量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第38回) 議事録

1.日時

令和2年9月28日(月曜日)15時00分~16時30分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 大型研究施設におけるデジタル・トランスフォーメーションの取組について
  2. 我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、石坂委員、伊地知委員、内海委員、岸本委員、鬼柳委員、小杉委員、近藤委員、阪部委員、佐野委員、高橋委員、高原委員、田中委員、山重委員、山田委員

文部科学省

仙波研究開発基盤課長、河原研究開発基盤課量子研究推進室長、萩谷研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

5.議事録

【小杉主査】 皆さんこんにちは。定刻をちょっと過ぎましたけれども、ただいまから第38回量子ビーム利用推進小委員会を開催します。本日も前回に続き、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点からオンラインの会議となりました。予定では、本日16名中14名の委員の皆様に出席いただいています。欠席の連絡を頂いている方は宮内委員のお一人です。
 今日は、大型研究施設におけるデジタル・トランスフォーメーション、DXの取組についてヒアリングを実施するという予定になっておりまして、SPring-8、J-PARCのMLFの皆様に御出席いただいておりますので御紹介いたします。
 まず、SPring-8ですが、理化学研究所放射光科学研究センター、矢橋グループディレクターから御説明いただきます。また、石川センター長にも御同席いただいております。
 それから、J-PARCの方は、J-PARCセンターのMLFの大友ディビジョン長から御説明いただきます。また、齊藤センター長及び、共用登録機関のCROSS中性子科学センター柴山センター長にも同席いただいております。
 それでは、事務局より文科省の出席者の報告と、オンライン会議における留意事項の説明、配付資料の確認をお願いいたします。
【萩谷補佐】 事務局を担当しております量子研究推進室の萩谷と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。冒頭、接続の調整に時間がかかってしまって申し訳ございませんでした。
 改めまして、皆様、本日もお忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。
 まず初めに、文部科学省の方で人事異動がありましたので、一言御挨拶をさせていただきます。
 まず、研究開発基盤課長の仙波でございます。
【仙波課長】 8月から研究開発基盤課長を拝命しました仙波と申します。前職はライフサイエンス課長として量子ビームを利用する側で仕事をさせていただいておりました。今後ともよろしくお願いいたします。
【萩谷補佐】 続きまして、量子研究推進室長の河原でございます。
【河原室長】 皆さんこんにちは。8月に量子研究推進室長に着任しました河原と申します。これからお世話になりますが、どうぞよろしくお願いします。
 ビーム小委員会におきましては、本日も議論いただきますけれども、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方についてということで、今年度いっぱいかけて議論していく予定にしておりますので、本日も活発な御意見いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
【萩谷補佐】 それでは、オンライン会議の留意事項について説明させていただきます。
 通信を安定させるため、御発言されるとき以外は、可能な限りマイクをミュート(マイクオフの状態)にしてください。御発言される際は、ミュートを解除(マイクオンの状態)にしてください。
 議事録作成のため、速記者を入れておりますので、お名前を言っていただいた後に御発言をお願いいたします。
 会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話をお願いいたします。
 なお、本日は会議公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるWebexでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
 次に、配付資料の確認をさせていただきます。Webex上に画面共有しておりますので御覧ください。すいません、画面共有の方は割愛させていただきますが、配付資料は資料1から資料6及び参考資料1を事前にお送りさせていただいておりますので御確認をお願いいたします。
 何か御不明点等ございますでしょうか。会議中御不明点があれば、事務局までお電話ください。
 以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。それでは、早速議事に入りたいと思います。
 本日は、議題(1)、議題(2)とありますが、議題(1)は40分程度を予定しております。議題(2)は残りの50分程度ということです。
 議題(1)は、大型施設におけるデジタル・トランスフォーメーションの取組について、になっております。事務局より趣旨等について説明をお願いいたします。
【萩谷補佐】 事務局より御説明いたします。
 量子ビーム施設のデジタル・トランスフォーメーション、DXにおきましては、今までの小委員会では取り立てて大きく取り上げて議論はしてきておりませんでした。一方、新型コロナウイルス感染症拡大により、多くの施設で利用者が来所できず、利用が停止している状況がありまして、これらの状況は非常に深刻だと考えております。
 ポストコロナ社会における新たな日常の構築のため、自動化、遠隔化を含むDXを推進することは、量子ビーム施設全体に関係する重要なポイントであると考えております。本日は、量子ビーム施設を代表して、理化学研究所及びJ-PARCセンターに各施設の現状のDXの取組について御説明いただきます。委員の皆様からは、各施設として、また、ユーザーとしてなどの観点も踏まえ御質疑を頂きたいと思います。
 さらに、我が国量子ビーム施設全体におけるDXの在り方や方向性についても是非御議論いただきたいと思います。この内容は、この後議論させていただきます我が国量子ビーム施設の在り方の取りまとめにも反映させていただきたいと思います。
 以上です。
【小杉主査】 ありがとうございました。それでは、各施設におけるDXの取組について説明いただきたいと思います。
 SPring-8、J-PARCと続けて10分ずつぐらい説明いただいた後、その後まとめて質疑応答という形を取りたいと思います。
 それでは、理化学研究所及びSPring-8での取組について御説明をお願いいたします。
【矢橋グループディレクター】 矢橋です。よろしくお願いします。
 私からSPring-8における自動化、遠隔化等のDXの取組について説明をいたします。
 そもそもSPring-8におけるDXの位置づけというところから始めますが(資料1の2ページ)、我々には海外の競合施設と競争しながら高度な研究基盤を構築して、ユーザーサービスを向上させていくという基本的なミッションがございます。一方で、当然リソースは海外と比べるといろんな意味で限られておりまして、例えば、予算が約半分であったり、それから、エネルギーコストも高いという中で、どういうふうに戦っていくかというところを日夜考えているわけでございます。そうすると、DXによる効率化の推進というのはおのずと非常に重要な項目になっておりまして、これはかねてより検討を進めておりました。
 DXの大きな効果として、今後の少子高齢化に備え、ルーチンワークのオートメーション化をするということが非常に重要になっておりまして、これは当然研究現場――今日はここを中心にお話ししますが――だけではなくて、インフラであったり、バックオフィスであったり、そういったところも重要になってまいります。
 それから先ほどのエネルギーコストに触れましたが、省エネ化も非常に重要になってきますし、あと、オンライン化によるユーザーサービスの向上というところもございます。こういうわけで、もともと重視していたところではございますか、今般のコロナによって、更にしっかり加速するということが必要になってきております。
 それで、この後は研究現場のDXについて中心にお話をしたいと思いますが、その前に、今回のコロナ対応について簡単にまとめておきたいと思います。(資料1の3ページ)
 国の緊急事態宣言を受けまして、SPring-8、SACLAも2020年4月から6月半ばまで一般ユーザーの利用を停止しておりました。ただ、実は施設の運転自体は問題なくできておりまして、これはへき地ゆえのメリットといえます。今までアクセスしにくいと散々言われて続けてきた中で初めてメリットがあったということです。ただし、施設の運転はできているのですが、ユーザーに来ていただくことができずに、結果的に500以上のユーザー実験がキャンセルになっております。
 したがって、コロナ後の新しい実験様式と書いておりますが、DXによる自動化、遠隔化を推進するということは非常に重要になってきておりまして、一つには、今後、人の往来が再び制限された場合にも、研究開発をとめない仕組みを確立し、我が国のイノベーションを推進し続ける。
 それから、DXによって、利用者の参入バリアが下がって、特に新しいユーザーは参入しやすくなりますので、SPring-8をハブとした新たな連携を探っていきたいと思います。
 それから、(資料1の3ページ下段の)3番目でございますが、利用者・ビームラインスタッフともに、ルーチン作業から解放され、実験デザインとか解析といった発見的・高付加価値の活動へシフトしていくことが非常に重要です。これが若手へのアピールにもなっていくということを考えております。
 次に海外の対応例を簡単に御紹介しますが(資料1の4ページ)、御存じのとおり、海外の状況は日本よりかなり厳しいということで、放射光施設、X線自由電子レーザー施設ともかなり制限がまだ続いているということを聞いています。
 例えば、このEuXFEL、LCLS、ESRFでは、ユーザーは原則リモートで、立ち入る場合も厳しく制限されていると伺っております。例えば、LCLSは、ローカルのスタッフはいますが、ほぼ9割のユーザーがリモート参加と聞いています。ESRFは、ちょうどアップグレードが終わりまして、8月から利用開始になっていますが、基本的には全部リモート実験でやっていると聞いています。
 この後、SPring-8の紹介もしますが、海外からの比較として簡単にコメントしておきますと、現時点では、技術的な対応は多分同じレベルにいると思いますが、広報とかいろんなアウトリーチのところでは、海外はそれぞれの施設が一丸となってやっている印象がありますので、我々の方はその点は弱いという印象を持っております。
 次のページ(資料1の5ページ)では、SPring-8、ビームラインにおける典型的な自動化・遠隔化システムの仕上がりの例を示しております。狭義の自動化といったところでは、具体的にはビームに触る、放射光に触る実験ハッチの中が対象になって、例えば、オートサンプルチェンジャーにより次々と試料を変えていくという仕組みが、後ほど紹介するようにかなり進んでいる手法もあります。
結果として、試料交換はボトルネックでなくなってきた場合もかなりあって、例えばXAFSであったり、小角散乱であったりというところは、ユーザーが試料を持ってくるわけですが、むしろ試料の調製に時間がかかっています。つまり、放射光計測にちゃんと合うような、測定にマッチするような形に調製する必要がございまして、例えば、SPring-8でも測室を分けると、大勢の学生さんが一生懸命ガラスキャピラリに試料を詰めているという光景が見受けられるわけですが、そういう場合は明らかに試料調製がボトルネックになっています。さらには、個別のプロセスが仮にできたとしても、それぞれのプロセス間をつなぐところ、インタープロセスの自動化というところも重要になってきます。
 それから、ビームラインそのものについても、いまだ勘と経験によって調整をしているという例も見受けられるようですが、これこそが本来、合理的な調整手順はほぼ一意的に決まっていますので、非常に自動化になじみます。このような一連の自動化ができると、ユーザーがこの自動化されたシステムを外部から遠隔で制御するということで、来所せずとも高度な利用が可能になるということが期待されます。
 次に(資料1の6ページ)、一口にリモートと言っていますが、実は幾つかの類型に分けることができまして、一般的にリモート実験というと、遠隔で操作してデータを解析するということ、ここですね、(資料1の6ページ右側の)1番のフルセットのリモートというところが想定されるわけですが、実はもう少しライトなリモートもあって、例えば、操作はローカルでやってもらうのだけど、出てくるデータを解析する、遠隔でやるというやり方もありますし、あと一番ライトなものは、いわゆるバーチャル参加、いろんなコミュニケーションツールを利用して、あたかもその場にいるように参加をするというやり方もあります。
 特に、このバーチャル参加のところは、イニシャルコストも非常に少なくて済みますし、さらに、これまで来所が難しかった人、例えば、理論の先生とか、コスト管理が厳しい民間会社の大勢の方など、そういった方に実験に参加していただくよい機会になると考えております。
 あと、こういった自動化が進むと、当然、測定代行という、これはユーザーではなくて、施設のスタッフが実験をするというやり方ですが、そこについても、スタッフの負担が大幅に軽減されるので、この分の拡大が見込めるということになります。
 一方で、注意しておかないといけないのは、自動化ではない、いわゆる手動のマニュアルの実験というのも、特に新しいところをやっていく際には絶対必要で、これがなくなることはございません。ここは、この自動化とは排他的なものではなくて、むしろ自動化によって、空いた時間と空いた頭を使って新しいことにどんどん取り組んでいくと、こういったところを期待しております。
 次に(資料1の7ページ)、バーチャル参加の例を簡単に御紹介します。最近、理研のビームラインにおけるバーチャル参加の例の紹介ですが、ビームラインの機器の操作は理研の研究者が行いながら、アメリカのSLACとか、アルゴンヌのユーザーがバーチャル参加をするという例がございました。一部データのやり取りのところで、改善すべき点が見つかったものの、おおむね順調な運用ができたという例を御紹介しておきます。
 それから(資料1の8ページ)、フルセットのリモートです。制御も含めたリモートでは、タンパクの結晶構造解析、これは定型化に非常になじむところでございまして、ここが最も先を走っていて、例えば、ロボットによる自動測定で、週末を自動運転で仕向けるところまで来ておりまして、例えば、サンプルのストッカーから試料を取って、これをこのように持って、それで装着をして、計測をするということをやると、これをひたすら繰り返していくことができるようになってきております。(資料1の9ページ)
 このタンパクのシステムは非常に好評を頂いておりまして、BL45XUのシステムですが、昨年度から始めて、上期から下期に大幅に増えています。(資料1の10ページ)また、今年度前半は、コロナで半分以上ビームラインが飛んでいるにもかかわらず、これだけの回数が自動運転をやっております。他のタンパクのビームラインでの展開も考えております。
 最後のスライド(資料1の11ページ)でございますが、DXはイノベーション推進のエンジンということで、我々も非常に重視して取り組んでいるところでございます。効率を高めながら、創造的・発見的・高付加価値的なアクティビティにどんどんシフトしていく。それから、今まで敷居が高いと言われていたところの潜在的な需要を喚起していく。こういったことによって、新たな基盤施設運営様式と書かせていただいておりますが、これを確立する。場合によっては、施設単体ではなくて、施設群ということになるかもしれませんが、これは研究現場のみならず、施設インフラ・バックオフィスも含めたDX化、それから、他施設のリモート運転というのも技術的には可能になってきていると考えておりますので、この辺りも含めて御議論をいただければと思います。
 以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
 では、質問は後でお受けするとして、次、J-PARCのMLF、中性子の方だと思いますが、よろしくお願いいたします。
【大友ディビジョン長】 それでは、J-PARCのMLFの状況について、大友の方から説明させていただきます。よろしくお願いします。
 この図(資料2の2ページ)は、MLFにおける実験・解析フローを示しております。実験前にどの施設を使うかという選択、実験前の準備、実験条件のパラメーターの最適化、それから、それが終わりますと、実験制御、データの可視化・補正、そして、データ解釈という流れになります。この中で、今後は、右にありますような、AIの導入ですとか、マテリアルインフォマティクスの導入とかをして、更に自動化をしていこうと考えているわけですが、全体は、MLF先進計算環境がバックエンド的に計算能力をバックアップすると。基本的には、これは1つのビームラインで行われて、これをいかにDXによりリモートでできるようにするかということになります。
 現在、MLFの遠隔利用案というのはこのように(資料2の3ページ)考えていまして、現実には、MLFでは遠隔利用はまだ制度として準備ができていません。左側に示したMLFのビームラインと言われるところが、現在できているところでして、先ほどの解析フロー、実験フローのステップは、基本的にはビームラインの中で行われる。このフローは、全てソフトウェアで行われますので、これをいかに外から制御するかということになります。
 実験監視については、内部の装置はいじらない形で、スタティックなイメージを共有するような形で実験監視ができると。これは技術的にできると。それから、測定したデータを、先進計算環境ファクトリーのデータベースにデータとして送って、それを更にデータ解析用のコンピュータに送るという形で、外部からアクセスしたときに、そのコンピュータを踏み台にして、MLFのほかの機器に影響を及ぼさないような形のネットワークセキュリティを考えているという状況になります。この先進計算環境解析ファクトリーは、将来的にはクラウドを使うということも想定して検討を進めているところです。
 実際に今年度のPRISMの予算で行っているのは、まず、自動化のところでして、装置ごとに様々な機器の自動化を行っております。(資料2の4ページ)その中には、試料交換機ですとか、試料は交換しないけれども、調湿ガスの発生をコントロールして、調湿度を制御するもの等はあります。これらを遠隔操作するという形になります。
 最終的には(資料2の5ページの)左端にありますような実験装置の自動化・遠隔化ということを行った上で、さらに、計算ファクトリーやクラウド等もつなげて、遠隔ユーザーが計算環境のアクセスを確保すると。当然、ユーザーはMLFのデータ解析だけではなくて、富岳やマテリアルインフォマティクスを使った解析も行うので、それにより遠隔ユーザーが全ての環境を手に入れると、そういうことを目指しております。
 遠隔利用によりまして、デジタル・トランスフォーメーションと言えるようなこととして示したのがこの図(資料2の6ページ)でして、現状は、一番左にある代行実験と呼ばれるようなところになります。基本的にSPring-8と同じように、代行実験といいますのは、ユーザーが試料を送って、その結果を装置担当者がユーザーに返すというようなものですけれども、結構これだけでも負担がありまして、都度、装置担当者がどんな実験状況かということをユーザーに教えるというようなことが必要になっていますので、実験監視は最低限必要だろうと。実験監視に関しては、この秋ぐらいからビームラインに展開していく予定です。
 それから、次の段階としては、成果の質の向上ということで、一つの実験に対して、複数の人たちがバーチャル参加しまして、データ解析や実験条件の決定等について議論している。ただし、実験制御というところは安全上の問題等がありますので、基本的にはユーザーの方に来ていただいて、オンサイトでやるということが次の段階です。
 この段階の拡張版としては、新しい学生教育とか人材育成ということも考えられまして、この研究グループというところは、指導教員と学生という組合せでもよくて、例えば学生の方にオンサイトで長期間にわたってきていただいて、装置担当者とともに実験をするという形にしますと、所属元の研究室の学生さんもその実験に参加できるということで、これは一つの新しい人材育成になり得るのではないかと考えています。
 それから、実験制御が可能になりますと、もう少しプロに近い方に入っていただくと。そこでは他施設の装置担当者の方が制御も行いながら実験をするというようなこともできるのではないかと考えています。それから、(資料2の6ページの)一番右は、遠隔サポートとしていますけども、これは装置担当者が必ずしもオンサイトの人ではなくても、例えば大学のパワーユーザーで、ほぼ装置担当者と同等に装置に対する知識を持っておられれば、外からユーザーとともに実験をしていただくということも可能になるだろうと考えております。右に行けば行くほど安全上の問題もありますし、実験制御を行うというセキュリティ上の問題もありますので、難易度が高いとしていますけども、これを機会にこういった環境を実現できればと思っていまして、これが一つのトランスフォーメーションではないかと考えております。
 メリットをまとめますと(資料2の7ページ)、やはり、来所できないユーザーの実験機会の確保というところがウィズコロナ下では非常に重要です。それから、アフターコロナも見据えた形での成果の最大化という意味では、実験が効率化しますので、ユーザーやMLFスタッフの負担の軽減で、研究時間の確保につながるだろうと、これは非常に大きなメリットになります。
 それから、MLFに来所していない共同研究者のオンライン実験参加も非常に重要だと考えていまして、先ほど言いましたような、MLFにいる学生さんと大学にいる教員がコミュニケーションをしながらやっていくということは利用形態の拡大につながりますし、成果の拡大につながるだろうと思います。これは装置担当者の負担軽減にも期待できます。
 それから、自動化も並行して進めていきますし、実験条件の設定(主に試料交換)にかかる時間を短縮し、ビームタイムロスの軽減、つまり実施可能な課題数が増えるだろうと考えています。
 一方で(資料2の8ページ)、遠隔実験でいろいろとアクセスできるようになったとしてもやはり難しいだろうと考えているのは、未観測の励起や構造の探索。特に実験室と同じような観測条件と同等の外場の制御が必要な場合等もありまして、その場合に、見たいものが見えなかったときに、どういう原因なのかというようなことは当然ディスカッションが必要になるわけで、単に遠隔だけではできない場合があるかもしれません。
 一方で、実験条件が固定されている実験、試料を一定時間で交換していけば良いというような実験は今でもできると思います。そういう可否も、ユーザーの方とのコミュニケーションを深めながら明確化していく必要があると思います。
 また、物を扱う実験ですので、基本的にはMLFスタッフが実施する必要があります。やっぱりMLFスタッフの負担増大ということもケアが必要で、これは中性子の海外施設でも同様に問題になっています。ここはコミュニケーションを図りながら醸成していく必要があるかなと思っています。
 それから、情報セキュリティです。今のところはJ-PARC内のLANとは基本的に隔離するという方法で行っておりますが、まだまだこれをJ-PARC内で議論する予定です。
 今後必要な取組としては(資料2の9ページ)、まずは情報セキュリティ、それから安全確保の観点から、実験制限の遠隔化は段階的に実施したいと。
 例えば、遠隔操作というのは、放射線作業になるのかというようなところも、若干さ末かもしれませんけれども、留意が必要かと思います。事故が起きたときにどうするかということにつながると思います。
 それから、体制の整備として、遠隔実験がこれから当たり前になっていくと思っていますけれども、遠隔実験インフラというのは非常に数が多いし、種類も多いので、そのための人的資源をどう確保するかというところが課題になっています。そのほかに、制度設計として、情報セキュリティポリシー、それから、データポリシー等も行っていくことで、よりDXが進むと考えていますけれども、この辺もきちんと議論していきたいと考えているところです。
 以上です。
【小杉主査】 ありがとうございました。それでは、SPring-8とJ-PARC、MLFからの御説明について、質問、意見等ございましたらお願いします。
 あと、次の議題でも改めて議論する予定になっておりますが、量子ビーム施設全体におけるDXの在り方とか、方向性という観点がありますので、そのあたりも含めて意見をいただけると幸いです。いかがでしょうか。
【佐野委員】 分子研の佐野ですけれども、よろしいでしょうか。
【小杉主査】 お願いします。
【佐野委員】 意見というより、ちょっと質問になってしまうのですが、SPring-8、それから、J-PARCとも遠隔実験の取組をされているということで今後効率が上がっていくと思うのですけれども、何というのでしょうか、数がこなせるという以外のメリットというのももしかして構築できるのではないかなという気がしておりまして、例えば、ハードウェアも新しくするところもあると思うので、データのフォーマットが一定になってデータ交換がしやすくなるとか、あるいは各実験の誤差とか精度みたいなものが均一になるのでいろいろ議論がしやすくなる、そういった効果というのが見込めるような気もするのですけれども、その辺はどうでしょうか。両施設からお伺いしたいのですけれども。
【小杉主査】 SPring-8、あるいはJ-PARC、それぞれ観点があるかもしれないですけれども、SPring-8はいかがですか。
【矢橋グループディレクター】 矢橋です。当然そういうことは考えておりまして、単にペースが上がっていくだけではなくて、やっぱり質的な変化もございますし、あと、J-PARCの方もから発表がありましたが、データドリブンのところも当然比重が高まってきますので、そういった質的な展開は大いに期待できると思います。
【小杉主査】 J-PARCの方は何かございますか。
【大友ディビジョン長】 おっしゃるとおり、効率化だけではないところがたくさんあると思いますし、SPring-8からも発表ありましたけれども、いろんなコミュニケーションが促進されるというところは大いに期待しているところですが、J-PARCの方では、データフォーマットが一応国際フォーマットに準拠する形を取っていまして、少なくともデータフォーマットにコンバートして供与することができるようになっていますので、当初からそういう考え方でしたので、そこでの海外施設との連携というのは新しいフェーズになるかなと考えています。
 以上です。
【小杉主査】 よろしいですか、佐野委員。
【佐野委員】 良い機会かと思いますので、そういったことも念頭に置いて考えていただければ有り難いなと思います。
【小杉主査】 単に測定の自動化ばかりではなくて、試料づくりについてはSPring-8からありましたし、解析の方も含めて全体がつながってくるので、いろんなところで規格化していかないと、ユーザーがそれぞれの装置で、それぞれ勝手が違うとまた大変ですので、その辺り、次の議論にもなるかもしれないですけれども、量子ビーム施設全体に何らかの共通化も考えないといけない時期かとは思います。
 ほかに御質問ございますでしょうか。
【雨宮主査代理】 雨宮です。大友さんのプレゼンの中で、(資料2の)8ページですか、遠隔実験・代行実験の留意点の中で、MLFスタッフの負荷増大(海外施設も同様)と。代行はともかく、遠隔がうまくいけば、スタッフの負荷が増加しないような方法になるというところまでいくのではないかなと思うのですが、これは、遠隔実験を目指す途上では負荷が増えるけれども、あるレベルまでいけば負荷が減るという状態にすべきなのだと思うのですけれども、コメントいただけますか。
【大友ディビジョン長】 おっしゃるとおり、過渡的な現象になるかもしれませんけれども、例えば試料を受け取って、それを送り返すということだけでも実は負担になっていまして、特に海外ユーザーがいますと輸出管理の問題等も生じていたりします。それから、実験中の機器がうまくいっているかどうかも、最終的にトラブった場合に、トラブルの対応もやはりスタッフがせざるを得なくなってしまうという意味では、一時的に増大して、また減るということはあると思いますけれども、やはりどこかで、ユーザーにお願いできることができない分という、実際に物を扱うというところで、やっぱりどうしても残るのかなと思っています。そういう意味でございます。
【小杉主査】 これは自動化がちゃんとできれば代行も軽減されるということですよね。自動化しない状態での装置で、遠隔で試料を送ってもらってというところで非常に負荷がかかっているという話ですよね。
【大友ディビジョン長】 それはそうなのですけれども、試料の受渡しというので輸送ということがかかると、結構、日本の輸出管理とかそういう問題がちょっと生じていまして、国によっては非常に処理が大変ということが実は発生しております。
【小杉主査】 やはり利用者に持ってきていただいた方が問題がないというところですね。
【大友ディビジョン長】 そうですね。問題がないのかどうかというところもありますけれども。
【小杉主査】 施設側に負担がかかると。
【大友ディビジョン長】 はい。輸出となりますと、業者に頼んだり、結構そこら辺は事務的な手続が増えているのは確かです。
【小杉主査】 SPring-8は海外からの試料で代行というのはあるのでのしょうか。
【矢橋グループディレクター】 特にタンパクのところは非常に多く来ていまして、そこも最初は大変だったと思うのですけれども、もう定型になってしまって数がこなせるようになると、お互いに流れ作業になります。小杉先生がおっしゃったように、自動化との抱き合わせで遠隔ということが非常に重要になってきます。
【小杉主査】 そうですね。それはフォトンファクトリーでも同じシステムになっています。
 ほかに御質問ございますでしょうか。
【内海委員】 内海です。大友さんも矢橋さんも非常に分かりやすく説明していただきました。特に矢橋さんの資料1の6ページ、リモート実験の類型というところに、3がVirtual参加、2がローカル制御、1がリモート制御という形で分かりやすくまとめておられるのですが、この3のVirtual参加や2のローカル制御は良いと思うのですけれど、1の外からリモート制御をするというときには、それぞれの施設のネットワークのファイアウォールを越えて行うことになるわけですよね。だから、ここは非常にハードルが高いと思うし、大変かなと思うのですが、SPring-8ではここまで踏み込んで考えられている、あるいは、そういう実例がもう既にあるということなのでしょうか。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。先ほどのタンパクのところは、要は外から操作するということができるようになりますので、人的安全のところは当然インターロックが担保しているのですけども、機器保護をどうするかというところがありますので、そこも含めて、いろいろと考えながらやっているところです。ただ、当初はタンパクだけで走り出していたところなので、これを広げていこうと思うと、もう一回セットバックして、ちゃんと考え直す必要があると思います。
 遠隔化のニーズは全ての手法というわけではありませんが、ハイスループットのところで、しかも外から操作したいというリクエストに応えられるよう、しっかりやっていくべきだと思います。
【内海委員】 分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】 ある意味、タンパク構造解析は世界的にも標準化されているので、皆さん遠隔でも操作できるシステムになっていると思うのですけれども、それ以外のところは、やっぱり熟練者ではないと遠隔は無理で、完全遠隔化というのがほかの分野で本当にできるかというとちょっと悩ましいです。
 東北の放射光なんか低エネルギーで真空が絡んでいる装置ばかりなので、自動化はかなり難しい問題なので、その辺はまだ時間がかかるような気がしますけど、遠隔でもいろんなレベルが資料1の1ページと資料2の6ページにそれぞれ書かれていますし、完全遠隔化というのは余り考えない、現実的にタンパクの完全遠隔化を見ていると、あそこまでというのは難しい気が私はしております。ただ、3、4人で来ていた利用者が1人だけで済んで、あとは利用者同士でVirtual参加とか、そういう連絡をしながらやっていくという、部分遠隔なら現実味があるかなという印象は施設側としては持っています。
 ほかに何かございますでしょうか。
【阪部委員】 阪部です。ただいまの委員長の質問と関連するのですけども、J-PARCやSPring-8での現在進んでいる課題、あるいはマシンタイムの中で、遠隔実験あるいは代行実験が行える実験と、行えない実験はどれぐらいの割合か、よければ教えていただけますでしょうか。
【小杉主査】 まず、SPring-8、お願いします。
【矢橋グループディレクター】 今まだ遠隔のところは、タンパク以外は余り多くないのですけど、測定代行、いわゆる試料を送ってもらって、こちらが測って返すというのは自動化が進んでいるビームラインで増えていますので、恐らく全体の仕上がりとしては半分まではいかないと思いますが、3割とか4割といったところが非常にハイスループットな対応になってくるのだと思います。
【小杉主査】 J-PARCはいかがですか。中性子の施設。
【大友ディビジョン長】 J-PARCでも粉末解析装置とかでは、比較的実験計画が明確で、代行実験的なことがやりやすいのですね。MLFではファーストトラックという代行を前提としたような実験システムがあって、そこで行われていた実験は今回も問題なくできたと。ただ、先ほども申し上げましたように、温度変化させながら、未知の構造探査をしてくるというようなときには、そういう代行もやってはいますけれども、やっぱり装置担当者の負担が大きいという面があります。いろいろトライはして経験を積んでいるのですけれども、かなり装置担当者が頑張ってやった結果、3割ぐらい代行実験はしたのだけれども、やっぱりかなり苦しかったというところがあって、定常的に3割できるかどうかというのは、ちょっと今はよく分からないです。今の状況ですと、もうちょっと少なくなるかもしれません。ですので、自動化とか遠隔操作化とかということを少し入れないと3割は厳しいかなという感覚を持っていますけど、それはこれから検討するところになっています。
【小杉主査】 よろしいですか。
【阪部委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 少し東北の絡みで低エネルギーのところは、世界的に自動化というのがどれぐらい対応できるかというのは、石坂さん、近藤さん、何か海外施設の情報等もお持ちでしょうか。
 石坂委員はいかがですか。
【石坂委員】 私自身は、前期、全然放射光を、一部を除いて使わなかったのですが、聞いたところによると、ARPESをやっている人が海外だとリモート参加、試料は送っておいて、現地の人がマウントして、測り始めたら日本側の研究者に任せてくれてというので実験を進めることをやっていたという話は聞きました。
【小杉主査】 そうですか。
【石坂委員】 すいません、ちょっと、ちゃんと確認をした方が良いのですけれども、そういうところが海外のビームラインでは何か所かあって実験をやっていますという学生さんがいたと思います。
【小杉主査】 ありがとうございます。近藤委員はいかがですか。
【近藤委員】 海外の放射光施設ですと、もう20年ぐらい前から、実験ホールではなくて、自分の測室というか、オフィスから実験装置を駆動させて測定するというようなことを、インターネット経由でやっていたのを見てびっくりしたことがあります。もう20年ぐらい前ですね。
 ですから、遠くから実験するというのは、軟X線の領域でも、部分的にですけれども、できるところだけだと思うのですけれども、既にずっと前からやっているような背景があったかと思います。それは海外の施設ですけれども、日本では、なかなかそういう現状はないかなと思います。
 小杉先生がおっしゃったように、軟X線領域ですと真空が絡むものが多いので、どうしても真空操作というのが現場でやらないと、というのが多いのでなかなか難しいなという壁を感じます。ただ、部分的には、遠隔でやることが効果的なものも散見されるような気がいたします。
 以上です。
【小杉主査】 試料が装置に入ってしまえば、あとはコンピュータ関連の、現場で見るか、離れたところで見るか、トラブルがあると現場に行かないといけないと、その辺ですよね。
【矢橋グループディレクター】 矢橋ですけれども、今の点、SPring-8は当然硬い方なので、余り軟X線というところは少ないのですけども、ただ、真空という意味ではHAXPESの装置が非常にたくさんあります。今、HAXPESビームラインの再編も検討していますが、その中で当然自動化のところも入っていて、特に産業の絡みでいろんな、たくさんの試料を測りたいという御要望もありますので、例えば、一晩の無人運転ができるような装置だての工夫は検討しているところでございます。
 あと、近藤先生の言われた測室とか、例えば、宿舎から制御するという、実はこういうリクエストは非常に多い。つまり、自宅とかではなくて、サイト内だけれども実験ホールではないところから測定するというのは、これも一種のリモートになるのですが、ネットワークの区域の検討も含めて対応していきたいと考えております。
【小杉主査】 ありがとうございました。そろそろお時間ですが、1つ2つこれだけはというのがございましたら。
【高橋委員】 高橋です。すいません、もしよろしければ、構造生物のところで、実際リモート実験をとても利用させていただいているので、これまでの先生方の御質問に対しても幾つかコメントできるかと思い、お話ししたいのですけど、まず、最初に佐野先生からコメントのありました、誤差や精度がよくなるといった点は私どもも非常に実感していて、これはどちらかというと、試料を準備する側が自動測定に合わせたような形で、規格の整ったようなものに試料、この場合、結晶ですけれども、結晶を乗せて運ぶ、送るようにするということを心がけるようになって、ますます精度というか、再現性というか、安定して測定ができるようになっているといった側面は確かにございます。
 また、測定の安定性という意味でも、やはり自動測定でやっていただいた方が、マニュアルでやるよりも、ある意味安定して取れている面もあります。そういう意味では、自動、コンピュータ、ロボット制御というのは非常に優れていると感じています。
 また、雨宮先生の現場スタッフの負担が増えるという御指摘ですけれども、これは私どもも非常に心苦しく思っていまして、実際の測定の部分は確かに自動化が進むのですけども、お話のありましたように、宅配便を受け取るですとか、そういった非常にさ末な事務的なところはどうしても現場の方の御負担になってしまうのではないかと、そこは非常に心苦しく思っているのですけども、逆に言うと、その点は研究員でなくても、事務的な対応として対応できるところもあると思うので、研究の対応の方と事務の対応の方とうまく役割が分担できるとよいのではないかなと外から見ていて思います。
 あともう一点、非常に細かいことなのですけども、放射線管理といった点でよく問題になるのですけれども、これもやはり常々リモート測定をしていて、どこを放射線業務とするのかというのはやはり議論になるところなのです。これはPFでも、SPring-8でも、タンパクのビームラインでは、シャッターを開け閉めする作業というところが放射線管理の基準となっているというのが現状なのですけれども、それも、例えば我々の健康管理という意味では全く無意味なわけですよね。放射線管理区域に立ち入るわけではないので、ただそこにいる人の安全を知っているというだけのことになるわけで、そこも放射線管理の法の解釈といった点で法律も関係してくるので、国の方からも解釈といった点で幾つか御提案などをいただければ、今後やりやすくなるのではないかなと感じています。
 私の方から申し上げられることは以上かと思います。ありがとうございます。
【小杉主査】 海外の施設はリモートで使われた経験はございますか。
【高橋委員】 私自身はないのですけれども、台湾やスイスはリモートで使えるという話は聞いています。
【小杉主査】 そうなのですか。
【高橋委員】 はい。ただ、やはり会社から使おうとするとファイアウォール、先ほどの問題がありまして、結構プロキシをどう設定するかというところでもめた記憶はあります。
【小杉主査】 施設側で今の高橋委員のコメント等に何かございますか。
【矢橋グループディレクター】 矢橋です。先ほどのスタッフの負担の話は高橋さんが正におっしゃるとおりで、何も研究者がそこは、例えば宅配便の受け取りをする必要は全くないと、そこはバックオフィスがやれば良いのですが、そういう意味ではバックオフィスでも人が受け取る必要は全くないといえば全くないので、そういうところも含めてロボットが受け取るのかも分かりませんが、DX化は包括的に進める必要があると考えております。
 あと、放射線管理のところも正におっしゃるとおりで、我々施設側、これは東北の3GeV施設でも、きっと議論があると思いますが、既存の施設でも特にリモートのところで、なぜバッチが必要かというのは、非常に我々から考えても非合理的でございますので、少し中からの議論もいたしますが、いろいろな形で後押しをお願いできればと思います。
 以上です。
【小杉主査】 J-PARCはコメントありますか。
【大友ディビジョン長】 はい。簡単に。放射線管理のところは正におっしゃるとおりで、我々も同じ問題があるのではないかと思っています。
 あと、試料の受渡しについては、国内の問題と国外の問題はちょっと違っていまして、私が言った輸出管理というのは、飽くまでも国外のユーザーの試料の受け取りというところが大変で、もちろん研究者がやらなくても良いかもしれませんけれども、手続、書類準備に係る作業量がかなり増えているということです。
 以上です。
【小杉主査】 それでは、時間もありますので、次にいきたいと思います。
 議題(2)です。議題(2)は、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方についてと、継続的に議論しているところですが、事務局より資料について説明をお願いいたします。
【萩谷補佐】 事務局より御説明させていただきます。
【小杉主査】 お願いします。
【萩谷補佐】 我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方として、本小委員会でこの1年間、様々な観点から御議論いただきました。その内容を事務局において取りまとめたものが資料4でございます。
 資料3はその概要でございまして、資料3について御説明をさせていただきます。
 もう時間もございませんので簡単にということでございますけれども、背景といたしましては、次世代放射光施設の整備が開始されるということで、かなり量子ビームの大型研究基盤が久しぶりに整備されるということで、状況が変わってくるというようなところで、しっかり我が国の研究力・産業競争力の維持・向上のために、しっかり研究基盤を整備するような仕組みが必要ではないかというような背景があります。
 我が国量子ビーム施設を取り巻く現状の課題として3点挙げてございまして、1点目が大型研究施設の整備、2点目が研究施設の利用の促進、3点目が研究施設を支える環境・基盤という3点の課題を挙げさせていただいております。
 これらの課題を踏まえて、量子ビーム施設全体を俯瞰した推進方策を検討することが重要であるという観点から、次の3点、1点目、量子ビーム施設全体の国際競争力の確保、2点目、量子ビーム施設を利用した研究開発成果の最大化、3点目、量子ビーム施設を支える環境・基盤の強化、これらの3点を基本方針として掲げ、この方針を踏まえた5つの各論点について、今後の検討の方向性を提示させていただきました。
 具体的な5つの論点に関しましては、一番下にございますとおり、1点目、量子ビーム施設の整備計画の策定、2点目、ユーザー支援の強化、3点目、複数の量子ビーム施設の連携及び利活用の促進、4点目、量子ビーム施設に関する国際的な連携・協力拡大、5点目、量子ビーム施設を支える優れた人材の育成・確保、これらを今後の検討の方向性として提示をさせていただきました。
 以上が資料3の簡単な御説明になります。
 続きまして、資料4に関しましては、こちらは大部の資料でございますので、細かい説明は割愛させていただきますけれども、事前に委員の皆様にもお送りさせていただきまして、御意見も頂戴しております。
 御意見に関しましては、反映できる部分に関しましては反映をさせていただいております。
 また、こちら資料4の8ページ以降になりますけれども、各論点の具体的な既存の量子ビーム施設の良好事例というものも、各量子ビーム施設の皆様方にも事前に送付をさせていただいておりまして、特に良好事例に関しましては追記の内容を各量子ビーム施設に募集をして、可能な限り追記をさせていただいております。
 これらの部分に関しましては、今月初めに委員の皆様方にお送りしたものから、かなりボリュームアップをしてございます。
 本資料の論点とか、それに対する良好事例について各量子ビーム施設の皆様に、ほかの施設の動向も含めて把握していただき、参考にしていただくということは非常に大きな意味があると事務局の方でも考えております。
 資料4につきましては、以上で御説明とさせていただきます。
 続きまして、資料5につきましてでございますけれども、委員の先生方から頂いたコメントに関しまして、主なものを挙げさせていただいております。
 1点目、「日本全体としての、現状の課題把握や中長期的なビジョン策定、更にこれらの調整をミッションとする、常設の「司令塔」が必要」といった記述が必要ではないか。
 2点目、サイエンスコーディネーターを新たな職種として育成する必要があるのではないか。
 3点目、「ビーム種の異なる施設間でのクロスアポイントメント等による人材交流」が非常に重要ではないか。
 4点目、法規制にかかる案件に関して、法の解釈や運用について、国から具体的・詳細な説明、例示などの掲示があるとやりやすいのではないか。
 5点目、良好事例の記載の中で、特によいと思われる事例については、今後これらの例をどのように発展・横展開していくのかも記載するとよいのではないか。
 6点目、良好事例について、各項目の記載の粒度がそろっていないので、各項目によってはもう少し具体的な内容を記載すると分かりやすいのではないか。
 以上、コメントを頂いております。
 なお、良好事例の記載に関しましては、今後、取りまとめに向けてブラッシュアップをしていきたいと考えております。
 続きまして、資料6でございますが、今後の予定についてでございますけれども、本日資料3、資料4について主に御議論いただくのですが、本日は、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について取りまとめを行うことではございません。本日の議論も踏まえて取りまとめ資料については修正をさせていただき、次回の小委員会でも継続して議論をした上で、次々回、来年1月頃の小委員会で最終的に取りまとめを行っていきたいと考えております。
 また、次回は11月頃を予定しておりますが、取りまとめ資料の議論の参考にもなるであろう、既存の量子ビーム連携のプラットフォームの良好事例についてもヒアリングを行うことを考えております。
 最後に、参考資料1につきましてでございますけれども、こちらはこれまでの小委員会の議論の内容をまとめておりますので、適宜、御参照いただければと思います。
 以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。事務局より、これまでの小委員会における議論の内容を取りまとめた素案と、事前に委員の皆様から寄せられた素案に対する御指摘、また、今後の小委員会での検討の進め方についての説明がありました。
 これら全体について御意見、御質問、あるいは事前に頂いた御指摘等、補足等ございましたらよろしくお願いします。
 何から議論して良いかというところはちょっと漠然としておりますが、最終的には資料4に書き込んでいくことになるかと思いますが、資料4の構成について、資料3の下の黄色の部分が説明になっているというところです。いかがでしょうか。
 順番にやっていきましょう。資料4を見ていただいて、細かいところは後で見ていただくとして、(資料4の)3ページ、4ページの施設の分類も、細かく見るとちょっと違うのではないかというのもないことはないので、この辺りも最終的には丁寧に見ていただく必要があるかと思いますが、我が国の主な量子ビーム施設、あるいは諸外国の量子ビーム施設の表を見ながら、(資料4の)1ページ、2ページの我が国の動向と諸外国の動向が書かれているということですので、お気づきの点がありましたら別途お願いします。
 それから、(資料4の)4ページ、5ページのところは、資料3の上の方に書かれている(1)、(2)、(3)のところが書かれておりますが、最終的には資料4(の7ページの4ポツ)の各論点に関する検討の方向性というところが一番重要なところかと思います。丸括弧の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)とありますが、この後で順番にやっていきましょうか。
 そういうやり方でよろしいですか。30分ちょっと意見交換をするというところで、まず資料4の7ページの(1)、量子ビーム施設等の整備計画の策定ということで、主要事項が、(資料4の)7ページ、丸が3つあります。
 それから、(資料4の)8ページの上部に具体的な方策例とありますが、今後どうしていくかという具体的な方策例をブラッシュアップしていくことになると思います。先ほど御説明にございましたように、良好事例の方は、取りあえず出てきたものを列記しているだけですので、いろいろ書きぶりが違っていたり、小さなものから大きなものまで並んでいますが、この辺りは後日整理していただくということですので、具体的な方策例等のところを見ていただいて御意見を頂くのが良いかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。まず、整備計画の策定のところです。
【鬼柳委員】 名古屋大学の鬼柳ですけれども、整備計画のところで、運営主体に応じて対策を考えるということが書かれてあったかと思うのですが、その辺のところ、ぼやっとは分かるのですけれども、何か、もう少し具体的な説明が可能ならば聞かせていただきたいのですが。
【小杉主査】 事務局、国としてといったところで、どういう方向性がございますでしょうか。簡単に説明いただくと。
【萩谷補佐】 お答えさせていただきます。運営主体に応じてというところでございますけれども、今、抽象的に書かせていただいているのは、なかなか国とか大学、国の方で整備をしているような施設に関しましては、具体的に予算の要求とかそういったところを考えていくことができるのですけれども、いろいろな運営主体がある中で、それ以外の様々な運営主体を、施設に関しまして、国としてどういった支援方策を考えていけるのかというところはまだ答えがないところでございまして、各施設の皆様から何か要望とか、というところがあれば具体的にお聞きしたいというところが、今のところでございます。
【小杉主査】 鬼柳委員、よろしいですか。
【鬼柳委員】 はい。状況分かりました。ありがとうございました。
【小杉主査】 2つ目の丸の後、3つ目の丸のところに、プラットフォームで整理していくとか、全体を通じた連携をやっていくというのが、検討材料にはなっていますが、量研室は特に共用施設を中心に考えるというところがあって、大学の方はまた違うところですので、この辺り、全体をどうやって、国として、文科省として考えるかといったところも、部局が違っていたりすると、なかなか苦労……、我々の研究所も苦労しているところでありますが、3つ目の丸が期待するところではあります。
【鬼柳委員】 確かにプラットフォームをつくりながら、そういうところの支援も考えていくというのは一つのやり方だとは思いますね。
【萩谷補佐】 事務局でございますけれども、今おっしゃっていただいたようにプラットフォームを整備していくということが国として関われる視点かなと考えておりまして、こういう連携を進めるためにどういったプラットフォームが、具体的に各施設にとっても理想的なのかというところは、いろいろ皆様から御意見いただきたいと考えております。
【小杉主査】 急ぐところは1つ目の丸にあるDXとか、自動化、遠隔化というところをある程度共通化していかないと、ユーザーフレンドリーになれませんし、AIも特に最近の流れはあるので、この辺りも、大型施設ばかりでなく、中型、小型も影響してくるお話です。その辺り……。
【鬼柳委員】 中型、小型もどこも人手が足りないので、先ほど矢橋先生が言われたように、ルーチン作業からの解放というのは非常に重要だと思っています。
【小杉主査】 この辺りも、今日の御紹介があったSPring-8やJ-PARC側がまずやっていただいて、それを技術移転していただくというのが非常に重要な流れであります。
【鬼柳委員】 はい。
【小杉主査】 ほかに何かございますでしょうか、整備の方で。
【伊地知委員】 伊地知ですけれども、よろしいでしょうか。少し戻っていただいて、(資料4の7ページの4ポツ)(1)の冒頭のところの丸があって、デジタル・トランスフォーメーションへの対応ということで、今日の先ほどの議論にもあったところですが、現状でいうと、これはなお書きになっていて、例えばそこのタイトルは単に「整備計画の策定」ということになっているのですが、この分野だけではなく、科学技術政策全般において、デジタリゼーションへの対応というのは非常に期待をされているところではないかと思いますので、もしこれがこの領域の中においても重要だということであれば、もう少し明らかに外から見ても分かるような、例えば項目の立て方等が検討されても良いのかなと思いました。
 以上です。
【小杉主査】 ありがとうございます。なお書きではなくて、この項目で丸をつけて書くというところですね。
 その辺り、事務局、よろしくお願いします。
【萩谷補佐】 御意見ありがとうございます。正に国としてもDXの推進ということは非常に重要なところだと考えているのですが、ひとまず今回の資料に関しましては、今まで小委員会で御議論いただいた内容を踏まえて記載をしているというところで、今回、DXの内容を特出しして項目として記載はできていないのですが、おっしゃっていただいた観点や、本日、議題(1)の方でも様々な御議論を頂きましたので、これらの内容を踏まえてしっかり項目としても見えるような形で、今後、修正をさせていただければと考えております。
【小杉主査】 ありがとうございます。それでは、次にいきましょうか。
 (資料4の9ページの)(2)は、ユーザー支援の強化(産学官連携の在り方を含む)、これも随分議論をしてきたところでありますが、画面で全体を見るのはちょっと難しいですが、具体的な方策例のところはいかがでしょう。
 情報の一元化とか、ポータルサイト、情報を出すだけはそんなに難しい話ではないと思いますが、(資料4の)10ページの上のところの3つのポツ、ポータルサイト、オープンデータ・オープンアクセス。プラットフォームもありますけれども、コンソーシアムとかコウリション、この辺りは次回に紹介いただく予定にはなっているとは思いますが。
何かございますか。もうちょっと書けると良いと思いますが。
 コンソーシアムの経験がございます高原委員、いかがですか、経験として。
【高原委員】 経験としてという部分ですけれども、ここに大体のことは書いてあるのですが、実際はコンソーシアムで難しいのは、どういうふうにビームタイムを配分していくかとか、そういう実際の細かいところがいつも問題になっております。それから、実際に現状、既に装置が老朽化していたビームラインをどういうふうにうまく回していくかということが、かなり重要になっています。
 それから、ちょっと異なるのですけれども、いろいろな国プロが走っていますが、それに対して迅速に研究が行われるための優先利用枠が良好事例のところに挙がっていますけれども、現実には国プロの採択と、優先利用枠の申請のタイミングが合わない場合も多くて、その場合にかなり研究に遅れが生じるということもありますので、より迅速なビームタイムの申請・採択をやってほしいなというのが要望としてはございますけれども。
【小杉主査】 それは半年に1回の公募に応じるというのでは、もう遅いと。もっと……。
【高原委員】 四半期ぐらいにやっていかないと、いろいろな研究、プロジェクトが走っていますし、そういうものに速やかに対応していくためには、四半期ぐらい、3か月置きぐらいに、それは非常に難しいと思うのですけれども、優先利用枠の選定をやっていただけたら、より成果も上がってくるのではないかなと思います。
【小杉主査】 施設側は大変ですね。随時受付というのはやっておられる施設が多いと思いますが、随時受付というのは、そんなに大きなマシンタイムがとれないですから、やっぱりちゃんとした公募に応募するようになると、四半期ということになるのでしょうかね。
【高原委員】 また産学官連携の促進のためには、いろいろなテーマが出されてきたときに、それをどういう施設にお願いするかという、目利きみたいな人材の確保がまだまだ不十分だと思います。以前の委員会からそういう話題が出てきていますけれども、まだ改善されていないのではないかなと思います。
【小杉主査】 トライアルユース的なのは割と需要があるのでしょう。
【高原委員】 トライアルユースよりも前に、どこをトライアルユースしたら良いかというのが分からないという方の方が多いですね。
【小杉主査】 それ以前の。
【高原委員】 それ以前の問題ですね。だから……。
【小杉主査】 岸本委員から以前、いろいろなレベルの産業需要があるという御説明が、カテゴリー分けでありましたけれども、岸本委員、何かございますか。
【岸本委員】 確かに、今、放射光施設といいますか、量子ビーム施設がいろいろと役割分担していく中で、どこが、自分たちの研究に対し適した場所なのかということは、産業界にとっても非常に重要な視点ではないかなと思います。
 一方、DX化といいますか、リモート操作が進んでいくわけなのですけれども、これは慣れたユーザーは良いと思うのですが、初心者からすると、施設ごとに使い方などが変わったりとかしていくと、また使いにくくなったりとかしますので、ある程度、この時点で大きな枠組みみたいなものが決まっていると、各施設のリモート化が進んでいっても、ユーザーフレンドリーのシステムになったりしないかなと思ったりします。そういうことがプラットフォームなのかもしれませんが、産業界の人間としてはそういうところが重要ではないかなと思いました。
【小杉主査】 ありがとうございます。その辺りは具体的な方策例のところに書いていただくことが必要な感じですね。
 では、時間もありますので、次にいきます。
 資料4の10ページの(3)、複数の量子ビーム施設等の連携及び利活用の促進という観点で項目が立っております。具体的方策例としてはいろいろな連携する設定、課題、解決型のプロジェクト設定とか、以前、光・量子融合のようなプロジェクトを立てて連携、複数の施設を使うというようなのがそこに入っていたと思いますが、全体の動きにはなっていないですね。この辺り、SPring-8、J-PARCの辺りでの連携というのは、どういう状況でしょうか。ちょっと説明いただくとよいので、矢橋さんか大友さん、いかがですか。
【大友ディビジョン長】 J-PARC関係ではCROSSがJASRI、RISTと連携して、登録機関の連携ということでいろいろなプロモーションをしていると理解しています。まず、そこからかなとは思っていますが、組織的なところはそれほど今のところは行っていないです。
 柴山さん、何か補足ありますか。
【柴山センター長】 CROSSの柴山でございます。それにつきましては、かつて元素戦略で非常に強力に量子ビーム連携というような形があったと思いますが、やっぱり何か大きなテーマがあると、それについて、いろいろな手段を使った研究が進むかなと思っております。
 施設側からすれば、今、3登録機関の連携がありますので、それを積極的に生かしていきたいと、今、検討しておりまして、そのためにもいろいろシーズといいますか、ネタを用意して声をかけていきたいなと思います。
 中性子から見たときに、エクセルの分野、非常に充実しておりますので、また、それとレスポンスも早いということで、なかなか我々としては追いつけていけないところがありますので、むしろこちらから中性子ならではの手法というのをいろいろお見せしながら、提示しながら声をかけていきたいと。
 特に、RISTの方に関しましては、分野が実験系と計算系とはかなり違うので、それに関してはかなりコミュニケーションを密にしていくことによって、量子ビーム間の連携、そして、それを結びつける計算環境の充実等が実現できるだろうと思って、登録機関としては、その方向で検討していきたいと思っているところです。
【小杉主査】 この場合に全体をつなぐコーディネーターのような方はおられるのですか。
【柴山センター長】 3登録機関に関しましては、はっきりとしたコーディネーターはおりませんけれども、CROSSが今まで横溝センター長の時代からいろいろやっておりましたので、できるだけのことはしたいと思っております。
 飽くまでもそれは登録機関間の連携でございまして、それを更に量子ビームに広げていくためには、MLFとかSPring-8の方々といろいろ相談させていただく必要があるかと思っております。
【小杉主査】 はい。矢橋さんは何か追加のコメントございますか。
【矢橋グループディレクター】 そうですね、いろいろ共同で講習会をやったり、いろいろな取組はしているところですが、あと、実際、例えば産業界などでも、もう使っておられる方は、多分、岸本先生は御存じかと思いますが、結構やっておられるので、そういう事例も少し特出しにするような形にして、広報というのでしょうか、やっていくと良いのかなと思います。
 以上です。
【小杉主査】 複数のビームを既に使ってしている方はできるのでしょうけど、一つのビームしか知らなくて、他のビームは全くの初心者というところをどうすくい上げていくかというところが、ここに書かれているコーディネーターとか、そういう役割かもしれないのですが、そういう取組まではまだ至っていないという感じでしょうか。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。
【小杉主査】 その辺が課題ということですね。
 ほか、何かございますか。
【柴山センター長】 J-PARCからCROSSの柴山が再び発言させていただければと思います。
 この件に関しましては、たしか小杉先生御自身がKEKの中で量子ビームをいろいろ使って、複数の量子ビームの経験者を育成するというような、何かプロジェクトを、今、立ち上げられているというのを前回お聞きしたような気がしますけれども、それはこういうところに生かしていけると思ってよろしいのでしょうか。
【小杉主査】 ええ。次回のヒアリング、私というよりは、センターの事業なので、そういうところがアクティビティを紹介いただければ連携につながる話になる可能性はありますね。次回の議題です。
【柴山センター長】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほか、次回にまたここを議論しますので、次にいきましょうか。時間がもう近づいていますので。
 では、次、資料4の12ページの(4)、量子ビーム施設等に関する国際的な連携・協力拡大というところです。
 国際といってもアジアの中の日本の役割、欧米を含めての日本の存在感というところも気にはなるところですが、ここで具体的方策に挙がっているのは、いろいろな施設があって必ずしも情報が行き渡っていないと。かといって、各施設がそれぞれ努力しても、なかなか情報を得るのは難しいというところで、ある程度拠点になるようなところが情報を流していただくかというのが書かれている、この辺、議論はしていますが、いかがですか。
 J-PARCとかSPring-8はそれなりに海外と連携を強くやっている中で、いろいろな情報をお持ちだと思いますが、そういう情報はどういうところで、ほかのところと共有されていますでしょうか。
【大友ディビジョン長】 国際施設の共有ということでしょうか。
【小杉主査】 はい。いろいろな情報を持って、中性子だといろいろ大学の研究者にも、海外はこういう状況だよというのは学会のレベルでやっているのでしょうか。
【大友ディビジョン長】 学会レベルでもやっておりますし、あと、それぞれの個人の研究者もかなり海外施設を使うのが結構当たり前なので、個人的にも収集されているかと思います。
 あと、コロナ後なのですけれども、インターネットを使った中性子の施設長が集まるような会議というのも行われていまして、そういうところで施設間の動向の情報交換を最近はしております。
【小杉主査】 SPring-8はいかがですか。
【矢橋グループディレクター】 我々のところも定期的な施設間の集まりがございまして、そういうところは、例えば先週ございましたSPring-8シンポジウム等々で御報告はさせていただいておりますし、あと、3年ほど前に、この量子ビーム小委員会でも私まとめて報告させていただいたこともありますので、これは機会をいただければ、いつでもまたレポートいたします。
【小杉主査】 はい。自動化、遠隔化についても、海外の状況等の、ユーザーレベルでは、皆さんということではないのですけれども、それなりの情報をお持ちのようですので、そういうところをうまく各施設で動かすというのは結構重要かなとは思います。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。
【小杉主査】 なかなか情報が集約できないところを、学会で頑張ってもらうことも重要ですよね。
【矢橋グループディレクター】 多分、施設間のところは、やっぱり施設ででないと難しいところがあって、特に施設間のミーティングもそうですけれども、あと、レビューというのがありまして、大体のレビューに誰かは、今、SPring-8が参加している状況ですので、そういうところを集約して、また御報告するということを続けていきたいと思います。
【小杉主査】 ほかに国際的な観点で方策に結びつく御意見はございますでしょうか。
【雨宮主査代理】 雨宮です。施設間の交流もそうですが、私があったら良いなと思っている方向は、ビームラインの担当者同士、例えば同じような種類のビームラインを担当している異なる施設間での交流というのは、今、逆にコロナ禍だからウェブ会議で結構気軽にできるような雰囲気ができてきている状況ではないかと思うので、そういうようなことを積極的にやるような方向を、現場の研究者にエンカレッジしたいと思っているところです。
 施設間の連携はいろいろなレイヤーがあって、トップクラス、マネジメントクラス、現場クラスのウェブセミナーを、先ほど大友さんが中性子でやられているというのは、そういうことをおっしゃっていたのかもしれませんが、そういうのをエンカレッジしていきたいなと個人的には思っています。
 以上です。
【小杉主査】 SPring-8が声をかけていただければほかのところもついていくとは思いますが、ほかの放射光施設もいろいろ役割分担をしてやらないといけないというところですね。自動化、遠隔化についても共通した手法のところは施設間で連携をとらないといけないので、それは現場レベルも必要です。
 ほかに何かございますでしょうか。
 では、最後、資料4の12ページの(5)、量子ビーム施設を支える優れた人材の育成・確保という項目が挙がって、前回、随分この辺りを議論したところですが。
【雨宮主査代理】 雨宮です。今日配付された資料5の2番目の委員からのコメント、これは私のコメントではないのですけれども、これを読んで非常に同感するところがあります。サイエンスコーディネーターの育成や確保の必要性をExplicit(明示的)に書き込むのがいいと思います。シニアが行う職として位置づけるのではなく、研究者、技術者と違う新たな職種として、サイエンスコーディネーターという職種、プロフェッションを立て、若いときからプロ意識をもって目指す研究者がある割合いても良いと思います。今の(資料4の12ページの)(5)のところに明示的に書き込んだらどうかという意味で、この資料5の2番目の委員からのコメントに、私は大賛成です。
 以上です。
【小杉主査】 ほかに意見、まあ、前回の議論ですから記憶に新しいところだとは思いますが、ほかに何かございますでしょうか、人材関係。
 ここに書かれているのは基本的には施設系の人材が中心になっていて、ユーザーのところは資料4の9ページの(2)にありますので、ちょっと分かれてはおりますが。
【内海委員】 内海でございます。今、次世代放射光施設という新しい施設を作るために、既存の大型施設の方々とお話をさせていただいているのですが、どうやって現場の人材を確保していくかというのは、本当に目の前に迫った死活問題になりつつあるという思いがますます強くなっております。
 人材育成とか人材確保の話、必ずどの報告書にも出てきますが、もう少し表現ぶりとして、差し迫った危機感、非常に大変なことになっているのだぞというのが分かるような書きぶりにしていただくと有り難いです。
 今のまま何も手を打たないと5年たたないうちに、本当に現場での人の確保が各施設できなくなるという状況まで来ているのではないかと思います。具体的な書きぶりについては、また事務局の方に御提案させていただきたいと思います。
【小杉主査】 量研室の方では大学にどれぐらい人材がいるかとか、研究室単位になるかもしれないのですけれども、そういうところ、学会を通じて調査をしないといけないというところで意見交換をしているのですが、具体的に東北の場合は即戦力が必要、なかなか探せなくて差し迫った状況があるという。時間をかけて人材を育成するということではなく、今どうなのだというところを書く必要があると。
【内海委員】 はい。申し訳ございません。ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかに何かございますでしょうか。大体議論したことは書き込んでいるような形で、即戦力の即効性という意味ではちょっと書き切れていないところというのはありますが。
 一通り(資料4の)(1)から(5)までざっとやってきましたけれども、皆さんの方でもう一回読み直していただいて、何か御意見等がございましたら事務局等に頂くのが良いかなという感じはするのですけれども、いかがですか、やり方としては。
【萩谷補佐】 事務局でございます。いろいろ本日頂いた御意見を踏まえて、また修正をさせていただいて、また次回の委員会の前に事前に委員の先生方にも御相談をさせていただこうと思っておりますが、本日、時間も限られておりましたので、また改めて資料4、全体を御確認いただきまして、細かい部分でも構いませんので、何か御意見、コメント等あれば、事務局あてにまずメールでお送りをいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【小杉主査】 今日頂いた御意見プラス何か追加がありましたら事務局の方にお伝えいただいて、次回の開催の前に、また送っていただいて意見を加えて次回に検討するというのを、あと1回、2回続けるというやり方になるかと思いますが、そういうところでやっていきたいと思います。
 では、その他というのが議題(3)にありますけれども、全体を通して何かございますでしょうか。
 議題、これで終えてよろしいでしょうか。
 それでは、事務局から何か連絡事項等ございましたら、お願いいたします。
【河原室長】 量研室の河原です。本日はどうもありがとうございました。
 量子ビーム施設全体を俯瞰した在り方の検討については、今日頂いた御意見も含めて、またこちらでも検討したいと思いますし、また、同時に出口をどうするかということで、この報告を踏まえてどういうアウトプットが出せるか、議論でも出てきましたようなプラットフォーム事業を使ってどういったことができるかであるとか、あるいは整備計画についても、例えば年明け以降に連絡会のような形で主要施設に集まっていただくとか、そういう、どういったアクションにつなげていくかということも含めて、次回以降、また御相談をさせていただければと思います。
 以上です。
【小杉主査】 ありがとうございます。
【萩谷補佐】 事務局でございます。改めまして、次回の量子ビーム小委員会の開催に関しましてですが、開催方法も含めて、また改めて委員の皆様に御連絡をさせていただきます。
 また、本日の会議の議事録につきましては、作成し次第、委員の皆様にメールにて御確認いただき、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただきます。本日の配付資料につきましても、後日、文部科学省ウェブサイトに公開いたします。
 以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございます。それでは、以上をもちまして、第10期第38回量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
【萩谷補佐】 どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)