人類、世界の持続可能性を脅かす地球規模課題の顕在化、世界的な金融危機と経済不況、また、日本国内の人口減少・少子高齢化、世界経済における我が国の相対的な地位の低下の恐れなど、世界及び我が国を取り巻く状況は激動の中にあるが、我が国がこの危機を克服し得る手段のうち不可欠かつ最も大きな可能性を有するものが、人々の英知の結晶としての科学技術とそれを基盤としたイノベーションの振興である。グローバル化し、それに伴い、頭脳循環が大規模に展開される世界の中で、これからの日本の役割と挑戦はどこにあるかという観点から、第4期科学技術基本計画に向けて、科学技術の国際活動についての重要課題にかかわる提言をとりまとめた。
主要な点を改めて整理すると以下のとおりであり、国、関係機関、大学、研究機関、研究者等全ての関係者が協力し、できることから直ちに取り組むことを期待したい。
科学技術分野における国際協力については、関係府省、機関間で連携を密にして取り組むことが重要であり、科学技術外交の観点も踏まえながら、様々な施策を体系的に講じていく必要がある。
相互依存を強めるグローバル社会において、我が国は世界とともに、持続可能、かつ安全で質の高い生活を実現していくために、また、基礎科学の発展のために、質の高い科学技術協力に重点的に取り組むことが求められている。環境・省エネルギー分野等の我が国の強みを先端科学技術に関する国際協力により維持・強化しつつ、開発途上国等とも協力して直面する課題の解決を図ることが必要である。これらの取組を基盤に、BRICs諸国をはじめとする国々の台頭等、国際的な科学技術コミュニティの変化等にも対応しつつ、多国間の枠組み等を活用したり、関連する諸施策を体系的に組み合わせたりすることにより、科学技術外交を効果的に展開していくべきである。
科学技術の世界では、国籍にとらわれず、自らの力を最も伸ばし、発揮でき、活躍できる場を求めて、人材が国境を超えて流動する頭脳循環の流れが進んでいる。
研究者の国際流動性の向上を図ることなく、我が国の科学技術の強化を図ることは不可能である。そのためには、我が国の若手研究者の育成に力を注ぐことが喫緊の課題であり、若い段階からの海外経験を通じて、積極性、自発性と国際的な視点を備え、国際ネットワークの核となる研究者を輩出していく環境を整備すべきである。一方で、海外からの優秀な研究者の招へいとネットワークの構築により、国内における研究を活性化させることも重要である。海外研究者の招へいの際、我が国の言語環境等が障害になるため、言葉の面など様々なサポートを充実するとともに、特に研究機関が集積している都市等において、英語が通じ、優秀な外国の研究者が家族とともに快適に暮らせる環境を整備する必要がある。
科学技術関連の国際活動を通じて世界各国との共存共栄関係を維持発展するとともに、世界的な研究・人材ネットワークの確固たる一員となって、我が国の科学技術振興を図っていく上で、上記のような施策を円滑に推進するための共通基盤の整備も重要である。
海外の動向に関する情報を継続的・体系的に収集、分析できる体制の充実、科学技術と外交の両面に通じた科学技術アタッシェや研究機関等における国際関係業務担当者の体制の強化、研究成果の普及・標準化につながるネットワーク形成、国際交流等を進める際の機微技術等の扱いにかかわる支援などが必要である。
科学技術・学術政策局政策課
-- 登録:平成21年以前 --