量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第33回) 議事録

1.日時

令和元年12月24日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 15階 15F1会議室

3.議題

  1. 有識者からのヒアリング
  2. 我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について(調査結果まとめ)
  3. その他

4.出席者

委員

石坂委員、伊地知委員、内海委員、岸本委員、鬼柳委員、小杉委員、近藤委員、阪部委員、高橋委員、高原委員、田中委員、宮内委員、山田委員

文部科学省

磯谷科学技術・学術政策研究所長、角田科学技術・学術総括官、渡邉研究開発基盤課長、奥研究開発基盤課量子研究推進室長、對崎研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

理化学研究所光量子工学研究センター 大竹チームリーダー

5.議事録

【小杉主査】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第33回になりますが、量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。本日はお忙しい中、御出席いただきありがとうございます。
本日は、13名の委員の皆様に出席いただいております。雨宮委員、佐野委員、山重委員の3名の方が御都合により欠席です。
あと、議事次第にありますように、有識者のヒアリングを実施いたしますので、理化学研究所の光量子工学研究センター、中性子ビーム技術開発チームの大竹チームリーダーに御出席いただいております。
本日は、文科省の科学技術・学術政策研究所の磯谷所長にも御出席いただいております。一言よろしくお願いいたします。
【磯谷所長】 恐れ入ります。小杉先生、ありがとうございます。今年の7月まで研究振興局長をしておりました磯谷でございます。今、NISTEPの所長をしておりまして、前回、私どもの状況についても御説明をさせていただいたと思いますが、雨宮先生にもデルファイ調査の分科会をしていただいて、この分野の取組についても、我々としてもウオッチをしているところでありますので、また先生方にも引き続き御指導いただきたいと思います。きょうは出席をさせていただきます。ありがとうございます。
【小杉主査】 よろしくお願いいたします。
それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【對崎補佐】 事務局でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
本日はペーパーレスでの実施とさせていただきますので、お手元の端末をご覧いただければと思います。端末には、資料0として議事次第、資料1-1が鬼柳委員の御提出資料、資料1-2が理研大竹チームリーダーの御提出資料、資料2-1が調査結果を踏まえた議論の論点(案)、資料2-2が今後の議論の進め方についての(案)、資料3が文部科学省の大型施設関係の予算の資料となっております。
端末の不具合等はございませんでしょうか。もし会議の途中で、端末の不具合等ございましたら、事務局までお声掛けいただければと思います。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。それでは、議事に入りたいと思います。
では、議事次第の1番にありますように、有識者からのヒアリングということになっております。事務局より趣旨等説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 今期の小委員会では、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方を検討するために、随時、ビーム施設の設置者や施設の利用ユーザーからの聞き取りを実施していくこととしております。
前回までレーザー関係のヒアリングを行っておりまして、今回は、中性子線施設関係ということで、鬼柳委員と、理化学研究所光量子工学研究センター中性子ビーム技術開発チームの大竹チームリーダーに御発表をお願いしております。
【小杉主査】 それでは、鬼柳委員より20分程度で説明をお願いいたします。
【鬼柳委員】 それでは、鬼柳から説明させていただきます。マイクは必要でしょうか。大丈夫ですか。大急ぎで作ったので、時間オーバーになっていますので、早口で進めさせていただきます。
日本には、大型から小型までの中性子があるので、その現状と利用例、それから、施設連携という話をこのような流れで話させていただきます。
中性子源の現状ということで、まず世界の中性子源ですけれども、これは赤が原子炉中性子源で、青の星印が加速器です。加速器の方は、日本のJ-PARCがありまして、アメリカのSNS、これが世界最高。それから、イギリスのISIS、ロスアラモスのLANSCE、それから、中国のChina Spallation Neutron Sourceが100キロワットのところ、今、80キロワットぐらいまで来ているという状況になります。そのほか、小型加速器が日本ではたくさんありますし、アメリカのレンズ、それから、中国には北京大学、清華大学、その他の研究所。それから、韓国も小型の中性子源を作ろうとしております。
それで、中性子源としては、今、世界最高を目指して、ESSがスウェーデンで作られようとしております。2022年ビーム供給開始です。圧倒的に原子炉中性子源が多いです。日本のJRR-3もありますし、オーストラリア、韓国、それから、世界最高のILLということですが、最近、老朽化等々の理由でシャットダウンするところが出てきています。ドイツは既にシャットダウン、フランスのものも今年のうちにシャットダウンということになっています。それに代わるものとして、フランスではSONATEという計画、それから、ドイツではHBSという計画があって、いずれも中型中性子源というような形で、加速器を使ったものを計画中であります。原子炉からシャットダウン後は加速器という流れに移りつつあるということです。
これは日本の中性子散乱という、ビーム実験用の施設の一覧ですけれども、加速器中性子源として一番大きいのはJ-PARCで、あと、その他としては北から、北大のHUNS、青森の量子科学センター、それから、理研のRANS、京都大学のKUANS、それから、京都大学の複合原子力科学研究所のLINAC、それから、商用としては住重のATEXというのがあります。
そのほか、BNCTがメーンですけれども、将来的には中性子ビーム応用も考えているというので、茨城のiBNCT、それから、名古屋大学のNUANSがありまして、AIST、産総研で今現在建設中のもあります。原子炉としては、JRR-3が2021年に再稼働予定。KURが現在順調に動いています。ただし、たしか2026年だったと思いますけども、シャットダウンの予定という状況にあります。
これは、ざっと中性子の強度と、どんなことをやっているかを書いたものですけれども、KUANS、10の11乗n/secぐらいです。J-PARCが10の17乗n/secですので、6桁上がります。RANS、HUNSはこれと比べて5桁ぐらい下がる。最初は透過測定的なことができて、構造解析、それから、ダイナミクスが測れるというふうに応用が増えていっています。当然このあたりでは高強度、高分解能の測定が可能と。JRR-3はほぼJ-PARCと同じで、強度的にはJ-PARCよりも若干大きい。KURはこの辺と。最近、ソフトエラーの加速試験というのも小型加速器から大型を使って行われるようになってきたということがあります。
ホウ素中性子捕捉療法というのは比較的大きな強度で、10の13乗から10の14乗ぐらいというふうになっています。ここの14乗は昔、高エネ研にありましたKENSですけれども、今それがなくなって、このあたりがスポッと抜けているというのが日本の状況であります。
最近の研究の例として、J-PARCとか小型の例をごく一部、断片的で申し訳ないですが、紹介させていただきます。
これはJ-PARCの散乱装置ですけれども、イメージングから構造解析、それから、ダイナミクス等々が測れるものがあります。23本中21本が動いていまして、この2つが最近動き出したということです。小型中性子源では、この中の幾つかの測定ができるということで、それぞれの施設で頑張っているところです。
これはJ-PARCで最近出された結果ですけれども、三角格子ハイゼンベルグ反強磁性体における量子効果ということで、この物質が理想的な量子スピン、フラストレーション系ということでありますけれども、それのスピン励起状態についてよく知られていないということで、高品質の結晶を使って、AMATERASという高性能装置を用いて測定した。これは、3ミリエレクトロンボルトがここで、ここがQですけれども、励起を見てやると、ここの領域はスピン波理論計算でうまく合うんですけれども、この上のところ、3ミリ以上のところで、新たなエネルギー連続性が分かってきたということで、新たな理論の構築が必要だということを示唆する結果になっているということです。
電池についてもいろいろやられておりまして、これはイオン伝導率と年代の関係ですけれども、2011年に新しい物質を見つけまして、拡散経路を明らかにした。ただし、1次元的なので、それを3次元的にして、更に高性能化するということで、2016年、こういうものを作って、3次元の経路を明らかにしていったということです。実際にこれが搭載されるだろうという発表がなされています。
電池については、小型中性子源でもやられていまして、北大のHUNSで、黒鉛電極の中にリチウムが入ると、だんだん層間が変わっていく、増えていくということで、ステージ4からステージ1まで変化します。それを中性子エネルギー依存透過スペクトルのブラックエッジ解析で調べようということも行われています。
中性子の波長の中性子透過率で、透過率がこのようにギザギザになっていますけれども、この一つのギザギザがブラックエッジのラムダイコール2dに対応するので、ここは格子面間隔の2倍の波長になります。これを調べることによって、結晶構造、結晶相、集合組織、それから、結晶サイズ、結晶格子面間隔、ひずみというような情報が得られます。
これは市販のリチウム電池の透過率を波長依存でみたもので、リチウムなので、透過率は0.1位になります。充電量を変えて測定したもので、実際は、これはほとんど重なるんですけど、見やすいようにずらしております。4,000mAhぐらい、大体95%ぐらいの充電率なんですけれども、そこに向かって、0mAhからだんだん面が広がっていくのが分かります。ステージ4、ステージ3、ステージ2となりますが、ステージ1に行っているのは余りないというのがここからも分かります。
それを実際に9センチ、9センチの中の分布で見たというのがこれですけれども、グラファイトの状態からステージ4、ステージ3、ステージ2というふうに移っていっているのが分かります。ただし、それが不均一だということも分かって、こういうデータを見ながら、電池の改良もしていくということであります。
次は、モーターの話ですけれども、モーターが60%ぐらいの電力を使っているので、高性能化が重要です。それを実際に設計に反映するには実機でどう動いているかを知りたいということで、モデルモーターを使って、見たというのがこれです。中性子は小さな磁石ということで、磁場中でラーモア歳差運動をするので、偏極度の解析から磁場強度の測定ができる。ここを見ていただくと、ちょっと動いているのが分かると思いますけど、モーターが回っています。こちらは磁場の方ですが、磁場がダイナミックに変化しているというのが見えます。こういう結果をシミュレーションコードの方に反映して改善していくというようなことが行われています。
これは高性能鋼の開発、トリップ鋼などの開発です。自動車の材料をできるだけボリューム的に減らしたいということで、こういう高性能鋼を使うわけですけれども、処理過程における結晶グレインの構造制御が高性能を得るキーということで、加工熱処理シミュレーターというのをJ-PARCのTAKUMIに設置して、in-situで処理過程を見ながらディフラクションを行うということをやりました。フェライトへの相変化が熱間圧縮で加速できる、動的変態があるということで、こういうものができているということを示しています。
これは理研RANSの例ですけれども、オーステナイト鋼の相分率評価というのも重要だということで、小型でできないかと。ディフラクションを実際にやりまして、実験で得たものと、実際の体積比のものを比較して、1%ぐらいの精度で一致しており、小型でこういうことができますよということをきちんと実証しています。
同じく金属の話ですけれども、これは北大でやっているX線の小角散乱と中性子の小角散乱を相補的に一緒に測ることで、析出物を同定できないかということです。これは運動量変化で、散乱強度です。これはX線で、これが中性子です。ここの差が225倍です。この物質が大体230倍の強度差を出すので、これがこの物質、アルミの中に析出しているだろうということを示しています。
これは私の趣味みたいなものですけれども、日本刀の解析です。これもブラックエッジによるものですけれども、結晶子サイズというのがブラックエッジで出てきます。それを示しています。
14世紀の備前、15世紀初頭の備前、それから、泉州和泉の刀。それと、現代刀。備前はまあまあ似たような特徴をしているんですけれども、泉州和泉の刀はちょっと違って、現代刀とも違う。こんなことを調べることによって、系統的に刀の特徴を出せないかなというようなことを行っています。
それから、大型から小型までの相補利用というようなことに話を移させていただきます。J-PARCができる前、できた当初というのは、北大しかなかったので、北大がいろんなことで共同してやっていました。でも、最近はいろんな施設が共同でやるということが進められているんですが、課題としてはほとんどが事情が分かっている人たちがやっているというところです。最初の例は、北大とJ-PARCでやったもので、鉛ビスマス。これは大型加速器中性子源のターゲットや、それから、高速炉の冷却材に使われますけれども、凝固時に膨張するという問題が当時ありました。それはγ相の生成によるということですけど、その生成がボリュームでどう変わるかというのをブラックエッジ解析で行いました。これが中性子波長で、中性子の断面積ですけれども、これが作った当初で、5か月後のものです。若干変わっていて、この辺がγ相の析出と関係します。
これは時間、252時間測り続けたものですけれども、水冷と炉冷で、水冷の方がγ相ができやすいということを示しています。
これはJ-PARCで測った、試料の中のγ相の分布です。かなり水冷では均一になっていますけれども、炉冷の場合には、ここでは示していませんけれども、非常にガタガタしているというのも分かりました。この長期間測定は小型向きの測定で、それから、高位置分解能、高感度で測るというのは大型向きということで使い分けています。
それから、これはRANSができた当初に、大竹さんのところでやっていた腐食した鋼板の塗膜下での水の動態イメージングです。腐食した鋼板の塗膜下で水がどのように乾燥していくのかを実測し、非破壊で腐食の進行と水の動態の相関を明らかにするために行われたもので、4,000秒まで見ています。通常鋼と特殊鋼では、特殊鋼の方が水が早く無くなっているのが分かります。
それから、短時間。これは500秒ぐらいのところで、J-PARCで見たものですけれども、数十秒、30秒ぐらいの間で、ここの状況が変わっていっているのが見えます。大型と小型をこのように使い分けて、水がどう変化しているかということを長時間と短時間で明らかに示したという例です。
それから、これは最近やられたもので、界面活性剤自己集合体を用いた非溶解性中性子吸収材の開発ということで、花王の人たちがやっています。これは福島の燃料デブリの取り出しのときに、中性子吸収材を入れて再臨界を防ぐんですが、こういうふうにデブリが壊れたときに、うまくこの中性子吸収材がずっと残っているような新しいものを開発したというものであります。これは開発したものを石膏に浸けたという模擬的な試料ですけれども、これの遮蔽性能と、ちゃんと付いているかどうかを見るという実験をやっています。
遮蔽性能を測るために中性子の透過率をいろんな中性子吸収材の量で測定しています。中性子波長での透過率です。これが熱外中性子。この熱~冷中性子領域を遮蔽したいということで、それぞれこんな減衰曲線が得られていますけれども、ほぼ理論と一致していて、水分と気泡の影響が若干見られたというようなことで、小型中性子源でこれは測れるということです。
次が、これは開発品のサンプルがちゃんと付いているかというのを見たもので、この辺は透過していますけれども、これはアルミのモデルに付けたものです。開発のサンプルが真っ黒になって見えているので、全方向で遮蔽されているということが示されています。というようなことを小型と大型を使い分けて、やってきているという形です。ただ、こういうこともやられているんですが、それを更に組織的にやっていって、もっと効果を上げようということで、中性子施設の連携ということが今考えられています。
日本では、大型から小型の中性子源があって、それぞれ役立ってきているということが知られてきています。ただし、絶対数は少ないし、測定時間が長いということがあります。中性子資源の効率的・効果的利用が望まれるということで、小型、中型、大型それぞれで適した実験をやるべきだろうということです。
それで、連携を通して、中性子施設の実験・研究レベルの不断の向上というのを考える、人材育成を促進して、中性子利用研究の基盤を確かなものにするというようなことを考えています。最終的な目的は、中性子利用成果の最大化ということで、施設をうまく使いましょう、施設のレベルを上げましょうということと、あとは個人的に思っているのは、いろんなことを標準化するようなことで、施設側のロード、ユーザーのロードも下げていくということが重要じゃないかなと思います。これのために施設を集めて、その周りに大学とか企業も入った施設ネットワークというのを考えています。
この関係で、学術会議の大型マスタープランに、中性子施設ネットワークというのを提案しました。中性子科学会が主体になっています。学会でも特別委員会、部会から連携の重要性が提言されていまして、加速器学会との覚書、原子力学会との合意、それから、肝心の施設の方ですけれども、JCANSという、主に小型中性子源の協議会ですけれども、連携の組織がありまして、そこを介して、大型との合意を取って、これを提案したという状況に今あります。
どんなことが期待されるかというと、研究上の成果が増大されるというのは当然なんですけれども、産業応用も促進できるだろうと思っています。製品設計・製造・保守の流れということを、ここに書いていますけれども、基礎研究というところでは、世界拠点施設、J-PARCのような大きな施設を使う、製品設計、生産設計では、地域拠点、ちょっと小さめの施設を使う。それから、生産工程では、施設中性子源、もうちょっと小さな、HUNS、RANSクラスのも使っていきたい。それから、実際に現場まで行きますと、今、理研でいろいろ開発しています可搬小型というのが重要になるだろうということを考えています。いろんな人材を適切に配置することによって、効率的な運用と人材の流動性を確保したいというようなことも考えています。
そのためにユーザーがアクセス・利用しやすいシステム、それから、施設の階層的利用ができる、そういうシステムを構築したいと考えています。今、ユーザーが各施設に相談する、あるいは全然相談しないで諦めるというような状況です。将来的には利用窓口を作って、相談しやすくしていきます。当面はJCANSを窓口にしています。
それから、開発の必要度に応じていろんな中性子源を階層的に使えるようにしたいと。でも、現状、ここの地域拠点施設が不足していると考えています。
人と物の交流、いろんな検出器などのデバイスの相互利用の推進、ソフトウェアの共通化、人の交流による施設間ノウハウの普及で、こんな効果があります。これはソフトウェアに関して適当に書いた図ですけども、大学とかファシリティが不断に、不断にというのは常にソフトウェアの開発、改善をやっていって、ユーザーにも使いやすくしていくというようなことも大事だろうということです。
具体的な活動としては、中性子科学会に中性子施設連携ワーキンググループを設置して、具体的連携に向けて、施設関係者、必要に応じてユーザーを含めた議論を進めるということを考えています。実際には、できるところから連携を始めていくということで、ネットワークの最終形に向けてのトライアルとしての活動を進めています。
それで、具体的にどんなことをやろうとしているかという例ですけれども、人材育成とか中性子科学の普及ということで、今ある中性子スクールに加えて、小型・中型施設を中心にテーマを決めて、スクールを実施してはどうかと。イメージングの装置というのは、全ての中性子源で実験が行われるので、それを例にした施設連携の検討で、データ書式とかソフトウェアの標準化とか附帯設備等の共通化、人材交流、人材育成というようなことを考えていこうと思っています。
それから、中性子装置の統一的性能評価。どこの装置でどんなことができるかというのをもう少し分かりやすくできないかということで、そういうことも考えています。ということで、まとめですけれども、中性子利用は、J-PARCが安定に稼働しているということもあって、小型中性子源も含めて進んできていますけれども、まだ認知度は低いというところがあります。
小型中性子源でも利用が増えてきていて、オンデマンド的な利用が小型でもちょっと難しくなりつつある。なので、中性子施設(地域拠点中性子源など)、そういうものがないと産業界の希望に添えないということがあります。
階層的利用で、中性子資源の有効利用をして、成果を創出していきましょう。それから、共通化・標準化、そういうことでいろんなものを高効率化することで、ユーザーも使いやすくて、施設側もロードを減らすということで中性子科学の発展を有効に進めて行くということが大事で、それに施設連携が寄与するだろうということです。
以上であります。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
今の鬼柳委員の御説明について、質問、御意見等ありましたらお願いいたします。
続いて、似たような中性子のヒアリングもありますので、ここでは5分、10分取れるとは思いますけれど、何かございましたらお願いいたします。
国際的に見たら、こういう小型の中性子源が割とあるというのは日本が一番進んでいるということでよろしいんでしょうか。
【鬼柳委員】 はい。日本が一番進んでいると思います。さっきJCANSと言いましたけども、中国が最近、CCANSと言い出して、中国内の連携をやろうとしています。韓国がKCANSというのを作ろうとしていて、ヨーロッパはECANSという話です。やっぱり原子炉がなくなってきているので、どうしても加速器に移らざるを得ないという状況が世界的にあります。
【小杉主査】 中型に位置付けられるところは、京大の原子炉が中型という扱いですか。
【鬼柳委員】 はい。今のところはそう考えていますけれども、多分2026年だったと思うんですけれども、シャットダウンする予定ということで。
【小杉主査】 ええ。その後は、もちろんKENSもないし。
【鬼柳委員】 ないですね。
【小杉主査】 小型からJ-PARCまで5桁違うので、やっぱり中型は絶対必要という感じですか。
【鬼柳委員】 ええ。と思っていますが。
【小杉主査】 使い分けのところが小型と超大型と組み合わせてというところが、片や、1年ぐらい掛けて測定して、片や、比較としてはどのぐらいですか。J-PARCの方の実験というのは。
【鬼柳委員】 J-PARCは、あれはあの測定だったら1時間も掛からないと思います。
【小杉主査】 じゃあ、片や1時間で、片や1年掛かると。
【鬼柳委員】 物によっては数分で行っちゃいますので。
【小杉主査】 それはやっぱり1年掛けるというのは意味があることなんですか。
【鬼柳委員】 あれは1年かけて同じサンプルで状態がどう変わるかというのを見る。
【小杉主査】 ああ、変化の方が時間が掛かるということですね。
【鬼柳委員】 変化の方が大事ですね。逆に、J-PARCはそんな使い方はなかなかできないので。
【小杉主査】 ええ。できないですね。
【鬼柳委員】 小型があるというのはそういうメリットがあると思っています。
【小杉主査】 何かあれば。
【岸本委員】 済みません。いろいろな成果が出ていて、すごいなと改めて思ったんですけど、一つ、途中で出てきました大型から小型の相補利用のところで、ほとんどが事情が分かっている人に限るという点において、その事情のところがとても大切なんだろうなと思うんですけども、それは各大型から小型までのそれぞれの特徴的な使い分けを理解している人のことなのか、それともいろんな利用の仕方の問題なのか。何かございますか。
【鬼柳委員】 実際に僕が知っている範囲ですと、大竹さんのところは両方知っていますよね。北大はもちろんそうですけれども、それから、花王の方たちも、僕らはちょっと話をしたりしているので、そういうところで、さっきの話のように小型はこっちの測定で行きます、これはやっぱり大型じゃないとできないかな、というようなことで使い分けています。情報が入ればうまく行くと思うんですけれども、普通の人に。普通の人というか、余り施設になじみのない人だと、本当にどっちを使ったらいいかというのが見えない。そういうところをうまく相談できる窓口があると良いと思います。
【岸本委員】 なるほど。それが先ほど言われた相談窓口ということになるわけですね。
【鬼柳委員】 そうですね。ええ。
【岸本委員】 分かりました。
【小杉主査】 違いは強度だけなんですか。それとも、装置そのものも随分違うんですか。
【鬼柳委員】 強度が違うことによる装置の差というのは有ります。
【小杉主査】 手法は同じですね。
【鬼柳委員】 手法は同じです。
【小杉主査】 そこはやっぱりノウハウがあって、専門の人がいないとなかなか。
【鬼柳委員】 そうですね。ある程度のノウハウは共通だと思うんですけど、やっぱりそこの装置はそこの装置なりの特長があり、サンプルはこれぐらいとか、そういうことも違います。
【小杉主査】 小型施設間でも、そういうところをちゃんとやっていかないとそろってこないという。
【鬼柳委員】 お互いにうまく使い分けられないということになると思います。そういう意味では情報交換というのは大事だと思っています。
【小杉主査】 何かありますか。
【鬼柳委員】 それで、ちょっと忘れていました。これはイメージングだけなんですが、アイソトープ協会で作ったものがあって、こんなことをやっていますというのと、どんな施設があるかというのを後ろにつけてありますので、回しますのでご覧になってください。もし欲しい方がいらっしゃいましたら持って帰っていただいて結構です。大竹さんはいいですよね。
【大竹チームリーダー】 はい。あります。
【高原委員】 広く施設に関わると思うんですけれども、中性子の場合はやっぱり重水と軽水が区別できるというのが大きな特徴で、特に化学屋から見ると、やはり重水素化施設ですね。それがやはり整備されていない。それがあれば恐らく企業の方もかなり、産業界との連携も強くなってくると思うんですけれども、そのあたり計画はされていると思うんですが、ちょうど施設の方がいらっしゃいますので。
【鬼柳委員】 もうJ-PARCに重水素化ラボですか、それができています。詳しい話は金谷先生J-PARCからされた方がいいと思いますので。
【小杉主査】 例外的ですけど、陪席者から。
【鬼柳委員】 まずいですか。
【J-PARC(金谷)】 済みません。J-PARCのMLFの金谷でございます。重水素化ラボは立ち上がってはいるんですが、なかなかケミストリーを分かった方が、若しくはバイオケミストリーも含めてですが、分かった方と一緒にやらないと。そこで今なかなか。立ち上がり始めてはいるんですが、全ての重水素化の問題に手が行き届くには少しまだ時間が掛かっているという感じですが、相談していただければ、我々としては一緒に重水素化の作業をやらせていただきますので、現状としては今、そんな感じでございます。
【小杉主査】 京大の方にもあるんですよね。
【鬼柳委員】 はい。京大の方も生物関係で杉山先生が関わっているところがあるので。
【小杉主査】 やっぱりそういうところは共通拠点になっていますね。
【鬼柳委員】 ええ。これから少しずつ重水素化のパワーと言うんですかね。それも向上していくというふうに思っています。
【高原委員】 期待しています。
【小杉主査】 ほかにございますか。
【田中委員】 ありがとうございました。ちょっと分野が遠いので、全体像が分からないので質問します。お話を聞いていると、問題は今ある資源をいかに有効にアプリケーションに結び付けていくかにあり、そのウィークポイントにより、現在の施設の有効活用が進まないという印象を持って聞いておりました。今ある中性子源のこの性能を飛躍的に伸ばすと、こういうことができるようになる、そういう話には聞こえませんでしたが、J-PARCで十分な性能が既にあって、それを使い切れていない、そういう理解でよろしいんでしょうか。
【鬼柳委員】 全くそういうことは申し上げておりません。J-PARCはきちんとした成果を上げています。
【田中委員】 いや、私が言いたかったのはそういうことではなく、私は放射光の分野ですが、そこですと、中性子のJ-PARCと同じような存在はSPring-8ということになります。SPring-8の現状でのパフォーマンスは、世界的に見るとトップから滑り落ちる、まさにそういう状況にあるので、光源性能のアップグレードの話が賑々しいんですけれども、今の話にはそういった内容は含まれていなかったなということです。
【鬼柳委員】 その話はむしろ、J-PARCの話が後で出るだろうと思っていますので、今日じゃないですけど。そこは含めていません。
【田中委員】 そういうことですか。
【鬼柳委員】 だから、皆さんJ-PARCに行くんだけども、その前段階として、中型で、あるいは小型でやった方がいいという実験があって、全体として効率を上げていくということを考えたいという話です。
【田中委員】 分かりました。今日のお話は、敢えてその部分にフォーカスをされていたのですね。ほかの方が違うところでJ-PARCに関する話をされると理解しました。
【鬼柳委員】 J-PARCはかなりいい装置ができています。世界的に見てトップクラスの装置ができています。J-PARCそのものについては、またJ-PARCの方の話があると思いますので、そこは私の方では触れていませんということです。
【田中委員】 分かりました。
【小杉主査】 時間の関係もありますので、次の理研の大竹チームリーダーでまた20分ほど御説明いただいて、またそこで議論をしたいと思いますので、大竹さん、よろしくお願いします。
【大竹チームリーダー】 理化学研究所、光量子工学研究センター、中性子ビーム技術開発チームの大竹でございます。本日は、私どもの理研小型中性子源システムRANSのプロジェクトを中心に、ニーズから、そして、どういった方針でやっていて、将来どういったことを目指しているかという形で御紹介させていただきたいと思います。
全体の小型のニーズ、それから、スキームに関しては、今、鬼柳先生から御紹介あったとおりでございますけれども、特に理化学研究所で取り組んでございますのは、最終的に小型が本当に小型として中性子線の特徴を生かした線源として、また装置として役に立つようなシステムの開発、また、その実証、そして、その先の応用に対して、新しい計測技術、それから、データ解析の技術も含めましたところで開発するということでございまして、最終的な目標の一つとしては、やはりこういった量子ビームの施設が、又はシステムが必要な場所で使えているような、そういったような普及型システムの開発といったことを目指してございます。
具体的にどういうことかと申し上げますと、先ほど御質問でもございましたように、例えばものづくりの現場ですと、SPring-8をはじめとする非常に最先端の放射光の施設がありながら、ラボレベルではX線のディフラクションであるとか、又は小角であるとか、イメージングであるとかといったものが共存しながら、それぞれトップサイエンスを築き、そして、ピークを上げていると。また、産業界のニーズにも応えていく。
それに対しまして、中性子の方は、原子炉、それから、加速器ベースの大型施設がございますけれども、ラボレベルで使えるような、いわゆる数値的に評価分析を可能とするような小型の装置がなかなかまだ存在していないというところで、私ども加速器ベースの中性子源できっちりとした数値も与え、産業利用、また、人材育成、そして、それがまた大型のトップサイエンスのピークを更に上げていくというような形での寄与ができるということを目指して、開発をしていこうというのが目標の一つでございますので、いわゆる小型での、こういった加速器ベースのほかに、もちろんRIですとか、核融合を使いました中性子発生管というのがございますけれども、そういったものから一線を画しまして、分析評価装置として、きっちりとしたもの、また、基礎研究の諸段階で、やはり中性子そのものが使えるような形の装置開発、また、計測技術の開発というものを目指してございます。
具体的にものづくりの現場でどういったニーズがあるかというのは、RANSのまず1号機の説明をさせていただきました後に、鉄鋼材料を例に取りまして、具体的な計測例、また、大型との比較においての小型の性能というものを御説明させていただきたいと思います。
こういったことを可能にしようといたしますと、やはりいろいろな場所に設置すること、また、利用されることを想定いたしますので、かなり安全性にも注意し、また、手軽に使えるようなシステムということで、明確なシステムに対する要求というものが出てまいります。そういったものに答えるというのが一つでございます。
また、社会からのニーズという面では、決してものづくりだけではございませんで、やはり中性子線の非常に高い透過能、また、分析能をきっちりと使いこなしますと、現在、社会インフラのニーズ、例えば、こういった落橋事故というのが、特に2000年以降、起きてございまして、こういったものに対しまして、現在では、目視点検、又はコア抜きという形で、実際の構造物を傷めて、壊して見るものしかございませんが、中性子線を使うことによって、例えば、初期の施工不良ですとか、また、これは昨年のイタリアの落橋の事故の例でございますけれども、こちらは塩害でございまして、コンクリート構造物の中に、海風、又は、山間部ですと凍結防止剤で塩がまかれますので、日々、塩がどんどんコンクリートの中に入っていって、中の鋼材が腐食して、破断して、あるとき突然、外から全く見えない状態ですのに落橋するといった形の事故が起きてございます。こういったものに対しても、いわゆる量子ビームの特徴としての、非破壊で観察する。特に分析能力がこちらでは必要となりますが、そういったことに応えるような技術開発を目指してございます。
また、今年は実は2か月ほど前の10月に突然、台湾で、まだ完成から20年しかたっていない橋梁の落橋事故が起こりました。こちらの方は吊り橋でございまして、北台湾の海沿いにございますけれども、こちらはすぐに裁判沙汰になってございますので、私ども詳細なデータ、また状況は入手できませんけれども、こういったものが繰り返し起こることに対して、やはり予防保全の観点からも、中性子線の新たな利用、また、その威力をきっちりと把握するような装置開発を目指してございますということで、実際に現在使われているような、こういったラボで使われている電子線顕微鏡であるとか、X線の装置と並行して中性子線が使えるように、もちろん大学、また、公設試験場の現場で人材育成、ニーズに応えるということも含んでございます。また、屋外の現場で、実際に壊さずに、ニーズに応えて、非破壊で、予防保全、また、維持管理メンテナンスという形でのインフラへの実際の予算削減にも寄与する。安全・安心、予算削減に寄与するような装置開発というものを目指してございます。
具体的にこういったものを目指す中でも、先ほど鬼柳先生から御説明ございましたとおり、まず大型施設しかございませんので、小型中性子源で何ができるかというところに、2013年から中性子発生に成功いたしました理化学研究所のパルスでございますけれども、小型の中性子源、理研のRを取りまして、RANSと名付けておりますが、RANSでは、実際の構築、そして、計測技術の開発を行いました。
基になってございますのは7MeVの陽子線パルス加速器でございます。このときに注力いたしましたのは、発生中性子数としては、10の12乗、こちらは北海道大学での実績を基にいたしまして、毎秒、ターゲット周りで10の12乗の中性子が発生する。先ほどの比較でまいりますと、5乗、6乗は違いますので、これだけ小さいと何ができるかというふうな観点もございますが、この先でいろいろ応用例を紹介させていただきますが、最終的に必要なのは、やはりいいS/N比でいかに高効率に計測するかといった計測技術の高度化でございました。
あと、この小型の特徴といたしましては、パルス幅が可変である。それから、繰り返し周波数が可変であるということで、実際にニーズに応える形で中性子線を毎秒何パルスでやりますか、どれだけのパルス幅にしますかということがオンデマンドで変えることができるというのが、やはり手元で使えるという特徴を非常に生かすことができてございます。
現在のRANSがどのように見えるかという写真がこちらでございます。奥にございますのが7MeVのプロトンライナックでございまして、この青い箱の中に、金属ベリリウムターゲットと減速材、遮蔽材等が入ってございます。前方から今、中性子を取り出しております。
現在、ここに実は横穴が空いてございまして、小型の特徴の一つとして、大型施設では減速材ターゲットの近くで、とても近寄れませんので変更できませんが、私ども、RANS開発から2年目に、実はこの建屋が完成いたしまして、移設の折にこちら、減速材が平易に変えられるシステムを導入いたしました。
現状では、熱中性子源の減速材、3種類、4種類を変えることができてございます。こちらは減速材の写真でございますが、熱中性子用ポリエチレン減速材2センチ、4センチ、6センチ。それから、こちら、結合型、非結合型といって、パルス幅と強度、スペクトルが異なることを選べますが、こちらは非結合型の減速材。この交換に大体10分から20分でできるということで、こちらに示しました4通りのスペクトル中性子の異なるスペクトルを1日の実験の中で何回でも変えることができます。こちらはユーザー、また、私ども施設の装置開発しております者が変えてございます。
先ほど少しお話しいたしました社会インフラの橋梁を見るためには、コンクリートの構造物、分厚いものを見ますので、ミリオンの高い、エネルギーの速い中性子線を用いております。そのときには減速材は外します。ですので、この実線のスペクトルは低エネルギーの、いわゆる分析に使う中性子成分は1桁以上少ない。分析の方で中心に使います場合には、こういった減速材を入れて、実際のこちらのパルスの長さですとか強度分布ですね。高速を変えるといった形での小型の特徴を生かした私どものRANSというシステムになってございます。
具体的にここから応用例を幾つか御紹介したいんですけれども、私どもは現在、これはRANSを上から見た写真でございますが、線形加速器がございまして、ターゲットステーション、ビーム取り出し口、中性子線が出た後の、中性子ビームラインは、こちらは全部キャスターが付いておりまして、自由に取り外しができます。サンプル位置はターゲットから1.5メーターから6メーターまで、またサンプルの大きさは、ここの空間に置けるものでしたらどんなもので置けますので、1メーター以上の大きなコンクリート構造物も計測可能となってございます。
具体的に行っております中性子の計測は、いわゆる低エネルギーのイメージングの実験、また、ディフラクションの実験、また、即発ガンマでの元素分析。小角散乱の実験装置に関しましては、現在、茨城大学の小泉先生のところで装置開発をして、RANSの小型専用のマシンとしております。
また、高度なイメージングの方も、東北大学の百生先生とのコラボレーションをさせていただいておりまして、位相イメージング装置の開発といった形で、実はRANSで行っている実験は、私ども理化学研究所で開発しているばかりではなく、他大学の先生方とのコラボで、いろいろな計測技術が使えるといった形になってございます。
また、インフラ非破壊の方では、速い、透過能の高い中性子線を使いました透過能イメージングのほかに、私どもが開発いたしました散乱の中性子を使った、表面から全部、路面の中が見える、反射で中を見る、表面から内部を見るという形でのイメージングの計測といったものもやってございます。
また、私どもにとって非常に重要なのは、やはり日本は世界で冠たる、一番の性能のJ-PARCセンターがございますので、線源、それから、計測技術、また、高輝度化といったところでは、J-PARCセンターとの協力によって、実は私どものRANSの線源の高輝度化の開発、又は検討も行ってございまして、実際に計測技術の方でも各ビームラインとの御協力を頂いております。
こういった形で、日本では小型の線源が数多くございますが、やはり大型は非常にトップを走っているというところが重要でございまして、その技術を基に、小型は更に先に行くことができてございます。
幾つか例を御紹介させていただきます。まず、ものづくりの現場での非常にニーズの高い材料開発、また、材料評価としては、軽量材料の開発で、高張力鋼板の、例えば非常に重要な材料とされておりますが、こちらで重要となっておりますのは、強度と加工性の両立でございます。そのためには、複数の結晶構造が同一になった材料に対して定量分析を行うということが必要になってございまして、RANSでは小型の強みを生かして、ユーザーさんによっては、何しろ1日にたくさんのサンプルを測りたいと。つまり、ビーム強度を最大化に使ってほしいという場合がございます。
また、1サンプル、例えばビーム強度を生かす場合は、1サンプルを例えば1分で計測してほしい、と依頼すれば、そこで定量化を出すように、小型では手軽に設定を変更することができます。高分解能を出してくれと言われましたらば、やはり高分解能設置にいたしますので、1サンプル1計測、例えばディフラクションでしたら30分掛けるような形で、それぞれの装置環境、また、遮蔽環境を変えることによって、計測のセットアップを変化させるということを現在行っております。例えば、加工性のよい材料であるかどうかということで、こちらは鉄鋼材料の集合組織を測ったものでございます。軟鋼板、IF鋼のまず最初に与えられた状態、その後、現場で10%圧縮しまして、こういった結晶構造の違いを見るということもしてございます。
こちらに関しましては、小型の結果と大型の結果、どのぐらい一致しているかという検証でございまして、RANSの結果と、こちらはJ-PARCのiMATERIAで全く同一サンプルを計測していただいて、上下を見比べていただくと分かりますとおり、110から310までの結晶方位に関しまして、同じ集合組織を得てございます。これは何の役に立つかというと、現場でこういったプレス加工ですとか、塑性加工した場合でのトラブルを未然に防ぐための材料解析に役に立ってまいる予定でございます。
また、材料そのものの分析に関しましては、先ほど鬼柳先生に出していただいたRANSの結果、2016年の結果でございまして、こちらは2年間でこのぐらいは高度化いたしまして、バックグラウンドもほとんどゼロになりまして、分解能も非常に上がりまして、FCC、BCCが入っているものに対しまして、オーステナイト13.1%、こちらもJ-PARC、TAKUMIの御協力を得まして、J-PARCとRANSの差は13.1%と13.9%ということで、私どものディフラクトメーターでは優位に1%以下の精度で、複相の鋼板の相分率を数分から数十分で測ることができます。ですので、現場にこの小型を持っていけば、十分にリクエストに応えることができるという形になってございます。現在、更なる高分解能化に取り組んでございまして、モデレーターとともにこういった計測の高速化、高分解能化の開発を継続的に行ってございます。
また、イメージングに関しましては、先ほど鬼柳先生から御紹介ございましたけれども、私どもRANSの実験の技術をそのままJ-PARCに持ってまいりましてBL10にて実験をいたしました。その後、解析技術も同時にイメージングに関しては開発いたしまして、こちらはカラーで示しておりますが、実は分解能は2ミリ、1ミリで腐食がどのような形で促進していくかを、水の保持のしやすさのマッピングということで、J-PARCを使った形での高分解能化の開発をいたしました。現在、この技術を再び理研の小型に持ってまいりまして、平面の分解能を上げることは難しいんですが、実は厚さに関しては、1桁以上、上げられるということが分かりました。
これは何ができるかというと、小型で見ていくと、小型でもちゃんと薄い水素は現在、数値を言うとあれでございますけれども、100ミクロン以下、数十ミクロンの水素に関しては、私どものところで計測可能となっています。こういった形で小型だけで開発していたら、やはりここはブレークスルーできませんでしたが、大型との連携といった形で、ニーズに応えた技術開発というものをしております。
この薄い水素の例といたしましては、一昨年、JAXAさんから人工衛星のパネルの中のハニカムの接着を見てほしいということで、私どもの方で、実証1号機のパネルの非破壊検査をいたしました。おかげさまで、今年の1月に衛星打ち上げが成功して、現在はこういった形でのハニカムのものがちゃんと空を舞ってございます。このように、小型がちゃんと現実のものとして中性子の威力を発揮して、実際の役に立っていく、また、利用されていくということを理化学研究所の方では展開してございます。
さらに、社会インフラに関しましては、私どもが新しく開発した技術の紹介を少しさせていただきますと、透過でコンクリートの中、30センチ、最初2年間で見えました。次に、例えば滑走路の中が見えないか。透過では劣化が見えないです。コンクリート構造物の劣化は大体、舗装の下の2層目に起こるということで、1層目の厚さが大体4センチから10センチ。まず、最初に上に10センチ、コンクリートがある奥の穴、また、奥の水を表面から見てほしいということで、私ども反射のイメージングというものを開発いたしました。中性子を上から打ちます。1回、検出器を透過します。そうしますと、中にある劣化の部分だけ可視化できるという形の新しい技術開発に成功いたしまして、こちらは、奥に水がある場合、こちらは穴がある場合でございますけれども、後方散乱してくる中性子線を、タイミングと、それから、強度、それから、エネルギーも選びます。そういった形でイメージングすることによって、こちらは実は長さ60センチですが、60センチ四方を一遍で可視化できます。こちらはアスファルトの床版、道路面の例でございますが、奥に劣化がある場合、こういった表層がアスファルトでも奥の劣化をきれいに可視化することができてございまして、更に今、具体的なリクエストに応えて、この計測技術を更なる高度化、また、実用化へ向けた開発を行ってございます。
また、塩害での落橋事故に関しましては、中性子線、透過能が高うございますので、大体7センチから10センチは、橋梁の検査要領で決まってございますので、そこまで中性子線を打ちまして、奥から出てくる即発ガンマのガンマ線を測るという、この計測をこういった大きなコンクリートに対して開発いたしました。これによりまして、現在では、6センチ、10センチという形で、深さの異なる位置も同じ1本の中性子線を入れることによって、コンクリート内部の塩分濃度をきっちりと測ることができてございます。
このような計測技術を基にして、現場に導入する中性子源といたしましては、更なる2号機の開発を進めてございまして、プロトンの加速器2.49MeV、実際にはRFQ1本で開発してございます。一応屋外に出す場合は、法律で直線加速器4メガ電子ボルト未満であれば、都度許可を得ずに原子力規制委員会の届出だけで足りるといったものがございますので、こちらにのっとった開発をしてございます。現在、RANS-II、RANSに比べますと、大きさで、長さでは現状で3分の1、重さですと10分の1以下といった形になってございまして、こちらはRANS-IIの全体の写真でございますが、7月に施設検査を合格いたしまして、ビーム実験の方の施設検査も10月に合格いたしました。
ということで、現在こちらはRANS-II、2号機の調整をしております。また、この2号機をRANS-III発展させ、更なる小型化、高度化に向けた開発も、現在、東工大の林崎先生のところと同時に行ってございました。このように、小型の中性子源でもスタティックな変化でございますと、いろいろイメージングのほかに、ディフラクション、また、小泉先生の小角もございますけれども、こういった計測技術がきっちりと性能を上げて、定量分析ができる。また、屋外利用に関しましても計測技術、また、小型化の開発ということで進めてございますが、やはり全体といたしましては、こちらは大型との連携、また、小型のニーズに応えるというところが非常に重要でございます。
また、今回この御紹介に関しまして、組織からの支援等に関しても発表するようにという御要望を頂きましたので、何枚かまとめてございます。理化学研究所の方では、もちろん私どもが今できてございますのは、放射線の装置開発でございますので、変更申請、管理に関しては、全部、所の方でございますし、安全管理、安全業務室の方でございます。また、実際に私どもユーザーとして、外部の方とやっております共同研究に関しましても、教育内容に関しても、私ども、今年の6月に初めて、世界でも多分、小型として初めてと思いますが、安全諮問委員会という外部の委員の先生方8名で構成する委員会を開催させていただきました。私ども小型としての安全がどうであるかということ、将来屋外利用を目指す基本となる安全について諮問する委員会として、本委員会はセンター内に設置していただいております。そういった意味での組織からの支援、また、研究に対しての全体の交流ということもさせていただいております。
産業利用は、先ほど鉄鋼材料で御紹介させていただきましたが、こちらは日本鉄鋼協会の研究会ということで、日本全国の鉄鋼企業との産業連携、また、コンクリート構造物に関しましては、日本コンクリート工学会の委員会を今、開催させていただいておりまして、こういったところで、多くの企業との共同をさせていただいていると同時に、個別の共同研究も、こちらは2019年の例でございますけれども、出してございます。これまでですと、80件以上、いろいろな相談や小型の導入、また、お試し利用という形に対応してございます。
海外連携は、先ほど鬼柳先生から御紹介ありましたドイツで中型を計画しております。この2か所に関しましては、3年ほど前よりMOUを結びまして、理化学研究所のRANSと同時に利用、また、交流をしてございます。また、中国との共同、また、国内に関しましては、本当に全国各地の大学との連携をさせていただいておりまして、今後の展望といたしましては、こういった形でのものづくりの現場での導入や屋外利用というものを目指しますと、やはり計測技術、中性子の計測技術そのものの標準化が必要になります。
インフラに関しましては、コンクリート工学会の委員会を基にいたしまして、実はコンクリート標準示方書への反映という形での取組をしてございまして、こちらはこれだけの外部機関との連携を行ってございます。
また、実際の塩害橋梁維持管理マニュアル等の点検要領に関しましては、現在、準備をしております。
全体のスケジュールといたしましては、2020年以降は、RANSそのものの高度化、RANS-IIの実現、実用化。また、RANS-IIIの屋外利用へ向けた開発といった形で進めていく予定でございまして必要な資源などがございます。
最後に要望でございますが、インフラで外に出すためにはやはり文科省皆様の御支援を頂きませんと、とても実際のところは進んでまいりません。また、中性子計測技術の標準化に関しましても、やはりそういったところでの全体、大型、小型に限らず、全体を見据えた形でのサポートという形で是非とも進めていただきたいと思ってございます。
長くなりました。以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。
では、今の御説明に対して、御質問、御意見等ございましたらよろしくお願いいたします。
RANS-IIIは、基本的には実際の可搬型にするという前提で設計中ということですね。
【大竹チームリーダー】 そうです。トラックに載せるというか、車載型ということを前提にしてございます。ですので、防振であるとか、又はそういったところも意識して、重量計算等もして、設計してございます。
【小杉主査】 放射線上は持ち出して大丈夫ということですか。
【大竹チームリーダー】 はい。放射線上は先ほどの放射線障害防止法第10条のところにございます4MeV未満の直線加速器であればということで、実際の法律に関しては、私ども2.49MeVでございますので、こちらのエネルギーよりずっと低い形。また、これは低くしてございますので、ほかの放射線安全に関する線量に関しても、1桁以上下げて設定できるということでやってございます。
【小杉主査】 X線でも可搬型というのはあるんですけど、多分こういうことをクリアしているんでしょうね。よく分からないですけど。
【大竹チームリーダー】 もちろんX線の方は、ですので、3.95MeVの実線ライナック、Xバンドを使ってやってらっしゃいます。私どもSIPの課題で、X線中性子、一緒の土木研究所の課題でやらせていただいておりましたので、X線の方が橋梁に出るときは一緒に出て、現地の経験は一緒にさせていただきました。
【小杉主査】 X線の方は、蛍光X線とかで元素分析とか、文化財などのイメージングとかも現地でやっていますけど、中性子は割と透過能が高いので、X線では透過しないようなコンクリートの厚いのをしっかりできるというところは特徴がありますね。
【大竹チームリーダー】 はい。あと、やはり元素分析の能力が非常に高いので、塩害に対する塩素を。
【小杉主査】 元素分析も深さ方向で調べる。
【大竹チームリーダー】 はい。深さ方向に対しても10センチ厚以上のところでも中に入って、そこにある元素がちゃんと特定できるというところが非常に強うございます。
【小杉主査】 X線の場合は多分、空間分解能とかは、中性子よりも、高いんでしょうね。
【大竹チームリーダー】 そうですね。
【小杉主査】 何か御質問等ございますか。山田委員。
【山田委員】 非常にアクティブにやっていらっしゃる印象があるんですが、どれぐらいのマンパワー、エフォート率がどれぐらいの人が何人ぐらい、大竹チームに加わってやっていらっしゃるんでしょうか。
【大竹チームリーダー】 おかげさまで、今年は人数を増やすことができまして、研究者で大体10名、テクニカルスタッフ3名、あと、実は私ども理化学研究所では、研究者、ドクターを取っている方で、海外では結構あるんですけれども、日本では余りないんですが、パートの研究者という方が数名いらしておりまして、そういった方たちにいろいろな雇用状態も交えながらやっていただいております。
【山田委員】 今後似たような、小型中性子源のシステムを立ち上げるときに、似たようなメンバー、マンパワーが必要なんでしょうか。
【大竹チームリーダー】 いや、もうそれは、そういう意味ではなるべく減少できるようにしたいと思います。私どもはやはり最初の一、二年の苦労と、一番最初に立ち上げるときは、先ほどのJCANSで本当に密に連絡を取りまして、それでもともとやっていても、なかなか作ってみると、設計とは違うということが山ほどありました。そこのノウハウに関しましては、いろいろな形で今まとめてございますので、メーンではやはり、例えばターゲットステーションから、それから、ビーム取り出しのところの遮蔽の設計ですとか、パルスですとか、そういった計測、それから、バックグラウンドに直接関わるところですね。そちらが今かなりノウハウが蓄積されておりますので、そういったところを継承する、又は利用目的に応じた形で使っていただくということで展開していただきたいと思っております。
【小杉主査】 これはビームライン的には一本しか取れないんでしょうか。
【大竹チームリーダー】 いや、実は今、現状で2本取れます。モデレーターの出し入れしているところが実はビーム取り出しに使えるように設計しています。来年度からは最大で3本になるような形で、今、年度末に工事をする予定でございます。
【小杉主査】 ほかに。
【阪部委員】 ありがとうございました。普及型ということですが、最終的な完成形といいますか、普及と言うからにはやはり最終的には、理研から手が離れて、企業が製品として完成した装置が各県に1台あるという状態が本当の普及かと思います。お聞きすると、まだ理研での開発、研究という印象を持ったのですけが、それにつきまして日本のメーカーの現状も含めて、見通しとか、計画がございましたら教えていただけますでしょうか。
【大竹チームリーダー】 今、開発チームとして国交省の方と相談しているところといたしましては、技術研究組合を立ち上げ、最終的には企業が十数社入る形で、技術を展開していこうと思ってございます。
【阪部委員】 それは可搬型の装置、あるいは固定型の装置ですか。
【大竹チームリーダー】 そうです。こちらとこちらと別々にやっています。
【阪部委員】 別々にということですか。
【大竹チームリーダー】 はい。別々でございますけれども、基本的には使うところは一緒になるかと思っております。
【阪部委員】 ありがとうございます。
【大竹チームリーダー】 あと、具体的には実は今、1件、ヨーロッパの方でRANS-IIモデルを入れたいということで、企業から話は頂きましたが、私どもが受けるわけにいきませんので、私どものRANS-IIの加速器を作った会社が今、入札に応札するという形で全体をやっているというような形になっております。
【阪部委員】 ちなみに、RANS-IIはオール・メイド・イン・ジャパンですか。
【大竹チームリーダー】 オール・メイド・イン・ジャパンです。
【阪部委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 そろそろお時間なんですけど。はい。
【田中委員】 どうもありがとうございました。ターゲットの設定もクリアでしたし、分かりやすいお話でした。一つ前の方の質問にもリンクしていますが、J-PARCとか大型に比べて、フィールドに出ていくために、小型化を志向しているという話で、RANS-II、IIIまで開発してきたと言う事でした。最終的にプロジェクトの目標として、可搬型としてどの位の大きさのものを狙っているのか、電子線加速器に比べると、どうしても大きくなるとは思います。現在のものは、可搬型としてはまだかなり大きいという印象ですが、これがゴールなんですかという質問です。要するに、今、通過地点にあるのか、もうほとんどゴールに近いのかという、その距離感を知りたいのですが。
最初に、開発のモチベーションとして、様々な、もの凄い数の社会インフラが老朽化しつつあり、その維持管理が社会的な大問題であると。それを解決する道具としての小型中性子源の開発を進める、実は電子線加速器を用いたX線源も小型化して同様のアプリケーションへ現在アプローチしており、一緒にやられているというお話をされていたので、このような状況は理解されていることと思います。道具を汎用化して、広く普及させようとすると、システムのコンパクトネスとか軽量性が大変重要です。もちろん使い勝手もありますが。そういう観点で、完成図に比べて、現状どの辺にいるのでしょうか。
【大竹チームリーダー】 ありがとうございました。そういう意味では、こちらの、いわゆるこれですとトラックで書いてございますけども、こちらの装置は、一遍に60センチ四方から1メートル四方を数秒で測るというところでの全体を見るという形の装置として、やはりそのためにはプロトンライナックが必要という形で考えてございます。
それから、非常に本当にコンパクトに現場を見ていくというところに関しましては、実は今、別のものを検討してございまして、そちらは、私どものRANSの方で開発している、この計測技術を基にした形で、必ずしも加速器に限らない線源での応用ということで、そちらにゴール設定してございますが、それが理研のこのプロジェクトとしてのどのぐらいのプロジェクトのゴール設定かというと、やはりそこは加速器ベースの装置の開発ではございませんので、位置付けとしては、例えばRANSがあって、RANS-II、RANS-IIIに迎えてのプロジェクトとすると、このあたりにコソッと入るような形。ただ、普及型とニーズに応えるという意味では、多分それが一番台数は出ると思います。
【田中委員】 そうですよね。
【大竹チームリーダー】 はい。それはやはりここで開発している、こちらは大面積用でございますけれども、こちらは特に塩分に関しましては、やはりポイントで測れる小さな装置が欲しいということでの開発につなげてございますので、そういった意味では、計測技術にしていく。実際にやはりRANS-IIでこういった実験室レベル、又は据え置き型人材育成で使えるものに関しては、ある程度のマスで、ある程度の強度が出るものということで、加速器ベースが必ず必要という形でのストラテジーで開発してございます。
【田中委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 強度的には5桁以上違ってくるんですね。10桁ぐらい違う感じで、そういう中でいろいろ工夫すると、できるものもあると。
【大竹チームリーダー】 はい。そういう意味では、中性子はどうしても線源の強度重視になっているんですけれども、やはりJ-PARCでも開発してらっしゃるのは、強度重視ですが、その大型に対して、小型では、線源強度が小さいことが利点にもなります。小型はターゲット周りの遮蔽が小さくなり、線源―サンプル距離が短いことにより、サンプル上での強度を確保でき、バックグラウンドを下げるなど複合的な開発を行うことにより、計測のS/Nを上げるなど、いかに精度よくやっていく計測技術かというところで、小型は大きな利点がある、そういう形でございます。
【小杉主査】 逆方向の流れもいろいろあるというところですね。
そろそろ時間が足りなくなる可能性もありますので、一旦ここで。また次回以降も議論は進むと思いますので、次の議題に移ります。
議題2になります。前回に引き続き、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方ということで、調査結果をまとめておりますが、事務局について、資料等の御説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 それでは、皆様、資料2-1及び2-2、そして、机上に配付しております調査結果のまとめを御用意いただけますでしょうか。
まず資料2-1でございますが、こちらは前回も御議論いただきました、調査結果を踏まえた議論の論点として、各種施設への調査を行ったうち、自由記述欄に記載のございましたところから論点を抽出したものでございます。前回の小委員会での議論を踏まえまして、見え消しにて追記、修正等を行っておりまして、個別には説明は省略させていただきます。また、今後こうした論点について、どのように議論を深めていって、どのようなまとめをするかというところが、この小委員会でも委員の先生方から御指摘がございまして、こうした論点について、総論としてはこういう課題や方向性を議論する必要があるということは分かるけれども、それを具体的にどのように議論を深めていくかということに関しましては、資料2-2に、今後の議論の進め方についてということで簡単にまとめております。
資料2-2でございますが、こちらは、先般の調査結果や、当小委員会での議論、ヒアリング等を踏まえて、まずは個別論として、施設種ごと及び施設の運営主体ごとに、それぞれの論点について現状をどのように捉えているか、現状を踏まえて、今後どうあるべきと考えているか、さらに、今後どうあるべきかということに関する解決策であったり、議論すべき方法論というものはどういうものがあるかといった点を、皆様のそれぞれのお立場から御意見を頂ければと思っております。
観点の例として示しておりますのは、先ほどの資料2-1にありました個別の論点に関するようなものを少しまとめておりますが、例えば産学連携を含めて、施設として利用者をどのように確保していくか、利用者にどのような支援をすることができるか、あるいは、施設の役割、大中小の規模の施設がある中での役割分担であったり、施設の連携の在り方、あるいは海外施設や海外研究者との連携、オープンデータ・オープンアクセス、人材育成といった点を議論していって、こうした議論や、こちらの場でのヒアリング等を踏まえて、最終的には、資料2-1にあるような総論として掲げられるような課題や方向性について、何らかのまとめをしていくに当たって、例えば、量子ビーム施設全体の整備計画であったり、量子ビーム施設を活用した研究全体としてのポートフォリオ設計の在り方でありましたり、必ずしもこれまで国がアプローチできていない、例えば自治体や大学等も含めた、運営主体に応じた国の支援の在り方でありましたり、これまで調査結果やヒアリング等で聞いてまいりました施設ごとの好事例の整理や横展開の方策等を含めて、最終的に議論をまとめていく形で検討していってはどうかと考えております。
そのような議論を行うに当たりまして、まず本日に関しましては、次のページ、資料2-2の2ページ目でございますが、一つの例として、産学連携に関しての利用者の確保、利用者支援であったり、施設の役割分担、相互の連携といったものについて、議論をいただいてはどうかと考えております。
その下に参考マトリクスとして、今回、施設調査を行った施設の名称を分類して記載しておりますので、皆様が普段、利用や運営等に関わっているお立場から、施設は放射光、中性子・ミュオン、レーザー、イオンビーム、その他、運営主体に関しましては、国、地方自治体、国立研究開発法人、大学・大学共同利用機関法人、それぞれの別で御意見を頂ければと思います。
また、それらの議論をいただくに当たって、机上配付資料の方でございますが、こちらも、とじ込みの一番上にありますのは、前回までの調査結果をまた更に少しまとめた形として、4段階の分類を付けておりまして、個別施設あるいは類似施設で取り組むべき事項、同種の施設全体で取り組むべき事項、量子ビーム施設全体で連携して取り組むべき事項、国が取り組むべき事項といった形で簡単に整理しておりまして、イメージとしましては、こちらの下の3つの項目、広い意味で、施設全体で連携して取り組むべき事項や、国が取り組むべき事項といったところにどういったものを入れていけるかというのが議論の方向性としてはあるかと思っております。
また、なお、前回お示ししている資料ではございますが、参考資料1-2という、3つ目ぐらいのとじ込みに入ってございます調査結果の概要の中でも、1ページ目の戦略的な取組状況でありましたり、2ページ目にあります施設利用に関わる取組状況、また、4ページ目には、産学連携の状況、また、7ページ目には、今後の展望と課題といったものを入れてございますので、本日、産学連携や施設の役割分担といったものを御議論いただくに当たりまして、事例として掲げておりますので、こちらも御参考にしていただければと思います。
説明は以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。事務局から、今後どういうふうに議論を進めたらいいかという点、それから、具体的な論点の説明がありましたけれど、議論の進め方について、御意見を伺った上で各論に入りたいと思いますが、いかがでしょうか。
具体的には、資料2-2ですか。そこに観点として5つぐらい上がっています。2-1の方にはもう少し項目がありますけれど、とりあえずこういうところから、個々の観点について議論を進めていくと。いろんな切り口があるので、どこから攻めていくかというところで、こちらから攻めるのではどうかという案でしたけれど、御意見、いかがでしょうか。こういうやり方で進めてみて、また、途中で何かございましたら少し修正することはあるかもしれないんですけど、こういう進め方で始めてみるというのはいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
では、きょうは資料2-2の2枚目にありますように、観点としてはまず、産学連携を含む利用者の確保や利用者への支援というところで、ある程度、出すものは出したいなというところです。
それから、2番目の施設の役割分担や施設相互の連携というのは、多分きょうで何らかの意見を全て出尽くすのは難しいと思いますが、とりあえず現状と、どう捉えているか、今後どうあるべきか、その解決策、方法論は何かというところで議論いただいて、その下の参考マトリクスにありますように、施設それぞれの在り方が違いますので、この辺の違いも意識しつつ、議論を進めるという感じでよろしいでしょうか。
では、まず、産学連携を含む利用者の確保や利用者の支援という観点で、15分、20分、意見交換したいと思うんですけれど、どなたか御意見ございますでしょうか。
国の施設としてどう、例えば放射光ではSPring-8、それから、地方自治体、愛知とか佐賀がどう取り組むか、その場合の利用者の確保とか支援ですね。そういう問題。あとは大学・大学共同利用機関ということなんですけど、そういう切り口ですが、いかがでしょうか。
何かございますか。どういう切り口で。
【岸本委員】 この(1)と(2)を明確に分けて議論するのは難しいんですけど、先ほど鬼柳先生とか、RANSのお話とか聞かさせていただいて、大型、中型、小型というのを分けたときに、大型施設というのがきっと小型施設の部分を含んでいて、小型施設でできるものは大型のものではできちゃうと思うんですね。
そういった中で、大型を使っているユーザーからすると、小型を使っていったりとか、中型を使っていくときのモチベーションというのが生まれにくいんですよね。例えばSPring-8を使えば、ほかは使わなくて済むよねと。多分そういう考え方というのは、企業ユーザーとしてはあるんですね。やっぱりそのときに、(2)に関わるのかもしれませんけども、中型でも十分なパフォーマンスがあって、そちらを利用した方が、SPring-8で課題に落ちたりとかするよりもお得なんだよ、という言い方をするとあれなんですけど、そういうところの観点も考える必要もありそう。何て言えばいいんですかね。中性子で中型だとか小型の有効活用みたいな方針とかそういうところがないと、わざわざ大型に行っている人が小型に行くというモチベーションがなかなか出にくいのかなと。逆に小型を使っていて、大型を使っていくというのは、研究の進捗とともに勝手に進んでいく方向だと思うんですね。そういうところをどう考えていくのかということも重要なんじゃないかなと思いました。
【小杉主査】 今の点、いかがでしょうか。
放射光はもう全て満杯状態ですので、そういう中で、各施設の特徴をいかに生かすかというところで、ほかの施設でできる利用者はほかの施設に行っていただくという発想が、今、放射光の中で生まれつつありますし、そういう背景でプラットフォームとかで意見、情報交換したりしている部分はあるんですけど、その一方、まだこれからどんどん産業利用を進めたいというところは顧客の取り合いのようなこともないことはないので、余りほかの施設のことは言わないというフェーズもあるかと思うんですけど、そのあたり、各量子ビームでどういう状況でしょうか。
【高橋委員】 今のところ、逆に質問になってしまうんですけれども、運営主体が幾つかあるというお話だったんですけれども、その運営主体の間での連携というのはやはりシステム上、難しいんですか。あるいはそれを俯瞰したというか、更に一つ上の階層にいるようなものを作ればよいのではないかというのが、ここの場の議論なのか。
【小杉主査】 そこは学会レベルで意識高くやっているところもありますし、国の予算をもらって、プラットフォームという切り口で連携を組んでいるところもありますし、それぞれの量子ビームでいろいろ違うと思いますが、いかがでしょうか。
【岸本委員】 そこというのは恐らくものすごく大切なところで、産業利用がSPring-8、J-PARCなど、いろんな施設で進んでいっていると思うんですけども、ある意味、頭打ちしているようなところがあるのかなというところもあるんですね。20%で大体推移しています。今回の産業の利用者の確保というところで限定させてもらうと、もっと裾野を上げるというか、全体のユーザー数を引き上げるという行為が必要なんですね。そのときに、変な話なんですけど、例えば各施設ごとに若干ルールが異なっている。多分御経験されたことがあると思うんですよね。ルールが微妙に違っていて、手続一つ間違えれば申請がうまくできないとか。課題申請書はそれぞれの施設の事情とかあるかもしれないので仕方がないのかもしれませんが、できるだけそういったフォーマットが統一されていることとか。
ある意味、なれている企業というのは、そういうところを柔軟にこなしていくとは思うんですが、不慣れな企業というのは、どうしても最初に使った施設に固執してしまうというか、そこから横に広げていくというところにかなりハードルがあるというところで、そういうことも含めて、今さっきのお話があったんじゃないのかという。
【高橋委員】 そうです。そういうところがむしろトップダウンで、こういうフォーマットでやるという提案をそれこそこの場から出すことができると、一つのフォーマット的なところができるといいなというのは、ユーザー側からはすごく思います。
【岸本委員】 ただ、とても難しいですよね。
【高橋委員】 難しいとは思います。
【鬼柳委員】 いいですか?先ほども話がありましたけれども、中性子というのは、X線と違って、ほとんどの人が経験ないんですよね。だから、余計連携が必要だと思っていて、また普及も必要だと思っているんですね。その中で、今言われたように、申請は本当は1本で出していただいて、いや、このテーマだったらJ-PARCのこれと、最初の実験だったら、これは小型でもいいかもしれないということができればいいなというのは、理想論としては、連携の中では議論しているんです。けれども、実際の組織で、そこは変わってくるので、じゃあ、それを本当にうまくやっていけるかというところのアイデアは今はない。どこかでそういうことを聞けて、選考に反映できるといいなというふうには思っています。特に産業界の人たちは、慣れていないというのがあるので。
【小杉主査】 数にもよりますね。放射光の場合は、ビームラインがトータル、日本で200本になりますので、それを一括してどうこうというのはできないし、施設によって採択課題が2年間有効だったり、半年だけ有効だったり、それから、あいちシンクロトロンのように、随時受け付けて、割とタイミングよく、1か月後ぐらいには配分できるというところがありますし、それぞれやり方が違うところで、放射光の場合はもう200本ですから無理ですけど、中性子の方は、小型だけで何本という言い方をすると、どれぐらいあるんですか。
【鬼柳委員】 そんなにないですよ。理研さんの小型の中では、いろんな実験を一番できると思いますけども、北大だったら3種類か4種類。それぞれ決まっているので。J-PARCはいろんな実験ができますけれども。
【小杉主査】 J-PARCは別格として、小型だけで。
【鬼柳委員】 小型だけだったら、小型だけでまとめようとすると、ある程度そういう割り振りというのは可能かもしれないという感じです。
【小杉主査】 そういうことをやろうとした場合に、どういう利用でやるのが実現性がありますか。プラットフォーム事業というのは産業利用でのプラットフォーム化というのが中心に予算は付いていると思うんですけど。
【鬼柳委員】 公平に見れるところというのがないといけないなと思っているので、それがプラットフォームかもしれないというふうには思います。ただ、個々の施設が独自にやろうとしているものを妨げるようなことがないようにしなきゃいけない、ということは必要だと思っています。
【高橋委員】 まさに先ほど岸本先生が言われたことなんですけども、最初の初心者は、最初に使ったところにやっぱりやり方として固執してしまうというところは絶対あると思うので、それを、例えばここでもできますよというときに、単にあそこに行ってくださいだけじゃなくて、そこの、例えば申請書の書き方ですとか、具体的に誰にどういうふうにアクセスすればいいとか、ユーザー登録の仕方ですとか、そういうところも気軽に聞ける人が、各施設にいらっしゃると、より具体的にいいのかなとは思います。
【小杉主査】 あとは施設の視点ばかりじゃなくて、そこで研究している、例えば世話している人が施設を動いていけば人的ネットワークが生まれますが、そういうところなどは中性子では何か考えておられますか。
【鬼柳委員】 具体的に人的ネットワークをどう広げるかというのは考えていないですね。
【小杉主査】 人は余り動いていない。鬼柳先生は動いておられるけど。
【鬼柳委員】 余り流動性がないなということが、中性子の世界ではあるので、もう少し人が動くというのは非常に大事だと思っています。
【小杉主査】 ほか、中性子放射光以外のビーム、レーザーの方で何かございますか。産学連携を考えても。
【阪部委員】 レーザーの前に、中性子のことについて質問させていただきます。まず産業界の人で全く中性子に不慣れな方が何か始めたいというときに、最初にまずどこの窓口に相談に行けばよいのでしょうか。そして、どの施設を使えば一番いいのかという判断をする方法です。現状でどういうふうになっているのか、門外の者には気になるところです。それと同時に、一人の技術者あるいは研究者が全ての施設のことを理解していて、その上で、この施設が最適だろうと判断できるような体制が作っていけるのかどうか。例えば日本に10の施設があったら、10のクロアポで雇用されるぐらいに日本中の施設のことを理解できるような、そういった人材を育成していくというのが理想的な形ですが、そういう方向に向かって、何か動きはありますでしょうか。
【鬼柳委員】 中性子施設ネットワークというのを考えたときには、そういうハブみたいなところができて、そこに相談、分からないときは最終的にそこに相談すればいいなということを考えていました。ただし、そこは、全てのことが1人で分かるわけではないので、複数の人がいて、物理的にすぐ近くでなくてもいいんですけれども、すぐコミュニケーションが取れて、相談者に対する回答を出せる。先ほどのように、どこの誰にコンタクトをしたらいいのか、それから、どんな申請書の書き方をしたらいいのかみたいな、そういうところもできたらいいなというふうには思っています。ただ、結局は何をするのでも予算が必要だということなので、今はその前段階として、先ほど言いましたJCANSというところがあって、そこの窓口にもし相談していただければ、十分ではないかもしれないけども、ある程度情報をお渡しすることができるようなことを考えています。
【小杉主査】 ほか、何かございますでしょうか。
【高原委員】 中性子、私もずっと使わせていただいていますけれども、産業利用に関しては、ここ5年ぐらいは非常によくなってきているんじゃないかと思います。ただ、一つ、やっぱり中性子のユーザーは一部が海外に流れていっていて、化粧品メーカーとかは、すぐ使えるということで海外で実験をやって、それをいろんな製品開発につなげるというのをやっていますので、そういったユーザーもいかに日本に戻ってきてもらうかというのも含めて、更にいろいろな取組が必要であるというふうに認識しておりますし、それから、もう一つ、産業界の利用なんですけども、例えば私は佐賀のLSも使っていますけれども、やはり企業規模がSPring-8などのユーザーとは全然違いますので、同じ申請書を書けと言ってもなかなか書けないということで、その場合は、学の役割としてはどういうふうな申請書を書くかということから含めて、産学連携でやっていくということをやっております。やはり企業規模で研究者の層の厚みが違いますので、そのあたりも考えた上で、共通のプラットフォームというのを作らなきゃいけないかなと思います。
以上です。
【小杉主査】 そのあたり、こまめに対応できているのが、放射光の場合は地方自治体の愛知と佐賀の施設ではないかと思いますけどね。国でやっているような大きな施設はなかなかそこまで手が回らない。先端施設という位置付けもあるので、難しいところですね。その辺の役割も考えつつ、掘り起こしもしないといけないというところだと思いますが、ここで想定されているのは、ある程度確立した手法をいかに産業利用にもっていくかとかの観点だと思いますが。事務局の方から、このあたりの議論で、ほかに何か、意見を頂きたい点とかございますか。
【高橋委員】 産学連携というお話なので、もう1点、別の観点なんですけども、資料2-1の今回追加していただいた項目に、産学連携のところ、産業界が新たな科学的知見を求めて連携を行う場合と、自社の課題解決を求めて行う場合の違いというお話が今回追加されていると思うんですけども、この点、すごく大事なところ。今のお話でもあるんですけれども、すごく大事なところで、先ほど小杉先生もおっしゃられたように、例えば学会などで案内というか、広くリーチするというのもあるんですけれども、先ほどの大竹先生のお話を聞いている中で、コンクリート学会というのが出てきて、個人的にはすごくびっくりしたんですね。
それというのは、私としては全くなじみのない世界で、逆に施設の人たちの行く学会と、現場の人が行く学会は多分違うと思うんですよね。なので、私たちバイオの人はほとんど放射光学会とか、普通行かないんですよ。そういうときにどういうふうにすれば、そういった情報にアクセスできるのかというのは、学会と一言で言っても、層が違うところにどうリーチしていくのかという観点、現場の学会に行くべきなのか、施設としての学会で、ある程度話をまとめておくべきなのかという観点が出てくるのかなというふうにすごく思いました。
【小杉主査】 今の点、何かございますか。
【近藤委員】 やっぱり小さな施設だけじゃなくて、今、愛知シンクロとか佐賀LSに、コーディネーターの方がいらっしゃって、いろいろアドバイスしてくださるということなんですが、大きな施設を含めて、それぞれの施設からアドバイザー、コーディネーターと言った方がいいんでしょうかね。そういう方たちが出ていただいて、何か一つの組織みたいなものを作っていただいて、例えばフォーラムのようなものですかね。みんなに共通で、みんなに関係ある問題を扱ったり、あるいは個別の事案に対して、例えば会社の方から出していただいたそういう問題に対して、分かっている人が答えてあげるというような、そういうような放射光、私は放射光ですけど、放射光のコミュニティの人たちが持っているいろんな知見とかそういうようなものをシェアすることができるようなプラットフォームを作れればいいんじゃないかなというふうに思いました。
【小杉主査】 特定の施設、特定のビームラインでコンソーシアム的なものを作ることとは別に、日本全体を見たコンソーシアムを会社の方で作っていただくと、その中でどう使い分けるとかいうノウハウがコンソーシアムに入っている民間の方に共有されるというのはあると思うんですけどね。
前の期の委員会でも各施設でコンシェルジュをどうするかとか議論があって、やっぱり本当に欲しいのは、単なるコーディネーターでなくて、手法の深くまで知っていて、そこでつないでくれる方であって、単にこれがあります、あれがありますよというコーディネーターは一見よさそうだけど、それは余りいい形ではないという議論がありました。民間の方からしても、本当に深くやろうとするところをつないでくれる人材が必要との意見がありました。
ターゲットによって、それぞれ何をどう使うかというところは違いますし、その使い分けについて深く知るような機能をコンソーシアムで入れていくというところにしないと、特定のビームラインのコンソーシアムというのは、そこで止まっちゃいますよね。そういうところも考えていかないといけないというところだと思います。
何かほかにございますでしょうか。
【鬼柳委員】 企業の人というのは、岸本さんがいるからあれなんですけれども、時々聞くのは、やっぱり、ハードが良い悪いというのもあるのですけれども、その後のケア、即ち、どこまでデータを持ってきてくれるか。特に企業の人で初めての人だったら、データを渡されても、データというのは生データを渡されても何もできない。じゃあ、そのデータ解析をどこでやるんですか?その辺までケアしなきゃいけない人もいるので、そこまで含めて、産業利用実験をただ進めるだけではなくて、このようなケアを考えなきゃいけないのかなという印象を持ちました。早く使わせてくれる、それで、いいデータが出て、欲しい情報をくれるという、この3つかなと思っています。その欲しい情報、最後のデータ解析が、施設がやるかどうかは別としましても、そこが必要かなと思っています。
【小杉主査】 1と2を切り分けていますが、2の方にも少し入ってきておりますので、そのあたりで、もうちょっと産学連携をここで切るわけにはいかないので、2を意識しつつ、もう少し議論を進めたいと思います。あと10分ぐらい大丈夫ですね。いかがでしょうか。
【阪部委員】 余り参考にならないかもしれないですが、レーザーの事例を紹介させてもらいますと、レーザーの場合は、全くレーザーに不慣れな方が最初にどうしたらいいかという相談が来るのは、実はレーザー学会なのです。事務局も困まるのですが、「レーザーというのを産業界で使えるかどうか試したいんですけど、どうしたらいいですか」という問い合わせが学会に来ることがあります。学会の事務局は、少し話を聞いた上で、適切な役員、理事とか委員会委員長を紹介して、その人と個別に相談してみてくださいと対応しています。そのように事務局としては仲介、紹介役をやっているのですが、そのような些細なことでも非常に大切なきっかけになります。例えば中性子だったら中性子学会というところが窓口になるかなど、やはり何か体制を、完全でなくても作っていけば、それをきっかけにいろんな課題もまた明らかになってくるかと思いますので、学会との交流が重要かというふうに感じています。
【小杉主査】 中性子の学会では窓口みたいなのを作っておられますよね。
【鬼柳委員】 今、学会そのものでは……。
【小杉主査】 ホームページのところに。
【鬼柳委員】 多分なかったと思います。ありましたっけ。
【小杉主査】 何か使い分けを。
【鬼柳委員】 将来的には学会に作りたいというふうに思っていまして、マスタープランの中ではそう思っているんですけれども、現状はその下のところで、基礎基盤部会とつながっているJCANSというところで窓口にしようと進めています。なぜかというと、小型の人は、特にそこにいる人たちは、小型も大型も知っている人たちが多いので、いろんな相談を振りやすいということがあって、そういうふうに考えています。
【小杉主査】 放射光学会でちょっとやろうとはしたんですけど、たくさんあり過ぎて、整理がつかなくて、光ビームプラットフォームというところでは、産業利用を中心に少し愛知県の施設が中心になって、いろいろ情報提供して、相談窓口も作っているんですけど、余りビジビリティがないので、そのあたりは改善していく余地があるんですけど、そういう窓口をしっかり見せないと、なかなか使われないというところは確かにありますね。
【鬼柳委員】 先ほどのマスタープランも学会から提案させていただいているので、学会を巻き込んで、そういう活動をしていきたいなと思って、今、動いてはいます。
【小杉主査】 国側で、量子ビーム全体のリンク、ページを作るとかいうのはできないんですかね。各学会というのも、そこのビーム、放射光なら放射光しかなくて、せいぜい中性子の学会にリンクを張るということはできると思いますけど、そういうのが全体、ここでやっている議論に関わっている施設の一覧表みたいなのがとりあえず用意されていると、そこに相談窓口というのができてきたときに掲載すると大分違うんじゃないかなと思いますが。
【對崎補佐】 まさにこの議論を始める昨年の春頃にも、親会の量子科学技術委員会の方でどういうアウトプットにしていくかという議論をしたときに、そうした窓口というか、一元的にどこかでブラウズできるようなものがあるとよいというお話もございましたので、そこはまさに今御議論いただいたような形で、何らか利用者にとっては、そこに行けば自分がやりたい研究というものをやるときにどういう施設があって、どういう窓口に相談できるかというものを一元的に見られるようなものというのは、できるのは検討していきたいというふうに思っています。
【小杉主査】 そういうのがあると各学会も意識して、何とかしないといかんという気もできてくると思うんですけど、学会ごとに閉じちゃうと、なかなか大変だで終わっちゃうので、そのあたりはセットにしていただくと随分意識も変わるかなという気はします。
【奥室長】 それこそがまさに一つのアウトプットの姿だと思うので、まさにここで議論していただいて、そのページを作るというのは別に簡単だと思いますが、それが実際フィージビリティなのかどうかとか、意味があるのかどうか、学会との関係をどういうふうに整理するのかとか。では、実施主体はどこがやるのか。そこら辺をちゃんと御議論いただいて、アウトプットとして生かしていただければなと思います。
今の御議論、大変良い議論なのですが、基本的に利用者サイドの御議論が中心なので、むしろ施設側からの御意見も是非いただきたいなと。
何かそのあたり、内海さん。
【内海委員】 私は、これまで、放射光とレーザーと中性子の施設を、少しずつ経験していますが、やはり、それぞれの特徴があって、ひとくくりにできないところがあるように思います。中性子の話は、鬼柳先生、大竹先生の今日のお話の中で、横串も含めてかなり見えていると思いますので、放射光に関して申し上げますと、今まで放射光施設の横の連携が必要だという掛け声はずっとあったんだけれども、どこが音頭を取るのかという点も含めて、なかなかそれを具現化できずにいるというのが実情です。放射光学会の小杉前会長が旗振りをされて、ようやく最近、少し横串の問題点抽出ぐらいのことが始められ、最初の一歩が踏み出せたかなというふうに思っています。今回アンケート調査をもとに事務局に整理いただいた表は、非常に重要な情報だと思います。
少し話が発散しますが、それぞれの放射光施設ごとにバウンダリーコンディションがあって、横串というのは、言うは易し、実現は難しいというところがあります。このリストにはまだ次世代放射光はカウントされていませんが、特に産学連携や産業利用という旗印を、次世代放射光は大きく掲げておるというところもあり、そういうところはうまく使っていきながら、この横串とリンクさせていくことが必要かなと思います。

【田中委員】 施設から来ている委員は何かコメントできるだろうという室長のお話しがあり、正直、途方に暮れていたんですが・・・。産業利用と言っても、いろいろなレベルがあると思います。かなり使い込んでいる方からビギナーまでいろいろな階層があって、そこでニーズが、かなりブロードですので、全部を拾う必要はあるのかなと思いつつも、何が一番クリティカルなんだろうと考えながら聞いていました。もちろん皆さん方のコメントはそのとおりと思います。が、若干議論が少なかったのは、岸本さんが言われていた、今ある程度使っている人たちはまだ何とかなるんだと。利用者数を拡大していこうとすると、新しいユーザーの開拓というところが大切で、これまで利用されていない皆さんに、いかに中性子を使っていただくか、いかに放射光を使っていただくか、そこが肝心であると。量子ビームを使っていただくとこんなにいいことがある、こういうフィージビリティがあるという点を、それが今届いていない人たちにどうやって届けるかというところですね。
そこの仕掛けに関して、何かアイデアがあるのかと言われると具体的にはないのですが、単純な学会活動だけでは届かない。例えば、本当に困って、例えばSPring-8の理研を訪ねてきます。何を困っているのか話を伺って、それであればこういう可能性があるという議論を進めながら、実験計画を練り上げ、新規のユーザーになっていく。でも、このアプローチですと、これだけ時間を掛けて、マンパワーを使ってようやく1ユーザーを獲得という話。それはちょっと効率的ではありません。もうちょっとシステマティックに、効果的に、全国規模で、放射光だけでなくて、中性子とかいろんな可能性を含んだ形で何かうまく掘り起こせる仕掛けというのは、確かにホームページじゃないという気はします。この後で議論になると思いますが、それは確かにホームページではないですね。
【岸本委員】 今のお話を聞いていて、一番大切な言葉を一言で言うと何かなと思ったときに、いわゆる気軽さなんだろうなと思いまして、最近いろんな会社、企業の中で効率化というところが進んでいる中で、今までだったら、例えば育児休暇を取りたい場合だったら、それは社内の規程を見たりとかして、一生懸命調べて、そこにたどり着かなきゃいけないんですね。ところが、最近で言えば、もう皆さん御存じのように、非常に便利なツールがあって、チャットボットというのがあるんですよね。チャットボットに育児休暇を取りたいですと言ったら、こういうふうに申請しなさい、対話形式で返ってくるんですよね。ホームページでも、チャットボットはいろいろと質問とか入れたら自動で返ってくるものがあると思うんですけども、例えばホームページでやるだけじゃなくて、そういうものを使って、何か。
【田中委員】 量子ビームチャットボットみたいな。
【岸本委員】 そうそうそう。要するに、例えば一番思うのが、課題申請するときもいろいろと施設側の方は考えていただいて、便利な申請だとか仕組みというのを作っていただいているんですけど、それを全て読んで、それで自分が解決したい課題がどこにマッチングするのかと、ここに行き着くまで結構な時間が掛かるんですね。例えば、そういうところでそういう問題を解決するとか、施設に一々そういうことの問い合わせ窓口を作るという、これまたすごい大変なことだと思うんですよね。
だから、ユーザーにとっても、施設にとっても、負担のないやり方みたいなものは考えていかないと、いずれ破綻はしちゃうので、その辺はよく考えていかなきゃいけないのかなということと、あとやっぱり参考マトリクス、これは本当に大切だなと思うんですけど、横串と言っても、これは本当に運営主体が全然違うので、どうするのかなというところなんですけど、やっぱり学会などが中心にならなきゃいけないのかなという気はするんです。例えば利用の在り方のガイドラインだとか、施設共有の部分はどこにあるのかとか、そういう何かガイドラインぐらいだったらもしかしたらできるかもしれない。そのガイドラインを基に、各施設のオリジナリティのある部分を付け加えていくということをすれば、木の幹は一緒ですよと。あとは枝葉をユーザーがどう見ていくかと。それこそ量子ビームチャットボットか良いのかわからないですけど、そういうもので付けていくというのもありなのかなとふと思いました。済みません。長くなりました。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。議論はエンドレスになりそうな気もしますので、時間的な制約もありますので、ここでまとめを作っていただいて、整理してから、もう1回議論するということにしたらどうかと思いますが、それでよろしいでしょうか。
では、議第3、その他がありますので進みます。事務局より、令和2年度、来年度の文部科学省の予算(案)についての御報告があります。
【對崎補佐】 それでは、資料3をご覧いただけますでしょうか。内海委員からもお話がございました、次世代放射光施設の予算もしっかりと確保させていただきましたので、その御報告でございます。
1枚目は、大型施設を含めスパコン「富岳」も入っておりますが、大型施設全体のまとめという形になっておりまして、この中に次世代放射光施設に加えまして、SPring-8、SACLA、J-PARCの予算が含まれております。そういう整理をしているという形でございます。
2枚目以降に個別の事業ごとの予算がまとめておりまして、次世代放射光施設が3ページ目にございます。
前年度予算が13億でございましたが、来年度の予算額として、施設整備に必要な額として17億、それに加えまして、本年度補正予算として38億を確保して、来年度、本年度補正と来年度予算と併せて、国側が整備する加速器等の政策に充てていく分を確保しております。
事業の進捗自体は現状、基本建屋の今年度中の建設開始に向けて、地域パートナー側が公募を昨日より開始しているという状況で、年度内の着工に向けて進めているところでございます。
4ページ目がSPring-8の整備・共用で、5ページ目がSACLAの整備・共用でございますが、こちらはSACLAからSPring-8の電子ビームの入射という形での施設の効率的な運営を行っていくという形で、SPring-8に関しましては、若干の予算減にはなってございますが、今年度と同時間、同規模の運転時間を確保する予算となっております。
SACLAに関しましては、今申し上げましたSACLAからの電子ビーム入射による保守費の増というところがございまして、金額としては同額でございますが、その金額から算出される運転時間に関しましては少し減っているという状況でございます。
次の6ページ目がJ-PARCでございまして、こちらは運転に関しては前年同額となっておりまして、利用促進費として若干の効率化による減という形になっております。
続きまして、1ページ飛んでいただきまして、8ページ目以降が文部科学省において、今年度、研究力向上改革ということで掲げておりました研究人材、資金、環境の一体的な改革ということでまとめているものでございまして、この研究環境の改革というところに大型施設等の共用事業が入っております。
また少し飛んでいただきまして、研究環境の説明のあります11ページでございます。こちらに、今し方、説明を申し上げました次世代放射光施設や、特定先端大型研究施設が含まれておりまして、研究環境の改革という意味では、いわゆる共用事業に資する事業であったり、学術の大型プロジェクトであったり、そうしたものも含まれておりまして、他局の事業、他課の事業ではございますが、こうした事業の進捗や、中身についても今後こうした場で定期的に報告というか、フォローしていければと思っております。
最後のページは、直接量子ビーム施設に関わるものではございませんが、量子戦略全体の予算として、こちらを取りまとめておりまして、当量子研究推進室の事業も含めて、来年度に向けて必要な額を確保しているというところでございます。
報告は以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございました。
今の御説明に対する御質問等ございますでしょうか。1つ、2つ、御質問を受けられますが、よろしいですか。
では、用意した議題は以上なんですけれど、全体を通して何かございますでしょうか。
特になければ、事務局から、次回以降の連絡をお願いいたします。
【對崎補佐】 本日もお忙しいところ、どうもありがとうございました。議論のまとめにつきましては、今年度に検討の方向性という形でまとめるに当たって、きょうの議論も含めて引き続き個別の論点等も出しながら、議論を深めていければと思っております。
次回の開催につきましては、年明け1月の下旬頃を予定しておりますが、以前頂きましたスケジュール等で、先生方、変更がございましたら、電話等でも結構ですので、御連絡を頂ければ幸いでございます。
もう一度、既にご連絡いただいているご予定に変更がありますでしょうかというメールも欠席の先生方も含めて、流させていただきますので、そちらに返信等頂ければと思います。
本日の会議の議事録につきましては、作成次第、再度、委員の皆様にメールにて御確認いただきまして、文部科学省のウエブサイトに掲載させていただきます。
配付資料につきましても同様に、非公開のものを除いて、文部科学省のウエブサイトに公開をさせていただきます。
以上でございます。
【小杉主査】 以上をもちまして、第10期第33回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――


 

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科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)