2.科学技術の戦略的重点化

1.基礎研究の推進

(基礎研究の重要性)

  1. 基礎研究と応用研究が科学技術振興の両輪であることを強調すべき。
  2. 純粋基礎研究は大切。応用研究も終局的には純粋基礎研究に行き着く。
  3. (ノーベル賞は)70年代以来研究費をつぎ込んできた成果としてその頃書かれた論文が貰うのだから、今から基礎研究に資金を投入しないと30年後が心配になる。
  4. 純粋基礎科学や未成熟な分野は、長期的視野(10~20年)が必要であり、重点分野とは別に、一定の研究費枠を確保する必要がある。
  5. 文部科学省はもっと大学での基礎研究を充実させるべき。(複数意見あり)
  6. 産業に結びつかない重要な研究もある。今回のH2A打上げ失敗を見ても基礎科学pure scienceの不足を感じる。
  7. 無駄があってもいいので基礎研究にしっかり取り組むことが必要。重要なサイエンスは少し本流から外れた研究から生まれるもの。
  8. 『路傍の石』のような現在陽の目をみていないものの今後発展しうる研究を見つけていく仕組みを考えることが必要。

(基礎研究推進における留意点)

  1. 現在は目先の研究に重きが置かれすぎている。研究は基本的に「俯瞰型研究」とし、その審議・評価を行う機関として日本学術会議を活用するべき。
  2. 分野によって大分違うが、(現状で)基礎研究は冷遇されていない。
  3. 外部資金の獲得→その間接経費の充当による基礎的萌芽研究の推進というサイクルを効率よく実施していくことが大切。
  4. 外部資金で稼げない分野でも、大学にとって目玉の分野には、大学がポリシーを持って間接経費や基盤的経費から予算を配分すべき。
  5. 基礎研究についても重点領域を設定することがあってよい。
  6. 基礎研究は重点化や評価等から切り離して不可侵なものとすべき
  7. 基礎研究において、戦略目標、技術の実用化が強調されすぎている感がある。
  8. 社会のニーズにいつでも応えられる土壌をキープしていく研究環境が重要。
  9. 基礎研究については、成果の社会還元という観点での説明が難しいのかもしれないが、単にやりたいだけの研究をしているのか、目的意識をもって取り組んでいるのかはよく見れば区別できる。「脳科学と教育」というテーマは基礎研究の社会還元の取組みの好例。

(産業界からみた基礎研究)

  1. 企業では基礎研究を自前で出来なくなっており、大学には基礎研究を担って欲しい。知の創造に資する研究とともに、10年後に役立つような実用化に関する基盤研究(目的基礎研究)をして欲しい。
  2. 基礎研究は大事だが、学部の目的に合わせてメリハリをつけるべき。努力しないところが消えるのは仕方がない。
  3. 大学はビジネス化に働きすぎて、基礎研究を疎かにしているのではないか。10年後、魅力を感じるシーズが大学に無いのではないかと危惧している。大学は日本独自のシーズを生み出すことが第一のミッションであり、事業化は二の次であるべき。
  4. 国として様々な学問の百科事典があることは大事だが、こうした研究については、研究者の所得は低くしてコストをかけてはいけない。人件費と必要最低限の頭割りの研究費以上の研究費は、知財を売って儲ける部門が配分するなど、儲かるメカニズムが必要。

(その他)

  1. 「基礎」の意味があまりにも多様であるため、一概に「基礎」といっても意味不明。形容詞をつけて議論すべき。

2.基礎研究と重点分野のバランス

  1. ものづくりばかりに光が当てられ、基礎研究は軽視されている。
  2. 基礎研究と応用研究のバランスでは、今の国の投資が偏っているとは思わない。
  3. 重点4分野への集中投資の方向性は理解するが、過度の集中は問題。今の重点分野は5~10年前の研究が実って出てきたものであり、これから10年後に芽が出るような研究・基盤づくりの推進も併せて行わなければいけない。
  4. 10年後に伸びる分野を予測しながら効率的に資金配分するのは非常に困難だが、重点4分野のように明らかに重要な分野には重点的に投資しつつ、その他の分野の学術研究を続行できるように支援する余裕が必要
  5. ナノテク分野ではインフラ整備は相当進んできたことを感じるが、クリーンルームを作っても維持費はつかないといった状況もあり、最低限のインフラはみてもらえるよう基盤的経費の充実を望む。
  6. 応用研究と基礎研究は両輪であり、応用研究だけ行っても良い成果が得られないことが多い。経済産業省と文部科学省との役割の違いを明確化させることも必要かもしれないが、両省がライバル意識を持って競争した方が良い研究成果が生まれるのでは。
  7. 省庁間での整合性が必要。基礎的な成果が上がって、次のステップにいくといった研究の軌跡に見合った研究費の支給がされるようにすべき。
  8. 省庁間で重点化によるメリハリのつけ方と基礎研究の在り方はバランスが取れるようにするべき。
  9. 重点分野でないところは、教育で資金を投入していく。特色ある大学教育プログラム(教育版21世紀COE)がいい取組。
  10. 「技術」が伸びる中で「科学」を支えていかないと大学の活力が損なわれる。

3.重点分野

(重点化に対する評価)
(+)

  1. 重点分野の設定は良いこと(多数の指摘あり)
  2. 重点分野は今の4分野でよい。(多数の指摘あり)(ただし、分野間のバランスの是正、重点分野内での重点領域の設定についての提案を伴うもの多数)
  3. 資金の選択と集中は、研究の活性化につながる。
  4. 重点化の継続性が重要。(複数の指摘あり)
  5. 重点4分野の設定自体は戦略的で良いが、どのようなデータ・情報に基づいて分野決定したかというプロセスについて、公明正大にすべき。

(-)

  1. あらゆる種類の研究が重点4分野に(無理して)結びつけて行われているのは好ましくない。分野間の進展の格差が広がり、研究分野全体の底上げにつながらない。(多数の指摘あり)
  2. 若手研究者の研究の方向性が重点分野に偏ってしまい、独創的な発想をもった、優れた研究者の育成が阻害されるのではないかと懸念している。
  3. 重点分野はある程度の大枠を決めれば良く、基本計画に細かく書き込むと身動きがとれなくなる。弾力性が必要。(複数の指摘あり)
  4. 重点化の結果、今の日本を支える原子力等の分野について手薄になってしまうことは問題。
  5. 重点分野の特定によって、融合領域等が一部やりにくくなっている。
  6. 重点4分野には人文社会科学との融合分野が抜けている。
  7. 総合科学技術会議による各省横並びの重点化推進はやや行き過ぎの感がある。
  8. 最近は、実用化・産業化技術指向に偏り過ぎ。(大学関係者から複数の指摘あり)
  9. 日本の重点化は必ずしも需要に基づいた研究目標の設定が明確でない。

(重点分野の設定)

  1. 研究重点の4分野の中にサブテーマ/重点領域を設けるべき。(多数の指摘あり)
  2. 日本の独自性を出すような分野設定が必要(複数の指摘あり)
  3. 国際社会における日本の存在感を高める研究開発に積極的に取り組むべき。
  4. 重点化の戦略、理念をはっきりさせなければならない。国際分業を前提とし、「強い分野はさらに強く、弱い分野はほどほどに」という戦略が要るのでは。
  5. 重点分野は、国民の関心等を踏まえ、その時代によって政治的に設定すべき。
  6. 新分野開拓と併せ、現行4分野のうち成果のあるものの継続も重要。
  7. アメリカは日本のナノテクについてある程度脅威を感じているのでは。
  8. ここ50年でようやく様々なことが解明され始めたバイオがやはり重要。
  9. 医学サイエンスは国民のQOLを維持・向上させるために重要。
  10. 新興分野としてバイオマスが重要。
  11. ロボット技術は日本の得意分野であり、様々な分野で適用可能な基盤技術。
  12. 原子力・宇宙は将来の人間の生活圏の拡大のための基盤となる。
  13. 重点分野に安全保障も必要。
  14. 技術の安全保障的な観点を導入し、ポートフォリオ的に投資し技術を多様化しておく戦略が必要。例えば2/3は誰もが認めるもの、1/3はそうでないものに投資。
  15. 国際的には、社会的需要に基づき研究目標を設定し研究開発の重点化を行うという方向へ転換しつつある。Initiative(米国)型とForesight(英国)型があるが、両者はボトムアップで重点を決めて行く点で似ている。米国型には、(1)需要に基づき研究目標を設定し重点領域を設定する、(2)省庁横断型で研究開発を進めるとの特徴がある。
  16. 日本の重点化は必ずしも需要に基づいた研究目標の設定が明確でない。また、研究テーマも各省庁の持ち寄りであり、省庁横断型の研究開発の推進に弱い。
  17. 社会・文化・人間を配慮した形で科学技術分野をまとめることが必要。
  18. 学問分野の掛け橋になる、横断的視点からの切り口が欲しい。
  19. 基礎から応用までを一貫してみるプロジェクト施策が必要。
  20. 資金配分メカニズムの多様化が必要。中でも連携・統合型が重要。
  21. 欧米のように、ボトムアップのプロセスを促進するようなシステムが必要。
  22. 重点化は研究分野よりも、人に対して行い、優れた研究者には重点的に資金を投資する方が効果的。
  23. 重点分野を設けることはよいが、10年、20年の長期的スパンで考えていくべきものと短期的に必要なものをうまく組み合わせる必要がある。
  24. 技術シーズそのものが必ずしも求められているのではなく、健康社会といった社会ニーズが求められている。今後の新産業の姿と技術をマトリクスで整理して分野設定すべきではないか。

4.安全・安心科学技術

  1. 国として、安全・安心のような公共技術を推進すべき。(複数の指摘あり)
  2. 安全・安心のための科学技術研究が重要。
  3. 国防というよりは日本社会の安全・安心のために貢献されるような知の関係を構築した方がよい
  4. 安全と安心の確保に必要な先進技術への投資と社会システムの構築を具体化すべき
  5. 「安全・安心」が最近活発に議論されているが、安全・安心といういいかたをすると、どうしても行政官や政治家が一方的に市民を「守る」という印象を与える。そうではなく、地域住民や他の利害関係者が関与し、一方的に「守られる」のではなく、社会として安全と安心を構築するための方策を「共に考える」(或いは共に治める)、参加型のものを考えていくことが必要。

5.国として推進すべき科学技術

  1. 環境問題など、利益が出ず市場原理に馴染まないが、国民にとって重要な分野・領域を示し、そこに研究費を投入すべき。(複数の指摘あり)
  2. 宇宙、原子力分野におけるインフラ整備など民間企業が投資しにくい課題については、引き続き国が責任を持って取り組む必要がある。
  3. 国がやらないと誰もやらないものや、公共技術に関しては国がやるべき。
  4. エネルギー、食糧といった国が寄って立つ分野に取り組むべき。
  5. 宇宙などの基盤技術をいかにサポートしていくかが問題。
  6. 大規模プロジェクトは、計画策定段階で有識者が考えるのではなく、政府がその時代においてやるべきことを考え、推進するべき。
  7. 中長期的課題については、国がロードマップを決めてマネージメントし見直しを行うべき。現在、(宇宙や原子力等の)各専門分野に委員会があるがまともなロードマップを示していない。

6.新興・融合分野

  1. 分野融合が重要。(複数の指摘あり)
  2. 新興分野や創生分野を考慮していくことが必要。(複数の指摘あり)
  3. 研究者コミュニティで盛り上がりを見せている新しい分野に対し、機動的に研究費が投入される仕組みが必要。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)