量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第34回) 議事録

1.日時

令和2年1月28日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 有識者からのヒアリング
  2. 我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について(調査結果まとめ)
  3. 次世代加速器要素技術開発プログラム事後評価について
  4. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、伊地知委員、内海委員、岸本委員、鬼柳委員、小杉委員、近藤委員、高橋委員、高原委員、山田委員

文部科学省

磯谷科学技術・学術政策研究所長、角田科学技術・学術総括官、奥研究開発基盤課量子研究推進室長、對崎研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 船守放射光実験施設長

5.議事録

【小杉主査】 そろそろお時間ですが、委員の皆さん、きょう、御出席の方はお集まりいただいておりますので、始めたいと思います。第34回量子ビーム利用推進小委員会です、開催いたします。本日はお忙しい中、御出席いただきありがとうございます。
本日は、10名の委員の皆様に御出席いただいております。石坂委員、阪部委員、佐野委員、田中委員、宮内委員、山重委員の6名の方は御都合により御欠席です。
また、本日は、有識者ヒアリングを実施する関係で、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所、放射光実験施設、PFの船守施設長に出席いただいております。
それでは、事務局より、配付資料の確認をお願いいたします。
【對崎補佐】 事務局でございます。本日も、お忙しいところ、また、お足元の悪い中、御出席、ありがとうございます。
まず、本日はペーパーレスでの実施でございますが、文科省内のPC端末の在庫不足がございまして、大変お手数でございますが、皆様に端末をお持ちいただくことになってしまいまして、申し訳ございません。配付資料の確認をさせていただきますので、先日、事務局よりお送りをしております資料をご覧いただければと思います。
また、紙での資料を御用命の方は、事務局までお申し付けいただければ、お渡しすることは可能でございますので、御連絡いただければと思います。
資料は、座席表と議事次第に続きまして、資料1-1が船守施設長の御提出資料、資料1-2が岸本委員の御提出資料、資料2-1がこれまでの有識者のヒアリングの概要資料、資料2-2が今後の進め方についての資料、そして、最後に、資料3として、次世代加速器プログラムの事後評価となっております。
御確認を頂けましたでしょうか。もし会議の途中で御不明な点等ございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。それでは、早速、議事に入りたいと思います。
議題(1)は、有識者からのヒアリングになっております。事務局より趣旨等について御説明をお願いします。
【對崎補佐】 今期の量子ビーム利用推進小委員会では、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方を検討する観点から、各施設の設置者や施設の利用ユーザーからの聞き取りを随時実施しているところでございます。
今回は、放射光施設関連をテーマにいたしまして、施設設置者のお立場から、フォトンファクトリーの船守施設長に、また、ユーザーとしてのお立場から、岸本委員に御発表をお願いしております。
【小杉主査】 それでは、まず、船守施設長より、20分程度で説明をお願いいたします。
【船守施設長】 御紹介、ありがとうございます。KEK物構研フォトンファクトリーの船守と申します。よろしくお願いいたします。
座らせていただいていいですか。
【小杉主査】 座って、どうぞ。
【船守施設長】 よろしくお願いいたします。
本日、私がここにお招きいただいたのは、恐らくSPring-8や新3GeV光源との比較で、我々はフォトンファクトリーを学術施設といっていますが、それ、どういうふうな違いがあるのかというようなことをお話しさせていただいて、日本の中での役割分担ということを考えていきましょうというような趣旨と思っておりますので、そういう観点でまとめさせていただいております。
早速、始めさせていただきたいと思いますけれども、まず、こちら、1枚目はフォトンファクトリーの歩みということで、一番左ですが、1978年にフォトンファクトリーは組織としては設置されたわけですけれども、もう隔世の感があるような、手書きとは言わないですけれども、おや?、というような計画の図があります。
その次のところに、1982年にラウエの写真が初めて撮れたというものがありまして、その後、ミッテラン大統領が来られたりとか、鈴木善幸首相が来られたりとか、そんなようなことが、ちょっと小さい字で見えないかと思いますけれども、まとめられております。
真ん中、ここのところ、実験ホールがすっかり空というような写真もありますが、現在ではもう満杯に埋まっております。違いを見ていただこうと、古い写真を出しています。
もう一つ、ここにAda Yonathさんという、リボソームでノーベル化学賞を受賞された研究者の方がおられるんですけれども、この方、我々フォトンファクトリーの象徴的な仕事をされているかなと。どういうことかと申し上げますと、彼女、最初、フォトンファクトリーで仕事を始めたときに、なかなかうまくいかなかったと聞いております。実験結果が全然出ないけれどもというところを、施設としてかなりずっと、10年ぐらいサポートし続けて、ノーベル化学賞をとられたということです。そういうことが我々の施設としては大切ということで挙げさせていただいております。
一番最後、2019年のところ、これは我々の施設の予算とユーザーの方の科研費の合算で造った新しいビームラインです。何もなかったところに、造ってそのままの状態が続いているのではなくて、高度化を繰り返しながら、新しい施設を運営している状況だという説明をさせていただきたいと思います。
続きまして、次のスライドですけれども、フォトンファクトリーの特徴をまとめさせていただきました。読み上げているとちょっと時間がないかなと思いますので、何しろ、開発研究、あるいは、人材育成、そういったところがとても大切だというふうに考えていますということで、一番下のところだけ読み上げさせていただきますけれども、「フォトンファクトリーは、学術研究と人材育成に適した条件のもと、それらに重点を置いた万能型で自由度の高い施設として整備・運用され、40年近くの長期にわたって成果を挙げ続けて」います。
共用の施設と比べて何が違うかといいますと、どちらも万能型なんですけれども、どこに重点が置かれているかというところが違うのかなということです。割と近いところもありますということを申し上げた上で、次世代放射光施設の建設が、仙台の方で進行していますので、このタイミングで、施設としての使命を再確認して、そのための機能強化を進めているというのが現状です。
我々、古い施設なんですけれども、世界的にユニークなビームラインを持っていたり、運転モードを持っていて、それが大切なんですというようなことを説明したいと思いまして、次に2枚ほどスライドを入れさせていただいています。
1枚目、これはvertical-wigglerというPFの特殊なwigglerを使った研究、あるいは、装置の例ですが、ビームサイズがホリゾンタル6ミリ・バーティカル70ミリと書いてあるんですけれども、放射光に詳しい方ですと、これ逆じゃないのというふうに思われるのではないかと。普通の光というのは横に広がっていて縦が小さいのですけれども、我々は特殊な光を出します。この光を使うことによって、ここに分離型の干渉計の模式図が出ていますけれども、この干渉計を、この図のような配置で設置できるんですが、これ、普通の光を使いますと、90度回転させてというか、立てて設置しなければいけなくなりまして、そうすると、高精度な実験ができなくなります。我々、その恩恵にあずかっていますので、広視野・高分解能位相イメージングで世界最高性能、何が世界最高かといいますと、小さい密度差を検知することにおいて、世界最高というふうになっております。もう一つここで強調しておきたいのは、これ、京都大学の先生がやっておられる研究だったりします。京都といえばSPring-8に近いわけですけれども、そこではできないものを、我々、やっているというようなことを御紹介させていただきたいと思います。
もう一つ御紹介させていただきたいのは、偏光核共鳴散乱で、これは新しい手法です。これもあえてSPring-8のお膝元のところで研究されている方の例を持ってきたわけですけれども、PF-ARのsingle-bunch運転というのが世界的にもユニークな運転でして、その特徴を生かしたものであって、他の施設ではなかなかやることができません。詳細を説明するのは省きたいと思いますけれども、リファレンスのα鉄に光を入れると、偏光した状態の散乱X線のビートが見えます。試料、こちらにあるんですけれども、この二つを両方同時に照射して出てきたシグナルというのはこの右下のようになっておりまして、これ、この上の二つを足したものが必ずしも下になっていません。この違いというのは、ここに書いてあるように、電子の軌道秩序がどうなっているかというのを知ることができるようなもので、なかなかユニークなんじゃないかなと。昨年の春から、こういう課題をしっかりやっていきましょうということで推進しているところです。
時間、結構思ったより進んでいるので、ちょっと飛ばそうかなと思いますが、次は、学術研究って大切ですよねということで、Googleで検索すると、5,000万件ぐらいぱっと出てくると。学術研究は研究者個人の探究心に基づくものですけれども、Number Oneだったり、Only Oneだという、そういう成果が出ると、それは普通の国民の人も喜んでくれるようなことになると思います。そういった優れた成果は偶然によって得られることも少なくないので、幸運を見逃さないような本人の準備とそれを可能にする余裕のある研究環境が必要かなというふうに思っています。
一方で、多分こういうところは、今日、御議論いただけると有り難いと思うのですけれども、近年、過度な選択と集中のために、重要な研究成果の創出が阻害されているというような指摘もありますし、実際、現場で見ていてそういう印象を受けております。
次に人材育成ですけれども、当然、人材育成も非常に大切です。「教育は国家百年の計」とかで検索すると、600万件ぐらい、ぱっと出てきます。国家の持続的な発展に人材育成が極めて重要なことは説明をまちませんということで、当然そうだと思います。現在も進化・成長を続ける放射光分野において、時間の掛かる人材育成を軽視してしまうと、日本の科学技術の発展に計り知れない損失を与えるということです。我々の施設では、人材育成を重視していきたいと思っておりますが、それでも近年、施設側と利用側の距離がちょっと広がってきているんじゃないかなという懸念があったりします。
先ほど伽藍とした写真をお見せしましたけれども、現在、PFには39ステーション、PF-ARの方に8ステーションありまして、フルになっております。不断の高度化によって競争力を維持しておりまして、年間3,000人(実数)ぐらいのユーザーがおり、550報ぐらい論文が出るというような具合です。また、設備利用収入、企業等から入ってくる収入が大体1.5億円ぐらいというふうになっております。
そういう意味で成熟期にあるのですが、成熟期を過ぎて衰退してしまうと、これは困ったことですので、我々としては、これから再誕生しましょうということで、第二黎明期と名付けてやっていきたいと思っております。1980年代に、最初の黎明期で開発研究をしました。この開発研究で新しい技術と人材が育って、それが後から造られた施設に供給されていったというのは皆さんが御存じのとおりかと思います。
今、またそういうようなフェーズに入っていくべきだろうというふうに考えております。日本の放射光施設間の役割分担の観点からもそういうことをやっていくことが必要だろうと。開発研究を重点化するというようなことを考えております。昔と違って、今は、施設が沢山ありますので、こういった開発研究みたいなところを、我々は長い期間続けていこうと、そういうようなことを考えている次第です。
我々、フォトンファクトリーの使命としては、開発研究を通して、世界の放射光科学を先導する新技術と若手人材を供給したいと。あと、先端基盤施設として多様な研究力を安定して支えたいと考えております。第二黎明期を迎えて、施設改編というのを今年度の最初に実施したところであります。
次のスライドは、これは共用の施設と学術の施設がどう違うかというようなところをまとめてみた図です。似たようなところも沢山あると思いますが、やはりそれでも大きく違うところもあるかと。そこを強調した図になっております。
研究成果が出るまでに、加速器、ビームライン、実験装置とあって、それを全部使って研究成果が出てくるわけですけれども、共用のユーザーは、どちらかといえば、エンドステーションのところから下流のところをうまく使って成果を上げる。それに対して、学術のユーザーというのは、ビームラインを造ることも含めて、その上流側にも関与しながらやっていこうというようなところが大きな違いと思っておりまして、フォトンファクトリーでは、「学術利用に適したハードウェア(加速器、ビームライン、実験装置)およびソフトウェア(利用制度)を整備して、放射光施設の持続的な発展とそのための人材育成、研究成果の創出に貢献」していますということになります。そういうことを今後もより際立たせていきたいなというふうに考えております。
次のスライドでは、こうした状況というのを放射光学会はどのように考えて、どのように後押ししてきていただいたかというようなことをまとめています。
放射光学会の会長というのは2年交代ですけれども、17代会長の村上先生は、All Japanで次世代放射光施設を実現するというようなお話をされていました。
18代会長の石川先生、SPring-8センター長は、PFとSPring-8とSLiT-Jを鼎立させると。これ、三つどれも大切なのでしっかりやっていきましょうという意味だと思います。鼎立させるって、ちょっと難しい言葉かなと思いますけれども。
19代の会長、小杉先生は、学術施設の役割を再評価するということで、マスタープランを策定されました。
20代の会長、現会長、朝倉先生、北大の先生ですけれども、放射光施設の3区分、これ、マスタープランの中に3区分というのが出てきますけれども、それを更に進展させていくように協力したいということを言っていただいています。
昨年3月に、第1回の拡大放射光施設代表者会議というのが開催されまして、今年の4月に第2回が開催されると聞いておりまして、量研室からも御参加いただけると伺っておりますけれども、そういったところで、日本全体の役割分担を、こういう審議会とは別に、ボトムアップでもやっていこうということを考えているところです。
放射光学術基盤ネットワークというのがこのポンチ絵にまとめられていますけれども、真ん中のところに学術の施設があって、汎用施設と、先端的な施設と、というふうにあります。細かい説明は省きますけれども、すごく細いビームもとても大切なんですけれども、ここの我々が担っているようなところは、色々な用途に使える自由度の高い光源というような位置付けになっております。
こういう放射光学術基盤ネットワークというような考えを更に発展させようということで、その中でフォトンファクトリーの将来計画を考えています。それについても少し紹介させていただきます。
その1枚目ですけれども、どういうものを我々は学術施設として整備すべきかということをまとめています。研究者が開発・利用研究を通じて自らレールを敷き、未知・未踏の世界を開拓するための施設。何か結果が見えているものではなくて、やりながらどんどん追い求めるものが変わっていく、そういうような少し余裕を持たせたような施設が大切であろうと考えています。言い換えれば、それは研究者の個性を開花させる施設であろうということになります。
新しい施設を整備するにはとてもお金が掛かりますから、いきなりというのは難しい、とよく分かっております。まずは利用制度等の運営面の整備を先行して開始しているというのが現状です。
もう一つ、将来構想や将来計画を考えるに当たっては、今まで、こういう審議会などでも、輝度を上げていきましょうというような議論がされてきたかと思いますけれども、重要なのは輝度だけではないのではないかと。少し違う方向で役割分担していきたいという中で、我々は、自由度や安定性というところをきちんと担っていきたいと考えております。それをやることによって、色々な実験ができますので、それにより研究者が自由な発想に基づいて研究するというようなことで、第二黎明期の開発研究ができると考えています。
具体的にどんなことを考えているかということですけれども、まず、短期計画としては、先ほどのマスタープランの放射光学術基盤ネットワークの推進と、最後に資料だけ付けていますが、物質構造科学研究所の中に量子ビーム連携研究センターというのが次の4月1日に設置予定なのですけれども、これ、J-PARCなんかも一緒にやっていきたいねという、そういう話ですけれども、その新センターに資するような、PF高度化計画、及び、開発研究専用ビームラインというのを実現していきたいと考えております。
長期計画としてはどんなことを考えているか? 多分、対外的にこういう話をするのはここの場が初めてで、ここまで踏み込んで書いちゃっていいのかなと思ったんですけれども、我々KEKは、加速器に強いバックグラウンドがありますので、KEKじゃないと日本国内では難しいであろう超伝導リニアックと、あと、Hybridリングというのが下に書いてあるんですけれども、これ、ちょっと新しい概念だと思いますが、そういうものを中核とした放射光コンプレックスの検討を開始しております。
このHybridリングがどういうものかという御説明だけ簡単にさせていただくと、汎用性と先端性をきちんと共存させた究極の可変光源です。可変光源というところがまた一つ大切なところでして、この意味は、下に書いてあるのですけれども、ストレージモードという普通の蓄積リングとして、第三世代、つまり、今のSPring-8ぐらいの性能の光と、あと、ある性能面で特別にすぐれたようなシングルパスモードという光を両方同時に一つのリングで使えるように運転しようと、そういう計画です。
実際に、例えばこのシングルパスモードでどんな性能が出るかというと、改良していくと、もっと性能は上がると思うんですけど、当初性能として、エミッタンス100ピコメートルラジアン・バンチ長50フェムトセカンドぐらいが目標と考えています。この50フェムトセカンドというのは、普通の蓄積リングでは達成できない時間スケールです。SLiT-JとかSPring-8-IIなどでもできませんので、役割分担をしていきたいと。これに関しては、超高速の時間分解の実験ができるようになるだろうというふうに期待しているわけです。
PF高度化計画に関しては、我々、今あるリングを高度化して、Only One、あるいは、Number Oneのビームラインを新設したり増強したり、ということを考えております。現在のPFの特徴である高強度パルス軟X線、高強度コヒーレント軟X線、高強度インコヒーレントX線、垂直偏光X線などの性能を強化して、それを生かした実験をしていきたい、そういうビームラインを造っていきたい、ということです。
開発研究専用ビームラインに関しては、これは日本の放射光施設の持続的な発展を可能にする、そういうビームラインだと思っております。利用者の皆さんに使っていただいているビームラインというのは成果を出すということがどうしても重要ですので、それは学術施設である我々もそうなってしまうということです。開発研究をきちんとやるには、専用のビームラインを造った方がいいと思います。長期的成果の創出のために、開発研究に適したビームラインを造ることを考えております。
また、最近は、若い人に頑張ってもらおうということで、予算を優先的に付けるということがあるかと思います。とても素晴らしいことだと思うのですけれども、そうした予算で作った装置を実際に試せないということになってしまうと困りますので、そういうこともできるような、ビームラインを整備していきたいなというふうに考えております。
次のスライドは、時間の関係で飛ばしたいと思います。これは共用施設でもやっているようなことで、我々も同じようなことを結構高いレベルでやっていますという御説明のためのスライドでしたけれども、割愛させていただきます。
あと2枚ですけれども、1枚目には、フォトンファクトリーが直面している現在の困難をまとめています。現在、国内外で放射光施設の建設が進められている、そういう状況にあると思いますけれども、そういう状況を鑑みますと、フォトンファクトリーが使命とする新技術と人材の輩出、その重要性はますます増加しているというふうに考えています。
一方で、この10年間で運営予算が大体半分ぐらいになってしまって、運転時間までも削減することになってしまっております。このために、学術施設としての使命を遂行することが難しい状況にあります。高度化された設備、我々は不断の努力によって高度化してきていますので、そういった設備の有効利用の観点からも、人材活用の観点からも、現状では、国として大きな損失を発生させていると言わざるを得ないということです。
最後に、フォトンファクトリーは、国が整備して大学共同利用機関が運営する先端基盤施設です。将来計画のための「先端」予算は競争的であって然るべきと思うのですけれども、運転経費をはじめとする「基盤」予算というのは安定的に措置されるように、今後、制度改革が進むことを、とても期待しています。ここのところ、一番、御議論いただきたいところです。
最後、これはまとめで、今まで話したことを整理しただけです。お時間の関係もありますので、割愛させていただきます。
どうもありがとうございました。
【小杉主査】 参考資料、2枚ありますけど、簡単に説明いただけますか。
【船守施設長】 参考資料の1枚目は、量子ビーム連携研究センターという物質構造科学研究所の中に来年から設置される予定のセンターについてです。1名だけですけれど、准教授を純増でいただけるということになっています。ポストをいただけるということで、それをコアに、あるいはテコに、我々、物構研という立場からすると、放射光だけではなくて、中性子、ミュオン、低速陽電子とありますので、それらをうまく連携して機能させていくためのセンターを考えております。発掘型共同利用とか、テーマ設定型共同研究、マルチプローブ若手人材育成というようなことを掲げて、新センターを始めるというような話になっています。
2枚目、KEKは大学共同利用機関法人ですけれども、その下にある物質構造科学研究所、これが大学共同利用機関で、ここが運営しているのがフォトンファクトリーです。その大学共同利用機関の位置づけがどのように変遷してきたかというのを簡単にまとめた資料になっております。
以上です。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
それでは、今の御説明について、質問、意見等ございましたら、よろしくお願いします。
【雨宮主査代理】 それでは、幾つかあるんですけど、ちょっと細かいことから。
vertical-wigglerの話が出ていましたけど、ページ数でいくと、これは今、こういうのをやっているのは世界でPFだけですか。PFに最初からあったというのはよく知っていて、こういう水平面でなきゃできない実験には適しているというのは知っているんですが、ほかの施設というか、外国ではどうなのかということを。
【船守施設長】 私の承知している限りでは、海外の施設にもありません。日本という意味ではなくて、世界で唯一だと思います。今後、低エミッタンス化が進んでいくと思いますが、それと相反する話ですので、こういうのは余計なくなっていく方向だと考えます。
それに対して、我々は、こういうものもやりながら、先端性も生かせるような施設を整備していきたいなというふうに考えていると、そういったことです。
【雨宮主査代理】 そうですか。分かりました。
低エミッタンスを目指さない方向があるという話と抱き合わせると、こういうvertical-wigglerというか、バーティカルポラリゼーションのものをより積極的に作ってビームの特徴としていくと、非常に特徴が出るのかなという思いもあったんですが、そういう計画はあるんでしょうか。
【船守施設長】 これ、挿入光源のビームラインなんですけれども、現状のPFですと直線部が限られていますので、新しくもう一台、vertical-wigglerを入れるというのはなかなか難しいと思います。このvertical-wigglerが設置されているビームラインをもうちょっと整備して性能を上げようというような話はあります。
また、長期的な将来計画では、こういったものは我々の特徴ですので、一つのリングに、二つ整備するとか三つ整備する、そういう可能性は検討していきたいというふうに思っております。
【雨宮主査代理】 それから、じゃあ、別なことなんですが、予算が減って、その結果、運転時間が短くなっているというのが問題というか課題だったのは私もよく理解しているつもりなんですが、そのときに、PFとARとを一緒に運転して、それぞれのビームタイムを確保することと、例えばPFだけでARを止めて増やすと。そういう幾つかの選択肢があり得るのか、何かもちろん予算が増える努力をするというのは一番でしょうけど、与えられたギブンの予算の中で、二つのリングのオペレーション、どういうふうにしていくのかということについては、どういう方針というか、どういう現状なんでしょうか。
【船守施設長】 現状の予算はかなり厳しいので、PFに比べてビームラインの数が少なく、かつ、電気代もといいますか、消費電力も高いPF-ARというのはなかなか苦しい状況にあると思います。
そういったわけで、現在、PFのユーザー運転時間、ユーザーが使える時間が、PFでは3,000時間、ARは2,000時間になっています。その中で、さらに、ARは、これまで6.5GeVで運転していたんですけれども、5GeV運転というのも始めまして、6.5GeVと5GeVを半々でやっております。
それによって、もちろん制限される実験もあるのですけれども、最低限そのぐらいの時間は運転したいというふうに考えております。その中で、やはりここじゃないとできないというものをきちんとやり、育てていくということが継続するためには必要なのかなと。他でもできることをやるというのでは説明責任が果たせないと思いますので、そういった意味で、SPring-8だとかAPSだとか、そういうような高エネルギーを出す先端的な施設でもなかなか難しいものを強化するということで、そのような研究の重点化を進めております。
予算のことは、私、施設長として努力したいと思っておりますが、自分がどうしたいというので決まるものではありませんので、そのときには検討していかなければいけないのかなというふうにも思っております。
【雨宮主査代理】 確認ですけど、ARのやっぱり特徴は、シングルバンチというところで差別化していこうという方針ですね。
【船守施設長】 はい、そう思います。AR、今、必ずしもシングルバンチをきちんと生かした研究というのが多いかというと、それほどでもないと思います。高エネルギーというところを結構やってきているところがあると思うんですけれども、役割分担を考えますと、シングルバンチをしっかりやっていくというのが我々としてやるべきことだと思っておりまして、そういうところに私自身は力を入れて、現状、進めております。
【雨宮主査代理】 どうもありがとうございました。
【小杉主査】 SPring-8の次期計画とか、東北の計画でも、時間分解のところは諦めて、低エミッタンスというところに集中しているので、多分そういう意味で、時間分解を重視しているというのは意義があると思います。
【船守施設長】 そうですね。先ほども出てきた長期計画のところですけれども、リング型でビームラインが沢山あって、それで、50フェムトセカンドみたいなバンチ長の光という計画は他にないと思いますので、そういったところをきちんとやっていけるといいかなというふうには思っております。
【小杉主査】 この委員会は、量子ビームの利用を推進するという観点が中心だと思うんですけど、施設サイドの人材育成という面では、単に利用するユーザーの教育、人材を育てるという以外に、こういう施設の人材を育てて、ほかの施設に出していくということに、技術を含めて、移転していくというのは割と学術機関が重要かと思うんですけど、そういう観点での御意見ございますでしょうか。
例えば、開発研究専用ビームラインなんかも、多分、日本の放射光施設ではっきりそれを掲げているところはなく、人材育成含めて、重要なファクターになり得ますが、何か御意見ございますでしょうか。
【近藤委員】 今お話があった開発研究専用ビームライン、非常にすばらしいアイデアだと思うんですけれども、こういったものを動かしていく上では、やっぱり動かす仕組みが大事だと思うんですが、その中で、特に人を呼び込んで、そして、人をきちっと定着させて、また、その人たちが新しい人たちを呼び込んでというようなサイクルを回していけるような仕組みが大事かなというふうに思うんですけど、そういうことに関して、何かソフトウエア的な面で、この開発研究専用ビームラインを動かしていくアイデアみたいなものはございますでしょうか。
【船守施設長】 正直なことを申しまして、そこのところまで検討できていないというのが現状ですが、一番大切なのは、どれだけの機会を、機会というのはチャンスを、若い人に、あるいは、技術開発をしたいと言っている人に提供できるかということかと思います。
その意味では、今は、専用ビームラインを一つ造ろうという話で、そこまでしか計画としては出していませんけれども、できれば複数あった方がいいと思いますし、ビームタイムも延びれば、その分、できると。そういった中で、いろいろとやり方を考えていきたいと思います。
開発研究専用ビームラインの動かし方について、まだ検討は十分じゃないのですけれども、共同利用実験のPACというのがございまして、新しいやり方をしていくというか、今までとは少し切り換えて、より開発研究ですとか人材育成が発展するような仕組み作りをしていこうということで、私自身、着任したのがこの4月なのですけれども、この1年を掛けて、PACでの議論を進めているところです。開発研究専用ビームラインに関しても御指摘のとおりだと思いますので、完成する頃には、きちんとそういう仕組み作りをしたいなというふうに考えております。
【小杉主査】 中性子とかレーザーでこういう上流側はしっかり用意して、下流側は開発に使うとかいうような考え方はございますでしょうか。
【鬼柳委員】 J-PARCには、10番、NOBORUというのがあって、そこはいろんな実験ができるようにというふうになっています。だから、あそこで強磁場の実験とか、革新的な、そういう実験を進めています。
【小杉主査】 SPring-8でこういうのはない?
【雨宮主査代理】 これは理研でそういうのを作ろうと、開発ビームラインで。
【小杉主査】 PFの話は共同利用のビームラインみたいですけど。
【雨宮主査代理】 共用の中にはないですね。
【小杉主査】 ほかに、簡単な御質問。はい。
【山田委員】 今の点に関連して、対象とする若手の方々は、施設の内部だけでなくて、外部の方も呼び込んでやろうという、そういう計画なんですか?
【船守施設長】 はい。もちろんそうです。我々、人材育成といったときに、中の人だけではなくて、外の人と一緒にやっていきたいというふうに考えておりまして、それがないと、ほとんど意味ないと思います。それがなくて人材育成といった場合には、共用施設と同じだと思いますので、我々は外から来たユーザーの方々にもなるべく上流側までタッチしてもらってやりたいと考えています。
そういう中で、先ほどの開発研究専用ビームライン、何でそういうのが必要かというと、普通に使っていただいているビームラインというのは、何かちょっとトラブルがあって駄目になっちゃいましたというと、次のユーザーの人に迷惑が掛かるわけです。迷惑を掛けるわけにいきませんので、若い人が、若い人に限らなくてもいいんですけれども、そういったことをやるのには難しい環境になっていると思うんですね。
施設の人が色々なビームラインでやるのは当然なので、人材育成という意味では、中の人を育成するためではありません。外の人が対象です。ただ、そこで技術、今までないような技術を開発しましょうという意味では、中の人ももちろん対象です。両方を対象にしているというふうに考えていただけたらと思います。
【山田委員】
その場合、PF内の若手にこういうことを積極的に関与してもらうといったときに、PF自身がユーザーファシリティなので、外部から実験をやりたくて来る人のサポートもやらないといけない。マンパワーが全然足りないときに、そういう内部の若手の人がこういうビームラインに入り込んで何かやるというのもなかなか大変かなという気がするんですが。
一方で、外部の若手の方々がこういうビームラインに積極的にコミットしていこうという方々が、今の現状では少ないんじゃないかと懸念します。中性子に関与してきた立場から言うと、やっぱりサンプルを持っていって実験したいという人がかなりのマジョリティなんですね。自分で装置を作って何かをやってやろうという人がなかなか現状では少ない状況かなと感じています。
【船守施設長】 そういうような状況で良いということであると、もう将来がないと思うんですね。それは中性子も放射光も同じだと思います。今、それがないのであれば、我々はそういうものを作っていく、そういう人を見出すところから、そういう気持ちに若い人になってもらうところから、始めなきゃいけないと思いますので、そういうつもり、そういう期待も込めて、こういうことをやりたいというお話をさせていただいています。
なかなかスタッフも忙しいのは確かなんですけれども、大学共同利用の我々の施設はユーザーサポートが第一のミッションだとは思っておりませんので、やはり開発研究をして技術を作って、あと、人を作って、というところが第一のミッションですので、そこのところを間違えないようにやっていきたいというふうに思っております。
【小杉主査】 その辺りは、共用施設と大学共同利用の施設や共共拠点の施設のような学術の施設で考え方が随分違うというところを明確にする必要があるかと。私、放射光学会の会長をやっているときに、学術施設の位置付けというのを放射光学会で議論して、みんなそうだということで、マスタープランを作ってきたのですけれども、この点については、いずれ時間取って議論するときがあると思います。
私の経験ですが、さきがけのアドバイザーをやったときに、いろんないい提案の中に、放射光の利用で新しいアイデアで装置を作ってやってみたいという提案があったのですが、たとえその装置ができたところで、それを生かしたり、接続してテストするビームラインがないんですよね。こういうのがあると、若い人のアイデアが採択された結果、ここで展開できるというのはあると思うので、雨宮さんもさきがけをやっておられるんで、何かそういう観点、ございますでしょうか。
【雨宮主査代理】 私、さきがけというよりもCRESTなんですが、ファシリティの人が、例えばこういうことをやって、プラットフォームを作ろうといういい提案をしてくるんですが、CRESTというのは、言葉が示すように、ピークを出せという話なので、プラットフォームを作るなら、じゃあ、施設でやってくださいという論理になっちゃうんですよね。
私は施設のことを知っているから、いや、そういっても施設にはお金ないんですよということは理解して言うんですが、やっぱりJSTのお金で、例えばCRESTというのは頂上を極めると。だから、プラットフォームを作るというのは違う予算ですよということなので、だから、結論としては、ファシリティにもし付けるんでなければ、やっぱりプラットフォームを整備するような別立ての予算というのがJSTにあってもいい、若しくは、文科省が誘導してもいいのかなと。
先ほど、船守さんが、予算が先端の予算と基盤の予算というのがやっぱりそれもどちらも重要だとありましたけど、その辺、とても行政の施策も含めて、重要な在り方だなと思っています。現状では、今言った感じで仕分けされているというのが私の印象です。
【小杉主査】 同じような議論があるかと思いますので、続きまして、次の御説明は、岸本委員に、20分程度で、よろしくお願いいたします。
【岸本委員】 岸本でございます。
きょうは、産業ユーザーの視点で量子ビームの活用に向けてということで、私は放射光と中性子のユーザーで、レーザーのことはちょっと分からないところがあるんですけれども、放射光と中性子の産業ユーザーの視点で、いろいろと今後の御議論だとかお話の種になればいいのではないかと思って、資料をまとめさせていただきました。
量子ビームへの期待というのは企業内でも様々存在していまして、例えばここに一番目に書いていますけれども、将来の製品だとか材料みたいなのを見据えた将来研究、サイエンス・基礎研究につながるようなことはやっていきたいというニーズはやはりあるわけです。
二つ目に上げているのが、ここに応用研究と書いていますけれども、こちらは、どちらかというと、現在ある材料だったり製品だったり、そういったものを更に高性能化だとか高機能化するためには、どういうところに着眼してものを変えていったらいいんだろうとか、あるいは、ここに書くのが正しいのかどうか分かりませんが、潜在的課題として産業界の多くの製品だとか材料というのは、これまで積み上げてきた経験だとかノウハウに頼って作っている。基本的には、作れてはいるんだけど、メカニズムがよく分からないというものというのはたくさんあるわけですね。
こういうようなところの潜在的な課題、ノウハウで作ってきたものを、もう少しサイエンスとして切り込んでいって、新しい軸で物を良くすることができないかと、そういった応用研究をやりたいというニーズは強くあるわけです。
もう一つが、これ、製品・工程問題と書いていますけれども、いわゆる決まった手法で確実に迅速にデータを取り、そういった課題を解決したいというニーズもあるわけですね。
これら1、2、3に大きく分けましたけれども、もっとほかにも様々な期待というのがあると思われるんですね。ですので、利用したいモチベーションは非常に様々であって、多様にあるということです。
また、同じ企業内、会社内においても、1、2がやりたいというふうに思っている企業もあれば、いや、2、3が大切ですよ、あるいは、3だけがやりたいですよと、会社によってもいろいろと存在するわけです。
しかも、産業製品というのは、製品の種類だとか研究分野も非常に広いので、これも一口に産業ユーザー、産業利用といっても、なかなか同じような立ち位置で見ていくのは非常に難しいと思います。
また、この企業規模も様々でして、このサイエンスを重視しているような会社もあれば、3番のような、やはり今の目先の問題に対して解決して、安定的に製品を作っていきたいなど、いろいろとあるわけです。
ですので、こういったものを、この委員会で産業ユーザーの拡大ということで一言で言ってしまうと、なかなか議論が進まないのではないかなと思いまして、いろいろと場合を分けて考えていく必要性もあるんじゃないかなというふうに思っています。
そこで、産業利用の促進・推進を議論していく上での整理ということで、次のようなちょっと図を作ってみました。横軸に科学的価値という軸を取りまして、縦軸には量子ビームが解決する産業利用ニーズというものを書きました。
いわゆるこういうような正規分布みたいなものをしているというふうに考えますと、いわゆる放射光だとか中性子とか利用しているのは、大体、科学的価値がある程度あるようなところで産業にも役に立つというところで申請しているところが大体20%ぐらい推移してきているというのが現状ではないかなと思います。その上に、この部分に、80%の学術的な利用というのが乗っていると思います。この枠というのは、大体施設の数だとかキャパで決まってくるような数字ではないかなと思います。
その中でも、やはり実験を申し込んだんですけれども、課題の点数だとか優先順位的な考え方でいい課題なんだけれども不採択になってしまうような課題というのも潜在的にはあって、ここら辺にも解決できれば良い課題というのもたくさん存在しているわけです。
こういう状況の中で、例えば、この不採択になった課題を拾い上げていくという視点で考えますと、ここに書いてあるハイスループット化というのが非常に有効に働いてくるんだろうと。こういった取り組みが、ユーザーの裾野を広げていくのに非常に効果的に役に立っていくんだろうというふうに思います。
一方、最先端のトップのピーキーなサイエンスをやりたいというニーズもやはりあるわけです。こういうところは何が必要かといいますと、もちろんのことながら、装置の高度化だとか、次世代光源、そういったものが必要となって、こういったものがなければ、なかなか解決できないところがあります。
ところが、いざ、産業的な立場になって言いますと、将来のシーズ研究として実施したいという思いはあるんですけれども、例えば施設の装置がマッチングしてない場合に、自社で整備しようとしても、なかなか技術が高度であったり、高価過ぎて、なかなか手が出せないというところもあります。
また、企業の中でも、そういったところを追い求める価値とか、あるいは、その部分をどうやって攻めていけばいいのかというのが見えてないパターンだとか、高度な解析技術ができる人材がまだまだ不足していて取り組めないというパターンがあるかと思います。こういうところは、これまで議論してきた中の人材育成だとか、そういったところも必要になってきますし、産学施設連携というところも重要になってくるユーザー区分だと思います。
一方、潜在的ユーザーとして、利用は考えているけれども使えてない人だとか、利用すら考えていないユーザー層もある。本当は利用すればもっともっと問題解決に利用できる部分があって、製品応用だとか、高機能化に使えるのに使えていないユーザーとかいるわけです。
ですので、それぞれの産業ユーザー、この分布に示したような産業ユーザーごとに、施設の利用の壁や気軽さというのが、一人ひとり、その区分のユーザーごとに応じて少しずつ違うはずなんですね。ですので、どの産業領域を議論するのかでアプローチの仕方も変わってきますし、このような整理の上で議論していく必要があるのではというふうに考えています。
それで、例えば、先端研究ユーザーは、これまで議論してきましたように、やはり本格的な産学施設連携によるサイエンスを議論する場の形成だとか、産学連携による競争的資金や、企業の資金で協調領域としての活動をやっていくようなこと、また、高度な計測技術や解析技術というのは、これ、ユーザーだけではどうしようもありませんので、施設や学術との連携も進めていく必要があります。
こういったことをやるためには、既に進んでいる部分もあるんですけれども、コンソーシアムの推進だとか、組織対組織の連携を推進する仕組みというものを国としても加速させていく必要があるんじゃないのかなと思います。でなければ、産業ユーザーから聞こえてくるのは、海外の方がこういうことをやりやすいだとか、そういった声も聞こえてきますんで、こういう部分をきちんと考えていかないと、ユーザーの海外流出というのは増えてしまう可能性も考えられると思います。
この二つ目の2の区分のところの利用、あるいは、利用したいと考えている潜在的ユーザーの課題はどこにあるのか。これは前提として、利用を考えているので、実験をして成果が出てくるイメージを持っている場合なんですけれども、この場合は、利用経験がないパターンが多いので、課題申請の方法や書き方が分からないということです。例えば実験の方法の記述の仕方や、実験時間の見積もりでさえ分からないというのが、これ、現実問題、絶対あるはずなんですね。また、実験の仕方が分からなかったり、解析方法やデータの解釈がよく分からないということも現実問題にはあるかと思います。
こういったパターンの場合には、今もありますけれども、分析会社の支援だとか、メールインサービスによって、フィージビリティスタディがいつでも簡単にできるような体制があれば、こういう問題については非常に早く進んでいくんだろうと思います。また、中小企業やベンチャーなどを考えますと、実験費用面などの優遇措置なんかも考えていかなければ、裾野が増えていかないんではないかなというふうに思います。
もう一つ、3番目のこの利用は考えていない潜在的ユーザーの課題はどこにあるのかということなんですけど、そもそも何ができそうかイメージが持ててないはずなんですね。こういう場合には、相談先が分からなかったり、何に使えるのかというのがぼんやりしていて、何かすごそうだけれども、何ができるんだろうと、よく分からないというパターンもあるんですね。
また、相談してみようとしても、自社の課題に対して、相談して議論する、要するに、施設側に何を相談して議論したらいいのかと、ポイント自体も分からないというパターンもあるんですね。これは私も、放射光を本格的に使う前というのはやはりよく分からないところがあって、そういう相談窓口、技術相談できる場というのがやっぱり必要じゃないかなと思います。
特に、私が非常に経験的に役に立ったのは、各自治体に工業試験場などがあると思うんですけれども、こういう試験場は結構地域の課題、会社の課題だとかいうのを結構把握していたりとかするんですね。そうすると、そういうところに相談すると、それはもしかしたら放射光が使えるんじゃないかということも教えてもらって、使おうと思ったきっかけにもつながっていますので、こういった量子ビーム施設と工業試験場なども連携しながらやっていくと、ユーザーの幅というのが広がってくるかもしれないというふうに思っています。
それと、別の角度で、量子ビーム施設とラボの装置の関係性をちょっと整理したいと思うんですけれども、横軸に基礎サイエンスから日常的な製品課題という軸を取って、縦軸に、その課題解決できる能力、あるいは、新発見できる能力みたいなところを縦軸に取ると、ちょっと分かりにくいんですけれども、日常的な問題というのはラボの装置が非常に役に立つわけなんですね。一方、基礎的なサイエンスになるとラボの装置ではなかなかできないけれども、何となくぼんやりと分かると。そういうことは産業界でも経験しているわけです。
一方、量子ビーム施設のことを考えますと、いろんな施設があるんですが、やはり課題解決できる能力が高く、基礎サイエンスというところはアウトプットが非常に期待できるなというふうにマッピングされるわけです。
こういうふうに量子ビームというのはすごくいいなと産業界からも見えているわけなんですけれども、壁として感じるところというのは意外に小さなところもあって、こういういろいろな課題解決や新発見があるだろうというイメージは持てるんですけれども、一体どの施設を使ったらいいのと。オーバーラップしているような技術もたくさんあったりとかするわけなんですね。それで、その特徴というのがなかなか素人のユーザーには分かりにくいところがあるんですね。低エミッタンスと言われても、多分、使ったことない人というのはよく分からないと思うんですね。そういうところがあって、どこに一体行けば、自分たちの課題が解決できるんだろうと、なかなか足踏みしてしまうと思います。
また、ちょっとややこしいところが、自社の装置でもできる、オーバーラップしているところ、こういった領域があったりとかするんですね。例えば、測定時間は多くかかるんだけれども、データは何となく取れるというときや、今の装置でも取れるんだけれども、放射光を使えば何がその先にあるのかというのが。何ていうんですかね、イメージが止まってしまって、わざわざ量子ビームを使わなくても、ラボでできた方が便利だよねという、そういう考えになってしまうようなところがあります。
これはラボ装置でできて、これはラボ装置ではできないと、区切られていたら分かりやすいんですけれども、意外にX線回折というのはラボでもできますし、放射光でもできる。この違いって一体何なのと。時間分割ができますと言われても、なかなかそこの活用イメージというのが自分のところの製品開発とかにどう役に立つのかというのが分かりにくいというところはあります。
もう一つ、材料研究者からすれば、量子ビームというものは素人なんですね。各企業にいる分析研究者というのは材料開発素人に近いようなところもあるんですね。これは企業によってそれぞれなんですけれども、本当の材料などのニーズというのは材料研究者が持っているはずなんですけれども、なかなか素人が量子ビームに行けない、その気軽さというところにも課題が出てきてしまうというところもあります。
こういうところと、もう一つ、例えば、既に施設を使っている人がほかの施設に行くかという問題なんですけれども、現在利用している施設でできることを、わざわざ別の施設に行くメリットというのがどこにあるんだろうというふうに考えてしまうんですね。ただ、役割がはっきりしていると、メリットが見えますが、ただ、申請の種類だとかルールだとか放射線の管理の方法が異なって煩雑感もあって、どうしようかというふうな、ためらってしまうところも実際問題あります。
また、ここは非常に大切なんですけれども、実は、施設間で同じデータが得られるのかというところは物すごく大切です。例えば、横並びで同一比較できないと、前の状態と今の状態というのは何が違ったのかというのがよく分からなくなるようなこともあるんで、今後は測定技術の質の標準化とか規格化というのは、相補活用に向けて、ますます重要になっていく点だと思います。例えば、施設Aではこんなデータだったんだけれども、施設Dだったらちょっと変わったスペクトルになっているよと。これはよくある話だと思うんですね。なかなかここは、同一に比較していいのかという悩みどころでもあるわけです。
もう一つ、新規ユーザーがこういう量子ビーム利用に行くときに、先ほどと重なるんですけれども、気軽に御相談くださいと言われても、そもそも利用申請ってどうすればいいのと、なかなかホームページを読み込んでも分からない。相談窓口もよく分からないということもあります。あるいは、ホームページには確かに親切に書いてあるんですけど、そこに一歩踏み込もうという勇気がでるかでないかの問題かもしれませんが、そういうのがなかなかハードルが高いんではないのかなと思います。
また、放射光がいいのか、中性子がいいのかというこの違いも。それぞれすごくいいところがあるんですけれども、どっちがいいのというのを気軽に相談できる場も少ないなというふうに思っています。
ですので、こういった課題申請から実験までの課題でちょっと整理してみますと、産業界のパワーユーザーというのは、ここ大切なんですけど、申請の書き方からBL担当者の顔もよく見えていて、使いやすいというのは、これ、必ずイコールになってくるわけですね。
ところが、ほかの施設に行ってもいいよねと思っていても、申請の種類が違ったり、ルールが違ったり、一番問題なのがBL担当の顔が見えてないので、ほかの施設はちょっとよく分からないというふうになって、使うモチベーションが起こらなく、やっぱり施設1の方でいいんじゃないかなというようなことになってしまうというパターンもあります。
また、産業界の新規・潜在的ユーザーというのも、ここも先ほどと一緒なんですけれども、各施設で何が違うのかというのはもちろんのことながら、申請の種類が、申請の呼び方も何かS課題と言ってみたりとか、いろいろな呼び方があって、一緒じゃないんですよね。方法、中身は一緒でも、その制度の呼び方が違うんで、一体何が違うのとか、すごく迷ったりとかするんですね。そういうところもあって、なかなか新規ユーザーとしてはそういうところも壁が高い原因にもなってしまっているというふうに思います。
少なくとも、こういったところは、課題申請から実験までのルールなど、根幹の部分は同じであってほしいというのがやっぱり一番、産業的には重要なところじゃないかなと思います。こういうところは今後どうしていくのかというのは、この場だけではなくて、学会など、いろんなコミュニティで議論していかないと、こういった問題はなかなか解決しないだろうなというふうに思います。
もう一つ、連携活用や相補的な利用を推進するためにはいろいろな考え方があると思うんですけれども、いろんな施設で申請して、それぞれの特徴を使って生かしたいわけなんですけれども、その場合には、この委員会でも議論になりましたが、コーディネーター・コンシェルジュがいると非常に助かるんです。けれども、それぞれの施設で一人、二人、三人と抱えていくってすごく大変だし、現実問題、持つことも難しいパターンもあるんじゃないのかなと思います。
だったら、どこかに申請したら、その申請を適したところに割り振っていくという話もあったかとは思うんです。我々ユーザーにとって非常に助かるんですけれども、実際は施設の運営者も異なるし、一番の問題は機密情報の取扱いの部分だと思います。勝手に流していいのかとか、ユーザーはこの施設を信用して出しているわけなんですけど、ほかの施設に流していいのかとか、いろんな超えなきゃいけないハードルもあるなというふうに思います。
そこで、一つ、アイデアだけなんですけれども、例えば、各施設から、そういった仕組みだとか分かっている人が集まって、一つの相談、申請の受付とか、相談機関みたいなものがあると、非常に助かるんだろうなというような考えを持ったこともあります。
そうすると、産業ユーザーは一度相談に行ったら、そこでこの施設とこの施設を使えばいいんじゃないかとか、その施設のなかで、どこを使ったらいいのかというのが一発で分かるわけなんですよね。そうすると、技術相談とか申請の方法だとか、それぞれ変わっていたり違っていても、いろいろと臨機応変に対応して連携や相補利用などもしやすくなるんじゃないかなと思います。
このように、量子ビームの連携推進のためには、相談できて後押ししてくれる部分が必要であるだろうし、こういった柔軟で大胆な仕組みも考えていく必要があるだろうというふうに思います。この辺りは、国と施設、企業の連携で考えていく必要があるよねというふうに思います。
ちょっと時間がオーバーしていますので、ちょっと簡単に説明していきますけれども、ただ、こういう分布といっても、企業側としては、より高い価値創造をしていきたいという思いもあるわけですね。そのためには、やはり人材育成というのは重要となってくるわけですが、自社で教育できるものでもないし、机上で勉強しても絶対身に付かない種類のものだとは思います。しかも、年数回の実験頻度だと、一人前になるのも何年も掛かってしまうので、生きた教育の場というのも必要となってくると。
こういうところで企業から施設へのクロスアポイントメントを行い、使命と責任を持つということも大切なので、そういった制度を活用して、更に推進していくことだとか、学会の枠を超えた活動で量子ビームの活用を議論していって、相談、勉強できるような場も重要ではないかなと思います。この辺りは既に部分的にはあるかと思います。
あと、データ共有化ということも触れておきたいんですけれども、やはり企業は競争の原理で動いているので、その共有化というのは簡単ではないはずなんですね。それ相応のメリットがなければ、共有化は困難です。自社にデメリットが生じるのであれば、利用しない方が良いという考え方も出てくる可能性もあります。
一方、データを共有化することで、これまで自前主義から脱却して利益につながるという可能性があれば、可能性は十分にあるだろうと。具体的なアイデアがあるわけではないんですけれども、将来、データが大量に増大していくので、どこかに預けることになりますので、例えば、ある企業のデータは、この企業には開示してもいいよとか、この企業には開示したらだめだとか、この大学には開示してもいいとか、そういうデータの暗号化による利用先の指定だとか、どこに使われているのかということが分かれば、安心できる部分もあるので、そういったことが整備できれば、利活用が自然と様々出てくるのではないかなというふうに思っています。逆に、整備されなければ、なかなかこういう考えにも行かなくて、動きにくいだろうとも思います。
以上、ざっとお話しさせていただきましたけれども、こういうような視点で御議論いただいて、産業利用ユーザーの拡大に向けてお話、議論できればいいなと思って、説明させていただきました。
以上です。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
産業利用については前回も議論したことがうまく岸本委員の方でまとめられているような気もしますが、非常にいい復習になって理解が深まったと思います。取りあえず今の御説明に対して、御意見等ございましたら、よろしくお願いします。はい。
【高原委員】 今、岸本さんから、企業、産業利用ということでお話がありましたけれども、例えば量子ビーム利用における壁を感じるところ、例えばラボと施設というのは大学の中でも起こっておりまして、材料研究者と分析研究者の間にかなりギャップがあるというのがもう現実に起こっておりまして、それで、九州大学の場合、SAGAのLight Sourceにシンクロトロン光利用センターというのがございますけれども、そこでも大学の潜在的なユーザーをどうやって掘り起こすかというところで、やっぱりコンシェルジュ的な、例えば分析、回折、散乱、分光、イメージングが全部分かっている人、それから、欲を言えば、中性子と放射光の違いまでよく分かっている人というのがやはりそういう立場に立たないと、大学の中でも活用できないということが、今、最近議論しまして、そういったことをやろうということを進めています。
ただ、大学においても、そういう人がなかなか育たない理由としては、散乱とか、それから、顕微鏡とかの学問が、私の時代、学部時代はそういう講義があっていまして、私、化学なんですけれども、そういう講義を受けてきましたけれども、私も割と入りやすいんですが、その後の世代になると、そういう教育というのがもう基礎的な構造解析とかそういうところ、分光にしてもそうなんですけれども、化学ですらそういうのがなくなってきているということで、なかなか人材が不足しているということで、産業界に至っては、多分、それが更に厳しい状況であるというふうに思いますので、そういったところから含めて、やはり学術の方も努力しないと、産学連携はうまくいかないというふうに認識しております。
【小杉主査】 岸本委員の御説明の中には、産業利用の観点だけではなくて、学術利用についても似たような問題意識があるところは結構あると思うので、申請書なんかも同じような形式にするとか、その辺の入り口は、学会がまとめるとしても、実際は施設間連携でやるべきことだと思いますね。この委員会で言うことでは必ずしもないかもしれないですけど、こういう問題点をちゃんと各施設に送っていくというところですね。
SAGAのLight Sourceについては評価関係の委員をやっていることで、この1月20日ですかね、委員会があったんですけれども、コンシェルジュ的なコーディネーターを置くことによって相談の件数は上がったようです。でも、こういうコーディネーターというのは現場の一線から少し退いた方を採用する、そういう人はよく知識があるので、いろいろコーディネートはできるんですけど、深く実験するところまで導くことができないので、SAGA Light Sourceの方でも、次のフェーズは単に紹介するだけではなくて、深くやる人が必要だという議論がありました。
SAGA Light Sourceは地域の工業試験所とタイアップは必ずしもしてないそうなので、その辺が課題としていましたけど、学術利用も結構やっているので、学術的な視点での利用施設にもなっているようです。愛知県のSR施設は、逆に、学術は余り考えずに産業中心にやっているので、こういうローカルなネットワークというのをかなりうまく生かしてやっておられるので、自治体が持っている施設でも佐賀と愛知はかなり違う印象を私は持っています。
ほかに何か御議論ございますでしょうか。
【雨宮主査代理】 非常に面白いアイデアだなと思ったのが、企業から施設へのクロスアポイントメント、もうこれ、実際にやると、いろんな検討をしなきゃならない問題、あると思うんですけど、これができるといいなと思って聞いていました。
それから、きょうのお話では出てこなかったんですが、大学を卒業した人をポスドクで、その施設でポスドクをするために企業がお金を出すとか、それを若い人の入り口として、また、きょうのクロスアポイントメント、これは是非そういうことを考えると、その産業利用の在り方は大分変わってくるんじゃないかなと思いました。
感想です。
【岸本委員】 私も、初めてSPring-8を利用するとき、1年間まるまるSPring-8に滞在して、ビームラインの立ち上げからやらせていただいたりしたんですけど、そのときの経験というのが今に物すごく生きている部分というのがたくさんあるんですね。
ですので、今、なかなかそういうことができない。次世代放射光ではできるのかもしれませんが、行く人が使命感だとか、責任を持つことによって学ぼうという精神につながってくる。普通に研修会で行ったというのとはまたフェーズが異なり、そういうところで人は育つんで、是非こういう制度があるといいんじゃないのかなというふうに考えています。
【小杉主査】 ほかにございますか。どうぞ。
【伊地知委員】 すごく細かいことで恐縮ですけれども、5ページのところで、例えば中小企業とかベンチャーに対する実験費用面での優遇措置は必要ではないかという御指摘をされていて、現行の研究では、税制優遇措置上のところで、こういった施設利用のところに係る課題といったものはあるのでしょうか。あるいは、そこに、例えば、「オープンイノベーション型」部分を使った場合には、より優遇度を増していけたりはするかなと思うのですけど。
【岸本委員】 いや、私もその具体的なところというのはよく存じ上げてないんですけれども、やはり普通に考えると、例えばSPring-8とかになりますと、8時間、時期指定ですると、8時間72万ぐらいですかね。やはりなかなかぱっと払ってお試しに使うというわけには。
それで、お試しじゃないんですけれども、申請で公開してもいいから無料で使おうというやり方もあるでしょうけれども、その場合やっぱり申請書を書くというところに壁があって、何かしらそういうところをうまく、昔はトライアルユースとかもありましたし、今も若干はあるようなところもあるんですけど、もうちょっと間口を広げて何かやれるようになると、もっと中小企業だとかベンチャーの方というのは使いやすくなるんじゃないのかなという思いで書いたところがあります。
【小杉主査】 ちょっと時間が押し気味なので、簡単な御質問があれば、最後によろしいですか。
【船守施設長】 ちょっと一ついいですか。コンシェルジュという話ですけれども、中性子とかは入っていませんが、光ビームプラットフォームというのが今でも動いていると思うんですね。その辺に関しては、どの程度機能しているのかどうかというのは、例えば企業の立場から、何かあったりするでしょうか。KEKが幹事機関か何かになっていてやっているんですけれども。
【岸本委員】 いや、そういうところも非常に役に立っているという印象というか、役に立っています。ただ、もうちょっと広く、全体を俯瞰したような取組があると、もっといいんじゃないかなという意味で、きょう、今回こういうふうな書き方をさせてもらいました。
【船守施設長】 ありがとうございます。
【小杉主査】 私自身、光ビームプラットフォーム、途中から責任者になったんですけど、内容的には本来、各施設が本来の業務としてやるところだと思うんですね。それは国からプラットフォームの予算は付いているので、国に頼っている部分で予算が足りないとかで、ちょっとやり方がまずいような気がしています。
先ほど岸本委員の中にもありましたけど、施設によってデータが本当に一緒なのかどうかというのは真面目にプラットフォームではやっているんですが、それもやっぱり本来、施設間でしっかりその辺にお金を掛け、外部からお金を取ってやるんではなくて、本来業務としてやらないといけないことではないかとは思っています。それぞれの施設は予算に苦労している部分はあるかもしれないんですけど、マストの業務ではないかという印象は私は持っていて、もうちょっとプラットフォーム作りというところには違う観点が必要というのが次に向けてのコメントです。
では、ちょっと時間を使っていますので、次の議題に進みたいと思います。事務局より説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 それでは、続きまして、議題(2)は、前回より御議論いただいております我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方についてということで、資料2-1と2-2を御用意いただけますでしょうか。
まず、資料2-1は、これまで各施設種に関しまして、有識者の方々からヒアリングを行っておりましたので、その概要として、簡単にまとめているものでございます。
前回は、中性子線施設関係で量子ビーム利用推進小委員会において、鬼柳先生と理研RANSの大竹リーダーより御発表いただきまして、その中で、中性子関係もそれぞれ固有の論点もございましたので、そちらに簡単にまとめております。
ここで個別に施設種ごとに出てきた論点につきましても、最終的な検討のまとめの際に、施設種ごとの論点としてまとめていく形にしたいと思っております。
続きまして、資料2-2をご覧いただけますでしょうか。こちらも、前回、今後の進め方、議論の進め方についてということでお示しした資料に一部追記をしておりますが、先般行った調査の結果やそれに基づく議論の論点について、施設種ごとに、例えばここ1ページ目に記載しているような観点について、現状どう捉えているか、今後どうあるべきか、その解決策や方法論といったものがどのような考えであるかといった点を議論いただいてはどうかということでお示しをしております。
前回はそちらの観点に記載しているうち、産学連携を含む利用者の確保や利用者への支援、及び、施設の役割分担や施設相互の連携といった観点を御議論を頂きました。
本日は、海外施設・海外研究者との連携といった観点で御議論いただければと思っておりますが、こうした個別の論点を踏まえつつ、最終的な取りまとめにおいて、例えば研究全体のポートフォリオの設計の在り方や、量子ビーム施設の運営主体に応じた国の支援の在り方、好事例の横展開等を議論を取りまとめる形にしてはどうかと考えております。
続いて、2ページ目をごらんいただけますでしょうか。2ページ目は、前回の議論の概要として、産学連携を含む利用者の確保、施設の役割分担等についての御議論を頂いた中で、主な意見として頂いたものをこちらに記載してございます。
簡単に下線部を中心に申し上げます。施設全体を、大型施設から小型施設まで通貫したような「活用方針」が必要ではないかといった御意見。相補的利用を促進するためには、運営主体間でユーザーの登録・施設の申請の在り方や施設の窓口といったシステマチックな連携が必要ではないかといった御意見。
また、少し飛びますけれども、施設を相補的に利用するに当たっても、それぞれの施設の役割や規模、共通化に必要なコストといった点も留意すべきではないか。あるいは、そうした施設間の連携を図るに当たっては、人的なプラットフォームのようなものが必要ではないか。あるいは、各施設の窓口になるような人はより流動性を高めて施設を移動するといった連携の形が必要ではないか。
最後の星のところでございますが、施設の共通の方針として、利用の在り方のガイドラインといったものが整備された上で、各施設のオリジナリティを追加して、より気軽に使えるような形が必要ではないかといった御意見を頂いたところでございます。
続いて、3ページ目でございます。前回の議論も踏まえつつということではございますが、今回は御議論としては、海外施設・海外研究者との連携といった観点で、例えば、各施設の海外からの利用者がいる場合のマシンタイムの確保の方法、国内の利用者との利用の比率といったものを定めるべきか、あるいは、定めることなく柔軟に行うべきか。そうしたものをどう組織的に対応するべきか。組織として対応する場合は、特別な定めや規則といったものが必要であれば、どういったものが必要であるか。あるいは、各施設と海外の施設との連携は現在もいろいろ行われているわけでございますが、それをより全体最適を図るためには、どういう風に連携を深めていく必要があるか。また、海外の施設の利用者や海外の研究の動向といったものを着実に把握していくためには、どのような政策が必要であるかといった点が論点になってくるかと思っております。
なお、参考マトリックスに記載しております施設種に関しましては、今回、一番右の欄に以前ございました大学と共同利用・共同研究拠点、大学共同利用機関に関しましては、分類を新たにした形でお示しをしてございます。
1点、ちょっと資料の修正で大変恐縮でございますが、中性子・ミュオン施設のところでJ-PARC MLFに関しましては、KEK、物構研の所管という意味で共同利用・共同研究拠点の方にも書くべきでしたので、そこは次回以降、訂正をさせていただきます。
説明は以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。事務局より、前回までの議論のまとめと今後の議論の進め方について説明がありました。
今の御説明のところで、何かコメント等ありましたら、お願いいたします。岸本委員の説明でうまく整理されておりますので、もう少し前回の議論のところが補強できるかとは思いますが、何かそれ以外にお気付きの点がございましたら、お願いいたします。よろしいですか。
それでは、今御説明いただいたその資料2-2の資料の3ページ目、海外施設・海外研究者との連携というところについての意見を集めたいと思います。
現状がどういう状況か、あるいは、今後どうあるべきか、それから、その解決・方法は何かと。これは国内の施設の観点という形もありますし、海外の利用された経験から、逆に国内の施設についてのいろんな御意見等もあるかと思いますので、その両面から御意見いただければと思いますが。
まずは、施設の関係者側で、何かこの海外施設との連携、あるいは、海外研究者との連携で工夫されている面とか、施設の関係者としてはどうでしょうか。
【雨宮主査代理】 施設関係者としてはまだ新米ですが、SPring-8というか、JASRI、理研にいて思うことは、あと、ユーザーだったときもそうなんですが、SPring-8、ESRF、APSという3極のワークショップを毎年持ち回りでやっていると。そこから入ってくるところの情報量がすごく多いということ。それから、FELができて、FELも、LCLS、そして、SACLA、そして、Euro FELと三つ、それで、最近はスイスが入り、韓国が入ると。5極になる。
それが定期的になされているということによって、SPring-8、SACLAのサイトに入ってくる情報量が圧倒的に多いのは、SPring-8にとってすごく有意なことだと思います。SPring-8のリングとFELがあって、どっちの情報も一緒に同じサイトに入ってくると。それはファシリティをどういうふうに運営していくか、若しくは、将来ファシリティをどういうふうに方向を切っていくかという意味での刺激にもなるし、やっぱりある意味でコラボレーションであるし、コンペティションなので、いろいろ刺激になっているなということを感じます。
それで、私はその昔にPFにいて、PFができた頃は、先ほど船守さんが言ったように、ミッテランが来たりとか、世界からのビジビリティが高かったんですが、SPring-8ができてから、ちょっと2番ランナーみたいになったので、世界から見ると、ちょっと割食っているなという思いを持っています。
私は思うには、PFスタイル、第三世代ですか、例えばコーネルがあるし、例えばスタンフォードにSSRLがあるし、割と学術というところにおいたレイヤ、同じようなレイヤ構造で、そういうような何極、3極なのか、5極なのか、そういうネットワークを作ると、かなりできた時期も似ていて、立ち位置も似ているもののファシリティが連携すると、きっといいことがあるんじゃないかなと。少なくとも、今、PF、どうなって、そういうことをやっておられるのかどうか分かりませんが、そういうところをもっと積極的にやったらいいかなという思いを持っています。
それから、私は中性子は遠いので、山田さんがコメントをされるのが筋だと思いますが、国際連携については、もう放射光以上に中性子が非常に走っていまして、大分昔になりますが、白根元さんとか、藤井さんがいて、日米協力ですごく密にやっていたと思います。
それ、最近どうなっているのか分からないんですが、それも中性子にとってはすごく重要だったと思うのですが、少なくとも、私から見ると、昔の方が、中性子、国際的なネットワークがあったんじゃないかなという印象を持っていますけど、それは山田さん、関係者がコメントしていただければと思いますが、国際連携は必要だと思います。
情報を共有すると、いい意味での緊張感と、情報共有していろんな知恵が与えられると。これはやるべきだなと思います。非常に重要だと思います。
【小杉主査】 中性子に入る前に、今の御説明に対する質問なんですけど、利用する側にどういうフィードバックがあるか、施設間の連携が施設のスタッフにとっては重要な情報交換だと思うんですけど、利用研究者に影響があるかという点ではどうですか。
【雨宮主査代理】 いや、例えば、利用者は直接そこには参加しないので、利用者から見れば間接的な情報になるかと思いますが、例えば、ユーザーが出してくる課題でこれが一番、一番だと言っているけれども、もう既にほかのファシリティではこうやられていて、そうじゃない場合もあるし、逆の場合もあるし、要するに、ファシリティにいて、国内のユーザーの動向だけじゃなくて、他の施設と共有することによって、他の施設のユーザーの動向が分かるので、ユーザーのレベルというか位置付けが明確になるという意味では、ユーザーにそういうことをフィードバックしたり、若しくは、場合によっては、何ていうのか、叱咤激励、叱咤する場合もあるし、激励する場合もあると。そういう意味では、重要な情報だと思います。
【小杉主査】 それでは、中性子側の鬼柳委員か山田委員、いかがですか。
【山田委員】 私が関わっていたのは2年ぐらい前までなんで、現状は余りよく分かりませんが、特に私が関わっていたのは、アジア・オセアニア地区の中性子関連のAONSAという、Asia-Oceania Neutron Scattering Association、それに関わっていました。アジア・オセアニア地区にはパルスと定常炉の中性子源がかなりたくさんあるんですが、主に施設や学会関係の方々が参加され、年に今は2回ぐらいやっており、情報交換が主になっています。その情報交換は有益で、各施設がどういう問題を抱えているかなどが明確になるし、困っているところには、ほかの国で援助できれば、大いにやりましょうと雰囲気になっている。それから、もう一つは、アジア・オセアニア地区の中性子スクールが非常に重要です。さらに、若手育成という意味で、先端的な施設に、若い人、ドクター取ったばかりぐらいの人が数週間滞在してAONSAや各施設からの資金援助を受けつつ、自分の研究テーマをそこでやる。例えば、J-PARCのMLFに中国から数週間滞在して、自分のテーマをやっていくという、AONSAのYoung Research Fellowship があります。若い研究者がアクティビティを高めていくのに、特に発展途上で、先端的施設がまだないような国の人たちをエンカレッジするのに非常に役に立っているんじゃないかなと思います。
以上が2年ぐらい前までの情報です。最先端のパルス中性子に関しては、多分、鬼柳さんが関わっていらっしゃると思います。
【小杉主査】 では、追加で御説明をお願いします。
【鬼柳委員】 そのほか、J-PARCがいろんな海外施設と連携していて、オーストラリアのANSTO、今、建設中の今後世界最高になるであろうヨーロッパのESS、それから、アメリカのSNS等々と協定ですかね。何かしらの協定を結んで、情報交換しているという状況にあります。そこの詳しいことは、ちょっと僕は施設側じゃないので、よく分かりませんけれども、そういうことで、世界と一緒に切磋琢磨しながら進んでいるという状況ではあります。
【小杉主査】 放射光でもアジア・オセアニアでスクールはやっておりますが、それ以外では1日、半日ぐらいのワークショップ程度しかやってないんですけど、中性子は、この前、台湾で年会みたいなのをやられたあたりはAONSAと関係がある活動なんでしょうか。
【鬼柳委員】 AONSAが主催して、各地をめぐってやっているのが、この間の台湾の会議です。
【小杉主査】 それは利用者ベースの学会ですね。
【鬼柳委員】 利用者ベースですね。
【小杉主査】 山田委員の説明は割と施設ベースでしたが、スクールは利用者相手でしょう。
【鬼柳委員】 はい。
もう一つ、雨宮先生御紹介の、藤井先生がやっておられたアメリカのオークリッジ研究所との連携は今も続いております。
【小杉主査】 ほかに何かございますでしょうか、利用者ベースでフィードバックがあるような活動という意味では何か。はい。
【高橋委員】 先ほど、小杉先生の方からコメントのあった利用者にどういう還元があるかというお話ですけれども、すごく末端の話で申し訳ないですけれども、例えば、それこそ同じ実験をやるにしても、例えばGUIですとか、そういったところでは、各施設によっていろいろそれぞれで発展してきたという歴史が多分あって、本当に我々がやっている放射光のX線の回折実験に関しては、GUIがやはりそれぞれ発展していったところで、やはり各施設でそれぞれ連携していただいて、こちらのGUIであったこういう機能がすごく好評で、それをこちらにも入れていただいたということは、ここ5年、10年の間でずっと起こっていることだと思います。
【小杉主査】 そうです。
【高橋委員】 はい。やはり、どこの施設のGUIも今はもう本当にとても使いやすくなっていて、でも、10年前はやはり、何でこの機能がないんだとか、こっちにはあったのにとかいうことが結構あったんですけれども、恐らくそういうところは情報交換を経てそれぞれで進化して、ユーザーにとって非常に使いやすいものになっていると思っています。
【小杉主査】 多分そこは構造生物の研究者のネットワークで築き上げてきたんでしょうかね。
【高橋委員】 もありますし、実際にそのGUIを作っているのは、その施設のそのビームラインの担当の方が作られていることが多いので、恐らくそこで交流があったのではないかなと、こちらからは推測しています。
【小杉主査】 XAFSなんかもそういう動きはあるんですけど、なかなかそこまでの統一感というのはないような印象ですけど、近藤委員、いかがですか。
【高橋委員】 統一はされてないんですけどね、全然。
【近藤委員】 硬X線領域の光電子分光で新しいエマージングテクノロジーの一つで、Ambient Pressure X-rayというのがあるんですけれども、これは7年か8年ぐらい前にSOLEILからスタートして、その後、ALS、Diamond、それから、Shanghai light source、BESSY、去年が、先月、MAX-4であって、今年、Pohangという各施設を回りながら国際ワークショップをやっていて、そこで若者向けのチュートリアルをやったり、あるいは、技術共有とか最先端の研究動向の紹介とか、そういうことをやりながらやっているところなんですけれども。
日本でもやらないと、ということなんですけれども、やりたい希望があるけれども、なかなか各会、各施設がかなり応援してくれ……、ユーザーのものなんですけれども、ユーザーのワークショップなんですけれども、施設が応援してくれて、かなりたくさんの人が集まるようになっているんですけれども、ゆくゆくはそういうのを日本でもやらせていただきたいなと思っているんですけれども、施設のこのサポートがすごく必須なところなんですけど、どういう枠組みでどういうふうにお願いしたらいいのか分からないというところもありまして、一般論なんですけれども、そういうユーザーの交流を、施設も含めて応援してくださるような何か研究会を行う、国際研究会を行うような枠組みというのを御用意いただけると、大変有り難いというふうに思っております。
【小杉主査】 各施設で国際会議を受けるケースもありますし、ユーザーサイドで主催しながら、施設側がサポートするという形もあると思うし、AOF、アジア・オセアニアの放射光に関しては、今度、これは施設系ではあるんですけど、施設の装置開発の国際会議を、3日ぐらいですかね、仙台でやる予定で、内海委員もそこに絡んでいられると思いますけど、そういう利用者の集まる国際会議をサポート、主導したり、後方支援したりというのは施設側にはあると思うんですけど、その辺での何か壁とか、ございますでしょうか。
また、それ以外の観点で、何か海外、海外の施設を使っていられる経験からして、日本の施設はこうあるべきだとか、何かそういう視点はございますでしょうか。どうぞ、高橋委員。
【高橋委員】 海外の施設を使うモチベーションというか、一番大きな理由が、日本の放射光が夏の間、使えないという事実があるので、やはりそういったところで、プラクティカルな意味では、その休止期間にこういうほかのところが海外で似たようなことができますよという紹介、御紹介を頂けるというのは、先ほど岸本先生のお話にあったような、何ていうか、裾野を広げるというか、そういった枠の広がりにもつながっていくのかもしれませんし、そうですね、そういったモチベーションがあると思います。
【小杉主査】 日本の場合は、電気代が夏場が高いので、それで、夏、動かしてないと。北欧とかヨーロッパのドイツとかはむしろ冬場が電気代が高いので、止めるのは冬場だということで、国際的にはそれぞれ補完し合う要素はあるとは思うんですけど、日本だけで見ると、夏、動かす、動いてほしいというのはあるんですが、逆に、ヨーロッパの寒い国からすると、冬場動かしている日本に来る。そこをうまく活用する。ユーザーを呼び込まないと来ないんですけど、構造生物なんかはそういう動きはあるかと聞いています。
【高橋委員】 はい。あります。
【小杉主査】 ほかに何かございますでしょうか。どうぞ。
【船守施設長】 施設の立場から、一つ、国に要望というか、せっかくの機会なので、と思うのですけれども、海外と比べて、国内の法律は厳しいと思うんですね。例えば高圧ガスであるとか、放射線の関係であるとか、その辺のところは、安全に関わることなので、容易に緩めることはできないということは理解するのですけれども、色々なことについて国際標準と言って外国にならいなさいという感じでやっている中で、なぜかこういうところはずっと変わらずにいるというところがあると思うのです。
多分、仙台の新しい放射光施設でも、放射線の管理区域のこととか、あと、ビームラインの冷却に液体窒素を循環させる際の高圧ガス絡みの法律が関係していることなど、とても大変だと思うのです。その辺り、今どういう議論がされているでしょうか。施設側としては、是非、こうした審議会で規制緩和に関するようなところを議論して発信していただけたらと思います。
利用に関する話は御議論のとおりだと思います。補足するならば、施設としても、そんなに多くないですけれど、毎年一人とか二人、スタッフを海外に派遣したりしています。我々の施設は古くなってきているので、あちらから来るのは少ないですけど、それでも、何箇月か滞在してというようなことはしてもらっているというのが現状です。
以上です。
【小杉主査】 内海委員、東北の放射光に関して、こういう今のような問題。
【内海委員】 高圧ガスの話は昔からずっとあります。ただ、それを突破するアイデアは今のところはないです。
一方で、放射線管理の話は次世代放射光において極めて大きな課題と認識しています。今、検討や協議をやっているところですので、今この場でのコメントは差し控えさせてください。法律にも関わりますし、規制当局と協議しないといけないことも多々ございます。
ただ、極めて有効、あるいは必要なのは、今、船守さんがおっしゃいましたけれども、世界の常識はこうであるとか利用者からの具体的な強い要望です。こういう規制が制約を乗り越えていくために、特に産業界からのそのお声は非常に大きな力になりますので、よろしくお願いいたします。

【小杉主査】 放射光の施設は日本の場合は全て放射線の管理区域になっていて、いろいろ立ち入るのにバリアがあるんですけど、海外は必ずしもそうじゃなくて、厳しいところもドイツのBESSYなんかはちょっと入りにくいとかあるんですけど、基本的には、実験しながらコーヒー飲んだりとかできるのが世界の普通の施設なんですけど、日本はそれができないというのは非常につらいところではあるので、その辺りが、新しい施設で突破できたらなということが要望としてあるんですけど、微妙な問題だという御回答でした。
中性子の施設は、大体、国際的な感じなんですかね。どうですかね、海外の施設等。
【鬼柳委員】 そこまでは分からないんですけど、海外の方がちょっと楽だなという感じはしていますね。
山田先生、どうでしょうか。
【山田委員】 日本は厳しいと思います。笑い話になるかもしれないんですが、私が30年ぐらい前に、シカゴのパルス中性子を初めて使いに行ったときに、「ノースモーキング」と書いてあるのに、たばこ吸っている人がいて、なぜたばこが吸えるんだと聞いたら、「ノースモーキング」というプレートの近くは危険なのでノースモーキングなんだということでした。外国では厳しくする理由が明確な気がします。しかし今では、パルス中性子も大強度化し、特に原子炉では世界的に放射線管理が大変厳しくなっています。テロ対策なども理由になっているんだと思います。
【小杉主査】 中性子なんかは、試料が放射化したりする問題があるので厳しくならざるを得ないというのがあって、放射光の場合は普通のX線当てるぐらいでは放射化もしないので問題にならないですけど、加速器の施設というくくりでいくと、結構、放射光は厳しめですよね、国際的な視点からすると。
【高橋委員】 せっかくなので、今のところ、もう一点追加させてください。
生体試料を扱っている者からすると、遺伝子組換え体の使用に関する規制というのが、やはり日本では、非常に厳しいので、それも諸外国に合わせる方向で緩和していただけないかという要望を産業界から再三出させていただいております。
【小杉主査】 海外との施設の情報交換しながら、利用を推進するという観点では、いろいろ日本は使いにくいところがあるので、是非、文科省側でも検討を進めていただくよう、よろしくお願いします。
【奥室長】 是非、規制改革推進会議が常設化されましたので、そういうところに提案をさせていただければと思いますが、特に高圧ガス保安の関係は、いつもその規制改革特区を検討するときにテーマになっていて、九大に水素拠点を作るときに、高圧ガス保安について緩めてくれというような要望を出して、特区化を申請していたというのもあるんですよね。
だから、こういう放射光施設、中性子施設において高圧ガス法の観点がネックになっているのであれば、そういう推進会議なりに提案して、認めてもらうという手もあるかなと。それはユーザーの方から声を上げてもらわないと、我々としてどうしようもないんですね。まさに学会であるとか、産業界というのが是非、声を上げていただきたいなと思います。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
ちょっと時間が押していますので、きょうは一旦ここまでとさせていただきますけれども、本日のテーマ、前回のテーマもありますが、更に御意見等ありましたら、随時、事務局までメール等で御連絡いただければ、まとめのところを少しバージョンアップしていくということになるかと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議題(3)、最後の議題に進みたいと思います。事務局より御説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 それでは、議題(3)は、次世代加速器要素技術開発プログラムの事後評価についてでございます。資料3を御用意いただけますでしょうか。
こちら、資料3の3ページ目からでございます。次世代加速器要素技術開発プログラムにつきましては、平成28年度から平成30年度の3年間で実施をしておりまして、今年度、事後評価をさせていただきたいと思っております。
研究開発の概要といたしましては、いわゆる加速器の中で高性能化のボトルネックとなる入射スキームに関する実装可能な基盤技術を開発したというものです。以降、簡単にではございますが、御説明を申し上げます。
3.研究開発の必要性等でございますが、こちらは後の説明でも出てきますけど、平成20年度から実施している基盤技術開発の延長として行ってきたものでございまして、その中で、光・量子ビーム技術自体は複数領域に横断的に活用されるような技術でありまして、基礎科学から応用、産業応用に至るまでの共通基盤としてのキーテクノロジーであるという観点で必要性が言われているものでございます。
次のページに行っていただきまして、4ページ目でございます。今回の事業の有効性ということに関しましては、平成20年度より実施している「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」の中での課題や状況の変化を踏まえたものでございまして、特に次世代に必要となるような放射光のための加速器として、極低エミッタンスを実現するために、加速器の基本性能に影響を与えることのない安定な入射ビームを可能とするための技術を開発したもので、実装を前提に研究が進められたものでして、今回の技術開発の成果を現在建設中の東北の次世代放射光施設に設置する加速器やSPring-8の加速器の高度化等に活用していく予定のものとなっております。
効率性の観点でございますが、こちらのプログラムに関しましては、SPring-8、及び、SACLAを設置・運営する理化学研究所が中心となって、事業全体の運営を管理するとともに、以下にも出てまいりますが、京都大学の大垣POを中心にプロジェクトマネジメントが行われてきたもので、成果の着実な創出が図られるように実施されてきたところでございます。
4.予算の編成につきましては、3年間でおおよそ1.5億円の予算となっておりまして、おおむね3年間、毎年5,000万円程度の規模の研究開発となっております。
5.課題実施体制と機関といたしましては、プログラムオフィサーとして、京都大学の大垣エネルギー理工学研究所教授、採択課題の代表機関としましては理化学研究所、参画する機関として、JASRI、株式会社トーキン及び日本高周波株式会社が連携をしております。
5ページ目以降が、それぞれ必要性、有効性、効率性の観点から評価をしたものでございます。
5ページ目、3.の評価結果でございますが、必要性の観点からは、今回の3年間のプログラムにおいて、先端的な加速器ビーム入射部の開発及び実用化を展望した性能実証が確実に行われて、次世代の放射光の加速器の基礎となる技術の開発に大きな貢献を果たしたものとなっております。ページを6ページ目に移っていただきまして、本プログラムは、国立研究開発法人だけではなくて、民間企業2社を含む参加機関の連携によって遂行されたものであります。
続きまして、有効性の観点としましては、今回開発された先進的な装置・手法が、まずは、建設が進んでおります次世代放射光施設に実際に実装されて有効活用される予定のものとなっております。また、今後、SPring-8の加速器の更なる高度化におきましても、これらの成果が活用されることが期待されまして、こうした施設を通じて、最先端の共用施設等の高度化や光・量子ビームの利用拡大に貢献するものと期待されるものでございます。
また、効率性の観点でございますが、本プログラムのPOは、各プロジェクトについて、現地訪問や進捗評価等のコミュニケーションを行っておりまして、プロジェクトの適切な評価や評価結果を資金配分に反映する形になっております。特に、実質2年余りの課題実施期間において一定の成果を得たことは、効率性に関してプロジェクトチームのマネジメント力が高かったということと、研究開発力が突出したものであるということが評価できるかと思います。
続いて、ページは次の7ページ目に移りますが、総合評価でございますが、先ほど、有効性の観点で申し上げましたとおり、本成果における主要な構成機器の開発、そして、そのプロトタイプを製作した上で性能を実証するに至ったことが、見合う成果が創出されたと評価できるものかと思います。また、本プログラムの成果としての基盤技術については、次世代放射光施設の方に設置される予定となっております。
(3)今後の展望でございますが、こちらも再三、今まで申し上げたとおりのことではございますが、今後、次世代放射光施設ほか、国内の光・量子ビーム施設の利用環境の整備が進められる中で、成果がこうした設備・整備の高度化に反映されていくものと期待されます。
また、実際に、次世代放射光施設において設置され、運転されていく中で、その実運用を通して得られる情報から、更なる高度化に向けた問題点が洗い出されて、さらに、次の要素技術やシステム開発へとつながることが期待されるものでございます。
また、本評価結果につきまして、本来でありましたら、その成果についてのまとめ等の資料を用意しておくべきところでございましたが、そちらは研究代表者との調整で、まだ現在、その用意が整っていないところですので、こちらの評価と別途お送りをさせていただきます成果のまとめを併せて、全体を評価していただくという形にさせていただければと思っております。
説明は以上でございます。
【小杉主査】 きょうの段階では、この資料3で(案)と書かれている案を取るというものではないんですが、一応、この事業のまとめが出た段階では、そのまとめを見ながら、この報告でいいかどうかということを見ていただいて、それが問題なければ、案が取れるという形になるかと思いますけど、そういう流れでよろしいですね。
【對崎補佐】 はい。結構でございます。
【小杉主査】 特に何か今の段階でお気付きの点等ございますでしょうか。
【雨宮主査代理】 ちょっと質問なんですが、このプログラムの事後評価というのは、この本委員会で評価して、私の理解が正しければ、その上の委員会である量子科学技術委員会で報告されて、最終的には、更にその上の委員会である研究計画・評価分科会で認められるというやつのですよね、これ、ですね。
【對崎補佐】 そうでございます。
【雨宮主査代理】 私の記憶では、私がこの量子ビームの利用推進小委員会の主査をやっていたときには、何かPOから説明を受けて、そして、それの次のタイミングでこれが出てきたというふうに思っているのですが、今回は、その資料もなく、オーラルのプレゼンテーションもなく、この事後評価結果というのが、この委員会のクレジットで案として出てくるというのが何かよっぽど急ぐ事情があったのか、ちょっとその背景を、今までの順序とかなり違っていると思うので、ちょっと補足していただけますか。
【對崎補佐】 そこはよく整理させていただいた上でお示ししたいと思いますが、基本的には30年度に終了している事業ですので、本年度中に事後評価を実施するというのが当座のスケジュールでございます。
その上で、おっしゃるとおり、POの御説明でありましたり、このプログラム自体の成果といったものをきちんとお示しする必要があったことは事務局としてはきちんと進めるべきであったところを、少し評価を先に出してしまったというところはちょっと反省すべき点だと思っておりますが、その点につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、改めて別の機会できちんとお示しをした上で、評価としてまとめたいと思っております。
【雨宮主査代理】 はい。了解しました。
【奥室長】 なるべく丁寧にはやらせていただきたいと思いますので、改めてその資料等をお送りさせていただきたいと思います。
【雨宮主査代理】 はい。
【小杉主査】 きょうは流れの説明を聞いたというところまでにしましょう。ここで深入りできる材料もありませんので。
では、この件は終わりまして、最後に事務局から何か連絡事項等ございますでしょうか。
【對崎補佐】 次回の本小委員会の開催につきましては昨日メールを差し上げたところでございますが、2月25日の15時から17時で開催をさせていただきたいと思っております。
また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にメールにて御確認いただきまして、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただきます。本日の配付資料につきましても、後日、文部科学省ウェブサイトに公開をいたします。
以上でございます。
【小杉主査】 それでは、以上をもちまして、第10期の第34回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)