量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第48回) 議事録

1.日時

令和5年7月20日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省内15階局会議室及びオンラインのハイブリッド形式

3.議題

  1. 主査代理の指名について(非公開)
  2. 議事運営について(非公開)
  3. 量子ビーム利用推進小委員会における調査検討事項について
  4. SPring-8の高度化について
  5. その他

4.出席者

委員

小杉主査、内海委員、大竹委員、岸本委員、阪部委員、高橋委員、高原委員、古川委員、矢橋委員、山重委員、脇本委員

文部科学省

古田研究環境課長、林研究環境課課長補佐、内野研究環境課課長補佐

オブザーバー

理化学研究所放射光科学研究センター石川センター長

5.議事録

【小杉主査】  それでは、主査代理の指名が終わりましたので、ここから小委員会を公開で開催いたします。
 まず、各委員の御挨拶をいただくということで、まず、私から御挨拶申し上げます。前の期に引き続き、今回も主査を務めさせていただきます。委員の皆様のいろいろな方面からの意見というのは非常に重要で、この委員会の報告等にもまとまってきますので、よろしくお願いします。今期は幸い対面から始めることができましたので、このままずっと対面で続くことを期待しております。今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは、新しく主査代理ということで、高原主査代理より一言御挨拶をお願いいたします。
【高原主査代理】  高原でございます。先ほど主査代理に御指名いただきました。主査代理として、この会議をできるだけサポートできるように努力したいと思います。いきなり最初から出張が入りまして、オンラインでの参加となりますけれども、今期もどうぞよろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしくお願いいたします。
 では、続きまして、その他の委員のお名前を一人ずつアイウエオ順で御紹介させていただきますので、それぞれ一言ずつ御挨拶いただければと存じます。
 それでは、内海委員、お願いします。
【内海委員】  量研の次世代放射光施設整備開発センターの内海でございます。NanoTerasuをやらせていただいております。この委員会ではNanoTerasu建設の当初からずっと大変お世話になっておりますが、何とか来年度、運用開始のめどがつきつつあるというところで、皆さんの御尽力と御協力に感謝申し上げる次第です。引き続きよろしくお願い申し上げます。
【小杉主査】  よろしくお願いいたします。
 それでは、大竹委員、お願いいたします。
【大竹委員】  理化学研究所の大竹でございます。理化学研究所で加速器ベースの小型中性子源の開発および運用をしてございます。また、この4月より日本中性子科学会の会長も拝命いたしまして、中性子、また、広く量子ビームの連携といった視点でも活動してございますので、本委員会でもよろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしくお願いします。
 それでは、岸本委員、お願いいたします。
【岸本委員】  住友ゴムの岸本と申します。私は前期に続いて、この委員会に参加させていただいております。今後、学術のさらなる発展と産業の発展との相補的な両輪を回していくということがますます重要になってくると思います。そういった視点でいろいろと議論に参加させていただければと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしくお願いいたします。
 それでは、阪部委員、お願いいたします。
【阪部委員】  阪部でございます。委員リストでは所属が京都大学化学研究所となっておりますけど、現在、併せて学際融合教育研究推進センターの特任教授を務めております。専門は高強度レーザーと、それによる量子ビーム発生ということで、今後、様々な量子ビームの融合や連携が重要になってくるかと思いますので、この委員会でいろいろなことを勉強させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしくお願いいたします。
 では、高橋委員、お願いします。
【高橋委員】  第一三共RDノバーレ株式会社合成化学研究部、高橋と申します。私自身は構造生物を専門として、ずっと仕事をしてきておりまして、前回からお世話になっております。産業界からいろいろな使いやすさなどを考えて意見が申し上げられればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしくお願いいたします。
 それでは、古川委員、お願いいたします。
【古川委員】  お茶の水女子大学から参加させていただいております古川と申します。私は大学の立場から、若手育成などについても意見ができるかなと思っております。専門というか、やっていることは、物理、物性化学、マテリアルサイエンス、中性子散乱を主に使わせていただいております。よろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしくお願いいたします。
 それでは、矢橋委員、お願いします。
【矢橋委員】  理化学研究所放射光科学研究センターの矢橋と申します。実は、この委員会は何度かSPring-8、SACLAのプレゼンをさせていただきましたが、今回、初めて委員として参加させていただくことになりました。今後、SPring-8の高度化の議論がなされると伺っておりますので、ぜひどうぞよろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしくお願いいたします。
 次は、オンラインで、山重委員、お願いいたします。
【山重委員】  トヨタ自動車の山重と申します。私は、量子ビームの分析の窓口をさせてもらっております。今後、自動車の電動化に向けて、この量子ビームには非常に期待されておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしくお願いします。
 それでは、脇本委員、お願いいたします。
【脇本委員】  J-PARCセンターの副センター長をやっております、脇本です。今期から、この量子ビーム小委員会の委員をさせていただくことになりました。こういった委員会の委員は、今回初めて経験させていただくということで、いろいろなことを勉強させていただきながら、施設側の立場で様々な利用の促進、さらには他施設の連携といったところを様々議論できればと思っております。よろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしくお願いいたします。
 今日の出席者は、現地が9人、オンラインが2人ということで、3人の方が欠席されており、委員の表にありますように、石坂委員、唯委員、森委員が欠席です。ただ、唯委員は途中からオンラインで入られる可能性があるということをお伺いしております。
 それから今回は、議題4で、SPring-8の高度化について、御紹介いただく予定ですので、理化学研究所放射光科学研究センターの石川センター長にも出席いただいております。
 それでは、議題2に移らせていただきます。本小委員会の運営規則等について事務局より説明いただきます。よろしくお願いいたします。
【林補佐】  事務局より御説明いたします。小委員会の運営に必要な事項のうち、科学技術・学術審議会令、科学技術・学術審議会運営規則、研究計画・評価分科会運営規則及び量子科学技術委員会運営規則に定められていない事項につきましては、小委員会の運営規則として定めておく必要がございます。
 資料1-2及び資料1-3を御覧ください。今回の修正点につきまして御説明いたします。
 ウェブ会議システムを利用した会議の出席につきまして、これまでも規定はございましたが、今回、規定に改めて明記させていただいているところでございます。こちらに記載の内容につきましては、科学技術・学術審議会の運営規則に同様の事項が規定されておりまして、そちらに合わせて、今回修正させていただいているところでございます。
 また、資料1-3につきましては、文部科学省の組織改編に伴いまして、担当となる課の名前が修正ございましたので、そちらを修正させていただいているところでございます。
 事務局からは以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、小委員会の運営規則等、変更がありますけれど、特に内容的に問題ないかと思いますので、よろしいでしょうかね。
(「異議なし」の声あり)
【小杉主査】  それでは、異議なしということで規則を定めることにしたいと思います。
 それでは、次の議題です。議題3、量子ビーム利用推進小委員会における調査検討についてということで、こちらを審議したいと思います。
 事務局の説明を聞いた後、皆さんから御意見等いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、事務局、お願いいたします。
【林補佐】  事務局の林から、まず説明させていただきます。資料2-1と資料2-2を御用意しておりまして、資料2-2に今期の主な検討事項の案を記載させていただいておりますけれども、まず、その検討に当たりまして、現在の量子ビーム関連政策の動向についてということで、資料2-1を御説明させていただきます。
 では、資料2-1につきまして、まず3ページ目を御覧ください。3ページ目、先端研究設備、施設・設備の整備、共用というところでございまして、研究開発の活動においては、研究開発プロジェクトとともに、それを支える研究開発基盤が車の両輪であり、大学、独立行政法人等において国費により整備された研究開発基盤は、公共財であり、最大限の活用が必須であると考えております。
 そのため、こちらに書かせていただいているような形で支援が行われておりまして、主に3つのフェーズ、ピンクと緑と青の部分でございますけれども、ピンクの部分につきましては、共用促進法に基づいて、指定された施設について、全国的な共用を前提に整備運用を行っているものとなってございます。また、緑の部分につきましては、国内有数の大型研究施設・設備につきましても、各機関が既に所有しているものについてネットワーク化し、外部共用するような措置を行っているところでございます。また、青い部分につきましては、各研究室等で分散管理されてきた研究設備・機器につきましても、また別の事業で支援を行っていくというようなところでございます。こうした中で、特に量子ビームについては、このピンクの部分にかかるような形で支援が行われているところとなってございます。
 続いて、4ページ目は予算ですので割愛させていただいて、次に飛ばさせていただきます。
 5ページ目につきましては、先ほど申し上げたとおり、共用促進法に指定されている施設の比較となってございまして、皆様、既に御存じのところもあるかと思いますけれども、NanoTerasu、SPring-8、SACLA、J-PARCというところを記載させていただいております。
 主な特徴といたしましては、NanoTerasuについては、高輝度の軟X線というビームを使っておりまして、物質表面に敏感・物質の電子状態や化学状態の解析に強み。SPring-8は、高輝度の硬X線を使っておりまして、物質内部まで透過・原子配列や結晶構造の解析に強み。SACLAにつきましては、高輝度のパルスX線レーザーを使っておりまして、化学反応や細胞反応等の超高速動態変化の瞬時計測・分析に強み。また、J-PARCにつきましては、大強度の中性子線を使うことで、水素等の軽元素を含む物質構造解析や磁気構造解析、原子、分子の運動状態の解析に強みというところが挙げられてございます。
 次の6ページ目につきましては、具体の利用例ですので、割愛させていただきます。
 続いて、7ページ目から予算の資料となってございまして、令和5年度の予算額及び令和4年度の補正予算額を記載させていただいております。NanoTerasuにつきましては令和5年度予算額として、おおよそ29億7,800万円が措置されているところでございまして、また、こちらの個別の説明については後ほどございます。
 8ページ目のSPring-8につきましては、令和5年度予算額といたしまして、おおよそ95億円が措置されておりますとともに、また、補正予算において、電気代高騰の影響もある中、31億円程度が措置されているところでございます。
 また、次のページでございますけれども、SACLAでございまして、こちら令和5年度予算額として69億円が措置されているところでございます。こちらも補正予算が一部措置されているところでございます。
 また、その次のページでございますけれども、J-PARCの整備・共用というところで、こちらは令和5年度の109億円の予算とともに、令和4年度の補正予算として32億円が措置されているところでございます。
 また、その次のページでございますけれども、先端研究基盤共用促進事業といたしまして、こちらは法律に位置づけられていないような施設ではございますけれども、それぞれ国内有数の施設や大学において、これまで個々、ばらばらに使われてきた設備などをコアファシリティとして位置づけることで共用を推進していく事業というものも研究環境課で所管しておりまして、2020年度、21年度から、幾つかの機関が指定されて、共用が促進されているところでございます。
 また、その次のページでございますけれども、文部科学省のほうで、研究設備・機器の共用推進に向けたガイドラインについても策定しておりまして、その中で全ての研究者がいつでもアクセスできる共用システムの構築を目指すというところで、これまで研究者が必ずしも必要な設備・機器にアクセスできていないという状況を解決するために、ガイドラインにおいては、経営戦略に共用推進を明確に位置づけることや、「チーム共用」の重要性、「戦略的設備整備・運用計画」を策定するといった基本的な考え方に基づき、限りある資源の効果的な活用、外部連携の発展、効率的な管理・運用というメリットがあることも意識していただきながら共用を推進していただくというところをガイドラインとして定めているところでございます。
 また、その次のページにございますとおり、その際には財務の観点からの利用料金の設定ですとか、人材の観点から技術職員の活躍といったところについても記載させていただいているところでございます。
 続いて、量子ビーム関連の最近の動向ということで御説明申し上げます。
 15ページでございますけれども、こちらは先ほど申し上げましたNanoTerasuについてです。こちらは御承知の方もいらっしゃるかと思いますけれども、我が国の研究力と生産性向上に貢献するという観点から、3GeV高輝度放射光施設、NanoTerasuを官民地域パートナーシップの役割分担に基づきまして、着実に整備を進めているところでございます。こちら、国側の運用主体としては、量子科学技術研究開発機構、QSTが、また、パートナー側としては、一般財団法人光科学イノベーションセンター(PhoSIC)、宮城県、仙台市、東北大学、東北経済連合会というところとなってございまして、東北大学の青葉山新キャンパスに整備が行われているところでございます。
 整備費用の概算総額としては約380億円というところでございますけれども、このうち、国の分担は約200億円で、パートナー側としては約180億円を分担して、下の図にございますとおり、それぞれの加速器、ビームライン、基本建屋、整備用地について分担した上で整備が行われてきているところでございます。こちら、2024年度から運用開始を予定しているところでございます。
 この運用開始に向けて、令和4年8月から、利活用の在り方に関する有識者会議を立ち上げて、計7回の議論を行ってまいりまして、今年の2月14日に報告書が取りまとめられているところでございます。本体につきましては、参考資料1-8としてつけておりますので、お時間のある際に御確認いただければと思いますが、ポイントといたしましては、NanoTerasuは複数の主体が運営に参画するような形でございますので、まず目指すべきビジョンを共有しつつ、施設運営におけるパーパス、こちらは「産学官のアクターを惹き付ける魅力的な施設でありつづけること」というところを設定しているとともに、安全管理・情報セキュリティ、ブランディング、マーケティングといった経営の観点も含め、一元的な対応ができるようなオーケストレーション体制の確立が最重要事項であるということが指摘されてございます。
 また、成果専有に係る利用料金につきましては、先ほど御説明いたしました共用ガイドラインを踏まえ、人件費、光熱水費等の費用を踏まえて合理的に設定するとともに、電気代高騰等の考え方をあらかじめ整理しておくことが必要とされております。
 利用制度につきましても、今後、ユーザーニーズに基づいて柔軟に設定するとともに、学生・若手研究者やスタートアップ等の利用メニューが必要というところが指摘されており、産業界や利用者の先を見越したエコシステムレベルでの設計が重要であるということ、QST、PhoSIC、東北大学、宮城県、仙台市等、それぞれの強みを生かしたサービスの展開が必要であるということが指摘されておりまして、その他、データ利活用環境の共用開始までの整備や、戦略的な広報、若手・女性含む人材の観点について必要な取組の整理というところがポイントとして挙げさせていただいているところでございます。
 こうした有識者会議等も踏まえまして、17ページにございますとおり、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律が、2023年5月25日に全会一致で成立しており、NanoTerasuが特定放射光施設に位置づけられ、法律に基づく運用が2024年4月1日から可能となってございます。
 こちら、図にございますとおり、ここまで説明を割愛しておりましたが、共用促進法に基づく特定先端大型研究施設の共用の枠組みといたしましては、施設設置者でございます施設側とともに、登録施設利用促進機関が連携を行っていくことで、公正な利用者の選定や利用支援が行われるというような仕組みとなってございます。NanoTerasuもこちらの枠組みに基づいて今後、運用が行われていくこととなっております。
 また、最後、18ページですけれども、NanoTerasu以外のほかの特定先端大型研究施設、特にSPring-8につきましては、共用開始が1997年というところで、非常に長きの期間が既に経過している中で、世界的にはほかの放射光施設は第4世代に向けた整備が進んでいることから、第3世代の放射光施設であるSpring-8においても、蓄積リング、偏光磁石、電源系等の構成要素を今後、置き換えていくような高度化開発を実施することが必要ではないか。また、これにより、SPring-8の場合ですと、100倍以上の明るさを実現し、世界一の性能を持つ硬X線分野の放射光施設として研究者等への共用を実施。国際頭脳循環の中心となるとともに、我が国発のイノベーション創出に貢献していくことが必要ではないかということを記載させていただいております。
 次のページからは参考資料となっておりますので、御覧いただければと思います。
 こうした現在の量子ビーム関連政策の動向を踏まえまして、資料2-2に進ませていただきます。第12期の科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会における主な検討事項の案として事務局のほうで取りまとめさせていただいたものとなっております。
 具体的には今期の主な検討事項として、最後申し上げましたとおり、SPring-8の高度化について、また、この後、御説明させていただきますけれども、NanoTerasuにつきましても、今後、さらに共用ビームラインを整備していくということについて、また、SPring-8、SACLA、J-PARCの中間評価ということで、こちらは5年に一度程度のペースで行われておりまして、こちらについても議論が必要ではないかと考えております。
 1点、J-PARCが括弧書きになっておりますのは、J-PARCの中間評価は別の枠組みとして行われておりますので、量子ビーム利用推進小委員会に対しては、報告といったような形になるかと考えております。
 また、量子ビーム施設間の連携につきましても、前期において、マルチビームや各施設の制度設計、小規模施設の観点、評価指標の検討等、御指摘がございましたので、そういったところも検討事項として挙げられると考えてございます。
 具体のスケジュールといたしましては、予定でございますけども、下にございますとおり、第1回、今回、主査代理の指名、議事運営について及び、現在お話しております検討事項について、また、SPring-8の高度化について。第2回においては、SPring-8の高度化についてとNanoTerasuの運用期における評価指標について。第3回では、SPring-8の高度化について。第4回、年明け以降、J-PARCの中間評価の御報告とSPring-8、SACLAの中間評価フォローアップ、NanoTerasuの今後の共用ビームラインの整備について等を御議論させていただき、また、来年度におきまして、NanoTerasuの今後の共用ビームラインの整備について、SPring-8、SACLAの中間評価、J-PARCの中間評価フォローアップ及び量子ビーム施設間の連携等について、御議論、検討させていただければと考えているというところでございます。
 次のページにつきましては、参考として、前期における審議の内容をつけさせていただいてございます。
 また、最後に、NanoTerasuの今後の共用ビームラインの整備につきまして、担当の内野から御説明させていただければと思います。
【内野補佐】  内野でございます。NanoTerasuの共用ビームラインの整備の部分だけになって恐縮ですけれども、参考資料をつけさせていただきますので、少し簡単に紹介させていただければと思っています。
 NanoTerasuは今、整備最終年度でして、来年の4月から運用が開始されます。もちろん、法律上の共用が可能になるということで、実際にユーザーが使い始める時期というのはもう少し遅くなることになろうかと思いますけれども、来年から運用が始まるわけですが、まだビームラインが28本中10本しか設置されていないということで、残り18本の有効利用の在り方であるとか、そういったことを検討する必要があるということです。実際、共用法の審議を行ったときも、国会から、計画的に検討を進めるようにという御指摘もいただきましたので、今後検討していく必要があるところであります。
 量研機構からは、実は今年1月の時点で、こういったことをやりたいと思っているが、具体については、今後、量子ビーム利用推進小委員会、この委員会で御議論させていただきたいですというような資料がNanoTerasuの有識者会議で出されています。それが右下の将来計画の方向性ということで、軟X線からテンダーX線の領域をターゲットとしたものの提案がなされています。これを第三者、有識者の目から見て、また国としてどうかということについて、この委員会で御議論いただき、さらに、パートナー側も整備計画というのを今、検討していますので、それらとすり合わせるような形で検討が必要ではないかと思っています。
 今後の予定ということで、来年の春頃、令和7年度の概算要求を見据えて、具体の中身、スペックであるとか、どういった分野を狙っていくべきかといったことについて、この委員会でぜひ御議論させていただきたいと思っているところでございます。
 想定スケジュールとしては、来年になってしまいますけれども、1月、2月頃から検討状況を聞いて、来年の春頃には議論して、設備計画を取りまとめていくということを考えています。ただ、地域パートナーは民間ですので、国がどうこう言える立場にないというところが注意点です。ですので、地域パートナー側の状況は聞くわけですが、こういうふうにすべきというような提言と比べると少し、強制力がないような形になりますけども、意見があれば渡すことにはなりますが、そこはちょっと気を遣う必要があるのかなと思っているというところでございます。
 私からの説明は以上でございます。
【林補佐】  事務局からは以上ですが、すみません。今、インターネットの接続が切れてしまっているようで、傍聴者の方を含め、聞こえていない状況のようですので、少々お待ちいただきつつ、資料の御確認をいただければと思います。
【内野補佐】  時間がもったいないので、NanoTerasuの運用期における評価指標について少し補足させていただきます。これは今後、NanoTerasuも、SPring-8、SACLAと同じように中間評価をこの委員会ですることになります。ですので、運用期に評価をするに当たって、どういった指標を設定すべきかを運用前に決めておく。今回、8月頃に1つ議題として置かせていただいております。ここで検討した結果というのは、QSTの中長期目標や行政事業レビューシート、政策評価のシートといったものに反映していって、政府としてフォローアップしていくというような扱いになるのかなと思っております。
 なので、事務局からは、既存の施設の指標、今、SPring-8だと論文などになっていますけれども、その辺りが現在の科学技術から見てどうか。あるいは、もうちょっと違った指標が考えられるか。そういったようなところから事務局で案をQSTと相談して考えて、御議論いただくということになろうかなと思っています。
【林補佐】  量子ビーム間の連携というところでございますけれども、量子ビーム、非常に日本は強みを持っている分野だとは思うのですが、やはりほかの分野と同様に、研究者の道に進む人が不足しているですとか人材育成といった部分で、非常に課題が出てきているところかと思います。
 そうした中で、ばらばらに取り組んでいてもなかなか難しい部分があるかと思いますので、量子ビームというくくりですとか、また、ほかのくくりというものも当然、御助言等あればいただければとは思いますけれども、そうした中でタッグを組むことで、より効果的な政策等の検討につなげていければと考えておりますので、引き続き、御意見いただけますと幸いでございます。
【内野補佐】  まだ委員の方、ウェブの方が入られていないようですね。ユーチューブのほうは復活しているんですか。
 すみません。少々お待ちくださいませ。
 もし事実関係で確認事項等あればお願いします。
【古川委員】  言葉遣いで教えてほしいんですけど、さっきJ-PARCの中間評価は別枠だと言って、J-PARC、第4回に評価の報告があって、先に評価して、その報告があって、翌年度、来年度、中間フォローアップがありますよね。だから、報告があってからフォローアップがありますよね。その前に中間評価をやっていますよね。
【内野補佐】  これはほかの委員会で、今年度、中間評価をするので、その結果を1月ぐらいに、この委員会の事務局から、こういう評価や指摘が出ましたという報告をさせていただくということです。
【古川委員】  このときのフォローアップは、この委員会で何をするんですか。
【林補佐】  はい。では、御説明を。これはこの部分だけ切り出してみると確かにちょっと不思議に思えるかもしれないんですけれども、大体、5年に1回程度、各施設、J-PARC、SPring-8、どちらも評価が行われているところでございます。なので、ちょうどJ-PARCにつきましてはおおよそ5年前、SPring-8につきましては、来年の5年前ですので、4年前ですかね。評価が行われたところとなっております。その後、評価が行われた翌年以降、毎年、その評価状況につきまして、いろいろと御指摘事項がございますので、そちらがどうなっているかというフォローアップという調査を行っているところでございます。
 なので、その中の第12期の期間だけ切り出してみると、前後が入れ替わっているように見えてしまって、不思議な状態ではあるんですけれども、そういった形で、直近における、直前の回における中間評価で受けた指摘事項について、フォローアップというような形となっております。
【古川委員】  分かりました。
【林補佐】  このJ-PARCの中間評価フォローアップにつきましては、J-PARC全体の評価が、先ほど申し上げたとおり、5年に一度程度行われておりまして、今年、または来年においても、約5年ごとということで、大強度陽子加速器施設評価作業部会を立ち上げまして、そちらで中間評価が行われます。そちらの中で行われた評価事項のうち、特に共用に関する部分につきましては、量子ビーム利用推進小委員会のほうで中間評価のフォローアップを行っているという形となってございます。
【小杉主査】  J-PARCは、KEKの学術のほうとJAEAの科学技術の統合計画なので、評価するのは上のところで評価して、その中に中性子の共用施設の部分が入っているので、そこだけ取り上げて、この小委員会でフォローアップしていくという形になっていると思います。J-PARCと書くと、J-PARC全体なのか、中性子だけなのか、あるいはMLFという、ミュオンも含めた施設なのかというのが分かりにくいんですけれど、ここで扱うのは、基本的には共用施設の部分を中心にフォローアップしていくという形になっていると思います。
【古川委員】  分かりました。ありがとうございます。
【内海委員】  では、一つ。NanoTerasu法案のスケジュールのところ、私もよく分かっていなくて質問です。7月11日、改正法が公布されたのは条文を含めて全部見ているんですけど、整理政令というのは、これは省令との間の政令というのは、どういう位置づけで、どういうものなんでしょうか。
【内野補佐】  これは法律を改正すると、いろいろ条項がずれたりするわけですが、それが1個ずれるだけで、もうあまたの法令に影響が出るんです。今回改正した整理政令というのは、改正したのは、科技イノベ活性化法の施行令と都市計画法の施行令を一発で直したというもので、号ずれとか条ずれの処理をしただけです。
 これは法律用語的に言うんですが、整備政令と言う場合と整理政令というものがあるんですけど、整理という場合は、今みたいな号ずれだけを直すみたいな、サブスタンスが伴っていないものを整理政令と言います。なので、今回、多分誰も知らない、役所だけで、私のところだけで勝手にやったような状態になっていますけど、もうこれは単に作業とかで、単に16条が17条に変わったとかそういうのを反映させただけというものであります。
【内海委員】  分かりました。ありがとうございます。
【阪部委員】  すみません。もしよかったら今までの経緯が分かるように少し簡単なメモ程度でいいのですが、どういう委員会で、どのようなことが議論されたなどの履歴が分かるようなものがあればつけておいていただくと分かりやすいです。
【内野補佐】  それはビーム小委の検討事項の履歴ですか。
【阪部委員】  そうですね。
【内野補佐】  資料2-2の2ページ目に、2年前ぐらいまではどういう検討をしてきたかというのを書いていますね。例えばオペランド測定の重要性みたいなものを検討したりとか、あとはNanoTerasuの中間評価、あるいはSPring-8、SACLA、J-PARCの中間評価。今までに、今後やっていきますよと今回言ったようなものと同じような検討をここ2年はしてきたということかなと思います。
【阪部委員】  例えばSPring-8の高度化について、最初にこのような課題が挙がったのはいつからかとか、その辺の経緯がもし分かりましたら。今までの報告で、高度化という話が言葉として出てきますが、具体的にその活動が始まるきっかけとして誰がどういう議論を行ったかが分かるようなものがありましたら。
【林補佐】  ありがとうございます。SPring-8につきましても、もう10年、20年と長く経過してきた中で、やはり今後考えていかないといけないよねということ自体は、中間評価ですとか、その中間評価フォローアップでも、これまで指摘としてはございましたところですが、今回のように明示的に議題となったのは、今回からというような形でございます。
【阪部委員】  ありがとうございます。
【内野補佐】  今回、SPring-8-Ⅱは、高度化は今日が初めて議題として挙がっています。きっかけとしては、この資料2-1の参考資料の23ページですかね。附帯決議というのがあるかと思います。これはNanoTerasuの追加をするために共用促進法の法改正をやったわけですが、それに合わせて、国会から出された附帯決議に、「既存の特定先端大型研究施設の老朽化対策を着実に実施するとともに、技術革新の進展等に対応した施設の高度化を推進するため」云々という文章が入っております。
 もちろん施設側ではもともと検討もされていましたし、役所に対してそのコミュニケーションが来ていたわけですけれども、大きな流れとしてキックオフをし始めたというのは、これが一つの契機になっているかと思います。
【阪部委員】  分かりました。ありがとうございました。
【林補佐】  事務局でございます。接続につきまして不具合がございまして、大変失礼いたしました。ただいま、委員の皆様及び傍聴が復活しましたので、御報告いたしますとともに、接続が切れていた期間につきましては、事務局から資料2-1と資料2-2について御説明させていただきまして、一部、事実関係の確認等が行われたところでございます。
 本小委員会の終了後に議事録を公開させていただきますので、恐縮ではございますが、接続ができていなかった部分につきましてはそちらを御確認いただければと思います。
 では、戻させていただきます。
【小杉主査】  それでは、今、議題3の説明をいただいたところで、資料2-1と資料2-2、それから、参考としては、参考資料1-8の有識者会議の報告というのを含めて説明いただきました。
 それでは、今の説明に対して質問あるいは御意見等ございましたらよろしくお願いします。ネットの切れている間もありましたけれど、割と順調に進んでおりますので、時間的には二、三十分、取れるかと思います。よろしくお願いします。
 何かございませんか。
 では、脇本委員、お願いします。
【脇本委員】  御説明ありがとうございました。すみません。口火を切らせていただくような形になってしまうのですが、2点、コメントといいますか、質問です。関連政策の動向というところの1ページ目で、輪が何重にも重なって、多層的な取組をされているというところ、これは大変、以前からもこの仕組み、取組というのが非常に結構な形でと思っていたところです。ここの、特に一番末端に行く青色のところの活動というのが、ピラミッド的に上のほうの先端施設につながっていくような取組というのはされているのでしょうかというところがお尋ねしたかった点です。
 あと、2点目につきましては、このスケジュールを拝見して、量子ビーム施設間の連携というところは、次年度のテーマ、今年度中にはそこの議論はないというところであるんですけれども、これは今後の議論の中身ということになってくるかと思うんですが、連携の議論をするに当たっては、特に中性子の場合には最近、小型中性子源も出てきて、だんだん小型から大型へのステップというものが中性子利用にも出てきたような形になっていますので、そういったところで、連携という言葉と併せて、利用の体系化といいますか、何かそういった観点が入った形で議論できるといいのかなということを思った次第です。そこは私からのコメントでございます。
【小杉主査】  事務局、お願いします。
【林補佐】  ありがとうございます。1つ目の質問につきましては、こちらの資料2-1の例えば3ページ目にございますような連携の部分につきまして、青色から緑、ピンクとピラミッド状につながっていくような取組があるかというところでございましたけれども、こちらは直接そういった取組が何かあるかというと、現時点ではそういったところはなくてですね。というのが、やはりこれはそれぞれ、青側は各大学といった単位の取組、緑側は、大学等が複数連なった取組、また、ピンクにつきましては、それとはまた別の形で、国研が持っております、特に超大型の施設といった取組なので、直接何かこれらをつなぐような取組があるわけではないんですけれども、そういった部分につきましても、今後、こうした取組が重要といった御指摘があれば、ぜひ御意見いただければと思います。
 また、2点目につきましても、ぜひ量子ビーム施設間の連携について、今後、さらに検討を深めていくべきですとか、そういったところの御意見があれば、我々としても今後の議題、事項としてできるだけ取り入れていきたいと考えておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
【小杉主査】  よろしいでしょうか。
【脇本委員】  はい。ありがとうございました。
【小杉主査】  ほかにございますか。今の点の3ページ目、プラットフォームの事業やコアファシリティのところですが、それぞれの輪っかのところは、研究環境課のほうで強化しているというところですよね。
【林補佐】  はい。
【小杉主査】  そこは、11ページの説明がありますけど、2021年度、20年度辺りに決めたのが走っていて、それ以上は増えていない状況なのでしょうか。
【林補佐】  はい。現在は、この2020年度、2021年度等に指定されました期間でプログラムが行われているところでして、現時点でこれ以上何か増えるというところは予定していないところでございますけれども、この事業自体は5年間の支援となっておりますので、その後に何か新しいプログラムといったものをつくる際はこういったところを留意したほうがいいですといった部分につきましても御意見があれば、今後いろいろと御指摘いただければ、事務局のほうで検討等させていただければと思います。
【小杉主査】  もともとプラットフォーム事業のところに量子ビーム施設関係のネットワーク化という提案もあったのですけれど、これは選考があるものなので、落ちてしまっているので残っていないという状況です。そこでは、小型、中型施設を含めて、日本全体のネットワーク化が提案されていました。事業の拡充があればまたのチャンスはあったのですけれど、5年間、増えていないので、止まっているという状況です。
 こういう枠組みを今後、チャンスがあれば使ってやっていくということになるし、特に東海のキャンパスでは、中性子の施設でも、共用施設ばかりでなく、JRR-3の連携もありますので、場所的にも近いところの連携が今、非常に重要なフェーズになっているので、そういうところをうまくカバーできるプログラムをぜひ、プラットフォーム事業の次のチャンス、可能ならもっと早い時期に設計していただくとこの分野は非常に助かるかなと思っております。
 ほか、何かございませんか。
 今期最初ですので、全員から意見をいただくようにと事務局から指示を受けていますので、もし出ないようだと順番に当てていきますけれど、よろしいですか。
 では、岸本委員。
【岸本委員】  岸本です。12ページのところをもう少し聞きたいなと思っていたんですけれども、研究設備の機器の共用促進に向けたガイドラインというところで、これは大学のところのある設備を一元管理していこうということだと思うんですけれど、これはある意味、企業とかでも利用ができるという考え方でよろしかったですよね。
【林補佐】  事務局でございます。おっしゃるとおりでして、もちろん各大学、いろいろな考え方はあるところでございますけれども、企業からの利用により、例えば財務の観点などから非常に有益な部分等ございますので、あるいはその企業とのネットワークがさらなるイノベーションにつながるといったメリットもございますので、そういったところを踏まえながら、各大学、いろいろと検討を進めていっていただくというようなガイドラインとなってございます。
【岸本委員】  その上でもう少し御質問したいんですけれども、基本的に大型施設を使っていくに当たって、大きな企業は割と入り込みやすいんですけれど、やはり中小企業だとかそういうところは、入り口としてはなかなか入りにくいところはあると思うんですね。また、自社で持っている設備もそれほど大きなものが持てないとか分析装置が持てないと。だったら、こういうところを入り口にして、さらにそこから中型、大型と進んでいけるようなネットワークみたいなものがあると、裾野がどんどん広がっていく一つのドライビング・フォースになるんじゃないかなと思うんですけれど、そういった仕組みというのはあるんですか。特にはないんですか。
【林補佐】  ありがとうございます。今の御指摘は多分、脇本委員の御指摘にも近いものがあるかなと思っていて、それこそ中性子実験であれば、小型施設などで慣れていくことによって、より今後はほかのJ-PARCをはじめとした大型施設につなげていくといったような使い方があるというお話かなと思っております。
 結論から申し上げますと、直接それにつながるような文部科学省の事業が現在あるわけではないというところでございます。私ども、理研ですとかJ-PARCのほうで何か取組としてつなげていくものがあればぜひコメントいただければと思いますけれども。
【脇本委員】  よろしいですか。
【小杉主査】  はい。お願いします。
【脇本委員】  ありがとうございます。せっかくの機会ですので。J-PARCのほうでも、やはり中性子を使いに来るのはもちろん、プローブとして一番重要な本丸なんですけども、当然その周りに一部、試料を事前に評価したいとか、こういったところを先に確認しておきたいというニーズもございまして、一応、東海村の原科研内においても、そういったところのニーズに応えられる、何かオープンラボのようなものは、当然J-PARCとしても整備を進めているところではございますけれども、J-PARCだけではなくて、原科研の中にあるような、まさに共用ガイドラインに沿った使い方で使えるような機器、そういったものを使えるようにしていく方向性も私どもとしては持っておりますので、そういった中でこちらの事業がうまくマッチするようであれば、我々のほうとしてもぜひそういったところをトライしていきたいなというところでございます。
【小杉主査】  矢橋委員。
【矢橋委員】  はい。これはまさに非常に重要な取組だと思います。ただ、一方で、スキームとしては非常にすばらしいのですが、では、現実的にワークするのかというところが重要になってくると思います。こちらのガイドラインも大学のコアファシリティ支援プログラム等でまずスタートアップをセットアップされて、行く行くは大学で自立的に回っていくということを目標とされていると思うんですけれども、着実に取組が進んでいるのかどうかを含めてこういう場で紹介いただきながら、仕組みについても議論していけるといいのかなと思います。
【岸本委員】  そうですね。特に大型施設と大学とがある程度、連携体制が取れていて、大型施設に相談に行ったときに、まず基礎的にこういう電子顕微鏡で取ってみて、次のステップに行きましょうかとか、何かそういう流れができると非常にすばらしいんだろうなと思ったので、御質問させていただきました。ありがとうございます。
【小杉主査】  NanoTerasu関係で何か。PhoSICが担当しているといえば担当しているかもしれないですけど。
【内海委員】  ありがとうございます。まさに来年度以降、そういうことを積極的にやっていかないといけないというところかと思います。詳細説明するとどんどん長くなってしまうので簡単にですけれど、今、PhoSICが整備を行っているコアリションビームラインについては、一口5,000万円の加入金を払っていただいたコアリションメンバーへのサービスがまず1番目にある。5,000万円を払えない企業に対しては、仙台市が加入されているものを分割して中規模程度のところに対応とする制度があります。しかしながら、全くのスタートアップ企業にぴったりと当てはまる制度が今のところなく、そういう支援はこれからいろいろ協議しながらやっていかなければならない。これについては、PhoSICだけではなくて、QSTのほうでもう少しいろいろなことを考えていかなくてはならないと思っています。
 一方で、全体のこの3つの輪、構想としては非常に良いといつも思っているんですけれど、御質問にもあったとおり、外側になればなるほど、例えば各大学は本当にこれで助かっているところがいっぱいあるはずですが、一方で、これがどの程度効果的にうまくいっているのか、検証することはなかなか難しいのではないかという気がしています。大型施設ですと、常にこういったことの評価を受けて、その効果が見えてくると思うんですけれど、こういう非常に裾野が広いところについては、フォローアップというか、チェックというか、そこがなかなか一般的には難しいんだろうなという気がしています。
【小杉主査】  大竹委員。
【大竹委員】  中性子のほうで、今、大型と小型であるとか、もちろん放射光のほうでも、また様々なプローブ、MLFですとミュオンもございますので、産業利用のほうの取組で、特に中性子ですと、同じ機構の中にJRR-3、原子炉もございますので、J-JOINというような形で、CROSSがやっているところに関して、小型であるとかそういった量子ビームということで広げられないかという議論はちょうど始めているところでございます。
 そういった意味では、今、まさに委員の先生方から御発言あったとおりに、本当にそれがワークするようにどうするかとなると、やはりどうしてもある程度、大型施設などどこかが核となって、ちゃんとイニシアチブを持つなり、継続的な、それこそ、その継続性がなくて、言い出しましたけど、1年で終わりましたとか、2年で疲れましたと大抵なるので、そういうところは既にある共用のところの考えの枠をもうちょっと広げていくような形で、それぞれこういったところでの議論を基に、現状の共用法を、いかに法律を変えるかが大変かというのは先ほど項、条のところでも分かりましたけれども、そういったところで自由度を少し上げていただくような発想を持ちながらやっていくと、ここの3つの輪の、本当に設備のプラットフォームだけではなく、利用者まで入れた形の検討に大きくなっていくのには、実は最初、岸本委員からおっしゃられたとおり、そこを書かせてしまうと実は設備にしても、大型施設にしても、本当に有効利用につながらない。ピークを上げて、裾野をどれだけ広げるかというところの効果が最大限にならないような気がするので、既にある取組から枠を広げていくという発想から始めていくのはいかがでしょうか。
【小杉主査】  古田課長。
【古田課長】  よろしいですか。今の議論で、私のほうでちょっと考えていますのは、やはり共用法の議論のときに何度も、最初はNanoTerasuだったんですけれど、利用者、特にそういった中小の、人材も技術もまだ蓄積がないところの方にもちゃんと使ってもらうようにしろということをたくさん言われました。あと、放射光施設は、SPring-8を代表に国内で幾つかあります。それぞれいろいろなスペックが違うんですけれど、中長期的とまでは言わないんですけど、放射光の世界と、あと、できたら、中性子の世界、この世界ぐらいは一つの窓口を何かつくれないかなと思っていまして、まだ何も具体的なことは言えないんですけれど、そこからまず着手しようと思っています。
 その先に緑とか青のところの、もう少し小さな研究施設・設備がその対象を広げていくことができれば、体力がない中小の方とか、学術の方でも、まだどこから入ったらいいの? という方はいらっしゃると思うので、非常に役に立つものになるんじゃないかなと思っています。
 以上です。
【小杉主査】  阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  岸本委員が言われたように、私も大学に居まして感じますのは、中小企業の方はどうしても大型施設に対しては敷居が高くて、あまり基礎的なことを聞いたりできません。最終的には個別対面で、本当にざっくばらんな話が聞けるというのが中小企業の人にとって有難いと思います。そのとき、やはり重要なのは相談に乗ってもらえる人です。一つの考えとしては、そのような人材の有効な候補として大学の研究者で大型施設ヘビーユーザーです。長時間、あるいは、より頻繁に大型施設を利用したユーザーにはその時点でアドバイザーになってもらってはどうでしょう。だから、今まで利用した人全員にアドバイザーになってもらいます。そのような方々全てのリストを大型施設のところで公開しておけば、「近くのこの先生に相談してみようかな」と、ちょっと敷居が低くなるかと思います。利用される人も、利用するだけじゃなくて、社会貢献ということで、今度は次に利用したい人に手助けをしてもらいます。利用者に公式的に何か身分を与えて、例えば、「アドバイザー」というのがいいのか分かりませんけれども、NanoTerasuのアドバイザーやSPring-8のアドバイザーなどです。そういうのを任命して、公開していくというやり方もあるかと思います。限られた人材ですので、とにかく利用者は次の利用につながるような貢献をしてもらうというのがいいかと思います。
【小杉主査】  それに近いような取組は、SPring-8とSACLAではあるのでしたっけ。
【矢橋委員】  そういう意味では、コーディネーターは配置していますが、現場の大学の先生との協業というのは非常に重要ですので、先生周りのユーザーとの連携や、先生と一緒に開発を行うといった、コア的な活動は非常に重視して進めております。ただ、システムには落とし込んではいないというのが現状です。
【阪部委員】  身近な先生で、誰に相談していいか分からないときに、例えばSPring-8のホームページを見て、全国の大学のアドバイザーのリストがあれば、この先生の研究室に行ってみようかなと。そういうちょっとしたきっかけによって利用が広がるのではないかと思います。
【矢橋委員】  はい。ネットワーク化は十分できると思います。
【小杉主査】  そういう取組は非常に有効ですね。
 では、高橋委員。
【高橋委員】  人材という話ですと、こちらもコメントになるんですけれども、学生の頃にこういった施設を使ったことがあるという方が就職してこられると、その施設に対してアクセスがしやすくなるといった側面は、企業としては圧倒的にあると思うんですね。経験を積んだ人がアカデミアに残らずに就職してしまうとアカデミアの方は思われてしまうかもしれないんですけれども、そこまでヘビーなユーザーというわけでなくても、学生の間に少しでも触ることができていると。その状態で、そちらを専門にするのではなくても、就職した後で、もしかしたらあれが使えるかもしれないというところに戻ってくるということが非常によくあると感じているんですね。なので、アカデミアの先生方から、貴重な若い人が就職されてと思われてしまうと非常にもったいないと思っていて、人材の取り合いという形にならないように、お互いそれぞれの立場で利用を広げていければいいんじゃないかなと思いました。
 そういった点で、あともう1点、コメントとしては、最近、SPring-8、放射光と中性子で合同で講習会、講演会の案内を幾つかいただいていて、あれも非常にいい取組だなと思いました。どちらを使うのかがよく分からない状態でも、テーマとして興味があれば聞きに行けるわけなので、そういったところ、ちょっと私たちの分野とは離れているけれども、この人たちには興味があるかもしれないというところで、放射光なのか、中性子なのかというところを絞らずに講演会の御案内ができるというのが非常にいい取組だと感じました。
 以上です。ありがとうございました。
【小杉主査】  はい。では、古川委員。
【古川委員】  ちょっと皆さんの盛り上がりを押さえてしまうような意見かもしれませんが、理想的には、皆さんも「はい」と多分おっしゃるんだけれども、それをやるときの予算とか人材をきちんと手当てしないと、目標は、「全ての研究者がより研究に打ち込める環境へ」と書いてあるんだけれども、実際、コアファシリティのほうでもやっているのが地元民というか、ローカルな人間で、それを企業の方も、アドバイザーもします、ここも使えますというときの機器のメンテナンスからいろいろなものが全部、そこのローカルな研究者に回ってくるとなっているとあまりうまくいかないんじゃないかなと思います。
 だから、今、予算がずっとなくなっていて、十何年間で、人員が2割減っている大学から来ている身としてはちょっと厳しいなと。だから、そういうところもあるのもしっかりと覚えておいていただきたいと思いました。
【小杉主査】  文科省には、理想と現実のギャップがあるというところをぜひ理解していただいて、それなりの支援をいただくということでないと実現しないというところですね。
【古川委員】  そうです。はい。
【小杉主査】  あとは、ネットで入っておられる方で御意見等ございましたらお願いします。唯委員も入られたということなので、途中からなので何を議論しているか分からない部分があるかもしれないですが、何かございましたら。
【唯委員】  すみません。途中から入りまして、御挨拶が遅れまして申し訳ありません。名古屋大学の唯でございます。今期から入らせていただきますけれど、よろしくお願いいたします。私は今まだ完全に把握してなくて、また後で何かありましたら意見を述べます。
【小杉主査】  はい。分かりました。
 高原委員、山重委員、何かございますか。
【高原主査代理】  高原です。途中30分ぐらい切れていたので、途中の議論が、御説明が完全に把握できていない部分ありますけれども、資料のガイドラインのポイントというところですかね。「研究設備・機器の共用推進に向けた」。
【小杉主査】  12ページですかね。
【高原主査代理】  そうです。12、13ページ。この部分というのは、これは放射光に限らないということですね。
【林補佐】  おっしゃるとおりです。
【高原主査代理】  では、量子ビームに限らず、電子顕微鏡とかそういうのも含めてということでよろしいわけですね。
【林補佐】  はい。
【高原主査代理】  これに関しては大学側がどういう体制で臨むかというのがかなり重要になりますので、その辺りは今後いろいろなアプローチを各大学の執行部とか、これはURAも書かれていますけども、そういうところにしていく予定と考えてよろしいでしょうか。
【林補佐】  ありがとうございます。こちらのガイドラインにつきましては、実はもう既に昨年の2月か3月頃に策定しておりまして、そうした中で、ほかの部会などでも議論が行われているようなところとなっておりますが、こうしたガイドライン、周知活動を文科省としても随所で設定させていただいておりまして、そうしたこちらのガイドラインの理念を基に、各大学において、より持続的かつ効果的に共用の活動といったところを進めていくための取組を進めていただいているところで、また、必要に応じて文部科学省としても御説明にお伺いをしているというような状況となっております。
 直接こちら側の量子ビームの取組に何か関わりがあるというわけではないんですけれども、共用の取組の一つの政策の流れとして御紹介させていただいたというところになってございます。
【高原主査代理】  これは既に何か効果が見えているんでしょうか。その辺りは。
【古田課長】  すみません。担当課長の古田ですが、今日、御紹介していないんですが、ちょうど昨年、1年間、このガイドラインのいろいろな周知をしまして、その結果を各大学にアンケートを取っております。手元に細かいデータがないんですが、国立大学はかなり、6割か7割ぐらいは、ここにあるような経営戦略の位置づけとか、統括部局の確立とか、こういったことを始めているところであります。まだ私立大学とかが遅れていて、そこはまだまだ課題かなと思っています。
 これは2025年度までに、まずは全大学、高専で、ガイドラインに沿った取組をやっていただきたいということになっていまして、ちょっと時間がノロノロしているように思えるかもしれないんですが、やはり各大学の中でこういった取組をしていただくためにはそれぐらい猶予期間が必要だということで、我々のほうも本当にきちっと大学に浸透するように取組を進めているというところでございます。
 以上です。
【高原主査代理】  ありがとうございました。
【小杉主査】  山重委員、何かございますか。
【山重委員】  トヨタ自動車の山重です。先ほど高橋さんもおっしゃっていたんですけれど、民間のほうでは、僕もそうですけど、放射光経験者が入社して、施設とのパイプができるということが多々ありますので、その辺、いいかなとは思いました。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 ほかに何か。もうそろそろ予定の時間になってきましたけど。
【矢橋委員】  1点追加ですけれども、最後の古田課長からのお話もありました、各大学でそういう共用のハブになるような部署ができるというのは多分、我々大型施設にとっても非常によくて、個別に全てを相手にするのではなくて、そういう中継になるところ、ハブが皆さんあって、そことしっかりスポークを結ぶというのが非常にやりやすいと思いますので、ぜひ両側からやっていければと思いました。
【内野補佐】  ちょっと補足させていただくと、NanoTerasuは、東北大のキャンパスに入っていますので、東北大の持っているスパコンや、クライオ電顕などを使えるように、連携できるようにという体制を整えようとしているので、NanoTerasuの周辺で、大型施設等、大学の持っているような大型の計測機器の連携というのは、一つ、モデルケースができるかもしれないなと思っています。ただ、運用は来年以降なので、まだ準備中というところで期待をしているところですね。
【小杉主査】  そういう事例もここに上げていただいて、ほかの施設にも参考にしていただくということかと思います。
 では、大体予定している時間になりましたので、議題3は終わってよろしいでしょうかね。それでは、議第4に移ります。議題4は、SPring-8の高度化についてということですので、事務局より趣旨等を簡単に説明お願いいたします。
【林補佐】  事務局の林でございます。こちら、議題4の趣旨ということでございますけれども、もしかすると傍聴の方は聞こえていなかった部分あったかもしれないんですが、資料2-1の18ページに、SPring-8-Ⅱの概要というところで挙げさせていただいているとおり、こちらの施設につきまして、共用開始から非常に長期間がたっているところで、今後、高度化が必要になってくると考えております。
 そうした中で、現在のSPring-8の施設の現状と課題についてということで、理研の石川センター長から御説明をいただいて、今後の、また、次回以降の高度化の議論につなげていければと考えているところでございます。
 事務局からは以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、石川センター長より資料3に基づいて御説明いただきたいと思います。
【石川センター長】  理研の石川です。資料3で説明します。「SPring-8の高度化に関する現状と課題について」というタイトルですが、2ページ目に目次をつけています。
 その次のページは、なぜ今、SPring-8のアップグレードが必要なのかということですが、SPring-8は、第3世代の放射光として、ハードX線の領域で世界トップの性能を持って、25年運用してきましたが、世界では放射光の第4世代化が進んでいます。この第4世代化に乗り遅れると、次のページにあるように、学術・産業共に安全保障上取り返しのつかないことになることが予想されます。
 次のページですが、SPring-8は老朽化が進んでいまして、保守維持のコストも大分掛かっています。その次のページでは、現状で62本のビームラインが同時に利用可能で、アップグレードすることによって、貢献の大幅な拡大を図ることができます。
 次のページでは老朽化、省エネ対策として、更新しない場合には、老朽化に対する対策コストが非常に上がっていき、また最近、電気代の高騰が問題になっていますが、更新した場合は、SPring-8に比べて、SPring-8-Ⅱでは、半分の電力で、100倍程度明るい光を出す計画でございます。
 次のページは、更新しない場合のコスト増が書いてありますが、説明は省略します。次のページに、年間10億円を削減しながら、100倍以上明るい高エネルギーの放射光を供給するものとまとめています。2050年までのイノベーション創出を支え続ける科学技術基盤を確立して、日本の国力の持続的発展に不可欠な共用資源を与えるということが大きな目的でございます。
 その次に参ります。硬X線放射光施設を取り巻く国際情勢でございますけれども、硬X線の放射光施設は世界中で、第4世代に変わりつつあります。
 ヨーロッパのESRFはもう第4世代化が終わっていて、アメリカが今、第4世代化のためのシャットダウンに入ったところでございます。中国は北京の郊外に新しいものを造っています。
 その次のページに全体のまとめを示しています。
 その次のページがNanoTerasuを含む中低エネルギー、中低エネルギーというのは3GeVクラスのものでございますが、3GeVクラスのものとしては、NanoTerasuができたことによって、日本は世界のレベルに追いつくことができました。
 次も国際情勢でございますが、SPring-8-Ⅱを造ることによって、エネルギーの高いところで、圧倒的な世界1位を目指しましょうというのが我々の目標でございまして、その次は、NanoTerasuと、硬軟X線を使い分けることによって、サイエンスのより多くの面が明らかになっていくことを示しています。後で申しますが、更に中性子も使うことによって、より多くのことが明らかになっていくわけです。
 ここにいる皆さんには、硬X線と軟X線がどう違うかという説明する必要はないと思いますので、いくつか飛ばしますが、NanoTerasuは、要素技術的なところに強く、SPring-8は、例えば外側にパッケージがあってもその中を見られるような硬いX線が出るので製品そのものを評価できるという特徴があります。この2つを併せ使って、産業側、学術側から攻めていくということが可能になるわけでございます。
 あと、次のページに相乗効果が続くわけでございますけれども、今、話題になっている次世代半導体のところ、これも放射光は非常に強いところでございますけれども、NanoTerasuとSPring-8、両方使うことによって、いわゆる前工程、後工程の全体にわたって、次世代を超えたビヨンド2ナノの時代まで使える評価技術ができると考えております。
 最後は、中性子も使うともっといいぞという話が書いてあるわけでございますが、これから先、NanoTerasu、SPring-8、J-PARCを全部使ったようないろいろな面からの解析というのが必要になっていくとともに、これにスーパーコンピュータ「富岳」も使った、データサイエンスも含めたような新しい取組というのが必要になってくるのではないかと考えております。
 その次がSPring-8-Ⅱで何ができるようになるのかというところでございますが、先行事例として、ここにESRFが非常に細かい分解能で、各臓器のCTを全部作って、そういうアトラスを作ろうというプロジェクトをやっておりますが、各施設でこの種の研究が進んでいくだろうと予想しています。
 次のページが想定性能でございますが、50ピコメートルラジアンというエミッタンスで、明るさが、現在の100倍以上ということでございます。
 今、計測時間を明るさに反比例すると仮定しますと、今、SPring-8で、3年かかっていた計測が5日くらいでできるようになります。
 想定性能のその次のページでは輝度でグラフを書いてみました。その次でございますけれども、加速器テクノロジーで、世界でトップ性能を出すとともに、省エネで、今までの電力使用量の半分で100倍の明るさの光を出す。そこのポイントは何かというと、真ん中の下に書いてございますエレクトロンビームをどこまで絞るかということでございまして、左側の線状のものが、現状のエレクトロンビームです。これを右側のようにできるだけ点光源に絞ることによって非常に明るくしようというのが今の計画でございます。
 次をお願いします。そのためには、加速器のいろいろな新しい技術が必要ですが、超エミッタンスを実現する磁石ラティスを変更や、SACLAを活用した入射システム-これは非常に低エミッタンスのビームが入射できますので、高効率の入射システムをもう既に我々は持っているわけでございます。真空封止型アンジュレータを世界で、SPring-8にしかない長直線部に置くことによって、非常に明るい光が出てくるわけです。
 次でございますが、これは一般的な話でございますが、今のChaseman-Greenのダブルベンドを5ベンドにして、エミッタンスを絞る。次のページでは、電子ビームをどこまで小さくするかということで、SPring-8のダブルベンドから、NanoTerasuでは4ベンドになっています。それをSPring-8-Ⅱでは5ベンドにすることによって、NanoTerasuの1ナノメートルラジアンをSPring-8ですと50ピコメートルラジアンまで絞り込みます。
 次のページにポンチ絵的に示していますが、現状大きなビームが回っているのを非常に小さなビームが回るような加速器に変えてあげるということです。
 その次、最後になりますが、想定のスケジュールがここに書いてございます。例えばスタートを2024年度と考えますと、2027から2028くらいで入れ替わって、2029年度から新しいSPring-8での研究ができるというものです。
 ユーザーケースを幾つか挙げてみますと、まず半導体の話。これは今、非常にホットになっておりまして、ビヨンド2ナノメートルの製造技術が、ラピダスをはじめ、大きな話題になっていますが、測る技術がないと、ある意味でちゃんとしたものが造れないということで、放射光に大きな期待が寄せられています。あと、製造発電プロセスのグリーン化のところでも筐体を通り越して中の反応をしっかり見ていく必要がありますので、ハードX線というのが非常に重要になってくるわけです。
 その次のページでございますが、データの量が増えていきますので、データサイエンス的に今までと違う研究手法が期待されます。この辺りは「富岳」と連携して、新しいデータサイエンスに基づくサイエンスのやり方というのを開発していく必要があるだろうと思っています。
 量の革命によりまして、その次のページでございますけれども、例えば品質管理や、土木・建築のインフラの老朽化計測が可能になるでしょうし、その次のページに、全体をまとめてみますと、半導体、製造・発電プロセス、品質管理、土木・建築インフラ分野などで、学術と産業、もちろんガバメントも併せて産学官で連携した、いろいろ新しい仕組みというのをつくって進めていくということが期待されます。
 半導体評価プラットフォームは、経産省と一緒に考えているところですが、SPring-8-Ⅱになると、かなり早いターンアラウンドタイムでいろいろな評価ができていくということが期待されております。
 土木インフラへの応用の例は、既に道路の舗装をコア抜きして、X線のCTの絵を撮っておりまして、各高速道路会社と協力して、異なる環境や、履歴を持つサンプルを集めて、どういうふうに道路、舗装が壊れていくかというようなデータを集めています。これも「富岳」との連携によって、予測のシミュレーションを進めることを計画しています。理化学研究所として、今、予測を科学する、科学で予測するということを一つの大きな目標として挙げておりますが、その辺りでしっかりとデータを出すところとしてのSPring-8の位置づけというのが非常に大事になるだろうと思っています。
 その次でございますが、産業利用の進め方は次第に変わってきまして、SPring-8ができた頃には、個々の会社が個別に放射光を使っていたのですが、だんだん業界団体がまとまって、業界内の大問題に取り組むようになってきて、さらに業界団体と学術グループの連携研究等が始まってまいりました。これが、NanoTerasuのコアリションのもともとのコンセプトになっています。ただ、この後も産官学の関係は絶え間なく変わっておりまして、多分SPring-8-Ⅱではまた新しい形をつくっていくことになると思います。
 現在のSPring-8の使い方は、アカデミア利用が80%、産業利用が20%でして、ボトムアップで上がってきた課題を皆さん研究しています。次のページが最後ですが、この先は、ボトムアップで上がってきた課題に加えて、国の戦略に合う課題、例えば今ですとカーボンニュートラルや半導体戦略、国土強靱化、経済安全保障などをトップダウンで進める仕組みが必要になります。その際、産学官が連携するのか、違う形を取るのかというのはこれからの課題ですが、産業利用体制の変化をも見据えながら、SPring-8-Ⅱの利用体制を考えていきたいと考えています。
 以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、今の御説明について質問等ございましたらお願いします。
 阪部委員。
【阪部委員】  世界各国が追い付いてきたということですが、裏を返せば、この20年間、SPring-8は世界を最先端で引っ張ってきたということで、これはすごいことだと改めて思います。お聞きしたいのですが、13ページのSPring-8-Ⅱの輝度が863ですが、例えばドイツなどはカレントとかエミッタンスも十分高いのですが、それでも輝度は300、あるいは中国の新規施設もエミッタンスも高くて、カレントも同じですが、最高輝度がかなり違いますが、なぜでしょうか。
【石川センター長】  これはアンジュレータの長さが違うからです。
【阪部委員】  アンジュレータの長さの違いですか。
【石川センター長】  SPring-8は長いアンジュレータを入れられるところを4か所設けていて、そこを使うと最高輝度がここまで行くということす。他施設は大体丸く造るので、平均的にある程度明るいんですが、トップ性能としてそこまで出ません。PETRA-IIIは、高エネルギーで使っていた衝突型リングかたの転用なので、ある程度の長さの直線部はありますが、SPring-8よりは短く、光の明るさとしては、ここにとどまっているというようなところでございます。
【阪部委員】  今のお話の計画の中で、SPring-8-Ⅱの御提案がありますが、これを実行しますと、今お話を聞いたいろいろな技術を導入されますと、もう世界の追随を許さないという立ち位置になれるのでしょうか。
【石川センター長】  SPring-8自体を造ったときも世界の追随を許さないと言って造ったわけですが、25年たつとやはり……。
【阪部委員】  しかし、20年というのは十分に長いと思いますが、次の20年間では。
【石川センター長】  はい。我々は、2050年までは世界一にいるだろうと思っています。
【阪部委員】  もう一つ先の、SPring-8-Ⅱの先を見込んだような、まさに昔の理研さんの施設のように、もうこの20年、30年は世界の追随を許さないような、そのような技術革新は可能なのでしょうか。
【石川センター長】  実はSPring-8-Ⅲというコンセプトはもうできておりまして、SPring—8-Ⅲというのは、エレクトロンビームをモジュレートして、アンジュレータに入れると。そうすると、モジュレートしたところが干渉を起こして、リングでレーザーにできるのではないかと。
【阪部委員】  SACLAとミックスしたような。
【石川センター長】  はい。SACLAはパルスレーザーでございますが、SPring-8-Ⅲでは、CWのレーザーをリングで作るということができないかということは考えておりまして、それに行くためには、エミッタンスを十分小さくする必要があります。ですから、SPring-8-ⅡというのがSPring-8-Ⅲに向けての、ある意味でステップになっているというふうにお考えいただけるといいと思います。
【阪部委員】  こういう技術競争というのは激しいですが、世界の動向としては、現在、一応、欧米、中国でも数値は上がっていますが、その先のアクションというのはよその国でもすでにもう起こっているのでしょうか。
【石川センター長】  ここはある意味で、皆さんが今、考えているのはディフラクションリミットで、エレクトロンビームを小さくして、出る光はディフラクションリミットの光を出しましょうというのは今やっているところなんですが、多分、その次にやることは、今、ディフラクションリミットと言っているのは、空間的なディフラクションリミットなので、要するに、Z方向のディフラクションリミットというのが、これから30年後の課題になると思っています。
【小杉主査】  それでは、唯委員、コメントございましたら。
【唯委員】  すみません。唯です。今、NanoTerasuが進んでいますけれど、やはり物質のいろいろな機能の鍵になる部分というのは、ハードX線のところに鍵があるという物質とか材料は非常に多くて、SPring-8の高度化というところで、この双方がスパイラルになって上手にやっていくのがこれからなのかなと拝見していました。
 それで、例えばこれまでですと、割と分子とかそういう非常に小さなところに焦点を当てられていたのが、今、システムとかプロセスという全体を理解しなきゃいけないというところで、扱うデータ量もそうですし、もちろん取る対象の大きさというのも大きく変わってきていて、データサイエンスを含めた、その辺の連携の枠組みというのが恐らくこの研究全体を発展させる一つの大きな肝になろうかと非常に感じます。
 それで、日本はどうしてもデータサイエンティスト、特に中国などに比べるとそこは実験屋さんと一緒にやってくれるような人というのがとても少なくて、そこは、この施設の、いわゆるもう本当にどんどん測定しながら、新しい世界、最新のデータが出てくるところにどうやって上手に取り込んでいくかというところが、一つ、研究を加速する上での大きなポイントになろうかと思うんですけれども、その辺は、この装置面での開発と一緒に何か新しくフレームアップしてつくられるということはあるんでしょうか。
【石川センター長】  よろしいですか。どうもありがとうございます。先ほども少し申し上げましたように、データサイエンスというところは非常に大切なところだと考えております。一方で、それも施設の中に取り込むことがいいのかどうかというところは非常に難しいところがあって、これはIT技術なども同じですが、発展が非常に速いものを施設の中に入れてしまうと、ある時点のものが入ってくるわけで、その後の発展にちゃんとついていけるかどうかというところはしっかりと議論しなければいけないところかなと思っています。
 今の計画は、その部分はかなりスーパーコンピュータ「富岳」のグループと連携して、そちらにかなりやっていただくような形で進めることを考えています。
【唯委員】  はい。あと、大学のほうでもいろいろな分野融合のプロジェクトの、利用型プロジェクトというのがありますので、その辺とのうまい連携というのも一つはあるのかなと思いました。
 以上です。
【小杉主査】  ほかにございますか。まだ時間は少しございますが。古川委員。
【古川委員】  海外の大型施設、ヨーロッパですけれど、ヨーロッパだと人口が少ないから、何か国かで協力して造ったりしているところがありますけれども、今の日本のSPring-8の立ち位置というか、近さでいったら韓国や中国なんですけれど、そういうところとの協力というのはどんなふうな将来のビジョンを持っていらっしゃるかを聞いてみたいと思いました。
【石川センター長】  ヨーロッパは確かに大きいものは協力して造っているわけでございますが、放射光に限って言うと、各国が別々に持つ方向に今、動いています。それは、ヨーロッパ全体で、ESRFという大きいものがあるにもかかわらず、フランスはフランスでSOLEILという小さい装置があるし、イギリスはイギリスでDiamondがあって、ドイツはドイツでやっている。スペイン、イタリア、みんな自分の国の装置を持ちたがるところがあります。それは放射光の場合、かなり産業と近く、各国の国益に絡むところがあります。サイエンスはみんなでやればいいけれども、国益に絡むところはやはり各国でやりたいというところがあります。
【古川委員】  分かります。
【石川センター長】  日本も、一緒にやるというところもあるんだけれども、韓国は韓国で自分でやりたがっている、中国は中国で自分でやりたがっているというところがあって、今の形になっているわけです。SPring-8の場合、アジア各国の、特に台湾とかタイとか、小さい放射光施設を持っているところが、ハードX線のところの実験に来るということは非常にたくさんあります。
【小杉主査】  よろしいですか。
【古川委員】  だから、技術連携みたいなものはする。
【石川センター長】  これはもう全世界である程度、技術連携して、標準化が進んでいるわけですけれども、その標準化からどうやって抜けて、いいものを造るかというところが肝というか、一番のポイントかと思います。
【古川委員】  何を心配したかというと、ここからどんどん人口が減っていったときに、今、20年後とか30年後という話をされているから、2050年かなと思ったんですね。2050年って人口8,000万人でしたか、そのくらい少なくなってきますよね。そのときに、いかに人員確保もそうだけれども、効率化で進むのか分からないですけれど、運用とか利用に関しての、若手育成もそうですけれど、JSSさんの育成もそうですけれども、そういったところにも結構いろいろなことを考えながら進めないといけないなということを考えます。
【石川センター長】  それは実はもう既に始まっている中で、コロナがあって、人が動かなくなって、何が起こっているかというと、ある意味で、どうでもいい仕事はロボットにやらせようと。人間は、だんだん頭を使うところに集中していかないと、これから人が減っちゃって大変だよねという議論はしています。
【古川委員】  分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】  ほかにございますか。高橋委員。
【高橋委員】  すみません。今のお話とあまり関係ないんですけれど、明るさが100倍になるというお話で、100倍になったらどれぐらいいいのかということを自分も割と最近聞かれたことがあるんですけども、100倍のスループットになると考えたときに、例えば36ページにあるような例ですと、3が100になるというのは多分現実的にできるんですけれども、では、100が1万になったらどうなのかというと。というのは、多分、サンプルの準備をするほうが今度は律速になってくると。
【石川センター長】  おっしゃるとおりだと思いますが、例えば、今、たんぱくのサンプルを準備して、凍らせてとやっているわけですが、100倍になると多分、SACLAでやっているような、凍らせないで流しながらデータを取るようなことが。
【高橋委員】  そうなんです。やり方が多分。
【石川センター長】  はい。やり方が変わってきて、本当に生きたサンプルでデータが取れるとかそういうふうに変わってくるんじゃないかなと。
【高橋委員】  はい。なので、100倍変わると、やり方が根本的に変わってくると思うんですね。なので、今までのやり方の延長で進むのではなくて、もうサンプルの準備のところから、その後のデータの解析のところまで全てが、発想を転換していかなければいけないなというのはユーザーとしても非常に思いましたし、こういった利用例がある、こういったことができるということをアカデミアの先生などが提供していただけると、ああ、そういうことができるんだということがやはり皆さんに分かってくるところがあると思うので、ぜひそういった発想の転換、100倍変わると何が変わるのかというところを期待しているということです。
【石川センター長】  はい。多分、サンプルを準備するというよりも、その測定装置の近くで何か反応させて、サンプルを作りながら測定するとか、そういうことが可能になってくるのではないかと思います。
【高橋委員】  はい。そうなると今度は、先ほど、効率化というお話をされていましたけど、効率化の逆を行くというか、無駄なデータをたくさん取って、その中から使えるものを拾っていくというか。
【石川センター長】  その辺りがデータサイエンスの活躍するところで、我々、このデータが正しいと思って今まで取っていたけれども、その外側に、捨てていたところに大切なものがたくさんあった可能性はあるわけです。そういう意味では、無駄と思われるデータもワーッと取った上で、その全体のデータを解析していくということがこれから必要になってくるのではないかと考えています。
【高橋委員】  100倍取れたときに何が起こるかというのは非常に楽しみにしています。無駄があるかもしれませんし、そこから新しいものが見つかってくるかもしれないと思っています。ありがとうございます。
【小杉主査】  SPring-8の高度化については、次回以降もまた紹介がございますし、今、いろいろな質の新しい、単に高度化するという以外の、いろいろなサイエンスの変化というのもありますので、またその辺りも御紹介いただきたいと思います。次回以降お願いいたします。
 では、今日のところはこの辺りにしまして、議題4は終わりたいと思います。
 では、最後に、議題5のその他になりますけれど、事務局から連絡事項等ございましたらお願いします。
【林補佐】  研究環境課の林でございます。私から数点お知らせさせていただきます。
 まず初めに、参考資料1-9を御覧ください。本日の説明でもございましたとおり、共用法の改正に伴いまして、新たに共用施設となった3GeV高輝度放射光施設であるNanoTerasuについて、研究環境課のほうでは6月下旬より全国説明会を実施しております。
 資料の3枚目の中間報告にもありますとおり、アンケートによる満足度が高く、参加者の方々から好評いただいていると考えておりまして、今後もまだ関東、関西で計3回の説明会の実施を予定しておりますので、御興味のある方ですとか、あるいは身近に研究者の方で興味がありそうな方がいらっしゃいましたら、ぜひ現地参加も視野に御検討いただければと思います。
 また、続きまして、次回の量子ビーム利用推進小委員会ですけれども、8月末、30日の開催を見込んでおりまして、追って委員の皆様に日程調整の御連絡をさせていただきます。また、その際に、開催方法につきましても改めて御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 最後に議事録につきましてですけれども、本日はネットワークの接続に不具合がございまして、大変失礼いたしました。本日のそういった部分の議事も含めた議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にメールにて御確認いただいた後に、非公開となっております部分を除いて、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただきます。
 本日の配付資料につきましても、後日、文部科学省のウェブサイトに公開いたします。
 事務局からは以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、第12期第48回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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