以下に1.肯定的意見と2.問題提起などについて各々代表的な意見の要約を例示する。
○ 基本計画そのものはよく考えられており、良い計画であると評価できる。計画通り遂行できれば、かなりの成果が期待される。
○ 研究基盤の整備が進行し、かなりの数の研究拠点の研究施設、設備、研究内容を国際的に見ても一流の水準に引き上げることに成功した。
○ 基本的な骨格は大変共感できる。また、各具体的な項目への展開も良く考えられている。
○ 安心・安全で質の高い生活のできる国-知による豊かな社会の創成-を目指すとの考えに大賛成である。それには科学技術が人間性を啓発し、豊穣な文化・文明を開発し、多様な生命が持続的に育まれ進化を遂げていけるようなゆたかな地球環境の形成に資するものとなることが肝要であり、そのような環境形成への努力は、わが国の担いうる国際貢献上の大事な課題となるものと考えられる。
○ 国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料)は、21世紀に対応した非常に評価出来る計画と考えられる。
○ 第2期科学技術基本計画においては、今日我が国で求められている科学技術のあるべきありかたについて、かなりよく把握されていると考える。研究現場におけるシステムの改革についてかなりよくまとめられており、実際競争的環境の醸成や、大学の法人化等、実際の研究現場においても変革が進められている。
○ 基本計画を立てるのは重要であるが、5年間の期間を完了した時点での基本計画の評価の方が重要と思われる。その評価に基づき次期5年間の基本計画が具体的に策定されるべきである。
その観点から、基本計画には5年間に達成すべき具体的数値目標が詳細に示される必要がある。
○ 目的にかかげたものがいかに成果として反映されたかの評価、あるいは客観的なインパクトがきちっともたらされたか反映されるべきであった。成果が基準となってさらにのばすべきかどうかを含めて次期の計画に反映させるべきである。
○ 研究投資に対する成果評価をもっと厳密にやるべきである。
○ バイオテクノロジー(BT)戦略、インフォメーションテクノロジー(IT)戦略、ナノテクノロジー(NT)の強化に偏った感じがしており、研究費の重複、研究者の安易な研究傾向が見られるのではないか。日本の強い製造、ものづくりの地味な部分の支援をすることも大切かと思われる。
○ 第2期科学技術基本計画には、生活を重視しすぎ、産業界特に鉄鋼、自動車など日本の社会を支える産業への重視が不足ではないか。
○ 重点的、効率的な研究費配分がうたわれているが、現状は行き過ぎである。一部の研究者が多額の研究費を得、若手研究者を集めて研究をしているのが実態であるが、これでは研究の裾野が広がらないし、本当に独創的な研究というのはなかなか出てこないのではないか。
○ あまりに応用面に重点が置かれた基本計画となっている。重点分野に置かれた分野では、過剰なほどの資金が振り向けられたが、その成果はコストに見合っているのか厳しい評価が必要。また、重要項目と考える基礎科学や基礎学術に関しても記述があるが、曖昧で具体性がない。
○ 実際に使える技術が強調されるあまり、横断的で基盤的な研究の長期的、基礎的な取組みが評価されない。急激に変化が生じているというわけではないが、基盤技術を維持・発展させないと横断的基礎分野が次第に腐り、長期的な研究も、それを担う研究者も育たないことになる。
○ 科学技術基本計画は、わが国の科学技術創造立国を目指すところに根幹があり、応用まで繋がるような成果に評価の重点があるように見受けられる。辛抱強く新規性を追求する基礎研究には手を出しにくい状況が生じており、独創性はなかなか出にくい。
○ 応用的な側面の強い研究ばかりでなく、すべての基盤になるような研究課題の設定、推進が大事だと思う。裾野を広げることがトップを引き上げる結果になることは明らかなので、重点領域ばかりでなく、多様な自由な発想の研究が生まれる土壌を大切にすべきであると思う。
○ 次世代の科学技術を支える若い人達が魅力を持って、かつ興味をもてる教育が重要である。
魅力的な事項があっても、それを適切に紹介できるような教育者がいなければ子供達に興味を沸かせることは出来ない。
○ 人材の育成は将来を展望すると最も大切な方向性だが、社会全体的な視野から実現をはからなければならない。
また、有能な女性研究者を活かす方策も至急考えなければいけないだろう。
○ 第1期計画の策定・実行にともない、大学等に研究活動が活発になったと見受けられるが、人材育成面の取組みが一層弱体になった様に思える。学術研究の振興と人材育成面をもっと重視し、質の高い教育と高度な人材育成を目指す科学技術システムを是非具体化して欲しい。
○ 重点研究テーマが他の国と全く同じであり、そのキーワードに研究費も偏り過ぎているのではないか。もっと、日本ならではの研究領域を考えて、世界に貢献できる、世界をリードできることを考えていくべき。
○ 根本的な過ちがある。それは質の問題がないがしろにされていること。最終的には小粒でもきらっと光る独創性と発展性のある成果を生み出さなければいけない。そのためには、個々の研究者が独自性と独立性を備えた研究者でなければならない。
○ 我が国の科学技術の振興は、いかに独創的な研究をひろいあげることができるのかにかかっている。研究助成に応募してきた人の審査結果を公表するのではなく、実は審査をした側の見識を公表することのほうが大切。
○ 米国の決定に従っているようで、日本の独自性がだされていない。
○ 現行基本計画は、万人が受け入れやすい「教科書」的内容になっているが、わくわくする部分が全くないことが問題。理科離れ・科学離れが進むのはわくわくするテーマや研究よりも、発表論文数が多い「秀才型研究」ばかりが評価される構造にある。米国は大統領主導で国民がわくわくできるフロンティアスピリットに溢れた夢のある目標を国民に示すが、我が国はそれがない。
○ 現行基本計画は、一般国民に理解しにくい内容ではないか。宇宙開発など国民にわかりやすい事業を核にして、計画をたてると、もっとわかりやすく国全体の元気がでるのではないか。
○ 社会一般の人達にとって、21世紀を乗り切るための科学技術の戦略的な取り組み、段階的な計画実施が進行しているという実感を持ち得ない。基本計画の展開が分かり易く公開されるような仕組みを望む。
科学技術・学術政策局計画官付