量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第37回) 議事録

1.日時

令和2年6月30日(火曜日)15時00分~16時30分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、石坂委員、内海委員、阪部委員、佐野委員、高原委員、田中委員、鬼柳委員、岸本委員、小杉委員、高橋委員、山重委員、山田委員

文部科学省

奥研究開発基盤課量子研究推進室長、對崎研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

5.議事録

【小杉主査】 それでは、ちょっと早いですが、ほぼ定刻ですので、ただいまから第37回量子ビーム利用推進小委員会を開催したいと思います。本回も前回に続き、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインで会議を開催することとしました。ソフトが前回と違いますので、勝手が違うかもしれないですが、よろしくお願いします。
本日は、予定では3名の方が欠席で、残り13名の方が出席ということです。欠席の方は、伊地知委員と近藤委員、宮内委員の3名です。
それでは、事務局よりオンライン会議における留意事項の説明と、配付資料の確認をお願いしたいと思います。
【對崎補佐】 事務局の量子研究推進室の對崎でございます。委員の皆様方、本日はお忙しいところ、御出席いただきましてありがとうございます。
本日、文部科学省からは、事務局といたしまして、量子研究推進室の室長の奥と室長補佐の私、對崎が出席させていただいております。
現下の新型コロナウイルス感染症に関しましては、前回5月末には小委員会をこのように開催させていただいた後、政府による緊急事態宣言の解除や、県をまたぐ移動の自粛の全面解除等、段階的に緩和が進んでいるところでございますが、引き続き感染症拡大防止の観点から、主査とも相談して、今回もこのようにオンラインでの開催をさせていただくことといたしました。
それでは、まずオンラインの会議の留意事項を簡単に御説明させていただきます。
前回と同様でございますが、通信を安定させるために、御発言をされるとき以外は、可能な限りマイクをミュートの状態にしていただければと思います。
また、御発言をされる際は、ミュートの解除をして御発言を頂ければと思います。また、可能な限り先生方の御出席をこちらで確認させていただくために、映像のほうは、可能であればオンの状態にしていただければと思います。
また、議事録の作成のために、こちらの事務局のほうで速記の者を入れておりますので、御発言を頂く際は、お名前を冒頭おっしゃっていただいて御発言を頂ければと思います。
また会議中に不具合等のトラブルが発生いたしました場合は、事前に事務局よりお知らせをさせていただいております電話番号のほうにお電話等を頂ければと思います。
なお、本日は会議公開の原則に基づきまして、報道関係者や一般傍聴者によるこちらのウェブでの傍聴を認めておりますので、御了承いただければと思います。
それでは、続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。事前に電子媒体にてお送りさせていただいておりますので、見にくい場合は、そちらを御覧いただければと思います。
資料といたしましては、まず資料0が議事次第でございます。本日は、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方についてということで、人材育成に関する論点を中心に御議論いただければと思っております。続きまして、資料1でございます。こちらは、これまでの論点や議論のまとめについて作っておる資料でございまして、後ほど詳細は御説明させていただきます。資料2でございます。こちら、小杉主査の御提供資料といたしまして、人材育成に関する議論の論点として御提示をさせていただいております。そのほか、量子ビーム施設の先般行った調査に関する参考資料として、参考資料1と2を委員の先生方のみお送りさせていただいておりますが、こちらは施設に関する調査を非公表とさせていただいている関係から、非公表と今回はさせていただいております。
何か御不明な点がございましたら、会議中でも結構ですので、事務局までお電話等、御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
それでは、早速議事に入りたいと思います。
本日はシンプルで、議題(1)が中心で、(2)はその他ですので、5分ぐらい残して、それ以外は議題(1)でやろうと思っております。
議題(1)として、「我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について」ということになっておりますが、人材育成関係を議論したいと思います。
では、事務局より趣旨等、御説明をお願いします。
【對崎補佐】 続きまして、また再度画面の共有をさせていただきますが、資料1を御覧いただけますでしょうか。
資料1は、これまで当小委員会で議論してまいりました「我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について」でございます。今後の議論の進め方として、施設種毎に、そちらに記載しております産学連携、施設の役割分担、相互連携、海外施設・海外研究者との連携、オープンデータ・オープンアクセスの取組、人材育成、こうした論点について、現状をどう捉えているか、今度どうあるべきか、その解決策や方法論は何かといった点で議論を進めていっているところでございます。
ページを少し飛んでいただきまして、2ページ目には、これまで調査した施設の対象リストが詳細にお示ししてございます。
3ページ目以降に、前回までの議論の概要を簡単にまとめておりまして、ここはちょっと割愛させていただきまして、今回御議論いただきたい論点は、6ページ目でございます。人材育成につきまして、現状をどう捉えているか、今後どうあるべきか、その解決策や方法論は何かといった観点で御議論いただきたく思っておりまして。ただ人材育成と申しましても、非常に論点が広うございますので、調査結果から抽出した論点として、そちらに星で4つほど記載しております。専門化した職種の役割の明確化、そして、その職種に関する体系的な人材育成や技術継承の方策。大学や大学院における研究プログラムの確立や、それを活用した人材の発掘・活用といった点。あるいは、潜在的な人材を発掘できる大学や大学院等をどのように今後考えていくか。また、複数施設において人材の循環を進めるために、どのような方策が考えられるかといった点を、1つ議論の観点として挙げさせていただいております。
7ページ目以降は、これまでの有識者ヒアリングの概要を簡単にまとめているものでございますので、今回の説明は割愛させていただきます。
続きまして、資料2は、後ほどまた小杉主査からも補足等、御説明いただけることかと思いますけれども、今回、小杉主査に人材育成に関する議論の論点といたしまして、こちらの資料を御提出いただいております。カテゴリーとしては、いわゆる小中高や大学等の高等教育における理科教育の在り方、2つ目といたしまして、施設に関する利用者を育成するといった観点での論点、次のページには、施設の職員としての共通の問題や、それぞれの技術系、研究系といった職員の人材育成の在り方といった観点で論点を御提示いただいております。
また、ここからは資料の共有は非公開のため割愛させていただきますが、事前にお送りしております参考資料1及び参考資料2を簡単に御説明させていただきますので、可能であれば、委員の皆様方は電子媒体等、あるいは紙媒体等を御覧いただきながら、お話を聞いていただければと思いますが。
こちら、参考資料1といたしましては、以前行いました量子ビーム施設に関する調査結果の中から、人材育成に関する自由記述として各施設から記載いただいた事項を抽出してお示ししているものでございます。こちら、先ほど資料1のほうで幾つか議論の論点としてお示ししたような、例えば大学や大学院での研究プログラムや、大学や大学院生向けの研究テーマを設定した場合の施設の活用方法や、そうしたプログラムを活用した研究者の育成や多方面への輩出、あるいはスクール等の開催によるアウトリーチ活動、あるいは、人材育成における外部機関との連携として、クロスアポイントメントや外部資金を活用した人材育成、あるいは、別のプロジェクトの中で人材育成のためのプログラムを用意するなどの人材育成の方法、また、研究施設間における研究の交流を通した人材の循環や人材の育成といった取組、また、施設や組織によっては、目指すべき人材像やその採用・育成の方針等に関する人材のポリシーを策定するといった記載が見られたところでございます。
また、参考資料2のほうは、量子ビーム施設の運転員等の人員の集計を行ったものでございまして、こちら、研究系職員と、主に光源等の運転に関わる技術系職員と、業務委託等によるユーザーへの技術支援やコーディネートを行う運転保守員、それと事務系職員と、その4つの職種に関する年代別の集計を行っておりまして、それを放射光施設、中性子線ミュオン源施設、イオンビーム施設、レーザー施設、その他といった形で分類をして集計をさせていただきました。どの施設種も共通して見られる特徴といたしましては、40~50代に中央値が、大体総合的には人員として寄っておりまして、特に放射光施設は、人数の数で言えば、ほかと比べてどの施設種も一定数は確保されているようでございますが、それ以外の施設に関しましては、特に技術系職員や運転保守員、事務系職員といった職員が絶対的に数が少ないといった特徴が見られております。
資料1から参考資料2まで合わせての説明は、以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
事務局より説明がありましたが、何かコメント等ございましたら、お願いします。
参考資料2は、数値データで、ざくっと見るにはいいですけど、細かく見るのはちょっと難しいかなというデータにはなっております。
参考資料1では、人材関係のアンケート結果を全部ピックアップしていただいていますので、それを私のほうで見て、どういう論点で今日議論したらいいかという観点で資料2ができております。
よろしいでしょうかね。
【佐野委員】 佐野ですけれども、よろしいでしょうか。
確認なんですけれども、SACLAの人員が、多分SPring-8と同じ人数が入っていると思うんですね。参考資料の数値の入っている表なんですけれども。ちょっと誤解するんじゃないかなと思いましたので、ちょっとコメントです。
【小杉主査】 独立ではないという意味ですね。
【佐野委員】 SPring-8の数値とSACLAとが同じ数値が入っていまして、SACLAだけ見たときに、SACLAでこんなに人数がいるのかとちょっと思ったものですから。
【小杉主査】 注意して見るというコメントですね。ありがとうございます。
ほか、何かデータの見方に関してございますか。
では、早速議論していきたいと思います。
私のほうでまとめた資料2を見ていただいて、先ほど對崎さんから御説明あったように、3つほどの大きな論点があるかなという感じです。理科教育はメインではないので後回しにして、利用者の育成のところと施設のほうで分けて議論していきたいと思っております。
施設利用者の育成の観点からは、現状をどう捉えているか、あるいは今後どうすべきか、解決をどうしたらいいかというところで議論をお願いしたいと思っております。
それから、資料1の6ページ、そこに今日、議論いただきたい論点が出ております。似たような項目にはなっているかと思います。
それでは、順次議論をしていきたいと思いますが、まず資料2の利用者のところを御説明いたします。基本的には、参考資料1に各施設から出ているものをベースに、全体共通の問題、個別の問題を整理しております。
全体としては、学会あるいは施設間の連携で実習等を含むスクールを企画しているところがあるようです。特に、共用施設では、しっかり実習等を含むスクールを開催し、利用者の育成をしているところです。
個別の問題としては、学部生の扱いが施設等によって違っていまして、不思議なんですけど、研究開発法人では、卒研生を受け入れたり、大学院生も、研修生・実習生という感じで、大学と連携しているのが見えているんですけど、逆に、大学の附置研・共共拠点とか大学共同利用機関というのは、学部生の扱いがシステム化されていないという問題があるように見えました。
大学院生はいろんな形で育成をしているようですが、各施設、特に共用施設、大学共同利用施設では、大学院生が代表者で申請できる特別枠のようなものを用意しているというところで対応しているかと思います。
産業界への関わり方というのはいろいろ難しいんですが、大学等によっては、大学院生を育てて産業界に輩出するというところを中心にやっている大学もあるようですし、民間等の共同研究で共同研究者を受け入れて育成しているとか、レアなケースだと思いますが、社会人の大学院というのも枠組みとしてはあるというのが、ざっと私が整理した感じです。
そういうのを意識しながら、御意見を頂きたいと思いますが。今日は時間も1時間半ぐらい取っていますので、全員コメント頂けたらと思うので、まずどなたか切り口をお願いします。
ウェブの会議ではやりにくいかもしれないですが。どうしましょうかね。
【高原委員】 小杉先生、1つ。九大の高原ですが。
学部生の扱いがシステム化されていないというのは、意味がよく分からなかったんですが、これはいろんな手続上の問題のことと考えてよろしいんでしょうか。
【小杉主査】 そうですね。大学共同利用機関の共同利用者というのは、大学院生以上で、学部生は共同利用者ではないんですね。そういうところで、受け入れにくいというのがあります。
【高原委員】 分かりました。
【小杉主査】 旅費を支給するのも、いわゆる共同利用のための旅費以外のところから出さないといけないとか、大学共同利用機関が属している総研大も、一応大学院の説明会とか、そういうのは学部生をもちろん対象としていますが、卒業研究などで受け入れるほうはなかなか難しいという問題があります。
附置研でも、いろいろ学部教育に絡んでいる研究所がある一方、大学院だけに対応している研究所では学部生の扱いが難しいという報告が上がっているようです。
【高原委員】 分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】 そういう観点で、意見を頂けるとしたら、まず阪部先生、いかがですか。
【阪部委員】 先生のおっしゃるとおり、共共拠点あるいは大学の附置研では、教育対象として大学院生を預かるのですけれども、学部生に対しては敷居があるといいますか、深く関与できません。教員ベースでは積極的に、加速器科学やその産業応用といった啓発的な講義を学部内でも一定行うようにしています。しかし、一般に学生の道筋としては学部から研究所というのは十分には開かれていないのが現状だと思います。
【小杉主査】 このあたり、大学共同利用という枠組みにおける学部生というのを解決しないと、なかなか位置づけが難しいというところですね。
本来大学にあれば、学部教育にも関係しているところはあるかと思いますけど。九大の高原先生のところの研究所は、どういう感じでしょうか。
【高原委員】 いろいろな形で、できるだけ学部生を、それは、だから共共拠点としては、受け入れ教員と相手方の教員のいろいろなあうんの呼吸みたいなものがありまして、それで実際は受け入れているというところがありますので。
実際に私たちのところは、学部からの学生というのも配属されているので、そういう意味では、大学院とはあまり変わらないような形で、自然に対応しているというふうな状況でございます。
【小杉主査】 その場合に、佐賀県の施設も使いながら卒業研究をするとかいうのもあり得るんですね。
【高原委員】 そうですね。佐賀のライトソースも、その中には九大のビームラインがありますので、そこを中心に活用しているというふうなところで、それは登録も含めて、それほど問題なく行うことができています。
【小杉主査】 学部生の受け入れについては、田中委員、いかがですか、SPring-8等では。
【田中委員】 学部生というのは、地元の兵庫県立大からは多少来ているかもしれませんが、施設自体で学部生を受け入れるという機会はあまりないように思いますね。
【小杉主査】 そうですか。
【田中委員】 雨宮委員にちょっと確認いただけますか。私はそう思いますが。
【雨宮主査代理】 学部生の数は、実質的には少ないと思います。実際に来ているのは大学院生だと思いますが。
【小杉主査】 枠組みとしてはあるわけですね。
【雨宮主査代理】 ええ、あります。私が大学にいた頃、学部生を連れてきていましたので、枠組みはあります。
【小杉主査】 学部から施設が使えるといいと思うんですけど。大学側の石坂委員、いかがですか。学部生を施設に連れていく場合に。
【石坂委員】 手続が違うことは認識していたんですけれども、運営上そこまで差は認識していなくて、割とよく連れていっています。卒論で、できるときにはどんどん連れていく。今年度はコロナの影響で、学部生の扱いが大学内で違うのでちょっと難しいんですけれども、通常は割と区別なく連れていっています。
【小杉主査】 そうですか。実際上は大きな問題はないと。
【石坂委員】 もちろん施設によるかもしれないんですけれども、高エネ研とか、広島HiSORとか、SPring-8もだったかな。SACLAは連れていったことがないですけれども。割とふだんから使っていて向こうとのコミュニケーションをちゃんと取れているときは、問題なくできたと思います。
【小杉主査】 多分、大学院生と違って、学部生は一人では実験できないという、教員なり誰かがいないといけないというのはあるとは思うんですけど。実際上は、一人でやることがなければ問題ないというところだと思います。
では、次の大学院生の扱いとして、特別枠を用意したりしている施設が多いんですが、このあたりはいかがですかね。
実際。どなた……。よろしいですかね。
石坂さんのグループで、大学院生が代表で実験を申請したりというケースはございます?
【石坂委員】 今のところないですね。あってもいいとは思うんですけれども。
【小杉主査】 雨宮委員はいかがですか。大学のときにはいかがでした?
【雨宮主査代理】 大学院生が主体になって申請するプログラムが、少なくともSPring-8にはありまして。基本的には、普通、一般ユーザーと同じ枠で議論されています。
それで、私は、大学院生が中心になってやるというときの一番の枷は、ビームタイムの制約だと思うんですね。もちろん制度を作ることも大切なんですが、教育というか、トレーニングしながら育っていくというプロセスは、本当に使いこなせる研究者がやるよりは効率が悪くて、結果として実験に時間がかかる、より長いビームタイムが要ります。しかし、そんなことをやっていると、ビームタイムの間に仕事ができないから、不慣れな人は見ていて、という感じになります。
要するに、大学院の学生が自分で考えながら、学びながら実験を行うビームタイムが少ないというのは、一番の枷だなと思っていました。大学院生が積極的に利用するプログラムがあるものの、大学院生に任せて、じゃあじっくりとやりなさいというようなビームタイムの余裕はないです。そこをどうするかというのが課題かと思っています。
【小杉主査】 そのあたりは、共用施設でもある程度大学院生に十分マシン、ビームタイムを出すとかいうのはプログラム上可能なんですか。
【雨宮主査代理】 共用施設、SPring-8では、課題の採択の可否は、各ビームラインの利用可能なビームタイムの長さで決まります。また、1つの課題に割り振られるビームタイムの長さにも制約がありますので、結果的に、限られたビームタイムで成果を上げようと思うと、さっき言った難しさがあるということです。
【田中委員】 小杉先生、今の雨宮先生のお話しに関して、ちょっとコメントをさせていただきたいと思います。
たしか私の記憶では、以前も委員会で岸本委員からも似たような話があったと思います。雨宮委員が言われたことは、研究者としての大学院生等にはそれなりの枠がある。それはあくまでも自分の研究を進める枠です。雨宮先生の言わんとしていることは、研究以前の、ある意味で教育に活用できる枠がどれだけあるのか。実験をどう進めていくか、放射光実験を学ぶというようなビームタイム、実際のところ、ビームタイムをそのような目的でアサインするというのは、多分あまり積極的にはやっていないのですよね。共用施設にとっては短期的に見ると無駄なのだけれども、長期的に見ると放射光分野に優秀な人材が戻ってくるというような、かなりロングタームでの実りが見込める。そういうことに目を向けたビームタイムの配分は、施設にビームタイムの余裕がそこまでないから、やられていないのではないかなと思います。
SPring-8ではやられていないと私は感じますが、例えば、KEKとか、中性子とか、ほかの施設では、教育のために、かなり競争率の高いユーザータイムを、あえてそこに振り向けることはされているのですかね、積極的に。そこをちょっとお聞きしたいです。
【小杉主査】 大学共同利用機関の施設としてPFの場合は、いわゆる受託院生というか、特別共同利用研究員という名前ですけど、所内のための留保ビームタイムの中で、重点的に使えるというのは対応していて、そこは初心者も含めて、教育するというのは、大学共同利用機関の場合はやりやすいですね。多分、共共拠点も似たような状況だと。
今ずっと放射光関係のお話をしていますが、中性子とか、レーザー関係で、このあたりの議論、何かございますか。
【鬼柳委員】 じゃ、鬼柳からお願いします。
中性子ってマイナーなので、今、先生が見せておられる利用者育成、実際に施設でやるという、その前段階から、なかなか教育の段階、学部生、大学院の教育のところから、やっぱりもうちょっとやっていかなければいけないかなということを思っています。
放射光X線だと教科書もきちんとあろうかと思うんですけれども、中性子だと、中性子何とかと冠がついた講義があるところって少なくて、最近、茨城大学にその関係ができた。京都大学とか、もう本当にごく一部でしか中性子と冠がついた講義がないと。ほかは、量子ビームとか、物性とか、そういう中で中性子が混ざっているという状況があります。
それから、実際の利用者育成というところでは、ここもまた中性子源が幾つかできてきて、そこも施設があるところでは、そこの場で学部生、大学院生を含めて教育をできると。オンザジョブトレーニングみたいな感じになって、できています。
それから、さらにJ-PARCに行くということになると、それなりのハードルがあるので、大学院生のテーマとして認めていただいたとしても、大学院生がシャキシャキと自分一人で実験ができるということにはなかなかならないかなと想像しております。その辺、今まで田中先生、雨宮先生がおっしゃったのと似たような状況ではないかと思っています。
それから、あと1つ、学部生に関しては、大学共同利用機関でも旅費は出せないんですよね。
【小杉主査】 そうです。別枠になって、共同利用とは違う形になると思います。
【鬼柳委員】 そこがちょっとハンディになっているかな。実際に実験するときも、学部生を連れていくときは、本当に別枠で連れていって、お手伝い的な立場でやってもらっているという感じだと私は思っています。
以上です。
【小杉主査】 関連して何かございますか。
【山田委員】 山田ですが、鬼柳委員の意見にちょっと追加ですが。
J-PARCは課題採択も非常に競争率が激しくなって、現場で学生の教育がじっくりとできないですが、私が東北大学の金属材料研究所にいた頃は、JRR-3を有効に活用して、中性子のイロハから始めて学生を教育するという、その程度の余裕が、大学が装置を持つとできた時代なんですね。だから、今度、JRR-3が再スタートしたときに、そういう部分をやはり残しておくのはかなり大事ではないかなと考えています。
定常中性子は、測定データが出てくるのにある程度、非弾性散乱だったらすごく時間がかかりますので、データが出てくるのを待つ間に、現場でいろんなことを学生と話ができるわけですね。その時間は非常に重要だと思っています。ですので、J-PARCと、例えばJRR-3のそういう意味での連携というのはすごく大事ではないかなと考えています。
以上です。
【小杉主査】 中性子の場合は、小型の施設が大学にあり、一方で大型のJ-PARCがあるという、かなりギャップがある中で、なかなかJ-PARCを使うのが大変という話でしたけど、JRR-3がうまくその間を埋めて、教育に絡み出すと、利用者育成にもなるという、そういう話ですね。
どなたか、御意見を、私の前にちょっと言われた方は? 何かございますか。
【鬼柳委員】 鬼柳ですけど、山田先生の意見に賛成しますということだけです。
【小杉主査】 では、JRR-3の使い方をしっかり考えて、利用者育成をしっかり組み込むというところですね。
【田中委員】 小杉先生、先ほどSPring-8界隈にあまり学生教育のためのプログラムはないと申し上げたのですけれども、それに関して、1つ付け足したいと思います。
SACLAでは、大学院生向けのプログラムを走らせています。比較的これは教育的なというか、初歩的な実験テクニックから模擬実験まで、X線レーザーを活用した実験の全般を学べる環境が準備されています。大阪大学、東京大学の学生さんがメジャーではありますが、そういう枠を使って若い人がX線レーザーになじむ機会を、全体のどのくらいか、数字をぱっとは言えませんが、全利用実験時間に対して一定の割合は確保しています。
【小杉主査】 それは、ユーザーが広がる方向なんですか。特定の研究室の学生だけだと、あまり意味がないんですけど、そのあたりはいかがですか。
【田中委員】 もちろん、スタート時は大阪大学とか東京大学の特定の研究室ということでした。その後、国内だけでなく海外にも募集を広げ、今では日本だけでなく海外の様々な大学や研究機関からも、アプリケーションがあります。もちろん、これら全ては受け入れられませんが、裾野は確実に広がっているとは感じています。
ただ、国内が今後どれだけ広がっていくかは、私たちの努力もありますが、大学にどれだけ関連する研究室があるかということにもよります。こちらは間口を広げて、様々なアプローチを模索していきます。その結果として、少なくとも若い人が参入し易い環境はつくれているのではないかと思います。
【小杉主査】 時間のかかる問題ですから、時間をかけながら、そういう枠組みを生かしていくというところだと思いますね。
では、ちょっと時間もありますので、よろしいですか。
【雨宮主査代理】 雨宮です。一言、SPring-8のことが話題になったので。
SPring-8では、御存じのように、夏の学校と秋の学校があって、夏の学校は座学だけではなく実習もできて、秋の学校は座学だけですけど、民間の人も学部生も入れてということで、行っています。あと、放射光学会でも、若手のためのシンポジウムや、セミナーを行っています。そういう意味では、いろいろな座学レベルの受け皿があると思います。
【小杉主査】 そこは、私のまとめでも、全体を通してやっているというところに一応は整理をしてあるところです。
次は産業界へ行ってよろしいですか。
【佐野委員】 佐野ですけれども、ちょっとコメントしてよろしいでしょうか。
先ほど山田先生から中性子のお話がございましたけれども、私もJRR-3を使っていたときには、同じようなことを感じておりました。企業として使っておりましたけれども、大学の先生方、あるいは学生さんと一緒にやっていて、時間はかかるんですが、その間いろいろ有益な話をしたり、ほかの施設を見学する時間があって、教育という意味では、ああいう小さい施設というんでしょうか、時間がかかる施設も、効率的ではないかもしれないですけれども、有効だなと思っています。
一方、放射光なんですが、例えばHiSORなんかは、そういった取組ができているのではないかなと、この間の参考資料を拝見しますと、そのように感じました。
一方、今、私が主にやっておりますレーザーなんですけれども、レーザーの場合はちょっと特殊かもしれないんですが、例えば発振させるキットとかは、もう学生さんでも、あるいは子供でも使えるようなものもありまして、そういうものを使ったレーザーの実験だったり、それを使った応用の研究といいますか、実験とかというのは、割と手軽にできるというところは、ちょっと違うのかなと思っています。
そういう意味では、放射光は、教育という意味では、もしかしたら小型の施設をうまく使っていくというのが重要なのかなと思っています。
以上でございます。
【小杉主査】 産業界に移る前に、研究開発法人として、内海委員、何かコメント等ございますか。学部生、大学院生の問題ですが。
【内海委員】
皆さんに印象としてお聞きしたいんですけれど、放射光施設、昔は夜中にも学生さんがたくさんいたのが、最近はとんと目にしないよねみたいなことをよく言うような気がするんですが。学生さんが放射光施設や中性子施設に来られている人数が10年前、15年前に比べて減っているということは、事実として確かなんでしょうか。
【小杉主査】 私の印象では、学生の割合は増えていますね。
【内海委員】 増えているんですね。
【小杉主査】 ただ、夜働かないというのもあるので、そこが昔と違うというところだと思いますが。これに関して、何か施設側で印象を持っておられる方。手元の資料の数値には、利用者の年齢層とかいうのもないので、そのあたり、量研室のほうでも、学会等に依頼しようかという話は出ておりましたが、まだそこは手元にデータがある状態ではないです。
施設側で、学生の割合は減っているという印象はないと思うんですけど、いかがですか。直接のは分からないかな。そこは今度にしましょうか。
【高原委員】 よろしいですか、現場から。
私のところは中性子、それから放射光、両方行っておりますけれども、大体スタッフ1人に対して学生が3~4人という形で、それにプラス1でポスドク等ということで、そうしないと24時間回せないということで、大体そういうふうな感じで量子ビーム関係の実験を行っておりますので。今、学生が行きたくないとか、夜中働きたくないとかいうことはあまり言わないというか、言わせていないのかもしれませんけれども、そういう状況で研究のほうはやっております。
【小杉主査】 多分それほど深刻な問題ではないとは思いますね。
【内海委員】 分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】 では、時間の関係で、産業界に行きたいと思います。
産業界関係で、実際利用に関わっている方がおられますが、大学時代あるいは大学院生時代に経験があって、産業界に入って引き続き使っている方、あるいは全く関係なかったけど会社に入ってからこういう担当になったので使い出したとか、いろんなケースがあると思うんですけど、そのあたりの利用者の育成状況というのは、どういうふうに民間からは見えますでしょうか。
山重委員、いかがですか。
【山重委員】 トヨタの山重です。
私は、学生時代から主にSPring-8、PFを利用させていただき、入社しからも継続して活用させていただいている状況です。
先程、深夜実験の話題がございましたが、私は大学院生のときに、民間企業からアルバイトとして雇用いただいておりました。そのときには、我々学生は深夜実験の当番でしたが、非常に勉強になり、またそのアルバイト代を学会の旅費等に充てるというような形で、研究生活を送っておりました。
【小杉主査】 それはすばらしい。
【山重委員】 産業界では、各施設で実施されている研修会など以外に、一部クローズなものもございますが、各施設をご活用されている分析メーカーが独自で勉強会を実施されていたり、オープンな場合には、大学の先生や施設の先生方も招いてセミナーを実施されていらっしゃいます。
【小杉主査】 そうですか。
【山重委員】 はい、以上になります。
【小杉主査】 周りの方はどんな感じですか。利用されている方、会社にいろいろおられると思いますが、大体似たような感じなんでしょうか。
【山重委員】 はい、似たような感じで、社内のメンバーになります。
【小杉主査】 大体は経験ある人が……。
【山重委員】 少し悲しいのですが、学生時代に経験ある人が、会社へ入って別の業務を担当するメンバーも多いです。
【小杉主査】 そうなんですか。
【山重委員】
その他に、会社に入ってから放射光や中性子の魅力を知って、精力的に活用する社員もおります。また、社会人ドクターとして活躍している社員も多いです。
【小杉主査】 そうですか。そういう枠がちゃんとあるというのが重要なわけですね。
【山重委員】 はい、そうだと思います。主に共同研究先の研究室でお世話になっていることが多いです。
先程の大学院生についての議論と重複するかもしれないのですが、私がNEDO国プロに出向していた際に、立命館大学の太田先生がご所属のSRセンターと連携させていただいておりました。その時に知ったのですが、例えば稲田先生のビームラインは、学部生の学生実験で使われていたり、大学院を修了後、ポスドクなど、その後はSRセンター職員採用されるといった、非常に良い環境であると思いました。
【小杉主査】 そうですね。大学の学部と直結した施設というのは、学部教育に使うというのはやれる感じですけど、一方、共同利用の中心の施設だと、学部の扱いは違っていたり、教育上の違うプログラムになっちゃうというところで、施設によっても違いがあるかとは思います。
大学院生を各施設で育てていながら、会社に入ると違うところを選ぶというのは、ちょっと、我々にはショックなところがありますが。
岸本委員はいかがですか。
【岸本委員】 先ほど山重委員からも言われましたけれども、当社でも学生時代に放射光経験をしてきた人が入ってきますけれども、やっぱり違うところに流れていくことが多いですね。
その理由は何かというと、学生時代は放射光実験をしていたけれども、ものを作っている会社に入ってきているので、やっぱりものが作りたいということも思う人もいるので、そういうところは致し方がないかなと思います。
それで、自分の若い頃がどうだったのかとか振り返りながら、別の視点で産業の利用者育成というところを考えてみたいんですけど。勉強することと教育は少し違うのかなと思うところがあって。
例えば、新規ユーザーのことを考えると、施設とかでやっていただいているような研修会とか講習会、あれは非常にいいですよね。非常に勉強になる場になっていると。ただ、それはあくまでも放射光という、素人からしたら扉を開いた状態であって、本当は、そこで勉強したことを会社に持ち帰って、自分たちの会社における開発課題だとか研究課題とかにミートできればいいんですけれども、なかなか会社でディスカッションできなくて、広がりがなくなってしまうというパターンも多いのではないのかなと思ってしまいます。
それで、教育というところ、特に生きた教育ということをどうすべきなのかといったときに、学んできたことを、大学だったら周りの先輩や先生たちとディスカッションできるのかもしれませんけれども、会社ではなかなかそういう人材が豊富にいるわけではないので、ディスカッションできる場が少なくなる。それを、例えば施設側でOJT的にやらせてもらいながら、テクニカルな部分をディスカッションさせてもらうとか、そういう場があればいいのかなというふうに最近よく感じるようになりました。
それで、その場合にも2つの観点があって、がっつりと実験をセットアップするところからやっていって、光学系から学んで、将来にもっともっと活用していくためのベースを築くというパターンと、最初からもう準備をされていて、あとはデータを持って帰って解析に力をかけてものづくりを推進させたいという2つのパターンがあるので、その両面をどういうふうにやっていくのかというところが非常にこれから重要になってきます。施設側で、企業からの人の受け入れとか、そういうところを考えていく必要があるのではないかなと思います。
それで、特に私、最近思っているのはSACLAなんですけれども、我々もSACLAというのはやっぱり高いハードルを感じていたわけなんですけれども、SACLA産業利用推進プログラムというのがあって、そこに申し込むと、理化学研究所の方々といろんなディスカッションしながら実験デザインができて、最後は実験までできるというところは、教育としては非常にすばらしいシステムだなと思っています。
以上です。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
教育上は一緒にやれるのが一番いいんでしょうね。単なる利用だと、今、世の中の流れは、コロナの影響もありますけど、自動化とか、リモート化とか、それから、データ解析もAIの機会学習で、人間がやるよりコンピュータに任せたほうがいい解が得られるとか、どちらかというと、いわゆる我々が今までやってきた利用者の育成とは違う形の利用者が今後生まれてくる可能性があって、その辺のギャップが今後出てくるところがちょっと気にはなっていますけど。どちらの方向で人を育てるかというのは、これから結構重要かもしれないですね。
【岸本委員】 はい。
【小杉主査】 高橋委員はいかがですか。X線構造だから、それほどギャップはないかと思いますが。
【高橋委員】 髙橋です。
私自身は会社に入ってから初めて放射光を使った立場なんですけれども、仲間、同僚ですとか、同分野の他社の皆さんの中では、割と学生の頃から放射光を使われていて、会社へ入ってからもそのまま続けていられる方が多いかなという印象はあります。
その中で、ここで書かれていることで思ったのは、大学院卒業、学位取得後すぐに就職されてという方ももちろん多くいらっしゃるんですけれども、何年かポスドクなり、施設なりで働かれて、その後でやはり産業界もという視野に入ってきて就職される方ですとか、中途採用の応募を見て、あるいは、こういった分野の人間が会社で欲しいのでという採用活動の中でお声がけして入ってきたという、そういった形のことが結構あるという印象があるので。
【小杉主査】 そうですか。
【高橋委員】 はい。逆に、働いている皆様の施設のほうの、卒業されてそのままアカデミアに残ってという方の中でも、それが5年、10年とすると、もうアカデミアしか頭にない方が増えてきてしまうなと思うんですけれども。最近、企業の中途採用のほうでも、割と門戸を開いているケースが多いと思うので、気軽にというか、あまり頭を固くしないでというか、企業でその技術を生かしていくという道も十分開けているのではないかなと思います。
就職後のことで言いますと、先ほどのお二方のお話にもありましたように、必ずしも同じ仕事ができるという保証がないというのはもちろんあります。それは会社の方針の変更でしたり、重点分野の変更でしたり、いろいろあると思うんですけれども、恐らくアカデミアでも同じで、ずっと同じ自分のやりたい研究ができるわけではないと思うと、そういったことは覚悟の上で、企業という道も考慮に入れていただけるといいのではないかなとは思っています。
あと、もう1点、ちょっと話は戻るんですけれども、特に大学院や学部の皆様の教育的なビームタイムがあればというお話ですけれども。構造生物は割と最近ハイスループット化でビームタイムが余裕があるというところも大きいと思うんですけれども、我々は成果専有でお金を払っているので、なるべく時間を無駄にしないように効率よく使いたいという意識で使っているんですけれども。その前後に使われているアカデミアの方の様子を見ていると、割と余裕があるというか、ビームタイムを潤沢に使って、学生さんとの話をしながら、試行錯誤しながら使われているケースをよく見聞きするので、そういう意味では、割と全体のハイスループット化というのが1つの解決になっているのではないかなと思いました。
【小杉主査】 単に自動化、リモート化、それから、コンピュータが解析するばかりではなく、余裕が生まれることによって、教育にも貢献できるようになっていると。
【高橋委員】 そう思います。特に構造生物の分野は、そう思います。
【小杉主査】 ありがとうございました。
じゃ、もうそろそろ次の施設職員のほうに移りたいと思いますが、その前に何か最後に利用者育成について。
【山重委員】
もう一つ別の観点ですが、このような施設においては、施設内や施設間のネットワークが非常に重要だと思っております。そこで、育成を通じてネットワークやコミュニケーションの拡充について取り入れていただくと非常に良いのではないかと思いました。

【小杉主査】 学会は最近はかなりそういう意識で動いているところがありますので、ちょっと時間はかかるかもしれないんですけれど、自然とそういう方向に向かっているとは思います。
それでは、施設職員のほうの問題をちょっと議論したいと思います。
共通問題としては、大学に量子ビーム施設関係の専門教育の講座がないというのは、結構あちこちに書かれておりまして、施設に入ってからの教育をしないといけない。どの施設も人材確保に苦労していて、一方、大学では教員ポストが削減されていたり、博士課程への進学者が減少しているというのもさらに影響していると。
あと、施設がどんどん造られる時期は人の動きがあったんですけど、今は割と安定期になっていて、若手を施設側がどれぐらい引きつけているかというところが弱いのではないかとか、それから、職種が明確ではないので、個別の職種での雇用になっていて、全体が見えないというところが問題という指摘もありました。
それから、スペシャリストばかりではなくて、全体の分かるゼネラリスト、技術的なところだと思いますが、そういうところでうまく、特定分野ばかりではなく、施設の中で成長していく中で、いろいろ力をつけていきたいというところが、大きな施設では少し対応できているようですが、小さな施設はなかなか難しいという問題が浮かび上がっているみたいです。
同じことなんですけど、特に小さい施設は人材に余裕がないので、なかなか流動性には貢献できないと。将来を見越して人を育てる余裕もないというところですね。
大学では、もうかなりのところが技術職員がいない状況ですので。一方、事業所的な施設は逆に研究者がいなくて、技術職員的な支援者だけがいるという点が問題になっています。
個別の問題としては、技術職員については、技術の継承に問題が出ているという施設が結構多いようです。場合によっては、大きな派遣的なアウトソーシング的なところでしっかり日本全体を見てもらうというところで育ててもらうというのも1つの選択肢だとは思いますが、なかなかその辺は国としてシステム化が難しいような状況があるようです。
それから、研究系のほうですが、ビームライン・サイエンティストという職が一応国際的にはあるんですけど、共用施設におけるサイエンティストの位置づけと大学等のサイエンティストの位置づけというのはちょっと違うという中で、一部では共用施設と大学等での間のクロスアポイントというのが有効に働いているというのが上がってきております。
以上、私がざっと見た感じでは、そういう整理になると思いますが。どなたか口火を切っていただくといいんですが、いかがでしょうか。特に施設側の方で、何か御意見をお願いいたします。
【阪部委員】 よろしいでしょうか、阪部ですが。
施設側というわけではないのですけれども。私はどちらかというと加速器寄りの人間ではないのですが、この議論をするに当たって、我が国の状況を把握するために、少しデータが欲しいと前から思っています。
それは、現在の技術系職員、研究系職員が、どのような大学の学部、講座、どういう分野の出身か、かつ、現在その講座は存続しているか、あるいは、代替わりして違う先生がつないでまた同じような分野をしているか、それとも全く分野が変わってしまったか、あるいは、定員削減の影響でなくなってしまったかというような、現在の我が国のビーム施設で勤める技術系・研究系職員の履歴というようなデータがあれば、今後の未来予想というのもできるのではないかなと思っているのですけれども、いかがでしょうか。
【小杉主査】 各施設から上がってきています、私のまとめ一番上に書かれているところですが、教育プログラムと施設側で欲しい人材の専門教育の講座が大学になくて、施設に入ってから人を育てないといけないというところが問題であって、特定の研究室というところがどんどん減っているというよりは、全体の問題として、なかなか施設系の職員の見せ方が難しいというのが上がってきているんですけれど。そのあたり、どうですかね。
【阪部委員】 例えば、施設では技術系の人を欲していても、現実は、理学出身で、大学時代に実験をその施設を使って行っていた経験があり、就職してから結局技術系になったとか、そういう方も結構おられると思います。
【小杉主査】 ええ、そうだと思います。
【阪部委員】 そうしますと、なかなか純粋な技術系の人材育成が進みません。
大学というのは人材のソースですから、大学の中でもそういう技術系が育つような環境整備をしていく必要があるのかなと感じるのですけれども。
【小杉主査】 大学によっても、研究大学に分類されるような国立大学だと、なかなか技術的なところで研究施設に入ってきてくれないような印象はあるんですけど。実際、技術職員なんかは、工業専門学校というか、高等専門学校の学生は技術職員への希望はあるようで、高エネルギー加速器研究機構全体では、高専との関係を強めようという動きで、技術系、施設系の職員を探しているし、総研大教育を含めて育成してるようなところはありますね。
ほかの施設はいかがですか。田中委員は、加速器関係ではどういう状況でしょうか。
【田中委員】 加速器も死滅危機に瀕しているというか、もう絶滅危惧種なので、大変です。もちろん大学に加速器の研究室がほとんどないので、違う分野から来て頂くというのが前提になります。そういう状況ですから、来ていただくのはかなり大変ですね。
やはりキャリアパスを、もちろん向こうも人生がかかっているわけですから、ここの職で何ができるかというところが重要なわけです。その意味では、施設側が加速器も含めて、施設のスタッフそれぞれに対してある程度のキャリアパスを示せなければ、どんなに頑張って勧誘しても来ていただけないという実感を非常に強く持っています。
ということで、私が心がけているのは、とりあえず30年ぐらいのスパンで、この研究所の高度化はどうするのかというグランドデザインを示す、それは最低限必要で、それに向かって、10年ごとにどういう形で繋げていくのかというビジョン、そのぐらいは明確に示せないと駄目です。さらに言うと、その10年のスパンが、それぞれ数年ごとに、具体的な計画でどうつながっているのか、あなたがもし来てくれたらこんなことができる可能性がある、それを示す様にしています。これらを一所懸命説くことで、十分ではありませんが、若い人を少しずつ確保しています。人を採るのは本当に大変ですね、それは多分加速器だけではないと思います。
【小杉主査】 個別の施設で雇用から考えると大変なんですけど、日本全体の施設がうまく集まって、キャリアパスを見せながら、全体として雇用を進めれば、見せ方としては非常にいいというのは、私が前から時々言っているんですけど、なかなかそういうのは難しいでしょうかね。職種が明確じゃないというところが、もう一つ難しいところだと思いますが。
【田中委員】 小杉さんのイメージは、アメリカのナショナルラボ群のような感じですか。ラボ間でかなり人が行き来してキャリアアップしていくような仕組みが全体としてうまく回っていけば、それぞれのナショナルラボがみんな恩恵を受ける、そういうイメージですか。
【小杉主査】 そうですね。1つの施設だけで考えると、古い施設にはなかなか来てくれないですよね。新しくできた施設には人は行くんですけど。でも、そういう新しくできた施設でも、30年後は大変な状況になるわけですので。日本全体、放射光は特にもう10も施設があるので、全体として人を雇用し、流動性を持たせながら回っていけば、全体としていいんじゃないかというのは。個別の施設が年に1回公募して人を採用するしないというのではなくて、全体としてある程度動けると、見せ方としてもいいのではないかと。そういう意見を漠然と持っているだけです。
【田中委員】 確かに考え方はいいと思います。仕組みとして、実際それを回そうとすると、いろいろ大変な気がしますが、何もしないよりは、アクションを起こしたほうが確かにいいです、いろんな意味で。今後を考えても、採用枠を確保するのは一施設では限界があります。このような考え方の下で、うまく回していければ大変いいかなと。ぜひ、そういう方向で何か仕組みを作れればと思います。
【小杉主査】 はい。
【阪部委員】 よろしいでしょうか。
大型施設あるいは国研の研究者も、大学の学生つまり人材源の教育にも関わっていただくように、クロスアポイントメントなどで、大学と国研の間でもう少しポストの交流が開けていってもいいのではないかなと思います。
特に大学のほうは、定削でポスト純増はありません。定削に対して、1を0にされるのではなくて0.5にして、国研のほうから0.5を捻出していただいて、それで最先端の研究と教育とを総合的に行えるような体制でいかないと、なかなかこれからは厳しくなっていくのではないかなと感じています。
【小杉主査】 大学側もそうですし、施設側もクロスアポイントで大学に入って教育に関わるというのは、ウェルカムな方向だと思いますが、なかなか施設も人手が足りない中で、通常の業務をしながら大学の教育に絡むというのは、余裕がないとなかなかできないので、施設によるとは思います。
実際、SPring-8なんかではクロスアポイントは行われているんでしょうか。大学等に。
【雨宮主査代理】 雨宮ですが、JASRIではクロスアポは何人かいます。
また逆のケースで、大学の先生が施設側にクロスアポというのはないですが、客員としていろんなことをお願いしているというのはあります。
【小杉主査】 どうもありがとうございます。
クロスアポイントは随分できるようになっていますので、完全に1か0かではなくて、よくあるケースは、週5日間のうち1日だけとかいうところで大学に出かけるというのは施設側、逆方向でも20%ぐらいなら割と可能にはなっていますね。
ただ、あまり距離があると時間の無駄があるので、距離の遠いところのクロスアポイントは実質的かどうかは、難しいところはあるかと思います。
ほかに施設系の職員について、何か。大学の学生から見て、この施設のポジションというのは魅力的なんでしょうか。石坂委員、いかがですか。
【石坂委員】 それは、何というか難しいんですけれども、魅力的であるべきだと思っています。いつも面倒を見ていただいたり、おもしろい提案をしていただいたりという、研究上のインタラクションはビームラインにいらっしゃる方としていて、それはすごく学生さんにとって刺激にもなっていて実際にとても尊敬しています。そういうインタラクションはかなり有意義ですけれども、やっぱりすごく忙しそうに見えたり、人の研究のお世話をしなければいけない、というふうに見てしまうと、難しいですね。学生さんは若くて、卒業後の人生も何十年とあるので、その何十年スケールの夢みたいなのが見えるといいんだと思っています。さきほど田中委員のグランドザインのお話がありましたが、世界はこういう状況で、この先この施設はこういうことを目指しているんだよとか、そういうものが見えてそれが心に響くというような要素があるとよいのではないかなと思っています。
【小杉主査】 大学の若者に魅力を増す努力を各施設はやらないといけない。
【石坂委員】 言いたい放題ですみません。
【小杉主査】 いやいや、重要な御指摘かと思います。
鬼柳委員はいかがですか。大学の学生から見て、施設というのは。
【鬼柳委員】 今言われたようなところが、やっぱり学生さんは気になるようですね。施設、僕は中性子なのでJ-PARCがメインなんですけど、すごく忙しくて、それからお世話もしなきゃいけない、そこでまた研究をすると。本当に自分の研究の時間が取れるんだろうかというところは、1つ気になっていると思います。学生さんにしてみたら。
やっぱり施設にいれば、いろんな実験もちょこちょことはできるし、そういうメリットも見えるんですが、両方をはかりにかけて、どっちかなというところですね。
【小杉主査】 学生から見て、共用施設のスタッフと大学共同利用機関のスタッフというのは、違いは見えていますでしょうか。
【鬼柳委員】 多分見えていないのではないかと思いますけれども。
【小杉主査】 見えてない。分かりました。
ほかに関連した御意見ございますか。
【田中委員】 JASRIの雨宮委員に、ぜひ今の点、コメントを聞いてみたいのですが。
【小杉主査】 それでは、雨宮委員、よろしく。
【雨宮主査代理】 施設の研究者はユーザーのお世話で忙しいと、思われています。大学でやっている研究こそが研究だ、と思っている学生の立場から見ると、施設の研究者は魅力的でないと思うのは、事実だと思います。私は逆に、その考え方が変わるような新しい文化を創っていく必要があると思っているんです。
お世話することは、言葉を変えれば、人の役に立っていることですよね。もちろんおもしろい研究をすることが重要なんだけど、タコツボ的な研究をやっていて、ひとりよがりでおもしろがっている研究者よりも、はるかに施設の研究者のほうが役に立つ研究者なんだということを、私はPFにいるときから、今はJASRIの立場で言い続けているのですが。
研究と研究支援の関係は、上下関係ではなく対等、イコールフッティングであると。研究というのは、いろんなアイデアがあって、また自分一人でできるわけではなくて、お互いに協力し合って共同でやっていくということで成り立っている、ということが若い人に分かるようになれば、支援する側も支援される側も不即不離というか、どちらが支援されてどちらが支援しているかということの区別もなくなる。それがこれからの先端研究の進め方なんだということを、そういう意識改革も含めて、若い人に教えていかないといけないんだと思っています。
あともう一つ。新しいことができるとか、これをやれば世界一だという、非常に分かりやすいアピールができれば魅力的であると思うんですが、研究には、多様なおもしろさがあるということも啓蒙したいなと思っています。
ちょっと抽象的になりましたけれども、コメントを求められたので。田中さんの期待していたことじゃないことを言っているかもしれませんが、コメントです。
【田中委員】 雨宮先生、高輝度光科学研究者センターでしたっけ。センターの一人一人の研究者を高輝度化させるということを目指されているとか。
【雨宮主査代理】 光源が高輝度であることが必要であるのと同じぐらい、施設のスタッフが高輝度化されて光っていることが重要だと言っています。研究者が高輝度で光るためには、高いモチベーションを持つことに尽きると思います。
どういう立場であれ、常に自分のモチベーションを高く維持することができることが、研究者の資質の80%ぐらいを占めると私は思っているんです。それに必要な要素を施設の中で醸成していきたいと思っていますし、大学の研究者とも共有していきたいと思っています。
【田中委員】 ぜひ、SPring-8でそういうふうにやっていただいて、石坂先生にもそう感じていただけるように、我々は頑張りたいと思います。ありがとうございました。
【小杉主査】 先ほど高橋委員が言っていたように、構造生物は自動化とか、リモート化まで進んでいます。そういう中で、余裕が生まれていって、そこで新しい人材が育っているというのがありますので。多分、もうちょっと待てば、各施設で自動化が進んで、もう少し明るい職場になるのではないかという期待はありますが、いかがですかね。
【高橋委員】 髙橋です。
とても変なことを言うかもしれないんですけれども。民間にいると、例えばキャリアパスとか考えると、大体の人は転職情報サイトですとか、人材コンサルタントですとか、そういった話を聞くと思うんですね。なので、もし本当にそういうキャリアパスを皆さんに知らせたいとか、情報をまとめて提供したいとかいう話だと、そういった人材系の方のプロフェッショナルの力を借りるのも一つなのかなと、皆さんのお話を聞いていて思いました。
【小杉主査】 そういうことも重要であるということですね。大学や国の機関というのは、そこまでのセンスがなかなかないので、確かに参考になります。
ほかに、もうそろそろ時間で締めないといけないんですが、施設系の職員に関して、何かございますか。
【雨宮主査代理】 雨宮ですけど、よろしいでしょうか。
先ほど高橋さんが言われたことで、私も非常に参考になったのは、ハイスループット化することでビームタイムの余裕が生まれる。それをいかに活用するかということが重要です。私は、自動化・ロボット化は絶対に進めるべき方向だと思っています。しかし、そのことを通して、ブラックボックス化してしまわないようにする必要がある。
【小杉主査】 そこが問題ですね。
【雨宮主査代理】 自動化・ロボット化は、教育、人材育成という方向とは逆方向に行くという懸念を持っていたのですが、逆に、今、高橋さんが言われたように、新しく生まれたビームタイムをいかに活用するかというところに知恵を出せば、ロボット化・自動化で生じる負の側面を十分補えるのではないかなという気もするので、そこをうまくバランスする。自動化・ロボット化の流れと、そうでないもう1個の流れをきっちり持って、うまいハイブリッドの流れを施設として考えるべきだと感じます。
【小杉主査】 私も強く感じました。
それでは、よろしいでしょうかね。
小中高の理科教育にどう絡むかという問題もありますけど、まずは目の前の問題としては、利用者、それから施設職員という大きな問題があるというところだと思います。
それでは、人材育成は、取りまとめていく中で、また意見を交換するタイミングがあると思いますので、今日は一旦ここまでにさせていただきますが、頂いた御意見を踏まえながら、小委員会における調査検討を継続いたしますので、よろしくお願いします。
では、最後、その他のところで何かございますでしょうか。あるいは、人材育成をもう少し議論するために、先ほどありましたが、大学の研究室とかの調査、大学側の年齢層を調べるというのはあるかと思いますが、なかなか難しい問題でして、学会等に協力を仰ぐというのもありますが、必ずしも全体を把握していない学会もありますので、少しそのあたりは検討しようとは思っております。
ほかに何かございますでしょうか。
【山田委員】 文科省の方にお聞きしたいのですが。人材育成をやっていく上で、人材の交流が非常に重要ですが、人材交流を妨げる1つの理由として、日本の大学なり研究機関の職種の柔軟性というか、フレキシビリティが乏しいのではないかという話が以前からこの小委員会でもされていました。たしか別の委員会でそういう職階制に絡むような議論をし始めているということを私はお聞きした記憶があります。そこの議論とこの小委員会の議論のインフォメーションをお互いにやり取りするということを、たしか以前にお聞きしていたと思うんですが、それは今どうなっているんでしょうか。
【小杉主査】 事務局、何かお分かりになりますでしょうか。
【對崎補佐】 文部科学省量子研究推進室、對崎ですけれども。
恐らく研究開発基盤課でやっている、いわゆる施設共用とかの関係ではなかったかと思うのですが。少し確認をさせていただきます。
いずれにしても、この人材育成の議論をするに当たっては、専門化した職種をどういうふうに考えるかということは、まず整理すべき論点だと思っていますので。山田委員の以前の御質問、多分、このビーム小委の今期が始まった去年の夏とか、その頃ではなかったかと思うのですが、少し確認をしたいと思います。
状況としては、研究開発基盤部会のほうで行っている、いわゆる共用施設の運転に関する技術職員の在り方等の検討といったものもフォローアップした上で、こちらの議論にも適宜フィードバックをしていきたいと思っています。
【山田委員】 よろしくお願いします。
【小杉主査】 ほかに何かございますでしょうか。
なければ、時間も参りましたので、議題は以上で締めて、あとは事務局から連絡事項等ございますでしょうか。
【對崎補佐】 事務局でございます。本日もお忙しいところ、皆様御出席いただきまして、ありがとうございます。
今回は人材育成ということで議論させていただきましたけれども、引き続き、また全体の論点をまとめていく中で、個別にも詰めるべきところ、さらに個別の施設の状況を考えた上で、国として行っていくべき検討の方向性等をお示しして、また御議論いただければと思っております。
次回のビーム小委の開催につきましては、開催方法も含めて、改めて日程調整や御相談等をさせていただければと思います。
また、本日の会議の議事録でございますが、作成次第、また委員の皆様に御確認いただきまして、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただく予定です。
本日の配付資料につきましても、同様に後日、文部科学省のウェブサイトに公表させていただきます。
以上でございます。
【小杉主査】 それでは、以上をもちまして、第10期第37回量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日は、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)