3.第3期科学技術基本計画で望まれる政策 (5)グローバルな視点に基づいた施策の展開

1.戦略的国際協調における科学技術の活用

 アジアの急成長などの国際社会が大きく変化する時代において、わが国は国際社会との共生を図る中で、国際社会におけるわが国のプレゼンスを高め、広い意味でのわが国の安全保障の確保を図っていくことが求められている。
 科学技術に関する政策面でも、わが国の国際社会における位置を認識しつつ、特に、アジア諸国と協調関係を構築し、世界におけるアジアのリーダーシップの発揮に主導的役割を果たしていくべきである。
 例えば、地球規模で対応が迫られているエネルギーや環境分野においては、日本国内のみの政策の実施では効果が期待できず、とりわけアジア諸国と積極的に連携を図ることが必要である。エネルギー・環境関連技術分野で、積極的に貢献・協力することで、諸外国との友好な関係構築にも寄与することが期待される。
 さらには、食料の安定供給、新感染症などに関する技術を含む広義の安全・安心分野、ソフトウェア開発分野などでの国際協調や国際貢献も重要である。

2.総合科学技術会議におけるベンチマーク(比較分析)機能の強化

 科学技術政策の立案、遂行、評価にあたっては、ベンチマーク、特に、海外とのベンチマークが重要である。例えば、米国では、科学技術分野において大きな政策を打ち出す際には、世界各国へ調査団を派遣して調査をしているが、第2期基本計画の下では、十分なベンチマークがなされた上で各種の施策が展開されたとは言いがたい。
 今後は、特に、経済・社会への貢献という観点から、関係府省とも連携しながら、政策に関するベンチマークを行ない、定量的な分析を経た上で実効ある施策へと結び付けられるようにすべきである。その際、総合科学技術会議による海外調査の実施や、事務局における国際的な科学技術動向や政策の分析機能の大幅な強化を行なうことが重要である。さらには、現在、ベンチマーク機能を担う様々な政府組織が存在するが、総合科学技術会議が全政府ベースの調査・分析機能を果たすとの視点から、政府全体としてのベンチマークの実施システムのあり方について検討すべきである。
 なお、海外調査の実施にあたっては、産学による共通認識を醸成する意味から、民間企業と大学の研究者がチームを組んで調査を進めることが望まれる。

3.国際的な知的財産権の確保、国際標準化との連携

 研究開発を進めるにあたっては、国際市場を視野に入れた知的財産権の確保と国際標準化活動の展開が重要である。
 特許制度は、国ごとに整備されてきた経緯から、現在でも属地主義が大原則とされているが、一方で特許制度の活用はグローバルに行なわれている。日米欧3極特許庁間で、先行技術調査結果の相互利用などを進めているが、これをさらに進め、特許明細書の記載様式の統一、さらには、審査の統一といったステップを踏んで世界特許への取り組みを加速すべきである。
 国際標準化に関しては、産業化、特に、グローバル市場を想定した産業化を目指した国の研究開発プロジェクトにおいては、その研究開発の成果の普及に際して国際標準化が必要か否かを必ず検討し、研究開発の開始の時点から国際標準化に関する戦略を立てて取り組むことや国際標準化活動の支援に資する予算措置を講ずることが期待されるところである。
 また、国際標準化機関における国際標準の決定は一国一票で投票されることから、国数が多い欧州が有利になるケースが指摘されてきた。わが国としては、アジアとの連携活動の充実に努め、アジア諸国の市場の実情を十分に反映した国際標準作りが行なわれるような環境を整備すべきである。
 さらには、国や産業の持続的発展の基盤となる重要技術に関しては、総合的政策推進の一環として、国際標準化への戦略的取り組みが求められる。

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