量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第49回) 議事録

1.日時

令和5年8月30日(水曜日)16時30分~18時30分

2.場所

文部科学省内15階局会議室及びオンラインのハイブリッド形式

3.議題

  1. SPring-8の高度化について
  2. NanoTerasu運用期における評価指標について
  3. その他

4.出席者

委員

小杉主査、内海委員、大竹委員、岸本委員、阪部委員、高橋委員、唯委員、古川委員、森委員、矢橋委員、山重委員、脇本委員

文部科学省

林研究環境課課長補佐、内野研究環境課課長補佐

5.議事録

【林補佐】  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第12期量子ビーム利用推進小委員会、第49回を開催いたします。
 本日は、お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。本小委員会の事務局を担当させていただきます文部科学省科学技術・学術政策局研究環境課の林と申します。
 本日ですが、オンラインとのハイブリッド形式で会を開催しておりまして、全14名中12名の委員の皆様に御出席をいただいております。内訳といたしましては、対面による御参加3名、オンラインでの御参加9名となっております。大竹委員は遅れての対面のご参加と伺っております。欠席につきましては、石坂委員と高原委員とお伺いしております。
 続きまして、オンライン会議の留意事項について御説明させていただきます。通信を安定させるため、御発言されるとき以外は、可能な限りマイクをミュートにしてください。御発言される際はミュートを解除してください。議事録作成のため速記者を入れておりますので、お名前を言っていただいた後に御発言をお願いします。会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話をお願いします。なお、本日は、会議公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるユーチューブでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。Zoom上に画面共有しておりますので御覧ください。画面が見えにくい方は、適宜事前にお送りしている資料を御覧ください。配付資料は、資料1-1から資料2-1、参考資料1-1を配付しております。御不明点ございましたら、事務局までお電話ください。
 それでは、小杉主査、どうぞよろしくお願いいたします。
【小杉主査】  それでは、進行したいと思います。
 まずは議題1を始めたいと思いますが、SPring-8の高度化についてということになっております。資料は1-1、SPring-8の高度化に関するタスクフォースの報告書、それから資料1-2、SPring-8の高度化に向けた今後の議論の進め方、2件ありますので、併せて事務局より説明をお願いいたします。
【林補佐】  事務局の林のほうから説明いたします。
 まず、資料1-1の後ろのほうで恐縮ですけれども、21ページを御覧ください。21ページ目に設置紙を載せておりますけれども、SPring-8の高度化に関するタスクフォースを文部科学省のほうで令和5年5月31日に設置いたしまして、これまで議論を行ってまいりました。そして、その報告書が先日、8月に発表されましたので、その御報告をさせていただきます。
 こちらのタスクフォースにおいては、主な検討事項に書かれておりますとおり、国際動向ですとか、SPring-8の成果・課題、アカデミア・産業界の意見等を検討いたしまして、文部科学省の構成員、文部科学副大臣の井出顧問及び文部科学大臣政務官の山本先生を座長として議論を進めてきたところでございます。
 では、内容について御説明いたします。最初のページを御覧ください。
 こちらの2ページ目でございますけれども、冒頭2ページ、タスクフォースの報告書のポイントについてまとめております。SPring-8につきましては、皆様御存じのとおりですけれども、1997年から共用が開始されまして、以降25年以上が経過しております。この間、経済安全保障やカーボンニュートラル、AIの関係ですとか、社会経済の在り方が大きく変容してまいりました。また、それとともに、SPring-8は、設置者である理化学研究所の卓越した研究力で常に技術の限界に挑戦し、革新を続け、放射光科学技術を牽引していくという使命の下、運用が行われてくるとともに、放射光科学につきましては、NanoTerasuを含むその他放射光施設と、それぞれの強みを生かしつつ連携して、我が国の放射光に関する技術と利用の裾野を広げていくサイクルというものが重要でございまして、そういったところをこの報告書をまとめる際におきましても注目していったところでございます。
 そうした中で、2ポツ、技術の高度化の必要性と、3ポツ、仕組みの高度化の必要性というところでまとめているんですが、2ポツの技術の必要性につきましては、まず最初のところに書かれておりますとおり、まさに今このときこそが、2030年から先の社会・産業を見据え、高度化待ったなしのタイミングであると。また、2ポツの部分ですけれども、さらに加えまして、欧米や中国におきましても、大型放射光施設のアップグレードや新規の建設が進んでいるところであり、このままSPring-8が陳腐化してしまうと、我が国の研究者も海外施設に頼らざるを得ないような、そういった状況からの課題が生じると考えられます。加えて、施設の運転にかかる電気代の増加ですとか、老朽化による保守コストの増加、また、技術伝承、人材育成の観点からも施設の高度化は必要不可欠であると考えております。
 また、技術の高度化で目指すべきところとして、放射光の最高輝度を現行の約100倍に向上させ、高精細なデータを短時間で取得可能にすること、また最高輝度が100倍となることで、2位に2倍以上の差をつけて世界一を目指していくこと、そういったところの重要性が指摘されております。また、一度高度化して終わりというわけではなくて、運用開始後も技術開発を継続し、技術の限界を突破することにより世界の放射光施設をリードしていくという意欲的な戦略を取りながら、令和6年度から取組を進めていくことが必要というところを記載させていただいています。
 次のページ、仕組みの高度化の必要性の部分でございますけれども、こちらにつきましても、産学における先端ニーズの集約や、先端的な利用環境を整備することが肝要というところでございまして、具体的に、テック系ベンチャー支援機能との連携や、中小企業を含む産業界の利用拡大、立地地域自治体による支援策の充実などと書かせていただいております。具体的には、コンシェルジュ機能やサンプル調整機能、協調領域のデータ共有機能など、ユーザーにとって使いやすい利用環境の充実ですとか、また、企業の人材をSPring-8側で受け入れ、あるいは逆にSPring-8の人材を企業で受け入れるといった取組も重要だと考えております。
 加えて、広報・アウトリーチにつきましても重要だと考えており、特に国民生活に関連づけた取組が重要でして、誰に向けて発信するのかターゲットを明確にし、また、効果的かつ高頻度に、地道な広報活動を継続すること、そして、既成概念にとらわれず、新たなメディアを活用することの重要性などが記載されております。さらに、SPring-8の高度化が実現した際の利用の在り方としては、現在の課題解決、ボトムアップ的な利用だけではなく、新たな投資先となる産業を見いだし、勝ち筋をつくっていくトップダウン、双方の考え方が重要だと考えております。
 これらを踏まえまして、SPring-8の高度化により豊かな社会が実現できると考えておりまして、この報告書はまず第一歩であり、今後も関係者とともに取組を進めていきたいというのが、この報告書のポイントの概要でございます。この次のページから、ここまで述べさせていただいた内容のより詳細な部分を載せておりますので、飛ばし飛ばしではありますが、簡単に御説明させていただきます。
 まず5ページ目部分ですけれども、これまでどういったところで社会経済が変化しているかを載せさせていただくとともに、6ページ目の部分につきましては、SPring-8やNanoTerasu、また大学等の放射光施設や産業利用が主になる放射光施設などもございますけれども、それぞれの役割を果たしながら、相補的に我が国の放射光科学を広げていくことが重要だと考えております。また、次のページでございますけれども、2030年頃は次世代半導体の量産やGX社会の実現などが起こると言われているところでございまして、そういう部分に間に合わせるためにも、まさに今から放射光施設のアップデートを行っていくことが重要だと考えております。
 次のページにつきましては、重複になりますが、欧米でのアップグレード、中国での新規建設が進んでいるところでございまして、まさにこのまま行くと、我が国の技術が陳腐化してしまう、経済安全保障の観点からも大きな課題が生じる可能性があると考えているところでございます。
 次のページにつきましては、電気代の削減効果ですとか、老朽化している中で保守コストの増加の部分に関する影響ですとか、また、大規模施設の建設に伴う人材育成、技術伝承の重要性といったところが記載されております。
 その次のページにつきましては、高解像度かつ大量のデータを取得することの重要性ですとか、2位に2倍以上の差をつけて世界1位を目指す、そういったところが重要ではないかというところを記載させていただいております。
 次のページにつきましては、常に最先端の施設として進化し、世界の放射光施設をリードしていくという戦略を取りながら、令和6年度から取組を進めるべきというところでございまして、左下に書かれておりますとおり、最高輝度で世界随一の性能を目指していくというようなところを記載させていただいております。
 また、その次のページからは仕組みの高度化の必要性の部分でございます。この次のページにつきましても、各種量子ビーム施設との連携ですとか自動計測、データ解析、あるいは人材育成、そういった部分につきましても産業界等からのニーズがあったというところを書かせていただいております。
 また、その次のスライドでございますけれども、高度化の必要性というところで、ヒアリング等を行う中で、地道かつ高頻度なプレスリリース等が、結果的により多くの人々にリーチすることができるですとか、また、既成概念にとらわれない広報活動の重要性といったところを記載させていただいております。
 また、次のページにつきましては、特に右側の図を御覧いただければと思うんですけれども、これまでのSPring-8の利用から、さらに光の輝度を上げていくことによって、1回当たりの実験時間を短くすることができ、そうすると、より多くの課題が実施できるようになると考えております。そうすることによって、アカデミア利用だけではなくて、産業利用の拡大ですとか、またさらに国として投資先となる産業を見いだし、勝ち筋をつくっていく、そういった部分についても、より対応が可能になっていくものと考えています。
 次のページからは御参考でございますけれども、皆様の御協力の下で、様々な製品に活用されてきているという事例を載せさせていただいております。放射光のPRになるとも思いますので、もし機会があれば、皆様御利用いただければと思います。
 飛ばさせていただいて、19ページにつきましては、特にアカデミアの観点からももちろん成果が出ているというところで載せさせていただいております。
 そして20ページ、最後になりますが、この報告書は、SPring-8の高度化を実現するとともに、我が国が地球規模の課題解決に貢献しながら成長していくための第一歩だと考えておりますので、関係者とともに取組を進めていきたいというところで、まずは文部科学省内のタスクフォースでの報告としてまとめているところでございます。
 連続して恐縮ですけれども、次に資料1-2につきまして御説明させていただければと思います。
 今し方御説明いたしました文部科学省でのタスクフォースの報告書等を踏まえまして、SPring-8の高度化に向けて今後このように議論を進めていったらいいのではないかということで、こちらの資料を作成させていただいております。
 具体的には、特にタスクフォースでまとめております論点、技術の高度化の在り方と仕組みの高度化の在り方に基づきまして、理化学研究所等から対応策をヒアリングし、量子ビーム利用推進小委員会としての考え方を、今回から次回、また次々回までの3回にわたり議論をして、まとめていければと考えているところでございます。
 具体的には、下に書かせていただいておりますとおり、まず1ポツ、技術の高度化の在り方については、第2回、つまり今回議論させていただきまして、特に技術目標ですとか開発期間、時期、そういったところについて量子ビーム利用推進小委員会として、この方向でよいかというところを御議論いただければと考えております。また、次回以降につきまして、仕組みの高度化の在り方というところで、ユーザー利用環境ですとか、産業・地域との連携、広報・アウトリーチ、人材育成・交流、また、SPring-8-Ⅱらしい利活用コンセプトについて御議論いただいて、まとめさせていただければと考えているところでございます。
 以上、手短ではございますが、事務局からは以上となります。
【小杉主査】  御説明ありがとうございました。今の資料1-1と1-2に関して、御質問等ございませんでしょうか。ちょっと私から誰が手を挙げているか分かりにくいのですが、名前と内容を言っていただければと思います。特にございませんか。
 私からですけれど、タスクフォースでの議論の際は、SPring-8について限定した議論をされたのか、ある程度日本全体のネットワークの中でどういうふうにSPring-8を位置づけていくかというような議論とか、あったんでしょうか。ちょっとその辺りが気になったのですが。
【内野補佐】  事務局、内野でございます。もともとなぜSPring-8の議論をしていくことになったかというと、もちろん最初は共用促進法の改正の国会からの附帯決議を踏まえて、既存の放射光施設の老朽化対策であるとか、あとは高度化の必要性にフォーカスして、中でもというところでSPring-8を対象に議論をしたということになっています。
 報告書の最後の開催実績、ここに第3回のところで、NanoTerasuの地域パートナーの代表でもあられます高田先生にお越しいただいて、主にNanoTerasuとSPring-8の取組の違いというところから議論がなされました。放射光全体という意味で言うと、毎回理研の石川センター長や矢橋委員などにも参加をいただいておりましたけれども、参加者の放射光施設に対するご見識を踏まえながら、日本全体の中で、この施設はこの辺りの位置づけなんじゃないかというような議論がなされて、それをこの資料、報告書でいうと6ページ目に、イメージとしてSPring-8の高度化というのはこういうところに来るんじゃないかというのをまとめたということになっています。
 ただ、このベン図みたいなものは、それこそこのAichiSR、SAGA-LSとか、NanoTerasuとSPring-8以外の設置者の方々と合意をして、あるいは議論をして作っていたものではありませんで、あくまで文科省の中で、限られた人間が頭の整理をするために作ったものという理解で見ていただければよろしいのかなと思っています。
【小杉主査】  6ページなどを見ると、例えば大学共同利用機関に置かれているフォトンファクトリーとかUVSORが書かれていないので、ちょっと違和感を感じたんですけど、SPring-8は世界の3極、アメリカとヨーロッパに1台ずつありますので、そういう中で世界一を目指してやっていくというのは誰も疑いを持たないし、それに関してはもう全員が賛成だとは思いますが、例えば産業利用の成果でも、必ずしもSPring-8だけで成果が出されたものではなくて、いろんな施設を使いながら、最終的な決め打ちをSPring-8でやったのか、ほかのケースもあるかと思いますが、全体で成果につながっていますので、こういう議論のときには、SPring-8が世界3極の中の世界一を目指す施設であるというのははっきりはしているんですけれど、もう少し他施設にも目配りがあればよかったかなという印象を持ったんですけど、一応少しは議論されているということとして理解しました。ありがとうございます。
 ほか何かございませんでしょうか。それでは、これは一応報告ということですので、最終的には審議事項の次の議題が一番重要になってきますので、次の議題に移ってよろしいでしょうか、特に御意見なければ。
 それでは、続いて資料1-3になります。SPring-8の高度化における開発期間及び想定性能についてという内容に基づいて、委員の皆様に議論いただきたいと思います。資料については、理化学研究所放射光科学研究センターの矢橋委員から御説明いただきます。説明の後、これは重要なことですので、委員全員の意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、矢橋委員、お願いしたいと思います。
【矢橋委員】  矢橋です。よろしくお願いします。私からは、このようなタイトルで御紹介したいと思います。
 次、お願いします。まず最初のページですが、SPring-8-Ⅱの開発期間について、現在の計画を示したものです。まず来年度、2024年度に高度化開発費によって量産技術の最適化を実施する。それで目標性能を達成するための設計の妥当性について、第三者による客観的な評価を得る。これはまた最後に詳しく御説明します。それで、この結果を踏まえて、4年間の整備・建設期間を経て、2029年度に完成・共用開始を目指すという全体の計画になっております。
 次、お願いします。このページは目標性能、それからターゲットを大きなくくりで示します。まず性能的には、現状より100倍以上明るい、もう少し具体的に言うと輝度が高いということです。こういう世界トップの性能をまず目指すと。しかもそこだけではなくて、大幅な省エネと両立させるということを目指します。これを実際の整備もコスト削減して実現するというものです。
 それで、技術的なところですが、真ん中の囲み、左の囲みがありまして、加速器テクノロジー、省エネとあります。これは両方とも密接に関わっているわけですが、まず一番左の箱の中にあるように、加速エネルギー、電子ビームのエネルギーを8GeVから6GeVに下げるということをします。実はこれによって、エミッタンスと言われる、電子ビームがどれぐらい広がっているかという指標に対してもメリットがあります。さらに、加速器の構成要素を一新する、真ん中の箱の一番上です。マルチベンドアクロマット(MBA)技術というものがありますが、これを組み合わせることで非常に小さいエミッタンス、電子ビームを絞るということをします。光源、電子ビームが絞られますと、輝度、単位面積、単位立体角当たりの明るさというのが非常に増えますので、これで一番右側の「輝度の劇的な向上」を目指すということになります。
 一方で省エネ化のほうは、やはり8GeVから6GeVに落とすということが非常に省エネにつながっておりますし、あとマルチベンドアクロマット技術というので、これはいわゆる蓄積リングの構成要素である磁石真空チャンバー、これは全部交換するわけですが、そのときに、今まで偏向部、ビームを曲げるところで電磁石を使っていたのを永久磁石にするということをやります。これによって、熱も含めて、電力の大きな削減につながりまして、なおかつ空調、それから冷却水といったインフラのところの負荷も低減できますので、非常に効果がある。こういったことを組み合わせることで、当初よりも半減、省エネを実現するということでございます。
 次、お願いします。この技術の話、加速器テクノロジーの話ですが、左上の磁石システムについては、この後もう少し詳しく御紹介します。
 それで、左下のアンジュレーターですが、8GeVから6GeVにエネルギーが下がるということは、実は放っておくと、X線の波長が長いほうに、エネルギーが低いほうにシフトしてしまいますが、そうではなくて、アンジュレーターの周期、磁石列をさらに短い、現状よりかなり短いものが今できるようになってきています。さらに、真空封止アンジュレーターというのを用いていますが、これの小型化のいろいろな技術が進んでおりまして、我々IVU-2と言っていますが、これを全面的に導入することで、安定に高いエネルギーのX線を生成するということを行います。
 それから右上ですが、電子ビームを入射する入射路として、従来の入射器に代わって、2年前からSACLAを活用した入射システムというのをやっています。現状のメリットとしては省エネに非常に貢献しているというのがありますが、実はこれはSPring-8-Ⅱに行ったときに本領を発揮しまして、Ⅱの電子ビームは、先ほどから申し上げているように、非常に現状より小さくなります。小さいビームが周回するわけですが、それは取りも直さずビームのアクセプタンス、つまり入射するビームをどこまで拾いますかという、そのアクセプタンスも小さくなってしまいますので、従来の入射器、非常に大きな電子ビームを出射するわけですが、それだと入射点でビームをこぼすということになりまして、非常によろしくないと。一方で、SACLAの電子ビームは非常に絞られておりますので、高効率の入射システム、これは実は海外の施設でも非常に大きな課題の一つとなっていますが、SPring-8、SACLAのコンプレックスの場合はこれが非常にスマートに解決できるということです。
 それから右下、長直線部、SPring-8はもともとの建屋の設計時から、蓄積リングに4か所、30メートルの長直線部というのがございます。これは設計当初どういう使い方をするかというのは、実はきちんと定まっていたわけではないのですが、その後、現状では4か所に非常にユニークなアンジュレーターを用いて、非常にすばらしいアクティビティーが行われているわけですが、実はこれはⅡに行っても非常に重要になりまして、この4か所のうちの幾つかにダンピングウィグラーというウィグラー、長いものを設置することでエミッタンスをさらに小さくすることができまして、現在目標は50ピコメーターラジアンという、これがないと100ぐらいなのですが、これを50程度まで下げるということを行います。なおかつ、幾つかの長直線部には今までどおり、非常に長いアンジュレーターを置きますので、これを組み合わせることで世界最高輝度を達成すると。さらには、将来のリング型XFELの活用への含みもあります。
 次のページをお願いします。特にエミッタンスを下げるための磁石のテクノロジーということですが、これは蓄積リングを上から見た絵です。その一部を切り取った絵です。上側がダブルベンドといいまして、この蓄積リングは、実は磁石の繰り返しから成り立っています。一つのユニットをセルと言っていますが、一つのユニットの中に2つのベンド、いわゆる偏向磁石があります。これがB1とB2と書いてあるのが現状のもので、B1、B2、B1、B2ということで繰り返します。
 実は電子ビームが広がる原因というのは、このB1とかB2とかというところで角度を曲げることによって、これは直感的に非常に理解がしやすいと思うんですけれども、電子ビームを曲げることでビームが広がると。できるだけ曲げなければいいというか、1回の曲げ角度を非常に小さくして、曲げた後に補正をすればいいわけです。そういう意味では原理的には非常に単純でございますが、ただしテクノロジー的には非常に難しいということで、従来はダブルベンドというのが主流でしたが、最近の技術の進展によってマルチベンド、3以上、4以上というのができるようになってきています。それでSPring-8では、5という、マルチの中でも5ベンドという構成の採用を計画しております。それが下の絵でございます。
 次のページをお願いします。こういうものを入れますと、SPring-8の2ベンドというのが一番左にございます。見ていただくと分かるように、これは水平方向にやはり広がっている。垂直方向は磁場の影響がないので、非常に絞られます。これが、今NanoTerasuは4ベンドというのになっておりまして、水平がかなり絞られているのが分かります。これがSPring-8-Ⅱに行きますと、さらに絞られて5ベンド、ほぼ点光源と言っていいと思いますが、こういうことになります。
 これは、NanoTerasuの場合は基本、軟X線の領域でございますので、そこの回折光源を目指すという意味では、ここが最適である。しかしながらSPring-8の場合は、硬X線で回折限界を目指すと、さらに一段高い性能が要りますので、こういう非常に難しい、チャレンジングな技術を導入してございます。
 次、お願いします。それで、電子ビームを小さいものを回すわけですが、それに従って、当然ですが、加速器のいろいろなコンポーネントの小型化が必要になります。上側が真空チャンバーで、一応これは実質の比を尊重して描いたポンチ絵ですが、左側のような真空チャンバーがかなり小さくなると。それから、下側の絵は4極電磁石といいまして、電子ビームを絞るレンズの役割をする磁石ですが、これもボア、中心のところが非常に小さくなるということで、小さいビームを回すには小さいコンポーネントということですが、当然非常に高い精度で物を作っていかないといけないということになります。
 次、お願いします。こういったことをやっていくことで、エミッタンスが現状の2.4というのが0.05、50ピコメーターラジアンということになります。明るさ、最高輝度が特に、先ほどの長直線部のところで計算しますと、現状の100倍以上ということになります。そうすると、単純に考えて計測時間は、輝度が必要なものとしては100分の1、空間分解能が非常によくなる。あと光子エネルギーのところも、なるべく高エネルギーを目指しますので、現在よりもさらに高いところ、100keVといったところも普通に使えるということを目指します。
 次、お願いします。これが最高輝度のところを、ある意味ライバルの諸外国の施設と比較したもので、現状のSPring-8が一番上にありまして、その下の4つが、いわゆるSPring-8-Ⅱと並びになる第4世代の放射光施設でございますが、SPring-8-Ⅱはここを大きく上回る輝度が期待できるものです。
 次、お願いします。最後ですが、来年度の開発実証です。令和6年度の高度化開発費の内容でございます。
 まず大きな目的としましては、SPring-8-Ⅱの超低エミッタンス蓄積リング実現に向けて、製作方法、組み上げ方法を含む詳細な検討を行いますということです。もう少し詳しく言いますと、既にシミュレーション等かなりやっておりますので、要素部品が設計どおりに製作できて、要求精度内に組み上げることができれば目標性能は達成できるだろうというめどはついていますが、当然、SPring-8は、全周1.4キロとなっておりまして、NanoTerasuの4倍以上ありますので、物量も非常に多いと。それから目標性能も非常に高いものがありますので、やはり量産をする前に要素部品を確実かつ安価に量産するための製作方法を確立しておく必要がある。さらに、これはかなりの部品をトンネルの外で組み上げて、それを持ち込んでアラインメントするということを計画しておりますので、その外のアラインメント、調整ですね、高精度の調整をきちんとやるような手法も込みでやっておかないといけないということがございますので、そこをしっかりこの高度化開発の中で行うということでございます。こういうことをやることで、期間、それから予算とも当然限られたものでありますが、その中で確実にプロジェクトを完成させるということを行います。
 以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。委員それぞれから、今の資料の最初のページに示されている開発期間の設定とSPring-8-Ⅱが狙う性能が妥当であるかどうかの御意見をいただきたいと思います。技術的な困難もあり、生産体制を作るのにも時間がかかるということを踏まえて、まずは開発期間のところで、矢橋委員の説明に追加は何かございますか。大体こういう設定で何とかなるということでしょうか。
【矢橋委員】  そうですね、もちろんもっと早くやりなさいという声は非常にありますが、4年間でしっかり本格整備のところをやっていく予定です。ただ、そのためにはやはり高度化開発をしっかり、量産化のところを固めていくということがセットになっておりまして、これをやることで、この範囲で可能であると考えております。あと、2029年度共用開始とありますが、そこもできる限り早期に、前倒しができればとは考えております。
 以上です。
【小杉主査】  委員の方からできるだけ御意見をいただきたいのですが。
【唯委員】  唯ですけど、よろしいでしょうか。
【小杉主査】  唯委員、お願いします。
【唯委員】  世界一に出るということで、非常にいろんな新しい要素技術も、ユーザー側から見ると、やはりこの運転停止期間の1年間が結構大きなところかなというふうに思うんですけれども、技術的な部分での新しい立ち上げで、これが少し、例えば1年という期間が動いたり、もしくは短くなったりと、そういったところの可能性とリスクというのはどういったふうに見積もられておられますでしょうか。
【矢橋委員】  この運転停止期間、そもそも整備のところも含めて、御承知のようにSPring-8の加速器部隊がNanoTerasuのところを設計も含めてかなりやりましたので、そのノウハウ、経験を生かした上でのスケジュールになっています。ただ、やはり物量、先ほど申し上げたように、周長が4倍長いとかいろんなことがあるので、そこは結構大変ではありますが、1年と若干プラスということもあるかもしれませんが、基本的には1年の中に収めるということで計画を進めております。
【唯委員】  分かりました。
【矢橋委員】  ここは恐らく、始まってどたばたする話ではなくて、事前にしっかりと詰めて、これでいけるということをつくっていくことがとても肝要ですし、そういうところは我々としてもノウハウが十分ありますので、事前にしっかり検討ができると考えています。
【唯委員】  分かりました。ありがとうございます。
【矢橋委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  今の議論は、光源としては1年のシャットダウンの中で立ち上がると思うのですが、ビームラインのほうはどうなんでしょうか。唯委員も多分その辺りを気にされて。
【矢橋委員】  そうですね、ビームラインについては2つありまして、1つは挿入光源のビームラインというくくりと、あと偏向磁石のビームラインというくくりがあります。まず後者からいきますと、偏向磁石のビームラインは、先ほど申し上げたように磁石が2ベンドから5ベンドに変わりますので、発光点が少し変わります。したがって、ビームライン、ちょっと光軸の移動等々がありますが、これはやはりこの停止期間で全て行ってしまう。ここについては光軸さえしっかり保てば大きな問題はないだろうと考えています。
 一方でアンジュレーターのところは、基本的には今の光軸を変えないということが前提になっていまして、では実際どう担保するんですかというところはこれからの議論ですが、基本的にはここも、例えば水平方向に数百ミクロン動くとか、その程度はあると思いますが、それは十分吸収できますので、そこもしっかり加速器と利用、ビームラインのところが協働してディスカッションしていくということにしています。
【小杉主査】  基本は今のアンジュレーターラインは、特に大きく手は入れないということですね。
【矢橋委員】  そうですね、そういう意味では事前に、既にビームラインの高度化、再編というのは進めておりますので、そこもⅡの後でも使い続けられるものをなるべくちゃんと整備しておくということを考えています。事前になるべくやっておけることをやっておくということです。
【小杉主査】  ほかにSPring-8のユーザーの方おられないでしょうか。そういう観点から気になる点、御質問がございましたら。
【内海委員】  内海でございます。
【小杉主査】  はい、内海委員。
【内海委員】  矢橋さん、ありがとうございます。NanoTerasuの加速器立ち上げを見ていても思うのですが、加速器の方々は大変優秀で、SPring-8の改造に関しても、加速器の部分は、技術的に難しくても間違いなく実現できるだろうと強く確信します。
 それで、ビームラインのほうの質問なんですけれど、例えばエンドステーション機器は時代とともに高度化すべきものなので議論は別として、光を出す部分、アンジュレーター、フロントエンド、光学系のところに関して、今あるものをそのまま使えるものはどのぐらいで、新しく作り直さないといけないものはどのぐらいというイメージになりますか。
【矢橋委員】  まず絶対やらないといけないのがアンジュレーターです。これは2から5に、例のラティス、あれが変わるので、アンジュレーターを入れる直線部の長さが短くなります。したがって、この絵だと分かりにくいんですが……、ちょっと分かりますかね。アンジュレーターを入れる場所がちょっと狭くなっているんですね。したがって、旧来4.5メーターというのを使っていましたが、それはちょっと入らないということで、短いものにする必要がある。あとは6GeVを見越して短周期化をしておかないと長波長側に寄ってしまうというのがあります。ここについては計画的に今から準備をしまして、徐々に変えていくというのをやります。
 ここができると、例えばフロントエンドはほぼ、一部のコンポーネントの高度化はありますが、熱負荷が非常に増えるというわけではないので、そこはほぼ使えまして、あとオプティクス、光学ハッチの中のビームラインの機器も、現状の使い方を踏襲するのであれば、そのままいけるということです。ただ、やはりギンギンにこの100倍の輝度を生かし切るということになると、そこについても手を入れるということになります。ただ、これはよく石川センター長が言っているんですけども、新しい光は見てみないとなかなか本当の使い方は分からないということがあります。確かに、我々もSACLAでも身をもって経験しており、事前の高度化はある程度行っておきますが、さらにⅡの後にも手を入れ続けることも重要です。シャットダウンの前にどこまでやって、次に何を残しておくかというのはしっかり議論しておく必要があると考えています。
【内海委員】  ありがとうございました。よく分かりました。
【小杉主査】  ほかの委員の方ございますか。
【高橋委員】  よろしいですか、高橋です。
【小杉主査】  高橋委員、お願いします。
【高橋委員】  今の議論、本当に私どもユーザー側として非常に重要なポイントだと感じていまして、皆様の御議論で理解が深まりました。運転停止予定期間についてもなるべく短縮を試みられるということ、ビームラインについても前後の準備で、あまりユーザーに支障がない形で準備いただけるということは非常にありがたく感じております。
 企業ユーザーとしましては、加えて、停止の予定の期間があらかじめ早い段階で分かっていると非常に助かりますということを申し上げておきたいということと、あと、1点ちょっと気になったのが、ビームラインの装置については、基本的には既存のものがそのまま活用できるというお話だったんですけども、先ほどの内海先生とのお話にもありましたように、このままの状態、同じ実験を100倍の輝度で行うとなると、単純に、単にアッテネーターを入れるような形になってしまうと非常にもったいないと思うので、輝度が上がるということを生かせるような準備ですとか更新、例えばディテクターの更新ですとか、そういったところについてアイデアや何かありましたら教えていただけるとありがたいです。
【矢橋委員】  まず運転停止期間のところはもうおっしゃるとおりで、これはまだふわっとした絵になっていますが、恐らく予算化とともにきっちり決まってくると思いますので、これはかなり事前にアナウンスをさせていただくことになると思います。
【高橋委員】  ありがとうございます。
【矢橋委員】  それから、ビームラインのところもおっしゃるとおりで、幾つか肝がありまして、1つはオプティクスのところもあります。ビームが小さくなっていくので、今まで以上に、今はそういう意味で安定なビームラインで、現状では、特に垂直方向は非常に絞られているので安定化が進んでいるわけですが、それに加えて水平、2次元の非常にステーブルないろんなシステムが必要になるというのが1つ。それからもう一つは、今まさに言われたように、検出器のほうが非常に重要なポイントになってきています。それについても我々理研側で、特に新しいCITIUSという検出器を開発しました。あとDIFRASという、これは高精細なイメージングの検出器ですけども、そういったものの開発を進めております。まさにその辺りが一番下のビームラインアップグレードと書いてある線表ですが、しっかりそこも事前に進めていきたいと考えております。
【高橋委員】  ありがとうございます。矢橋先生がさきにおっしゃったように、見てみないと分からないというのは、まさに石川先生のおっしゃるとおりだと思いますので、どういったものが出来上がるか、とても楽しみにしています。ありがとうございました。
【小杉主査】  ほかの委員、お願いします。
【阪部委員】  よろしいでしょうか、阪部です。
【小杉主査】  阪部委員ですね、はい。
【阪部委員】  矢橋先生、どうもありがとうございます。ちょっとお聞きしたいんですけども、加速エネルギーを8GeVから6GeVに低減するということですが、これが7でなく、また5でもないという、その6というのは、まさにこれは磁石、アンジュレーターの短周期化技術で決まっているんでしょうか。
【矢橋委員】  おっしゃるとおりです。短周期化技術で決まっていて、実は競合施設というのがございまして、ESRF、グルノーブル、それからアメリカのAPSというのがあって、あとドイツにPETRAというのがあります。みんなこれが6にするというか、アメリカは7、それからヨーロッパはそもそも6でしたが、みんな6にするということをやりますが、これはやはり今おっしゃられたエミッタンスを小さくしやすいということと、一方で、エネルギーがあんまり下がると硬X線が出にくいので、アンジュレーターの短周期化技術を踏まえてやっているということです。
 アンジュレーターの短周期化技術はいろいろなアプローチがありますので、例えばアメリカだと超伝導のアンジュレーターをやったりしていますが、我々日本はもともと真空封止アンジュレーターの発祥でございまして、非常に強みがありますので、そこでまず攻めていきたいと考えています。
【阪部委員】  短周期化技術を伴ったこの新しいアンジュレーターというのは、もう確立しているものだと思っていいのですか。
【矢橋委員】  そうですね、ほぼ確立していまして、今順次、量産に向けたステップが、ほぼファイナルの段階になっています。
【阪部委員】  なぜそういう質問をさせてもらったかといいますと、この開発期間について、整備・建設と、もういきなり、それから運転停止と入っていますけども、事前の予備的なテストみたいなものは、もう要素としては必要ないんでしょうか。
【矢橋委員】  実は、ここに描いている上の4つの棒、これは加速器のということですが、今のアンジュレーターはそこには入っていません。むしろビームラインのところに入っておりまして、ここについては、既に高度化開発というのはもう終了しているという認識です。したがって、量産をやり次第、どんどん入れ替えていくということをやります。
【阪部委員】  分かりました。どうもありがとうございます。
【小杉主査】  ほかにございませんでしょうか。
【岸本委員】  岸本ですけれど、よろしいですか。
【小杉主査】  岸本委員、お願いします。
【岸本委員】  矢橋委員、御報告ありがとうございました。世界トップ性能を目指すということで、もう確実にそこは達成されるものだと思うんですけど、一方、今回省エネ技術のところで、偏向部の永久磁石化だとか、冷却系の負荷低減というところになりますと、もしかするとメンテナンス期間とかの短縮だとか、施設の負荷低減みたいなことにもつながるんじゃないかなと思ったんですけど、その辺りいかがでしょうか。
【矢橋委員】  すみません、短縮は、何の短縮とおっしゃいましたか。
【岸本委員】  メンテナンス期間ですね。
【矢橋委員】  そうですね、ここは運転予算次第というところもございますが、確かに余分に冷やさないといけないものが減るというのは、一般論としてはメンテナンスは当然軽くなる方向ですので、そちらのほうも期待はできると思います。
【岸本委員】  なぜそういうことを聞いたかというと、メンテナンス期間が短くなった分、運転時間が延びると、ユーザーにとってはとてもありがたい話なので、いろんな相乗効果が実際に運転していくと出ていくんじゃないかなと思いましたので、実際これは運転後になるとは思うんですけども、またそういうこともぜひ視野に入れていただきながら進めていただくといいんじゃないかなと思ったので、コメントさせていただきました。
【矢橋委員】  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。
【岸本委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  あと放射光を利用されている、山重委員は何かございますか。
【山重委員】  山重、よろしいでしょうか。
【小杉主査】  はい。
【山重委員】  矢橋さん、御説明ありがとうございました。矢橋さんに御説明いただいたように、我々かなり絞ったビームで実験したいというニーズもたくさんあるんですけども、一方で、先ほどちょっと弊社のイメージングのデータも出ておりましたけども、広い光を使いたいというニーズも割とございまして、これまでも光学系等で広げたようなビームをあえて使ったりということをさせていただいていたんですけども、その辺りもⅡになってからも活用させていただけるということでよろしいでしょうか。御助言お願いいたします。
【矢橋委員】  一番大きなビームが使えるのは、中尺の偏向磁石のビームラインというのがありまして、医学利用棟というところに行っているんですけども、実は既にそこはかなり手を入れ始めていまして、分光器をかなりバンド幅の広いものにして、従来より100倍明るいのが使えるようになったり、そういうことをしています。そこは非常に好評をいただいているんですが、そこについても当然、このアップグレードの後にも使えるように。ただし、これについては、先ほど申し上げた光軸が少し変わるというのがありまして、いろいろ加速器と議論しているのですが、きちんと物理的な制約の中に入るような設計にしていただくということで進めております。
 あと、ここ以外にも場合によっては、大きなビームというのは非常にニーズがあるというのは理解していますので、ほかの場所でもそういった可能性が出てくることはあると思います。ありがとうございます。
【山重委員】  ありがとうございます。期待しておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【小杉主査】  
 古川委員、いかがですか。何かございますか。
【古川委員】  ありがとうございます。私はSPring-8を使っているユーザーではないんですけれども、未来が明るいお話だというのはよく分かりましたので、ぜひ頑張っていただきたいと思っているんですが、2つ、少しお聞きしたいことがあります。
 1つは、造ってみて、明るくなってみないと分からないサイエンスというのがあるというのは分かったんですけれども、例えば100倍になるんだというと、新しくターゲットになっていくようなサイエンス領域というのが逆にあるんじゃないかなと思って、それを売りにできる、予算取りもそうですけれども、売りにできるような領域というのが何かあるかなというのがちょっとお話の中で気になりました。
 もう1点が、省エネの話がありまして、いろいろアイデアを出されてやっていると思うんですけど、想定値や計算値でいいので、どれくらい省エネできるかというのをお聞きしたいです。その省エネの効果で、先ほどのお話ではないですけれども、例えば運転サイクルを今と同じような形で行っていくのか、それが1回分増えるといったようなこともあるのかなと思ったので、1サイクル当たりの経費というのがどれくらい削減できるかをお聞きできるのであれば、ありがたいなと思いました。
【矢橋委員】  まず省エネ、今ちょうど出ていますので、このグラフ左端、ちょっと見にくいのですが、大体サイト全体で26メガワットというのは、これは実はSACLA入射する前の値で、少し古いものなんですが、それが大体14、13メガワットぐらい、ほぼ半減になります。したがって、この10メガワット以上というのは非常に大きな値ですので、かなりの効果が期待できます。
【古川委員】  この中に全部入っているんですね。
【矢橋委員】  そうです。これは加速器……。
【古川委員】  冷却とか。
【矢橋委員】  そうですね、冷却も入っています。
【古川委員】  分かりました。ありがとうございます。
【矢橋委員】  それで、売りのアプリケーション、もちろん想定していないわけではなくて、全てを想定できないという意味で申し上げたわけで、当然想定はございます。特に輝度に利いてくるのが、コヒーレンスを利用したアプリケーションというのが利いてきまして、例えば今、タイコグラフィーといって、超解像のイメージングみたいな技術があります。現状でも時間をかけると、トップ性能で、例えば数ナノメーターの分解能みたいなことが言われて、実際にSPring-8で確認されるわけですが、そのトップ性能を出すには非常に時間がかかります。場合によっては数日というオーダーがかかるわけですが、それが、例えば数十分、数分というところになると、ある意味ルーチンなナノ分析というのが非常にできるということになりますので、そういったところは当然のベースラインとして見込んではいますが、そういうことは当然最初にやるんですけども、恐らく二、三年やると、そこをベースにまた次のアイデアが出てきますので、そこからが本当の勝負になるのかなという気がしています。
【古川委員】  ありがとうございました。
【小杉主査】  その場合は輝度というよりは、コヒーレンスのことをしっかり表に出したほうがいいですよね。
【矢橋委員】  そうですね。
【小杉主査】  タイコグラフィーにはナノビームが必要だというわけでもないので、むしろコヒーレンスなので。
【矢橋委員】  そうですね、コヒーレントフラックスと言ったほうがいいと思います。
【小杉主査】  同じ試料へのドーズ量でも、コヒーレンスが上がれば、それだけスループットがよくなります。
 ほか、脇本委員、ございますか。
【脇本委員】  ありがとうございます。脇本です。大変分かりやすい説明ありがとうございます。
 私のほうでお伺いしたいのは、R6年度に予定されておられる、開発期間になりますかね……、技術実証か。最後の技術実証というのをR6でされるということかと理解したんですけれども、まずこの技術実証というところにある話というのは、何となく私がイメージしたのは、まずは試作するようなイメージなのかなと思ったんですけど、そういう意味では、何かこの1年で本当にクリアしなければいけない技術課題があるというよりは、実証に向けた試作というのがメインになってくるイメージなのかという点をお尋ねしたかったのと、あと、その後R7から整備・建設が始まるわけですが、ちょっと私、この辺、すみません、よく分からなかったのは、これはやっぱり蓄積リングを部分的に導入しながら運転は継続されるというイメージなんですか。その中で要は性能実証を進めながら入れていくという、そういうふうなプロセスなんでしょうか。
【矢橋委員】  ありがとうございます。まず最初の御質問は、まさにおっしゃるとおりで、試作をして、かつ単品の試作にとどまらず、アラインメント、精密調整も含めたところをしっかり確認して、量産化にグリーンライトをともすということをやります。
 それから、整備・建設期間ですが、これは部分的に直していくというのは、実はちょっとできなくて、一遍に止めて、一遍にやり替える必要があります。それが運転停止期間というところになっています。ただ、一遍にやるためには、事前に物を調達して、ある程度組み上げておきまして、この運転停止期間のときに、既存のトンネルの中にある加速器の磁石コンポーネントを全部出します。アンジュレーターを残して全部出して、その組み上げたものに置き換えるということをやります。そのための準備期間が、ここでいうと約2年半、量産期間がありますが、それを量産して組み上げるということを行います。
【脇本委員】  分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】  
 ほとんどの方は御質問、コメントされていますが、何か言い忘れたことはございますか。
 ちょっと私から。SPring-8には専用ラインという、他機関が設置しているラインがあるのですが、その辺りはどういう対応をすればいいかというのは、もう既にネゴシエーションみたいなことはやられているんでしょうか。
【矢橋委員】  そうですね、幾つかの専用施設の方からは、もう既にお問合せを。幾つかというか、かなりの専用施設からお問合せいただいておりまして、協議を始めているところです。
【小杉主査】  その場合の改造したり何か対応していかないといけないところは、やっぱり個別の専用ライン側で予算要求しながらやるということになるんでしょうか。
【矢橋委員】  基本的には、やはり資産をどこが持っているかということになりますので、専用施設が資産をお持ちの場合はそちらで対応いただくということになります。
【小杉主査】  分かりました。文科省でも違うセクターが所掌している機関の専用ビームラインはありますし、民間が持っている専用ビームラインもありますので、その辺りは、ぜひうまい形でつながっていくことをお願いしたいと思います。
【矢橋委員】  はい。
【小杉主査】  あと、ちょっと技術的に細かい質問なんですけど、ダンピングウィグラーというのは、ブルックヘブン研究所のNSLS-Ⅱでうまくいかなかった後の状況はどうなっているんですか。
【矢橋委員】  PETRAで今、かなりデザインはしっかりやったようで、最近はしっかり動いているということを聞いています。
【小杉主査】  PETRAでは動いている。
【矢橋委員】  はい。
【小杉主査】  じゃあ、ダンピングウィグラーを、入れないでも結構なエミッタンスですけど、基本的には100%入れるところまでできそうな計画にはなっているということですね。
【矢橋委員】  はい。
【小杉主査】  分かりました。
 それでは、ほかになければ、皆さんの意見も出尽くして、特に大きな、本質的なところで異議があるようなことはございませんでしたので、今回提案いただいた開発期間と想定性能の設定の考え方、計画は、基本的にはこれで問題ないということで了承いただいたということでよろしいでしょうか。ビームラインについてはかなり、60本ですか、それぐらいのビームラインがあって、個別の問題があるので、今後もいろいろ伺っていかないといけないところだとは思いますが、基本的に光源からしっかりやっていくところが重要でして、SPring-8の高度化は世界3極の中では少し遅れぎみではありますので、ぜひ高い性能を出して、新しいチャレンジもしていただきたいというのが研究者の要望だと思います。
 特にございませんでしたら、今回お示しいただいた計画が妥当であるということで、この小委員会としては認めたという形にしてよろしいでしょうか。
 それでは、異議なしということで、本委員会としては結論にしたいと思います。
 阪部委員、何かございますか。
【阪部委員】  異議は全くございませんが、この機会なので質問させていただきたいんですけども、例えば9ページの、世界のほかの施設、欧米、中国で比較したりとか、あるいはこういった技術というのは、世界中の同業者はこれぐらいの資料はみんなどこかで見たり、載っているわけでしょうか。どこまで機密でやっていることなのか、もう国際会議等で将来の計画とかで、こういうのはもうほとんど発表していることなんでしょうか。
【矢橋委員】  これは機密でやっていることはあんまりなくて、むしろ皆さんオープンに競争しているのが現状ですね。
【阪部委員】  ということは、このSPring-8-Ⅱのこういった要素技術は、もう海外の同業の人はみんな理解をしていて、いずれ自国にも同じような技術を導入して、さらにアップグレードということも考えられるわけですね。
【矢橋委員】  考えられますが、ただ、これはかなり大きな規模のアップグレードになりますので、もう先行してやってしまっているところは、じゃあこれで少し変えてというのはなかなか難しいと思います。後発がやることはもちろんあるんですが、そういう意味で既存施設のアップグレードに関しては、SPring-8は遅れているというのもありますので、これはここでいけるのかなと。
 一方で、新設になるとまた全然違う話ですが、これは予算等々もかなりの規模になってきますので、またちょっと別の話になるかと思います。ただ、これも当然、今の時点のということですので、10年、15年はいいと思うんですけど、20年、25年すると、また全然違う絵が出てきます。恐らく第5世代という話が出てくると思いますので、そこになると、また全く違う話。
【阪部委員】  賞味期間はというとおかしいけど、10年ぐらいと思っておいたらいいですか。
【矢橋委員】  もうちょっとあると思います。今のSPring-8も、結局97年から2020年ですので、20年ちょっとはトップを維持できたというのがあります。20年ぐらいと思っていただいたらと思います。
【阪部委員】  そういう意味で、この第5世代を念頭に、第4世代の段階で少しプラスアルファを付加しておけば、さらに次へつながるような要素になるのかなと。なので、それを含めて計画しておいたほうが将来性はあるのかなという印象を持ったものですから。
【矢橋委員】  ありがとうございます。恐らく第5世代でキーになるのが、これもまた先ほどから申し上げている長直線部ですね。長直線部の使い方というのが恐らくキーになって、今第4世代で垂直水平方向にビームを小さくするというのをやっていますが、第5世代は恐らく進行方向、いわゆるロンギテューディナルなこと、例えばFELでやっているように、電子モジュレーションをかけてビームを、レーザー増幅するようなことが恐らく重要になってくると思うんですが、それはやはり長直線部にレーザーを入れたり、いろんな技術が今も、もう少し低エネルギーのほうですけども、かなり研究が進んでいますので、そういったところをハードX線でできるかどうかというのが勝負になってくると思います。
【阪部委員】  分かりました。すみません、ちょっと欲張りで。
【矢橋委員】  いえいえ、ありがとうございます。
【小杉主査】  光源加速器の大きな流れは、第2世代から第3世代では、直線部のところを活かすようにしたのが第3世代、第4世代ではベンディングのところをいじって輝度を上げるということをやっていまして、その次の世代では多分、直線部に手を入れることになると思われます。大きなリングはそれだけ長直線部が持てますので、そういう意味ではSPring-8は非常に大きい、世界2番目かな。PETRAが一番大きいんでしたっけ。
【矢橋委員】  そうですね、PETRAはもともと衝突リングで設計されていますので、ちょっと違いますね。
【小杉主査】  そういう意味で、6GeVリングの中、そこに並んでいる表は全て6GeVリングですので、そういう中ではSPring-8は今のところトップの輝度を出せるようになりますけど、さらに次のフェーズで、直線部を活用した新たな光源はいずれ出てくるというのは想定はできます。6GeV以下のリングでは、まだまだエミッタンスを下げるリングはこれからも出ますので、6GeVの比較のところに6GeV以下のリングの性能を並べるとちょっと変なことになるので、あの図は6GeVリングの中での最先端をSPring-8が狙っているというところだと思います。
 それでは、皆さん異論がないということで、これで進めていただくようにお願いいたします。
 では、次は議題2として、NanoTerasuの運用期における評価指標についてということになっておりますので、こちらについても審議したいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
【内野補佐】  事務局、内野のほうから説明させていただきます。資料の2-1を御覧いただければと思います。
 NanoTerasuでございますけれども、令和6年度から運用期に入っていくということで、政策的にも運用期においてどういった指標を定めるかということの検討が必要になってきます。この指標というのはどういう使われ方をするかということですけれども、様々レイヤーはあります。例えば、我々行政のほうの行政の施策の評価という意味で言えば、政策評価であるとか、あとは行政事業レビューというものがございますし、それからQSTのように、独法のアクティビティーについて評価を行っている場合は独法評価ということなりますので、様々レイヤーがあって、それぞれ適切な指標を選んでいくということになります。もちろん政策評価をするときには有識者委員会にもかけますし、独法評価は別途、研究開発審議会というところの意見を聞くので、それぞれお座敷が用意されているところではございますけれども、やはり量子ビーム施設の有識者会議といいますと、この量子ビーム小委員会になりますので、御意見を伺いたいという趣旨で今回の議題に設定をされたということになります。
 これからNanoTerasuの運用期に当たって、どういった指標が適切だろうかというところになるんですが、やはりまずは、ほかの既存の施設がどういったものを設定しているかということと、あとNanoTerasuがどういう状況に置かれた施設なのかというところをやはり勘案する必要があるかと思います。
 まず資料の3ページ目、4ページ目を御覧いただきますと、既存の施設にどういった指標が設定されているかというものがございます。それぞれレイヤーごとに、共通しているものもあれば、違うものもあるんですが、大まかに分けると、やはりアクティビティーの面では論文数であるとか、あと特許の数、それから共同研究とか協定の生まれた数とか、そういったものが設定されているところであります。
 他方、戻っていただきますと2ページ目には、1月に開催されましたNanoTerasuの有識者会議のほうで、QST提出資料の一部になりますけれども、この一番上にエコシステムと書いてあるように、NanoTerasuは官民地域パートナーシップによって整備されて、かつ大学のキャンパスの中に設置をされているということで、産学官のアクターがエコシステムを糾合できるということで、単に論文数だけとか、単に特許数だけとかでは、恐らくこのNanoTerasuという施設のアクティビティーを、あるいはポテンシャルを100%評価するには足りないんじゃないかというふうに考えています。
 こういった状況も踏まえまして、アウトプットとアウトカム、すなわちどれだけ仕事をしたかによって生まれるもので、その仕事をして、我々がアクティビティーを生んだ結果どういった効果が出るかというアウトカム、これら考えられるものというものを1ページ目にまとめさせていただいています。
 やはり国からのリソースを投入した分を評価するというのが、基本的にはこういった政策評価では適切な枠組みですので、基本的には共用、すなわちQSTないし登録機関という公費が入っている部分のアウトプットとアウトカム指標にしています。ただ、地域パートナーの活動も含めて、施設全体というのは、今後引き続き協議をしていく必要があるのかなと思っています。
 アウトプットの中身を見ていただきますと、まずは年間運転時間とか、あとは利用件数とか、産業界の利用件数とか、そういったこれまでのトラッドなものについても入っているかと思います。アウトカム指標、右側のほうですけれども、論文の成果とか成果の知財化というのが入っているんですが、例えばスタートアップの起業数であるとか、産学連携プロジェクトの創出指数とか、それこそNanoTerasuを核にどういった産学連携プロジェクトに発展していったか、あるいはスタートアップが起業したかという話。それから、ホームページアクセス数とかSNSのフォロワー数とかコンテンツのアクセス数のように、一般国民に対する認知度というものもアウトカムとして測れるということで書いております。国際シンポジウムなども東北大を中心に実施されておりますので、そこでNanoTerasuの関係の招待があったりとかということも、アウトプット指標、それからアウトカム指標のところに考えられるかというふうに考えています。
 その1個下の欄に、今後検討が必要なものということで、現時点で具体化が進められていないけれども、今後、例えば5年周期の中間評価などの際にこういったものもあったらいいのではないかということで、施設全体の指標であるとか、NanoTerasuによってどういった経済効果が生まれたかとか、あとは人材の観点です。それこそ人材がどれぐらい育ったかというものは、なかなかアウトカムとして、施設として設定するのは難しいところでありますけれども、こういったものも今後将来的に具体化できればいいのかなと思っているところであります。
 これらアウトプット指標、アウトカム指標を、それぞれ独法評価とか行政事業レビューとか、今後令和6年度に向けて様々なステージで設定をしていくわけですけれども、それを設定していくに当たり、ぜひ御意見をいただきたいと思っております。
 事務局からの御説明は以上でございます。
【小杉主査】  御説明ありがとうございました。本件につきまして、質問、御意見等ございますでしょうか。特に共用施設のSPring-8とかJ-PARCから見て、似ているところとか違うところとかあると思うんですが、何かございますか。
【唯委員】  唯ですけど、よろしいでしょうか。
【小杉主査】  唯委員、お願いします。
【唯委員】  共用利用ということが中核に今据えている形での評価指標ということで、国のお金が入っているという点で非常にその点はよく理解できるんですけれども、産学連携を含めた大学の活用の形態というのも大分大きく変わってきて、いわゆるコアリションの部分というところで、いろんな形の成果の出し方というのがこれから発展していくのではないかなというふうに思っています。
 その意味で、例えば人材育成もそうですし、産学連携などという観点からいくと、共用枠だけにあえて絞った評価をするところというのは、全体の枠としては、コアリションも結構枠があると思いますので、これは全体の大きな評価としては妥当な軸になるというふうにお考えでしょうか。
【小杉主査】  事務局、お願いします。
【内野補佐】  事務局でございます。おっしゃるとおりだと思っていて、もちろんNanoTerasu全体のアクティビティーの評価という意味でいうと、全体で見る必要があるんですが、まずはこういった指標群をカウントしていくところについては、まずはQSTが作業としては行うことになるので、一旦はそれを置いていますけれども、今後、その全体、パートナー側の協力も得つつ、こういった施設全体として評価できるような形にしていくのが必要だと思っています。
【唯委員】  今、私が大学にいて非常に強く感じるのが、論文とか、いわゆる従来型の成果ということで研究の成果を評価される枠組みというのも十分できているというふうに思うんですけれども、いろんな社会課題であるとか、これから産業利用につなげていくときに、やはり若い人たちがそこに入って自分の実質的な成果として出していくという指標が大学にも少し欠けている点があって、この辺り新しい指標というのがこのNanoTerasuを通じて本当は出てくると、いろんな分野の人がここに入って伸びていく、一つの起爆剤になるかというふうに思いますので、またそういった点も御検討いただければと思っています。
 以上です。
【内野補佐】  ありがとうございます。
【小杉主査】  今のに関連して、SPring-8やJ-PARCから何かありますか。
【脇本委員】  J-PARCの脇本です。すみません、今の御意見と関連ということでもないんですが、共用のほうに今回評価指標を設定されるということで、以前から伺っているところでは、この共用のところというのは、どちらかというと幅広く基盤研究を涵養するようなところになるというふうに理解しておったわけですけれども、その際に、このアウトカム指標の中でちょっと気になったのは、スタートアップ起業数という、かなり突っ込んだ指標が設定されているような気がいたしました。
 実際にそういった共用枠の中で、もちろんそこは目指していくべきものであることには全く異議はないんですけれども、それをアウトカムの指標として設定するところまでの利用を実際に見込んでいるのかどうかという点はいかがでしょうか。
【小杉主査】  事務局、お願いします。
【内野補佐】  ここはかなり難しいというか、ハードルの高い部分だというふうに思っていますが、ここはもともとNanoTerasuの有識者会議でも提案されて、QSTから提案を受けていたものなので、もしあるんだったらやっぱり設定をするとよろしいのではないかなと思っているんですが、この辺、QST、いかがですか。内海センター長、何か。
【内海委員】  一通り皆さんからの意見、コメントが出てから、最後にまとめてお話しさせていただくのがいいかなと思っていたんですが、今御質問が出たのでスタートアップのところのお話を先にすると、有識者会議のときには、共用ビームラインの中の話と、コアリションビームラインを含めてNanoTerasu全体の話をQSTが代表して発言している話がかなりごっちゃになっているところがあります。今見えているこの資料については、まずは共用のほうを議論しましょうということでここに出ているという理解を私はしています。その場合、共用ビームラインの中だけでスタートアップの数を重要ポイントの3番目ぐらいのところに出されるというのは違和感があります。将来は分かりませんけれど、少なくとも今3本しかビームラインがない段階、かつコアリションとの相対的な位置づけではありますけれど、共用ビームラインにおいては、どちらかというと基礎的な学術研究にウエートがあるという状態の中では、このスタートアップの起業数が重要なアウトカムとして、当初から要求されるのはかなり厳しいと感じます。
 将来的にはこういうところも当然共用の中で出ていくべきだろうという話は十分に理解しております。一方、これも議論があるんですけど、スタートアップの起業数というのは、NanoTerasuを使ったデータが出たからスタートアップ起業が出る、そういう方向もひょっとしたらあるかもしれませんけど、むしろ現実は逆で、何かの技術を持ったスタートアップ起業みたいな小さな会社、5,000万円のコアリション加入金を払えない小さな企業が、共用ビームラインの利用の仕組みを使って成果を出されるということが多くなるのではないかというのが、私のスタートアップに関しての認識でございます。
 一通り委員の方々から御意見いただいて、最後に全体を通じてのコメントをさせていただけたらありがたいなと思っております。よろしくお願いします。
【脇本委員】  分かりました。状況理解しました。ありがとうございます。そういった意味では、どういったアウトカムにするかというところがあるんですけど、産業界の利用という観点で言うと、隣のアウトプットのところに成果占有利用の利用件数・利用料金収入というところがあるんですけれども、施設側はもちろんそういうものをあっせんして、頑張って取り込んでいくという活動ないしはお試し利用とか、そういうふうなところをどんどん取り込んでいくというところはあると思うんですけれども、最後は産業利用の指標というものが、やっぱりここの成果占有利用に集約されていくような気が私はしていて、どちらかというと、そちらがアウトカムになってもいいのかなというふうな印象は持っていますというところで、そこはいろいろ議論があるところかとは思いますが、すみません、ちょっと私見を述べさせていただきました。
 以上です。ありがとうございました。
【小杉主査】  ありがとうございます。
 矢橋委員、SPring-8側から見て何かコメントございますか。
【矢橋委員】  ありがとうございます。例えばホームページアクセス数など、あまりこういうのは見たことがないものですが、非常にこういったところも含めてやっていくというのは面白い取組だと思いました。ただ、やはり評価指標も、これが固定化して、何のためにやっているか分からなくなるというのが往々にしてありますので、この評価指標をあるインターバルで見直しますみたいなところも含めて、何かインプリメントされるといいのかなという気がしました。
 以上です。
【小杉主査】  事務局、今回設定するのは何年間使われるものですか。
【内野補佐】  これはレイヤーによって様々変わってきます。例えば独法評価ですと、それぞれの法人の中長期目標期間中になっていて、基本は7年とか5年とかになりますけれども、例えば行政事業レビューでしたら毎年ローリングがございますし、政策評価についても毎年ローリングをしながらやっているので、基本的には固定化するようなものではないというふうに思っています。
【小杉主査】  じゃあ少し、数年見ながら、この評価軸はあまり使えないということが分かれば、また見直すというのはあり得るということですね。
【内野補佐】  そうですね。ただやはり、こういった事務レベルで設定をしていると結構思考停止に陥りやすくて、前の年に設定されているものをこのまま使えばいいんだというので、ずっとそれが固定化してしまうというのはやはりよろしくないので、こういった有識者会議で議論をしていくというのは、やっぱり必要なことなのかなと思っているところです。
【小杉主査】  全般的に言えるのは、まだこれから立ち上げなので、この数値が見えてくるのは数年先というのを今の段階から入れると、何かちょっと、そちらを目指してやらないといけないような意識を現場に与えるので、その辺は抑えてもらったほうがいいかなという一般的な意見はあると思いますが。ほかに何かございますか。
 この辺、大学でも法人評価に関わっている人は、非常にセンシティブになるんですが、あまり関わっていない人は何か分からないところあるかと思いますが。
【高橋委員】  すみません、高橋です。産業利用のところで少しコメントさせていただきますけれども、常々申し上げているとおり、産業利用、成果占有利用させていただいているにもかかわらず、なかなかその成果を公に出せることが少なく、成果という意味で目に見える形にできないことが多く、非常に心苦しく感じております。
 その中で、これも以前から申し上げていることなんですけども、施設などが高度化されて効率がよくなってくればくるほど、利用料金というか、単位時間で取れるデータの数が増えてきて、効率よく実験ができればできるほど、利用件数ですとか利用時間とか利用料金というものが減ってきてしまうという矛盾を感じていまして、なので、例えばの話で言うと、単位時間当たりに吐き出されるデータの量、バイト数ですか、そういったところがアウトプットのある数値化の目安になると、効率化されているという時間経過、ビームラインの立ち上げからだんだん効率化が進んでいるとか、逆にあまり使われなくなっているとか、そういったところがあらわに見えてしまうのかなというような印象を少し持ちました。
【小杉主査】  非常に重要なポイントですね。
【高橋委員】  はい。効率化していただいたのに、それが逆効果に働くのは非常にもったいないと思っています。
【小杉主査】  じゃあその辺も少し検討していただくと。
 ほかにございませんか。
 森委員、お願いします。
【森委員】  これ、まだ初期の段階で、これから立ち上げた後だとは思うのですが、やはり世界的にビジブルな軟X線の施設を造った中で、世界の中でこの施設がどのような形でネットワークをつくりながら発展していくかという視点はあるのかと感じます。国際シンポジウムの開催数、参加者数とか、国際的な交流はそれだけに限らず、この施設を利用して世界の中でビジブルになって牽引していくような、そういう外向きの方向性というものはこの中には入ってこないのかというのが質問です。
【小杉主査】  事務局いかがですか。
【内野補佐】  現状我々のほうで考えられたものとして、国際シンポジウムであるとか、あとは海外の研究者の利用数とかというものを入れていますけれども、いただいたコメントを踏まえて、どういったものが考えられるのかというのを検討していきたいと思っています。
【森委員】  利用数、内訳を含むという、そこには書いてあるのですね。
【内野補佐】  そうですね。
【森委員】  分かりました。昨年東北大学と放射光サミットを開催され、世界の放射光施設の長がハイブリッドで集まり、今後、どのように放射光科学を進めていくのかというような話が非常に印象的だったので、その方向性も含めてと思いました。ありがとうございます。
【小杉主査】  ほかにございませんか。
 それでは、内海委員、最後にちょっと。評価を受ける立場から。
【内海委員】  今、唯委員がおっしゃっていただいたことにまさに直結しているんですけれど、NanoTerasuは官民地域パートナーシップによって、PhoSICという一般財団法人を作り、コアリションという制度で運用を行うということが最大の特徴の一つです。産業利用とか産学連携、いろんな言い方ありますけれど、放射光の産業ニーズに対して新しいスキームを作るためにPhoSICという組織を作り、そこが中心となってコアリションビームラインの整備・運用をやっていただくことになっています。改正された共用法上の立てつけでは、コアリションビームラインは専用ビームラインのカテゴリーに入ってしまって、国の投資はダイレクトにそこには入っていないというのは内野補佐がおっしゃっているとおりなんですけれども、NanoTerasu全体を見る場合は、特に産業利用という非常に大きな観点から見る場合、コアリションビームラインを抜きにしては語れないというところがあります。
 例えばこういう評価委員会のような場に、QSTと並んでPhoSICさんを呼んで、PhoSICの業務内容を評価するというようなことがそもそもできるのかどうか、というところにもよってくるんだと思いますが、QSTがNanoTerasu全体の代表として、PhoSICの実施されている中身の詳細について、全てのデータをQSTが示して評価を受けるということは、かなり難しいのではないかという事情もございます。
また、別の話として、先ほど高橋委員がおっしゃっていただいたように、産業利用というのはそもそも、どれだけやった、どのような成果が上がったという実績を定量的なデータとして極めて出しにくいという本質的な部分もあります。つまり産業の利用というのをそもそもどういう指標で評価できるのかという根本的な問題です。この問題と、先ほど申し上げたNanoTerasu全体の評価や指標の設定において、コアリションのところをどう考えていくのかという2点に関しては、まだ明確な結論が私のほうにもないので、そういう問題があるよということを今回この委員会でも委員の方々に御認識いただくとともに、今後引き続き文科省と協議をさせていただければありがたいというのが私の立場でございます。
【小杉主査】  いずれにしても今日、この項目を入れるとか消すとかいう議論ではなく、いただいた意見を踏まえて、事務局のほうでもう一回ブラッシュアップしていただくということだと思いますので、いろいろ御意見いただいたこと、ありがとうございました。そういう取りまとめで、事務局、よろしいですよね。
【内野補佐】  大丈夫です。あとはこちらのほうで、皆さんの御意見を踏まえて検討を進めていくということになります。
【小杉主査】  よろしくお願いいたします。
【内海委員】  内野補佐、引き続きよろしくお願い申し上げます。
【小杉主査】  評価軸で漏れているものがあれば、また議論するために、この場に戻ってくると思います。
 では、続きまして、議題3のその他ということになっておりますけれど、事務局から何かございませんでしょうか。
【林補佐】  事務局の林です。次回の量子ビーム利用推進小委員会につきましては、10月中の開催を見込んでおります。追って委員の皆様に日程調整のお願いをさせていただくとともに、開催方法についても改めて御連絡させていただきます。
 また、本日、別用務で出席かないませんでした研究環境課長の古田でございますけれども、異動のため9月より農工大の学長特別補佐となっております。古田に代わりましてですけれども、前期及び今期につきまして御指導いただきました委員の皆様におかれましては、大変ありがとうございました。後任につきましては、次回の量子ビーム利用推進小委員会にて御挨拶させていただく予定となっております。
 最後に、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にメールにて御確認いただいた後、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただきます。
 事務局からは以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。今日は少し遅めの時間帯になりましたけれど、6時過ぎになりましたが、以上をもちまして第12期第49回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会したいと思います。本日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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