3.第3期科学技術基本計画で望まれる政策 (4)大学・産業界連携による世界に通用する人材の育成

1.世界に通用する人材の育成

 わが国が将来において科学技術創造立国を目指す上で、人材の育成が極めて重要かつ緊急な課題である。特に、人間力があって、基礎・基盤となる土台の学力を有するとともに、専門分野で秀でた技術力を持ち、結果として、グローバルな競争の中で力を発揮できる人材が求められている。社会に出てからの教育では手遅れであり、大学などの高等教育機関の改革はもとより、初等中等教育段階での対策などを含めて、世界に通用する人材の育成に向けた施策が重要である。
 特に、今後の新領域を切り開くマネジメント能力も備えたドクタークラスの人材育成が重要である。わが国の博士課程の学生の能力は海外に比して低い、との指摘もあり、企業・大学双方のミスマッチの解消に向けた協働を含めて、システムの見直しが求められる。世界のトップレベルとネットワークの構築ができる人材を輩出していくためには、前述したように、大学を核とする「先端技術融合型COE」の新設により、高度な研究開発を通じた人材育成が期待される。このようなCOEが成長すれば、産業界への技術の流れ、人材、特に博士課程人材の流れもより加速されよう。大学での人材育成は、やはり教授・助教授の影響が大きい。特に新しいCOEについては、有能な一流の人材を世界から集めることが鍵である。

2.経済や社会にとって役立つ創造的人材の育成

 経済や社会にとって役立つ創造的な人材の育成に向けて、産学の協働を一層推進する必要があり、インターンシップの制度化や単位取得面での包括的な連携、大学と企業との人材交流の推進、MOT教育の推進、アントレプレナーシップ教育の実施、実践的で多様な教育プログラムの導入などカリキュラム改革が急務である。
 そのためには、産学連携による高等専門教育の強化の観点から、インターンシップ制度の充実が必要である。大学院生など一定の専門性を有する学生を対象に、大学と企業とが一体となって、将来、企業活動等で中核的な役割を果たす人材を育成することが重要である。その際、企業と大学とが契約を締結し、従来のように短期間での就業体験にとどまらず、一定期間、産業界で実践的トレーニングを実施できるようにするのが望ましい。
 また、大学教員、特に若手教員が、国内外の企業での就業や世界トップレベルのCOEを体験し、世界の動向や潮流を肌で感じることが重要であり、サバティカル制度を含めて、具体的な仕組み作りが求められる。さらには、海外の優秀な研究者がわが国において活躍できるような環境の整備にも力を入れるべきである。
 一方、学問分野によっては先端の研究成果は期待されなくとも、わが国の技術力を維持する上で人材育成が重要である分野もあり、研究だけでなく実践的な教育についても適切な評価を受けるシステムが必要である。特に、大学において、「教育」と「研究」を区分し、費やした資源を区分するエフォート管理を行ない、教育活動が適正に評価される仕組みの整備が必要である。

3.重要分野における人材育成策の推進

 現在、情報通信分野、とりわけソフトウェアに関する人材のレベルは、欧米諸国に比して非常に低く、産業界として人材不足に陥っている。高度な人材の育成に向けて、例えば情報通信、バイオ、ナノテク分野などの先端産業分野や産業の基盤となる分野において産業界が必要とする人材について、高度技術者育成プログラムの確立などの育成策を講ずるべきである。その際、研究者、技術者、技能者、研究管理者、コーディネーターなど必要とされる人材の種類に応じた対応、異分野の技術を習得した融合型人材の育成、女性の活用が重要である。
 国や産業の持続的発展の基盤となる重要技術に関する政策の総合的推進の中での人材育成の位置付けも重要である。

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