量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第35回) 議事録

1.日時

令和2年2月25日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 大型放射光施設(SPring-8)及びX線自由電子レーザー施設(SACLA)中間評価フォローアップ
  2. 我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について
  3. 次世代加速器要素技術開発プログラム事後評価について
  4. 第6期科学技術基本計画の検討状況について(報告)
  5. 日本学術会議マスタープラン2020について(報告)
  6. その他

4.出席者

委員

伊地知委員、内海委員、阪部委員、佐野委員、田中委員、岸本委員、小杉委員、高橋委員、山重委員、山田委員

文部科学省

角田科学技術・学術総括官、奥研究開発基盤課量子研究推進室長、對崎研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

理化学研究所放射光科学研究センター 石川センター長、理化学研究所放射光科学研究センター 矢橋グループディレクター、高輝度光科学研究センター 田中常務理事

5.議事録

【小杉主査】 ちょっとお時間早いですけれども、きょうは議題がたくさんございます関係で、皆さんおそろいですので始めたいと思います。
第35回量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。本日はお忙しい中、御出席いただきありがとうございます。
本日は、10名の委員の皆様に御出席いただいております。欠席者は、雨宮委員、石坂委員、鬼柳委員、近藤委員、高原委員及び宮内委員の6人です。ちょっと多いですが、10名の方に参加いただいております。
また、SPring-8、SACLAの中間評価フォローアップを実施いたしますので、施設の設置者である理化学研究所及び登録施設利用促進機関である高輝度光科学研究センター(JASRI)に御出席いただいております。
御紹介いたします。理化学研究所放射光科学研究センター、石川センター長です。
【石川センター長】 よろしくお願いします。
【小杉主査】 同じく、放射光科学研究センター、矢橋グループディレクターです。
【矢橋GD】 よろしくお願いします。
【小杉主査】 高輝度光科学研究センター(JASRI)の田中常務理事です。
【田中常務理事】 よろしくお願いします。
【小杉主査】 それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【對崎補佐】 事務局でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
本日の小委員会はペーパーレスでの実施とさせていただきますので、配付資料につきましては、お手元のPC端末をごらんください。
端末には、座席表、資料0として議事次第、資料1から5まで及び参考資料1、2を保存しております。
また、委員の皆様の机上の紙ファイルには、非公開資料として先日の量子ビーム施設の調査の集計に係る資料を置いておりまして、さらに昨年2月、第9期の量子ビーム利用推進小委員会で取りまとめたSPring-8及びSACLAの中間評価の報告書の冊子と、SPring-8でお作りいただきました「SPring-8持続可能な未来へ」という紹介のパンフレットを置かせていただいております。端末の不具合や資料等の不足はございませんでしょうか。もし会議の途中で何かお気づきの点や御不明な点、PCの不具合等がございましたらいつでもお声掛けをいただければと思います。
以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。きょうは1から5とその他ということで、1番目がSPring-8、SACLAの中間評価フォローアップで1時間程度予定しております。2番目が30分強、残りが5分から10分という感じで、最後の方は時間が短くなりますが、早速1番から始めたいと思います。
まず、趣旨等、事務局からお願いいたします。
【對崎補佐】 それでは、事務局より御説明をさせていただきます。
お手元にSPring-8及びSACLAの中間評価の報告書と、この後説明いただきます資料1をご用意いただければと思いますが、2018年10月から2019年2月の第9期の本小委員会におきまして、SPring-8及びSACLAの中間評価を実施し、報告書を取りまとめいただいたところでございます。
SPring-8は供用開始から20年が経過したことを踏まえまして、平成25年に前々回の中間評価を行っておりまして、その際の指摘事項の対応状況確認と、さらに次を見据えての主要事項、その具体的な推進方策の審議検討をいただきました。
また、SACLAにつきましては、運用開始から初めての評価であったことから、これまでの取組状況を確認するとともに、研究成果の最大化を図る上での課題や方策について審議検討いただいたところでございます。
お手元の中間評価の16ページをごらんいただけますでしょうか。こちらには4ポツとして、今後の重点的な課題及び推進方策について示されているところでございます。それぞれの項目につきましては、発展の方向性、また、今後速やかに講ずべき取組を具体的な取組として記載しているところでございます。
また、ページを進んでいただきまして、21ページに「おわりに」というところがございまして、こちらでは4ポツ等で、この報告書で検討を挙げてきた事項につきまして、中間評価で示された課題、推進方策ということで、適時取組状況のフォローアップを行っていくことが重要であるということで、今回、施設の運営主体である理研とJASRIから中間評価を取りまとめて1年間のフォローアップということで進捗状況を御説明いただくこととしたいと思っております。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
それでは、早速、理化学研究所とJASRIより、SPring-8及びSACLA中間評価報告書で示された指摘事項への対応状況等について御説明をお願いいたします。
【矢橋GD】 それでは皆様、よろしくお願いします。理化学研究所の矢橋でございます。きょうは、施設者 理研、登録機関 JASRIを代表いたしまして、私が発表したいと思います。
まず、最初の3ページは、お手元の資料のとおり、先ほど對崎補佐から御説明いただいた16ページから19ページの今後の重点的な課題及び推進方策ということで、事項がまとめてございます。
ここでは個別の事項については申し上げませんが、2つございまして、まず、色分けが3つありまして、実施中と実施に向けて準備中、それから検討中、これはある意味で難度に応じたものを色分けで示してございます。それからもう一つ、特出しと書いてある欄にローマ数字がございますが、これが後ほど具体的な事例として御紹介させていただきます。
ここに出されていないものは、今回、資料は準備してございませんが、皆様見ていただいて、後ほどこれは議論すべしということがあれば、是非よろしくお願いいたします。
それでは、早速1番目から始めます。経営基盤の強化という大きな項目がございまして、その中の指摘事項としまして、運営費の効率化に向けた取組を進めなさいと。特にこの中で、SACLAからSPring-8への電子ビーム入射の実施をやりなさい、進めなさいということが言われていました。その状況について簡単に御報告したいと思います。
もともとこれは、SACLAの線形加速器、SACLAはここにございますが、ここの電子を加速する部分で、この後アンジュレータがあってXFELを出すわけですが、その手前の電子を加速する部分のところからトランスポート、電子を輸送するXSBTというのを通って蓄積リングに輸送すると、こういうラインがSACLAの設計時に設置されておりまして、これを使うと実は非常にいいことがいろいろあります。
まず1つは、既存の入射器、これは今のSPring-8というのは既存のライナック、それからブースターシンクロトロンから電子ビームに入射していますが、こっちから打つことによって、これの運用を止めることができます。 既存の入射器はもうかなり老朽化してございますので、保守とか更新、それから運用コストの大幅な削減が可能です。
もう一つは、これは非常に性能の高い加速器ですので、この後、SPring-8-IIというアップグレードを計画しておりますが、そこにも対応するような非常に高い性能を出すことができるというメリットがございます。昨年度よりマシンスタディをやっておりまして、つい今月の頭に、実際にユーザー利用をしているときにテストに成功しております。これがそのときのトレンドで、ちょっと見にくいんですが、これは1日のトレンドを表していて、ここまでは月曜日の朝までマシンスタディをしておりまして、ここからユーザー運転を行いました。これがSPring-8の蓄積電流で、ちゃんとSACLAからビームを打っているんですけれども、それがしっかりキープされているのが分かります。
一方でSACLA側も、これは間欠的にビームを入れているので、ほぼ普段と同じように実験ができている。これはSACLAのXFELの出力を表していますが、これが2月4日に確認しております。来年度よりさらに本格的に導入を進めます。
一方で、ここはうまくいっているわけですが、その他の施設インフラ系も含めていろんな老朽化が進んでおりますので、その対策と一層の効率化を推進していきたいと考えております。
さらに、先ほど少し申し上げたSPring-8-IIになるといろいろな削減効果があって、30%以上の省エネ化が可能であると試算しております。
2番目、次に参ります。これも非常に多くの議論いただいたところですが、ビームラインの改廃と高度化をしっかり推進しなさいということを言われていました。それで、これに対して施設側ではかなりしっかり取り組んできているわけですが、今年度より、理研、JASRIの定期的な連絡会議、RJ会議と呼んでおりますが、これを設置しまして、ここの大枠について議論をしております。さらにこの会議の下に、 テクニカルな検討をするワーキンググループも設置して、今2つございますが、ここのワーキンググループには施設だけではなくてSPRUC、ユーザー側からも参加をいただいて、いろんな議論を進めております。
あと、もちろんユーザー側はここだけではなくて、ユーザー全体との対話も必要ですので、SPRUCの各研究会、それからワークショップ、シンポジウム等でユーザーと議論しながら計画を策定しておりまして、実は先週末、金曜日、土曜日にもSPRUC主催のワークショップがございまして、そこでかなりユーザーと施設で熱い議論をいたしました。
それで、具体的には、さきの中間評価で指摘されたのは、例えばビームラインごとのタコつぼ化が進んでいるとか、あとは装置が過度に重複しているんじゃないかとか、そういう課題が指摘されていまして、まず全体を見通すポートフォリオをしっかり作りなさいということを言われております。そのポートフォリオについてはRJ会議で進めておりますが、一方で並行して、直近の具体的なビームラインの改廃というところも進めないといけませんので、そこについて本日は簡単に御紹介したいと思います。
この下側が具体的なプランで、これが来年度、再来年度に今計画しているビームラインの改廃の大物案件でございます。関わる共用ビームラインとしては47番、9番、35番、20B2と4つございまして、細かいところは申し上げませんが、これがスケジュールになっておりまして、来年度の後半から再来年度の前半に掛けてユーザー実験停止期間というのも設けて、かなり大掛かりな改修をこれらのビームラインで予定しております。これが終わった後、再来年度の下半期は通常に復帰するということですが、ここは新しくなったビームライン4本で取り組むということになります。
ポイントとしましては、先ほどの装置の過度な重複とかいろいろな指摘がございましたので、まず当然、実験装置の配置の最適化というのを図るわけですが、最適化と同時に、上流側のX線を供給する光学系にも最近非常にいろんな進展がございますので、それをテンポラリーに、実験ごとにやるのではなくて常設します。光学ハッチという上流部分に常設しておいて、世界最高水準のX線の性能を簡便に供給することを可能にするということを計画しております。
それから、もう一つ、この3番目は非常に重要ですが、制御とかデータを取ってくるところとか、オートメーションとかロボティックス、こういったところのルーチンワークは、 とにかく、なるべく人が介在せずにオートマティックに質の高いことをそろえてやるということが非常に重要になってございますので、そこをしっかりやります。こういったことによってビームラインのスタッフのルーチンワークの負荷を軽減しながら、高いレベルのユーザーサポートを目指していきたいと思います。
あともう一つポイントは、これも往々にしてよくあるんですが、施設側は良かれと思ってやるんですけれども、実はユーザーにとってはそうでもなかったりすることがありますので、一気に全部やるのではなくて、段階的にやりながら、ユーザーからの声をしっかり受け止めて、方向性が正しいかどうかを確認しながら進めていきたいということを考えております。
次のページが参考資料ということで、HAXPESという装置がSPring-8上にいろんなところに散らばっていますが、 それを束ねる第一弾として、09の高度化の幾つかのポイントを示してございます。ここも中には立ち入りませんが、イメージとしましては、ビームラインの外側の例えばハッチとか基幹部については維持をしつつ、その中身をしっかり最適化して、例えば光学ハッチには専用のオプティクスを付加するということで、 非常に高い性能を簡便に実現するということを計画しております。
それでは、次に参ります。3番目としまして、オープンデータ・オープンアクセスのところも非常に多くの議論があり、いろんなコメントも頂いております。特にここでは、データポリシーの策定とかデータベースの構築、オープン化に向けた検討を進めなさいということが指摘されておりまして、我々の対応といたしましては、SPring-8のデータ・ネットワーク委員会というのを立ち上げました。これは昨年の8月に準備委員会、それから2月、これはまさに先週末ですが、第1回委員会というのを開催しまして、議論する場を作りました。ここには施設者、登録機関、各専用施設、SPRUCの代表者等によって構成されております。そこで最初のテーマとして、実験データの保持ポリシーという議論を進めております。ここもディテールには立ち入りませんが、要は、実験データは誰のものかとか、実験データを保持するのは誰の責任かといったところをまず決めようということで、基本的には、こういう共用施設でございますので、つまり、各ユーザー、所属機関があって、そういうユーザーが使いに来ているという施設でございますので、一義的には、例えば保持責任についてもユーザーの所属機関のデータ管理ポリシーというのがありますので、そこに従って各ユーザーに負っていただくというのが原則ではないかということで議論しております。
一方で、もちろん施設者もデータの効率的な利活用を図るためのインフラを作っていかないといけなくて、そこは当然、予算とか人的ないろいろなリソースの制約はあるものの、それもみながら各種のシステムを構築していくということを進めていきたいと思います。
一方で、特にこれからデータがどんどん量が増えていきますので、例えばユーザーの所属機関のデータ管理ポリシーに合うような形で全部やるというのはなかなか難しいことが予想されますので、施設者はデータシステムごとにデータの保持期限を定めることができる。具体的には、直近ではSACLAのペタバイトの非常に大きなデータのシステムからデータの保持期限の運用開始を計画しておりまして、そこでいろいろフィードバック等々を頂きまして、SPring-8に進んでいきたいと考えております。
続きまして、共用、理研、専用ビームラインの横断利用という項目が立てられておりまして、ここではそれぞれの枠組みを超えて横断的にビームラインを利用できる共用枠、共用ビームタイムの導入を検討しなさいということを言われています。実は理研ビームラインでは、既に共用枠があって、共用に一部供しているわけですが、専用ビームラインの方はどうかというと、現在まだこれは行われておらず、これに向けていろいろな枠組み、スキームの整備を今やっているところでございます。
一方で、仮にこの枠ができたとしても、中身をどうやって詰めていくかというのもやはり同時に考えていく必要がありまして、ここには横断的・効率的・適正な運用が可能となるような仕組みと書いてございますが、これは具体的に何を言っているかというと、専用ビームラインにある枠ができたとして、そこで運用を始めると、異なる色の予算で整備された装置が混在するということが想定されますが、そこでデマケを強く言い始めると、例えば共用の装置は共用の枠以外では使っちゃいけない、要は専用ビームラインとしては、専用ビームタイムの枠では使っちゃいけないよということになりかねないし、逆もしかりでございますので、そのあたりはやはりしっかり共用を図る、効率的にやっていくためにどうしたらいいかというところをあらかじめ考えておく必要があります。
やはりそこの基本的な考え方をいろいろなレベルで統一しておく必要があるのではないかと。これはもう少し大きな話になりますと、例えば次の科学技術基本計画等に向けても一層の共用化の推進ということも議論されていると伺っておりますが、それは我が国のリソースを考えるとマストでございますが、やはり実運用にもちゃんと支障がないような形で、お題目だけではなくて、しっかり中身の仕組みのところも議論しておく必要があるという認識をしてございます。
それで、次のページは、これも参考資料で、若干今のお話に関係しておりまして、SACLAにおける大強度ナノ秒レーザーということで、SACLAはもちろん共用施設でございますが、ここで言っている大強度ナノ秒レーザーというのは大阪大学のレーザー科学研究所の持ち物でございます。すなわち共用ビームラインにおける他機関所有機器を利用するということについて、今年度いろいろ阪大レーザー研とJASRIと相談しまして、運用をこのような形、もう少し具体的に言いますと、他機関装置を共用に使うときの位置付けがこれまで不明確だったのが、これを明確にしまして、ここで使ったときには阪大レーザー研の共同利用課題としても取り扱うという覚書を交わしまして、実運用を来期から始めるということで進んでおります。
次のスライドに行きます。新たな利用の仕組みということで、これも非常に多くの議論を頂きました。これまで原則としてピアレビュー、課題選定委員会を経て御利用いただいているわけですが、そうではなくて、例えばユーザーが利用料金を付加的に負担することで利用時間を確保する仕組み、例えば入口課金制度とここに書いてございますが、こういった柔軟な様々な制度の導入を検討しなさいと言われております。
それで、そこに関連することとして、新しい利用制度としましては、理研ビームラインにおいてはプロジェクト型の利用制度というのをこの3月より始めます。これはどういうものかといいますと、基本的に今まで理研ビームラインというのは理研の人しか使えない、例えば外部機関が本務の人も理研の客員研究員になる必要があるわけですが、そうではなくて、外部の研究機関が推進する研究プロジェクト、これは必ずしも理研とは限らないところも含んでおりますが、これが利用料金を支払って理研ビームラインを使用するという制度を始めます。早速、BL36XU、これはNEDOの燃料電池の専用ビームラインでしたが、これが3月より理研ビームラインに転換して、この制度を利用する方向で検討を進めているということを伺っております。
一方で、共用ビームラインも含めた広いところでは、複数のビームラインを単一の申請で利用したいというニーズが非常に多い、これは特に産業界中心で、先週末のワークショップでもかなり議論になりましたが、ここについては先ほどあった入口課金制度等いろいろな考え方ができると思いますが、もう少し整理と検討が必要なのかなということでございます。
次に行きます。6番目としまして、新たな研究領域の開拓及び利用者の拡大ということで、2つ御用意しておりますが、まず1つ目は、リサーチリンケージという仕組みを進めております。背景といたしまして、放射光の利用の領域は非常に広がっておりまして、実は既存のコーディネーターの先生にいろいろお願いすることもあるんですが、なかなか対応困難な事例がみられてきました。この仕組みでは、ここのSPring-8をハブとしまして、たくさんの大学とか国研とか民間会社等がネットワークを形成することで外から来た質問に適切なアドバイザーを見付けるようなスキームができないかと。そうなると、例えば新規参入者がどこに相談しても最適なところにたどり着けるような仕組みができないかということを検討しております。
既にここにある阪大、岡山大と協定を締結しておりまして、あと残りのこういった大学とは協議を進めてございます。
あと、海外との間も、ここ全体をハブとしまして、例えばSLAC、スタンフォードの研究所との間で合同大学院を作って、特に放射光の基盤分野を支える人材、これは世界的にも日本だけではなくて世界にも不足しておりますが、そこを支える人材をしっかり教育しようという構想が進んでおります。
それから、最後の事項でございますが、SDGsに関連付けた利用例ということで、これは先ほど對崎補佐からも御紹介がありましたが、お手元のこの資料でございます。これはいろいろな事例を、これまでもいろいろなパンフレットがございましたが、これはSDGsにひも付けて、これまでの、特に最近2年間のプレスリリースからピックアップしたものでございますが、こういったものを作っております。これを見ていただくと、恐らく新規の参入される方も利用の事例から、例えばどういったビームラインを使ったらいいかとか、どういう研究ができるかといったところも含めてガイドラインになるということと、大学への講義の副読本的な利用も活用いただくことを考えております。
以上でございますが、最後に1点、おまけというのがございまして、先々週に大型放射光施設の3極ワークショップという持ち回りの定例の会議がございまして、これがグルノーブルのESRFでありました。彼らESRFは1年前から加速器を止めて大掛かりな改修をして、ビーム運転を昨年末から始めたところでしたが、彼らのアップグレードの状況も見てきましたが、立ち上げ、もちろんいろいろあるんですけれども、おおむね順調に進んでいるという報告を受けています。実際に制御室を見学に行きまして、ここにダイレクターのセッテさんと加速器の親分のパンタレオさんがいますが、ここのモニターで217ピコメーターという、これは我々SPring-8だとおよそ3000という値なので、非常に所期の彼らの目的にかなり近いエミッタンスが達成されているという報告を実際に見てきました。3月からビームラインの立ち上げを行いまして、8月からユーザー運転を再開するということを伺っております。ということで、世界も非常に大きく動いているということで、フォローアップのプレゼンを終わりたいと思います。
以上でございます。
【小杉主査】 どうも手際よく御説明いただいて助かりました。
それでは、理研、JASRIからの御説明について質問、意見等がございましたらお願いいたします。順番にやっていきましょうか。まず、I番の経営基盤の項目で、SACLAを入射器に使った試みで何か御質問等ございますでしょうか。
これは、実際はSACLAのビームは全部入れているわけじゃなくて、捨てるものは捨てているわけですよね。
【矢橋GD】 そうですね。捨てるものは捨てているというか、 トップアップ入射のときは数分に1回ぐらいの間隔で打ち込んでいます。
【田中委員】 ゼロから100ミリアンペアまで電流をためるときは10ヘルツで六、七分です。
【矢橋GD】 10ヘルツですね。
【田中委員】 将来的には残りの50ヘルツ分をXFELのユーザーに振り分けるんですが、初めの段階では、とりあえず入射専用で運用します。100ミリアンペア蓄積後では、大体今だと1分とか2分に1回の頻度でSACLAからSPring-8に入射し、それ以外は全部XFELの生成に使われます。トップアップモードでは99%以上のビームはXFELの発生に用いられる、そのような時間分割の運用を実際のユーザー運転で既に実施しております。
【小杉主査】 こういう試みというのは諸外国では全くないですか。
【矢橋GD】 ないですね。これは今後の話になるんですけれども、SPring-8-IIのような、いわゆるローエミッタンスが小さいMBAリングというところは入射のところが非常に大きな課題になっていて、ESRFは何とかこなしているんですが、ただ、この後のAPSなんかは非常にトリッキーなことを考えていて、そこで勝負をするのはかなりリスクは高いわけですけれども、我々一番大きなリスクの一つの入射のところがこれでクリアできたと考えています。
【小杉主査】 じゃ、本当にエミッタンスを突き詰めていく施設にとっては、XFELを入射器に使うという1つの流れを作ったということですか。
【矢橋GD】 はい。そうだと思います。
【小杉主査】 何かその他ございますでしょうか。
【岸本委員】 質問でも何でもないんですけど、ちょうどこのときに私、実験でSPring-8に行っていたんですけれども、ほぼほぼ気づかなく使えており、すばらしいなと思いました。もうちょっとビームが揺らいだりとか何かあるのかなと思っていたんですけれども、全然気にならなかったので。コメントだけですけど、お伝えしたくて言いました。
【矢橋GD】 これは気づかれたらだめなので。
【小杉主査】 じゃ、この程度にして、次、II番のビームラインの改廃と高度化の実現の項目で、HAXPESの例もございましたけれども、何か御質問等ございますでしょうか。
これはほかにも予定されてはいるのですね。
【矢橋GD】 そうですね。これは第一弾でございますので、また今、検討しているところでございます。
【小杉主査】 これはSPring-8-IIを目指すフェーズにも入っていっているわけですか。
【矢橋GD】 そうですね。まずビームラインをしっかりやろうということです。
【小杉主査】 これだけじゃ済まなくて、SPring-8-IIをやることになったら、本当にいろいろ並列して処理していかないと。
【矢橋GD】 そうですね。そういう意味ではここの5番目に書いてございますが、やはり既存の入れ替えだけだとお手玉がちょっと難しいところもありますので、新しいビームラインの予算要求も常に検討していきたいと思います。
【小杉主査】 結局、SPring-8-IIの予算ということになるのですかね、新規ビームラインというのは。
【矢橋GD】 石川先生、コメントありますか。
【石川センター長】 ビームラインの改修ですか。
【小杉主査】 ええ、ビームライン。
【石川センター長】 つながるものも、つながらないものもあります。
【小杉主査】 つながらないのもあるわけですね。
私ばっかり質問していてもはじまりませんので、何か。どうぞ。
【山重委員】 最近、民間企業や大学、研究機関においてもイメージング実験のニーズが非常に高い状況ですので、特に、ビームライン47XUなどは、その専用ビームラインにしたいというお考えがあるのではないかと思っておりました。本件以外にも、同様にニーズの高い実験のビームラインを重点的にケアしていくような取組みがございましたら、ご助言いただけますでしょうか。
【矢橋GD】 47番、実は半分HAXPESが移動しまして、残り半分どうするかというのがちゃんと議論をこれからしないといけなくて、必ずしもイメージングが100%というわけでも、決まっているわけでもないんですが、おっしゃるとおりイメージングは非常に強化していかないといけなくて、その一環として、ここの20B2というところに多層膜モノクロメータというのを入れまして、これは今までシリコンのある意味で高級な分光器を使っていたわけですが、イメージング用途だともっとバンド幅が広くて、ピンクっぽいものでもいいよということなので、これでフラックス、少なくとも100倍明るくなると。これによって大きなビームで非常に精細な像が撮れるようになりますので、ここは大きな活用が期待できます。
あと、今おっしゃった47番とか20XUも混んでいるわけですけれども、そこも本当にイメージングのビームラインでやらないといけないことと、例えば今、スペクトラルイメージングのようなXAFSでイメージングするようなことが非常にニーズが高いんですけれども、そういったものは多分汎用の手法としていろんなビームラインでやりたいわけです。そこはそこでパッケージを作る。そこをしっかりポータブルな何かを作るのと、あと、やはりイメージング専用のビームラインでしかできない非常に凝ったこと、それをしっかり分けてソーティングしてやっていくことを今進めて、考えております。
【山重委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 どうぞ、山田委員。
【山田委員】 ちょっと細かな話になるかもしれないんですが、大物案件の1から5に理由的なものが書かれています。2に関して両方の装置の利用の相乗効果を図ると書かれていますが、それは何か、具体的にはどういうことが議論されているのでしょうか。
【矢橋GD】 NRSとIXSは、 装置としてはインデペンデントなんですけども、いろいろなこちらの体制であったり、議論の土壌として2つをペアで、セットで考えていきたいということを計画して、諸外国でもよくやっているようですが、やはりある意味で非常に、どちらも尖ったアプリケーションですので、それを施設全体としてしっかりサポートしていくための体制を作っていきたいと考えております。
【小杉主査】 ほかに何かございますでしょうか。ベンディングのラインは、今後も生かしていくという方針があるわけですね。結構SPring-8のベンディングのラインは多い方だと思うんですけど。
【矢橋GD】 ベンディングは本当に肝で、実は成果をじゃんじゃん出すのはベンディングのビームラインであるということもありますので、だから、今やらないといけないのは、そこについては光源とかオプティクスもさることながら、システム側、ここで言うところの3番目が非常に重要になっていきますので、いろいろなオートメーション、これはオンライン、ビームに触るところもそうですが、触る前の準備のところも含めて、例えばユーザーに試料を送っていただいたら、さっと流していろいろなことができるようにするシステムの構築を進めていきたいと思っています。
【小杉主査】 日本全体、放射光のビームラインのあたりの人の数というのは非常に少なくて、世界から見ると本当に比較にならないぐらいの少なさなので、自動化というのはマストのような流れが、放射光施設全体の動きではありますね。その辺の技術は、ほかの施設にも転用していくとか、そういうところをやっていただくと非常にほかの施設も助かると思います。
【岸本委員】 すいません、青色の停止期間中なんですけど、このときというのは、多分、装置の立ち上げだとか、いろいろなことをされると思います。例えばそのときに、パワーユーザーなのか、どういうユーザー層がいいのか分からないんですけど、スタディーのときに参加してもらって意見を聞くようなこととか、お考えは。
【矢橋GD】 はい。それは非常に重要なことで、要はこれが停止期間が終わって、さあスタートだと言って立ち上がるのはなかなか大変なので、そこはユーザーの皆さんにも御協力を頂いて、ある部分は一緒にやっていきたいと考えております。
【岸本委員】 ある意味、学生の子たちもそこに入っていると、いい教育の場にもなるかなと思ったので、質問をさせていただきました。
【小杉主査】 ほかは何かございますでしょうか。
次のテーマ、III番のオープンデータ・オープンアクセスの項目は、次の2番目の議題に入っていますので、ここはすっ飛ばして、IV番の共用、理研、専用ラインの横断的利用。この項目ではいかがでしょうか。
【内海委員】 10ページ、矢橋さんが非常に丁寧に整理していただいています。書かれていることは本当にシリアスですが、これを実現させるために施設者側でルール作りをするだけで何とかできるものでしょうか。それとも、国の会計制度や、極端なことを言うと法律の改正にいたるところまで何かお願いしないといけないとか、そういうようなことが顕在化しているようなこともあるんでしょうか。
【矢橋GD】 それは我々だけではお答えできないんですけれども、もちろん国にもいろいろ議論を頂かないといけないところがあると思います。ただ、たたき台としてはもちろん我々が作って、いろいろな形で見ていただいて、やっていく必要があるのかなと思います。
【内海委員】 御苦労よく分かりますので、またよろしくお願いします。
【小杉主査】 もともと専用ラインとして作られたものを後付けで議論するというのは結構難しいので、東北の方はそうなる前に議論できるんじゃないかと思うんですけれど、そのあたりは内海委員の印象としていかがですか。
【内海委員】 まさにおっしゃるとおりで、新しい施設をつくる次世代放射光において、そのあたりを最初からきちんとやっていかないといけないというのは、全くそのとおりなんですが、補助金を使ってやるという形が避けられないので、そうすると会計検査のことも含めて様々な厳格なルールがあるために、幾ら最初に施設者側で新しい枠組みを決めても、そこで跳ね返されるみたいな話がやっぱり出てくるのではないかと想像しています。このあたり本当に上手にやっていかないと、なかなか大変かなと。是非ともSPring-8におけるいろいろな事例を、教えていただければと思います。
【矢橋GD】 そういう意味で、ここにも最後に、繰り返しになりますけれども、基本的な考え方をまとめて、個別案件、個別判断もあるにしても、やはりベースとなる何かを共通で持っておくというのは非常に重要かと思います。
【小杉主査】 山田委員、どうぞ。
【山田委員】 今の話は、放射光施設だけでなくて、J-PARCの中性子も全く同じような課題を抱えていますので、やはり量子ビーム施設として、どう考えていくかというのを、間口を広げ過ぎるとよくないかもしれないけど、やっぱり同じような観点から考えていく必要があるんじゃないかと私は思っております。
【小杉主査】 ほかにございますでしょうか。
中間評価の報告書に出ていたかどうか分からないんですけど、専用ラインが維持できなくなったりして、しかも先端的じゃなくなっているとか、その辺は施設としてはかなり気にしないといけないというのがあったんですけど、そのあたりの議論はここには入っていないんですが、そのあたりについて何か考え方とかございますでしょうか。
【矢橋GD】 実はこの次のところに入っているんですけれども、これが方策の1つで、専用ビームラインをそれぞれで抱えるのではなくて、施設、例えば理研のビームラインとして扱って、そこに利用料金を払っていただいて、プロジェクトを使っていただくということにしておりますので、1つこういうやり方があるのかなと。
【小杉主査】 これは専用ラインだって自分で稼ごうと思ったら稼げるわけですよね。
【矢橋GD】 専用ビームラインを自分で稼ごうと思ったら稼げるんですけども、保有している限り維持管理のお金もかかるし、いろいろなところがかかるので、そこをどう考えるかということになると思います。あと、当然高度化にもお金がかかるので。
【田中委員】 その他に人も必要ですよね。ビームラインをちゃんとオペレートする。
【小杉主査】 そこは全部理研で対応するということに。
【矢橋GD】 そこはいろいろあります。理研で持つ部分もありますし、あと、プロジェクトのところで、要はエンドの実験周りは各プロジェクトがやる。基幹部は施設側が見るとか、そういう分担で進めております。
【小杉主査】 このやり方はJASRIではないわけですね。
【矢橋GD】 ここは理研ビームラインです。
【小杉主査】 共用ではないと。
【矢橋GD】 共用ではないです。
【小杉主査】 理研にはこういう制度は、ほかに例があるわけですか。
【矢橋GD】 これは初めて。少なくともSPring-8の理研ビームラインでは、こういった形は初めてです。
【小杉主査】 レーザー関係でも、いろいろな大学等もありますし、国の機関もあって、大学共同利用というか、阪大のような附置研もありますけれど、どうですか。レーザーの方でこういう動きというのは。
【阪部委員】 現状ではケース・バイ・ケースの対応をしていると思います。昨今はいろいろな外部資金を獲得して、これらの資金が混在して、それで運用しています。余り研究者側の部署などの立場で財源の色分けをするのではなくて、研究の目的で分けているのではないかと思います。全体として確立したルールがあるというのではないのではないかと。現状はそういうところかと思います。
【小杉主査】 共用施設の場合ははっきりしていますけど、共用じゃないところでどう共用的なことをやるかというのは、国としても考える必要があるかなと思いますけど、大学共同利用の場合は、民間は対象とはしていないですが、共同利用の空きがあれば時間単価で民間から利用料をとることはできます。大学に対しては無償利用と業務報告書に書かれているので、大学共同利用の有料化は突破できないんですが、こういう大学共同利用じゃない国の機関がこういう方式を始めるというのは、維持費をどうするかという大きな問題が国全体である中では、1つの制度として確立すればいいのではないかと思います。
議論が次の項目にも入っていますが、このあたりで、V番の共用関係の話と、横断的利用とか、利用の仕組みの項目に。利用の仕組みには、1つの申請書で複数のビームラインとかのニーズが書かれておりますが、いかがですか。難しい点はどこなんですか。
【矢橋GD】 ここは1つは、もちろんこういうもののニーズはあるのですが、これをやると当然、全体のパイが一定だとすると、 単一申請でやっている方のポーションが減っていくことになるので、そこをどうケアするかというのが1つあります。
もう一つは、この方式はもちろんいいんですけども、これをやるために何か縛りではないんですけど、何かが要るのではないか。つまり、何でもかんでもこれで受け付け出すと、またややこしいことになりますので、例えばそれのソリューションとなるかということの1つして、入り口課金ということを書いてございますが、そのあたり。また、入り口課金とか成果占有利用とか、このあたりは別のレイヤーで整理が必要になりますので、そこが少し時間がかかっております。
【小杉主査】 入り口課金制度というのをよく理解していないのですが。
【矢橋GD】 資料は今、用意をしていませんが、前回の昨年度の中間評価で御紹介させていただいたんですけれども、これまでは、成果占有利用と、成果公開優先というものがありまして、その辺が少し整理がされていませんでした。 中間評価では、 入り口側、つまり課題選定をスキップするということで入口課金制度という類型化をして、それから、出口も占有したいときは、出口も課金すると。いわゆる成果占有を入り口、出口両方に課金するということはどうかという考え方を御紹介したということでございます。
【小杉主査】 これはかなり件数的にはあるのですか。
【矢橋GD】 しっかり統計はとってありませんが、声としては非常に大きいです。
【小杉主査】 まだ現実的なところには至っていない?
【矢橋GD】 例えばワークショップ等々でも議論になりますし、例えば産業利用関係の報告会に行くと、本当に複数のビームラインを使ってやりましたという事例が非常に多いです。そのときに言われるのが、毎度毎度個別の課題を複数出して、ここは通った、ここは落ちた、そういうことがあるんですが、実はパッケージでやらないと意味がないということも結構多いので、何とかしてくださいということを言われています。
【小杉主査】 何かございますでしょうか。
物構研ではマルチプローブ課題というのがあって、複数のビームを併用する申請で放射光と中性子を使う場合には、それぞれ放射光と中性子で審査するんですが、どちらかが落ちたら全体がアウトというような結構厳しくなっています。しかし、そのやり方だと長続きしそうにないので、最近、全く考え方を変えて、×がついても△がついても、○にしていくような指導を研究所側でしてあげて、うまく実現していくようにしないと、複数のビームを使った研究というのは広がらないだろうという意識でやろうとしています。
SPring-8の場合、放射光の中での話なので、ちょっと違う観点かもしれないんですが、違う手法を組み合わせて研究するというのは普通やることなので、そういう受け皿は多分作るべきだと思うし、受け身じゃなくて、むしろ指導的に1つでも×がついても、サポートしてあげるというのをやらないと、特に産業界のニーズが多いのであれば、その辺は配慮が要るのかなという気はするんですけど、何かございますでしょうか。
【岸本委員】 この点というのは非常に昔からよくあるところで、産業だけじゃなくて学術領域でも同じなので、非常に難しいところだと思います。ただ、産業的にはもし複数じゃないとできないというようなことがあるんだったらば課題としてはかなり明確になっているんじゃないのかなと思います。その点で、ここに書かれている入り口課金制度というのは、明確な課題に対しては1つの解決策かもしれないなとは思います。
【小杉主査】 ほかに御意見ございますか。いいですか。では、VI番の項目の新たな研究領域の開拓、利用者の拡大。いかがですか。
【佐野委員】 このワンストップ的な窓口を作って、いろいろなニーズに対応する仕組みは非常に重要で、使う側もありがたいなと思います。うまく機能すれば非常にいいなと思っているんですが、先ほどの中性子とかも含めて考えられると思うんですけれども、1つ懸念しますのは、こういう絵で描かれますと、例えば産業界のユーザーは、企業の将来の研究開発の中身をお話ししてやっていくことになると思うんですけど、その場合、情報がいろいろなところへ出て行ってしまうような印象を受けるので、そこら辺の書き方の工夫なりが必要になるんじゃないかなと思っています。
【石川センター長】 御懸念の点は、いろいろなところから言われているところでございまして、この企業の青い丸を囲ってあるというのが、企業のグループとつながっているというところが1つの答えでございます。これは、一つ一つの企業ではなくて、業界団体のようなものが共通する課題を扱うということで、この絵になっています。
【佐野委員】 分かりました。
【小杉主査】 高橋委員、何かございますか。
【高橋委員】 今まさにそういうことだなと思って、今の石川先生の御説明ですごく腑に落ちました。そういう共通の課題というのは、やはり非競争領域というか、機密情報ではないことが多いので、そういったところで御協力できると、非常にいいことだと思います。
【小杉主査】 ほかにございますでしょうか。この合同大学院というのは、どういう形で理研ないしJASRIというのは絡んでくるのでしょうか。
【石川センター長】 これはスタンフォードに大学院を作っていただいて、理研、JASRIというよりは、むしろここにつながっている大学が単位互換制度等を使って、その学生さんに単位をあげられるような形ができないかということを考えています。御存知のように、理研ですと、その機能がないですから、このリンケージの中に参加している阪大等は海外の大学との単位互換制度を持っていますので、それを使って単位を出す形がとれればいいなと考えています。
【小杉主査】 そこでSPring-8での教育も入れられるのですか。
【石川センター長】 具体的には、このSLACのジョイント・グラジュエイト・スクールには世界中から講師が集まって、いわゆる最先端の教育をするということを今、考えているわけでございますが、その中にSPring-8からも理研、JASRIから何人か派遣して、その講師をする。あと、日本の学生さんを集めて、何人かを送り出すというようなことができたらいいなということで今、進めているところです。
【伊地知委員】 お伺いしてよろしいですか。そうしたときに、それは場所としては理研なんですが、教育課程ということになるので、そうすると、ここに関わっている大学の大学院が、例えば国際連携教育課程を作られるというイメージでよろしいですか。
【石川センター長】 場所としては、今、SLACを考えています。日本でやるのでなくて、世界中から集まりますので、サンフランシスコの郊外に世界中から集まる。あと、各大学が例えばスタンフォードと単位互換制度みたいなものを持っておりますので、その中でやっていくのかなということを今、考えています。
【小杉主査】 そこはヨーロッパの施設もジョインしているのですか。
【石川センター長】 はい。ヨーロッパからも参加希望があると聞いています。
【小杉主査】 スタンフォードの国際的なグラジュエイトコースに参加していくというところなんですか。連携……。
【石川センター長】 既にあるのではなく、一緒に作っていくという形だと思っています。
【小杉主査】 うまくワークすると非常にいいと思いますが、日本の大学の学生がどれぐらい行くかというのは、非常に大きな問題。
【石川センター長】 例えばKEKは、もう既にスタンフォードと加速器に関して合同大学院的なものを進めていると聞いております。それをお手本として、作業を進めているところです。
【小杉主査】 山田先生、御存じでしたか。所長として私の先輩なので。
【山田委員】 そこのところはフォローが全然できていないですね。聞いていらっしゃいましたか。
【小杉主査】 いえ、私、初耳だったので。
すいません、自分の所属しているKEKのところがよく理解していなくて、石川さんから教えていただきました。ちょっと調べてみます。
【佐野委員】 これは期間は例えば6月から9月とかの夏休みの期間にやるような、そんなイメージなんでしょうか。
【石川センター長】 はい、そのとおりでございまして、期間もそんなに長くなくて、2週間くらいの集中講義を今は考えています。
【佐野委員】 ちょっと参考事例として申し上げますと、私、実はインターナショナル・スペース・ユニバーシティーというところで講義をしたことがあるんですが、それは6月から9月まで開催されて、学生さんも出るんですけれども、世界中から宇宙開発のベンチャーとか若い方が集まって2か月ぐらい講義をいろいろな方から受けるのですが、何かすばらしい取組だなとそのとき思ったので、是非これも実現していただけるといいなと思っております。
【石川センター長】 どうもありがとうございます。
【阪部委員】 ちょっと教えてください。ここで言っています次世代人材育成ですが、ここで言っておられるのは、放射光を利用して科学あるいは技術の研究に携わる人材という意味と、施設そのものを管理運営あるいは新しい施設を開発する人材、という2つの面があると思うのですけど、後者の場合、主にどういった分野の方がこういう方面に進んでこられるのでしょうか。日本の大学のどういった学部学科、研究室からでしょうか。
【石川センター長】 御存じのように、施設の教育をしている日本の大学学部等はございませんので、オプティクスとか真空とか、基本的なところをやっている方を集めて、放射光をやる人に育てていく機能を持つんだと思います。
【小杉主査】 多分、中性子も放射光も、アジア、オセアニアではこういうことはやっていると思うんですけど、欧米とはやっていません。そういう意味ではKEKの加速器はやっていますけど……。
【石川センター長】 インターナショナルにつながるというのは、1つのオプションでございまして、本当にやりたいのは日本の中をつないで、特に近くに集まるのでなくて、遠く離れたところが有機的につながって、1つのリンケージを作ることが大切だと思っています。
【小杉主査】 学生にとっては単位互換で単位が取れるというのは、非常に魅力ある制度だと思います。
ほか、13ページ、14ページは。これはSDGs。この冊子はいかがですか。印象は。
【佐野委員】 よくできています。
【小杉主査】 かなりSPring-8には、こういう蓄積があると思うので、うまくまとめられたんだと思いますが、ほかの施設、放射光に限らず参考になる取組のようですね。
全体を通して漏れている議論等、何かございますでしょうか。オープンデータは次に議論いたします。いかがですか。全体を通してフォローアップという意味では、個々の細かいところじゃなくて、しっかりと中心的なところを御報告いただきましたので、順調に中間評価のフォローアップとして、いろいろな取組をされているということが分かった報告だったと思います。
ところで、事務局側でどういうふうにまとめるのでしょうか。この委員会でフォローアップしたということになるんですか。何か報告書等とか。
【對崎補佐】 いえ、定期的に中間評価をフォローアップするという形で行っているので、これはこちらの委員会で今行っている我が国全体を俯瞰した議論につなげていくという形でと考えております。特段、報告のような形でまとめることは考えておりません。
【小杉主査】 それでよろしいんですかね。
【奥室長】 中間評価をした後に、また5年たたないと何もフォローアップしないということ自体が問題で、せっかく中間評価をまとめていただいたので、その進捗状況について毎年度確認をした上で、その必要があれば指摘事項をJASRIあるいは理研の方に伝えて、それを持ち帰ってまた再度検討してもらうという、そのプロセスをローリングで回していきたいということで、今回設けさせていただいております。なので、特段中間評価の報告書のようなものを毎年作るということを考えているわけではありません。ここで頂いた御指摘をまた持ち帰っていただいて、来年度以降の改善につなげていただければと思います。
【小杉主査】 次に向けての改善点とか、もうちょっとこの辺はとかいうのはなかったんですけど、何か最後にございますでしょうか。
【田中委員】 ちょっと1点だけコメントいたします。先ほど来、海外施設との合同大学院云々という人材育成に関し、いろいろと話がされておりますが、現場として一番これに期待することは次の点です。日本には、そもそも加速器関連の講座も殆どないわけですし、X線の結晶やOpticsの講座もほとんどなくなってきている状況です。我々、現場が一番感じている危機感は、学生に分野のおもしろさ、研究の最先端、フロントローで何が起きているのか、どんなおもしろいことがあるのかという肉声を届ける機会がない事です。それで、単位がどうのこうのもありますが、ぶっちゃけ、2週間でそんなに勉強が捗るのかという話もあるわけでして。それよりは、最先端でどんなことが起きていて、どういうおもしろいことがあるのかという話題を、世界のトップを走っている先生方が、多角的な視点から提供する機会になると、若者をこの分野に呼び込む上で非常に効果的ではないかと思うわけです。学力がどうのというよりは、学生達に今後進む方向のヒントや新しいチャレンジに踏み出す切っ掛けを与えるだけでも価値はあるかなと思います。
【小杉主査】 ほかにございますでしょうか。
【佐野委員】 今のお話は非常に重要で、多分、若い方が海外を含めてキャリアパスを考えていく上で、非常にプラスになるんじゃないかなと思っております。
【小杉主査】 大体1時間ぐらい議論に使いましたので、予定されたお時間が来ました。先ほども申し上げましたけれども、中間評価結果への対応はいろいろ工夫しながらやっておられることが確認できたということで、また次の機会までにほかのところの取組も含めてお願いしたいと思います。
それでは、オープンデータの議論のところが残されていますけれども、次の議題2に関係していますので、移ります。前回に引き続き、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方についてになりますが、事務局より資料についての説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 それでは、資料2を御用意いただけますでしょうか。
これまで、当小委員会では我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方ということで、審議、検討を行ってきていただいております。資料2の1ページ目でございますが、今後の議論の進め方として、各施設の調査を行ったわけでございますが、それらに関しまして、施設ごと及び設置運営主体ごとに記しておりますような観点について、現状どう捉えているか、今後どうあるべきか、また、そのための解決策や方法論はどういったものがあるかといったことを議論いただいているところでございます。こうした議論や有識者の皆様方のヒアリング等を踏まえて、施設全体の整備計画や、これらの施設を活用した研究全体のポートフォリオ、運営主体に応じた国の支援の在り方、好事例の整理や横展開の方策等を検討していくこととしております。2ページ目は調査を行いました施設のリストを一覧にしてございます。
3ページ目以降の2ポツは前回までの議論の概要として、これまで御議論いただきました点について、論点と主な意見を簡単にまとめております。3ページ目が産学連携を含む利用者の確保や利用者支援の在り方、施設の役割分担や施設相互の連携といった点、4ページ目には海外施設・海外研究者との連携につきまして、前回、御議論いただきました点を記載しております。
5ページ目でございますが、本日御議論いただきたい論点としまして、オープンデータ・オープンアクセスの取組と人材育成という形で掲げておりますが、本日は理研及びJASRIからオープンデータ・オープンアクセスの取組についても中間評価のフォローアップという形で御説明いただいたところでございますので、まずはオープンデータ・オープンアクセスの取組について、データの使用目的や大規模化を踏まえて、施設ごとのデータベースの整備や、そうしたデータを施設間でどのように共有を進めることが必要であるか、あるいは、海外との連携に絡んで、どのようなデータをそもそもオープンにすべきかといったビジョンを示す必要があるのではないかといった点、SPring-8におきましては先ほどの説明にありましたように、実験データ保持ポリシーというものを策定した上で、データの種類や所有権を定義した上で、保持責任といったものを施設者とユーザー側で検討しているといったところでございますが、こうした点も参考にしながら、本日御議論いただければと思います。
また、人材育成につきましては、本日及び次回の議論まで引き続きとは思っておりますが、6ページ目に示しておりますような、そもそもどういった人材を必要とするかと、役割を明確化した上で、そうした人材を作るための教育プログラムはどのようなものが考えられるか、あるいは、潜在的な人材といったものをどのように発掘して、育てていくかといった点、そのために施設間の連携はどのようなものが考えられるかといった点を記載しております。
6ページ目以降はこれまで有識者からヒアリングを行ってきた中で、主な概要や意見交換の概要をまとめているところでございます。
また少し飛んでいただきまして、10ページ目以降は調査結果の中から抽出されてきた総論的な論点を、一通り参考として記載しておりますので、こちらも御参考という形でございます。
戻ってしまって恐縮ですが、本日は5ページ目のこうしたオープンデータ・オープンアクセス及び人材育成といった観点で御議論を進めていただければと思います。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。事務局より前回までの議論の概要、それから、本日の議論の論点、これまでの有識者ヒアリングの概要について説明がありました。
まず、前回までの議論及び有識者ヒアリングの概要について、何かコメント等ございましたらお願いいたします。何か気付かれた点はございますでしょうか。
産学連携等の話とか、それから、施設の役割分担、海外施設との連携等を議論してきました。あと、ヒアリングもレーザー、中性子、放射光を一通り聞いたところでのまとめになっております。特によろしいでしょうか。一応、いろんな問題点は出ているかと思います。
では、特に何もございませんでしたら、本日の議題として、次に今まで議論していない部分、オープンデータ・オープンアクセスの取組と人材育成がありますが、人材育成は議論を始めると切りがないので、まずは、先ほどSPring-8、SACLA関係で報告いただきましたオープンデータ・オープンアクセスの取組で、現状どう捉えているか、今後どうあるべきか、それから、解決策、方法論等の御議論をお願いいたします。いかがですか。
SPring-8、SACLAのお話がありましたので、そのあたりから議論していただいてもよろしいかと思いますが。SPring-8でいろいろ議論する際には、やっぱり利用者も含めて委員会等を開きながら詰めていかないと、結構難しい問題という認識になるのでしょうか。
【矢橋GD】 そうですね。
【小杉主査】 所有権の問題も必ずしもSPring-8で取ったらSPring-8のものであるというわけでは全くないという感じですかね。
【矢橋GD】 そこはいろいろ海外の事例も調査いたしまして、大きく分けて、我々が調査した範囲では、アメリカ型とヨーロッパ型とあって、アメリカは我々が今フォローしているやり方で、基本的には個々のユーザーが責任を持ちなさい、施設はリソースを考慮しながら頑張りますというスタイルです。ヨーロッパはむしろ施設が全部抱えますということで、その背景としては、やはりヨーロッパはEUの政策として、そこをしっかり全部統一的にやるということもあって、予算の手当てもあるので、そういうことができるんですけれども、なかなか今すぐ我が国でそういうことができる状況にはないので、まずはアメリカ型でスタートするかなということで、今、たたき台を作っております。
【小杉主査】 アメリカ型であっても完全に利用者にぱっと渡すというわけではなくて、施設側で、あくまでそれは原則で、保持するというのも別に公開するのではなくて、施設側である期間だけ保有するというだけの話ですか。
【矢橋GD】 そうです。それはいろいろな、まずはユーザーの便宜ということもありますし、あと、もちろん今、先生がおっしゃったように、オープン化というのはまた次の段階として議論があるので、そこに向けては個々ではなくて全体でやっていかないといけないのですが、ただ、議論のスタートポイントとして、そこも全部抱えるのではなくて、一義的にはまずユーザーですよというところを明確にしておきたいということでございます。例えば施設が関係するモニターのデータとかいったものは施設のデータベースがやる、ユーザーの持ち込んだ資料に由来するところはユーザーがやると、一応、最初の仕切りはそうなのかなということですが、これもあくまでもたたき台ですので、これで最終ということではなくて、やはり運用を見ながらいろいろ変えていかないといけないと思います。
【小杉主査】 東北放射光で何か考えておられますか。
【内海委員】 現状ではまだそこまで手が回っていないというのが実情です。SPring-8での前回のオープンデータ会合に出させていただいた感想ですが、予算と人の話のバウンダリーコンディションが一番大きいのだと思いますが、今の日本の状況を考えると、施設者側の人間としての立場でみても、SPring-8が今回出された結論というのは、まっとうなものだという気がしています。
現状では、原則、データはユーザーのもの、それで、施設者側は最大限の努力をもって管理する。ただし、これから膨大なデータが増えていくときに、未来永劫、施設者側はそれを責任持って管理せよというのは勘弁してねということなんだと思います。現実的な解としては、そこに帰着せざるを得ない。
ただ、一般論として、膨大なビッグデータを取っても、ユーザーが自分で解析して論文にするところは、それを加工した一部分だけのことが多い。実験によって得られたビッグデータを、別の人、次の世代の人、あるいはAIかもしれませんけれども、それらが解析をして、そこから何かを見出してくるということがそう遠くない未来にあると考えたときに、そういう大きなビッグデータまで全部ユーザーのものであって、そこへアクセスする際にいちいち元のユーザーの許可を取りに行くべきなのかどうかということは、恐らく将来的にいろいろ議論になってくるのではないかなと考えています。
【小杉主査】 アメリカ型の場合に、オープンデータ・オープンアクセスの考え方というのはどうなっているんでしょうか。
【矢橋GD】 ここは多分、向こうも議論をしている最中だと思いますが、幾つか技術的にも課題があって、今、内海先生が言われたように、どんどんデータが増えていくのですが、そのままばか正直にローデータを全部取っていくと大変なことになるというのがありますので、技術的にはデータ圧縮の技術、それも、ロッシーなのとロスレスなのと両方あって、どこまで許容するかというのがあって、そこはアメリカも含めて、あと、理研の神戸も含めて、いろいろなスタディーも今、我々も始めたところです。
あと、もう一つ、保存をどこに物理的に置くかというのも、本当にオンサイトにストレージを置くのか、クラウドにするのかもあって、そこもいろんなスタディーを始めています。
【小杉主査】 学術雑誌については、ヨーロッパはオープンアクセスでかなりきっちりやっていて、出版社がもうけを二重取りするようなことは避けるシステム作りをやっていますけど、そういうところにこういう実験データというのも関係してくるんでしょうか。論文のバックデータを集めている出版社もありますので、商売の道具にする方向も出版社によってはあるんですけれど、そういう中で施設としてどう取り組むかというのは結構難しい問題であります。
【高橋委員】 オープンアクセスというのは、一般的にオープンアクセスにしても著作権というか、所有権はやはりその人のものであるはずなので、今、SPring-8さんが説明されたような資料に依存するデータの所有権はユーザーにあるというところはリーズナブルだと思っていて、そこにアクセスをさせるかどうかを判断するのはユーザーの判断であって、ユーザーがオープンにしていいよということであればオープンアクセスにはなるけれども、所有権を放棄していないということだと思うんですよね。そこはそれで非常にクリアだと思うんですけれども、施設の方で集める施設側のデータというのは、自分はうまくイメージできなくて、そういったことは多分ユーザー側からすると、どうでもいいと言ったら失礼ですけれども、所有権を主張するつもりはなくて、ただ、それが今後の施設のインプルーブメント等に有効であるなら、どんどん使ってほしいと思うことなんです。
【矢橋GD】 これは若干ややこしくて、施設側のデータも当然ユーザーのデータの解釈、解析に必要となる場合が結構あります。そこはコンバインしていただいて、ユーザーデータとして扱っても構わないということにしています。ただ、一義的にはもともと所有権は施設にあると。
あと、前半のオープンのところもまさにおっしゃるとおりで、所有権はユーザーにあるということで、ただ、将来、オープンが本当にスタンダードになってきたときに、じゃあ、どういう運用をするかというのはまた別の話で、例えば原則、期限を決めてオープンにしますということで、ただ、所有権がユーザーにあればいいという考え方もあるので、そこは本当に運用を見ながらやっていく必要があるんだと思います。
【小杉主査】 話はずれますけど、研究不正問題で、実際は元データが違うんじゃないかという話にたどったときに、施設側がそういうデータを持っていないというのはまずいという意見も。
【矢橋GD】 そこが先ほどのリソースの許す限りということで、各ユーザーの機関がそれぞれ5年なり、10年なり、ローデータを保存しなさいと言っていただくのは結構なんですけれども、それが物理的にできるかどうかというのはリソースの限界があるので、そこは適宜こちらで判断をするということです。
【小杉主査】 個々の施設でこういうデータを抱えても本当に大変なことになるので、お金も掛かりますし。国側で何かそういう動きはございますでしょうか。EU方式で国内のデータを全て収集というのは言うのは簡単ですけど、実際は予算も掛かる話で。
【奥室長】 その前の、まず入り口の問題意識として、研究成果と研究データの取り扱いというのは基本だと思います。そのデータの取り扱いについて、施設側で今まで全くそういうポリシーがなかったことについて、どう考えるのかというのをまずはお聞きしたいと思うんです。そこはJ-PARCも一緒ですが。ですので、まずは大型施設におけるデータの取り扱いの問題について、その後に、当然ながら研究試料を持ち込んで、解析してという研究データの取り扱いをユーザーに帰属するというのは当然のことだと思いますけれども、そこを全てユーザー側に渡してしまって、施設側に何も残らないことについて、問題意識は何もないのかというのが2つ目です。
【矢橋GD】 よろしいですか。まず、1つ目は、今の瞬間を見られるとそうだと思うんですけれども、少し前に立ち戻ると、データといっても本当に小さいデータばかりだったんです。そもそもそこのデータを云々するという問題意識がなかったということです。だから、基本的には、取ったデータはユーザーのものだというのが暗黙の了解になっていたと思います。それが、例えばSACLAが運用をはじめて、ものすごいデータ量になって、そこに食うリソースが必要なのが顕在化してきて、じゃあ、このときにどうなのかということになって、 今の話にもつながっています。一方で、国の大局的なところでもデータの話があったので、そこが今、ちょうどコンバインした議論になっているなと思います。
もう一つは、施設に何も残らないのではなくて、施設としてはSACLAもそうなんですけれども、非常に大きなペタバイト級のデータシステムも準備はしていて、そこはもちろん使っていただくんですけれども、例えば保持責任がそこにあると言われると、それはなかなかしんどいよというお話です。だから、一義的にはユーザーの持ち物だけれども、施設としてはそれを活用するためにしっかりサポートしますという位置付けです。
【奥室長】 リソースの問題があるので、施設側に残っているデータをどう扱うかというのと、どれぐらいのものを保存しなければならないかというのは、それはそれでポリシーですので、そこをまさに議論してもらえばよいと思うんです。ただし、データの取り扱いについて、何ら方針がないということ自体が現時点では問題だと思いますし、かつ、このオープンデータ・オープンアクセスの話が世界的に出てきたのは2010年前後だと思います。そこに比べても10年遅いという感覚が私には。
【矢橋GD】 ヨーロッパは確かに進んでいるんですけれども、アメリカと我々を見ると、まあ、そんなにそこは違いがないということです。むしろ、我々の施設側の問題意識としては、本当に大きなデータが出てくるので、それは日本全体、いろんなところを見渡しても、やはり我々のところが圧倒的にデータが多いという問題意識をもっていて、先ほど申し上げたデータ圧縮のところもそうなんですけれども、先進的な技術開発もやらないといけない、だから、簡単にリソースをここで全部引き受けますとはとても言えないような状況になっているということでございます。それは多分、世界の先端の放射光、FEL施設も同じなので、もう少しデータが小さければぽんぽん決め事でいくんですけれども、彼らもかなり悩んでいるということでございます。実際に、今回の大型放射光施設の3極ワークショップでもデータの会議というのがサテライトで設けられました。 今までその手の会議はそれぞれ言いたいことを言うだけだったのが、今回はやはりちゃんと3極で考えないといけないねということで、非常にかみ合った議論がはじめてなされたということでございます。
【奥室長】 ここをテーマとして取り上げているのは、我々としての一つの問題提起です。だから、これをスタートに議論してもらえればよいので、現状、中間評価のフォローアップでSPring-8は説明していただきましたし、J-PARCは次だと思いますが、ここを出発点に、実際のポリシーとしてどう扱うかというのを、まさにここで御議論いただいたらよいと思います。
【石川センター長】 かなり昔はというか、20世紀にはデータを取ったら大体パブリッシュするものだったんです。それが、どんどんデータが出てしまって、パブリッシュされないデータが増えてきたというところが多分、今のデータポリシーの問題の最初にあって、今、多分、非常にたくさんのデータを取るんだけれども、それが論文に載るものって、本当の一部分になってしまった。そうでないものをどうするか、これから使えるのではないかという議論はずっとやっていかなければいけないんですけれども、だから、そういう意味ではおっしゃった2010年頃というのが分かれ目で、多分問題が発生したのはまた10年ぐらい前だと思うんですが、これからこの問題はどんどん大きくなっていきますので、何か真面目に考えなければいけないんだろうと思います。
【奥室長】 G8の場でオープンデータ・オープンアクセスというのが閣僚級で議論に上がったのは2013年前後だと思います。まさにデータがどんどん出てきている中で、その扱いをどうするのか、サイエンスのトランスペアレンシーと、あと、説明責任プラス挙証責任というんですか、研究成果がちゃんとバックデータにして裏付けられているものなのかどうかというのをきちんと確認する必要があるのではないか、検証可能性を高める必要があのではないかという観点で、多分データの扱いをきちんと管理しようという論調になってきたと思います。それが、今につながっているので、では、今の施設側のポリシーをどう考えるかというのは、出発点としてしっかりやったらよいのではないかと思います。
【小杉主査】 さっき質問しかけたんですけど、3極のところで画像データのフォーマットをそろえるとかいう議論もございますでしょうか。
【矢橋GD】 そこまではないです。むしろ、圧縮とかポリシーのことはありますが、フォーマットをそろえるという議論をし出すと、これは大体暗礁に乗り上げるパターンなので、各極いろいろな思惑があるので、それはしていないです。
【小杉主査】 でも、それがないとデータがオープンされても使えなかったりしますよね。
【矢橋GD】 そういう意味で、メタデータのところをどうやりますかというのはもちろんあります。逆に、 メタデータが決まって入れば、あとはフォーマットはコンバージョンができるので。
【小杉主査】 フォーマットという言い方が変でした。
【矢橋GD】 メタデータを残しております。
【小杉主査】 人材育成はやり出すと止まらなくなるので。いかがですか。オープンデータ・オープンアクセスにきょうのところは収めてよろしいですか、時間的に。ほかに何かこのデータ関係でございますでしょうか。奥室長からあったように、次回、J-PARCのものを聞きながら、少し方針を立てていったり、次回の宿題にして。
では、きょうのところはここで一旦止めまして、さらに、きょう議論していただいたところで御意見や気付かれた点がありましたら、随時、事務局にメール等で御連絡いただければと思います。この議論はまたまとめの形で出ると思いますので、お願いいたします。
では、議題3に入っていきます。前回もこの事後評価の報告書の形式について御説明いただきましたけれども、材料がなかったというところで、材料を提出していただいて、書面審議を実施いたしました。その結果、一部修正をしながらまとめられております。事務局より説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 それでは、資料3を御用意いただけますでしょうか。こちらは、今、主査からお話がありましたとおり、前回お示しした際に、研究課題の成果としてのサマリーが添えられていなかったということもありまして、大変失礼いたしました。その点は研究代表の田中先生と大垣POとも相談をさせていただいて、研究課題の開発の成果のサマリーと合わせて書面審議をさせていただきました。その際に御指摘いただきました点について、資料3に見え消しにて修正をしてございますので、簡単に御報告申し上げます。
資料3の3ページ目でございますが、こちらの研究開発の必要性というところで、本課題は平成28年度より実施しておりまして、課題を検討するに当たっては、第4期の科学技術基本計画を参考にしていたわけですが、その結果、評価している現段階においては、第5期の科学技術基本計画となっているので、その旨を両方明記する形で、両方の計画に沿ったものであるということを示しております。
少しページを送っていただきまして、7ページ目でございますが、有効性のところに民間企業の参画があって、課題解決に向けた成果が上げられたという点を有効性の観点に記しております。また、効率性の評価に関しまして、こちらは文科省の中のこうした評価を行う際の評価指針では、今回の次世代加速器プログラムは研究開発課題という位置付けになっていますので、研究開発課題に沿った効率性の評価項目とするべく一部の評価項目を削除した上で評価基準を修正し、その下の評価という形の記載にしております。
そのほか細かい点は、用語の適正化や紛れがないような形の修正にしております。
簡単でございますが、修正点は以上です。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。委員から頂いた意見というのは一通り反映されているという御説明がございましたけれども、書面審議もしておりますので、基本的にこの内容で承認となりますが、よろしいでしょうか。
では、特にこの場でなければ、一応書面審議はしていただいておりますので、事後評価結果としては、親会の量子科学技術委員会に提出することといたします。
それでは、議題4に進みます。
事務局より、第6期科学技術基本計画の検討状況について御報告がございますので、説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 それでは資料4と、参考として参考資料1、参考資料2を付けておりますが、基本的に資料4で御報告を申し上げます。
第6期の科学技術基本計画につきましては、昨年夏頃まで当小委員会でも議論をいただきまして、その結果を今、量子科学技術委員会でまとめた上で、文科省の総合政策特別委員会で議論しているところでございます。
現在の検討状況としてまとめられているのが資料4でございますが、当小委員会に関わる部分以外も付いております。それは参考資料2の方に全体版としてお示ししておりますので、資料4をごらんいただければと思います。
資料4の1ページ目は、文科省としての取りまとめを行っている総合政策特別委員会で取りまとめられている検討案の目次でございます。こちらの第1章から第7章までが研究システムの改革に関するものでして、後ほど御説明いたしますが、第2章の中に量子ビーム施設のような大型研究施設の在り方といったことが記載されております。また第8章は個別の研究開発の分野に関する推進の方策について書かれておりまして、こちらはいわゆる量子科学技術全体としての取組が記載されている章でございます。
続きまして2ページ目でございますが、こちらは第2章の中の世界最高水準の研究環境の実現という中で、基本的な方向性としてこうした大型研究施設のようなインフラが重要であるといった点が書かれております。
(2)具体的取組でございますが、こちらの中に最先端の大型研究施設・整備を広く利用できる拠点を戦略的に整備していくことの必要性、あるいはこうした先端的な研究設備を長期的視点で俯瞰して全体最適化して、研究基盤としての役割を明確化した上で中長期的な戦略に基づく戦略的な配置を行うといったことが記載されております。
3ページ目は、個別分野に記載されております第8章でございますが、こちらは光・量子技術というまとめ方の中で、(2)研究開発の方向性でございますが、我が国が強みを有する量子科学技術技術(光・量子技術)に関する基盤等を最大限活用して研究開発を行っていくと。その具体的な研究開発の例として、量子ビーム施設・設備の高度化といった点が記載されております。
また、2ポツの研究開発の戦略的な推進の際の留意事項につきましては、これは個別の分野に関わらず横串で必要な点として、人材育成、情報の管理、戦略的な国際協力の展開や拠点の構築といった点が記載しております。
最後のページに今後のスケジュールとしてお示ししておりますが、こちらの総合政策特別委員会の審議、議論が進んでおりまして、1月29日まで終わっているところでございますが、次回3月4日に最終取りまとめということで、年度内に文部科学省としての6期への打ち込みを取りまとめた上で、来年度以降、内閣府CSTIの6期の取りまとめの議論に打ち込んでいく、参画していくという形でスケジュールが組まれております。
以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
それでは、今の御説明について質問や意見等ございましたら、お願いいたします。何かございますでしょうか。
【伊地知委員】 すごく細かいことを聞いてもよろしいですか。
【小杉主査】 どうぞ。
【伊地知委員】 最初の方では「量子科学技術」と書いてあったと思うのですけれども、4ページの「世界に伍する研究拠点の構築」では「量子技術」と書いてあります。これは何か違いがあるということでしょうか。
【小杉主査】 いかがでしょうか。
【對崎補佐】 定義はなかなか難しいところでございますが、「量子科学技術」と書く中には、当小委員会で扱っているような量子ビーム施設というものも含んでおりまして、「量子技術」と単に記載しているものに関しては基本的に量子コンピュータや量子計測・センシングといった、量子技術イノベーション戦略の中に書いているものを位置付けております。
明確な定義ではないんですが、そういう位置付けで、この分野ごとの部分と、全体の部分を書いているということでございます。
【小杉主査】 ほかにございますか。
基本計画では、非常に重要な柱になるので、注意深く読んで、意見等がございましたらよろしくお願いします。
特に、いいですかね。章立てとしては第2章が「価値創造の源泉となる基礎研究・学術研究の卓越性と多様性の強化」と、非常にいいタイトルにはなっておりますが、中身はいかがでしょうか。
線を引いたり太字になっているところは、事務局の方で付けられたものですよね。
【對崎補佐】 そうでございます。
【小杉主査】 割と大型施設とか、その辺が中心になっているかのような感じなんですけれども。
【對崎補佐】 そうです。
【小杉主査】 タイトルからすると、やっぱり基礎研究・学術研究というのはそればかりではないので、そこの部分がどれぐらい書き込まれているかというところは。
【對崎補佐】 参考資料2が全体版となっております。かなり大部でございますが。
【小杉主査】 その辺も注意して読んでいただくということだと思います。
【對崎補佐】 こちらは現状の報告という形でございますので、もちろん文科省としての取りまとめはあるわけでございますが、政府全体の今後の6期に向けた計画は、また次年度以降に進んでいきますので、都度状況は御報告させていただければと思います。
【小杉主査】 では、特によろしいでしょうか。
たくさん残っているのでちょっとスピードアップしたら、時間的にはちょっと余裕ができてしまったのですが、よろしいでしょうかね。
では、最後の議題5に進めたいと思います。日本学術会議マスタープラン2020について報告ということで、私の方からちょっとお願いして話題提供という形で資料の用意をお願いしたところがあります。事務局より資料の紹介をお願いいたします。
【對崎補佐】 それでは資料5をごらんください。こちらは主査からもお話がございましたが、日本学術会議のマスタープラン2020が先日公表されておりましたので、その中から量子ビーム関係として挙げられた研究計画の、その中でもさらにヒアリングの対象となっていたものなどを抜粋してございます。
1枚目は、課題ごとにポツが打っていなくて恐縮でございますが、「重点大型研究計画」に2課題、「学術大型研究計画(区分1)」は日本学術会議の資料によりますと新規で立てられた計画、あるいは2017年のマスタープランから内容が改定された計画ということでございますが、こちらに4課題。また、「学術大型研究計画(区分2)」として、こちらは過去のマスタープランに掲載されたもので現在実施中の課題ということでございますが、こちらに1課題が入ってございます。
2枚目以降は、それぞれの課題の詳細についてホームページから抜粋をしてこちらに付けさせていただいておりますが、この小委員会の中でもたびたびお話のありました放射光関係のネットワーク、中性子関係のネットワーク等々の課題が、研究計画としてマスタープランの中に入れられている状況と認識しています。
以上です。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。ちょっと私から資料の補足なんですけど、1枚目のまとまっている、「重点大型研究計画」と「学術大型研究計画(区分1)」ということでピックアップされている6つの提案は、ヒアリングの対象になったものです。ヒアリングの対象にならなかったものも幾つか、放射光関係でもありますし、レーザー関係でも、あと低速陽電子もありますので、1枚目には書いていないんですけれども、各計画について2ページずつ提出されたものについては、ヒアリングの対象にならなかったもので量子ビームに関係するものも入っております。ちょっと見ていきましょうか、時間もありますので。
最初は、「大強度陽子ビームで究める宇宙と物質の起源と進化」ということで、これはJ-PARC全体でまとめた、KEKが出しているものですので、共用施設としての中性子・ミュオンのMLFのところが書かれているというよりは、KEKとして学術としてどう取り組むかというところで書かれております。予算上は、KEKの場合はJ-PARCで一括しておりますので、ニュートリノの計画、ハドロンの計画、中性子・ミュオンの計画が対象になってまとめられております。
これは、大規模学術フロンティア促進事業で既に予算が付いていますので、学術会議のマスタープランに出す必要もなかったんですが、大規模学術フロンティア促進事業として走っているものも日本学術会議の方で審査してくださいということで学術機関課から依頼があって、日本学術会議のヒアリングの結果、首尾よく重点に選ばれたというところです。フロンティア予算でしっかりやっていると学術会議としても認めたということになっております。
今後、文科省の方でロードマップのための審査をするので、日本学術会議でヒアリングの対象になったところは基本的には今週〆切りの審査書類を書いている状況です。そのあと、4月の下旬に文科省でのヒアリングがあって、そこで選ばれたものがロードマップという形で載って、学術機関課として予算を付けるか付けないかという話になる見込みです。ただし、違う形での予算化というのもあって、放射光学会で出していた東北の次世代放射光は3年前のロードマップに載る形にはなったんですけれども、最終的には学術機関課関係の予算ではなく科学技術の予算が付き、さらにパートナーの予算を加えてやっている状況です。
次はアト秒レーザー科学研究施設で、前回も重点に選ばれているもので、東大の山内先生が代表で出しているものです。これは多分、まだ予算は付いてないんでしょうかね。ロードマップに載ったものは予算を付けないまま放置しているわけにはいかないらしいので、そういう意味で日本学術会議としてもう一度重点に選んだという背景があるのかもしれません。
このあたりは、レーザーの学会等では何か議論はありますでしょうか。
【阪部委員】 既に東大とか理研さんなどがアト秒科学を推進しておられるということで、今後の展開次第ということかと思っております。
【小杉主査】 それから、次はヒアリング対象にならなかったもので、東北大学として東北放射光、次世代放射光に関係した農学関係の拠点を作ろうという計画になっております。こういうものが認められると次世代放射光の地域性も出るかなという計画にはなっておりますが、残念ながらヒアリング対象ではなかったということです。
次はMLFの第2ターゲットステーション。これは現状のJ-PARCのMLFで使っている中性子・ミュオンのターゲットとは別の2番目のターゲットを作って、強度を強くしたビームラインも作るというもので、先ほどの大規模学術フロンティア促進事業費と共用施設としての事業費で進行しているものとは別の計画として出されているものです。原子炉を使った中性子源から、こういう標的を使う中性子源に世界は移りつつあって、日本がそのきっかけを作ったんですが、J-PARCのMLF以上の性能を持つような施設もできつつある中で、ターゲットの大強度化を目指したものを作るという計画になっています。これもKEKから出しておりますが、JAEAとの連合の計画になっているかと思います。
次は極限コヒーレント光科学イノベーション。これは物性研で1つの柱になっているところで提案しているものです。物性研は大学共同利用ですので、こういう施設がすでにあり、その強化になっていると思いますが、これも学術的には非常に重要な提案だとは思いますが、残念ながらヒアリングの対象にはなっていないようです。
物性研のレーザー施設というのは、レーザーの学会等ではどういう位置付けになっているんでしょうか。ちょっと御紹介いただけると。
【阪部委員】 私も詳しくは存じませんけど、物性研としては特に超大型施設を所有しているというのではなく、個々のテーマに対応してテラヘルツ波とかX線とか、先ほどのアト秒も含めて取り組んでおります。装置としては小型・中型のものと用いてをいろいろな分野で研究を行っておられるのではないかと。物性研は共同研究拠点ですので、そういうことで分野の広がりを念頭に、このような提案をされているのではないかと思います。
【小杉主査】 補足ありますか、いいですか。
次は、ここでも量子ビームの1つに入れている低速陽電子ビームということで、これは学会が出しておりますが、KEKの物構研に低速陽電子の実験施設ができておりますけれども、コミュニティとしてさらなる大強度化という提案になっております。これも残念ながらヒアリングの対象にはならなかったというところです。
それから、次はパワーレーザーインテグレーションによる新共創システムの構築。これには関係されているんですよね。ちょっと説明いただいて。
【阪部委員】 これは、提案者は大阪大学のレーザー科学研究所を中心に、我が国の高強度レーザーのコミュニティがまとまって様々な階層の極限の物理とその応用、ここでは構造機能の探求ということが書いていまが、それを展開するための施設として、高強度、大出力、高繰り返しといった多様な用途に対応できるような施設を構築しようという提案かと思います。
これは、何年か前からJ-EPoCHという名前で提案されていたものを、さらに再構築されて提案されているのかと思っています。
【小杉主査】 これは大学の関係者及び量研、QSTが中核となってのオールジャパン体制ということですね。
次は中性子施設ネットワークというところで、これは前々回、鬼柳先生と大竹さんから説明をいただいた、小型・中型あたりで中性子源をネットワーク化するというところで、ゴールとしてはJ-PARCのMLFなどを含めて大きなところに持っていくものと思います。ただ、大学側には研究室ベースあるいは研究所、学部ベースで施設がありますので、そのあたりで連携とるために学会として出しているものと聞いておりますが、きょうは鬼柳委員が御欠席ですので、背景など説明できないんですけれども、山田委員、何か説明できますか。
【山田委員】 多分、傍聴されている金谷さんの方が知ってると思います。
【小杉主査】 特にありませんか。
【山田委員】 はい、特にないです。
【小杉主査】 次は、放射光学会でまとめた放射光学術基盤ネットワーク。今までは各施設同じようなことができるようにするという方向性もある中で、SPring-8、SACLA、それから東北にできる次世代放射光というのが先端を行くという流れができたわけですが、そのような流れを作ってきたのはPFを中心とする学術施設ネットワークという認識があって、学会で議論した結果、学術としてのネットワークで次の戦略を打ちたいというものです。現状、各施設がいろいろ苦労している課題もこういうところで解決したいという提案になっております。
これは中性子も放射光も同じなんですけれども、新しい大きな施設を作るというよりは、現状の施設を生かしながら次に目指す手を打っていきたいという両方の学会の強い要望が反映されているものだと思います。
最後は、ヒアリングの対象ではないですが、すでに動き出している次世代放射光のマスタープランの資料を学術会議からは出してくれということだったので、現状の説明をしたものになっています。内海さんが放射光学会の肩書きで書いたという形にはなっています。
以上、時間もあったのでちょっと丁寧に説明したんですけれども、全体を通して何かございますでしょうか。
【山田委員】 1つ前の、放射光学術基盤ネットワークというのは、面接、ヒアリングまでいったのですか。
【小杉主査】 ヒアリング対象でした。
【山田委員】 ヒアリングまでいったんですね。
【小杉主査】 ええ。1枚目のページに並べているのは全部ヒアリングの対象になったもので、パワーレーザーインテグレーション、MLFの第2ターゲットステーション、中性子学会と放射光学会が出した計画は、すべてヒアリングまではいっておりますので、ロードマップのための書類も今、締め切り間際ですけれども、書いているところだと思います。
何かございますか。この小委員会でも参考になるような取組が提案されているので、どういう予算が必要かというようなところも見ながら、小委員会の方でもまとめていかないといけない材料が入っています。
何もございませんようでしたら、本日の議題は以上になりますが、その他でございませんでしょうか。
【阪部委員】 すみません、最後に少しだけ意見をさせていただきます。きょうは時間が限られていましたので議論はございませんでしたけれども、人材育成につきまして、いつもこういう会ですと必ず最後に出てくるのですね。しかし、これは一番頭にあってもいいのではないかといつも思います。さきほどのマスタープランの話を聞くと、非常に大きなビッグサイエンス、これが何年も比較的長いスパンで実施されるときに、未来、10年後にやる人がいるのかと。皆さん、どの委員の先生方も同じ思いかと思いますので、やはり人材育成についてはどこかでこれだけを議題にするぐらいに集中議論して、具体的な提案、提言をしてもよいのではと感じます。
人材育成だけでマスタープランがあっても良いぐらいの状況ではないかなと感じております。個人的な意見ですけれども。
【小杉主査】 主査としても、人材育成は、きょうも残った時間でちょこっとやるよりはちゃんとやった方がいいという意識で飛ばしましたけれども、次回MLFのフォローアップがありますが、人材育成の議論も入れる予定ですかね。
【對崎補佐】 きょうのSPring-8の中間評価のフォローアップでもありましたけれども、当然そういう人材育成も関わってきますが、次回は阪部先生のおっしゃるとおり人材育成というものにフォーカスして、少し議論をしていただきたいと思っています。
【小杉主査】 ほかの議題がなければ1時間は取れる。あと、フォローアップで1時間という段取りでしょうかね。
【對崎補佐】 はい。
【小杉主査】 1時間で済むとは決して思ってないです。でも、まとめる方向を作らないと。今の問題点ばかりただ言ってても始まらないので、何らかの議論のための材料は要るかなという気がして、いろいろ事務局とも打ち合わせてはいますけど、委員の方々からも御意見頂いて、まとめる方向にしたいとは思っております。では、議題は以上でよろしいでしょうか。
あとは、事務局から御連絡等をお願いいたします。
【對崎補佐】 本日もどうもありがとうございます。次回の量子ビーム利用推進小委員会の開催につきましては、3月26日木曜日の14時を予定しております。またメール等で、議題も含めて御連絡をさせていただきます。
また、本日の会議の議事録につきましては、作成の上、委員の皆様に再度御確認をいただいた上でホームページに掲載する予定でございます。配付資料につきましても、非公開のものを除いて同様の扱いとさせていただきます。
また、本日、傘や上着等をお持ちになっていらっしゃる先生方が多いと思いますので、お間違いやお忘れ物なきようよろしくお願いいたします。
本日もありがとうございました。以上でございます。
【小杉主査】 では、以上をもちまして、第10期第35回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)