます。
それから、ビームラインについても、SPring-8で得られた様々なノウハウが導入されておりまして、制御系であったり、光学系であったり、先端技術が活用されているところでございます。
それから、これは学会の側、日本放射光学会という我が国の放射光サイエンスコミュニティーを代表する学会がございますが、そちらとも連携しながら進めているところでございまして、学会からも第4世代の大型放射光源がすぐに必要だということを提言をいただいており、学会と連携して、施設間の連携の強化についても今後議論を行っていくということを考えております。
次、お願いします。(1-8)着実な予算措置及び運営費の効率化、技術革新等を通じた安定的な運転時間、利用時間の確保をすべしということでございます。これも前回御紹介した資料でございますが、特にSPring-8は老朽化が進んで、なかなか大変な状況ではあります。あと、電気代の高騰等もあって大変ではありますが、補正予算等も措置いただきながら、何とか運転時間を維持しているところでございます。この後にあるようなSPring-8、SACLAからのビーム入射等も使って、継続的な省エネも実施しているところでございます。
次、お願いします。SACLA入射の実施や支援体制の共通化、これはちょうど前回の中間評価のときに、こういうことを計画していますということを御報告したところですが、その後に順調にこれが進みまして、2020年9月から、入射方式に変更して、SACLAからの入射方式、従来のSPring-8の入射系は停止ということです。これがしっかりと利用運転の中でもルーチンに使えるようになってきております。
それで、これで一つ、2つの施設の統合的な運用というのがありましたが、さらに理研とJASRIの役割分担の検討等も含むということでお題をいただいておりますが、ここについても、例えばビームライン再編であったり、利用制度改正等であったり、施設全体の方向性を議論する際に、理研、JASRIで随時タスクフォースをつくって、全体の最適化を目指す。そういう体制で進んでいるところでございます。
次、お願いします。SPring-8とニュースバルを相補的に利用するための、兵庫県との連携・協力の推進状況や、兵庫県の設備の支援の検討状況ということをいただいております。これに対しましては、さきのSACLA入射の際に、もともとSPring-8の線形加速器からニュースバルに電子ビームを供給しておりましたので、この線形加速器を停止してしまうと、ニュースバルに電子がなくなってしまうというのがありました。そこに対しまして、SPring-8側が協力しまして、ニュースバルの線形加速器の整備が行われたということがあります。
実はこの線型加速器の整備が、その後のNanoTerasuの線形加速器のところにもつながっておりますので、そういったところが有機的に効率的に実施していると言えると思います。さらに兵庫県と連携しまして、県が推進する中小企業の支援の推進やニュースバルとの相補利用のための方策を、これは現在議論しているところでございます。
次、お願いします。(1-14)海外施設との継続的な共同研究、情報交換、人材交流等の推進状況ということで、我々SPring-8、SACLA、二つの施設を持っておりまして、それぞれに大きな国際コラボレーションがあります。まずSPring-8側は、大型の第3世代から、第4世代に皆さん移りつつありますが、そういった放射光施設の3極、3極と言いながらヨーロッパは2つありますので、3極4施設ということですが、ワークショップを定期的にやっておりまして、直近には、去る3月に大阪にて開催しました。
一方で、XFELのほうは、5極5施設の連携がございまして、これもハンブルクで、直近では1年前に開催したところでございます。こういった二つの大きな放射光、XFELというところの情報を一つに集約しまして、様々な施策に反映している。国際コラボレーションのハブになって活動しているというところでございます。
次、お願いします。(1-15)海外の研究機関等に所属するユーザーが成果公開を行う場合の国内ユーザーとのバランス、それから、(1-16)成果専有利用または企業による産業利用などのガイドラインということで、これは主にJASRIのほうでやられているところでございますが、基本的な考え方としましては、左下の枠にありますように、国際情勢等を踏まえつつ、原則として、国内外の産学官の幅広い分野の研究者等に対して、公平、平等に機会を提供するということでございます。
一方で、やはり昨今、安全保障、輸出管理等、いろいろなこともございますので、右側にあるように、JASRIのほうでガイドラインを定めて、海外の研究機関等に所属するユーザーの課題の取扱い要領ということで、必要に応じて該非判定を実施したりということを行って、こういったところがしっかりとカバーできるようにという対策を取ってございます。
(1)のところは以上でございます。
引き続き、(2)研究成果の最大化ということで御紹介したいと思います。
まず、評価指標です。ユーザーに提供した利用時間自体など、ユーザーに対する支援が十分にできているかという指標、それから、産業利用の支援についてアンケート調査等の導入状況、それから、利用環境の改善、充実への取組状況ということで、こういう課題をいただいておりましたが、これも前回紹介したところですが、2022年度よりJASRIのほうで、ユーザー満足度調査というのを実験終了後のユーザーに対してアンケート調査を実施しております。非常に多くの回答を毎期いただいておりまして、おおむね高評価をいただいているということですが、これも何度も申し上げているように、福利厚生関係については評価が低いということで、ここはまさに今、改善の取組を実施しているところで、今年中に何かの成果を出したいというところでございます。
それで、次のページに行っていただきまして、データポリシー、それから、データベースの構築、オープン化に向けた検討状況ということでございます。これも補正予算をいただきまして、SPring-8データセンターを運用しているところでございます。データセンターの構築に当たりまして、2020年にSPring-8のデータネットワーク委員会というのをつくりまして、主なステークホルダーに加わっていただいております。そこにおいて、実験データの保持ポリシーというのを決めまして、一番重要なのは、データの所有権が誰にあるかということですが、まず施設に由来する測定データ及びそれを加工してできる2次データは、ユーザーが所有権を持っている。一方で、施設者のほうは、様々な利活用のために、共用のデータシステムを整備するという役割を定義しております。
その中で、様々なネットワークの広帯域化であったり、リモート実験のための設備であったり、そういったことを整備しておりまして、最近、データセンターを用いましたデータフローサービス、少量データの一時保管と書いてありますが、1課題について100ギガバイト、これは少量と言うのかどうかというのはありますが、この程度の規模のデータであれば、一時保管して、ネットワーク越しに転送も可能になってきている。こういうのをやっていくためにメタデータというのが非常に重要になりますが、そこの要素の検討も行って、実装も始めたところでございます。
こういうのも使いまして、例えば下の例でございますように、自動で行うX線CTの測定というのを行っておりまして、これで自動解析、それから、データダウンロードサービスというのを開始したところでございます。
次のページに行っていただいて、ビームラインの再定義、これはアウトプットの量や利用料収入の増を目指すとか、新たな研究力を開拓するとか、新たな共通基盤技術をつくる。こういった位置づけの明確化をしなさいということがありました。それに対しまして、2019年度からビームラインの再編を実施しまして、SPring-8全体のポートフォリオを定めた上で、ビームラインの機能を、Measurement、Experiment、Developmentに整理して、再編や高度化を進めている。これもこの委員会でも報告させていただいておりますように、こういった全体ポートフォリオ、それから、個別の高度化、自動化を進めているところでございます。
それから、次のページに行っていただいて、専用ビームラインの設置、改廃について、実効性のある評価が行われる仕組みをつくりなさい。それから、専用ビームラインの在り方を見直して、ある部分は理研が見るということで、迅速、経済的に研究開発を実施できるような仕組みを検討しなさいということがありました。
まず、後者のほうに関しまして、これもこの委員会で御報告しておりますように、従来、ユーザーが専用ビームライン自身を設置、利用するストック型、我々呼んでいますが、そこから利用料を払っていただいて、施設側がビームライン自体を面倒を見るというフロー型というところの転換が進んでおります。特に専用ビームラインを理研ビームラインに移管して、そこを外部利用という形で使っていただくという仕組みができまして、これによってかなりのプロジェクトであったり、それから、コンソーシアム、企業コンソーシアムのビームラインがこういった仕組みを利用いただいておりまして、そういう意味では、実効的な専用ビームラインの改廃というのは大きく進んだところでございます。
一方で、評価の仕組みについては、これは従前どおりでございますが、ここについては継続して、今後も検討が必要だと考えております。特にSPring-8-Ⅱになるときに、これもお示ししていますように、従来の産学に加えて、国の戦略プロジェクトを入れていくというところがありますが、それをどういうふうな仕組みで組み込んでいくかというところは今後検討が必要だと考えております。
次、お願いします。(2-7)装置整備等のビームラインの高性能化等への利用料収入の活用と、活用にあたっての利用者のニーズの取り入れ状況ということで、特に装置整備、利用料収入を活用して、ビームライン等の高性能化を行っていきなさいという勧告がございましたが、それにも対応する形で、料金体系を見直しました。今まで基本的に利用料収入というのは、そこの実験に必要となった運営費を回収し、そのために充てるということになっておりましたが、これを2階建て方式に改めまして、基本的なベースのところは今までどおり運営費回収ですが、2階部分のところには、オプション分としております。これはある意味で施設利用のバリューをどういうふうに評価いただくかというところで、ここでいただいた利用料については、施設の高度化を進めていくという仕組みをお認めいただきまして、現在、実装を進めているところでございます。
これは具体的には来年度の実装を目指して、それぞれ今、オプションとかいろいろな仕組みが書いてございますが、それを、一昨日もございましたSPring-8の選定委員会等の議論も踏まえて、ファイナライズを今しているところでございます。
(2-8)共用・専用・理研ビームラインの枠組みを超えて、横断的にビームラインを利用できるような共用枠の導入をしなさいということを言われておりました。これにつきましては、専用施設については、NanoTerasuの共用に合わせて、2024年度より専用施設でも共用ビームタイムの設定が可能になり、JASRIで運用を開始したところでございます。
一方で、理研ビームラインというのが、これがいろいろな役割がございますが、これは従前より共用ビームタイムを設定してやっていたところがございます。これが一番下にありますが、最近では、共用ビームラインの混雑緩和のためのバッファの役割も果たしているところでございまして、非常に人気のある手法については、理研ビームラインの一部を共用として、供出してやってございます。一方で、理研ビームラインの役割として、先ほどの外部利用の仕組みであったり、あと、非常に重要なのは、R&Dを行って、それで先端装置を開発し、それを行く行くは共用化するというところがございます。例えば、今、皆さん、日常使いで使われているHAXPESであったり、それから、集光ミラーであったり、ある意味で、こういった当たり前のようにあるものは、実はこれは理研ビームラインを使って、共用のビームライン、非常に共用も混んでおりますので、そこの外側でやってきて、その成果を導入するという、こういうサイクルでSPring-8が発展してきたというのがございます。
したがいまして、ここの理研ビームライン、幾つかあるファンクションをどのようにSPring-8-Ⅱに向けて考えていくかというのは、これから要検討の事項になってございます。
めくっていただきまして、(2-9)実験データの自動解析など、効率的な成果創出を支援するシステム等の導入についての検討状況ということで、これも従前より、試料の自動調製システム、例えばXAFSであったり、粉末のキャピラリ充填であったり、こういったところの御紹介をしてきたところでございますが、実際これはハードウェアとしては立ち上がりましたので、システムとして運用するというのを来年度から開始すべく、施設側で準備を進めているところでございます。これは具体的には、ユーザーが事前に試料を送付すると、実験時に調整可能な形で、「はい、どうぞ」と受け取っていただくという仕組みでございます。
これはまずこの2つから始めることを考えておりますが、行く行くはバイオ系も含めて、ユーザーのニーズがあるところに広く展開していくところを検討しておりまして、こういったところで、ボトルネックのないような大量データの取得が可能になりますので、開発プロセスの質的な転換が進むのではないかというところを期待しているところでございます。
この後、参考資料2は、SPring-8-Ⅱ報告書で対応済みの事項がございます。これは全て昨年度末の議論であったところでございますので、読み上げは省略させていただきます。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。前回の指摘事項に対する取組の状況を御説明いただきましたけれど、2項目、政策的位置づけと発展の方向性、それから、研究成果の最大化というタイトルですけど、中身とタイトルが合わないようなところがなきにしもあらずですが、それぞれ指摘したことに対する対応状況の御説明をいただきました。どういうところからでもよろしいので、質問や何か意見等ございましたらお願いします。
高橋委員。
【高橋正光委員】 6ページの基盤開発プログラムに関してですけれども、こちらはユーザーさんからの提案を審査して、採択ということですが、この採択のプロセスというのは、施設側が主導権を取っている。
【矢橋委員】 そうですね。基本的にはこれは施設側で委員会を結成しまして、決めています。
【高橋正光委員】 なるほど。分かりました。
【小杉主査】 ほか、何かございますか。
実施に向けて準備中という(1-13)、13ページですか。ここはどういう。「方策を議論中」というところで止まっているということですか。13ページです。
【矢橋委員】 これは、ビームラインのところも含めて、兵庫県のほうでもいろいろとSPring-8-Ⅱに向けて今後の方策を検討中ですので、今そこに合わせて我々も一緒に相談している状況でございます。
【小杉主査】 これは全体としては、施設を最大限活用したイノベーションエコシステムの形成という枠組みの中での指摘になっているんですけど、そこに兵庫県もしっかり位置づけてやっていくということですね。
【矢橋委員】 そうです。はい。
【小杉主査】 ほか、何かございますか。大竹委員。
【大竹委員】 質問になってしまうのであれですけど。12ページのところで、これは(1-10、11)のところの「ビームライン再編」の次に、「利用制度改正等の施設全体の方向性を議論する」。これは具体的に利用制度の改正のリクエスト、または内部での改善案、または目指す方向性というのはあるんでしょうか。
【矢橋委員】 そういう意味では、例えば利用制度の改正のところでは、20ページに絵がありますが、これも利用制度のところも結局、所掌と言うんでしょうか。理研とJASRIと両方またがっていまして、当然JASRIのほうではユーザーに直接フロントとして接するわけでございますし、理研のほうはいろいろな財源のところを含めて、見ていかないといけないということで、そこが齟齬がないように、かなり綿密な議論を進めて、こういう形にしてございます。
【大竹委員】 分かりました。ここで、それが先ほどので。
【矢橋委員】 はい。もうちょっと言いますと、例えば「ビームラインの高性能化等への利用料収入の活用と」、このページにもありますが、こういったところは主に理研が検討していくべきものですが、「活用に当たっての利用者のニーズの取り入れ」というところは、むしろJASRIのほうがフロントになっていますので、ここのベーシックなコンセプトのところと実装のところとの齟齬が出ないというのが非常に重要になってきますので、そこをしっかりと議論しているところでございます。
【大竹委員】 なるほど。そうすると、こういった体制のところと、例えば9ページで御紹介いただいたSACLAとSPring-8で、この開発ですね。非常にこういった開発が重要で、やはり人材育成には必ずこういった開発があるからこそ展望が持ててというところと、今おっしゃったように、JASRI、理研のところで、やはり施設の中でやっていらっしゃるサイエンティストの方たちがある程度展望を持ってやっていくためには、その辺りがスムースにつながっていると、施設または機関として楽なのかという印象があったので、その辺りのつながりがあると思ってよろしいんですかね。
【矢橋委員】 はい。もちろんそれは心がけてはいますが、なかなか達成するというのは、これは難しいところではありますが、やはり方向性としてはそういうことでございます。
【大竹委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 高原委員、お願いします。
【高原主査代理】 さっきの2階建てのところで、成果準公開というのが、今あまり詳しい説明はなかったと思うのですけども、その点につきましてご説明をお願いします。
【矢橋委員】 これは今、資料がございませんが、今まで成果公開というのがあって、あと、成果専有というのがあって、成果専有を選択すると、利用料金を払っていただくんですが、そうすると中身が全く見えないという問題がありました。ただ、一方で、成果公開というのは、これはあくまでも査読つきの論文を出すということが原則になっていましたが、論文を出すほどではないんだけども、どういうことをやったかは本当はオープンにしても良いが、制度がそうなっているので、やむなく成果専有にされるというケースもありました。そうすると、せっかくやっていただいたのに、企業側から見ても、例えば企業の社内であったり、一般社会であったり、そういったところへの宣伝ができない。我々から見ても、そういったところをどんどんやっていただきたいのに発信ができないというのがありましたので、この成果準公開というのは、論文ではないんだけども、例えば学会発表等も含めて、そういった成果を公開したときに、成果専有までの料金ではない、ある程度減免したところを利用料金としていただいて、ここに位置づけるという制度でございます。
これはもう少し引いた視点というか、より大きなコンテクストで言いますと、できればSPring-8の広報戦略としましても、企業等に、ある意味で間接広報になっていただくというのが非常に重要だと考えていますので、将来的にはそういったところにつながるところも意識しながら、まずこの形で始めたいというところでございます。
【高原主査代理】 企業の方が何回も出すことができるような形のものですね。
【矢橋委員】 そうです。これは何回も出していただくことができます。
【高原主査代理】 そうしたら結構増える感じですね。
【矢橋委員】 はい。期待しております。
【小杉主査】 どうぞ。川北委員、お願いします。
【川北委員】 J-PARCセンター、川北です。データポリシーのところで、所有権はユーザーに帰属するみたいな話がありまして、データはSPring-8では保持されていないという形になるんですか。
【矢橋委員】 保持はされていますが、それはあくまでも、リソースがある限りということです。例えば、生データは3年をめどに保持をしたいと考えています。これも予算と絡む話ですので、ユーザーに、絶対3年は保持しますとか、あと10年間保持しますとか、そういうことは言えない形になっています。
【川北委員】 その場合に、オープン化というのはどういう位置づけなんですか。
【矢橋委員】 ここも結局、こう言うと、身も蓋もないんですけど、やはり予算のところを議論せずにオープン化の議論はできないことになっていまして、例えば今、オープン化を推進しているヨーロッパの状況を見ると、そこに非常に大きな予算を投入して、例えばデータを保持するのも、各ファシリティーにもそういう予算を分配しています。一方で、アメリカの状況は我々と似ていまして、あくまでも、データの所有権はユーザーにあって、そこがしっかりやってくださいということですので、そういう意味で、我々、アメリカタイプに準拠しながら、それでももちろんベストエフォートで頑張れるところは頑張りたいと、そういうところでございます。
【小杉主査】 その辺りは委員会で審議する内容かどうか分からないですけど、共用施設全体で統一を取るとかの議論の場というのは、文科省のほうでは調整はされないんですか。ユーザーからすると、各施設バラバラというのもちょっと。少なくとも共用施設ぐらいは一つのポリシーでやってほしいというのはあるんですけど。
【川北委員】 J-PARCでやろうと思っているデータポリシーとはやはり少し違っているというところを感じたという次第です。
【野田課長】 実態を我々のほうでも勉強させていただいて、どういう形で検討を進めたほうがいいのか。分野によっても事情が違うとか、そういうのがあるのか、そういった点も踏まえて、また御相談させていただければと思います。
【小杉主査】 委員会の議論でやることではないかもしれないので、調整を取っていただくと助かります。
【野田課長】 またこの場で御議論をいただく必要があるということになりましたら、また御相談させてください。よろしくお願いします。
【矢橋委員】 そういう意味では、施設のところもありますが、恐らく各大学とか研究機関でも保持ポリシーが定められていると思うんですね。
【小杉主査】 各組織では宿題としてあるんですけど、何となくバラバラ感がある一方、学会のほうでは何とかまとめようとするんですけど、どうしても難しい。
【矢橋委員】 例えばそこで5年とか10年とか、各大学が定めて、SPring-8で実験したからSPring-8でやってくれと、それは無理な話なんです。
【小杉主査】 そうですね。
【矢橋委員】 はい。ただ一方で、例えば、いわゆるディスクにためるのは大変ですが、テープのストレージで、読み出しは遅いんですが、かなり長期保管するようなことはテクニカルには可能だと思いますが、そのときにはやはり各施設というよりは日本全体のリソースで考えていく必要があると思いますので、それは大きな議論をしていく必要があるのかと思います。
【小杉主査】 ほかに何かございますか。阪部委員、お願いします。
【阪部委員】 経営基盤強化の(1-8)の、運転時間についての指摘において、取組あるいは課題としては、従前以上の運転時間、利用時間の「確保」と記されていますが、現状では、この中間評価の段階からは「維持」というところに留まっていると考えてよろしいでしょうか。
【矢橋委員】 そうですね。これはやはり老朽化のところと、あと、電気代高騰が特に前回の中間評価では予期できなかったこともありますので、ある意味で、維持ができていること自体がかなりしっかりできたということかと思います。
【小杉主査】 すみません。オンラインの人を見落としていました。山重委員。
【山重委員】 トヨタ自動車の山重です。先ほど話題に上がりました20ページのところですが、2階建て構造のときに、成果専有のビームラインにおける申請割合について、各ビームラインの高度化に向けた予算、傾斜をつけたりという仕組みについて御検討されていますか。
【矢橋委員】 成果専有の料金が定められて、基本料金と書いてありますが、そこは基本的には運営費回収分になっていまして、ただ、今まで、例えば時期指定であったり、代行測定であったり、そういったところ。あと、成果公開の優先利用。上の2階にあるところです。こういったところをオプショナルな高度化推進分と再定義しておりますので、これはクリアに分かれております。
【山重委員】 成果専有利用されたビームラインに対して、追加予算が割り振られると、さらなるビームラインの向上につながると思いますが、そのような仕組みになっていますか。
【矢橋委員】 それはそうはなっていないです。
【山重委員】 できれば何かそのような仕組みがあると、ビームラインの先生方のモチベーション向上にもつながると思いました。
【矢橋委員】 そこは非常に難しい議論がありまして、やはりこれは一旦全体で最適をしてやっていくということが必要だと考えています。当然稼ぐビームラインと、そうでないビームラインみたいなのが出てくるわけです。例えば稼げないビームラインでは、全然高度化ができないかというと、それもなかなか具合が悪い。一方で、モチベーションというところで言うと、やはり稼げるビームラインというのはどんどん自動化していって、面倒な人手をあまりかけなくてもできるようにしていくのがよいかと考えております。そういう意味では、むしろ計測のほうはどんどん自動化で楽になっていきますので、そうすると、利用者のニーズが解析、データをどう料理するかというところに移っていくはずです。したがって、そこをどういうふうにニーズに応えていくのかというところが今後検討する必要があると考えています。
【山重委員】 ありがとうございます。もう一つコメントですが、8ページ目のSACLAの汎用の装置についてです。これは我々、御一緒に議論して使わせていただきました。CDⅠもかなりシステム化された手法だと思いますので、加えていただいても良いと思いました。
【矢橋委員】 おっしゃるとおりです。CDIもそうです。
【山重委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかに何かございますか。QSTの高橋委員。
【高橋正光委員】 もう一つよろしいですか。QSTの高橋です。14ページの海外施設との関係についてですけれども、今、3極のワークショップに関してですが、いわゆる御三家と言われていた時代の枠組みかと思うんですけれども、現在、海外、世界の放射光の事情も結構変わってきているかと思うんですけれども、それに合わせて何かこれが改編されていくというような構想はお持ちでしょうか。
【矢橋委員】 14ページですね。これは基本的にはおっしゃるとおりで、大型の施設から、これはまず始まって、現在、中型、3GeV、それから、それ以下というところも非常にたくさんありますので、それはそれで別でありますが、この3極の大きな枠組みはこれはこれでやっていく必要があると思います。一方で、それ以外のところは、これはNanoTerasuも含めて、また別の枠組みでやっていく必要があると思います。
【小杉主査】 これは3極、FELも大型の放射光リングもそうなのですけども、中国の扱いというのはどうするかというのは議論されているんですか。両方、施設がありますので。
【矢橋委員】 FELについては、中国、SHINEというのが今、建設が進んでいて、光が出たら、ここの6極に入れたほうがよいのではないかという議論は出ています。一方で、こちらの3極のリングのほうは、そういう議論はまだ聞いていないです。
【小杉主査】 北京の施設がちゃんとできてからですよね。
【矢橋委員】 そうですね。
【小杉主査】 分かりました。
ほか、ございますか。
21ページの共用ビームタイムの話ですけど、専用施設で設定が可能になり、運用開始して、具体的にも開始されたということですか。
【矢橋委員】 募集を今していますね。JASRIのほうからコメント。
【小杉主査】 JASRI側から何かございますか。いいですか。
【坂田理事】 試料調製サービスのことですか。
【矢橋委員】 違う。専用施設の共用ビームライン。
【小杉主査】 共用ビームライン。
【坂田理事】 専用施設ですか。
【小杉主査】 21ページの。
【坂田理事】 21ページ。すみません。専用ビームタイム……。もう1回お願いします。
【矢橋委員】 これはたしか、兵庫県、BL24XUの成果専有利用に限って共用を受け付けるというのを今始められていますね。
【坂田理事】 はい。そうです。主査の質問は。
【小杉主査】 NanoTerasuでも共用ビームタイムが始まるかもしれないんですけど、その辺りの考え方というのはSPring-8でも同じような扱いで、例えば、各専用施設が2割を、共用ビームタイムを出しますと言って、それを5年とか10年セットして、その中で人の問題とか予算の問題を含めて共用で対応するというシステムに、SPring-8のほうはもうそこまでできているんですか。
【坂田理事】 今言われているのは、NanoTerasuのPhoSICのほうで。
【小杉主査】 いやいや、SPring-8でもう既に。
【矢橋委員】 私の理解ではそうなって。
【小杉主査】 運用開始と書かれているので。
【矢橋委員】 そうなっていると理解しています。
【坂田理事】 すみません。質問がよく理解できていないんですけど。
【安藤理事】 安藤ですけど。法令上は可能になり、それで、予算的にも措置をいただいているので、その一つの例、初めとして、兵庫県のビームラインにおいては具体的に今準備を進めているところです。
【小杉主査】 分かりました。
ほか、何か。大竹委員。
【大竹委員】 理研の大竹です。15ページの海外のところで、海外ユーザーについて、昨今、輸出管理規程、かなりいろいろ手続がとても大変かと。非常に時間も人もかかっているのではないかと思いますので、その辺りの現状の対策とか何かというところと、あと、それから、実際に例えばここで、下のほうに成果専有のところで、国内の所属するユーザー利用を圧迫しないというような表現で書いてある。その辺りの見方とか、それから、特に、中性子で聞くのはやはり海外、特にアジア諸国からのユーザーが非常に増えているということです。そこで国のこういった施設に対してどういった方針で、人数が増え続けている海外ユーザーの課題採択などを含めた対応というか考え方や取り組みするのかを議論することは、ものすごく重要なことかと思うのですが、その辺りの取組に関して教えていただけますか。
【矢橋委員】 まず輸出管理のところは、おっしゃるとおり、非常に面倒なのですが、基本的には共用のユーザーが施設を利用いただくときに、例えば我々が提供する技術というのがありますが、これは基本的には全て公知のものという位置づけでございますので、当然そうなのですけども、論文であったり、ホームページ等であったり、アクセス可能なものに限られていますので、そこである程度効率的な審査は可能にはなっています。
あと後半については、ケース・バイ・ケースで判断をしており、今のところ、大きな問題にはなっていないのですが、やはりこれは数字も見ながら継続的に検討していく必要があると思います。
【大竹委員】 その辺りは何か、こういった共用の施設での評価で、海外ユーザーがどのぐらいというか、何かそういうのは。中性子にしても、放射光にしても、国際的なトップレベルのものというのはどうしてもそういう問題を、同じような問題を必ずはらむので。
【矢橋委員】 そういう意味では、SACLAは非常に国際化が進んでいますので大体、この成果専有ではないんですけども、全部カウントしますと、3分の1とかが国際ユーザーになっています。恐らくJ-PARCも相当多いですよね。
【川北委員】 そうですね。J-PARCは、申請ベースでは50%近くになっていて、採択ベースでも30%程度になっています。
【矢橋委員】 やはり世界に幾つかしかないみたいなものは当然そうなって、逆にそれを起点に国際的な連携を進めていくというのが多分戦略になると思うんですが、一方で、SPring-8、放射光のほうはやはり各国複数あるところもございますので、恐らく今、10%も行っていなくて、5%から10%の間だと思います。だから、その辺りだと、それほど顕著ではないかというところですね。
【大竹委員】 なるほど。
【川北委員】 関連して、私からも質問して。
【小杉主査】 はい。川北委員。
【川北委員】 J-PARCセンターの川北です。これは海外のユーザーにも成果専有を認めているということですか。
【矢橋委員】 SACLAは認めていなくて、SPring-8は認めています。
【川北委員】 なるほど。その場合も該非判定を実施されて、中身を見ながら、できる、できないを判断する。
【矢橋委員】 そうですね。
【小杉主査】 ちょっと時間の確認を忘れていまして、そろそろ打ち切らねばなりません。まだ、いろいろと質問等がございますが、次回もありますので、積み残しになりますけれど、今日のところはこの辺りで止めたいと思います。
今後のスケジュールは、資料3-3が用意されていると思うんですけれど、現地調査が来週あり、それを挟んで第3回で、また残りの部分と今日の積み残し、それから、新たな論点もあると思いますので、その辺りを議論して、報告書をまとめていくということになるかと思います。
開催の回数がもうちょっと欲しいところでもあるかもしれないんですけど、適宜、御意見がございましたら事務局に連絡いただくという形で効率よくやっていきたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
では、事務局から、ほかに、「その他」を含めて何かございますか。
【野田課長】 今、主査からも御説明ありましたように、現地調査が8月7日ということで、その次の小委員会の開催日程については、また改めて調整して、御連絡をさせていただきます。また、本日の会議の議事録につきましては、作成しまして、委員の皆様にメールにて確認をいただいた後に、文科省のウェブサイトに掲載させていただきます。
以上でございます。
【小杉主査】 それでは、以上をもちまして、第55回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――
科学技術・学術政策局 研究環境課