本計画の課題を達成するために、今後も推進本部の下で進められている基盤的調査観測等のデータを活用しつつ、計画遂行を担う各大学や関係機関が、それぞれの機能に応じた役割分担と密接な協力・連携の下に計画全体を組織的に推進する体制を確立することが不可欠である。このため、測地学分科会の下に適切な組織を設けることにより、本計画に基づく観測研究を効果的に実施するとともに、本計画の実施に対する評価体制を整備する必要がある。
また、平成16年度からの国立大学の法人化により、各大学の研究組織については、原則として各大学の裁量にゆだねられることになるが、全国共同利用研究所を中心に、組織的な地震予知のための観測研究を推進するためには、これまで整備されてきた研究施設の確保と相互の連携強化や全国共同利用研究所の機能の充実・強化が必要である。法人化後においても、国は運営費交付金等により大学に対して所要の財源を措置する一方、当該大学においては、全国共同利用研究所及び研究施設等の目的が達成されるよう所要の予算を適切に配分すること等が重要である。さらに、全国共同利用研究所である東京大学地震研究所に置かれた地震予知研究協議会が果たしてきた機能の継続と充実を図り、多くの分野から広く英知を結集する体制を通して研究の一層の活性化を図る。
推進本部の役割は、行政施策に直結すべき地震に関する調査研究の責任体制を明らかにし、これを政府として一元的に推進するため、地震調査研究に関する総合的かつ基本的施策の立案、総合的調査観測計画の策定、地震活動の現状や将来に関する総合的な評価、評価結果の広報等を行うことである。一方、科学技術・学術審議会測地学分科会は、大学の研究者を中心に、関係機関も加わり、ボトムアップ型の検討に基づいて、地震予知のための観測研究計画を策定し、政府に対して建議を行なう。本計画では、地震発生に至る一連の過程を理解し、それを観測に基づいてモデル化し、定量的な地震発生予測の確度を逐次高めていくことを基本方針として、地震予知のための観測研究を組織的に進めることとしている。また、本計画に基づいて得られた地震災害軽減に役立つ知見は、逐次社会に還元されるべきであるが、その際には推進本部が担う地震活動の評価等や広報の機能も効果的に活用する必要がある。加えて、本計画の成果が、推進本部が行う施策等の立案に際して、積極的に活用されることを期待する。
さらに、基盤的調査観測等、推進本部の実施する調査観測を積極的に活用することにより、本計画をより効果的に推進する。なお、大学の高感度地震観測網については、基盤的調査観測計画との調和を図りながら、大学が担うべき観測研究へ一層重点を移す。
本計画にかかわる観測研究機関の相互の連携は一層重要となっており、関係機関を中心とする関係者が定期的に会合を持ち、観測データに基づく地震予知研究に関する情報交換を行う場を引き続き確保する必要がある。現在、地震予知連絡会では、毎回地震予知観測研究に関する課題を選定して掘り下げた議論をする時間を設けているが、このような取組を更に進め、その充実を図る。
なお、現在、推進本部では、地震調査研究の最新の科学的知見に基づき、平成16年度末をめどに「全国を概観した地震動予測地図」を作成することとしている。これにより地震危険度(強い揺れに見舞われる可能性)が高い地域を全国的に比較できるようになることから、平成13年8月、推進本部は、基盤的な調査観測に加え、重点的な調査観測体制の整備を進めることとした。したがって、平成17年度以降に、地震危険度が相対的に高いとされた地域において、推進本部が重点的調査観測等の対象地域を選定することが想定されるので、それを踏まえて、地震予知連絡会が指定したこれまでの特定観測地域等の在り方を抜本的に見直す必要がある。
地震予知研究の進展に伴う研究分野の拡大、基盤的調査観測等の定常的な観測・監視業務の増大等により、本計画を推進するためには、研究者をはじめ地震予知関連の観測研究に従事する人材の養成・確保はますます重要となっており、大学等は人材の養成に一層努力する必要がある。
活火山周辺で顕著な地震活動が見られるなど、地震活動と火山活動は相互に密接に関連した地殻現象である。したがって、地殻活動を総合的に把握し予測の確度を高める上で、地震予知研究と火山噴火予知研究の連携が不可欠であり、今後も一層緊密な連携を図る。さらに、工学や社会科学など関連学問分野との連携を進め、防災対策など社会的要請に応じていく。
地震予知研究を推進する上で、日本列島周辺のテクトニクスを解明することが重要であり、それを達成するため、近隣諸国と協力して共同研究を推進する必要がある。さらに、地震研究の盛んな国々や地震災害の多い開発途上国との間で、地震に関する観測データなどの情報の交換、シンポジウム、研究交流、共同研究、人材養成の協力等、多面的な国際協力を行うことが重要であり、一層の推進を図る。
国民に対して、地震予知研究の成果を分かりやすい形で継続的に説明する必要があり、関係機関におけるホームページ等の充実を図るとともに、科学的な知見や情報を積極的に発信するなど効果的伝達を図る。さらに、講演会開催などに加え、マスメディアへの情報提供により研究情報を積極的に社会へ紹介するなど、震災軽減に関する社会的要請にこたえるよう努める。
科学技術・学術政策局政策課
-- 登録:平成21年以前 --