平成29年4月11日(火曜日)14時00分~16時00分
文部科学省 15階 科学技術・学術政策局会議室1 (千代田区霞が関3丁目2番2号)
雨宮主査、尾嶋委員、金子委員、岸本委員、小杉委員、高橋委員、高原委員、田中委員、山田委員
村上研究開発基盤課長、上田研究開発基盤課量子研究推進室長、橋本研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐
足立伸一 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 研究主幹・教授、矢橋牧名 理化学研究所 放射光科学総合研究センター ビームライン研究開発グループグループディレクター
【橋本補佐】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第6回量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。本日は、お忙しい中御出席いただきありがとうございます。
本委員会の事務局を担当させていただきます、文部科学省科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子研究推進室の橋本と申します。
それでは、委員会の開会に当たりまして、量子研究推進室の上田室長より一言御挨拶をお願いします。
【上田室長】 一言御挨拶を申し上げます。2月に中間的整理をおまとめいただきまして、ありがとうございました。引き続き、このメンバーに参集いただきまして、御審議をお願いしたいと思っております。
事務的な話ですが、科学技術・学術審議会全体としては2年の節目で委員改選が行われていまして、この春に改選が行われました。それに伴い審議会構造の再整理が行われまして、この小委員会はもともと先端研究基盤部会の下にあったのですが、今般、研究計画・評価分科会の下に置かれることになりました。これは御審議のあった中間的整理あるいはこの1つ上の量子科学技術委員会での整理もあって、量子科学技術を1つの分野として検討を進めていこうとなったものでございます。こちらの調査検討の中では基盤的なものもあるかと思いますが、それは必要に応じて先端研究基盤部会の後継の部会にまた報告なりするということで、基本的には研究計画・評価分科会の下で進められることになります。こちらの小委員会の所掌としては変わってございません。以上でございます。
【橋本補佐】 それでは、事務局より配付資料の確認をいたします。議事次第を御覧いただければと思います。本日、資料1-1から資料5まで、それから参考資料として1-1から1-7までを付けておりますので、御確認ください。
それではまず、本委員会の設置経緯及び趣旨等について御説明したいと思います。参考資料1-1以降を御覧ください。
まず参考資料1-1の2枚目でございますけれども、科学技術・学術審議会令第5条第1項にございますように、科学技術・学術審議会の下に研究計画・評価分科会を置くことが定められております。
参考資料1-2でございますが、科学技術・学術審議会の運営規則を参考として配付しております。
それから、参考資料1-3にございますように、研究計画・評価分科会は、運営規則第4条第1項におきまして、特定の事項を機動的に調査するため、委員会を置くことができると定めております。
これに基づきまして、参考資料1-4でございますけれども、平成29年4月6日に開催されました研究計画・評価分科会におきまして、量子科学技術委員会が設置されております。量子科学技術委員会は、2枚目の下から2番目の欄に書かれております。
それから、参考資料1-5でございますけれども、この量子科学技術委員会運営規則第2条に基づきまして、参考資料1-6にございますように、量子ビーム利用推進小委員会が設置されております。
当小委員会の委員につきましては、量子科学技術委員会の運営規則第2条第2項に基づきまして、同委員会の主査が指名することとなっております。これを受けまして、量子科学技術委員会の雨宮主査より資料1-1のとおり委員を指名いただいております。また、同委員会の運営規則第2条第3項に基づきまして、雨宮委員が本委員会の主査に指名されております。お一人ずつお名前をお呼びし、順に御紹介させていただきます。
まず、本委員会の主査、雨宮委員。
【雨宮主査】 雨宮です。いま、事務局から位置付けが変わったという説明がありましたが、この量子科学技術委員会は連続しています。引き続きよろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 続きまして、向かいまして順番に御紹介します。
尾嶋委員です。
【尾嶋委員】 よろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 岸本委員。
【岸本委員】 岸本です。よろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 金子委員。
【金子委員】 金子です。よろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 小杉委員。
【小杉委員】 小杉です。よろしくお願いします。
【橋本補佐】 高橋委員。
【高橋委員】 高橋です。引き続き、よろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 高原委員。
【高原委員】 高原です。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 田中委員。
【田中委員】 田中です。よろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 山田委員。
【山田委員】 山田です。よろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 以上の委員に加え、本日は御欠席されておりますけれども、資料1-1にありますとおり、石坂委員、内海委員並びに近藤委員が就任されております。
また、文部科学省からの出席者を改めて紹介させていただきます。
研究開発基盤課長の村上でございます。
【村上課長】 村上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 研究開発基盤課量子研究推進室長の上田でございます。
【上田室長】 上田です。どうぞよろしくお願いします。
【橋本補佐】 最後になりましたが、委員以外で本日御発表いただく有識者を御紹介させていただきます。高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所研究主幹・教授でいらっしゃいます、足立伸一先生でございます。
【足立教授】 足立です。よろしくお願いいたします。
【橋本補佐】 それから、理化学研究所放射光科学総合研究センタービームライン研究開発グループグループディレクターでいらっしゃいます、矢橋牧名先生です。
【矢橋グループディレクター】 矢橋です。よろしくお願いします。
【橋本補佐】 それでは、同委員会運営規則第4条第6項に基づきまして、当小委員会の議事は雨宮主査にお願いいたします。
【雨宮主査】 それでは、議題に入りたいと思います。まず、主査の代理の指名を行いたいと思います。引き続き、小杉委員に主査代理をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【小杉主査代理】 はい。これまで特に代わることはなかったですが、引き続きやらせていただきます。
【雨宮主査】 それでは続きまして、当小委員会の運営規則等について、事務局より説明をお願いいたします。
【橋本補佐】 第9期に入り、研究計画・評価分科会の下で改めて設置されたということで、運営規則について簡単に御説明させていただきます。
資料1-2です。まず、第2条を御覧いただければと思います。当小委員会は、小委員会に属する委員等の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない。第3条ですが、委員等が小委員会を欠席する場合は、代理人を小委員会に出席させることはできない。ただし、第2項にございますが、小委員会の主査を通じて、小委員会に付議される事項について、書面により意見を提出することができる。会議の公開につきましては、第4条ですけれども、次に掲げる場合を除き、公開とする。1つは、小委員会の主査の職務を代理する者の指名その他人事に係る案件や、行政処分に係る案件、それから、前2号に掲げるもののほか、個別利害に直結する事項に係る案件や、調査の円滑な実施に影響の生じるものとして小委員会において非公開とすることが適当であると認める案件については、これらは除いて公開するとしております。それから、第5条は、議事録の公開について定めております。資料1-2の裏面ですけれども、小委員会の会議が、前条各号に掲げる事項を議事とした場合に限り、小委員会の主査は、当該部分の議事録を非公表とすることができるとしております。
それから、資料1-3です。こちらは公開に関する手続について定めたものでございます。会議の日時、議事を開催の原則1週間前の日までに文科省のウェブサイトに掲載するとしております。傍聴につきましては、一般傍聴者、報道関係傍聴者、委員関係者とそれぞれについて定めておりまして、基本的に一般傍聴者に関しては、事務局の指定する期日、原則として開催の2日前までに事務局に登録すると。多数の傍聴者登録があった場合には抽選を行い、傍聴者を決定するとしております。それから、報道関係者の傍聴者につきましては、1社につき原則1名として、こちらも事務局の指定する期日までに事務局に登録するものとしてございます。次に、会議の撮影、録画及び録音についてでございますけれども、裏面を御覧いただきまして、傍聴者は、主査が禁止することが適当であると認める場合を除きまして、会議を撮影、録画及び録音することができるとしております。会議の撮影等を希望する者は、傍聴登録時に登録していただきます。会議を撮影等する者は、以下のことに従うものということで、主査又は事務局の指示に従って撮影などをしていただくということでございます。その他でございますけれども、傍聴者が会議の進行を妨げていると主査が判断した場合には、当該傍聴者に対して退席を求めることができるという旨と、それから、その他会議の公開に関する手続で、1から3に定めていない事項については主査の指示に従うこととするとしております。
以上でございます。
【雨宮主査】 いま、事務局から資料1-2と1-3について御説明がありました。これはこの委員会が所属する科学技術・学術審議会の期が変わったということで、今回は第1回という位置付けですので、今まで行われてきたことと同じなのですが、確認という意味で説明を頂きました。これでよろしいでしょうかということを確認したいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【雨宮主査】 それでは、了承された、異議なしということで、次の資料の説明に移ります。この量子科学技術委員会の議論のこれまでの状況について、資料2-1に基づいて、事務局より御説明をお願いいたします。
【上田室長】 まずはこの小委員会の親委員会である量子科学技術委員会で取りまとめられました中間とりまとめ等につきまして、15分程度で御説明したいと思います。資料2-1でございます。報告書本文は60ページほどございます。
目次を御覧ください。1ポツ、量子科学技術について。2ポツ、内外の研究動向及び我が国の強み・課題について。こちらの(4)に、当小委員会における議論、中間的整理の内容が盛り込まれてございます。3ポツ、推進方策の検討にあたって考慮すべき点について。こちらも(d)に当小委員会の中間的整理の内容が盛り込まれてございます。
内容自体は、6枚の資料が概要としてまとめられていますので、こちらで説明したいと思います。タイトルは、「量子科学技術(光・量子技術)の新たな推進方策について~我が国競争力の根源となりうる「量子」のポテンシャルを解き放つために~」ということでございます。
ポイントといたしまして、近年の技術進展によって、サイエンスのみならず、超スマート社会における産業応用を視野に入れた新しい技術体系が発展する兆しと。2番目に、経済・社会の様々な課題が複雑化し、資本等が一瞬で動く中、この技術は広範な応用があって、従来技術と比して非連続に課題を解決する大きな可能性が指摘され、さらに、我が国の産学官が培ってきた強みをベースに、簡単にコモディティ化できない知識集約度の高い技術体系であることから、あらゆる分野の根源となり得ると。特に3番目として、世界的に産業投資の拡大、産業応用の模索の動きが早く、ここ数年が我が国の研究の優位性をイノベーションに結び付け、将来の成長に転換できるかの岐路であり、府省横断で検討すべき重要な時期というまとめになっています。
左下にありますけれども、この数年ということで、例えばアメリカのGoogleがQuantum AI研究所を設立していたり、カナダのD-Waveから量子計算機を導入していたり、あるいはアメリカの著名な研究グループを吸収しているほか、IBMも3,000億円を超えるような5年間のイニシアティブを立ち上げ、米政府もこれを支援するとしています。ヨーロッパにおきましても、イギリスで400億円程度かと思いますが、5年間の研究イニシアティブが開始されまして、4つの分野で大学を拠点として産学官も受皿になり得るような研究が進められています。オランダは、これはデルフト工科大学に対してですけれども、135ミリオンユーロの政府支援がなされた上で、そこにIntel、Microsoftが研究支援をすると。ヨーロッパ全体としても、10年計画と聞いていますけれども、1,000億円を超える規模とされる計画を来年から始めるべく進行中です。中国における中長期計画においても、先端分野の8分野の1つがレーザー、重大科学研究の4項目の1つが量子制御というような動向になっているということです。
我が国における状況を一言で言うと、我が国には強みも課題も存在するということで中間まとめがなされています。1つは、我が国の基礎研究は一定の存在感があると。ただし、その成果が海外で活用される事例もあるということで、例えば最初の超電導量子ビットは、2000年頃に我が国の研究者が研究発表して物理素子を実現したのですけれども、それが最初に実用化されたのは、左の方に出てきますカナダのD-Waveであったというような事例でございます。こういった研究は、地道で息の長いものである一方、課題としましては、研究者層の厚み、あるいは産学を含めた流動性、分野融合、若手の安定環境といった、ほかの分野でも指摘されるような課題が指摘されています。量子科学技術委員会としましては、今後更に推進方策を検討するという方向性になっています。
2ページ目、3ページ目が中身でございます。今回、中間とりまとめということで、ここに示したどの技術を推進するといったところまで決められたわけではなく、こういう各技術についてポテンシャルがあるということを可視化するという趣旨でございます。
(1)の量子情報処理・通信に関しては、冒頭にありますように、最速スパコンでも現実的時間で解けないようなものを解くということで、量子コンピューティングは、先ほど出てきました超電導量子ビットもそうなのですけれども、0と1の重ね合わせが存在する状態を物理素子としてできることになったと。それを量子ビットとして計算に利用することで、左側の図にありますように、超並列計算ができ、例えば素因数分解、暗号の解読、あるいは大規模検索等が短時間でできると。これに対しまして、中央にありますのがD-Waveの保有する量子コンピューターの写真でございます。量子アニーリングというものが先行していまして、日本でも内閣府のImPACTで研究開発がなされています。このアニーリングマシンは、右側にありますように組み合わせ最適化問題が解けることから、例えば人工知能における情報処理とか、物流・資源割当ての最適化が期待されるというまとめです。量子シミュレーションにつきましては、量子コンピューティングと同様の技術であるけれども、複雑性が少ないので、より短期的に実現が可能であると考えられていまして、各国の政策でもキラーコンテンツとされています。こちらもある意味、スパコンを補完する形になろうかと思いますが、量子レベルの物性等を踏まえた上での新物質の探索あるいは創薬といったものが考えられるということです。
次に、右側にあります(2)量子計測・センシングでございます。固体量子センサのところにダイヤモンドNVセンタという図があります。これは近年研究が進んでいる代表例として挙げられたものです。ダイヤモンドの結晶構造の中の1つの炭素原子を窒素で置換して、1つを空孔にすると、この空孔に電子スピンが閉じ込められ、この電子スピンが量子状態を持つのでセンサとしても使え、従来技術では難しい微弱な磁場等を計測します。磁場につきましては、10-15テスラでして、地磁気の100億分の1、実世界でいいますと脳磁とか心磁が測れるレベルです。こういったものが室温動作のセンサとして期待されるということです。応用先としては、蓄電池等のエネルギー・車載センサ、インフラ、IoT利活用、あるいは脳磁等の計測、更に生命・医療フロンティアがあります。例えば生体内の微弱な温度等はこれまで観測技術がなかったわけですから、こういったところから生命・医療フロンティアが導き出される可能性があるという指摘がなされています。灰色で示してありますように、我が国の研究機関の結晶作成技術は高く、海外の研究グループから材料提供の引き合いがあるというようなレベルだと指摘されています。中段にありますのは量子もつれ光です。複数の光子がもつれた状態にある、そういったものを使いますと、1つは水分を通しても、普通は通常光ですと分解能が下がるのですけれども、それが下がりません。したがって、眼科等へ応用できて、OCTが量子化するというのが実験室レベルで作動するようになっており、同様に、量子レーダーカメラへの展開も考えられるといったことが指摘されています。
3ページ目にまいります。(3)は、最先端フォトニクス・レーザーです。冒頭にございますように、光源や光機能の先鋭化というのは、量子研究全般を支え、フロンティアを切り拓くものであり、次のようなものが進展しているということです。極短パルスレーザーにつきましては、小文字で書いてありますように、分子の中の電子が動く時間スケール、すなわち、アト秒をパルスで発出するレーザーが高次高調波技術によって開発されつつあって、これでいきますと化学反応等が見られるということで、光合成等の化学反応メカニズム等の解明、あるいは電子状態の制御までいきますと、高性能電池等の開発につながるといった指摘がなされています。中段は、産業応用に関しまして、最初の2行は、半導体に用いられるリソグラフィをEUV化すると、現行波長のレーザーの線幅限界を超えた加工が可能といった進展があるということです。また、レーザー加工は、日本においても様々な製造現場で汎用されており、切断等で使われていますけれども、実は加工学理というものは必ずしも確立されていない中で、世界的にIoT知的生産技術の確立の動きがあり、例えばドイツ等で見られるといった指摘がなされています。
(4)として、当小委員会における議論を紹介し、入れ込まれることになりました。中身については割愛させていただきます。
以降3ページは、参考資料1、2、3でございます。4ページ目は、Society5.0と量子科学技術の関係ということで、冒頭に書いてありますように、量子科学技術は、Society5.0関連技術を横断的に強化するとともに、その先には必ずフィジカル空間がありますから、フィジカル空間を高度化する鍵であるという指摘がなされています。左側は、コア技術を並べた上で、それぞれ従来技術の限界を指摘していたりするものです。右側の図には、下側に量子科学技術が並べてありまして、右の方に量子ビーム高度利用があります。こういったものがそれぞれ、上側にあります人工知能あるいはIoT・ネットワーク、統合型材料開発、スマート生産、診断・医療、こういったものを支えるだけでなくて、従来技術の限界に対し非連続に課題を解決するというポテンシャルがあるというまとめでございます。
続きまして、参考2でございます。量子科学技術に共通する要素技術でございます。要素技術の多くが共通あるいは関連していて、超スマート社会の実現に向けて、我が国の産学官が培ってきた半導体等の強みを発揮することが可能というまとめでございます。それぞれ要素技術を分解していきますと、下側にあるものは、結局のところ、半導体技術あるいはナノテク・材料、光学・フォトニクス技術、加速器・計測技術がないと作れなかったものだということを示します。こういうものが我が国の産学官がこれまで培ってきた強みであって、その強みを発揮することが可能というまとめでございます。
最後のページにまいります。こちらは、量子科学技術の展開例の1つとして、物性や反応の量子レベルの理解と応用についてどういうことが言えるかということです。冒頭にありますように、あらゆる物性や反応は、当小委員会でも議論されたように、電子が支配しているといったことに対して、図にありますのは、三角の左下がこれまで議論された高輝度軟X線光源ということで、電子が支配する物性と反応に迫ることが可能ということです。一方、右下の極短パルスレーザーにつきましては、化学反応等の超高速反応に迫ることができると。他方、量子センサもあると。こういったもので物性や反応の理解が進むということです。そうすると、新物質・機能を探索したり、材料開発なり創薬なりでシミュレーションしたいというニーズが出てくるわけですけれども、スパコンには一定の限界が存在する中で、量子シミュレータであれば、スパコンがなかなか解けないシミュレーションをできる可能性があるといったことで1つの展開例としてまとめられているものでございます。
量子科学技術委員会での中間とりまとめについては以上でございます。
続きまして、まとめて資料2-2を御覧ください。当小委員会の中間的整理について、量子科学技術委員会で御議論いただいた際に意見がありましたので、それを御紹介したいと思います。1つ目は、量子科学技術委員会の方の中間とりまとめでは、全般にわたって超スマート社会に向けた波及効果を挙げているが、高輝度放射光源についてもそのような波及効果をもう少し見えやすいようにしてはどうか。また、社会・科学への貢献の両面から期待される革新的な効果が大きいということのポジティブな記載も工夫されてはどうかという指摘がございました。2つ目、これは中間的整理の概要の方でまとめられたところですけれども、「期待されるインパクトの例」という記載内容が、他の量子分野のものに比べ多少古典的な記載が多いように思えるという指摘がございました。もう1つ、軟X線の特徴といったところもおまとめいただきましたけれども、放射光ではない、他の技術との比較があると分かりやすいのではないかという指摘がございました。
続いて、資料2-3です。こちらは一風変わって、量子科学技術委員会の方の中間とりまとめを用いまして、事務局たる文部科学省としても、産学官の方々に説明して議論を喚起するといったことをやっております。2か月ほど活動してまいりまして、量子科学技術全般に対しての主な声をまとめましたので、御参考までに紹介します。1番目は、ロードマップの必要性。様々なポテンシャルがあることは分かるが、どの技術でいつ頃何が実現されるのかということです。こちらにつきましては、昨日、量子科学技術委員会の方で、4つの技術につきましてロードマップ検討を進めるということが決まってございます。2番目は、産業界との関わりについて。量子と名前が付くととかく技術的に難しい印象を受けがちだけども、このようにまとめられていると理解できる。センサ、レーザーなどはものづくり系にとっても現実的に捉えられるのではないか。あとは、ものによってフェーズが異なって、産業界が検討するものもあれば、しばらく大学の研究を見守りたいものもあろうと。何れにせよ、企業が乗り出す際には「時間軸」が示されることが必要と思われる。あるいは、ものづくり系だけではなく、IT、サービス系の企業には量子情報処理の方に興味を持つ企業があるのではないかという指摘です。続きまして、光・量子技術の研究者層は、狭義に捉えると薄いのかもしれないけれども、ナノテク、半導体等を含め広義に捉えると厚いのかもしれない。日本の強みを発揮できるという点は理解できるといった声。あるいは、大学等で拠点が形成されていると、産業界にとっては企業が参加しやすいといった声がございました。最後になりますけれども、海外との関係につきまして、海外で巨額投資が起きているなら、よほど戦略的に考える必要がある。研究開発投資を日本にどう呼び込めるか、国際的な形でも大学がどう連携した形を作って投資を誘引できるかなど考えないといけないのではないか。あるいは、諸外国が先行し、我が国が後塵(こうじん)を拝するとどういう問題が生じるのかという御指摘もございました。これも昨日の量子科学技術委員会で御紹介して、今後の審議の参考にしていただくということになってございます。
私どもの説明としては以上でございます。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。今、上田室長の方から説明がありました量子科学技術委員会における議論、資料2-1の要約を説明していただいたということと、あと、資料2-2では、量子科学技術委員会の方からこの量子ビーム利用推進小委員会の中間的整理について出た意見が3点ほど記載されています。資料2-3は、量子科学技術委員会の中間とりまとめに対する全般的な産業界からのコメントという位置付けになります。
この全てにおいて、まず何か御質問等あればお受けして、この委員会としては、資料2-2、量子科学技術委員会からこの委員会の中間的整理に向けて出た意見についてどう対応するかということについて少し重点を置いてフリーディスカッションしたいと思います。まず、全般的な御質問からで結構ですが。はい。
【尾嶋委員】 よろしいでしょうか。親委員会のコメントは、なるほどというふうに感心しました。感心していてはいけないのですけれども。
2つありまして、1つは、やはりこのまとめでロードマップが足りないと指摘されたというのは、やはり私もその通りだと思いました。質問は、4つの技術についてのロードマップを作ることが決まったということですが、軟X線高輝度光源についてもロードマップを作るという方向なのでしょうか、ということがまず1つ。それからもう1つは、他の量子分野のものに比べて放射光は古典的な印象の記載が多いというのは、要するに、古臭いというか、もっと斬新な魅力的なアプリケーションを示せということですか。まさにこの2つは、この小委員会の非常に大きなテーマになるのではないかなと思いました。
【雨宮主査】 1つ目の質問については、事務局の方から。
【上田室長】 昨日行われました量子科学技術委員会のロードマップ検討作業につきましては、大型の研究施設整備を伴うものについては本作業の対象から除くという前提で議論がなされました。
【尾嶋委員】 そうなんですか。
【上田室長】 はい。量子科学技術委員会の全体の中でもほかにも大型施設に関わるものはあったのかもしれませんけれども、4つ選ばれました。1つは量子情報処理、主に量子シミュレーション。2つ目が量子計測・センシング。3つ目が極短パルスレーザー。4つ目が次世代レーザー加工。この4つについて作業を進めるということが決まったものでございます。
当小委員会でいま議論しているものは、大型施設整備に関わることだと思います。こちらの議論はこちらのペースで進めていただくのが大事かと思います。
【雨宮主査】 あと、2番目のコメント、古典的な記載が多いように思えると。これは必ずしもネガティブなメッセージではなくて、親委員会は量子科学技術委員会だから、それとマッチしたような表現で言ってもらえると良いというようなメッセージ性もあるかと思います。要するに、古典的というか、逆に非常に物事が実質的に伴っているという言い方でもあると思うのですね。
【尾嶋委員】 なるほど。
【雨宮主査】 でも、親委員会の名前が量子科学技術委員会ですから、量子という言葉の第2フェーズにあって、新しい技術革新が起きるというのが世界的な動向であるという、その流れの中で、もともとこの放射光で扱っているものは量子で、決して古典的ではないのですけれども、それを新しい表現で言ってもらった方が、全体の委員会の中とマッチングがいいというふうに私は受け止めました。
【尾嶋委員】 なるほど。分かりました。
【雨宮主査】 その辺の工夫はあると思いますので、そこはこの委員会で今後取りまとめていく上で検討したいと思います。
【上田室長】 少し付言して。事務局として感じていますのは、この量子ビーム利用、高輝度軟X線光源の方も、これまで見られなかった物が見られていくものでございます。それは電子状態を見ていくといったところについては、まさに量子レベルに入っていくのだろうなと捉えています。そういったものに関しては、極短パルスレーザーの方もまさに電子状態を見るといったところで、かなり観測対象として量子レベルに入っているというところは軌を一にしているのではないかとは受け止めています。あとは、先生がおっしゃったとおり、どういった表現にしていくかとかそういったことかな、と事務局としても受け止めています。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。
3番目の、軟X線の特徴については他の技術との比較があると分かりやすいのではないかということに関してもし意見を出していただければと。エネルギー領域的には非常にユニークな領域であり、イメージングという観点、空間の大きさという観点で見たときに、色々な計測手法との比較がもう少しあった方がいいというのがコメントだと思うのです。軟X線で、要するに、構造を見るのか、エネルギー状態を見るのかということによって測定法の比較する技術の対象が違うとは思います。この辺のことを少し頭に置きながら今後検討していくということかと思いますが、この場でこれに対してすぐに何かこうこう、ということを議論するとは思っていませんが、このような意見が量子科学技術委員会であったということは頭に入れて議論を進めたいと思います。
量子科学技術委員会の説明に関して、これ以外のことで何か全体で御質問があれば。よろしいでしょうか。量子科学技術委員会における、量子科学技術における量子ビームの位置付けというのが、これでかなり明確になっているということかと思います。
それでは、次の議題、(2)に移りたいと思います。量子ビーム利用推進小委員会における調査検討についてと。これについて、資料3に基づいて、事務局から御説明をお願いします。
【上田室長】 説明いたします。題名が「中期的な調査検討について」となっております。冒頭にありますように、当小委員会の調査事項は、先端的な量子ビーム技術の高度化及び利用推進方策とされております。中期的にはどのような調査検討項目が視野に入るかということで、現在、次世代の軟X線向け高輝度放射光源ということで検討していただいている以外に、中期的な調査検討項目(例)として、事務局からこういうものがあり得るかな、ということを載せているものです。1番目は、量子ビームの相補的・相乗的利用です。現在、放射光のみならず、中性子も使ったりするようなことを政策的には相補的・相乗的利用というふうに言っているのですけれども、そういった複数の量子ビームを使うといったものの現状を国の審議会としても把握し、その促進について考えるといったことがあろうかなと思われるところです。2番目は、ユーザーフレンドリーな放射光施設の利用環境ということです。特に放射光施設は、以前御指摘もあったように、現在、全国に9施設稼働しているといったところで、ユーザーにとって使いやすい環境とはどのようなものかといったことも中期的な調査検討項目として考えられるかと思ったものでございます。3番目が、小型中性子源の現状及びその促進と大型中性子源を含めた利用環境についてです。小型の量子ビーム源として中性子源につきましては、かなり小型で産業利用も始まっていることが報告されています。国の審議会としてもその現状を踏まえた上でその促進を考えるといったことや、現在稼働中のJ-PARCに加え、安全規制との関係で審査中のJRR-3という原子炉も稼働すれば、大型中性子源としてはJ-PARCとJRR-3があるのですけれども、小型中性子源がもし進展すれば、これら全体としての中性子利用体系をどう考えるかといった調査検討項目もあろうかと思われたところです。なお、参考を2つ付しています。参考1は、量子科学技術委員会の検討項目では、量子ビームについて、先ほど申し上げたような内容が一般的に記述されているところです。参考2の方は、SPring-8とSACLAとJ-PARCに関することで、こちらについては大規模施設ということになりまして、文部科学省における評価指針がございます。大体5年を目安に中間評価を行うこととされていまして、これまでも行われてきました。節目に応じてこういった中間評価がされるのですけれども、これはまた別の評価作業部会において実施予定ですので、こういった状況や結果を踏まえて、あまり重複ないような御議論を頂くという参考情報でございます。
説明としては以上でございます。
【雨宮主査】 どうもありがとうございます。今の資料3の説明に関して何か御質問等あれば。中期的スパンというと、どういうことを言いますでしょうか。
【上田室長】 先生方もお忙しくていらっしゃるので、全て詰め込んで御審議いただくのもなかなか御負担も大きかろうという意味合いでございます。
【雨宮主査】 そういうことですね。定性的ということで。
何か御質問ありますでしょうか。参考2で中間評価は別途実施するということですけれども、SPring-8の中間評価に関しては、次はいつ頃になりますか。
【橋本補佐】 前回の中間評価が平成25年8月に取りまとめられているということで、来年には5年になりますので、大体その頃がめどかなと思っております。それから、同様にJ-PARCの方も平成24年6月にまとめているので、もうすぐ5年になるというところです。大体5年となっているので、そろそろこの辺りの中間評価を検討しないといけないと思っているところでございます。
【雨宮主査】 はい。よろしいでしょうか。それでは、いまここで示された方針でこの委員会での検討を行っていきたいと思います。
それでは、次の議題、(3)の軟X線向け高輝度放射光源やその利用についてということで進めていきたいと思います。今日は、有識者からの話題の提供も含めて、資料4-1、4-2、4-3とありますが、3名の方から話題提供を頂きます。まずは、事務局から趣旨説明をお願いします。
【橋本補佐】 今後の調査検討を進めるに当たって、海外の施設動向やその周辺状況を把握することが検討に資すると考えておりますので、本日は、小杉主査代理、足立先生、矢橋先生に話題提供をお願いしております。よろしくお願いします。
【小杉主査代理】 では、基本的にはお手元の資料(資料4-1)のとおりなのですけれども、SOLEILが置かれているSaclay地域でどういうことが起きているかという、最近の状況をお話しします。SOLEILは毎年のように行くチャンスがあって、テロの関係で少し間は空いたのですけれども、この1月も行ってきました。この3年間ですごく変化している状況があります。
まず、1ページ目ですが、サルコジ政権ができたときに、1つの目玉としてSaclayの地域である意味シリコンバレー的なものをやろうという計画ができました。Saclayというのはもともとはこの地域全体の名前ではなくて一部の名前なのですけれども、全体がParis-Saclayということで7,700ヘクタールと大きいです。これは研究施設だけの敷地面積でなくてこの辺り全体の地域の面積を言っているわけですけれども、そこでこの計画ができたのが始まりです。右上にあるのがシャルル・ド・ゴール空港で、中央下側にあるのがオルリー空港で、Saclay地域からは少し遠いです。パリのいわゆる観光に行くような中心部というのは、中央からゾーン1とゾーン2辺りになります。この路線図は地下鉄ではなくて郊外列車のもので、中心部から放射状に出ています。パリ近郊を含めた環境を全体としてよくするというグラン・パリという計画も次に出てくるのですけれども、そういうものとタイアップして、この辺りにサイエンスの中心を作ろうということで進んでいます。Saclay地域は、シャルル・ド・ゴール空港から電車で1本で、駅からバスに乗りかえれば空港から1時間半から2時間もあれば着くという、比較的便利な環境であります。少し小さくて見えないかもしれませんが、Palaiseauという地区とか、Moulon地区、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)のあるSaclay地区があり、SOLEILがあるのはOrme地区で、地名でいえば、Saint-Aubinになります。それから、この地区の下にパリ南大があるOrsay地区があって、Gifという地区にはフランス国立科学研究センター(CNRS)の研究所が1つあります。
次のページでわかりますように、グラン・パリ計画では、パリ中心部を通らなくて済む環状線を整備して、パリを大きく捉えて文化も含めて活性化しようという流れがあって、その中で新たに鉄道をつくるという話があります。これは、地下鉄になるのか、列車になるのかよく分からないのですけれども、急行というか快速というか、高速鉄道で周辺の地域を活性化するものです。今はオルリー空港からは路線バスで少し不便なのですけれども、高速鉄道はオルリー空港からSaclay地域を抜けてベルサイユの方(橙色で示した部分)までつなぐというのが、少し先の2024年完成の予定です。まだ何も形はないのですけれども、鉄道まで含めて全体を完成させるというかなり長期的な計画になっています。
次は2ページ目になりますが、Paris-Saclay計画の割と早い時期、1期から2期ぐらいで集中的に開発しているのはこの領域です。ここにSOLEILもあります(左、白色丸で示した位置)し、色々な企業も入っております。ここの整備が終わったら、次は(地図外の)左上方向にあるベルサイユ方面のSatory地域というところまで範囲を広げ、既に研究機関が幾つかあるみたいなのですけれども、そちらの方も更に充実させて、鉄道も通すという計画になっております。この地図が計画の中心部で、Palaiseau地区と、Orsay地区、Gif地区、それから、Moulon地区、SOLEILのあるOrme地区があります。Saclay地域にはCEAがあるのですけれども、これは100%国の機関ではありませんが、原子力・代替エネルギー庁という組織で、その拠点がここにあります。あと、Gif地区にあるCNRSは、日本でいえば文科省の直下にある国の研究センターにあたります。
この地域にはグランゼコールと呼ばれるものもあります。これはフランス独特のシステムで、大学ではないのですけれども、卒業生は高級官僚なり、民間企業でも経営者側に入るような人材を育成する学校です。個々のグランゼコールの入学者数というのは、年間100名とか200名とかその程度の小さな学校なのですけれども、フランスにはこれが多くあります。また、大学もあります。パリ大学はI, II, III, IV…と番号が付いていて、XIIIまであるのですかね、中央から左下にありますパリ南大学(Université de Paris-Sud)というのがXIの番号になっています。もともとパリ大学は色々な歴史をたどっており、大きくパリ大学とまとまった時期もあったのですけれども、学園紛争の頃にそれぞれ小さくなって、I, II, III, IV…というふうに分かれてしまいました。後で御説明しますが、最近またそれが変わってきています。
さらに、民間企業もあります。この地域に多くの民間企業が入ってくるということで計画が進んでおります。
地図では分かり辛いかもしれませんが、この地図の上側が台地になっていて、プラトーと呼ばれ、下側にはイベット川があり谷になっています。この地域全体では、プラトーかバレーか(=台地か谷か)と言ってよく区別します。この地域の開発は、もともとはCNRSのバイオ系研究所がGif地区にある駅からSaclay地域方向に少し進んだ谷側にできたというのが最初です。それから、パリ南大学がOrsay地区の辺りにでき、谷側で最初は始まったのですけれども、その後、CEAが台地側に大きく研究所を作りました。本部はパリの市内にあるのですけれども、実際の研究あるいは教育の中心はSaclay地域です。だから、昔はSaclayといえばCEAのことだったのです。その後、近くにSOLEILができました。その前に、グランゼコールのエコール・ポリテクニーク(Ecole Polytechnique)がPalaiseau地区の辺りに、また、Moulon地区の辺りには電子情報のグランゼコールができたりしています。グランゼコールの中ではエコール・ポリテクニークは非常に大きな方ですが、そういうものがぽつぽつとできてくる中で、サルコジ政権がこの地域でサイエンスを強化することを決めたわけです。SOLEILはサルコジ政権発足前の2006年にできておりますが、グランゼコールは個々は小さいので、テクノロジーに関係した7、8のグランゼコールを集めて、2007年にパリテク(ParisTech)という大きな組織を作っています。いまは更に2014年からパリ・サクレー大学(Univ. Paris-Saclay)という大学を作って、この辺り(中央左側)全体がまとまる予定です。その構成は後で御説明しますけれども、大学は2つしか入っていませんが、グランゼコールはかなり多く入っております。
一方、参考ですけれども、先ほどパリ大学というのはばらばらになっていると言いましたが、パリの中心部でまたまとまるという話があります。パリ・ソルボンヌ大学(Univ. Paris-Sorbonne)という大きな大学にするそうです。時期はもう少し先で、来年からでしょうか。その一方、パリ中心部のグランゼコールも理系と文系をまとめて、PSL研究大学(Paris Sciences et Lettres, une université international, au Coeur de Paris)というものが既に作られています。もともとグランゼコールは大学ではないのですけれども、法律も変えて、教育機関としてもしっかり位置付けるということで、このような集まりをパリ中心部で作っています。パリ中心部では今後はこの2つが中心となって大きな組織でやることになるのだと思います。一方、パリ郊外ではこの地図の辺りで全部ひっくるめて、グランゼコールも含めて、パリ・サクレー大学という大きな大学にする方向です。
このような組織化の1つの理由は、大きな組織にすると、上海交通大学の大学研究センターによる世界大学ランキングのトップクラスに入ってくるからです。フランスは国際的に大学のランクが低いことを非常に気にしています。もちろんCEAやCNRSはイノベーションのランキングではトップレベルなのですけれども、大学のランクも上げていくという意味で、このような大きなくくりにまた戻しております。
次は3ページ目になりますが、これが2020年を目指したプランです。地図では細かいことが色々と書かれてあるのですけれども、まだほとんどできておりません。いま、鉄道路線として谷側にシャルル・ド・ゴール空港から来る水色の線で示したB線というものが走っており、台地の方は橙色の線で示したバス路線が走っています。SOLEILの近くもバス通りになっているのですけれども、緑色の線で示したグラン・パリ計画の高速鉄道路線はSOLEILの近くには来ず、この辺(Moulon地区付近)で曲がっているので、駅からSOLEILに行くには歩きでは少し時間がかかるような気はします。いずれにしても2024年には高速鉄道が通るわけです。Palaiseau地区はエコール・ポリテクニークがあるところですけれども、その近くに工業団地があって色々な民間企業が入っています。日本関連でいえば、バスに乗っているとすぐ外に見えますけれども、株式会社堀場製作所の大きな建物があります。それから、Moulon地区の方も開発が進んでいて、日本関係では京セラ株式会社がOrme地区の辺りにあります。そういう感じで色々と民間企業が入ってきています。自動車や、それから食品産業も入っています。ダノンというフランスの食品会社もPalaiseau地区に研究所を設けています。これはSaclay台地には農業関係の研究所やグランゼコールもありますので、そのような関係で農業関係も含めた産業も誘致しているという状況です。研究所等の敷地は全体で174ヘクタールということのようです。2ページの地図では台地のかなりの部分が畑なのですけれども、この1月に行きましたら、3ページの建設計画に従って予定地全域で土を掘り返して建物を造る準備に入っていました。バス通りは両側全部壁で囲われていて、そこをバスが通っていく状況です。この辺り(白色の円で示した部分)全体がパリ・サクレー大学のキャンパスになるようです。
次は4ページ目になります。Moulon等の西地区が87ヘクタール、東地区のPalaiseauも87ヘクタールと面積は大体同じなのですけれども、西と東では感じが違っています。西地区のMoulon地区は、教育研究関連組織が35ヘクタール、民間企業が20ヘクタール占有しているのに対し、東地区のPalaiseauの方は、教育研究関連組織が20ヘクタールで民間企業が36ヘクタールと逆になっています。その他というのは、学生の寮や働く人の住まいなどです。開発計画に入っている組織がリストアップされていますが、この番号は3ページの地図上の番号と対応しています。リストの中で四角に囲っているものは既に完成している建物です。四角に囲っていないのはこれから造るということです。例えば東地区のPalaiseauにある最近できたところを見ていただくと、ほとんどが民間企業です。32番のEDFというのは、フランスの一番大きな電力会社です。33番の食品関係のダノンです。34番のThalesというのはレーザー開発をしている会社です。次の35番は民間企業ではなかったと思います。それから、最後37番は株式会社堀場製作所です。こういうものがもう既に進出しております。左側に示した西地区Moulon等の1番はMoulon地区ではなく谷側のGif地区の方の施設なのですけれども、歴史的に一番古いCNRSです。それから、2番のSOLEIL、4番のCEA関係、とこのような感じです。12番のSupélecというのは、電気電子関係のグランゼコールで、東地区Palaiseauにあるエコール・ポリテクニークと同じ頃に台地にやってきた非常に有名な組織です。このように色々な組織が今後、パリ・サクレー大学として大きくまとまるというような感じです。この地区に民間企業は既に80社以上入っているということで、色々な分野――精密機器、自動車、電子情報、光学、素材、食品など――の会社が集まってきています。必ずしも私もすべての確認ができたわけではないのですけれども、カシオはPalaiseau地区の東側の少し離れたところにあったと思います。京セラ株式会社はMoulon地区の方にあって、株式会社堀場製作所はPalaiseau地区の中心にあるというような感じで、日本関係の会社もいくつか来ております。
次は5ページ目になりますが、こちらはパリ・サクレー大学の中身です。2014年創設といっても12月29日から始まっておりますので、実際は2015年スタートということです。見ていただくと、もともと谷側にあったパリ南大学のいくつかの研究所が台地側に上がってきております。例えば分子科学研究所(ISM)は、パリ南大の谷側キャンパスにあったのがSaclay地域の方へ上がってきています。日本で分子科学研究所というとIMSなのですけれども、フランス語では順序が逆でISMになるんです。また、日本の分子科学研究所は岡崎でOなのですけれども、ここはOrsayのOでISMOとも呼ばれています。谷側からの移転を嫌がる組織もある中、無理やり台地に上げていくというようなことを一部でやっています。パリの市内からSaclay地域には行きたくないというグランゼコールもいくつかあって、パリテクに入っていたものの、パリの中心のPSL研究大学の方にくら替えしているようなグランゼコールもあります。パリの市内でのグランゼコールと、Saclay地域に行った後のグランゼコールでは周辺環境が全く違うので、移転に関しては色々ぎくしゃくしているところもあるようですが、国としてかなり強引に台地に集めている状況です。
パリ・サクレー大学には基本的には民間企業が入る余地はないのですけれども、左下を見ていただくと分かるように18の機関がこの大学を作っています。うち2機関は大学で、パリ南大学とベルサイユの方にある大学です。それから、9機関がグランゼコールで、7機関が国の研究機関です。SOLEILは、パートナーということで、この中には入らずに外にあります。SOLEILは、基本的には国の予算でやっていますけれども、会社という形をとっています。
パリ・サクレー大学の中には技術移転をする組織、Paris-Saclay SATTという会社が関連会社として作られていて、ここが民間企業とサクレー地区の公的研究機関をつないでいるようです。これだけなのか、他にもあるのかは存じ上げていないのですけれども、これがSOLEILと民間企業をつなぐときも窓口になっているようです。
最後は6ページ目になりますが、SOLEILは、基本的に軟X線に重点化されているものの、軟X線とテンダーX線も入っており、硬X線も割と多く入っています。フランスには硬X線用にESRFという光源があるのですけれども、これはヨーロッパの光源で、フランスが使える割合というのは負担している予算に比例しているのだと思いますが、25%とか20%位です。フランスの光源と言えるのは唯一SOLEILだけで、もちろん国際化はされていますけれども、100%フランスの施設ということで、硬X線も入れざるを得ないのかなという感じはしております。ただ、基本的に産業への貢献という意味では、軟X線を中心とした分析になっており、医学といっても、がんのイメージングをやるとかそういうところだと思いますけれども、医学、化学、環境、材料と、軟X線が使えるようなものがあります。創薬等は硬X線による結晶構造解析が中心だと思います。また、化粧品の分析なども1つの柱になっているようです。あと、一部、微細加工とか測定にも対応しているそうです。 SOLEILの民間企業窓口としては、単に民間企業がユーザーとして来る、それから、SOLEILの中の人と共同研究として実施する、あるいは依頼試料としてSOLEILが受けて解析すると、3つのアクセスがあるとのことです。この割合を調べたかったのですけれども、時間的に間に合わなくてその辺の情報は分からない状態です。SOLEILに対しても地元のParis-Saclay SATTという会社が産業との提携窓口になっているようです。Paris-Saclay SATT絡みの最近の動きとしては、SOLEILはこのような(右下)丸いリング状の施設で周りに側室がたくさんあるのですけれども、その側室の1つを特定の会社のためのラボとして設置した例があります。白色の屋根が延びているところが長尺のコヒーレンスを使うビームラインなのですけれども、最近、その上部にも並行して建物ができております。これは民間企業ではなく、CNRSを中心とした国の組織なのですけれども、IPANEMAという文化遺産を分析する研究所で、典型的なのは、昔の絵画を誰が描いたのかとか、にせ物ではないかとか、そういう判別を非破壊あるいは破壊も含めて行うものです。これはヨーロッパでは唯一らしくて、アメリカとも連携を組んでいると所長が言っていました。聞いてみたら、日本とはまだコンタクトはないということでしたけれども、そういう研究のために、SOLEILにPUMAという専用ビームラインを持っています。SOLEILには他には他機関の専用ラインはなかったかと思うのですけれども、以前よりもSOLEILが広がりを持ってきているかなという印象があります。
最後に、1つ言い忘れたことがあるのですが、3ページに戻ってください。いま述べたIPANEMAがここ(左側)にあるのですけれども、SOLEILの隣の敷地でいま工事をしているものがあります。これは10ペタワット級ハイパワーレーザーのApollon計画の場所になっています。これにSOLEILはかなり関わっていて、いわゆる光の研究分野としてSOLEILの放射光源とこの10ペタワット級のApollon計画のレーザー光源が連携を組むような大きな流れを感じています。これはもともと最初のParis-Saclay計画の2014年の計画にはなかったのですけれども、最近見たら工事をしていましたので、近々完成するのだと思いますが、そういう環境にSOLEILがあるということです。以上です。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。少し時間が押していますが、何かどうしてもという質問があれば。よろしいでしょうか。
【田中委員】 では1つだけ。日本企業がこのキャンパスの比較的そばに進出しているということでしたけれども、ここに進出する目的というのは何なのでしょうか。SOLEILを使うということでもなさそうですよね。
【小杉主査代理】 そうではないです。でも、Orsay地区は光学が強かったので、そういう関係で、放射光の分光器の開発をジョバンイボン社がOrsay地区でやっていて、それが株式会社堀場製作所と連携していたということ。そして、最近、光学関連の企業が台地側に集まったということです。
【田中委員】 では、要するにフランスの強いテクノロジーを取り込むという形でここにブランチを作っているということなのですか。
【小杉主査代理】 はい。
【田中委員】 それに、一応SOLEILもあるよという。
【小杉主査代理】 SOLEILは光の応用の一部でしかありません。光学に強いグランゼコールがキャンパスにありますので、そこと組むとかもあるのだと思います。
【田中委員】 ありがとうございます。
【雨宮主査】 それでは、次に進みたいと思います。どうも小杉委員、ありがとうございました。
それでは、足立先生から、5、6分程度で御説明をお願いします。
【足立教授】 KEKの足立でございます。私の方は、バイオの関係のリサーチコンプレックスというようなお題で頂きまして、本当はうちの構造生物学センターの千田が取りまとめていたのですが、今日は出張で来られないということで、私の方が代理で話をさせていただきます。製薬の方もいらっしゃるようなので、是非補足していただければと思います。
今日御紹介させていただくリサーチコンプレックスは、Diamondでございます(資料4-2)。バイオ、特に製薬に絡みますと、Diamond、あと、スイス辺りは非常に活発に進めていらっしゃるのですけれども、特にイギリスは伝統的にやはり構造生物学発祥の地でございますので、非常に強いです。
行かれた方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、HarwellのScience and Innovation Campusというのは、ロンドンのヒースロー空港(1ページ、右下)から車で1時間ぐらいの位置にあります(左側)。オックスフォードのちょうど南で、時間的には20分ぐらいですかね、そういうところにサイトがありまして、そこが研究複合キャンパスになっております。
このように(2ページ)、10個くらいのいわゆる国立機関、研究機関等が集中しておりまして、Diamondがここ(中央)にございますが、それ以外にも、レーザーファシリティーがあります。続いて、よく御存知だと思いますけれども、パルス中性子施設のISISがございまして、ビッグデータ、コンピュータ関係の施設、あと、技術移転関連組織があります。宇宙・物理関係ですと、ヨーロッパのSpace Agencyの研究所がございます。あと、理研も多分こちらに行ってらっしゃると思いますけれども、ラザフォード・アップルトン・ラボラトリー(RAL)がございます。あと、MRCと呼ばれている生命科学系の研究所のHarwellキャンパスとかがございます。基本的に国の出資の科学技術施設会議(STFC)が出資する機関がほとんどで、年間予算がトータル約400ミリオンポンド、約600億円でございます。Diamond Light Source単体の運営費という意味では、アニュアルレポートを読ませていただくと、おそらく人件費等と運転経費等込みで44.4ミリオンポンド、62億円という感じの費用と書かれておりました。
サイエンスとイノベーションをくっつけるというのが眼目ですので、非常に集中的に学術の成果をイノベーションに結び付けようという動きが盛んに行われているようでございます。先ほどの小杉先生のお話にもありましたけれども、パートナーになっている企業が近くにいらっしゃって、それと学術のベンチャーを結び付ける、いわゆるベンチャーキャピタルがそこのサイトにたくさんあるということです(3ページ)。Harwellの Science and Innovation Campusに10個の研究機関がございまして、そこのビジネスへの応用・展開・サポートをするサポートセンター、ファンドが数多く存在しています。スピンオフしたベンチャー企業などを含めて約200の組織が存在していて、キャンパス内で5,000人以上が雇用されているといった一大センターになっております。
一例ですけれども(4ページ)、日本ともかなり関わりが深い部分があるのですが、astexというベンチャー企業で、業界では非常に有名なTom Blundell氏というケンブリッジ大学の教授が設立し、そこでアカデミックな研究をされているのですが、いわゆる創薬のドラッグデザイン、薬の開発にかなり注力されていて非常にいい成果を上げておられ、ベンチャー企業としても成長しています。2013年に大塚製薬株式会社が買収されており、たしかフルに買われ、約900ミリオン米ドルだったので、恐らく1,000億円程度の買収額で日本企業が買われたということです。それ以外にも、2002年には、学術機関のいわゆるDiamond又はDaresburyのユーザーだったLaurence Pearl氏らを中心にdomainexというベンチャー企業が立ち上げられました。いまもベンチャーのままですが、恐らくそのうちすごく高価に買われると思います。最近の話題ですと、2007年のChris Tate氏らがやっておられたHEPTARESという、これもベンチャー企業がございます。HEPTAというのはギリシャ数字で7の意味ですけれども、膜貫通タンパクってお聞きになったことがあると思いますけれども、GPCRというやつです。Gプロテインのカップルプロテインで、これはちょうど7回貫通しているよという絵が描いてありますけれども、それが製薬の非常に大きなターゲットになっておりまして、これを非常に効率的に構造解析するという企業をベンチャーとして立ち上げられたのがこのHEPTARESです。ご存知のことと思いますけれども、2000年にSPring-8で一番初めにGPCRが解かれ、これはいまSPring-8の中でも恐らくサイテーションが約6,000と一番多い、ロドプシンの最初の構造解析ですが、その成果を使って2007年ぐらいにベンチャーが始められました。現在は日本企業のSOSEIが買い取られているということで、これも400ミリオン米ドル、500億円ぐらいで買われているということです。つい最近のプレスリリースを見ると、たしか第一三共株式会社も共同研究をされているということが出ていましたので、そういう形で、もともと学術でやっていたドラッグデザインやがん関係の薬、このGPCRいわゆる創薬ターゲットとして大きなターゲットの部分が実際に企業化され、非常に大きな形で機能しているといったようなことになっています。
現在は、当然X線の結晶構造解析がメイン部分の1つではあるのですけれども、やはりそれもワンオブゼムになっていて、周辺に色々な関係のものを置くということが非常に重要になってきています。これ(5ページ)はDiamondの周りに色々な関連ラボがあるよというのを示しているものです。オフラインでの実験ラボがあり、Membrane Protein Laboratoryはもともと京大の岩田教授が関わって立ち上げたラボで、オンサイトで膜タンパクを発現・結晶化して、それをすぐビームラインへ持ってこられるというようなファシリティーであり、それからイメージングのラボがあります。それから、電顕が構造生物ではいまやなくてはならない非常に重要な施設になっていて、Diamondの実験ホールの中、すぐ脇に置いています。後で少し地図をお見せしますが、Titan Kriosという、フルスペックで買うと恐らく10億円弱だと思われる電顕が2台あります。日本国内だと恐らくやっと1台か2台入ったというところだと思うのですけれども、ここは1個の施設で2台入っています。あと、FEL関係のハブになっているなど、電顕のイメージング施設などもございます。
ここが、いままでの流れでEUの研究プログラムの拠点になっており(6ページ)、いわゆる構造生物の拠点や、Instruct、文部科学省のライフ課でやられている創薬等支援技術基盤プラットフォームと基本的には似たようなシステムだと思いますけれども、こういったプラットフォーム、インフラを使って、創薬につなげていこうといったようなこともやられています。あと、これもEUのプロジェクトですけれどもEuro XFELも、ここのUKのハブ機関となっているというふうにお聞きしています。
次に、補足資料ですが(7ページ)、企業からの収入という意味では、濃い色がライフサイエンスで、薄い色がマテリアルサイエンス/フィジカルサイエンスを表すので、ほとんどがバイオの関係です。1億円程度の収入が入って徐々に増え、2014-15は何かマシンの故障による停止があったので下がって書かれていますけれども、徐々に右肩上がりに伸びているということです。ビームタイムの80%は外部ユーザーのために確保されていて、そのうち最大10%は企業ユーザーということになっているそうです。ですが、実際のところ、アカデミックユーザーの方が企業の方とオープンにコラボレーションして使っているという例がかなり多いそうなので、日本の場合ですと、製薬の方は、オープンにしないというようなことも結構あるようにお聞きしていますが、ここの場合には例えば大学院生のテーマと奨学金を企業が持って、それを最終的にオープンな形で出せるというようなことも結構多いとお聞きしています。
これ(8ページ)はビームラインの地図で、先ほど言った実験ホールの中にKriosという電顕が四角で囲んだ部分にあるそうで、一部ビームラインをどかして造ったというようなこともお聞きしました。どうしてここにわざわざ置くのですかという話については、床がそれなりに安定しているからというのが重要だというような説明だったそうです。外の丈夫なところに造ればいいという気もしますが、そういうことで中に造ってらっしゃいます。
Diamondユーザーの研究分野(9ページ)。これは少し細かく字が見にくくて申し訳ないですけれども、かなり生物系が多いですし、企業ユーザーからの業界別収入という意味でも、製薬だとかバイオテクノロジー、あと、CROとか書いているのは、コントラクト・リサーチ・オーガニゼーションです。代行で測ってらっしゃるようなところだと思いますけれども、そういうところがかなりの部分を占めております。
これが最後でしょうか(10ページ)。Diamondのホームページを開いていただくと、よくある放射光施設のホームページのトップページになるのですが、一番初めからシンクロトロンラジエーションユーザー(SR User)とエレクトロンマイクロスコープユーザー(EM User)というのがそのまま並んでいます。どちらでも共同利用していますので申し込んでくださいねということで、ビームライン関係の情報、EM関係の情報、そして、それに関連する統合施設の情報などが並んでいるという形になっていて、構造生物のかなり新しい展開というのをもう実際にやってらっしゃるんだなと思います。
最後、これは電顕に関して(11ページ)です。これもDiamondのオンサイトでやっているセンターですけれども、エレクトロンバイオイメージングセンター(e-BIC)ということで、先ほどの電顕を使った色々な展開、ビッグデータを使った解析なども含めたインフラストラクチャーがしっかり整備されていますというものがあり、もうすぐオープンしますというアナウンスメントが出ておりました。以上です。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。ただいまの足立先生の御説明について、御質問とか御意見ありましたら、お願いします。
では、小杉委員、どうぞ。
【小杉主査代理】 Diamondはもともと構造生物関係で大きな予算が出て造られた経緯があるので、構造生物関係が多いのは当然で、そういう絡みで電顕も置いているのだと思いますが、最近の傾向として材料関係が増えているというところが興味深い動きかなという印象を受けました。
【足立教授】 もともとバイオが強くて、マテリアルサイエンスもどんどん伸びているという感じでしょうか。このサイズで6本の構造生物と2本の小角散乱というと、かなりバイオに偏って力を入れている感じがします。
【小杉主査代理】 現在の施設長は、電気化学かケミストリーの人なので、そういう材料系も入れているのかなという気はしないでもないです。
【足立教授】 そうですね、光電子分光のデータもかなり出ていますね。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。はい、田中委員。
【田中委員】 すみません、少し分からないのでお聞きします。Light Sourceの施設内に電顕があるメリットというのは、施設外にある場合に比べてどういうところで、それがどうDiamondの成果創出につながっているのかが分からなかったのですけれども、かいつまんで教えていただけますか。
【足立教授】 僕も分野外なのできちんと説明できるかどうか分かりませんが、大きな分子、複合体のタンパク質になってくると、結晶化するか(できるか)どうかというのがサンプルの均一性にかなり依存するということが言われていて、大きな粒子それぞれがきちんと均一な形になっているか、それとも何かずっと数珠つなぎみたいになってしまっているかというのが、最終的に結晶化まで行けるかどうかというのに非常に重要なファクターになるらしいです。ですので、サンプルのチェックにしてもまず電顕で見て、これなら結晶になるよねというところから結晶化に入る。そういうところで非常に効率化ができるというふうにお聞きしました。
【田中委員】 サンプルを作るというところに効いているということでしょうか。
【足立教授】 ええ。また最終的に電顕単独で非常に高分解能の構造も出せるということが最近出てきていますので、その両方があるのではないかなという気がします。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。はい、尾嶋委員。
【尾嶋委員】 SPring-8は世界の中でも産業利用を非常に積極的にやっています。産業利用課題は2割ぐらいということなのですが、いまの話を聞くと、ここでもかなり産業利用が多い、2割ではきかないのではないかなという印象ですが。
【足立教授】 多分企業がそのままというよりは、やっぱり大学とのコラボレーションをかなりやっていますよね。
【尾嶋委員】 それも含めるとすると、2割を超してしまいますか。
【足立教授】 かもしれませんね。僕は正確な値を持っていませんけれども、この製薬の関係でいうと、やはり大学の先生が企業のテーマで測定し、その結果を公開すると。なので、非常に大事なところは多分囲い込まれるのだと思うのですけれども、そこに至るまでのところはやはりオープンラボというか、オープンにどんどん開発していこうというのが見えます。
【尾嶋委員】 産業界から1億の収入ということですが、SPring-8はどのぐらいでしたか。
【足立教授】 もっと多いです、多分。
【矢橋グループディレクター】 2億円と少しかと。
【尾嶋委員】 2億円ですか。
【足立教授】 PFでも1億円ぐらいなので。
【尾嶋委員】 それに比べるとすこし少ないでしょうか。
【足立教授】 直接施設に入っていっているのはそれぐらいかと思います。
【田中委員】 DaiamondはSPring-8に比べるとビームラインも少ないですし。
【足立教授】 しかし、実際に先ほどお話ししたベンチャーのような形で最終的にイノベーションにつながって、非常に大きな企業にもつながっている、そういうものがあって……。
【尾嶋委員】 Diamondがそういうリサーチコンプレックスの中にある、それが非常によかった、という主張の根拠というのはどういうところにあるのですか。
【足立教授】 基本的にはこういう10個の研究機関が固まっているわけですけれども、その周りに色々なベンチャーキャピタルがあって、色々な企業の研究所なりがあって、それをマッチングするのですね。
【尾嶋委員】 コーディネーターみたいなのがいるのですか。
【足立教授】 ええ、それでお金を出してくれるというか、これなら投資する意味があるというような形でベンチャーキャピタルがあるので、小さくスピンアウトしたようなところが最終的にはうまく大きなところになるといったような仕組みがとられているようですね。
【尾嶋委員】 それはポイントですね。
【雨宮主査】 ほかによろしいでしょうか。
【高橋委員】 コメントなのですけれども、先ほどの電顕が施設内にあるという話にも関係すると思うのですけれども、いま言われたような色々なファシリティーの方がここにいるというのは、まず専門性の同じ方がそこの場所にいるということが多分一番大事だと思うのです。電顕を使われる方は、基本的に構造生物でもともとX線を使っていた方も結構たくさんいらっしゃるので、そういった両方のスペシャリティを持つ方が同じ場所でそれぞれの手法について議論をしながら同じサンプルについて話を進めていくという、少しずれているけれども共通する部分があるという方々が1か所にいるというインタラクションの意味がすごくあると思っています。
【足立教授】 新しい展開が生まれるという感じですかね。
【高橋委員】 はい。
【雨宮主査】 まだあるかもしれませんが、少し時間も押してきましたので、次に進みたいと思います。次は、矢橋先生の方から10分程度で御説明をお願いいたします。
【矢橋グループディレクター】 それでは、頂いたお題が4施設の紹介ですので、若干駆け足になるかと思いますが紹介いたします(資料4-3)。
まず、ESRF(European Synchrotron Radiation Facility)でございますが、これはグルノーブルにあります(3ページ)。グルノーブルには非常に重層的なリサーチコンプレックスが形成されていますが、ESRFはそれを推進するキープレーヤーということでございます。グルノーブルは、お手元資料に写真がございますが、こういうところでございます。人口は約16万人で、パリからTGVで約3時間、リヨンからも1時間ということで、アクセスは比較的いいです。市内交通も、最近トラムの整備がかなり進みまして、例えば鉄道の中央駅からこのESRFまでも10分程度で行くので、非常に便利になっています。このグルノーブルですが、歴史的に、第2次世界大戦の後に色々な研究機関の集積が始まったということです。特に先ほど小杉先生のお話にもありました原子力関係の機関のCEAが1956年にもともと原子力研究センターを設立しており、これが色々な形でどんどん転換が進みまして、最近ではナノテクを中心に活動しています。特に2006年、グルノーブル工科大学と共同でMINATECという機関を設立しまして、ここがマイクロナノテク分野のイノベーションの一大拠点となっております。それから、小杉先生のお話にございましたが、一方のCNRSも戦後に研究機関を設立し最近統合されて、こちらは主に物性物理の基礎研究を推進しているということでございます。それからESRFに隣接しまして、欧州の分子生物学研究所(EMBL)がございます。これは欧州に5つございますが、そのうち1つの拠点がこちらにあって、ドイツ・ハンブルクの研究機関DESYとともに構造生物学を主にやっているということです。そして、ESRF、ラウエ・ランジュバン研究所(ILL)、フランスのバイオロジーの機関である構造生物学研究所(IBS)、それとEMBLの4機関でEPN(European Photon & Neutron Science)というキャンパスを形成しております。それから、ILLには大きな原子炉がございまして、国際中性子施設ということです。
最近の動きでございますが、このように研究機関が非常に集積してございますが、この欧州の3基盤施設、すなわち、ESRF、EMBL、ILL、フランス国立の2つのCEAとCNRS、それから3つの大学が連携しまして、GIANTキャンパスとして、強力なイノベーションキャンパスを形成しております。GIANTキャンパスは、鉄道駅からESFRの端まで、長辺で3キロメートルの区間にほぼ集積されていますので、立地としてはかなりコンパクトなのですけれども、例えば論文でいうと7,000報を年間に出しまして、これは全仏の約1割に相当するので相当なものだと思います。それから、特許700件、学生1万人、企業の雇用が5,000人、研究者の雇用が1万人、学生も含めて雇用を合わせると2万5,000人ということですので、グルノーブルの人口に対して1割強ということで、これも非常に強力な体制になっています。それから、直接・間接の経済効果が4.1ビリオンユーロと言っていますので、5,000億円程度でしょうか。それで、10年間で200社の起業ということでございます。こういったことで非常に活発にやっておりますが、ESRFがこの中でも非常に中核的な役割を示しております。
次のページに行っていただきまして(4ページ)、ESRFの概要でございますが、1988年に建設開始ということで、1994年から利用がされています。年間予算は116ミリオンユーロですので150億円ほどでしょうか。この出資は、主にヨーロッパですけれども、最近ロシアも加わって13か国、プラス若干のAssociate countriesの8か国が予算を出しているという状況です。先ほどから産業界からいくらという話がありましたが、ESRFは約2ミリオンユーロということで、これはSPring-8と同等の値かなということでございます。従いまして、産業界がものすごく強いということでもないのですけれども、一方でやはりアカデミーのところはかなり圧倒的な強さがあります。一番下にございますが、論文数は年間約2,000報近くということで、これはAPS、SPring-8と比べてもかなりいい値となっております。
ここではファクトは細かくは御紹介しませんが、こういったところをある程度念頭に置きながら、もう少し内側に切り込んでいきますと、次のページ行っていただきまして(5ページ)、ESRFは最初の第3世代大型放射光施設です。この後、APSそれからSPring-8と出てきましたが、ESRFは最初の施設として、いくつかのパイオニア的な業績を上げてきました。例えば、非常に単純ながらもインパクトが高かった屈折コントラストイメージです。これはコヒーレンスを利用した手法としては非常に簡単なのですが、非常に高い分解能が出ます。それから、高分解能の非弾性散乱。これは逆にかなり凝った手法ですが、硬X線でフォノンとか、いままで中性子でしかできなかったことをX線に持ち込んだというところで非常に評価が高いです。こういったアカデミックな利用が最初続いてきましたが、これは現在でも高いアクティビティを維持しておりまして、量だけではなくて、クオリティの面でも非常に優れた成果を創出しているということが言えると思います。したがって、先ほど申し上げたGIANTとかEPNというリサーチコンプレックスの中でもコアになっている、基盤を支えているということが言えると思います。利用のところはこういった非常にすばらしいところがありますが、一方で、土地でございますが、実はここグルノーブルには川があり、ESRFは川の三角州にあるということで地盤が余りよろしくないということもございまして、加速器の安定運転にかなり苦労したという話を聞いております。例えば最近でも、いわゆるトップアップ運転、これはSPring-8は2000年代初頭にかなりきれいな形で行なっておりますが、ESRFでは未だスタディを継続しております。右図は、少し見にくいのですけれども、横軸が日にち、縦のスケールバーが1日、縦軸がビームカレントになっています。例えばSPring-8だったら、横線が1本ピュッと引かれるだけになるのですけれども、この図は少し見にくいのですが、もじもじしているのが分かると思います。
【尾嶋委員】 もじもじとは。
【田中委員】 電流が落ち込んでいるということですね。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。非常に安定な運転はできていないということがあります。そうにもかかわらず、やはり高いアクティビティを維持しているということはどういうことかというと、要は、ヨーロッパの人の分厚いアカデミーをちゃんと引き付けられているということだと思います。では、なぜそれができているかということを少し考えてみたいと思います。やはりAPS、SPring-8が後発し、更に2000年代には、先ほどのDiamond、SOLEILも含めまして中型放射光施設群がどんどん出てきたと。そういった台頭を踏まえて、ESRFではかなりいま、危機感を持って内側から改革をされたということを聞いています。特に2009年より、Francesco Sette所長、先ほど御紹介した高分解能の非弾性散乱のパイオニアの方ですけれども、この方の下で、組織改革と非常に大胆なビームラインの改変を実施しております。
例として次のページに行っていただきたいのですけれども(6ページ)、これはESRFのPublic beamlinesと呼ばれるところの変遷でございまして、2009年から2017年の変化を書いてあります。画面だと少し分かりにくいのですけれども、2009年にあったビームラインのうち16本がスクラップされまして、2017年では全32本中19本が新しくなという、かなりドラスティックなことをやっております。一部は、この赤色の線で私がこうかなと思ってつないだのですけれども、前のものがアップグレードされているものもあれば、前のものとは全く新しいものができているということがあります。このようにして、背景としては、テクノロジーの急速な発展と利用ニーズの深化・多様化というところに対応するために、徹底したレビュー、これはビームラインごとに5年に1度のレビューを行っていると聞いていますが、これを継続的に行っていて、研究基盤のアップグレードを継続的に実施しているということです。
それで、次のスライドに進んでいただきまして(7ページ)、このようなビームラインの高度化を進めておりますが、さらにリングの方の高度化もやるということです。若干補足をしないといけませんが、これは世界で初めて既存のリングのアップグレードとして超低エミッタンスリングへのアップグレードに挑むということでございます。ターゲットとしては、現在のエミッタンスより数十分の1ということで、150pm・radというところが目標になっていまして、これは、アップグレードの総額として330ミリオンユーロ、約400億円をかけてやるとのことです。これもどんどん進んでおりまして、1年間のシャットダウンとコミッショニングを経て、2020年9月から利用が再開されるという予定でございます。
次にスイスのPSI(Paul Scherrer Institute)です(8ページ)。こちらはかなりしたたかに戦略的に、放射光を使ってイノベーションへつなげているということでございます。
次のページに行っていただきまして(9ページ)、立地でございますが、PSIはスイスのアールガウ州のフィリゲンというところにありまして、若干都市からは孤立されていると言いながらも、チューリッヒ、バーゼルから車で約1時間ということで、悪くはありません。御承知のとおり、チューリッヒには例えばスイス連邦工科大学(ETHZ)という世界大学ランキング9位、非英米圏で1位という非常に名門の大学があるほか、バーゼルにも名門のバーゼル大学、それから、製薬会社でいうと、ロシュ、ノバルティスファーマとったところがございます。ハイテク企業もたくさんございますので、そういう意味でのロケーションは悪くないということです。
ただ、若干孤立していたわけでございますが、最近、スイスイノベーションパークという拠点選定が始まりまして、PSIがこの拠点の1つに選ばれました。そして、このサイトの中にオフィスビルをまず造ったと。いくつか会社が既に入っているのですが、この後、総面積がかなり大きなリサーチコンプレックスを造りまして、ここに、ケミカルラボ、バイオラボ、それから、クリーンルーム等を誘致するということです。これも180億円という相当の金額を投資すると言っていますので、恐らくリモートの色々な企業の出先をここに集めて、かなり強力にイノベーションを推進すると、そういう戦略ではないかということでございます。
PSI並びにSwiss Light Source(SLS)でございますが(10ページ)、PSIは1988年に設立された研究機関で、もともとは原子力の研究所としてスタートしています。そういうわけで若干田舎の川のそばという立地はそういうことだと理解しております。90年代以降に大型の施設群、SLS、中性子、それから、ミュオンといったところの開発と運営を手掛けて、研究分野も原子力はある意味でストップをして、材料、環境、医療といったところに転換をしています。現在の年間予算は380ミリオンスイスフランおよそ400億円であり、スイス最大規模ということでございます。SLSを運営してきたわけですが、2012年より新たにコンパクトXFELのコンセプトに基づくSwissFELの建設を開始しました。これはまさにSACLAの良いとこ取りをしたというところで、例えばCバンドの加速器を使う、それから、真空封止アンジュレーターを使うということをしました。2016年12月に開所式が行われ、私も行ってきましたけれども、今年から試験利用をする予定だと聞いています。それから、PSI全体の、SLSも含めたある意味でDNAというかポリシーとしまして、産業界との協業や連携を強力に推進するということがございます。彼らは4本柱を打っておりまして、1つは、産業界と一緒にものづくり、装置開発をする。それから、大型施設を使った試料分析をしていただく。それから、技術移転、ここで確立した技術をどんどん民間に広めていく。それから、スピンオフ会社を作ってがんがんじゃんじゃん儲けると、そういった4本柱でございます。SLSですが、これは2.4GeVのリングで、エミッタンスが5.5nm・radです。これもいいテクノロジーを取っていきまして、日本発の真空封止アンジュレーターを用いた、エネルギーは低いけれども軟X線から硬X線まで出る、いわゆる第三世代の中型放射光施設のはしりでございます。
次のページに行かせていただきます(11ページ)。特徴としましては、やはりここもアカデミックのところは明らかに量というよりはクオリティの勝負をしているということが言えると思います。非常に特徴的な色々なアプリケーションをやっている。そして、産業を含めても、やはりターゲットやマーケットを非常にきっちりと定めた上で、極めて戦略的な運用をしているということが言えると思います。例えば産業利用のところでは、先ほどのDiamondの話にもございましたが、タンパク質の構造解析のビームラインでも、成果専有利用が相当の割合あります。これも数字は表に出ていませんけれども、2割というよりはもっとたくさんあるということを聞いています。ここも上限は特に設けていなくて、海外にもどんどん売って、ある意味で外貨を獲得するということをやっているようです。例えばこの関連で中請けの会社がございまして、leadXproという会社がございます。こういうところのホームページを見に行きますと(左下図)、PSIにあるSLSとか、クライオ電顕、それから、今後のSwissFELを使った創薬関連ビジネスのお手伝いをしますということを言っています。取締役の面々も見ますと、当然、専門家やバーゼル大学の構造生物学の教授もいますが、例えばSLSのフォトンの責任者のRafael Abela氏が名前を連ねているなど、非常に見栄えがよくできています。こういったところでもがんがんと取り込んでいるということが言えると思います。一方で、スピンオフのところも強力でして、例えばDECTRIS社という会社があります。これはハイスペックのX線の検出器で世界市場を席巻(せっけん)していまして、今までの納入実績は800台以上ということでございます。これはホームページでございますが(右下図)、ここでも非常にある意味で巧みな戦略で商売もされているわけです。例えばこれ、最近の『Nature』誌に載った例でございますが、ICチップの内部を3次元かつ非破壊で観測したと。空間分解能が14.6nmということですので、もう少し頑張るとシングルナノメートルに行けるわけですけれども、こういうことができるようになったとのことです。この図のように、内部の配線が3次元で見えるようになってきているということで非常に画期的なわけですが、これを測っているのがDECTRIS社の検出器PILATUSであるということで、こういうものを見ると、皆さん、PILATUSが欲しいです、EIGERが欲しいですということになり、この後御紹介する台湾の施設にもたくさん入っているということになります。そういうところで非常に戦略的にやっておりまして、最初のイノベーションパークに戻りますと、構想でも、所長のJoel Mezot氏いわく、こういった事例をどんどん増やしていくんだということを強調して息巻いているということでございます。
それでは次に、台湾の放射光施設(TPS)と欧州の放射光施設(MAX-IV)について簡単に御紹介したいと思います。
TPSは、台湾シリコンバレーの一翼を担う最先端放射光施設ということです(12ページ)。
台湾の北部にある人口約48万人の新竹市にありまして、ここも空港から非常に至便なところでございます(13ページ)。台湾のシリコンバレーと呼ばれていまして、(左上図のとおり)国立清華大学がここにあり、国立交通大学がここにあって、TPS、国立放射光研究センター(NSRRC)がここにあると。それから、研究機関で有名なところに、工業技術院(ITRI)というのがございまして、台湾最大の産業技術関連の研究開発機構がここにございます。ここからのスピンアウト企業として、例えばTSMC社、半導体の生産ファウンドリとして現在売上世界第1位でございますが、この本社がここにあります。こういうところを取り囲むように、新竹のサイエンスパークが形成されているということです。NSRRCはもともと1993年より1.5GeVの少し軟らかい光を出すTaiwan Light Source(TLS)を運用しておりまして、ここが最近2010年により波長の短い領域を出すために3GeVのまさに第3世代の中型放射光施設を造ったということです。これはエミッタンス1.6nm・radでアジアの放射光施設で現在最高記録を誇るということでございます。こちらは2016年より利用を開始しています。一方で、TLSもシャットダウンするのではなくて、TPSとすみ分けて使うということで、TLSは、軟らかい真空紫外線(VUV)から軟X線の専用、それから、TPSは軟X線から硬X線のリングということで、相補的に利用するということを言っております。当然こちらもある意味で産業集積地の非常にど真ん中にありますので、半導体のみならず、バイオや触媒、エネルギー、電池等色々なアプリケーションが始まっているということを聞いています。
最後にMAX-IVでございます(15ページ)。これはスウェーデンのルンドにございます。ルンドは、町自体は非常に小さい10万人の町ですけれども、ルンド大学という北欧の非常に名門の大学がございまして、そこを中心にサイエンスパークが既に1983年に設立されているということです。ここで大学と連携しながら、オープンイノベーションと企業支援が推進されているということで、特にICTとかテレコムの分野に強いということです。ここのそばにMAX-IVラボラトリーができまして、これが施設建設費約450ミリオンユーロ、スウェーデンの研究インフラ投資としては最大規模ということで、2011年に建設開始、昨年6月に開所式ということです。このマシンの構成は、ライナック、1.5GeV、3GeVリングと、この3つの階層からなりますが、特に3GeVリングについては、いわゆるマルチベンドの7ベンドのマルチベンドラティスを採用しまして、ローエミッタンスのリングのはしりということです。エミッタンスはターゲットとしては200~330pm・radを目標としておりまして、エミッタンスの低減をほぼ唯一の指標にした設計、そこに全てがオプティマイズされた設計になっています。この4月から2本のビームラインでコミッショニングを兼ねた利用を開始すると言っておりますが、運転の様子をチェックしていると、なかなかカレントをたくさんためて運転するということはまだやっていないという状況ですが、そういった状況でも始めていくということだと思います。
最後、まとめでございますが(16ページ)、これまで4つの事例を御紹介いたしまして、その前の小杉先生、足立先生のお話も合わせると6つということになるわけですけれども、やはりリサーチコンプレックスと一口で言っても、その歴史的な背景とか社会的な条件が違いそれぞれの産業の指向性も違うので、非常に多様であるということが言えると思いますす。しかし放射光施設はいずれのリサコンにおいてもやはりそれぞれのコア、その中のコアとして位置付けられていて、イノベーションを強力に推進しているということが言えると思います。そういう意味で、ある意味では放射光施設は非常に色々なことができると、懐が深いということが言えると思いますが、逆に言うと、応用が利くので単によそのものまねをやるというのだとすると非常にもったいない。したがって、基盤インフラとか社会資本としての社会的な位置付けも含めて、どのような役割を期待して、どのような役割を果たさせるのか、そういう意味で戦略的なコンセプトをしっかり立案することが重要ではないかということでまとめに代えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。それでは、今の矢橋先生の御説明について、御質問や御意見あれば、お願いいたします。
【金子委員】 よろしいですか。それぞれの施設が、要は、国内の研究者若しくは企業と、あと、国外から来る利用者等の比率等はわかりますか。
【矢橋グループディレクター】 情報が出ているものもございます。例えばESRFでは、ある意味で出資国の出資の比率をかなり意識してやっていますので、ヨーロッパが中心です。スイスはそういう意味であまり国内、海外は区別していません。というのは、多分国の成り立ちからいっても、スイスは国際企業もたくさん抱えており、国内だけというのではなくて、むしろ外貨をどんどん獲得するという方針だと思いますので、そこはもう何でもいいからではないかと理解をしております。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。3人の先生からご発表いただいた、海外の非常にホットな情報で非常に貴重だと思いますが、特に今のまとめ、御発言、発表について、何か聞き残したこととかあれば。では、尾嶋先生。
【尾嶋委員】 去年、台湾のTPSを見に行きました。台湾には何回か学生を連れて行って実験を行っているのですけれども、清華大学と国立交通大学、要するにいい大学が放射光施設のすぐ近くにあり、工業技術院も近くにあって、産業界とのパイプ役を担っている、これが結構ポイントなのかなと思っています。お三方の話を聞いていてそういう感を非常に強くしたのですけれども、SLSの場合は大学が近くにないですよね。
【矢橋グループディレクター】 そうですね。
【尾嶋委員】 それなのにうまくやっているということは……。
【矢橋グループディレクター】 ただ、ETHZとは相当……。
【尾嶋委員】 兼務をしている……。 ああ、そうですか。分かりました。
【雨宮主査】 ほかによろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
それでは、最後の議題へとうつります。その他ですが、資料5に基づいて、事務局より御説明をお願いいたします。
【橋本補佐】 資料5を御覧いただければと思います。2月にまとめていただきました中間的整理では、今後更に調査検討を進める際、具体的な施設計画や地域構想がある地域からいずれかの段階でヒアリングを行うことがあり得るとされているわけですけれども、このようなことを踏まえて、ヒアリング項目としてどのようなものが考えられるかということを、残り時間が少ないのですけれども、御議論いただければと思っております。下の方に記述しておりますのは、中間的整理の中で、施設計画に関係するような記述はどういったものが書かれているのか、地域構想に関係するような記述としてどういうことが書かれているかというのを事務局の方で抜粋したものでございます。例えば施設計画の関係ですと、まず4ポツ、求められる性能等の技術的事項のところで、世界レベルの先端性と安定性を両立し、かつコンパクトな3GeV放射光源が可能であると。それから、5ポツ、考慮すべき事項のうちの産業利用促進の観点のところでは、本格的な産学連携を促すための柔軟な利用体系及び体制の構築が重要であるといったこと。それから、官民地域連携の観点のところでは、産・学・施設が協同して持続的なイノベーション創出のために取り組むことが重要であるというようなことが書かれております。地域構想の関係では、5ポツ、考慮すべき事項のところで、官民地域連携の観点では3つほど。1つは、軟X線向け高輝度放射光源が産業の発展や雇用の創出等により、地域の産業及び経済活性化にも貢献するものと考えられると。2つ目に、Aichi-SRでも地域の産学行政が一体となって計画を推進したことにより、高い産業利用割合で施設運営することに成功しているということで、官民地域が連携して取り組むという観点が重要だということ。それから、3つ目は再掲ですけれども、産・学・施設が協同して開発・整備することが重要であるということ。あと、6ポツ、終わりに、のところで、財源負担を含め、言わば官民地域パートナーシップにより推進することが重要であるということが関係する記述として書かれていると思っております。以上です。
【雨宮主査】 今、資料5について説明いただきましたけれども、これについて何か御意見、御質問あればお願いいたします。
【高原委員】 よろしいですか。
【雨宮主査】 どうぞ。
【高原委員】 このような具体的な施設計画や地域構想に対してヒアリングを行うということですよね。その中で、既に何らかの色々な外部評価等を実際に行っている場合には、それを提出してもらうということでヒアリングの資料とするというか、有効に進めるための手段になり得るのではないかなと思います。そういったことも考慮して進めてはいかがでしょうか。
【雨宮主査】 その辺のことも、間口を広げるということかと思いますが。
【高原委員】 効率的に行うということですね。
【雨宮主査】 そうですね、効率的にと。ほかにいかがでしょうか。ここで列挙されているものは、今までの中間的整理の記述が整理されているので、一応色々ここで議論してきたことが網羅されているとは思いますが、何かこれに付け加え……。
【上田室長】 少し事務局から。
【雨宮主査】 はい、どうぞ。
【上田室長】 事務局から少し補足しますと、地域構想の中には、大まかに産学連携を促進するのにどうするのかという意味合いも恐らく入るように思われますし、一方で、地域構想としての事業そのものの構想という要素も、この中間的整理の中からは読み取れるかなとは一応思っています。
【雨宮主査】 補足ありがとうございます。
ほかに、各委員からいかがでしょうか。 時間も大体来ているのですが、特段になければ、今後の具体的な進め方については、今後のスケジュールとの兼ね合いも含めて事務局と相談して進めるということで、具体的には、ここでは主査に一任していただければと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【雨宮主査】 本日の議論は以上ですが、最後に事務局から連絡事項等ありましたら、お願いいたします。
【橋本補佐】 次回の量子ビーム利用推進小委員会の開催ですけれども、ゴールデンウィーク前後をめどに調整しておりますが、改めて御連絡させていただきたいと思います。
また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にメールで御確認いただき、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただきます。本日の資料につきましても、後日文部科学省ウェブサイトに公開いたします。本日の資料について郵送御希望の方は、封筒に入れていただいた後、机上に置いたままにしていただければと思います。不要な資料やドッジファイルにつきましては、机上に置いたままにしていただければと思います。
【雨宮主査】 では、以上をもちまして、第6回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会したいと思います。どうも今日はありがとうございました。
―― 了 ――
科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室