量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第50回) 議事録

1.日時

令和5年10月19日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省内15階局会議室及びオンラインのハイブリッド形式

3.議題

  1. SPring-8の高度化について
  2. J-PARC中間評価について
  3. その他

4.出席者

委員

小杉主査、高原主査代理、石坂委員、内海委員、岸本委員、阪部委員、高橋委員、唯委員、森委員、矢橋委員、脇本委員

文部科学省

稲田研究環境課課長、内野研究環境課課長補佐、田邉研究環境課専門職

オブザーバー

理化学研究所放射光科学研究センター石川センター長、高輝度光科学研究センター雨宮理事長、J-PARCセンター大友MLFディビジョン長

5.議事録

【稲田課長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第12期量子ビーム利用推進小委員会第50回を開催いたします。
本日は、お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。本小委員会の事務局を担当させていただいております文部科学省科学技術・学術政策局研究環境課長の稲田と申します。よろしくお願いいたします。
本日ですが、オンラインとのハイブリッド形式での会議を開催しております。委員全14名中11名の委員の皆様に御出席いただいておりまして、具体的には座席表に出席の委員の記載がございますが、対面での御出席6名、オンラインでの御出席5名となっております。なお、御欠席の委員は、大竹委員、古川委員、山重委員と伺っております。
議題1、SPring-8の高度化に関しまして、理化学研究所より石川センター長、高輝度光科学研究センターより雨宮理事長にお越しいただいております。また、議題2、J-PARCの中間評価に関連して、J-PARCより大友ディビジョン長にお越しいただいております。
続きまして、オンライン会議の留意点について御説明させていただきます。通信を安定させるため、御発言されるとき以外は、声がエコーしますので、可能な限りミュートをかけてください。次に、御発言の際には、ミュートを解除して、マイクオンの状態であることを御確認ください。議事録作成のために速記者を入れておりますので、発言の前にお名前を言っていただけると大変ありがたいと思っております。会議中、不具合などトラブルが生じた場合は、事前にお知らせしています事務局の電話番号にかけていただければ、こちらのほうで対応いたしますので、お電話をお願いいたします。なお、本日は、会議公開の原則に基づきまして、報道関係者や一般傍聴者によるYouTubeでの傍聴を認めておりますので、その点、御了承いただけるとありがたいと思います。
委員会の開催に当たりまして、私、9月1日より研究環境課長を拝命しています稲田でございます。浅学非才の身ながら、微力を尽くすつもりでおりますので、引き続き御指導、御鞭撻を賜れるとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、配付資料について御説明させていただきます。配付資料の投影をお願いします。本日の資料は資料1-1から資料2-2までの4点でございますが、乱丁落丁等ございしたら、事務局にお申しつけください。正しいものにお取り替えいたします。また、事務局で資料を画面共有しますが、通信のディレイ等によって見えにくい場合は、事前にお送りしました資料を御覧いただけるとありがたいと思います。何か御不明な点ございましたら、事務局へお電話いただけるとありがたいと思います。
それでは、主査、議事をお願いいたします。
【小杉主査】 それでは、進行を小杉が行います。
今日は、議題1、2、3とありますけれど、まず1番のSPring-8の高度化について議論したいと思います。資料は1-1、1-2になっております。
資料1-1を御覧いただけますか。ここ3回ほどのスケジュールが書かれておりますけれど、前回、SPring-8の高度化に向けての技術面の議論を行いました。今回と次回は、仕組みの高度化の在り方ということで議論いたします。今日は、資料1-1の2ポツのところに書いてあります、ユーザー利用環境、コンシェルジェあたりの議論があります。それから、産業・地域との連携、広報・アウトリーチという最初の3項目になっております。残りの項目は次回となっております。理化学研究所におけるこれらの検討状況について、理化学研究所はSPring-8の設置者ですので、設置者側の御説明をお願いしたいと思います。
それでは、矢橋委員、よろしくお願いいたします。
【矢橋委員】 理化学研究所の矢橋です。本日はよろしくお願いします。
それでは、私のほうから、SPring-8の仕組みの高度化ということで、御説明をしたいと思います。
まず、めくっていただいて、SPring-8-Ⅱが目指すものということで、まとめのスライドになっておりますが、このSPring-8-Ⅱが目指すものを端的に申し上げますと、前々回、前回にもありましたが、施設をアップグレードすることで、未来を予測して制御する科学のために、我が国における大量かつ良質なフィジカルデータの創出源になるということになります。単なるアップグレードではなくて、当然、社会の中でより有効に生かしていくことが必要になっていくわけですが、そのためには、単に施設の性能を上げるというスペックの話だけではなくて、性能に対応した施設運営や仕組みの高度化も考えていく必要があります。特に、さきに文科省内で行われたSPring-8の高度化に関するタスクフォースでは、以下の4点について検討しなさいということが言われておりまして、本日は、これらの項目について順を追って、我々の考えていること、それから、現在の取組を説明して、議論をいただきたいと思います。
まず、ユーザー利用環境というところから始めます。囲みの一番上にありますように、SPring-8-Ⅱになると、輝度が100倍上がって様々なジャンプが期待されるということですが、単に光源のスペックが上がるだけで利用成果の拡大に直結するかというと、残念ながら、そういうことではありません。ちょっと考えるだけで、実際、利用者の皆様からもいろいろな反応をいただいておりますが、例えば、試料が損傷するとか、データがすごく増えるのでデータハンドリングをどうしましょうかと、こういった声がよく聞かれます。こういうことはあるわけですが、実は、全く同じ問題がX線自由電子レーザーSACLAを立ち上げるときにも指摘されていました。特にXFELの場合は、本当に放射光とはかなり異なる斬新な光源で、一発一発試料を壊しながら測るということがありましたので、非常に新しいコンセプトが必要になりました。それで、ここにあります「Diffract before destroy」、破壊する前にデータを取ってしまうというコンセプトに基づいて、様々な新しい計測手法を開発したということがあります。これによって、試料が損傷する前にデータを全て取得するということによって解決を見ています。
それから、60ヘルツで運転していますので、データもそれ以前の放射光とは比べものにならないほど増えたわけですが、これもSACLAのデータセンターというのを最初からつくりまして、それを標準化するということで、しっかり対応していくということが可能になりました。SPring-8-Ⅱでは、SACLAほどのドラスティックな転換ではありませんが、やはりかなりすごいことが起きますので、この辺りのやり方も参考にしながら、新しい仕組みを考えていく必要があります。
そして、このスライドの右側ですが、我々はビームラインのカテゴリーを3つに分類しておりまして、その中でも、特に定型のルーチン計測、「Measurement」のビームライン、特に名前としてはプロダクションビームラインとも呼んでいますが、ここを中心に、利用環境の抜本的な変革が重要であると考えています。特に、オペレーションの自動化というのが非常に重要になります。それから、使いやすいデータ環境の整備を進めると。最終的には、放射光の専門家でなくても、放射光実験のお作法、いろいろ特殊なものがありますが、そういったことを覚えることなしに簡単にデータが得られる。いわゆる「みんなの放射光」と書いていますが、スパコンの「京」から「富岳」に行ったときに「みんなのスパコン」という話がございましたが、それと同じように、専門家はもちろんそうですが、非専門家の方でもしっかり使っていただける、データを活用いただけるというところを目指していく必要があると考えております。
この5ページは、先ほど申し上げたSACLAの参考例ですので、詳しい説明は省きますが、要は、フレッシュな試料を視野に入れて実験をするということをやりました。右側のように、様々な試料のインジェクタも開発しまして、これによって連続的な計測を可能にしてございます。
戻りまして、まずオペレーションの自動化というところを説明したいと思います。パワーポイントを切り替えていただく間に読み上げますが、放射光実験というのは、何段階かのプロセスによって構成されていますが、特に最初の「試料調整」と呼ばれるプロセス、ここがかなり自動化やハイスループット化のボトルネックとなっているという現状があります。これは何をしているかというと、評価したい試料がありますと。ただし、それはそのままでは測れなくて、様々な分析方法があって、様々な方法に合わせて計測しやすい状態に整えるという作業が必要になっているんですが、ここが、囲みの中にも書いてありますが、「家内制手工業」のような形になっておりまして、ユーザー、スタッフともに非常に負担が大きくなっていました。
それで、このスライドの左下では、粉末X線回折という、極めて標準的な分析手法の例を示しておりますが、この粉末回折では、X線計測そのもの、ビームに当てるところの自動化は非常に進んでいましたが、粉末の試料を、キャピラリといって、例えば、100ミクロンぐらいの内径を持つガラス管にちまちま入れていくわけですが、そういう作業が手作業になっていて、非常に労力がかかっていた。例えば、大学だったら学生さんがやっていますが、企業の方は本当にそういうところは困ってしまう。こういったところの課題を解決するために、最近、粉末を自動でキャピラリに装填する装置を開発しております。
短い動画ですので、ちょっとこれを見ながら。粉末を入れるボックスをこの装置に置きまして、キャピラリに装填していくという作業を順次やっております。これは人力よりも数倍速くて、あと、24時間文句も言わずに働いてくれますので、例えば、今年度前半、これはまだフル稼働ではなく試行利用の段階ですが、1,500本以上に充填をしたという実績があります。これで大幅な省人化というメリットは当然ありますが、単に省人化ということにとどまらず、下にも書いてありますが、大量試料を系統的に分析する、いわゆるビッグデータ解析が可能になりますので、これによって新たな価値が創出されるということが期待されております。
次に7ページ目、データ利用環境ですが、SPring-8-Ⅱは、先ほど申し上げたように、ビームラインのオペレーション自体は、どちらかというとユーザーがあまり考えなくて済む、どちらかというと隠蔽される方向にもいきますが、出てくるデータは当然ユーザーも直接触りますので、むしろここの比重がずっと増していくわけです。したがって、そのデータの取扱いは、インターフェースを含めて、使い勝手の充実が非常に重要となります。
今、ハードウェアの整備については、例えば、データセンターの整備も進めてございますし、あと、次のページにお示しするようなデータ圧縮の仕掛けも進めています。こういったところをやっておりますが、やはりソフトウェアといいますか、使う中身のところの課題の棚卸しが必要になっておりまして、ここは所内でもやっておりますが、ぜひ、利用者の皆様からもいろいろな声、課題を受けまして、やっていきたいと考えています。
例えば、データセンターができますと、そこでデータサイエンティストとの協働であったり、「富岳」との連携であったりが進展すると期待されますし、よく言われるデータフォーマットのところもしっかり考えていかないといけない。特にメタデータのところは考えていかないといけないわけですが、ちょっと注意したいのが、よくフォーマットを全部統一しましょうみたいな議論がありますが、実は、そこは完全統一となると非常に議論も錯綜しまして、なかなか折り合いがつかないわけです。むしろ異なるフォーマットでもよいので、コンパチ、互換性を持つということが重要ですので、そういったところを含めて、変換するためのアルゴリズムを含めて、整理をしていくことが必要であると考えています。
最後に、よく昨今言われるオープン・クローズ戦略というのも非常に重要になります。例えば、データそのものを全てオープンにするかどうかということは、最後にありますような経済安全保障の観点もございまして、いろいろな議論があることが想定されますが、一方で、解析ツールについては、個別に開発されたものをデータセンター上で共通資産として活用することができると、これは非常に皆さんポジティブに進んでいくと思いますので、このデータセンターを舞台にしたオープンサイエンスということを考えていきたいと思っております。
次の8ページ目が、データ圧縮の例を2例、簡単に示しておりまして、左側は、いわゆるCTとかイメージングというアプリケーションのものです。右側は、回折・散乱・タイコグラフィと書いてありまして、これは使う検出器もアプリケーションも少し違います。特徴としましては、左側のCTというのは、皆さん御存じのように、試料も回転して、それぞれイメージを撮っていって、最後に3次元で組み合わせるということをやりますが、回転する試料の隣接する2つのイメージというのは結構近いものがありますので、そこの差分だけを抽出するようなアルゴリズム、これは今、AIによって理研の「富岳」のチームと共同研究をしておりますが、こういったことでデータ予測をすると、かなりデータ圧縮が可能になるという見込みが出てきています。それから、右側は、これはいわゆる回折という、例えば、タンパクの構造解析とかでもありますが、ほとんど白いゼロのデータで、時々斑点がありますみたいな例があります。そういう場合は、ブランクのところのデータをうまく圧縮することによって、ドラスティックなデータのリダクションは可能になります。実際に、これはFPGAを使って、ハードウェアレベルでやっている例ですが、最大で7000倍の圧縮を既に実現しています。
簡単ではございますが、こういった、DX、それから、データのところの取組を鋭意進めており、開発のところはこういうことでやっておりますが、当然、持続的な運用のところも考えないといけません。
それで、1つ、検討事項として項目を御紹介したいのが9ページ目、SACLAのデータセンターの例があります。これは共用開始以来、10年来運用していますが、実は若干の反省がございまして、当初からデータセンターは無償で運用しておりましたが、そうすると、例えば、大学のスパコンは、そんなに金額は高くないのですが、有償利用で運用されていて、本来大学でやったほうが筋だよねというものも、若干SACLAのデータセンターに紛れ込んでしまったような例が過去にございました。あと、データの保存のところも、細かいデータを消去するインセンティブが無償運用では働かないので、フラグメントが残ったままになったりといった、いろんな反省がありまして、そこは都度都度運用で改善をしてきたわけですが、やはり仕組みとして課題があるということを認識しております。
それで、SPring-8のデータセンターであったり、先ほどのDXであったり、そういったところも、非常に高額というわけではないと思いますが、やはりある程度の課金は必要ではないかということを考えております。これは、一方で、ポジティブサイドからの話をしますと、大口で使いたいという利用者の方から見ても、やはり課金の仕組みがあって、大量データとか大量試料も気兼ねなくオンデマンドで使っていただけるという仕組みのほうがよいのではないかと思われます。
料金体系としては、下の絵にあるように、例えば、少量のところは定額制にして、データ数が増えていくと従量制で課金を高くしていくような、このようなたたき台が考えられますが、この辺りも含めまして、ぜひ御議論いただきたいと思います。
次に、2番目のお話として10ページ目、コンシェルジェということですが、そこにフォーカスする前に、利用者開拓について、施設目線で見たときの構図を御紹介したいと思います。
下の絵でございますが、施設から見た場合に、利用者開拓をするときに、施設から利用者に積極的にアプローチするプッシュ型、それから、利用者からのアプローチを待って対応するプル型ということに分類できると思います。SPring-8では、プッシュ型の施策として、例えば、ここにありますような実地の研修会とか、研究会・ワークショップ等がなされています。これらの取組は、SPring-8を知っている、もう価値が分かっておられるコミュニティの中の利用者の皆様には非常に有効ですが、コミュニティの外には届きにくいという面もあります。一方で、プル型、外からニーズを拾うというところは、施設が利用者の課題を感度よく受信するということが求められるわけです。それを結ぶ結節点となるのがコンシェルジェと定義できますが、このファンクションは、必ずしもこれまで明確には位置づけられていませんでした。
この際に、これを考えるときにも、やはり利用者層によって求められる機能も若干異なってきまして、例えば、既に有用性が分かっている熟練ユーザーは、かなり突っ込んだアドバイスが欲しいということがあると思いますし、一方で、そもそも課題解決に役立つかどうかも分からないという潜在ユーザーでは、簡単でよいのでまず試してみたいということがあると思われます。それで、このうち、前者の熟練ユーザーに対して、例えば、量子ビーム施設全体を見通して、どこの施設を利用するのがいいですかみたいな、そういうアドバイスをいただきたいという議論もタスクフォースの中ではございましたが、これをやるためには、当然、施設間のシームレスな連携が必要になりまして、例えば、SPring-8-Ⅱ、J-PARC、NanoTerasuの連携をさらに強化していくということが求められます。
ここで、例えば、放射光同士のSPring-8、NanoTerasuというのは比較的まだ容易だと思われますが、J-PARCも加わって全てシームレスということになると、いきなり本格稼働というのはなかなか大変ということも想定されますので、まずはFS等を実施して規模感をつかんでいくことが重要だと考えています。一方で、後者の潜在ユーザー、下側ですが、こちらについては、スタートアップ企業、テック系ベンチャーも含みましてお試し利用も含めた対応が重要になってきます。
このために、ここでは、下に書いていますが、仮の名前として「課題解決型利用」としておりますが、そのイメージを11ページに書いています。これは相談者から課題をコンシェルジェが受けて、課題の同定・翻訳をしまして、振り分ける。大きな単位では施設がありますが、その中で、例えば、SPring-8の中でやれるよということになったら、各ビームラインの専門家と相談して、分析を実施してリターンをするという一連の流れが考えられます。このプログラムは、囲みの中に示してありますが、詳細はここでは申し上げませんが、イメージとしましては、迅速にやって、例えば、8時間程度の利用を可能にして、事例は原則公開とするということがよいかなと考えております。あと、さらに重要な点、一番下にありますが、一番左の「相談者」の組織化というのが重要で、ばらばら来られるよりは、できるだけ組織化していただいたほうが、お互いに効率的・効果的であるということが考えられますので、これについては、次のスライド以降で取り上げたいと思います。
3番目の課題として、地域との連携・産業振興について取り上げます。
まず、直前にもあったように、先ほどの課題解決型の試行型の利用を効果的に運用するためには、「相談者の組織化」というところが重要となりますが、このためにも、様々な地域との連携が考えられます。ここで挙げておりますのは、従来より、中小企業からのアクセスの容易化ということで、兵庫県を窓口に、地元企業の取りまとめというのをやっていただいておりましたが、その部分はさらに強化しながら、新たな試みとして、公設試経由での広域利用ということが考えられます。これは、実はNanoTerasuのほうでは、東北の経産局が東北版の公設試ネットワークというのを組織してやっておられるということで、この真ん中のところにございますが、ここの近畿版をつくって、東北・近畿を一体としてSPring-8-Ⅱ、NanoTerasuに中小企業のユーザーを振り分けて、将来的には全国的な公設試ネットワークに発展させていくということが考えられます。
次は、近隣自治体との協力ということで、囲みの中にございますが、これも仮称でございますが、「地方創生協議会」という、このような名前のものを創設しまして、地域への支援と地域からの支援の双方向の関係を強化するということについて協議、検討を進めてございます。内容としましては、SPring-8を看板にした地域の活性化とSPring-8高度化への様々なサポートをセットで進めると。例えば、企業版ふるさと納税であったり、自治体による地元企業に対するサポート、利用料の補助であったり、こういったことを自治体と連携しながら施策を検討しているところでございます。右下にイメージ図がございます。
また、その産業振興につきましては、これも大きくクラス分けをすると、既に確立した伝統的な産業、今まさに発展している産業、それから、スタートアップ・ベンチャーを含む新世代と3つに分類できますが、これもSPring-8-Ⅱを使いまして、まずコンベンショナルな産業分野においても、例えば、生産現場における品質・歩留りの大幅な向上が期待できるということもありますし、真ん中のところ、現世代、今、旬の産業についても、当然、高度かつ多角的な分析を組み合わせることで、非常に重要なプロジェクト群が掲げる厳しい到達目標を迅速に達成することに貢献する、そして、成長モデルを創成する。それから、右側については、先ほどのコンシェルジェ機能を強化しながら活用を支援するということを検討しております。
最後に、広報・アウトリーチになります。
15ページの囲みの中で、現在、理研の放射光センターにおける広報活動としましては、日常的には年間6,000人ほどの一般見学者を受け入れております。それから、まだ使っていない産業分野の開拓、それから、産業利用の組織化と国プロ化というのを推進しております。一方で、SPring-8-Ⅱに向けては、広報ターゲットを明確に設定し、それぞれに対応した取組を推進していく必要があります。下にありますように、国民一般向け、それから、産業界ユーザーによる間接広報、最後に、SPring-8-Ⅱへの改修に向けた、産業界からのサポート、こういったことが考えられますが、この中で、産業界ユーザーによる間接広報というところを最後に御紹介したいと思います。
SPring-8の産業利用のアウトカム・有用性というのは、残念ながら、必ずしも社会に広く認知されているとは言い難い状況にあります。これは、今の制度の仕組みにも問題があると分析をしておりまして、すなわち、企業の皆さんに利用していただくときに、成果専有の利用か成果公開の利用というのも選んでいただくことができるわけですが、前者を選ぶと、アウトカムを発信するインセンティブが全くなくなると。一方で、後者を選ぶと、論文を書きましょうということになりますが、論文を書いていただいたとしても、残念ながら、社会に対する訴求力はあまり強くないと。
そこで、この二者択一ではなくて、新たに企業に使っていただいていることがもっとビジブルになるために、例えば、企業ユーザーに間接的な広報を担っていただく。16ページに書いてあります、「SPring-8を使って製品開発している」ということを様々なメディア等で宣伝してもらうことができるようになると、非常に効果的ではないかと考えております。このために、一番下ですが、これも仮の名前ですが、「プロモーション利用」を検討しておりまして、これは施設と連携しながら、企業ユーザーに一般向け・業界向けのアピールをしてもらうための利用枠でございまして、料金設定を工夫する。例えば、成果専有の完全秘匿よりは少し割安にすることで、企業ユーザーの皆さんにこういうインセンティブを付与できないかということを考えております。ここについても、ぜひ御議論いただければと思います。
最後に、まとめのページでございます。ここは読み上げませんが、こういうまとめでございます。以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
手際よく御説明いただいて、ありがとうございます。議論のために確保している時間は30分以上ございますので、全員から最低でも一言以上の議論をいただくということで進めたいと思います。ご説明資料の最後のページにありますように、論点としては、少し技術的なところも入っておりますが、ユーザー利用環境のところ、それから、コンシェルジェ、地域との連携、広報・アウトリーチということで、どの観点でもよろしいと思いますが、後半のコンシェルジェ以降は、場合によってはほかの共用施設等にも影響する話だと思いますので、広い観点から意見をいただくことも重要かと思います。
それでは、どこからでもよろしいので、お願いしたいと思いますが。会場のほうでは、どうですか。
では、脇本委員、お願いします。
【脇本委員】 御説明どうもありがとうございます。J-PARCとしても、大変参考になるようなお話、たくさんいただけたと思って拝聴いたしました。
それで、まず1点お伺いしたいのが、私自身が仕組みをよく理解していないという部分もあるんですけれども、データセンターの利用に関して、有償化をしていくという流れの話があったんですが、このデータセンターというのは、施設として取りためる一次データではなくて、例えば、ユーザーが何か解析をしたりとか、そういう二次データとかがこのデータセンターにたまっていくような利用に対して有償化するという、そういうお考えですか。
【矢橋委員】 そうですね。一次データもありますが、両方含まれます。一次も二次も含まれます。
今、過渡期にありまして、全てのデータがデータセンターに移行するわけではないのですが、やはり大容量のデータについては、データセンターでためないと、ローカルにはもうためられないような状況になっていますので、そこについては、一次、二次両方になります。
【脇本委員】 そうですか。そうすると、もうある意味、一次データが含まれているということは、施設を利用する、イコール、データセンターの利用料が発生するという、そういうふうな流れになるんですか。
【矢橋委員】 はい。
【脇本委員】 分かりました。理解しました。ありがとうございます。
あと、もう1点、これは質問ではないんですけれども、11ページですか、コンシェルジェのお話のときに、今後、施設間のシームレスな連携が必要というお話がございました。これ、私も非常に同意でございまして、ただ、そこに向かうところが、一足飛びにはいけないというところは、私もよく分かります。
それで、我々、J-PARCのほうでもこういった、コンシェルジェとは我々は名づけておらず、コーディネータというふうに我々は呼んでいます。コーディネータリソースをうまくステークホルダーで集めてやっているという取組がありますので、将来的にはそういう、私たちの言葉ではコーディネータリソースの糾合みたいな形で、こちらのコンシェルジェとも連携していくような形が将来できると、ユーザーにとっては大変便利なものになっていくかなと思いました。以上です。
【矢橋委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかにございませんでしょうか。
岸本委員、お願いします。
【岸本委員】 御説明ありがとうございました。
7ページ目で、コメントさせてください。
このデータフォーマットに関する部分は、完全統一を議論していたら前に進まないこともあるので、順次やっていくことになるのではないかと思います。一方、例えば、自分で測定したデータを利用する分には、自身で活用していくので問題はありませんが、将来のことを考えると、ユーザー同士や企業同士がそのデータを相補に活用していくということもあり得るのではないかなと思うんですね。
特に、こういったSPring-8やJ-PARCという施設は、企業と企業の出会いの場でもあり、機械学習だとか秘密計算でデータを相補利用していくことも十分に考えられます。そういうことを考えると、互いに使えるデータにするためにデータクレンジングが必要になりますが、それにものすごく時間がかかるんですね。将来的なことを考えると、Measurementビームラインでは、データの刻みとか、質だとか、そういったものをできるだけ合わせて標準化しておくと、後から幾らでも活用できます。そういった視点での考え方も必要かなと思いましたので、コメント差し上げました。
【矢橋委員】 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。
【小杉主査】 ほかの委員の方ございますか。高原委員、お願いします。
【高原主査代理】 高原です。
12ページからの公設試ネットワークというのは、地方にとっては、うまく活用すれば有効な成果が出てくると思うんですけれども。近畿地区、あるいは、東北地区は、かなり構造解析とかに関する意識が、公設試関係でも高いのではないかと思いますが、やっぱり地方の公設試だと、構造解析というのは、恐らくSEMレベルぐらいまでしかルーチンではやらないので、そういう面からすると、できるだけ早めに公設試関係のネットワークみたいなもので、放射光を使った構造解析等の産業利用の重要性みたいなものを早めに集約していただけるような仕組みをつくっていただければと思います。
【小杉主査】 SAGA Light Sourceは、その辺り、苦労されていますよね。
【高原主査代理】 そうですね。
【小杉主査】 やっぱりローカルな公設試よりは、ネットワークを組んでいただいたほうが話は進みやすいということですか。
【高原主査代理】 はい。
【小杉主査】 ほかの委員の方ございますか。高橋委員、お願いします。
【高橋委員】 幾つかあるんですけれども、1つ目は、9ページのデータのストレージに料金を頂くことで、この横軸のところに、タイムスパンといいますか、時間当たりのデータ量といった考え方を入れる余地はあると思いました。
というのは、集中して使うというのと、急がないけれども長く使うというところで、何か違いを感じられるかというところを。
【矢橋委員】 実はここは、恐らくどういうふうな課金のシステムが現実的に可能かというところもありますので、例えば、CPUタイムであったり、ためておく量であったり、そことの絡みにはなると思いますので、これはそういう意味で、かなり抽象的な書き方をしていますが。
【高橋委員】 いろんなファクターが出てくると思うので。単に量だけではなくて、時間というファクターが関わってくると、またいろんなバラエティが出てくると思うんですけれども、そういったところをバランスよく利用できるといいなと思いました。
【矢橋委員】 ありがとうございます。
【高橋委員】 次のところだと、コンシェルジェのところ、10ページ、個人的には、潜在ユーザーといいますか、今利用していない方々に対してのコンサルタントというのは、意外と簡単ではなく、むしろ難しいのかなと思っています。今まで放射光などになじみのない方々が、やはり違う言語で話されるので、そういったところのほうがむしろ簡単ではなく、感覚が違うところ、ふだん使っている方から見ると当たり前のことが通じないといったところに対してのスペシャリティというのはどういったものが考えられるのかというのは、答えがなくて申し訳ないんですけれども。
【矢橋委員】 おっしゃるとおりで、ここにもわざわざ、コンシェルジェのところの後にニーズの同定・翻訳と書いているのがまさにそのところで、潜在ユーザーの言葉を量子ビーム施設が分かる言葉に翻訳するというのが非常に難しくなると思っています。
ある測定・分析手法のスペシャリストだと、かえってそこが難しいので、全体を見渡せるような人材、これもまた難しいとは思いますが、そういうところに必要となります。
専門家は、右側のBLスタッフの専門家というところは、ここはもう間違いありませんので、そこにたどり着くまでのルートをどういうふうに確立するかというのが、おっしゃるとおり課題だと思いますので、そこはよく考えたいと思います。
【高橋委員】 ありがとうございます。
あと、一番最後の企業ユーザーとしての広報という意味では、これも私も答えを持っていないんですけれども、どうしたらウィン・ウィンになれるかというのを、私も考え込んでしまいました。といいますのは、私ども、利用料がインセンティブになるかと言いますと、実際に測定してから製品に結びつくまでが我々、製薬の企業は非常に長いということもありまして、直接利用料がインセンティブになるかと言ったら、非常に難しいところがある。
またさらに、製薬としては、薬の宣伝をしてはいけないといった制約がありまして、実は、直接の製品を国民に向かって宣伝することができないといった事情もあります。
なので、どういった形を取るとお互いにウィン・ウィンになれるのか。企業の名前を出していただくということなのか、また、インタビュー記事などを出していただくとか、そういった考え方もあるかもしれませんし、広報という意識をしているわけではないんですけれども、お互いに最先端の科学の発展に寄与しているということをいろんな形で広報できるシステムができるといいんですけれども。すみません。私もこの辺、答えは持っていないんですけど。
【矢橋委員】 これも業界によって恐らく大分違うと思いますが、薬屋さんの業界は、今おっしゃられたとおりだと思います。
恐らく、成果専有を全部こっちに流して、全部宣伝してくださいというのはない話だと思いますので、ベースとしては今までどおり活用いただいて、ある部分で、特定の薬というよりは、こういうことをやってますみたいな、それがいろいろな信頼性であったり、エビデンスにちゃんとつながっていますというところを言っていただくということでも十分かなと思います。
ただ、業界によっては、もっとこちらのやり方が気軽に使えるところもあると思いますし、そこは、ただ、今までどおり二者択一ではなくて、中間に何かあるのがいいのかなという。
【高橋委員】 そうですね。いいシステムが見つかるといいと思っています。
【矢橋委員】 そうですね。
【高橋委員】 今後ともよろしくお願いいたします。
【小杉主査】 それでは、オンラインで御質問、何かございますか。手を挙げていただくか。阪部委員、お願いします。
【阪部委員】 どうも御説明ありがとうございました。
2点お伺いしたいのですが、1つは、先ほどのX線回折の粉末試料作製の自動化は大変興味深く、重要な技術と思いました。この粉末試料作製装置の利用が有効であるというユーザーは全体の何%ぐらいでしょうか。
【矢橋委員】 ちょっと即答は難しいのですが、かなりポピュラーな利用法ですので、少なくとも1割とか、もうちょっといるかもしれないです。1割、2割かと。
【阪部委員】 そうですか。ほかの試料についても、このような自動化が考えられるものはあるのでしょうか。
【矢橋委員】 やっています。今回紹介していますのはXAFSですね。XAFSは、ペレットというのを作らないといけなくて、これがまた非常に面倒くさいということがありますが、ペレットづくりも自動化をしています。
【阪部委員】 分かりました。
そういった周辺支援環境整備は非常に大事ですが、利用者が相当いないと、これに投資するのはなかなか勇気の要ることかと思いました。
【矢橋委員】 あとは、高橋委員が御存じだと思いますが、構造生物は、かなりそこが進んでいますよね。
【阪部委員】 そうですか。
【高橋委員】 意外と難しいところもあって。
【阪部委員】 あと、もう1点、先ほどから話題に出ていますコンシェルジェですが、これは果たしてどういう方を想定されているのでしょうか。研究者、技術者。日本の科学分野においては一般に、研究者、教育者、技術者のあまり厳密な区分はないのですが、コンシェルジェといいますと、企業でいうとセールスエンジニアのような要素があると思うのですが、どういった方を想定していますか。また、十分にそのようなコンシェルジェの役を担える人がいるのか、それは専任で可能なのか、その方をどのように今後評価するのかなど、その辺りのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
【矢橋委員】 最初の取組としては、専任を置くというよりは、掛け持ちで。これは、どの程度件数があるかとか、そういったところにもよりますので、当初のスタートとしては、サイエンティストが掛け持ちするような形でいいのかなという気はしています。
ただ、件数が増えていくとやはり大変ですので、そこで、先ほどあった相談者の組織化というのが重要になってきまして、ある意味で、コンシェルジェの先にコンシェルジェを置くようなことに多分なると思うんですけれども、そういった形で、階層的にうまく機能ができれば、これはなかなか難しいと思いますが、そこを目指していくのがよいのかなと。
逆に言うと、最初からあまり構えてスペシャリストを持ってくると、それをやり出すと時間がかかりますので、早くスタートするほうがよいのかなという考えはございます。これは所内でまた相談します。
【阪部委員】 ただ、今までのように兼業、兼業ですと、どうしても限界があるかと思います。いずれ近い将来、専任で務めてもらえるような人材も育成していく必要があるのではないかと考えています。
【矢橋委員】 ありがとうございます。
【阪部委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 KEKの物構研にはいろんな施設がありますので、それらを横断して利用するために、専任の研究者を置いています。その人は中性子の経験もあるし、放射光の経験もあるということで、その人が実際需要のある研究者と一緒になって、各施設まで行って、試料のハンドリングから含めて、教育しながら一緒に実験をやっています。そのために、専任で、施設に張りついていない人を1人つくったんですけど、その人が利用者育成をやれるのは年に10グループぐらいで、それ以上はちょっとできないと。
でも、毎年それを続けることによって、複数の施設をしっかり使える利用者層が増えてくるという前提で、時間をかけて利用者育成をやっているところですが、共用施設間でそういう人が専任で置けるかどうかといったら、ちょっと難しいかもしれないですね。
【矢橋委員】 そうですね。
あと、実際、相談者が最終的にどうなってほしいかというのがありまして、多分、放射光の場合、いろんな分析があるので、それを全部覚えてくださいというのもあまり現実的ではないと思いますので、自動化でカバーできるビームラインを使ってソリューションにたどり着けるという、そういう体験を知っていただくというのが、まず最初の目的になるのではないかなと思います。
【小杉主査】 利用者は装置を知っているんじゃなくて、何を知りたいかというところなので、それにどういう装置や、どういう中性子や放射光や、何を使えばそれが分かるかというのを教えないといけなくて、それを単に施設を紹介するだけでは不十分。
【矢橋委員】 おっしゃるとおりです。
【小杉主査】 物構研の場合は極端で、利用者を各施設に連れていって、一緒に実験するということをやっているんですけど、それはなかなか難しいかもしれないですね。
【雨宮理事長】 そういう人を何と呼んでいるんですか。
【小杉主査】 我々は、普通の准教授の人を1人採って、その人にやっていただいているので、特別な職名はないです。
【雨宮理事長】 特別な職名はないわけですか。
【小杉主査】 ないです。
【雨宮理事長】 なるほど。分かりました。
【小杉主査】 唯委員、手を挙げていられたので、お願いします。
【唯委員】 名古屋大学の唯でございます。
4ページのほうに、ビームラインのカテゴリーという形で、Measurement、Experiment、Developmentという形で挙げていただいているんですけれども。SACLAと比較して、恐らくSPring-8-Ⅱとなると、いろんなバリエーションの広さというのがかなり広くなるだろうと思います。
そのときに、今日、定型という形で、いろんな分野から新しい人に入っていただくというのは、恐らくこの青の部分で広げていくというところと、非定型と開発と呼ばれる、あと10年後、20年後に、この分野の強みをいかに出していくかというところとでは、大分自動化、共通化できるという要素が変わるように思うんですけれども、この後ろ側のほうに関しては、データセンターとしては何か仕掛けみたいなものというのはございますかというのがまず1点目です。
【矢橋委員】 ありがとうございます。
今、御質問いただいたのは、まさにおっしゃるとおりで、定型のところは、これはある意味で広く、非専門家も含めて対象にするところですが、エキスパートは、当然Experimentであったり、Developmentを今まで以上にしっかりやっていただくということになります。
データのところについても、恐らく、このExperiment、Development、これは、ビームラインだけで言っていますが、データも同じで、ここでプロトタイプをしっかり施設と共同して作っていただいて、それを定型に流していくというところが非常に重要になってくると思います。
【唯委員】 なので、この辺も含めて、戦略的にやるような全体の枠組みというのが大事かなというのが1点思ったところです。
それから、もう一つが、DX化が進んでくると、今までの放射光を使っているような時間単位ではないような使い方というのが結構出てくるのではないかなと。
具体的には、例えば、もう自動化されてきて、試料が本当に数点だけ、これをぱっと取りたいというようなことは結構出てくるのではないかなと思うんですけれども、この辺の運用の単位というのは、新しい、もっと短いという形になるんですか。そういったものは考えておられますかというのがもう1点です。
【矢橋委員】 その点も非常に重要な点で、今も短時間利用というのは、例えば、2時間とかというのはやってはいるんですが、恐らくそこでもなくて、もう試料単位で、何個やりたいとか、そういうことにもなると思いますので、例えば、有償利用の単位を変えていくようなことは、今後しっかり議論していく必要があると思っています。
【唯委員】 分かりました。
以上です。
【小杉主査】 ほかに、オンラインで御質問等ございますか。
森委員、何かございますか。
【森委員】 ありがとうございます。東大物性研の森です。
御説明どうもありがとうございました。いろいろチャレンジングな取組をされているということで、非常に心強く思いました。
やはり日本でも様々な放射光がある中で、その中で連携しながら進めるということに関して、どのように考えておられるのかということを伺いたいと思いました。
やはりユーザーとしては、一番近いところに行くというのもあるのですが、一番適切なところはどこかということで、軟X線に関しましても、SPring-8あり、NanoTerasuありということで、そういう意味では、窓口のところでいろいろ情報があるとありがたいなと思います。その辺に関して、いろいろな放射光の中で、どのような連携を話し合っているのかということについてちょっと教えていただけますでしょうか。
先ほどコンシェルジェのところは、将来的にはという話はあったんですけど、よろしくお願いいたします。
【矢橋委員】 まずSPring-8、NanoTerasuの連携というのは、これは今までちょっと無理をして軟X線をSPring-8で使っていただいていたところもありますが、NanoTerasuができますと、基本的には、そちらを皆さん使っていただくということでよいと思うのですが、一方で、SPring-8にも必要なファンクションとして、最先端というよりは、汎用的な分析という意味で、軟X線は残す必要があると思いますので、そこについては分担しながらということになると思います。
あと、NanoTerasuのほうも、軟X線だけではなくて、テンダーX線等々も使えますし、ただ、逆に、やはり硬いハードX線はなかなか難しいということがございます。
実際、今もNanoTerasuの方ともよくディスカッションしておりまして、向こうのポテンシャルユーザーにSPring-8を使ってやっていただいたり、そういう取組も進めていますので、そういうものが、施設が立ち上がってくるとともに、しっかりした形でできるようになっていくといいのかなと、その枠組みを考えていきたいと思っています。
【森委員】 ありがとうございます。
コンシェルジェに関しても、将来的なところは相談しながら、そういう連携ももちろん考えておられると考えてよろしいでしょうか。
【矢橋委員】 はい。もちろんです。
【森委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 石坂委員、何かございますか。
【石坂委員】 東京大学の石坂です。
すみません。私、これまで欠席が多くて、あまり全体の議論、前回のもついていけたわけではないんですけれども。
今回のことに関しては、かなりもう今までの皆さんの質問で出てきているんですけれども、1つ、やっぱり皆さん気になっていらっしゃるコンシェルジェが施設間でシームレスに連携するというのは、随分前から確かに聞いていて、概念としてはすばらしいんですけど難しいと書かれているんですけれども、実際何が難しいのか。いや、難しそうだなというのは分かるんですけれども、実際何が律速になっているのかなというのがちょっと気になっているというのが1点です。
もう一つは、データのところで、受益者負担でも私はリーズナブルだと思うので、それは多分皆さんオーケーだと思います。横軸がどうとか、そういうところはもちろんいろいろ検討する必要があるかと思うんですけれども、こういうものは、電気代にしろ、受益者負担になっていくのが自然な流れかなと思います。
その上で、さっきの唯先生の質問とも関連するんですけど、ルーチン化して、もう分かり切っている測定原理のデータについてはいいのかもしれないんですけれども、新しい測定原理とかが出てくるたびに、新しい原理のデータ解析が必要になることが多くて、それは結構放射光に限らずなんですけれども、ビッグデータで扱いが大きいだけではなくて、測定原理の基本となる数学とか物理とかも分かっていて、かつ、データができる人という人がいないといけないものが今、すごく律速になっていることが多いんですけれども。このデータセンターのところに、「富岳」と連携ということがあったんですけれども、そういうことができるような人ってどこにいるんだろうという好奇心があったんですけれども、その辺、何か戦略とか目途があったら、ぜひ。すみません。これ、好奇心なんですけれども、よかったら教えていただければと思います。
【矢橋委員】 まず2番目のところですが、データサイエンティストがいろんなところで取り合いになっているというのはしょっちゅう聞く話でございまして、多分人はいるんですが、なかなかこういうところに来ないというところが課題かと思っています。
一方で、SPring-8は、やはりフィジカルなデータ、しかも非常に質が良いデータをたくさん出すというところがありますので、そこがデータサイエンティストに対して訴求力になるような形で仕上げていくことが重要かなと思っています。
実際に「富岳」との連携も、「富岳」のデータ屋さんとの協力も非常にうまくいっておりますが、ただ、そこだけではまだ足らないところはありますので、そこをまた一段広げていくための見せ方も含めて、これは施設として考えていくべき課題だと思っています。
それから、戻りまして、コンシェルジェの難しさというのは、今まで、特にJ-PARCとの協業というところは、両方使っている人があまりいなかったということもあって、旗を振っていただいても現場としてはなかなか動けていないというところがありましたが、そこは少しずつ進んでいると思いますし、あとは、NanoTerasuが入ることで、一気に施設間というのは進むのかなと思っています。
以上です。
【石坂委員】 ありがとうございました。
【小杉主査】 よろしいでしょうか。
では、内海委員、お願いいたします。
【内海委員】 大体もう議論が出尽くしているところですが、今も矢橋さんが言われたとおりで、NanoTerasuとSPring-8に関して言うと、すみ分けるべきところとオーバーラップするところは、やっている人にとってはかなり明確なので、人の行き来も含めて、NanoTerasuとSPring-8の協力関係というのは自然にできていくのだろうなと思っています。
ただ、コンシェルジェとかワンストップ窓口とかいうのは、今回だけではなくて、ずっと長年にわたって言い続けられていることで、今回、矢橋さんがこの重要性を改めておっしゃりかつ、そこに本腰を入れるという宣言をされていることに対して敬意を表するところなんですが、やっぱり最終的には人なんだと思うんですね。放射光利用に関する深い知識と経験が必要な仕事なので、それを中で育てるのか、外から引っ張ってくるのか、そこが最大の難しさだろうと感じている次第です。
コメントは以上でございます。
【小杉主査】 時間はまだ少しありますが、何か追加の御質問等ございましたらお願いします。
では、高原委員、お願いします。
【高原主査代理】 高原です。
15ページのところで広報というのがありますけれども、左側の図には児童生徒というのがありますが、右側にはないのが気になります。5月に学術会議で、結晶学分科会が公開WEBシンポジウム「基礎科学が導くSDGs達成への道~結晶&生命&技術革新~」(2023/5/27)を開催しました。菅原洋子先生(北里大学名誉教授)を中心とした実行委員会のご尽力で、シンポジウムに高校生や中学生もオンラインで全国各地から参加することになり、私も担当の高校から参加しました。学生からの質疑から、若い世代が材料と生命科学の分野でクライオ電顕とか、放射光による構造解析に興味を持っていることが分かりました。この詳細は学術会議のホームページにも記録として掲載されています(https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kiroku/3-20230831.pdf)。シンポジウムの後半には中学生、高校生も加わってパネルディスカッションを活発に行いました。その世代から、こういう放射光分野の研究に従事する人を育成するような方向づけをするというのもかなり重要だと思います。
ただ、その仕組みをつくるのは大変だと思いますが、高校の先生とか、そういった方とうまく連携して始めておくと、将来的にはビームラインサイエンティストも育つということにならないかなと、思っておりました。若い世代は、私たちが思いもつかないような興味を持ってくれていましたので、そういう面でも広報というのは重要だと思います。
以上です。
【小杉主査】 ほかは特にないですか。
では、石川先生。
【石川センター長】 理研の石川でございます。
今の点でございますが、日常的な6,000名の見学者の中に、全国のSSHのほぼ全部の学校がSPring-8の見学に来ています。ですから、高校生、特にSSHの方々は、先生方も非常に熱心でございますし、生徒さんも非常に熱心だということで、今、全国ほぼ全部のSSHが来ているという状況ができています。
【小杉主査】 ほかにございますか。
では、高橋委員。
【高橋委員】 1つだけ、単純に質問なんですけれども、先ほど阪部先生からの御質問にもありました、ビームを当てる前の自動化のところというのは、どういったスペシャリティの方が担当されるのか。というのは、ビームラインサイエンティストとはまた違ったスペシャリティだと思うんですけれども、測定データを扱うのともまた違ってくるので、どういったところから、そういった、ロボティクスなんですかね。
【矢橋委員】 そうですね。装置を開発するという意味では、これも実は理研のシニアエンジニアが設計しまして、私たちの現場の研究者と一緒にやったわけですが、そこはリソースとしては今ので可能です。
オペレーションになると、むしろこれは、本当は完全自動化をしたいんだけれども、ちょっとつなぎが要りますという類いになりますので、ある意味でエキスパートである必要はないような仕事です。だから、逆に言うと、ビームラインの担当者がここをやるということは、しなくてよくなるということになります。
【高橋委員】 なるほど。参考になります。ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかにございませんか。
では、岸本委員、お願いします。
【岸本委員】 岸本です。
話を戻しますが、コンシェルジェの話についてです。コンシェルジェを外から引っ張ってきたりすることってかなり難しく、いろんな実験に精通している方って、そうなかなかおられないというのは、そのとおりだと思います。
そこで、施設常駐のコンシェルジェとはまた別に、コンサルティングをやってくださるようなパワーユーザーの先生方に、そのようなことをお願いしてはどうかと思います。そういうことが制度的にできるのか分からないですけど。
例えば、私たちも、これまでに経験のない実験手法とか、解析経験のないもので、共同研究とまではいかなくても、ちょっと相談したいといったときに、大学の先生とコンサルティング契約みたいなことをするわけです。そこで、施設でコンサルティング的なことを引き受けていただける先生方のリストを作っておく、あるいは、引き受けてくださる方をあらかじめ募っておいて、それで、企業が気軽に相談したいときに、相談費用は発生するとは思うんですけど、施設が紹介して企業が気軽に大学のところに相談に行けるような、つなぎの仕組みというのもあってもいいのかなと思いました。そういったことが実現できるのか分からないですけど、御検討いただければなと思いました。
【矢橋委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 1つのいいアイデアですね。
ほか、この手の提案というのがございましたら、何かありますかね。
では、この辺りで一応今日の議論は止めたいと思います。今日はいろいろ意見をいただいたので、報告書等にも盛り込んでいただきますけれど、事務局、よろしく取りまとめをお願いいたします。
それから、また後で気づかれた点等がございましたら、事務局のほうにそれぞれ直接お知らせいただくとさらにいい形になると思いますので、その辺りもよろしくお願いします。
それでは、次回は、資料1-1にある残りの「人材育成・交流」、それから、「SPring-8-Ⅱらしい利活用コンセプト」ということになっております。
私から、人材育成のところは、ぜひ、ユーザーの人材育成に加えて、施設系の人材育成もお願いします。ちょうど高度化といういいチャンスにある程度人が関わるというのは重要だと思いますので、その辺りも御準備をよろしくお願いいたします。
では、次の議題に移ってよろしいでしょうか。
次は、議題2、J-PARC中間評価についてということになります。まずは、事務局から説明をお願いいたします。
【稲田課長】 今回議論いただきますJ-PARCの中間評価に関しましては、文部科学省における研究及び開発に関する評価指針に基づきまして、5年ごとに中間評価を実施しているものでございます。
この指針に関しては、実は平成14年に最初のものができていて、現在はその改定版になっているんですが、J-PARC自身は平成13年に建設が開始し、平成20年から共用開始、その後、平成24年に第1回目の利用を含めた評価がされ、その約5年後、平成30年に第2回目、今回は、利用を含めた評価としては第3回目ということになります。
毎回評価に当たりまして、前回の評価に当たって、今後どういうことに気をつけるべきかという指摘事項をいただいた上、それについて評価を行い、プラスして、それを踏まえて、将来的にどう考えていくべきか、この2点を評価させていただいています。ここら辺、後ろのほうに書いてありますけれども。
今回、その観点から評価をいただくんですが、この評価に関しては、2ポツの作業部会と書いてある、要は、原子力に関する、核種の変換や消滅処理といった研究をするであるとか、あるいは、学術研究の部会の所掌に係るところもありますので、3つの委員会・部会との合同で別の作業部会をつくって評価をいただくことになります。
なお、当小委員会から、高原先生が評価の主査として参加いただくという形になってございます。
この評価に当たっては、スケジュールとしては、こちらに書いてあるとおり、5回程度の開催を予定してございまして、その評価結果については、中間評価の報告を年明けの小委員会において、ここにもう一度フィードバックをするというものでございます。
前回の指摘事項、前回どんな宿題をもらっているかというところは、その括弧の下に書いてございまして、プラスして、今後、評価に当たって、将来的に何を考えていくのかというところについて評価をいただくのでありますが、それを専門の方々が議論する前に当小委員会としても、平成30年以降、5年間たった評価として、どんなものをやっていて、今後どういうことを考えていくべきかというところをあらかじめ御議論いただいて、それを高原主査にキャリーしていただくということとして、今回説明させていただくものでございます。
それでは、よろしくお願いいたします。
【小杉主査】 ありがとうございました。
J-PARC全体としては、KEKとJAEAの両方が設置者になっている組織ですけれど、我々、量子ビーム小委員会としては、中性子・ミュオンの施設が中心になると思います。それはMLFと呼ばれている施設になりますけれど、J-PARC MLFにおける成果についてということで、資料2-2が用意されております。御説明はJAEA側の脇本委員にお願いしておりますので、よろしくお願いします。
【脇本委員】 J-PARCの脇本です。
それでは、資料2-2に基づきまして、本日、MLFにおける成果についてということで、前回の中間評価以降の5年間の主立った施設の成果というものを本日御紹介させていただきたいと思います。
必ずしも前回の中間評価の視点に応えるというよりは、この5年間の成果をまずはダイジェストして、こういった成果を上げてきているというお話を本日御紹介させていただきたいと思うので、2ページ目にございますような4つの視点で成果を取りまとめて御紹介させていただきたいと思っております。
まず3ページでございますが、これは物質・生命科学実験施設(MLF)の概要でございます。物質・生命科学実験施設は、J-PARCの上流側にあります加速器から3GeVの陽子ビームというのを受け入れて、ミュオン並びに中性子を発生させて、これを研究に使っているというものでございまして、研究の範囲は、ハードマター、ソフトマター、エネルギー材料、工学材料、様々な分野における研究を実施しているというもので、当然、ユーザーに対してこういったビームを提供しつつ、施設側としても、先導的研究並びに開発等を進めているというところでございます。
次のページに行っていただきまして、これらのビームの運転履歴、より安定に、かつ高出力の運転を目指しているというところでございますが、前回の中間評価、2018年を起点としますと、2018年のときには500キロワットという陽子ビーム強度を受け入れていたものでございますけれども、今年度、2023年には840キロワット、これは平均ビーム強度ということになりますが、段階的に強度を増強して、かつ95%という高い稼働率を達成して、安定運転を実施できているというところでございます。
また、初期性能であります1メガワットということにつきましては、2018年の段階で、一旦1メガワットによる10.5時間の連続運転というものを達成しておりましたけれども、今年度におきましては、平均ビーム強度としては840キロワットでございますけれども、パルス当たりにしますと、1メガワットという強度での利用運転を実施しているというところでございまして、実際には1メガワットでの強度の受入れを行っているという状況でございます。
次のページでございますが、こういった大強度の陽子ビームを受け入れる核破砕中性子源というところの高出力化、並びに安定化といいましょうか、そういったところが施設の安定な運転には不可欠でございまして、これには継続的に取り組んでまいったところでございます。
一番の課題は、中性子源が陽子ビームを受けたときに発生する圧力波、これによって起因するピッティング損傷というものが一番の大きな課題でございまして、これはJ-PARCのほうでは、独自に開発したヘリウムの微小気泡を、液体水銀という標的の液体中に混ぜ込むことで、この衝撃を和らげるということを継続して開発してきております。
左側の真ん中の部分、ポンチ絵がございますけれども、微小気泡生成器というのを設置して、右側のグラフ、すいません、印刷ですと絵が切れているかもしれないですが、ビーム強度が上がりつつも、音圧で抑制効果を我々は測っておるわけですけれども、そこは下げられているという十分な効果が得られているということで、実際には、我々の見通しでは、1メガワットという陽子ビーム強度で、5,000時間受入れが可能な改良型の標的容器の開発までができていると。実際に、これを今年度の下期から使用開始を予定しているという状況でございます。
次のページ、6ページからは、中性子を利用した実際の成果でございますけれども、6ページは、4つの分野に関して、この5年間で出た主な成果をリスト化しております。これらの主なものについては、後段の参考資料のほうに一件一葉でまとめている資料もございますが、本日、時間もございませんので、2件だけ特出しで成果を御紹介したいと思います。
7ページでございます。まず1件目が、固体冷媒に関する研究開発でございます。材料に関する研究開発でございまして、大きな圧力熱量効果を示す材料であります、「柔粘性結晶」と呼ばれる材料、具体的には、ネオペンチルグリコールと呼ばれる材料に注目した研究でございまして、これがなぜ非常に大きな圧力熱量効果を示すのかというのを、中性子による内部の分子の回転のダイナミクスを見る研究から明らかにしたものでございます。
具体的には、圧力をかけますと、分子の回転運動が止まって、エントロピーが小さくなる。それが、圧力がなくなると、中の回転運動がさらに増幅して、これらが熱量効果の起源になっているというものを解明したものでございまして、学術的にも大変注目されて、Natureにパブリッシュされて、Top1%にも入る成果となったというものでございました。
続いて、次のページが、2点目、これは産業利用のほうのテーマになってまいりますけれども、燃料電池のオペランド測定ということで、トヨタ自動車が実際に市販しておりますMIRAIという燃料電池車、これの燃料電池セルを実際に発電させた状態で、中性子イメージングでもって水の分布を観測したというものです。
燃料電池におきましては、水素と酸素を反応させて電気を取り出すわけですが、その際に発生する水、これがどのように滞留するか、流れるかといったところが性能向上のためには欠かせない要素になっておりまして、これを実際に中性子で観察することに成功したというテーマでございまして、これは将来のこういった燃料電池の設計における流路構造の開発ですとか、高性能化・低コスト化といったことに貢献ができる成果と考えているものでございます。
9ページは、ミュオンのほうの成果を2件、主なものを載せてございます。
1件目、上段は、「はやぶさ2」がリュウグウから持ち帰った試料の初期分析にミュオンが使われたという成果でございまして、元素分析を行って、Science誌等に掲載されているというもの。
それから、下段のほうが、文理融合研究というふうに書いてございますが、江戸時代の緒方洪庵が残した“開かずの薬瓶”というのを非破壊で解明したというもので、これは鉛ガラスの薬瓶に入っている試料ですので、X線による分析ができなかったというところを、ミュオンですと、この鉛ガラスを透過して、中の薬剤に当たって、かつ、そこから出てくる特性X線というものが高エネルギーであるために、鉛ガラスを透過して出てくるので、分析が可能であったということで、この中が塩化水銀であったということが分かったという成果でございました。
次のページは、利用技術の開発でございます。
左側にありますのは、ディープラーニングといった計算科学を使っていくというものでございまして、これは反射率測定に応用しておるんですけれども、ディープラーニングによって様々なデータを学ばせることで、10分の1以下の測定時間でもって通常の計測条件で測定したデータを再現できる、ディープラーニングによって再現するということが可能になったということで、測定時間を大幅に短縮することが可能になったという技術でありますとか、右側は、中性子はもともと磁石の性質がございますので、その磁石の性質をそろえて物に当てることで、より磁性材料とか、そういったところの研究が発展できるわけですが、そういった中性子の偏極技術を高度化していくということで、世界最高性能の偏極ミラーの開発ですとか、スピンフィルターと呼ばれる装置を順次導入していく、ないしは、大面積偏極ミラーを開発するといったような成果を上げてきているということと、また、その下は、イメージングの高分解能化ということで、シンチレーター結晶の新開発によって、10マイクロメートルまでの分解能を達成して、こういった世界に伍する性能をJ-PARCとしても維持してきているというものでございます。
それから、11ページ目からは、将来計画に関することでございまして、まず11ページが、MLFの短・中期的な将来計画ということで、真ん中の絵にございますように、装置の高度化ですとか、高強度化、また、老朽化対策、こういったものをベースといたしまして、ユーザーコミュニティとも協働しながら、装置の改造等を進めていきながら、将来的には、右側にMLF doubleというふうに書かれておりますけれども、現在の既存のMLF施設において効率を2倍化していくような取組をしていくということを考えております。
その中で、将来の新たな施設、ターゲットステーション2につながるようなR&Dなども行っていこうというところを考えているというものでございます。
12ページ目が、そのターゲットステーション2の現在の概念でございます。左上の図にありますように、ターゲットステーション1、現在のMLFでございますけれども、そちらに行く陽子ビームの一部を切り分けて、ターゲットステーション2というほうに導いてきて、ここで中性子源とミュオン源を一体化したようなソースとして成立をさせる。
また、その際には、加速器のほうの強度を1.5メガワットに増強をした上で、ターゲットステーション1に1メガワット、ターゲットステーション2に0.5メガワットというふうなものを考えております。
これを実現することができますと、右側の下のグラフにございますように、瞬間輝度、パルス当たりの中性子輝度といたしましては、世界一を目指せるという施設になっているものでございます。
最後、13ページ、まとめでございますが、繰り返しになりますけれども、840キロワットでの高稼働率での安定運転を実現しており、パルス当たりでは1メガワットを実現しております。
利用においては、幅広い成果が創出されるとともに、利用技術において世界に伍する開発を継続しているというところ。
3点目、将来計画といたしましては、MLFの性能を最大限に引き出しつつ、第2ターゲットステーション実現に向けた技術開発等に取り組んでいくというふうに考えているところでございます。
以降は参考資料になります。
すみません。駆け足でございましたが、説明は以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
最終的には中間評価作業部会で評価されることだと思いますが、何か御意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。
まとめのところがアピール点というか、そういうまとめになっているんですね。この辺りを評価していただきたいということですね。
【脇本委員】 成果といたしましては、そうです。
【小杉主査】 何かございますか。
【高原主査代理】 興味本位の質問でよろしいですか。当日お聞きしても、サイトビジットとかでお聞きしてもいいのかもしれませんけれども。
この高出力化のための取組というのは非常に興味深く拝聴して、ヘリウムのバブルが損傷を抑制するというお話だったんですけれども。これ、横に容器の先端が切り出されていて、先端のところの最大深さ0.86ミリで、全体の厚さが5ミリなのでしょうか。
実際の管理上、安全設計上は、どのくらいまでの深さになったときに、装置を停止させるというフィードバックをかけているんでしょうか。
【脇本委員】 脇本です。御質問ありがとうございます。
まず、ここの深さを、実際の運転中に、今何ミリ削れているとかというところを外から検出する技術というのは、現時点では残念ながらないんです。ただ、異常があったときに、例えば、貫通してしまったとか、そういうふうなことが発生したときには、例えば、音響でモニタリングしていると音が変わるとか、そういったところの情報は収集しておりまして、そういったときには、何か異常があったときにはすぐ止められるような体制は取っているというものでございます。
また、1点だけ、誤解のないようにお伝えしておきます。この先端部分というのは、実は一番外側に水が通るところがあって、その内側に水銀が通る内壁があるんですけど、その内壁が実は二重構造になっています。今写真が写っているのは、この二重構造の内側でして、実は、この二重構造の1枚目が仮に貫通したとしても、直ちに水銀が漏れ出るとか、そういった事故にはつながらない構造にはなっておりまして、一応安全設計にはなっているということでございます。
【高原主査代理】 ありがとうございます。また当日、会場で。
【稲田課長】 少しだけ補足させていただきますと、このターゲットに関しては、規定時間で取り替えるという運用をしておりまして、このR&Dの結果になると、その規定時間を何時間まで延ばすことができる、そういう形で直近では利用することが想定されてあるわけです。
【高原主査代理】 ありがとうございます。
【脇本委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほか、何かございますか。
矢橋委員、お願いします。
【矢橋委員】 理研の矢橋です。どうもありがとうございます。
私も若干興味本位です。12ページの将来計画のところで質問がありますが、このターゲットを2つ置くというのは、SNSとかでも今やられていることですね。だから、国際競争力という意味でも重要なことだと理解しておりますが、これは、今1メガワットが安定に運転が近いということですが、それをさらに1.5に増強する必要があるということですよね。これを技術的なフィージビリティとしてはいかがでしょうか。
【脇本委員】 御質問ありがとうございます。
まず、ここの1.5メガワットまで増強できるかどうかというところについては、RCSという2段目の加速器のところの加速性能、ここにかなり依拠しておりまして、ここが、実は現在、私ども、この加速空洞をより高効率な空洞に交換していっているという状況です。
この高効率なものというのは、従来の約4割減の電力で加速ができるというものでございまして、これが導入できれば、現在1メガワットの設計であるところから、さらに上の1.5、さらにはその上というところに手が届く範囲になってくるということでございます。
ですので、そこの空洞、今、順次入れ替えているという段階ではございますけれども、ここから3年ないし4年後には、全部で12台ございますけれども、それを入れ替えられるように現在取組を進めているというところでございます。
【矢橋委員】 そういう意味では、ターゲットはオーケーということですね。ターゲットの問題はないと。
【脇本委員】 ターゲットは、第1ステーションに関しては、1メガワットを受け入れるということですので、そこの1メガワットでまずはできればいいと。
【矢橋委員】 了解しました。
【小杉主査】 何かございませんか。
どうぞ、高橋委員。
【高橋委員】 いいですか。今のところで、よく分かっていないかもしれないんですけれども、4ページのところの縦軸が、今おっしゃっていたビーム強度の1メガを目指すという、一番上が1メガという認識で合っていますか。
【脇本委員】 すみません。もう一度お願いします。
【高橋委員】 4ページの、例えば、左の図でいうビーム強度の1000というところが1メガというところで、今そこを目指して上がっていっているという認識で合っていますか。
【脇本委員】 はい、そうです。
【高橋委員】 そのときに、平均ビーム強度とおっしゃったときには、どこをどう平均されているのかというのが。
【脇本委員】 これ、2023年度に関しましては、パルス当たり1メガワットの強度というのが、この左側の絵でいうところの薄い水色の強度がほぼほぼ1メガワット、これ、実際には950キロワットなんですけれども、それになっていて、実はパルス当たりでは950キロワットが出ているんですが、運転の関係で、一部、後段のMRと呼ばれる加速器のほうへ間引く分がございまして、その間引く分を抜くと、時間平均すると840キロワットになっている、そういう運用に現在なっているというところでございます。
【高橋委員】 なるほど。では、性能としては、950キロワット出ているという認識ですね。
【脇本委員】 そうです。
【高橋委員】 分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】 ほか、ございますか。
岸本委員。
【岸本委員】 岸本です。報告ありがとうございます。
私も12ページのTS2のところに興味があって、お聞きしたいんですけど、このTS2は、今のMLFと同じぐらいの規模の大きさになって、ビームラインも同じ数だけ整備されるようなイメージを今描かれているんですか。
【脇本委員】 現在は、そうですね。
【岸本委員】 なるほど。分かりました。
中性子で、いろんな障壁がある中の一つとして、利用機会が少ないというのがやっぱり大きな要因かなと思っていて、よく聞くのが、使いたいけれども、なかなかJ-PARCは申請が通らない、難しくてどう申請したらいいのか分からないということがあったりします。今、JRR-3が動いて、非常に応募が多いですよね。
中性子を利用したいという現れと思いますので、ぜひTS2を計画されるときに、潜在ユーザーの数も見ていただいて、今のビームラインの数が最適なのか、もっと作るために大きくすべきなのか、いろんな視点で考えていっていただきたいなと思いました。
TS2ができて輝度が20倍上がると、世界が変わるというイメージがあります。中性子実験においては、1時間かかっていたのが3分で終わるとなると、全然違うイメージや利用方法になるので、その辺りも今後の計画にも織り込んでもらえるとありがたいなと思いました。よろしくお願いします。
【脇本委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほか、オンラインで何かございますか。特にないですか。
【森委員】 森ですけど、よろしいでしょうか。
御説明どうもありがとうございました。J-PARCも、強度が順調に皆様の御尽力によって上がって、中性子も、私たちの物性研も参画させていただいているのですが、とてもいいデータが出てきたということで、国際共同研究先の外国人の先生が訪ねていらして、非常に喜んでいらっしゃるということも数々あって、本当に感謝しております。
その中で、いつも中性子の方に我々が言うのは、外国に比べて、限られた人的リソースの中で動かしているということで、関係者の御尽力でここまでのパフォーマンスになっていると思うんですけれど、将来的に人的リソースのところに関しては、海外とは比べものにならないくらいの中で、皆さんの御努力でここまでなっているんですけど、どのような形でこれからこの大きな施設を動かすということを考えていられるのかということについて、何かありましたらよろしくお願いいたします。我々も悩みながら技術職員を考えたり、実験ができる環境を整えるということに関しては考えているんですけれども、J-PARC様のほうではどのように考えているのかということをよろしくお願いいたします。
【脇本委員】 ありがとうございます。大変重要な観点を御指摘いただいたと思っています。
まず、現在のMLFに関しては、確かにスタッフが潤沢というわけではないとも思いつつも、一方で、関係している機関を考えますと、JAEA、KEK、CROSS、さらに、今お話しいただいたような物性研さんなんかも入ってきていただいていて、様々なステークホルダーがやはりこの施設に関わっていただいているというところがございます。
そういったステークホルダーの皆さんが、ぜひ全体でリソースをうまく合わせ込みながらやっていく仕組みというのがやはり不可欠かなと思っておりまして、そういった中でしっかり施設を運営していけるような、良く言えば、組織の垣根を超えた運用といいましょうか、そういったところもうまくやっていきながら運営をしていく必要があるかなと考えております。
すみません。抽象的なお話で、あまり具体的なことになっていないんですけれども、そういったところがまずは必要かなと思っています。
また、将来的に、ターゲットステーション2までまた視野が広がっていきますと、さらにそういう施設側に人のリソースが必要になるという部分、これはもう確実に起こってきますので、そういったところはやはり地道に、人材育成の観点ですとか、そういったところを進めていかざるを得ないのかなと思っております。
大友さん、何かこの点、補足ございますか。
【大友MLFディビジョン長】 MLFディビジョン長の大友です。
今、脇本さんが言われたとおりなんですけれども、外部の方に協力いただくために、MLFとしてはこういう技術開発が必要であるとか、こういうサイエンスの開拓が必要であるということを、きちんとコミュニティの方と共通の認識を持ちながら、同じところを目指しましょうというようなことをしたいと思っていて、それで、皆さんと協力していけるような体制をつくりたいと考えていますので、さっきの脇本さんの説明の中にMLF2030とかロードマップという話がありましたけど、そういうところも含めて、きちんと明示していきたいと思っています。
以上です。
【森委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 雨宮理事長、お願いします。
【雨宮理事長】 12ページの右下の中性子の瞬間輝度の見方についてなんですけど、J-PARCのTS2で、輝度は世界一だと。この横軸、時間軸で、これを積分したものが大きいということも一つのメリットなのかどうか。要するに、利用として、輝度を使う実験と、積分値を使う実験ともしあるならば、この積分値も重要なんだろうなと思って見ていたんですが、実際のところ、このSNS TS2と比べて、輝度だけではなく積分値も広いんだけど、これはどの程度のメリットなのか、ちょっと関心があったのでお聞きしたいんですけど。
【大友MLFディビジョン長】 これは、積分値でも、図としてはそうなっていますけれども、基本的には、やっぱり輝度というのは、ある意味、細いビームを出せるということになるので、どちらかというと、TS2は、積分強度を重視するのではなくて、極限環境とか、今まで中性子ではビームが広がり過ぎていて、できなかったところにチャレンジするということのほうに重きを置いています。
【雨宮理事長】 そうですか。もしそうだとすると、裾野を低くということがデメリットという見方にもなりますよね。
【大友MLFディビジョン長】 そうですね。そこら辺は、まだこれから最適化が必要なところと思っています。
【雨宮理事長】 そうですか。分かりました。
【小杉主査】 12ページで説明するときに、こういう図を出すと、TS1なんか要らないんじゃないかというふうに見られますので、その辺の工夫がないと、この図だけで将来計画を出されても、なぜTS1を維持するのかという質問は出ると思うので、対策をお願いします。
【脇本委員】 ありがとうございます。
【稲田課長】 少しだけ質問に対して。
中性子量に関しては、加速器駆動型と、あと、原子炉というのがあるんですね。積分強度が必要なら原子炉を使えばいいというのがありますので、やはり適切なものを適切な実験に使うということの観点が重要だというふうに理解しております。
【雨宮理事長】 分かりました。
【小杉主査】 内海委員、お願いいたします。
【内海委員】 ありがとうございます。内海でございます。
昔、一時期、J-PARCに絡ませていただいた私としては、皆さんの努力で1メガワットが実質的に達成されていて、ターゲットの問題も解決されたこと、御同慶の至りというか、関係者の方々に敬意を表します。
一つ質問は、JRR-3が震災による長期の停止期間が終わって、この一、二年で順調に再稼働し始めていますが、それに関してJ-PARCに対しての影響はいかがでしょうか。今まで十数年間、JRR-3が動いていない間、J-PARCだけの片肺飛行だったと思うのですが、JRR-3が稼働するようになり、どういうポジティブ、ひょっとしたらネガティブもあるのかもしれませんけど、利用者の動き等々について、状況を教えていただければと思います。
【脇本委員】 ありがとうございます。
パルスと定常の中性子というのが両方使える状況になったということは、私どものユーザーの皆さんにとっては、大変大きなメリットではないか。それだけ使う選択肢が増えたということになるとは思っております。
何か目に見えて、例えば、JRR-3が運転再開したので、課題の倍率が少し緩和されたかとか、そういった観点の目に見えるところというのは、あまり数字上では出ていないかなという気はしてはいるんですが、ただ、両施設をうまく活用していただいた成果というのが、やはり出始めているかなと思っています。
すぐにぱっと具体的な成果が口頭で申し上げられなくて大変申し訳ないんですけれども、両施設を使った学術成果、そういったものが大分出てきていただいていますし、また、先ほど紹介したような燃料電池の研究なんかにおいても、当然、目的に応じて、この研究はJRR-3でやりましょうかというふうなことが実際にできるようになったという観点においては、よりそれだけ研究の進展が加速されたというふうな認識は持っているところでございます。
【内海委員】 脇本さん、どうもありがとうございました。
【小杉主査】 ほかに、オンライン、ございますか。唯委員、石坂委員。特にございませんか。
ちょっと私から。資料2-1の前回の指摘事項(主なもの)の一番最初に、生命科学用実験装置の整備についてとあるので、多分、そういうのも用意しないといけないんじゃないかな。今日の御説明の中には、生命科学というところが入っていないような気もするので、その辺り、何か用意されていますか。
【脇本委員】 生命科学に関しては、茨城県の装置のほうの成果とか、あとは、重水素化ラボ、そういった生命科学実験用に供するような前試験施設、そういったところの整備等、私どもは進めておりまして、そういったところを報告いたします。
【小杉主査】 では、そういうのも評価のときに出していただくとよいかと思います。
ほか、何かございませんか。
委員長の立場で、こういう情報を出すようにとかあれば。
【高原主査代理】 もう施設がスタートして14年か5年になりますので、恐らく初期に設置した装置がかなり老朽化していると思うんですけれども、そのアップグレードとかをどういうふうに考えていくかということについても、評価作業部会のほうでいろいろな資料を御提出いただければと思います。将来的に、今、研究構想も含めてですね。
【脇本委員】 はい。
【小杉主査】 ほか、何かございますか。
作業部会は、11月、12月に集中してやられるという予定なんですね。
【稲田課長】 はい。
【小杉主査】 我々のほうにそれが返ってくるのが年明けということですね。
【稲田課長】 そうです。
【小杉主査】 特になければ、ちょっと早いですけれど、よろしいですかね。
それでは、最後、議題3が残っておりますが、その他ということなので、事務局から何かありましたら、お願いいたします。
【稲田課長】 次回の本小委員会に関しては、来年1月ごろの開催を考えてございます。追って委員の皆様方に日程調整等をお願いさせていただくとともに、開催方式についても、どのような形にするか御相談させていただきますので、よろしく御対応をお願いします。
最後に、本日の議事録に関しましては、作成次第、皆様にメールにおいて御確認いただきます。御確認いただいた議事録に対しては、可及的速やかに文科省のウェブサイトに掲載する予定でございますので、作業に御協力よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
それでは、以上をもちまして第12期の第50回量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。


 
―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究環境課

(科学技術・学術政策局 研究環境課)