3.第3期科学技術基本計画で望まれる政策 (3)研究開発投資の増額と効率的・効果的な政策の推進

1.研究開発投資の増額

 現行計画では、欧米主要国の動向を意識し、科学技術振興の努力を継続する観点から、対GDP比率で少なくとも欧米主要国の水準を確保することとされ、対GDP比1%、GDPの名目成長率3.5%を前提とした上で、総額約24兆円の政府研究開発投資を行なう必要があるとされた。現在、科学技術関係経費の対GDP比率は約0.8%であり、わが国が直面する課題を解決し、世界に貢献していくには、科学技術こそが鍵を握るとの認識の下、引き続き厳しい財政状況ではあるものの、次期計画では、諸外国を上回る水準を目指して、現行水準以上に政府投資額を引き上げていく必要がある。現行計画の前提とされた対GDP比率の1%を実現するとともに、目標とする具体的な総額の規模を明示すべきである。
 その際、GDP比算定の対象となった研究開発投資の定義や範囲について国際比較を行ない、より精緻なベンチマークを行なうことも必要である。

2.総合科学技術会議の予算配分権限の発揮

 科学技術予算の府省配分比率はほとんど変わっておらず、時代の変化に応じて科学技術投資の成果を国民に還元していく観点から、柔軟な対応が必要である。
 そのためには、各府省において、科学技術の重要性をより一層認識し、施策の充実に努めるとともに、科学技術振興調整費の大幅増加と積極的活用、あるいは、総合科学技術会議が十分な指導性を発揮する特別枠の設置により、例えば千億円規模で、府省の縦割りを排した予算配分が行なわれるようにすべきである。また、総合科学技術会議のSABC評価については、その結果を各省の予算に十分に反映させることはもとより、特に重要と思われるプロジェクトについては、総合科学技術会議において予算上のインセンティブを与えていくべきである。
 他方、わが国の研究開発投資の約7割は民間企業が負担していることからも、民間企業が、わが国の科学技術を担い、支え、さらなる発展を遂げる上で重要な位置を占めている。したがって、今後の科学技術政策を立案、実行する上では、産業界の意見がより反映されるような仕組みを構築する必要がある。総合科学技術会議有識者議員の産業界枠を拡大することを含め、総合科学技術会議をはじめとする関係審議会等の場に民間人が積極的に参加し、政策立案やその実行にあたるようにすべきである。

3.透明性の確保と評価結果の予算への反映

 運営費交付金を含めて、資金や人材の配分状況が必ずしも正確に把握されていない。また、特定の個人や特定の組織に潤沢な予算が投入されているとの批判もある。資源の効率的な配分を実現する観点から、その状況を明らかにするとともに、あるべき方向を検討すべきである。
 透明性の確保とともに、達成目標とスケジュールの設定、外国とのベンチマークを含め適切な評価と、期間途中での見直し、あるいは上乗せなど評価結果の予算への反映が必要である。
 その際、テーマの内容が科学なのか、技術なのかを明示した上で、それに相当した評価を実施、公表することが望まれる。
 特に、経済・社会への貢献を明確に意識したプロジェクトについては、事前評価、中間評価、事後評価にあたって、コストパフォーマンスを含む研究開発や事業開発のシナリオをベースにした評価など、産業界の視点が十分に入るようにすべきである。
 また、政府全体としての重畳的な評価システムのあり方も検討すべきである。

4.事務処理のさらなる簡素化・合理化

 透明性の確保と併せて、政府の研究開発資金の利便性向上を図る必要がある。独立行政法人化によって、複数年度契約が可能となるなど、一定の進展は見られるものの、物品購入の際に多くの帳票が必要、詳細な研究日誌が必要など、詳細なルールが定められているため、事務負担が大きく、その分研究に費やす時間が減ってしまうとの意見もある。また、清算払いであるため、体力のない中小企業では活用しにくいとの指摘もある。帳票や日誌の簡素化、中小企業への柔軟な対応など、事務処理のさらなる簡素化・合理化が必要である。

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