3.科学技術関係人材の養成・確保

1.流動性の向上

(流動化について)

  1. 米国は早いうちにチャンスを与えて、成果の出ない研究者は除くシステムがある。また、社会的にも他の分野や関連分野への転職機会も多い。これらの条件のため、日本に比べ流動性が高い。
  2. 人事における流動性の低さが日本の競争力低下の根本的な原因。
  3. 研究機関、教授、助教授だけでなく、民間企業を含めた社会全体が一緒になって、中途採用を普通にするくらいの取組を実行しないと流動化は進まない。
  4. ポスト(特に上のポスト)の絶対数の不足は流動性の阻害要因。
  5. 流動性を阻害しているのは、退職金の問題や年金のポータビリティの問題。(複数の指摘あり)
    また、銀行でお金を借りる際に勤続年数を記入する欄があるなど社会的な信用の問題もある。

(機関間の流動性)

  1. 日本の流動化が低いのは、学生の段階で、学部から大学院に上がるときに、大学を変えないのが原因。同じ大学に就職するといった体質が、閉鎖的な研究室体質を作り出す。
  2. インブリーディングは絶対に良くない。流動性が失われると研究活動の硬直化、質の低下を招く。研究者にとっては様々な研究環境を経験することが大切。
  3. 地方大学の研究環境を東大並みにしなければ、人材の流動化は進みにくく、東大のインブリーディングは減らない。
  4. 京大、東大が率先してインブリーディングを減らすように取り組むべき。(複数の指摘あり)
  5. 各大学の状態を公開させるだけでも十分意識改革の効果がある。(複数の指摘あり)
  6. 大学間が協定を結んで、大学院学生は他大学出身者からとる、あるいは、自大学出身者の率をたとえば30%以下にするといったことができれば、日本の大学は地殻変動をもって変わるであろう。学生が流動化すれば教員のインブリーディングも下がる。
  7. 公募制だけでは、例えば公募期間を非常に短くする等の形式的な公募もあるので、昇格する際に外に出るのを義務付ける方が有効。
  8. 優秀な研究者が良い環境に戻ってくるのは当然であり、オックスフォード、ハーバード大学など外国の主要大学でも自校出身教授は多いはず。

(任期制の導入)

  1. 任期付任用は増加しているが、まだまだ限られた所でしか行われていない。
  2. 任期制について、助教授、教授にも導入していくことが必要。(複数の指摘あり)
  3. 今は過渡的な時期であり、任期付きや異動により不利益を被る人がいても仕方がない。
  4. 1度先生の間違った登用があると20~30年の影響がある。任期制により何年間かに一度見直すことがあってよい。
  5. 若い世代から任期制の導入が進み、不公平感を持っているのではないかと心配。
  6. 導入するなら「任期付」は「任期なし」より給料を上げることが必要。
  7. 教授、助教授の任期制への移行は、学部によって異なる。
  8. 任期制は、全大学が一斉にやっていかなければ意味がない。(多数の指摘あり)
  9. 大学の教員の任期制は一長一短がある。基本は、助教授・院生レベルの知的ポテンシャルの高い研究者に良いチャンスを与えることが大事。
  10. 人文社会についても、若手については任期付任用を採用し、研究資金を競争的資金から獲得する方向も利用した方がよい。
  11. 理系と違って、人文社会系は3~5年で多くの論文を執筆する等の研究成果が挙げづらいため、任期付任用が困難な面がある。

(公募と適正な採用選考)

  1. 公募制の導入は実態から見て教員の流動性を高める効果が高い。
  2. 教員採用は、基準がオープンにされた公募をし、採用の理由を明確にして説明できるようにすることが重要。(複数の指摘あり)
  3. 公募と審査の情報公開を推進すれば、流動性はかなり高まるのではないか。教授ポストは全て全国公募とするべき。
  4. 九大のように評価委員会に外部の人材を登用するべき。
  5. 大学教授にもっと研究費等の裁量を与え、魅力あるポストにした上で、誰もがそのポストを狙えるようなオープンな人事制度にすべき。

(テニュア制)

  1. 高い水準の大学にするためにはテニュア制導入が必要。(複数の指摘あり)
  2. テニュア制の導入にあたっては、テニュアを獲得したら教授ポストへ、獲得できなければ外へ出るといったUP or OUTの原則を明確にし、短期間雇用の繰り返しとならないようにすべき。
  3. 早期に完全な身分保障をされない方が研究教育への動機づけを保つという意味で、テニュア制は基本的に支持できる。
  4. 今のように助手でテニュアにするのは早すぎる。Ph.D.取得後5~8年間は、教育者・研究者としてレベルアップし自分の商品価値を高めるチャンスを与え、その上でテニュアを審査し見極めるべき。
  5. 任期制をどうするかの議論の前に、まずテニュアを公正に審査するなどのシステムを確立する必要がある。

2.若手研究者の自立性の向上

  1. 助手に代わる、より独立性の高い若手研究者用のポストを作るべき。マネージメント能力を兼ね備えたPI(principal investigator)となれる研究者の養成のためにもこのようなポストは必須。(複数の指摘あり)
  2. 若手の自立には競争的資金が役立っており、一層増やすべき。
  3. 独創的テーマなら若手研究者にも資金やポストを与える制度を拡充すべき。(複数の指摘あり)
  4. 教育の義務の免除や独立した研究室を設けたりして、研究者として独立させた環境を作ることが極めて重要。
  5. 若い研究者を掘り起こすためには、欧米のファンディング・エイジェンシーのように、日本でも研究経験の豊富な目利き役を計画的に拡充する必要がある。
  6. ここ10年で雑用が増え、事務量増加し、事務ポストの削減とあいまって若手が使われる傾向にある。(複数の指摘あり)

3.若手研究者の養成・確保

  1. 日本の若手研究者はプロ意識が足りず、与えられたものを吸収するだけで「自分で考える力」がない。
  2. 国際プロジェクトへの参加を促進する等により、狭い研究分野に閉じこもらないような研究環境づくりをすることも有効。
  3. 教授が弟子に自分と同じ分野の研究をさせるのではなく、弟子が新しい分野を切り拓いていけるような教育システムに改めるべき。
  4. 優秀な人材がドクターコースに進むように、大学院ドクターには授業料を免除し、生活費として奨学金を貸与ではなく給付するようにすべき。

4.ポストドクター

  1. ポスドクを終えた後の行く先がはっきりしないことが問題。
  2. ポスドクが余っているのは、上のポストの人間が動かないから。
  3. ポスドクにも、競争的資金を取ってきたらポストを与え、研究スペース等でも優遇するべき。給与は自分が取ってきた競争的資金から出すようにすべき。
  4. 大学は後継者を育成するのではなく、タイムリーに必要な人材を育てていくべき。また溢れたポスドクが今後どのようなキャリアパスを歩んで行くのか、予測、分析を行いながら、対策を講ずる必要がある。
  5. ポスドクでも助手レベルの実績があれば、競争的資金への申請を認め、独自の研究費を与えたり、技官の雇用を可能にしたりして、自立した研究が行える環境を提供するべき。
  6. 大学院ドクター卒を産業界でもっと使って欲しい。
  7. 国研など公的研究機関は、30~40歳のポスドクを中途採用枠ではなく新卒枠として扱い、採用を増やすべき。
  8. 行き先がわかるようなドクターの養成も必要。博士のテーマを企業が提示すればポストポスドク問題は起きない。
  9. ポスドクは、スーパーテクニシャンとしてポスドク後に大学で働いてよいのでは。
  10. 早い段階から、研究以外にも現実性のある様々なキャリアパスがあることを見せる必要がある。科学ジャーナリストは一つの候補。
  11. ポスドク等にプロジェクトの責任を一部委譲し、研究企画やチーム編成、産業界との調整などを担当させ、研究リーダーとして極めて重要な「コミュニケーション能力」を鍛えることも必要。
  12. ポスドクが余っているのは、研究テーマが企業のニーズとマッチしていないため。
  13. ポスドクは、大学教員を目指した育成だけでなく、企業で即戦力となる教育・研修が必要。
  14. ポスドクの国際化を進めマーケットを広げることにより、質の向上と数量問題を解決できる。

5.多様な人材の活躍

(女性)

  1. 女性の採用についての数値的ガイドライン策定は望ましいが、ある程度スパンをおいた中期的な目標がよい。
  2. 社会変革の枠組みの中で対処し、各種指標でモニタリングしつつ、強力な誘導政策をとるべき。
  3. 男女共同参画の推進は、各府省一体となって取り組むべき施策。
  4. 意識改革のためには数値目標はあった方がいい。(複数の指摘あり)
  5. 「同等なら女性を採用する」「女性を教授、助教授に採用すれば助成費を出す」ぐらいの女性採用枠措置は必要。(複数の指摘あり)
  6. 対象の世代における各学科の学生男女比率に合わせて数値目標を設定するのが合理的。
  7. 学問分野ごとに、現世代が学生の頃の女性比率を数値目標とすることが考えられる。
  8. 政策として一応の目標を掲げ、状況を調査するだけでも意識改革に効果があり能力に応じての採用が可能になる。(複数の指摘あり)
  9. 女性支援の具体策として、学内の保育施設の充実、育児休暇や育児期間中の勤務時間短縮中に非常勤人員を採用できる制度などがある。
  10. 単に、「弱い立場にある女性を支援する」という視点だけで書くべきではない。女性活用の基本理念は、労働力減少の補填でなく、労働市場における多様性の実現という方向であるべき。
  11. 機関評価の際に、女性研究者の採用・登用に対する公正で積極的な仕組みを構築しているかを評価項目とすることも一案。
  12. 女性を評価してくれる人を多様化させることが重要。
  13. 小中学校での教育から女子生徒をエンカレッジすることが重要。
  14. 女性も男性と同じ「人材」であるという視点に立ち、女性も戦力として使えるように男性同様に戦力化に取組むべき。
  15. 数値目標による制裁はとるべきでない。採用の強制は、有利でないポストへの配置や採用後の低い評価に結びつく。
  16. 女性採用枠などのガイドラインは、逆効果になることが多いと思う。

(高齢者)

  1. 定年制そのものについては、予算の制限があり、変えるのは困難。プロジェクト研究等の外部資金を導入した人が定年に至っても大学に在籍できるという、個人単位の特例は可能。
  2. リタイアした高齢研究者は、基礎科学で培った広い視野を持っており、学部レベルの教育者として格好。
  3. たとえ定年に達しても各人で研究資金を獲得できれば、教授として在籍できるようにすべき。
  4. あと数年で定年を迎えるような、巧みの技を持つ人材をテクニシャン(研究支援者)や教育者として大学で登用すべき。
  5. 50歳以上のシニア研究者は、研究よりも若手育成に専念すべき。

(外国人)

  1. 外国人研究者を招き、育成して、実績をつくらせ、世界にアピールすれば、世界から優秀な外国から人材が集まる。そのため、大学の研究機関は開かれた研究教育環境を作らなければならない。
  2. 研究するための場所の文化、社会、生活環境についてもよほど配慮しないと、研究者は定着しない。(複数の指摘あり)
  3. 博士や修士の院生の段階から推薦で採用する枠があってよい。
  4. 優秀な外国人を呼ぶためには、奨学金日本での就職先とが重要。言葉(日本語)の問題もある。(同様の指摘複数あり)
  5. もっと採用を増やし、英語講義数を増やすべき。
  6. 外国人の国別の統計があってよいのでは。
  7. 海外向けに受け入れ態勢の整備状況(どんな制度があるか等)に関する情報をもっと積極的に発信できると良い。
  8. 年金が掛け捨てになるという不利益があるため、二国間協定により不利益を解消する必要がある。

6.多様なキャリアパスの開拓

  1. 技術者の地位向上を(任期制導入と)並行して行い、ドロップアウトした研究者のキャリアパスにすることも考えて欲しい。
  2. PO、知財人材、テクニカルスタッフなど専門職の処遇がはっきりしていない。任期付きではあるが高い給料で雇ったり、歩合給にするなど、優れた専門職は処遇することが必要。
  3. 研究とマネージメント、研究とガバナンスの融合領域の人材が必要。
  4. 学位を取ったら大学に教員として残るのが普通という潜在的な観念を壊さないといけない。
  5. 研究費の使い方に関する研究といった科学技術政策を研究する人材が不足している。
  6. 知財高裁では、技術のわかる人材が判事になることが必要。

7.人材養成面における産学官連携

  1. 企業から大学、大学から企業と若い時に1~2年間くらいの人的交流システムを確立する必要がある。学部のインターンシップではなく、大学院のインターンシップをより充実すべき。
  2. 企業とドクターのマッチングの機会が少なく、共同研究などでこれを増やせば効果的ではないか。(複数の指摘あり)
  3. 博士号取得者の企業採用を進めるには、任期をつけて雇用し試用期間とするような形態が必要では。費用は会社で引き受けてもよいし、送り出す側とで折半してもよい。また、経団連に産業界の受け入れの窓口をしてもらえばよいのではないか。
  4. 行政機関等でも、博士号取得者の採用を増やすべき。

8.産学官連携を推進する人材

  1. 特許を売るための営業能力を持った人材の養成が必要。
  2. 弁理士の能力とバイオなどの専門知識を両方もった人材の育成が必要。
  3. 経験のある者からOn the Jobでトレーニングされないと人材は育たない。
  4. サイエンス+法律、知的財産、英語のできる人材が必要。研究に向かないという人でも、大学院などでダブルメジャーをとって、そのような場で活躍するようなキャリアパスも必要。

9.初等中等教育段階からの人材養成

  1. 小学校、中学校は物事に興味を持つ時期であり、この時期に研究者がキラキラ光って見えるかどうかが、科学やものづくりの人的基盤形成に極めて重要。米国においては、10年程前から、小中学生が1日中研究者などの社会人について回って、何をするか肌で感じて学ぶ「job shadowing」が行われており、日本においても、このような取組みが必要ではないか。
  2. 学校の先生が子供たちに適切なティーチングメソッドにより楽しく科学を教えることが重要。教員の養成過程においてティーチングメソッドを教えていないことが問題。
  3. 理科教育の重要性が盛り込まれる必要がある。
  4. 5歳ぐらいに受けた外部からの影響は将来の方向性に大きく影響する。科学技術に関心をもたせるようなすりこみが必要。
  5. 大学に進む際にどの理科系分野に進んでいいか分からない高校生が多く、研究の世界との接点が必要。

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