1.科学技術全般

1.第1期・第2期科学技術基本計画の評価

(+)

  1. 10~15年前に比べると、日本の研究レベルは、基礎から応用の様々な分野で革命的に上がった。欧米と肩を並べているし、一部は抜いている。
  2. 基本計画により大学の科学技術系部門は潤っている。(分野によって異なるものの、)研究費が増えていることは実感できる。(複数の指摘あり)
  3. 財政事情の苦しい中でも科学技術関係の予算が拡充されたことについて、諸外国からの評価も高い。
  4. 基本計画がなければ産学官連携の基盤はここまで確立されなかった。
  5. 第2期基本計画は、国立大学法人化の火付け役・準備役として重要だった。
  6. 10年前に比べ競争的資金制度が驚くべき改善をみたのは、基本計画のお蔭。(複数の指摘あり)
  7. 基礎研究重視、競争的資金倍増という方向性は妥当。(複数の指摘あり)
  8. 研究における競争的原理の導入、集中投資、評価システムの改善の3点はどれも望ましいもので評価できる。

(+/-)

  1. 投入された資金と成果が比例するとは限らない。重点化の実質的成果を含め、第2期基本計画の評価を厳格に行うべき。(複数の指摘あり)
  2. 然るべき分野では世界的に見ても素晴らしい成果が上がっているが、20年後に歴史的価値として残るかは別。日本は二番手でものまね的だが、今後はオリジナリティーの強化が必要。
  3. 方向性は良いが、競争的資金の倍増計画が目標達成に程遠い点は減点。
  4. 全体の方向性は良いが、研究費の単年度主義など、運用レベルで一段の努力が必要。(多数の指摘あり)

(-)

  1. 国の施策に振り回されて、研究者が浮き足立ち、落ち着いて研究できていない。近視眼的な動きを芽生えさせている。
  2. 現行の計画は全体のストーリーがわかりにくい。
  3. 2期計画は分野間の融合がなく批判されている。
  4. 2期計画においては男女共同参画の精神が殆ど反映されていない。
  5. 2期計画は成果の社会への還元という点で不十分。
  6. 基礎研究からプロジェクト研究、産業活性化に繋がる道筋について、具体的な提言に欠けるところがある。監督官庁は旗振り役のみならず出口チェックまで行ってほしい。
  7. 研究者関係者への広報・宣伝活動が足りない。(複数の指摘あり)メールマガジンなどで直接事業者や企業のトップに配信したり、名のある雑誌に基本計画の特集を書いてもらうことも必要。
  8. 学術団体や学術誌の振興が進んでいない。

2.第3期科学技術基本計画への期待、柱となるべき事項

(研究開発投資の拡充)

  1. 国の研究開発投資は、景気に左右されることなく一定増で確保することが必要。
  2. わが国のGDPの20~25%を支える基幹製造業の次世代技術への投資について、戦略性のあるロードマップを産学官連携で作成し、研究開発投資をすることが必要。
  3. 科学教育予算を確実に措置すべき。

(盛り込むべき視点や留意点)

  1. 長期的視点が重要。(多数の指摘あり)
  2. 3期の目玉は人材。(複数の指摘あり)
  3. 計画の重点事項はまず基礎研究とすべき。
  4. 国際戦略が重要。 
  5. 評価のシステム作りに力を注ぐべき。
  6. 科学技術政策のカテゴリー区分を明確にし、資源配分の枠組みや中期的な配分目標を明確にすべき。研究技術開発(RTD)政策とイノベーション政策とを区分し、1基礎科学や学術研究分野、2基盤技術や戦略的技術分野、3中長期的大型計画研究分野、4ニーズ型研究分野等の柱を立てる。1 2はリサーチコミュニティの自律性に多くをゆだねるが、3 4は政策的対応を重視する。
  7. 科学技術と文化科学技術と人間の関係について明確なビジョンを盛り込むべき。社会にとって科学技術がより身近なものとなり、科学技術の重要性・必要性がわかりやすくなる。
  8. 市民の理解と支援を得て社会的な合理性を構築するための「科学技術の民主的な意思決定」の観点が重要。(複数の指摘あり)
  9. 科学技術政策上、国民や人類が将来どのような状態になれば幸福なのか、明確な言葉で表現することが必要。
  10. 重点化の継続とともに、第2期の切り口にはない、安全・安心や、人間に近い科学(ヒューマンインターフェース)国際貢献が重要。
  11. 今後大事になってくるのは科学技術と社会との接点。
  12. 「どの社会的課題(国民のニーズ)が重要か」という視点が必要。この枠組みはそもそも政治過程で決める必要がある。
  13. 科学技術や社会の突発的な変化に対応して研究をフレキシブルに振興できるようなスキームが必要。
  14. 国家戦略的視点を持たねばならない。例として1知財や人材を資源という視点からの戦略、2.途上国の難病への取組(代わりにODAを削減)、3.砂漠緑化・食糧問題の解決等。
  15. 今後の日本のサスティナビリティ(持続的発展)の観点を盛り込んでいく必要がある。(複数の指摘あり)
  16. 国が「国をどう創っていきたいのか」という根本を明確にし、ロボットやナノテク等、「これは絶対日本」という分野の芽を大きく育てるビジョンと戦略をしっかり持って欲しい。
  17. 科学技術だけでなく文理融合型の施策を盛り込んでいくべき。(複数の指摘あり)
  18. 異なる研究分野の研究者が互いの知識を利用し合いながら、融合的に研究を進めていくこと(学際領域)が重要。(複数の指摘あり)
  19. 研究者コミュニティで盛り上がりを見せている新しい分野に対して、機動的に研究費が投入される仕組みが必要。民間からの寄付金に関して、寄付税制の改正は必須。
  20. 科学技術知識の高度な利用・流通と、新知識創造への発展の基盤技術としての知識メディア技術と知識発展技術が重要。
  21. 経済、食糧、エネルギーなどの人間の生活の根幹をなすものについても議論を。
  22. スーパーカミオカンデの事故、H2A・6号ロケットの打ち上げ失敗などが、ノーベル賞受賞の機会を逸した一つの遠因だとすれば、科学技術立国を目指す国として極めて残念だし、仕組みのどこかに欠陥がある。優れた日本の能力と可能性を引き出すため、思い切って仕組みに潜む問題を見直すことにつなげる計画であるべき。
  23. 特に基礎研究を開拓する次世代の学部、大学院、若手研究者の育成のあり方を次期計画では提示する必要がある。
  24. これまで人や金に恵まれていないが実は技術があるというところを活性化すべき。

3.国の責務、科学技術政策の推進体制

(科学技術振興における国の責務)

  1. 資源、食料、環境、健康などの社会のニーズを踏まえ、日本はどこで勝負するか分析し、国としての全体像を示すべき。
  2. 研究開発における官民の役割分担を明確にすべき。独法、大学、民間の役割や、競争的資金、運営費交付金などの予算について、どこでどのような研究を行うのが良いか整理した方がよい。
  3. 市場内の課題は産業に任せて、国は市場外部性の課題に取り組むべき(安全性の担保、ストック型の社会への取組み、宇宙、原子力インフラ整備等)。
  4. 国が行う研究開発は基本的に安全保障のみではないか。
  5. 国は基礎的な研究を行うことが重要。(複数の指摘あり)

(総合科学技術会議について)

  1. 総合科学技術会議が「トップダウンでやる」というのが前面に出ていて良い
  2. 総合科学技術会議が内閣府に置かれて正解。SABC付けのように「見える部分」と、競争的資金改革やITER(イーター)に係る意思決定のように「見えない部分」があるが、後者をもっと国民に見せるべき。
  3. 研究テーマは日々の研究から(ボトムアップで)生まれてくるもの。CSTPがテーマや方向付けをするのは必ずしも良くない。
  4. 現在のCSTPはあれこれ手を出しすぎて、オーバーフローしていないか。もっと事務スタッフの体制を整えるべき。
  5. 現在は総合科学技術会議に各省の施策を持ち寄り調整しているが、施策群全体にわたる背景的分析を欠いており、国として戦略を立てて実施する体制になっていない。(複数の指摘あり)
  6. 企画力や調査能力が不十分で、国の在り方など根本の議論が欠けている。
  7. 総合科学技術会議の有識者議員の人選が研究者コミュニティにとって不透明。基礎科学系の立場からは産業界の意見が非常に強いように見える。
  8. 議員に若い野心的な人を加えるべき。
  9. 産業界の意見を反映させるスキームを強化すべき。

(政府の科学技術政策の推進体制)

  1. 科学技術行政を一元的に所管する省を設け、全研究独法・国研の所管と予算を集中させた方がよい。
  2. 5年間の総投資額よりも、各施策毎に5年後の目標を掲げる形の方が、単年度会計の国の予算になじむのでは。
  3. 日本全体としての長期戦略策定には、バイオテクノロジーなど個別の科学技術分野毎に政策当局が専門官を登用し、これらの専門官が政策決定に関わる基盤データを一定期間継続して収集・分析していくことが、有効に働くのではないか。
  4. 新しい、強いシンクタンク組織が必要
  5. 国は民間に直接金を出すのでなく、民間の研究開発にインセンティブを与えるなど環境整備を行うべき。研究開発の税額控除措置などは良い。
  6. 巨額の投資よりも優良企業への減税策の方が有効。
  7. 民間が国の意思決定に参加していない。官民で実務レベルの人材の相互乗り入れが必要。
  8. 審議会行政ではなく、若い人のアイデアが直接、政策に結びつくようなバイパスを考えるべき
  9. 総務省、経済産業省、文部科学省で連携し、研究開発評価制度の在り方について検討をしていくべき。

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)