量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第36回) 議事録

1.日時

令和2年5月28日(木曜日)16時30分~17時30分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 大強度陽子加速器施設(J-PARC)中間評価フォローアップ
  2. 我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、石坂委員、伊地知委員、内海委員、近藤委員、阪部委員、佐野委員、高原委員、田中委員、鬼柳委員、岸本委員、小杉委員、山重委員、山田委員

文部科学省

奥研究開発基盤課量子研究推進室長、對崎研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

J-PARCセンター 齊藤センター長、J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン 大友ディビジョン長、総合科学研究機構 中性子科学センター 横溝センター長

5.議事録

【小杉主査】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第36回量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインで会議を開催することとしました。
田中委員がまだのようですが、テレビ会議ということもあり参加者が多くて、14名の委員の皆様に御出席いただいております。欠席者は2人だけでして、高橋委員、宮内委員です。
また、今回はJ-PARCの中間評価のフォローアップを実施することがメインですので、J-PARCセンターから齊藤センター長、今回のJ-PARCのフォローアップは主に中性子・ミュオンの施設、MLFが対象ですので、MLFの大友ディビジョン長、それから、共用を担っている総合科学研究機構(CROSS)中性子科学センターの横溝センター長に御出席いただいております。
それでは、それぞれ一言お願いできますか。齊藤センター長、大友ディビジョン長、それから横溝センター長の順番に、簡単にお願いします。
【齊藤センター長】 J-PARCの齊藤です。本日はお忙しい中集まっていただきまして、我々の事業について御評価いただけるということ、どうもありがとうございます。いろいろな御意見いただきながら我々取り組んでいたきいと思っていますので、今日もどうぞよろしくお願いいたします。
【小杉主査】 よろしくお願いします。
【大友ディビジョン長】 J-PARCセンターの物質・生命科学ディビジョン長の大友と申します。金谷先生が3月末で退任されまして、4月1日からディビジョン長を務めております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
【小杉主査】 よろしくお願いします。
【横溝センター長】 総合科学研究機構中性子科学センターの横溝です。どうぞよろしくお願いします。MLFと一体になって成果が増大していくように、連携を密に取って活動していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。
【小杉主査】 ありがとうございました。
それでは、事務局よりオンライン会議における留意事項の説明、配付資料の確認、それから、運営規則の改正を行いましたので、その説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 文部科学省量子研究推進室の事務局の對崎でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。本日、文部科学省からは量子研究推進室の奥室長と、私、對崎が出席をしております。
現下の新型コロナウイルス感染症対策によりまして、外出自粛や接触機会の低減等が求められる中、当小委員会においても対面による会議開催を見合わせていたところでございますが、小杉主査とも相談いたしまして、今回オンラインでの開催とさせていただくことにしました。開催に当たりまして、委員の皆様には事前に小委員会の運営規則の改正や、事前の接続準備等に御協力いただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、まずオンライン会議の留意事項を簡単に御説明させていただきます。
1点目でございますが、通信を安定させるために、御発言されるとき以外は可能な限りマイクをミュートの状態にしていただければと思います。御発言をされる際はミュートを解除にして、御発言をしていただければと思います。また、会議録作成のために速記者を事務局で入れておりますので、御発言の際はお名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただければと思います。また、会議中、不具合などトラブルが発生いたしました場合は、事前にお知らせしております事務局の電話番号まで御連絡を頂ければと思います。
なお、本日は、会議公開の原則に基づきまして、報道関係者や一般傍聴者によるZoomでの傍聴を認めておりますので、御了承いただければと思います。これらの傍聴者に関しましては、事前に注意事項を配付しておりますので、傍聴の皆様はそちらをお読みいただいて傍聴いただければと思います。
次に、配付資料の確認でございます。委員の皆様及び傍聴者の皆様には、事前に、議事次第、資料1、資料2、それから参考資料の1と2を配付させていただいております。ただいま画面に共有しておりますが、資料0、議事次第と、資料1がJ-PARC中間評価フォローアップの資料、資料2が、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について。そして、参考資料1としてJ-PARCの平成30年の中間評価報告書、参考資料2といたしまして量子ビーム小委員会の運営規則の一部改正でございます。
続きまして、今回の運営規則の改正について御説明をさせていただきます。画面共有しております参考資料の2でございます。
こちらは、今回オンラインでの開催とするために、委員の皆様に事前に小委員会の運営規則に係る書面審議を実施させていただきました。今回、運営規則の第2条におきまして、オンラインでの開催を見越して「委員等は、同時かつ双方向の機能を有する情報通信機器を利用して会議に出席することができる」と項を追加いたしまして、その出席を同条第1項に規定する出席に含めるものという形の追記を行っております。
また今後、本小委員会を開催するに当たっても、主査と御相談をしまして、必要な場合は、こうしたオンラインでの開催も検討していきたいと思っております。
事務局からは以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
それでは早速、議事に入りたいと思います。本日は、議題1、2、3とありますが、メインは1でして、大体45分程度を見積もっております。議題2は今日で終わる話ではないので、簡単にとどめたいと思っております。
では議題1、大強度陽子加速器施設(J-PARC)の中間評価フォローアップについてです。事務局より趣旨等について説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 続きまして、事務局でございます。参考資料1を御覧いただけますか。ただいま画面を共有させていただきます。
参考資料1は、前回平成30年に、第9期の科学技術・学術審議会大強度陽子加速器施設評価作業部会におきましてJ-PARCの中間評価を実施したときのものでございますが、この部会は、研究計画・評価分科会の量子科学技術委員会と原子力科学技術委員会、及び学術分科会の研究環境基盤部会の下に合同で設置された部会でございます。
前回平成30年の中間評価におきましては、J-PARCの運転開始からおよそ10年が経過するというところで、本格的な運用期に移行していることを踏まえて、平成24年に実施された前々回の中間評価における指摘事項の対応事項を確認し、安定運転の達成を見越した今後の施設運営に係る課題と推進方策について特に検討いただいたところでございます。
今画面共有しております参考資料1の6ポツ、今後重要となる論点のところに、特に今後の施設運営に向けた論点等を記載しているところでございます。こちらは適宜御参照いただければと思います。
文部科学省の研究開発に関する評価指針では、5年ごとを目安に中間評価を実施することとなっておりまして、前回の中間評価で示された課題や推進方策について適宜、取組のフォローアップを行うことが重要であると考えております。今回施設の運営主体であるJ-PARCセンター及び登録施設利用促進機関でありますCROSSより、現在の進捗状況を御説明いただければと思います。なお、今回のフォローアップでは、当小委員会といたしましては、J-PARCのうち特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(共用法)に基づき運用される物質・生命科学実験施設(MLF)をフォローアップの対象としております。以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
それでは早速、J-PARCセンターとCROSSより、J-PARC中間評価報告書で示された指摘事項への対応状況等について御説明をお願いします。できましたら25分程度を目安に終わっていただくと助かります。では、よろしくお願いします。
【大友ディビジョン長】 それでは、J-PARCセンターの大友よりお話しさせていただきます。私から画面共有させていただきます。
まず簡単に、J-PARC、大強度陽子加速器施設の概要を御説明いたします。J-PARCはJAEAとKEKの共同運用になっていまして、JAEA担当分、KEK担当分と一応分かれているわけですけれども、基本的には、リニアック、3GeVシンクロトロンこれをRCSと呼んだりしていますが、それから30GeVシンクロトロンという3つの加速器を中心に、物質・生命科学実験施設、ハドロン実験施設、ニュートリノ実験施設等から成るリサーチコンプレックスです。今回は、3GeVシンクロトロンからの陽子を使って発生する中性子、ミュオンを使った研究を行っております物質・生命科学実験施設についてお話しいたします。
J-PARC全体では非常に広いサイエンスを行っていまして、宇宙の始まりと物質の起源に迫る素粒子・原子核実験の分野、それから核変換技術のR&Dという分野に加えて、物質・生命科学実験の分野があります。今回お話しするのは、この真ん中の物質や生命の多様性の期限に迫るという研究でして、ここでは中性子とミュオンを使うわけですけれども、産業利用についても大きな柱として推進しているところです。
物質・生命科学実験施設は、共用法の対象となっているのは中性子だけですけれども、中性子は21本のビームラインが稼働しておりまして、KEKが設置したビームライン、JAEAが設置したビームライン、共用ビームラインと、加えて茨城県ビームラインから成っております。中性子源は点光源ですので、点光源に向かってそれぞれのビームラインがその光源を見るような配置になっております。
次に、MLFのビームラインの運営ですけれども、中性子施設に関しては共用法が適用されておりまして、共用ビームラインについては幅広いニーズに対応するということが行われています。
先ほど申しましたとおりKEKとJAEAのビームラインがありまして、共用法のビームラインは7本、21本のうち7本が共用のビームラインで、こちらがCROSSにて利用業務がなされているところです。そのほか専用ビームラインとして2本、茨城県のビームラインがありまして、こちらは茨城大学が運営している形になります。複数の機関が関わっておりますけれども、ユーザーから見るとなるべく一元的に見えるように、ユーザーズオフィスは一元化しまして、申請等の手続は一元化するというか、ワンストップで行うような形になっております。
J-PARCの中間評価の経緯については、先ほど御紹介あったとおりなので割愛させていただきまして、次のページ、MLFに関するコメントの一覧をお示ししたいと思います。
主なポイントとして、濃い緑のところに対する進捗をお話しし、これと総論についても併せてお話しします。
まず施設整備・運用に関してですが、J-PARCでは陽子加速器のパワーを、所期の目標として1メガワットとしておりまして、その1メガワットの早期達成を目指すと。それから2つ目は、生命科学用実験装置の整備をユーザーコミュニティーと共に積極的に進めていくこと。それから3つ目、3-1といたしまして、中性子・ミュオン利用の振興に係る課題を組織横断的に議論する場を提供して、その中核として主導的な役割を果たすこと。3-2としまして、MLFにおいては、より効率的・効果的な一体的運営に取り組むべきと。それから3-3としまして、他施設との連携を推進して、コミュニティーと共に効果的な取組をしなさいと。あと総論として、安全第一としながらも、地元の理解を得ながら活動を継続するように、それから、よりJ-PARCが世界での存在意義を高めるようなプランを持って進めなさいということでした。
1-1から御説明します。1メガワットの早期達成に向けてということですけれども、ここにありますように2018年から2019年度にかけては、500キロワットのビーム強度で、非常に安定した利用運転を行っています。2018年は8サイクル、稼働率93%、2019年度は7.7サイクル、95%。中性子ターゲットの交換で少し遅延が生じましたため、その遅延を含めた日数を含めると86%になっていますけれども、そういう中でも1メガワット相当のビーム強度による10.5時間という時間での連続運転を去年達成していると。今年度になりまして、5月18日から600キロワットでの運転を始めております。
1メガワットに向けたR&Dとしては、1つ大きなのは中性子源の標的容器の開発でして、これは1メガワットという非常に高いパワーの陽子が短時間で照射するために生じる圧力波によって容器が損傷することを抑える必要がある。そのためにヘリウムのマイクロバブルというものを入れまして、その圧力波を低減するようなことをしていますけれども、このマイクロバブルの注入についてR&Dを進めておりまして、さらに改善をしていき、5分の1程度に、圧力波の抑制を5分の1にしたいということがあります。
加速器では大強度ビーム制御技術の確立、それから、リニアックではHマイナスという電子が2個ついたプロトンが加速されて、これが3GeVシンクロトロンのHプラスの加速器の軌道と合わさるときに、荷電変換フォイルで電子を剥がして同じ軌道に投入するわけですけれども、その荷電変換フォイルの寿命が延びる研究が必要。
次に行きまして、生命科学の発展ですけれども、どうしても放射光やクライオ電顕が中心的に用いられているわけですけれども、我々としましては、中性子の位置づけを明確にして、中性子がより効果を発揮するところに注力していくべきであろうと考えております。生命学というよりも、より化学に近いようなところにアプローチを、中性子として中心的にやっていこうと考えています。課題としては、右上にありますように、大型タンパク結晶構造解析装置の建設、それから重水素化ラボの稼働の本格化等があります。加えて既存装置の改善がありますが、最近の、例えば化学に注視した研究成果として1つ御紹介したいのは、これは生物単結晶装置のiBIX(BL03)という装置で出てきた成果ですけれども、土の中では無機窒素化合物が微生物によって脱窒素化が行われるわけですけれども、微生物の中の酵素がいかに亜硝酸イオンを一酸化窒素ガスに変えるかという反応メカニズムについて、この銅含有亜硝酸還元酵素の精密な構造解析を行いまして、活性中心にある銅の外にある酸素、実は水の状態であるということも言われていたんですけれども、中性子で水素を精密に見た結果、これは水H2OではなくてOHであるということが分かりまして、これが量子化学計算の結果とうまく整合しているということで、こういった形での精密解析が、中性子の果たすべき役割ではと考えています。BL03で行われた成果なわけですけれども、BL03をさらに使いやすくする方法ですとか、AMEDへの参加の検討も、CROSS、茨城県と共に、MLFで検討中です。
大型タンパク解析装置の解析に向けては、QSTとの協力で、量子構造生物学の開拓という形で進めようと。ちなみに、ここの上の、御紹介した成果もQSTの玉田さんの成果。それから、課題の2つ目の重水素化ですけれども、これは京大の杉山教授との共同研究でしているところです。このような課題に取り組んでいます。
3-1ですけれども、組織横断的に議論する場を提供し、人材育成等で主導的な役割を果たすべきということで、毎年行っております中性子・ミュオンスクールは国際的なものでして、講義は全部英語でやっていまして、講師も海外から招いたりしています。おととしの回から茨城大の専攻単位にもなっています。昨年は、これはスウェーデンとのMIRAIプロジェクトというものと合同で、41名の若手研究者が参加しています。それから、スウェーデンのESSですが、こちらとの人材交流プログラムを進めていまして、スウェーデン側の経費といいますか資金によりまして、日本とスウェーデンの間の研究者のエクスチェンジを行うようにします。今年から開始する予定で、去年審査を行いまして、14件が採択されましたが、コロナウイルスの関係でまだ1件も遂行できていません。ただ、ここにありますように、第2次課題公募というのも行っておりまして、先日行われまして11件が採択されまして、合計25件がこれから動くという状況です。そういう形で海外との共同研究や、あるいはJ-PARCを拠点とした研究活動をしていきます。
こちらは、例えば左上にありますような大学の分室の設置を進めておりますし、大学連携としては、KEKと東北大学による偏極非弾性散乱装置の建設。それから、ここには書いておりませんが、東大物性研とのビームラインの共同運営ですとか、京大との共同建設ということも、それから岡山大学とか山形大学も分室をつくる予定。海外についても、オーストラリアのANSTO、アメリカのSNS、それから先ほどのESSと連携を行っています。右上の企業との連携については次で詳しく説明します。
それで、こういう議論の場として、個人の利用から組織対組織の産学連携への利用形態の広がりということを目指しております。一般課題、これはもう完全に個人が、ある意味でユーザーとして申請されますし、共同研究契約も必ずしも組織的なものではありませんが、これをさらに進めるものとして、CROSSが中心になってコンソーシアムというものを立ち上げていまして、早速立ち上がっているのが機能性高分子コンソーシアムというもので、5つの会社と、それから4つの研究機関がタッグを組みましてコンソーシアムとして機能性高分子の研究を行うということが進んでいます。
それから、企業ポスドク制度というものがありまして、これは企業から研究者をMLFに派遣しまして、MLFの中のスタッフとして研究を行うものです。現在、2名在籍しています。それから、総合型企業との包括的連携協定というものがありまして、これも常駐の企業研究者が3名、あとポスドク2名という形で、かなり入り込んだ形でやっております。ちなみに企業ポスドクの制度を実施しておられるのは住友ゴムさんで、下の総合型企業というのは豊田中研さん、こういった形で組織対組織ということを進めている、産業連携していると。
共用ビームタイムの導入に関しての背景ですが、共用ビームラインにのみ適用されているマシンタイムを、JAEAのビームライン(供用施設)、KEKのビームライン(大学共同利用施設)で共用ビームタイムとして適用し、装置性能の最大限利用、産業利用のさらなる推進、施設全体としての安定運営を図りたいと考えています。
課題としては、上記のような理由によりまして、共用ビームラインと比べて必ずしも十分な産業利用及び利用者支援が確保できていない。それぞれの組織のミッションということもありますし、それからビームラインのサポートスタッフという問題もあります。結果として、共用法適用の有無によりビームラインごとの利用者支援体制にばらつきがありまして、研究成果最大化が進まないところがあるということで、共用ビームタイム導入により期待している効果というのは下記のとおりです。限られたビームラインの中で、組織の垣根を超えて、MLF全体として一体的な運用を図り、さらなる成果の増大や生産性の向上を目指す。それから、産業利用が期待されるJAEAビームライン、KEKビームラインについて、より積極的な産業利用の実施を可能とすると。
というわけで、イメージとしては下にありますようなイメージでして、設置者ビームラインでは大学共同利用だったりプロジェクト課題を実施しているなかで、一般課題を先ほどの一元的な窓口で受け入れて実施しているわけですけれども、共用ビームラインとは、そういう意味では利用形態が異なっている。そこで、共用ビームタイムを右図のように導入することで、装置者による運用で行う一般課題の枠を共用ビームラインと均一な運用するということが候補としてあって、それによって、より積極的な産業利用や幅広い利用の推進、それから生産性の拡大が実現できると考えています。これに関しては、国際アドバイザリーコミッティーでサポートされておりますし、それからディビジョン長の諮問機関であるサイエンスプロモーションボードでも支持されているというところです。
時間がなくなってきましたけれども、コミュニティーとのネットワーク化に関しては、中性子科学会と協力しまして、J-PARCを中性子施設ネットワークの中で位置づけていく。要するに、共に世界的拠点として位置づけていくということを行っていまして、この背景には、日本の各地につくられています小型中性子源や地域拠点との連携を有機的に行うということを目指そうとしています。理研の小型中性子源とは協定を結んでおりまして、J-PARCと連携しています。
ここ20年の計画としては、次の4-2に示すような形になっておりまして、1メガワット化というのはまだ時間かかるかと考えておりますが、1メガワット化に向けて高度化を続けていきますけれども、現在のターゲットステーション、TS1におきましても、装置のフルスペック化ですとか、モデレーターの高度化というようなことを行いつつ、かつ現在のビームラインの生産性みたいなもの、生産性だとか意義だとか、これからの目標とかということを、10年評価として行おうとしています。それから課題としては偏極中性子の強化というところがある。そういうことを並行して行いながらターゲットステーション2を実現して、例えば中性子だと20倍の輝度、長波長、マイクロビームの利用、ミュオンに関しては50倍から100倍の強度を目指しています。
それでもう一つ、中間評価のコメントとは関係ないですが、オープンデータについて説明するようにという話がありましたので、お話しします。簡単に言いますと、MLFのデータ解析フローというのは4段階ぐらいあると考えておりまして、実験前、それから実験制御で直ちに生じる生データ、各種のデバイスの制御・ログのデータ、そこから可視化と絶対値補正等を行いまして、散乱関数とか散乱強度になるわけですけれども、それが2次データです。その2次データを基に科学的な解釈となるデータ解析というようなものがあります。
MLFのデータ解析環境としては、左上にあるように、今の4つのプロセスをMLF内部でやれるという環境の構築に今注力しておりますが、データに関しては、整備中である先進計算環境システムのところで保存する。そのデータを商用クラウドシステムとか、そういう形で外部からのアクセスを可能にして、ユーザーは外部アクセスして、この3段階目、4段階目、2次データ以降の処理を行えるようにしたいと考えています。
この辺を簡単に説明しますと、MLFのデータの再利用による成果創出を可能とするために、オープンデータ・オープンアクセスというのは必要だと考えていまして、そのためのポリシー等の検討を進めています。ちなみに、1メガワット運転時に生成する1次データは年間1ペタバイト程度になります。MLFでは、まずは1次データをきちんと保管するということを最優先にしております。2次データ以降は課題申請者の研究活動で生成されるものですので、これはなかなかデータとしての整理や選別が困難なところであります。
課題としては、オープンデータ・オープンアクセスに関わる費用対効果の見積りというものが1つあります。どういう成果をどういうふうに出していくかということもしっかりしなければいけませんし、クラウドシステムの活用によるコストカットをしていくと。それから、かなり大事なのが、オープンデータ・オープンアクセスに関わる人材の確保というものも現在難しくなっていまして、端的に言いますと、オープンデータ・オープンアクセスに関わるインフラを大型施設間で共有できないかというような考え方も持っています。また、再利用という観点からは、2次データのほうがユーザーにとってみれば非常に有効活用しやすいだろうということですが、再利用に供する場合の所有権、使用権等の検討は必要ということです。
コロナウイルスに関しては、時間が超過しておりますので省きますけれども、5月18日より利用運転を再開していますということと、それからコロナウイルス関係の研究の情報収集や、海外施設との連携の在り方を検討しています。
というところで、資料の御説明は、これで終わります。
【齊藤センター長】 齊藤から少し付加的に情報をということでお伝えしますけれども、J-PARCの全体的な活動というところを御説明します。
参考資料2からですけれども、J-PARCは7年前に、ハドロン実験施設というところで、放射性物質放出事故を起こしてしまいまして、そのときに改めて安全を第一とするオペレーションをすることを、ユーザー、スタッフとしっかり考えて行っていこうという組織に再編しました。そのときから安全文化醸成活動を行っているのですが、その一環としまして「安全の日」というのを設けました。事故のあった5月23日が安全の日ですけれども、今年は残念ながらコロナで開催できなかったので、9月に延期したところでございます。「安全の日」には安全文化醸成研修会を行って、安全について考えたことが血となり肉となるように、という研修会であります。加速器施設安全シンポジウムも実施されていますけれども、世界中の加速器施設では様々な課題を抱えています。毎回テーマを絞って、それぞれのところの課題を完全にオープンにして議論すると。失敗談を主に話すということを中心に、また成功に持っていくための方策ということで議論できるシンポジウムを開催してきまして、これはかなり有用だと言われているので、2年に一度ぐらいのペースで、インターナショナルですけれども、そういう失敗談を共有しながら、世界中の施設をより強靱化、レジリエンスの高いシステムをつくっていくというふうに努力しているところです。
次のページに行っていただきまして、地元との関係は非常に重要でして、東海村は、御存じのように、もともと原子の火が灯ったところでございます。そういう意味でサイエンスに興味のある方々非常に多いわけですけれども、ともするとサイエンスの1つのアスペクトだけということになりがちなところもあるので、我々のところで行っている様々な研究の成果について協議いただくためのイベントを行わせていただいております。
次のページに行きまして、その一環として市民講座みたいなものをよく開かせていただいているわけですけれども、去年は特に10周年、J-PARCの利用を始めてから10周年記念ということだったので、大きいイベントとして市民講座をつくばで開催しましたけど、約300名入るホールが満員で、現在ではなかなかもう考えられない、かなり密な状況で行わせていただきました。こういうふうに国民の理解増進ということにも貢献しながら、我々、長期的にはどういう計画を考えているかということを4点、4-2の将来計画というところでお示ししております。
我々のところには、今日御議論いただいているMLFの中性子・ミュオンの施設がございますけれども、それ以外にもニュートリノ施設とかハドロン施設がありまして、さらに、大友ディビジョン長からも紹介ありましたけれども、核変換実験施設というのがあります。それぞれこのタイムラインで実際実現していこうと考えているわけですけれども、正しくは、ここは今後予算要求していかなければいけないものもあります。こうしたプロジェクトがそれぞれ立ち上がっていく中で、大きいものになりますと、例えばニュートリノ実験施設についてはハイパーカミオカンデ実験というのを始めるべく、こちらは予算を文科省さんからつけていただきつつ、J-PARCの加速器をアップグレードするということです。ハドロン実験施設でも実験施設の充実というところを狙っておりまして、2023年ぐらいから建設することが希望ですけれども、あとはミュオン施設としてg-2という実験があります。そういう新しい実験施設のインプルーブメントをやりつつ、そういう中から得られたことも反映させて、MLFのプランをさらに磨き上げたものをTS2(第二標的ステーション)のコンストラクションに、技術的にも協力しながらしていこうというふうになっています。
ですので、それぞれ違った分野のシステムではありますが、そういった標的技術及び計測技術というところで横串でつないで、協力しながら、こういう施設をしっかり実現していきたいというのが我々のプランでありまして、次のページに代表的な絵があります。かなり、こういうプロジェクトを紹介すると、J-PARC、一体どれがプライオリティーだという話を伺うときがあるんですけれども、J-PARCはいかにも多目的施設でありまして、それぞれのコミュニティーから頂いたリクエストと施設としっかりコミュニケートして、よりすぐったテーマをこういうタイムラインで順次実現していこうというふうに考えているところです。その中で実際、今回評価いただいているMLFの役割というのもしっかり実現できればと思っています。
どうもありがとうございました。
【小杉主査】 御説明ありがとうございました。このプレゼンの資料そのままにしていただいて、最初に戻っていただけますか。7ページ。
ここでいろいろコメントに対しての対応状況の御説明がありました。資料については一部ないものもありますが、資料が出てきているものを中心に少し、順番にやっていきたいと思います。1-1、1-2、それから2はなくて、3-1、2、3とありました。それから総論のところは4-2と、あとオープンデータの話がありました。最後にJ-PARCの全体としての御説明が、4-1、4-2に対応するようなところで説明いただきましたので、順番にやっていきたいと思います。
まず1-1に関しては、ページ8、9、10とありますが、何かこの辺りで御質問ございますか。質問される方はお名前を言っていただくと助かります。いかがでしょうか。
【田中委員】 理研の田中です。1メガワットの達成に結構時間がかかっているような感じを持ちました。早期達成を目指すということで、いつ達成できる今の時点ではまだ見通せないと感じられる表現を取られていましたが、これの達成がなかなかスムースにいかない根本原因というのはどこにあるのでしょうか。それと、ゴール設定というのができない理由という、例えば2020年とか2025年とかという明確な目標時期を出せない理由というのがどこにあるのかということをお聞きしたいんですけれども。
【小杉主査】 御説明お願いします。
【大友ディビジョン長】 今のエスティメーションでは2024年が1つの、1メガワット達成の目標になっています。ただ、それよりも早くしたいというのがありまして、いろいろ検討しているところですけれども、キーとしては、中性子源の容器の開発が一番今、進捗がはかばかしくないといいますか、いろいろなR&Dを行っているところでして、まだそこのところで慎重に進めているという形です。最終的に圧力波のピッティングのような作用によって容器に穴が空いてしまいますと、中の水銀が外に漏れるということになってしまうので、それを避けるように安全を見ながらやるということと、過去にターゲットの故障等で長期停止ということが何度かありまして、それを避けることもあって、かなり保守的に運転しているということがあります。
【田中委員】 分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】 よろしいですか。
【田中委員】 はい、結構です。
【小杉主査】 ミュオンのターゲットについての説明はなかったんですけど、ミュオンはどんな感じでしょうか。
【大友ディビジョン長】 ミュオンも科学的なターゲットの開発は継続中で、ある時間、1年のサイクルで壊れない材料、ターゲットの開発がまだ継続しているところですけれども、よりシビアなのは中性子のほうだと考えています。
【小杉主査】 はい。
ほかに、この1-1のパワーアップの進捗状況に関して何かございますか。
【阪部委員】 阪部です。教えていただきたいのですが、荷電フォイルの長時間安定性が課題のようですが、もし、展望としてどの程度の時間使用できるようになることを計画されているでしょうか。
【大友ディビジョン長】 大友ですけれども、きちんとした数字は今把握できておりませんが、2週間に1枚使うことを計画しています。自動交換システムがあって、その自動交換システムに装荷できるのが15枚で、加速器のメンテナンス時期に合わせて、その自動交換システムを入れてやると、フォイルがリプレースできて、次の加速器のメンテナンスまで寿命がもつということです。
【阪部委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかにターゲット関係、御質問ございますか。
【雨宮主査代理】 雨宮ですけど、1つ。1メガワットを目標にしているということですが、世界のほかのスパレーションソースの中で、1メガワットというのはどのような位置づけになるのか。コメントお願いします。
【大友ディビジョン長】 1メガワット以上を達成しているのはアメリカのSNSだけでして、今1.4メガワットです。ただ、SNSの場合は加速器の繰り返しが60ヘルツなので、パルス当たりのパワーといいますか、圧力波の生じる具合が低いんですね。J-PARCの場合は25ヘルツですので、SNSに比べて数倍高いということで、現状、500キロワット、600キロワットですけれども、パルス当たりの圧力波という意味ではもうSNSと同等レベルになっていまして、これ以上、上げていくというのは、世界でどこも成し遂げていない領域に入っていくと、そういう理解です。
【雨宮主査代理】 そのSNSで1.4メガワット、ヘルツが違うにしても、そこは問題なく安定運転ができているんですか。
【大友ディビジョン長】 実はSNSは頻繁にターゲットを交換するということでクリアしていまして、日本の場合は年に1回という、環境への影響も考えて年に1回としていますので、そういう条件が大分、附帯条件が大分異なっていると考えています。
【雨宮主査代理】 予算の問題というより、環境問題ですか。
【大友ディビジョン長】 環境問題ではないかと思っています。
【雨宮主査代理】 はい。どうもありがとうございます。
【小杉主査】 では、ほかになければ、次の生命科学への応用に対して、11ページ、12ページがありますが、いかがでしょうか。
これは放射光で言うと、どんどんビームを絞ることによって、結晶は小さくてもやれるという大きな流れがあるんですが、中性子ではそういう流れはないんでしょうか。
【大友ディビジョン長】 中性子ビームの集光というものは、もちろんトライはしているんですけれども、もともとの光源からのビーム発散が非常に大きくて、かつ中性子は磁場や物質との相互作用が小さいということで、非常に集光技術は難しいこともあって、放射光並みに小さくすることは多分原理的に難しいのではないかと思っています。そういう方向では考えていますが、放射光ほど行けるという目算は全く立っていません。
【小杉主査】 はい。
ほかに何かございますか。
【山田委員】 山田です。この11ページの絵が分かりにくかったんですが、クライオ電顕から始まって、ダイナミクス、スピンエコーの、この横軸が一体何を意味しているのかがよく分からなかったです。それから縦軸が、上に行けば生物学で、下に行ったら化学になるということですが、結局ビームラインBL03をどう位置づけていこうとするのか、これを出された意味合いが少しフォーカスできていなかったんじゃないかという気がしました。その点に関して大友さんからコメントいただけるとありがたいです。
【小杉主査】 お願いします。
【大友ディビジョン長】 そういう意味で横軸がかなり、交ざってしまっているので分かりにくいですね。確かに、必ずしも距離でもないし、これは横軸の単位というものが、明確には申し上げられません。
【山田委員】 多分横軸は時間じゃないかという気がしたんですが、クライオ電顕が止まった構造を見て、ダイナミクスを見るのがスピンエコーであり、かなり緩やかなダイナミクスですが、そういう観点で書かれたのではないかと思うんですが、これを出して、特にビームライン、BL03をこれからどういうふうに位置づけて、どう使っていこうかと。お話を聞いていると、生物学だけでなくて、化学的な方向にもこのビームラインを使っていくんだというようにも取れたんですが、それはどういう意図というか、どういう目的でもってこの絵をお出しになったのかというのがよく分からなかったです。
【大友ディビジョン長】 そうですね、絵との関係での説明が難しい。正直、難しいですけれども、今、山田先生おっしゃったとおり、どちらかというと小さい構造を見ていくというような意味合いで描かれていると思っていますけれども、化学という意味では、距離のスケールというよりも、水素に着目することが必要な構造を見ていくということが、すなわちここでは化学と言っていると考えています。先ほど言いましたとおり、酸素が、水酸化物の形でいるのかH2Oの形でいるのかというところが重要なテーマに絞るような方向性でiBIXを使っていくというのが、ここでの提案という意図です。
【山田委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 この辺りの議論は茨城県だけの議論ではなくて、全体で議論されているということですね。
【大友ディビジョン長】 はい、そうです。
【小杉主査】 ほかに何かございますか。これはまだ進捗している状況ですので、また1年……。
【鬼柳委員】 ついでに関連してですが、鬼柳です。ダイナミクスのところの準弾性とスピンエコーというのが書いてあって、J-PARCは準弾性はできるけれども、今のスピンエコー……、J-PARCにあるスピンエコーもこれに使っていくということですか。
【大友ディビジョン長】 そうですね、ビームタイム的には限られると思いますけれども、準弾性と連続的に時間領域をつないで、より長い時間の緩和現象を見ていくということは可能だと思っています。
【鬼柳委員】 そうすると、今のiBIXと2つの装置の間の連携は何か考えておられるんですか。
【大友ディビジョン長】 今はまだ連携はないです。iBIXは単結晶ですし、スピンエコーや準弾性とは必ずしも関係している必要はないので、具体的なつながりということはまだ提案できていないです。
【鬼柳委員】 どうもありがとうございます。
【小杉主査】 これからに期待するというところですね。この辺りでよろしいですか。
では次、3-1。13、14、15、ここは少し人材育成等もありますが、何かございますか。
利用者としては、海外の割合はどれぐらいなものですか。
【大友ディビジョン長】 ビームラインによっても違いますけど、課題数では3割程度だったと思います。
【小杉主査】 そういうユーザーに対する教育も国際的にやっておられるとの説明ですね。
【大友ディビジョン長】 はい、そうです。特にここで説明しているのは若手中心です。中性子・ミュオンスクールは若手中心です。
【小杉主査】 15ページのところが、民間企業関係の新しい取組のようですが、何か御質問等ございますか。
【雨宮主査代理】 雨宮です。今映っているところで企業ポスドク制度、2017年度からで現在2名、これは何年の仕組みで、そしてこれは終わると企業に帰るんですか。もともと企業だった人がポスドクで来て企業に帰るのか、それともポスドク終わったら企業に行けるというキャリアパスを含めて、ドクター取りたての人を採るのか、そこの仕組みを教えてください。
【齊藤センター長】 齊藤からお答えしますけれども、キャリアパスについてもきちんとこちらで考えていくということを考えていまして、これもまだ議論中ですが、1つのパスとしては、例えば企業に帰ることもあり得るし、企業と、もしくは研究機関との間のクロスアポイントメントというようなことを考えています。そのポイントというのは、我々と施設の中で一緒に働いていただくことで、施設のポテンシャルを新たに企業と見いだしていくことを一緒にやっていこうというところは非常に大きいと思いますので、幾つかのそういうキャリアパスを考えながら進めるということです。よろしいでしょうか。
【小杉主査】 こういう制度は、雨宮さんのところのSPring-8ではないんでしょうか。
【雨宮主査代理】 今のところはありません。関心は、今これを聞いて、とてもありますけれども、産業利用ということ、放射光も非常に重要なので、特に産業利用に関心のあるこういう人材というのはすごくこれから必要だと思っていますので、何かいい仕組みが、学ぶところがあったら学びたいという思いがあります。また詳細は後で聞かせてほしいと思います。
【小杉主査】 ほかに何かございますか。
【山田委員】 山田ですが、3-2のところでよろしいでしょうか。
【小杉主査】 そこはまた次、行きます。今は3-1で。
【山田委員】 そうですか。はい。
【小杉主査】 15ページまでで何かございますか。
では、なければ3-2の16、17へ行きますが、このところは山田委員が、前から次世代放射光関係でもいろいろ提案されていた部分ですが、御質問お願いします。
【山田委員】 17ページの共用ビームタイムの話ですが、アドバイザリー委員会から、ぜひ導入するようにというアドバイスを頂いているのは非常にすばらしいと思っていて、ぜひこれは本当に進めていただきたいというお願いです。国際アドバイザリー委員会は共用ビームタイムの概念を導入と書いてあるんですが、概念だけ導入するのではなくて、実際的に共用ビームタイムを導入して進めていただきたいというお願いです。
それに関してですが、これを実際に導入するときには大変多くの課題が出てくると思いますが、その課題をリストアップして、どういうふうに解決していくかというワーキンググループ、これをぜひつくっていただいて、もうできているのかもしれないですが、具体的にぜひ進めていただきたい。予算的に問題があるときには、こういう予算的な問題があるんだということを、ぜひとも文科省と相談して進めていただきたいというのが私の切なる希望です。
【小杉主査】 山田委員は前から深く提案されているので、ほかの方はちんぷんかんぷんなところがあるかもしれないですが、16ページが一番分かりやすいところではあると思います。私から補足をしますと、大学共同利用とJAEAはそれぞれ独自の研究をやっている一方、一般課題という形で共用的な利用も受けています。MLFは一体的運営に重点に置いて、入り口は共通の申請書を受けてやっているんですが、中に入ってみると、それぞれビームラインが別々で、設置者が2つあるし、あとCROSSが担当している共用があって、違いが出てきて、全体としては統一が取れていないという問題があるというのを聞いておりますが、それに対する解決案が16ページの下の右ということですね。
質問で何かございますか。
【内海委員】本件、J-PARCの中で詳細に議論して頂いていますが、これは中の議論だけで済むのでしょうか。というのは、法律、共用促進法の改正まで踏み込まないと、本質的にこの右側の絵にならないような気もするのですが。御承知のとおり次世代放射光の運営のために、共用法の改正がなされることは多分必然だと思っていますが、次世代放射光が共用開始になるのは令和6年度からですので、それまで、待っていられるのかどうか。より早くこれの実現を目指すために法律の改正を量研室にお願いするとか、そういうところまで踏み込んで何かお考えなんでしょうか。
【小杉主査】 そこまで待つ話ではないんですよね。事務局側で、右のことが現実的に、現状で何もいじらずにやれるものでしょうか。法律に関係する問題は。
【内海委員】 そこがポイントだと思います。
【小杉主査】 事務局、どうですか。
【對崎補佐】 文部科学省でございますけれども、法的な整理は当然必要になるとは思うんですけれども、理研が実際に、理研のビームラインの中に共用枠を設定して、そこを共用法に基づき運用するということはやっておりまして、それと同じような形でJ-PARCのビームラインの一部を共用枠という形でつくって、共用補助金でその手当てをするということは、制度上ある程度そのスキームを整える必要はありますが、それは法律の改正というレベルではなくできるのではないかとは考えております。
【小杉主査】 内海さん、それでよろしいですか。
【内海委員】 それならばぜひとも先駆けて、どんどんやっていただくのが非常にいいと思います。
【小杉主査】 中性子は、ある程度形はできているので、一般課題のところの扱いを共用の扱いにするというところだと思うんですが、一方、ミュオンですね。ミュオンは今、物構研の大学共同利用しかやっていなくて、共用に展開ができていないんです。
私は関係者なので説明しますと、ミュオンを共用に持っていく場合にはいろいろ課題があります。これまでミュオンはどういう応用ができるかというところから、大学共同利用として専門家が集まって検討してきて、ようやく最近、材料系にも応用できるフェーズになっていますので、そういうところは手法として産業利用も可能な共用に展開できるフェーズではあるんですが、使いやすくするとか、人をつけてしっかりサポートするとかいうところが、大学共同利用の現体制ではできていません。共用に持っていくところをかなり検討しないと、本当の意味で共用施設での貢献ができないというのが、物構研としてネックに感じている点です。そういうところも含めて、山田先生は早急にと言われていましたので、詰めないといけないというのが、物構研側の観点からはあると思います。
ほかに何かございますか。
【近藤委員】 近藤です。今、共用ビームタイムのお話が出ていて、よい方向だと思うんですけれども、そのことで産業利用とかを促進されるということで、よい点も多々あると思うんですが、一方で、今現在進行している一般課題、これがその新しい枠組みの中できちんと進められていくということが担保されることも大事だと思うんですけれども、今、一般課題というのは大体どのぐらいの採択率になっているんでしょうか。
【小杉主査】 大友さん、いかがですか。
【大友ディビジョン長】 大友からお答えします。競争率としては平均で1.5倍くらいです。ただ、御心配の件ですけれども、今、一般課題というのは、実は共用ビームラインと同じ審査基準で、同じ審査委員がやっております。採点は全部同じ基準でやっておりまして、入り口という意味では全部同じ入り口にはなっていて、実際に実施する場合の制度が違うということです。今でも共用ビームタイム相当のことはできているけれども、その採択後の実施段階において受ける支援の形が大分違っているというところで、端的に言えば設置者のビームラインでは、スタッフの数が少ないのでサポートが手薄になりがちだというところが問題と認識しています。
【近藤委員】 分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかにございますか。少し時間がオーバーになってきていますが、遅い時間帯に始めていますので時刻も遅くなってきましたけど、よろしいですか。
それでは、次の18ページ、他施設との連携。いかがですか。
小型、中型の中性子源については以前ヒアリングを実施しておりますし、聞いていないところとしてはJRR-3の扱いですが、まだ公開までは行っておりませんが、近く公開されるんですが、その辺りの位置づけというのはどうなるんでしょうか。これは事務局に聞いたほうがいいのか、私、誰に聞いていいのか分からないんですが。共用施設あるいはJAEAの施設、どういう位置づけですかね、JRR-3。
【大友ディビジョン長】 大友から分かる範囲で御説明します。JRR-3でも課題の一般公募というのが行われる予定でして、JRR-3のビームラインの中には東大物性研が、制度のことは忘れましたけど、運用しているビームラインもありまして、基本的には一般公募で、J-PARCと同等の、全く同じではないですけれども、全く別な組織ですけれども、審査が行われて科学的意義が評価されたものが実施という形です。基本的には、制度は違いますけど、似たような形の共同利用だと考えています。
【小杉主査】 物性研がやるとすれば、大学共同利用ですね。
【大友ディビジョン長】 そうですね、はい。JRR-3が来年立ち上がるということを踏まえて、J-PARCとJRR-3の連携をどうするかということも、J-PARCとJRR-3の物質科学研究センター等では行っておりまして、今後、有機的にうまく相互乗り入れみたいなことも検討していくという状況です。
【小杉主査】 この辺りは小型、中型の施設を含めて、特に小型は日本の特徴ですし、うまく連携取れる形というところを検討しているという状況ですね。
もう時間がないので、次はスライド4-2、19ページです。
【阪部委員】 お伺いしたいのですが、2030年頃にTS2の建設ということですが、TS2に関する要素技術は確立していると考えてよろしいのでしょうか。あるいはそれに関連して、まだ途上の新規の技術はあるのでしょうか。
【大友ディビジョン長】 大友からお答えします。この中性子が20倍の輝度というのは、実はモデレーターとかをまた特殊な設計にするということですし、ミュオンが50倍から100倍になるというのは、ミュオンの取り出しの、ソレノイドコイルみたいなものを中性子源に近づけるということがキーになっていまして、それぞれまだ設計等は初期段階と言ってもよくて、まだ何のテストも行っておりませんで、開発すべき要素技術としてはまだかなり、という認識です。
【阪部委員】 そのような要素技術の開発目標がちょうど10年後ということですので、その時に建設を始めることを念頭に考えますと、現時点で若い方がその技術開発に関わっておられるのでしょうか。人材が育つ非常に良い機会となるプロジェクトと考えるのですけが、その点いかがでしょうか。
【大友ディビジョン長】 はい。おっしゃるとおりだと思います。まだ十分に若手を投入するところまでは至っていませんが、御指摘のとおりだと考えていますので、その方向で進めたいと思っています。
【阪部委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 ほかにございますか。
【岸本委員】 岸本ですけど、よろしいでしょうか。先ほどの質問に続いてですけれども、TS2においては中性子強度が20倍ということですけど、放射光と比べると上昇代というのがどうしても一般には低く見えてしまうので、私なんかユーザーからするとこの20倍というのはすごい恩恵があると思っていまして、そういう恩恵が分かるような見せ方と、20倍にすることがターゲットになるのではなく、そのときにどんなサイエンスが生まれるのかという視点から、ぜひとも説明と、アピールといいますか、そういうところの目標を示していただけると非常に分かりやすくなるんじゃないかと思いますので、継続的にお願いします。
【小杉主査】 また1年後に同じようなフォローアップをしますので、その段階で資料等出していただくと助かります。
ほかに何かございますか。
あとはオープンデータですけど、時間もないので見ていただくということで、以前SPring-8のフォローアップのところで随分突っ込んだ議論をしていますので、そのときに少しMLFの状況の説明も頂いていますので、それが資料という形で出ているというところで、省略していいかと思います。
時間が押していますので、この辺りでよろしいでしょうか。全体通してこれだけは今日聞いておきたいというのがございましたら、最後、受け付けますが、よろしいでしょうか。
では、また1年後、フォローアップをいたしますので、今日いろいろ意見等もございましたので、MLFで対応していただくように、よろしくお願いいたします。
続きまして、議題2に移ります。議題2は、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方という、継続的にやっているものですが、事務局より資料の説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 事務局でございます。時間も限られておりますので、簡単に、これまでの我々の議論の流れというものを再度、確認しておきたいと思います。画面の共有は資料2を御覧いただけますか。
当小委員会では昨年、量子ビーム施設の調査を行いまして、その調査結果も踏まえて、施設ごと及び設置運営主体ごとに、様々な観点から現状をどう捉えていて、今後どのようにあるべきか、そしてその解決策や方法論は何かといったことを議論してまいりました。これまで、この1ページ目にお示ししております産学官連携、施設の役割分担、相互連携、海外施設との連携、オープンデータ・オープンアクセスといった点を議論してまいりました。
次回以降になりますけれども、小委員会におきましては、人材育成につきまして特に議論いただければと思っております。こちらには調査結果から抽出した議論の観点の例としてお示ししておりますが、次回までにはもう少し、調査結果の中から人材育成に係るものを抽出して、事前に委員の皆様にお送りさせていただいて、議論を深められればと思っております。
4ポツに今後のスケジュールをお示ししております。次回小委員会につきましては来月頃に、人材育成について議論を行うことができればと思っております。その後、7月か、あるいは8月、夏頃に、検討の方向についての論点整理及び中間まとめといった形のものを整理していきたいと思っております。その後、秋以降、最終報告に向けた検討を進めて、年度内に最終報告というまとめを作りたいと考えております。以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。あと、7ページ以降に、これまでのヒアリングのまとめで、前回のSPring-8、SACLAの中間評価のときの議論等もまとまっておりますし、12ページからは議論の論点がある程度まとまっておりますので、次回は人材育成に絞って、集中的な議論をしたいと思いますが、3月の委員会が今日まで延期になり、4月もできなかったということで、全体に予定が遅れぎみではあるんですけれど、しっかりまとめていきたいというところのようですが、何かこの点に関してございますか。
【阪部委員】 阪部でございます。この人材育成の件につきましては、先ほど文科省さんからもお話がありましたが、ぜひ事前のデータを欲しいと思っております。特に、人材育成という言葉は非常によく聞くのですが、具体的にどういうところの人材源が枯渇しているのかを分野を含めて詳細に頂ければ、議論がより効果的に進められるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
【小杉主査】 数字的に見えるように出すということですね、根拠データを。
【阪部委員】 はい。
【小杉主査】 感覚的には今まで議論していましたけど、数字という意味では具体的に出して議論したということはないので、いろいろ施設にアンケートを取っていますので、その辺りから引っ張れるものを引っ張ってきて、データとして足りないところがあれば、もう一度質問し直すとかいうところで準備するというところだと思います。
その辺り、事務局、よろしいでしょうか。
【對崎補佐】 調査結果の数字を中心に、少し、エビデンスとしてお示ししたいと思います。
【小杉主査】 一応この件は、今日はここまでとして、頂いた意見を踏まえながら次回に向けて準備いたしたいと思います。
最後の議題、その他ということで、特にこちらからはありませんが、何かございますか。いろいろ各量子ビームの施設のコロナの対応状況、そういうのを少し情報交換したいと思っていたんですが、時間がなくなりましたので省略いたします。
では、この辺で終わりたいと思いますが、最後に事務局から何かございますか。
【對崎補佐】 小杉主査、委員の皆様、本日は御出席どうもありがとうございました。事務局から連絡でございますが、次回の量子ビーム利用推進小委員会は6月をめどに開催を予定しておりますが、開催方法も含めまして、改めて主査と相談の上、委員の皆様に御連絡させていただきます。また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様に、いつもどおりメールにて御確認を頂きまして、その後、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただきます。本日の配付資料につきましても同様の扱いとさせていただきます。以上でございます。
【小杉主査】 今日はオンライン会議という形で初めてやってみたので、何か改善点等ありましたら事務局に伝えていただくとよいかと思います。
【對崎補佐】 そうですね。ぜひよろしくお願いいたします。
【小杉主査】 では、以上をもちまして第10期第36回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。
本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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