量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第47回) 議事録

1.日時

令和4年12月27日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省内15階局会議室及びオンラインのハイブリッド形式

3.議題

  1. 大型放射光施設(SPring-8)及びX線自由電子レーザー施設(SACLA)中間評価フォローアップ
  2. 大強度陽子加速器施設(J-PARC)中間評価フォローアップ
  3. その他

4.出席者

委員

小杉主査、石坂委員、内海委員、大竹委員、岸本委員、近藤委員、坂田委員、阪部委員、佐野委員、高橋委員、高原委員、田中委員、古川委員、山重委員

文部科学省

古田研究環境課長、林研究環境課課長補佐

オブザーバー

理化学研究所放射光科学研究センター矢橋グループディレクター、高輝度光科学研究センター田中常務理事、J-PARCセンター小林センター長、J-PARCセンター脇本副センター長、J-PARCセンター大友ディビジョン長

5.議事録

【【小杉主査】  定刻になりましたので、ただいまから第47回量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。
 本日は第11期最後の開催ということになりますので、文科省内の会議室とオンラインのハイブリッドで開催することに致しました。
 本日の委員ですが、14名の委員の皆様に御出席いただいております。対面で7名、オンラインで7名となっておりまして、御欠席者は石坂委員と柴山委員とお伺いしております。
 今回は、議題(1)SPring-8、SACLAの中間評価フォローアップ、それから、議題(2)J-PARCの中間評価フォローアップということで、理化学研究所及び登録施設利用促進機関である高輝度光科学研究センター(JASRI)それから、J-PARCセンターから出席いただいております。議題(1)、(2)の御説明者として、オンラインの方もおられますけれど、御紹介いたします。
 まず、議題(1)SPring-8、SACLA中間評価フォローアップについては、当初、理化学研究所放射光科学研究センター、石川センター長も御出席とお伺いしていたのですが、本日は急用で御欠席ということで、矢橋グループディレクターのみ御参加いただいております。
 高輝度光科学研究センターからは、田中常務理事がオンラインで参加していただいております。以上お二方が、SPring-8、SACLAの御説明者ということになります。
 それから、議題(2)のJ-PARCのほうですが、J-PARCセンターから小林センター長、脇本副センター長、大友ディビジョン長のお三方に参加いただいております。
 では、事務局より、文科省の出席者の御報告と、オンライン会議における留意事項の説明、それから、配付資料の確認等をお願いいたします。
【林補佐】  事務局を担当しております研究環境課の林と申します。
 本日、文部科学省からは、課長の古田がオンラインで、また、私が出席させていただいております。
 皆様、本日もお忙しい中、御出席いただきありがとうございます。
 では、オンライン会議の留意事項について説明させていただきます。
 通信を安定させるため、御発言されるとき以外は、可能な限りマイクをミュートにしてください。御発言される際は、ミュートを解除にしてください。
 議事録作成のため速記者を入れておりますので、お名前を言っていただいた後に御発言をお願いします。
 また、会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話をお願いします。
 なお、本日は、会議公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるWebexでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
 次に、配付資料の確認をさせていただきます。Webex上に画面共有しておりますので、御覧ください。画面が見にくい方は、適宜、事前にお送りしております資料を御覧ください。
 配付資料は、資料1から3、参考資料1から3をお送りしております。
 もし会議中、御不明な点がございましたら、事務局までお知らせください。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。
 本日は、議題(1)、(2)とありますけれども、それぞれ議題(1)、(2)を20分御説明、20分質疑応答ということで、40分ずつ取りたいと思っております。大体(1)、(2)が終わるのが16時半ぐらいで、残り30分弱のところで、その他、意見交換等をしたいと思っております。
 それでは、最初に議題(1)、(2)の趣旨等について、事務局より御説明をお願いいたします。
【林補佐】  事務局でございます。では、資料1につきまして御説明させていただきます。画面共有させていただいているものです。
 本日は、SPring-8、SACLA及びJ-PARCの中間評価のフォローアップということで、議事を設定させていただいております。この立てつけに関して御説明させていただきます。
 中間評価におきましては、5年に1回程度実施しておりまして、直近では、SPring-8及びSACLAにつきましては、こちらの量子ビーム利用推進小委員会におきまして、2019年2月に実施しております。J-PARCにつきましては、科学技術・学術審議会の下に、そのために設置しました作業部会におきまして、2018年6月に、J-PARCのMLF以外の部分も含めた全体の中間評価を実施しているところでございます。
 そして、中間評価の後には、1年1回程度、この中間評価の内容を受けてフォローアップを、こちらの量子ビーム利用推進小委員会で実施しているところでして、直近では2021年10月に実施しております。
 また、この量子ビーム利用推進小委員会では、J-PARCはMLFの部分のみの中間評価のフォローアップというところで実施させていただいているところです。
 以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題(1)に入ります。理化学研究所とJASRIより、SPring-8及びSACLAの中間評価報告書で示された指摘事項への対応状況等について御説明をお願いいたします。
【矢橋グループディレクター】  それでは、よろしいでしょうか。私、理化学研究所の矢橋と申します。私のほうから、本日は中間評価のフォローアップについて御説明したいと思います。
 本日の内容でございますが、近況報告に続きまして、ビームライン再編、データセンターの整備、これは主にハードに関わるところでございますが、続きまして、運用・利用制度といったソフトの面の整備に関わるところ、最後に、世界の情勢と今後の展望について御紹介したいと思います。
 それで、前回の中間評価では多くの指摘をいただいており、個別には述べませんが、おおむね順調に対応は進んでおります。
 本日の論点につきまして、スライドの上の部分に示してございますが、前回のフォローアップでは、データセンターの運用、ビームラインのオペレーションの仕組みづくり、ユーザーニーズに沿った利用制度の改変について御意見や御議論をいただいておりますので、本日の発表でも、ここについての対応状況も織り交ぜながら御紹介したいと思います。
 まず初めに、運転状況の御紹介からです。最近では、このところおおむね5,200時間前後の運転時間、4,400時間前後の利用時間を年間確保してきましたが、やはり昨今の電気代の上昇がございまして、今年度の下期の課題選定時には、最終的に1週間の運転ができるかどうか確定しておりませんでした。これについては、補正予算をその後、確保いただきまして、何とか運転のめどがついておりますが、依然、来年度も含めて厳しい状況が続いております。
 もちろん、効率化の努力も進めておりまして、例えば、SACLA加速器からSPring-8の蓄積リングへの電子ビーム入射をすることによって、旧来の供用開始から使っていた入射器の運用をストップしまして、そういったことでかなり効率化は進めておりますが、やはり蓄積リング本体の老朽化が進んでおりますので、その更新が喫緊の課題になってきているところです。
 一方で、ビームラインやデータセンター周りの更新・整備といったところについては、これは計画的に実施できるところでございますので、前回の中間評価の後、重点的に進めてございます。この2点につきましては、この後御紹介したいと思います。
 まず、ビームライン再編について、基本方針から御説明します。
 SPring-8も供用25周年を経まして、様々な環境が非常に速いペースで変わってきていますので、ビームラインのほうも当然変わっていかないといけないわけです。そのときに、現在の目の前の利用ニーズというのは当然反映していくわけですが、さらに将来を見越して、特に光源性能のジャンプもこの後計画をいろいろしておりますので、そこも踏まえながらビームライン再編を計画し、実行しているところでございます。
 特に、2024年度からNano Terasuの運用が始まりまして、ここは3GeVで軟X線領域が強いところですので、相補的となるよう、SPring-8は、より高エネルギーの硬いX線の利用を重点的に進めていくというところでございます。
 これを進めるに当たりましては、部分最適ではなくて、全体としての最適解を目指したいと考えておりまして、そのためにビームラインのポートフォリオを設定するということを行っております。その中で、特に、よく欧米ではこういうカテゴライズが使われますが、いわゆる“Measurement”、定型的な計測というのと、“Experiment”、ある意味で一品物の実験というのをきちんと区別した上で、さらに、いろいろな個別コンポーネントの“R&D”の場も確保が必要ですので、この大きく3つのカテゴリーを頭に置きながら、オーナーで分類した共用・理研・専用ビームラインというカテゴリーをなるべく横串に刺して、一つのテーブルに置いて議論を進めたいと考えております。
 それで、さらに自動化を進めて、実効的なビームタイムの増大も図っているところでございます。
 これがビームラインのポートフォリオのたたき台になっておりまして、これは縦軸にいわゆる実験手法、ディフラクションとか、スペクトロスコピーとか、細かく書いてございますが、それが縦軸、それから、先ほど申し上げたMeasurementとかExperiment、R&Dを横軸に取って、ビームラインのプロットを示してございます。これももちろんたたき台でございまして、いろいろな皆様と議論してブラッシュアップをしながらやっているところですが、こういう全体的なスコープを頭に置きながら、個別のところを進めているというところでございます。
 それで、この図では、2020年度から以降のビームラインの改変というのが書いてございますが、この緑色のところが従来の利用でございますが、そこで大規模改修を経て、ピンク色の新しいビームラインに更新するということで、かなり大規模なかたちでビームラインを複数年にわたって再編・改修を進めているところでございます。
 この個別の内容につきましては、SPring-8シンポジウムとか、ワークショップとか、SPRUCの研究会等がございますので、そういったところで、利用者の皆様と施設サイドで議論をしながら、方針を決めて、実際の改修工事、それから、立ち上げといったところを進めておりますが、おおむね順調に実施しているところでございます。
 もちろん、こういった新しい取組はかなり速いペースでやっておりますので、結果として当然、いろいろな変化がございます。したがいまして、運用状況を見ながら、次の計画へのフィードバックも並行して進めているところでございます。
 ビームライン改修の具体例として、本日は2例御紹介したいと思います。
 まず最初は、自動X線CT装置、プロダクションCT装置と言っていますが、これをBL28B2というビームラインに設置しております。放射光のCTは、ラボ装置のCTでは難しい、非常にクオリティの高いデータ取得が可能ではありますが、一方で、ラボに比べて非常に敷居が高いということを皆さんから言われておりました。その問題を何とかコンプロマイズするために、この装置を整備しているわけですが、ここではラボ感覚の利用体験が可能なように、ユーザーの皆さんは専用ホルダーに試料を入れて送付していただけば、自動で測定して、オンラインのスパコン上で結果を受け取ることが可能になるといったところを目指しております。
 こういったところを整備することで、デバイス、電池等・非常にニーズが高いところもありますし、潜在的なニーズという意味では、コンクリート・鉄鋼材などのインフラ材料を含めた非常に広い範囲で、迅速かつ非常にクオリティの高い解析が可能になると期待しているところでございます。
 個別の細かい技術のところはここでは述べませんが、先月にプレスリリースも行いまして、本格運用は間もなく年明けに開始する予定でございます。
 次に、高分解能の粉末回折装置の御紹介をしたいと思います。右側に動画が出ておりますので、これも見ていただきながらということですが。これはBL13XUというところのEH3というところに導入いたしまして、高エネルギー対応の検出器、それから、自動のサンプルチェンジャーを備えまして、ハイスループットの構造解析を実施する。さらに、様々な試料環境のアタッチメントが可能ですので、そういったところで、ミリ秒オーダーのオペランドの構造解析が可能となっています。これは今年度から本格運用を始めておりますが、利用者の皆様から大変好評を得ている装置になっております。
 続きまして、データセンターの整備について、現状を御紹介したいと思います。
 現在、ビームラインの高度化が進んでおりまして、ある意味でデータが大量に出てくるような状況になっておりますが、そうしますと、次の課題として、データがあふれて解析が大変になってきており、場合によっては年単位、もしくは、それ以上の時間がかかるようになってきているという問題があります。あと、データ自体も非常に容量が大きくなっていますので、持ち帰るだけでも非常に大変だということも伺っています。こういった状況を解消して、次世代の解析基盤をつくるために、昨年度の補正予算によりまして、このデータセンターの整備を進めているものでございます。
 これはオンサイト、SPring-8の中に、解析環境、データストレージの基盤、それから、高速ネットワークの整備を進めていますが、それだけではなくて、サイト外、オフサイトの計算機資源、例えば、「富岳」であったり、パブリックのクラウドであったり、そういったところの連携を進めることで、共同研究者間のデータ共有の促進を図るということを狙っております。また、放射光学会とも連携しまして、メタデータの整備を行ったり、ワークショップ等の開催もしながら、いろいろユーザー間のニーズも拾い上げておりまして、来年度の夏に試験運用を開始する予定でございます。
 本格運用は2024年度以降ということを計画しておりますが、この場合、やはり持続的運用のためのいろいろな仕組みの検討が不可欠でありまして、例えば、大容量データに対する課金であったり、ユーザーアカウントごとの課金、これは多分少額のものになると思いますが、そういったことの必要性についても今後検討を進めていきたいと思っております。
 続いて、運用の改革について現状を御報告します。
 SPring-8は、利用も円熟期を迎えまして、様々なユーザーニーズをいただいております。ここでは典型例として、上から秘匿性、即時性、計画性、多様性、先端性、こういった5つの例を挙げておりますが、実はこの5つの例というのは相反するものもございまして、全てを同時に満たすことはなかなか簡単ではないわけですが、SPring-8はもともと非常に大きなキャパシティがございますので、これを前提としながら利用制度を改変しまして、様々なニーズに対応しようということを進めております。例えば、短時間の専有利用によって秘匿性や即時性を満たすとか、公募の回数を拡大することで即時性に対応するとか、そういったところで、いろいろな工夫をしてございます。
 こういったところを踏まえて、利用制度の改正を進めているところですが、その際には、従来、既存の制度に接ぎ木をするところではなかなかいかなくなってきておりますので、既存の制度を整理して簡素化を図った上で、新しい制度を導入するということを行っております。
 具体的には、制度の改正前、2021年の頭の時点では、こういった形で20近くの制度がありましたが、現状では、シンプルにこのような形にまとめております。これは成果を公開する、しないというのを縦軸に置きまして、それで、募集の頻度を横軸に取ってまとめたものでございまして、先ほど申し上げたニーズの4つ主要なものを、こういったところでカバーするということです。
 特に、これまで、真ん中の左側、成果公開優先利用というのがございますが、これは国の競争的資金の獲得が必要で、専らアカデミア側のユーザーに限られていましたが、この新たな制度では自己資金や企業の応募も可能となり、より計画的に活用いただけると考えています。
 また、先端性の確保、これは当然非常に重要なわけですが、ここについては、従来からSACLAのほうで基盤開発プログラムというものを行ってきましたが、それをSPring-8にも拡張し、ユーザーニーズを取り込みながら迅速に実験装置の高度化を実施するということを行っております。
 実は、基盤施設で装置の新陳代謝を図っていくということは結構難しい問題で、この左の下にポンチ絵がありますが、従来よくやられていたやり方では、例えば、利用者の皆様がそれぞれ競争的資金を獲得して、これはリードタイムがかなりかかるわけですけれども、この長いリードタイムを経ながら、皆さんそれぞれマイ装置を造り、それを施設に持ち込んで立ち上げるということが行われていましたが、実は、これを共用に出そうとした時点で、所有権であったり、維持費・保守費の問題であったり、いろんな問題が出てきて、なかなか広く出すということが難しい。こういった問題も認識をしております。特にSACLAのところでは早く問題になっておりましたので、こういったところをうまく迅速に進める仕組みとして、このプログラムの整備を行ったわけですが、右下の絵でございまして、このプログラムでは、あくまでも利用者からは御提案をいただく。この御提案を施設で検討させていただいた上で、施設が共用を前提として整備を行うというスキームになっておりますので、立ち上げ後に速やかに共用に供することが可能になります。
 一方、もちろん提案者である利用者の方々にとっても、自身のアイデアが速やかに形になる、しかも、それに対するクレジットがきちんと得られるということで、大きなメリットがございますので、自律的な先端開発を促進する仕組みとしまして、例年多数の応募をいただくようになってきております。
 そのほかにも幾つか、運用の改革、専用施設であったり、新規ユーザー・ポテンシャルユーザーへの対応であったり、あと、ユーザーの皆様からの細かいリクエストへの対応も順次進めてございますが、本日、その中で浮かび上がってきた課題について、次のスライドで2つ御紹介したいと思います。
 1つ目は、ハイスループット・Measurementのプロダクションビームラインの運用に関するものです。これは先ほど見ていただいたように、DXも含むビームライン高度化を進めてございまして、ユーザーの皆さんの利便性が大幅に向上して、実験期間も短縮されてきている。これは非常に良いことでございますが、一方で、オペレーションする側に立つと、オペレーションの密度が非常に高まりまして、なかなかユーザーサポートを特定の研究者、いわゆるビームライン担当者が全てこなすというところが、我が国はずっとそれでやってきているわけですが、そういったやり方は困難になってきているということです。
 それで、やはり持続的な運用のための検討が必要になってきておりまして、我々、施設側としてまずできることは、オペレーションの中で定型化できる部分は、なるべく定型化した上で、担当の研究者以外、例えば、外部委託も含めて、広く作業分担を可能にするということです。これは、SACLAのほうは非常にオペレーションが複雑ですが、そちらのビームラインでも類似の例がございますので、SPring-8でも十分可能だと思っています。
 一方で、このために新たな財源が必要になるような場合については、一定の受益者負担も含めて検討していく必要があると思っています。その際には、今年3月に文科省のほうで定められた共用ガイドライン等も参考になると考えております。
 もう一つが、幅広いアウトカムの発信です。特にSPring-8の産業利用のアウトカムは勿論報告されているのですが、我々現場からみると、本当はもっとあるのになという感覚が常にございまして、アウトカムが必ずしも社会に広く認知されているとは言えない状況がずっと続いているということが言えます。
 この原因を分析するために、今の制度の下でのユーザー、特に企業のユーザーの皆さんのインセンティブを考えてみたいと思いますが、まず、社会的にインパクトがあるんだけれども学術論文にできないという場合は、今の制度だと、成果専有利用しか選択肢がなくなります。成果専有利用にした途端に、アウトカムを発信するというインセンティブがユーザーから失われまして、それはユーザー内に埋もれてしまう。
 一方で、成果公開利用を選択された場合、企業のユーザーの方々も学術論文を書かれるわけですが、それによって企業各社で必ずしも評価が高まるというわけでもないということも伺っておりますし、社会に大きなインパクトを与えるという意味でも、論文のみではなかなか難しいということがあります。したがって、特に企業のユーザーの皆様に、学術論文以外のアウトカム発信を促すようなインセンティブの設計が必要だと考えておりまして、例えば、成果専有利用の中で、アウトカム発信型とか、準成果公開型といったサブカテゴリーを設けて、利用料金を減免するとか、そういったやり方が考えられると思いますが、ぜひこの場でも御議論、御意見をいただければと思います。
 最後に、国際情勢と今後の展望について簡単に御紹介します。
 海外の大型放射光施設は第4世代へ進んでおりまして、これは大型施設は各国で国際競争力の源泉と位置づけられているということですが、欧州、米国のアップグレードに続きまして、中国、韓国でも施設の新設が続くといった状況になっています。
 SPring-8も、いわゆるSPring-8-Ⅱへのアップグレード計画を策定しておりまして、これは性能の飛躍的な向上に加えまして、老朽化したシステムを一新しながら、大幅な省エネを目指すというところでございます。
 これも最後のスライドになりますが、特に後段の省エネの観点というのは、冒頭に申し上げました昨今の電力事情等々も考えますと、一層重要になってきておりますので、このSPring-8-Ⅱへのアップグレードの速やかな実現に向けて、改めて今後の御議論をぜひお願いしたいと思います。
 以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまのSPring-8、SACLAについての御説明について、御質問、御意見等ございましたら、お願いいたします。20分ほど確保しておりますので。
 では、岸本委員、お願いします。
【岸本委員】  岸本です。21ページのところについてコメントさせていただきたいんですけれども、この幅広いアウトカムの発信という部分は、私は極めて重要な部分と思っていまして、産業界においては、カーボンニュートラルとか、そういう中で、ますます激しい国際競争が起こっています。その中で、大型研究施設を活用した新たな知見を得たりとか、付加価値の高い製品作りを加速させていく必要があると思っています。また、大型研究施設の活用に加えて、データの理解なども含めて、産学連携を加速させる必要がますますあると思っています。
 そういった中で、こういう情報発信をすることによって、企業が一体何を課題として捉えているのか、また、将来に向かって、どのような方向に向かおうとしているのかということを積極的に発信できる場があると、オープンサイエンスにつながって、産学連携が加速していくと思っています。
 また、学術的意義は少ないんですけれども、新たな製品や研究に対して、成果が出るかどうか分からないが大型研究施設を使ってみようというチャレンジを誘起させる、そして、イノベーションの源泉をつくっていくということが必要になってくると思っています。よく言われることですけれども、計測なくして製品は作れませんし、知のないところから新たな発想は生まれないと思っています。
 ぜひこの利用制度改革について引き続き御検討いただきたいのと、また、国としても、ぜひ後押ししていただいて、実現に向かって進めていただきたいと思っていますので、少しコメントさせていただきました。
 以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 今の御意見に関連した御意見を持っていられる方、おられますか。
【坂田委員】  坂田です。今日はSPring-8からの課題ということで矢橋さんからの話がありましたけれども、今の岸本委員の話を聞いても、必ずしも大型施設に限らない、この2つだけではないと思いますけれど、量子ビーム施設全般の課題でもあるのではないかと思いました。つまり、SPring-8に限らず、量子ビーム施設という大きな視点で、ソリューションを考えることも必要ではないかと思いました。
 以上です。
【小杉主査】  大学共同利用は少し違うとは思いますけど、共用で料金も少し取りながら維持している施設は小型でもありますので、その辺りの大きな考え方ですよね。
【高橋委員】  高橋です。今の産業利用と成果専有のところで、岸本先生からコメントいただきましたので、関連したところで。
 私も、企業ユーザーとして、どういったインセンティブがあれば成果を公開できるのかというところは非常に興味深く、大事なポイントだなと思って聞いております。いつもなかなか成果を公開できずに心苦しく思っているんですけれども。
 1つ思うところは、例えば、高エネ研のほうでは、論文を出すと、特にこちらから何もしていなくても、あなた、プロテインデータバンクに出してますよねという連絡がわざわざ来るんですよね。そういった形で、プッシュ型のデータベースに登録してくださいというリマインドというのは、SPring-8側では何か行動されているのかという質問が1つと、そういった形で、何か公開されたときに、それを検索というか、エゴサーチではないですけれども、そういった形で何か話題になっていることがあれば、つかまえに行って、何かできることがないのかなというところが1つ。
 あとは、料金を減免することで公開するインセンティブになるかというところは、企業によっても分野によってもいろいろだと思うので、ちょっと分からないんですけれども、確かにそういった側面もあるかと思いますので、何かプレスリリースなど公開するということで、多少の料金の減免があるというのがインセンティブになる分野もあるのであれば、試してみる価値はあるのかなと感じました。こちらはコメントです。
 ありがとうございます。
【小杉主査】  では、SPring-8側から何か。
【矢橋グループディレクター】  矢橋です。ありがとうございます。
 今、高橋委員からコメントいただきました。
 まず最初にプッシュ型ということですが、これ、成果公開については非常に強い督促システムがありまして、そこのカテゴリーに入った方は、成果の公開の期限がありまして、何度も何度も督促が行くというシステムになっていますが、今の問題は、そこから外れた途端に何も成果が見えなくなると。いわゆる論文でないところのアウトカムをどのようにすくい上げるかというところでございますので、これについては、先ほどコメントいただいた話題性であったり、そういったところもありますし、プレスリリース等も非常に社会的には重要な価値があると思っていますので、そこを。
 ただ、もともとの制度設計が、アカデミアの論文が成果であるという定義に基づいてやっているところがありまして、そことの整合性をうまく取っていくという作業は必要になりますが、いずれにしても、社会的な使命というのがございますので、そこをいかに果たしていくかというところを考えていきたいと思います。ぜひ今後とも御議論いただければと思います。
 以上です。
【高橋委員】  分かりました。成果専有利用で成果を大分時間がたった後に論文にした場合に、そういった内容は施設側のほうでは捕捉されているんでしょうか。
【矢橋グループディレクター】  成果専有利用になると、恐らく届出をいただかない限り、何もないと思います。
【高橋委員】  私としては成果専有利用で利用した場合、届け出る義務がないものだから、論文になったとしても届け出ないというのが非常にもったいないと思います。
【矢橋グループディレクター】  ただ、成果専有利用で、論文を後から出すということは、そもそも想定されていないということがあります。
【高橋委員】  なるほど。義務ではないんですけれども、そういったケースは結構あると考えています。
【矢橋グループディレクター】  それは分野にもよると思いますし、もちろん論文もそうなんですけれども、例えば、特許であったり、プレスリリースであったり、そういったものは、今コメントいただいたように、自発的にやっていただく場合はあるんですけれども、それを促すようなメカニズムがないということなので、今の我々の知恵では、料金減免ぐらいしかいい知恵がないんですけれども、そこについて何かインセンティブがございましたら、ぜひいろいろ御提案もいただけるとありがたいと思います。
【高橋委員】  そういう意味で、例えば、プロテインデータバンクにデータを登録したときに、PFからは来るんですよね。あなた、登録してますよねというのが。成果専有で、公開の義務がなくても、公開してくださいというのが来るんですけれども。そういった形で捕捉して、成果専有だから義務はないんですけれども、ぜひこちらにアピールさせてくださいみたいなことを積極的に捕捉していくことができないかと思った次第です。
【矢橋グループディレクター】  承知しました。それをなるべく制度に落とし込む形でやって。恐らくタンパク質構造解析のところは非常に進んでおりまして、プロテインデータバンクも含めて整備が進んでおりますが、必ずしも材料のところではそうはなっていないので、なかなか捕縛が難しいという問題もありますので、そちらも含めて検討していきたいと思います。
【高橋委員】  論文にちょっとでもSPring-8を使ったという記述があれば、捕捉するぐらいのことができるといいと思います。
 すみません。ありがとうございます。
【矢橋グループディレクター】  ありがとうございます。
【小杉主査】  ほか、違う視点での御意見等。高原委員、お願いします。
【高原主査代理】  高原でございます。
 利用制度の改正による課題整理イメージというスライド、18ページがございますけれども、この中で、成果公開優先利用課題というのが、年6回チャンスがあると考えてよろしいわけですよね。そうすると、やっぱり今まで半年待ったりして申請しなければいけなかったのが、かなり効率よく、皆さんが申請して使っていただけるということで、CRESTとか、NEDOとか、そういうプロジェクトにとってはかなり有効な新しい課題であると思います。
 もう一つ、大学院生提案型課題というのは、今、日本では博士課程に進学する学生というのが非常に少なくなっているということで、こういうシステムをうまく運営していただけると、今の博士課程問題というのがかなりこの放射光分野では救えるのではないかなと思いますが、これはこれまでのシステムとはどのように違うんでしょうか。学生に対する援助とかは行われるのかどうかということなんですけれども、その辺りはいかがでしょうか。
【矢橋グループディレクター】  これはJASRIの田中理事から答えを。
【小杉主査】  田中さん、回答をお願いできますか。
【田中理事】  JASRIの田中です。
 大学院生の提案型課題は、まず制度としては、これまで1年間の有効期限というのがありました。修士の段階から博士に進む人に対しては、申請していただいて、博士に行ったところで実験していただくというものだけだったんですけれども、新たに大学院生提案型課題に長期型というのが設けられました。これは、御指摘のように、博士課程の後期に進んだ院生が、安心して博士の学術のテーマに取り組んでいただいて、それでSPring-8で実験して論文を書いていただくと想定して、3年間の有効の期限ということで、長期型と呼んでいるんですけれども、大学院生提案型の長期というものを用意させていただいて、選定委員会の下に、この課題を選定する審査委員会を設けまして、外部の有識者の先生方に参加していただいて、審査の上で採択し実験をするということが新たに始まりました。
 以上です。
【高原主査代理】  学生さんに対する旅費のサポートとかもやはりあるということでしょうか。
【小杉主査】  旅費のサポート、いかがですか。
【田中理事】  すみません。旅費のサポートは、これはどうでしたっけね。たしかあったと思うんですが、私が勘違いしている可能性もあるので、ちょっと。
【高原主査代理】  非常にいいシステムですので、うまく宣伝していただくと、アカデミアのほうからは非常に助かりますので、よろしくお願いいたします。
【田中理事】  はい。
【小杉主査】  共用施設でそこまでやっていただければ、本当にいいことですね。システム的にできるのかどうか、ちょっとはっきりしませんが。
 ほか、御質問等ございますか。どうぞ。
【佐野委員】  分子研の佐野でございます。
 SPring-8の状況、ありがとうございました。私自身は、今は分子研ですけれども、実際SPring-8を使っていたときは東芝に在籍していたものですから、ちょっと企業の観点からお話をさせていただきます。
 先ほど岸本委員等からもいろいろお話ありましたけれども、私も同じように感じました。
 一方、利用制度なんですけれども、非常にいろいろなバリエーションがあって、ユーザーとしては使いやすくなっている。特に企業から見ますと、先ほどのプロダクションCTとかは、まず画像で見てみたい、それでまた実験をやりたい、企業に帰って製品開発をしてまた見たいというようなことが結構あると思いますので、非常に使いやすいかなと思います。そういった形でバリエーションを増やしていただくことによって、SPring-8も活用させていただきますし、我々の製品開発なりのイノベーションにもつなげていただけると思っています。
 ただ、いろいろバリエーションが増えただけに、課題申請とか利用方法がちょっと複雑になってきているのかなという、そこら辺がちょっと心配なところではあるんですが、そこら辺はホームページ等で十分周知されているのではないかなとは思っています。
 すみません。ちょっと感想的な発言ですけれども、以上でございます。
【小杉主査】  施設側から何かコメント等ございますか。
【矢橋グループディレクター】  ありがとうございます。
 おっしゃるとおりで、我々もいろいろ変えているものでございますから、やはり利用者の皆様からのフィードバックは非常に重要だと思っておりまして、様々な機会で御意見やコメントをいただきながら、修正を適宜図っていくということを進めておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
【小杉主査】  ほか、何かございませんか。
 岸本委員、お願いします。
【岸本委員】  岸本です。今の話に関連するんですが、プロダクションCTというのは、恐らく非常に有効だと思うんですけれども、逆にデータ量が、解析結果だけを持って帰ってくるというならばあれなんですけど、データ量は非常に多いと思います。
 15ページに、データセンター整備が載っていて、こちらも大きく関わってくると思っていますが、ネットワークインフラについて、ここの図を拡大してみると、企業から学術ネットワークであるSINETにアクセスできるような図になっているんですけど、これはSINETにつなぐことができるのかなと思ってですね。
 というのも、実際問題、今のSPring-8でも、時分割データを取ったりしますと、結構膨大なデータ量になるんですね。これまで全て解析するのは、いろいろとパソコンを使ったりとか、サーバーを使ったりとかして解析していくわけなんですけれども、結構間引きしたデータの中で結論を導いて出してくることが多かったんですね、我々。ところが、最近、データ科学というのが出てきて、それを活用すると、全部のデータを使って統計的に見ると、今まで気づいていなかったところが見えてきたりとかするんですね。そうなってくると、やっぱりデータリダクションしたものだけではなくて、生データを持っていきたいといったときに、このネットワークインフラにつなげることができるのかというところが1つキーポイントになるのではないかなと思ったんですけど、いかがでしょうか。
【矢橋グループディレクター】  ありがとうございます。
 おっしゃるとおりでございまして、生データも、どこまでを生データと定義するかというところがありますので、こちらの資料にも、大きなデータについては従量制課金が必要というところをコメントさせていただいていますが、やはり我々側のデータを貯めておくところにも一定の限度がありますので、そこを見ながら進めていきたいと思います。また、例えば、成果公開の場合、論文の期限は3年というのがございますので、できるだけそこの保存ができるような形を目指しております。
 あと、恐らく全部のデータを全てどかっと移動するというよりは、やはりある程度の解析をここのオンサイト計算機資源に外部からログインしていただいてリモートでやっていただいて、ある程度リダクションしてからネットワークに移すというのが、現実的な1つの解ではないかと考えております。
 そのときに、やはりどこまでデータを残すか、そこはリソースを見ながら議論ということになりますが。そういう意味で、来年度から始まる試験運用のところが非常に重要だと思っています。実は、SACLAで我々も経験がありますので、ある程度見込みはあるのですが、やはりSPring-8はビームラインの数が多うございますので、しっかりとそこは定量的に見ながらやっていきたいと思います。
【岸本委員】  ありがとうございます。
 せっかくここまでDX推進を進めていく中で、そういうリモートで実験したものが持って帰れないとか、時間がかかるといった、これ、本当の意味ではユーザーにとってのDXになっていない可能性もあるので、ぜひ、そういうところも、営利目的ではない、研究所とつなぐだけだったらSINETが利用できるとか、企業からもつなぐことができると。そういったところは、もしかしたら国のほうで検討いただかなくてはいけないのかもしれませんけど、そういうところも検討いただければなと思いますので、よろしくお願いします。
【事務局】  事務局でございます。
 先ほどの大学院生提案型課題の件ですが、チャットで田中理事より追加のコメントをいただきまして、国内旅費のみですが、旅費支援がありますとのことです。
【阪部委員】  阪部です。ちょっと違う内容になりますけれども、海外の情勢ということで、海外からの利用という観点から、欧米の施設と比べて、競争力といいますか、現状はどのようになっていますでしょうか。
 2点目は、SPring-8-Ⅱですけれども、第4世代の欧米、中国、韓国の施設と比べて、どういった特徴、23ページの資料では、かなり明るいというところをSPring-8-Ⅱは特徴としていますけれども、第4世代の欧米の装置と比較してどうかということを教えていただけますでしょうか。
【矢橋グループディレクター】  承知しました。
 まず現状の海外のユーザーの利用ということですが、恐らく10%前後ぐらいかなと思っています。コロナもありまして、少し行き来が途絶えていましたが、そこが解消されまして、また戻ってきているところでございます。
 国際競争力についても、やはり特徴的なビームラインも幾つかありますので、高いところでは、もっと高い割合になっています。
 それで、第4世代のところですが、これはまず輝度の競争が当然ありまして、輝度で比較しましてもトップレベルを目指しております。
 あと、当然、輝度だけではなくて、日本の伝統として、安定性というところ、これは実は定量評価はなかなか難しいわけですが、やはり利用者の体感として、きちっと光源が安定して運転し続けているという、そこの信頼性を非常に重要視しておりますので、そこを損なわずに非常に高い性能を目指すというところ、瞬間最大風速ではなくて、常に高い性能が得られるというところを目指しております。
 もう1点は、先ほどもありましたように、省エネというところで、例えば、電磁石を永久磁石に偏向磁石を変えたり、いろいろなことを織り交ぜながら、全体の消費電力の半減を目指すということを進めております。
 以上でございます。
【小杉主査】  そろそろ確保している予定時間なんですけれど、最後に短い質問でもございましたら。
 坂田委員、お願いします。
【坂田委員】  矢橋さんにではなくて、皆さんに課題1についてコメントです。SPring-8だけでその課題1を解決するのは難しいと思いました。ユーザー支援のミッション、役割と関係しており、時代とともにそれらは変化していることは理解しています。これらはできるものの、登録機関の業務内容や共用法の法定要員の必要条件と関係するので、施設者がビームライン担当者の役割を独自に変えるのではなく、文科省様も含めて検討する必要はないでしょうかと思いましたので、コメントしました。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 では、ほかに。
 SPring-8のアップグレードの問題は、来期の委員会等でも審議をしていただく必要があるかと思いますので、その辺りは、事務局、よろしくお願いいたします。
 あと、国内施設の連携とか、国全体としてやっていくというのは、もともと量子ビーム利用推進小委員会のミッションでもありましたので、今期は共用施設中心の議題が多くて、なかなか国全体の話はできなかったんですけど、そういうことを含めて、来期に申し送りたいと思います。
 それでは、一旦SPring-8、SACLA関係は終わりまして、議題(2)のほうに移りたいと思います。J-PARCです。
 J-PARCセンターより、中間評価報告書で示された指摘事項への対応状況等について御説明をお願いいたします。
【大友ディビジョン長】  J-PARCセンターの物質・生命科学ディビジョンのディビジョン長をしております大友と申します。よろしくお願いします。
 J-PARCセンターは、JAEAとKEKの共同運用でありますけれども、物質・生命科学実験施設MLFに関しては、登録機関CROSSに参画いただきまして、共同で運営しております。
 最初に概要を簡単に説明してから、中間評価に対するフォローアップの説明をさせていただきます。
 J-PARCは、陽子加速器の施設でありまして、右のJ-PARCの原理と囲ってあるように、標的原子核に陽子ビームをぶつけて、そこから出てくる二次粒子、中性子、ミュオン、ニュートリノ、K-中間子を使って実験をしております。MLF、生命科学実験施設では、中性子とミュオンを使っております。その下にあるように、差し渡し1キロに達するような非常に大きな施設がJ-PARCであります。東海村にあります。
 J-PARCで展開するサイエンスも非常に幅広くて、水素やリチウムなど軽い原子核に感度の高い中性子散乱実験、それから、マイクロ磁性プローブとしてのミュオンというのが、MLFで展開しているサイエンスでありまして、その中で産業利用の成果を出していくと。プラス、K-中間子やニュートリノを使いまして、宇宙の始まりと物質の起源に迫るというような研究もされておりますが、今日はここには触れないでおります。
 MLFのビームラインですけれども、中性子源の場合には、中性子源から、先ほどの陽子を水銀のターゲットにぶつけて出てくる中性子、点光源のような形で使用していまして、中性子源を中心に、21本のビームラインが、その中性子源を見るというような形になっております。現在21本の中性子実験装置が稼働中でして、それぞれ性格の違うビームラインを運用しているところです。
 産業への貢献と他機関への連携というキーワードですけれども、J-PARC施設の特徴としては、右に四角の表にありますけれども、パルス当たりの中性子数の比較でいきますと、世界で一番明るいといいますか、たくさんの中性子が出るという施設になっています。
 J-PARCの中性子科学研究の特徴としては、年間約400件の中性子科学の課題を実施しておりまして、産業利用は大体25%。中性子は軽元素、磁気に敏感な性質を持つので、グリーン戦略や防災、文化財等の研究にも貢献していきたいと考えています。
 産業利用的な意味合いでいきますと、右に写真があるような幾つかの成果が出ておりまして、これまで中性子でなかなか難しかった分野に展開しつつあるところです。海外や国内との連携も進めているところです。
 次のページからが中間評価の報告書対応なんですけれども、これも詳細は述べませんが、4つの分野に分かれるような区分でのコメントをいただいております。施設の整備・運用が1、2として施設の運営、3として中性子・ミュオン利用の推進、4として総論というのがございます。1MWの早期達成ですとか、経営的視点ですとか、オープンアクセス等のキーワードがあります。
 それについて、次のページにあるような整理で今回はブレークダウンしまして、それぞれについて説明させていただくことにしております。
 最初の施設の整備・運用というところですけれども、ここの中間評価への対応としては、ビーム強度、1MWの早期達成を目指しての取組、それから、生命科学に必要なサイドラボの充実についての取組について御紹介します。
 ビーム強度に関しては、下のグラフで見ていただくのが一番分かりやすいかなと思いますけれども、黄色の縦の棒が陽子ビームの出力を表しています。昨年の4月は700kW運転を達成しまして、昨年度は通年で700kWで運転しました。その結果を踏まえて-830kWに今年度よりパワーアップしまして運転しております。稼働率は95%と非常に高い水準にありまして、6月まで95%と記載しておりますけれども、11月から2022年の下期の運転を始めておりますけれども、再開から現在まで、やはり95%の稼働率を達成しております。
 このように安定した加速器の運転、中性子源の運転を実現しているわけですけれども、100kW程度のランプアップで徐々に進めておりますのは、中性子源の耐久性についてR&Dが必要であるからです。それは、パルス中性子ということで、25Hzで非常にパワーの高い陽子が照射されるわけですけれども、1μs程度の非常に短い時間に1MWの陽子が中性子源に照射されることによりまして、圧力波が水銀に生じる。それによって、圧力波が生じて、真空のバブルができて、その真空のバブルが水銀容器の内側をえぐる、ピッティングと言っていますけれども、それが起きる。ターゲット交換に要する時間を考えますと、夏季停止期間にしかターゲット容器の交換時期がないので、この寿命をいかにちゃんと1年間もたせるかということが、安定的な運営に関わるということです。
 残念ながら、右側の図が、水色の棒が1本しかありませんけれども、年数が上がりますと、ビームパワーは上がってきておりまして、現在は830kWなんですけれども、この水色の棒グラフが長ければ長いほど、気泡注入効果による圧力波の低減というのが、効果が大きいことを示します。ここのグラフがないと説得力がありませんが、ビームパワーが上がるけれども、低減効果は上がっているという図が入っておりました。
 ということで、R&Dを高めて、いろいろとレベルを高めておりまして、徐々に1MWに対する信頼性というのが上がってきておりまして、来年もしくは再来年には1MW運転を開始しようとしているところです。
 ビーム強度が上がりますと、やはり消費電力の問題がありまして、低電力加速空洞の導入が検討されています。これは、MLFにビームを照射する3GeVシンクロトロン、ここではRCSと書いていますけれども、RCSの加速空洞の電力を半分にすると。これによりまして、J-PARCの消費電力は約10程度は下がることになると思います。RCSの加速空洞に関しては、40%程度の消費電力の減になっておりまして、こういう形で消費電力を抑えつつ、1MWに到達すると。今年度の補正予算で、その導入を加速しているところであります。
 それから、生命科学に必要なサイドラボということで、中性子は水素に対して非常に感度が高いといいますか、水素を見分ける能力がありまして、重水素化することで、軽水素と重水素の位置の違いから生命科学に迫ろうというのが、中性子で生命科学を行うメリットになるわけです。そのためには、普通は軽水素で構成されている物質を重水素化する必要がありまして、その重水素化するための設備を、我々、重水素化ラボと呼んでいます。これの導入が既に始まっておりまして、R5年もしくは6年から一般課題の申請を開始しようとしております。
 これと併せて、京大の杉山先生のグループがAMED BINDSの中で中性子利用というのを採択されておりますので、京大の複合炉とQSTをリエゾンとして、BINDSのMLFへの展開をこれから考えていこうとしております。
 それから、施設の運営です。利用体系の見直しとアクセス道路についてですけれども、利用体系に関しては、まだ検討中であります。J-PARCは、成果公開と非公開ということで、最初から2つに分けておりまして、一般課題、緊急課題、非公開課題、緊急課題ということで、緊急課題は、成果公開も非公開も両方とも含まれていたんですけれども、より使いやすく、経営的視点の導入ということで、幾つか利用体系を今検討しております。
 新しい体系では、一般課題の中には、一般課題(リモート)というものも設けて、これはユーザーが来訪しないで行う場合、それから、緊急課題は保存するんですけれども、大型資金等の場合に、長期の利用が必要な場合には、優先課題というもので請け負うと。非公開に関しても、普通の非公開のほかに、一部公開的なもの、それから、有償随時課題というようなものを導入しようと考えております。
 次のページに行っていただきますと、それぞれに関して比較的詳しい説明がありますけれども、これは割愛させていただいて、後で質問がありましたら、戻らせていただきます。
 それから、「有償随時課題」というのも、これも実は産業界の方からも要望が強いんですけれども、我々の東海のJAEAのキャンパスといいますのは、3号炉と言われるJRR-3という定常中性子源もありまして、広いニーズに応えるには、特に随時のニーズに応える場合には、この3号炉、定常炉との連携というのも非常に重要でして、それらについて、ユーザーがMLFに出すべきか、JRR-3に出すべきかということを迷うことなく、まず使ってみたいと思ったときに相談できる窓口をつくろうということで、組織が実は違うんですけれども、それをまたぐような形で、「J-JOIN」というものをつくりまして、これから有償随時課題に応えていきたいと考えております。来年度から、この有償随時課題の運用を予定しております。
 次のアクセス道路について簡単に述べさせていただきますけれども、写真の黄色で書いてあるのが、JAEAの原子力科学研究所の敷地になります。その中で、J-PARCは赤い枠線で囲われているんですけれども、ここに行くためには、JAEAの正門を通って行く必要があって、非常にアクセス性が良くないというような御意見をいただいていまして、アクセス道路というものを造りまして、国道から直接J-PARCのサイトに入れるような道を、現在、詳細設計及びかかる許可認可の手続を順次開始しているところであります。
 中性子・ミュオン利用の推進ということで、御紹介したいと思います。
 1つ目は、中性子産業利用報告会における学術/産業の交流ということで、毎年の行事として、中性子産業利用報告会というものをやっています。これはJ-PARC、JRR-3、茨城県、CROSS、中性子産業利用推進協議会の主催で行っていまして、プログラムは、四角で囲われている中のような形でつくられているんですけれども、プログラム自身も、J-PARCの研究者だけ、JRR-3の研究者だけではなく、中性子産業利用推進協議会の企業のメンバーの方にもプログラムにコメントいただきまして、学術と産業の交流ができるようなプログラムを一緒に考えているというところです。
 7月15日金曜日の特別講演で、SDGsが科学技術に求めるものということで、JSTの名誉会長の中村先生にお話しいただいていますけれども、こういう形で、既存の産業利用とか、そういうことにとらわれずに、なるべく広くこうした中性子利用、ミュオン利用を広げていきたいと考えています。ちなみに、参加者数は現地で141名、ウェブで159名、アンケートの結果によりますと、企業の方にも満足していただいているというところです。
 「一般課題(長期)」制度の導入による学術成果ということで、これはユーザーの方にも中性子利用の高度化や成果創出の促進を進めていただくために、3年間のビームタイムを確保可能な長期課題として、ユーザーが中心になって、中性子利用の高度化と成果創出を促進するということで、大型プロジェクトの実施や企業との共同研究の実施にも活用しています。
 ここで成果例としてお示ししているのは、東大物性研の中島先生の御研究でして、左下の写真がちょっと切れてしまって残念なんですけれども、これは1テラのビームに平行な磁場をかけまして、偏極中性子小角散乱を実施したと。それで、ユーロピウムアルミ化合物の空間反転対称な結晶構造を持つ磁気スキルミオンの物質を、磁場の影響とか詳細に調べるというようなところで、実験技術の高度化によって、中性子の特徴を使って新しく見えたというものが、Nature Communicationsに出ております。こういった研究は、これからも推進したいと考えています。
 それから、学術だけではないところとして、豊田中研との共同研究による人材交流と育成ですけれども、豊田中研とは、令和1年から共同研究契約を結んでいまして、第一期は「電池およびパワーコントロールユニットに関する中性子応用特性評価技術に関する研究」ということで、J-PARCへ3名の社員の方に常駐していただきまして、特定課題推進員という形で、ポスドクも2名雇用しています。
 R4年からは、第二期として「燃料電池およびリチウムイオン電池に関する中性子応用特性評価技術に関する研究」ということで、常駐派遣していただくような形で進めておりまして、これは豊田中研からの参画者が20名、JAEAが9名、KEKが6名、CROSS6名という形で、組織横断的に共同研究を推進しています。
 その下にありますように、燃料電池の中の水の運動ですとか、それから、右下にあるような、燃料電池の中で氷がどのようにできてきて、どのように溶けるかというような中性子イメージングとか、これまでになかったような新しい研究と、それの成果への結びつけというところも、お互いに議論しながらやっているというところで、こういう形の産業利用というのが中性子の場合は非常に必要なのかなというところです。
 出てきたデータのさらなる解析の高度化ということで、研究DXの導入をJ-PARCでも進めております。これに関しては、少し簡単に説明したいと思いますけれども、やはりデータストレージシステムをきちんと整備して、かつ、リアルタイムで解析できるようなCPUも用意しておりまして、まずはオンサイトでの解析のサイクルを速くするということをします。あわせて、装置の高度化ということで、左のほうに反射素子増設ですとか、検出器の高度化等ありますけれども、出てきたデータは、クラウド等やGakuNin RDMに持ち出せるようなポートも作るというようなことで、これから中性子でもDXを強化していきたいと思いますし、データ駆動型科学というものも、幾つかのツールとしてだんだんと整備できておりまして、こういうものを共通の計算環境の中で利用できるように整備していきたいと思っています。
 次は、海外との連携なんですけれども、ESSとの協定更新ということで、今年の10月に、ヨーロッパにあります5MWの陽子加速器の建設を目指すESSというところでは、もう建設がかなり進んでおりまして、右端にあるように、建物はほとんどできておりますけれども、これからコミッショニングであるというところで、J-PARCの経験をぜひ生かしてほしいということで、協定の下に協力をしていますけれども、こういう機会というのは、ESS側だけではなく、J-PARC側も、こういうコミッショニングを経験していない若手がかなりおりまして、そういう若手の方にもぜひいろいろと参画していただきたいなと考えているところです。こういう形で、国際連携もうまく使っていきたいと思います。
 次に、JRR-3との連携の成果ですけれども、時間がかなり押していますので、幾つかお示ししましたけれども、それぞれ、J-PARCとMLFの特徴を生かした形での利用というのがもう既に始まっておりまして、こういうものをきちんと発信することで、今後もユーザーの方のJRR-3とJ-PARCとの連携利用は進めていきたいと思っています。
 マルチビーム連携ということで、放射光やスパコンとの連携についても、CROSS中心に進めていただいておりまして、お互いに相補利用の垣根をなるべく下げるような形の環境をつくっていきたいと思っております。
 論文に関しては、徐々に伸びておりますが、Top10%の論文の割合が低いということに関しては、今後の検討が必要です。論文の数としては、海外の施設に比べるともう少し改善が必要なんですけれども、どうやって増やすかということに関しては、これからまた検討していきたいと思います。
総論ですけれども、安全への取組ということで、これに関しては、MLFに限らず、J-PARCセンター長を中心にやっていただいているところですけれども、「安全の日」ということで、J-PARC全体で安全に関しての意識を共通化しようということで、外部講師による講演や、各施設からの安全に関する発表などで、J-PARCセンターの中での安全文化醸成活動を行っています。参加者数も350名ということで、非常に多くの方に参加していただいているところです。これで毎年繰り返しながら醸成していこうということです。
 地元との交流も、センター長中心に積極的に行っていまして、J-PARCハローサイエンスというものは、毎月、東海村で開催しています。それから、東海村エンジョイ・サマースクールという形でも、特に子供さんたちとの交流というようなことを目指しています。J-PARCのオンライン施設公開もやっております。
 そのほかにも、様々な地元との交流をやっておりまして、いろんなところに出展しておりますね。
 最後は、施設・整備の高度化についてですけれども、中性子に関しては、様々な高度化というものは、DX的なこと、情報科学的なこともやっているんですけれども、測定技術という意味では、中性子がスピンを持っていることを最大限に生かすという取組というのが、まだMLFでは余地があるということで、と言いつつ、世界でもかなりまだ難しいところなんですけれども、そういう偏極デバイスそのものをきちんと内製的に開発して、いろんな装置に展開しようということを行っています。
 それから、これもなかなか維持が難しいんですけれども、右にあるような検出器の開発、これもMLFの中で検出器の開発チームというのがありまして、こういう検出器の開発というものを自分たちで行うことで、将来的な高度化、これまでできなかったことを実現するような装置開発が可能になりますので、MLFの中でもこれは非常に重要なアクティビティなんですけれども、ここで示しているのは、単結晶装置用の検出器なんですけれども、これまでの検出器は256×256ミリ、解析エリアが208×208ミリだったんですけれども、その茶色い枠とうのが不感部分だったんですね。それを改良して、右側にあるような縦長で、右の端には不感領域がないような検出器を造って、それを配置することで、ギャップレスの中性子単結晶装置を造ると、そういうことも行っております。
 以上になります。ありがとうございました。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、J-PARC、MLFからの御説明について質問、意見等ございましたら、よろしくお願いします。
 内海委員。
【内海委員】  J-PARC、本当に複雑な組織の中を非常に苦労して運営されているのが良くわかります。共用ビームライン、KEKが造られているビームライン、それから、茨城県のビームラインがあると思うんですが、今日のお話で15ページの利用体制の見直しについては、共用ビームラインについての話で26ページの論文数の全体像は、3つのカテゴリーのビームライン全て、すなわちMLFから出ている全部という理解でよろしいんでしょうか。
【大友ディビジョン長】  利用体制については、これはKEKのビームラインにも適用できる範囲に適用していくという形に考えています。
【内海委員】  そういうことですね。
【大友ディビジョン長】  今は、一般課題は、内海委員のおっしゃるとおり、共用ビームラインと大学利用共同ビームラインでは、扱いが本来違うんですけれども、審査等は同じ基準でやるべきと考えていて、ビームラインは、最後は大学利用共同ビームラインとか共用ビームラインと分けるんですけれども、サイエンティフィックなレボリューションは一緒にやる。それで全体として高めていくということを目指しておりまして、この利用体系についても、同じような形でやっていこうと思いますけれども、例えば、有償随時は、大学利用ビームラインではできるけれども、非常にビームタイムが限られるとか、そういう制約は生じると。制度としては、どのビームラインにもできるようなことを目指しております。
【内海委員】  もう一つだけ、J-PARCがの出来た当初は、産業利用についてはかなり茨城県ビームラインの比重が高くて、茨城県さんがこれをかなりしょっておられたような気がします。現在KEKビームラインについては、産業利用の話は横へ置くとして、共用ビームラインの中での産業利用の比重というのはどのぐらいまで増えているのでしょうか。
【大友ディビジョン長】  比重でいくと、20%ちょっとですかね。15%かな。
【内海委員】  逆に言うと、茨城県さんは、ほとんど100%が産業利用でしょうか。
【大友ディビジョン長】  そういうわけでもないんですけれども。
【内海委員】  でもないんですか。
【大友ディビジョン長】  はい。
【内海委員】  分かりました。理解がよく深まりました。ありがとうございます。
【大友ディビジョン長】  すみません。明確に答えられなくて申し訳ないです。
【小杉主査】  ほかにございますか。
 大竹委員、お願いします。
【大竹委員】  何点かありまして。私、中性子をやっているものですから、今御紹介いただいたお話の中でも、J-PARCは、産業利用というところは、海外の施設と比較しても、ここまで産業利用が多い大型施設、中性子の施設というのは、ほかに世界的にございませんので、先ほど論文数の御紹介のときに、海外の施設と比較してというふうにディビジョン長おっしゃられましたけれども、まさに先ほどSPring-8の矢橋さんのお話のときのように、やはり専有が多くて、それだけ海外の施設よりも産業利用で専有時間が多いときに、同じ計算法で論文数を比較なさらなくてもいい。そういう意味では、同様の議論を先ほど岸本委員おっしゃったように、量子ビームとしての全体の枠組みを考えて、ちょっと年数はたっても論文が出ますとかいうことがフィードバックできるような制度に、J-PARCのほうも、また、今動いているJRR-3もそうだと思いますけれども、全体としてお考えになると、成果としての評価は、もうちょっと正しく、高くなっていくのではないのかなというところを思っているのが1点。
 あと、生命科学のところで、水素に対しての重水素の取組、これ、非常に重要と思います。京大原子炉の複合研との連携。ただ、一方、私も小型をやっていて、小型ですとなかなかそこはできないからということで言われるんですけれど、重水素化しなくても、そのままのサンプルで見えませんかという取組で。J-PARCのほうでは、動的核スピン偏極の取組もなさっていらっしゃるので、やはりそういった、そのまま置換しない動きに関しても重点的に促進されるというような方針も重要ではないかなと思っています。そこはサイエンスの発展に対しても非常に重要なような気がしております。
 あと、最後に1点だけ。検出器ですが、これもやはり大型施設量子ビームだからこそ抱える最先端の検出器の開発というのは、国としてやはり施設が抱えられるようなことがないと、ビーム強度、まさに電力をどんどん上げていってというよりは、検出効率を上げるという、そういった視点での取組にも、J-PARC、JAEA、KEK、大型のほうで、またSPring-8のほうでやっていらっしゃる取組も参考になさってやっていくと、非常に効率的になっていくのではないかなと思います。
 ただ、やはり論文数のところは、本当にそういう割合でちゃんとやると、もうちょっと高い評価になるかと思いますので、そういった数値を出していただけるといいかなと思いました。
【小杉主査】  何か施設側から。
【大友ディビジョン長】  今のお話は、やはり産業利用のインパクトなりをどういうふうに見るかということになると思うので、おっしゃるとおり、SPring-8さんが御苦労されているような話、社会的なインパクトの部分をどういうふうにアピールするかということが1つかなと思いますけど。
 論文数というのは統計が取りやすいので、どうしても同じ基準で比較するとなると、論文数というのが1つ出てきてしまうというところで、悩ましいところでありますけれども、参考にさせていただきたいと思っています。
 水素の件は、動的核偏極は、重水素化しないでできる部分はいいんですけれども、非常に低温化しなくてはいけないとか、均一な磁場の中に置かなくてはいけないということで、実験が非常に難しいということで、茨城大やJAEAで動的核偏極をやられてはいるんですけれども、汎用性という意味で、まずはこの重水素化のほうから取り組みたいと思っているところです。
 3つ目の質問であります検出器は、ほかの大型施設との連携もそうですし、そもそもKEKの中にも検出器のグループはありますので、そういう意味では、物質化学の分野だけではなく、原子核、素粒子の分野の方々との交流も、J-PARCというところのそこがいいところではあると思うので、やっていきたいと思っています。ありがとうございます。
【小杉主査】  その成果の見せ方や評価の仕方というのは、SPring-8との相談なりの機会はあるんでしょうか。
【大友ディビジョン長】  情報の収集の仕方とか、そういうところでは、現場レベルではやっていると思いますけれども、どういうインパクトがとか、意味づけみたいなところは、まだあまり十分に私自身は相談させていただいていませんので、今日、柴山委員がおられたらあれだったんですけど、CROSSのほうでは、ひょっとしたらJASRIとやっておられるかもしれません。
【小杉主査】  NanoTerasuも共用施設になるでしょうから、来期の小委員会で、そういう料金や評価の仕方なり、産業応用という面では、いろんな問題があると思いますので、事務局、そういうことも次期に検討していただくという機会をつくっていただくといいかもしれないです。
 ほか、何かございますでしょうか。
【田中委員】  田中です。2つほど質問がありまして。
 1つは、ラピッドサイクルのシンクロトロンで電力を40%削減とかというお話が途中で出ていたと思いますけれども、ちょっと速くて、その中身は理解できなかったんですけれども、どうやって40%電力を削減したのか、簡単に分かりやすく説明いただけるとありがたいです。
【脇本副センター長】  J-PARCの脇本です。
 すみません。私も専門ではないので、ちょっと正確に御説明できない可能性があるんですが。従来、プッシュプル型といって、加速空洞の両側にプラス電圧とマイナス電圧をかけるという方式から、シングルエンドといいまして、片側はもうアースで、片側だけに電圧をかけるという、そういう構造に変えて、電力の導入の仕方を全く新しいものにしたんですね。これをやってみたところ、もともと加速器業界ではあまりこういうやり方は検討されたことがなかったようなんですが、実はやってみると、これはかなり効率が良くて、電力が削減できるということが分かったので、実際に実機を造って、その実証をしたところ、ここの絵にあるように、40%削減ができたということだと聞いております。
 すみません。私も専門家ではないので、ざっくりとした説明で。
【田中委員】  そうなんですね。何か不思議な感じですが。
【脇本副センター長】  すみません。そこまでになると、ちょっと答えられるものがありませんで申し訳ない。
【田中委員】  すぐには理由が分かりませんが、兎に角、非常に効率が上がったということなんですね。
 先ほどほかの委員もコメントされていましたが、SPring-8もJ-PARCも大きな基盤施設ですが、現状の社会情勢を鑑みると、そういうところでもやはりグリーン化していくというのは、避けられないことなので、検出器や様々な観点から効率を上げていくという努力が多分これから非常に重要になってくると思います。
 2つ目ですが、平均パワーでは1MWに届かないけれども、パルス当たりの中性子が非常に強いという話がありました。でも、一方で、ヨーロッパのほうで圧倒的な平均パワーと5MWのシステムが動き始めようとしているときに、その辺で対抗しようというのはあるのかないのか、どの辺にフォーカスしていく、ビーム性能から考えて、どういうところを掘り下げていけばいいのか、その辺りの戦略というのは何かお持ちか、お聞きします。
【大友ディビジョン長】  ヨーロッパの5MWというのは、最初は2MWで始めるんですけれども、パルス当たりでいくと、やはりJ-PARCのほうが明るいんですね。そのパルス当たりの明るさを、パルスというのは、J-PARCの場合だと、40msごとに中性子が発生するんですけれども、そのパルスとパルスの間の時間を使って波長分析なりエネルギー分析なりをしていて、その幅が広いほうが広い波長の中性子を使える、広いエネルギーの中性子を一度に使えるというメリットがあります。
 そういうところを使うと、例えば、先ほどイメージングで氷と水の分析をしますと言ったのも、それも長波長と短波長の効率を水の状態での断面積の違いを使って氷と水の分析をしようとしている、そういうときには幅広い波長の中性子が必要ということで、J-PARCだからこそできるということは、そういう意味では、今掘り下げている最中です。一応分かりやすい例として説明をしてみましたけれども。
【田中委員】  ありがとうございます。
 J-PARCの中性子のパルス的な特徴は、ほかにはないので、そこが競争力になって、ほかではできないことがいろいろと展開できる、その余地は、まだ今後も残っていくということですね。
【大友ディビジョン長】  はい。ありがとうございます。そのとおりです。
【小杉主査】  では、阪部委員の御質問、お願いします。
【阪部委員】  ありがとうございます。
 先ほどの人材育成の観点からですが、ESSに今後若い人を参加させるというのは大変魅力的なお話だと思ったんですけれども、実際、そういうプログラムがあれば、我先に行きたいという若い人たちはたくさんいるものなんでしょうか。
【大友ディビジョン長】  いると信じていますけれども。実は、このワークショップにも若い人をあえて連れていったんですね。それで非常に刺激を受けているのを見ていますので、そういう機会があれば、行きたいという方はたくさんいるのではないかなと考えております。
【阪部委員】  現在の若手の研究者、技術員に加えて、将来を見据えて、大学院生ぐらいのレベルの方も参加できるような枠組みというのは可能なんでしょうか。
【大友ディビジョン長】  そうですね。ぜひそれは考えていきたいと思います。
 今のところ、KEKの枠組みはすぐに使えるかもしれません。
【小杉主査】  KEKはできると思います。
【大友ディビジョン長】  複雑な組織ではありますけど、組織のそれぞれのいいところを生かして、今のような若手の投入は実現していきたいと思っています。
【阪部委員】  そうですね。やっぱり一つの国では大きいプロジェクトというのはそう頻繁にはありませんので、ぜひこの海外のプロジェクトも人材育成に活用していただければと願っております。ありがとうございました。
【大友ディビジョン長】  ありがとうございます。
 申し忘れましたが、スウェーデンは非常に人材交流に積極的で、日本とスウェーデンの間の人材交流のファンドのようなものも作っておりまして、そういう形で若手の交流もコロナ明けに進んでいくと思っています。
【小杉主査】  スウェーデンの放射光の施設もインターンシップのプログラムを持っていて、かなり発展途上国から若い人を呼んだりしてやっていますね。そのようなカルチャーがあるのだと思います。
【森委員】  御説明、どうもありがとうございました。J-PARCがパルス当たりの強度が非常に強くなって、1MWにも及ぶようなすばらしい施設になったことを伺いました。
 やはり日本では、このようなパルス中性子と定常のJRR-3が両方きちんと動いているということが非常に重要で、それを両方有効に利用していく、連携して利用していくということがとても大事だと思っております。
 研究者コミュニティのユーザーから見ても、やはり両方の申請課題の連携をすることによって使えるということはとても重要だと思っておりまして、パルスも定常も利用してサイエンスを進めていくということ、それから、両方を知っている学生さんがいて、その方たちが人材育成で育っていくということも重要だと思います。私としてはまだまだその点に関しては伸び代があると思いますが、いかがお考えかということをお聞きしたいと思います。
【大友ディビジョン長】  おっしゃるとおり、そこはまだまだ伸び代があると思います。JRR-3も、昨年再稼働しまして、ようやく1年たったというようなところですが、JRR-3が動くことで、J-PARCの課題数が減るかなとも思いましたが、そのような事もなくて、やはり両方とも使いたいという人はかなりいるのだということは認識しておりますので、先ほど申し上げたように、競争的な利用の成果というものを、JRR-3の方々と協力して、ユーザーに発信しつつ、若手の方にも参加してもらえるようにと思っております。
 中性子・ミュオンスクールというのを毎年やっているんですけれども、中性子・ミュオンスクールでは、3号炉も含めて、MLFとの両方のビームラインを使った、JRR-3とMLFでのハンズオンの実習というのをやっていまして、両方はまだないんですけれども、3号炉を使う人とMLFを使う人がごっちゃになってスクールをやっていますので、そういう接点もいろいろつくりながら、これからJRR-3との競争的利用というのをもっと盛り上げていきたいと考えています。まだ余地はあると思います。
【森委員】  よく御存じと思いますけど、強磁場に関しても、パルスと定常と、ワンストップでどちらににも申し込めて、利用に関してガイドするような研究者がいらっしゃって、アドバイスができるようなシステムがあってもいいのかなとも思います。
 今後、共同利用研としても連携させていただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
【大友ディビジョン長】  よろしくお願いします。
 先ほど申し上げたJ-JOINというのは、まさに森先生がおっしゃったような、MLFというか、パルスと定常を区別しなくてもいいです、随時御相談くださいという窓口はつくり始めておりまして、森先生がおっしゃるような方向で我々も実現したいと考えています。
【森委員】  あとは、やはり課題申請のところですね。
【大友ディビジョン長】  そうですね。
【森委員】  そこの連携のところだと思いますので、やっぱりそこがコミュニティに見えてくると、サイエンスもますます発展していくと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
【大友ディビジョン長】  よろしくお願いいたします。
【森委員】  どうもありがとうございました。
【小杉主査】  坂田委員どうぞ。
【坂田委員】  坂田です。量子ビーム施設の役割分担の視点からの確認です。
 25ページのマルチビーム利用連携と利用者への技術情報支援というのを見てみると、SPring-8とか、RISTなどは出てきておりますけれども、他の放射光の施設、例えばPFなど連携はあると思います。今回、SPring-8、SACLA、J-PARCの中間評価のフォローアップだということで、そういったほかの施設、との役割分担などはあえて割愛されて説明がなかったという理解で正しいでしょうか。
【大友ディビジョン長】  PFとの連携も適宜検討して行っているという認識でおります。
【坂田委員】  そういうことですね。
【近藤委員】  簡単な質問なんですけれども、14ページに、新しい課題設定のお話がありましたが、今の森先生のお話とも関わりがあるんですが。やはりユーザーには中性子施設の利用は垣根があるのですけれども、リモートでできる課題というのが新設されていて、これは非常に魅力的に感じました。実際その中身、リモートはどこまでのリモートなのかというところについて、簡単にお話しいただけましたら幸いです。
【大友ディビジョン長】  基本的には、リモートと申し上げているのは、定義としては、ユーザーが来訪しない実験ということなんですけれども、初めての方、実験の経験がない方にリモートという事は今は考えておらず、実験を成功させるのはかなり難しいですね。そのため、基本的には、初心者の方には、まずは実験室に来ていただいて、こういう装置で取っていますということは御理解いただかないと、結局、解析のところで難しいことは多いと感じています。
 今、ここには書いておりませんが、ファーストトラックプロポーザルというシステムがMLFにはありまして、それはまさにお試しなんですけれども、例えば、パウダーの粉末回折とか、比較的測定が容易なものは、試料を送っていただいて、スタッフが代行して、このような試料でしたらこのようなデータを取れますというようなことを出すことはできます。ですので、そういうところから始めていただくのがまずは良いと思っておりまして、リモートは、もうちょっと本格的といいますか、普通の課題審査と同じレベルでやる、審査をしてからの話になります。
【近藤委員】  分かりました。
 いろいろな初心者に向けての用意もされているということなので、そういうチャネルをこれからもたくさん用意していただければいいなと思いました。
 どうもありがとうございました。
【大友ディビジョン長】  ありがとうございます。
【小杉主査】  次が最後の御質問とさせていただきます。古川委員、お願いいたします。
【古川委員】  古川です。
 今の質問にも関連しているんですけれども、今後、高度化とか、マルチビームユーザーとか、どんどんユーザーを広げていくという話等々あったと思いますが、それが起こると必ずついて回るのは、技術支援者の増強といいますか、そういうのが必要になってくるかと思うんですが、それについて何かコメントをお持ち合わせでしたら、お聞きしたいです。
【大友ディビジョン長】  ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、サポートスタッフの増強というのが非常に重要で、現状でもかなり現場の負荷が高いような状況なので、マルチビームになってくると、もっと深い、もしくは専門的なサポートが必要になってくると思います。その辺りは、もう少し大きな枠組みでいろいろ御検討いただければなというのは現場としては思いますし、今、古川委員がおっしゃったような、マルチビームということもありますけれども、さらに研究DXというのも、我々にとってみれば新しい試みでして、必ずしも既存の施設施設に専門家がそんなに潤沢にいるわけではないので、そういうサービスの進化といいますか、高度化に伴って、より人員が必要で、そのためには何らかの自己財源化による手当てということも必要かなと。それは矢橋さんもおっしゃっていたような、いろんな課金的なこと、サービスの課金的なことも考えざるを得ないのかなとは考えていまして、費用体系の中でもそういうことができればと考えておりますが、まだ検討段階であります。
【小杉主査】  よろしいでしょうか。
【古川委員】  ありがとうございました。
【小杉主査】  まだ御質問あるかと思いますが、時間の関係もございまして、ここで打ち切らせていただきたいと思います。
 フォローアップというのは、必ずしも結果をレポートにするという形ではないんですけれど、今日のこの場でいろいろ意見がありましたので、各施設、検討いただくとともに、次のフォローアップの機会に、いろんな形での各施設の試みを説明いただければと思います。
 議題(1)、(2)は以上で終わりたいと思います。
 それでは、この後、そのほかとして時間を取ってございますので、今日は今期の最後の委員会でありますし、せっかくの機会ですので、委員の皆様から一言ずつコメントいただけたらと思っております。その際、次の期に検討してほしい事項等もございましたら意見をいただくと、事務局のほうで記録して、次期に申し送るということができると思いますので、よろしくお願いします。
 順番は五十音順ということで、最後に主査代理の高原委員と私がやりますので、アイウエオ順ということで始めたいと思います。
 今日は石坂委員はお休みでしたので、内海委員、お願いいたします。
【内海委員】  量研の内海でございます。
 この委員会でも、そして何より私にとっての最重要問題は、Nano Terasuをしっかりと立ち上げて、再来年からの運用にきっちり持っていくというところでした。今年の春の中間評価も本当にありがとうございました。厳しい御指摘もいただいて、それを反映すべく、今、現場で努力しているところでございます。
 1年前にはNanoTerasuという名前すらまだオープンになっておらず、いろんなことがあった1年だったなというふうに考えている次第です。引き続き、よろしくお願い申し上げます。
 本当にどうもありがとうございました。
【小杉主査】  では、次、大竹委員、お願いいたします。
【大竹委員】  理化学研究所の大竹でございます。
 今、内海委員からもございましたとおり、今期はやはりNano Terasuに直接訪問させていただいて、いろいろ多くの皆様と議論させていただきましたこと、放射光に限らず、やはり中性子のほうでも、今後、一体施設、大型、中型、小型含めまして、どういった展開になるかという視点でも非常に参考になりました。
 また、ここで様々な議論をさせていただいておりまして、やはり本日の議論で、量子ビーム、共用として持っている問題点、例えば、専有であるとか、産業利用であるとか、それから、論文数の問題であるとか、そういったこと、これからいよいよNano Terasuのほうでも、特徴的な複数のオーガニゼーションを束ねていらっしゃるところですから、やはりそういったところでは、何かそういうプラットフォーム的なこと、または全体に共通するような考え方を次期では構築していくような方針が出せるといいのかなと思います。
 でも、そういった中では、最初の矢橋さんからの御説明で、これまでのSACLAでの実績ですとか、当然、KEKのほうでのPFの実績ですとか、もう既にいろいろな取組もあると思いますので、それとDX化等々を結びつけて、より広い利用に結びついていって、サイエンスのピークがさらに上がっていくような形になっていけばなという。全体として非常に視野も広がりましたし、皆様、全国として非常に力を注ぎながら進んでいるという印象で、いろいろさせていただきまして、大変ありがとうございました。
【小杉主査】  では、次、岸本委員、お願いします。
【岸本委員】  岸本です。この委員会に参加させていただきまして、企業に身を置く私にとっては、非常に勉強させていただきました。ありがとうございます。
 この委員会に参加させていただいている期間の中でも、世の中は本当に激変して、想定以上の変化が起こったなと実感しております。
 本日、少しだけSPring-8-Ⅱの話があったかと思うんですけれども、何ができるのかという定量的な視点もとても重要ですが、やってみて初めて生まれる知というのもあるはずだと考えております。そういった意味では、SACLAは好事例だと思うんですけれども、当初想定されていなかった成果なども出てきていて、これは明らかに先行事例として良いものだと私は思っております。
 先ほども言いましたけれども、計測なくして研究・製品はできないと言っても過言ではないと思っていまして、新規のものを創造するには最先端でなければいけないということもないと思うんですけれども、やはり最先端の計測を行って、新たな知を生み出していく必要があると思っています。
 次期委員会でも、日本の科学技術を持続的に発展させていくための議論をしていただきたいのと、また会社に戻ったときには、企業の一員として何ができるのか、どういった提案ができるのかということをこれからも考えていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
 どうもありがとうございました。
【小杉主査】  では、次、近藤委員、お願いします。
【近藤委員】  慶應大学の近藤でございます。
 本当に、この2年間はこの量子ビーム小委員会でたくさんのことを学ばせていただいたなと思っております。
 最初の頃、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について議論があったかと思うんですけれども、その頃はあまり参加できなくて、あまりコメントできないところなんですけれども。ただ、日本は放射光施設が複数あるという意味で、ほかの国にはない特徴があるのかなと思っておりまして、そういった日本の特徴を最大限に生かせるような施設間の協調的な、あるいは、相補的な運用というのがあると思っています。また、それは恐らく時間が進むことによって、変わり得るものだと思うので、一時的な検討だけではなくて、継続的にそれらを模索し続けることが重要ではないかなと考えております。
 あと、やはり印象に残っているのは、次世代放射光施設の中間評価のことで、現地にも伺わせていただきましたけれども、1つの新しい施設が立ち上がるのに尽力されている方々の御苦労が本当に肌で感じられました。そうした方々の努力の結晶としてできていく施設が、生きた施設になるために何ができるのかというところ、そういうことをそれぞれの立場から考えて、できることを実行していくことが大事だと思いますし、オールジャパンで施設を支えて活用する雰囲気が醸成されていくということが大事ではないかなと思います。
 また、今日はフォローアップということで、SPring-8、SACLAとJ-PARCのお話を聞かせていただきましたけれども、本当に両施設の皆様、非常によくやられているなというふうな印象を持ちました。共同でマルチビームの連携を進めている点も、非常にすばらしいなと思いました。最近、やっぱり放射光と中性子の両方を使った論文が増えてきているなと思っておりまして、マルチビーム連携というのは世界的な流れだと思いますので、ますます発展させていっていただきたいなと思いました。
 以上です。どうもありがとうございました。
【小杉主査】  どうもありがとうございました。
 では、次、坂田委員、お願いします。
【坂田委員】  坂田です。まず、一般人としての印象なんですが、「1つNano Terasuを増やしても、ほかの既存施設を1つも減らさない」という進め方は、私には驚きでした。
 一方で委員としては、量子ビーム施設が国家的に大変重要だと皆さんが考えているということを再認識できました。今までの方も言われているように、量子ビーム施設の利用を今後どう進めるのかという方針を議論したりその決定をしたりすることは本当に重要になると思っております。
【小杉主査】  どうもありがとうございます。
 では、阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  どうもありがとうございました。
 私も、この2年間、我が国量子ビーム施設のことについていろいろ勉強させていただきまして、改めて日本の科学力というのが立派なものであるかなということを感じております。それと同時に、いずれの施設も世界レベルといいますか、世界を先導するような施設であって、本当に科学技術立国というのにふさわしい施設であるなと思いました。
 常々この委員会で出ていましたように、これらの基盤となるのはやっぱり人ですので、今後、人材のことについては、引き続き議論をしていっていただければなと思います。こういった大型施設の基盤となるのは、やはり大学一つ一つの講座に研究にもなるかと思います。ですから、先ほどお話ありましたように、やっぱりオールジャパンで取り組んでいくという視点も大事かと思います。
 私も、幸い、京都大学のほうでは特任教授として若い人と議論をする機会はあるんですけれども、若い人はやはり活力があり、その能力に期待できるものがありますので、そういった人材を将来に向けて有効に成長させていってもらえればなと願っておりますので、よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。
【小杉主査】  どうもありがとうございます。
 では、佐野委員、お願いいたします。
【佐野委員】  佐野でございます。2年間、どうもありがとうございました。
 Nano Terasuの建設という非常にエキサイティングな時期に委員をやらせていただきまして、今までとちょっと違った目で放射光施設、こういう大型施設というのを見る機会を得られたと思っています。
 先ほどからも出ていますけれども、やはり世界がどんどん変わっていく中で、フレキシブルにいろんな対応を、科学技術を含め対応していかなければいけない中で、今日もいろいろお話ありましたけれども、いろんな利用の形態ができてきて、その成果も、科学技術のみならず、産業のほうでもどんどん出ているということで、量子ビーム施設というのは、やはり科学技術の基盤として非常に重要で、今後とも重点的に整備していく必要があるなと思っています。
 ただ、それを進める上で、やはり先ほどから議題になっていますビジビリティというんでしょうか、アウトカムの発信というのは非常に重要かと思っていますので、次期の委員会では、その辺りをどのように考えていくか、量子ビーム施設全体をどのように進めていくべきかといったような議論をするのが1つのテーマかとも思っています。
 どうも、2年間ありがとうございました。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 では、高橋委員、お願いします。
【高橋委員】  第一三共RDノバーレの高橋です。長い時間ありがとうございました。
 私、個人的にはタンパク質の結晶構造解析という、放射光施設利用といった点では、比較的エスタブリッシュトというか、もうルーチン測定をしている分野にずっと携わっておりますので、皆さんの最先端の技術ですとか、測定ですとか、新しい測定手法ですとか、そういったものを垣間見ることができて、個人的にもとても刺激的に感じていました。いろいろ勉強させていただき、ありがとうございます
 次期以降という話では、もちろん皆さんおっしゃっているNano Terasuの話もそうなんですけれども、それと関連して、そろそろSPring-8-Ⅱのアップグレードの内容が具体的になってくると思うので、非常に楽しみにしています。それと相乗効果で使いやすい施設になっていくと良いと思います。
 ありがとうございました。
【小杉主査】  どうもありがとうございました。
 では、次、田中委員、お願いします。
【田中委員】  理研の田中です。私、この2年より前から、量子ビーム利用小委員会を長く務めておりまして、今回が最後かなと思いますので、全体を通してのコメントをさせていただきます。
 自分が委員をやっている間に、Nano Terasuがこの委員会でいろいろと議論され、それがベースとなって現実のものになったということが、私の中では一番感慨深いことです。、それが今後問題なく稼働していくのか、想定した通りに動かないとまずかろうという意味では引き続き責任があるかと思っております。
 この直近の2年に関しては、NanoTerasuの建設に深くコミットしてしまったために、当事者になってしまいました。基本的にはコメントができない立場になったということで、この2年、積極的な意見を述べる機会が少なかったのですが、委員をしていた全期間を通しては、それなりに発言させていただいたと思っています。
 最後に、この後、次の委員会でという話ですが、お二人の委員がコメントされているように、私、当事者ですからあまり強くは言えませんけれど、SPring-8-Ⅱのことをそろそろ議論していただけると良いかと思っております。
 この2年間も大変勉強になりました。大変ありがとうございました。
【小杉主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、古川委員、お願いします。
【古川委員】  このようなチャンスをいただけて、私はこういう委員会に出るのは初めてでしたが、Nano Terasuも訪問させていただいて、すごく勉強になりました。ありがとうございます。
 大学の人間として考えておりますのは、マルチビームサイエンスを広げていくのが、これからの日本で強みにしていくべき1つの軸かと思っております。先ほどもコメントさせていただいたように、そういう技術革新なり発展をしていくためには、私達だけではなくて、やはり若手を巻き込んでいくということがとても重要で、技術支援など大きな支援を今後必要とすると思いますので、ぜひともその点も今後の小委員会でも御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【小杉主査】  どうもありがとうございました。
 では、森委員、お願いいたします。
【森委員】  ありがとうございます。量子ビーム小委員会、2年間出席させていただきまして、本当に量子ビームについて、産官学、いろんな多様な御意見を伺うことができて、御意見を踏まえて量子ビームを発展させていくということが重要だということをつくづく感じました。
 コロナ禍で、オンラインやハイブリッド形式が多くなりますが、Nano Terasuを実地見学させていただき、非常に感銘を受けた次第でございます。ただ、Nano Terasuの産みの苦しみというのも本当に見ておりますので、これから今までの100倍の輝度のすばらしい施設ができた暁には、それがサイエンス、そして産学連携とともに発展していくということが実現できるように、関係者の方々、非常に御尽力されていると思いますので、我々も協力していきたいと思います。
 私としましてはやはりこのような量子ビーム、放射光というのは、将来計画がとても重要だなと思います。放射光施設は日本国内に複数ありますが、老朽化に伴い施設も更新していかなければいけない、R&Dも継続して進めていかなければいけないという中で、しっかりと国内に理解いただけるような将来ビジョンを立てていって、その中で、コミュニティの中で理解し合いながら、連携し合いながら進んでいくというのは今後も大切だなと思っております。
 やはり物質、物性、材料にとって量子ビームはもう欠かせぬツールですので、日本の大事な学術の発展、それから、産学の発展のためにも、量子ビーム、これからますます発展していくように祈念しますし、我々も協力していきたいと、皆さんと一緒に進めていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 2年間、本当にありがとうございました。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 では、山重委員、お願いします。
【山重委員】  トヨタ自動車の山重です。私も、この委員会を通じて、非常に勉強させていただきました。ありがとうございました。
 今日の議題(1)のところでコメントさせていただいたほうが良かったかもしれませんが、我々、基本は成果専有枠で活用させていただいているんですけれども、ビームラインによっては、もうその成果専有枠が飽和してしまっており、申請しても削られるというぐらい、民間の方々も盛り上がって活用されているなと身をもって感じているところです。
 今期は、NanoTerasuを現地で見学させていただいたり、年度初めには細かいニーズ調査などありまして、産業界という立場からの我々のニーズも議論させていただけたかと思っております。非常にいい機会をいただいて、この2年間、どうもありがとうございました。
 引き続き、よろしくお願いいたします。
【小杉主査】  ありがとうございます。
 それでは、高原委員、お願いします。
【高原主査代理】  九州大学の高原です。量子ビーム利用推進小委員会、私、主査代理ということなんですが、2年間、大変勉強になりました。
 私、実はその間に定年退官しまして、その後、ほとんど外国人の研究者で、ポストドクでラボをつくったんですけれども、そうなりますと、私自身がビームラインに行って一緒に仕事をするということを、定年退官前は全然やっていなかったんですけれども、再び実験を行うようになりました。
 ビームラインは高度化されて、使いやすくなっているんですけれども、やっぱり人材育成というのが、特に若いビームラインサイエンティストというのがなかなか育成できていないと感じており、これからいろいろNano Terasuも含めて大きく広がっていくためには、人材育成が必要だと思っています。
 その意味では、今日、SPring-8のほうから大学院生の課題というのがあったということは、非常に将来楽しみなことであります。今、日本の大学で言いますと、やはり論文数が少ないですとか、そういったことが非常に問題になっておりまして、論文を書くという意味でも大型施設を使った方には、インパクトのある論文をまとめるということをぜひやっていただけるように、施設のほうからもどんどんプレッシャーをかけていただいていいのではないかなと思います。
 私にとっては、やはり人材を育てていくというのが1つ大きな課題だと思いますので、引き続き御議論いただければと思います。
 どうもありがとうございました。
【小杉主査】  どうもありがとうございました。
 では、最後に私ですが、委員の方々いろんな切り口から意見をいただいて、非常に主査としても助かりました。ありがとうございました。
 2年間振り返ってみますと、コロナ禍で、皆さん今期は顔を合わせる機会がないかなと思ったんですけど、Nano Terasuの現地視察のときには全員集まっていただいたので、そこでコロナ禍でも全員顔合わせができましたし、本日も半分ぐらいの出席ですけれど、それが叶ったかなと思っております。
 あと、2年間の中に、文科省の改組があって、この小委員会の位置づけも多少変わったのではないかという気もしないでもありません。前の期は日本全体を俯瞰して、共用施設ばかりではなく、小規模な施設から含めて国全体としてどうするかという話があったんですけど、この2年間は共用施設の議論に終始しました。今日のフォローアップでも共用施設間でいろいろ意見交換や、すり合わせをしないといけないというのは出ておりましたけれど、共用施設だけではなくて、それを支える人材というのは大学から来ますので、大学の小規模施設から含めて、国全体をどうするかという観点での議論も小委員会のミッションかなと思っております。その辺り、改組の関係で、小委員会は科政局所掌で、親委員会(量子科学技術委員会)は振興局所掌になって、私は、親委員会やその上の審議会に参加しましたが、何となくつながりが悪いような印象があります。そのうち落ち着いてくるとは思うんですけど、ちょっとそういう印象を受けました。
 それから、大学等の法人化以降、大学間の競争という感じだったんですけど、今回の概算要求の結果を見ると、研究力強化や人材育成をやるには、大学単独ではなくて、大学が連携して取り組むようなプログラムができております。多分そういう流れになっていると思いますので、それを支える量子ビーム施設の在り方というのは重要なファクターだと思いますので、来期の宿題としても、事務局側で受け取っていただいて、検討をよろしくお願いしたいと思います。
 私から以上です。
 最後に、量子ビーム小委員会を所掌しております研究環境課の古田課長から、閉会に当たっての御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【古田課長】  。研究環境課の古田です。
 本日は、年末のお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 私が着任してから5回程度小委員会を開催させていただきまして、この2年間で計7回の御議論をいただきました。コロナ禍での開催であったため本当にオンラインが多かったですが、委員の皆様に参加いただきまして、誠にありがとうございました。
 今回の振り返り、次回への持ち越しについても、皆さんに今しがた御発言いただいた事を着実に進めて参ろうと思っております。次期については、どのようにしていくのか、これから検討していきたいと思っておりますが、御発言いただいた内容を参考にさせていただきたいと思っております。
 なお、量子ビーム小委についてではございませんが、もう少し広く、政府の科学技術・イノベーション政策の観点から、私の感じている事を申し上げさせていただきます。
 この3年間ぐらい、日本の科学技術政策というのは大きな転換を迎えていると思います。昔から言われてはいますけれども、特にこの3年間でも物すごく急激に変わっていると思います。例えば、科学技術というのが科学技術・イノベーションという言い方になって、やはりそういったイノベーション志向が顕著に強まっているということもありますし、政策についても、デュアルユースとは言いませんけれども、民生一辺倒ではなくて、様々なことに利用できる点を志向していくべきだという傾向は非常に強まっていると思います。
 これは今後の話にはなると思いますが、こういった研究開発に期待をする力が強まってきて、それが外圧となり変化させられるぐらいの、そんなような時代が来るのではないかとも感じています。
 我々は行政官ですけれども、例えば予算を取るとか、どういった方向で政策を進めていくのかといった様々なことが3年前とは異なると感じております。
 そういう意味で民生でも、やはり社会課題を解決するためにどう科学技術を使っていくのかという観点が強まっています。これらには、カーボンニュートラルとか、半導体とか、経済安全保障とか、そういったものも含まれますし、これからもっと様々な観点が出てくると思っております。そういった事に大規模施設がどのように貢献していけるのか。それは非常に難しい問題ですが、我々の課題なのだと思っております。
 長くなりましたが、第11期、非常に誠意のある真剣な議論をいただいたこと、誠に感謝いたしております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
【小杉主査】  ありがとうございます。
【林補佐】  では、最後に事務的な連絡事項です。
 本日の会議の議事録につきましては、作成し次第、委員の皆様にメールにて御確認いただき、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただきます。また、本日の配付資料につきましても、後日、文部科学省のウェブサイトに公開いたします。
 以上でございます。
【小杉主査】  それでは、以上をもちまして、第11期第47回量子ビーム利用推進小委員会というか、第11期の活動を終えることとなります。2年間、どうもありがとうございました。


―― 了 ――
 

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科学技術・学術政策局 研究環境課

(科学技術・学術政策局 研究環境課)