第13期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第1回)議事録

1.日時

令和7年5月28日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省会議室(※Web開催)

3.議題

  1. ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について
  2. その他

4.議事録

【伊藤補佐】  それでは、ただいまより第1回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催いたします。
 委員の皆様におかれては、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。私は、文部科学省研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付参事官補佐の伊藤と申します。今日はよろしくお願いいたします。
 本日は、第13期のナノテクノロジー・材料科学技術委員会として初めての会となりますので、主査に進行をお願いするまでの間、進行役を務めさせていただきます。
 本日は、現地とオンラインのハイブリッドで開催いたします。発言の希望のある方は挙手または挙手のボタンを押していただき、指名された後に発言いただきますようお願いいたします。
 本日の議題は、議事次第のとおり、4つございます。また、配付資料も議事次第のとおりですが、不足等ございましたら事務局までお申しつけください。
 また、本日は当初より塩見研究振興局長と宅間参事官が出席しておりますので、御挨拶を申し上げます。よろしくお願いします。
【塩見局長】  文部科学省の研究振興局長の塩見と申します。皆様には本当にお忙しい中、会議の委員に御就任いただきまして、誠にありがとうございます。
 皆さんも御承知のとおりですが、令和3年の4月に政府戦略のマテリアル革新力強化戦略が策定されておりまして、これに基づきまして、先端設備の共用体制の整備からデータの集約、蓄積、データ駆動型研究の推進まで一体的に進めるマテリアルDXプラットフォームというものの構築に取り組んできているところです。
 一方で、この間、マテリアル分野を取り巻く状況は大変大きく変化しており、これを踏まえ、政府内で、第12期の本委員会の御議論も踏まえながら、また、政府のマテリアル戦略有識者会議での御議論も踏まえながら、この分野のさらなる発展に向けて、マテリアル革新力強化戦略が間もなく改定されようということになってきております。また、併せまして、第7期の科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けました議論も進んでおりまして、この中でマテリアル分野をどのように位置づけるかという議論も進んでいる状況です。今回の第13期のナノテクノロジー・材料科学技術委員会におきましては、こうした政府の戦略策定を含めた国内外の政策動向や、社会経済状況の変化、また、技術革新の動向なども踏まえながら、この分野のさらなる発展に向けまして、ぜひ研究開発の進め方などにつきまして忌憚のない御意見を頂戴できればと思っております。我々はそれを踏まえまして、全力で政策に取り組んでまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。
【伊藤補佐】  では、参事官、お願いします。
【宅間参事官】  ナノテクノロジー・物質・材料担当参事官の宅間でございます。継続して委員をお引き受けくださいました先生方、また、今回、新たに御就任くださいました先生方、改めまして、どうもありがとうございます。
 今、局長が申しましたとおり、今、施策の検討に向けて重要な時期となっております。先生方にぜひ忌憚のない御意見を頂戴しながら、ナノテクノロジー・材料科学分野の推進方策を検討してまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】  塩見局長、宅間参事官、ありがとうございました。
 それでは、傍聴の皆様、一度御退席いただき、13時10分以降に再度入室をお願いしたいと思います。ただし、非公開議題が予定より延びる場合もございますので、もし入室できないような場合には、少しお時間を空けてから何度か入室を試みていただくようお願いいたします。

(傍聴者退室)

 非公開議題

(傍聴者入室)

【菅野主査】  それでは、確認ができましたので、以降は公開議題として委員会を再開いたします。
 改めて御挨拶させていただきます。東京科学大学の菅野です。この第13期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会の主査を仰せつかっています。私自身はこれまで無機材料合成を中心に蓄電池などのデバイスへの展開する研究を行ってまいりました。ナノテクノロジー分野というのは、日本が強みを持つ非常に強い分野で、これからその強みを生かした運営が求められています。この重要な委員会の円滑な会議の進行を精いっぱい心がけたいと思いますので、これからどうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】  よろしくお願いいたします。菅野主査、ありがとうございました。
 それでは、御出席いただいている各委員の皆様より、関谷主査代理から委員名簿の順番に簡単に自己紹介を兼ねて御挨拶をお願いできればと思います。
 なお、本委員会の委員名簿は資料1-1のとおりです。また、本日、萬委員は御欠席されています。
 それでは、関谷主査代理からよろしくお願いいたします。
【関谷主査代理】  主査代理を仰せつかりました大阪大学産業科学研究所の関谷と申します。私自身は、ナノサイエンス、ナノテクノロジー技術を活用したエレクトロニクスの研究開発に携わらせていただいておりまして、ナノテクノロジープラットフォームやマテリアル先端リサーチインフラを研究者の一人としても使わせていただくなど取り組ませていただいております。この委員会でも精いっぱい努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】  次に伊藤委員、よろしくお願いいたします。
【伊藤委員】  伊藤でございます。株式会社デンソー先端技術研究所所長の伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 前期、第12期から引き続いて委員をさせていただきます。もともとの専門はセラミックスや、電気化学が専門でしたが、現在は、AI、人間研究、そして、マテリアルをつかさどっている研究所の所長という形でマネジメントを中心にやっております。AIが進展する中で、確かにナノ材料、ものづくりといったところがまだまだ日本としては頑張っていくべきところだと思っておりますので、この委員会の中で、少しでも企業の立場から何か御提案したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】  次に、折茂委員、よろしくお願いいたします。
【折茂委員】  東北大学材料科学高等研究所所長の折茂でございます。専門は材料科学で、特に水素が関与する材料科学を専門としております。本日、大学の業務の関係で海外出張中でございます。オンラインから失礼いたします。今期もどうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】  次に、堅達委員、よろしくお願いいたします。
【堅達委員】  NHKエンタープライズのプロデューサーをしております堅達と申します。前期から引き続きまして今期も委員を担当させていただきます。専門は、私はジャーナリストですので、特に理系ではないですが、長年、脱炭素とか気候変動の分野を中心にテレビ番組を制作しております。実は脱炭素とか気候変動、これは世界のビジネスとして戦っていく上でも、材料分野、ナノテクノロジーというのは極めて重要な分野ですので、そうした観点からこの委員会に貢献できればと思います。よろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】  次に、塩見委員、よろしくお願いいたします。
【塩見委員】  東京大学工学系研究科の塩見です。期せずして局長と同じ名前ということで、あまり塩見という名前が2人いる会議というのは出たことないんですが、さっき少しドキッとしました。私は伝熱工学がもともとの専門で、それを発端に熱エネルギー材料をやってきています。もともと機械工学ですが、従来は既存の材料を組み合わせて何をするという話だったのですが、材料そのものを創ろうという機運になってしばらくたっているのですが、それを機に分子の世界から社会までをキーワードに掲げてやっています。最近は、マテリアルズ・インフォマティクスという切り口でいろいろな研究をしていまして、ベンチャー企業もやっていたり、文科省の事業ですと、ARIMやDxMTにも関わらせていただいているのと、ユーザーとしても、プレーヤーとしてもやっていますので、いろいろな階層から意見交換をさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】 次に、高村(山田)委員、よろしくお願いします。
【高村(山田)委員】  北陸先端科学技術大学院大学の高村と申します。11期、12期に続いて、この委員会、3期目となります。よろしくお願いいたします。
 研究は、新しい結晶相を含む薄膜や二次元材料をつくり、走査プローブ顕微鏡や透過電子顕微鏡による観察、放射光施設における測定を通してその構造や電子状態を明らかにするということをしています。この委員会と縁があるところでは、マテリアル先端リサーチインフラ事業のスポーク機関の代表を務めています。前期に引き続き現場の声をお届けできればと思っております。何とぞよろしくお願い申し上げます。
【伊藤補佐】  次に、武田委員、よろしくお願いいたします。
【武田委員】  株式会社日立製作所の研究開発グループの技師長の武田志津と申します。この委員会、継続で今期も担当させていただきます。
 私の専門は、分子生物学や生化学でありまして、現在再生医療や細胞治療分野の研究開発に携わっております。現代は細胞を医薬品として扱う時代になってきまして、細胞は生き物でありながら材料として、今後その重要性というのは高まっていくものと思います。そういう専門的な観点やそれ以外の一般的観点でも、またこの委員会を通じてよく検討させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】  次に、所委員、よろしくお願いいたします。
【所委員】  早稲田大学の所と申します。現在、創造理工学部長研究科長を拝命しております。あと、クロスアポイントメントで東大のほうでもお世話になっています。
 専門は、資源循環のための分離技術でして、電池や太陽光パネル、CFRP、接着など、これから資源循環のために分離が困難であろうと思われるものを研究対象としています。サーキュラーエコノミー、昨今、非常に大事ですが、こういったことを通じて、また、日本のものづくりがもう一段階元気になればなと思っていまして、日々活動させていただいているところです。よろしくお願いします。
【伊藤補佐】 次に、永次委員、よろしくお願いいたします。
【永次委員】  東北大学多元研の永次です。前期から、この委員を務めさせていただいております。専門は核酸化学で、あまり材料というのとは少し違う観点から研究を行っております。どちらかというと医薬品に近い形ですけど、核酸を使った材料という方面でも盛んに研究も行われていますので、何かその観点からお話しできればと思っております。
 以上です。よろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】 次に、中山委員、よろしくお願いいたします。
【中山委員】  中山でございます。私は、研究開発戦略センターというJST内のシンクタンク組織におりまして、その全体取りまとめのような仕事をしています。このナノテクノロジー・材料科学技術委員会は相当長く、何期も前からやっておりますが、さらにその前から文部科学省のいろいろなプロジェクトのプログラムオフィサーや審査委員、技術参与等をさせていただいて、かれこれ20年ぐらいになります。古くはキーテクノロジー研究開発の推進とか、元素戦略で5年ののちに10年とか、マテリアルDXとか、そのほかも多くに関与しました。多くの御縁もあって、ずっとお付き合いさせていただいております。
 もともとは材料とかナノテクノロジーの調査や分析をしていたので、その延長だと思っています。この分野は、研究開発や技術の横串としてもなくてはならず、かつ、我が国の強みそのものであり、経済安全保障の本丸でもあり、また、他の分野との相乗効果を出すには本分野がしっかりと他の分野と一緒にやらないといけないという意味でも、非常に大事ではないかと思います。そのようなことを一緒に考えさせていただければと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
 以上です。
【伊藤補佐】  次に、南谷委員、よろしくお願いいたします。
【南谷委員】  大阪大学の産業科学研究所の南谷英美といいます。この委員会は、今回13期から参加させていただきますので、新人です。私の研究の専門は計算物質科学といいまして、シミュレーションを使って、ナノ材料の機能が出てくるメカニズムとかを解明しようというようなことをやっております。最近は数理科学の人と協力して、ガラスなどの不均一材料についての研究を多く進めています。こういった委員会に入るのが初めてですので、どういうふうに振る舞ったらいいかまだ分かっていないところもありますが、シミュレーションをやっている現場の側から何か貢献できればと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】 次に、藤井委員、よろしくお願いいたします。
【藤井委員】  奈良先端大、データ駆動型サイエンス創造センターの藤井と申します。どうぞよろしくお願いします。この委員会に今期から参加となりますので、まだ右も左も分からない状態ですけど、いろいろ精いっぱい努めていきたいと思っております。
 私の専門としましては、データ駆動型科学マテリアルズ・インフォマティクスというのを推進しております。また、理論化学といいまして、数式で化学をやろうというところでしたが、最近はデータを中心とした材料の発見であるとか、メカニズムの解明に迫れたらなと思っています。具体的にはいろいろな材料に手を広げていますが、ポリマーや、光触媒を今、研究室で中心に進めています。
 これまで私、時々珍しがられるのですが、企業に2回行って、企業とアカデミアを2往復していまして、その中でものづくりや、製造業の未来の明るさであるとか、現場で苦しんでいるところであるとかを肌で感じているところがありますので、アカデミアも産業界も精いっぱい明るい未来に向けて進めるように、私自身も精進したいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】  次に、平田委員、よろしくお願いいたします。
【平田委員】  トヨタ自動車材料技術領域、平田と申します。この委員会、11期からですので、3期目を務めさせていただきます。もともと専門は排ガス浄化触媒屋でした。2014年から自動車に使われる機能整備機材全般のリーダーを務めております。また、先週金曜日に、会社から、トヨタからニュースリリースがございましたが、トヨタとして11の領域に対してAIを積極的に活用していく、そのうちの一つが材料でして、AIを活用して材料研究を進める部分、この部分のリーダーも務めております。全体として、この委員会で議論されることと非常に近しいところ、共通する部分もあるかと思います。いろいろここで学びながらですが、お役に立てることがあるかと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【伊藤補佐】  最後に、宝野委員、よろしくお願いいたします。
【宝野委員】  NIMS理事長の宝野でございます。私は、第11期、2021年からこの委員会に加えていただいています。マテリアルは日本の輸出の22%を占めますから、非常に重要な分野だと思っています。産業界の方々とお話をしていますと、国研や大学には基礎研究をしっかりやってほしいという声が強いです。ですから、このナノ材委員会というのは、我が国にとって重要なマテリアル分野の基礎研究を振興するために、その方向づけをするために非常に重要な委員会と思っておりますので、ぜひ積極的に参加させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
【伊藤補佐】  各委員の皆様、御挨拶いただき、ありがとうございました。
【菅野主査】  各委員の皆様方、これからぜひともよろしくお願いいたします。
 それでは、引き続いて、議題2の「ナノテクノロジー・材料科学技術委員会における第13期の活動について」に入ります。
 まずは事務局より説明をお願いいたします。
【伊藤補佐】  ありがとうございます。事務局です。
 まず資料2-1を御覧ください。こちらは今期の審議事項案を示しております。
 1つ目は、文部科学省におけるナノテクノロジー・材料科学技術に関する研究開発課題につきまして、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」、それから、「第13期研究計画・評価分科会における研究開発課題の評価について」に基づき、評価を実施するものです。
 この中の1ポツ目ですが、今年度に終了予定のマテリアライズ事業の効果検証のため、事後評価を来年度行う予定です。それから、2ポツ目は、来年度に実施する新規・拡充事業があれば、総額が10億円以上を要するなどの要件に応じて、その事業の実施前に評価するという意味での事前評価を、必要に応じて、今年の夏、実施する可能性があります。評価計画の詳細やフォーマットについては資料2-2、事業評価全体のスケジュールにつきましては資料の2-3に表で示しておりますので、適宜御覧いただければと思います。
 続いて2つ目です。ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策等につきまして、政府のマテリアル戦略の改定や、次期科学技術・イノベーション基本計画の策定を踏まえまして、文科省としての今後のナノテクノロジー・材料分野の研究及び開発に関する計画の検討等を予定しておりいます。
 最後、3つ目ですが、こちらの委員会のほうで論点等を整理いたしまして、必要に応じて、親会である研究計画・評価分科会等に報告するという内容を記載しています。
 最後に当面のスケジュールについて、第1回目は今回のキックオフということで、第2回目、この資料を作った時点では確定していなかったのですが、8月4日に、第2回目の会議を予定しておりますので、引き続きの御参加、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。
【菅野主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明内容につきまして、御意見、御質問ありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは、第13期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会につきましては、この方針で議論を行っていきたいと思います。
 続いて、議題3です。「ナノテクノロジー・材料科学技術の状況について」に入ります。次回の自由討議に先立って、ナノテクノロジー・材料科学技術に関する政府内の検討状況や、文科省での現在実施中の事業について、事務局から御説明をお願いいたします。
【宅間参事官】  それでは、資料3-1を御覧いただければと思います。私からは、政府全体のマテリアル分野に関する検討状況について御紹介させていただきたいと思います。2ページ目ですが科学技術・イノベーション基本計画、科学技術政策における最も上位の計画となりますが、こちらにおけるマテリアル分野の位置づけの変遷を御説明した資料になっております。
 マテリアル分野は、科学技術・イノベーション基本計画、第2期、第3期の期間にはライフ、情報、環境と並ぶ重点4分野の一つという位置づけでした。その後、第4期、第5期におきましては、社会的課題の解決に必要な横断的な基盤技術として位置づけられてきたところです。そして、現在、第6期の期間に当たりますが、こちらにおきましては、AI、バイオ、量子等と並びまして、分野別戦略に基づき、各分野の政策を進めるということとされており、このマテリアル分野については、先ほども挨拶の中で局長より触れさせていただきましたが、マテリアル革新力強化戦略を令和3年に定めこれに沿って、政府全体で、マテリアル分野の研究開発を進めています。
 また、令和8年度、来年度から第7期の期間に入るということで、現在、政府におきましては、第7期の科学技術・イノベーション基本計画の検討が進んでいます。
 3ページにありますのが、今、現行の戦略、令和3年4月に策定されましたマテリアル革新力強化戦略の概要を示したものです。中ほどにありますが、我が国の強みに立脚し、差別化した戦略が必要ということで、目指すべき姿ととして、マテリアル革新力を高め、持続可能な社会への転換に世界の先頭に立って取り組むという姿を掲げて、必要なアクションプランに沿って、政府全体の施策を進めてきたというところです。
 このアクションプランには3つの柱がございますが、これまでの主な成果とともに、次のスライドで御説明させていただければと思います。
 4ページ目を御覧いただきまして、主な成果です。アクションプランの1、革新的マテリアルの開発と迅速な社会実装につきましては、例えば半導体、また、蓄電池などの経済安全保障上重要な分野や、カーボンニュートラルなどの社会課題の解決に対応するマテリアルの開発に各省連携して取り組んでまいりました。また、ユニコーン育成に関しましては、内閣府のSIPという事業におきまして、マテリアル分野のユニコーンを育成するためのエコシステムの構築に取り組んでおります。
 2つ目の柱といたしましては、マテリアル・データと製造技術を活用したデータ駆動型研究開発の促進ですが、こちらにつきましては、この戦略に沿って、まさに令和3年度から文部科学省におきまして、マテリアルDXプラットフォームといたしまして、データを創る、ためる、活用する、を柱とした施策を展開してきています。こちらにつきましても、後ほど各事業の御説明で再度御説明させていただきますが、マテリアル先端リサーチインフラ、ARIMと呼ばれる事業、25機関、また、約1,100台の機器、装置などが共用に寄与されておりますが機器を共用するだけでなくデータを集約して、それを活用できるようにするという取り組みを展開してきております。着実に基盤構築が進んでおりまして、今年度、データの利活用の本格運用を予定しているところです。
 また、企業を中心としたデータにつきましては、経済産業省でも取組がなされておりまして、マテリアル・プロセスイノベーションプラットフォームというものが構築されています。
 また、3本目の柱、国際競争力の持続的強化といたしましては、人材、また、国際競争力の強化に取り組んできたとともに、資源循環の加速や資源制約の克服のための技術開発等を推進してまいりました。
 このように、主な施策が着実に進捗してきた一方で、引き続き取り組むべき課題も残されております。スライドの下のほうに書かせていただいておりますが、例えば他分野に漏れず、このマテリアル分野におきましても、研究開発力を相対的に見たときに低下している傾向があることや、産業界につきましても、新たな環境変化への対応が課題になっているということ。また、データ基盤につきましても、この戦略に沿って、非常に力強く進めてまいりましたが、更なる活用といったところはこれからの課題ですし、また、最先端研究と社会実装の橋渡し、また、人材育成、研究環境の整備は継続的な課題となっているところと認識しています。
 5ページ目に参りまして、今申し上げましたように、残された課題、それから、マテリアル戦略ができて、既に4年が経過いたしました。この4年の間には、経済安全保障の確保、そうした意識のさらなる高まりがございました。また、欧州等を中心といたしまして、環境規制なども強化されているというような状況があります。こうした中において、これらの問題に対応するマテリアル分野の技術の重要性が高まっているということ、また、生成AI等の技術進展も著しいところですが、そういった新しい技術も活用した、これまでにないマテリアル開発が可能となってきた技術的な変化というものもありました。さらに諸外国でもマテリアル分野の国家戦略等が策定されており、特に新しいところではEUですが、2024年に、産業リーダーシップのための先端材料に関するコミュニケーションが策定されています。EUにつきましては、特に日本との協力にも非常に積極的であり、日EUでの協力に向けた議論も進められているところです。EUのコミュニケーションにつきましては、この資料の最終ページに参考資料もつけておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 また、こうした状況変化を受けまして、政府におきましては、第7期の基本計画の策定も見据え、このマテリアル分野において、我が国が勝ち続けるための方策を改めて検討いたしました。内閣府のマテリアル戦略有識者会議、このナノ材委員会からも関谷先生、宝野先生に御協力をいただいてまいりましたが、有識者会議を開催し、御提言をいただき、それを基に現在、政府としてのマテリアル戦略を間もなく改定するという状況でございます。
 次のページから、有識者会議の提言の概要をつけさせていただいております。
 7ページ目は、先ほどの御説明と重複いたしますので説明を割愛いたしまして、8ページ目に入れればと思います。マテリアル戦略の有識者会議の提言におきましては、目指すべき姿といたしまして、我が国の基幹産業でもあるマテリアル産業で勝ち続けるということを掲げて、それを通じて、国際社会と協調して、目指すべき社会の実現を先導することを掲げています。この中におきましては、ネット・ゼロやサーキュラーエコノミーの実現におけるマテリアルの重要性と、マテリアルイノベーションにおいては、この卓越したサイエンスが競争力の源泉でありで、その重要性が強く認識されたところです。
 また、どこで勝つのかについてですが、短中期的にはここに掲げたような、例えば我が国が強みを有する高機能・高付加価値マテリアル、また、資源確保・循環やサプライチェーン強靱化、また、グリーン・エネルギー関連、それから、経済安全保障上重要なマテリアルといったような、我が国が勝ち続けるべき戦略的な重点分野として、このようなところが指摘されたところです。また、これに加ええて、高度な材料設計、評価・分析を組み合わせた革新的なモノづくり技術が重点分野に取り上げられたというのが一つのポイントであったと思っております。
 中長期の視点といたしましてはマテリアル分野は非常に研究開発に長期間を要するということで、短中期的な視点だけではなく、中長期的な視点をきちんと国の戦略として掲げることが重要だということで、フロンティアへの挑戦という目標が掲げられたところです。
 このフロンティアは、価値のフロンティアやサイエンス・技術のフロンティアとありますが、新産業や新学術領域の創出などの新しい価値を生み出すマテリアルをフロンティア・マテリアルと、この提言では呼んでおりますが、そうしたものへの挑戦に取り組むべきということが述べられたところです。
 9ページ目、どうやって勝ち続けるのかについてですが、我が国の強みをより強くするということで、我が国の強みとしては、多様な知が結集しているというところです。都市部の大学、大企業だけではなく、地方大学や高専なども含めまして、多様な知を結集させ、産学官の「知のバリューチェーン」を構築するという考え方が掲げられたところです。この「知のバリューチェーン」につきましては、知を多様なプレーヤーがつないでいき、イノベーションにつなげていく。また、そこから新たなニーズや課題、リソースといったところがアカデミアに還ることを含めた概念になっております。
 次のページに参りまして、取り組むべきアクションとございますが、大きくは3つの柱で整理されています。革新的マテリアルの研究開発・社会実装の加速といたしましては、先ほど述べました短中期、中長期での重点的に取り組むべき分野の研究開発の加速、また、それに必要な規制、標準化等の必要性についても述べられております。
 また、2つ目の柱につきまして、イノベーションの加速ですが、「マテリアルDX」の一層の加速、この中では既に構築された、この基盤のさらなるユーザビリティ等の向上や、新しい技術としてのAIやロボティクスとの融合といったところが指摘されたところです。また、多様なプレーヤーの連携の加速、こちらは先ほど知のバリューチェーンの構築にかかるところです。
 イノベーションの継続的な創出として、研究者だけでなく、研究開発を支えるマネジメント人材やエンジニアリング人材の育成についても指摘されたところです。
 また、卓越したサイエンスが知のバリューチェーンの起点として非常に重要と指摘されておりまして、これの創出に向けての基礎・基盤研究の不断の推進なども重要性を指摘されております。
 また、研究環境の整備、国際プレゼンスの強化といたしましては、最先端の共用設備等の整備などもはじめとして、こうしたところに取り組むべきといったところがこの提言の中で述べられたところです。
 今後この有識者の提言を基にして、政府としての戦略を整え、間もなく戦略を改定するところです。この戦略や有識者会議提言を取りまとめるに当たり第12期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会で、ナノテクノロジー・材料科学技術分野の今後の推進方策についてという御提言をお取りまとめいただきました。継続して委員をお引き受けくださいました先生方には、大変お世話になりました。資料としては12ページ目に入れておりますが大きく3つで簡単に概要を整理させていただきました。データ駆動型研究開発の促進、また、マテリアル分野において、今後振興するべき領域として、先基礎・基盤研究の推進もここでも指摘されていました。また、研究開発力の強化といたしましては、人材育成や研究環境の整備等につきまして御提言をいただいたところでした。
 文部科学省といたしましては、この12期で議論いただきました推進方策、こちらを内閣府のマテリアル有識者会議での議論のインプットにさせていただきました。改めまして、この場で御報告、また、取りまとめにつきましてのお礼を申し上げたいと思います。
 この後、少しお時間があれば先生方から御意見を頂戴したい点ついて、最後申し上げさせてください。13ページ目です。
 先ほど有識者提言の中でも、知のバリューチェーンの構築ですとか、フロンティアへの挑戦、マテリアルDXの更なる推進といったところが提言され、戦略改定の中でもポイントとなる予定です。今後、文部科学省としてそのようなところに対応しなが今後の施策について検討してまいりたいと思っています。12期におまとめいただいた推進方策でも、マテリアルDXプラットフォームの更なる発展といったところでは、最後にございますが、我が国の強みを見極めた具体的な取組を引き続き検討する必要があるとされており、また、マテリアル分野において今後振興するべき領域のところにつきましても、引き続き具体的な検討を深めると、このときの議論を更に継続して深める必要があるというような形でいただきましたので、まさにこのようなところをこの13期の先生方のお力を借りながら検討を深めてまいれればと思っております。後ほどお時間ありましたら、このようなところにも着目しながら御意見を頂戴できればと思っております。
 私の説明は少し長くなってしまいましたが、以上でございます。
【菅野主査】  ありがとうございます。それでは、引き続き。
【伊藤補佐】  続きまして、資料3-2の御説明をいたします。文科省におけるナノテクノロジー・材料科学技術の事業概要ということで、本委員会で扱う事業をメインに御説明したいと思います。
 1ページ目を御覧ください。先ほど説明がありましたけれども、マテリアル革新力強化戦略を受けまして、文科省では大きく分けて3種類に整理される取組を実施しております。まずは上段、赤枠に示しておりますように、社会課題に応え、また、将来のシーズを創出する革新的機能を持つマテリアルの開発です。これを支える取組として、右下の黄色の枠に示しておりますように、データを用いた研究手法の開発や大型研究施設等の共用を含む研究基盤の整備、さらには、左下、緑枠に示したとおり、国際共同研究等を通じたトップレベルの研究推進や若手研究者の育成など、国際競争力の強化と人材育成に取り組んでいます。現行の戦略では、データを活用し、研究開発の高速化、効率化を目指すデータ駆動型研究開発の推進が大きな柱とされています。文科省では、これを受けまして、中央の赤枠に示しております3つの事業を束ねて、マテリアルDXプラットフォームと呼んでいます。マテリアル革新力の強化に向けたデータ駆動型研究を強力に推進しております。
 次のページ、お願いします。マテリアルDXプラットフォームの目指すべき姿ということで、マテリアル研究をどのように変えていくかという絵になっています。この絵の中で、時系列としては、下から上、過去から未来へというつくりになっておりまして、一番下のレイヤーにあるように、従来は個々の研究者が自らの研究設備、機器を使って、経験に基づき、トライ・アンド・エラーの研究を行い、属人的にデータを利用していたところですが、情報科学技術の進展等も踏まえまして、この研究のやり方を、データを「つくる、ためる、つかう」という3つの観点から、真ん中のレイヤーのように、バージョンアップしながら、機関を超えてデータを共有、利活用し、多くの研究者を巻き込みながらデータ駆動型の手法を取り入れて、マテリアル研究開発を加速させるということです。そして、革新的材料の創出、さらには、社会課題の解決を目指していくということになっております。
 3ページ目、お願いします。文部科学省では、令和3年度からデータを「つくる、ためる、つかう」取組を一体的に進めるマテリアルDXプラットフォームの構築に取り組んでおりまして、全体としては当初予算で83億円の規模です。
 事業内容は真ん中でございます。
 1番目、データを創る取組では、マテリアル分野の先端研究設備の共用ネットワークを全国的に展開しつつ、様々な研究データを創出するマテリアル先端リサーチインフラ、通称ARIMを実施しております。その隣、2番目、データ統合・管理。データをためる取組では、物質・材料研究機構、NIMSにおいて、共用設備で創出されたデータを利活用しやすい形で蓄積し、AI解析機能を備えたデータ中核拠点の形成に取り組んでいます。こちらは運営費交付金による取組となっておりますので、本委員会の研究開発課題、評価の対象外にはなっていますが、今回御紹介させていただきます。
 下の欄に行きまして、3つ目、データ利活用、つかう取組では、研究データやAI等のデータ基盤というのをフル活用いたしまして、革新的マテリアルの研究開発を効率的かつ効果的に行うデータ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト、通称、DxMTと呼んでおります。材料の社会実装に向けたプロセスサイエンス構築事業、こちら、通称、Materealizeと呼んでおります。それから、NIMSの運営費交付金における取組などを実施しております。
 次のページ、お願いします。4ページ目は、概念図となっています。創出したデータを格納する先、また、格納されたデータを引き出して活用し、活用した後のデータをさらに格納するといった施策で、NIMSがまさにデータの中核拠点として各取組と連携しております。また、研究開発を推進する側、右下の部分と、左下の機器共用や技術支援する側との人的な連携、このような形で3つの柱が相互に連携し合って、マテリアルDXプラットフォームの取組が進められています。
 次から個々の事業を紹介させていただければと思います。
 5ページ目をお願いします。
 1つ目はまずARIMです。データを創る事業であるARIMは、例えば量子・電子マテリアルなど7つの重要領域ごとに、全国26の大学と研究機関に最先端の共用設備を整備するとともに、共用設備から創出されたデータを利活用可能な形で蓄積、共用するための基盤整備というものを行っています。全国で生まれたデータなどは、先ほども申し上げたようなNIMSのデータ中核拠点に集約しておりまして、ARIMではこれまでに高品質なデータを集約、共用するためのシステム等の整備を進めておりまして、令和5年12月より試験的なデータ共用の取組が開始され、今年、令和7年秋頃からは本格的なデータ利活用のサービスを開始することとしております。設備共用とデータ収集を同時に行うといった点は、我が国独自の特徴ある取組と言えるかと思います。
 また、このARIMでは、436名にも上る専門技術人材による技術相談、機器利用、技術補助、技術代行などのサービスを提供しています。誰にでも開かれたオープンリサーチファシリティーとして、前身事業であるナノテクプラットフォームの時代から、我が国全体のマテリアル研究を支え、数多くの優れた利用成果を生み出すだけでなく、本事業を通じ、優れた技術スタッフが育成されるなど、マテリアル分野の人材育成においても大きく貢献していると認識しております。
 また、このスライドの右下の部分ですが、文部科学省では今年度から、次世代半導体の研究開発、研究基盤の整備、人材育成に取り組むこととしておりますが、このうち研究基盤については、これまで整備してきたARIMの機器やネットワークというものを活用しながら、半導体研究支援機能を強化する半導体プラットフォームの構築と我々呼んでおりますが、そういったことを通じて、アカデミアを中心とする次世代半導体の研究開発の支援に取り組む予定でして、準備を進めているところです。この取組によって、このARIM事業の重要性、それから、我が国への貢献というのが今後一層高まるものと考えております。
 6ページ目をお願いします。こちら、ARIMの推進体制の図です。右上のほうに7つの重要技術領域を設定しておりますが、各領域に強みを持つ先端設備群を提供するハブ機関、左のほうにハブと書いています。それから、特徴的な装置、技術を提供するスポーク機関として体制を組んでおりまして、全国25機関で約1,200台の設備を共有しております。
 7ページ目をお願いします。全国のARIM拠点で生まれたデータは、AI解析基盤なども備えたNIMSのデータ中核拠点に集約され、一定のルールの下、全国の研究者に共用可能となります。これまでに高品質なデータをなるべく人の手を介さずに解析可能な形に構造化して、集約、共用するためのシステムやルールの整備を進めて、試験的なデータ共用が行われてきましたが、先ほども申し上げたように、今年度秋頃をめどに本格的なデータ利活用のサービスを開始することとしております。
 8ページ目です。ARIMの活動指標の御紹介です。
 左側、インプットとしては、全国の25機関、それから、事業参画者833名、技術スタッフは先ほど申し上げた436名という多くの方々に支援、御協力いただいている事業でございます。共用設備は正確には1,155台、また、活動資金の規模としては、文科省からの委託費のみならず、ARIM参画法人に運営費交付金などから資金を拠出いただいていたり、あるいは利用料収入を得ることで38億円となっています。
 それに対するアウトプットとして右側です。年間利用者数は約6,000人、利用課題数は3,000件に上り、データ登録ありの課題数も2,000件近くになっております。それから、多数の論文や学会発表等がなされており、優れた研究成果も聞こえてきておりますし、企業からの利用も多く、まさにオールジャパンで共用体制を構築するという本事業の趣旨が実現されているかと存じます。
 9ページ目です。データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト、通称、DxMTです。趣旨としまして、データ駆動型研究を全国に広めて、我が国のマテリアル研究を刷新していくためには、データ駆動型研究開発におけるモデルケースとなる拠点が必要と考えています。そのための取組として、令和4年度よりこのDxMTという事業を開始しています。DxMTは、マテリアルDXプラットフォームや「富岳」などの大型先端施設をフル活用しながら、データ駆動型研究を取り入れた次世代の研究方法論を開発、実践し、マテリアル戦略で掲げられている目指すべき社会像に向かって革新的機能を有するマテリアルを創出するとともに、開発したデータ駆動型の手法を広く産学に展開することを目的としています。研究者の思考、経験に基づき進められてきた従来型の研究に対して、マテリアルとデータの掛け算によって材料研究の革新を推し進め、これまでにない未知の成果の創出、それから、研究開発の加速につながることを目指しています。昨年度までは、研究基盤体制の構築というフェーズでしたが、今年度から第2フェーズに入ります。これまでの3年間の成果を基に、データ活用による新材料、新手法の成果創出を目標として掲げています。
 次のページをお願いします。現在、DxMTでは、全国5つの拠点において、社会像実現に貢献するマテリアル分野を設定して、研究開発を進めています。データ駆動型手法を活用した新材料の開発やハイスループットなデータ創出手法、それから、企業と連携したデータ利活用の仕組みづくりなどが進んでいます。
 次のページ、お願いします。研究開発を進めていると5つの各拠点で共通的な課題等が出てまいります。データ駆動型研究を進めていく上で、実際にデータをどう共有していくのかであったり、データを構造化する上で、技術的な課題等が出てまいりますが、そういった共通の課題を解決するための枠組みといたしまして、こちらのデータ連携部会を設置しております。NIMSが中核的機関となって、データ連携部会を運営しております。このデータ連携部会で、各拠点の中で出てきた、例えば研究手法や、研究ツールの共同開発、共用化及び普及活動などを共に取り組んで、さらには全国展開につなげていけるように、横串活動を組み込んだ枠組みで研究を進めています。
 12ページです。本事業からは、これまで数多くの成果が上げられておりますが、そのうちの一部として、データの活用による新材料探索の高速化を上げることができるかと思います。例えば左側のNIMS拠点では、従来手法であれば60日程度を材料探索に要していたところですが、今回の取組によって、1日程度に短縮することに成功して、優れた新規磁石化合物を発見するなど、新材料開発に向けた成果も上がっています。このほか、材料の探索の高速化だけでなく、例えばAIが研究者の気づきを誘導することによって、電気化学の新たなサイエンスの創出といった成果もございます。今後、DxMTの拠点がさらに世界を先導する成果を上げ、我が国のアカデミアや産業界を牽引していくことを期待しております。
 次のページをお願いします。材料の社会実装に向けたプロセスサイエンス構築事業、通称、Materealize事業ですが、この事業は令和元年度から開始されて、今年度で終了期限を迎えるものです。したがって、来年度に事後評価の対象となる事業です。
 材料開発におきましては、新しいものを創るためのマテリアルサイエンスのみならず、つくり方の理解を深めて新しく生み出すという観点でプロセスサイエンス、この両輪を発展させることが不可欠と考えています。この事業においては、事業名のとおり、プロセスサイエンスをターゲットとしております。
 本事業の目標としては大きく2つに整理されておりまして、1つ目はプロセスサイエンスの構築、2つ目としては大学等と企業の連携体制、産学官からの相談先と我々は呼んでおりますが、こちらの構築、この2つを事業の目標としております。これらの両輪で、我が国のナノテクノロジー・材料分野における研究力の向上、また、将来的な産業競争力の強化につなげていくことを目標にしています。
 次のページ、お願いします。14ページの実施課題ですが、2課題推進しています。左側は、東北大学の阿尻先生を代表としております、ナノ材料の界面・構造制御プロセスサイエンスにつきましては、実施内容としては、様々な分野で応用研究が行われていながらも、実用化へのハードルが高いナノ材料の作成につきまして、ボトルネックとなる分散・凝集・配列の整備を理解し、高機能化のためのプロセスサイエンスを構築するという内容で実施しております。
 2つ目の課題、右側でございますが、NIMSの高田先生を研究代表者といたします全固体電池を実現する接合プロセス技術革新です。こちらにつきましては、次世代蓄電池と目されます酸化物型全固体電池の実現を可能とする固体材料の革新的な接合プロセスに向けたプロセスサイエンスの構築を実施しております。
 次のページをお願いします。続きまして、事業成果の概略を御説明いたします。
 まず、事業目標の一つであるプロセスの構築に関する成果のスライドです。こちらの指標に関しましては、まずプロセス、また、構造・物性・特性の相関といったところを幾つ見いだしているかという件数を指標に置いてございます。こちらについては、令和3年度に行いました評価、それから、令和5年度に行いました評価、この2つの評価におきまして、この数字自体は累計ですが、単年度で見ましても、前年度に比して成果が上がってきているというような状況です。また、査読付論文数につきましても、順調に成果が上がっているというところになっております。
 次のページ、お願いします。事業目標の2つ目、「産学官からの相談先」の構築に関する成果です。こちらの資料につきましては、プロセス上の課題解決に関する産学官からの相談件数、また、プロジェクト・コンソーシアムの参加企業数、それから企業等からの資金導入率というものを評価の指標として扱っております。こちらについても、先ほど同様に、この数字自体は累計ですが、単年度ごとの数字で見ましても、前年度に比べて成果が上がっていると評価しております。また、相談については、その相談の内容自体がより具体的な相談内容になっているというような形で、数のみならず、質の進化とでも言えばよいでしょうか。そのようなものも見られているところです。
 少し時間が超過しましたが、事業の概要につきましては以上です。
【菅野主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまから、委員の皆様から御意見、御質問をいただきたいと思うのですが、もし宝野委員いらっしゃいましたら、何かコメントありましたら先にお願いできますでしょうか。
【宝野委員】  今後の方針、特にデータ駆動型研究の推進、重要だと思っております。これまで、データを作る、ためる、使うということを目的にデータ駆動型研究の中核的プラットフォームを構築してきたわけですが、いよいよ世の中の方々がどういうふうにデータが使われるかということに、結果を求めてきているので、我々というか、このコミュニティーとしては、例えばARIMの大規模な事業で収集したデータがどう実際に材料開発に使われていくかという好事例を発信していくことが非常に重要だと思っています。
 その中で、DxMTのプロジェクトでは多くのデータサイエンティスト、それから、材料科学者が参加されておられるので、このプロジェクトはARIMとは別建てになっていますが、DxMTに参加しておられる研究者の方々がARIMで蓄積されている膨大なデータを利活用して、好事例を一刻も早く出していただけると、データ中核拠点をつくって本当によかったということになるかと思います。
 今後は、AIが非常に進んでいます。最近、データサイエンティストと、蓄積されたデータを最も有効に使うのはどうすればいいのかという話をしていると、このデータを全部LLMに学ばせれば非常に面白い使い方ができるのではないかという話もございました。そういったところで新しい展開が開けると期待しております。
 ということで、先ほど文科省からいろいろと御説明いただいた事業、いずれも、今後の日本のマテリアルにとっては重要な分野と理解しておりますので、我々関係する機関としても一層努力して、データの利活用に努められればと思っております。
 以上です。
【菅野主査】  宝野先生、どうもありがとうございました。早めに御退室されるということを伺っておりましたので、先にお願いいたしました。
 それでは、これから皆様方からお願いしたいのですが、先ほどの宅間参事官からの御説明ありましたが、3つ、キーワードをいただいています。知のバリューチェーンの構築というのと、フロンティアへの挑戦、それから、マテリアルDXの加速という3つ、キーワードがありますが、この3つのキーワードを中心に、今後注力していくべき観点、それから、課題などがありますから、御指摘、御意見、よろしくお願いしたいと思います。どなたからでも結構ですので、どうぞ御発言ください。いかがでしょうか。
【塩見委員】  よろしいですか。誰かが先にしゃべらなきゃいけない。
【菅野主査】  よろしくお願いします。
【塩見委員】  御説明ありがとうございました。非常によく分かりました。いや、一つ、二つぐらい論点を、別に私が何か解決策を持っているわけではないですが、お話しすると、一つはやはり国際的な競争力と言ったときに、何を見なければいけないのかという話と、もう一つは、こういったこと、すばらしい施策がある中で、それを実際に動かすときのミドルマネジメントの工夫というのが必要なんじゃないかと私はずっと思っていたので、その2つについてお話をさせていただきたいと思っています。
 内側を強くするというのと同時に、国際というのは、比較であったり、他者があっての話なので、外がどうなっているのかという視点が必要だと思うのですが、こういった議論をするときにあまり外の情報の話、それぞれの関係者の皆様はいろいろなリサーチなどして持っていらっしゃるのですが、あまりそこがまとまっていないなというのは少し思います。それで、結局、データ活用みたいになったときに、一つの国で何かできるのかというところからやはり考えなければいけないのかなとよく思っていて、例えばMRSに行くと日本人が少ないとか、そういうことはよく言われている話で、MRSに行くと、3パラレルぐらいでDX活用の材料の研究発表がありますが、日本人は本当に少ない。しかも、去年まではMRSの会長は日本人で、そのような土壌があるのに。
 連携をしていかなければいけないというのと、よく知らなきゃいけないということと、一つちょっと事例をお話しすると、我々、半導体材料として、半導体は熱マネジメントが大事なので、熱伝導のデータベースというのを4年ぐらいせっせとつくって、第一原理計算から6,000ぐらいのデータができるようになって、すごい誇らしく思っていたんですよね。では、いよいよこの6,000を世の中に出そうかと思ったら、マイクロソフトリサーチから23万のデータが出てくるわけです。こういったことというのは今まで何回も繰り返されていて、いわゆるデータはキャピタルなので、パワープレーが効くようになってくると、もうプラットフォーマーみたいな人たちがどんどんデータをつくって、上書きしてくるわけです。そうしたときに、昨今よく言われるのは、では、もうファンデーションモデルはそういうプラットフォーマーに任せて、ファインチューニングのところだけ日本はやればいいんじゃないかみたいな議論があるわけですが、それで本当にいいのかと。だから、全てにおいてやはり世界をしっかりと見ながら、現状認識をしっかりする。やはり国内で閉じて世界と競争するのではなくて、世界に打って出て、連携する形で日本の強さを出すという、そういう姿勢がすごく重要なのではないかと思っています。
 2点目は、今日、文科省さんの御説明で非常に感銘を受けたのは、やはり非常によくできている。大枠の施策とか、思想と施策のリンクのところとか、あと、ちゃんと網羅的に足りないところがないようにつくられているとか、日本の機関の特性をよく踏まえた上で組織図を作るとか、非常によくできているんですよね。一方で、我々現場感からすると、では、大上段の思想が本当に現場で実践されているかというと、なかなかそうじゃない部分も目の当たりにするのですが、やはりそれはミドル層のマネジメントの工夫がもう一段、必要だと思っていて、基本的に日本というのはみんなに優しい国なので、ある程度、方針が決まって、やる人が決まったら、気を遣いながら、あまり厳しいことも言わずにやっていって、何といえばいいのでしょうか。言葉を選ばずに言うと、いろいろなものが薄まってしまうようなメカニズムというのが働くことが多いと思うのですが、そういうところで少し、このような研究プロジェクトのマネジメントの、ミドルマネジメントのところでもう少しアイデアを出して、方法を考えたほうがいいのではないかなと。そうすると、もう少しリソースがうまく活用できるし、強弱がつけられるのではないかというのが少し思っていたことです。
 すみません。委員長、取り留めのない発言です。
【菅野主査】  ありがとうございます。第1点の観点では、何をデータとしてためるかというところと多分非常に関係してくると思いますし、第2点のところは、この施策をどのように全体に広げていくかというところと、これもこれまで散々議論してきたところですが、なかなかポイントかと思います。
 ほかにいかがでしょうか。所委員。
【所委員】  初めての委員なので、私なりの意見ですが、私から2点、お話をお伺いしていて感じたことです。1点は、この施策の知のバリューチェーンの構築。バリューチェーンという言葉、実はサーキュラーエコノミーでもよく使う言葉で、ビジネスでもよく最近使われると思うのですが、バリューチェーンという言葉とよく似て、非なるものでよく使われるのがバリューネットワークという言葉がです。サーキュラーエコノミーもまさにここのところで苦しんでいるというか、なかなかバリューチェーンが構築ができずにいるところなのですが、まさに知のほうも同じかなと思っています。バリューネットワークというのはお互いにネットワークになっていて、それが多様なところからお互いに価値創出をランダムに編み出していくようなイメージですが、それだとお互いにボトムは上がっていくのですが、1個、突破口を開くというような強いものができなくて、それがやはりバリューチェーンだったと思っています。どっちが鶏か卵かというのはいろいろ議論があるのですが、バリューチェーンというのは、かなりお互いが強くリンクしているものをつくっていくということだと思うのですが、今日のほかのいろいろなこと、例えばDXの促進とかいろいろ見ていると、多分バリューネットワークからつくっていかないといけない段階なのではないかなという感じがしています。それがさっき塩見先生がおっしゃったことと違う言葉で私は言い直しているだけかもしれないですが、世界的にネットワークをワーッと相互価値を高めて作っていった上で、そこで太い鎖であるバリューチェーンができたときに、初めて大きなことができるチームのようなものができていくみたいなイメージです。このようなバリューチェーンをしっかりと構築できるかどうか、うまくいろいろな政策などもそこへ落とし込めるとよいですが、それが今、サーキュラーエコノミーでも皆さんが苦しんでいるところと全く同じところではないかという感じがしました。すごくざっくりとした言い方で申し訳ないですが、1点目です。
 もう1点は、日本の強みを分析するときに、その強みを評価する軸というのが、世界の強い人がつくったゲームなのではないかというのがいつも感じているところで、日本強みと思ったときの評価の方法も、要するにゲームチェンジが必要なのかもしれないと思います。強みを評価する軸が、例えばインパクトファクターとか、論文数とか、いろいろあると思うのですが、それもやはりどの指標でも日本は戦って、勝たなきゃいけないと思うのですが、一方で、日本の強みというのは何かと思ったときの日本が勝てるゲームというか、その指標というか、評価法というのも併せていつも議論できるといいのかなというのがいつも感じるところです。
 私が勝手に考えた日本の強みというのは、やはり現場があり、複雑なものをやってきたという現場と、それから、実際の素材、材料、製品があり、ものづくりと言いかえてもいいのかもしれないですけど、それがあり、そこをモデル化して、サイエンスという基礎研究に落とし込んできたというところだと思っています。そこの相互作用というのが最近ちょっと崩れてきているところというのが、もしかしたら日本が弱くなってきたと見えてしまう原因ではないかという気もするので、その2点を感じた次第です。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございました。日本の強みが何かというのをもう一度ちょっと探ってみるというのは必要なことです。
 次、ほかにいかがでしょうか。
【宅間参事官】  堅達先生と折茂先生が挙手いただいています。
【菅野主査】  では、折茂先生。
【宅間参事官】  折茂先生、お願いいたします。
【折茂委員】  折茂です。ありがとうございます。今、たまたま私が海外におりますのと、あと、私が普段おります研究所が、外国人研究者が多いこともございます。やはり、今、お二人の先生方おっしゃったように、もしかしたら海外から見たときに、日本の取組自体は分かる一方で、そこから出てくるデータ科学のアウトカム、アウトプットというのが若干見えにくいのではと感じています。そこはちゃんと海外の研究者にも分かるように見せておかないと、海外からの研究者の呼込みとか、直前におっしゃっていただきましたネットワークを組んでいくときに、そこに入っていくというときに、もう少し分かりやすい形で成果をアピールしていったほうがいいのではないかと思っています。
 文科省の御説明にありました、例えば新規磁石の化合物ですとか、窒化物の件とか、非常に秀逸な成果が出てきているようですので、その辺り、海外にしっかりアピールしていくということが、今後のこの分野の日本の強みを見せていく、あるいはネットワーク、あるいはバリューチェーンで組んでいくというときに、非常に重要になってくるかと思いました。
 以上でございます。
【菅野主査】  ありがとうございました。海外との関係を戦略的に構築していくということかと思います。
 それでは、手が挙がっているのは。
【宅間参事官】  堅達先生から。
【菅野主査】  では、堅達先生、よろしくお願いします。
【堅達委員】  私はジャーナリストなものですから、今、まさに世界からどう見えているのかというお話、ほかの委員の先生方からもございましたが、今、科学が置かれている状況というのは、トランプ政権の振る舞いによって、すごく大変な状況にあるというふうに思っております。一方で、今回、アメリカがあのようなことになっているので、アメリカの優秀な科学技術人材がアメリカで研究しにくいという状況も発生している中で、世界では実は人材の獲得競争みたいなことも行われていると。だから、今回の新しいナノテクノロジー・材料科学技術委員会として、こういうナノテクと材料科学の分野においても、急速に世界の激変する状況の中でどう振る舞っていったらいいのか、戦略的に動いたらいいのかというのは、その世界状況も含めて考えていく必要があるかなというのが1点ございます。スピード感が問われるということではないかと思います。
 あともう1点は、日本がせっかく強みだと思っている様々な素材産業の部分においても、例えば炭素繊維、カーボンファイバーの分野などでは、EUが自動車の材料として使われる炭素繊維について、原則禁止を検討しているというような情報が上がってきて、じゃあ、それはなぜなのかというと、廃棄する際に細かい繊維が人体に悪影響を及ぼすおそれがあるのではないか。これは決まるかどうかは分かりませんが、私たちはそういうルールメイキングの世界においても、日本の、単にこれが強いと言っているだけでは、はっと気がついたら、それに伴う周辺情報をしっかり管理したり、その脇を固める研究、そういう影響とか人体とか生態系への影響の部分もしっかりやっていかないと、はしごを外されたり、崖から落とされるということもあり得る時代だということで、せっかく研究をこれから進めていくのであれば、そのようなところも視野を持って進めていくという体制を構築できたらいいのではないかなと感じました。
 以上、2点です。ありがとうございます。
【菅野主査】  ありがとうございます。世界の状況、激変している状況からスピード感を持ってという御指摘です。施策のタイムスパンと、今、世界の激変の状況とどのように統合していくか、辻褄を合わせていくかというのはなかなか難しい課題だと思います。これから議論ができるかと思います。
 それでは、中山委員。
【中山委員】  御説明ありがとうございました。幾つか感じたことがあります。まず、内局予算による施策を中心に御説明されたのですが、ナノ材委員会としては、マテリアル、あるいはナノテクノロジー・材料分野に、総じて如何なる手が打たれているかという全体像をポートフォリオで考えたほうがいいかと思います。ご説明いただいた内局予算の他にも、JSTのCRESTやさきがけもあるし、いろいろな制度や産学連携等のプロジェクトなどが各々走っていて、それらが縦横無尽に、かつバラバラに行われています。主だったものを俯瞰的に見て、地図をつくって考えるのもいいかと思います。強いところ、弱いところを見て、抜けているところ、重なりなども考慮して、どこに手を打つのが我が国として価値があるかということを、考えていければと思います。
 そのような中で現況を考えると、基盤整備としてデータ駆動型と共用施設、それらを包含するプラットフォームなど、きちんと基盤のところに手は打たれています。これはこのナノ材の内局予算でしかできないことでしょう。このセットは非常によいと思います。しかもDxMTプロジェクトのように、マテリアル分野の中で大事な領域に、データ基盤整備との両立で、優秀な材料研究者によるプロジェクトが行われているということも、理にかなっていると思います。
では、さらにやるべきことは何かなというと、一つは、ほかの分野、例えば情報分野とかエネルギー、バイオとか、そういうところとの相乗効果を如何に出していくかということと、あとは、経済安全保障系の話でしょう。半導体の話は一部ありましたが、やはりマテリアル分野として、広く我が国のサプライチェーンの大事なところで競争力が高いから我が国は食えているわけです。そこを如何に単発でなく面で手を打っていくか。経済安全保障で重要とされる戦略的不可欠性とか戦略的自律性を考えながら、ピンポイントではなく横断的にどのようにそこに手を打っていくか、というのは考え続けるべきでしょう。パッチワークのように、ここだけ手を打てばいいのような話ではありません。半導体だけという話でもなくて、広くマテリアル全体を眺め、我が国の競争力を高める議論と実践が出来るのはこの委員会だけじゃないかなと思いながら聞いていました。
 後は、人材とか国際的なこととか、産学連携とか、いろいろなファクターがあると思いますが、それらも含む大きなポートフォリオで考えられるといいと思うし、ここでしかできないことは何かなというのも大事な論点かなと思いました。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 それでは、藤井委員。
【藤井委員】  どうも藤井です。いろいろな先生方のお話、非常に勉強になるなと思って伺っています。最初に資料の御説明を文部科学省の方からどうもありがとうございました。伺っていて、塩見先生がおっしゃっていたミドルマネジメントのお話があったと思うのですが、私も非常に大事で、今、少し我々が苦手としているところなのかなというのは私も実感として思っています。アカデミアの世界で、マネジメントが教授を中心として、何という言葉の表現がいいのかは難しいんですが、教授が主催する研究室であるとか、研究機関レベルであるとか、バーチャルな研究領域をつくったときのマネジメントをする。逆に言えば、時と場合を変えれば自分がマネジメントをされる側になるときもあると思うのですが、そういうことを経験していく場が少し少ないかなと思います。
 その結果、表われていることが、私が学生時代のときですと論文の共著作で、教授と学生であるとか、2人、3人の論文が多かったのが、最近はもう幾つものグループが、手を握って論文をスピーディーに出していくというような世界感に変わっている気がします。そこが教授間でどうやって握っていくか。もちろん研究科であるとか、専攻でどういう機動的な動きをしていくかというところが少し改善されていくと、論文の在り方であるとか、共著の在り方とかにも変わってくる面があるのかなと私も考えていまして、それは塩見先生が言ったミドルマネジメントと通ずるところがあったのかなと思いました。
 あと2点ありますが、文部科学省の担当の方から、資料の御説明をいただいたときに、プロセスのお話があったかと思いまして、私はプロセス、やはり企業にいるとプロセスで強みを持って、かつ、そこは外に出さない部分なので非常に大事なところだなと思っています。マテリアル自体は、いかにすばらしいマテリアルを出したとしても、残念ながら市場に出てしまうとリバースエンジニアリングされてしまうというところがどうしても避けられないというところで、プロセスをどういうふうに強めていくのかというところ。かつ、材料の中にも最近、2種類あるなと思いまして、例えば市場に商品として出ていってしまうマテリアルと出ていかないマテリアルが、例えば製造過程において溶媒というのは最たるものだと思いますが、合成過程の溶媒などはもう決して外には出ていかない。だけど、アカデミックの溶媒エフェクト、溶媒効果と言って、非常に学問体系としても成り立っている部分があると。そういうところが学問と産業の強みに結びつくところになるのではないかなというのを最近、考えています。
 あともう一つ、宝野先生もおっしゃられていたところですが、生成AIの話題があると思っています。生成AI、やはり今までとデータを活用するという意味では一緒だと思うのですが、そのデータソースが文章であるとか、今までデータ駆動型というとテーブル、表形式になったデータをいかに集めるかというところがやはり重要だったのですが、文章として蓄積されていたデータという重要性がすごく変わってきたと思っています。ゆくゆくはこの生成AIは、今、reasoningと言って、いかにAIによる説明をするかという話につながっていくと思っています。そうしたときに我が国の中にもARIMでやはりテーブルデータを非常に集めている。そうした次には、文章のデータというのをどうやって我が国が集めていくのかというのは大事なポイントかなと思っています。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。それでは、宅間参事官。
【宅間参事官】  事務局からコメントさせていただければと思います。先生方の御意見、ありがとうございました。全ての意見を網羅的に御回答できるか自信がありませんが、ところどころで、これを申し上げたかったと思ったことがありましたので、お答えさせていただければと思います。
 まず、順番が入れ替わってしまいますが、中山先生から御指摘いただいたポートフォリオのところはまさに重要だと思っております。本日御説明した資料も、資料3-2の1枚目に、少しポートフォリオと言うにはちょっと粒度の大きいものではございますが、従来、我々ナノテクノロジー・物質・材料担当の直接担当している事業を中心に、この委員会では特に扱っていただいてまいりましたが、そうではないのではないかなと私も思っておりまして、こうした形で、文部科学省の中で言えば、他の局課が実施しているような事業も含めまして、マテリアル革新力強化という観点で関連する事業をまとめてみたところです。
 また、このほかにも12期におきまして、推進方策を議論いただいたときの参考資料にもあるのですが、もう少し細かく、JSTのさきがけやCRESTなども含めまして、どういった分野でどういった事業、課題が動いているというような資料などもつくってみたところでした。
 まさにこのナノ材委員会におきまして、直接、事前評価や中間評価をいただくのは、我々が担当している事業にはなりますが、そうしたときにそこだけ見るのではなくて、まさに1ページ目ですとか、そのようなところにある周辺の事業、また、本来であれば、他省庁の事業の動向なども含めまして、また、先生方の御視点からいえば、海外の取組なども含めまして、ナノテク分野の研究開発をどうやって進めていくかということを考えていくべきだという御指摘だと思っています。まさにそのような提案は重要だと思っておりますので、そこはコメントさせていただければと思いました。
 あと、所先生から、我が国の強みといったときに、海外が強いようなところで議論されがちなのではないかというようなお話もありました。内閣府の有識者会議でも、また、12期のナノ材委員会でも、人材の評価については、例えば論文指標のみではない多様な研究者の活動を、国際学会の委員をお務めになっているとか、例えばそういったようなことも取り上げながら、多様な活動をきちんと評価していくべきだという御議論をいただいたところでしたので、まさに御指摘いただいたところ、そういった認識も持ってこの議論を進めてこられてきているかなと思っております。
 また、我が国の強みとして、現場があって、実際の材料に対してサイエンスに落とし込んできたというような御指摘もいただきましたが、今回、内閣府のマテリアル有識者会議において、知のバリューチェーンの議論があったときに、知のバリューチェーンがつながって、最後、出口につながるということだけではなくて、そこから出てきた課題といったものがきちんとアカデミアに還る、それによって新しい学術領域の創出などにもつながると。また、人材育成にもつながるというようなところがこの議論の背景にございました。
 なかなか字数の限られた概要資料ではちょっと書き切れなかったところではありましたが、御指摘いただいたようなところもも意識しながら、まさにこの提言、まとまってきたところですので、そういったところを今後、戦略になって、文部科学省としてどういうふうに取り組んでいくかといったところに、そのような観点もきちんと反映していければと考えております。
 あと、バリューチェーンのところは本当にいろいろな言葉があって、ネットワークということも教えていただきましたが、あと、エコシステムとか政策文書ではいろいろな言葉がございました。ただ、この有識者会議において、バリューチェーンという言葉を選択したというのは、やはり起点になるアカデミアのサイエンスを、先生御指摘いただいたようにしっかりつないでいって、イノベーションにつなげていくといったところで、このバリューチェーンという言葉を使われたものだと思っています。ただ、先ほども少し出てまいりましたが、文部科学省の事業だけでできることではなくて、より社会実装に近いところでは、例えば経済産業省や環境省などと連携して、また、産業界との連携が成り立って、初めてイノベーションという出口まで行けるというものだと思いますので、そのようなところを内閣府のマテリアル有識者会議の場などもありますので――。申し遅れましたが、私、内閣府の担当参事官も実は併任をしておりまして、そちらの立場でもいろいろと取組を進めなければと思っているところですが、内閣府のほうとも連携して取り組んでいければと考えているところです。
 また、そこでは、事業のミドルマネジメントといったところにも関連すると思っておりまして、塩見先生に御指摘いただいたところですが、きちんと、まず文部科学省の中でも、このデータをつくって、ためて、使うというような事業の連携もございますし、もとより、出口に近いところの事業との連携というのもありますが、そうした中で、戦略やナノ材委員会の推進方策で御議論いただいたような大きな考え方をしっかり現場に落とし込んでいくところに、そういったミドルマネジメントというものが重要だという御指摘だと思っております。
 文部科学省においては、この事業を例えばプログラムディレクターやプログラムオフィサーなどもお願いしながら、実際の進め方を日々検討させていただいておりますが、そういった場を通じて、まさにこういう大きな考え方をしっかり現場までお伝えしていくといったところを意識していきたいなと思いました。
 国際的なプレゼンスがなかなか見えてこないというところでは、やはり御指摘いただいたように、研究成果の積極的な発信というようなことは大事だと思っておりますし、このデータ基盤のこれまで構築していった成果をしっかりアピールするということが重要だと思っております。海外から見える、しっかりした、卓越した拠点をつくるとか、卓越した研究者の方を御支援するというような事業も、他課、他局の事業でもありますが、そういった事業のみならず、成果のPRであるとか、また、ここは先ほどの人材の活動の評価といったところも関連してくるところだと思いますので、そういったところを意識しながら取り組んでいければと思いました。
 全てにお答えできておりませんが、一旦事務局としてのコメントを申し上げさせていただきました。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 ほかに御意見、いかがでしょうか。
【関谷主査代理】  よろしいですか。ありがとうございます。私も今までの議論、そして、宅間参事官、まとめてくださったところ、非常に評価しているところです。特に、例えば日本の強み、材料とかナノテクノロジーを産業界で社会に送り出していくときに、ものすごいたくさんのレイヤーがあって、そこに関わる人がたくさんいて、そこのすり合わせが強いというのはやはり日本の強みだと思っておりますし、それをすり合わせるための計測技術があって、それが蓄積されているということで、プラットフォームを支える人材が自分の特性を生かして、活躍して、キャリアアップしていくという、そのような研究の評価とか、研究者の評価というところをしっかりと変えていくことで、ミドルマネジメントの方たちが活躍していける社会が復活するところに日本の強みがあるのではないかと思いました。
 あと、やはり日本の産業界、非常に力強いマテリアルを世界に送り出している観点から言うと、こういうマテリアルDXプラットフォームにたくさんの日本の企業様がまたどんどん入っていってくださって、そのような既に力強いマテリアル産業を支えている企業様と一緒に、このマテリアルDXを使っていけるというところにやはり次の非常に大きなポイントがあるのかなと思っています。知のバリューチェーンを成立させるためには、どうしても、この委員会にはたくさんの企業の皆様が入っておられますから、本当に心強いわけですが、こういったマテリアルDXをたくさん使って、ある種データを提供するというような考え方ではなく、それぞれの自社、個社の強みを生かしながらも、全体としてイノベーションを起こしていくような、そのようなプラットフォームの中に産業界の培ってこられた技術やノウハウといったものがしっかりと、秘匿された形でありながらも、重要な部分がイノベーティブに共有していくという、何か次のマテリアルDXはさらに力強く産官学連携していくというところがとても重要だと思いました。
 その中で、先ほど御説明くださったところに産官学からの意見聴取みたいなところがございましたね。これはやはりすごく重要だなと思っておりまして、さっきの資料で言うところの資料3-2の16ページでしょうか。「産学官からの相談先」の構築に係る成果。これはMaterealizeのプロセスのところだと思うんですが、たくさんの企業様が使っておられて、どういうところがよくて、どういうところに次の課題があるかみたいなのをしっかりとここでフォローアップされると、さらにマテリアルDXにより多くの企業様が使ってくださる。既に使ってくださっている方たちの力強い声とか、それから、課題というところをしっかりと拾い上げるというところは非常に重要かなと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 それでは、南谷先生、お願いできますでしょうか。よろしくお願いします。
【南谷委員】  私はどちらかというと現場に近い人間でして、あまり高尚な意見じゃないんですが、知のバリューチェーンに少し関係する意見としまして、今、マテリアルDXとかで、いろいろな施策が今回走っていることをこの委員会でいろいろ知ったのですが、多分、実際に研究している方は、こういう使いやすいプラットフォームがありますとか、データベースがありますとかがなかなか伝わってこないような状況に今あると思います。
 海外だと、AFLOWとか、マテリアライズプロジェクトとか、大々的に使いやすいプラットフォームがあって、もしかしたら日本でもそういうのが立ち上がっているのかもしれないですが、ついつい使いやすいマテリアライズプロジェクトとか目の前にあるので、そちらを使いに行ってしまいます。そうすると、やはりそちらのフィージビリティが上がってしまって、日本で頑張っていてもあまりそれが見えてこないみたいな状況になってくるので、外に見えやすいとか、いろいろな人が使いやすい、何かキラーコンテンツみたいなのがあったほうがいいのかなと思うのですが、それと同時に、そういうのをつくることに注力しても、この研究者が実績として評価されないというところも、先ほど関谷先生がおっしゃっていましたが、評価基準のところも変えないとそういうのがつくりにくいのかなというのを少し感じました。
 漠然としていて申し訳ないんですが、以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 平田先生。
【平田委員】  トヨタ自動車、平田です。先ほどおっしゃっていただいたことと近い感覚を持っていまして、やはり普及しようと思うと、実際に、特に企業ですと、現場に近いところでやっているエンジニアが使いこなせないと多分普及しなくて、そうなってくると、ユーザーインターフェースであるとか、そういうところの使いやすさはすごく重要だと思っています。我々もいろいろやっていく中で、社内ではなかなか開発できない、もうプロに任せようと。もうこれはソフトウエアベンダーに任せますという、そこはもうプロには全然勝てませんので、そういう工夫も必要かと思います。あと、データの利活用をしていくときにすごくしっかりできているかもしれませんし、私が知らないだけかもしれないんですが、ある程度のデータがあったときに、それがスモールデータの集合体でいっぱいあるように見えているのか、それとも横串できちんとつながってビッグデータなのかによって、意味合いが全然違ってくると思いますし、活用の仕方も違ってくると思います。
 ですので、集められているデータが果たして、ある部分にすごく特化したものであるのか。それとも汎用的に使えるものであるのか。ちょっとそこの部分の階層がしっかり分かれていて、なおかつ、それがきちんとユーザー側に伝わっていないと、使い手側がどうやって使うんだという話になりますので、その辺りの工夫をしっかりしていただけると、企業のエンジニアとしては使いやすくなるかなというように感じます。
【菅野主査】  ありがとうございます。使い勝手のいいデータベースをということですが、DxMTのプロジェクト、第2期に入って、これからどのようにして使っていくかという成果を求められるというところが先ほど宝野委員からもありましたが、まさにその辺りが課題として取り組むべきことかなというようにも感じます。
 ほかにいかがでしょうか。
【塩見委員】  今の点、ちょっといいですか。2回目で申し訳ないんですが、少し前に非公式に、もしかしたらナノ材に申し上げたことがあるかもしれないんですけど、ARIMで集めているデータは、ある意味、私は非常に特殊だと思うんです。これは言い方を気をつけなければいけませんが、あまり特定の戦略を定めずにバッと集めたというのはあまり通常しないことで、ある意味、日本人の生真面目さみたいなのがベースになって、あまり色がついていない、目的がないということはよくとがめられるポイントでもあるのですが、裏を返せば、ある意味、恣意的じゃなく集められた勤勉に集められたデータなので、今、それの運用が始まっているということを伺って、すごいいいなと思ったのですが、何かやはり、グッドプラクティスがないことが企業さんが二の足を踏む一つの要因になっているとするならば、一旦もちろんお金を払ってもらって使ってもらうという会社も当然あってもいいのですが、データ科学者に無料で一部を開放して、それでいろいろ遊んでもらうと言うのでしょうか、そういうのが合わせてあってもいいのかなというのは、少し前々から思っていました。
 そのきっかけの一つが、さきほど少し申し上げた、我々が6,000のデータつくったら23万出てきてしまって、びっくりと。ただ、23万のマイクロソフトリサーチの人たちが我々にコンタクトを取ってきて、その方々と会ったのですが、上司と実働の方々がいたのですが、多分その上司の人で恐らく30代前半ぐらいです。要するに、ものすごい若手だけでやっているんです。僕はもう少し統率の取れた、シニアの人がいて、命令系統がしっかりしているのかと思ったら、もう何か遊び場をつくってもらって、ほらやってごらんと言って、若者がワーワーやっている間に、世界一のデータベースができてしまったみたいなノリで、これはデータ科学のノリだと思います。マテリアルズ・インフォマティクスというと、材料掛けるデータで、文化が混ざるんです。やはり材料の文化はあまりそのような文化ではないけれど、データの文化はそのような文化だったときに、日本はどちらかというと材料が強いがあまりに、文化的には材料側に少し寄っているという気がします。したがって、そういうプロジェクトのマネジメントとかデータのトライアルの柔軟性のようなものをもう少しこう、いわゆるデータ科学の畑の人のノリでやってみるというのは、今いろいろな論点がありますが、企業さんがどうやって入ってくるかとか、そういう意味でもあり得るシナリオではないかと。
 それをやるには少し儒教的な感じをなくして、あと、規制を取っ払って、もう少し自由に、少し事故してもいいぐらいのノリでやっていく必要があるので、ミドルマネジメントのことに帰ってくると。そういうところのマネジメントは、日本は元来、あまりみんな得意ではないかと思うので、やはりしっかりやっていくということで何かそこら辺に工夫の一つ余地があると思っております。
【菅野主査】  ありがとうございます。まだもう少し時間があります。
 それでは、宝野先生ですかね。よろしくお願いします。
【宝野委員】  塩見先生のおっしゃるとおりかと思います。ARIMというのは、データを収集する仕組みというのをつくっていただいた。そのため、先ほどおっしゃったように、目的を特定しないでデータが集まっているという状況だと私は理解しています。そもそもARIMに入った方々というのは、通常では整備できないような先端的な共有装置を導入できるというところに惹かれて参加してこられましたから、そのデータを出さなければいけないというのは、ある意味、このような言い方は不適切かもしれませんが、これを受けたデューティとして出していらっしゃる方が多いと思います。
 このため、ARIMでデータを提供していただいている方々自身はデータを活用していこうという意識がそんなに高くないのではないかと感じています。ですから、集められたデータを使うというところをしっかり考えてやっていく人たちを集めて、今、ARIMでせっかく収集できるようになったデータを使った成功事例を出していくというのがこれからしっかり取り組んでいかなければいけないことだと感じているところです。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。武田委員、よろしくお願いします。
【武田委員】  武田です。こういうマテリアルサイエンスの成果を社会実装するには、やはり実際に実装する企業が本気でアカデミアの研究成果を活用したいと思うかが鍵になると思います。自社の開発費を使って、製品を出していくと思いたくなるような仕組みがあれば社会実装がもっと加速されるのではないかと思います。
 具体的には、企業の視点から、将来社会実装する際にかかるコストが明確でないと決断し難いという点があります。長期的にみて、かかる総コストというのが要点です。つまり、知財などの関係から、将来的にいつどのタイミングでどのくらいのコストがかかるかということを明確にしておかなければ後々に齟齬が生じてしまう可能性があります。産学連携を進める段階で、双方が納得できる対価について良く話し合い合意することが重要であると思います。信頼関係を築いたうえで、産学連携での社会実装を目指した活動を推進することが非常に重要ではないかと考えます
【菅野主査】  ありがとうございます。産と学との会話というのが非常に重要であるということですね。
 それでは、伊藤委員、お願いできますでしょうか。
【伊藤委員】  伊藤です。すみません。時間が大分来ていますが。皆さんおっしゃられているとおり、例えばARIM事業などで、データが集まってきたという状況だと思うのですが、それをこれからさらに一歩踏み込んで、どう利活用していくのか、しかも、それを少し違った領域の中においてもどう利活用していくのかということを仕組み化していくというのが、一つ重要なポイントかなと思って、今聞いておりました。また、それをするに当たって、あるいはそれを社会に実装していくに当たっては、やはりイノベーションエコシステムという言い方かもしれないですが、それを従来、旧来のやり方から、企業側もそうですが、アカデミアも両方とも少しずつ変わっていかなきゃいけない部分ができているのではないかと。ステップを踏んでといったところから、スピード感を持って海外に追随していくということも必要になってくると思うので、そういったキーワードでもどうすべきかという議論がナノ材料の中で議論ができればいいのかなと思った次第です。
 以上でございます。
【菅野主査】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
 ARIMのデータがたまってくるので、そのたまってくるのを、じゃあ、どう使うか。今、塩見先生の御指摘のように、あるから、とにかく遊んで頂戴よという、そういうのもやはりあってもいいのかなという指摘ですね。データがたまって、じゃあ、それをどう使うか。そういう観点と、それからもう一つ、これまで関谷委員からも指摘もあるように、日本の強みには、産業の強みがあります。では、それをどのようにサイエンスにするかというのは、今、この内局の事業でもプロセスサイエンス、Materealizeが走っています。そこではどのように産からのデータをうまく学と融合させてデータベースとするかというような課題にも取り組んでいるところで、産と学と会話を実際のデータに基づく会話ができるかが、いま展開しています。翻って、マテリアルのプロセスというと、学のほうのマテリアルのプロセス、すなわち合成のプロセスですね、それはなかなかサイエンスになっていないところがあります。
 そのデータを現在、DxMTのところでも取り込むように皆さん努力していますが、そこのプロセス、学のプロセスと、産のプロセスをどのように融合させていくかというのは、多分大問題のように思います。完成したマテリアルのデータベースではなくて、その作り方も含めた学と産とのプロセスをどのようにデータとして取り扱っていくかというのが多分、この次のMaterealizeの課題なのかなというようにも感じているところです。
 ほかにいかがでしょうか。まだ御発言をいただいていない先生もいらっしゃいますが、次回、まとめてまた御発言の機会ありますが、今日、ぜひもしこのことを言いたいということがあればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。2回目、3回目の発言でもよろしいです。もう少しだけ時間がありますが、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 では、今回のこの件に関してはここまでということにしたいと思います。また、次回、それぞれの先生方、今日の皆様の御発言を踏まえて、また考えていただいて、御発言いただければと思います。どうもありがとうございました。
 続いて、議題、その他に移ります。
【宅間参事官】  先生方、大変貴重な御意見を頂戴いたしまして、本当にありがとうございます。戦略も間もなく改定されるということで、それに沿って文科省としてどのように進んでいくのかといったところ、まだまだその戦略も非常に大きな概念としてつくられていて、具体化はこれからといったところですので、今日いただいたような御意見、非常に示唆に富む御意見いただいて、実際にどのように進めていけば、戦略であるとか、ナノ材委員会でおまとめいただいた推進方策の実現につなげていけるのかといったところに対する具体的な御意見を頂戴できたと思っております。
 また、次回、次々回、先生方からの御意見を頂戴しながら考え方を深めてまいれればと思っております。
 続きまして、次回の予定等御説明させていただきます。
【伊藤補佐】  事務局より御連絡いたします。次回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会につきましては、8月4日月曜日、午後1時からを予定しております。また日にちが近くなりましたら議事内容等含めて、改めて御連絡させていただきます。
 また、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成いたしまして、委員の皆様にお諮りして、主査に御確認いただいた後、ホームページにて公開する予定です。
【菅野主査】  それでは、本日のナノテクノロジー・材料科学技術委員会はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。