量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第42回) 議事録

1.日時

令和3年10月1日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 大型放射光施設(SPring-8)及びX線自由電子レーザー施設(SACLA) 中間評価フォローアップ
  2. 大強度陽子加速器施設(J-PARC)中間評価フォローアップ
  3. その他

4.出席者

委員

内海委員、大竹委員、岸本委員、小杉委員、坂田委員、阪部委員、佐野委員、柴山委員、高橋委員、高原委員、田中委員、古川委員、森委員

文部科学省

古田研究環境課長、萩谷研究環境課課長補佐

5.議事録

【小杉主査】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第42回量子ビーム利用推進小委員会を開催したいと思います。
 今回も前回に引き続き、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインで会議を開催することとしました。
 本日は、16名中13名の委員の皆様に御出席いただいております。石坂委員、近藤委員、山重委員のお三方が御欠席です。
 また今回は、議題に上がっておりますが、議題(1)SPring-8・SACLA中間評価フォローアップを行うため、理化学研究所及び登録施設利用促進機関である高輝度光科学研究センター(JASRI)から御出席いただいております。
 また、議題(2)J-PARCの中間評価フォローアップを行うため、J-PARCセンター及び登録施設利用促進機関である総合科学研究機構(CROSS)に出席いただいております。
 それぞれお名前を御紹介いたしますが、議題(1)SPring-8・SACLA中間評価フォローアップについては、理研からはお二人、JASRIからお一人ということですが、理化学研究所放射光科学研究センターの石川センター長、矢橋グループディレクターのお二人です。JASRIの方からは田中常務理事に参加いただいております。
 それから、議題(2)J-PARCの中間評価フォローアップについてですが、J-PARCセンターからお三方、小林センター長、脇本副センター長、大友MLFディビジョン長です。登録施設利用促進機関のCROSSの方は、既にこの小委員会の委員でおられる中性子科学センター長の柴山委員がおられますので、御説明等で参加いただけると思います。
 それでは、事務局より、文科省の出席者の報告と、オンライン会議における留意事項の説明、配付資料の確認をお願いいたします。
【萩谷補佐】 事務局を担当しております研究環境課、萩谷と申します。
 皆様、本日もお忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。
 最初にオンライン会議の留意事項について御説明させていただきます。
 まず、委員の先生方におかれましては、可能な限りビデオの方をオンにしていただければと思います。通信が不安定になるなどで、ちょっとオフにせざるを得ないという方は、オフのままで結構でございます。
 また、御発言されるとき以外は、可能な限りマイクをミュート、マイクをオフの状態にお願いいたします。御発言される際は、ミュートを解除、マイクオンの状態にしてください。
 議事録作成のため、速記者を入れておりますので、御発言の際はお名前を言っていただいた後にお願いいたします。
 会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話をお願いいたします。
 なお、本日は会議公開の原則に基づきまして、報道関係者や一般傍聴者によるWebexでの傍聴を認めておりますので、御了承いただければと思います。
 次に、配付資料の確認をさせていただきます。Webex上に画面共有をさせていただきますが、適宜御覧いただければと思います。画面が見えにくい方は、適宜事前にお送りしている資料を御参照いただければと思います。
 詳しい資料の御説明は割愛させていただきますが、配付資料は資料1から資料4、参考資料1から参考資料3をお送りしておりますので御確認ください。
 会議中何か御不明点等ございましたら、事務局までお電話いただければと思います。
 最後になりますが、文科省からは、研究環境課、古田課長が御出席させていただいております。議事に入る前に、本日10月1日付で組織再編もありましたので、改めて課長の古田より御挨拶申し上げます。
【古田課長】 研究環境課長の古田と申します。7月に研究開発基盤課長になりまして、前回の場でも御挨拶をさせていただきました。
 正に今日、文部科学省の科学技術関係の組織がかなり変わりまして、その関係で、研究開発基盤課から研究環境課になったところです。やはり名前が変わりましたので、実は組織の中も半分ぐらいは仕事とメンバーが変わっておるのですが、この量子ビームの分野に関しては、前回は研究開発基盤課の中に量子研究推進室というのがあり、その中でこの量子ビームの分野を担当しておりました。今日からの研究環境課では室はなくて、研究環境課本体が、この量子ビームの分野を担当するということになりました。
 従いまして、私が一応直轄して見させていただくということでございます。この3か月間、小杉主査を始め、多くの方と既に御面会させていただいております。これからも様々な形でお付き合いいただくと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。
【小杉主査】 ありがとうございました。今までは量研室が所掌していた、この小委員会ですけれど、今後は研究環境課が所掌されるとのこと。もともと課の下に量研室があったということで、古田課長、今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。
 本日は議題(1)、(2)とありますが、まず議題(1)を、予定では16時ぐらいをめどに、50分ほどですか、議論いただきます。それから議題(2)の方は16時50分頃まで。10分ほど議題(3)に残したいと思いますので、そのめどで配分したいと思いますので、御協力をお願いいたします。
 最初に議題(1)の趣旨等について、事務局より説明をお願いいたします。
【萩谷補佐】 事務局でございます。まず資料1につきまして御説明をさせていただきます。画面共有させていただいております。
 (資料1の1ページ)本日は、SPring-8、SACLA及びJ-PARCの中間評価のフォローアップということで、議事の方を設定させていただいております。今期初めての先生方もいらっしゃいますので、まずその中間評価などの立てつけに関して御説明させていただきます。
 中間評価におきましては、5年に1回程度実施をしております。直近ではSPring-8及びSACLAにつきましては、この量子ビーム利用推進小委員会におきまして、2019年の2月に実施をしております。J-PARCにつきましては、科学技術・学術審議会の下に、そのために設置しました作業部会におきまして、2018年6月に、J-PARCのMLF以外も含め、J-PARCセンター全体の中間評価を実施しているところでございます。
 中間評価の後には、1年に1回程度、この中間評価の内容を受けてフォローアップを、この量子ビーム利用推進小委員会で実施しているところでございます。直近では、SPring-8、SACLAにつきましては2020年の2月、J-PARCにつきましては2020年の5月に実施をしております。なお、この量子ビーム利用推進小委員会では、J-PARCはMLFのみを担当しておりますので、MLFの中間評価のフォローアップということで実施をさせていただいております。
 今回、1年越しにフォローアップをさせていただくのですけれども、今回の小委員会におきましては、従来の中間評価の項目に加えて、今年2月に量子ビーム利用推進小委員会で取りまとめていただいた、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方の取りまとめについての対応状況ですとか、あとは、コロナとかDXとか、昨今浮上してきている課題などの対応についても議論させていただければと思います。
 下の方にございますが、フォローアップの重点ポイントといたしまして、中長期的な施設の利活用方策について、産業利用促進方策について、新型コロナウイルス感染症拡大時の取組について、海外施設のトレンドについて、量子ビーム施設間連携・国際連携・人材育成・アウトリーチ活動などについて、利用者選定・利用支援業務の実情と課題についてという、これらの項目について、今回重点的に議論させていただきたいということで、各施設の方々から御説明を頂こうと思います。
 次のページ(資料1の2ページ)以降につきましては、今までの中間評価の各項目の指摘事項をつけさせていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
 それでは、議題(1)に入ります。理研とJASRIより、SPring-8及びSACLAの中間評価報告書で示された指摘事項へのこの1年間ほどの対応状況等について、御説明をお願いいたします。
【矢橋グループディレクター】 理化学研究所の矢橋です。よろしくお願いします。資料共有させていただきます。見えておりますでしょうか。
【小杉主査】 大丈夫です。よろしくお願いします。
【矢橋グループディレクター】 よろしくお願いします。それでは私の方から、理研、JASRIを代表いたしまして、SPring-8・SACLA中間評価のフォローアップということでスライドをまとめましたので、よろしくお願いいたします。
 (資料2の2ページ)先ほど萩谷補佐から頂きました幾つかの重点的な課題がございましたが、それを少し話しやすいように、こちらで並べ変えさせていただきました。この目次に沿って進めたいと思います。お手元の資料と同じでございます。ちなみに参考資料9としまして、前回中間評価の指摘事項と対応状況ということで、今までの進捗を表にまとめてございます。
 (資料2の3ページ)まず直近の話でございますが、新型コロナウイルス感染症拡大時の取組から、2枚で御紹介したいと思います。御存じのとおり、昨年度からはかなり我々のところも大変な状況になったわけですが、その中でもしっかり運転していこうということで対応してまいりました。それで直接的なコロナ、例えば治療薬の開発に向けた取組であったり、あと、これはECMOです。ECMOに使うチューブの詰まりをなくすというところに向けて、治療器具の改善という開発を行ってきましたし、こういうウィズコロナ、アフターコロナでも、しっかり基盤施設としての機能が維持・増進できるような、いろいろな取組をしてまいりました。DXに代表される取組でございます。
 (資料2の4ページ)それで利用運転への影響でございます。特に昨年度当初の緊急事態宣言のときは日本中大変だったわけですが、我々のところも、4月の頭から6月半ばまでユーザーの受入れを停止しておりました。その間に利用できなかった課題がかなりございましたので、それは下半期の方に相当移動していただいたということでございます。
 一方で、6月以降は感染対策をとりながらユーザー受入れが始まりまして、国内ユーザーについては、来所人数をある程度制限しながら課題を実施してきておりまして、現在かなり平常に近いところに戻ってきております。一方で、先ほどのDX、特にリモートで、来所が難しい方が参加するという形がかなり一般的になってきていますので、それは非常に良いことかなと思います。
 一方で海外の方でも、皆様御承知のとおり、ロックダウンが非常に厳しかったので、なかなかユーザー受入れも進んでおりませんでした。現在、ぼちぼちと戻ってきているようですが、やはり我々の方が制約としては若干やりやすいことになっております。
 一方で、SPring-8、SACLAに来る海外ユーザーは、いまだ当然来所が困難ですので、日本の共同研究者が実施するか、キャンセルかということで、特にこれはSACLAの方が影響が比較的大きいわけですが、これも大分状況が見えてきましたので、国の方針に従って、早く海外ユーザーの受入れ再開が進むと良いなと期待しているところでございます。
 それで、これはSPring-8の申請課題数をまとめてありますが、特に2020Aというのは、通年でやりまして、続く今年度の前期の募集はまだ申請課題数がちょっと減っていましたが、今始まっている下期のところの申請課題数はかなり例年と比べても増えておりますので、こういう影響というのは一段落というか、むしろ非常に需要が増してきているということを感じております。
 (資料2の5ページ)次に、中長期的な施設の利活用方策ということで、これはこの発表の中でも中心のところでございます。
 まず最初に御紹介したいのは、グリーンファシリティ宣言ということです。これは、8月に理研とJASRIで共同プレスリリースをさせていただきました。詳しくはそちらを見ていただければよろしいのですが、骨子は2つございまして、1つ目は、SDGsであったり2050年のカーボンニュートラルの達成と、非常に重要な国の目標がございますので、そういった活動に対して、従来に増して強力に研究開発を支援、推進していくということでございます。
 それからもう一方としまして、施設自体もグリーンにするということで、この2本柱で進めていくことを宣言させていただきました。
 (資料2の6ページ)それで、かなりSPring-8は老朽化が進んでおりますので、老朽化対策を兼ねて、当然グリーン化を行っていく、設備更新を行っていくということでございます。年表としては、ここが前回中間評価で、今この辺りにいるわけですが、特に施設系のインフラであったり、ビームラインであったり、いろんなところが老朽化が進んでおりますので、そこを更新しながらグリーン化にも対応していくということをやっております。
 この右側の方はカーボンニュートラルの目標年があって、この辺になると鬼が笑う話でございますが、本日の発表では主に直近の取組を御紹介したいと思います。
 (資料2の7ページ)まず、ビームラインの再編・改修というところから御紹介いたします。これはこの後御紹介します加速器改修(SPring-8-II)というのを我々は計画してございますが、それに先立ち、ビームライン再編・改修を実施しているところでございます。これは実は前回の2018年度の中間評価でもかなり御議論いただきまして、こうやりなさいということで進めているわけですが、特にその基本的な方針といたしまして、今お使いいただいている利用者の方々のニーズはもちろん満たしていくわけですが、更に今後のポテンシャルユーザーのニーズもしっかり汲(く)み取っていくということを考えております。
 2点目としましては、3GeV施設の運用が間もなく始まりますので、いわゆる軟X線とか低エネルギーのところはそちらに主に担当いただくことになりますので、むしろ高エネルギー、硬X線のところを、より重点的にやっているということでございます。
 それから、今までも個別のビーム内の高度化もありましたが、やはり部分最適になりがちですので、そうではなくてポートフォリオをしっかり設定して、全体として最適な解をちゃんと見つけていくということをやる。
 それから、最後、これも非常に重要ですが、こういうビームラインの再編・改修、それからこの後御紹介するDXによる自動化ということを進めますと、全体の最適化が進みまして、パイと言っていますが、要は実効的なビームタイムが増えますので、これをもって多様なニーズに応えていきたいということでございます。
 (資料2の8ページ)このポートフォリオのことでございますが、簡単に1枚で御紹介します。今までビームラインの設置者別に、共用ビームライン、理研ビームライン、専用ビームラインという分け方はあったわけですが、こういう分類とは別に、SPring-8全体で3つのカテゴリーに分けるということをやりました。1つ目がProductionビームライン、2つ目がSpecificビームライン、3つ目がDevelopmentビームラインでございます。
 順に説明しますと、Productionの方は、いわゆるDX/オートメーションをしっかり進めまして、ハイスループットな成果を上げていくということです。かなり大きな割合がここに当てられると。
 一方でSpecificのところは、特化型・戦略的な活用ということで、かなり特徴を持ったビームライン、アクティビティーを支援していくことになります。
 3番目、Development。これは新しい技術の開発をやっていくというところで、当然世界をリードするということを我々はいつも基準に置いておりますので、そういったところを目指してやっていくと。ここは少数ですがしっかりやっていくということでございます。
 (資料2の9ページ)それでこういったポートフォリオを設定しまして、特に直近では共用ビームラインの3本につきまして、これはProductionとSpecificのカテゴリーに属するビームラインですが、かなり大がかりな改修をしております。やったことは、09番というところに、これはもともとHAXPESというのと、NRS、核共鳴というものの相乗りでしたが、NRSをこの35番に移しまして、HAXPESを別のビームラインから持ってきて専用化をやるとか、あとは20B2、これは医学利用等で大きなビームが使えるイメージングのビームラインですが、ここに多層膜分光器というものを入れまして、非常に明るい、今までの100倍明るいビームが使えるようになる、こういったことをやっております。
 かなり大がかりな近年にない改修ですので、SPring-8シンポジウム、ワークショップ、SPRUC研究会等で、利用者の皆様といろんな議論をしながら方針を策定しております。これは昨年度の特に後半からシャットダウンを伴う大きな工事を行い、今期、今年度の前半立ち上げを行いまして、ただいま下期が始まりましたが、しっかりスケジュールどおりに立ち上がったということで、共用が再開してございます。
 (資料2の10ページ)次に2番目といたしまして、DX基盤の整備ということについて御紹介したいと思います。DXはいろいろな角度でやっていかないといけないということですが、ここでは3つ御紹介しています。
 1つ目は、特にビームライン中心とするリモート化・スマート化のところで、これは昨年度の補正予算、それから昨年度の内閣府のPRISM等の御支援を頂きながら整備をしております。特に試料調製から解析に至るプロセスを一気通貫で自動化と書いていますが、ビームに触るところ、いわゆる実験ハッチの中のところの自動化は実はかなり進んでおり、そこの手前の、特に試料調製のところにボトルネックがあったということがありましたので、そこも含めてかなり大がかりなロボティクスをやっているということでございます。
 それから、2つ目が施設インフラのDX化ということで、これは特に基盤を支える機械設備とか電気設備のところ、このIoT化による施設オペレーションの効率化、これを順次進めているところでございます。
 3番目、これが非常に大きなところですが、SPring-8データ創出基盤と書かせていただいていますが、最近放射光の有用性が広く認知されるようになっております。皆さんにしっかりお使いいただいているのはよろしいのですが、特に1試料当たりのデータ量が非常に増えてきている。これは検出器が特によくなってきているというのが主な要因ですが、そうすると、データを取っても解析がすごく時間がかかるということになっています。そうなると、イノベーションの貢献のところで結局目詰まりがあるということになってしまいます。この機会に、しっかりデータ創出基盤を整備して、グリーンイノベーションを加速したいと考えております。
 (資料2の11ページ)これは恐らく後で萩谷補佐からの御紹介があると思いますが、予算のところも、今こういう形で計画を進めております。特にポイントとしましては、先ほど申し上げたように、計測を行ってもデータ解析ができていないので、いわゆる宝の持ち腐れになっている、そこをしっかり解消していくというところが一つ。
 それからもう一つは、その解析したデータの利用が専ら実験実施者のみに限られていて、大勢の方にアクセスしていただく環境にないということです。例えばオープンデータ化の議論がありますが、それ以前に、例えばグループ内でのデータのシェアでさえも非常に難しくなっていて、本当にデータを触っている人以外はアクセスがしにくくなっています。オープンデータ、シェアデータを含めて、しっかりと進めていきたいということでございます。
 ここができるようになると、試料調製からデータを取って解析までの流れが一気通貫でつながりまして、その後の2次利用のところも一気に進むということを期待しております。
 (資料2の12ページ)このデータインフラの取組の国際比較を簡単に御紹介したいと思います。まずESRF、ヨーロッパの例ですが、もともと我々はこの3極、ESRF、APS、SPring-8ということでずっとやって参りました。どこもビームラインと加速器というところは基盤的なので、しっかり頑張りましょうということでずっとやってきたわけですが、ESRFは最近データもそこに加えて、3本柱でやることが大事ということを言い始めています。
 それで、彼らも小規模なデータセンターは10年ほど前から持っておりましたが、その拡張を進めております。現在、例えばデータ容量でいうと20ペタバイトとなっており、10年後には120ペタバイトを計画しています。これはかなり大きな容量で、データ圧縮をしない前提で設計するとこうなるよということなのですが、逆に言うと、まだ余りしっかり考え尽くされてはいないのですが、こういう見通しを公表しております。
 あとヨーロッパは、特にオープンデータの旗振りをしてきたということがありますので、データの2次利用についてもオープン化を重視しておりまして、例えば成果公開の実験データに自動でDOIを振って公開するという構想を進めています。ただし、その実験終了後最長3年間のエンバーゴが認められている。いろいろな取決めをつくりながら、オープン化を進めています。
 一方で、アメリカのアルゴンヌ、APSの方では、データオープン的なところはアメリカは余りやっていないわけですが、一方でシェア利用のところではスパコンと連携して、プログラムを組みながら推進しているということを聞いています。
 それで我々の方ですが、先ほどのSPring-8のデータ基盤、データセンターの構想のバックボーンとしまして、既にSACLAの方では、当初からデータがすごいことになるというのが分かっていたので、データセンターをはじめから運用しておりまして、10年間の運用実績があります。そこはESRF、APSに比べて、我々は長い経験をもっています。
 それからスパコンとの連携も、特に富岳との連携がかなりしっかり進んでおりまして、先ほど少し申し上げたこのデータ圧縮のところも、富岳の強力なチームと連携して共同開発もやっております。まとめると、この3極が今だんご状態で、競争を始めたところですが、今後各施設ともデータの2次利用を重点的に推進していくということになります。
 それで我々の方としましては、先ほどのデータセンターの構想が立ち上がったときにどういうふうに活用していくかというところを、しっかり利用者の皆様とも議論したいと思っておりますので、ワークショップをこの秋をめどに計画しております。
 (資料2の13ページ)それから3番目としまして、施設のインフラ系・入射器系の更新ということで、様々な特に機械系もめた熱源更新というのを行ってまいりました。それから加速器の入射系ですが、SACLA入射と言っておりまして、これは次(資料2の14ページ)の絵で説明しますが、もともとSPring-8の入射器はここのLinacから1GeV Linacがあって、8GeVのBoosterシンクロトロンで8GeVまで上げて、メインリングへ打ち込むということをやっておりましたが、ここも入射器のコンプレックスで非常に老朽化が進んでいて、附帯設備、電源系等もいろんな問題がありました。
 一方でこのSACLAが10年前に立ち上がりまして、ここの電子ビームの入射トンネル、輸送トンネルというのも当初からございましたので、ここを活用することで、SACLAを既存入射器の代わりにできないかという検討をずっと進めてまいりまして、昨年度、正にコロナの裏で、かなり重点的な実地のテストを行いまして、今年度、完全にここのLinac、Boosterシンクロトロンを停止しております。
 それでSPring-8側はこれで良いわけですが、ちょっと困るのが、NewSUBARUはここのLinacを使っており、これがなくなると困るよという話がありましたので、こういう構想に合わせてNewSUBARU側でも新しいLinacを準備してきました。そこについては後ほど御紹介しますが、我々の方としても3GeV施設用の入射器の実証機を兼ねた開発・導入でいろいろな貢献をさせていただきました。
 こういったことで、老朽化対策の大部分は進めているわけですが、そうすると残ってきたのが蓄積リング本体ということでここの部分です。ここの老朽化が進んできてどうしようもないということでございます。中長期の最後のお話として、このSPring-8の蓄積リングのお話をしたいと思います。
 (資料2の15ページ)国際情勢でございますが、大型放射光施設の世代としまして、第3世代から第4世代へと今急激に進化を遂げています。先頭を走っているのはESRFで、この後御紹介しますが、今までこの第3世代ではこういう4施設がだんごで、ドイツPETRAも加えてやっておりましたが、ESRFがまず抜け出して第4世代と言っております。
 この後アメリカのAPS、それからドイツも計画しておりますが、その前に新たな施設として、中国、それから韓国。韓国の場合は少しエネルギーが下がるわけですが、それでもかなり大型の施設でございます。こういったところで、2020年代には少なくとも海外5施設が第4世代の大型の放射光施設になるということで、各国各地域のイノベーション、国際競争力の源泉として、非常に力を入れているところでございます。
 (資料2の16ページ)それで先行するESRFですが、大型施設として世界に先駆けて第4世代のアップグレードを完了しておりまして、既に2020年8月にユーザー運転を再開しました。コロナ禍と重なってしまいましたが、それでもしっかり立ち上げてユーザー運転をやっているということでございます。
 ESRFも当然欧州のイノベーション戦略の基盤ということで、今後はSDGsであったり、Horizon Europeであったり、こういったところの基幹の研究インフラとして基盤を支えるということをうたっております。
 (資料2の17ページ)それでSPring-8-II計画でございますが、実はこれは2014年、かなり以前にデザインレポートというのをまとめておりまして、特にターゲットとしましては、もちろん性能のところ、世界トップ性能を狙いに行くのは当然としまして、更に省エネ、ファシリティ自体のグリーン化というところもしっかりうたっております。具体的にはいろんなことをやりまして、使用電力量を半減するのを目指します。一方で、特に高エネルギー領域で輝度100倍以上というところを目指して進めております。
 (資料2の18ページ)それで、こういった100倍明るい高エネルギー放射光でイノベーションを速くするということで、様々なグリーンイノベーションの基盤を支えていくというところを狙っております。
 中長期に関しては以上でございます。
 (資料2の19ページ)次に、2枚で産業イノベーション利用、これはもう少しソフトな話になりますが、利用の促進方策について御紹介させていただきます。
 まず大前提の基本方針としまして、オープンな利用、原則これは無償になりますが、それと戦略的な利用(原則有償)ということですが、これを共に発展させていくことを掲げております。もう少し言うと、これはゼロサムではない、つまり片方を頑張ると片方が縮むというものではなくて、BL再編とかDX化で、いわゆるキャパシティー、実効ビームタイムを増やしていますので、そこの増大を前提として、両側を発展させていくということです。
 特にこの後者の方ですが、有償利用に関して、今まで主に出口のところ、出口といいますのは成果です。実験が終わった後の成果を公開しない場合のいわゆる成果専有利用のところの課金はしっかりされていましたが、一方で課題審査を経ない、いわゆる入り口のところの課金についてももう少し検討ができないか。これはもう前回の中間評価でかなり御議論いただきました。これは利用者から見ますと、利用機会を確実に確保できるというメリットがございますので、こういったところが実際にどういうふうに実施できるかというのを、この3年間検討して、一部先行的な利用を進めております。
 まず、コンソーシアム等の大口の利用者の方々のケースについて御紹介します。従来のやり方では、こういった多くのビームタイムを専有で使いたい場合は、専用ビームラインというものをつくって、それを保有して、それを自分たちで利用する。これをストックと言っておりますが、こういうやり方しかなかったわけですが、そうではなくて、例えば理研ビームラインであったり、共用ビームラインの一部であったり、こういったところを利用料を払って利用するという、フローと言っていますが、こういうやり方ができないかというところを議論してきました。
 これができるようになると、マイ装置というところではなくて、ビームタイムに投資いただくということになりますので、ユーザーから見るとハードウエアの基幹部の運用はやらなくて良い、更新もやらなくて良い、そこは施設側が担当して、しっかり持続的・効率的なアップデートをやってもらう。ユーザーはサイエンスのところに集中できるということでございます。
 ただ一方で、これはもちろんキャパシティーの話がありますので、どこでもできるというわけではないのですが、最近専用ビームラインから理研ビームラインに転換するという流れもあります。大口の受皿として理研ビームラインを活用できないかということで、外部利用という仕組みをつくりまして、これを開始しました。
 (資料2の33ページ)簡単に参考資料を紹介させていただきますと、従来は大口利用団体が専用ビームライン、閉じた形のストックでしたが、新たなやり方として、保有の施設がオペレーション施設、維持更新をやりますが、ここに利用料を払って使うという仕組みでございます。
 それで理研ビームラインの外部利用の仕組みということで、こういう料金を定めまして、これを支払っていただきながらやるということで、幾つか実施例がございまして、例えばNEDOの燃料電池のプロジェクトと、蓄電池のプロジェクトが、それぞれ36XUと32B2というビームラインをかなり大口で使っていただいていまして、年度で200シフトを超える利用を頂いているということでございます。これはユーザーの方からも好評を頂いておりますので、更に拡充していきたいと考えております。
 一方で、もう少し小口のフローというのも当然ございまして、これは共用ビームラインがある程度対象になると思います。実はそこに対応する現行の制度としまして、成果公開優先利用という制度がございます。ただ応募要件というのがありまして、大型研究費の獲得が応募要件になっているということです。
 もともと二重審査を避けるということでこれが始まったわけですが、一方で先ほどのグリーンファシリティ宣言の話もありますが、民間のリソースも活用しながらグリーンイノベーションをやっていくというところで、こういう公的資金という縛りがあると、なかなか産業界としては使いにくいよという声が聞こえてきておりまして、我々もそこはいろいろと考えなければならないということで、内部の議論は進めてございますが、是非今日の委員会で委員の先生方からも御意見をいただけたらと思います。
 それから産業利用の推進方策ということで、2ページ目(資料2の20ページ)ですが、産業利用の場の拡大ということで、従来共用ビームラインは3本の産業利用ビームラインで対応しておりましたが、これを多数のプロダクションビームラインにて展開していく。そのとき、公募回数も年6回を軸に検討しておりまして、タイムリーな利用ができる。
 利用制度の見直しとか、JASRI内の室の体制の変更等、参考資料を御参照ください。
 あと、リサーチリンケージという仕組み、これは理研放射光科学研究センターの方で動かしている仕組みですが、SPring-8をハブとして大学・国研・企業との連携を促進し、大きな課題解決を進める枠組みということで、これについても幾つかの大学とお話を始めておりますので、また改めて御紹介できる機会があると思います。
 (資料2の21ページ)4番目としまして、施設間連携・国際連携・人材育成・アウトリーチ活動等で、まず国内の量子ビーム施設、ここでは主に放射光施設ですが、そこのまずカテゴリー分け、俯瞰するためのたたき台、これは我々理研の方でつくったたたき台ですが、主に予算を基準に分類しますと、共用機器、国のところで動かしている共用施設ということのSPring-8、SACLA、それから東北3GeVもここに入ると聞いております。
 それから国、主に大学です。私立大学も含むところがこの真ん中のカテゴリー。それから地方自治体がオペレーションする、より小規模な施設になるところですが、この3つのカテゴリーがうまくリンケージして進むと非常に良いのかなというところでございます。
 (資料2の22ページ)それで次は、特にSPring-8が、今この光源の加速器の開発のハブとしていろんな活動をやっておりまして、そこについて簡単に1枚で御紹介しますが、2011年にSACLAが完成して、SPring-8の入射路が設置されたと。2014年のSPring-8-IIのCDR(Conceptual Design Report)の話は先ほど紹介しましたが、実際今の3GeVの放射光の設計というのはこのCDRをベースに軟X線用にモディファイしたもので、したがってここの要素を基にできています。
 一方で、その入射器のところは、SACLAのLinacの技術がかなり使われているのですが、ただ若干オーバースペックなところがありましたので、もう少しコストを抑制し、性能を保ちながらコストが下げられないかという検討をやりました。これが実はNewSUBARUの線形加速器としてしっかりとできているということです。
 今、特にその3GeV加速器の建設・立ち上げに対して理研・JASRIのチームが全面的に協力してやっているわけですが、その裏で、SPring-8-IIのCDR、デザインレポートの改訂も進めておりまして、いろいろな経験も生かしながら、性能を更に向上させることを検討しております。
 (資料2の23ページ)次にビームラインのところでございますが、人材育成も絡めながら、開発を中心にしたお話を紹介します。DX化で全てブラックボックスになることに対しては、我々も問題意識を持っておりまして、やはり新しい開発は一定程度やっていく必要があります。しかし、やはり高いレベルが求められます。
 (資料2の24ページ)そのため、実はSACLAの方で、理研の基盤開発プログラムというものを先行して始めています。これはユーザーと連携し、ユーザーニーズを取り込みながら、実験装置の高度化を実施するプログラムです。利用者から提案を頂いた装置を施設の予算で整備し、最終的に共用システムに仕上げるものでございます。これを今年度からSPring-8も対象にしまして、SPring-8側でも4件採択をしました。こういった先生方と一緒に進めているものでございます。
 (資料2の25ページ)これが最後のスライドでございますが、これはJASRIの方からのスライドです。利用者選定・利用支援業務の実情と課題についてで、まず課題のところを中心に示しておりますが、利用支援の人材の確保は、海外施設に比べてBL支援員の不足とか高齢化が進んでいるということで、現在いろいろ、テニュアトラック制度とか、あとは大学院生提案型課題で若返りを図っているところでございます。
 それからDX化のところですが、DXのハードウエアは整っているのですが、ソフトのところをしっかりやらなければいけない。それから教育効果のところ、施設側のところがブラックボックス化の懸念等あります。
   ただし、人材確保のための基本的な精神としましては、飽くまでも、魅力のある放射光、魅力あるSPring-8、SACLAを、いかに今後も発展させていくかというところをしっかりやっていくことに尽きると考えております。また、DX化については先ほどのデータセンターの発展と絡めていく必要があります。
 それから課題2については、基盤開発プログラム、先ほど御紹介したもの、それから課題3について、やはりこれは建設というのが非常に大きい機会ですので、ビームライン側では、最初に御紹介したビームライン再編が非常に良い舞台になっております。一方で加速器側はやはりSPring-8-IIをタイムリーにやっていかないと、ノウハウの継承ができませんので、そこについてはしっかりと我々も考えていきたいと思います。これがお話ししたことでございます。
 以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
 それでは、議題(1)でSPring-8、SACLAの中間評価報告書で示されたもののフォローアップというところで、いろいろ御意見等お願いしたいと思います。特に指名はしませんので、随時名前をおっしゃっていただいて発言をお願いいたします。
【佐野委員】 分子研の佐野ですけれども、よろしいでしょうか。
【小杉主査】 お願いします。
【佐野委員】 矢橋さん、どうもありがとうございました。多種多様な課題に技術の動向などを踏まえて、あるいはニーズの動向を踏まえて、バランスよく対応されているのではないかなと感じております。細かいことなのですけれども、ちょっと教えてほしいのですが、例えば(資料2の)10ページでDXのお話が出てきましたけれども、リモート化・スマート化のところで、試料調製も含めてDXにチャレンジされているということだったと思うのですが、試料調製あたりになりますと、かなりユーザーにディペンドしているような気がするのです。そこら辺がうまくできているのだろうと思うのですが、何か特別な工夫があったとか、あるいは意外とやってみたら共通の手順が多かったということなのでしょうか。
【矢橋グループディレクター】 ありがとうございます。非常に重要な御質問です。実験にもいろんな実験がありますので、やはり込み入ったものは難しいのですが、例えばXAFSのペレットづくりとか、粉末X線回折のキャピラリーに粉を詰めるとか、そういう細かいところも非常に人手がかかっております。例えば準備室を開けると学生さんが大挙して粉を詰めているという例がありますので、まずはそういった、共通的、コモンの技術で多くのニーズがある部分を手当てしていきたいと思います。一方で込み入ったところは当然残りますので、それはまた別途の検討となります。
【佐野委員】 ありがとうございます。関連しまして、もう一つだけ質問よろしいでしょうか。
【小杉主査】 お願いします。
【佐野委員】 今のお話にしましても、それから、これは産業利用の促進方策のところ(資料2の19ページ)でお話がありました、ストックからフローへ少しずつ展開していったらどうかというようなお話、それから産業利用推進関係の部門を2室体制とするようなお話があったと思うのですけれども、いずれもユーザーとしては、恐らく歓迎の方向かなと思っているのですが、施設側としては、スタッフといいますか、人員がかかるような方向になるのではないかなと思うのです。そこら辺の見通しといいますか、やはり国のサポートも重要かと思うのですけれども、何かうまくいきそうなといいますか、見通しがあるのでしょうか。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。もちろん人員増強をお願いしますと言っても、なかなかそうもいきませんので、やはりルーチン、パッケージ化できるところはなるべくパッケージ化して、それはブラックボックスと言われようと何と言われようと省力化を図る。一方で省力化ができない部分は人手をきちんとかける、このように、技術をしっかり分けてやっていくということになると思います。
 そうすると、例えば自動化に関わるところに仮に人員がいるとしても、それはいわゆる研究者でなくて、もうちょっと違う方がルーチンでやることになると思いますので、そういった形で効率的にやっていくということが可能になります。もちろん移行期にはいろいろあると思いますが、大きな流れはこのようなところです。
【佐野委員】 ありがとうございました。
【小杉主査】 ほかにございませんでしょうか。
【柴山委員】 CROSSの柴山ですけど、よろしいでしょうか。
【小杉主査】 お願いします。
【柴山委員】 先ほど佐野委員からの質問にありました(資料2の)10ページで、私も2つほどお聞きしたいことがございます。DX基盤の整備というところでございます。
 非常に興味を持ちましたのは、(資料2の10ページ)SPring-8のデータ創出基盤としてデータセンターをつくられるということで、非常にすばらしい企画だと思うのですが、その場合、人材及び人件費をどうやって賄っていくのか、あるいはやっておられるのかということと、それから一番最後の行、下の行にあります、AI解析でグリーンイノベーションを加速すると。この場合AIというのはいろいろ考えてみると、プログラム開発等で非常に難しいところがあると思うのです。それはインハウスでそういうのを推進しておられるのか、あるいはアウトソーシング、あるいは先ほど出てきました富岳等との共同開発みたいなことを考えておられるのか、お教えいただければ。
【矢橋グループディレクター】 ありがとうございます。その人員のところは正におっしゃるとおりで、いろいろ考えていかないといけない部分はありますが、我々はSACLAの方でもデータセンターを運用しておりまして、ある程度アウトソースをしながらやっていくということで、何とかいけるのかなというところはあります。
 一方で、今正に御指摘いただいたAIのところは非常に重要でございまして、もう今全てソリューションを言っていただいたのですけれども、インハウス、アウトソース、共同研究という、3本をどういうふうにミックスさせてやっていくかということが重要になります。やはりインハウスで高級なAIを担当するのはなかなか難しいのかなという印象がありますので、いかに外部の優秀なところと連携をしていくか。
 その外部に入っていただくときに、外部の方のインセンティブ設計をどうするかというところを十分考える必要があります。相手先は、大学研究機関であったり、場合によっては民間の方のAIサービスということもあると思いますので、そこをしっかりと議論していきたいと思います。
【柴山委員】 どうもありがとうございます。イメージしたことと大変近いことで、ある意味安心しました。今後ともよろしく御指導お願いします。ありがとうございました。
【小杉主査】 DX関係でほか、委員の方から御質問等ございますか。
 これはDXとかAIで測定の効率化等が図られるとは思うのですが、そういうのは結果的にどういうところに具体的に見えてきますか。
【矢橋グループディレクター】 測定の効率化、よく言われることなのですけれども、例えばCTを撮るときのドーズの最適化であったりというのは、割合初期にもできることだと思います。
【小杉主査】 それができることによって、件数がどうこうとか、評価する指標がよく言われるのですけど、どういう指標が考えられますか。
【矢橋グループディレクター】 1つは計測が早くなるので、たくさんの実験数、資料数がこなせるというところがあると思います。
【小杉主査】 キャパシティーの問題ですね。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。キャパシティーの問題。もちろんそこには一定のクオリティーを担保しながらということになりますね。
【小杉主査】 質の向上というところも、SPring-8である程度行けるところまでは到達していてSPring-8-IIに向かわないと、質的に進まないかもしれないのですけど、こういうところで少しカバーできる部分があるのかもしれないですね。
【矢橋グループディレクター】 IIを想定しながらそれをやっていくことになります。
【小杉主査】 グリーンイノベーションの宣言をした件ですが、施設は一般的には受け身で、ユーザーの動向で動いているという部分があるのですが、SPring-8が積極的にユーザーを呼び込むというところは、どういうところでされているのでしょうか。
【石川センター長】 産業界とのいろいろなリンクを通じての産業界側からの要請もございまして、このように宣言を出したところでございます。
【小杉主査】 積極的に施設側から声をかけて、こういうのができますよというような動きもあるということですね。
【石川センター長】 それもあるし、産業界側から、こういうことはできませんかという御質問もあり、両方絡まっていると御理解ください。
【小杉主査】 分かりました。
 ほか御意見ございますでしょうか。質問等でも。
【古川委員】 1つお聞かせください。
【小杉主査】 古川さんですか。
【古川委員】 そうです。古川です。すみません、先ほどのそれこそ(資料2の)10ページなのですが、リモート化・スマート化の話がありました。利用者としてはそれは非常に有り難い話で、今、私もいろんな外国の装置をリモートで実験させていただいています。
 ただそのときに感じるのが、やはりその現地に、かなり専門的なことが分かる、いろんなワイドな、いろんな実験環境の条件の測定ができる人がかなり必要でして、それに対して、先ほどビームラインの支援者が少ない、人件費がないというお話があったかと思うのですけれども、そこは効率化を上げることで人件費が浮いてきて、そこに人員が補塡できてということに。
 それがお金的に回ったとしても、やっぱりそこに専門者というか、かなり技術的に能力の高い方の配置が必要で、しかもそれを24時間ですか分かりませんが、ビームタイムの稼働時間に十分な支援が得られるようにするのはかなり大変なことかと思っているのですが、それに対して何か方策というか、御意見というか、ありましたらお聞かせいただけると大変助かります。
【矢橋グループディレクター】 (資料2の8ページ)ここでお示ししている、正に2番目のSpecificのビームラインでは手のかかる実験が中心となっており、そういったところは御指摘いただいたように、かなり専門的な技術、いろいろな知識が必要になります。一方でProductionのうちかなりの部分が自動化が進んでおりまして、例えば一番進んでいるのは、タンパク質の結晶構造解析ですが、ここはほぼ手がかからずにやれるので、むしろ実験前の打合せとか、あとは解析ですね、そういったところの比重が非常に強くなっておりますので、そういうところにむしろリソースを分けていって、計測そのものはなるべく自動化を進めることになると思います。
 そこの仕分、区分をしっかりやりながら、限られたリソースを有効活用していきたいと考えています。
【小杉主査】 よろしいでしょうか、古川委員。
【古川委員】 コロナという状況では、なかなかProductionかSpecificかという区別なく、全員が今なかなか実験ができないとか、研究ができないというような状況ですので、ちょっと質問させていただきましたが、今お考えになっていらっしゃることが、Productionというか、ルーチンワークにかかるあたりのお話だというのを伺って、あっ、そっちの方なのだというのが分かりました。
【矢橋グループディレクター】 そうです。
【古川委員】 ありがとうございます。
【矢橋グループディレクター】 Specificのところは、人手をかけてやっていきます。
【古川委員】 そこが今コロナではかなり難しくなっているところだと思っていて、そこに何か解法がないかなと私も考えているものですから、質問させていただいた次第です。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。そういう意味でやはり、完全にリモートで、全部スタッフがやるというのは、スタッフの精神的な負担も相当大変です。ただし、恐らくコロナがある程度収束すると、例えばこれまでSACLAには、海外からも非常に大勢で来ていたのですが、今後は、人柱的なユーザーが数名来て、そこがしっかり働いて、遠隔でいろいろな指示、サポートがなされることになると思います。そこにスタッフも加わるということになっていくと予想しています。
【古川委員】 分かりました。ありがとうございました。
【矢橋グループディレクター】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかございますか。
【岸本委員】 岸本ですけれども、よろしいですか。
【小杉主査】 はい。
【岸本委員】 すみません、先ほどのDXのところ(資料2の10ページ)を聞きたいのですけれども、このリモート化・スマート化したときに一番重要なのは、操作して、そしてデータを解析できるところにあります。リモート時には現地に行ってデータを持って帰ってこられないので、データソース基盤のところは非常に融合的に働くと思っています。そして、最後ちょっと一つの壁になるのかなと思ったのは、ユーザーがこういうリモート化の環境に外からアクセスしやすいかどうかが重要になってくると思うのです。その辺りの設計は結構進みつつあるところでしょうか。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。そこもSACLAで十分経験はしておりまして、ユーザーはリモートでデータセンターにアクセスして、データを外部に移動することなしに、データセンター内で計算して、保管をしていくということについてはかなり実績があります。この経験を基に、設計方針はお示ししていくことになると思います。
【岸本委員】 なるほど。このリモート化のところも比較的外から操作しやすいような環境になりつつある。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。今もネットワークの整備を進めていますが、認証のシステム等いろんなテクノロジーが進んできていますので、そうするとかなりビームラインの現場と近い体験で、リモートでもできるような形で実装したいということを考えております。
【岸本委員】 いや、本当にそうすると、こういう新常態の中では非常に有効な方法になると思いますので、是非精力的に進めていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
【小杉主査】 ほかの方、違う観点での御質問。
【森委員】 物性研の森ですけど、よろしいですか。
【小杉主査】 お願いします。
【森委員】 (資料2の)25ページの人材の確保というところでお聞きしたいと思います。やはり中・大型施設になると、BL支援員というのですか、そのサポートに回る方の人材の確保というのが非常に大変な中で、テニュアトラックを作られたり、あるいは大学院生の長期課題の提案を伺いました。テニュアトラックというのはどういう方、つまり、Ph.D.を取ったばかりの方を何年ぐらい雇用し、常勤職員にすることを考えていらっしゃるのか、あと大学院生の長期課題についても、その内容を詳しく教えていただいてよろしいでしょうか。
【矢橋グループディレクター】 補足があったら田中理事の方からお願いしたいのですが、私から簡単に説明しますと、テニュアトラックは2年から3年程度で適性をお互いに判断しまして、その後、定年制職員に移行するかどうかというところを決めるという制度でございます。それから、大学院生提案型のところは、特に博士課程数年、例えば3年間が確保できるような課題というのを新設しまして、ある意味で安心して使っていただけるような制度を準備しているところですが、JASRIの田中理事から補足はありますでしょうか。
【田中常務理事】 田中良太郎です。まず、御質問にありましたテニュアトラックですけれども、テニュアトラックの期間は3年間です。Ph.D.を取った、比較的若手の人なのですけれども、JASRIの方で採用させていただいて、大体2年半がたったところでテニュアの審査を受けていただいて、合格されればJASRIの定年制のスタッフに移行するというものです。
 狙いとしては、人材を育成するという形で、育成という言葉を使っておりますが、私たち施設側のビームライン担当者、例えば利用系であればビームライン担当者ですが、それを養成する必要があるというふうに思っています。それは、人材を募集して、公募で採用できたときに、じゃあその方を即ビームラインの現場でお仕事をしていただけるかと、そういう人もいらっしゃるのですけれども、最近、見ていますと、やはりそこに育成という期間が必要で、その育成の中には養成という、現場でOn-the-Job Trainingをやっていただくという形で、しっかりとある期間、現場の経験を積んでいただいて、御自身の、ここで働きたいという意思と、施設側の、ここで働いていただく適性があるねというのを見させていただいて、しっかりと施設側の人間として、私たちの仲間として一緒に働いていただける人を養成したいというのが狙いです。
 その3年間の期間、いろいろと現場でOJTを経験していく上で、いろいろと相談事とか、それから悩みとか、いろいろなメンタルな支援というのが必要であろうと思っています。これは比較的若い人、若手の研究員が対象になると思っていますので、メンター制度というのを新しくつくらせていただいて、1人のテニュアトラックの研究員には1人のメンターが必ずつくと。そのメンターは、年齢等を問わず、年齢性別を問わず、そのテニュアトラックの研究員にちょうど合うであろうというマッチングを考えて人選をしたメンターをつけております。
 それから、大学院生提案型の課題、これは今まであったのですけれども、多分本日の資料2の25ページか何かにあると思うのですが、大学院生提案型の長期型というのを設けました。というのは、大学院生の期間はD1からD3まで3年間ありますので、この有効期間というのを1年から3年間というふうに設けております。共用ビームライン26本と、一部の理研ビームライン、共用に供している部分を合わせて、ここでしっかりと博士論文を作成するための研究を、3年間じっくりとやっていただくということを狙いに、新しく設けた課題種でございます。この場合、大学院生の課題、今までは課題を審査していましたけれども、大学院生そのもの、お一人を、大学院生の方を審査するということで、選定委員会の下に新しく大学院生の審査専門委員会を設置して、審査の下で長期的に研究に従事していただくということを可能にするようなシステムです。
 以上です。
【森委員】 非常にきめ細やかなプログラムだなと思って感心したのですけど、今、できたばかりなのか。やはりこれをやることによって効果があったのかということに関してはいかがですか。
【田中常務理事】 まだ1期生が卒業しておりませんので、これから成果を見ていく、PDCAをやる必要があると思っております。
【森委員】 分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】 また次回のフォローアップのときに状況等お知らせいただければ。人材のことは随分時間もかかりますし……。
【森委員】 そうですね。
【小杉主査】 議論し出すと止まらないので、この辺りにしておきます。
 そろそろ時間なのですけれど、最後に、この(資料2の)19ページ目の最後のところ、お聞きしたいというのが施設側からありました。
【矢橋グループディレクター】 是非コメントをお願いしたいと思います。
【小杉主査】 論点をもうちょっと明確に。
【矢橋グループディレクター】 これは特に産業の委員の方にお伺いしたいのですけれども、今応募要件があるわけですが、こういうのがない方が良いのではないかという議論を内部で行っております。そこについてコメントを頂きたいということです。
【小杉主査】 まず、高橋委員から。
【高橋委員】 第一三共RDノバーレの高橋です。この成果公開優先利用の仕組み、存じ上げてはおるのですが、確かにおっしゃるとおりに、私どもで大型研究費を獲得しているわけではないので、対象外だなと初めから思ってしまっているところがあるかと思います。それぐらいでしたら成果専有の時期指定を使うことを考えるのですが、やはり成果専有の時期使用となると、またワンランク高くなって、お値段も結構上がってくるので、それで敷居が高くなるかなという懸念はあると思います。でもその点は、逆に言うと、利用単位の時間を短くすることで、より対応できているのかなというのが最近の感触です。
 コメントです。ありがとうございます。
【小杉主査】 岸本委員も同じですか。
【岸本委員】 はい。私も基本的には同じで、こういうところは最初から企業は応募できないというふうに思っているところが多分にありますので、こういうところで広げていただけると、更に活用が進むのではないかなと思います。
【小杉主査】 では、その程度でよろしいでしょうか。
【矢橋グループディレクター】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ちょっと時間も超過していますので、この辺りで。また約1年後にフォローアップで、進捗状況、特に人材の方は、どの施設も重要課題ですので、御報告いただけたらと思います。
 それでは、議題(2)に移りたいと思います。議題(2)はJ-PARCのフォローアップ、J-PARCでもMLF、中性子施設を中心としたフォローアップですが、御説明を25分程度で収めていただくと助かります。よろしくお願いします。
【大友ディビジョン長】 物質・生命科学ディビジョンのディビジョン長をしております大友と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私の方から、MLF中心に、フォローアップについて御報告させていただきます。
 (資料3の2ページ)J-PARC全体の御説明なのですけれども、リニアックがありまして、あと3GeVシンクロトロンがあって、そこで加速された陽子が物質・生命科学実験施設に入ってミュオンが発生するというわけなのですけれども、そのほかに3GeVシンクロトロンに投入した陽子がハドロン実験施設や、それからニュートリノ実験施設に利用される構造になっています。J-PARCはKEKとJAEAの共同建設、共同運営になりまして、JAEAが担当するのはリニアックとシンクロトロン、物質・生命科学実験施設ということで、このJAEAの担当部分が共用施設となっています。
 (資料3の3ページ)物質・生命科学実験の中では中性子とミュオンが使えるわけなのですけれども、そのほかにJ-PARCではいろいろなサイエンスをやっています。(資料3の4ページ)物質・生命科学実験施設の中なのですが、23本のビームラインが設置可能で、現在21本が稼働しています。そこには、KEKのビームライン、JAEAビームライン、共用ビームライン、茨城県ビームラインがありまして、それをまとめますとこのような形(資料3の5ページ)になっていまして、KEKが大学共同利用機関法人として運営している中性子のビームライン8本、それからJAEAの設置者ビームラインが4本、それからCROSSが共用ビームラインとするビームラインが7本、そのほかに茨城県及び茨城県の委託を受けた茨城大学が運営している専用ビームラインが2本という形になっています。それぞれミッションの異なる組織がMLFを運営しているわけで、MLFの23本のビームラインというのは、それぞれのビームラインが全く違う特徴といいますか、性能が被らないようにされておりまして、2つのビームラインが同じことをやるのはないということで、MLF一体的に運用する必要があるという考えの下に、ユーザーズオフィスに一元的な窓口にすることで、その中でユーザーはJAEA、KEK、茨城県のビームラインに分かれるという形になっています。
 (資料3の6ページ)これは萩谷補佐から御説明もありましたけれども、前回は2018年6月に中間評価がありまして、そこでの評価事項というのがあるわけですけれども、(資料3の7ページ)細かいところは省かせていただきまして、コメントとして示すとこのようになっております。今後の方向性として特に留意し取り組むべきこととして挙げられた、MLF関連の事項です。
 1つ目は、施設の整備・運用ということで、J-PARCでは1メガワットというパワーの陽子を使いますが、これは所期性能でありまして、ある意味、前人未到の領域を常に歩いているということなのですけれども、それでも安定運転の実現を第一とするということが書かれています。
 それから、中性子・ミュオン利用の推進ということで、4項目ぐらいありますけれども、今回の重点項目と重複しますので、これらの4つの項目と今日の重点項目と併せて随時説明させていただきます。総論の方は、これはJ-PARC全体に関わることなのですけれども、今回は参考資料としてお付けしておくことにとどめたいと考えています。
 (資料3の8ページ)さて、最初の安定運転なのですけれども、これは、まず2020年度より600キロワットのビーム強度で安定的な利用運転を実施しました。最終的には1メガワットを目指すわけですけれども、いろいろなR&Dを進めながら行っています。2020年度には7.2サイクルで、稼働率92%というような、非常に高い稼働率を達成しています。下のグラフは、昨年度から今年度にかけてのビーム強度と稼働率を表しています。水色のラインがビーム強度を表していまして、今年度、700キロワットで運転しています。
 (資料3の9ページ)一足飛びに1メガワットにいかない理由の1つが、実は、ターゲット容器、この中に水銀が流れておりまして、その水銀に対して陽子ビームを打ち込んで、核破砕反応と言われる反応で中性子を取り出していますが、陽子ビームが1マイクロ秒という、非常に短い時間に打ち込まれて、それで圧力波というのが発生して、真空のバブルができます。そのバブルが容器の内側に当たりますと、ピッティングと言われるような現象が起きまして、容器を破損し、ひいては水銀漏れにつながります。我々としてはこれを避けて、容器の寿命をきちんと予測したいということです。
 左側の写真は、かなりえぐれていますけれども、MLFの容器の写真ではありませんで、アメリカのSNSというところで出たもので、最悪はこういうことになります。容器の寿命を延ばすために、ヘリウムのマイクロバブルを入れまして、ヘリウムガスの泡が圧力波を緩衝するような形でこの寿命を延ばすということをしています。右下図の振動速度というのが、ある意味、圧力波の衝撃と思っていただいて良いのですけれども、バブルなしの場合に比べて、「あり」では非常に下がっているので、これを行うことで、非常に優れた損傷抑制効果が実現できていることを確認してまいりました。
 どのぐらい泡を入れたときに、どのぐらいの損傷抑制効果があるのかということを今見積もっていまして、それを段階的に行っているということです。ビームの大強度化に伴って、高放射化した設備機器の保守に負担が増えるということも発生していまして、これに対応することが1つの課題になっていますが、毎年100キロワット単位で陽子ビームパワーを段階的に上げているのは、こうした対応が必要であるためです。
 (資料3の10ページ)それから、中性子・ミュオン利用の推進ということですけれども、ここに挙げられた今回の量子ビーム小委員会での重点項目と前回の中間報告のコメントへの対応も併せて御説明いたします。
 (資料3の11ページ)まず、中長期的な施設の利活用方策についてですが、まずはターゲットの1メガワットを実現するということが重要だと考えています。それで1メガワット定格運転に達することが高い優先度となりますけれども、我々としては2023年頃に1メガワットに到達できるのではないかと考えています。それとともに、装置の高度化ですとか新しい装置の建設を目指していきますが、並行して第2ターゲットステーション、TS2の技術設計を行います。現在1個しかないターゲットステーションの2つ目の建設を検討していますけれども、実現は向こう10年よりも少し先かと考えています。
 施設が安全・安定に最大限の性能を発揮するための整備、加速器の高品質化・運転の効率化、それから中性子源での標的容器の耐久性の向上、高放射線化機器の適切な維持というところが課題になりますし、実験装置については、現在、中性子の非常に大きな特徴でありますスピンを偏極させて実験を行うということを強化しつつあります。それで、そうした高度化と、それからやはり老朽化です。稼働から10年以上たちましたので、J-PARC MLFでの老朽化対策というのはこれから本格化してくるというふうに考え、それと大幅改造、新設を経てTS2に至るということを考えています。
 (資料3の12ページ)DX化ですけれども、これもコロナの影響で加速しているところなのですけれども、まずは実験装置の自動化・遠隔化ということで、ネットワークを介した制御ですとか、高機能交換機構等を実装しつつあります。それから2つ目は、計算環境の整備による遠隔化、効率化ということで、J-PARCでは先進計算環境解析ファクトリというのをつくっていまして、ここを介してユーザーが遠隔地から解析することを考えています。よりアクセスしやすいという意味では、クラウドを利用した、より使いやすいというものも今検討しています。また、NIIとかNIMSが検討しておられます研究データプラットフォームというところにデータを供出するということも今考えています。
 それから、目的とする物理量なり、パラメーターの誤差を考慮した上で、どのぐらいの時間で測定したら良いかということを、機械学習等を使って予測するということにも取り組んでいまして、インフォマティクスを活用した実験の効率化もこれから実装していきます。
 こちらのデータ駆動型というのは、MLFもこういうことができると提案していきたいと思いますけれども、これはやはりいろいろなプラットフォームの上で、データを皆さんに使っていただけるということも大事だと思います。
 (資料3の13ページ)それで、DX化の取組で遠隔化なのですけれども、細かいことは少し避けますけれども、基本的にはSSL-VPNという形で外部から調整制御するということで、基本的にソフトウエアに各機器を対応させるということをメインに行っています。実際、実験装置のキャビンで行っていることを遠隔化するために、基本的にはインターネットセキュリティーの問題と、それから、やはり現場にいないということを念頭に置いた装置に対する安全確保というところが課題になってまいりますが、ガイドラインを作成して対応していきます。あわせて、機器の自動化については今年度も継続的に実施しているところです。
 (資料3の14ページ)産業利用の促進方策であります。1つは、これはCROSS中心に進めていただいているのですけれども、機能性高分子コンソーシアムということで、企業グループと学術研究チームがタイアップしてやるという形で進めていまして、産業界にとってのメリットと、それから学術界にとってのメリット、そして施設のメリットまでをマッチさせるということを目指しています。
 この成果ですけれども、1つは、参加企業2社が新たなパワーユーザーに成長ということが実績としてありました。また、コンソーシアムで共同開発した試料環境装置を使う一般利用者が大幅に増えまして、コンソーシアムの活動の中で開発された実験機器が、他のビームラインでのユーザー利用に活用されるという形での波及というものも見られています。それから、3者がウィン・ウィンの関係になるという意味では、学術成果としての発表も行われています。
 このコンソーシアムの発展形になりますけれども、量子ビーム分析アライアンスというものを今年度から始めることにしていまして、昨日プレス発表が京都大学の方からされたと思いますけれども、これは中性子に限らず、複数の量子ビーム施設のワンストップ利用、量子ビームエキスパート人材の育成ということで、京都大学が中心になりつつ、それからCROSSがそこに参画するという形で進めたいと思っています。京都大学が運営しておられますSPring-8のBL28XUと、それからJ-PARC、JRR-3の連携利用をこれから実現していきたいと考えていまして、既にオンライン授業による量子ビーム教育などはコンテンツが続々充実してきているという状況です。
 (資料3の15ページ)それから、産業利用の方策のその2ですけれども、個人利用から組織対組織ということは非常に重要だと考えています。実施例としては、企業ポスドク制度として、企業から研究者をMLFへ派遣。現在1名になっています。もともと2名で、その方はポスドクだったのですけれども、企業で正式に採用していただいたということで、決して縮小ではなく、発展しているということになります。それから、企業との包括協定の締結による研究ですけれども、常駐研究員が3名になっています。ここも少し拡大傾向にあります。また、SPring-8との共同ですけれども、NEDOの燃料電池プロジェクトを受託しております。そういう形で、個別のテーマではありますけれども、産学連携を実施しています。
 それから、中性子産業利用推進協議会という、45社が参画されている協議会がありまして、そことの連携も深めつつ、利用促進を考えたいと考えています。
 実は、産業界からは随時公募をしてほしいという要望を頂いているのですけれども、まだMLFの方の対応が難しい状況です。1つの試みとして、いわゆるメールインサービスを、J-PARCではファスト・トラックと呼んでいまして、ユーザーから送付された試料を装置スタッフが代行して、データをお返しするということをやっています。現在このような7本のビームラインでやっています。これは1時間から使えますし、最大で使える日数は決まっているなどの制限はありますが、非常に利用の敷居を低くするための制度と考えています。例えば、本当に1個、そのデータがあれば論文になるし、あるいは論文審査において中性子のデータが必要といわれた場合に使ってくださいというものです。あるいは、課題申請をする前にフィージビリティーを見たいというときに使ってくださいということでお願いしています。この制度を中性子産業利用推進協議会でお話ししたところ、成果専有利用枠も付けてほしいというような要望で、早速検討しているところです。
 それから、利用料金として、成果公開優先利用課題の設定も現在検討していまして、やはりNEDOプロジェクトとか大型のプロジェクトのときにはビームタイムの確保が前提となりますので、そういったときに一定の確保できた枠は必要だと考えて、検討しているところです。
 (資料3の16ページ)それから、中間評価の3-1のコメントに対応するものなのですけれども、中性子・ミュオン振興に関わって主導的な役割を果たすべきということで、1つは、MLF産業利用報告会を行っています。これは産業利用成果と、産業利用の拡大に向けた学術成果を総合的に紹介して、産業界との連携を一層強化するというもので、中性子・ミュオンが何に使えるかに焦点を絞って、産業界が見たいものとのマッチングを図ることを趣旨としています。この趣旨や内容に関しては、中性子産業利用推進協議会の方に実行委員に加わっていただきまして、プログラムの立案を行っています。今年はZoomで開催して、たくさんの方に出ていただけました。企業からは、やはりZoomの方が、複数人参加できるので好ましいということが言われています。会議の内容についてのアンケート結果としては、中性子を使いたいということが9割に達していまして、これは学術界からの参加者も含む回答数ですけれども、産業界の方にしても9割近くが中性子を使いたい、それから会議の目的を達成された方が多かったということで、我々としては次回以降も産業界の方の意見を取り入れながら報告会を開催したいと思っているところです。
 (資料3の17ページ)コロナウイルス感染対策ですけれども、2020年度は運転への影響がありましたが、非常事態宣言が出て、J-PARCは4月20日から5月14日まで止めていまして、その後徐々に再開したのですけれども、6月19日には国内の方には来所可能としました。ただ、大学の方で許されないということもあって、やはり来所できない方もおられました。右に示しているのが実験実態なのですけれども、赤が実験者が来訪しない実験、緑がメールインで実施したもの、それから橙(だいだい)色が来所した実験ですけれども、BL8番とか21番というのは、来所しない形での実験がほとんどでした。これはもともと、この2つのビームラインはファスト・トラック・プロポーザルという、資料を郵送で受け取って、自動で測定してデータを返すというようなことができていましたので、それで比較的受け入れやすかったというところがあります。BL1番というのは非弾性散乱実験で、先ほどのSPring-8の議論でもありましたけれど、実はこれは非常にやりにくい実験なのですが、スタッフがかなり頑張って対応しました。ただ、実験成果として、やはり本来得られるところまで、本来達することができたであろうところまでなかなか達し得なかったという感想はもらっています。これは非常にスタッフの負担が大きかったということです。実験課題数は362で、110件程度が代行実験でした。
 それから、コロナウイルスの影響として、中性子・ミュオンスクールを毎年やっているのですけれども、それは中止せざるを得ない状況でした。
 2021年度、海外のユーザーは来所できない状況が続いていますので、これはユーザーの方と装置担当者の相談によりですが、代行実験による支援を実施しています。MLFではユーザーの受入れが難しいことが当面続くことを想定して、遠隔利用を図っています。先ほど御説明したDXのようなことをしているのですけれども、遠隔利用に関するガイドライン、インターネットセキュリティー、それから機器の安全、試料輸送等というところのガイドラインを作成して、きっちりとやっていきたいと思っています。今年の後半からは徐々にそういう形で遠隔実験をしていこうと思っています。
 (資料3の18ページ)ユーザーが来訪しない実験というのは、実はJ-PARCの場合は、左端の状況になります。ユーザーが外からできるのは監視のみというところになっています。データ解析とか実験制御に参画できません。したがって、装置担当者がデータ解析や実験を全てやる必要があるというような状況です。先ほど御説明した遠隔実験が安全にできるようになれば、少なくともデータ解析はできるようになります。
 MLFとしては、できればユーザーの方には来ていただきたいと思っています。これからユーザーの方が来られるような状況になってきたら、今までは、来られた方が中心で実験されていたと思うのですけれども、そこでデータ解析が外からできるようになって、見えるようになれば、共同研究の方が外からアクセスして、いろいろなコメントもできて成果につながると考えています。それから最近は、大学の先生が常時MLFにいるということも少なくなっていますので、例えば学生の方にはMLFに来所していただき、そのデータのディスカッションを指導教員の方と遠隔でやっていただきながら、場合によっては学生の方が遠隔でシフトに入っていただくというのは、学生教育や人材育成につながるのではないかと考えています。最終的には、これはまだ実現には時間が必要なのですけれども、パワーユーザーを育てて、外部のパワーユーザーが遠隔でユーザーサポートをするということも可能になるのではと思います。コロナ禍を乗り切るということにプラスアルファして、新しい利用形態を考えています。
 (資料3の19ページ)海外の方では、ISISとかSNSでは、こういったアップグレード計画というのが進んでいます。ISISでは今年行われますし、SNSでも2023年に行われる予定です。SNSがパワー的にはライバルですけれども、それが倍ぐらいになっていくという状況で、我々としても対応が必要なところです。利用料金については、いろいろな形態がありますけれども、ざっくり言いまして、利用料金のISISの一番高い値段、それからSNSの値段というのは、J-PARCでの1時間当たりの値段と大体同じくらいのところになっています。
 それから、他の施設、中国も稼働を始めていますし、スウェーデンのESS、EUのESSも2023年ということで、こういう海外との競争というのもこれからまた激しくなっていくところです。
 オープンデータ化については、EUがやはり非常に熱心でして、放射光と中性子でそういうクラウドをつくるという構想があります。ただアメリカは、ファンディングエージェンシーといいますか、研究のファンドの元のポリシーに従うということで、共通のオープンデータプラットフォームをつくることは今考えていないということでした。
 (資料3の20ページ)量子ビーム間連携ですけれども、まずはJRR-3ということで、ビーム運転がJ-PARCでは夏は止まっているわけですけれども、その期間にJRR-3を運転するという形で、1年中、中性子ビームが出るように、使えるように調整していただいています。それからJRR-3のような原子炉と、J-PARCのような加速器中性子源というのは少し使い方が違いますので、ポータルサイトを開設して一元的な利用相談窓口をつくっています。そこではJAEAのJRR-3の担当の方にも入ってもらっていますし、それから東大物性研の中性子施設の山室先生にも入っていただいています。それで、こういう形のチャートをつくって(資料3の21ページ)、まずはどんな形で中性子が使えるのかというのを俯瞰できるような形にしまして、メール等による相談なしで、ある程度情報が収集できるような環境を整えつつあります。
 (資料3の22ページ)このマルチビーム連携、スパコンとの連携、それから国際連携については、読んでいただければと思います。
 (資料3の23ページ)選定者利用なのですけども、MLFは、CROSSの共用ビームライン、それからJAEAの設置者ビームライン、KEKの大学共同ビームラインとなっていまして、全体として一体として運用して、幅広い成果を出す必要があると考えています。現状で窓口を一本化して、課題審査を行っています。ただし、設置者ビームライン及びKEKの大学共同ビームラインが受けている一般課題は、それぞれのビームタイムの半分以上となっていますが、その部分の利用支援等にかかる経費は、それぞれの法人がカバーしており、利用支援に当たる人員が、設置者ビームライン、大学共同ビームラインでは少ないという状況にあり、カーボンニュートラルのような時勢に応じた重要課題に十分対応できないという問題があります。検討の方向性としては、利用料収入を含めた財源の多様化の検討、例えば利用料収入の利用による資源充当等が必要ですし、それから、設置者ビームライン及び大学共同利用ビームラインが共用に貢献している一般課題には、共用に更に積極的に関与するための新たな仕組みの検討が必要と考えています。
 (資料3の24ページ)これは、どのような形で公募が行われているかですけれども、年数を追うごとに増えています。昨年はコロナの影響があって、2020Aの課題がキャリーオーバーという形で、2020Bにはみ出しました。これにより2020Bで公募できるビームタイムが非常に減ってしまいましたので、2021Aと合わせて公募した都合で件数が増えていますが、半期で言うと、今までで2番目ぐらいに大きいところです。青いのが産業利用で、これは実は余り増えていないのですが、外国からの利用が顕著に増えています。内訳はこのようになります。
 (資料3の25ページ)論文数は徐々に伸びてきていますが、頭が痛いのはトップ10%が余り芳しくないというところで、この辺りは論文数の増加と、あと質の向上という意味で、MLFの中でもまだ分析が必要なところになっています。
 (資料3の26ページ)それから、これも社会的重要課題として、MLFでも積極的に取り組んでいきたいと思っていますけれども、やはりMLFの得意なところは軽元素の観測です。かつ時空間でマルチスケールで測れますので、そこのところで特徴を生かして、グリーンイノベーションに貢献していきたいと考えています。既にNEDOの燃料電池プロジェクト等も走っていますし、それから企業との共同研究契約も、やはりグリーンイノベーションに関わるところはありますので、そういう形で進めていきたいと思っています。
 (資料3の27ページ)以下参考資料となりますので、御覧いただければと思います。
 すみません、長くなりましたけれども、以上です。
【小杉主査】 ありがとうございました。
 それでは、今の御説明について、質問、御意見等ございましたらお願いします。特に御指名しませんが。
【坂田委員】 JASRIの坂田ですけれども、細かいことでちょっとお尋ねしてもよろしいですか。
【小杉主査】 はい。お願いします。
【坂田委員】 FTPについての、(資料3の)15ページとか17ページで7本のうちの3本が緑になっていたので、4本はまだ実施されていないのかなと思いますがその理解が間違っていたら直してください。質問は申請から代行の測定が行われるまでに要する時間はどのぐらいで、また、ビームタイムの中でそのために空けておく時間というのが何か設定されているのかどうか。17ページの図だとよく分からなかったのですけれども、その辺りを教えてください。
【大友ディビジョン長】 分かりました。まず最初のFTPの本数が、実際使われているのが少ないのではないかというのは、正にそのとおりで、これは間違いではありませんで、ちょっと宣伝が足りないのかなと思っています。FTPはやっているけれども、そのFTPの応募がなかったということです。
【坂田委員】 分かりました。
【大友ディビジョン長】 あと、代行のための時間を取っているわけではなくて、最初の課題採択のときに、代行を前提としないでビームタイムを全部割り振っています。ビームタイムがアサインされた課題で、来られなかった場合に代行を検討しているということなので。
【坂田委員】 分かりました。
【大友ディビジョン長】 代行のための時間を取っているわけではありません。よろしいでしょうか。
【坂田委員】 すみません、随時と説明されていたようなので、理解できなかったです。
【大友ディビジョン長】 すみません、FTPは随時です。ちょっと言葉が混同しているかもしれませんけれども、一般課題で審査されてきたものは代行実験を行いました。このFTPも代行実験なのですけれども、これに関しては随時でして、10%のビームタイムをもともと取っていまして、その中でこのFTPの実験を実施しています。
【坂田委員】 ありがとうございます。以上です。
【小杉主査】 ほかにございますでしょうか。
【大竹委員】 理化学研究所の大竹でございますが、よろしいでしょうか。
【小杉主査】 はい。
【大竹委員】 まずパワーアップの方で最初に、(資料3の)8ページ、9ページで、1メガワット相当のビーム強度のところで、94%の高い稼働率と。ここでの稼働率というのは、どういった数値で出されていらっしゃるのでしょうか。
【大友ディビジョン長】 これは予定したビームタイムがどのぐらい遂行できたかという数値ですが、94%になっているのは、この時間から1メガワットで出そうと思ったのだけれども、調整が不十分なところがあって、最初少しロスしたのですね。
【大竹委員】 これもちゃんと……、分かりました。計画時間から。
【大友ディビジョン長】 そうですね。36時間のほかに本当は時間があったということです。
【大竹委員】 ありがとうございます。
 それと、その次のページ(資料3の9ページ)で、ビームの大強度化に伴い、J-PARCで非常に重要な問題として、やはり放射化の問題であったり、それからビーム強度を1メガにしたときに、各ビームラインでの、大強度に対応できるようなバックグラウンドの低減であるとか、計測器の対応であるとかというようなことがあるかと思うのですけど、その辺りでも特に、深刻というか、重要な、高放射化した設備機器の負荷に耐えるという、こういったところの課題に関しましては、やはり1メガの計画、何年でというのをちょっとおっしゃっていましたけれども、そういったところは両方を見ながらやっていらっしゃるのでしょうか。それとも1メガの計画の方は、加速器とターゲットの方をメインで計画を立てていらっしゃるのでしょうか。
【大友ディビジョン長】 やはり御指摘のとおり、これはもう安全とは切り離せませんで、2023年というのは、ターゲット容器の寿命予測が、およそ目途が立つのが2023年と考えていまして、それと、本当に1メガワットにするかどうかは、ちょっと別な問題かなと。要するに技術的には早く確立したいのだけど、安全にきちんとできるかどうかということは、そのときにまた検証しながらということになると思います。
【大竹委員】 分かりました。この36時間というのは、本当にすばらしい達成時間だと思っておりますので、是非とも力を入れて進めていただければと思ってございます。
 以上です。
【大友ディビジョン長】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかにございませんか。
【高原主査代理】 よろしいでしょうか。九大の高原です。
 (資料3の)20ページのJ-PARCと定常炉の連携とが、定常炉がスタートして、これからいろいろな展開が期待できると思うのですけれども、実際に、ユーザーさんがJ-PARCと定常炉をどういうふうに使い分けるかというのは、このJ-JOINというところの上にあるコーディネーターの方が現在は、いろいろな取りまとめとか、どういうふうにやったら良いかとかいうことをサジェストされているのでしょうか。
【大友ディビジョン長】 まだここのコーディネーターのところに直接問合せは来ていないのですけれども、使い分けについては多分、コーディネーターのところにはいろいろな情報を集約しつつ、コーディネーターはむしろ、ここに入っているような人たち、私も含めた施設担当者と連携を取りながら決めていくことになると思っています。最終的なところは、コーディネーターのところにどんどん情報というか、ノウハウを蓄積していくのですけれども、最初は多分、かなり議論しながら進めていくことになるかなと思っています。
【高原主査代理】 ありがとうございます。
 それからもう一つ、よろしいでしょうか。質問ですけれども、一番最後のところ(資料3の26ページ)のグリーンイノベーションのアピールのところなのですけれども、中性子関係は、ウエットな、水系の研究で化粧品とか洗剤関係の企業で結構使われているので、そういったところも何かアピールポイントに入れるとよろしいのではないかなと思いますけれども。
【大友ディビジョン長】 ありがとうございます。そういたします。
【高原主査代理】 ありがとうございました。以上です。
【小杉主査】 ほかにございませんか。あと5分程度はございますが。
【田中委員】 理研の放射光センターの田中ですけれど、聞こえてますでしょうか。
【小杉主査】 はい。お願いします。
【田中委員】 では、あんまり本質、いわゆる質問をすべきところでないかもしれないですが、専門外なのでちょっと聞いてみたいということです。(資料3の)9ページです。1メガワットの安定運転のための中性子源の課題というところで、私が理解していることとしては、このJ-PARCの水銀の中性子ターゲットというのは非常に優れたもので、ある意味ではアメリカの、先行するSNSでも、ここ最近、ターゲットを改善するのに、このJ-PARCのデザインをかなり取り入れていると聞いています。
 私の質問は、かなり古いデザインで先行するSNSが今、たしか1.4メガワット近くの運転をしていると思うのですけれども、J-PARCが現状でまだ1メガワットに届かないというところは、もはやターゲットのところではないのでしょうかね。どこがクリティカルで、SNSに比べて出力が低い状態に推移しているのかというのを、分かりやすく教えていただけると有り難いのですけれども。
【大友ディビジョン長】 分かりました。J-PARCとSNSの大きな違いは、1メガワットなり1.4メガワットを達成するために、何ヘルツで陽子を打ち込むかというところが大きく違っていまして、J-PARCが25ヘルツなのに対して、SNSが60ヘルツですので、1パルス当たりの陽子数というのは、J-PARCの方が3倍大きいのです。このため、圧力波も約3倍になりますので、もう既にSNSよりも高い負荷がかかっている状況です。ですので、SNSで到達しているのは、ある意味当たり前といいますか、J-PARCもSNSもシビアな状況で運転せざるを得ないというところです。
【田中委員】 はい。
【大友ディビジョン長】 それと、このターゲット容器交換は、高放射化ということもありまして、特に日本の場合は、J-PARCの敷地外の放射線の影響を考えつつやっているのですね。それで交換作業時間がかかっている部分あるのですけど、SNSはオークリッジの荒野の中にありまして、余り周辺環境を気にしなくて良いということで、実はターゲット交換に要する時間が短くて済むのです。ですので、壊れてもすぐに替えられるという状況があります。我々は、壊れたら、非常にユーザーに迷惑をかけるというところが、SNSは壊しても良いよという感じでやっているので、そこで結構チャレンジングなこともやれるというところがありまして、まず陽子ビームのパワーの違いと、ターゲット容器の交換、ターゲット容器損傷にかかるリスクの違いが、SNSとJ-PARCの違いとなっています。
【田中委員】 ありがとうございます。そうすると、現状でも既にアメリカのSNSの条件より厳しい状態になっているということのようなのですが、逆に言うと1メガワットに届くことができるのか。逆にそこを狙う必要はないのかとか、その辺のところはいかがなのでしょう。
【大友ディビジョン長】 それは非常に重要な問題なのですけれども、現在、5ミリの厚みの容器に対して、1年間運転して0.4ミリ程度の損傷でした。600キロワットで運転したときの実績です。ですから、技術的には多分1メガワットはいけるのだろうというふうに思っており、所期の性能の目標である1メガワットは是非達成したいと思っています。しかし、高放射化の影響ですとか安全面から、場合によっては考え直すこともあるかもしれません。確かにいろいろな条件で、今考えていないような条件で考え直すことは、場合によってはあり得るかもしれませんけど、非常にこのバブルの効果が大きくて、今のところは1メガワットは達成できるのではないかと考えているところです。
【田中委員】 分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかに。あと1つぐらいは大丈夫ですが、特にございませんか。
【高橋委員】 すみません、もしほかにいらっしゃらなければ、質問というより、コメントという形でさせてください。第一三共RDノバーレの高橋です。
【小杉主査】 はい。
【高橋委員】 今のお話も、先ほどのSPring-8の話も同じだと思うのですけれども、デジタル化のところと遠隔実験のことで、特に学生さんの教育効果というところで御心配されている先生方が非常に多いと思うのですけれども、実際来所できないと現場の様子を見ることができないということで、教育効果的に大丈夫なのかということをよく心配されると思うのですけれども、逆にデジタル化を進めることで、その不便をデジタルで解決するような若い人というのは最近非常に多いと思うのですね。
 なので、現場での、やはり手を動かすことが必要なスキルというのと、この先の時代に、それとはまた一段違った、少し次元の違ったスキルとして、デジタルをうまく生かしていくというようなスキルを持った人材が将来的に育ってくると、これは中性子の方も放射光の方も一緒だと思うのですけれども、非常に面白い展開になってくるのではないかなと、将来的に期待しています。なので、是非デジタル化のところ、DXのところと遠隔操作、実験のところとを今後も積極的に取り進めていただければ、今後が楽しみになってくると思います。ありがとうございます。
【大友ディビジョン長】 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思っています。
【小杉主査】 そろそろ時間ですので、ここで終わりたいと思います。
 では最後、その他の、議題(3)なのですけれど、本日は事務局より、令和4年度の概算要求の状況等について用意いただいておりますので、お願いいたします。
【萩谷補佐】 事務局でございます。フォローアップの御議論、様々御議論いただきありがとうございました。今後、引き続きフォローアップの機会を設けさせていただきますので、また様々御議論いただいて、よりよい施設の運用に、皆様の御意見も捉えまして、しっかり推進していければと思います。よろしくお願いいたします。
 最後に、資料の4です。概算要求の状況につきまして、お時間もございませんので、簡単に御説明させていただきます。(資料4の1ページ)今映し出させていただいておりますけれども、大型研究施設関係です。最初(資料4の)1ページ目の方に概略を示しております。このうち左下、スーパーコンピューター「富岳」・HPCIの運営につきましては研究振興局の担当でございますが、それ以外に関しましては研究環境課の事業でございます。
 次のページ(資料4の2ページ)でございますが、官民地域パートナーシップによる次世代放射光施設の推進、こちらはパートナーシップで進めているところ、5年間の事業の、令和4年度が4年目でございます。要求・要望額は、右上の方にございますが、62億円を計上させていただいております。かなり昨年度、令和3年度と比べて数字が大きくなっておりますけれども、補正予算の方を加味すると必要額ということで、計上させていただいております。
 次のページ(資料4の3ページ)でございますけれども、SPring-8の整備・共用ということで、令和4年度105億円を計上させていただいております。こちらは、SPring-8、SACLAの中間評価フォローアップの方でもお示しがありましたけれども、通常の共用運転の実施、利用促進に加えまして、令和4年度概算要求につきましては10億円分、データ創出基盤の整備ということで増額要求をさせていただいております。こちらは後ほど詳細を御説明させていただきます。
 次のページ(資料4の4ページ)、SACLAの整備・共用につきまして、こちらは前年度と同額の69億円を計上させていただいております。
 次のページ(資料4の5ページ)、J-PARCの整備・共用でございますが、こちらも前年度と同様、109億円を計上させていただいております。
 (資料4の6ページ)続きまして、先端研究基盤共用促進事業、こちらは、共用を進めるに当たって様々な研究機関や大学などに配分しているプログラムでございまして、プラットフォーム事業、あとはコアファシリティー事業、それぞれの事業を進めるものでございますが、前年度の予算と比較して、若干の増額要求をさせていただいております。この増額分は、コアファシリティー事業につきまして、共用の取組の強化拡充につきまして増額要求をしているというところでございます。
 先ほどSPring-8につきまして、10億円要求の方を御紹介させていただきましたが、次のページ(資料4の7ページ)が、マテリアル分野をユースケースとした研究DXプラットフォームの構築ということです。こちらは、今、研究DXのプラットフォームということで、他局課の事業もまとめた全体像のポンチ絵になってございます。こちらは前回7月の量子ビーム小委員会で、簡単に、プラットフォームの構想につきまして御説明をさせていただきましたが、そのときはかなり、概算要求前でしたので、ちょっと抽象的な御説明になってしまいましたが、概算要求を踏まえまして、現在こういった内容で要求をさせていただいております。
 3段階ございまして、一番上がデータ創出基盤、こちらは、SPring-8のデータセンターを整備して、そこでしっかりそのデータを格納して、二次利用を進めていくということで、こちらが10億円でございます。左側、マテリアル先端リサーチインフラということで、こちら研究振興局の事業でございますけれども、SPring-8とは違いまして、大学などのラボレベルの設備から出てくるマテリアル分野を中心としたデータにつきまして、しっかり蓄積をしていくというものでございます。
 真ん中はデータ統合・管理ということで、右側にございますけれども、研究データ利活用のエコシステム構築事業、こちらは新規で17億円。こちらも研究振興局の事業でございますが、こちらがプラットフォーム化の核となるものでございまして、今のところNIIを予定しておりますが、NIIに研究データプラットフォームの基盤というものを構築しまして、そこに様々なデータを格納して、様々なユーザーが利活用できるようなシステムを構築できないかということで検討を進めているものでございます。SPring-8の10億円の要求でデータセンターを整備しますが、そちらのデータセンターに格納したデータも、この全国的研究データ基盤の方につなげまして、そこを経由して様々なユーザーが利用できるようなプラットフォームを構築していきたいというところでございます。左側はマテリアルズ・リサーチバンクということで、こちらはNIMSを中核としてマテリアルデータの蓄積をしていくというところでございます。
 一番下はデータ利活用ということで、こちらは、以上のデータプラットフォームで格納したデータを使いまして、様々、データ駆動型研究及び、いろいろな社会課題の解決に向けてユースケースをつくっていくというような事業でございます。こちらも研究振興局の事業でございます。
 右下に「スパコン「富岳」等による解析」とございますけれども、以上申し上げましたプラットフォームにつきましては、「富岳」やHPCIの計算資源とも連携しながら、より解析基盤も強化しつつ、しっかり進めていくというところでございます。
 最後のページ(資料4の8ページ)、SPring-8におけるデータ創出基盤の整備10億円の詳細内容、こちらは理研の先ほどのフォローアップの資料と同じものでございますが、詳細はまた御覧いただければと思います。
 駆け足になりましたが、以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。いろいろな形で、SPring-8、SACLA、それからJ-PARCの予算も強化、維持されていく、あと次世代の放射光もしっかり予算を取っていくという形になっております。今日はSPring-8、SACLAの関係者、あとJ-PARC MLFの関係者からも進捗状況を伺いましたし、今後、概算要求も含めて強化されていくという全体の御説明でございました。
 以上で、一応、用意した議題は終わりますが、事務局から最後に何かございますでしょうか。
【萩谷補佐】 事務局でございます。本日は、お忙しいところ、議題の様々な、積極的なディスカッション、ありがとうございました。
 最後に、次回の量子ビーム小委員会の御案内等だけでございますけれども、次回の小委員会の開催につきましては、開催方法も含めまして、改めて委員の皆様方に御連絡させていただきます。今年7月の小委員会では、次回は11月から12月頃というふうに御案内をさせていただいておりましたけれども、もしかしたらもう少し、スケジュールの方が遅れる可能性もございますが、また改めて御案内、日程調整の方をさせていただきます。
 本日の会議の議事録につきましては、作成し次第、委員の皆様にメールにて御確認いただき、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただきます。本日の配付資料につきましても、後日、文部科学省ウェブサイトに公開させていただきます。
 以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして第11期第42回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会したいと思います。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究環境課

(科学技術・学術政策局 研究環境課)