シンポジウムにおいて、以下のような提言がとりまとめられました。
提言
我が国の科学技術・学術の振興、産業の国際競争力強化を図るためには、高性能スーパーコンピュータ開発と、その能力を十分に引き出すアプリケーションの研究開発及び利用を並行して進めていくことが極めて重要である。次世代スーパーコンピュータプロジェクトが一定の進展を見せつつある中で、関係者は次の認識を共有し、計算科学が有する可能性を実現するために、それぞれの立場から積極的に行動すべきである。
- 一、アプリケーション研究開発の戦略的拡大
次世代スーパーコンピュータは、かつてないほど多数のCPUから構成される複合汎用システムである。その利用を通じて優れた研究開発成果を国内外に発信し、併せて国民・社会への還元を確実に実現していくためには、コンピュータの能力を活かすためのアプリケーションの研究開発に広範な分野の研究者、技術者の参加・連携を促進することが不可欠である。
このため、グランドチャレンジへの取組みの強化に加え、各大学・公的研究機関等における戦略的な取組みを促すよう、シミュレーションとの融合領域について、競争的研究資金の活用など幅広い誘導・支援のための方策を講じていくことが必要である。また、「革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発」(文部科学省、平成17〜19年度)を通じて行われてきた、産業界と大学との連携を加速するための取組みを、さらに強化・発展させるべきである。
- 一、優れた研究開発成果の創出を可能とする利用環境の整備
次世代スーパーコンピュータの利用にあたっては、適切な技術情報の提供や技術支援が必要である。今後、利用を見据えた具体的な運用のあり方についての議論を早急に開始すべきである。
これと並行して、利用者の利便性を第一義に、地元兵庫県・神戸市などと密接に連携して、次世代スーパーコンピュータ周辺の研究・教育・交流機能を整えていくことが必要である。また、次世代スーパーコンピュータを含むスーパーコンピュータの重層的な利用環境を提供するために、最先端学術情報基盤(サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)の構築に向けた取組みを積極的に進めるべきである。
- 一、研究教育拠点整備に関する検討の加速
革新的な研究開発や次代の学際的な計算科学を担う人材の育成を可能とすることはもとより、開かれた研究開発コミュニティの形成や異分野領域の研究者間の交流、国民や社会への情報発信に大きく貢献する研究教育拠点の実現に向けた議論を、今回のシンポジウムを契機として早急に開始すべきである。その際、人材の育成及びキャリアパスの形成については、大学、公的研究機関、産業界の密接な連携が図られるよう考慮すべきである。
2007年10月4日
次世代スーパーコンピューティングシンポジウム2007
参加者有志一同