以下に、代表的な意見の要約を例示する。
○ 国家戦略として進めるべき科学は、第一義に技術として融合・統合化され体系化される知識の領域であり、国家戦略として産業戦略が明確であれば、重点化すべき科学領域は明らかになる。一方、ソフトパワーにより日本の国力を高揚するという視点で国家戦略としてのビジョンを明確にすれば、重点化すべき科学領域も明確になる。まず、論理的にビジョンと戦略、科学と技術の関係を整理して基本的な骨格を作り、その上に必要に応じて肉付けしていくというプロセスが必要。
○ 今後の科学技術は、世界の中の日本という立場に立って考えるべき。20~30年前までは、日本の目標(立場)がよくわからなかった。変革のチャンスが到来しているように思うので、このチャンスを逃がすと日本は二流国へ転落して行く。
○ 今後各省庁が、科学技術に対する方向性について、明らかにする必要がある。各分野(各省庁の)で育った科学技術を、どのように守りかつ生かしていくかが問題。
○ ケネディー大統領が、月への到達を予告したように、我が国も、国民が熱狂的に支持し、参加したくなるような具体的な科学技術目標を、政府によって宣言して欲しい。
○ 文部科学省の科学技術振興策においては、経済的に成り立ちにくいもの、民間は見向きもしないテーマ、人間や自然の根源にかかわるテーマに取り組むべきではないか。
○ 科学技術行政におけるテリトリー意識が省内および省庁間で残っているため、軋轢や無駄が生じているように感じる。政府での体制固めと効率化が必須である。
○ 次期科学技術基本計画の内容を策定するにあたって、既計画のレビューをすることは当然必要である。ひとつの視点は、科学技術基本計画自体の実行状況、成果のレビューである。もうひとつの視点は、科学技術に対して要請する社会・経済的な変化から見たレビューである。
○ 国の根幹の理念の策定に参加できる仕組みを作られたことは非常に評価できる。
○ 国民の科学技術に対する認識や関心度は極めて低い。世論がないところで科学技術施策をうたっても世にあまり理解されずチェックも期待できない。子供や若者の科学離れが日本の科学技術振興にとって大きなネックになる可能性がある。
○ 弱年層の理科離れを防止し、日本の科学技術の高度化を更に進めるには教育改革が不可欠である。科学技術教育の基本的理念(ビジョン)を提示して方向付けを行うことが今後ますます必要。
○ せっかくのブレーンが、ポスドクなどの名の下にフリーター化している現状に対し、計画性をもって対処すべき。
○ 国内学術誌とデータベース化の強化。海外データベースはいつかアクセスが制限されるかもしれない。学術論文の国内データベース化に力を注ぐべき。また、国内学術誌のグレードを高める施策も必要。多くの質の高い学術誌がなければ、いくら良い研究成果が出たとしても、国としては二流国である。
○ 科学技術予算や評価について、すべてを一元的にするのではなく、評価のスタンダードを明確にした異なった視点から評価する複数の評価システムが必要。
○ 政府が巨額な予算で研究者・研究機関を誘導するのは、緊急な技術開発には必要ではあるが、研究方向を画一化し、個性的な将来のシーズの芽を摘んでしまう弊害を伴う。
科学技術・学術政策局計画官付