1.はじめに

(1)フォローアップの基本的考え方

 科学技術・学術審議会は、「長期的展望に立つ海洋開発の基本的構想及び推進方策について」の諮問を受け、海洋開発分科会を中心として、今後10年程度を見通した日本全体としての海洋政策の基本的考え方及び推進方策について審議し、2002年8月に「長期的展望に立つ海洋開発の基本的構想及び推進方策について−21世紀初頭の海洋政策−」(以下、「答申」という)を取りまとめ、文部科学大臣に答申した。
 答申から5年が経過した現在、海洋開発分科会は、この間の海洋に関する情勢の変化等を踏まえ、答申内容の実施状況を確認するとともに、2007年7月に施行された海洋基本法に基づき現在総合海洋政策本部において検討されている海洋基本計画にその内容が反映されるよう、今後重点的に取り組むべき事項について整理を行うこととした。
 本フォローアップを踏まえ、政府が海洋立国に向けて更に各種施策を充実させていくことを強く期待する。

(2)海洋に関する最近の情勢

 答申からこれまでの間に海洋に関する様々な動きがあった。
 その中で、一番大きな動きは、2007年7月の海洋基本法の施行である。海洋基本法は、2006年4月に発足し、各政党や有識者で構成されている「海洋基本法研究会」で作成された「海洋政策大綱」をベースとし、議員立法により制定された。海に囲まれた日本において、国際的協調の下に海洋の平和的かつ積極的な開発及び利用と海洋環境の保全との調和を図る新たな海洋立国を実現することを目指した本法は、答申の趣旨とした、海洋を「知る」「守る」「利用する」の3つの概念がベースとなっている。本法に基づき、内閣総理大臣を本部長とする「総合海洋政策本部」が設立され、総合的な海洋政策の推進体制が整ったことは大きな進展である。
 また、日本の大陸棚を200海里を超えて設定するために行っている大陸棚調査も着実に進展している。この調査は、2004年8月に発足した「大陸棚調査・海洋資源等に関する関係省庁連絡会議」の方針に基づき、文部科学省、経済産業省及び海上保安庁の連携の下に行われており、2009年1月の国連提出を目指している。
 科学技術関係でもいくつかの動きがあった。2006年3月に閣議決定された第3期科学技術基本計画の分野別推進戦略において、海洋分野がフロンティアをはじめとして、環境、社会基盤など各分野に盛り込まれ、さらに「海洋地球観測探査システム」が国家基幹技術に位置づけられた。
 また、統合国際深海掘削計画(IODP)における地球深部探査船「ちきゅう」の運用により2007年9月から南海掘削が開始され、海溝型地震の根本的なメカニズム解明に向けて大きく前進している。
 さらに、海洋に関する関心はますます高まる一方、国際的枠組みの下で各国の海洋に関する取り組みに留意し、日本が新たに管理することになった排他的経済水域(EEZ)の開発、利用、保全及び管理に取り組み、日本の経済圏を守るとともに経済圏内の資源を最大限有効に活用することが重要になっている。

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