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(別紙2)
生命倫理及び安全の確保に関する当面の審議課題について

1.組換えDNA実験指針の運用及び見直し
   
(1)経緯
  組換えDNA技術は、基礎的な生物学の研究はもとより、疾病の原因の解明、医薬品の量産、有用微生物の開発、 農作物の育種等広範な分野において人類の福祉と社会・経済の発展に貢献することが期待される一方、 生物に新しい性質を持たせる側面があり、実施にあたっては慎重な対応が必要。
昭和48年に組換えDNA技術が生み出されて以来、その技術がもたらす影響に研究者自身の懸念が呼び起こされ、 世界的に安全確保のための指針を策定する動きが生じた。 我が国においても科学技術会議及び学術審議会において指針策定のための検討が開始され、昭和54年に指針がとりまとめられた。
 
(2)組換えDNA実験指針
  すべての組換えDNA実験は、「組換えDNA実験指針」(昭和54年内閣総 理大臣決定/平成8年3月最終改訂) 及び「大学等における組換えDNA実験指針」 (昭和54年3月文部省告示42号(初版)/平成3年文部省告示第4号(現在版)/平成10年4月最終改訂) に従って行うこととされている。 (両指針ともに、平成13年1月の省庁再編以降は文部科学大臣に引き継がれた。)
安全確保の具体的方策は、安全確保のための組織整備、 物理的封じ込め・生物学的封じ込めといった封じ込め方法の基準などによって構成される。
指針において具体的な安全基準が示されていない実験等について、 文部科学省の安全性についての確認(承認)を受けて行うこととされており、 その際には専門家からなる専門委員会の意見を聴いている。
組換えDNA実験に係る知見の集積を踏まえ、順次基準の見直しを行ってきている。
現在、両指針の統一化作業を行っているところ(本年夏を目途)。


2.大学等における遺伝子治療臨床研究に関するガイドラインの運用及び見直し
   
(1)経緯
  遺伝子治療については、平成6年2月に厚生省、平成6年6月に文部省がそれぞれ指針を策定し、 これまで12例が実施されてきている。
 
(2)大学等における遺伝子治療臨床研究に関するガイドライン
  大学等における遺伝子治療臨床研究については、「大学等における遺伝子治療臨床研究に関するガイドライン」 (平成6年文部省告示第79号/平成11年5月最終改訂)に基づき行うこととされている。
臨床研究の計画は、すべて文部科学大臣に意見を求め、文部科学大臣は意見を述べるに当たっては、 専門委員会の意見を聴取することとされている。
また、厚生省においても「遺伝子治療臨床研究に関する指針」 (平成6年厚生省告示第23号/平成12年3月最終改訂)により取り扱うこととされており、 専門委員会の意見聴取に当たり、両省の連携により設けられる合同ワーキンググループを開催し、意見の統一化を図っている。
遺伝子治療臨床研究の実施計画が増加しつつあること、 「規制緩和推進3カ年計画(再改訂)」(平成12年3月閣議決定)での審議の簡素化について指摘を受けていることから、 研究実施計画の今後の審議のあり方について検討を開始したところ。


3.クローン技術等に関する検討
   
(1)経緯
  平成9年2月のクローン羊「ドリー」誕生の発表は、国際的に大きな議論を呼び、 わが国においても同年3月に科学技術会議政策委員会において、 人のクローン産生に対する政府資金の配分を差し控えることが決定された。
平成9年9月には、科学技術会議に生命倫理委員会が設置され、生命倫理に関する検討を開始した。 同委員会の下のクローン小委員会は、一般からの意見公募を経て、 平成11年11月に「クローン技術による人個体の産生等に関する基本的考え方」を取りまとめた。 これに基づき、同年12月には、生命倫理委員会が人クローン個体の産生に対し罰則を伴う法規制を行うことを内容とする 「クローン技術による人個体の産生等について」を決定した。
 
(2)クローン技術規制法
  上記の生命倫理委員会決定を受け、政府は平成12年4月(第147回国会)に 「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案」を提出したが、審議時間が十分に確保できず、 委員会に付託されることなく廃案となった。政府は、同年10月に第150回国会に再提出し、審議の結果、 見直し規定の短縮(5年以内から3年以内へ)及びヒト胚の取り扱い方の検討を踏まえて 本法律の規定に検討を加えることを附則において明記することを内容とした修正が加えられ、 11月30日に成立、12月6日に公布された(平成12年法律第146号)。
本法律においては、
  人クローン胚等を人又は動物の胎内に移植することを禁止する(関連部分は平成13年6月6日施行)とともに、
人クローン胚等及びそれらに類似する胚(法律では両者を併せて「特定胚」と呼ぶ。)の作成、取扱い等は、 公布の日から1年以内に文部科学大臣が総合科学技術会議の意見を聴いて定める指針を遵守するとともに、 文部科学大臣に届出を行うことととされている。
文部科学大臣は、取扱いが指針に適合しないと認める際の計画変更命令等、必要に応じた立入検査、 報告聴取等を行うことができる。(詳細は別添1参照
文部科学大臣に届け出られた特定胚の取扱い計画の指針への適合性については、専門委員会に意見を聴く予定。
 
(3)大学等におけるクローン研究
  大学等については、平成10年7月の文部省学術審議会バイオサイエンス部会の報告に基づき 「大学等におけるヒトのクローン個体の作製についての研究に関する指針」(平成10年8月文部省告示第129号) が策定されており、ヒトのクローン個体の作製を目的とする研究は禁止されている。
クローン技術規制法の施行後は、法律による規制に一本化する予定。


4.ヒトES細胞に関する検討
  (1)経緯
  平成10年11月に米国において、ヒトの受精卵(ヒト胚)からES細胞 (Embryonic Stem Cell:胚性肝細胞:半永久的に増殖可能であり、 どのような細胞にも分化できる多能性をもつ細胞) の樹立に成功したとの発表があり、新たに生命倫理に関する問題が提起された。
平成11年1月に生命倫理委員会の下に、ヒト胚研究小委員会が設置され、 ヒト胚性幹細胞とその起源であるヒト胚の取扱いや人クローン胚の取扱いについて検討を行った。 小委員会は、一般からの意見公募を経て、平成12年3月に、 「ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究に関する基本的考え方」を取りまとめ、 これを受けて生命倫理委員会は、ヒト胚性幹細胞の樹立及び使用については厳格な規制の枠組み(ガイドライン) の下で行うこと、人クローン胚等の研究の規制を人クローン個体を禁止する法律に位置付けることなどを内容とした 「ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究について」を決定した。
 
(2)ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針案
  上記、生命倫理委員会の結論を受け、文部科学省において、 ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針のパブリックコメントを3月19日まで行っているところであり、 今後は総合科学技術会議において最終的な検討を行い、運用を開始する予定。
本指針案においては、ヒトES細胞の樹立及び使用は当面基礎的研究に限るとともに、 樹立に際しては生殖補助医療の余剰胚からの樹立に限ること、 厳格なインフォームドコンセントを行うこととなっている。 また、ヒトES細胞の樹立及び使用を行う際には、 研究機関の審査委員会及び文部科学大臣の確認が必要とされている。 また、文部科学大臣は、確認を行う際には、科学技術・学術審議会の意見を聴くこととされている。 (詳細は別添2参照
 
(3)大学等におけるヒトES細胞研究
  大学等については、平成10年12月の研究助成課長名の通知において、ヒトES細胞の研究は、 上記「大学等におけるヒトのクローン個体の作製についての研究に関する指針」の 「クローン個体の作製をもたらすおそれのある研究」に該当するとして、 指針に則った対応をするよう通知がなされている。
ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針の施行後は、当該指針に一本化する予定。


5.ヒトゲノム研究に関する検討
   
(1)経緯
  ヒトゲノム研究の急速な進展を受けて、平成11年12月に、生命倫理委員会の下に、 ヒトゲノムを対象とした研究に関する倫理問題を審議する「ヒトゲノム研究小委員会」が設置された。 同年6月には、一般からの意見公募を踏まえ、インフォームド・コンセントの取得や個人情報の保護などを定めた 「ヒトゲノム研究に関する基本原則」が、 生命倫理委員会において決定され、関係省庁及び関係団体に対して周知が図られた。
 
(2)ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針案
  本基本原則の内容を踏まえて、文部科学省、 厚生労働省及び経済産業省が協力して研究者等が遵守すべき具体的な手続きを定める 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を策定しているところ。 本年4月1日からの施行することとし、年度内に3省共同で告示する予定。(詳細は別添3参照


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