2.地域科学技術を巡る現状と課題

(1)地方自治体における科学技術振興の現状

1.都道府県等における科学技術政策大綱等の策定状況

 知の大競争時代に我が国が国際競争に勝ち抜くためには、国を挙げて科学技術政策の強化に取組んでいかなければならない。このようなことから、政府は科学技術基本計画を策定し、重点的に取組む分野や科学技術のシステム改革等について定めており、地方自治体においても、ほぼ全ての都道府県・政令指定都市(都道府県等)において科学技術振興策を審議する審議会等が設置され、独自の科学技術政策大綱や指針等が策定されるなど科学技術振興への取組が着実になされている。

2.科学技術関係経費の推移

 第3期科学技術基本計画では、平成18年度から22年度までの計画期間中における政府研究開発投資の総額の規模として約25兆円の目標が掲げられている(対GDP費1%、名目GDPの平均成長率3.1%が前提)。国における科学技術関係経費は、近年ではやや頭打ちの状況にあるものの、科学技術基本計画策定以降当初予算では増加傾向にある。一方、近年の地方財政の状況としては、歳入・歳出ともに減少しており、平成13年度に比べて平成19年度では歳出で約9%の減少、科学技術関係経費は約18%の減少となっている。項目別に見ると、公設試験研究機関の予算の減少が著しく、平成13年度から19年度までの6年間で、約30%減少している。また、科学技術の推進に必要な研究交流(産学官共同研究や研究成果普及のための交流会の開催等)、情報整備(科学技術や知的財産に関連する情報の整備・提供等)、人材育成(中小企業の技術者を対象とした研修会等)などについては、そもそも支出に占める割合が少なく、総合的な取組が行われているとは言い難い。

 地域にとって、従来では科学技術振興は国の役割との意識があり、また、厳しい地方財政事情とも相まって、公設試験研究機関を含む科学技術関係予算は、一層削減の対象となりやすくなっているのが現状である。地域の主体性を尊重しつつ科学技術の振興を促し、地域におけるイノベーションを創出していくためには、地域の研究開発機能のより一層の強化が必要である。

(2)知的クラスター創成事業等の実施状況

1.知的クラスター構想の経緯及び考え方

 第2期科学技術基本計画では、地域における科学技術振興のための基盤整備を図るため、地域における「知的クラスターの形成」を積極的に進めることが決定されている。
 これを受け、文部科学省では、優れた研究開発ポテンシャルを有する地域の大学等を核として、産学官の網の目のようなネットワークを構築し、イノベーションを連鎖的に創出する知的クラスターを形成するため、平成14年から「知的クラスター創成事業」及び「都市エリア産学官連携促進事業」(知的クラスター創成事業等)を推進しており、現在までに、全国に大小数多くのクラスター形成を支えてきた。
 このような大学等の「知」を求心力のある核とする「知的クラスター」は、ある一定の地域の中に産学官の人的ネットワークや共同研究体制が形成されることにより、大学等の有する独創的な技術シーズと企業の実用化ニーズが相互に刺激しつつ連鎖的に技術革新とこれに伴う新産業創出が起こる競争力のあるシステムである。
 世界には様々な性格の「クラスター」が存在し、また、国における各種施策により、センター的なものから面的なものも含めて「拠点」形成が進められているが、「知的クラスター」は、単なる研究拠点とは異なり、大学等の「知」を社会に還元することを目指し、優位な技術シーズにビジネスモデルが加わり、イノベーションの実現を図るものである。

2.実施状況及び成果

(実施状況)
 平成14年度に開始した知的クラスター創成事業は、「知的クラスター」の創成を目指した基盤形成段階における事業として全国18ヵ所で実施され、その成果を踏まえ世界中からヒト・モノ・カネを惹きつけ、我が国の科学技術の高度化・多様化と経済を牽引する世界レベルのクラスター形成を目指す第2.期ついては、選択と集中の観点から実施地域の絞込みや第1.期実施地域同士の共同実施も含めて、現在9地域で実施しているところである。平成21年度からは、地域の特長ある技術シーズを活かし、これまで国として手薄であった国際競争力を持った中規模なクラスター形成を促進するため、グローバル拠点育成型として4地域が採択されている。
 また、同じく平成14年度から開始した都市エリア産学官連携促進事業は、小規模でも強みを持つ地場産業等の特色を活かしたクラスター形成を目指しており、これまで延べ59地域が事業を終了しており、現在30地域が事業を実施中である。

(成果)

1.)地域科学技術振興の施策展開

 平成14年度に開始された知的クラスター創成事業及び都市エリア産学官連携促進事業では、現在、複数のメニューが用意され、地域の実情に応じた柔軟な対応が可能となっている。
 また、経済産業省では、平成13年度から産業クラスター計画が開始され、現在は18プロジェクトが進行中である。各経済産業局において、会員企業の販路開拓・金融支援・ビジネスマッチング等といった支援が行われ、産業界を中心とした産学連携・産産連携といったネットワーク形成の取組みが進められている。各地域においては、知的クラスター創成事業と産業クラスター計画を地域における科学技術振興財団等、同一の支援機関等により運営される場合や、合同成果発表会が開催されるなど、連携が進められている。
 このようなクラスター形成支援事業に加え、科学技術振興機構(JST)では、地域イノベーションの効果的な創出を目指し、全国16箇所に設置されたイノベーション・プラザ及びイノベーション・サテライトを拠点として、科学技術コーディネータによる地域に密着したコーディネート活動の下、シーズの発掘から事業化まで切れ目のない研究開発支援を行う「地域イノベーション創出総合支援事業」を展開している。地域の大学等が有する個々の研究開発課題の事業化支援を行うことで、多くの事業化や、知的クラスター創成事業など他事業への橋渡しがなされ、地域の特色を生かした成果の展開がなされている。
 その他、大学等における産学官連携の体制整備やTLOに対する支援など、多様な地域のニーズに柔軟に対応ができるような施策が展開されている。

2.)地域における科学技術振興のキャパシティービルディング

 クラスターが持続的にイノベーションを創出するためには、産学官の関係者が顔の見えるネットワークを構築し、日常的な情報交換や新たなアイディアへの刺激を得ることが重要である。平成20年度においては、事業実施地域において、大学などの公的研究機関から約2,600人、約600機関、民間企業から約1,800人、1,000機関が知的クラスター創成事業等又はそれに関連するプロジェクトに参画しており、各地域で産学官共同研究や交流会・研究会などの産学官連携ネットワーク形成活動が活発に実施されており、多くの関係者を巻き込んだネットワークがひろがりつつあると言える。
 都道府県単位で見ると、ほぼ全ての都道府県において、これまでに知的クラスター創成事業又は都市エリア産学官連携促進事業を実施した実績があり、多くの地域において科学技術を産業創出や雇用創出の中核に位置づけることについてのコンセンサスが広がり、自治体のイニシアティブによるクラスター形成のノウハウが蓄積されてきている。中には、知的クラスター創成事業等において新たな人材育成プログラムを開発し、多くの大学や企業が連携して講師を務め、人材の育成・集積を図る地域や、自治体独自の取組として、複数の研究開発プロジェクトでフィージビリティースタディーを実施し、その中で市場調査や競合技術調査を徹底的に行った上で、有望なものを選び本格実施するといったような先駆的な取組事例も出ている。
 また、これらの産学官連携活動を通じて、大学等の研究者が、出口を意識した研究を行うようになるといった意識改革や、関連産業や支援産業の中から新たな研究シーズの発掘がなされ、研究の良い刺激になるなど、大学等の研究機能自体のレベルアップにもつながっている。
 このように、知的クラスター創成事業等を契機として、産学官連携ネットワークの構築、地方自治体の施策の発展、大学研究者の意識改革など、地域科学技術振興地域の能力構築が進んでいる。

3.)プロジェクトの成果

 知的クラスター創成事業におけるこれまでの成果としては、国内・海外合わせて7,000件を超える論文発表や、3,000件を超える特許出願がなされ数多くの技術シーズが創出されるとともに、1,000件もの商品化やベンチャー起業がなされるなど数多くの事業化が実現している。
 個別の地域を見ても、例えば福岡・北九州・飯塚地域では、県外や海外からの企業進出や大学発ベンチャーの起業等により、システムLSI設計関連企業が事業開始当初である2000年度末の21社から2008年度末には160社へ拡大するなど、関連企業の集積が進んでいる。長野地域では、信州大学が世界的な強みを持つカーボンナノチューブに関する技術を活用し、多数の技術移転、事業化により今後10年間で30億以上の売上げの見込みがある。東海広域地域では、名古屋大学が独自に開発したプラズマ診断技術を基に様々な装置開発やベンチャー起業がなされ、隣接県も巻き込みつつ世界的拠点への取組が進められている。富山・石川地域では、富山大学と県工業技術センターとの共同研究により、感染症阻止に有効な抗体を短期間で量産するシステムを開発し、同地域から生まれたベンチャー企業が機器の製品化を行うなど、研究成果を活用した企業化サイクルが生まれ始めている。

 都市エリア産学官連携促進事業については、これまでに、国内・海外合わせ約2,900件の論文発表や、約1,000件の特許出願、約800件の事業化事例が実現している。また、地域の産学官連携基盤の構築を目的とした「一般型」から、一般型等を終了した地域において優れた成果をあげ更に発展が見込める地域について支援を行う「発展型」へ移行した地域も多く、着実に地域の取組が進展していると言える。
 具体的には、福島県郡山エリアでは、県主導による薬事法許認可支援により、平成18年度から3年間で地域の異業種企業11社が新たに医療機器製造許可の取得に成功している。また北海道函館エリアでは、特産物である昆布やイカの高付加価値化を進め、平成20年度までに、113品目の商品化を展開し、約32億円の経済効果を創出している。

3.知的クラスターにおける課題

 知的クラスター創成事業等により、多くの技術シーズの創出や、産学官の関係者の意識改革、地域独自の取組の進展が図られているが、クラスターの自立化や研究成果の事業化、戦略的な広域化、地域イノベーションを支える優れた人材の育成・確保といった点では、多くの地域が課題を抱えている。

 諸外国の事例においても、クラスターの形成には最低でも10年、長いところでは30~40年程度は必要であり、長期的な視点で取組むことが必要であるが、国による支援はクラスター形成の加速を目的としており、その基盤形成(産学官連携のネットワーク、人材育成、地域定着、事業化支援機能、広域化、国際化に向けた取組等が整う10年程度の期間)の支援を行うに留め、最終的には、地域が自らの取組として自立発展していくことが重要である。

 クラスターが自立的に動き出し発展していくため、例えば
・産学官連携の成功事例の積み重ねによる関係者間の信頼関係の醸成と産学官ネットワークの構築
・事業のマネジメントを担う中核機関の自立的経営基盤の確立
・国等の競争的研究資金の獲得が可能となるような知的資源の蓄積
・人材、研究機関、企業等の集積を促進する地域ブランドの確立
・地域産業を牽引する競争力ある企業の育成又は誘致
・地域の競争力を強化するための戦略的な広域化・国際化に向けた取組

等がなされていること重要であるが、事業期間内において必ずしもこれら全てを満足させることは困難であり、事業終了後の展開も視野に入れた地域発展のロードマップを検討することが必要である。

 事業化という面では、大学等の優れた技術シーズを基にこれまでにない新たな商品開発が行われたとしても、市場ニーズの把握が十分ではないため試作品に留まる事例や、医療機器等の開発に当たって必要となる薬事法対応が不十分なため単なる研究で終了してしまう事例もある。市場ニーズやそのマーケットの規模の把握や、安全を立証するデータやその評価の基準に関する研究の取組み、今後更に重要になる知的財産の取扱い等を含め、事業化までの戦略の練りこみを強化する必要がある。

 広域化・国際化の面では、イノベーション・エコ・システムが一つの行政単位で完結することは実際には困難であり、自らの地域において何を競争力のある核として成長させ、何を他地域との連携により補完するかといった地域のビジネスプランが必要である。しかしながら、ネットワーク形成が一つの都市エリア単位或いは都道府県単位に留まり、地域の事業化ニーズに対応する優れた技術シーズや、最終的な研究開発の受け手となる企業について、行政区域を越えたネットワーク構築が十分になされているとは言えない。隣接する自治体だけではなく、国内外を含めた他地域との連携も検討することが重要である。

 また、地域イノベーションを進める基盤となる人材の育成・確保も大きな課題である。研究開発をリードする研究者や、地域産業を支える中堅・中小企業における高度技術者、近年複雑さを増す知的財産の専門家といった人材に加え、大学等の優れた研究成果の目利きや研究成果の翻訳を行い地域企業ニーズとマッチングを行うコーディネータや、地域における複数の関係者・関係機関を総括し事業全体をマネジメントするマネージャー、地域構想の立案や地域活性化の戦略を立て地域を牽引するプロデューサーなどの産学官連携支援人材を育成するとともに、必要に応じて他地域からヘッドハンティングするといった人材の流動化も必要である。

 国においても、採択後に中間評価等を行うものの事業実施中の地域の状況把握が必ずしも十分ではなく、地域の主体性を確保しつつも、例えばプログラム・オフィサーのように、常時地域の取組をチェックし、必要に応じて助言・軌道修正ができるような専門的人材を配置するといった取組や、各地域の事業総括やコーディネータ等の関係者を集め、それぞれの取組み状況や、課題等について情報交換や議論を行う場の設定など、国と地域とが協働して高い成果をあげるための仕組みづくりが必要である。また、経済産業省を始めとする関係府省との連携を強化し、事業終了後においても地域が様々な関連施策を有効に活用できる環境整備が必要である。

4.予算の使途における現状と課題

 地域において多くの関係者を巻き込みつつクラスター形成を進めるためには、産学官の諸機関から中立的な立場の機関が事業マネジメントを担うことが必要であり、そのため知的クラスター創成事業等では、主に地域の産学官連携を担っている財団法人等の公益的な機関を「中核機関」として事業を推進するための事業本部を設置し、事業総括や研究統括、科学技術コーディネータ等必要な体制整備を行う仕組みとしている。当該中核機関が事業全体を俯瞰しつつ、大学等に資金を交付し企業との共同研究の実施や、中核機関が中心となり研究成果普及のための交流会の開催等を行っている。
 知的クラスター創成事業等の予算の使途は、地域が主体的に策定した計画に基づき中核機関が配分するものであることから地域毎に異なるものの、全体の傾向としては、事業本部の人件費や交流会の開催費等の事業運営費が約2割、大学等における産学官共同研究が約8割であり、大学等の研究費に充てられている現状にある。
 大学等の基盤的経費が削減される一方で、地域の知的創造拠点である大学の地域に果たす役割について期待が高まっている中、このような大学等の地域貢献力の強化について、更なる充実が必要である。

5.分野設定における現状と課題

 知的クラスター創成事業等では、地域が主体的にクラスター構想を策定し、国がその目的・これまでの実績・事業実施計画・研究開発計画等を審査し競争的に採択している。事業開始以降、これまでに取組まれてきた分野としては、ライフサイエンス分野が最も多く、特に都市エリア事業では、地域の代表的農畜産物・海産物から新たな機能性成分を抽出し新商品の開発を目指す取組が目立つ。
 このように、地域が主体的にテーマを設定する仕組みとしていることから、地域の実情に応じたものになる一方で、似かよった研究テーマを実施している地域が存在したり、国として重点的に取組むべき分野や技術開発との整合性が必ずしも図られないといった事態が起こり得る。今後は、環境・エネルギーなど、国を挙げて対応が必要な分野については、地域の主体性を尊重しつつ、国が率先して充実・強化を図っていく必要がある。
 また、大学等の持つ「知」を産業に活用することを目的としたものが多いが、近年では株式会社化しにくい農業や医療、福祉といった幅広い取組に研究成果の応用がなされている例も出つつある。今後は、産業応用に加え、市民サービス向上や社会システム改革といった観点からの取組を進めることも重要である。

(3)地域科学技術振興の枠組み

 平成20年5月に、総合科学技術会議において「科学技術による地域活性化戦略」が決定され、多様性を確保しつつ強い拠点をより強くするため、国として支援することが必要とされたことを踏まえ、文部科学省と経済産業省は、両省の各種の施策を有機的に組み合わせて総合的・集中的に実施することにより、人材育成・基礎研究から実用化・事業化までの活動を産学官が有機的に連携して推進する「産学官連携拠点」を両省共同で選定したところである。(「地域中核産学官連携拠点」10ヵ所、「グローバル産学官連携拠点」5ヵ所)。
 また、平成21年度補正予算においては、経済危機を克服しつつ新たな発展基盤を築くため、地域の特色を活かした産学官共同研究の推進と研究成果の地域企業への展開を図るための地域産学官共同研究拠点を各都道府県に整備するための予算を科学技術振興機構(JST)の施設整備費補助金として計上している。
 更に、平成21年4月には、全国のイノベーションを担う支援機関の相互交流と情報交換等を図る観点から、地域の主体的な取組として「全国イノベーション機関推進ネットワーク」が経済産業省及び文部科学省の支援を得て発足した。このネットワークでは、優秀なコーディネータの育成や、海外のクラスターとの窓口機能など、各地域が共通して抱える課題への対応が期待されている。

 これらの施策を通じて、文部科学省と経済産業省との連携が進められ、地域においては産学官関係者による議論が深められたところである。しかしながら、国レベルで見た場合には、農林水産省や厚生労働省等との連携はまだ十分ではなく、また文部科学省・経済産業省においても、クラスター施策以外の施策についても十分な連携が図られているとは言えず、今後は施策間の有機的連携を強化していくことが必要である。

(4)クラスター形成に関する国際的な動向

1.海外におけるクラスター施策の現状

 海外では1980年代から既にクラスター形成活動が始まっており、米国では産学連携に係る制度整備が行われたことを受けて、各州の主導によるクラスター形成が進められている。別添のとおり、欧州各国では米国の成功例を追随する形で国等が中心となり地域と連携することでクラスター形成を行っている。また近年では、中国・韓国を始めとするアジア各国においても、競争力強化のための施策としてクラスター施策に注目が集まっている。

2.海外機関との連携

 我が国におけるクラスター形成支援施策は、海外からも関心が高い。
 2007年には「日本におけるイタリア2007春」においてクラスターに関するセミナーが開催され、昨年12月には文部科学省・経済産業省・EUの共催による「日‐EUクラスターセミナー」が開催され、日本とEUのクラスター関係者が一堂に会し、国レベル或いは地域レベルでのクラスター間連携を見据えた交流が行われた。これを契機に、本年はEUから日本に対し、クラスター関連のワークショップに対する派遣の依頼がなされるなど、クラスター間連携が密接に行われつつある。
 また、文部科学省や経済産業省においては、日常的にも、欧州やアジアをはじめとする諸外国から日本のクラスター施策についての質問や意見交換が行われるなど、日本の地域科学技術振興施策に対する海外の関心は高く、評価されているところである。

 グローバル化の進展により、地域は国家を介さずに直接海外の地域と結びつきを持つようになっており、産業のみならず、優秀な頭脳の世界的な獲得競争が繰り広げられている中で、地域はその活動規模の大小に関わらず、世界的な競争の中でどのようなポジションを確保するかといった面での戦略が求められている。地域において世界レベルのクラスターを目指すためには、国際的な視野、戦略が不可欠であるが、単なる大学間連携や国際シンポジウムの開催等の活動に留まり、クラスターの競争力を強化するツールとして国際的な活動は未だ十分とは言えない。

 世界から認知され、世界中から人材・技術・企業・投資・情報などを惹きつけるとともに、大学やベンチャー企業が海外の有望なシーズを共同研究等により積極的に獲得し、それが再度地域の魅力を高めていくような真にグローバルなクラスターを形成し、我が国の競争力を強化するためには、国が重点的に実施すべき点を明確にし、一層戦略的に地域科学技術振興施策を進めていく必要がある。

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科学技術・学術政策局計画官付

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