資料3‐2 知識基盤社会を牽引する人材の育成と活躍の促進に向けて(案) おわりに

1. 本提言は、知識基盤社会を牽引する科学技術関係人材の育成と、社会の多様な場における活躍の促進という観点から幅広い審議を行い、具体的な施策を取りまとめたものである。

2. 昨今、子どもたちの理数科目に対する意欲・関心が低いことや早期離職する若者が感じている閉塞感などの諸問題がある中で、子どもたちが自らの将来に夢と希望をもてる社会を実現するためには、若者が社会で活躍できる場を可視化し、地道な努力が正当に評価され、報われるシステムを構築することが重要である。健全で活力ある社会は、均等な挑戦機会、公正な競争、公平な評価、そして成功者にふさわしい報酬や失敗者の再挑戦機会が与えられる社会である。
 先行きが不透明な激動の時代において、我が国が活力を持ち続け、明るい未来を作っていくためにも、時代を切り拓き、社会をリードする人材の育成が重要である。不況により個々人の能力が落ちるということはなく、経済不況が続いている今こそ、人材育成強化の好機である。

3. 科学技術は、世界共通のダイナミックな活動であり、子どもたちに夢と憧れを、若者に勇気と活力を、そして大人に誇りと自信を与えるものである。科学技術を通じて、グローバルな視点を持ちながら本来あるべき社会を実現し、国民全体が活力を取り戻し、未来に向けて明るく強い日本をつくるべきである。
 そのためには、教育界、産業界、国等が総がかりで、連携を深めることが不可欠である。

4. また、教育(人材育成)、研究(知的価値の創造)及びイノベーション(社会経済的価値の具現化)の有機的連携の視座のもと、大学等の教育研究の成果を評価する際には、社会の多様な場における輩出人材の活躍状況も対象とする必要がある。大学等は、優れた人材を輩出するという社会的使命をこれまで以上に認識し、そのための人事の在り方の見直しや、教育研究支援体制や事務体制の充実等を通じた教育研究環境の整備に努めるべきである。産業界についても、求める人材像を示し、人材育成の実践の場を幅広く提供するなどの協力が求められる。
 さらに、国には、高等教育への公財政支出の規模を、欧米主要国を上回る規模に増額するとともに、産学の連携強化を推進していく役割が期待される。

5. 本提言は、平成23年度から実施予定の第4期科学技術基本計画を見据えて行うものである。本委員会としては、本提言が我が国の科学技術政策に反映されるよう、引き続き第4期科学技術基本計画の策定に向けた動向を注視していくこととしたい。
 本提言を審議・検討する中で、社会と技術を俯瞰し、我が国を牽引できる優れた人材を生み出し育てるためには、産学の協働が不可欠であることを改めて強く認識するとともに、これこそ我が国が、世界をリードする科学技術水準を保持し、国民が豊かさを実感できる活力ある社会であり続けるための最善の方策と確信することができた。

6. 科学技術の成果を社会経済的価値に具現化するイノベーションの創造が、我が国の国際競争力を左右するものであり、その牽引者である科学技術関係人材の育成、確保は喫緊の課題であるにもかかわらず、少子化・労働力人口減少が急速に進んでいる中で、若者の理工系離れが起きていることの社会経済的問題の重要性が家庭や初等中等教育界も含めて広く一般に意識されているとは言えない状況にある。
 本委員会としては、本提言を契機として、社会の各方面において、知識基盤社会を牽引する科学技術関係人材の育成、確保と社会の多様な場での活躍促進に向け、真剣かつ具体的な議論が行われることを期待している。

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)