量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第51回) 議事録

1.日時

令和6年1月24日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省内15階局会議室及びオンラインのハイブリッド形式

3.議題

  1. J-PARC中間評価の結果について(報告)
  2. SPring-8の高度化について
  3. NanoTerasu の今後の共用ビームラインの整備について
  4. その他

4.出席者

委員

小杉主査、高原主査代理、石坂委員、内海委員、岸本委員、阪部委員、高橋委員、唯委員、古川委員、矢橋委員、山重委員、脇本委員

文部科学省

稲田研究環境課課長、内野研究環境課課長補佐

オブザーバー

高輝度光科学研究センター雨宮理事長、光科学イノベーションセンター高田理事長

5.議事録

【稲田課長】  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第12期量子ビーム利用推進小委員会の51回を開催いたします。
 本日は、お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。本小委員会の事務局を担当させていただきます研究環境課長の稲田と申します。
 本日ですが、オンラインとのハイブリッド形式で会議を開催しております。全委員14名中13名が出席といただいておりますが、岸本委員に関しては、降雪の影響によって交通機関に乱れが出ていることから、やや遅れて参加するという御連絡をいただいているところでございます。対面の参加者は現在7名プラス、オンラインの参加者6名ということでございます。なお、御欠席者については、大竹委員でございます。(事務局注:オンライン参加予定だった森委員は急遽欠席となりました)
 加えて、議題2のSPring-8の高度化に関して、高輝度光科学研究センターより雨宮理事長にお越しいただいています。また、議題3、NanoTerasuの今後の共用ビームラインの整備に関しましては、光科学イノベーションセンターより高田理事長にお越しいただいていますので、御紹介させていただきます。
 続きまして、オンライン会議の留意事項について御説明させていただきます。
 まず、通信を安定させるために、御発言されるとき以外は、可能な限りミュートの状態にしてください。御発言される際はミュートを解除してください。議事録作成のために速記者を入れておりますので、会場の皆さんも含めてでございますが、御発言の前にお名前を言っていただいた後、発言をいただけるとありがたいと思います。それから、会議の中で不具合などトラブルが生じた場合に関しましては、事前にお知らせしている事務局の電話番号まで御連絡をいただけるとありがたいと思います。
 なお、本日は、一般公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるYouTubeでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
 あわせて資料でございますが、こちらの議事次第の配付資料、資料1から3及び参考資料がございますが、乱丁落丁等ございましたら事務局にお申しつけください。
 何か御不明な点はございましょうか。会議中、御不明な点がありましたら、事務局まで指摘いただくか、お電話いただけるとありがたいと思います。
 それでは、以降の進行について小杉主査、よろしくお願いいたします。
【小杉主査】  それでは、議事に入りたいと思います。
 最初は議題1、J-PARC中間評価の結果についてということで、報告書ができておりますので、その説明と、若干の意見交換をしたいと思います。資料は1-1と1-2になります。
 それでは、事務局より説明をお願いいたします。
【稲田課長】  資料1-1及び資料1-2について御説明させていただきます。
 本中間評価報告書に関しましては、3委員会の下に設置した大強度陽子加速器施設評価作業部会において、現地調査を含む5回の議論をもってできたものです。その内容については、資料1-1に骨子がございますので、これをもとに御説明させていただきます。
 まず、この評価に関しては、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」を踏まえ、前回の中間評価を平成30年に行ってございましたが、それから5年間の取組について確認を行うとともに、今後の運営の方向を明らかにするために行ったものです。
 前回の指摘事項に対する取組について、おおむね着実に対応されておるところでございますが、こちらに挙げているポツ4つ、すなわち3GeVシンクロトロンRCSに関しては所期目標のビーム強度を達成しているということ。それから、主リングMRに関しては、所期の目標のビーム強度の達成が目前であること。それから、J-PARCに関するアクセス道路について指摘されておりましたが、整備計画が順調に進捗しているところ、それから中性子・ミュオンの振興に係る課題を議論する場、中性子利用プラットフォーム(J-JOIN)などを設置され、取組が開始されていること。さらに、老朽化に合わせた省電力化を図るとともに、施設の安定運転のため、老朽化した機器の予防保全等を計画的に実施しているところ等が確認されてございます。
 あわせて、3ポツでございますが、今般の経済社会の状況等もあり、以下の状況については課題が認められ、今後の対応が必要であるということを指摘いただいているところです。
 まず第1点目でありますが、継続的・計画的な人員確保が必要であること。2点目でありますが、放射性廃棄物等が出ますので、減容化に関する技術の獲得であるとか、あるいは施設本体の老朽化・高経年化対策など、安全かつ安定的な施設運営に関する指摘事項が2点目でございます。3点目としては、施設の将来計画の具体化と、若手人材を引きつけるための方策、すなわち将来に向けての安定性に関する事項です。4点目の指摘事項として、ユーザーの利便性の向上とサイバーセキュリティーのバランス、すなわち利用の利便性と安全の確保のバランスが重要であるというところが指摘されております。
 続きまして、施設の持続性に貢献する利用体系の整備や自己収入の獲得、さらにはJ-JOINなど、利用プラットフォームについてよい活動がされていますが、これを放射光等へも拡大するという指摘であるとか、一般国民向けも含めた広報や国際連携が重要であるところ。それから、競争領域、非競争領域のデータポリシー検討も含めまして、産業利用の拡大と社会実装等の貢献をどのように考えるか。また、物価高騰を踏まえまして、自己収入の財源化等をどう考えるかなどの指摘がされているところでございます。
 4ポツの評価指標についてでありますが、独法評価等で様々な評価がやられておりますが、これを横目で見つつ、適切な指標を設けてモニタリングを継続していくことが必要である旨の指摘があります。
 5ポツ目でありますが、中間評価の結果について、作業部会の提言としては、MLF-TS2、ターゲットステーション2、別棟でありますが、将来計画に向けた取組を具体的に進めること。それから、将来を担う若手に魅力的なキャリアパスやビジョンを示すとともに、技術継承等の課題に対する計画的な人員登用を進めること。また、燃油高騰を踏まえた自己収入、利用収入の自己財源化を含め、施設運営の改善を図ること。それから、GX社会等戦略分野を含めて、産業界における中性子利用のさらなる裾野拡大であるとか、ほかの計測手法との融合・連携を通じて社会実装の創出につなげ、国民社会への還元を図ること等々を今後の課題としてございます。
 最後でありますが、この次の中間評価に関しては、5年後になる2028年を予定しているところです。なお、これは課題が終了するまで、ずっと5年ごとにやっていきますので、いつになったら最終評価が出るということに関しては、終わるときには最終評価が出ますが、それに向けてはひたすら中間評価という形で評価を重ねていく形になろうと思います。
 以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。我々小委員会では共用施設の評価のフォローアップを今までやってきているわけですけど、今回はJ-PARC全体の評価で、KEKとかJAEAとか、共用施設以外の部分の機能も評価をやっているというところですけれど、幸い、この小委員会のメンバーである高原委員が作業部会の主査を務められていますので、高原先生から、量子ビーム利用関係で強調したいこととか、この作業部会で評価したことで何か追加のコメント等ございましたらお願いします。
【高原主査代理】  高原でございます。本日は対面のほうに参加できず申し訳ございません。
 今回、この評価作業部会、11月、12月で、サイトビジットも入れると合計5回ですか、集中的に行いまして、事務局の皆さん、委員の先生方、それから施設の方々の御協力を得て、何とか評価書をまとめることができました。
 私の印象は、数年前に比べると非常に施設が充実していて、中性子、ミュオン、ニュートリノ、ハドロン、それから加速器、陽子ビーム照射施設、非常に多くのサイエンスが実施されているということ、今後の発展が期待できることを実感いたしました。それで、先ほど稲田様からの報告にありましたように、2ページ目の5番のところ、やっぱり人材育成と産学連携、それから中性子、放射光の連携等いろいろなところで、この委員会で共通して議論、それから、いろいろな提言といいますか、よい方向に向かうように連携していく必要があるということで、その辺りが今回の中間評価で得られた重要なポイントかと思います。
 以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。それでは、質疑応答などをしたいと思いますけど、まず中性子の共用施設の設置者であるJAEA側の委員として、この小委員会にも脇本委員がおられますので、この評価結果に対しての今後の取組とか、その辺りお願いします。
【脇本委員】  J-PARCの脇本です。まず、中間評価に当たりまして、高原先生をはじめ、評価部会の先生方には、非常に限られた時間で集中的に御尽力いただき、中間評価を取りまとめいただきましたこと、心から感謝申し上げたいと思います。この中間評価は、やはり我々にとっても非常にいい振り返りの機会になりましたとともに、様々大所高所からの御意見、御指導、貴重なものをいただいたと思っております。当然今後の施設運営に反映させていきたいと考えております。
 特に、この骨子の中でも指摘されております中においては、将来計画の具体化、それから人材育成、あと利用体系の整備、自己収入の獲得、これによる経営の改善というふうなところ、さらには高経年化対策、あとは社会実装に向けた取組、こういったものは、さらに施設側としてもしっかり取り組んでまいりたいと考えておりますので、いただきました御意見等を踏まえて、引き続き取り組んでいきたいと考えております。
 以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。それでは、ほかの委員の方、御意見等ございましたらお願いいたします。あと10分程度は時間あると思いますので、御自由にお願いします。
 私自身もKEK側の人間なので、この報告書を受けて対応する側なんですけど、例えば、今後対応すべき課題の最初に、継続的かつ計画的な人員確保と言われても、我々大学系の研究機関や大学は、なかなか人数は増やせなくて、そっちから見ると、まだ共用施設なんかは人数的には充実しているかなという感じはしているところです。共用施設は共用施設でいろいろ人材の問題があるかと思いますので、人材確保はいろんな機関としての取組を続けながら何とかしていきたいというところでありますけど、将来計画をしっかり一緒になって考えるのが非常に重要で、そういうところで次の世代の人も増強するというところをちゃんとやらないといけないというような印象を受けております。
 利用に関してはいろいろ、プラットフォームとかも書かれておりますけど、この委員会のメンバーの方で、その辺りで何かございますか。複数のビーム、異なる種類のビームを使って研究されている方おられますか。特にないですか。
 高原先生はそのタイプですよね。
【高原主査代理】  私でしょうか。
【小杉主査】  はい。
【高原主査代理】  中性子の反射率計SOFIAを2010年に、そのプロジェクトで設置したということで、放射光と中性子で相補的に使っておりました。現在では、中性子のパワーも非常に大きくなりまして、昔、長時間かかっていた実験がかなり短時間でできるようになったということで、かなり皆さんいろいろな成果が出ております。それからまた施設を見ますと、昔に比べるとかなりホールの中が混んでおり拡張のスペースがございません。新しい発展のためにMLF-TS2というのが提案されていて、それが実現すると、より効率的な実験が可能になるのではないかと期待しております。
 以上です。
【小杉主査】  ほか何かございますか。
【脇本委員】  すみません。もし何もなければ1点だけ。
【小杉主査】  どうぞ。
【脇本委員】  J-PARCから1点だけ補足させていただくと、この中間評価の骨子の2ポツの中で、RCSについてはビーム強度を達成し、1パルス当たり世界一となっているというところに続いて、30GeV主リングが所期目標ビーム強度の達成目前であるという記載になっているんですが、実はこの部会が終了した直後、12月26日だったと思うんですけれども、そのときに所期目標である750キロワットの連続運転に成功しておりまして、実はここも所期性能が達成した状況に今現在なっているということだけ、少し追加させていただきます。
【小杉主査】  ありがとうございます。
 利用料収入などでの自己財源化というのもありますけれど、この辺りは既に取り組まれている、始めているところかと思います。あとSPring-8-Ⅱの計画の御紹介の中でも、利用料収入という感じなのかどうかちょっと分かりませんけど、少し経費をユーザーが負担するとか、基本的な流れは起きているかなという感じはします。だから課題というか、既に取り組まれているけど、電気代高騰とかもあるので、そういうところをさらに考えるというところかと思います。
 ほかにございませんか。
【内海委員】  では、委員長、1点だけよろしいですか。
【小杉主査】  はい。では、内海委員。
【内海委員】  ありがとうございます。放射光と共通の課題が非常に多いということを、改めて認識いたしました。
 この委員会の課題とは少し違うのかもしれませんが、中性子あるいはJ-PARCに特有の話として、3ポツの2番目に高放射化物の減容化と書いてあります。J-PARCでは放射化物がたくさん出るというところが放射光施設とかなり違っているんだと思うんですが、ターゲットあるいは実験ステーションも含めて、この放射化物の問題というのはどのぐらい施設の運営に関してシリアスな問題になっているんでしょうか。
【脇本委員】  脇本です。本件につきましては、特にターゲットであるとか、特に高レベルに放射化している放射化物というのを念頭に、いろいろ今後どういうふうな保管計画にするかといったところを施設内で検討しております。今現状、もう直ちにこの保管が問題になるという状況ではないんですけれども、やはりこれはじわじわと、当然年を追うごとに課題になっていくものでございますので、そういったところを今のうちから様々手を打っていくということを考えています。
 その中で、ここの表現だけだとよく御理解いただけないかと思うんですが、特に減容化と書かれているものは、中性子標的である水銀ターゲット容器、水銀容器、この容器を例えば分解型にして、特に先端部が高放射化するので、そこを分解して、その小さい部分だけ高放射化物として保管できるようにするとか、そういうふうな減容をするとか、あとは2年運転をして、そもそも今は1年に1回交換しているわけですけど、それを2年運転にして、出る量を減らすとか、そういったふうなことの 取組を現在しながら、少しそこで将来を見越した対策を今現在また打ち始めていると、そういうフェーズでございます。
【内海委員】  ありがとうございました。
【小杉主査】  ほかに。
 では、阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  よろしくお願いします。今日は現地に出られませんで失礼します。
 3ポツの今後の対応すべき課題ですが、いずれも重要な課題とは思うのですが、また、箇条書き的に書かれているのですが、重要度という意味でいいますと、どれが重要かつ深刻な課題なのでしょうか。喫緊に取り組むべき課題からかなり長期的な課題といろいろ混在していると思いますが、まずは最も重要な課題というのはどれになるでしょうか。
【脇本委員】  J-PARCの脇本です。いずれも重要な課題として、私ども並列して対応していくというところはどうしてもございますけれども、評価部会のほうの御意見として、半分私の印象も入っていますけれども、やはり委員の先生方が大変御懸念されていたのは、人材育成の部分というのは非常に、私どもももちろんそういったところは視点として持っておりますし、やはり重要度の高い課題であろうなと思っています。
【阪部委員】  そうしますと、大体ここは重要な順に書かれていると認識してよろしいでしょうか。
【脇本委員】  そうですね、完全に上から1番、2番というわけではないんですけれども、全体として、特に人材育成、人員確保というのはやはり重要な課題だというふうに認識はしてございます。
【阪部委員】  ありがとうございます。
【内野補佐】  事務局です。一応補足すると、この3ポツのところはあくまで順不同ということになっていて、順番で、どれが重要な順というふうに書かれているわけではないんですが、今、脇本先生からお話あったように、委員会の中では特に人材育成というところが意見が多かったですし、一番最初に出てきたというところもあるので一番上に書かれているということだと思います。
【阪部委員】  分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】  ほか何かございませんか。
 特にないようでしたら、次の議題のほうに時間を取っていますので、そちらのほうに進みたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、議題2です。SPring-8の高度化についてということで、前回、前々回から続いての議題になっておりますが、今回のテーマである人材育成・交流、それからSPring-8-Ⅱらしい利活用コンセプトということが論点になっています。これらについては理化学研究所等で検討しておりますので、矢橋委員から説明をお願いします。
【矢橋委員】  よろしくお願いします。スライド映っていますね。それでは、次、お願いします。
 本日のテーマとしましては、まず最初に、SPring-8-Ⅱを目指した利活用コンセプトの話、それから、今もお話がありました人材育成・交流、それから他機関との連携、あと最後に2つ報告事項を御紹介したいと思います。
 次、お願いします。まず最初に、SPring-8-Ⅱの利活用コンセプトということで、まず大きな目指すものということですが、そもそもの大きな問題設定として、一番上にありますように、地球規模の課題解決に向けて、社会から先端科学の加速が求められているということがあります。このために理研では、五神理事長の下で、未来の予測制御の科学を開拓するTRIP構想というものを推進しているところですが、SPring-8は大型基盤施設としてTRIP内外で極めて大きな役割を持っておりまして、特に大量かつ良質なフィジカルデータ創出源として、人々の暮らしを支える社会基盤としての役割を担っていくということが強く期待されております。
 次、お願いします。それで、SPring-8-Ⅱになったときの利用のイメージとしましては、前回の委員会でも御紹介しましたが、これまで専らアカデミア、産業利用を8対2の割合でやってきておりましたが、これに加えて、全体のパイが非常に拡大しますので、国の戦略的なトップダウン型の利用も推進することが重要になってきます。この際に、現有機能の大幅な増強とともに、新しい機能の開拓を進めながら、この3本柱、3つをしっかりと連携させて発展させていくということが重要になります。これによりまして、一番下にありますように、卓越した利用成果の創出、それから、直近の産業ニーズにとどまらないロングレンジの新産業の創出を目指すと。一方で、SPring-8は、これまで我が国の放射光施設群の中核施設としまして、放射光共通基盤技術、この開発の取りまとめを担ってきましたが、これも最後に紹介しますが、ここについても引き続き実施していきたいと考えております。
 次、お願いします。それでは、3本柱のそれぞれについて、利用の仕組みの検討状況を追って御紹介したいと思います。
 まず戦略利用、一番上の三角の上のところですが、これを実現するためには、戦略的ということですので、ビームタイムをしっかり確保するような大口利用の優先利用ということを仕組みの中に取り込む必要があります。それから、放射光の分析のみならず、これもこの委員会でもいろいろ今まで御指摘いただいておりますが、附帯的な周辺基盤環境の構築も必要となります。
 まず、1ポツのほうの大口利用についてですが、この数年来、新たな仕組みについて施設のほうで検討を行い、一部実施を行ってきたので御紹介したいと思います。
 次のページをお願いします。これが戦略的な大口利用を実現していく仕組みということで、従来ですと、それぞれの団体、これはコンソーシアムであったり、いろいろな場合がございますが、それぞれの団体が、いわゆる専用ビームライン、専用施設というものを建設して保有した上で戦略的に使ってこられたということがあります。これを我々ストック型利用と呼んでおります。これは最初はよいのですが、やはり年数がたつにつれて、装置の保有・維持管理、それから最新の性能への更新が大きな負担になるケースが非常に増えているということを聞いています。実際、目にしています。
 このような課題を解決していきながら、戦略的な大口利用を可能としないといけないわけですが、そのために我々は最近、右側のフロー型利用と呼んでいる仕組みを導入しております。これは、舞台としては理研のビームラインを用いまして、理研以外の団体、理研に属していない場合でも、利用料を払っていただくことで大口のビームタイムを確保できる、大口で利用していただけるという仕組みでございます。言ってみると、予算を設備ではなくて、ビームタイムに投資いただくという方法になっておりまして、この場合は、BL基幹部、そこの運用は施設が担当いたします。右側の下の絵にございますように施設が担当しますので、利用者から見た場合にも、持続的・効率的な利用、それから最新設備へのアップデートが可能となっております。それで参考資料をつけてございます。
 1つ前に戻っていただいて、上の2番目のポツ、3番目のポツですが、この仕組みの活用事例が近年大分増えておりまして、もともとNEDOの燃料電池であったり蓄電池であったり、こういったプロジェクトで始まったわけですが、最近非常に数が増加しております。
 それから下に行きまして、戦略利用を支えるための周辺基盤環境の構築ですが、これは我々、大きく分けて2種類あると考えておりまして、1つはオープンなイノベーション基盤、それからもう一つは経済安全保障にリンクしたセキュアな基盤で、これは両側ともにしっかりと今後検討していくことが必要だと考えております。
 それでは、次とその次、もう一つお願いします。
 次に、三角の右下の産業利用に移ります。企業の皆様から、SPring-8-Ⅱにも絡んでいろいろなコメントをいただいているところですが、真っ先に言われるのは、SPring-8が待ち時間が長くて、タイムリーに使えなくて、これでは駄目だということを本当に頻繁に言われます。実は我々も全くそこに対して努力をしていないわけではなくて、いろいろやっているわけですが、ただ、こういったアップデートした状況も、特に放射光から遠い企業様になればなるほど全く届かないわけで、したがって、やはり産業向けには抜本的に、見せ方も含めた仕組みを変える必要があると認識しています。
 それで、下に移りまして、一口に産業利用といいましても、幾つかの利用ニーズがあると思いますので、そこを類型化したのが下でございます。
 まず、丸1 として定型計測、これは確実に結果を得られることが分かっている場合でございます。この場合は、間違いなく、できるだけ速やかに結果を得たい、つまり即時の計測です。やりたいときにすぐ測れるというコンディションが望ましいと考えられます。2番目は、定型というよりは、オペランド等の多少複雑になった非定型の計測の場合で、この場合は、やはりどういうふうに計測するかというところについても施設と綿密な協議が必要になりますので、ある程度のリードタイム、例えば二、三か月程度のリードタイムが必要かと思いますが、それでもかなりタイムリーにやっていく必要があると。それから3番目としまして、そもそも結果が得られるかどうか分からない、でもこれはしっかりやっていく必要あるという場合があると。
 この1、2、3それぞれに必要な取組としまして、まず真っ先に言えるのは、定型利用の場合はオートメーション化、それから非定型計測の場合は、例えば公募のタイミングを今、半年に1回から2か月に1回というふうに拡大をしております。それから3番目のニーズには、これも前回の委員会で御議論いただきましたが、いわゆるコンシェルジュデスクを介したフィージビリティースタディー、FS利用、これは前回、課題解決型利用として御提案させていただいておりますが、こういった仕組みが鍵となってくると考えております。
 次、お願いします。この3つをもう少し具体的に見てみると、まずボリューム感としましては、恐らく定型利用が一番多くて、その次に非定型利用、それから最後に少数のFS利用ということになるかと分析しております。
 まず定型利用につきましては、やはりデフォルトを即時の利用とすると。さらに、時間単位の料金ではなくて、試料の個数単位の料金設定を可能にする、そういった、ある意味で当たり前と言えば当たり前だと思うのですが、そういったところへの転換が必要になってくるかと考えております。非定型利用については、年6回の定期公募をデフォルトとしながら、これもいろんなオプションの選択があると思いますので、そういったところを実現するようにしていく、それからFS利用をきちんと立ち上げるということが必要かと考えております。
 それに加えまして、前回も御提案させていただきましたが、プロモーション利用という形で、これは外部リソースの活用を促進しながら有用性をアピールするということで、企業と施設がタイアップするという利用でございますが、こういう制度も立ち上げていきたいと思います。
 さらに今回新たに、赤字で示していますが、外部企業による商用分析サービスの見える化ということでございますが、これまで外部企業が実はSPring-8を使って商用分析サービスというのを行ってきているわけですが、ただしこれは成果専有の枠内で実施されているので、施設側から見ると全くブラックボックスになっています。しかしながら、もっとこういう分析サービス、外部のリソースも活用できるということを、見える化を図りながら促進していくやり方もあるのではないかという議論もありまして、具体的には、例えばこういう企業が商用分析サービスをやっていますということを、施設としてもオーソライズすると。ただしその際に、当該の分析会社には、通常の利用料に加えて、アディショナルな利用料も払っていただく、例えばこういうやり方も考えられるかなと思います。つまり、施設の中で全部やり切るというよりは、外部のリソースを活用させていただけるものはしっかり使っていくということです。
 いずれにしましても、こういった議論はあくまでもたたき台でございますので、今後、様々な企業、産業界の皆様から意見をお聞きしながら施設でたたき台をつくって、例えばパブコメ等も経まして、今後制度化を図っていきたいと考えております。
 次のページもあくまでもたたき台ですので、説明は省略させていただきます。
 最後に学術利用、左下のところですが、これは最後にその他で御紹介しますが、現在でも非常に旺盛な利用ニーズがありまして、多様な分野で最先端のサイエンスを推進するための場として必要不可欠であるという、これはもうしっかり確立した認識があると思っています。しかしながらやはり、より高いクオリティー、それからより幅広いキャパシティーというのを実現していく必要がありますので、このためには不断の高度化を可能とする仕組みが必要となると。この後で予算面の話もしますが、予算面の前にここのページで御紹介しますのは、そのためには、産業利用と同様に、オートメーションができるところはしっかりやっていくというところです。
 それからもう一つ重要なのが、アカデミックユーザーは、基本的には競争環境で課題選定を経て使っていただくということがベースになっておりますが、その競争率が過度にならないようなモニタリングの仕組み、例えば装置単位で採択率とか競争率をモニターして、装置を増減することで柔軟に対応するような仕組みを考えていく必要があると思っています。実際に現在、BL13XUというところの多軸回折計という利用がものすごく混み合っている状況ですが、来年度後半から、理研に移管されるBL16XUというところで類似の装置を立ち上げて、そこを使っていただけるようにすべく理研が準備を進めているところでございます。
 それからもう一つは、最先端の利用技術を常に開発していくということが重要ですが、このために、施設単独でやることもありますが、ユーザーの皆さんの御協力もいただきながら進めていくことが必要だと考えておりまして、これが基盤開発プログラムというものでございます。
 次のページをお願いします。これも量子ビーム小委で過去に何度か御紹介させていただいておりますので、ごく簡単な紹介にとどめますが、これは専らエキスパートのユーザーから提案を募り、施設側で審査をした上で、採択された課題に対して施設とユーザーが連携して迅速な高度化を実現して、それで立ち上げ後に広く共用に供するという、ある意味で自律的な先端開発を促進するような仕組みでございます。これはもうかなり年数も重ねてきておりまして、SACLAから始まり、SPring-8に拡張しまして、例年多数の応募をいただくようになってきております。来年度に向けて、今審査中でございます。
 次のスライドですが、こういった不断の高度化を可能とするためには、当然予算的な裏づけが必要となってきます。特に、先ほどもございました利用料収入の位置づけについて、再定義も含めた議論が必要だと考えております。
 一番上にありますが、これまで利用料収入は、いわゆる運営費回収方式によって、基本的には当該年度の運営費を補完するという目的で利用されてきましたが、やはり限られた運営費の中で旺盛なユーザーニーズに応え続けるためには、利用料収入を積極的に高度化に活用していくことが重要になると考えております。このために、下の絵でございますが、運営費、必要経費の部分を回収するという従来部分の狭義の運営費回収のところを1階に置きながら、2階の部分には、利用者のニーズ等に基づくオプショナルな部分を置きまして、例えば優先利用であったり、測定代行であったり時期指定であったり、こういったところはニーズに基づくわけですが、こういったところをしっかり高度化推進分に充当して、施設が提供する価値を絶えず向上させるという仕組みを検討してございます。この2階建ての仕組みについても、ぜひ御意見、御議論いただきたいと思います。
 スケジュールですが、今後、所内の議論を経まして、早いものは2025年度から導入を図っていきたいと考えております。
 次に第2部、後半の部分としまして、人材交流・育成に移ります。
 これも先ほど来議論がありますが、まず最初に施設を支える人材のところから始めます。ここは常に人手が足りないということが言われておりまして、特に海外だとビームライン当たり何名だけど、日本ではどうのこうのということがすぐ言われるわけですが、ただ、よく考えてみると、社会の仕組みが欧米とは全く違いまして、例えば公務員の比率がOECD諸国で最低という中では、なかなか状況は大きく変わらないのかなというところがあります。一方で、やはり日本の特徴的な社会構造というのがありますので、そこもよく考えながら最適解を見つけていく必要があるのかなと考えております。
 それで、下の表で施設人材の状況について、いわゆるSWOT分析というのを簡単に行った結果を示します。SWOT分析というのは、内部要因、これは今の場合、放射光施設の中と考えています。それから外部要因、これは日本と考えています。それと、それぞれの強み弱みをマトリックスで分析する手法でございますが、例えば放射光施設の弱み、右上の囲み、こことしましては、やはり労働集約型で、ややもするとブラック労働になってしまうというところがありますし、あと大学での専門講座が減少しているので、なかなか若手が、専門性を持った者がいないというところもありますが、一方で、例えば施設に面接を受けにくる若手のコメントを聞きますと、放射光、なぜ選んだのですかということを聞くと、サイエンスが好きだが、やはり社会ともしっかりつながっていたいですと真剣に答える若者は結構多いです。したがって、そこは非常に強みだと思いますので、しっかり伸ばしていく。それから国際的にも、一歩外に出ると、もう海外とつながっているところがありますので、そういったところを伸ばしていきたいと考えております。
 それから、左下にありますが、海外と比べると、日本では質のそろった民間企業の外部リソースの活用というのがはるかに容易になっておりまして、特にテクニカルなところのサポートを民間企業にお願いするということが可能になってきています。これにDXによる定型作業のパッケージ化を組み合わせることで、魅力的な場を若手にしっかり提供していきたいと考えています。
 次、お願いします。また、大学・企業との連携も非常に重要でございまして、特に大学との連携は、利用を推進する人材、それから施設、基盤を支える人材、両側を育成するのに非常に重要でございます。最近、研究者の人事交流が進んでおりまして、特に目立つのが、大学によって施設人材がヘッドハンティングされていくという事例が増加しておりまして、これはある意味で非常によいことではありますが、さらに施設・大学間で中長期ビジョンを共有しながら計画的に人材交流を進める仕組み、例えば連携講座であったりクロアポであったり、そういったところを積極的に設けていきたいと考えております。一方で、学生に対してはインターンシップ、いろいろな取組も行ってございますので、これも拡充していきたいと考えております。
 次のページをお願いします。一方で企業との連携について、これはもちろん個社の利用もありますが、産学連携、国プロ推進にも非常に重要になってきております。企業の方に伺うと、人材育成のニーズとして、当然特定の分析方法の専門人材が必要ですということもありますが、一方で、もう少しブロードな課題を抽出してソリューションを探すような人材も要るということも伺っています。このうち前者のほうは、既に個別に取組が進んでいると理解しておりますが、後者のソリューションを探す人材というところが増大しているという状況を聞いておりますので、例えばインターンシップ型、施設滞在型の人材育成プログラムについてもしっかり検討を進めていきたいと考えております。それで施設、大学、企業が連携し、3者に大きなメリットがある形にしていきたいということでございます。さらに、一番下でございますが、もっと若い世代への働きかけも行っていきたいと考えています。
 次、お願いします。この章、最後でございますが、放射光基盤技術を継承し、発展させていくために、これは当然、閉じた話ではございません。他機関との連携が必須でございますので、それについてまとめました。
 大きなスコープとしまして、放射光基盤技術といいましても、当然個別の要素技術、下の絵の一番下のところがございまして、それを放射光基盤技術としてまとめ上げ、それを一番上の現地で活用していくという流れになります。
 まず、一番下の要素技術については、ユニークであること、多様であることが極めて重要でございますので、これは国内外の様々な大学、研究機関、企業との連携が必須です。例えば、加速器技術を持つKEK、精密加工技術を持つ阪大工学部、それからパワーレーザー技術を持つ阪大レーザー研とかQST木津とは強い連携を続けています。一方で、これを基盤技術として束ねる真ん中のところは一定規模のリソースが必要となり、我が国ではSPring-8がコアとなって推進しているところでございますが、これは今後もしっかりと続けていく必要があると考えています。最後に出来上がった基盤技術は、SPring-8のみならず、国内、海外の他施設にも展開していくことが重要となります。
 ボディーは以上でございまして、あと、この後ろ2つ、報告事項を簡単に御紹介したいと思います。
 まず1番目、利用ニーズ調査というのを行っておりまして、これはSPring-8-Ⅱに向けまして、まず今のSPring-8のニーズを調査するというものでございます。定性的にはニーズが多いということは皆さん言っていただけているわけですが、定量的にこれを示す、今後のタイムリーな予算化に向けて示していくために、利用希望日数の調査というのを進めております。まだこれは中間的なところでございますが、今月末締切りですので、この時点で累積で16万ですが、現在18万日以上に増えておりまして、今のキャパシティーの30倍を優に超えるということで、極めて旺盛なニーズということが数字の上でも裏づけられております。詳細な分析は、また改めて御報告します。
 次、最後ですが、今年より地元の佐用町にて、企業版ふるさと納税制度に基づくSPring-8高度化支援プロジェクトというものを設けていただきました。こういった形で地元の自治体や多くの関連企業の皆様とも連携しながら、しっかりとSPring-8-Ⅱに向けたプロジェクトを進めていきたいと考えております。
 以上でございます。最後まとめのページは、読み上げ省略させていただきます。
【小杉主査】  ありがとうございました。人材も入っていますので、議論し出すと結構時間かかりそうですけど、その前に、必ずしもSPring-8-Ⅱに関係した話ばかりではないですけれど、事務局から資料2の3、4、5の御紹介をお願いします。
【稲田課長】  それでは、説明させていただきます。
 まず、資料の2-5のほうから説明させていただこうと思います。資料の2-5に関しては、来年度の予算においてどのように量子ビーム関連の予算が得られたかというところでございまして、基本的に、雑駁に申し上げるならば、運転資金、要求どおりついた上に、補正予算も含めてですけども、様々この辺を高度化しなければいけないよと御指摘いただいているところについても活動の端緒をいただき、加えて、SPring-8-Ⅱというのは、いきなり造るわけにはいきませんので、来年実施するものに部分試作をするという予算3億円が入っているんですけれども、その3億円についても認められているということを御報告させていただきます。要は、国、財務当局も含めて、量子ビームの分野については非常に重要であり、ここについてフルのサポートをやるとともに、将来のための投資というのも適切にされているというところでございます。
 それでは、資料2-3に戻って御説明させていただきます。参考資料に示しておりますSPring-8の高度化に関するタスクフォースの報告書、これをなぞる形で、この委員会で議論をいただいているところです。このタスクフォースに関しては、我が国の誇る科学者や外部有識者の皆さんからお話を伺い、省内の人間で議論したところではあるんですが、特に6ページ、SPring-8を含む、我が国の放射光施設はどのような立ち位置にあるかに関しては、例に取っていうと、ピラミッドを上から見たら四角ですけれども、横から見たら三角に見えます。このように、立ち位置によって見える地平というのは変わってくるということ。それから、ある意味このタスクフォースはSPring-8を主軸に議論を進めてきましたので、ほかの放射光施設であるとかNanoTerasuさんを含めて、新たにやっている高度な技術のところも取り扱う皆さんにも御意見をお伺いしたというところが、こちらの資料の2-3の中身でございます。
 資料の2-3の中身については、7施設――7施設というのは、1ページの一番下のところにお伺いした7施設の記述がございますが、後ろのページに各施設からの意見書がついておりますけども、我が国の放射光施設におけるSPring-8の位置づけ、役割であるとか、それに何を期待するのか、あるいは施設として、自分のところの立ち位置との関連でどのような要望があるか等々をお聞きしてございます。その7施設の最大公約数をまとめたのが1ページでございまして、意見書のまとめとして、SPring-8-Ⅱの位置づけと役割については、SPring-8は我が国におけるフラッグシップであり、ナショナルプロジェクトとして推進し、早期に実現すべきである、これは大体皆さん一致した意見としていただいているところです。
 SPring-8-Ⅱに期待することとしては、学術研究施設としての萌芽的成果の発展・定着、世界を牽引するフロンティア開拓、あるいは新産業の創出等の先導的な役割やリーダーシップ、あるいはコミュニティ形成について期待をしていると。プラスして、とはいってもSPring-8は硬X線にパラメーターを強く置いておりますので、軟X線領域においてはNanoTerasuのほうが優れているといった面もございますので、NanoTerasuとの要素開発における役割分担を適切にする必要がありますよねと。これはほかのところもいろいろ、利用者としての立場も多かったんですけども、SPring-8-Ⅱ、高度化が順調に進んだとしても、2027年から2028年の間に停止期間があります。停止期間に関してはどうするんだと、ユーザーをどのように支援していくかに関して協力体制が重要であるという指摘をいただいております。あわせて、若手研究者による新しい発想によるブレークスルーを実現する利用制度や、データマネジメントについても期待をいただいているところです。
 我が国の放射光施設の中での各施設の位置づけ、役割、取組等々でありますけれども、多様な9施設10リングそれぞれの特徴を有しておりますので、いわゆる共用促進法に基づく、オンリーワンであるSPring-8及びNanoTerasu、それから学術研究を担うPFであるとかUVSOR、HiSORとか、その他産業界、アカデミアができる汎用・専用施設であるRitsSR、NewSUBARU、あるいはほかの施設等々の強みを発揮し、お互い補完しながら我が国の放射光施設を全体として底上げしていくことが肝要であるというところをいただいているところです。
 また、その他の要望、課題として、こちらの5点に関しては今後取組が必要であり、ぜひともやっていただきたいという要望が上がっているというところでございます。
 次の資料2-4でありますが、今までのタスクフォース、これはあくまでも政府が考えたものです。これを、これまで3回の本小委員会での議論等を踏まえて、我々この委員会としてどのように考えていくかについての骨子案がこちらです。本日の議論も踏まえまして、これについて所要の修正を加えた上、次回の委員会においては骨子案ではなくて、実際の報告書の形で仕上げてきますけれども、それに先立ちまして、この方向でおかしくないか、この論点が足りないというところがあれば御指摘を賜れるとありがたいと思います。
 1ページは、今まで何をやってきたかというところと、この報告書では、これまでの議論を踏まえ、SPring-8-Ⅱが目指すべき姿と、施設の成果の最大化に向けて求められる取組を取りまとめたものでありますという位置づけを説明し、以降の必要性等に関しては、世界においては第4世代への高度化が進められていることであって、このままだとユーザーが海外に抜けるであるとか、様々なものが不具合が起こりますので、SPring-8-Ⅱの整備・建設を行う必要があるということ。その際に、SPring-8をアップグレードすると、データ量の増加や実験効率の向上が期待できるため、アップグレードと並行して、ユーザーの利用環境や利用制度についても高度化する必要があるというところ。ユーザー利用環境・利用制度の高度化により、SPring-8-Ⅱが未来の産業を先導し、日本の国力の持続的発展を支える重要な施設となることが期待されるということ。それから、SPring-8は我が国におけるフラッグシップであって、SRのフロンティア開拓等の先導的な役割を期待されているSPring-8-Ⅱについては、ナショナルプロジェクト、国のプロジェクトとして早期に実現すべきであるというところをうたってございます。
 次の3ページでございますが、SPring-8-Ⅱの目指すべき技術目標や開発期間に関してをここに掲げています。100倍以上の輝度を誇る世界トップの性能を目指し、加速器のマルチベンド化や真空チャンバーのコンパクト化等を進めることにより、省エネ化の取組も併せて進めること。それから、令和6年、これも予算ついておりますけれども、高度化については、プロトタイプ製作や精密調整による技術実証を行い、令和7年度以降に国庫債務負担行為として建設・整備を行う予算要求をするんですが、その部分を着実に実施するというところ。令和7年以降の整備・建設においては、NanoTerasuの整備で得られた知見を生かして運転停止期間の短縮を図り、1年の停止期間を含む4年間でのSPring-8-Ⅱの整備・建設を進め、併せてSPring-8-Ⅱ及び次世代に資する放射光基盤技術を獲得するため、技術開発を着実に進めるということ。周回遅れのトップランナーとなることでありますのでということ、なかなか挑戦的ですが、以上のところについては妥当であるということをここでは書いてございます。
 4ページでありますが、ユーザーの利用環境高度化に関する事項であります。ボトムアップ型の産業利用とアカデミア利用に加え、トップダウン型の戦略利用を加えた3本柱で利用を推進すること。それから、データの取得効率の向上が見込まれることから、データセンターの整備等も併せて行うこと。潜在ユーザー等による利用を促進するために、中小企業を含む産業界の利用拡大等も目指しながら、公設試であるとか自治体との連携を強化すること。それから、旺盛なユーザーニーズに応え続けるためにも、SPring-8については不断の高度化が求められることでありますので、先ほど説明ありましたけど、利用料金やその考え方を含めて不断のアップデートができるようにするというようなことがこちらに書いております。
 なお、この航電審の答申については、一番最後に参考につけていますので、御参照いただけるとありがたいと思います。
 5ページ、その他の事項でありますけども、広報・アウトリーチについてしっかりやること、人材育成・交流等についてもしっかりとやること。その他、放射光の今後の在り方を政策レベルで議論する場の創設や、SPring-8停止期間における他施設の支援、若手の育成、放射光科学における産業界が抱える問題の解決、施設間連携を可能とするプラットフォーム等の取組も必要であるというところを、まずたたきとしては書いてございます。本日はこれに必要なところ、おかしいところを御議論いただいた上で、次回にはもう少し詳細なものを御用意させていただく予定でございます。
 以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。それでは議論を、20分程度ございますので、いろいろ御意見いただきたいと思いますが、主に最後に御説明いただいた骨子の4ページ、5ページが今回矢橋委員に紹介していただいたところだと思いますので、4ページ、5ページ辺りを見ながら御議論をお願いしたいと思います。
 お願いします。唯委員ですか。
【唯委員】  名古屋大学の唯でございます。2点ほどありまして、まず1つ目が、矢橋先生からありましたように、いわゆるアカデミックの利用と、それから産業利用という今までの体系に加えて、戦略利用という形で、もう一つ上に積んでくる形の新しいことを強化していくということで、大変よく理解しました。
 今までですと、ビームラインが専用という形になっていると、ある程度目的に対して一対一で、使う側とそこが結びついて開発という形になっているかと思うんですけれども、将来的には、その戦略利用がいろんな可能性というのが、あるビームラインのところで複数つないでいくような体系というのが考えられるのではないかと思うんですけれども、その辺り施設の全体の将来計画のマネジメントはどういう形になるのかということを教えてください。まずこれが1点目です。
【矢橋委員】  ありがとうございます。今御指摘いただいたように、今まで戦略利用的なものはビームラインにタイトに結びついていまして、そうすると5年から10年、なかなかそこから抜けづらいというのがあったわけですが、そこがかなり自由度が増してきますので、ある意味でダイナミックに、二、三年でいろんな入替えをやっていくと。したがいまして、そこも含めた、要はニーズと、あと提供できるシーズといいますか、ケーパビリティーをちゃんとマッチングさせるような機能を施設としてもしっかり持っていく必要があると考えています。ありがとうございます。
【唯委員】  もう一つ、2点目よろしいでしょうか。
【小杉主査】  はい。お願いします。
【唯委員】  冒頭から人材育成というのが非常に、どこも恐らく非常に苦労して、大学も同じ状況でございますけれども、先ほどもちょっとございましたように、やはり今、大学での専門講座の減少というのはものすごく顕著な問題になっている状況かなと認識しています。それで、やはり大学で新しい将来計画を考えるときに、なかなか放射光の計測だけということで議論がなされるケースは極めて少ないので、ほかの領域とか、ほかの分野に対してどういう波及効果があるかということが非常によく見られる対象になるのかなというふうに私自身は思っています。
 その意味でも、いい人材を確保するという意味で、ほかの領域と非常に強い連携をやっていくということが、若い人材を入れる、ここに入っていくことの一つの窓口として大きく作用するだろうと思いますので、さっきクロアポとか連携講座ということをおっしゃっておられますけど、そういう形の新しい仕組みは積極的に入れていくということがまず必要かなと感じました。
 それと同時に、若い、例えば施設の人材が、大学という、またちょっと違う環境の中で、逆の形のクロアポではないんですけど、大学という環境の中でまたもまれるということも非常に重要に思いますので、相互の人材交流ということをこれまで以上に強化する仕組みがあると、またそれを見てきた若い世代というのがそこに入ってきやすいのではないかなと思います。この辺り、施設になるのか理研になるのかちょっと分かりませんけれども、今何か考えておられることがあったら教えてください。
【矢橋委員】  矢橋です。ありがとうございます。もう今、唯先生おっしゃっていただいたことが全てでございますので、付け加えることはないのですが、我々としましても、やはり相互の行ったり来たり、それが今もあるわけですが、どちらかというとアクシデンタルに起きているような感じになっていますので、そうではなくて、しっかり計画的にこういうのが、ある意味で制度のような形で安定的に交流が行われることが非常に重要だと考えています。今御指摘あったように、施設から大学に移る、大学から施設に移る、そういったところも含めて、あと完全に片方というわけではなくて、当然クロアポ、両側見ていくというのがございますので、そこはしっかりと今後御相談をしながら先生方と進めていきたいと考えていますので、ぜひよろしくお願いします。
【唯委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  大学に10人ぐらいですか、実績として転出された人数ということなんですけど、大学に行かれたところで研究室を構えて、そこで放射光のディープな利用なり開発なりやるということはありますか。
【矢橋委員】  そこももちろんございます。
【小杉主査】  必ずしも10人全てがそういうわけでも。
【矢橋委員】  かなりそういうところ。
【小杉主査】  かなりなのですね。
【矢橋委員】  逆に、大学に移るときに大学側からそういうところを期待されているということを聞いています。
【小杉主査】  大学がそういうところに興味を持って人を採ってもらえるのであればいいことですね。
【矢橋委員】  はい。
【小杉主査】  今日はJASRI側での陪席で雨宮理事長が参加されておりますけど、何かコメントございますか、今の件。
【雨宮理事長】  今、矢橋委員から説明あったとおりで、双方向の人事交流というか、異動が行われています。それで、施設の屋台骨であってほしいと思うような人が外からヘッドハンティングされるということ、これはアクシデンタルとは言いませんけど、喜んで交流しているところですが、また同時に、施設の屋台骨を支える人をどう確保するかということも実はすごく重要な問題になっている。だからといって、そこに何か制度的に歯止めをかけるつもりは全くありませんけれど、やはり人材のトータルの人数が少なくなると、施設もある程度クリティカルマスを割り込むと持続しなくなる。先ほど矢橋委員が専用ビームラインから理研ビームラインというような流れ、これは時代の流れもありますが、専用ビームラインというのは組織が小さいので、ちょっと人材のフラクチュエーションがあると、もう立ち行かなくなる。お金の切れ目というよりも人の切れ目、というところもありますので、施設はコア部分に人数のクリティカルマスを持っていないと育成ができなくなるという側面もある。だからといって、それをどう制度に落とし込むかということはまだ描けていませんが、そこはニーズとシーズのすり合わせでダイナミックにいくのかなと思っているところです。
【小杉主査】  それでは、ほかの観点で御意見ございますか。
【阪部委員】  よろしいでしょうか。
【小杉主査】  阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  人材の意見が出ておりますが、矢橋先生にお聞きしたいのですが、現状のSPring-8周辺に関わる人員の具体的人数と、それがSPring-8-Ⅱに向かってどれだけ不足するか、あるいは5年後を見据えた場合どれだけ人がいないかという具体的な数字というのは出せないのでしょうか。
【矢橋委員】  ありがとうございます。実はSPring-8が立ち上がりまして、そのときに若手だった方が今ちょうど定年を迎えておりまして、ある意味で世代の入れ替わりになっております。そのはざまということもありまして、ちょっと不足ぎみな状況が続いていましたが、最近いろいろ人員の拡充もしておりますので、取りあえず最低限というと変な言い方ですけども、やり切るための人員、先ほどクリティカルマスの話がありましたが、現状はそこはクリアしていると思いますが、やはり若手のところは、今後いろいろ勉強してもらいたいところがありますので、引き続き拡充に努めたいと考えています。
【小杉主査】  よろしいでしょうか。
【阪部委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  ほかにございますか。
 高橋委員、お願いします。
【高橋委員】  高橋です。ありがとうございます。利用料の話をちょっとお伺いしたいんですけども、14ページのスケジュールを出していただいているんですけども、これはシャットダウン、バージョンアップの前に、前倒しでこういった利用料の改定を始めるという認識で間違ってなかったですか。
【矢橋委員】  特にその前のページ、こういう仕組みに関わるところはなるべく早めに、議論がもちろんしっかりまとまった上でという前提ですけども、これはかなり大きなチェンジになりますので、それは前倒しでできるところはやっていきたいと考えています。ただ、個別の具体な施策、これも今ある意味で、この1年間でやってきた具体的なところを書いているだけですので、ここの中身についてはどんどん変わっていくというか、今後追加されていきますので、そこは必ずしも全てがⅡの前である必要はないと考えています。
【高橋委員】  それをお伺いしたのは、こちらの骨子のほうの4ページの最初にあったように、Ⅱになることでデータの量が増えるということを考えて、こういった仕組みの改定というのもあると思うんですけども、想像を超えた増え方をしたときには、やはりまた制度としてこれでは立ち行かなくなる、もう少し変えたほうがよくなるということがまた起こってくると思うので、Ⅱの前に、2025年度ぐらいから早いものはとおっしゃっていましたけども、そこで決めたことがまた柔軟に、実際のデータが出てきてから変えられるような仕組みになるといいなと思いました。
【矢橋委員】  当然それは見直しが必要だと考えています。ありがとうございます。
【高橋委員】  桁の違うデータが出てくることをとても楽しみにしています。
【小杉主査】  民間から見て、こういう利用料の取り方は、特に大きな問題ではないということですか。
【高橋委員】  あまり違和感は感じないですし……。
【小杉主査】  違和感はないのですね。
【高橋委員】  オプションのために増額されるということ、また付加金がかかるということについても、説明は比較的しやすいと思います。
【小杉主査】  岸本委員は何か、その辺りは。特に問題は。
【岸本委員】  特にありません。
【小杉主査】  じゃあこれを進めていただきながら、何かあれば見直しをする。
【内海委員】  もう1点だけいいですか、すみません。
【小杉主査】  はい。
【内海委員】  ありがとうございます。内海でございます。
 もう一回話を蒸し返して恐縮ですけれど、やっぱりソフト面では、この戦略的利用が一つの大きな肝になるだろうと思います。矢橋委員御説明の6ページ、7ページですが、私の勘違いかもしれませんが、この戦略的利用は主として理研ビームラインでということがイメージとして書かれていますよね。多くの理研ビームラインをSPring-8に持っておられますので、そこでこういうことをやりやすいんだろうなというのは非常によく分かります。
 私が十分に理解し切れていないのかもしれませんが、今は理研ビームラインの運営は、いわゆる共用補助金ではなくて、理研のお金でやっておられると思うんですけれど、今度新しくSPring-8-Ⅱになったときに、この戦略的利用というのは共用ビームラインではなくて主として理研ビームラインでやるということは、例えば利用者選定業務は共用ビームラインの登録機関とは全く別のカテゴリーで、理研としてやっていく、そういうイメージを考えておられるんですね。
【矢橋委員】  そうです。
【内海委員】  分かりました。
【小杉主査】  理研そのものがこういうミッションを持っているということでもありますね。
【矢橋委員】  そうですね。
【小杉主査】  その辺りは、QSTはまた違いますね、NanoTerasu。
【内海委員】  現状ではそこまでできないと思います。まだQSTビームラインというのがないので。
【小杉主査】  JAEAはどうなんですか。
【脇本委員】  一応利用支援業務はCROSSのほうでやるという形にはなっていまして。
【小杉主査】  こういう形にはならない、戦略的な利用。中性子で考える場合。
【脇本委員】  中性子で考えれば、基本これと同じような形を我々、今後新しい制度で優先利用というものを導入したらやっていこうとしているという部分ではあります。
【小杉主査】  ああ、そうでした。
【稲田課長】  ちょっと補足させていただきますと、お金の流し方として、その意味でプロジェクト研究的なものでお金を流して、それがSRを使う、または中性子利用するという形になります。したがって、今まで理研さんというのはそういうのにたくさん手を挙げていますし、QSTも例えば核融合とかでそういうのをやっていらっしゃるところもあって、もちろんJAEAもやっているんですよね。その意味で、制度的にどこのところを強く念頭に置いているというのではなくて、その立つ戦略分野と、それをどこが担うのが適切なのかというところを踏まえつつ、それこそほかの機関もあるかもしれませんがというところはあり得ると思っています。
【内海委員】  よく分かりました。
【矢橋委員】  私もちょっと補足をさせてください。従来、もともとの理研ビームラインの成り立ちは、理研の独自研究ということからスタートしておりましたが、その後いろいろ制度の変更、組織の変更がございまして、もちろん独自研究のポーションはありますが、今のこの戦略利用もありますし、あと非常に重要なのが、共用施設として技術開発をしっかりやっていく、その場はやはり共用ビームラインではなかなか難しいということもありまして、そこを理研ビームラインを活用してやっているというところがありますので、お金の流れは必ずしも理研独自のお金が全てではないということを補足しておきます。
 以上です。
【小杉主査】  ほかにございますか、まだ5分程度時間ありますが。
【脇本委員】  すみません。
【小杉主査】  お願いします。
【脇本委員】  私もこの戦略的利用のところ、大変興味がありまして、まず1点目は確認ですけども、この6ページの絵の、戦略利用団体から利用料という形で矢印が理研ビームラインと共用ビームラインと両方に伸びていますので、基本的にはこういう仕組みというのは共用ビームラインでも実際運営されると、そういう理解でよろしいですか。
【矢橋委員】  はい。共用ビームラインも優先利用の制度がございますので、そこで賄える、ある意味定型的で、さっとできるものはそちらでやる、もう少しじっくりやるのが理研でやると、そういう仕分にしております。
【脇本委員】  なるほど、分かりました。
 それで、もう1点質問させていただきたいのは、ここでは上が設置者というふうに書かれているんですけども、設置者と戦略利用団体の間に今、矢印が何もつながっていない絵になっているんですけども、ここは、例えば施設側として何か戦略を持って、こういう戦略利用団体に使ってもらおうとか、そういうふうなアクティビティーをされるようなことがあるのか、またどういった場でそういうことをされるのかというのがもしあれば教えていただいてよいですか。
【矢橋委員】  ここのリンクは絵で示すのは難しいのですが、当然戦略利用についても、理研としてというか、国として重要なものはしっかりやっていくべしということがありますので、そこも踏まえて判断というか協議を進めて、実際にこの制度を使っていただくということになっていきます。
【脇本委員】  何か設置者側から戦略利用団体をある意味、言葉は悪いですけど、つりにいくというか、そういうアクティビティーもあるということですかね。
【矢橋委員】  もちろんございます。
【脇本委員】  分かりました。ありがとうございます。そういった活動も一方で、広い間口と同時に、そういう利用も重要かなと思いますので、質問させていただきました。
【矢橋委員】  ありがとうございます。非常に重要な御指摘だと思います。
【小杉主査】  ほかございますか。
【岸本委員】  すみません、よろしいですか。
【小杉主査】  はい。岸本委員。
【岸本委員】  全体的な話になってしまいますが、利活用の仕組みがどんどん進んでいくということも大変ありがたい話ですし、人材交流によって人も育っていくということも加速してやっていかなければいけないと思います。やはり一番大切なことは何なのかなと思ったときに、若手の方々がキュリオシティーを高めてやっていけるという土台をつくっていかないと、建物は造っても入ってくる人がいないみたいな、そういうことになりかねません。我々産業界でも最近強く思っていることです。
 例えばハイスループット化をしていくと、ルーチン的なことになりますが、そこでも新しいサイエンスがきちんと生まれるだとか、最先端ばかりのことでなくてもいいんだよと、そういったことも非常に重要と思います。しかも失敗の学びというのも重要で、普通、成功したことは報告するんですけど、失敗したことというのは報告しないんですね。実は失敗は成功のはずなんです。成功と言ったら変ですけど、成果なんです。その失敗を共有することによって新しいことが生まれていくという、そういうこともしっかり考えていかないと、実は人材育成というのは非常に難しい側面があるので、この委員会での議論事項ではないかもしれませんが、施設や大学に加え企業も一緒になって、日本の次の世代をどう育成していくのかというのは考えていくべきであり、コメントさせていただきました。
【小杉主査】  失敗が多いのは学術共同利用のところで、SPring-8-Ⅱのほうでは施設側でしっかり見極めて、開発すれば絶対利用までしっかりできるというものをセレクトして予算を確保して開発するというスタイルが12ページに書かれているので、ここに失敗が入るようなことはなかなか入りにくいなという印象を受けたので、そこはやっぱり学術の施設でやらないといけないかなというところはあると思うんですが。
【岸本委員】  やっぱり失敗は学びにつながりますので。
【小杉主査】  最初から失敗と言ったら怒られますけど、もちろん。
【岸本委員】  もちろんそうです。
【小杉主査】  学術はそういうところが重要なので、そういう面も多分入れ込もうとはされていると思いますけど。
【矢橋委員】  特に最近の例ではSACLAがまさにそうだったんですけども、ある意味で更地で非常に新しいものを造りますと、それは何かやっても失敗も成功もないわけですよね、何かやるということが重要で。だからそういう部分は必ずSPring-8-Ⅱでも一定部分は残しておいて、そこでしっかり若手が元気にできるという場をつくっていくことは非常に重要だと思っています。
【小杉主査】  今の観点でいうと、SPring-8-Ⅱで初めて実現するような何らかの新しい手法なり、そういうのは当然ある。
【矢橋委員】  そうですね。それは恐らく……。
【小杉主査】  あんまりそういうのを聞く機会がなくて、100倍強くなって今までのがどんどんスループットが上がるというイメージしか伺っていないので、その辺りも示していただくと、若い人もそこに入ってくる可能性があるとは思います。
【矢橋委員】  あとは、あまり無責任な言い方をしてもあれですけど、やはりやってみないと分からない部分があって、そここそが恐らく若手がやるところなんですね。やはり我々シニアが引いたレールではないところで頑張るというのが基本ですので。
【小杉主査】  そこはぜひ共用施設側でなくて、理研のほうで頑張っていただいて、若い人を引きつけていただければ。そういうのはJ-PARCのほうの評価でも、若い人を引きつけなさいというのが来ていますけど、似たようなことがありますね。
 ほかに。そろそろお時間なんですけど、何か付け足したいことはございますか。資料2-1にありますように、一応論点を順番に挙げていって、それぞれの説明を伺ってきましたので、次回にまとめに入るということで骨子案が示されてはいるんですけれど、今まで3回伺って、足りない部分とか、何かございますか。今日は時間が限られていますので、思いついたことや、今日もうちょっと言いたかったということがあれば、事務局のほうに次回までに伝えていただいて、うまくまとめのほうに反映させるようにやっていただきたいと思いますので、御協力お願いいたします。
 そろそろお時間ですので、この辺りにしまして、事務局のほう、まとめをよろしくお願いいたします。
 それでは、議題3ということで、NanoTerasuの今後の共用ビームラインの整備についてということです。量子科学技術研究開発機構の検討状況で内海委員、それから光科学イノベーションセンター側での検討もありますので高田理事長に、それぞれ御説明をいただきたいと思います。
 では、よろしくお願いいたします。
【内海委員】  ありがとうございます。QSTの内海でございます。資料3に基づいて御説明させていただきます。高田理事長とも御相談の上、作っている資料ですが、一番最後のページの説明は高田理事長にお願いするという形で御報告させていただきたいと思います。
 1枚めくっていただいて、最初のページは、ファーストビームが12月7日に出ましたという御報告です。QST理事長の小安とPhoSIC高田理事長が笑顔で握手されている写真を載せてあります。現在10本のビームラインの整備中ですが、そのうちの2本、QST共用ビームライン1本とコアリションビームライン1本、それぞれについてメインビームシャッターを開いて、ファーストビームが確認されたところでございます。今年の4月から運用フェーズに入りますので、それに向けて加速器、ビームライン両方とも整備が着実に進んでおります。
 次に3ページでございますが、改めて復習となりますが、NanoTerasuにおきましては、共用ビームラインとコアリションビームラインという2種類のビームラインが今整備中でございます。コアリションビームラインの中に将来的には若干共用枠を入れるという議論がなされておりますけれど、利用制度という意味におきましては、共用利用とコアリション利用という2つの制度が走るということでございます。
 共用利用のほうに関しましては、SPring-8の共用ビームラインの利用と似通ったものになっていて、個人ベースで課題申請をしていただいて、課題の審査があり、審査を通ったものについてビームタイムを配分します。個人探求型かつイノベーションシーズを涵養するというような目的に使われます。原則として成果公開ですけれども、SPring-8と同じように、ビーム利用料を有償で負担していただくことによって、成果専有も可能であるということでございます。共用利用は、QSTと、現在選考中である登録機関が一緒になって運営をやっていくということになります。
 一方でコアリション利用については、いわゆる加入金を払っていただいた、すなわち出資をしていただいた会員さんにお使いいただくという制度です。お金をお支払いいただいているわけですから、課題審査はなくて、その分非常に迅速に対応でき、原則として1か月前まで利用予約が可能となります。こちらのほうは組織的なニーズプル型、それからイノベーションを加速する、そういう利用を主な目的としているところでございます。こちらのほうはPhoSICさんが運営を担当されることになっています。
 4ページでございます。今ビームラインの現状がどうなっているか、これも復習でございますが、右上にNanoTerasuのビームラインマップが描いてございます。合計で28本のビームラインが建設可能なNanoTerasuですが、そのうち今10本のビームライン整備が第1期フェーズとして進んでいるところです。左の表には、国側の共用ビームラインとパートナー側が整備しているコアリションビームラインのラインナップが書かれています。
 今後、残り18本のポートを埋めていかないといけないわけですが、右下の表に書いてあるのが、現時点での残り具合をまとめたものでございます。合計ポート数は28あり、今10本のビームラインが整備中ですので、残りは18ということになります。アンジュレーターのポートとウィグラーのポートが同じ数余っているわけではなくて、実はアンジュレーターのポートは6本しか残っておらず、ウィグラーのポートが12本残っているというところでございます。ですから、NanoTerasuを最大限有効活用するためには、当然のことながら、残り18本のビームラインを早急に整備していくことが必要なわけですが、それに加えて、ウィグラーを光源とするビームラインをどういうふうに有効活用していくかというところも非常に重要なポイントであるということになります。
 5ページでございますが、4月以降の運用のスケジュールについて、これも復習に近いものでございますが、まとめたものでございます。現在、登録機関の選定中で、4月から選定された登録機関がNanoTerasuでの活動を開始していただくということです。
 加速器は順調に立ち上がっておりまして、3月の規制庁の施設検査が、整備期における最後の大きなマイルストーンになります。定格電流の1割である42ミリアンペアの蓄積電流で施設検査を受けることになっており、それをクリアした後に4月から利用者が使えるということです。定格電流が400ミリアンペアのNanoTerasu加速器ですけれど、2024年度は100ミリアンペアでスタートし、ビームラインへの放射光供給は3,500時間という予定になっております。今加速器の調整が予定よりも早く進捗しておりますので、技術的には200ミリアンペアの加速器運転でスタートできるような状況になっています。実際に何アンペアでスタートするかというのは、種々の状況を見てこれから判断したいと考えています。
 運用は2024年度当初から始まるわけですけれども、共用ビームラインのほうは3本が軟X線のビームラインでございますので、立ち上げに慎重かつ時間を要するところでございまして、2025年の2月ぐらいまでは、試験的共用期間として、本格的な共用の前にしっかりとビームラインを立ち上げて、3月から本格的共用を開始する予定になっております。本格共用に先立って登録機関のほうで、来年度10月ぐらいから共用ビームラインの課題募集をしていただくというスケジュールになっています。
 一方で、コアリションビームラインの方ですが、課題選定プロセスが不要ですので、ビームラインの調整ができているものから、4月以降順次、ビームラインの利用を開始する予定になっております。
 次のページですが、今後のビームライン増設をどういうふうに決めていくのかということでございますが、これも国側のビームラインとパートナー側のビームラインとで少しやり方が違っております。QSTが今請け負っております国側のビームライン、主として共用ビームラインですけれど、その検討に関しましては、共用ビームライン整備検討委員会というのを作り、そこで審議していただいています。PhoSICの方についても、PhoSICの内部あるいはパートナーとの連携の中で、今度どのようにコアリションビームライン整備をしていくかについての検討が今なされている状況でございます。4月以降、運用期になりますと、総括事務局というのが組織として置かれますので、そこがメインとなって国側の案とコアリションの案の調整をしていくということになろうかと思います。その結果は、NanoTerasuの最高議決機関であるNanoTerasu運営会議に諮った上で、NanoTerasu全体としての方針を決め、共用ビームラインについては本量子ビーム小委員会で審議をしていただく、そしてPhoSICのパートナービームラインについては、法律上は専用ビームラインにカテゴライズされておりますので、登録機関による選定評価というプロセスを経た上で予算確保をしていき、ビームラインの建設をしていく、こういう流れになろうかと考えております。
 7ページでございます。共用ビームラインのほうでございますが、こちらについては広く意見をお聞きするというプロセスが必要になりますので、東京大学の原田先生を委員長とするNanoTerasu共用ビームライン整備検討委員会で検討していただいて、今後整備すべき新規ビームラインの候補をまとめるということをお願いしているところです。ここに委員の名簿を載せさせてございます。既に3回の委員会が開催されて、今日はお示ししませんけれども、共用ビームラインとして、あるいは国側のビームラインとして整備すべきものはこれこれであるというラインナップの答申を準備していただいているという状況です。
 その委員会の中で出てきた議論のポイントの骨子が8ページに書かれています。増設に関しましては、初期10本のラインナップが第1期に整備されているということを踏まえて、新たな増設に関しては、ユーザーニーズ、分野の多様性、NanoTerasuの強みを生かせるものであること、そして新規性の開拓、こういったところを一つの主要なポイントとして新しいビームラインを検討して頂きました。
 9ページですが、第1期には10本のビームラインを同時に建設してきたわけですけれど、残りについてフェーズを順番に区切ってやっていくべきであるということが委員会で議論されております。この図で、一番上は整備期共用ビームラインとして第1期で終わっているところで、まさに2024年度から利用されるわけですが、その後の整備に関しては、フェーズ2、フェーズ3、フェーズ4ぐらいに分けて順番に整備していくべきであろうということでございます。
 特にフェーズ2に作るべきビームラインに関しては、SPring-8-Ⅱのブラックアウトの期間というのも意識したものを検討すべきであろうという意見が、委員からも出ています。具体的な中身については、NanoTerasu全体の中で調整をした上で、次回以降のこの委員会で報告させて頂きたいと思っております。
 高田理事長、最後のパートナー側のほうについて、よろしくお願い申し上げます。
【高田理事長】  パートナー側のほうのお話が10ページ、最後のページでございます。我々もともと7本のビームラインを建設した際も、コアリションのメンバーといろいろ議論して、この7本を選択したと。国際評価ではさらに3本というところも考えておくべきということはいただいておりますけれども、そんな中で、実は建設の最中に非常にたくさんの視察をいただいております。産業界の経営層も含めて視察をいただいているということで、現場でこの実験ホールを見ていただきながら、いろいろと意見を伺ってきているところでございます。
 まず、そこの文章に書いてありますけれども、NanoTerasuがイノベーションサイクルのコアとして役割の高いレベルを担い続け、我が国の学術、産業の国際競争力の強化、及び人が安全安心に生活する基盤となる持続的社会の実現を目指すべきであるということを企業の方たちともお話ししております。学術のコアリションともそういう話をしているわけでございます。
 実はこの7本の中で、BL09Wと09Uのブランチ、これが先送りになっております。ここをしっかりと計画どおり設置していくということを今検討しております。さらに、そこの図にありますように、セキュアゾーンというところ、ここをどう生かすかというところが、やはり視察の際に非常に積極的な意見をいただいております。重要な機微技術の研究開発、先ほどの矢橋先生のお話にもクローズとオープンのところというお話がございました。よりセキュアな環境でという企業の要望が非常に多く寄せられているということで、この東側の拡張エリアにセキュアゾーンを設定して、セキュアな実験が可能なビームラインを新設するという検討が今、産業界の方たちと、また学術の先生一部、始めているところでございます。
 このセキュアなところとは申しますけれども、このエリア、光源からのラインの長さを生かした光学系のビームライン、こういったものを設置するというところが、さらには科学技術の観点からも重要であろうというふうに思っております。ここのところ、ちょうど共用のビームラインもそのエリアに入ることはできると思いますので、この辺、今後QSTとしっかりと協議をしながら進めていきたいと考えております。
 私からは以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。それでは、この件について御質問等ございましたらお願いいたします。どうでしょうか、ネットのほうから何かございますか。
【阪部委員】  よろしいでしょうか。
【小杉主査】  阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  国側の共用ビームラインのほうですが、増設する場合、契約期間というのを設定するのでしょうか。
【小杉主査】  内海委員、ちょっと答えにくい。
【内海委員】  すみません、契約期間というのは、ちょっと意味が不明なのですが。ごめんなさい。
【阪部委員】  ビームラインを使用できる期間ですね。例えば5年とか10年とか切るのでしょうか、それとも恒久的に常設ビームラインはどこかの所有ということになるのでしょうか。
【内海委員】  すみません、今検討しておりますのは、いわゆる共用ビームラインとしての設置を検討しておりますので、基本的にもちろん……。
【阪部委員】  専有ではないということですか。
【内海委員】  はい。今、共用ビームラインは3本しかございませんので、これを増やしていくのが一番最優先であろうということです。共用ビームラインには期限というのは、基本的にはありません。もちろん古くなったら、高度化とかあるいはリプレイスも必要になってくるかもしれませんが。
【阪部委員】  どうもすみません、少し誤解していました。すみませんでした。
【小杉主査】  SPring-8の設置者ビームライン、理研ビームラインのようなものはNanoTerasuにはないような形になっています。QSTが責任持って造るビームラインは最終的に共用施設化するということで伺っています。
【阪部委員】  分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】  ほか何かございますか。
 矢橋委員、お願いします。
【矢橋委員】  理研の矢橋です。どうもありがとうございます。
 内海委員から御紹介いただいた共用ビームライン増設は非常に重要だと思います。一方で、この会議でもさんざんありましたが、日本全体のポートフォリオという話があって、今御検討いただいているのですが、例えばSPring-8-Ⅱのブラックアウトのことも言及いただきましたが、そういったところも含めて、どういうところが日本全体として役割分担をしていくのかという、この議論はどういうふうにお考えでしょうか。
【内海委員】  ありがとうございます。実はこの委員の先生方、かなりの方々がSPring-8のヘビーユーザーでもあるので、委員会の中でもそういう議論が既に多々出ております。今日はお見せしませんが、具体的に答申案として出てきているビームラインラインアップの中には、今SPring-8でも完全にオーバーフローしている分野についてはNanoTerasuにおいても必要であるという議論があります。一方で、当然ながら、すみ分け論というか、役割分担論というのはあって、できるだけ早く具体的なラインアップをお見せして、SPring-8の方とも議論させていただく機会を持ちたいというふうに思っています。よろしくお願い申し上げます。
【矢橋委員】  ありがとうございます。恐らくこの検討委員会と同じレイヤーなのか、もしかしたらもう少しプリミティブな段階、具体的になればなるほどなかなか難しいと思うので、概念的なところで少し議論させていただくと全体最適という意味ではいいのかなと思いましたので、ぜひよろしくお願いします。
【内海委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  6ページにこの小委員会で審議ということが書かれているんですが、文科省的には、この小委員会での審議でNanoTerasuに造る共用ビームラインの議論というのはどのフェーズ、概算要求に持っていく前の最後の検討のフェーズなのか、今、矢橋委員が言われたように、少しSPring-8の状況を見ながら全体として大きな考え方を議論するフェーズになるのか、どういう感じなんでしょう。
【稲田課長】  端的に言うと、大きな議論をする場になると思います。というのは何かというと、ステークホルダーが実はこの2つの機関だけではないんですね。ほかのSR施設とかもありますので、その意味だと中立的な立場でオール・ジャパンの議論をする必要があるかなと思っておりまして、その意味での行司をこの委員会は期待されているのかなというふうに理解しております。
【小杉主査】  そういう形であれば、矢橋委員。
【矢橋委員】  そうなんですが、ここでかなり検討が進んで、そこでというのもなかなか難しい。そこはいろんなパスを。
【稲田課長】  その意味だと、おっしゃるとおり、行司で、最終的なジャッジメントをするのと、法廷でもありますよね、論点を整理し、具体的なところを何々やるというところの事前の手続は別の問題であって、事前の手続の多くは主要な2つのところで詰めるところも多くあると思いますので、それはなるべく早めに実務レベルで始めていただけるとありがたいと思いますし、必要に応じて役所もサポートいたしますというところが。
【小杉主査】  また近いうちに議題に上げていただくようにお願いします。
【内海委員】  今、実務レベルでという言葉をいただいたので、ぜひともそういうレベルでまずはさせていただければと。
【矢橋委員】  お願いします。
【小杉主査】  ほかにございますか。
 5ページの年次計画ですけど、加速器のビーム電流は、最終的には400ミリアンペアが目標ですが、そこまではまだ時間がかかるという見込みなんでしょうか。
【内海委員】  実は、昨年の有識者会議でこの図を出させていただいているんですが、その当時は、最終的な定格の400ミリアンペアは令和8年度からという形で出させていただいています。まだその当時は加速器のコミッショニングが始まっていなかったので、長期的見通しがなかなか難しかったこともあって、まず取りあえず2024年度の開始は100ミリで、2025年度の初頭が200ミリで、令和8年度から400ミリアンペアから定常運転をするという道行きを書かせていただいていました。
 それが、先ほど少し申し上げましたけれども、加速器の調整が予測していたよりも、順調に上がっていますので、ここで書いている蓄積電流値はかなり前倒しできるのではないかと思っております。ただ、この場でまだお約束できないのでということでございます。
【稲田課長】  少しだけ補足させていただきますと、アンペア数を上げていくためには焼き出し運転が非常に重要になると思います。これは電気代が必要ですので、技術的にどこまでできるかというところをしっかり認めていただき、それに向かって我々、財務当局にアタックしますので、そこでどこまで前倒せるかというところが決まってきますので、この意味だと、今現実的なものとして、やや保守的に書いているものであり、それが技術的にどこまで前倒せるかというのが決まり、それに先立つものの都合で実際のアクチュアルのスケジュールが決まっていくものというふうに理解しています。ただ、いずれにせよ最大限、頑張ります。
【内海委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  ビームラインの立ち上げのときは低電流から始めてじわじわと上げていくというのは絶対やらないといけないので。
 それから、運転時間が割と最初から長く取れるような感じで書かれている。夏場の運転もできるという前提ですか。
【内海委員】  今まさに令和6年度の加速器運転の具体的なスケジュールの議論を始めているところでございます。令和6年度予算の内示をいただきましたので、その中でどういうふうにしてやっていくかと、PhoSICの方も入れて、加速器グループ、ビームライングループで議論・調整を始めているところです。今、小杉先生に言っていただきましたけれど、今までの放射光施設は夏休みにかなり長い間のシャットダウン時間を取っていました。NanoTerasuは夏休みを取らないという意味ではないんですけれど、特にPhoSIC側からの強い要望として、毎月必ず何日かのユーザービームタイムは確保してくださいというリクエストがございますし、この小委員会でも、このプロジェクトが始まる前から、そういう議論をしていたところでもあったので。
【小杉主査】  ええ、それは非常に重要であると。
【内海委員】  ほぼ確実に毎月何らかのユーザータイムは、夏も含めてあるという状況になろうかと思います。
【小杉主査】  ほか何かございませんでしょうか。
 前の高橋委員の御意見だと、夏場もぜひ運転して、海外にあちこち行くということがないような形が一番いいということをおっしゃっていましたけど。
【高橋委員】  ほかの施設との調整ができればいいと思うんです。SPring-8が休止している期間に運転しているといったところで、それぞれが独立に運転スケジュールを決めるだけではなくて、ほかの放射光施設と連携した上でずらしていただけると、とてもユーザー側はありがたいのではないかなと思います。
【小杉主査】  MXのビームラインというのはPhoSIC側で対応する予定でしたっけ。
【高田理事長】  何のビーム。
【小杉主査】  タンパクとかの。
【高田理事長】  もうエンドステーションの設置のところ、めどがつきましたので、しっかりとそこはサポートしていきたいと思っています。主にSPring-8のときから夏場の、夏休みじゃなくて、シャットダウンが問題になっておりましたので、何とかそこはしっかりとやっていきたいと考えております。
【阪部委員】  よろしいでしょうか。
【小杉主査】  阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  すみません、少し細かいことですが、パートナーさんのセキュアビームラインのゾーンについて、拡張エリアと書いていますが、この拡張エリアというのは当初からこのセキュアゾーンを設けるために予定されていたものなのでしょうか。
【小杉主査】  小委員会では長尺のビームラインを造るスペースをぜひその辺りに用意してほしいという要望があったんですけど、建物の予算とか、直接の具体的なビームラインというのは、その当時はっきりしたものがなかったので、取りあえず次の計画としての拡張スペースだったんですけど、セキュアにするかどうかというところまでの議論はなかったです。多分まだこれは一応提案ベースであって、これからまた詰めていくことだと思いますけど。
【高田理事長】  そのとおりです。ただ、せっかくだからそういうことも考えたらどうかということです。
【阪部委員】  分かりました。当初は長尺ラインということで拡張エリアを確保していたということですか。
【小杉主査】  そうです。
【阪部委員】  分かりました。
【小杉主査】  最初そこは駐車場になりかけたんですけど、そこはぜひ将来的に拡張に取れるスペースだから、反対側にしてくれとお願いした経緯がありました。
【阪部委員】  それはよかった。どうも。
【小杉主査】  ほかございますか、5分程度まだ時間ございますが。
【脇本委員】  すみません、1点だけ。もしかしたら説明を聞き漏らしていたら大変申し訳ないんですけど、6ページ、7ページで検討の流れがある中で、例えば一般から装置提案を受けるとか、そういうユーザーからの声を拾う場というのは、この中ではあるんでしょうか。
【内海委員】  SPring-8の当初と違って、NanoTerasuでは、学術分野ごとのいわゆるサブグループみたいなものを作っていないんですね。それで、第1期の整備の共用ビームライン3本については、東大の有馬先生に委員長になっていただいた、ビームライン検討委員会で、コアリションを含む10本全体を検討する際に、共用のほうだけ公募提案を受け付ける期間を少し取っていました。今回は、それをする時間的余裕がなかったものですから、一昨年に実施したアンケート調査の結果なども参考にしながら、幅広い分野の先生方にお集まりいただいた本委員会で議論していただいたということです。今後の道行きについては、まだ十分に検討し切れていませんが、今後の予算要求スケジュールなども勘案しながら、先ほど矢橋委員からおっしゃっていただきましたSPring-8とのご相談などのプロセスを考えたいと思っています。
 また、将来の全体像と言いますか、共用ビームラインとして最終的にはこのぐらいの数とこのようなラインナップが必要ですというところはお示ししたいと思いますが、残り全部のビームラインの詳細までを完全に今フィックスしてしまうというわけではありません。各フェーズで状況も変わってきますので、どの段階でどういう形でどのレベルのものをオープンにしていくかというのは今後検討させていただきたいと思います。御質問ありがとうございます。
【脇本委員】  はい。
【小杉主査】  ほかございますか。
 これ、側室は、各ビームラインごとに使う形にはなっていない。
【高田理事長】  側室ではなくて外周室なんですが、ビームラインごとではなくて。
【小杉主査】  そこにセキュアな特定の民間とかいうのも造らないんですか。
【高田理事長】  造ってなくて、そこは共通のスペースということで、化学準備室であるとか、そういったものにしてあって、特定の、何かセキュアにするほどのセキュアさはないので、普通のものですけれども、ビームラインに全部ひもづけするほどの数が取れなかったので。すみません、私が答えるべきではなかったかもしれませんが。
【小杉主査】  建物側の問題なので。
【高田理事長】  そういうことでやっております。ですので、基本的にはどなたでもというか、そういう目的をしっかりとQSTとPhoSICの間で協議をして、ここは実験準備室にしようとか、ここはこういう部屋にしましょうというのを決めております。
【小杉主査】  ほかの海外の施設も、基本的にはそういう共通の準備室みたいな使い方が多いんですけど、SOLEILなんかは特定の会社に一部屋確保して、創薬の会社に占有で使わせるようにして、すぐ使えるような体制を民間に提供しているというのがあったのでお伺いしたんですが。
【高田理事長】  一応そういうスペースも、部屋としてではなくて用意、設定はしております。空いたスペースがありますから、そこは有償で使っていただくということもQSTと協議をして決めております。
【小杉主査】  いよいよ4月から動き出す形になりますので、この小委員会でもフォローアップしながら、いろいろいい形にしていきたいというところだと思います。
 大体時間が来ましたけど、特になければ、今日の議題としては、あとその他ということなんですけれど、よろしいですかね。
 では、今日のフォローアップもやっていきますので、またQSTとPhoSICから進捗状況をお知らせいただければと思います。
 それでは、その他含めて、事務局のほうから何か連絡事項等ございますでしょうか。
【稲田課長】  次回の量子ビーム利用推進小委員会は、3月4日の14時から16時を予定しております。追って皆様に開催方式についても御連絡を差し上げますので、御対応お願いします。
 最後に、本日の会議の議事録については、作成次第、皆様の確認をメールによって取った後、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただく予定でございますので、こちらの作業についてもよろしくお願いします。
 以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、ちょっと早かったですけれど、以上をもちまして第51回量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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