資料3‐2 知識基盤社会を牽引する人材の育成と活躍の促進に向けて(案) はじめに

1.知識基盤社会を牽引する人材の育成は、我が国の最重要課題の一つである。中でも、科学技術の振興は、社会と経済の発展の原動力であり、また、科学技術関係人材が社会の多様な場で活躍することは、世界的な経済状況の悪化や環境問題など昨今のグローバルな規模の諸問題の解決に向け、我が国がリーダーシップを発揮し、国際貢献を行っていくために極めて重要である。
 さらに、これまで世界をリードしてきた我が国の科学技術の水準を維持し、国民が豊かさを実感できる活力ある社会であり続けることは、優秀な人材なくして実現できない。
 このため、教育界、産業界、国等が総がかりで人材の育成、確保、活躍の促進に努めることが必要不可欠である。

2.我が国の科学技術関係人材の育成については、平成13年10月に科学技術・学術審議会に人材委員会が設置され、鋭意審議を行ってきた。
 まず、世界トップレベルの研究者の養成に係る諸問題を取り上げ、平成14年7月に、「世界トップレベルの研究者の養成を目指して‐科学技術・学術審議会人材委員会第一次提言‐」をとりまとめた。
 その後、研究者全体のレベルアップや、優れた「知」を社会と経済に活かしていく多様な人材の養成・確保の諸問題に焦点を当てて審議を行い、平成15年6月に、「国際競争力向上のための研究人材の養成・確保を目指して‐科学技術・学術審議会人材委員会第二次提言‐」をとりまとめた。
 さらに、平成16年7月には、科学技術と社会の関わりが深化・多様化してきており、安全・安心で質の高い生活環境の構築が求められるなど新たな社会的課題が顕在化しているという背景を踏まえ、「科学技術と社会という視点に立った人材養成を目指して‐科学技術・学術審議会人材委員会第三次提言‐」をとりまとめた。

3.少子化が急速に進んでいる我が国が国際競争を勝ち抜くためには、高度の専門性が求められる社会の多方面で活躍し得る高度な研究能力を有する博士号取得者について、知識基盤社会を支える人材として育成、確保することが喫緊の課題である。現在、博士号取得者が社会の各般から期待されていることは、大学や公的研究機関(以下「アカデミア」と表記。)で研究者として自立して研究活動を行うだけでなく、企業、行政及び教育機関も含めた社会の多様な場でより一層活躍することである。

4.平成19年6月に長期戦略指針「イノベーション25」が閣議決定され、イノベーションを絶え間なく創造する基盤である「人」への投資の充実と強化等が盛り込まれた。また、平成19年10月には文部科学省・経済産業省と経済団体等が協力して「産学人材育成パートナーシップ」を創設し、人材育成に関して産学双方の共通認識の醸成が図られているところである。さらに、社団法人日本経済団体連合会も平成19年3月の「イノベーション創出を担う理工系博士の育成と活用を目指して」や平成20年5月の「国際競争力強化に資する課題解決型イノベーションの推進に向けて」において、人材育成の強化を提言しており、今はまさに、社会全体を視野に入れた人材育成の議論を行うべき好機にあるといえる。

5.このような認識のもと、本委員会は、第3期科学技術基本計画における科学技術システム改革の一つとして位置付けられた、「人材の育成、確保、活躍の促進」に向けた取組状況について、大学等からヒアリング等を行った上で、科学技術関係人材に必要な能力という観点を念頭に置きながら、第4期の科学技術基本計画を見据えた具体的な施策について審議を行うこととした。

6.本委員会では、平成21年1月に策定された中間まとめで明らかにされた、知識基盤社会が求める人材像を踏まえ(図1、2、3)、社会の多様な場における博士号取得者の活躍促進や基礎科学力強化のための若手研究者の養成、人材育成に対する産学の意識改革、次代を担う多様な人材の育成等を論点として重点的に議論を行った。
 科学技術創造立国としての我が国の将来は、科学技術関係人材が社会全体で活躍していく人材立国の実現にかかっている。人材立国の実現は、社会の各般が協力し、国全体として総がかりで取り組まなければならないが、科学技術関係人材の多くが活躍する場である産業界との協力は、とりわけ重要である。
 中でも、産学が協働して育成すべき博士号取得者は、社会と技術を俯瞰し、社会の多様な場で優れた牽引者となる人材であり、その活躍を促進していく必要がある。このような理念のもと、本委員会は3月以降に審議された今後講ずべき具体的施策について提言するとともに、第4期科学技術基本計画の検討に反映されることを期待するものである。

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